JP6721639B2 - エンジンのブリーザ構造 - Google Patents

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本発明は、動弁室から供給されるブローバイガスからオイルを除去し、オイルを除去したブローバイガスをスロットルバルブの上流側の吸気通路に排出するブリーザチャンバを備えるエンジンのブリーザ構造に関する。
シリンダヘッドに設けた動弁室に収納されるカムシャフトの軸端を軸受で支持し、その軸受の外側面に結合したフィッチングの内部にカムシャフトの軸端に臨むオイル分離空間を区画し、クランクケースからカムシャフトの内部に供給されるブローバイガスに含まれるオイルを遠心力で分離してオイル分離空間から動弁室に排出するとともに、オイルが分離されたブローバイガスをオイル分離空間からエンジンの吸気系に還流させるものが、下記特許文献1により公知である。
またエンジンの動弁室に収納されてブローバイガスからオイルを分離するオイルセパレータが、ブローバイガスの流入ポートおよび流出ポートを接続するブローバイガス通路上に配置された絞り板、捕捉板および逆流防止板よりなるオイル分離機構を備えるものが、下記特許文献2により公知である。
またブローバイガスからオイルを分離するオイルセパレータが、筐体の内部に設けられた第1のオイルセパレータおよび第2のオイルセパレータを備え、第1のオイルセパレータおよび第2のオイルセパレータで各々独立してオイルの分離を行うものが、下記特許文献3により公知である。
特許第2504073号公報 特許第4581829号公報 特許第4425951号公報
ところで、ブリーザチャンバでブローバイガスからオイルを分離するとき、ブローバイガスの衝突壁への衝突によるオイル分離や、ブローバイガスの旋回運動によるオイル分離だけでは不充分であり、オイル分離手段を多段階に組み合わせて確実なオイル分離を図る必要がある。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、コンパクトな構造で高いオイル分離機能を発揮するエンジンのブリーザ構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、動弁室から供給されるブローバイガスからオイルを除去し、オイルを除去したブローバイガスをスロットルバ
ルブの上流側の吸気通路に排出するブリーザチャンバを備えるエンジンのブリーザ構造であって、前記ブリーザチャンバには、少なくとも一方の内面に隔壁を突設したケースおよびカバーを結合することで、前記ケースおよびカバーの内部に前記動弁室に連通する第1チャンバと前記吸気通路に連通する第2チャンバとが区画され、前記第1チャンバは、前記ケースおよびカバー間に連通孔を有する仕切り部材を挟むことで複数のチャンバに区画され、前記第1チャンバおよび前記第2チャンバはオイル分離部材を介して相互に連通し、前記第1チャンバの容積に対し、前記第2チャンバの容積が大きいことを特徴とするエンジンのブリーザ構造が提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記第1チャンバに形成されるラビリンス状の流路の流路断面積の変化量は、前記第2チャンバに形成されるラビリンス状の流路の流路断面積の変化量よりも大きいことを特徴とするエンジンのブリーザ構造が提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記ケースおよび前記仕切り部材間に形成されるチャンバの流路断面積に対し、前記仕切り部材および前記カバー間に形成されるチャンバの流路断面積は大きいことを特徴とするエンジンのブリーザ構造が提案される。
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、V型エンジンの両バンクに共用されるシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドに結合されるヘッドカバーとの間にカムシャフトを収納する前記動弁室を区画し、前記シリンダヘッドおよび前記ヘッドカバーに跨がるブリーザチャンバ結合面に前記カムシャフトの軸端が臨む開口部を形成し、前記ブリーザチャンバを前記ブリーザチャンバ結合面に結合し、前記ブリーザチャンバは前記動弁室に連通する筒状のドレーン通路を備え、前記ドレーン通路の先端は前記ブリーザチャンバ結合面を超えて前記開口部から前記動弁室側に突出することを特徴とするエンジンのブリーザ構造が提案される。
また請求項5に記載された発明によれば、請求項4の構成に加えて、前記ブリーザチャンバ結合面には吸気カムシャフトおよび排気カムシャフトの軸端に臨む第1開口部および第2開口部が形成され、前記第1チャンバの第1ドレーン通路は前記第1開口部から前記動弁室側に突出し、前記第2チャンバの第2ドレーン通路は前記第2開口部から前記動弁室側に突出することを特徴とするエンジンのブリーザ構造が提案される。
また請求項6に記載された発明によれば、請求項1〜請求項5の何れか1項の構成に加えて、前記オイル分離部材は、ブローバイガスが通過する多数のオリフィスと、前記オリフィスを通過したブローバイガスが衝突する衝突壁とを備えることを特徴とするエンジンのブリーザ構造が提案される。
また請求項7に記載された発明によれば、請求項6の構成に加えて、前記オイル分離部材は、前記オリフィスおよび前記衝突壁間に配置されたフィルターを備えることを特徴とするエンジンのブリーザ構造が提案される。
また請求項8に記載された発明によれば、請求項1〜請求項7の何れか1項の構成に加えて、前記ブリーザチャンバは、内面に隔壁を突設したケースと内面に隔壁を突設したカバーとを結合して構成されることを特徴とするエンジンのブリーザ構造が提案される。
なお、実施の形態のエアフロチューブ20は本発明の吸気通路に対応し、実施の形態の吸気カムシャフト33および排気カムシャフト34は本発明のカムシャフトに対応し、実施の形態の第1開口部36aおよび第2開口部36bは本発明の開口部に対応し、実施の
形態の第1ドレーン通路41cおよび第2ドレーン通路41dは本発明のドレーン通路に対応し、実施の形態の第1〜第3連通孔43b,43c,43eは本発明の連通孔に対応する。
請求項1の構成によれば、動弁室から供給されるブローバイガスからオイルを除去し、オイルを除去したブローバイガスをスロットルバルブの上流側の吸気通路に排出するブリーザチャンバを備えるので、動弁室内のブローバイガスが吸気通路側に逆流したときに、ブリーザチャンバにおいてブローバイガスから分離したオイルを動弁室に排出することで、吸気通路の下流のスロットルバルブにオイルが付着するのを防止することができる。
ブリーザチャンバには、少なくとも一方の内面に隔壁を突設したケースおよびカバーを結合することで、ケースおよびカバーの内部に動弁室に連通する第1チャンバと吸気通路に連通する第2チャンバとが区画され、第1チャンバおよび第2チャンバはオイル分離部材を介して相互に連通するので、ブリーザチャンバ内にオイル分離機能を有する第1チャンバおよび第2チャンバをコンパクトに形成できるだけでなく、オイル分離部材によりブローバイガスに含まれるオイルを一層確実に分離することができる。
しかも第1チャンバの容積に対し、第2チャンバの容積が大きいので、オイルミストを含むブローバイガスが動弁室から吸気通路側に逆流するとき、オイル分離部材で除去しきれなかったブローバイガス中のオイルを、容積が大きい第2チャンバでブローバイガスの流速を低下させることで効率的に除去することができる。また第1チャンバは、連通孔を有する仕切り部材をケースおよびカバー間に挟むことで区画されるので、簡単な構造で第1チャンバに複数のチャンバを形成できる。
また請求項2の構成によれば、第1チャンバに形成されるラビリンス状の流路の流路断面積の変化量は、第2チャンバに形成されるラビリンス状の流路の流路断面積の変化量よりも大きいので、第1チャンバの流路ではブローバイガスの流速を増加・減少させて慣性力によるオイルの効率的な分離を図るとともに、第2チャンバの流路でブローバイガスの流速の急増を抑制してオイルが吸気系に浸入するのを防止することができる。
また請求項3の構成によれば、ケースおよび仕切り部材間に形成されるチャンバの流路断面積に対し、仕切り部材およびカバー間に形成されるチャンバの流路断面積は大きいので、仕切り部材およびカバー間に形成されるチャンバの流路断面積を大きくし、そのチャンバを拡張室として機能させてブローバイガスの流速を急激に低下させ、ブローバイガスに含まれるオイルを効率的に分離することができる。
また請求項4の構成によれば、V型エンジンの両バンクに共用されるシリンダヘッドと、シリンダヘッドに結合されるヘッドカバーとの間にカムシャフトを収納する動弁室を区画し、シリンダヘッドおよびヘッドカバーに跨がるブリーザチャンバ結合面にカムシャフトの軸端が臨む開口部を形成し、ブリーザチャンバをブリーザチャンバ結合面に結合し、ブリーザチャンバは動弁室に連通する筒状のドレーン通路を備え、ドレーン通路の先端はブリーザチャンバ結合面を超えて開口部から動弁室側に突出するので、ブリーザチャンバにおいてブローバイガスから分離されたオイルを動弁室に確実に排出してブリーザチャンバ結合面から外部に漏れ出すのを防止することができる。
また請求項5の構成によれば、ブリーザチャンバ結合面には吸気カムシャフトおよび排気カムシャフトの軸端に臨む第1開口部および第2開口部が形成され、第1チャンバの第1ドレーン通路は第1開口部から動弁室側に突出し、第2チャンバの第2ドレーン通路は第2開口部から動弁室側に突出するので、ブローバイガスに含まれるオイルを第1チャン
バ、オイル分離部材および第2チャンバで3段階に分離することで、オイルの分離効率を高めることができるだけでなく、第1チャンバおよび第2チャンバに滞留するオイルを第1ドレーン通路および第2ドレーン通路で動弁室に確実に排出することができる。
また請求項6の構成によれば、オイル分離部材は、ブローバイガスが通過する多数のオリフィスと、オリフィスを通過したブローバイガスが衝突する衝突壁とを備えるので、オリフィスで加速されたブローバイガスを高速で衝突壁に衝突させてオイルを効果的に分離することができる。
また請求項7の構成によれば、オイル分離部材は、オリフィスおよび衝突壁間に配置されたフィルターを備えるので、ブローバイガス中に含まれるオイルを一層効果的に捕捉して分離することができる。
また請求項8の構成によれば、ブリーザチャンバは、内面に隔壁を突設したケースと内面に隔壁を突設したカバーとを結合して構成されるので、容積の異なる複数のチャンバを有するブリーザチャンバを容易かつコンパクトに形成することができる。
V型多気筒エンジンの上面図である。 図1の2方向矢視図である。 図2に対応する断面図である。 ブリーザチャンバの分解斜視図である。 図4の5A方向、5B方向および5C方向矢視図である。 図4の6A方向および6B方向矢視図である。 図3の7A−7A線断面図および7B−7B線断面図である。
以下、図1〜図7に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図3に示すように、V型多気筒エンジンのシリンダブロック11の上部に前後一対のバンク12が形成されており、各バンク12内に配置されたシリンダ13に摺動自在に嵌合するピストン14がコネクティングロッド15を介してクランクシャフト16に接続される。両バンク12間にはシリンダ13の上端に形成された燃焼室17に連通する吸気マニホールド18が配置されており、吸気マニホールド18の上部に配置されたエアクリーナ19が、U字状に屈曲するエアフロチューブ20を介してスロットルバルブ21に接続される。
各バンク12はシリンダヘッド22およびヘッドカバー23間に区画された動弁室24を備えており、この動弁室24は各バンク12のシリンダヘッド22およびシリンダブロック11の内部を貫通するオイル戻し通路25を介して、シリンダブロック11の下部に設けたオイルパン26の内部に連通する。
前側のバンク12のヘッドカバー23の上面にPCV(Positive Crankcase Ventilation)バルブ27を有するPCVチャンバ28が設けられており、このPCVチャンバ28はPCVパイプ29を介して吸気マニホールド18に接続される。また後側のバンク12の左側の端面には動弁室24に連通するブリーザチャンバ30が設けられており、このブリーザチャンバ30はブリーザパイプ31を介してスロットルバルブ21の上流のエアフロチューブ20に接続される。
図3に実線の矢印で示すように、エンジンの運転に伴い、燃焼室17に供給された混合
気の一部はピストン14およびシリンダ13間の隙間を通過し、燃料蒸気およびミスト状のオイルを含むブローバイガスとなってクランクケース内に滞留する。エンジンの運転中に吸気マニホールド18の内部にはエンジンの吸気負圧が作用するため、チェックバルブよりなるPCVバルブ27が開弁し、クランクケース内のブローバイガスは、前側のバンク12のオイル戻し通路25、PCVバルブ27、PCVチャンバ28、PCVパイプ29および吸気マニホールド18を通過して吸気と共に前側のバンク12の燃焼室17に戻され、そこで燃焼することでブローバイガス中の燃料蒸気の大気への放散が防止される。このとき、PCVチャンバ28においてブローバイガスからオイルが分離され、分離されたオイルは前側のバンク12の動弁室24から前側のバンク12のオイル戻し通路25を経てオイルパン26内に戻される。
クランクケース内のブローバイガスを吸気マニホールド18に吸引し続けると、クランクケース内が負圧になってブローバイガスの吸引が阻害されるため、クランクケース内に新気を補充して内圧の低下を抑制する必要がある。すなわち、クランクケースの内圧低下に伴い、大気圧であるスロットルバルブ21の上流のエアフロチューブ20内の新気が、ブリーザパイプ31、ブリーザチャンバ30、後側のバンク12の動弁室24および後側のバンク12のオイル戻し通路25を通過してクランクケース内に供給される。
ところで、エアフロチューブ20内の新気をクランクケース内に供給するだけであれば、その経路にオイル分離機能を有するブリーザチャンバ30を設ける必要はない。ブリーザチャンバ30が必要となる理由は以下の通りである。
スロットルバルブ21の開度が所定値以上の高開度である場合を除き、スロットルバルブ21の上流のエアフロチューブ20は略大気圧に維持されるため、エアフロチューブ20内の新気はクランクケース側に流れるが、スロットルバルブ21の開度が所定値以上の高開度になると、エンジンの吸気負圧がスロットルバルブ21の上流のエアフロチューブ20にまで及ぶようになり、しかもブローバイガスの発生量が増加してクランクケースの内圧が増加するため、図3に破線の矢印で示すように、クランクケース内のブローバイガスがエアフロチューブ20側に逆流する場合がある。このようにしてミスト状のオイルを含むブローバイガスがエアフロチューブ20側に逆流すると、エアフロチューブ20の下流に位置するスロットルバルブ21にオイルが付着して汚れや作動不良の原因となる可能性がある。これを防止するために、ブローバイガスの逆流経路にオイル分離機能を有するブリーザチャンバ30を設け、ブローバイガスに含まれるオイルを分離してオイルパン26に戻すようになっている。
次に、ブリーザチャンバ30およびその周辺の構造を説明する。
図2および図7に示すように、シリンダブロック11の後側のバンク12の上端に重ね合わされて締結されたシリンダヘッド22およびヘッドカバー23の左側の端面に形成された平坦なブリーザチャンバ結合面22a,23aにブリーザチャンバ30が4本のボルト32で固定される。
シリンダヘッド22に設けられた複数のジャーナル支持部22bと、ヘッドカバー23側に設けられたカムホルダ23bに形成した複数のジャーナル支持部23cとの間に、吸気カムシャフト33および排気カムシャフト34が回転自在に支持されており、これらの吸気カムシャフト33および排気カムシャフト34はエンジンの右側面に配置されたタイミングベルト35(図1参照)でクランクシャフト16に接続されて駆動される。
ところで、通常のV型多気筒エンジンは、前後のバンクにそれぞれ設けられた一対のシリンダヘッドが相互に鏡面対象な形状の別部材で構成されるため、シリンダヘッドの一端
側(タイミングベルト側)に形成した開口部から突出するカムシャフトの軸端にスプロケットが設けられ、カムシャフトの軸端が突出しないシリンダヘッドの他端側(タイミングベルトと反対側側)は開口部を備えずに予め閉塞されている。
しかしながら、シリンダヘッドを鋳造する金型の設備費を削減するために、本実施の形態のシリンダヘッド22は前後のバンク12に対して同一形状のものが共用される。このように、左右のバンク12に共用される本実施の形態のシリンダヘッド22は、その両端側に吸気カムシャフト33および排気カムシャフト34を突出させるための開口部が形成されている。
ブリーザチャンバ30が取り付けられる後側のバンク12に注目すると、図7から明らかなように、シリンダヘッド22およびヘッドカバー23の左端に形成されたブリーザチャンバ結合面22a,23aに、吸気カムシャフト33および排気カムシャフト34がそれぞれ貫通可能な第1開口部36aおよび第2開口部36bが形成され、これらの第1、第2開口部36a,36bに隣接するように吸気カムシャフト33および排気カムシャフト34のジャーナルを支持可能なジャーナル支持部22b,23cが形成される。
ただし、ブリーザチャンバ30が取り付けられる後側のバンク12のシリンダヘッド22の左側の端部では、吸気カムシャフト33および排気カムシャフト34が外部に突出しないため、第1、第2開口部36a,36bおよびジャーナル支持部22b,23cは吸気カムシャフト33および排気カムシャフト34の支持に使用されることはなく、第1、第2開口部36a,36bはブリーザチャンバ30により閉塞される。
なお、前側のバンク12のシリンダヘッド22およびヘッドカバー23の左端の第1、第2開口部36a,36bおよびジャーナル支持部22b,23cも吸気カムシャフト33および排気カムシャフト34の支持に使用されないため、その第1、第2開口部36a,36bはキャップ等の部材で閉塞される。
図4〜図7に示すように、ブリーザチャンバ30は、シリンダヘッド22およびヘッドカバー23のブリーザチャンバ結合面22a,23aに4本のボルト32で締結される合成樹脂製のケース41と、ケース41の左端に振動溶着される合成樹脂製のカバー42と、ケース41およびカバー42間に挟まれる合成樹脂製の仕切り部材43と、ブリーザチャンバ30の内部を流れるブローバイガスからオイルを分離するオイル分離部材44とを備える。ケース41およびカバー42の振動溶着される割り面は、図5および図6において網掛けして示される。
シリンダヘッド22およびヘッドカバー23のブリーザチャンバ結合面22a,23aに結合されるケース41の右側面(図5(A)参照)は基本的に平坦であり、ブリーザチャンバ結合面22a,23aとの間をシールするシール部材45が嵌合するシール溝41aと、動弁室24の内部に連通する開口部41bと、シリンダヘッド22およびヘッドカバー23側に向けて突出する2本の筒状の第1、第2ドレーン通路41c,41dと、ブリーザチャンバ結合面22a,23aに螺合する4本のボルト32が貫通する4個のボス部41eとが形成される。
カバー42に結合されるケース41の左側面(図4および図5(B)参照)には基本的に外周を周壁41fに囲まれた凹状の空間が形成されており、周壁41fの内側に仕切り部材43が嵌合する浅い段部41gと、ラビリンスを構成する複数の隔壁41h〜41kとを備えており、隔壁41hに切欠きよりなるオイル孔41mが形成されるとともに、隔壁41jに切欠きよりなる2個のオイル孔41n,41oが形成され、さらに周壁41fおよび隔壁41i間にオイル分離部材44が嵌合するオイル分離部材支持溝41pが形成
される。
ケース41の段部41gに嵌合してカバー42により保持される仕切り部材43(図4、図5(C)および図6(A)参照)は、平坦な隔壁部43aと、隔壁部43aを貫通する第1連通孔43bおよび第2連通孔43cと、隔壁部43aの下半部からケース41側に袋状に膨出する膨出部43dと、膨出部43dの底部に開口する第3連通孔43eとを備える。
ケース41に結合されるカバー42の右側面(図6(B)参照)には基本的に外周を周壁42aに囲まれた凹状の空間が形成されており、周壁42aにはブリーザパイプ31が接続される継ぎ手部42bが上向きに突設されるとともに、周壁42aの内側にラビリンスを構成する複数の隔壁42c〜42eが形成される。
ケース41のオイル分離部材支持溝41pに嵌合してカバー42により保持されるオイル分離部材44は、U字状に屈曲したフレーム46を備えており、フレーム46の一方の脚部には多数のオリフィス46aが形成され、他方の脚部は前記オリフィス46aに対向する衝突壁46bを構成する。そしてポリエチレンテレフタラートで作られた柔らかい起毛仕上げの繊維素材であるフリース製のフィルター47が、オリフィス46aに対向するように衝突壁46bに固定される。
このように構成されたケース41、カバー42、仕切り部材43およびオイル分離部材44を組み立てたブリーザチャンバ30は、ブローバイガスの逆流時、つまり動弁室24のブローバイガスがケース41の開口部41bから流入してカバー42の継ぎ手部42bからエアフロチューブ20に向けて流出するとき、その上流側である開口部41bからオイル分離部材44までの範囲に第1チャンバA,B,Cが区画され、その下流側であるオイル分離部材44から継ぎ手部42bまでの範囲に第2チャンバDが区画される。
図5(B)、図6(B)および図7から明らかなように、チャンバAおよびチャンバCはケース41および仕切り部材43間に区画されるもので、上側のチャンバAはケース41の開口部41bを介して動弁室24に連通するとともに、隔壁部41hの連通孔41mを介して下方のチャンバCに連通する。そしてチャンバCはケース41の第1ドレーン通路41cを介して動弁室24に連通する。
チャンバBは仕切り部材43およびカバー42間に区画されるもので、仕切り部材43の第1連通孔43bを介してチャンバAに連通するとともに、仕切り部材43の膨出部43dの第3連通孔43eを介してチャンバCに連通する。さらにチャンバBは仕切り部材43の第2連通孔43cを介してオイル分離部材44に連通する。
ケース41およびカバー42間に区画されてオイル分離部材44を介してチャンバBに連通する第2チャンバDは、相互に当接するケース41の隔壁41j,41kと、カバー42の隔壁42d,42eとによりラビリンス状に構成され、ケース41の隔壁41jに2個のオイル孔41n,41oが形成される。第2チャンバDは、ケース41の下部に設けた第2ドレーン通路41dを介して動弁室24に連通する。
ブローバイガスの逆流時に、オイル分離部材44の上流側に位置する第1チャンバA,B,Cの容積に対し、下流側に位置する第2チャンバDの容積は大きく設定される。
図7から明らかなように、ブリーザチャンバ30のチャンバCから延びる第1ドレーン通路41cの先端は、シリンダヘッド22およびヘッドカバー23のブリーザチャンバ結合面22a,23aを超え、第1開口部36aから動弁室24側に内部に延びている。第
1ドレーン通路41cは比較的に短いため、その先端は使用されていないジャーナル支持部22b,23cよりも第1開口部36a側に位置している。
またブリーザチャンバ30の第2チャンバDから延びる第2ドレーン通路41dの先端は、シリンダヘッド22およびヘッドカバー23のブリーザチャンバ結合面22a,23aを超え、第2開口部36bを貫通して動弁室24の内部に延びている。第2ドレーン通路41dは比較的に長いため、その先端は使用されていないジャーナル支持部22b,23cを超えて動弁室24の奥部に達している。第2ドレーン通路41dの先端には、ブリーザチャンバ30側から動弁室24側へのオイルの通過を許容するチェックバルブ(不図示)が設けられる。
第1、第2開口部36a,36bと、吸気カムシャフト33および排気カムシャフト34のジャーナル支持部22b,23cとの間には、オイルが滞留可能な凹部22cが形成されるが、この凹部22cはジャーナル支持部22b,23cの下方を貫通するオイル排出孔22dを介して動弁室24の奥部に連通する。
次に、上記構成を備えたブリーザチャンバ30の作用を説明する。
スロットルバルブ21が高開度になってクランクケース内のブローバイガスがエアフロチューブ20側に逆流するとき、動弁室24のブローバイガスはブリーザチャンバ30のケース41の開口部41bからチャンバAに流入し、仕切り部材43の隔壁部43aに衝突して直角に向きを変え、仕切り部材43の第1連通孔43bからチャンバBに流入する。このとき、チャンバAにおいてブローバイガスから分離されたオイルは、チャンバAの底壁を構成する隔壁41hのオイル孔41mを通過し、その下方のチャンバCからケース41の第1ドレーン通路41cを介して動弁室24に排出される。
チャンバBのブローバイガスから分離されたオイルは、仕切り部材43の膨出部43dの底部に設けた第3連通孔43eからチャンバCに流入し、チャンバAで分離されたオイルと共にケース41の第1ドレーン通路41cから動弁室24に排出される。
チャンバBのブローバイガスは仕切り部材43の第2連通孔43cを通過してオイル分離部材44に供給され、オイル分離部材44のオリフィス46aを通過して流速が増したブローバイガスが衝突壁46bに衝突することでオイルが分離される。このとき、ブローバイガスがオリフィス46aおよび衝突壁46b間に配置したフィルター47を通過することで、フィルター47がオイルを捕捉して分離が促進される。オイル分離部材44で分離されたオイルは、第2チャンバDの底部からケース41に設けた第2ドレーン通路41dを介して動弁室24に排出される。
またオイル分離部材44から第2チャンバDに流入したブローバイガスは、その出口であるカバー42の継ぎ手42bに達するまでラビリンス状の通路を流れ、その間にブローバイガスから分離されたオイルは隔壁41jのオイル孔41n,41oを通過して下方に落下し、第2ドレーン通路41dを介して動弁室24に排出される。
第1チャンバA,B,Cに形成されるラビリンス状の流路は、チャンバA、チャンバB、チャンバC、第1連通孔43b、第2連通孔42cおよび第3連通孔43eで構成されており、その流路断面積の変化量が大きいため、ブローバイガスの流速を増加・減少させて慣性力によるオイルの効率的な分離を図ることができる。一方、第2チャンバDに形成されるラビリンス状の流路の流路断面積の変化量は小さいため、第2チャンバDにおけるブローバイガスの流速の変化を抑制することでオイルを重力で落下させて分離を促進し、ブローバイガスと共にオイルが吹き飛ばされてエアフロチューブ20側に浸入するのを防
止することができる。
また第1チャンバA、B,Cの容積に対して第2チャンバDの容積は大きく設定されているため、オイル分離部材44を通過して第2チャンバDに流入したブローバイガスの流速が急激に低下することで、第2チャンバDにおいて重力によるオイルの分離が促進され、しかも第2チャンバD内のブローバイガスの流速が低下することでオイルがエアフロチューブ20側に一層浸入し難くなる。
ブリーザチャンバでブローバイガスからオイルを分離するとき、ブローバイガスの衝突壁への衝突によるオイル分離や、ブローバイガスの旋回運動によるオイル分離だけでは不充分であり、オイル分離手段を多段階に組み合わせて確実なオイル分離を図る必要があるが、本実施の形態では、ブリーザチャンバ30の第1チャンバA,B,C、オイル分離部材44および第2チャンバDで3段階にオイルを分離するので、確実なオイル分離が可能となる。これにより、オイルを含むブローバイガスがエアフロチューブ20側に供給されるのを防止し、エアフロチューブ20の下流側に位置するスロットルバルブ21にオイルが付着して汚れや作動不良原因となるのを防止することができる。
そしてブリーザチャンバ30は、隔壁41h〜41kを有するケース41と、隔壁42c〜42eを有するカバー42と、第1連通孔43b、第2連通孔43cおよび第3連通孔43eを有する仕切り部材43とを結合して構成されるので、容積の異なる複数のチャンバを有するブリーザチャンバ30を容易かつコンパクトに形成することができる。
さて、ブリーザチャンバ30のケース41が筒状の第1、第2ドレーン通路41c,41dを備えておらず、シリンダヘッド22およびヘッドカバー23のブリーザチャンバ結合面22a,23aの第1、第2開口部36a,36b上に単なるドレーン孔が開口していると仮定すると、そのドレーン孔から流出したオイルがシリンダヘッド22およびヘッドカバー23のブリーザチャンバ結合面22a,23aとブリーザチャンバ30のケース41との合わせ面から外部に漏れてしまう可能性がある。
しかしながら、本実施の形態によれば、ブリーザチャンバ30のケース41に設けられた第1ドレーン通路41cおよび第2ドレーン通路41dの先端は、シリンダヘッド22およびヘッドカバー23のブリーザチャンバ結合面22a,23aを超えて動弁室24側に突出するので、ブリーザチャンバ30においてブローバイガスから分離されたオイルを動弁室24に確実に排出してブリーザチャンバ結合面22a,23aから外部に漏れ出すのを防止することができる。
第1ドレーン通路41cおよび第2ドレーン通路41dの先端から出たオイル、特に比較的に短い第1ドレーン通路41cから出たオイルはジャーナル支持部22bの手前側の凹部22cに溜まってブリーザチャンバ結合面22a,23aに流入し易くなるが、この凹部22cに溜まったオイルはジャーナル支持部22b,23cの下方を貫通するオイル排出孔22d(図7参照)を介して動弁室24の奥部に排出されるため、ブリーザチャンバ結合面22a,23aからのオイルの漏出を一層確実に防止することができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、実施の形態ではブリーザチャンバ30が第1ドレーン通路41cおよび第2ドレーン通路41dを備えているが、ドレーン通路の数は任意である。
また実施の形態ではブリーザチャンバ30のケース41およびカバー42の両方が隔壁
41h〜41k,42c〜42eを備えているが、隔壁はケース41およびカバー42の少なくとも一方が備えていれば良い。
12 バンク
20 エアフロチューブ(吸気通路)
21 スロットルバルブ
22 シリンダヘッド
22a ブリーザチャンバ結合面
23 ヘッドカバー
23a ブリーザチャンバ結合面
24 動弁室
30 ブリーザチャンバ
33 吸気カムシャフト(カムシャフト)
34 排気カムシャフト(カムシャフト)
36a 第1開口部(開口部)
36b 第2開口部(開口部)
41 ケース
41c 第1ドレーン通路(ドレーン通路)
41d 第2ドレーン通路(ドレーン通路)
41h〜41k 隔壁
42 カバー
42c〜42e 隔壁
43 仕切り部材
43b,43c,43e 第1〜第3連通孔(連通孔)
44 オイル分離部材
46a オリフィス
46b 衝突壁
47 フィルター
A,B,C 第1チャンバ(チャンバ)
D 第2チャンバ

Claims (8)

  1. 動弁室(24)から供給されるブローバイガスからオイルを除去し、オイルを除去したブローバイガスをスロットルバルブ(21)の上流側の吸気通路(20)に排出するブリーザチャンバ(30)を備えるエンジンのブリーザ構造であって、
    前記ブリーザチャンバ(30)には、少なくとも一方の内面に隔壁(41h〜41k,42c〜42e)を突設したケース(41)およびカバー(42)を結合することで、前記ケース(41)およびカバー(42)の内部に前記動弁室(24)に連通する第1チャンバ(A,B,C)と前記吸気通路(20)に連通する第2チャンバ(D)とが区画され、前記第1チャンバ(A,B,C)は、前記ケース(41)およびカバー(42)間に連通孔(43b,43c,43e)を有する仕切り部材(43)を挟むことで複数のチャンバ(A,B,C)に区画され、前記第1チャンバ(A,B,C)および前記第2チャンバ(D)はオイル分離部材(44)を介して相互に連通し、前記第1チャンバ(A,B,C)の容積に対し、前記第2チャンバ(D)の容積が大きいことを特徴とするエンジンのブリーザ構造。
  2. 前記第1チャンバ(A,B,C)に形成されるラビリンス状の流路の流路断面積の変化量は、前記第2チャンバ(D)に形成されるラビリンス状の流路の流路断面積の変化量よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載のエンジンのブリーザ構造。
  3. 記ケース(41)および前記仕切り部材(43)間に形成されるチャンバ(A,C)の流路断面積に対し、前記仕切り部材(43)および前記カバー(42)間に形成されるチャンバ(B)の流路断面積は大きいことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のエンジンのブリーザ構造。
  4. V型エンジンの両バンク(12)に共用されるシリンダヘッド(22)と、前記シリンダヘッド(22)に結合されるヘッドカバー(23)との間にカムシャフト(33,34)を収納する前記動弁室(24)を区画し、前記シリンダヘッド(22)および前記ヘッドカバー(23)に跨がるブリーザチャンバ結合面(22a,23a)に前記カムシャフト(33,34)の軸端が臨む開口部(36a,36b)を形成し、前記ブリーザチャンバ(30)を前記ブリーザチャンバ結合面(22a,23a)に結合し、前記ブリーザチャンバ(30)は前記動弁室(24)に連通する筒状のドレーン通路(41c,41d)を備え、前記ドレーン通路(41c,41d)の先端は前記ブリーザチャンバ結合面(22a,23a)を超えて前記開口部(36a,36b)から前記動弁室(24)側に突出することを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のエンジンのブリーザ構造。
  5. 前記ブリーザチャンバ結合面(22a,23a)には吸気カムシャフト(33)および排気カムシャフト(34)の軸端に臨む第1開口部(36a)および第2開口部(36b)が形成され、前記第1チャンバ(A,B,C)の第1ドレーン通路(41c)は前記第1開口部(36a)から前記動弁室(24)側に突出し、前記第2チャンバ(D)の第2ドレーン通路(41d)は前記第2開口部(36b)から前記動弁室(24)側に突出することを特徴とする、請求項4に記載のエンジンのブリーザ構造。
  6. 前記オイル分離部材(44)は、ブローバイガスが通過する多数のオリフィス(46a)と、前記オリフィス(46a)を通過したブローバイガスが衝突する衝突壁(46b)とを備えることを特徴とする、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載のエンジンのブリーザ構造。
  7. 前記オイル分離部材(44)は、前記オリフィス(46a)および前記衝突壁(46b)間に配置されたフィルター(47)を備えることを特徴とする、請求項6に記載のエン
    ジンのブリーザ構造。
  8. 前記ブリーザチャンバ(30)は、内面に隔壁(41h〜41k)を突設したケース(41)と内面に隔壁(42c〜42e)を突設したカバー(42)とを結合して構成されることを特徴とする、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載のエンジンのブリーザ構造。
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