以下、図面を参照しながら、本開示の一実施形態に係る電力伝送回路の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本開示の一側面に係る電力伝送回路1を含む高電圧電源10のブロック図である。高電圧電源10は、数百kVを入力電圧とするような装置に適用可能であり、例えば、X線管及び電子線照射装置に適用される。本実施形態では、高電圧電源10がX線管XLに適用されるものとして説明する。高電圧電源10は、電力伝送回路1と、高電圧生成回路3と、検出回路4と、カソード用電源51と、フィラメント用電源52と、グリッド用電源53と、を備えている。X線管XLは、カソード電極CEと、フィラメントFEと、グリッド電極GEとを含んでいる。フィラメントFEは、通電により発熱する。カソード電極CEは、フィラメントFEによって加熱されて電子を放出する。グリッド電極GEは、カソード電極CEから放出される電子を、カソード電極CEとの間に電界を形成することにより、カソード電極CEから放出される電子の量を調整する。
高電圧生成回路3は、X線管XLに供給するための高電圧を生成するための回路である。高電圧生成回路3は、インバータ31と、出力トランス32と、コッククロフトウォルトン回路33と、を有している。インバータ31は、複数のトランジスタによって構成された回路である。インバータ31は、ブリッジ回路であってもよいし、プッシュプル回路であってもよい。インバータ31は、ブリッジ回路の場合、例えば、ハイサイドのFETのソース端子とローサイドのFETのドレイン端子とが互いに接続されたハーフブリッジ回路である。インバータ31は、入力された直流電圧を交流電圧に変換する。出力トランス32は、一次巻線32a及び二次巻線32bを含んでいる。一次巻線32aは、インバータ31に接続されている。出力トランス32は、インバータ31において生成された交流電圧を一次巻線32a及び二次巻線32bの巻線比に応じて昇圧する機能部である。コッククロフトウォルトン回路33の入力は、二次巻線32bに接続されている。コッククロフトウォルトン回路33の出力は、X線管XLに接続されている。コッククロフトウォルトン回路33は、出力トランス32から出力された交流電圧を昇圧及び整流することで、直流電圧を生成する。コッククロフトウォルトン回路33は、出力トランス32から出力された交流電圧の大きさを数百kVにまで昇圧整流し、X線管XLに供給する。
高電圧生成回路3において、インバータ31及び出力トランス32の一次巻線32aは、第1の基準電位G1を基準電位とする低電位側領域6に配置されている。例えば、低電位側領域6は、第1の基準電位G1を基準電位とする配線基板を含み、インバータ31及び出力トランス32は、当該配線基板上に実装されている。第1の基準電位G1は、例えば0Vである。一方で、コッククロフトウォルトン回路33の出力は、X線管XLに接続されると共に、第2の基準電位G2を基準電位とする領域である高電位側領域7の該基準電位を規定している。第2の基準電位G2は、例えば数百kVである。高電位側領域7は、例えば、第2の基準電位G2を基準電位とする配線基板を含む。高電圧電源10では、低電位側領域6と高電位側領域7との間の絶縁耐圧を確保するうえで、高電圧電源10の一部を絶縁油に含侵する手段、又は高電圧電源10の一部を絶縁樹脂でコーティング又はモールドする手段が採用され得る。
検出回路4は、X線管XLに供給される電流を検出し、検出結果に基づいた指示電圧Vaを電力伝送回路1に向けて出力する回路である。検出回路4は、検出抵抗R1と、エラーアンプ45と、を有している。エラーアンプ45は、一対の入力端子45a,45b及び出力端子45cを含んでいる。一方の入力端子45aは、二次巻線32bとコッククロフトウォルトン回路33の入力との間のノードに接続されている。検出抵抗R1は、一方の入力端子45aと第1の基準電位G1との間に接続されている。検出抵抗R1は、コッククロフトウォルトン回路33に供給される電流の大きさを検出し、検出電圧Vbに変換する。つまり、検出回路4は、コッククロフトウォルトン回路33に供給される電流を検出することによって、X線管XLに供給される電流の大きさを検出している。一方の入力端子45aには、検出電圧Vbが入力される。他方の入力端子45bには、外部から入力される設定電圧Vcが入力される。設定電圧Vcは、X線管XLに供給される電流の設定値を表す電圧である。エラーアンプ45は、検出電圧Vbと設定電圧Vcとの差分を増幅した指示電圧Vaを電力伝送回路1に出力する。
電力伝送回路1は、低電位側領域6から、高電位側領域7に配置されたカソード用電源51、フィラメント用電源52、及びグリッド用電源53に電力を伝送すると共に、カソード用電源51、フィラメント用電源52、及びグリッド用電源53の出力を制御するための指示信号を伝送する回路である。電力伝送回路1は、ADコンバータ11と、低電圧側制御回路12と、低電圧側インバータ回路13と、第1のトランス14と、第2のトランス15と、整流回路16と、波形成形回路17と、高電圧側制御回路18と、DAコンバータ19と、を有している。ADコンバータ11、低電圧側制御回路12、低電圧側インバータ回路13、及び第1のトランス14の一次巻線14aは、低電位側領域6に配置されている。第1のトランス14の二次巻線14b、第2のトランス15、整流回路16、波形成形回路17、高電圧側制御回路18、及びDAコンバータ19は、高電位側領域7に配置されている。
電力伝送回路1では、低電位側領域6と高電位側領域7との間において電力伝送及び第1の信号伝送が行われる。電力伝送回路1では、低電圧側制御回路12をマスター側とし、高電圧側制御回路18をスレーブ側とした例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)通信によって、第1の信号伝送が行われる。図2は、電力伝送及び第1の信号伝送によって伝送される伝送波形の一例を示す図である。伝送波形D1は、第1の期間T1及び第2の期間T2を含んでいる。低電圧側制御回路12は、第1の期間T1において、電力伝送を行う。低電圧側制御回路12は、電力伝送では、低電圧側インバータ回路13を駆動して生成した高電圧側電圧V1を、第1のトランス14、及び第2のトランス15を経て、整流回路16に伝送する。高電圧側電圧V1は、LowレベルとHiレベルとの間で電圧の大きさが周期的に変化する高周波であり、高電圧側電圧V1の周波数は、例えば、100kHzである。低電圧側制御回路12は、第1の期間T1とは別の第2の期間T2において、第1の信号伝送を行う。低電圧側制御回路12は、第1の信号伝送では、低電圧側インバータ回路13、第1のトランス14、及び第2のトランス15を経て、第1の信号S1を伝送する。第1の信号S1は、高電圧側制御回路18がカソード用電源51、フィラメント用電源52、及びグリッド用電源53の出力を制御するための信号である。第1の信号S1は、LowレベルとHiレベルとの間で電圧の大きさが伝送波形に応じて変化する高周波であり、第1の信号S1の周波数は、高電圧側電圧V1の周波数よりも大きく、例えば、1MHzである。電力伝送にて伝送される高電圧側電圧V1、及び第1の信号伝送にて伝送される第1の信号S1は、それぞれ時間的に分離された状態で、伝送される。言い換えれば、電力伝送回路1では、高電圧側電圧V1及び第1の信号S1は、時分割多重化(TDM:time division multiplexing)方式にて伝送される。
電力伝送回路1のうち、低電圧側制御回路12、低電圧側インバータ回路13、第1のトランス14、第2のトランス15、及び整流回路16は、電力伝送経路8を構成している。まず、電力伝送経路8の構成について説明する。
低電圧側制御回路12の出力端子12bは、低電圧側インバータ回路13の入力端に接続されている。低電圧側制御回路12は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)である。低電圧側インバータ回路13は、複数のトランジスタによって構成されたブリッジ回路であり、例えば、ハーフブリッジ回路である。低電圧側制御回路12は、低電圧側インバータ回路13を例えば100kHzの周波数で駆動して高電圧側電圧V1を生成する。
第1のトランス14は、一次巻線14a及び二次巻線14bを含んでいる。一次巻線14aは、低電位側領域6に配置されていることから、低電圧側巻線と言い換えることができる。二次巻線14bは、高電位側領域7に配置されていることから、高電圧側巻線と言い換えることができる。第1のトランス14は、低電位側領域6と高電位側領域7とを絶縁する絶縁トランスである。一次巻線14aは、低電圧側インバータ回路13の出力端に接続されている。一次巻線14aの一端と低電圧側インバータ回路13の出力との間には、直列共振用コンデンサCsが接続されている。
図3の(a)は、一次巻線14aと低電圧側インバータ回路13との間に存在する寄生成分を概略的に図示した回路図である。図3の(a)に示されるように、第1のトランス14の漏れインダクタンスLaは、直列共振用コンデンサCsと直列に接続されるように存在している。第1のトランス14の励磁インダクタンスLpは、一次巻線14aと並列に接続されるように存在している。直列共振用コンデンサCs、漏れインダクタンスLa、及び励磁インダクタンスLpは、直列共振回路RC(LLC共振回路)を構成している。図3の(a)では、励磁インダクタンスLpに並列に負荷抵抗RLが接続されている。
第1のトランス14は、疎結合トランスである。疎結合トランスは、密結合トランスに比べ、一次巻線14aと二次巻線14bとの間の結合係数が低いため、漏れインダクタンスLaの大きさが大きくなる。直列共振回路RCでは、2つの共振周波数が規定される。共振周波数f0は、励磁インダクタンスLp、漏れインダクタンスLa、及び直列共振用コンデンサCsによって規定される共振周波数である。共振周波数f1は、漏れインダクタンスLa及び直列共振用コンデンサCsによって規定される共振周波数である。直列共振回路RCの共振周波数f1は、式(1)で表される。
f1=1/2×π×SQRT(La×Cs)…(1)
式(1)において、SQRTは平方根を示す。式(1)に示されるように、共振周波数f1においては、励磁インダクタンスLpに比べて、漏れインダクタンスLaが支配的となるので、共振周波数f1は直列共振用コンデンサCs及び漏れインダクタンスLaに基づいて決定される。共振周波数f1においては、共振周波数f1における励磁インダクタンスLpのリアクタンス値に対して負荷抵抗RLの大きさが十分に小さい領域となり、励磁インダクタンスLpに比べて、漏れインダクタンスLaが支配的となる。この際に、負荷抵抗RLの大きさを式(2)に基づいて設定する。
2πf1Lp>>RL…(2)
式(2)が成立する場合に、直列共振用コンデンサCsと励磁インダクタンスLpとの間に直列共振が成立し、高効率な電力伝送が行われる。
図3の(b)は、直列共振回路RCの周波数特性を示す図である。図3の(b)の横軸は駆動周波数(Hz)を表し、縦軸は直列共振回路RCの出力電圧の大きさを相対出力で表している。本実施形態では、直列共振回路RCの共振周波数f1が高電圧側電圧V1の周波数と一致している。図3の(b)に示される周波数特性に基づいて、第1の信号S1の出力の大きさが高電圧側電圧V1の出力の大きさの例えば1/10になるように、第1の信号S1の周波数が設定される。
再び図1を参照する。第2のトランス15は、一次巻線15a、第1の二次巻線15b、及び第2の二次巻線15cを含んでいる。一次巻線15aは、第1のトランス14の二次巻線14bに接続されている。第1の二次巻線15bは、整流回路16の入力端に接続されている。第2の二次巻線15cは、波形成形回路17の入力端に接続されている。第2のトランス15は、第1のトランス14と整流回路16及び高電圧側制御回路18との間に不測の共通インピーダンスが形成されることを抑制する。電力伝送では、高電圧側電圧V1は、一次巻線15aから第1の二次巻線15bに伝送され、整流回路16に伝送される。
整流回路16は、第2のトランス15から伝送された高電圧側電圧V1から直流電圧である電源電圧Vccを生成する。整流回路16は、例えば、整流ダイオードと、平滑コンデンサとを含んでいる。高電圧側電圧V1は、整流ダイオードにおいて整流され、平滑コンデンサにおいて平滑化されることによって、電源電圧Vccに変換される。電源電圧Vccは、高電位側領域7上に配置された素子(例えば、カソード用電源51、フィラメント用電源52、及びグリッド用電源53、及び高電圧側制御回路18)を駆動するための電源電圧となる。
続いて、第1の信号伝送経路9の構成について、電力伝送経路8と異なる点に関して説明する。電力伝送回路1のうち、ADコンバータ11、低電圧側制御回路12、低電圧側インバータ回路13、第1のトランス14、第2のトランス15、波形成形回路17、高電圧側制御回路18、及びDAコンバータ19は、第1の信号伝送経路9を構成している。
ADコンバータ11の入力は、エラーアンプ45の出力端子45cに接続されている。ADコンバータ11は、指示電圧Vaをアナログ信号からデジタル信号に変換する。
低電圧側制御回路12の入力端子12aは、ADコンバータ11の出力端子に接続されている。低電圧側制御回路12は、ADコンバータ11から指示電圧Vaのデジタル信号が入力されると、第1の信号S1を生成する。低電圧側制御回路12は、低電圧側インバータ回路13を、電力伝送時とは異なる周波数(例えば1MHz)で駆動して第1の信号S1を第1のトランス14に伝送する。そして、第1の信号S1は、第1のトランス14の一次巻線14aから二次巻線14bに伝送されることにより、低電位側領域6から高電位側領域7に伝送される。つまり、高電圧側電圧V1の低電位側領域6から高電位側領域7への伝送(電力伝送)と、第1の信号S1の低電位側領域6から高電位側領域7への伝送(第1の信号伝送)とは、共通の第1のトランス14を介して行われる。
第1の信号S1は、例えば、一周期を一つの値としている。その値のビット数は、例えば、8ビットであり、00000000~11111111の間において大きさが変化する。例えば、第1の信号S1におけるHiレベルは、‘1’を表し、Lowレベルは‘0’を表す。低電圧側制御回路12は、指示電圧Vaの大きさに基づいて、第1の信号S1の各値を0000~1111の間において設定する。
第1のトランス14の二次巻線14bと第2のトランス15の一次巻線15aとの間において、一次巻線15aと並列に終端抵抗R2が設けられる。終端抵抗R2は、第1の信号S1の反射を抑制するために設けられている。第1の信号伝送では、第1の信号S1は、終端抵抗R2において反射が抑制されたうえで、一次巻線15aから第2の二次巻線15cに伝送され、波形成形回路17に伝送される。更に、終端抵抗R2のみでなく、終端抵抗R2とコンデンサとを直列に接続したCR回路が一次巻線15aと並列に設けられてもよい。一次巻線15aと並列にCR回路が設けられた場合、第1の信号S1の波形品質を維持しつつ、第1の信号の大きさが変化する際の交流的な終端を実現し得る。
波形成形回路17の入力端は、第2のトランス15の第2の二次巻線15cに接続されている。波形成形回路17は、第1の信号S1のひずみを改善したうえで、高電圧側制御回路18に第1の信号S1を伝送する。波形成形回路17は、例えば、信号伝送帯域よりも高いカットオフ周波数を具備するローパスフィルタであり、第1の信号S1の伝送信号に寄与しない高調波成分を除去する。波形成形回路17の入力端は、整流回路16にて生成された電源電圧Vccに接続されている。第2の二次巻線15cに発生する電圧の振幅は、整流回路16の負荷状況により変化する。波形成形回路17は、電源電圧Vccを基準とした差動構成を入力端の構成としている。これにより、波形成形回路17は、負荷状況によらず、安定して第1の信号S1を受信する。
高電圧側制御回路18の第1の入力端子18aは、波形成形回路17の出力端に接続されている。高電圧側制御回路18は、ひずみが改善された第1の信号S1に基づいて、カソード用電源51を制御するためのカソード制御信号Sc、フィラメント用電源52を制御するためのフィラメント制御信号Sf、及びグリッド用電源53を制御するためのグリッド制御信号Sgを生成する。カソード制御信号Sc、フィラメント制御信号Sf、及びグリッド制御信号Sgは、例えば、各電源51~53の入力電圧である。高電圧側制御回路18は、各電源51~53の入力電圧を制御することで、各電源51~53から出力される出力電圧の値を制御してもよい。高電圧側制御回路18は、第1の信号S1の各値に基づいて、カソード制御信号Sc、フィラメント制御信号Sf、及びグリッド制御信号Sgを生成する。言い換えれば、高電圧側制御回路18は、第1の信号S1を、カソード制御信号Sc、フィラメント制御信号Sf、及びグリッド制御信号Sgにシリアル/パラレル変換する。例えば、第1の信号S1の第1の値はカソード制御信号Scに対応し、第2の値はフィラメント制御信号Sfに対応し、第3の値はグリッド制御信号Sgに対応してもよい。カソード制御信号Sc、フィラメント制御信号Sf、及びグリッド制御信号Sgの大きさは、第1の信号S1の各値と紐づいたルックアップテーブルに基づいて設定されてもよい。
DAコンバータ19の入力端子19aは、高電圧側制御回路18の第1の出力端子18bに接続されている。DAコンバータ19は、第1の出力端子19bと、第2の出力端子19cと、第3の出力端子19dとを含んでいる。第1の出力端子19bは、カソード用電源51の入力端子51aに接続されている。第2の出力端子19cは、フィラメント用電源52の入力端子52aに接続されている。第3の出力端子19dは、グリッド用電源53の入力端子53aに接続されている。DAコンバータ19は、高電圧側制御回路18から入力されたカソード制御信号Scをアナログ信号に変換し、第1の出力端子19bからカソード用電源51に出力する。DAコンバータ19は、高電圧側制御回路18から入力されたフィラメント制御信号Sfをアナログ信号に変換し、第2の出力端子19cからフィラメント用電源52に出力する。DAコンバータ19は、高電圧側制御回路18から入力されたグリッド制御信号Sgをアナログ信号に変換し、第3の出力端子19dからグリッド用電源53に出力する。
カソード用電源51の第1の出力端子51bは、X線管XLのカソード電極CEに接続されている。カソード用電源51は、高電圧側制御回路18によって制御された出力電圧をカソード電極CEに供給する。フィラメント用電源52の第1の出力端子52bは、X線管XLのフィラメントFEに接続されている。フィラメント用電源52は、高電圧側制御回路18によって制御された出力電圧をフィラメントFEに供給する。グリッド用電源53の第1の出力端子53bは、X線管XLのグリッド電極GEに接続されている。グリッド用電源53は、高電圧側制御回路18によって制御された出力電圧をグリッド電極GEに供給する。
再び図2を参照する。低電圧側制御回路12から高電圧側制御回路18に向けて伝送される伝送波形D1は、第1の期間T1と第2の期間T2との間に、第3の期間T3を含んでいる。伝送波形D1では、第2の期間T2の後に、再び第1の期間T1が続いている。第3の期間T3では、電力伝送によって電力伝送経路8に残存した電力を消費するための期間である。これにより、電力伝送経路8上のリンギング成分が除去される。第3の期間T3は、言い換えれば、安定期間である。第3の期間T3での電力の消費は、例えば、ダミー抵抗によって行われる。第2のトランス15の第1の二次巻線15bと第2の基準電位G2との間に、ダミー抵抗及びスイッチ素子が直列に接続された回路が設けられ、第1の期間T1の終了後に、低電圧側制御回路12又は高電圧側制御回路18からスイッチ素子をオンする信号が送信されてもよい。
或いは、第3の期間T3での電力の消費は、例えば、低電圧側インバータ回路13において短絡回路網を形成することで実施されてもよい。図4は、低電圧側インバータ回路13の動作の一例を説明するための図である。図4に示されるように、低電圧側インバータ回路13は、トランジスタTR1~トランジスタTR4によるフルブリッジ回路によって構成されていてもよい。トランジスタTR1~トランジスタTR4のそれぞれは、第1の電流端子と第2の電流端子とを含んでいる。図4の(a)は、フルブリッジ回路の場合の第1の期間T1における低電圧側インバータ回路13の動作の一例を示す。第1の期間T1では、トランジスタTR1及びトランジスタTR4が同時にONする期間と、トランジスタTR2及びトランジスタTR3が同時にONする期間とが交互に繰り返される。トランジスタTR1及びトランジスタTR4が同時にONする期間では、インバータ電流IF1は、トランジスタTR1の第2の電流端子TR1bから一次巻線14aを経由して、トランジスタTR4の第1の電流端子TR4aに流れる。そして、インバータ電流IF1は、トランジスタTR4の第2の電流端子TR4bから第1の基準電位G1に流れる。トランジスタTR2及びトランジスタTR3が同時にONする期間では、インバータ電流IF2は、トランジスタTR3の第2の電流端子TR3bから一次巻線14aを経由して、トランジスタTR2の第1の電流端子TR2aに流れる。そして、インバータ電流IF2は、トランジスタTR2の第2の電流端子TR2bから第1の基準電位G1に流れる。
図4の(b)は、フルブリッジ回路の場合の第3の期間T3における低電圧側インバータ回路13の動作の一例を示す。第3の期間T3では、例えば、トランジスタTR2及びトランジスタTR4が同時にONすることで、短絡回路網が形成される。短絡回路網におけるインバータ電流IF3は、トランジスタTR2の第2の電流端子TR2bから第1の基準電位G1を経由してトランジスタTR4の第2の電流端子TR4bに流れる。インバータ電流IF3は、トランジスタTR4の第1の電流端子TR4aから一次巻線14aを経由してトランジスタTR2の第1の電流端子TR2aに流れる。このような短絡回路網が形成されることにより、第1の期間T1で蓄積された共振エネルギーを消費させ易くなる。これにより、第2の期間T2開始時の波形の乱れを抑制し、安定した通信を実現できる。
図5に示されるように、低電圧側インバータ回路13は、トランジスタTR1~トランジスタTR4によるハーフブリッジ回路によって構成されていてもよい。トランジスタTR1~トランジスタTR4のそれぞれは、第1の電流端子と第2の電流端子とを含んでいる。図5の(a)は、ハーフブリッジ回路の場合の第1の期間T1及び第2の期間T2における低電圧側インバータ回路13の動作の一例を示す。第1の期間T1では、電力伝送用として、トランジスタTR1のONする期間とトランジスタTR2のONする期間とが交互に繰り返される。第2の期間T2では、信号伝送用として、トランジスタTR3のONする期間とトランジスタTR4のONする期間とが交互に繰り返される。トランジスタTR1のONする期間とトランジスタTR2のONする期間とが交互に繰り返される期間では、インバータ電流IF1は、トランジスタTR1の第2の電流端子TR1bから一次巻線14aを経由して、第1の基準電位G1に流れる。トランジスタTR3のONする期間とトランジスタTR4のONする期間とが交互に繰り返される期間では、インバータ電流IF2は、トランジスタTR3の第2の電流端子TR3bから一次巻線14aを経由して、第1の基準電位G1に流れる。なお、トランジスタTR3の第2の電流端子TR3bと一次巻線14aとの間には、ダンピング抵抗DR1が接続されていてもよい。ダンピング抵抗DR1が接続されることにより、第1の信号S1の波形品質を維持しつつ、高周波成分の低減に繋がり、ノイズ抑制に寄与し得る。
図5の(b)は、ハーフブリッジ回路の場合の第3の期間T3における低電圧側インバータ回路13の動作の一例を示す。第3の期間T3では、例えば、トランジスタTR2及びトランジスタTR4がONすることで、ダンピング抵抗DR1を含んだ短絡回路網が形成される。短絡回路網におけるインバータ電流IF3は、トランジスタTR4の第2の電流端子TR4bから第1の基準電位G1に流れる。このような電力消費素子であるダンピング抵抗DR1を含んだ短絡回路網が形成されることにより、第1の期間T1で蓄積された共振エネルギーを消費させ易くなる。これにより、第2の期間T2開始時の波形の乱れを抑制し、安定した通信を実現できる。
低電圧側制御回路12が伝送波形D1を伝送することにより、第1の期間T1における電力伝送と、第3の期間T3における電力消費と、第2の期間T2における第1の信号伝送とが、第1の期間T1、第3の期間T3、及び第2の期間T2の順に繰り返し行われる。マスター側である低電圧側制御回路12及びスレーブ側である高電圧側制御回路18は、第1の期間T1、第2の期間T2、及び第3の期間T3のそれぞれと同期する機能を有している。同期機能は、例えば、第1の期間T1、第2の期間T2、及び第3の期間T3のそれぞれの開始を、低電圧側制御回路12及び高電圧側制御回路18に含まれるカウンタによって検出する機能である。
低電圧側制御回路12は、外部からの入力に応じて、第1のモードと第2のモードとを切り替えてもよい。第1のモードでは、低電圧側制御回路12は、第1の期間T1における電力伝送と、第3の期間T3における電力消費と、第2の期間T2における第1の信号伝送とを、第1の期間T1、第3の期間T3、及び第2の期間T2の順に繰り返し行う。第2のモードでは、通常時においては、低電圧側制御回路12は、第1の期間T1における電力伝送のみを繰り返し行う。所定のタイミングにおいて、低電圧側制御回路12は、一度の伝送の間に一度だけ、第1の期間T1における電力伝送と、第3の期間T3における電力消費と、第2の期間T2における第1の信号伝送とを順に行う。
[作用及び効果]
電力伝送回路1では、低電圧側インバータ回路13にて生成された電圧を高電圧側電圧V1として第1のトランス14を介して伝送することにより、低電位側領域6から高電位側領域7に電力伝送を行うことができる。更に、第1の信号S1を電力伝送と共通の第1のトランス14を介して伝送することにより、低電位側領域6から高電位側領域7に第1の信号伝送を行うことができる。電力伝送は第1の期間T1において行われ、第1の信号伝送は第2の期間T2において行われる。つまり、電力伝送にて伝送される高電圧側電圧V1、及び第1の信号伝送にて伝送される第1の信号S1は、それぞれ時間的に分離された状態で、伝送される。これにより、高電圧側電圧V1と第1の信号S1とを分離するフィルタを設ける必要がないため、絶縁油及び絶縁樹脂中においても、高電圧側において高電圧側制御回路18が第1の信号S1を正確に受信することができる。さらに、第1の二次巻線15bに接続された整流回路16に高電圧側電圧V1を伝送することにより、高電圧側電圧V1を整流し、高電位側領域7に配置された電源51~53といった電源素子及び高電位側領域7において動作する回路群へ供給される電源電圧Vccを生成することができる。加えて、第1のトランス14と整流回路16及び高電圧側制御回路18との間に第2のトランス15を設けることにより、第1のトランス14と整流回路16及び高電圧側制御回路18との間に不測の共通インピーダンスが形成されることを抑制することができる。
第2の二次巻線15cと高電圧側制御回路18との間には、第1の信号S1のひずみを改善する波形成形回路17が接続されている。この場合、高電圧側制御回路18に第1の信号S1が入力される前に、第1の信号S1のひずみを改善することにより、高電圧側制御回路18が第1の信号S1をより正確に受信することができる。
第1のトランス14は、疎結合トランスである。この場合、例えば、密結合トランスに比べて、漏れインダクタンスLaが増える。これにより、共振周波数f0を規定するうえで、共振周波数における励磁インダクタンスのリアクタンス値に対して負荷抵抗値が十分に小さい領域において、励磁インダクタンスLpに比べて、漏れインダクタンスLaが支配的となり、共振周波数f0を規定し易くなる。よって、共振周波数f0に基づいて、電力伝送にて伝送される電圧の周波数、及び第1の信号S1の周波数を設定し易くすることができる。
[変形例]
以上、本開示の実施形態について説明してきたが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
[第1変形例]
図6は、第1変形例に係る高電圧電源10Aのブロック図である。実施形態に係る高電圧電源10と異なる点のみを説明する。高電圧電源10Aは、電力伝送回路1に代えて、電力伝送回路1Aを備えている。電力伝送回路1Aでは、電力伝送、及び第1の信号伝送に加え、高電圧側制御回路18から低電圧側制御回路12に向けて第2の信号伝送が行われる。電力伝送回路1Aは、電力伝送回路1の構成に加え、第2のDAコンバータ21と、第2の波形成形回路22と、第3のトランス23と、高電圧側インバータ回路24と、第2のADコンバータ25と、を有している。第2のDAコンバータ21、第2の波形成形回路22、及び第3のトランス23は、低電位側領域6に配置されている。高電圧側インバータ回路24、及び第2のADコンバータ25は、高電位側領域7に配置されている。電力伝送回路1Aにおいても、電力伝送回路1と同様に、第2のトランス15の一次巻線15aと並列に終端抵抗R2が設けられる。或いは、一次巻線15aと並列に、終端抵抗R2とコンデンサとを直列に接続したCR回路が設けられてもよい。
第2の信号伝送において伝送される第2の信号S2は、例えば、カソード用電源51、フィラメント用電源52、及びグリッド用電源53の出力電圧を検出した値のデジタル信号である。第2の信号S2の周波数は、高電圧側電圧V1の周波数よりも大きく、例えば、1MHzである。第2の信号S2は、第1の信号S1と同様に、例えば、一周期を一つの値としている。各値のビット数は、例えば、8ビットであり、00000000~11111111の間において大きさが変化する。低電圧側制御回路12は、第2の信号S2に基づいて低電圧側インバータ回路13の駆動とは別の動作を行う。例えば、カソード用電源51、フィラメント用電源52、及びグリッド用電源53の出力電圧を検出した値を第2のDAコンバータ21を介して外部に出力する。
第2の信号伝送を行う第2の信号伝送経路20の構成について、第1の信号伝送経路9と異なる点に関して説明する。電力伝送回路1Aのうち、第2のADコンバータ25、高電圧側制御回路18、高電圧側インバータ回路24、第1のトランス14、第3のトランス23、第2の波形成形回路22、低電圧側制御回路12、及び第2のDAコンバータ21は、第2の信号伝送経路20を構成している。
第2のADコンバータ25は、第1の入力端子25aと、第2の入力端子25bと、第3の入力端子25cとを含んでいる。第1の入力端子25aは、カソード用電源51の第2の出力端子51cに接続されている。第2の入力端子25bは、フィラメント用電源52の第2の出力端子52cに接続されている。第3の入力端子25cは、グリッド用電源53の第2の出力端子53cに接続されている。第2のADコンバータ25は、カソード用電源51の出力電圧をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を出力端子25dから高電圧側制御回路18に出力する。第2のADコンバータ25は、フィラメント用電源52の出力電圧をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を出力端子25dから高電圧側制御回路18に出力する。第2のADコンバータ25は、グリッド用電源53の出力電圧をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を出力端子25dから高電圧側制御回路18に出力する。
高電圧側制御回路18の第2の入力端子18cにカソード用電源51の出力電圧のデジタル信号、フィラメント用電源52の出力電圧のデジタル信号、及びグリッド用電源53の出力電圧のデジタル信号が入力される。高電圧側制御回路18は、各デジタル信号を時系列に並べることで第2の信号S2を生成する。言い換えれば、高電圧側制御回路18は、カソード用電源51の出力電圧、フィラメント用電源52の出力電圧、及びグリッド用電源53の出力電圧のデジタル信号を、第2の信号S2にパラレル/シリアル変換する。高電圧側制御回路18は、第2の信号S2を第2の出力端子18dから高電圧側インバータ回路24に出力する。
高電圧側インバータ回路24の入力端は、高電圧側制御回路18の第2の出力端子18dと接続されている。高電圧側インバータ回路24の出力端は、第1のトランス14の二次巻線14bに接続されている。高電圧側制御回路18は、高電圧側インバータ回路24を、例えば1MHzの周波数で駆動して、第2の信号S2を第1のトランス14に伝送する。なお、高電圧側インバータ回路24の出力端と二次巻線14bとの間には、直列共振用コンデンサCs2が接続されている。直列共振回路RCの共振周波数f1は、直列共振用コンデンサCs2の値を含めて算出され得る。直列共振用コンデンサCs2と高電圧側インバータ回路24との間にダンピング抵抗が接続されてもよい。ダンピング抵抗が接続されることにより、第2の信号S2の波形品質を維持しつつ、高周波成分の低減に繋がり、ノイズ抑制に寄与し得る。
第2の信号S2は、第1のトランス14の二次巻線14bから一次巻線14aに伝送されることにより、高電位側領域7から低電位側領域6に伝送される。つまり第2の信号伝送は、第1の信号伝送及び電力伝送と共通の第1のトランス14を介して行われる。
第3のトランス23の二次巻線23bは、第1のトランス14の一次巻線14aに接続されている。第3のトランス23の一次巻線23aは、第2の波形成形回路22の入力端に接続されている。第2の信号S2は、第3のトランス23の二次巻線23bから一次巻線23aに伝送される。第3のトランス23は、第1のトランス14と第2の波形成形回路22との間に不測の共通インピーダンスが形成されることを抑制することができる。
第2の波形成形回路22の入力端は、第3のトランス23の一次巻線23aに接続されている。第2の波形成形回路22は、第2の信号S2のひずみを改善したうえで、低電圧側制御回路12に第2の信号S2を伝送する。第2の波形成形回路22は、例えば、信号伝送帯域よりも高いカットオフ周波数を具備するローパスフィルタであり、第2の信号S2の伝送信号に寄与しない高調波成分を除去する。
低電圧側制御回路12の第2の入力端子12cは、第2の波形成形回路22の出力端に接続されている。低電圧側制御回路12は、ひずみが改善された第2の信号S2から、カソード用電源51の出力電圧のデジタル信号、フィラメント用電源52の出力電圧のデジタル信号、及びグリッド用電源53の出力電圧のデジタル信号を抽出し、第2のDAコンバータ21に出力する。
第2のDAコンバータ21の入力端子は、低電圧側制御回路12の第2の出力端子12dに接続されている。第2のDAコンバータ21は、カソード用電源51の出力電圧のデジタル信号、フィラメント用電源52の出力電圧のデジタル信号、及びグリッド用電源53の出力電圧のデジタル信号をそれぞれアナログ信号に変換し、高電圧電源10Aの外部に出力する。第2のDAコンバータ21の出力は、カソード用電源51の出力電圧のデジタル信号、フィラメント用電源52の出力電圧のデジタル信号、及びグリッド用電源53の出力電圧のデジタル信号の大きさによって変動する。このため、低電圧側制御回路12は、第2の信号S2によって第2のDAコンバータ21の出力を制御しているとみなすことができる。
図7は、電力伝送回路1Aにおいて伝送される伝送波形の一例を示す図である。電力伝送回路1Aでは、低電圧側制御回路12から高電圧側制御回路18に向けて第2の伝送波形D2が伝送される。第2の伝送波形D2は、第2の期間T2の後に、第4の期間T4を含んでいる。低電圧側制御回路12は、第2の伝送波形D2を高電圧側制御回路18に伝送する中で、第4の期間T4では、電力伝送及び信号伝送を行わない。電力伝送回路1Aでは、高電圧側制御回路18から低電圧側制御回路12に向けて第3の伝送波形D3が伝送される。第3の伝送波形D3は、第4の期間T4に含まれる。低電圧側制御回路12は、第2の伝送波形D2を高電圧側制御回路18に伝送することにより、第1の期間T1における電力伝送と、第3の期間T3における電力消費と、第2の期間T2における第1の信号伝送とを、第1の期間T1、第3の期間T3、及び第2の期間T2の順に行う。その後、高電圧側制御回路18は、第3の伝送波形D3を低電圧側制御回路12に伝送することにより、第4の期間T4における第2の信号伝送を行う。これにより、電力伝送回路1Aでは、第1の期間T1における電力伝送と、第3の期間T3における電力消費と、第2の期間T2における第1の信号伝送と、第4の期間T4における第2の信号伝送とが、第1の期間T1、第3の期間T3、第2の期間T2、及び第4の期間T4の順に繰り返し行われる。
電力伝送回路1Aにおいても、低電圧側制御回路12及び高電圧側制御回路18は、外部からの入力に応じて、第1のモードと第2のモードとを切り替えてもよい。第1のモードでは、低電圧側制御回路12及び高電圧側制御回路18は、第1の期間T1における電力伝送と、第3の期間T3における電力消費と、第2の期間T2における第1の信号伝送と、第4の期間T4における第2の信号伝送とを、第1の期間T1、第3の期間T3、第2の期間T2、及び第4の期間の順に繰り返し行う。第2のモードでは、通常時においては、低電圧側制御回路12は、第1の期間T1における電力伝送のみを繰り返し行う。所定のタイミングにおいて、低電圧側制御回路12及び高電圧側制御回路18は、一度の伝送の間に一度だけ、電力伝送と、電力消費と、第1の信号伝送と、第2の信号伝送とを、第1の期間T1、第3の期間T3、第2の期間T2、及び第4の期間T4の順に行う。
上述した電力伝送回路1Aでは、第2の信号S2を、電力伝送及び第1の信号伝送と共通の第1のトランス14を介して伝送することにより、高電位側領域7から低電位側領域6に第2の信号伝送を行うことができる。これにより、第1の信号伝送と併せて、低電位側領域6と高電位側領域7との間で双方向に信号伝送を行うことができる。更に、第2の信号S2は第4の期間T4において伝送されることから、高電圧側電圧V1及び第1の信号S1とは時間的に分離された状態で、伝送される。これにより、絶縁油及び絶縁樹脂中においても、低電位側領域6において低電圧側制御回路12が第2の信号S2を正確に受信することができる。
[第2変形例、第3変形例]
図8の(a)は、第2変形例に係る電力伝送回路1Bのブロック図である。なお、図8では、各電源51~53、X線管XL、高電圧生成回路3、及び検出回路4の記載を省略している。外部から電圧が入力される端子をVoltageInputとし、外部に電圧を出力する端子をVoltageOutputとして図示している。電力伝送回路1Bは、低電圧側インバータ回路13に代えて、第1の低電圧側インバータ回路13Aと、第2の低電圧側インバータ回路13Bと、を備える点において、電力伝送回路1と相違する。電力伝送回路1では、電力伝送及び第1の信号伝送において、共通の低電圧側インバータ回路13が駆動される。これに対して、電力伝送回路1Bでは、電力伝送において、第1の低電圧側インバータ回路13Aが例えば100kHzで駆動される。第1の信号伝送において、第2の低電圧側インバータ回路13Bが第1の低電圧側インバータ回路13Aの駆動周波数よりも大きい周波数、例えば1MHzで駆動される。図8の(a)の例では、第2の低電圧側インバータ回路13Bの出力端と第1のトランス14の一次巻線14aとの間にダンピング抵抗R3が設けられている。ダンピング抵抗R3によって、第1の信号S1の振動が抑制される。図8の(b)は、第3変形例に係る電力伝送回路1Cのブロック図である。電力伝送回路1Cは、低電圧側インバータ回路13に代えて、第1の低電圧側インバータ回路13Aと、第2の低電圧側インバータ回路13Bと、を備える点のみにおいて、電力伝送回路1Aと相違する。電力伝送回路1Cでは、電力伝送において、第1の低電圧側インバータ回路13Aが例えば100kHzで駆動される。第2の信号伝送において、第2の低電圧側インバータ回路13Bが、第1の低電圧側インバータ回路13Aの駆動周波数よりも大きい周波数、例えば1MHzで駆動される。電力伝送回路1B,1Cにおいても、電力伝送回路1と同様に、第2のトランス15の一次巻線と並列に終端抵抗R2が設けられてもよい。或いは、第2のトランス15の一次巻線と並列に、終端抵抗R2とコンデンサとを直列に接続したCR回路が設けられてもよい。また、電力伝送回路1Cにおいても、電力伝送回路1Aと同様に、直列共振用コンデンサCs2と高電圧側インバータ回路24との間にダンピング抵抗が接続されてもよい。
[第4変形例]
上述した実施形態及び変形例における電力伝送回路では、第1の信号伝送経路9及び第2の信号伝送経路20に加え、新たに信号伝送経路が追加されてもよい。図9は、第4変形例に係る電力伝送回路1Dのブロック図である。電力伝送回路1Dは、第3の信号伝送経路30及び第4の信号伝送経路40を備える点のみにおいて、電力伝送回路1Aと相違する。
第3の信号伝送経路30は、第2の低電圧側制御回路26と、発光素子27と、光ファイバ28と、フォトダイオード(光検出素子)29と、PD駆動回路44と、アンプ34とを備えている。第2の低電圧側制御回路26及び発光素子27は、低電位側領域6に設けられている。フォトダイオード29、PD駆動回路44及びアンプ34は、高電位側領域7に設けられている。
電力伝送回路1Dでは、第2のトランス15が、高電位側領域7において、フローティング領域である第2の高電位側領域71、及び第2の基準電位G2を基準電位とする第3の高電位側領域72を規定している。
第2の低電圧側制御回路26の入力端は、ADコンバータ11の出力端に接続されている。第2の低電圧側制御回路26は、第1の信号S1を、低電圧側制御回路12とは別に生成する。発光素子27は、第2の低電圧側制御回路26の出力端に接続されている。発光素子27は、第1の信号S1を光エネルギーに変換する。光ファイバ28の入力端は、発光素子27と光結合されている。光ファイバ28は、第1のトランス14と並列に配置されており、低電位側領域6と高電位側領域7との間を接続するように配置されている。光エネルギーに変換された第1の信号S1は、光ファイバ28によって低電位側領域6から高電位側領域7に伝送される。
フォトダイオード29は、第2の高電位側領域71において、光ファイバ28の出力端と光結合されている。光ファイバ28によって伝送された第1の信号S1は、第3の高電位側領域72において、フォトダイオード29によって光電変換される。PD駆動回路44は、フォトダイオード29によって光電変換された第1の信号S1をアンプ34に伝送する。
アンプ34は、一対の入力端子34a,34bと、出力端子34c、を含んでいる。一方の入力端子34aは、PD駆動回路44を介してフォトダイオード29に接続されている。他方の入力端子34bは、第2の基準電位G2に接続されている。出力端子34cは、高電圧側制御回路18に接続されている。アンプ34は、第1の信号S1を増幅して、且つ、第1の信号S1を高電圧側制御回路18に出力する。以上の第3の信号伝送経路30によって、第1の信号S1が、第2の低電圧側制御回路26から高電圧側制御回路18に伝送される。
第4の信号伝送経路40は、第2の低電圧側制御回路26と、フォトダイオード35と、光ファイバ36と、発光素子37と、LED駆動回路38と、アンプ39とを備えている。第2の低電圧側制御回路26及びフォトダイオード35は、低電位側領域6に設けられている。発光素子37、LED駆動回路38及びアンプ39は、高電位側領域7に設けられている。
アンプ39の一方の入力端子39aは、高電圧側制御回路18に接続されている。他方の入力端子39bは、第2の基準電位G2に接続されている。出力端子39cは、LED駆動回路38を介して発光素子37に接続されている。アンプ39は、第2の信号S2を増幅して、且つ、第2の信号S2をLED駆動回路38を介して発光素子37に出力する。発光素子37は、光ファイバ36の入力端と第3の高電位側領域72において光結合されている。光ファイバ36の出力端は、低電位側領域6においてフォトダイオード35と光結合されている。フォトダイオード35は、第2の低電圧側制御回路26に接続されている。発光素子37において光エネルギーに変換された第2の信号S2は、光ファイバ36によって高電位側領域7から低電位側領域6に伝送される。光ファイバ36によって伝送された第2の信号S2は、フォトダイオード35によって光電変換され、第2の低電圧側制御回路26に出力される。以上の第4の信号伝送経路40によって、第2の信号S2が、高電圧側制御回路18から第2の低電圧側制御回路26に伝送される。
上述した電力伝送回路1Dでは、第2の低電圧側制御回路26にて生成された第1の信号S1が発光素子37において電光変換され、光ファイバ36によって低電位側領域6から高電位側領域7に伝送される。伝送された第1の信号S1は、高電位側領域7において、光検出素子によって光電変換され、アンプ34によって増幅されて高電圧側制御回路18に出力される。アンプ34の他方の入力端子34bが第2の基準電位G2に接続されており、出力端子34cが高電圧側制御回路18に接続されている。高電圧側制御回路18の基準電位は、第2の基準電位G2と同電位である。これにより、アンプ34は、第2の基準電位G2を基準電位とする第3の高電位側領域72内において、第1の信号S1を伝送することができる。以上の構成により、第1のトランス14及び第2のトランス15とは別に信号伝送のルートを確保することにより、例えば、第1の信号伝送のみでは伝送量が不十分な場合に対応することができる。なお、電力伝送回路1Dにおいても、電力伝送回路1Aと同様に、直列共振用コンデンサCs2と高電圧側インバータ回路24との間にダンピング抵抗が接続されてもよい。
[第5変形例]
第4変形例において説明した第3の信号伝送経路30及び第4の信号伝送経路40は、更に別の回路に応用されてもよい。図10は、第5変形例に係る電力伝送回路1Eのブロック図である。電力伝送回路1Eは、第3の信号伝送経路30及び第4の信号伝送経路40に加え、低電圧側制御回路12と、低電圧側インバータ回路13と、第1のトランス14と、整流回路16Aと、絶縁型DCDCコンバータ50(第1のDCコンバータ)と、非絶縁型DCDCモジュール42(第2のDCコンバータ)と、第2の高電圧側制御回路43と、を備えている。電力伝送回路1Eは、第2のトランス15に代えて、絶縁型DCDCコンバータ50を備えている。絶縁型DCDCコンバータ50は、入力端50a及び出力端50bを含んでおり、入力端50aと出力端50bとの間は絶縁されている。整流回路16Aは、第1のトランス14の二次巻線14bと絶縁型DCDCコンバータ50の入力端50aとの間に設けられている。電力伝送回路1Eでは、アンプ34は、入力端子34a,34bと出力端子34cとの間が絶縁された絶縁アンプである。同様に、アンプ39は、入力端子39a,39bと出力端子39cとの間が絶縁された絶縁アンプである。
電力伝送回路1Eでは、例えば、高電圧側電圧V1が整流回路16Aにおいて整流され、絶縁型DCDCコンバータ50において直流電圧の大きさが変換された後に、非絶縁型DCDCモジュール42の電源電圧として活用されてもよい。アンプ34の電源電圧は、整流回路16Aによって生成されたVccから供給されてもよい。アンプ39の電源電圧は、絶縁型DCDCコンバータ50の出力端50bから供給されてもよい。
絶縁型DCDCコンバータ50は、高電位側領域7において、第2の基準電位G2を、第3の基準電位G21及び第4の基準電位G22に分離している。絶縁型DCDCコンバータ50の入力端50aは、第3の基準電位G21に接続されている。絶縁型DCDCコンバータ50の出力端50bは、非絶縁型DCDCモジュール42の第1の入力端子42aに接続されている。絶縁型DCDCコンバータ50の出力端50bは、第4の基準電位G22に接続されている。
電力伝送回路1Eのうち、低電圧側制御回路12、低電圧側インバータ回路13、第1のトランス14、整流回路16A、絶縁型DCDCコンバータ50、及び非絶縁型DCDCモジュール42は、第1の信号伝送経路9を構成している。非絶縁型DCDCモジュール42は、第3の高電位側領域72に配置されている。非絶縁型DCDCモジュール42は、絶縁型DCDCコンバータ50から第1の信号S1を入力する。非絶縁型DCDCモジュール42は、内部で生成した出力電圧をX線管XLに供給する。図10の例では、非絶縁型DCDCモジュール42の各端子間、及び各端子と第4の基準電位G22との間には、サージアブソーバZが設けられている。サージアブソーバZは、例えば、非絶縁型DCDCモジュール42のサージ耐圧を向上させる。
電力伝送回路1Eのうち、低電圧側制御回路12、低電圧側インバータ回路13、第1のトランス14、及び第2の高電圧側制御回路43は、第5の信号伝送経路60を構成している。第2の高電圧側制御回路43は、第2の高電位側領域71に配置されている。第2の高電圧側制御回路43の第1の端子43aは、第1のトランス14の二次巻線14bに接続されている。第2の高電圧側制御回路43の第2の端子43bは、PD駆動回路44及びLED駆動回路38に接続されている。第2の高電圧側制御回路43は、例えば、PD駆動回路44及びLED駆動回路38の電源電圧を供給してもよい。図10では、図示していないが、第5の信号伝送経路60では、例えば、低電圧側制御回路12から第2の高電圧側制御回路43にむけて、第2の高電圧側制御回路43がアンプ34,39をキャリブレーションするための信号を伝送してもよい。或いは、第5の信号伝送経路60では、第2の高電圧側制御回路43が、アンプ34,39の故障状態を検出し、検出した信号を低電圧側制御回路12に伝送してもよい。
電力伝送回路1Eでは、アンプ34,39は、第2の高電位側領域71と第3の高電位側領域72との間に跨るように配置されている。アンプ34の出力端子34cは、第3の高電位側領域72において、非絶縁型DCDCモジュール42の第2の入力端子42bに接続されている。アンプ39の一方の入力端子39aは、第3の高電位側領域72において、非絶縁型DCDCモジュール42の出力端子42cに接続されている。アンプ39の他方の入力端子39bは、第4の基準電位G22に接続されている。
アンプ34は、第3の信号伝送経路30によって伝送された第1の信号S1を、第2の高電位側領域71から第3の高電位側領域72に伝送する。第2の低電圧側制御回路26にて生成された第1の信号S1は、光ファイバ28によって低電位側領域6から第2の高電位側領域71に伝送される。第1の信号S1は、第2の高電位側領域71において、フォトダイオード29によって光電変換される。PD駆動回路44は、フォトダイオード29によって光電変換された第1の信号S1をアンプ34に伝送する。アンプ34は、第1の信号S1を、第2の高電位側領域71から第3の高電位側領域72に伝送し、非絶縁型DCDCモジュール42に出力する。
アンプ39は、非絶縁型DCDCモジュール42から入力した第2の信号S2を、第3の高電位側領域72から第2の高電位側領域71に伝送する。第2の信号S2は、光ファイバ36によって第2の高電位側領域71から低電位側領域6に伝送される。第2の信号S2は、フォトダイオード35によって光電変換され、第2の低電圧側制御回路26に出力される。
本変形例の電力伝送回路1Eにおいても、低電圧側インバータ回路13にて生成された電圧を高電圧側電圧V1として第1のトランス14を介して伝送することにより、低電位側領域6から高電位側領域7に電力伝送を行う。加えて、第1の信号S1を電力伝送と共通の第1のトランス14を介して伝送することにより、低電位側領域6から高電位側領域7に第1の信号伝送を行う。電力伝送は第1の期間T1において行われ、第1の信号伝送は第2の期間T2において行われる。これにより、高電圧側電圧V1と第1の信号S1とを分離するフィルタを設ける必要がないため、絶縁油及び絶縁樹脂中においても、第2の高電圧側制御回路43が高電位側領域7において第1の信号S1を正確に受信することができる。
本発明による電力伝送回路は、上述した実施形態および各変形例の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
上記実施形態では、第2の二次巻線15cと高電圧側制御回路18との間に波形成形回路17が接続されているが、必要に応じ、波形成形回路17を省くことが可能である。更に、上記実施形態では、第1のトランス14が疎結合トランスである場合を例示しているが、第1のトランス14は疎結合トランスを除く他の絶縁トランスであってもよい。