以下、図面を参照しつつ、本実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
実施の形態1.
<全体構成>
図1は、電力変換装置100の構成例を示す図である。図1を参照して、電力変換装置100は、交流系統12と直流回路106との間に接続されている。直流回路106は、例えば、直流送電網等を含む直流電力系統である。または、直流回路106は、電力変換器101の直流端子に接続された蓄電要素を含んでもよい。蓄電要素は、例えば、電気二重層キャパシタ、あるいはリチウムイオン電池等の蓄電池を含む蓄電装置である。あるいは、直流回路106は、電力変換器101の直流端子に接続された他の電力変換器の直流端子を含んでもよい。
電力変換装置100は、電力変換器101と、電力変換器101を制御する制御装置7とを含む。典型的には、電力変換器101は、互いに直列接続された複数の変換器セル10(図1中の「セル」に対応)を含むダブルスター型のモジュラーマルチレベル変換器(MMC:Modular Multilevel Converter)によって構成される。なお、「変換器セル」は、「サブモジュール(sub module)」あるいは「単位変換器」とも称される。
電力変換器101は、直流回路106に接続されており、直流回路106と交流系統12との間で電力変換を行なう。具体的には、電力変換器101は、直流回路106から出力される直流電力を交流電力に変換して、当該交流電力を変圧器4を介して交流系統12に出力する。また、電力変換器101は、交流系統12からの交流電力を直流電力に変換して、当該直流電力を直流回路106に出力する。
図1の例では、電力変換器101は、交流系統12のU相、V相、W相にそれぞれ対応する複数のレグ回路8u,8v,8wを含む。具体的には、電力変換器101は、正側直流端子(すなわち、高電位側直流端子)Npと、負側直流端子(すなわち、低電位側直流端子)Nnとの間に互いに並列に接続された複数のレグ回路8u,8v,8w(以下、総称する場合または任意のものを示す場合、「レグ回路8」と記載する)を含む。
レグ回路8u,8v,8wにそれぞれ設けられた交流端子Nu,Nv,Nwは、変圧器4を介して交流系統12に接続される。交流系統12は、例えば、交流電源などを含む三相交流電力系統である。各レグ回路8に共通に設けられた直流端子(すなわち、正側直流端子Np,負側直流端子Nn)は、直流回路106に接続される。
図1の変圧器4を用いる代わりに、レグ回路8u,8v,8wは、連系リアクトルを介して交流系統12に接続される構成でもよい。さらに、交流端子Nu,Nv,Nwに代えてレグ回路8u,8v,8wにそれぞれ一次巻線を設け、この一次巻線と磁気結合する二次巻線を介してレグ回路8u,8v,8wが変圧器4または連系リアクトルに交流的に接続するようにしてもよい。この場合、一次巻線を下記のリアクトルとしてもよい。すなわち、レグ回路8は、交流端子Nu,Nv,Nwまたは上記の一次巻線など、各レグ回路8u,8v,8wに設けられた接続部を介して電気的(すなわち、直流的または交流的)に交流系統12に接続される。
レグ回路8uは、正側直流端子Npから交流端子Nuまでの正側アーム9puと、負側直流端子Nnから交流端子Nuまでの負側アーム9nuとを含む。正側アーム9puと負側アーム9nuとの接続点が、交流端子Nuとして変圧器4と接続される。正側直流端子Npおよび負側直流端子Nnが直流回路106に接続される。レグ回路8vは正側アーム9pvと負側アーム9nvとを含み、レグ回路8wは正側アーム9pwと負側アーム9nwとを含む。正側アーム9pu,9pv,9pwを「正側アーム9p」とも総称し、負側アーム9nu,9nv,9nwを「負側アーム9n」とも総称する。また、正側アーム9pu,9pv,9pwおよび負側アーム9nu,9nv,9nwを「アーム9」とも総称する。
このように、レグ回路8は、直列接続された正側アーム9pおよび負側アーム9nにより構成される。正側アーム9pおよび負側アーム9nの接続点(例えば、交流端子Nu,Nv,Nw)は、交流系統12の対応する相の交流線に接続される。直列接続された正側アーム9pおよび負側アーム9nの両端(すなわち、正側直流端子Npおよび負側直流端子Nn)は、直流回路106に接続される。レグ回路8v,8wはレグ回路8uと同様の構成を有しているので、以下、レグ回路8uを代表として説明する。
レグ回路8uにおいて、正側アーム9puは、互いにカスケード接続された複数の変換器セル10と、リアクトル5aとを含む。複数の変換器セル10とリアクトル5aとは互いに直列接続されている。負側アーム9nuは、互いにカスケード接続された複数の変換器セル10と、リアクトル5bとを含む。複数の変換器セル10とリアクトル5bとは互いに直列接続されている。
リアクトル5aが挿入される位置は、正側アーム9puのいずれの位置であってもよく、リアクトル5bが挿入される位置は、負側アーム9nuのいずれの位置であってもよい。リアクトル5a,5bはそれぞれ複数個あってもよい。各リアクトルのインダクタンス値は互いに異なっていてもよい。さらに、正側アーム9puのリアクトル5aのみ、もしくは、負側アーム9nuのリアクトル5bのみを設けてもよい。
電力変換装置100は、交流電圧検出器14と、交流電流検出器15と、直流電圧検出器11p,11nと、直流電流検出器111と、各レグ回路8に設けられたアーム電流検出器13a,13bとを含む。これらの検出器は、電力変換装置100の制御に使用される電気量(例えば、電流、電圧)を計測する。これらの検出器によって検出された信号は、制御装置7に入力される。
交流電圧検出器14は、交流系統12の三相の交流電圧Vu,Vv,Vw(以下、「交流電圧Vac」とも総称する。)を検出する。検出された交流電圧Vu,Vv,Vwは、制御装置7に入力される。交流電流検出器15は、交流系統12の三相の交流電流Iu,Iv,Iwを検出する。検出された交流電流Iu,Iv,Iwは、制御装置7に入力される。
直流電圧検出器11pは、直流回路106に接続された正側直流端子Npの直流電圧Vdcpを検出する。直流電圧検出器11nは、直流回路106に接続された負側直流端子Nnの直流電圧Vdcnを検出する。検出された直流電圧Vdcp,Vdcnは、制御装置7に入力される。なお、正側直流端子Npと負側直流端子Nnとの間の直流電圧Vdcは、直流電圧Vdcpと直流電圧Vdcnとの差分(すなわち、Vdcp-Vdcn)である。
直流電流検出器111は、電力変換器101から出力される直流電流Idcを検出する。直流電流Idcは、電力変換器101と直流回路106との間に流れる直流電流値に相当する。検出された直流電流Idcは、制御装置7に入力される。なお、直流電流Idcは、“Idc=(Ipu+Ipv+Ipw+Inu+Inv+Inw)/2”のように演算されてもよい。
U相用のレグ回路8uに設けられたアーム電流検出器13a,13bは、正側アーム9puに流れる正側アーム電流Ipuおよび負側アーム9nuに流れる負側アーム電流Inuをそれぞれ検出する。V相用のレグ回路8vに設けられたアーム電流検出器13a,13bは、正側アーム電流Ipvおよび負側アーム電流Invをそれぞれ検出する。W相用のレグ回路8wに設けられたアーム電流検出器13a,13bは、正側アーム電流Ipwおよび負側アーム電流Inwをそれぞれ検出する。検出された正側アーム電流Ipu,Ipv,Ipwおよび負側アーム電流Inu,Inv,Inwは、制御装置7に入力される。
各変換器セル10において、変換器セル10に含まれるコンデンサの電圧(以下、“コンデンサ電圧Vc”とも称する。)が検出される。検出されたコンデンサ電圧Vcは、制御装置7に入力される。変換器セル10の構成については後述する。
制御装置7は、直流電圧Vdcの直流電圧指令値Vdcrefと、直流電流Idcの直流電流指令値Idcrefと、全ての変換器セル10のコンデンサ電圧の平均値を制御するための全電圧指令値Vcallと、コンデンサ電圧Vcを一定範囲に保つための許容範囲の最大値Vmaxおよび最小値Vminとの入力を受ける。直流電圧指令値Vdcref、直流電流指令値Idcref、全電圧指令値Vcall、最大値Vmaxおよび最小値Vminは、外部から入力されてもよいし、制御装置7内で設定または生成されるものであってもよい。
<変換器セルの構成例>
図2は、変換器セル10の一例を示す回路図である。図2(a)に示す変換器セル10は、ハーフブリッジ構成と呼ばれる回路構成を有する。変換器セル10は、2つのスイッチング素子31p、31nを直列接続して形成した直列体と、整流素子としてのダイオード32p,32nと、蓄電素子としてのコンデンサ33と、入出力端子P1,P2と、電圧検出部34とを含む。
図2(a)を参照して、ダイオード32p,32nは、スイッチング素子31p,31nと逆並列に(すなわち、並列かつ逆バイアス方向に)接続される。スイッチング素子31pおよび31nの直列体とコンデンサ33とは並列接続される。電圧検出部34は、コンデンサ33の両端電圧であるコンデンサ電圧Vcを検出する。
スイッチング素子31p,31nの直列体と、ダイオード32p,32nとによってハーフブリッジ回路10Hが構成される。スイッチング素子31nの両端子は、入出力端子P1,P2とそれぞれ接続される。したがって、コンデンサ33は、ハーフブリッジ回路10Hを介して入出力端子P1,P2に接続される。
変換器セル10は、スイッチング素子31p,31nのスイッチング動作により、コンデンサ33の両端電圧またはゼロ電圧を、入出力端子P1およびP2の間に出力する。スイッチング素子31pがオン、かつスイッチング素子31nがオフとなったときに、変換器セル10からは、コンデンサ33の両端電圧(すなわち、コンデンサ電圧Vc)が出力される。スイッチング素子31pがオフ、かつスイッチング素子31nがオンとなったときに、変換器セル10は、ゼロ電圧を出力する。
なお、スイッチング素子31pの両端子が、入出力端子P1,P2とそれぞれ接続されていてもよい。この場合も、スイッチング素子31p,31nのオンオフ動作により、変換器セル10は、入出力端子P1,P2からコンデンサ電圧Vcおよびゼロ電圧を出力する。
図2(b)に示す変換器セル10は、フルブリッジ構成と呼ばれる回路構成を有する。この変換器セル10は、2つのスイッチング素子31p1,31n1を直列接続して形成された第1の直列体と、2つスイッチング素子31p2,31n2を直列接続して形成された第2の直列体と、ダイオード32p1,32n1,32p2,32n2と、コンデンサ33と、電圧検出部34と、入出力端子P1,P2とを含む。
第1の直列体と、第2の直列体と、コンデンサ33とが並列接続される。ダイオード32p1,32n1は、スイッチング素子31p1,31n1とそれぞれ逆並列に接続される。ダイオード32p2,32n2は、スイッチング素子31p2,31n2とそれぞれ逆並列に接続される。スイッチング素子31p1,31n1,31p2,31n2およびダイオード32p1,32n1,32p2,32n2によってフルブリッジ回路10Fが構成される。電圧検出部34は、コンデンサ33の両端電圧であるコンデンサ電圧Vcを検出する。
スイッチング素子31p1およびスイッチング素子31n1の中点は、入出力端子P1と接続される。同様に、スイッチング素子31p2およびスイッチング素子31n2の中点は、入出力端子P2と接続される。したがって、コンデンサ33は、フルブリッジ回路10Fを介して入出力端子P1,P2に接続される。変換器セル10は、スイッチング素子31p1,31n1,31p2,31n2のスイッチング動作により、入出力端子P1,P2から正電圧(例えば、+Vc)、負電圧(例えば、-Vc)またはゼロ電圧を出力する。
図2(a)における2つのスイッチング素子31p、31nと、図2(b)における4つのスイッチング素子31p1、31n1、31p2、31n2とは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の半導体スイッチング素子に還流ダイオードが逆並列に接続されて構成される。また、図2(a)および図2(b)において、コンデンサ33には、フィルムコンデンサ等が主に用いられる。
なお、以下の説明において、スイッチング素子を総称する場合または任意の一つを示す場合に、スイッチング素子31と記載する。また、ダイオードを総称する場合または任意の一つを示す場合に、ダイオード32と記載する。
図1に示されるように、変換器セル10はカスケード接続されている。したがって、入出力端子P1は、隣接する一方の変換器セル10の入出力端子P2又は対応する一方の交流ラインの端子に接続される。入出力端子P2は、隣接する他方の変換器セル10の入出力端子P1又は対応する他方の交流ラインの端子に接続される。
本実施の形態では、変換器セル10を図2(a)に示すハーフブリッジセルの構成であるとするが、図2(b)に示すフルブリッジ構成としてもよい。また、スイッチング素子および蓄電素子も上記のものに限定されない。
<制御装置のハードウェア構成例>
図3は、制御装置7のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図3に示す制御装置7は、コンピュータに基づいて構成される。図3を参照して、制御装置7は、1つ以上の入力変換器70と、1つ以上のサンプルホールド(S/H)回路71と、マルチプレクサ(MUX:multiplexer)72と、A/D変換器73とを含む。さらに、制御装置7は、1つ以上のCPU(Central Processing Unit)74と、RAM(Random Access Memory)75と、ROM(Read Only Memory)76とを含む。さらに、制御装置7は、1つ以上の入出力インターフェイス77と、補助記憶装置78と、上記の構成要素間を相互に接続するバス79とを含む。
入力変換器70は、入力チャンネルごとに補助変成器を備える。各補助変成器は、図1の各検出器による検出信号を、後続する信号処理に適した電圧レベルの信号に変換する。サンプルホールド回路71は、入力変換器70ごとに設けられる。サンプルホールド回路71は、対応の入力変換器70から受けた電気量を表す信号を規定のサンプリング周波数でサンプリングして保持する。
マルチプレクサ72は、複数のサンプルホールド回路71に保持された信号を順次選択する。A/D変換器73は、マルチプレクサ72によって選択された信号をデジタル値に変換する。なお、複数のA/D変換器73を設けることによって、複数の入力チャンネルの検出信号に対して並列的にA/D変換を実行するようにしてもよい。
CPU74は、制御装置7の全体を制御し、プログラムに従って演算処理を実行する。揮発性メモリとしてのRAM75および不揮発性メモリとしてのROM76は、CPU74の主記憶として用いられる。ROM76は、プログラムおよび信号処理用の設定値などを収納する。補助記憶装置78は、ROM76に比べて大容量の不揮発性メモリであり、プログラムおよび電気量検出値のデータなどを格納する。入出力インターフェイス77は、CPU74と外部装置との間で通信する際のインターフェイス回路である。
なお、制御装置7の少なくとも一部をFPGA(Field Programmable Gate Array)およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの回路を用いて構成してもよい。もしくは、制御装置7の少なくとも一部は、アナログ回路によって構成することもできる。
<制御装置の機能構成>
図4は、制御装置7の機能構成の一例を示すブロック図である。図4を参照して、制御装置7は、第1電圧制御部400と、相バランス制御部500と、正負バランス制御部600と、アーム変調指令生成部700と、指令生成部800と、信号生成部900とを含む。これらは、例えば、処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、制御装置7の内部メモリ(例えば、RAM75、ROM76、補助記憶装置78)に格納されるプログラムを実行するCPU74であってもよい。処理回路が専用のハードウェアである場合、処理回路は、例えば、FPGA、ASIC、またはこれらを組み合わせたもの等で構成される。
(第1電圧制御部)
第1電圧制御部400は、電力変換器101に含まれる全ての変換器セル10のコンデンサ電圧の第1電圧代表値を、予め定められた全電圧指令値Vcallに追従させることにより交流電圧指令値Vacrefを生成する。具体的には、第1電圧制御部400は、全電圧制御部200と、電流制御部300とを含む。
全電圧制御部200は、全て(すなわち、全相全アームで6K個、Kは各アームの変換器セルの数)の変換器セル10のコンデンサ電圧Vcの検出値、全ての変換器セル10に対するコンデンサ電圧指令値を示す全電圧指令値Vcall、および直流電流指令値Idcrefの入力を受ける。全電圧制御部200は、全ての変換器セル10のコンデンサ電圧Vcの平均値Vcavを第1電圧代表値として算出し、平均値Vcavが予め定められた全電圧指令値Vcallに追従するように(例えば、平均値Vcavと全電圧指令値Vcallとの偏差が0になるように)制御器によって制御する。なお、第1電圧代表値は、全てのコンデンサ電圧Vcの中央値であってもよく、全てのコンデンサ電圧Vcの大きさを反映するものであればよい。
全電圧制御部200は、この制御器の出力に直流電流指令値Idcrefを加算することにより、有効電流指令値Iqrefを算出する。電力変換器101における交流電力と直流電力との差分が全ての変換器セル10の共通の有効電力となるため、全ての変換器セル10のコンデンサ電圧Vcは有効電流Iqにより制御される。例えば、全電圧制御部200は、特許文献1の全電圧制御部の構成と同様であってもよい。
電流制御部300は、交流系統12の交流電流Iu、Iv、Iwに基づく有効電流Iqおよび無効電流Idを、有効電流指令値Iqref、および無効電流指令値Idrefによって制御することにより、U相の交流電圧指令値Vacuref、V相の交流電圧指令値Vacvref、およびW相の交流電圧指令値Vacwref(総称する場合、交流電圧指令値Vacrefとも称する。)を生成する。
具体的には、電流制御部300は、交流系統電圧に同期する位相θを用いて、交流電流Iu,Iv,Iwの検出値を三相/二相変換することにより、有効電流Iqおよび無効電流Idを生成する。電流制御部300は、有効電流指令値Iqrefに有効電流Iqを追従させるフィードバック制御により有効電圧指令値Vqrefを生成する。電流制御部300は、無効電流指令値Idrefに無効電流Idを追従させるフィードバック制御により無効電圧指令値Vdrefを生成する。電流制御部300は、dq軸上の電圧指令値である無効電圧指令値Vdrefおよび有効電圧指令値Vqrefを三相(U相、V相、W相)の交流電圧指令値Vacuref,Vacvref,Vacwrefに変換する。
(相バランス制御部)
相バランス制御部500は、全ての変換器セル10のコンデンサ電圧Vcと、アーム電流検出器13a,13bで検出された正側アーム電流Ipu,Ipv,Ipwおよび負側アーム電流Inu,Inv,Inwと、直流電流検出器111で検出された直流電流Idcと、全電圧制御部200から出力された第1電圧代表値(例えば、全コンデンサ電圧の平均値Vcav)と、後述する正負バランス制御部600から出力された正負バランス用の循環電流指令値Izpnrefとの入力を受ける。
相バランス制御部500は、相間でのコンデンサの電圧バランスを制御するための循環電圧指令値を生成する。具体的には、相バランス制御部500は、各相(U相、V相、W相)のコンデンサ電圧の平均値Vcavu、Vcavv、Vcavwを、第1電圧代表値(例えば、全コンデンサ電圧の平均値Vcav)に追従させるフィードバック制御により、循環電流制御用のU相、V相、W相の循環電圧指令値Vzuref,Vzvref,Vzwref(以下、循環電圧指令値Vzrefとも総称する。)を生成する。
このようなフィードバック制御は、相(例えば、U相)に含まれる全てのコンデンサの電圧代表値を相バランス制御指令値(例えば、第1電圧代表値としての平均値Vcav)に追従させる相間バランス制御に相当する。各相のコンデンサ電圧の第2電圧代表値は、各相のコンデンサ電圧Vcの平均値でなくてもよく、例えば、各相のコンデンサ電圧Vcの中央値、最大値、最小値であってもよい。なお、相バランス制御部500は、例えば、特許文献1の相バランス制御部の構成と同様であってもよい。
(正負バランス制御部)
正負バランス制御部600は、全ての変換器セル10のコンデンサ電圧Vcの検出値の入力を受ける。正負バランス制御部600は、各相のレグ回路8において、正側アーム9pおよび負側アーム9n間でのコンデンサの電圧バランスを制御するための電圧指令値Vpnuref,Vpnvref,Vpnwref(以下、「電圧指令値Vpnref」とも総称する。)を生成してアーム変調指令生成部700に出力する。また、正負バランス制御部600は、この正負バランス制御のための循環電流指令値Izpnrefを生成して相バランス制御部500に出力する。
具体的には、正負バランス制御部600は、U相について、負側アーム9nのコンデンサ電圧代表値(例えば、負側アーム9nのコンデンサ電圧の平均値)を正側アーム9pのコンデンサ電圧代表値(例えば、正側アーム9pのコンデンサ電圧の平均値)に追従させるためのフィードバック制御を実行する。なお、コンデンサ電圧代表値は、アームに含まれる全てのコンデンサの電圧値のうちの最大値、最小値等であってもよい。なお、正負バランス制御部600は、正側アーム9pのコンデンサ電圧代表値を負側アーム9nのコンデンサ電圧代表値に追従させるためのフィードバック制御を実行してもよい。V相およびW相についても同様の制御が行なわれる。
このようなフィードバック制御は、相(例えば、U相)の一方のアーム(例えば、負側アーム)に含まれる全てのコンデンサの電圧代表値を指令値(例えば、正側アームのコンデンサ電圧代表値)に追従させる正負バランス制御に相当する。また、正負バランス制御は、正側アーム9pのコンデンサ電圧代表値と負側アーム9nのコンデンサ電圧代表値との差分値をゼロにする制御ともいえる。
より詳細には、正負バランス制御部600は、各相について、正側アーム9pのコンデンサ電圧平均値Vcpuavから、負側アーム9nのコンデンサ電圧平均値Vcnuavを減算した減算値に1/2を乗算する。コンデンサ電圧平均値Vcpuavは、正側アーム9puに含まれる全てのコンデンサ33のコンデンサ電圧Vcの合計値を、正側アーム9puに含まれる変換器セル10の数(すなわち、セル数)で除算した値である。負側アーム9nのコンデンサ電圧平均値についても同様である。
正負バランス制御部600は、フィルタを用いて、この乗算結果から周波数振動成分(例えば、系統周波数と同一の周波数振動および系統周波数の2倍の周波数振動)を除去し、フィルタ処理後の値を算出する。正負バランス制御部600は、各相におけるフィルタ処理後の値を加算した加算値に1/3を乗算することにより、中性点電圧を算出する。フィルタは、例えば、系統周波数と同一の周波数の移動平均フィルタであってもよいし、系統周波数と同一の周波数のノッチフィルタおよび2倍の周波数のノッチフィルタであってもよい。
正負バランス制御部600は、U相について、フィルタ処理後の値から中性点電圧を減算した減算値をゼロにするためのフィードバック演算を実行することにより、U相の正負バランス用の電圧指令値Vpnurefを生成する。同様の処理により、正負バランス制御部600は、V相の正負バランス用の電圧指令値Vpnvrefと、W相の正負バランス用の電圧指令値Vpnwrefとを生成する。
(アーム変調指令生成部)
アーム変調指令生成部700は、直流電圧指令値Vdcrefと、交流電圧指令値Vacref(具体的には、交流電圧指令値Vacuref、Vacvref、Vacwref)と、相バランス制御用の循環電圧指令値Vzref(具体的には、循環電圧指令値Vzuref,Vzvref,Vzwref)と、正負バランス制御用の電圧指令値Vpnref(具体的には、電圧指令値Vpnuref,Vpnvref,Vpnwref)との入力を受ける。
アーム変調指令生成部700は、これらを用いて、正側アーム9pu,9pv,9pwに対するアーム電圧指令値Vrefpu,Vrefpv,Vrefpw(以下、「正側アーム電圧指令値Vrefp」とも総称する。)と、負側アーム9nu,9nv,9nwに対するアーム電圧指令値Vrefnu,Vrefnv,Vrefnw(以下、「負側アーム電圧指令値Vrefn」とも総称する。)とを生成する。
例えば、正側アーム9puのアーム電圧指令値Vrefpuは、“Vrefpu=Vdcref+Vzuref-Vacuref-Vpnuref”と算出される。負側アーム9nuのアーム電圧指令値Vrefnuは、“Vrefnu=Vdcref+Vzuref+Vacuref+Vpnuref”と算出される。アーム電圧指令値Vrefpv,Vrefpw,Vrefnv,Vrefnwについても同様である。
続いて、アーム変調指令生成部700は、正側アーム9pu,9pv,9pwに対するアーム変調指令値Krefpu,Krefpv,Krefpw(以下、「正側アーム変調指令値Krefp」とも総称する。)を生成する。具体的には、アーム変調指令生成部700は、各相について、正側アーム電圧指令値Vrefpと、正側アーム9pに含まれる各コンデンサ33の電圧とに基づいて、正側アーム変調指令値Krefpを生成する。例えば、U相のアーム変調指令値Krefpuは、アーム電圧指令値Vrefpuを正側アーム9puのコンデンサ電圧平均値Vcpuavで除算した値(すなわち、Krefpu=Vrefpu/Vcpuav)である。アーム変調指令値Krefpv,Krefpwについても同様である。
アーム変調指令生成部700は、負側アーム9nu,9nv,9nwに対するアーム変調指令値Krefnu,Krefnv,Krefnw(以下、「負側アーム変調指令値Krefn」とも総称する。)を生成する。具体的には、アーム変調指令生成部700は、各相について、負側アーム電圧指令値Vrefnと、負側アーム9nに含まれる各コンデンサ33の電圧とに基づいて、負側アーム変調指令値Krefnを生成する。例えば、U相のアーム変調指令値Krefnuは、アーム電圧指令値Vrefnuを負側アーム9nuのコンデンサ電圧平均値Vcnuavで除算した値(すなわち、Krefnu=Vrefnu/Vcnuav)である。アーム変調指令値Krefnv,Krefnwについても同様である。
(指令生成部)
指令生成部800は、各正側アーム変調指令値Krefpと、各負側アーム変調指令値Krefnと、全ての変換器セル10のコンデンサ電圧Vcと、各正側アーム電流Ipu,Ipv,Ipwおよび負側アーム電流Inu,Inv,Inwと、コンデンサ電圧の許容範囲の最大値Vmaxおよび最小値Vminとの入力を受け付ける。指令生成部800は、これらの情報を用いて、各変換器セル10を挿入するのかまたはバイパスするのかを示す指令を生成する。
変換器セル10の挿入状態とは、スイッチング素子のスイッチング動作により、コンデンサ33が入出力端子P1,P2間に挿入されており、変換器セル10の入出力端子P1、P2間にコンデンサ電圧Vcが出力される状態を示す。一方、変換器セル10のバイパス状態とは、スイッチング素子のスイッチング動作により、変換器セル10の入出力端子P1、P2間が短絡され(すなわち、コンデンサ33が入出力端子P1,P2間に挿入されておらず)、ゼロ電圧が出力される状態を示す。
具体的には、指令生成部800は、複数のアームの各々について、当該アームにおける複数のグループにそれぞれ対応して設けられた複数のバランス制御部810を含む。本実施の形態では、各アーム9に含まれる複数の(例えば、K個の)変換器セル10は、複数のグループに区分される。ここでは、1つのアームに含まれるK個の変換器セル10は、n個(ただし、nは1以上の整数)の変換器セル10を含む第1グループと、m個(ただし、mは1以上の整数)の変換器セル10を含む第2グループの2つのグループに区分されるものとする。ただし、“n+m=K”が成立する。この場合、1つのアームに対して2つのバランス制御部810が設けられる。したがって、全アーム数は6であるため、全部で12のバランス制御部810が設けられる。
複数のバランス制御部810は、対応するアームにおける複数のグループにおけるコンデンサの電圧のバランスを制御する。各アームにおける第1グループおよび第2グループにそれぞれ対応する2つのバランス制御部810には、同一のアーム変調指令値が入力される。例えば、U相の正側アーム9puの第1グループ(以下、便宜上「グループPU1」とも称する。)および第2グループ(以下、便宜上「グループPU2」とも称する。)にそれぞれ対応する2つのバランス制御部810には、アーム変調指令値Krefpuが入力される。各バランス制御部810の機能は同様であるため、以下、U相の正側アーム9puのグループPU1に対応するバランス制御部810を代表として説明する。
グループPU1に対応するバランス制御部810は、変調指令補正部812と、コンデンサ電圧制御部814とを含む。変調指令補正部812は、グループPU1に属するn個の変換器セル10を含む正側アーム9puの正側アーム電流Ipuと、n個の変換器セル10にそれぞれ対応するn個のコンデンサの電圧代表値(例えば、コンデンサ電圧平均値)と、電圧代表値に対応する指令値とに基づいて、正側アーム9puに対応するアーム変調指令値Krefpuを補正した補正アーム変調指令値Krefpu1を生成する。
(変調指令補正部)
図5は、実施の形態1に従う変調指令補正部の構成例を示す図である。図5を参照して、変調指令補正部812は、平均値演算器851と、減算器853と、乗算器855と、フィルタ857と、制御器859と、乗算器861,863と、加算器865とを含む。
平均値演算器851は、グループPU1に含まれるn個の変換器セル10のコンデンサ電圧Vcの合計値をnで除算することにより、n個の変換器セル10のコンデンサ電圧平均値Vcpu1avを算出する。減算器853は、コンデンサ電圧平均値に対する指令値Vcrefからコンデンサ電圧平均値Vcpu1avを減算した減算値(すなわち、Vcref-Vcpu1av)を算出する。指令値Vcrefは、全ての変換器セル10のコンデンサ電圧の平均値、アームに含まれる変換器セル10のコンデンサ電圧の平均値、または、変換器セル10のコンデンサ定格電圧である。指令値Vcrefは、例えば、変調指令補正部812よりも上流の機能部(例えば、後述する上位制御部)から提供される。
乗算器855は、当該減算値に予め定められたコンデンサ定格電圧Vcbaseの逆数を乗算した乗算値を出力する。フィルタ857は、乗算器855により算出された乗算値から高調波成分を除去するためのフィルタ処理を実行する。フィルタ857は、例えば、ローパスフィルタにより構成される。制御器859は、フィルタ処理後の値をゼロにするようなフィードバック制御により、制御値X1を出力する。制御器859は、例えば、比例制御器、PI制御器、PID制御器、またはフィードバック制御に用いられる他の制御器として構成され得る。乗算器861は、正側アーム電流Ipuに定格直流電流Icbaseの逆数を乗算した値を出力する。
乗算器863は、制御器859からの制御値X1と乗算器861からの出力値との乗算値を出力する。当該乗算値は、アーム変調指令値Krefpuを補正するための補正値に相当する。加算器865は、アーム変調指令値Krefpuに乗算器863により算出された乗算値を加算した補正アーム変調指令値Krefpu1を生成する。
上記のようにアーム変調指令値Krefpuを補正する理由について説明する。図5では、平均値演算器851、減算器853、乗算器855、フィルタ857および制御器859により、指令値Vcrefにコンデンサ電圧平均値Vcpu1avを追従させる制御処理が実行される。また、乗算器861により、正側アーム電流Ipuは定格直流電流Icbaseで除算され正側アーム電流Ipuが正規化される。
変換器セル10はコンデンサ電圧を充放電する機能を有しており、当該充放電を制御するための制御出力は電力である必要がある。そのため、乗算器863により、制御器859からの出力値に正規化されたアーム電流が乗算された補正値が生成される。具体的には、Kpをゲイン、正規化されたアーム電流をIarm(=Ipu/Icbase)とすると、補正値Kctは、以下の式(1)のように表される。なお、Kpは制御器859のゲインである。
Kct=Kp×{(Vcref-Vcpu1av)/Vcbase}×Iarm…(1)
式(1)に示すように、補正値Kctは、正規化された電圧および電流の乗算値となり、変換器セル10の充放電を制御するための電力に相当する。また、補正値Kctには、アーム電流の極性(すなわち、正または負)が反映される。
加算器865により、アーム変調指令値Krefpuに補正値Kctが加算されて、補正アーム変調指令値Krefpu1が生成されるため、以下の式(2)が成立する。なお、Krefpu1、Krefpu、およびKctの単位は[p.u.]であるとする。
Krefpu1=Krefpu+Kct…(2)
上記のように、実施の形態1に従う変調指令補正部812は、n個のコンデンサの電圧代表値(例えば、コンデンサ電圧平均値Vcpu1av)を指令値Vcrefに追従させることにより生成した制御値X1と、正側アーム9puの正側アーム電流Ipuとに基づいて、補正値Kctを生成する。続いて、変調指令補正部812は、正側アーム9puに対応するアーム変調指令値Krefpuに補正値Kctを加算することにより補正アーム変調指令値Krefpu1を生成する。変調指令補正部812は、制御値X1と正側アーム9puの正側アーム電流Ipuとを乗算することにより補正値Kctを生成する。
したがって、指令値Vcrefにコンデンサ電圧平均値Vcpu1avを追従させる制御結果と、アーム電流の極性および大きさとが反映された補正値Kctがアーム変調指令値Krefpuに加算されることにより、コンデンサ電圧をバランスさせるための補正アーム変調指令値Krefpu1が生成される。
再び、図4を参照して、グループPU1の変調指令補正部812は、上記のように生成した補正アーム変調指令値Krefpu1を、グループPU1のコンデンサ電圧制御部814に出力する。同様に、例えば、グループPU2の変調指令補正部812は、生成した補正アーム変調指令値Krefpu2を、グループPU2のコンデンサ電圧制御部814に出力する。
(コンデンサ電圧制御部)
グループPU1のコンデンサ電圧制御部814は、補正アーム変調指令値Krefpu1と、正側アーム9puの正側アーム電流Ipuとに基づいて、グループPU1に含まれるn個の変換器セル10(以下、便宜上「変換器セル群Gpu1」とも称する。)の各々を挿入するかバイパスするかを判断する。これにより、コンデンサ電圧制御部814は、変換器セル群Gpu1の各々の変換器セル10のコンデンサ電圧を制御する。
具体的には、コンデンサ電圧制御部814は、補正アーム変調指令値Krefpu1と、n個の変換器セル10のコンデンサ電圧Vcと、正側アーム電流Ipuと、コンデンサ電圧の許容範囲の最大値Vmaxおよび最小値Vminの入力を受け付ける。コンデンサ電圧制御部814は、コンデンサ電圧の許容範囲および正側アーム電流Ipuの方向に応じて、補正アーム変調指令値Krefpu1に最も近い電圧になるように、変換器セル群Gpu1の各々の変換器セル10を挿入またはバイパスするかを判断する。以下、グループPU1のコンデンサ電圧制御部814の具体的な処理内容について説明する。
図6は、コンデンサ電圧制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。図6および後述する図8および図9に示す処理は、規定の演算周期で行われる。図6を参照して、コンデンサ電圧制御部814は、各種データ(例えば、補正アーム変調指令値Krefpu1、変換器セル群Gpu1の各変換器セル10のコンデンサ電圧Vc、正側アーム電流Ipu、最大値Vmaxおよび最小値Vmin)の入力を受け付ける(ステップS10)。コンデンサ電圧制御部814は、変換器セル群Gpu1の各変換器セル10の搬送波を決定する(ステップS12)。
図7は、補正アーム変調指令値と変換器セルに対応する搬送波との関係を示す図である。図7の縦軸は“電圧/定格電圧”を示し、横軸は時間を示す。点線が各変換器セル10の搬送波であり、実線は補正アーム変調指令値Krefpu1を示す。
図7を参照して、変換器セル群Gpu1の各変換器セル10の搬送波として、セル1の搬送波、セル2の搬送波、セル3の搬送波、・・・セルnの搬送波が示されている。なお、セルkの搬送波とは、k番目の変換器セル10の搬送波を意味する。例えば、各搬送波の位相が、当該搬送波の1周期(すなわち、2π[rad])に対して位相φcr(=2π/n)[rad.]ずつ均等にずれる(すなわち、移動する)ように、各搬送波が作成される。図7の例では、搬送波が三角波である例について示されているが、のこぎり波等の他の搬送波であってもよい。
再び、図6を参照して、コンデンサ電圧制御部814は、挿入状態とする変換器セル10の個数を示すNsmを0に初期化する(ステップS14)。コンデンサ電圧制御部814は、補正アーム変調指令値Krefpu1と比較すべき搬送波を決定する(ステップS16)。コンデンサ電圧制御部814は、補正アーム変調指令値Krefpu1が、決定された比較対象の搬送波の大きさ以上であるか否かを判断する(ステップS18)。
補正アーム変調指令値Krefpu1が搬送波の大きさ以上である場合(ステップS18においてYES)、コンデンサ電圧制御部814は、挿入すべき変換器セル10の個数を1増加(すなわち、Nsm=Nsm+1)する(ステップS20)。続いて、コンデンサ電圧制御部814は、変換器セル群Gpu1のすべての変換器セル10の搬送波と補正アーム変調指令値Krefpu1との比較が行われたか否かを判断する(ステップS22)。当該比較が行われた場合(ステップS22においてYES)、次の処理に進む。一方、当該比較が行われていない場合(ステップS22においてNO)、コンデンサ電圧制御部814は、ステップS16に戻って、未だ比較されていない搬送波を決定する。
また、補正アーム変調指令値Krefpu1が搬送波の大きさ未満である場合(ステップS18においてNO)、コンデンサ電圧制御部814はステップS22を実行する。この場合、Nsmは現在の値は保持される。
図8は、図6の局面の後に続くコンデンサ電圧制御部の処理手順の一例を示すフローチャートである。図8を参照して、コンデンサ電圧制御部814は、正側アーム電流Ipuの今回の符号が前回の符号から変化したか否かを判断する(ステップS30)。すなわち、コンデンサ電圧制御部814は、今回の演算時刻の正側アーム電流Ipuの符号が前回の演算時刻の正側アーム電流Ipuの符号から変化したか否かを判断する。
当該符号が変化した(すなわち、正側アーム電流Ipuがゼロクロスした)場合(ステップS30においてYES)、コンデンサ電圧制御部814は、変換器セル群Gpu1のうちの挿入状態である変換器セル10の情報を含む挿入リストと、変換器セル群Gpu1のうちのバイパス状態である変換器セル10の情報を含むバイパスリストとを生成する(ステップS32)。
挿入リストは、挿入状態の変換器セル10の識別情報と、当該変換器セル10のコンデンサ電圧Vcとを関連付けた情報であり、典型的には、当該識別情報はコンデンサ電圧Vcが大きい順に並べられている。バイパスリストは、バイパス状態の変換器セル10の識別情報と当該変換器セル10のコンデンサ電圧Vcとを関連付けた情報であり、典型的には、当該識別情報はコンデンサ電圧Vcが大きい順に並べられている。挿入リストおよびバイパスリストは、例えば、RAM75等に記憶される。
上記のように、アーム電流がゼロクロスするタイミングで挿入リストおよびバイパスリストが更新される。これは、当該タイミングにおいては、コンデンサを充放電する電流が0に近く電圧変化が小さいため、コンデンサ電圧Vcの大きさの順番が変化しにくいからである。
当該符号が変化していない場合(ステップS30においてNO)、コンデンサ電圧制御部814は後述するステップS34を実行する。この場合、挿入リストおよびバイパスリストの更新は行われない。
続いて、コンデンサ電圧制御部814は、Nsmが増加したか否かを判断する(ステップS34)。すなわち、コンデンサ電圧制御部814は、今回の演算時刻のNsmが前回の演算時刻のNsmよりも大きいか否かを判断する。Nsmが増加していない場合(ステップS34においてNO)、コンデンサ電圧制御部814は、Nsmが減少したか否かを判断する(ステップS36)。すなわち、コンデンサ電圧制御部814は、今回の演算時刻のNsmが前回の演算時刻のNsmよりも小さいか否かを判断する。Nsmが減少していない(すなわち、Nsmが変化していない)場合(ステップS36においてNO)、コンデンサ電圧制御部814は、後述する図9の処理を実行する。
Nsmが減少している場合(ステップS36においてYES)、コンデンサ電圧制御部814は、正側アーム電流Ipuが0以上(すなわち、正または0)であるか否かを判断する(ステップS38)。
正側アーム電流Ipuが0以上である(すなわち、電流がコンデンサを充電する方向に流れている)場合には(ステップS38においてYES)、コンデンサ電圧制御部814は、挿入リストの変換器セル10の中から、コンデンサ電圧Vcが最大の変換器セル10を選定し、当該変換器セル10をバイパスする変換器セル10とする。具体的には、コンデンサ電圧制御部814は、挿入リストから当該変換器セル10を削除し、当該変換器セル10をバイパスリストに追加する(ステップS40)。一方、正側アーム電流Ipuが負である(すなわち、コンデンサから電流が放電する方向に流れている)場合には(ステップS38においてNO)、コンデンサ電圧制御部814は、挿入リストの変換器セル10の中から、コンデンサ電圧Vcが最小の変換器セル10を削除し、当該変換器セル10をバイパスリストに追加する(ステップS42)。
次に、Nsmが増加している場合(ステップS34においてYES)、コンデンサ電圧制御部814は、正側アーム電流Ipuが0以上であるか否かを判断する(ステップS44)。正側アーム電流Ipuが0以上である場合には(ステップS44においてYES)、コンデンサ電圧制御部814は、バイパスリストの変換器セル10の中から、コンデンサ電圧Vcが最小の変換器セル10を削除し、当該変換器セル10を挿入リストに追加する(ステップS46)。一方、正側アーム電流Ipuが負である場合には(ステップS44においてNO)、コンデンサ電圧制御部814は、バイパスリストの変換器セル10の中から、コンデンサ電圧Vcが最大の変換器セル10を削除し、当該変換器セル10を挿入リストに追加する(ステップS48)。
ここで、Nsmが変化していない場合(ステップS36においてNO)に続く処理について図9を用いて説明する。図9は、コンデンサ電圧制御部の処理手順の他の例を示すフローチャートである。図9を参照して、コンデンサ電圧制御部814は、正側アーム電流Ipuが0以上であるか否かを判断する(ステップS60)。
正側アーム電流Ipuが負である場合(ステップS60においてNO)、コンデンサ電圧制御部814は、挿入リストにおける変換器セル10の中に、コンデンサ電圧Vcが最小値Vmin未満となる変換器セル10が存在するか否かを判断する(ステップS62)。当該変換器セル10が存在しない場合(ステップS62においてNO)、図8のステップS50を実行する。
一方、当該変換器セル10が存在する場合(ステップS62においてYES)、コンデンサ電圧制御部814は、挿入リストにおける変換器セル10の中からコンデンサ電圧Vcが最小の変換器セル10を削除して当該変換器セル10をバイパスリストに追加し、さらに、バイパスリストにおける変換器セル10の中からコンデンサ電圧Vcが最大の変換器セル10を削除して当該変換器セル10を挿入リストに追加する(ステップS64)。続いて、コンデンサ電圧制御部814は、図8のステップS50を実行する。
次に、正側アーム電流Ipuが正または0である場合(ステップS60においてYES)、コンデンサ電圧制御部814は、挿入リストにおける変換器セル10の中に、コンデンサ電圧Vcが最大値Vmaxよりも大きい変換器セル10が存在するか否かを判断する(ステップS66)。当該変換器セル10が存在しない場合(ステップS66においてNO)、図8のステップS50を実行する。
一方、当該変換器セル10が存在する場合(ステップS66においてYES)、コンデンサ電圧制御部814は、挿入リストにおける変換器セル10の中からコンデンサ電圧Vcが最大の変換器セル10を削除して当該変換器セル10をバイパスリストに追加し、さらに、バイパスリストにおける変換器セル10の中からコンデンサ電圧Vcが最小の変換器セル10を削除して当該変換器セル10を挿入リストに追加する(ステップS68)。続いて、コンデンサ電圧制御部814は、図8のステップS50を実行する。
上記のように、コンデンサ電圧Vcが許容範囲内(すなわち、最大値Vmax以下かつ最小値Vmin以上)である場合には、リスト内の変換器セル10の交換は行われず、そうではない場合には、上記のように変換器セル10の交換が行われる。
再び、図8を参照して、ステップS50において、コンデンサ電圧制御部814は、挿入リストおよびバイパスリストに基づいて、変換器セル群Gpu1に含まれるn個の変換器セル10の各々について、当該変換器セル10を挿入状態とするかまたはバイパス状態とするかを示す指令を出力する。
これにより、コンデンサ電圧制御部814は、コンデンサ電圧が許容範囲を逸脱せずかつ補正アーム変調指令値Krefpu1に最も近い電圧となるように、正側アーム電流Ipuの方向に応じて適切に、変換器セル群Gpu1の各変換器セル10を挿入するかバイパスするかを決定できる。
上記では、U相の正側アーム9puのグループPU1のバランス制御部810の機能および処理について具体的に説明したが、他のグループ(例えば、グループPU2、他のアームの第1グループおよび第2グループ等)のバランス制御部810の機能および処理についても同様である。
なお、あるグループに対応する変調指令補正部812およびコンデンサ電圧制御部814は、一連の流れで当該グループに属する変換器セル10のコンデンサ電圧を制御する。そのため、グループ間での通信は不要であり、各々独立してグループ毎の変換器セル10のコンデンサ電圧を一定範囲内に制御することができる。
(信号生成部)
図4を参照して、信号生成部900は、指令生成部800(具体的には、各コンデンサ電圧制御部814)から出力される、全ての変換器セル10の挿入およびバイパスの指令の入力を受ける。すなわち、信号生成部900は、各アーム9における複数のグループの各々に対応するコンデンサ電圧制御部814の判断結果(すなわち、変換器セル10を挿入するかバイパスするかの判断結果を示す指令)の入力を受ける。例えば、U相の正側アーム9puのグループPU1に対応するバランス制御部810からは、グループPU1に属するn個の変換器セル10についての当該指令の入力を受ける。U相の正側アーム9puのグループPU2に対応するバランス制御部810からは、グループPU2に属するm個の変換器セル10についての当該指令の入力を受ける。他のアームの各グループについても同様である。
信号生成部900は、各コンデンサ電圧制御部814の判断結果に基づいて、電力変換器101に含まれるすべての変換器セル10の複数のスイッチング素子に対するゲート信号を生成する。具体的には、信号生成部900は、変換器セル10の挿入を示す指令を受けた場合、当該変換器セル10からコンデンサ電圧Vcが出力されるようなゲート信号を当該変換器セル10に出力する。一方、信号生成部900は、変換器セル10のバイパスを示す指令を受けた場合、当該変換器セル10からゼロ電圧が出力されるようなゲート信号を当該変換器セル10に出力する。
図2(a)を参照して、変換器セルの挿入時またはバイパス時に生成されるゲート信号について説明する。例えば、アーム電流が負である(すなわち、電流がコンデンサから放電する方向に流れる)場合における変換器セル10の挿入時には、スイッチング素子31pをオン、スイッチング素子31nをオフにするゲート信号が与えられる。これにより、変換器セル10の入出力端子P1、P2間にコンデンサ33のコンデンサ電圧Vcが出力される。
アーム電流が負である場合における変換器セル10のバイパス時には、スイッチング素子31pをオフ、スイッチング素子31nをオンにするゲート信号が与えられる。これにより、変換器セル10の入出力端子P1、P2間にゼロ電圧が出力される。
アーム電流が正である(すなわち、電流がコンデンサを充電する方向に流れる)場合における変換器セル10の挿入時には、スイッチング素子31pをオン、スイッチング素子31nをオフにするゲート信号が与えられる。これにより、変換器セル10の入出力端子P1、P2間にコンデンサ電圧Vcが出力される。
アーム電流が正である場合における変換器セル10のバイパス時には、スイッチング素子31pをオフ、スイッチング素子31nをオンにするゲート信号が与えられる。これにより、変換器セル10の入出力端子P1、P2間にゼロ電圧が出力される。
上記のように、信号生成部900は、各バランス制御部810から出力された挿入またはバイパスの指令に従って、スイッチング素子のゲート信号を生成する。
<利点>
図10は、実施の形態1の利点を説明するための図である。図10(a)は、比較例に従うコンデンサ電圧の平均値の時間変化を示す図である。図10(b)は、本実施の形態に従うコンデンサ電圧の平均値の時間変化を示す図である。
図10(a)および図10(b)には、U相の正側アーム(図1の正側アーム9puに対応)に含まれる複数の変換器セルを2つのグループに区分した場合における各グループのコンデンサ電圧の平均値が示されている。図10(a)および図10(b)における「U相正側G1」の実線は、第1グループに属する変換器セルのコンデンサ電圧の平均値の時間変化を示し、「U相正側G2」の実線は、第2グループに属する変換器セルのコンデンサ電圧の平均値の時間変化を示している。なお、第1グループに属する変換器セルの数の方が、第2グループに属する変換器セルの数よりも多い。
比較例の結果を示す図10(a)では、U相の正側アームに含まれる複数の変換器セルを2つのグループに形式的に区分した構成とし、各変換器セルの制御方式は、複数のグループに区分しない従来の制御方式と同一である。一方、本実施の形態の結果を示す図10(b)では、U相の正側アームに含まれる複数の変換器セルを2つのグループに区分する構成としつつ、各変換器セルの制御方式は、上述したグループに対応するバランス制御部810による制御方式である。
図10(a)を参照すると、第1グループにおけるコンデンサ電圧の平均値と、第2グループにおけるコンデンサ電圧の平均値との差が徐々に拡大して、アーム内のコンデンサ電圧のバランスが崩れている。また、第1グループにおけるコンデンサ電圧が過電圧となり、電力変換装置の保護機能が動作する。一方、図10(b)では、第1グループにおけるコンデンサ電圧の平均値と、第2グループにおけるコンデンサ電圧の平均値との差はほとんどなく、一定の値でバランスされている。
実施の形態1によると、同一アーム内に設けられたグループごとにコンデンサ電圧をバランスさせる制御が実行される。したがって、1つのアーム内の変換器セルの数が多く一括に制御することが困難な場合であっても、本実施の形態に従う構成および制御方式を採用することにより、各変換器セルのコンデンサ電圧のバランスを維持できる。結果として、大容量化した電力変換装置を安定に動作させることができる。
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1に従う変調指令補正部812の変形例について説明する。実施の形態2における変調指令補正部以外の構成は、実施の形態1と同様である。
図11は、実施の形態2に従う変調指令補正部の構成例を示す図である。図11を参照して、変調指令補正部812Aは、平均値演算器851と、減算器853と、乗算器855と、フィルタ857と、制御器859と、乗算器863と、加算器865と、電流方向判断部871とを含む。変調指令補正部812Aは、図4の変調指令補正部812に対応するが、図5との区別のため、便宜上“A”との符号を付している。これは、実施の形態3~5でも同様である。図5で説明した変調指令補正部812の機能構成と同様な構成については、その詳細な説明は繰り返さない。
変調指令補正部812Aにおいても、図5で説明したように、平均値演算器851、減算器853、乗算器855、フィルタ857および制御器859により、指令値Vcrefにコンデンサ電圧平均値Vcpu1avを追従させる制御処理が実行されることにより、乗算器863に対して制御値X1が出力される。
電流方向判断部871は、正側アーム電流Ipuの向きに応じたゲイン値を出力する。具体的には、電流方向判断部871は、正側アーム電流Ipuの符号が正である(すなわち、電流がコンデンサを充電する方向に流れている)場合には、正のゲイン(例えば、+1)を出力する。電流方向判断部871は、正側アーム電流Ipuの符号が負である(すなわち、電流がコンデンサから放電する方向に流れている)場合には、負のゲイン(例えば、-1)を出力する。
乗算器863は、制御器859からの制御値X1と電流方向判断部871からのゲイン値との乗算値を出力する。加算器865は、アーム変調指令値Krefpuに乗算器863により算出された乗算値を加算した補正アーム変調指令値Krefpu1を生成する。
上記構成によると、以下のようにアーム変調指令値Krefpuが補正される。まず、指令値Vcrefよりもコンデンサ電圧平均値Vcpu1avが小さい場合を想定する。このとき、正側アーム電流Ipuが充電方向に流れる場合(すなわち、Ipu>0)には、指令値Vcrefとコンデンサ電圧平均値Vcpu1avとの偏差(すなわち、Vcref-Vcpu1av)に基づく制御値X1がアーム変調指令値Krefpuに加算される。一方、正側アーム電流Ipuが放電方向に流れる場合(すなわち、Ipu<0)には、制御値X1がアーム変調指令値Krefpuから減算される。
次に、指令値Vcrefよりもコンデンサ電圧平均値Vcpu1avが大きい場合を想定する。このとき、正側アーム電流Ipuが充電方向に流れる場合(すなわち、Ipu>0)には、指令値Vcrefとコンデンサ電圧平均値Vcpu1avとの偏差(すなわち、Vcref-Vcpu1av)が負となるため、制御値X1がアーム変調指令値Krefpuから減算される。一方、正側アーム電流Ipuが放電方向に流れる場合(すなわち、Ipu<0)には、制御値X1がアーム変調指令値Krefpuに加算される。
グループPU1の変調指令補正部812Aは、上記のように生成した補正アーム変調指令値Krefpu1を、グループPU1のコンデンサ電圧制御部814に出力する。コンデンサ電圧制御部814の機能および処理は実施の形態1と同様である。
実施の形態2に従う変調指令補正部812Bは、制御値X1と、正側アーム電流Ipuの向きに応じたゲイン値とを乗算することにより補正値Kctを生成する。補正値Kctには、指令値Vcrefにコンデンサ電圧平均値Vcpu1avを追従させる制御結果およびアーム電流の極性が反映されている。このような補正値Kctがアーム変調指令値Krefpuに加算されることにより、コンデンサ電圧をバランスさせるための補正アーム変調指令値Krefpu1が生成される。実施の形態2は、実施の形態1と同様の利点を有する。
実施の形態3.
実施の形態3では、実施の形態1に従う変調指令補正部812の変形例について説明する。実施の形態3における変調指令補正部以外の構成は、実施の形態1と同様である。
図12は、実施の形態3に従う変調指令補正部の構成例を示す図である。図12を参照して、変調指令補正部812Bは、図5の変調指令補正部812Aに不感帯部873を追加した構成に相当する。
不感帯部873は、乗算器861から出力された乗算値(すなわち、正側アーム電流Ipuと定格直流電流Icbaseの逆数との乗算値)の大きさが閾値Th1未満である場合、ゼロを出力する。一方、不感帯部873は、乗算器861からの乗算値の大きさが閾値Th1以上である場合、当該乗算値を出力する。
例えば、電力変換器101が無負荷状態、あるいは低負荷状態である場合にはアーム電流が小さくなる。この場合、アーム電流のリップル成分により、アーム電流の符号が正負で振動するため、これがアーム変調指令値Krefpuに反映されるとコンデンサ電圧が不安定となる可能性がある。実施の形態3では、上記のように、不感帯を設けることにより、アーム電流のチャタリングの影響を防止して、コンデンサ電圧を安定化させることができる。
なお、電力変換器101が無負荷あるいは低負荷状態である場合には、コンデンサの充放電電流が小さいため、コンデンサの電圧変動も小さく、グループ間でのコンデンサ平均電圧の差も小さくなる。
実施の形態3に従う変調指令補正部812Cは、正側アーム電流Ipuの大きさが閾値Th1以上である場合、制御値X1と正側アーム電流Ipuとを乗算することにより補正値Kctを生成する。変調指令補正部812Cは、正側アーム電流Ipuの大きさが閾値Th1未満である場合、補正値Kctをゼロとして生成する。
実施の形態3によると、正側アーム電流Ipuが大きい場合には、補正値Kctには、指令値Vcrefにコンデンサ電圧平均値Vcpu1avを追従させる制御結果およびアーム電流の極性および大きさが反映される。一方、正側アーム電流Ipuが小さい場合には補正値Kctはゼロとなる。したがって、このような補正値Kctがアーム変調指令値Krefpuに加算されることにより、アーム電流のチャタリングの影響を防止しつつ、コンデンサ電圧をバランスさせるための補正アーム変調指令値Krefpu1が生成される。
実施の形態4.
実施の形態4では、実施の形態1に従う変調指令補正部812の変形例について説明する。実施の形態4における変調指令補正部以外の構成は、実施の形態1と同様である。
図13は、実施の形態4に従う電力変換装置の構成例を示す図である。図13を参照して、電力変換装置100は、制御装置7と、電力変換器101とを含む。図13に示す電力変換装置100は、図1の電力変換装置100と実質的に同一であるが、図13では説明のため簡略化して示されている。
制御装置7は、上位制御部140と、変換器主制御部150とを含む。上位制御部140は、図4に示す第1電圧制御部400、相バランス制御部500、正負バランス制御部600、およびアーム変調指令生成部700を含む。上位制御部140は、これら以外の機能構成を有していてもよい。変換器主制御部150は、図4に示す指令生成部800および信号生成部900を含む。変換器主制御部150は、これら以外の機能構成を有していてもよい。
図13を参照しながら、情報の流れについて説明する。変換器主制御部150は、電力変換器101に含まれるすべての変換器セル10(例えば、6K個の変換器セル10)に対してゲート信号を出力する。変換器主制御部150は、6K個の変換器セル10からコンデンサ電圧Vcの検出値と、6つのアーム電流の検出値との入力を受ける。
変換器主制御部150は、すべての変換器セル10のコンデンサ電圧Vcに基づいて、全グループの各々について、当該グループに属する各変換器セル10のコンデンサ電圧の平均値Vcgav、最大値Vcgmax、および最小値Vcgminを算出する。ここで、1つのアームに含まれるグループ数をJとする。変換器主制御部150は、6J個のコンデンサ電圧の平均値Vcgavと、6J個のコンデンサ電圧の最大値Vcgmaxと、6J個のコンデンサ電圧の最小値Vcgminとを上位制御部140に出力する。
上位制御部140は、6J個の平均値Vcgavに基づいて、電力変換器101に含まれるすべての変換器セル10のコンデンサ電圧平均値、または、各アームに含まれる変換器セル10のコンデンサ電圧平均値を算出する。上位制御部140は、いずれかのコンデンサ電圧平均値を指令値Vcrefとして変換器主制御部150に出力する。
また、上位制御部140は、規定の条件を満たした場合に、循環電流指令値Izrefを変換器主制御部150に送信する。具体的には、上位制御部140は、全グループの各々について、当該グループにおけるコンデンサ電圧の最大値Vcgmaxと最小値Vcgminとの偏差(すなわち、Vcgmax-Vcgmin)が閾値Th2以上であるか否かを判断する。上位制御部140は、あるグループについての偏差が閾値Th2以上である場合には、当該グループについての循環電流指令値Izrefを変換器主制御部150に出力する。なお、上位制御部140は、あるグループについての偏差が閾値Th2未満である場合には、当該グループについての循環電流指令値Izrefを出力しない。循環電流指令値Izrefは、系統運用者により予め設定される値(例えば、0.1[p.u.])である。
図14は、実施の形態4に従う変調指令補正部の構成例を示す図である。図14を参照して、変調指令補正部812Cは、平均値演算器851と、減算器853と、乗算器855と、フィルタ857と、制御器859と、加算器865と、乗算器875とを含む。図5で説明した変調指令補正部812の機能構成と同様な構成については、その詳細な説明は繰り返さない。
ここでは、上位制御部140は、グループPU1についての偏差(すなわち、Vcgmax-Vcgmin)が閾値Th2以上であると判断し、グループPU1についての循環電流指令値Izrefpu1を変換器主制御部150(具体的には、変調指令補正部812C)に出力しているものとする。
変調指令補正部812Cにおいても、図5で説明したように、制御器859から制御値X1が出力される。乗算器875は、制御値X1と循環電流指令値Izrefpu1との乗算値を出力する。加算器865は、アーム変調指令値Krefpuに乗算器875により算出された乗算値を加算した補正アーム変調指令値Krefpu1を生成する。
電力変換器101が無負荷時あるいは低負荷時には、変換器セル10に流れるアーム電流が小さく、変換器損失が生じることにより、コンデンサ電圧のばらつきが大きくなる場合がある。そのため、グループにおけるコンデンサ電圧の最大値Vcgmaxと最小値Vcgminとの偏差(すなわち、コンデンサ電圧のばらつき)が閾値Th2以上である場合には、当該グループにおける循環電流指令値が変調指令補正部812Cに出力される。
実施の形態4に従う変調指令補正部812Cは、グループに属するn個の変換器セル10のコンデンサ電圧Vcのうちの最大値Vcgmaxと最小値Vcgminとの差分が閾値Th2未満である場合、制御値X1と正側アーム電流Ipuとに基づいて補正値Kctを生成する。
一方、変調指令補正部812Cは、当該差分が閾値Th2以上である場合、制御値X1と、正側アーム9puを通過するように電力変換器101内を循環する循環電流の循環電流指令値Izrefpu1とに基づいて補正値Kctを生成する。具体的には、変調指令補正部812は、制御値X1と正側アーム電流Ipuとを乗算することにより補正値Kctを生成する。この場合、補正値Kctには、指令値Vcrefにコンデンサ電圧平均値Vcpu1avを追従させる制御結果と、循環電流指令値が反映される。このような補正値Kctがアーム変調指令値Krefpuに加算されることにより、コンデンサ電圧をバランスさせるための補正アーム変調指令値Krefpu1が生成される。
したがって、実施の形態4によると、電力変換器101が無負荷状態である等によりアーム電流によるグループ間のコンデンサ電圧のバランス制御が困難な場合であっても、循環電流指令値を用いてコンデンサ電圧を安定化させることができる。
実施の形態5.
実施の形態5では、実施の形態1に従う変調指令補正部812の変形例について説明する。実施の形態5における変調指令補正部以外の構成は、実施の形態1と同様である。
図15は、実施の形態5に従う電力変換装置の構成例を示す図である。図15を参照して、電力変換装置100は、制御装置7と、電力変換器101とを含む。図15に示す電力変換装置100は、図1の電力変換装置100と実質的に同一であるが、図15では説明のため簡略化して示されている。
図15を参照しながら、情報の流れについて説明する。なお、図13で説明した情報(例えば、ゲート信号、コンデンサ電圧Vc、アーム電流、指令値Vcref、コンデンサ電圧の平均値Vcgav、最大値Vcgmax、および最小値Vcgmin)の流れについてはその詳細は説明は繰り返さない。
電力変換器101に含まれるすべての変換器セル10は、自身の故障を診断する自己診断機能を有している。例えば、変換器セル10の故障には、スイッチング素子の故障、ゲートドライバの故障、コンデンサの破損、通信異常等が含まれる。変換器セル10は、当該故障の有無を示す故障情報を制御装置7に出力する。なお、故障情報は、上位制御部140に対して直接出力されてもよいし、変換器主制御部150を介して上位制御部140に対して直接出力されてもよい。なお、故障情報は、変換器セル10に故障が発生した場合にのみ当該変換器セル10から出力される構成であってもよい。
上位制御部140は、故障情報に基づいて、故障が発生している変換器セル10を判定する。ここで、あるグループの変換器セル10に短絡故障が発生した場合、故障した変換器セル10(以下、単に「故障変換器セル」とも称する。)は電圧を出力できないため、故障変換器セルが属するグループにおけるコンデンサ電圧平均値は低下する。
上位制御部140は、規定の条件に基づいて、故障変換器セルの電圧を補償するための指令値Vcfaultを変換器主制御部150に出力する。具体的には、上位制御部140は、全グループの各々について、当該グループにおけるコンデンサ電圧の最小値Vcgminが閾値Th3未満であるか否かを判断する。すべてのグループにおける最小値Vcgminが閾値Th3以上である場合には、指令値Vcfaultは出力されない。
ここで、アームY1のグループZ1に属する変換器セル10が故障し、グループZ1における最小値Vcgminが閾値Th3未満であるとする。この場合、上位制御部140は、アームY1におけるグループZ1以外の残りのグループに属する健全な各変換器セル10のコンデンサ電圧Vcを用いて、これらのコンデンサ電圧Vcの平均値を算出し、当該平均値を残りのグループにおける指令値Vcrefに設定する。一方、故障変換器セルを含むグループZ1における指令値Vcfaultは、グループZ1内の変換器セルの数をn、故障した変換器セルの数をxとすると、以下の式(3)のように算出される。
Vcfault=(1-x/n)×Vcref…(3)
図16は、実施の形態5に従う変調指令補正部の構成例を示す図である。図16を参照して、変調指令補正部812Dは、図5の変調指令補正部812Aにおける指令値Vcrefおよび減算器853を、それぞれ指令値Vcfaultおよび減算器877に置き換えた構成に相当する。ここでは、グループPU1の変換器セル10のいずれかにおいて故障が発生しているものとする。そのため、変調指令補正部812Dには、式(3)に従って演算される指令値Vcfaultが入力されている。
減算器877は、指令値Vcfaultからコンデンサ電圧平均値Vcpu1avを減算した減算値(すなわち、Vcfault-Vcpu1av)を算出する。その他の機能構成は、図5で説明した機能構成と同様である。
実施の形態5に従う変調指令補正部812Dは、グループPU1に含まれるn個の変換器セル10のうちのいずれかが故障している場合、コンデンサ電圧平均値Vcpu1avを、故障している変換器セルの数xに応じて補正された指令値Vcfaultに追従させることにより制御値X1を生成する。
実施の形態5によると、故障した変換器セル10を含むグループにおいては、指令値Vcfaultにコンデンサ電圧平均値Vcpu1avを追従させる制御結果と、アーム電流の極性および大きさが反映された補正値Kctがアーム変調指令値Krefpuに加算されることにより、コンデンサ電圧をバランスさせるための補正アーム変調指令値Krefpu1が生成される。これにより、あるグループに属する変換器セルが故障し、当該変換器セルが属するグループと同じアーム内にある他のグループとコンデンサ電圧の平均値に偏りが発生した場合であっても、指令値Vcfaultによって故障変換器セルが属するグループの変換器セルが故障変換器セルの電圧分を補償することができる。
その他の実施の形態.
(1)上述した電力変換装置は、HDVC(High Voltage Direct Current)、あるいはSTATCOM(Static Synchronous Compensator)等の電力系統用の電力変換装置として利用することができる。
(2)上述した第1電圧制御部400、相バランス制御部500、および正負バランス制御部600は、例えば、比例制御器、PI制御器、PID制御器、またはフィードバック制御に用いられる他の制御器として構成され得る。
(3)上述の実施の形態として例示した構成は、本開示の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能である。また、上述した実施の形態において、他の実施の形態で説明した処理および構成を適宜採用して実施する場合であってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。