JP7841914B2 - 水滴推定装置、および燃料電池車 - Google Patents

水滴推定装置、および燃料電池車

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Description

本開示は、例えば車両などに適用される燃料電池システムのカソードオフガス流路における水滴推定技術に関する。
一般に燃料電池システムは、一方の電極(燃料極)に対して水素ガスを供給するとともに、他方の電極(空気極)に対して酸素ガスを供給し、これらが反応することで電気エネルギーを得ている。
ここで燃料電池による反応の結果として、カソードから排出されるガス(「カソードオフガス」とも称する)には水分が含まれる。従って、例えば低温環境下などにおいて燃料電池の安定した稼働を実現するためには、カソードオフガスにおける水滴の有無を高精度に推定することが重要となっている。
特開2010-272372号公報 特開2009-206003号公報
しかしながら上述した各特許文献に限らず現在の技術では以下に述べる課題が存在する。
例えば上記した特許文献1は、カソードオフガスが排出される排出管の入口付近のガス温度と出口付近のガス温度並びに発電に伴って燃料電池で生成された生成水量に基づいて排出管における残水量を推定しているが、燃料電池における直前の運転履歴や発電による生成水が排気に達するまでのタイムラグがある影響で、排気中にリアルタイムで発生する水滴量の推定には適用できないといった課題を有する。
また、上記した特許文献2では、基本的には上記した特許文献1と同様の手法を用い、背圧弁の後段において温度センサと圧力センサを設けて排出水分を十分に気化できたか否かを判断しているが、背圧弁の後段に比較的多数のセンサを設置しなければならずコストアップとなり、簡便に精度良く水滴有無を推定する手法にまで至ってないという課題を内包している。
本開示は、上記した課題を一例に鑑みて為されたものであり、より簡便にカソードオフガス流路における水滴の有無を推定することが可能な燃料電池のカソードオフガス流路における水滴推定装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本開示の燃料電池のカソードオフガス流路における水滴推定装置は、一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサに通信可能に接続される一つ又は複数のメモリと、を備えて燃料電池のカソードオフガス流路における背圧弁の下流側での水滴有無を推定する水滴推定装置であって、前記プロセッサは、前記背圧弁の上流側におけるカソードオフガスの温度を取得し、前記背圧弁の下流側に配置された温度センサを介して前記カソードオフガスの温度を取得し、前記背圧弁の上流側と下流側の前記カソードオフガスの温度差に基づいて背圧弁前後で蒸発した前記カソードオフガスの水分量を推定し、前記背圧弁の下流側での水滴の有無を判定する。
本開示によれば、背圧弁前後における水分の蒸発量に着目して高い時間分解能且つ低コストでカソードオフガス流路における水滴の有無を推定することが可能となる。
実施形態に係る燃料電池車に搭載される燃料電池システムのブロック図である。 実施形態に係る制御装置(ECU)を含む機能ブロック図である。 実施形態に係る水滴推定方法を示すフローチャートである。
次に本開示を実施するための好適な実施形態について説明する。また、以下で詳述する以外の構成については、上記した特許文献を含む公知の燃料電池システムに関する要素技術や構成を適宜補完して実施することができる。
<燃料電池システム100>
まず本開示の好適な実施形態における係る燃料電池システム100の構成について、図1を参照しながら説明する。本実施形態における燃料電池システム100は、例えば水素タンクHTや燃料電池FCなどを備えた公知の燃料電池自動車(FCV)に搭載される。以下では、電動ターボチャージャETを搭載するFCVを一例にして説明するが、電動ターボチャージャETは必ずしも必須ではなく適宜これを省略してもよい。
FCVに搭載される燃料電池システム100は、車両の各部位を制御する制御装置10(ECU)と、この制御装置10に制御される燃料電池FCと、この燃料電池FCにアノードガスおよびカソードガスを供給するガス吸排気系と、を含んで構成されている。
同図に示すように、燃料電池FCには、水素タンクHTから公知のバルブ等を含むアノードガス吸気系HISと、燃料電池FCからアノードオフガスを排出する公知のバルブ等を含むアノードオフガス排気系HDSと、がそれぞれ接続されている。また、燃料電池FCには、例えばDC/DCコンバータ、インバータ、バッテリーあるいは電動モータなど公知の種々の電気モジュールEMと接続されている。
この電気モジュールEMと燃料電池FCとの回路には電流センサAMが設けられており、この電流センサAMによって燃料電池FCを流れる電流値を計測することが可能となっている。また、燃料電池FCによって発電される電圧については公知の電圧計(不図示)で検出される。また、本実施形態の燃料電池FCには、燃料電池FCの冷却を目的としたクーラントが流通する公知のクーラント系WPが接続されている。
なお、それぞれ上記したアノード(燃料)ガスの吸排気系の構造形態、DC/DCコンバータやバッテリーなどを含む電気モジュールEMの構成とその接続形態、およびクーラント系WPの配管形態などは、図1の構成に限定されず、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて上記特許文献に例示される公知の種々の設置例を適用することができる。
[カソードガス系]
次に本実施形態における燃料電池FCのカソードガスの吸気系および排気系の構造について詳述する。
図1に示すように、燃料電池FCへ酸素ガス(酸素を含む空気)を供給するカソードガス吸気系AISは、空気を取り入れる公知のエアフィルタAFと、エアフィルタAFで取り込んだ空気を圧縮する公知の電動ターボチャージャETと、この電動ターボチャージャETで圧縮されて温度上昇した圧縮空気を冷却する公知のインタークーラーI/Cと、を含んで構成されている。
また、エアフィルタAFと電動ターボチャージャETとの間の配管内には公知の質量流量センサFMが設けられており、燃料電池FCに供給される空気の質量流量を計測することが可能となっている。かような質量流量センサFMとしては、例えばカルマン渦式流速計や熱式質量流量計など公知の種々の質量流量センサのうちFCVに好適なものを適宜適用することができる。
また、インタークーラーI/Cと燃料電池FCとの間の配管内には公知の圧力センサPMが設けられており、燃料電池FCに供給される空気の入口圧力を計測することが可能となっている。このように燃料電池FCの酸素極に供給されるエアの圧力は、燃料電池FCにおける酸素極21の入口付近に設けられた圧力センサPMによって検出されており、この検出された空気圧が所定圧力となるように後述する背圧弁BPVの開度が制御装置10によって制御される。
一方で同図に示すように、燃料電池FCから排出されるオフガス(カソードオフガス)を排気するカソードオフガス排気系ADSは、燃料電池FCから排出されるカソードオフガスの背圧を調整するための公知の背圧弁BPVが設けられている。背圧弁BPVから出たカソードオフガスは、上記した電動ターボチャージャETに流入した後に、外部へ放出される。なお本実施形態の背圧弁BPVには、弁の開度を検出可能な公知の開度センサVSが設けられている。
また、同図から理解されるとおり、カソードオフガス排気系ADSのうち背圧弁BPVの上流(入口)側には、背圧弁BPVを通過する前におけるカソードオフガスの温度を検出可能な公知の第1温度センサTMが設けられている。また、カソードオフガス排気系ADSのうち背圧弁BPVの下流(出口)側には、背圧弁BPVを通過した後におけるカソードオフガスの温度を検出可能な公知の第2温度センサTMが設けられている。
後述する制御装置10は、これらの第1温度センサTM、第2温度センサTMおよび開度センサVSを介して、それぞれ背圧弁BPV前後の温度と背圧弁BPVの開度を検出することが可能となっている。
なお上述のとおり本実施形態では電動ターボチャージャETを介したカソードガスの吸排気系を示しているが、本開示はこの形態に限られない。すなわち電動ターボチャージャETの代わりに電動ブロワを使用して、エアフィルタAFから取り込んだ空気を圧縮せずに燃料電池FCへ供給する態様であってもよい。
また、本実施形態では加湿器等は省略したが、燃料電池FCへ供給されるカソードガスを加湿する公知の加湿器などを適宜追加してもよい。かような燃料電池FCに供給されるエアへの加湿態様としては、例えば排気した空気中の水分を再利用する水蒸気交換膜を用いる態様や、純水などの水分をエアに供給する膜加湿器や噴霧器など公知の種々の装置を用いてもよい。
[制御装置10]
次に、図2も参照しつつ、本実施形態の燃料電池システム100における制御装置10の構成について説明する。
図2に示すとおり、本実施形態の制御装置10は、上記した燃料電池FCのカソードオフガス流路における背圧弁BPVの下流側での水滴有無を推定する水滴推定装置として機能する。
より具体的に本実施形態の制御装置10は、質量流量値計測部11、圧力計測部12、空気温度取得部13、飽和水蒸気量取得部14、膨張率推定部15、水蒸気流量推定部16、水滴存在判定部17、水滴調整部18および報知制御部19などを含んで構成されている。かような制御装置10の具体例としては、公知のCPUで構成された一つ又は複数のプロセッサと、この一つ又は複数のプロセッサに通信可能に接続される一つ又は複数のメモリと、を備えた公知のコンピュータ装置が例示できる。
本実施形態の制御装置10は、上記した燃料電池システム100全体を制御する機能を有して構成されていてもよい。
また同図に示すとおり、本実施形態の制御装置10は、通信装置40を介してインターネットなど公知の外部ネットワークNETと接続可能に構成されていてもよい。かような通信装置40は、FCVと例えば外部サーバなどとの間で情報通信を行う機能を備えた公知の車載通信機器が例示できる。また、外部ネットワークNETとしては、上記したインターネットに限られず、例えば無線通信を介して各種情報を車車間で送受信可能な公知の情報通信ネットワークなども含まれる。
また、制御装置10は、FCVに搭載されたセンサ類20から各種の信号を受信可能に構成されている。かようなセンサ類20の例としては、上記した第1温度センサTM、第2温度センサTMおよび開度センサVSの他に、車両に通常搭載される外気温センサや車速センサなど公知の種々の車載センサが例示できる。また、制御装置10は、FCVにそれぞれ搭載された公知のナビゲーション装置30、スピーカSPおよびディスプレイDPと通信可能に構成されている。
質量流量値計測部11は、上記した質量流量センサFMを介して、燃料電池FCの上記した吸気側の空気における質量流量値を計測する機能を有している。なお、本実施形態では質量流量センサFMを用いて直接的にカソードガスの質量流量値を計測しているが、例えば公知の体積流量センサを用いて体積流量値を計測した後で公知の手法により質量流量値に換算する形態であってもよい。
圧力計測部12は、上記した圧力センサPMを介して、燃料電池FCへのカソードガス流路入口付近の気体圧力を計測する機能を有している。
空気温度取得部13は、上記した第1温度センサTMを介して、燃料電池FCのカソードオフガス流路における背圧弁入口(すなわち背圧弁BPVの上流側)のカソードオフガスの温度を計測する機能を有している。また、空気温度取得部13は、上記した第2温度センサTMを介して、燃料電池FCのカソードオフガス流路における背圧弁出口(すなわち背圧弁BPVの下流側)のカソードオフガスの温度を計測する機能を有している。
なお本実施形態では、第1温度センサTMを介して背圧弁前のカソードオフガス温度を計測しているが、本開示はこの態様に限定されない。
例えば制御装置10の空気温度取得部13は、第1温度センサTMに代えて、燃料電池FCを流出した直後のクーラント液(冷却水)の温度に基づいて背圧弁入口のカソードオフガス温度を推定するようにしてもよい。燃料電池FCから排出された直後の冷却水の温度は、カソードオフガスの温度とほぼ等価であると見做せるからである。かような場合には第1温度センサTMの設置を省略でき、燃料電池システム100の更なるコストダウンに寄与することができる。
飽和水蒸気量取得部14は、制御装置10と電気的に接続された記憶装置MD(公知のメモリやHDDあるいはSSDなど)などに予め保存された飽和水蒸気曲線データから、所定の温度における飽和水蒸気量を取得する機能を有している。なお記憶装置MDに保存された飽和水蒸気曲線データは、例えば飽和水蒸気量と気温(温度)との関係が、Tetens(テテンス)の式やWagner(ワグナー)の式などの公知の換算式に基づいて規定されたデータ構造となっていてもよい。
また、本実施形態では上記した飽和水蒸気曲線データが記憶装置MDに保存されている例を説明したが、本開示はこの形態に限られない。すなわち、例えば飽和水蒸気曲線データがクラウドなどの外部サーバにデータベースとして保存されていて、飽和水蒸気量取得部14が上記通信装置40及び外部ネットワークNETを介して上記外部サーバのデータベースにアクセス可能に構成されていてもよい。
膨張率推定部15は、背圧弁BPVを出たカソードオフガスにおける膨張率を推定する機能を有している。より具体的に本実施形態の膨張率推定部15は、上記した質量流量センサFMで計測されるカソードガスの入口流量と、上記した開度センサVSで計測される背圧弁BPVのバルブ開度と、上記した圧力センサPMで計測されるカソードガスの入口圧力と、に基づいて、背圧弁BPVを出たカソードオフガスにおける膨張率を推定する(詳細は後述する)。
水蒸気流量推定部16は、後述する手法によって、燃料電池FCから出たカソードオフガスが背圧弁BPVを通過した際に蒸発した水蒸気流量を推定する機能を有している。
水滴存在判定部17は、上記した水蒸気流量推定部16が推定した水蒸気流量と、背圧弁BPV前後におけるカソードオフガスの温度差と、に基づいて、背圧弁BPVの下流(出口)側において水滴が存在するか否かの判定を行う機能を有している。より具体的に本実施形態の水滴存在判定部17は、カソードオフガスが背圧弁BPVを通過した時に蒸発した水蒸気量が十分に少ないときは背圧弁通過時に水滴が全て蒸発したと判断する一方で、背圧弁通過時に蒸発した水蒸気が多い(すなわち後述する判定閾値に近い)ときは水滴が蒸発しきらず残っていると判断する。
なお水滴存在判定部17による上記判定閾値を用いた判定手法について、理論的には上記した判定閾値に等しい場合に水滴の残りが存在すると判定するのが好ましいが、センサの精度などを鑑みて本実施形態では「判定閾値に近い」ことを基準とした(なお、この「近さ」の程度については具体的な数値を用いて後述する)。上記した理論的な判定手法を採用する場合には、水滴存在判定部17は、測定結果が判定閾値を下回れば水滴が存在せず、判定閾値を測定結果が上回れば何らかのミス(測定ミスや計算ミスなど)があったと判定してもよい。
水滴調整部18は、上記した水滴存在判定部17によって背圧弁BPVの下流(出口)側で水滴が存在すると判定されたとき、燃料電池FCの動作状態を変更して当該水滴を減らす制御を実行する機能を有している。一例として本実施形態の水滴調整部18は、燃料電池FCを加温して動作温度を上昇させる制御、あるいは燃料電池FCに流入する気体の流量を増加させる制御を行ったりしてもよい。
報知制御部19は、上記したスピーカSPおよびディスプレイDPを介した報知を制御する機能を有している。例えば報知制御部19は、水滴存在判定部17の判定結果に基づいて、スピーカSP又はディスプレイDPを介して燃料電池FCの状態を報知することができる。これにより、例えば燃料電池車の所有者などは、カソードオフガス流路における水滴の存在に起因する燃料電池FCの不具合などを予見することができ、修理や点検など必要な措置をいち早くとることが可能となる。
<排気湿度推定方法>
次に図3も適宜参照しつつ、燃料電池システム100の制御装置10で実行されるカソードオフガス流路における背圧弁下流側での水滴有無の推定方法について説明する。
ここで、まず本開示における背圧弁下流側での水滴有無推定のメカニズムについて概略を示す。すなわち、燃料電池FCから排出されたカソードオフガスは、上記した背圧弁BPVを通過するときに絞り断熱膨張の状態変化(すなわち等エンタルピーで膨張する)を経ることになる。このとき、仮に背圧弁BPVの入口に水滴を含むオフガスが流れ込んだ時は、背圧弁BPVを通過する際に圧力が低下すると共に体積が膨張する。そして圧力が低下して体積が膨張したオフガスは、その変化分だけ飽和水蒸気量が増加することで、上記水滴が蒸発してその蒸発熱の分だけ顕熱が減少して温度が低下することになる。
従って、水滴を含むカソードオフガスが背圧弁BPVを通過する際の温度変化ΔTは、以下の式1で表すことができる。
(式1)

ただし式1において、
「ΔfH2O,g」は背圧弁BPV前後の水蒸気流量差を、
「ΔHH2O,l→g」は水の蒸発熱を、
「ΔHloss」は背圧弁BPVでのエンタルピー損失を、
「fall」は背圧弁BPVを通過する流体(オフガス)の全体流量を、
「Cp」は背圧弁BPV出口における流体(オフガス)の比熱を、
「ΔT」は背圧弁BPV前後での流体(オフガス)の温度差を、
それぞれ示している。
かような本開示の知見に基づいて、本実施形態では、以下のとおり計算から導かれる背圧弁通過時における計算上の蒸発水分量と、背圧弁前後のセンサで測定された温度差に基づく測定上の蒸発水分量と、を比較して、測定上の蒸発水分量(下記のΔf)が計算上の蒸発水分量(下記のΔfmax)に近い値か否かで、背圧弁BPVをカソードオフガスが通過するときに水滴が蒸発せず残留しているものと見做している。
より具体的には図3に示すとおり、まずステップ1において、制御装置10は、燃料電池FCの背圧弁BPV上流(入口)側における下記の状態情報を取得する。すなわち制御装置10の空気温度取得部13は、例えば上記した第1温度センサTMやクーラント液の温度を介して、背圧弁BPV入口におけるカソードオフガスの温度を取得する。同様に制御装置10の質量流量値計測部11および圧力計測部12は、例えば流量センサFMや電流センサAM、圧力センサPMなどに基づいて、背圧弁BPV上流(入口)側におけるカソードオフガスの流量値と圧力値(絶対圧)をそれぞれ取得する。これにより制御装置10は、一例として、背圧弁BPV上流(入口)側における圧力が250KPa,a、カソードオフガスの質量流量が2.8mol/s(ここに水蒸気と、発電で消費した分の酸素は含まない)、温度が80℃であるという情報をそれぞれ取得する。
続くステップ2において、制御装置10は、燃料電池FCの背圧弁BPV下流(出口)側における下記の状態情報を取得する。すなわち制御装置10の空気温度取得部13は、例えば上記した第2温度センサTMを介して、背圧弁BPVの下流(出口)側におけるカソードオフガスの温度を取得する。これにより制御装置10は、一例として、背圧弁BPV下流(出口)側におけるガスの温度が69.2℃であるという情報を取得する。
次いで制御装置10は、次に述べるように、背圧弁BPVの上流側と下流側のカソードオフガスの温度差に基づいて背圧弁前後で蒸発したカソードオフガスの水分量を推定し、背圧弁BPVの下流側(出口)での水滴の有無を判定する。
具体的にはステップ3において、制御装置10は、背圧弁BPV通過時に蒸発した水蒸気量を次に示す手法によって推定する。
すなわち制御装置10の水蒸気流量推定部16は、まず背圧弁BPV上流(入口)側での水蒸気流量finを推定する。ここで、背圧弁BPV上流(入口)側での圧力(250KPa,a)、質量流量(2.8mol/s)および温度(80℃)はステップ1で取得していることから、水蒸気流量推定部16は、飽和水蒸気量取得部14を介して取得した80℃における飽和水蒸気量(292g/cm)に基づいて、下記の式2のとおり背圧弁BPV上流(入口)側での水蒸気流量finは「0.52mol/s」であると推定する。
(式2)
次に制御装置10の膨張率推定部15は、上記で求めた背圧弁BPVに入るオフガスの全流量(2.8mol/s+0.52mol/s)と、開度センサVSを介して取得したバルブ開度と、上記背圧弁BPV上流(入口)側の圧力(250KPa,a)とから、背圧弁BPV下流(出口)側での膨脹率を推定する。これにより制御装置10は、一例として、背圧弁BPV下流(出口)側での膨脹率は「5/3」であると推定する。なお、背圧弁BPVの後段に公知の圧力センサを設けてもよい場合には、制御装置10は、当該圧力センサの値も用いて上記した膨張率を推定してもよい。
そしてステップ4において、制御装置10は、背圧弁BPV下流(出口)側において水滴が存在するかを、例えば次に述べる手法によって推定する。
すなわち制御装置10の水滴存在判定部17は、背圧弁BPV下流(出口)側における湿度は100%であると仮定して、公知の算出式を考慮して背圧弁BPV下流(出口)側における水蒸気流量foutの理論上の最大値fout, maxを次に示す式3のとおり推定する。なお下記式3において「e(T)」は、公知のTetensの式に基づく飽和蒸気圧の式を使用したものである。
式(3)
一方で、計算の簡略化のため上記式1における背圧弁BPVでのエンタルピー損失(ΔHloss)をゼロと見做すと、背圧弁BPV前後で蒸発出来る水蒸気流量の最大値Δfmaxは次の式4で近似できる。
(式4)
また、背圧弁BPV下流(出口)側における水蒸気流量は、背圧弁BPV上流(入口)側における水蒸気流量finを用いて下記式5のとおりにも表せる。
式(5)
従って制御装置10は、背圧弁BPVを通過する流体(オフガス)の全体流量(fall)は「2.8+0.523.32mol/s=0.096kg/s」であることから、背圧弁BPV出口側における流体の比熱を「Cp=1.009kJ/kg・K」とし、水の蒸発熱を「ΔHH2O,l→g=41.7kJ/mol・K」として、式3、式4及び式5に基づいてΔTを計算によって算出する。これにより、本例ではΔT≒10.4℃となり、制御装置10は、上記した最大値Δfmax≒0.024kg/sと算出する。
次いで制御装置10の水滴存在判定部17は、上記した測定上の温度差が10.8℃(80℃-69.2℃)であることから、測定上の水蒸気流量Δfは次の式6に従って「0.025kg/s」であると算出する。
(式6)
そして制御装置10の水滴存在判定部17は、測定上の水蒸気流量Δf(0.025)と、計算上の蒸発水分量の最大値Δfmax(0.024)を比較することで、ΔfがΔfmaxに近い値であるときは背圧弁BPV下流(出口)側で水滴が残留しているものと判断し、ΔfがΔfmaxより小さいときは背圧弁BPV下流(出口)側で水滴が全て蒸発したものと判断する。
なお、ΔfがΔfmaxに近い値か否かの閾値としては、例えば両者の差分が0.01未満であるなど、実験やシミュレーションによって適宜設定することができる。
以上説明したように本実施形態の制御装置10は、推定された背圧弁BPV前後で蒸発したオフガスの水分量が、背圧弁BPV上流(入口)の流体圧力、空気流量、空気温度およびバルブ開度と、を用いて算出した背圧弁の通過時に蒸発可能な最大水分量に近いか否かで上記水滴の存在を判定している。しかしながら本開示は、上記形態に限られず、例えば上記した複数のパラメータのうち例えばバルブ開度は他のパラメータとの相関値で代用するなどして省略してもよい。換言すれば、制御装置10は、背圧弁BPV前段(入口)の流体圧力、空気流量、空気温度およびバルブ開度と、これらの相関値のうち少なくとも一つ以上を用いて、上記した最大水分量を算出するようにしてもよい。
また、制御装置10は、空気の分子量や比熱を、実際の空気の組成比に合わせて変動する値として扱ってもよい。
そしてステップ4で背圧弁BPV下流(出口)側に水滴が存在すると判定された場合には、続くステップ5において、制御装置10の水滴調整部18は、上記で例示した手法などを用いて、燃料電池FCの動作状態を変更して背圧弁BPV下流(出口)側における水滴量の調整を実行する。
ステップ5で上記した水滴量の調整を実行した後、続くステップ6において、制御装置10は、燃料電池FCは乾燥傾向にあるか否かを判断する。なお燃料電池FCにおける具体的な乾燥傾向の判定手法に関しては、本開示の趣旨を逸脱しない限り特に制限はなく、例えば特開2007-012571号や特開2015-095305号などに開示された判定手法など公知の種々の技術を適用してもよい。
そしてステップ6において、制御装置10は、燃料電池FCが乾燥傾向であると判定した場合には、続くステップ7で水滴調整部18による上記水滴量の調整を中断したり、上記した動作状態の変更度合いを小さくしたりするなどして水滴量の減少を抑制する。換言すれば、本実施形態の制御装置10は、燃料電池FCが乾燥傾向であるか否かを判定し、燃料電池FCが乾燥傾向であると判定された場合には背圧弁BPV下流側での水滴を減少させる制御を制限する。一方でステップ6において、燃料電池FCは乾燥傾向でないと制御装置10によって判定された場合には、続くステップ8へと移行する。
ステップ8では、制御装置10は、背圧弁BPV下流(出口)側に存在する水滴が蒸発したか否かを判定する。具体的に制御装置10は、ステップ5において上記した水滴を減らす処理を実行した後に、上記した手法によって背圧弁BPV前後で蒸発したオフガスの水分量を再び算出する。そして制御装置10は、背圧弁通過時に蒸発した水蒸気量の増減量が上記Δfmaxを下回った場合には水滴が全て蒸発したと判断する。
そしてステップ8で上記した水滴が未だ蒸発していないと判定された場合には、制御装置10は、再びステップ5に戻って上記した水滴の調整処理を繰り返す。一方でステップ8において水滴が蒸発したと判定された場合には、続くステップ9において、制御装置10は、燃料電池車のシステムがOFFとなったか否かを判定する。ステップ9で燃料電池車のシステムがOFFとなっていない場合には、制御装置10は、ステップ1に戻って以上の処理を再度実行する。
上記した本実施形態の燃料電池システムおよびその水滴推定方法によれば、背圧弁前後における水分の蒸発量に着目して高精度且つ低コストでカソードオフガス流路における水滴の有無を推定することが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、これら実施形態や変形例に対して更なる修正を試みることは明らかであり、これらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
100 制御システム
10 制御装置
FC 燃料電池
BPV 背圧弁

Claims (4)

  1. 一つ又は複数のプロセッサと、
    前記一つ又は複数のプロセッサに通信可能に接続される一つ又は複数のメモリと、
    を備えて燃料電池のカソードオフガス流路における背圧弁の下流側での水滴有無を推定する水滴推定装置であって、
    前記プロセッサは、
    前記背圧弁の上流側におけるカソードオフガスの温度を取得し、
    前記背圧弁の下流側に配置された温度センサを介して前記カソードオフガスの温度を取得し、
    前記背圧弁の上流側と下流側の前記カソードオフガスの温度差に基づいて
    「Δf H2O,g 」を、前記背圧弁の前後の水蒸気流量差とし、
    「ΔH H2O,l→g 」を、水の蒸発熱とし、
    「ΔH loss 」を、前記背圧弁でのエンタルピー損失とし、
    「f all 」を、前記背圧弁を通過する前記カソードオフガスの全体流量とし、
    「Cp」を、前記背圧弁の出口における前記カソードオフガスの比熱とし、
    「ΔT」を、前記背圧弁の前後での前記カソードオフガスの温度差としたとき、
    下記式(1)に従って背圧弁前後で蒸発した前記カソードオフガスの水分量を推定し、前記背圧弁の下流側での水滴の有無を判定する、
    燃料電池のカソードオフガス流路における水滴推定装置。
    (式1):
  2. 前記プロセッサは、
    推定された前記背圧弁前後で蒸発した前記カソードオフガスの水分量が、前記背圧弁の入口空気圧力、入口空気流量、入口空気温度および開度と、これらの相関値のうち少なくとも一つ以上を用いて算出した前記背圧弁の通過時に蒸発可能な最大水分量に、近いか否かで上記水滴の存在を判定する、
    請求項1に記載の水滴推定装置。
  3. 前記プロセッサは、
    前記燃料電池が乾燥傾向であるか否かを判定し、
    前記乾燥傾向であると判定された場合に前記背圧弁の下流側での水滴を減少させる制御を制限する、
    請求項1に記載の水滴推定装置。
  4. 燃料電池と、
    前記燃料電池のカソードオフガス流路における背圧弁の下流側での水滴有無を推定する請求項1に記載の水滴推定装置と、
    を含む燃料電池車。
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