以下、図面を参照しつつ、本実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
<全体構成>
図1は、電力変換装置100の構成例を示す図である。図1を参照して、電力変換装置100は、交流系統2と直流回路4との間に接続されている。直流回路4は、電力変換器6の直流端子に接続された蓄電要素を含んでもよい。蓄電要素は、例えば、電気二重層コンデンサ、あるいはリチウムイオン電池等の蓄電池を含む蓄電装置である。あるいは、直流回路4は、電力変換器6の直流端子に接続された他の電力変換器の直流端子を含んでもよい。この場合、2台の電力変換器を連結することによって定格周波数などが異なる交流電力系統間を接続するためのBTB(Back To Back)システムが構成される。または、直流回路4は、直流送電網等を含む直流電力系統であってもよい。この場合、電力変換器6は、直流送電路を介して他の電力変換器と接続され、HVDC(High Voltage Direct Current)システムが構成される。
電力変換装置100は、自励式の電力変換器6と、電力変換器6を制御するための制御装置5とを含む。典型的には、電力変換器6は、互いに直列接続された複数の変換器セル(図1中の「セル」に対応)1を含むモジュラーマルチレベル変換器(MMC)によって構成される。「変換器セル」は、「サブモジュール(sub module)」あるいは「単位変換器」とも称される。
電力変換器6は、直流回路4に接続されており、直流回路4と交流系統2との間で電力変換を行なう電力変換器である。具体的には、電力変換器6は、直流回路4から出力される直流電力を交流電力に変換して、当該交流電力を変圧器3を介して交流系統2に出力する。また、電力変換器6は、交流系統2からの交流電力を直流電力に変換して、当該直流電力を直流回路4に出力する。
図1の例では、電力変換器6は、交流系統2の相ごとに複数のアームを含む。具体的には、電力変換器6は、正極直流端子(すなわち、高電位側直流端子)Npと、負極直流端子(すなわち、低電位側直流端子)Nnとの間に互いに並列に接続された複数のレグ回路8u,8v,8w(以下、「レグ回路8」とも総称する。)を含む。
レグ回路8は、交流を構成する複数相の各々に設けられる。レグ回路8は、交流系統2と直流回路4との間に接続され、両回路間で電力変換を行なう。交流系統2のU相、V相、W相にそれぞれ対応して3個のレグ回路8u,8v,8wが設けられる。
レグ回路8u,8v,8wにそれぞれ設けられた交流端子Nu,Nv,Nwは、変圧器3を介して交流系統2に接続される。交流系統2は、例えば、交流電源などを含む三相交流電力系統である。図1では、図解を容易にするために、交流端子Nv,Nwと変圧器3との接続は図示していない。各レグ回路8に共通に設けられた直流端子(すなわち、正極直流端子Np,負極直流端子Nn)は、直流回路4に接続される。
図1の変圧器3を用いる代わりに、レグ回路8u,8v,8wは、連系リアクトルを介して交流系統2に接続した構成としてもよい。さらに、交流端子Nu,Nv,Nwに代えてレグ回路8u,8v,8wにそれぞれ一次巻線を設け、この一次巻線と磁気結合する二次巻線を介してレグ回路8u,8v,8wが変圧器3または連系リアクトルに交流的に接続するようにしてもよい。この場合、一次巻線を下記のリアクトル7a,7bとしてもよい。すなわち、レグ回路8は、交流端子Nu,Nv,Nwまたは上記の一次巻線など、各レグ回路8u,8v,8wに設けられた接続部を介して電気的(すなわち、直流的または交流的)に交流系統2に接続される。
レグ回路8uは、正極直流端子Npから交流端子Nuまでの正側アーム13puと、負極直流端子Nnから交流端子Nuまでの負側アーム13nuとを含む。正側アーム13puと負側アーム13nuとの接続点が、交流端子Nuとして変圧器3と接続される。正極直流端子Npおよび負極直流端子Nnが直流回路4に接続される。レグ回路8vは正側アーム13pvと負側アーム13nvとを含み、レグ回路8wは正側アーム13pwと負側アーム13nwとを含む。
以下では、正側アーム13pu,13pv,13pwについて、総称する場合または任意のものを示す場合、「正側アーム13p」と記載する。負側アーム13nu,13nv,13nwについて、総称する場合または任意のものを示す場合、「負側アーム13n」と記載する。正側アーム13pu,13pv,13pwおよび負側アーム13nu,13nv,13nwについて、総称する場合または任意のものを示す場合、「アーム13」と記載する。
レグ回路8v,8wはレグ回路8uと同様の構成を有しているので、以下、レグ回路8uを代表として説明する。レグ回路8uにおいて、正側アーム13puは、互いにカスケード接続された複数の変換器セル1_1~1_Mと、リアクトル7aとを含む。複数の変換器セル1とリアクトル7aとは互いに直列接続されている。負側アーム13nuは、互いにカスケード接続された複数の変換器セル1_1~1_Mと、リアクトル7bとを含む。複数の変換器セル1とリアクトル7bとは互いに直列接続されている。
本実施の形態では、例えば、各アーム13に含まれる変換器セルの数をMとする。ただし、M≧2とする。また、変換器セル1_1~1_Mを総称して、変換器セル1と記載する場合もある。変換器セル1_1~1_Mにおけるアンダーバーの後の値および変数は変換器セル1のインデックスを示す。インデックスiを用いると任意の変換器セル1は「変換器セル1_i」とも称される。ただし、インデックスiは、変換器セル1の物理的な配置とは関係しない。
リアクトル7aが挿入される位置は、正側アーム13puのいずれの位置であってもよく、リアクトル7bが挿入される位置は、負側アーム13nuのいずれの位置であってもよい。リアクトル7a,7bはそれぞれ複数個あってもよい。各リアクトルのインダクタンス値は互いに異なっていてもよい。さらに、正側アーム13puのリアクトル7aのみ、もしくは、負側アーム13nuのリアクトル7bのみを設けてもよい。
電力変換装置100は、さらに、交流電圧検出器10と、交流電流検出器15と、直流電圧検出器11a,11bと、各レグ回路8に設けられたアーム電流検出器9a,9bとを含む。これらの検出器は、電力変換装置100の制御に使用される電気量(すなわち、電流、電圧)を計測する。これらの検出器によって検出された信号は、制御装置5に入力される。
交流電圧検出器10は、交流系統2のU相の交流電圧Vacu、V相の交流電圧Vacv、W相の交流電圧Vacw(以下、「交流電圧Vac」とも総称する。)を検出する。交流電流検出器15は、交流系統2のU相の交流電流実測値Isysu、V相の交流電流実測値Isysv、W相の交流電流実測値Isyswを検出する。直流電圧検出器11aは、直流回路4に接続された正極直流端子Npの直流電圧Vdcpを検出する。直流電圧検出器11bは、直流回路4に接続された負極直流端子Nnの直流電圧Vdcnを検出する。
U相用のレグ回路8uに設けられたアーム電流検出器9a,9bは、正側アーム13puに流れる正側アーム電流Ipuおよび負側アーム13nuに流れる負側アーム電流Inuをそれぞれ検出する。V相用のレグ回路8vに設けられたアーム電流検出器9a,9bは、正側アーム電流Ipvおよび負側アーム電流Invをそれぞれ検出する。W相用のレグ回路8wに設けられたアーム電流検出器9a,9bは、正側アーム電流Ipwおよび負側アーム電流Inwをそれぞれ検出する。
図1に示すように、レグ回路8uの正側アーム13puと負側アーム13nuとの接続点である交流端子Nuは、変圧器3に接続されている。したがって、交流端子Nuから変圧器3に向かって流れる交流電流Iacuは、正側アーム電流Ipuから負側アーム電流Inuを減算した電流値となる。交流電流Iacv,Iacwについても同様である。すなわち、“Iacu=Ipu-Inu”、“Iacv=Ipv-Inv”、および“Iacw=Ipw-Inw”が成立する。
正側アーム電流Ipuと負側アーム電流Inuとの平均電流を、正側アーム13puおよび負側アーム13nuに流れる共通の電流とすると、この電流はレグ回路8uの直流端子を流れるレグ電流Icomu(=(Ipu+Inu)/2)である。これは、レグ回路8v,8wのレグ電流Icomv,Icomwについても同様である。
各相のレグ回路8u,8v,8wの正極の直流端子は正極直流端子Npとして共通に接続され、負極の直流端子は負極直流端子Nnとして共通に接続されている。この構成から、各相のレグ電流Icomu,Icomv,Icomwを加算した電流は、直流回路4の正側端子から流れ込み、負側端子を介して直流回路4に帰還する直流電流Idcとなる。したがって、“Idc=(Ipu+Ipv+Ipw+Inu+Inv+Inw)/2”が成立する。
レグ電流に含まれる直流電流成分は、各相で均等に分担すると変換器セルの電流容量を均等にすることができる。このことを考慮すると、レグ電流と直流電流値の1/3との差分が、直流回路4に流れないが各相のレグ間に流れる循環電流の電流値として演算できる。そのため、U相の循環電流Izuについて、“Izu=(Ipu+Inu)/2-Idc/3”が成立する。V相、W相の循環電流Izu,Izvについても同様である。すなわち、“Izv=(Ipv+Inv)/2-Idc/3”および“Izw=(Ipw+Inw)/2-Idc/3”が成立する。
<変換器セルの構成例>
図2は、変換器セル1の一例を示す回路図である。図2(a)に示す変換器セル1は、ハーフブリッジ構成と呼ばれる回路構成を有する。変換器セル1は、2つのスイッチング素子31p、31nを直列接続して形成した直列体と、エネルギー蓄積要素としてのコンデンサ32と、電圧検出器33とを含む。直列体とコンデンサ32とは並列接続される。電圧検出器33は、コンデンサ32の両端の電圧であるコンデンサ電圧Vcを検出する。
図2(b)に示す変換器セル1は、フルブリッジ構成と呼ばれる回路構成を有する。この変換器セル1は、2つのスイッチング素子31p1,31n1を直列接続して形成された第1の直列体と、2つのスイッチング素子31p2,31n2を直列接続して形成された第2の直列体と、コンデンサ32と、電圧検出器33とを含む。第1の直列体と、第2の直列体と、コンデンサ32とが並列接続される。電圧検出器33は、コンデンサ電圧Vcを検出する。コンデンサ電圧Vcは、制御装置5へ入力される。
図2(a)における2つのスイッチング素子31p、31nと、図2(b)における4つのスイッチング素子31p1、31n1、31p2、31n2とは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)、GCT(Gate Commutated Turn-off)サイリスタなどの半導体スイッチング素子に還流ダイオードが逆並列に接続されて構成される。図2(a)および図2(b)において、コンデンサ32には、フィルムコンデンサ等が主に用いられる。
以下の説明では、スイッチング素子31p,31n,31p1,31n1,31p2,31n2をスイッチング素子31とも総称する。また、スイッチング素子31内の半導体スイッチング素子のオンオフを、単に「スイッチング素子31のオンオフ」と記載する。
図2(a)を参照して、スイッチング素子31nの両端子を入出力端子G1,G2とする。スイッチング素子31p、31nのスイッチング動作によりコンデンサ32の両端電圧、および零電圧が出力される。例えば、スイッチング素子31pがオン、かつスイッチング素子31nがオフとなったときに、コンデンサ32の両端電圧が出力される。スイッチング素子31pがオフ、かつスイッチング素子31nがオンとなったときに、零電圧が出力される。
図2(b)を参照して、スイッチング素子31p1とスイッチング素子31n1との中点と、スイッチング素子31p2とスイッチング素子31n2との中点とをそれぞれ変換器セル1の入出力端子G1,G2とする。図2(b)に示す変換器セル1は、スイッチング素子31n2をオンとし、スイッチング素子31p2をオフとし、スイッチング素子31p1,31n1を交互にオン状態とすることによって、正電圧または零電圧を出力する。また、図2(b)に示す変換器セル1は、スイッチング素子31n2をオフし、スイッチング素子31p2をオンし、スイッチング素子31p1,31n1を交互にオン状態にすることによって、零電圧または負電圧を出力できる。
本実施の形態では、変換器セル1を図2(a)に示すハーフブリッジセルの構成としてもよいし、図2(b)に示すフルブリッジ構成としてもよい。また、上記で示した構成以外の変換器セル、例えば、クランプトダブルセルと呼ばれる回路構成などを適用した変換器セルを用いてもよく、スイッチング素子およびエネルギー蓄積要素も上記のものに限定されない。
<制御装置のハードウェア構成例>
図3は、制御装置5のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図3の場合の制御装置5は、コンピュータに基づいて構成される。図3を参照して、制御装置5は、1つ以上の入力変換器70と、1つ以上のサンプルホールド(S/H)回路71と、マルチプレクサ(MUX:multiplexer)72と、A/D変換器73とを含む。さらに、制御装置5は、1つ以上のCPU(Central Processing Unit)74と、RAM(Random Access Memory)75と、ROM(Read Only Memory)76とを含む。さらに、制御装置5は、1つ以上の入出力インターフェイス77と、補助記憶装置78と、上記の構成要素間を相互に接続するバス79とを含む。
入力変換器70は、入力チャンネルごとに補助変成器を備える。各補助変成器は、図1の各電気量検出器による検出信号を、後続する信号処理に適した電圧レベルの信号に変換する。サンプルホールド回路71は、入力変換器70ごとに設けられる。サンプルホールド回路71は、対応する入力変換器70から受けた電気量を表す信号を規定のサンプリング周波数でサンプリングして保持する。
マルチプレクサ72は、複数のサンプルホールド回路71に保持された信号を順次選択する。A/D変換器73は、マルチプレクサ72によって選択された信号をデジタル値に変換する。なお、複数のA/D変換器73を設けることによって、複数の入力チャンネルの検出信号に対して並列的にA/D変換を実行するようにしてもよい。
CPU74は、制御装置5の全体を制御し、プログラムに従って演算処理を実行する。揮発性メモリとしてのRAM75および不揮発性メモリとしてのROM76は、CPU74の主記憶として用いられる。ROM76は、プログラムおよび信号処理用の設定値などを収納する。補助記憶装置78は、ROM76に比べて大容量の不揮発性メモリであり、プログラムおよび電気量検出値のデータなどを格納する。入出力インターフェイス77は、CPU74と外部装置との間で通信する際のインターフェイス回路である。
なお、制御装置5の少なくとも一部をFPGA(Field Programmable Gate Array)およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの回路を用いて構成してもよい。もしくは、制御装置5の少なくとも一部は、アナログ回路によって構成することもできる。
<制御装置の機能構成>
図4は、制御装置5の内部構成を表わす図である。図4を参照して、制御装置5は、基本制御部502と、アーム制御部503とを含む。基本制御部502は、U相基本制御部502uと、V相基本制御部502vと、W相基本制御部502wとを含む。アーム制御部503は、U相の正側アーム制御部503puおよび負側アーム制御部503nuと、V相の正側アーム制御部503pvおよび負側アーム制御部503nvと、W相の正側アーム制御部503pwおよび負側アーム制御部503nwとを含む。
基本制御部502およびアーム制御部503の構成は、例えば、処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、制御装置5の内部メモリ(例えば、RAM75、ROM76、補助記憶装置78等)に格納されるプログラムを実行するCPU74であってもよい。処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路は、例えば、FPGA、ASIC、またはこれらを組み合わせたもの等で構成される。
基本制御部502は、上記の各検出器により計測された電気量を用いて、各相の正側アーム13pおよび負側アーム13n用の2つのアーム電圧指令値Varmp*,Varmn*と、各相の正側アーム13pのコンデンサ電圧指令値Vcp*と、各相の負側アーム13nのコンデンサ電圧指令値Vcn*とを生成する。以下の説明において、各相の各アームのうちのいずれのアームであるかを特定しない場合には、単にアーム電圧指令値Varm*、コンデンサ電圧指令値Vc*と記載する。さらに、基本制御部502は、各アーム電圧指令値Varm*に対して、各アーム13における複数の変換器セル1の各々が電圧を出力するための変調信号Karm*を生成する。
アーム制御部503は、各変調信号Karm*およびコンデンサ電圧指令値Vc*に基づいて、アームを構成する各変換器セル1に設けられたスイッチング素子31p,31nのオンおよびオフを制御するためのゲート制御信号GPを生成し、当該ゲート制御信号GPを各変換器セル1に出力する。
図5は、基本制御部502の機能構成の一部を示す図である。図5を参照して、基本制御部502は、電気量算出部401と、平均値算出部402と、最大値検出部403と、最小値検出部404と、規格化部405と、コンデンサ電圧指令生成部406とを含む。
電気量算出部401は、直流電圧Vdcp,Vdcnと、正側アーム電流Ipu、Ipv、Ipwおよび負側アーム電流Inu、Inv、Inwの入力を受け付ける。電気量算出部401は、直流電圧Vdcpと直流電圧Vdcnとの差(すなわち、Vdcp-Vdcn)を直流電圧Vdcとして算出する。電気量算出部401は、上述した各式を用いて、交流電流Iacu,Iacv,Iacw、直流電流Idc、および循環電流Izu,Izv,Izwを算出する。
平均値算出部402は、電力変換器6に含まれる全ての変換器セル1(例えば、「6×M」個の変換器セル1)のコンデンサ電圧Vcに基づいて、各アームのコンデンサ電圧Vcの平均値を算出する。具体的には、平均値算出部402は、U相について、正側アーム13puに含まれる各変換器セル1のコンデンサ電圧Vcの合計電圧値VcpuS(例えば、“Vcpu_1+・・・+Vcpu_M”)を算出し、正側アーム13puにおけるコンデンサ電圧平均値Vcpua(例えば、VcpuS/M)を算出する。また、平均値算出部402は、負側アーム13nuに含まれる各変換器セル1のコンデンサ電圧Vcの合計電圧値VcnuS(例えば、“Vcnu_1+・・・+Vcnu_M”)を算出し、負側アーム13nuにおけるコンデンサ電圧平均値Vcnua(例えば、VcnuS/M)を算出する。
同様に、平均値算出部402は、V相について、正側アーム13pvにおけるコンデンサ電圧平均値Vcpvaと、負側アーム13nvにおけるコンデンサ電圧平均値Vcnvaとを算出する。平均値算出部402は、W相について、正側アーム13pwにおけるコンデンサ電圧平均値Vcpwaと、負側アーム13nwにおけるコンデンサ電圧平均値Vcnwaとを算出する。なお、平均値算出部402は、実際に検出された各コンデンサ電圧Vcではなく、電力変換器6から出力される有効電力あるいは無効電力等から各コンデンサ電圧平均値を算出してもよい。
最大値検出部403は、電力変換器6に含まれる全ての変換器セル1のコンデンサ電圧Vcに基づいて、各アームのコンデンサ電圧Vcの最大値を検出する。具体的には、最大値検出部403は、U相について、正側アーム13puに含まれる各変換器セル1のコンデンサ電圧Vcのうちの最大値(以下、「コンデンサ電圧最大値Vcpumax」と称する。)を検出する。また、最大値検出部403は、負側アーム13nuに含まれる各変換器セル1のコンデンサ電圧Vcのうちの最大値((以下、「コンデンサ電圧最大値Vcnumax」と称する。)を検出する。同様に、最大値検出部403は、V相について、正側アーム13pvのコンデンサ電圧最大値Vcpvmax、および負側アーム13nvのコンデンサ電圧最大値Vcnvmaxを検出する。最大値検出部403は、W相について、正側アーム13pwのコンデンサ電圧最大値Vcpwmax、および負側アーム13nwのコンデンサ電圧最大値Vcnwmaxを検出する。
最小値検出部404は、電力変換器6に含まれる全ての変換器セル1のコンデンサ電圧Vcに基づいて、各アームのコンデンサ電圧Vcの最小値を検出する。具体的には、最小値検出部404は、U相について、正側アーム13puに含まれる各変換器セル1のコンデンサ電圧Vcのうちの最小値(以下、「コンデンサ電圧最小値Vcpumin」と称する。)を検出する。また、最大値検出部403は、負側アーム13nuに含まれる各変換器セル1のコンデンサ電圧Vcのうちの最小値((以下、「コンデンサ電圧最小値Vcnumin」と称する。)を検出する。同様に、最小値検出部404は、V相について、正側アーム13pvのコンデンサ電圧最小値Vcpvmin、および負側アーム13nvのコンデンサ電圧最小値Vcnvminを検出する。最小値検出部404は、W相について、正側アーム13pwのコンデンサ電圧最小値Vcpwmin、および負側アーム13nwのコンデンサ電圧最小値Vcnwminを検出する。
規格化部405は、入力された各算出値および各検出値を、対応する基準値(例えば、定格値)を用いて規格化した値を出力する。具体的には、規格化部405は、交流電圧Vacu,Vacv,Vacwを定格値で除算した値を規格化された交流電圧Vacu_pu,Vacv_pu,Vacw_pu(以下、「交流電圧Vac_pu」とも総称する。)として出力する。
規格化部405は、直流電圧Vdcを定格値で除算した値を、規格化された直流電圧Vdc_puとして出力する。規格化部405は、交流電流Iacu,Iacv,Iacwを定格値で除算した値を、それぞれ、規格化された交流電流Iacu_pu,Iacv_pu,Iacw_pu(以下、「交流電流Iac_pu」とも総称する。)として出力する。規格化部405は、循環電流Izu,Izv,Izwを定格値で除算した値を、それぞれ、規格化された循環電流Izu_pu,Izv_pu,Izw_pu(以下、「循環電流Iz_pu」とも総称する。)として出力する。
規格化部405は、コンデンサ電圧平均値Vcpua,Vcpva,Vcpwa,Vcnua,Vcnva,Vcnwaを定格値で除算した値を、それぞれ、規格化されたコンデンサ電圧平均値Vcpua_pu,Vcpva_pu,Vcpwa_pu,Vcnua_pu,Vcnva_pu,Vcnwa_pu(以下、「コンデンサ電圧平均値Vca_pu」とも総称する。)として出力する。規格化部405は、コンデンサ電圧最大値Vcpumax~Vcnwmaxを定格値で除算した値を、それぞれ、規格化されたコンデンサ電圧最大値Vcpumax_pu~Vcnwmax_pu(以下、「コンデンサ電圧最大値Vcmax_pu」とも総称する。)として出力する。規格化部405は、コンデンサ電圧最小値Vcpumin~Vcnwminを定格値で除算した値を、それぞれ、規格化されたコンデンサ電圧最小値Vcpumin_pu~Vcnwmin_pu(以下、「コンデンサ電圧平均値Vcmin_pu」とも総称する。)として出力する。
コンデンサ電圧指令生成部406は、各相の正側アーム13pに含まれる各変換器セル1のコンデンサ32のコンデンサ電圧指令値Vcp*を算出する。コンデンサ電圧指令生成部406は、各相の負側アーム13nに含まれる各変換器セル1のコンデンサ32のコンデンサ電圧指令値Vcn*を算出する。例えば、各相のコンデンサ電圧指令値Vcp*は、各相の正側アーム13p内の各変換器セル1のコンデンサ32の平均電圧値である。各相のコンデンサ電圧指令値Vcn*は、各相の負側アーム13n内の各変換器セル1のコンデンサ32の平均電圧値である。
図6は、基本制御部502の機能構成の他の部分を示す図である。図6を参照して、基本制御部502は、逆相電圧補償部412と、全コンデンサ電圧制御部413と、直流制御部414と、交流電流制御部415と、第1循環電流指令生成部417と、第2循環電流指令生成部419と、循環電流制御部421と、零相電圧指令生成部423と、正負バランス電圧指令生成部424と、電圧指令生成部425と、変調指令生成部427とをさらに含む。
逆相電圧補償部412は、交流電圧Vacu_pu,Vacv_pu,Vacw_puから交流系統2の系統電圧に同期する基準位相θを抽出する。逆相電圧補償部412は、逆相電圧補償の実行時に、各交流電圧Vac_puの入力に基づいて系統電圧の逆相成分(すなわち、逆相電圧)を抽出して、交流系統2の交流電圧に含まれる逆相電圧を補償するための逆相電流指令値Inavr*を出力する。
具体的には、逆相電圧補償部412は、基準位相θの負の位相“-θ”を用いて、交流電圧Vsysu,Vsysv,Vsyswを三相/二相変換して、逆相のd軸電圧Vdnおよびq軸電圧Vqnを算出する。逆相電圧補償部412は、d軸電圧Vdnを逆相のd軸電圧指令値Vdn*(=0)に追従させるための制御演算を実行することにより、逆相電圧補償電流Idn1を生成する。逆相電圧補償部412は、q軸電圧Vqnを逆相のq軸電圧指令値Vqn*(=0)に追従させるための制御演算を実行することにより、逆相電圧補償電流Iqn1を生成する。
逆相電圧補償部412は、基準位相θの2倍(すなわち、2θ)を用いた回転座標変換により、逆相電圧補償電流Idn1、Iqn1を逆相のdq軸上から正相のdq軸上に座標変換する。逆相電圧補償部412は、この座標変換により、逆相電流指令値Inavr*のd軸成分Idnavr*およびq軸成分Iqnavr*を生成する。
全コンデンサ電圧制御部413は、6つのコンデンサ電圧平均値Vca_pu(すなわち、Vcpua_pu~Vcnwa_pu)の平均値を算出し、当該平均値が全コンデンサ電圧指令値Vcall*に追従するように(例えば、当該平均値と全コンデンサ電圧指令値Vcall*との偏差が0になるように)交流電流補正指令値ΔIac*を生成する。全コンデンサ電圧指令値Vcall*は、電力変換器6に含まれる全コンデンサの電圧平均値について与えられた指令値である。なお、全コンデンサ電圧制御部413は、交流電流補正指令値ΔIac*ではなく直流電流指令値Idc*を補正するための補正指令値を生成してもよいし、当該補正指令値と交流電流補正指令値ΔIac*の両方を生成してもよい。
直流制御部414は、直流電流Idc_puを直流電流指令値Idc*に追従させる直流電流制御を行なう。典型的には、直流制御部414は、直流電流Idc_puが直流電流指令値Idc*に追従するように(例えば、直流電流Idc_puと直流電流指令値Idc*との偏差が0になるように)直流制御指令値Varmdc*を生成する。
あるいは、直流制御部414は、直流電圧Vdcを直流電圧指令値Vdc*に追従させる直流電圧制御を基本とし、直流電流が予め定められた上限値を超えた場合に、直流電流制御をするように構成されてもよい。典型的には、直流電圧指令値Vdc*と直流電圧Vdcとの偏差を0にするように直流制御指令値Varmdc*を生成するとともに、直流電流が上限値を超えた場合には上記の直流電流制御を実行する。直流電流指令値Idc*および直流電圧指令値Vdc*は、例えば、系統運用者等により予め設定される。なお、直流電圧指令値Vdc*は、直流電圧Vdc_puに基づいて演算されてもよい。
交流電流制御部415は、各相の交流電流指令値Iac*を、各相の交流電流補正指令値ΔIac*および逆相電流指令値Inavr*で補正した指令値(例えば、Iac*+ΔIac*+Inavr*)を算出する。交流電流制御部415は、当該指令値と交流電流Iac_puとの偏差を0にするためのフィードバック制御と、交流電圧Vac_puのフィードフォワード制御とにより、各相の交流制御指令値Varmac*を生成する。具体的には、U相、V相、W相の交流制御指令値Varmacu*,Varmacv*,Varmacw*が生成される。なお、各相の交流電圧Vac_puのフィードフォワード制御を実行しない構成であってもよい。
第1循環電流指令生成部417は、各アーム13間でのコンデンサ32の電圧のバランスを制御するための第1循環電流指令値Iz1*を生成する。具体的には、第1循環電流指令生成部417は、相間でのコンデンサの電圧バランスを制御するための相間バランス制御と、正側アーム13pおよび負側アーム13n間(以下、「正負アーム間」とも称する。)でのコンデンサの電圧バランスを制御するための正負バランス制御とを実行することにより、第1循環電流指令値Iz1*を生成する。
ある局面では、第1循環電流指令生成部417は、U相について、レグ回路8uに含まれる各コンデンサ32の電圧代表値を相間バランス制御指令値に追従させるためのフィードバック制御を実行する。例えば、レグ回路8uに含まれる各コンデンサ32の電圧代表値は、U相に含まれる全てのコンデンサの電圧平均値である。この場合、電圧代表値は、コンデンサ電圧平均値Vcpua_puおよびコンデンサ電圧平均値Vcnua_puの平均値である。なお、当該電圧代表値は、U相に含まれる全てのコンデンサの電圧値のうちの最大値、最小値、または「(最大値+最小値)/2」であってもよい。V相およびW相についても同様のフィードバック制御が行なわれる。このようなフィードバック制御は、相(例えば、U相)に含まれる全てのコンデンサの電圧代表値を指令値に追従させる相間バランス制御に相当する。
他の局面では、第1循環電流指令生成部417は、U相について、負側アーム13nのコンデンサ電圧代表値を正側アーム13pのコンデンサ電圧代表値に追従させるためのフィードバック制御を実行する。例えば、U相について、負側アーム13nのコンデンサ電圧代表値はコンデンサ電圧平均値Vcnua_puであり、正側アーム13pのコンデンサ電圧代表値はコンデンサ電圧平均値Vcpua_puである。なお、負側アーム13nのコンデンサ電圧代表値は、負側アーム13nに含まれる全てのコンデンサの電圧値のうちの最大値(例えば、コンデンサ電圧最大値Vcnumax)、最小値(例えば、コンデンサ電圧最小値Vcnumin)、または「(最大値+最小値)/2」であってもよいし、正側アーム13pのコンデンサ電圧代表値は、正側アーム13pに含まれる全てのコンデンサの電圧値のうちの最大値(例えば、コンデンサ電圧最大値Vcpumax)、最小値(例えば、コンデンサ電圧最小値Vcpumin)、または「(最大値+最小値)/2」であってもよい。
また、第1循環電流指令生成部417は、正側アーム13pのコンデンサ電圧代表値を負側アーム13nのコンデンサ電圧代表値に追従させるためのフィードバック制御を実行してもよい。V相およびW相についても同様の制御が行なわれる。このようなフィードバック制御は、相(例えば、U相)の一方のアーム(例えば、負側アーム)に含まれる全てのコンデンサの電圧代表値を指令値(例えば、正側アームのコンデンサ電圧代表値)に追従させる正負バランス制御に相当する。また、正負バランス制御は、正側アーム13pのコンデンサ電圧代表値と負側アーム13nのコンデンサ電圧代表値との差分値をゼロにする制御ともいえる。
第1循環電流指令生成部417は、各相について、相間バランス制御によるフィードバック演算結果と正負バランス制御によるフィードバック演算結果とを加算することによって、第1循環電流指令値Iz1*を生成する。具体的には、U相、V相、W相の循環電流指令値Iz1u*,Iz1v*,Iz1w*が生成される。
第2循環電流指令生成部419は、直流電流Idc_puと、交流電流Iac_puと、各コンデンサ電圧平均値Vca_puと、コンデンサ電圧最大値Vcmax_puと、コンデンサ電圧最小値Vcmin_puと、直流制御指令値Varmdc*と、交流制御指令値Varmac*と、各アーム電圧指令値Varm*との入力を受け付ける。第2循環電流指令生成部419は、これらの各値に基づいて、コンデンサ32の電圧脈動を抑制するように、交流系統2の基本波周波数の偶数倍の周波数成分を有する第2循環電流指令値Iz2*を生成する。換言すると、第2循環電流指令生成部419は、コンデンサ32の電圧脈動の抑制制御により、各相の第2循環電流指令値Iz2*を生成する。具体的には、U相、V相、W相の第2循環電流指令値Iz2u*,Iz2v*,Iz2w*が生成される。
第2循環電流指令値Iz2*は、コンデンサ32の電圧脈動を抑制する(すなわち、小さくする)ための指令値である。MMCにおいて交流側の電圧の周波数を基本波周波数とした場合、コンデンサ32の電圧脈動には基本波周波数の1倍および2倍の周波数成分が含まれる。この周波数成分は、アーム13内においては共通の成分であり、アーム13に流入する電力に基づいている。
したがって、アーム13に流入する電力の基本波周波数の1倍、または2倍の周波数成分の脈動を小さくすることによって、コンデンサ32の電圧脈動を小さくすることができる。本実施の形態では、アーム13に流入する電力の基本波周波数の1倍成分を低減するための第2循環電流指令値Iz2*が算出される。第2循環電流指令値Iz2*の算出方式については後述する。
循環電流制御部421は、電力変換器6内を循環する循環電流Iz_puを、第1循環電流指令値Iz1*と第2循環電流指令値Iz2*とに基づく循環電流指令値Iz*に追従させる(例えば、循環電流指令値Iz*と循環電流Iz_puとの偏差が0になるようにする)循環電流制御を実行する。循環電流制御部421は、当該循環電流制御を実行することにより循環電圧指令値Vz*を生成する。具体的には、U相、V相、W相の循環電圧指令値Vzu*,Vzv*,Vzw*が生成される。典型的には、循環電流指令値Iz*は、第1循環電流指令値Iz1*と第2循環電流指令値Iz2*との加算値である。
零相電圧指令生成部423は、各相の交流制御指令値Varmac*のゼロクロスを合わせた後、交流制御指令値Varmac*の3倍の周波数を有する零相電圧指令値V0*を生成する。
正負バランス電圧指令生成部424は、第1循環電流指令生成部417とは異なる方式で、正負バランス制御を実行する。これにより、正負バランス電圧指令生成部424は、正負アーム間でのコンデンサの電圧バランスを制御するためのU相、V相、W相の交流電圧指令値Vapnu*,Vapnv*,Vapnw*(以下、「交流電圧指令値Vapn*」とも総称する。)を生成する。交流電圧指令値Vapn*の算出方式については後述する。
電圧指令生成部425は、直流制御指令値Varmdc*と、交流制御指令値Varmac*と、零相電圧指令値V0*と、循環電圧指令値Vz*と、交流電圧指令値Vapn*とに基づいて、各アームの出力電圧の指令値であるアーム電圧指令値Varm*を生成する。例えば、U相の正側アーム13puのアーム電圧指令値Varmpu*は、“Varmdc*-Varmacu*+Vzu*+V0*-Vapnu*”で表わされる。U相の負側アーム13nuのアーム電圧指令値Varmnu*は、“Varmdc*+Varmacu*+Vzu*+V0*+Vapnu*”で表わされる。V相の正側アーム13pvのアーム電圧指令値Varmpv*、負側アーム13nvのアーム電圧指令値Varmnv*、W相の正側アーム13pwのアーム電圧指令値Varmpw*、負側アーム13nwのアーム電圧指令値Varmnw*についても同様である。
変調指令生成部427は、各アーム電圧指令値Varm*に対して、各アーム13における複数の変換器セル1の各々が電圧を出力するための変調信号Karm*(例えば、Karmpu*、Karmnu*、Karmpv*、Karmnv*、Karmpw*、Karmnw*)を生成する。変調信号Karm*は、例えば、あるアーム13のアーム電圧指令値Varm*を、当該アーム13に対応するコンデンサ32の電圧合計値と変換器セル1の数とで除算することにより算出される。実際に各アーム13から出力される電圧は、各アーム13の出力電圧指令値に基準値(例えば、定格値)を掛けて電圧次元に戻した値と近い値となる。
<不平衡事故検出時の動作>
制御装置5は、交流系統2の不平衡事故が発生した場合、各変換器セル1におけるコンデンサ電圧が異常値となって(例えば、過電圧、あるいは不足電圧)電力変換器6が保護停止するのを防ぐために、コンデンサ電圧を安定化させるための各種制御を実行する。ここでは、制御装置5(具体的には、基本制御部502)における不平衡事故検出時の動作について説明する。
図7は、基本制御部502における不平衡事故検出時の動作に関連する機能構成を示す図である。図7を参照して、基本制御部502は、交流系統2の不平衡事故検出に関連する機能構成として、不平衡事故検出部461と、図6で説明した逆相電圧補償部412、交流電流制御部415、第1循環電流指令生成部417、第2循環電流指令生成部419、および循環電流制御部421とを含む。
(不平衡事故の検出方式)
不平衡事故検出部461は、交流系統2の電気量(すなわち、電圧および電流)に基づいて、交流系統2の不平衡事故を検出する。具体的には、不平衡事故検出部461は、交流系統2の正相電圧に対する逆相電圧の比率を示す不平衡率Rmを用いて不平衡事故を検出する。
不平衡事故検出部461は、基準位相θを用いて、交流電圧Vsysu,Vsysv,Vsyswを三相/二相変換して、正相のd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqを算出する。不平衡事故検出部461は、基準位相θの負の位相“-θ”を用いて、交流電圧Vsysu,Vsysv,Vsyswを三相/二相変換して、逆相のd軸電圧Vdnおよびq軸電圧Vqnを算出する。
例えば、不平衡事故検出部461は、移動平均フィルタ等によってd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqの高周波成分を除去し、除去されたd軸電圧Vdおよびq軸電圧Vqの平方二乗和(すなわち、(Vd2+Vq2)1/2)を演算し、当該平方二乗和を正相電圧振幅Vmag_pとして演算する。同様に、不平衡事故検出部461は、移動平均フィルタ等によってd軸電圧Vdnおよびq軸電圧Vqnの高周波成分を除去し、除去されたd軸電圧Vdnおよびq軸電圧Vqnの平方二乗和(すなわち、(Vdn2+Vqn2)1/2)を演算し、当該平方二乗和を逆相電圧振幅Vmag_nとして演算する。不平衡事故検出部461は、正相電圧振幅Vmag_pに対する逆相電圧振幅Vmag_nの比率(すなわち、Vmag_n/Vmag_p)を不平衡率Rmとして算出する。
ある局面では、不平衡事故検出部461は、不平衡率Rmが閾値Th1以上となった場合に交流系統2の不平衡事故を検出する(すなわち、不平衡事故が発生したと判断する)。
他の局面では、不平衡事故検出部461は、不平衡率Rmと、電力変換器6内に蓄積される余剰電力とを用いて不平衡事故を検出してもよい。余剰電力は、電力変換器6に流入する瞬時電力Pinと、電力変換器6から流出する瞬時電力Poutとの差分電力ΔP(=Pin-Pout)に相当する。
瞬時電力Pinは、各相の交流電圧Vacu~Vacwと、各相の交流電流実測値Isysu~Isyswを用いて、“Pin=Vacu×Isysu+Vacv×Isysv+Vacw×Isysw”と表される。瞬時電力Pinは、変圧器3の二次側電圧を用いて計算されてもよい。瞬時電力Poutは、直流電圧Vdc(=Vdcp-Vdcn)および直流電流Idcとを用いて、“Pout=Vdc×(-Idc)”と表される。直流電流Idcについては、直流回路4から電力変換器6に流入する方向を正とし、電力変換器6から直流回路4に流出する方向を負とする。また、電力変換器6および変圧器3の損失電力Plossを交流電流実測値により推定してもよい。この場合、差分電力ΔPは、“ΔP=Pin-Pout-Ploss)と表される。
不平衡事故検出部461は、不平衡率Rmが閾値Th1以上であって、かつ差分電力ΔPの大きさが閾値Th2以上である場合に、交流系統2の不平衡事故を検出する。なお、電力変換器6の起動時には、各変換器セル1におけるコンデンサが初期充電されるため、ある程度の差分電力ΔPが発生する。そのため、不平衡事故検出部461は、電力変換器6の起動時においては、差分電力ΔPを用いた不平衡事故検出を実行しない構成であってもよい。
さらに他の局面では、不平衡事故検出部461は、不平衡率Rmと、交流系統2の電圧低下量を示すパラメータとを用いて不平衡事故を検出してもよい。例えば、電圧低下量を示すパラメータとして、交流系統2の正相電圧の低下量が挙げられる。この場合、不平衡事故検出部461は、不平衡率Rmが閾値Th1以上であって、かつ正相電圧振幅Vmag_pが閾値Th3未満である場合に、交流系統2の不平衡事故を検出してもよい。なお、正相電圧の代わりに、各相電圧の実効値の最小値を用いる構成であってもよい。
不平衡事故検出部461は、交流系統2の不平衡事故の検出信号Saを出力する。例えば、値“1”の検出信号Saは不平衡事故が検出されたことを示し、値“0”の検出信号Saは不平衡事故が検出されていないことを示す。
(電圧バランスの制御方式)
上記において、第1循環電流指令生成部417は、コンデンサの電圧バランス制御として、相間バランス制御および正負バランス制御を実行することにより第1循環電流指令値Iz1*を生成する構成について説明した。
不平衡事故が検出された場合(すなわち、値“1”の検出信号Saの入力を受けた場合)第1循環電流指令生成部417は、相間バランス制御および正負バランス制御の応答性を高める処理を実行する。
図8は、第1循環電流指令生成部417の構成例を示す図である。図8を参照して、第1循環電流指令生成部417は、各相(例えば、U相~W相)について、相間バランス制御部600と、正負バランス制御部610と、加算器620とを含む。図8の例では、相間バランス制御部600および正負バランス制御部610は、PI制御器により構成されているが、これらは比例制御器、PID制御器、またはフィードバック制御に用いられる他の制御器として構成されてもよい。
相間バランス制御部600は、減算器601と、比例器603と、積分器605と、加算器607とを含む。減算器601は、相間バランス制御指令値Vpha*と、フィードバック値Vphafとの偏差ΔVpha(すなわち、ΔVpha=Vpha*-Vphaf)を出力する。典型的には、フィードバック値Vphafは、各相(例えば、U相)のレグ回路8に含まれる各コンデンサ32のコンデンサ電圧平均値(例えば、Vcpua_puおよびVcnua_puの平均値)に設定される。この場合、相間バランス制御指令値Vpha*は、6つのコンデンサ電圧平均値Vca_pu(すなわち、Vcpua_pu~Vcnwa_pu)の平均値に設定される。
比例器603は、偏差ΔVphaに比例ゲインKp1を乗じた乗算値“Kp1×ΔVpha”を出力する。積分器605は、偏差ΔVphaを時間積分した値を出力する。なお、積分器605の積分ゲインKi1は、比例ゲインKp1および積分時間Ti1を用いて、“Ki1=Kp1/Ti1”と表される。加算器607は、比例器603の出力値および積分器605の出力値を加算した加算値を出力する。
相間バランス制御部600は、値“1”の検出信号Saの入力を受けた場合(すなわち、不平衡事故が検出された場合)、相間バランス制御の応答性を高める処理として、通常時(すなわち、不平衡事故が検出されていない場合)よりも、相間バランス制御の制御ゲイン(例えば、比例ゲインKp1および積分ゲインKi1)を大きくする処理を実行する。なお、相間バランス制御部600は、値“0”の検出信号Saの入力を受けた場合(すなわち、不平衡事故が検出されていない場合)、比例ゲインKp1および積分ゲインKi1を通常値に設定する。
また、相間バランス制御部600は、相間バランス制御の応答性を高める処理として、積分器605の出力値の制限を緩和する処理を実行してもよい。具体的には、相間バランス制御部600は、積分器605の上限リミット値を大きくし(例えば、+∞に設定し)、下限リミット値を小さくする(例えば、-∞に設定する)処理を実行してもよい。なお、加算器607の出力値に上下限を制限するリミッタが設けられている場合、相間バランス制御の応答性を高める処理として、上限リミット値を大きくし、下限リミット値を小さくする処理が実行されてもよい。
正負バランス制御部610は、減算器611と、比例器613と、積分器615と、加算器617とを含む。減算器611は、正負バランス制御指令値Vpn*と、フィードバック値Vpnfとの偏差ΔVpn(すなわち、ΔVpn=Vpn*-Vpnf)を出力する。典型的には、フィードバック値Vpnfは、各相(例えば、U相)の負側アーム13nのコンデンサ電圧平均値(例えば、Vcnua_pu)に設定される。この場合、正負バランス制御指令値Vpn*は、各相(例えば、U相)の正側アーム13pのコンデンサ電圧平均値(例えば、Vcpua_pu)に設定される。
比例器613は、偏差ΔVpnに比例ゲインKp2を乗じた乗算値“Kp2×ΔVph”を出力する。積分器615は、偏差ΔVpnを時間積分した値を出力する。積分器615の積分ゲインKi2は、比例ゲインKp2および積分時間Ti2を用いて、“Ki2=Kp2/Ti2”と表される。加算器617は、比例器613の出力値および積分器615の出力値を加算した加算値を出力する。
正負バランス制御部610は、値“1”の検出信号Saの入力を受けた場合、正負バランス制御の応答性を高める処理として、通常時よりも、正負バランス制御の制御ゲイン(例えば、比例ゲインKp2および積分ゲインKi2)を大きくする処理を実行する。正負バランス制御部610は、値“0”の検出信号Saの入力を受けた場合、比例ゲインKp2および積分ゲインKi2を通常値に設定する。正負バランス制御部610は、正負バランス制御の応答性を高める処理として、積分器615の上限リミット値を大きくし、下限リミット値を小さくする処理を実行してもよい。なお、加算器617の出力値に上下限を制限するリミッタが設けられている場合、正負バランス制御の応答性を高める処理として、上限リミット値を大きくし、下限リミット値を小さくする処理が実行されてもよい。
上記のように、不平衡事故が検出された際には、通常時よりも、比例ゲインKp2および積分ゲインKi2が増大し、積分器615の出力制限が緩和されるため、正負バランス制御の応答性が高まる。これにより、正負アーム間でのコンデンサ電圧をより高速にバランスさせることができる。
加算器620は、相間バランス制御部600の加算器607の出力値と、正負バランス制御部610の加算器617の出力値とを加算した第1循環電流指令値Iz1*を出力する。上記より、不平衡事故が検出された際には、相アーム間および正負アーム間でのコンデンサ電圧をより高速にバランスさせる第1循環電流指令値Iz1*が生成される。なお、加算器620の出力値に上下限を制限するリミッタが設けられている場合、相間バランス制御および正負バランス制御の応答性を高める処理として、上限リミット値を大きくし、下限リミット値を小さくする処理が実行されてもよい。
(電圧脈動の制御方式)
次に、電圧脈動の制御方式について説明する。具体的には、コンデンサ32の電圧脈動を小さくするための第2循環電流指令値Iz2*の算出方式について説明する。
図9は、第2循環電流指令生成部419の機能構成の一例を示す図である。第2循環電流指令生成部419は、振幅制御部452と、位相調整部454と、生成部456とを含む。
振幅制御部452は、6つのアーム電圧指令値Varm*と、6つのコンデンサ電圧平均値Vca_puと、コンデンサ電圧最大値Vcmax_puと、コンデンサ電圧最小値Vcmin_puと、検出信号Saとの入力を受け付ける。振幅制御部452は、入力された各値に基づいて、第2循環電流指令値Iz2*の振幅Iz2ampを生成する。不平衡事故が検出された場合(すなわち、値“1”の検出信号Saの入力を受けた場合)、振幅制御部452は、振幅Iz2ampの制御応答性を高める処理を実行する。振幅制御部452の詳細については後述する。
位相調整部454は、コンデンサ32の電圧の基本周波数成分が小さくなるように第2循環電流指令値Iz2*の位相θ2を調整する。具体的には、位相調整部454は、アーム電圧指令値の交流成分である交流制御指令値Varmac*と、その直流成分である直流制御指令値Varmdc*と、交流電流Iac_puと、直流電流Idc_puとの入力を受け付ける。
位相調整部454は、受け付けた各パラメータと、リアクトルのインダクタンス値Larmと、交流系統2の交流電圧の角周波数ωと、予め定められた公知の演算式とを用いて、第2循環電流指令値Iz2*の位相θ2を算出する。交流電流Iac_puおよび直流電流Idc_puは、予め設定された指令値であってもよく、角周波数ωは、位相同期回路(PLL:Phase Locked Loop)等から得られた角周波数であってもよいし、定格値であってもよい。
生成部456は、振幅制御部452から出力された振幅Iz2ampと、位相調整部454から出力された位相θ2とに基づいて、各相の第2循環電流指令値Iz2*を生成する。具体的には、第2循環電流指令値Iz2*は、“Iz2*=Iz2amp×sin(2ωt+θ2)”で表される。
図10は、振幅制御部452の具体的な構成例を示す図である。図10を参照して、振幅制御部452は、演算器471と、最小値検出部472と、減算器473,474,475と、最小値検出部476と、フィルタ部477と、極性反転部478と、振幅調整部480とを含む。振幅調整部480は、積分器482と、リミッタ484とを含む。
演算器471は、各アーム13について、当該アームに含まれる各コンデンサ32の電圧の平均値(すなわち、コンデンサ電圧平均値Vca_pu)と、アーム電圧指令値Varm*を個数M(すなわち、アーム13に含まれる変換器セル1の数)で除算した値との偏差を算出する。アーム電圧指令値を個数Mで除算した値は、アーム13に含まれる複数の変換器セル1の各々の出力電圧の指令値に相当する。
例えば、演算器471は、正側アーム13puについて、コンデンサ電圧平均値Vcpua_puと、アーム電圧指令値Varmpu*の1/M倍(すなわち、Varmpu*/M)との偏差σpu(=Vcpua_pu-Varmpu*/M)を算出する。同様の算出方式により、正側アーム13pv,13pwおよび負側アーム13nu,13nv,13nwについて、それぞれ偏差σpv,σpw,σnu,σnv,σnwが算出される。
これらの偏差σpu~σnwを偏差σsとも総称する。この場合、偏差σsは、アーム13のアーム電圧指令値を個数Mで除算した値(すなわち、各変換器セル1の出力電圧指令値)に対して、当該アーム13に含まれる複数のコンデンサ32の出力電圧の平均値にどれだけ余裕があるかを示す上側の制御余裕を示す。
最小値検出部472は、各偏差σsのうちの最小値σmin1を検出する。減算器473は、コンデンサ32の上限電圧値VcHlimとコンデンサ電圧最大値Vcmax_puとの偏差σvH(=VcHlim-Vcmax_pu)を算出する。偏差σvHは、コンデンサ電圧の最大側の制御余裕を示す。減算器474は、コンデンサ32の下限電圧値VcLlimとコンデンサ電圧最小値Vcmin_puとの偏差σvL(=Vcmin_pu-VcLlim)を算出する。偏差σvLは、コンデンサ電圧の最小側の制御余裕を示す。上限電圧値VcHlimは、例えば、コンデンサに印加可能な電圧、半導体素子の定格電圧等から定められる。下限電圧値VcLlimは、電力変換器6が定常的に動作可能なコンデンサ電圧の下限値から定められる。
減算器475は、最小値σmin1と、制御余裕下限値σLlimとの偏差σcL(=σmin1-σLlim)を算出する。偏差σcLは、上側の制御余裕の最小値である。なお、制御余裕下限値σLlimは0、または非常に小さい正の値に設定する。
コンデンサ電圧の脈動が小さくなると、各偏差σcL,σvH,σvLは大きくなる。振幅Iz2ampを大きくすることにより、各偏差σcL,σvH,σvLを大きくできる。各偏差σcL,σvH,σvLが負の値になる場合には振幅Iz2ampを増大させ、これらが正の値の場合には振幅Iz2ampを減少させることにより、できるだけ小さい第2循環電流指令値Iz2*で制御余裕を0以上にできる。
最小値検出部476は、各偏差σcL,σvH,σvLのうちの最小値σmin2を検出する。最小値σmin2は、フィルタ部477への入力値として入力される。最小値σmin2は、各偏差σcL,σvH,σvLのすべてを考慮した場合の最小の制御余裕である。
フィルタ部477は、最小値σmin2を入力値として受け付け、当該入力値をフィルタ処理して出力値を出力する。当該入力値は、各アーム13の出力電圧の制御余裕度の最小値であるため、瞬時的には脈動を有する。ある時間幅(例えば、交流系統2の電圧の1周期)における当該最小値に基づいて、第2循環電流指令値Iz2*を算出する必要がある。そのため、フィルタ部477は、当該最小値を検出する機能を有している。
ある局面では、フィルタ部477は、当該検出機能を有しており、今回の制御周期においてフィルタ部477に入力された入力値(以下、「今回の入力値」とも称する。)が、前回の制御周期においてフィルタ部477から出力された出力値(以下、「前回の出力値」とも称する。)未満である場合、今回の入力値と同一の値を今回の出力値(すなわち、今回の制御周期においてフィルタ部477から出力される出力値)として出力する。フィルタ部477は、今回の入力値が前回の出力値以上である場合、今回の入力値以下かつ前回の出力値以上である値を今回の出力値として出力する。この場合、例えば、フィルタ部477は、徐々に出力値を増大させる。
極性反転部478は、フィルタ部477の出力値の極性を反転した値(すなわち、出力値に“-1”を掛けた値)を出力する。振幅調整部480は、フィルタ部477の出力値に基づいて、第2循環電流指令値Iz2*の振幅Iz2ampを調整する。具体的には、振幅調整部480は、積分器482と、リミッタ484とを含む。
積分器482は、極性反転部478からフィルタ部477の出力値の極性を反転した値の入力を受け付け、当該値を時間積分した値を出力する。積分器482の積分ゲインKi3は、比例ゲインKp3および積分時間Ti3を用いて、“Ki3=Kp3/Ti3”と表される。
リミッタ484は、規定のリミット値(例えば、上限リミット値および下限リミット値)を用いて積分器482の出力値を制限した値を第2循環電流指令値Iz2*の振幅Iz2ampとして出力する。具体的には、積分器482の出力値を下限リミット値以上かつ上限リミット値以下に制限した値を振幅Iz2ampとして出力する。例えば、下限リミット値は0に設定され、上限リミット値はIz2maxに設定される。すなわち、振幅Iz2ampは0以上かつIz2max以下に制限される。
振幅Iz2ampの下限値を0に制限しない場合、各偏差σcL,σvH,σvLが大きい場合に、これらのいずれかの最小値が0になるように負の振幅Iz2ampを有する第2循環電流指令値Iz2*に従う循環電流が流れることによりコンデンサ32の電圧脈動が大きくなる。この場合、電力損失が増大し、不必要にコンデンサ32の電圧脈動が大きくなる。そのため、リミッタ484によって、振幅Iz2ampを負にしないようにする必要がある。
振幅調整部480は、不平衡事故が検出された場合、第2循環電流指令値Iz2*の振幅制御の応答性を高める処理として、通常時よりも、積分ゲインKi3を大きくする処理を実行する。なお、振幅調整部480は、値“0”の検出信号Saの入力を受けた場合(すなわち、不平衡事故が検出されていない場合)、積分ゲインKi3を通常値に設定する。また、振幅調整部480は、当該振幅制御の応答性を高める処理として、積分器482の出力値の制限を緩和する処理を実行してもよい。具体的には、振幅調整部480は、上限リミット値であるIz2maxを大きくする処理を実行してもよい。
これにより、不平衡事故が検出された際には、通常時よりも、積分ゲインKi3が増大し、積分器482の出力制限が緩和されるため、第2循環電流指令値Iz2*の振幅制御の応答性が高まる。したがって、コンデンサ電圧の電圧脈動の抑制制御をより高速に実行することができる。
なお、振幅制御部452は、各偏差σcL,σvH,σvLのうちのいずれか1つ、または2つを用いて振幅Iz2ampを算出する構成であってもよい。具体的には、振幅制御部452は、各コンデンサ32の電圧の1以上の代表値と、1以上の代表値にそれぞれ対応する1以上の代表指令値とに基づく制御余裕を算出し、少なくとも1つの制御余裕に基づいて、振幅Iz2ampを制御してもよい。一例では、代表値は、偏差σpu~σnwのうちの最小値σmin1である。当該代表値に対応する代表指令値は、制御余裕下限値σLlimである。
(循環電流の制御方式)
図11は、循環電流制御部421の構成例を示す図である。図11を参照して、循環電流制御部421は、各相(例えば、U相~W相)について、加算器641と、減算器651と、比例器653と、積分器655と、加算器657とを含む。図11の例では、循環電流制御部421は、PI制御器により構成されているが、比例制御器、PID制御器、またはフィードバック制御に用いられる他の制御器として構成されてもよい。
加算器641は、第1循環電流指令値Iz1*と第2循環電流指令値Iz2*との加算値を示す循環電流指令値Iz*を出力する。減算器651は、循環電流指令値Iz*と、フィードバック値としての循環電流Iz_puとの偏差ΔIz(すなわち、ΔIz=Iz*-Iz_pu)を出力する。
比例器653は、偏差ΔIzに比例ゲインKp4を乗じた乗算値“Kp4×ΔIz”を出力する。積分器655は、偏差ΔIzを時間積分した値を出力する。なお、積分器655の積分ゲインKi4は、比例ゲインKp4および積分時間Ti4を用いて、“Ki4=Kp4/Ti4”と表される。加算器657は、比例器653の出力値および積分器655の出力値の加算値である循環電圧指令値Vz*を出力する。
循環電流制御部421は、値“1”の検出信号Saの入力を受けた場合(すなわち、不平衡事故が検出された場合)、循環電流制御の応答性を高める処理として、通常時よりも、循環電流制御の制御ゲイン(例えば、比例ゲインKp4および積分ゲインKi4)を大きくする処理を実行する。一方、循環電流制御部421は、値“0”の検出信号Saの入力を受けた場合、比例ゲインKp4および積分ゲインKi4を通常値に設定する。
また、循環電流制御部421は、循環電流制御の応答性を高める処理として、積分器655の上限リミット値を大きくし(例えば、+∞に設定し)、下限リミット値を小さくする(例えば、-∞に設定する)処理を実行してもよい。また、加算器657の出力値に上下限を制限するリミッタが設けられている場合、循環電流制御の応答性を高める処理として、上限リミット値を大きくし、下限リミット値を小さくする処理が実行されてもよい。
上記のように、不平衡事故が検出された際には、通常時よりも、比例ゲインKp4および積分ゲインKi4が増大し、積分器655の出力制限が緩和されるため、循環電流制御の応答性が高まる。これにより、相アーム間および正負アーム間でのコンデンサ電圧をより高速にバランスさせることができる。
(正負アーム間の電圧バランス制御方式)
次に、正負バランス電圧指令生成部424により実行される正負バランス制御方式について説明する。具体的には、正負アーム間のコンデンサの電圧バランスを制御するための交流電圧指令値Vapn*の算出方式について説明する。
図12は、正負バランス電圧指令生成部の構成例を示すブロック図である。図12を参照して、正負バランス電圧指令生成部424は、減算器711~713と、定数乗算器714~716と、フィルタ721~723と、加算器765と、定数乗算器770と、減算器771~773と、制御器781~783とを含む。
減算器711は、正側アーム13puのコンデンサ電圧平均値Vcpua_puから、負側アーム13nuのコンデンサ電圧平均値Vcnua_puを減算する。定数乗算器714は、この減算値に1/2を乗算する。各アーム13のキャパシタ電圧の平均値相当の値には、系統周波数と同一の周波数振動および系統周波数の2倍の周波数振動(以下、「周波数振動成分」とも総称する。)が存在する。フィルタ721は、定数乗算器714の乗算結果からこの周波数振動成分を除去する。
同様に、減算器712は、正側アーム13pvのコンデンサ電圧平均値Vcpva_puから、負側アーム13nvのコンデンサ電圧平均値Vcnva_puを減算する。定数乗算器715は、この減算値に1/2を乗算する。フィルタ722は、定数乗算器715の乗算結果から周波数振動成分を除去する。減算器713は、正側アーム13pwのコンデンサ電圧平均値Vcpwa_puから、負側アーム13nwのコンデンサ電圧平均値Vcnwa_puを減算する。定数乗算器716は、この減算値に1/2を乗算する。フィルタ723は、定数乗算器716の乗算結果から周波数振動成分を除去する。
上記のフィルタ721~723として、例えば、系統周波数と同一の周波数の移動平均フィルタを用いてもよいし、系統周波数と同一の周波数のノッチフィルタおよび2倍の周波数のノッチフィルタを用いてもよい。
加算器765は、フィルタ721~723を通過した値を加算する。定数乗算器770は、加算器765の加算結果に1/3を乗算する。これにより、中性点電圧V0xが求まる。減算器771は、フィルタ721を通過した値から中性点電圧V0xを減算した減算値Vxuを出力する。制御器781は、減算値Vxuをゼロにするためのフィードバック演算を実行することにより、U相の正負バランス用の交流電圧指令値Vapnu*を生成する。
同様に、減算器772は、フィルタ722を通過した値から中性点電圧V0xを減算した減算値Vxvを出力する。制御器782は、減算値Vxvをゼロにするためのフィードバック演算を実行することにより、V相の正負バランス用の交流電圧指令値Vapnv*を生成する。減算器773は、フィルタ723を通過した値から中性点電圧V0xを減算した減算値Vxwを出力する。制御器783は、減算値Vxwをゼロにするためのフィードバック演算を実行することにより、W相の正負バランス用の交流電圧指令値Vapnw*を生成する。生成された各相の交流電圧指令値Vapn*は、電圧指令生成部425に出力される。
次に、制御器781~783(以下、「制御器780」とも総称する。)の具体的な構成について説明する。各相の減算値Vxu~Vxwを“減算値Vx”とも総称する。
図13は、正負バランス電圧指令生成部に設けられる制御器780の構成例を示す図である。図13を参照して、各相の制御器780は、比例器753と、積分器755と、加算器757とを含む。図13の例では、制御器780は、PI制御器により構成されているが、比例制御器、PID制御器、またはフィードバック制御に用いられる他の制御器として構成されてもよい。
比例器753は、減算値Vxに比例ゲインKp5を乗じた乗算値“Kp5×Vx”を出力する。積分器755は、減算値Vxを時間積分した値を出力する。なお、積分器755の積分ゲインKi5は、比例ゲインKp5および積分時間Ti5を用いて、“Ki5=Kp5/Ti5”と表される。加算器757は、比例器753の出力値および積分器755の出力値の加算値である交流電圧指令値Vapn*を出力する。
制御器780は、値“1”の検出信号Saの入力を受けた場合(すなわち、不平衡事故が検出された場合)、正負バランス制御の応答性を高める処理として、通常時よりも、正負バランス制御の制御ゲイン(例えば、比例ゲインKp5および積分ゲインKi5)を大きくする処理を実行する。一方、制御器780は、値“0”の検出信号Saの入力を受けた場合、比例ゲインKp5および積分ゲインKi5を通常値に設定する。
また、制御器780は、正負バランス制御の応答性を高める処理として、積分器755の上限リミット値を大きくし(例えば、+∞に設定し)、下限リミット値を小さくする(例えば、-∞に設定する)処理を実行してもよい。なお、加算器757の出力値に上下限を制限するリミッタが設けられている場合、正負バランス制御の応答性を高める処理として、上限リミット値を大きくし、下限リミット値を小さくする処理が実行されてもよい。
上記のように、不平衡事故が検出された際には、通常時よりも、比例ゲインKp5および積分ゲインKi5が増大し、積分器755の出力制限が緩和されるため、正負バランス制御の応答性が高まる。これにより、正負アーム間でのコンデンサ電圧をより高速にバランスさせることができる。
(交流電流の出力抑制)
再び、図7を参照して、交流電流制御部415は、値“1”の検出信号Saの入力を受けた場合(すなわち、不平衡事故が検出された場合)、交流系統2と電力変換器6との間に流れる交流電流Iacの大きさを小さくする処理(以下、「出力抑制処理」とも称する。)を実行する。
具体的には、交流電流制御部415に入力される交流電流指令値Iac*は、交流電流リミット値Imaxに基づく適正範囲(すなわち、下限値:-Imax、上限値:+Imax)に制限される。すなわち、交流電流指令値Iac*が交流電流リミット値Imaxに基づく適正範囲を逸脱している場合には、交流電流指令値Iac*は下限値(-Imax)または上限値(+Imax)に制限される。
交流電流制御部415は、不平衡事故が検出された場合、交流電流リミット値Imaxを小さくする。この場合、交流電流リミット値Imaxに基づく適正範囲は小さくなるため、交流電流指令値Iac*も小さくなる。交流電流制御部415は、このような交流電流指令値Iac*を補正した指令値に追従する交流電流Iacが出力されるように制御する。したがって、電力変換器6から出力される交流電流Iacが小さくなる。
他の例として、交流電流制御部415は、不平衡事故が検出された場合、交流電流指令値Iac*のd軸成分およびq軸成分の少なくとも一方のリミット値を小さくすることにより、電力変換器6から出力される交流電流Iacを小さくしてもよい。
なお、交流電流制御部415は、値“0”の検出信号Saの入力を受けた場合(すなわち、不平衡事故が検出されない場合)、交流電流リミット値Imaxを通常値に設定する。
上記の出力抑制処理によると、不平衡事故時において電力変換器6の出力を抑制できるため、電力変換器6の保護停止(例えば、過電流保護のための停止)を防ぐことができる。
(逆相電圧補償の制御方式)
図7を参照して、逆相電圧補償部412は、逆相電圧補償の実行時に、逆相電流指令値Inavr*を出力する。ここで、逆相電圧補償の実行時とは、不平衡事故が検出されていない場合である。逆相電圧補償は、定常時の電力系統の品質向上(例えば、定常時の電圧不平衡率改善)のために実行されるものであり、系統事故時には電力変換器6自体の安定運転および運転継続性を優先させるのが望ましい。
具体的には、逆相電圧補償部412は、値“1”の検出信号Saの入力を受けた場合(すなわち、不平衡事故が検出された場合)、逆相電圧補償を停止する。例えば、逆相電圧補償部412は、逆相電流指令値Inavr*を出力しない、あるいは、逆相電流指令値Inavr*としてゼロを出力する。一方、逆相電圧補償部412は、値“0”の検出信号Saの入力を受けた場合(すなわち、不平衡事故が検出されていない場合)、逆相電圧補償を実行する(すなわち、逆相電流指令値Inavr*を出力する)。
上記構成によると、定常時は逆相電圧補償を有効とし、不平衡事故時は逆相電圧補償を無効とすることができるので、コンデンサ電圧が相間でアンバランスすることを防止しながら、系統電圧を安定化できる。また、逆相電圧補償を停止することにより、制御余裕を上述した相間バランス制御、正負バランス制御、および電圧脈動の抑制制御に振り分けることができる。
(まとめ)
上記のように、制御装置5(具体的には、基本制御部502)は、不平衡事故を検出した場合、コンデンサ電圧に関する制御の応答性を高める処理を実行する。コンデンサ電圧に関する制御は、コンデンサの電圧バランス制御(具体的には、相間バランス制御、正負バランス制御)、およびコンデンサの電圧脈動の抑制制御の少なくとも一方を含む。また、制御装置5は、不平衡事故を検出した場合、循環電流制御の応答性の高速化処理、出力抑制処理、および逆相電圧補償の停止処理を実行する。
制御装置5は、不平衡事故の検出時において、上記の複数の処理(例えば、相間バランス制御、正負バランス制御、電圧脈動の抑制制御、および循環電流制御の応答性の高速化処理、出力抑制処理、逆相電圧補償の停止処理)の少なくとも1つを実行してもよいし、予め定められた優先順位に従って、当該複数の処理を実行する構成であってもよい。
また、制御装置5は、当該複数の処理を実行した後、規定時間が経過しても不平衡事故の検出が継続している場合には、電力変換器6に含まれるすべての変換器セル1のスイッチング素子31をゲートブロックするためのゲートブロック指令を各変換器セル1に出力する。なお、不平衡事故が検出されなくなった場合、制御装置5は、電力変換器6のすべての変換器セル1のスイッチング素子31をゲートブロック状態からデブロック状態に移行させるために、各変換器セル1にデブロック指令を出力する。
<利点>
本実施の形態によると、交流系統2の不平衡事故の発生時において、変換器セル1内のコンデンサ32の電圧を適切に制御することにより、電力変換装置100の運転を継続することが可能となる。
その他の実施の形態.
上述の実施の形態として例示した構成は、本開示の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。また、上述した実施の形態において、他の実施の形態で説明した処理および構成を適宜採用して実施する場合であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。