JP2004039398A - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池システムの発電効率を低下させる気体組成変動の検出を小型で応答性と精度がよく、しかも安価に実現する。
【解決手段】アノードガス循環系の静圧及び全圧をそれぞれ静圧センサ6,全圧センサ7で検出する。燃料電池の運転状態またはガス循環系の温度からガス循環系の水蒸気分圧を推定する。制御用コンピュータ10は、静圧値または全圧値から気体流量値を求めて、この気体流量値からガス循環系内の圧力測定点のガス流速値を求め、静圧値と全圧値とガス流速値と水蒸気分圧に基づいてガス循環系の気体密度を求め、得られた気体密度とあらかじめ設定された所定の状態の気体密度と比較することによって、ガス循環系内の気体組成が変化したことを検出する。
【選択図】 図1
【解決手段】アノードガス循環系の静圧及び全圧をそれぞれ静圧センサ6,全圧センサ7で検出する。燃料電池の運転状態またはガス循環系の温度からガス循環系の水蒸気分圧を推定する。制御用コンピュータ10は、静圧値または全圧値から気体流量値を求めて、この気体流量値からガス循環系内の圧力測定点のガス流速値を求め、静圧値と全圧値とガス流速値と水蒸気分圧に基づいてガス循環系の気体密度を求め、得られた気体密度とあらかじめ設定された所定の状態の気体密度と比較することによって、ガス循環系内の気体組成が変化したことを検出する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池システムに係り、特にアノードガス循環系またはカソードガス循環系を備えた燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、水素等の燃料ガスと空気等の酸化剤ガスとを電気化学的に反応させて発電する装置である。これにより、燃料の持つ化学エネルギーを運動エネルギー等の他の形態のエネルギーへの変換過程を経ることなく直接電気エネルギーに変換するので、エネルギー変換効率が高い。
【0003】
この燃料電池は、電解質の種類により種々あるが、固体高分子電解質膜を用いたものは、取り扱いが容易で運転温度も比較的低く、車両用電源として期待されている。
【0004】
通常発電効率を高めるため、燃料電池が発電に消費する反応量以上の燃料ガス及び酸化剤ガスを燃料電池本体に供給している。そして、燃料電池本体から排出される未使用燃料ガスまたは未使用酸化剤ガスは、ガス循環路を介してガス供給ラインに戻して再使用している。このようなガス循環系を備えた燃料電池システムは、特開平8−236131号公報に開示されている。
【0005】
この従来技術によれば、燃料電池システムのアノードガス循環系とカソードガス循環系をエジェクタにより行い、またパージ弁によりガス循環系内の気体を排除させることが示されている。
【0006】
ところで燃料電池システムは発電運転を続けることで、ガス循環系内がクロスリーク等により発電に不要なアルゴンや窒素等の気体により充満されて行き、発電出力の低下つまり発電効率の低下を起こすことが知られている。
【0007】
上記従来技術では、ガス循環系内が発電に不要な残存ガスで満たされたことを検出するとパージ弁を開放して残存ガスを排除し、発電効率を回復する方法も示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の燃料電池システムにおいては、ガス循環系内のガス組成を直接検出するには、ガスアナライザ等の大掛かりで且つ高価な装置を使用しなければならず、車両などに搭載する小型のシステムには適さないという課題があった。
【0009】
また制御に必要とされる応答性も車両搭載システムのように発電量の変化が早いシステムには十分とは言えないという課題があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は、アノードガス循環系、またはカソードガス循環系を有する燃料電池システムにおいて、前記アノードガス循環系または前記カソードガス循環系の少なくとも一方のガス循環系の静圧及び全圧を検出する圧力検出手段と、前記ガス循環系の水蒸気分圧を推定する水蒸気分圧推定手段と、を備え、検出した静圧値及び全圧値と、水蒸気分圧に基づいて前記ガス循環系の気体密度を求め、得られた気体密度とあらかじめ設定された所定の状態の気体密度と比較することによって、前記ガス循環系内の気体組成が変化したことを検出することを要旨とする。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、圧力検出手段により測定したガス循環系の全圧Pa と静圧Pb と、水蒸気分圧推定手段により推定した水蒸気分圧とに基づいて、ガス循環系内の気体組成変動を検出するようにしたので、燃料電池システムの発電効率を低下させる気体組成変動の検出を小型で応答性と精度がよく、しかも安価に実現することができるという効果がある。
【0012】
【発明の実施の形態】
〔第1実施形態〕
次に、図面を参照して、本発明に係る燃料電池システムの第1実施形態を詳細に説明する。図1は、燃料電池システムの第1実施形態の構成を説明するシステム構成図、図2は気体組成検出処理を説明するフローチャート、図3はパージ弁制御を説明するフローチャート、図4は診断処理フローチャート、図5はガス温度に対する飽和水蒸気量を表した図、図6は本構成を適用した際のガス循環系内の気体組成状態を表した図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池システムは、アノードガス系に純粋な水素を使用し、エジェクタにより消費されなかったアノードガスを燃料電池スタック入口に戻すガス循環系を構成している。カソードガス系は加圧もしくは通常の大気を使用する構成にしている。
【0014】
図1において、燃料電池システムは、発電を行う燃料電池スタック1と、燃料電池スタック1のカソードガス系の入口であるカソードガス吸気管2と、燃料電池スタック1のカソードガス系の出口であるカソードガス排気管3と、アノードガス系の圧力調整を行うアノードガス圧力調整弁4と、燃料電池スタック1で消費されなかったアノードガス系を循環させるためのエジェクタ5と、アノードガス系の燃料電池スタック1入口の静圧を測る絶対圧力式の静圧センサ6と、静圧と同じ地点の全圧を測る絶対圧力式の全圧センサ7と、燃料電池スタック1出口からエジェクタ5までアノードガスを導くアノードガス循環系経路9と、アノードガス循環系経路内の不要気体等を放出するためのパージ弁8と、燃料電池スタック1や圧力センサ6,7からの情報を得て、圧力調整弁4及びパージ弁8を含むシステム全体の制御を行う制御用コンピュータ10と、を備えている。
【0015】
尚、本実施形態では、スタック入口の二つの圧力センサ6及び7を同じ測定ポイントにするため、ピトー管11を使用する構成としている。
【0016】
次に、図2〜図6をを参照して、第1実施形態の燃料電池システムの運転制御フローを説明する。
【0017】
図2において、制御用コンピュータ10は、S10で、先ずモータインバータ等の負荷システムからの発電要求と、該燃料電池システムのガス循環系のガス循環量要求に応じて、アノードガス循環系内のスタック入口圧力調整を圧力調整弁4の開度を調整することにより、アノードガス流量の制御を行う。
【0018】
次いで、S12で、静圧センサ6の検出値である静圧Pb [MPa]の圧力データを取り込み、S14で、全圧センサ7の検出値である全圧Pa [MPa]の圧力データの取り込みを行う。
【0019】
続けてS16で、予備実験等により既に特性が分かっている燃料電池スタック1に流れるアノードガス流量Vと入口の静圧Pb の関係式(V=f(Pb ),f:任意関数)から、入口の静圧を基に燃料電池スタック1に供給される単位時間当たりのアノードガス流量V[m3/s]を求める。流量Vが分かれば、S18で測定位置のガス流路の断面積で流量Vを除算することにより、流速ve [m/s] が求まる。
【0020】
一般に、気体等の密度が小さい物質は位置ヘッド(位置エネルギの大きさを水柱の高さで表したもの)を無視することができ、また循環系内の気体流速が音速に比べて十分に遅く、また循環系内の特定区間の圧力変化が小さい場合には圧縮性が無視できるので、ベルヌーイの式は、気体密度ρ[kg/m3]を用いて次の式(1)に表すことが出来る。
【0021】
【数1】
ρ/2・ve2 +Pb =Pa …(1)
式(1)より、気体密度ρ[kg/m3]は、式(2)となる。
【0022】
【数2】
ρ=(Pa −Pb )・2/ve2 …(2)
S20では、上記のステップにより求めたPa 、Pb 、ve を式(2)に代入することによって気体密度ρ[kg/m3]が得られる。
【0023】
ところで、気体に含まれる水蒸気分圧は、温度特性が大きいことが知られている。予め予想される燃料電池システムの運転状態に応じてガス循環系温度を推定し、その温度の気体中に含まれる水蒸気分圧を求める。即ち、S22では、気体密度ρと飽和水蒸気量ρw を以下の式(3)に代入して、補正した気体密度ρa を求める。
【0024】
【数3】
ρa =ρw +ρ …(3)
【0025】
ガス循環系の内部ガスを構成するの各々の気体は、固有の密度を有しており、ガスの組成が変化すると密度が変動する。例えば燃料電池システムで最も重要な気体の水素は、全ガス中最も密度が低く、不純物が混入すると密度が高くなることから検出した密度に基づいてガス組成の変化を検出することが出来る。
【0026】
つまりガス循環系気体の密度を検出することで、ガスの組成の変動を検出することが可能になる。
【0027】
本実施形態におけるアノードガス循環系内は、通常の状態なら純粋な水素を加湿したガスで満たされており、この時の気体の標準状態における密度ρb は、約0.0898[kg/m3 ]である。
【0028】
そこで、S24において、上式で求めたρa と予め制御用コンピュータの内部に記憶したρb とを比較する。そして、S26〜S30において、図6のグラフに示したような閾値a、閾値b、閾値cと照らし合わせることにより、ガス循環系内の気体組成の変化具合を求める。
【0029】
図6において、それぞれのρb に対して閾値cを下回るρa ならば、静圧センサ6または全圧センサ7の検出値に異常があると判断して、S32で診断制御へ移行する。
【0030】
ρb に対して理論値を挟む閾値aから閾値cまでの間のρa ならば、気体組成は正常と判断して、S34でパージ制御回数をクリアして終了する。
【0031】
ρb に対して閾値aから閾値bまでの間のρa ならば、気体組成に異常があると判断して、S36でパージ弁制御へ移行する。ρb に対して閾値b以上のρa ならば、静圧センサ6または全圧センサ7の検出値に異常があると判断して、S38で診断制御へ移行する。
【0032】
図3は、パージ制御を説明するフローチャートである。ガス循環系内の気体に不要気体等が混じり、気体密度ρa が大きくなっている場合には、図3のパージ制御を行う。まず、S40で任意に設定した所定時間パージ弁8を開いて、ガス循環系内の気体を外部へ放出する。所定時間経過すると、S42で気体組成を検出してパージ弁を開制御したことの繰り返し回数を1だけ増加(カウントアップ)する。
【0033】
次いでS44で繰り返し回数が所定回数、本実施形態では5回、未満か否かを判定し、5回未満であれば、図2の気体組成検出処理へ移行する。5回以上(実際は5回)であれば、所定回数パージを繰り返しても気体組成に改善が見られなかったとして、S46でセンサフェールを解析するために診断処理へ移行する。S44で判断に使用する所定回数は、予め実験結果により決めておく。
【0034】
こうして、一旦パージ制御を行った後で通常の気体組成検出フローへ戻り、ガス循環系内の気体組成を検出して、不要気体が十分に減少したか否かを判定し、十分に不要気体が減少されていれば、パージ制御回数カウンタをクリアして該フローを終了し、また図2に戻り気体組成検出フローを実行する。
【0035】
不要気体が十分に減少していない時は、再度パージ制御フローを実行する。何回かこのフローを繰り返しても循環系の回復が行われず、パージ弁制御と気体組組成検出フローを続けて何度も繰り返す制御が続く時は、パージ弁故障などのシステムに機能失陥(フェール)が発生していると判断し、診断処理フローに移行する。
【0036】
ところで本実施形態の場合、システムが正常である限りρa がρb を下まわることは理論上ありえなく、仮にこのような状態に成った時には(図2のS28判定がNo)、2つの圧力センサの機能が失陥かその他システムに機能が失陥した時であり、図4の診断処理フローにて各種フェール制御に移行する。
【0037】
図4の診断処理フローチャートでは、圧力調整弁4の開度を変動させてセンサの出力値に変化があるかを検出することで、変化の無いセンサをフェール(機能失陥、故障)として扱う。また、センサ出力値に変動が現れていてれば、センサ以外の他のフェールとして扱う。
【0038】
図4において、まずS50で、圧力調整弁4の開度を変更する。S52で静圧センサ6から静圧値データPb を取り込み、S54で全圧センサ7から全圧値データPa を取り込む。S56でPb が変化した否かを判定し、Pb が変化していなければ、静圧センサ(Pb センサ)6のフェールを処理すべく、S60でフェール処理へ移行する。
【0039】
S56でPb が変化していれば、S58でPa が変化した否かを判定し、Pa が変化していなければ、全圧センサ(Pa センサ)7のフェールを処理すべく、S62でフェール処理へ移行する。S58でPa が変化していれば、その他のフェールを処理すべく、S64でフェール処理へ移行する。
【0040】
なお、気体密度の変動は体積流量計と質量流量計からも体積当りの重量、即ち密度が分かるので、この2つの流量計から気体の密度を検出しガスの組成を推定することが可能である。しかしながら、流量計は一般に多くの実装容積を必要とし、また密度の低い水素等の流量の検出精度向上が難しく、車両搭載を前提としている燃料電池システム等では、搭載性と性能要求を満たすのが困難であった。
【0041】
本実施形態の実現にあたり、一般的な燃料電池システムに対して追加する必要のあるセンサは基本的に静圧センサ6と、全圧センサ7だけであり、小型、安価かつ十分な応答性を備え車両搭載を想定した燃料システム等でも適用を可能にする。
【0042】
〔第2実施形態〕
次に、図7を参照して、本発明に係る燃料電池システムの第2実施形態を詳細に説明する。図7は、燃料電池システムの第2実施形態の構成を説明するシステム構成図であり、第1実施形態(図1)の圧力検出手段であるピトー管11に代えて、ベンチュリ管12を用いた静圧センサ6及び全圧センサ7の構成としたものである。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0043】
圧力検出手段の構成は通常は圧力値測定の各ポイントに絶対圧力を測るセンサを設けるか、または大気圧からの相対圧を測るセンサを設置し圧力を測るのが一般的である。
【0044】
本実施形態では、先ずは絶対圧力または相対圧力検出方式の静圧センサ6を設置し、もう一方の全圧センサ7は静圧センサ6測定点と、全圧の測定点の差圧(動圧)を測るようにする。
【0045】
この配置によって全圧センサ7における静圧分を考慮することなく演算式が簡略化され、また動圧の場合は圧力差が小さいことから分解能のよい圧力センサが使用できるので、その分測定精度を向上させることが出来る。
【0046】
なお、全圧センサ7を絶対圧または相対圧とし、静圧を差圧(動圧)とする構成にしても同じ効果が得られる。
【0047】
さらにベンチュリ管12を使用することで、圧力測定ポイントでの循環系内気体の流速を上げられ、ベンチュリ管に静圧と全圧の圧力検出手段を設けることで循環系内の速度ヘッドをより大きくし、循環系内気体密度の検出精度を上げることが出来る。
【0048】
また圧力検出手段として、ピトー管を使うことによって静圧センサと全圧センサを同じ場所に配置することが出来、圧力を検出するシステムを小さく出来る。
【0049】
以上より検出精度を上げて、また検出装置をより小さくできる。
【0050】
しかしながら本実施形態では流量を多くしていくとベンチュリ部での圧力損失が発生する。最大流量と最小流量の差を大きく取ることが困難であり、また流量変化が大きくなると流れの形態が層流と乱流を行き来する領域を使うことも有り得、この場合は特に十分な予備実験等の検証を行った流量補正が必要である。流量使用域、管内断面積、各要素を設置するための寸法と重量等の要件から、第1実施形態と第2実施形態の利点と懸案を考慮した上で決定することが最善である。
【0051】
本実施形態における制御方法は第1実施形態に準じ、気体組成検出フロー等の制御フローは同等である。但し圧力や流量/流速の定義方法が異なるので、演算途中の制御パラメータは変更の必要がある。
【0052】
〔第3実施形態〕
次に、図面を参照して、第3実施形態を詳細に説明する。図8は、第3実施形態の構成を説明するシステム構成図、図9は気体組成検出処理を説明するフローチャート、図10はパージ弁制御を説明するフローチャート、図11はフラッディング(水詰まり)除去制御を説明するフローチャート、図12は診断処理フローチャート、図13は本構成を適用した際のガス循環系内の気体組成状態を表した図、図14は仮想出口側圧力値の圧力損失係数Cp を表した図、図15は発電により消費されるアノードガス流量の比率であるアノードガス消費係数Cs を表した図である。
【0053】
以下第1実施形態との相違点を中心に説明する。第1実施形態との構成上の主な相違は、圧力検出手段として静圧を検出する静圧センサ6と全圧を検出する全圧センサ7とを個別に備え、全圧センサ7を燃料電池スタック1出口に設置し、静圧センサ6を燃料電池スタック1の入口に設置している。また、アノードガス循環経路9内のガス温度を測定する温度センサ13を備えている。その他の構成は、図1の第1実施形態と同様である。
【0054】
本実施形態における圧力検出手段の配置方法では、燃料電池スタック1を介して異なる位置に静圧センサ6と全圧センサ7とが設置されているため、各々の測定点でガス循環系の気体流量と圧力に違いがあり、このままベルヌーイの式に代入し密度を求めることが出来ず、補正が必要である。
【0055】
燃料電池スタック1の圧力損失と、発電量からアノードガス消費量を推測し、これらに基づき、静圧センサ6または全圧センサ7の何れか一方圧力センサの出力の補正を行う。
【0056】
静圧センサ6は、燃料電池スタック1へのアノードガス給量制御をフィードフォワードで行うことを目的に、本実施形態でも第1実施形態と同じように燃料電池スタック1の入口側に設置する。
【0057】
本実施形態では、入口側のセンサ圧力値Pb を燃料電池スタック1の圧力損失により減算した値Pb2(仮想出口側静圧値)を使用する。Pb2 を求めるには、予め実験等により得られた、圧力と圧力損失係数Cp の関係(図14)から目的のPb におけるCp を求め、以下の式に代入しPb2 を得る。
【0058】
【数4】
Pb2 =(1−Cp )×Pb …(4)
【0059】
また、図15より発電によるアノードガス消費率であるアノードガス消費係数Cs を求め、Cs とVから、消費されずに燃料電池スタック出口から排出されるアノードガス流量V2 の値を求める。
【0060】
【数5】
V2 =(1−Cs )×V …(5)
またV2 の値を全圧センサ測定ポイントの断面積で除算し流速ve2 [m/s]を求める。次いで、Pa 、Pb2 、ve2を以下のベルヌーイの式(6)から導かれる式(7)に代入してρ2 を求める。
【0061】
【数6】
ρ2 /2・ve2 2+Pb2 = Pa …(6)
ρ2 =(Pa −Pb2 )・2/ve2 2 …(7)
次に、求めたρ2 に対して水蒸気分圧分の補正を行い、気体密度ρa2を得る。
【0062】
ところで、アノードガスまたはカソードガスの双方または一方を、燃料電池のイオン交換膜の乾きを発生させないよう、予め図示しない加湿器により水蒸気飽和状態にして供給している。
【0063】
燃料電池システムは発電量や冷却水の温度や過渡的なガス流量変化、熱交換効率等の運転状態の違いにより、燃料電池スタックや循環系の温度が変化する。
【0064】
気体の飽和水蒸気は温度特性があり、また気体の密度にも温度特性がある。本実施形態では、ガス循環系内に温度センサ13を設置することで飽和水蒸気の温度特性を反映させて水蒸気分圧ρw を精度よく推定できる。
【0065】
図5から温度に応じた水蒸気分圧ρw2を求め、これを用いて式(8)によりρ2 を補正し、ρa2を得る。
【0066】
【数7】
ρa2=ρw2 +ρ2 …(8)
次いで、式(8)で求めたρa2と、ρb とを比較し、図13のグラフに照らし合わせることにより、循環系内の気体組成の変化具合、フラッディングの発生状況を求める。
【0067】
本実施形態の場合、ρa2がρb に比べ低い値となる場合もあり、これらは燃料電池スタック内で余分な圧力損失が発生している時、すなわちフラッディング(ガス循環通路内に水滴が付着する現象;水詰まり)が発生しているときである。したがって、ρa2がρb より低下した時にはフラッディング除去処理フローチャート(図11)を実行する。
【0068】
尚、フラッディング除去処理(図11)と不要気体のパージ処理(図10)のフローチャートの違いは、パージ弁8を開ける所定時間の違いである。これは、排出すべき対象の密度の違いにより除去時の条件設定を細分化し、発電に寄与しない燃料ガス消費を最小化して、燃費効率化を目的としたためである。
【0069】
一般的に、ガス循環系内の水滴を除去するフラッディング除去の方が、不要気体の除去のときよりも所定時間を長くすると良い。
【0070】
次に、図9〜図11のフローチャートを参照して、本実施形態における制御用コンピュータ10の処理動作を説明する。
【0071】
図9において、まずS70で、先ずモータインバータ等の負荷システムからの発電要求と、該燃料電池システムのガス循環系のガス循環量要求に応じて、アノードガス循環系内のスタック入口圧力調整を圧力調整弁4の開度を調整することにより、アノードガス流量の制御を行う。
【0072】
次いで、S72で、静圧センサ6の検出値である静圧Pb [MPa]の圧力データを取り込み、S74で、全圧センサ7の検出値である全圧Pa [MPa]の圧力データの取り込みを行う。S76で温度センサ13からアノードガス循環経路内のガス温度データの取り込みを行う。
【0073】
次いでS78で、予備実験等により既に特性が分かっている燃料電池スタック1に流れるアノードガス流量Vと入口の静圧Pb の関係式と、図14の圧力損失係数Cp とから、入口の静圧Pb を基に燃料電池スタック1に供給される単位時間当たりのアノードガス流量V[m3/s]と、Pb2(Pb2=Cp *Pb )とを求める。
【0074】
S80で、燃料電池スタック1の発電量(W=V*A)を検出し、この発電量におけるアノードガス消費係数Cs を図15のようなマップから求め、消費されるアノードガスの流量(Cs *V)を算出する。
【0075】
次いでS82で、燃料電池スタック出口側のアノードガスの推定流量V2 を先に述べた式(5)により算出し、出口側推定流量V2 の値を全圧センサ測定点の流路断面積で除算して流速ve2[m/s]を求める。
【0076】
S84では、上記のステップにより求めたPa 、Pb2、ve2を先に説明した式(7)に代入することによって気体密度ρ2 [kg/m3]が得られる。
【0077】
次にS86で、温度センサ13によるガス循環系の温度測定値から、その温度の気体中に含まれる水蒸気分圧ρw を求め、気体密度ρ2 を水蒸気分圧ρw で補正する。即ち、S86では、気体密度ρ2 と飽和水蒸気量ρw を式(3)のような式に代入して、補正した気体密度ρa2 を求める。
【0078】
そして、S88において、上式で求めたρa2 と予め制御用コンピュータの内部に記憶したρb とを比較する。ρb は、ガス循環系内の気体の仕様により定まる定数であり、第1実施形態と同様に実験により設定する。
【0079】
そして、S90〜S96において、図13のグラフに示したような閾値a、閾値b、閾値c、閾値dと照らし合わせることにより、ガス循環系内の気体組成の変化具合を求める。
【0080】
図13において、それぞれのρb2に対して閾値d未満のρa ならば、静圧センサ6または全圧センサ7の検出値に異常があると判断して、S98で診断制御へ移行する。
【0081】
ρb に対して閾値c未満かつ閾値d以上の範囲のρa2ならば、気体組成はフラッディング域と判断して、S100でパージ制御回数をクリアして終了する。
【0082】
ρb に対して理論値を含む閾値a未満かつ閾値c以上の範囲のρa2ならば、気体組成は正常と判断して、終了する。
【0083】
ρb に対して閾値a以上かつ閾値b未満の範囲のρa2 ならば、気体組成に異常があると判断して、S102でパージ弁制御へ移行する。
【0084】
ρb に対して閾値b以上のρa2ならば、静圧センサ6または全圧センサ7の検出値に異常があると判断して、S104で診断制御へ移行する。
【0085】
図10は、本実施形態におけるパージ制御を説明するフローチャートである。ガス循環系内の気体に不要気体等が混じり、気体密度ρa2が大きくなっている場合には、図10のパージ制御を行う。まず、S110で任意に設定した所定時間パージ弁8を開いて、ガス循環系内の気体を外部へ放出する。所定時間経過すると、S112で気体組成検出してパージ弁を開制御したことの繰り返し回数を1だけ増加(カウントアップ)する。
【0086】
次いでS114で繰り返し回数が所定回数、本実施形態では5回、未満か否かを判定し、5回未満であれば、S116で図9の気体組成検出処理へ移行する。5回以上(実際は5回)であれば、所定回数パージを繰り返しても気体組成に改善が見られなかったとして、S118でセンサフェールを解析するために診断処理へ移行する。S114で判断に使用する所定回数は、予め実験結果により決めておく。
【0087】
こうして、一旦パージ制御を行った後で通常の気体組成検出フローへ戻り、ガス循環系内の気体組成を検出して、不要気体が十分に減少したか否かを判定し、十分に不要気体が減少されていれば、パージ制御回数カウンタをクリアして該フローを終了し、また図9に戻り気体組成検出フローを実行する。
【0088】
不要気体が十分に減少していない時は、再度パージ制御フローを実行する。何回かこのフローを繰り返しても循環系の回復が行われず、パージ弁制御と気体組組成検出フローを続けて何度も繰り返す制御が続く時は、パージ弁故障などのシステムに機能失陥(フェール)が発生していると判断し、診断処理フローに移行する。
【0089】
図11は、本実施形態におけるフラッディング(水詰まり)除去制御を説明するフローチャートである。ρa2がρb に比べ低い値となる場合で、図13の閾値c未満且つ閾値d以上の範囲であれば、燃料電池スタック1内のアノードガス経路に余分な圧力損失が発生していると判断し、図11のフラッディング(水詰まり)除去制御を行う。まず、S120で任意に設定した所定時間パージ弁8を開いて、ガス循環系内の気体を外部へ放出する。所定時間経過すると、S112で気体組成検出してパージ弁を開制御したことの繰り返し回数を1だけ増加(カウントアップ)する。
【0090】
次いでS124で繰り返し回数が所定回数、本実施形態では5回、未満か否かを判定し、5回未満であれば、S126で図9の気体組成検出処理へ移行する。5回以上(実際は5回)であれば、所定回数パージを繰り返しても気体組成に改善が見られなかったとして、S128でセンサフェールを解析するために診断処理へ移行する。S124で判断に使用する所定回数は、予め実験結果により決めておく。
【0091】
図12の診断処理フローチャートでは、圧力調整弁4の開度を変動させてセンサの出力値に変化があるかを検出することで、変化の無いセンサをフェール(故障)として扱う。また、センサ出力値に変動が現れていてれば、センサ以外の他のフェールとして扱う。
【0092】
図12において、まずS130で、圧力調整弁4の開度を変更する。S132で静圧センサ6から静圧値データPb を取り込み、S134で全圧センサ7から全圧値データPa を取り込む。S136でPb が変化した否かを判定し、Pb が変化していなければ、静圧センサ(Pb センサ)6のフェールを処理すべく、S138でフェール処理へ移行する。
【0093】
S136でPb が変化していれば、S140でPa が変化した否かを判定し、Pa が変化していなければ、全圧センサ(Pa センサ)7のフェールを処理すべく、S142でフェール処理へ移行する。S140でPa が変化していれば、S144で気体組成検出とパージ弁制御の繰り返し回数を1だけ増加させ(カウントアップ)、S146で繰り返し回数が5回未満か否かを判定する。5回未満であれば正常として、S150で図9の気体組成検出へ移行する。5回以上であれば、その他のフェールを処理すべく、S148でフェール処理へ移行する。
【0094】
以上説明したように本実施形態によれば、ガス循環系内の燃料電池スタック入口側と出口側に圧力検出手段を配置することにより、燃料電池スタック内のフラッディングも検出することができる。
【0095】
また、全圧センサ7をスタック出口に設置とすることで、アノードガス循環系中で最もアノードガス濃度が低く、故に不要ガス濃度の高い燃料電池スタック出口とエジェクタ5迄の区間の速度ヘッド(流体の運動エネルギーを水柱の高さで表したもの)を含めた全圧が測定出来るので、循環系気体組成の測定精度向上を実現することができる。
【0096】
更に燃料電池スタック出口側の圧力センサ7と同じ区間にパージ弁8を設置させることで、パージ前に一時的に圧力を高めてからパージする等の制御を圧力を測定しながら行えるので、不要ガスのパージを効率化し、アノードガスを無駄に排出する量を削減することが出来る。
【0097】
以上の特徴により効率的に不要ガスを排除し、発電効率の向上の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料電池システムの第1実施形態における全体構成を説明するシステム構成図である。
【図2】第1実施形態における気体組成検出処理を説明するフローチャートである。
【図3】第1実施形態におけるパージ弁制御処理を説明するフローチャートである。
【図4】第1実施形態における診断処理を説明するフローチャートである。
【図5】ガス温度に対する飽和水蒸気量ρw の変化を示す図である。
【図6】第1実施形態におけるガス循環系内の気体組成状態を示す図である。
【図7】本発明に係る燃料電池システムの第2実施形態における全体構成を説明するシステム構成図である。
【図8】本発明に係る燃料電池システムの第3実施形態における全体構成を説明するシステム構成図である。
【図9】第3実施形態における気体組成検出処理を説明するフローチャートである。
【図10】第3実施形態におけるパージ弁制御処理を説明するフローチャートである。
【図11】第3実施形態におけるフラッディング除去処理を説明するフローチャートである。
【図12】第3実施形態における診断処理を説明するフローチャートである。
【図13】第3実施形態におけるガス循環系内の気体組成状態を示す図である。
【図14】第3実施形態における仮想出口側圧力値の係数Cp を示す図である。
【図15】発電電力に対するアノードガス消費係数Cs を示す図である。
【符号の説明】
1 燃料電池スタック
2 カソードガス吸気管
3 カソードガス排気管
4 アノードガス圧力調整弁
5 エジェクタ
6 静圧センサ
7 全圧センサ
8 パージ弁
9 アノードガス循環経路
10 制御用コンピュータ
11 ピトー管
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池システムに係り、特にアノードガス循環系またはカソードガス循環系を備えた燃料電池システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、水素等の燃料ガスと空気等の酸化剤ガスとを電気化学的に反応させて発電する装置である。これにより、燃料の持つ化学エネルギーを運動エネルギー等の他の形態のエネルギーへの変換過程を経ることなく直接電気エネルギーに変換するので、エネルギー変換効率が高い。
【0003】
この燃料電池は、電解質の種類により種々あるが、固体高分子電解質膜を用いたものは、取り扱いが容易で運転温度も比較的低く、車両用電源として期待されている。
【0004】
通常発電効率を高めるため、燃料電池が発電に消費する反応量以上の燃料ガス及び酸化剤ガスを燃料電池本体に供給している。そして、燃料電池本体から排出される未使用燃料ガスまたは未使用酸化剤ガスは、ガス循環路を介してガス供給ラインに戻して再使用している。このようなガス循環系を備えた燃料電池システムは、特開平8−236131号公報に開示されている。
【0005】
この従来技術によれば、燃料電池システムのアノードガス循環系とカソードガス循環系をエジェクタにより行い、またパージ弁によりガス循環系内の気体を排除させることが示されている。
【0006】
ところで燃料電池システムは発電運転を続けることで、ガス循環系内がクロスリーク等により発電に不要なアルゴンや窒素等の気体により充満されて行き、発電出力の低下つまり発電効率の低下を起こすことが知られている。
【0007】
上記従来技術では、ガス循環系内が発電に不要な残存ガスで満たされたことを検出するとパージ弁を開放して残存ガスを排除し、発電効率を回復する方法も示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の燃料電池システムにおいては、ガス循環系内のガス組成を直接検出するには、ガスアナライザ等の大掛かりで且つ高価な装置を使用しなければならず、車両などに搭載する小型のシステムには適さないという課題があった。
【0009】
また制御に必要とされる応答性も車両搭載システムのように発電量の変化が早いシステムには十分とは言えないという課題があった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は、アノードガス循環系、またはカソードガス循環系を有する燃料電池システムにおいて、前記アノードガス循環系または前記カソードガス循環系の少なくとも一方のガス循環系の静圧及び全圧を検出する圧力検出手段と、前記ガス循環系の水蒸気分圧を推定する水蒸気分圧推定手段と、を備え、検出した静圧値及び全圧値と、水蒸気分圧に基づいて前記ガス循環系の気体密度を求め、得られた気体密度とあらかじめ設定された所定の状態の気体密度と比較することによって、前記ガス循環系内の気体組成が変化したことを検出することを要旨とする。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、圧力検出手段により測定したガス循環系の全圧Pa と静圧Pb と、水蒸気分圧推定手段により推定した水蒸気分圧とに基づいて、ガス循環系内の気体組成変動を検出するようにしたので、燃料電池システムの発電効率を低下させる気体組成変動の検出を小型で応答性と精度がよく、しかも安価に実現することができるという効果がある。
【0012】
【発明の実施の形態】
〔第1実施形態〕
次に、図面を参照して、本発明に係る燃料電池システムの第1実施形態を詳細に説明する。図1は、燃料電池システムの第1実施形態の構成を説明するシステム構成図、図2は気体組成検出処理を説明するフローチャート、図3はパージ弁制御を説明するフローチャート、図4は診断処理フローチャート、図5はガス温度に対する飽和水蒸気量を表した図、図6は本構成を適用した際のガス循環系内の気体組成状態を表した図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の燃料電池システムは、アノードガス系に純粋な水素を使用し、エジェクタにより消費されなかったアノードガスを燃料電池スタック入口に戻すガス循環系を構成している。カソードガス系は加圧もしくは通常の大気を使用する構成にしている。
【0014】
図1において、燃料電池システムは、発電を行う燃料電池スタック1と、燃料電池スタック1のカソードガス系の入口であるカソードガス吸気管2と、燃料電池スタック1のカソードガス系の出口であるカソードガス排気管3と、アノードガス系の圧力調整を行うアノードガス圧力調整弁4と、燃料電池スタック1で消費されなかったアノードガス系を循環させるためのエジェクタ5と、アノードガス系の燃料電池スタック1入口の静圧を測る絶対圧力式の静圧センサ6と、静圧と同じ地点の全圧を測る絶対圧力式の全圧センサ7と、燃料電池スタック1出口からエジェクタ5までアノードガスを導くアノードガス循環系経路9と、アノードガス循環系経路内の不要気体等を放出するためのパージ弁8と、燃料電池スタック1や圧力センサ6,7からの情報を得て、圧力調整弁4及びパージ弁8を含むシステム全体の制御を行う制御用コンピュータ10と、を備えている。
【0015】
尚、本実施形態では、スタック入口の二つの圧力センサ6及び7を同じ測定ポイントにするため、ピトー管11を使用する構成としている。
【0016】
次に、図2〜図6をを参照して、第1実施形態の燃料電池システムの運転制御フローを説明する。
【0017】
図2において、制御用コンピュータ10は、S10で、先ずモータインバータ等の負荷システムからの発電要求と、該燃料電池システムのガス循環系のガス循環量要求に応じて、アノードガス循環系内のスタック入口圧力調整を圧力調整弁4の開度を調整することにより、アノードガス流量の制御を行う。
【0018】
次いで、S12で、静圧センサ6の検出値である静圧Pb [MPa]の圧力データを取り込み、S14で、全圧センサ7の検出値である全圧Pa [MPa]の圧力データの取り込みを行う。
【0019】
続けてS16で、予備実験等により既に特性が分かっている燃料電池スタック1に流れるアノードガス流量Vと入口の静圧Pb の関係式(V=f(Pb ),f:任意関数)から、入口の静圧を基に燃料電池スタック1に供給される単位時間当たりのアノードガス流量V[m3/s]を求める。流量Vが分かれば、S18で測定位置のガス流路の断面積で流量Vを除算することにより、流速ve [m/s] が求まる。
【0020】
一般に、気体等の密度が小さい物質は位置ヘッド(位置エネルギの大きさを水柱の高さで表したもの)を無視することができ、また循環系内の気体流速が音速に比べて十分に遅く、また循環系内の特定区間の圧力変化が小さい場合には圧縮性が無視できるので、ベルヌーイの式は、気体密度ρ[kg/m3]を用いて次の式(1)に表すことが出来る。
【0021】
【数1】
ρ/2・ve2 +Pb =Pa …(1)
式(1)より、気体密度ρ[kg/m3]は、式(2)となる。
【0022】
【数2】
ρ=(Pa −Pb )・2/ve2 …(2)
S20では、上記のステップにより求めたPa 、Pb 、ve を式(2)に代入することによって気体密度ρ[kg/m3]が得られる。
【0023】
ところで、気体に含まれる水蒸気分圧は、温度特性が大きいことが知られている。予め予想される燃料電池システムの運転状態に応じてガス循環系温度を推定し、その温度の気体中に含まれる水蒸気分圧を求める。即ち、S22では、気体密度ρと飽和水蒸気量ρw を以下の式(3)に代入して、補正した気体密度ρa を求める。
【0024】
【数3】
ρa =ρw +ρ …(3)
【0025】
ガス循環系の内部ガスを構成するの各々の気体は、固有の密度を有しており、ガスの組成が変化すると密度が変動する。例えば燃料電池システムで最も重要な気体の水素は、全ガス中最も密度が低く、不純物が混入すると密度が高くなることから検出した密度に基づいてガス組成の変化を検出することが出来る。
【0026】
つまりガス循環系気体の密度を検出することで、ガスの組成の変動を検出することが可能になる。
【0027】
本実施形態におけるアノードガス循環系内は、通常の状態なら純粋な水素を加湿したガスで満たされており、この時の気体の標準状態における密度ρb は、約0.0898[kg/m3 ]である。
【0028】
そこで、S24において、上式で求めたρa と予め制御用コンピュータの内部に記憶したρb とを比較する。そして、S26〜S30において、図6のグラフに示したような閾値a、閾値b、閾値cと照らし合わせることにより、ガス循環系内の気体組成の変化具合を求める。
【0029】
図6において、それぞれのρb に対して閾値cを下回るρa ならば、静圧センサ6または全圧センサ7の検出値に異常があると判断して、S32で診断制御へ移行する。
【0030】
ρb に対して理論値を挟む閾値aから閾値cまでの間のρa ならば、気体組成は正常と判断して、S34でパージ制御回数をクリアして終了する。
【0031】
ρb に対して閾値aから閾値bまでの間のρa ならば、気体組成に異常があると判断して、S36でパージ弁制御へ移行する。ρb に対して閾値b以上のρa ならば、静圧センサ6または全圧センサ7の検出値に異常があると判断して、S38で診断制御へ移行する。
【0032】
図3は、パージ制御を説明するフローチャートである。ガス循環系内の気体に不要気体等が混じり、気体密度ρa が大きくなっている場合には、図3のパージ制御を行う。まず、S40で任意に設定した所定時間パージ弁8を開いて、ガス循環系内の気体を外部へ放出する。所定時間経過すると、S42で気体組成を検出してパージ弁を開制御したことの繰り返し回数を1だけ増加(カウントアップ)する。
【0033】
次いでS44で繰り返し回数が所定回数、本実施形態では5回、未満か否かを判定し、5回未満であれば、図2の気体組成検出処理へ移行する。5回以上(実際は5回)であれば、所定回数パージを繰り返しても気体組成に改善が見られなかったとして、S46でセンサフェールを解析するために診断処理へ移行する。S44で判断に使用する所定回数は、予め実験結果により決めておく。
【0034】
こうして、一旦パージ制御を行った後で通常の気体組成検出フローへ戻り、ガス循環系内の気体組成を検出して、不要気体が十分に減少したか否かを判定し、十分に不要気体が減少されていれば、パージ制御回数カウンタをクリアして該フローを終了し、また図2に戻り気体組成検出フローを実行する。
【0035】
不要気体が十分に減少していない時は、再度パージ制御フローを実行する。何回かこのフローを繰り返しても循環系の回復が行われず、パージ弁制御と気体組組成検出フローを続けて何度も繰り返す制御が続く時は、パージ弁故障などのシステムに機能失陥(フェール)が発生していると判断し、診断処理フローに移行する。
【0036】
ところで本実施形態の場合、システムが正常である限りρa がρb を下まわることは理論上ありえなく、仮にこのような状態に成った時には(図2のS28判定がNo)、2つの圧力センサの機能が失陥かその他システムに機能が失陥した時であり、図4の診断処理フローにて各種フェール制御に移行する。
【0037】
図4の診断処理フローチャートでは、圧力調整弁4の開度を変動させてセンサの出力値に変化があるかを検出することで、変化の無いセンサをフェール(機能失陥、故障)として扱う。また、センサ出力値に変動が現れていてれば、センサ以外の他のフェールとして扱う。
【0038】
図4において、まずS50で、圧力調整弁4の開度を変更する。S52で静圧センサ6から静圧値データPb を取り込み、S54で全圧センサ7から全圧値データPa を取り込む。S56でPb が変化した否かを判定し、Pb が変化していなければ、静圧センサ(Pb センサ)6のフェールを処理すべく、S60でフェール処理へ移行する。
【0039】
S56でPb が変化していれば、S58でPa が変化した否かを判定し、Pa が変化していなければ、全圧センサ(Pa センサ)7のフェールを処理すべく、S62でフェール処理へ移行する。S58でPa が変化していれば、その他のフェールを処理すべく、S64でフェール処理へ移行する。
【0040】
なお、気体密度の変動は体積流量計と質量流量計からも体積当りの重量、即ち密度が分かるので、この2つの流量計から気体の密度を検出しガスの組成を推定することが可能である。しかしながら、流量計は一般に多くの実装容積を必要とし、また密度の低い水素等の流量の検出精度向上が難しく、車両搭載を前提としている燃料電池システム等では、搭載性と性能要求を満たすのが困難であった。
【0041】
本実施形態の実現にあたり、一般的な燃料電池システムに対して追加する必要のあるセンサは基本的に静圧センサ6と、全圧センサ7だけであり、小型、安価かつ十分な応答性を備え車両搭載を想定した燃料システム等でも適用を可能にする。
【0042】
〔第2実施形態〕
次に、図7を参照して、本発明に係る燃料電池システムの第2実施形態を詳細に説明する。図7は、燃料電池システムの第2実施形態の構成を説明するシステム構成図であり、第1実施形態(図1)の圧力検出手段であるピトー管11に代えて、ベンチュリ管12を用いた静圧センサ6及び全圧センサ7の構成としたものである。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0043】
圧力検出手段の構成は通常は圧力値測定の各ポイントに絶対圧力を測るセンサを設けるか、または大気圧からの相対圧を測るセンサを設置し圧力を測るのが一般的である。
【0044】
本実施形態では、先ずは絶対圧力または相対圧力検出方式の静圧センサ6を設置し、もう一方の全圧センサ7は静圧センサ6測定点と、全圧の測定点の差圧(動圧)を測るようにする。
【0045】
この配置によって全圧センサ7における静圧分を考慮することなく演算式が簡略化され、また動圧の場合は圧力差が小さいことから分解能のよい圧力センサが使用できるので、その分測定精度を向上させることが出来る。
【0046】
なお、全圧センサ7を絶対圧または相対圧とし、静圧を差圧(動圧)とする構成にしても同じ効果が得られる。
【0047】
さらにベンチュリ管12を使用することで、圧力測定ポイントでの循環系内気体の流速を上げられ、ベンチュリ管に静圧と全圧の圧力検出手段を設けることで循環系内の速度ヘッドをより大きくし、循環系内気体密度の検出精度を上げることが出来る。
【0048】
また圧力検出手段として、ピトー管を使うことによって静圧センサと全圧センサを同じ場所に配置することが出来、圧力を検出するシステムを小さく出来る。
【0049】
以上より検出精度を上げて、また検出装置をより小さくできる。
【0050】
しかしながら本実施形態では流量を多くしていくとベンチュリ部での圧力損失が発生する。最大流量と最小流量の差を大きく取ることが困難であり、また流量変化が大きくなると流れの形態が層流と乱流を行き来する領域を使うことも有り得、この場合は特に十分な予備実験等の検証を行った流量補正が必要である。流量使用域、管内断面積、各要素を設置するための寸法と重量等の要件から、第1実施形態と第2実施形態の利点と懸案を考慮した上で決定することが最善である。
【0051】
本実施形態における制御方法は第1実施形態に準じ、気体組成検出フロー等の制御フローは同等である。但し圧力や流量/流速の定義方法が異なるので、演算途中の制御パラメータは変更の必要がある。
【0052】
〔第3実施形態〕
次に、図面を参照して、第3実施形態を詳細に説明する。図8は、第3実施形態の構成を説明するシステム構成図、図9は気体組成検出処理を説明するフローチャート、図10はパージ弁制御を説明するフローチャート、図11はフラッディング(水詰まり)除去制御を説明するフローチャート、図12は診断処理フローチャート、図13は本構成を適用した際のガス循環系内の気体組成状態を表した図、図14は仮想出口側圧力値の圧力損失係数Cp を表した図、図15は発電により消費されるアノードガス流量の比率であるアノードガス消費係数Cs を表した図である。
【0053】
以下第1実施形態との相違点を中心に説明する。第1実施形態との構成上の主な相違は、圧力検出手段として静圧を検出する静圧センサ6と全圧を検出する全圧センサ7とを個別に備え、全圧センサ7を燃料電池スタック1出口に設置し、静圧センサ6を燃料電池スタック1の入口に設置している。また、アノードガス循環経路9内のガス温度を測定する温度センサ13を備えている。その他の構成は、図1の第1実施形態と同様である。
【0054】
本実施形態における圧力検出手段の配置方法では、燃料電池スタック1を介して異なる位置に静圧センサ6と全圧センサ7とが設置されているため、各々の測定点でガス循環系の気体流量と圧力に違いがあり、このままベルヌーイの式に代入し密度を求めることが出来ず、補正が必要である。
【0055】
燃料電池スタック1の圧力損失と、発電量からアノードガス消費量を推測し、これらに基づき、静圧センサ6または全圧センサ7の何れか一方圧力センサの出力の補正を行う。
【0056】
静圧センサ6は、燃料電池スタック1へのアノードガス給量制御をフィードフォワードで行うことを目的に、本実施形態でも第1実施形態と同じように燃料電池スタック1の入口側に設置する。
【0057】
本実施形態では、入口側のセンサ圧力値Pb を燃料電池スタック1の圧力損失により減算した値Pb2(仮想出口側静圧値)を使用する。Pb2 を求めるには、予め実験等により得られた、圧力と圧力損失係数Cp の関係(図14)から目的のPb におけるCp を求め、以下の式に代入しPb2 を得る。
【0058】
【数4】
Pb2 =(1−Cp )×Pb …(4)
【0059】
また、図15より発電によるアノードガス消費率であるアノードガス消費係数Cs を求め、Cs とVから、消費されずに燃料電池スタック出口から排出されるアノードガス流量V2 の値を求める。
【0060】
【数5】
V2 =(1−Cs )×V …(5)
またV2 の値を全圧センサ測定ポイントの断面積で除算し流速ve2 [m/s]を求める。次いで、Pa 、Pb2 、ve2を以下のベルヌーイの式(6)から導かれる式(7)に代入してρ2 を求める。
【0061】
【数6】
ρ2 /2・ve2 2+Pb2 = Pa …(6)
ρ2 =(Pa −Pb2 )・2/ve2 2 …(7)
次に、求めたρ2 に対して水蒸気分圧分の補正を行い、気体密度ρa2を得る。
【0062】
ところで、アノードガスまたはカソードガスの双方または一方を、燃料電池のイオン交換膜の乾きを発生させないよう、予め図示しない加湿器により水蒸気飽和状態にして供給している。
【0063】
燃料電池システムは発電量や冷却水の温度や過渡的なガス流量変化、熱交換効率等の運転状態の違いにより、燃料電池スタックや循環系の温度が変化する。
【0064】
気体の飽和水蒸気は温度特性があり、また気体の密度にも温度特性がある。本実施形態では、ガス循環系内に温度センサ13を設置することで飽和水蒸気の温度特性を反映させて水蒸気分圧ρw を精度よく推定できる。
【0065】
図5から温度に応じた水蒸気分圧ρw2を求め、これを用いて式(8)によりρ2 を補正し、ρa2を得る。
【0066】
【数7】
ρa2=ρw2 +ρ2 …(8)
次いで、式(8)で求めたρa2と、ρb とを比較し、図13のグラフに照らし合わせることにより、循環系内の気体組成の変化具合、フラッディングの発生状況を求める。
【0067】
本実施形態の場合、ρa2がρb に比べ低い値となる場合もあり、これらは燃料電池スタック内で余分な圧力損失が発生している時、すなわちフラッディング(ガス循環通路内に水滴が付着する現象;水詰まり)が発生しているときである。したがって、ρa2がρb より低下した時にはフラッディング除去処理フローチャート(図11)を実行する。
【0068】
尚、フラッディング除去処理(図11)と不要気体のパージ処理(図10)のフローチャートの違いは、パージ弁8を開ける所定時間の違いである。これは、排出すべき対象の密度の違いにより除去時の条件設定を細分化し、発電に寄与しない燃料ガス消費を最小化して、燃費効率化を目的としたためである。
【0069】
一般的に、ガス循環系内の水滴を除去するフラッディング除去の方が、不要気体の除去のときよりも所定時間を長くすると良い。
【0070】
次に、図9〜図11のフローチャートを参照して、本実施形態における制御用コンピュータ10の処理動作を説明する。
【0071】
図9において、まずS70で、先ずモータインバータ等の負荷システムからの発電要求と、該燃料電池システムのガス循環系のガス循環量要求に応じて、アノードガス循環系内のスタック入口圧力調整を圧力調整弁4の開度を調整することにより、アノードガス流量の制御を行う。
【0072】
次いで、S72で、静圧センサ6の検出値である静圧Pb [MPa]の圧力データを取り込み、S74で、全圧センサ7の検出値である全圧Pa [MPa]の圧力データの取り込みを行う。S76で温度センサ13からアノードガス循環経路内のガス温度データの取り込みを行う。
【0073】
次いでS78で、予備実験等により既に特性が分かっている燃料電池スタック1に流れるアノードガス流量Vと入口の静圧Pb の関係式と、図14の圧力損失係数Cp とから、入口の静圧Pb を基に燃料電池スタック1に供給される単位時間当たりのアノードガス流量V[m3/s]と、Pb2(Pb2=Cp *Pb )とを求める。
【0074】
S80で、燃料電池スタック1の発電量(W=V*A)を検出し、この発電量におけるアノードガス消費係数Cs を図15のようなマップから求め、消費されるアノードガスの流量(Cs *V)を算出する。
【0075】
次いでS82で、燃料電池スタック出口側のアノードガスの推定流量V2 を先に述べた式(5)により算出し、出口側推定流量V2 の値を全圧センサ測定点の流路断面積で除算して流速ve2[m/s]を求める。
【0076】
S84では、上記のステップにより求めたPa 、Pb2、ve2を先に説明した式(7)に代入することによって気体密度ρ2 [kg/m3]が得られる。
【0077】
次にS86で、温度センサ13によるガス循環系の温度測定値から、その温度の気体中に含まれる水蒸気分圧ρw を求め、気体密度ρ2 を水蒸気分圧ρw で補正する。即ち、S86では、気体密度ρ2 と飽和水蒸気量ρw を式(3)のような式に代入して、補正した気体密度ρa2 を求める。
【0078】
そして、S88において、上式で求めたρa2 と予め制御用コンピュータの内部に記憶したρb とを比較する。ρb は、ガス循環系内の気体の仕様により定まる定数であり、第1実施形態と同様に実験により設定する。
【0079】
そして、S90〜S96において、図13のグラフに示したような閾値a、閾値b、閾値c、閾値dと照らし合わせることにより、ガス循環系内の気体組成の変化具合を求める。
【0080】
図13において、それぞれのρb2に対して閾値d未満のρa ならば、静圧センサ6または全圧センサ7の検出値に異常があると判断して、S98で診断制御へ移行する。
【0081】
ρb に対して閾値c未満かつ閾値d以上の範囲のρa2ならば、気体組成はフラッディング域と判断して、S100でパージ制御回数をクリアして終了する。
【0082】
ρb に対して理論値を含む閾値a未満かつ閾値c以上の範囲のρa2ならば、気体組成は正常と判断して、終了する。
【0083】
ρb に対して閾値a以上かつ閾値b未満の範囲のρa2 ならば、気体組成に異常があると判断して、S102でパージ弁制御へ移行する。
【0084】
ρb に対して閾値b以上のρa2ならば、静圧センサ6または全圧センサ7の検出値に異常があると判断して、S104で診断制御へ移行する。
【0085】
図10は、本実施形態におけるパージ制御を説明するフローチャートである。ガス循環系内の気体に不要気体等が混じり、気体密度ρa2が大きくなっている場合には、図10のパージ制御を行う。まず、S110で任意に設定した所定時間パージ弁8を開いて、ガス循環系内の気体を外部へ放出する。所定時間経過すると、S112で気体組成検出してパージ弁を開制御したことの繰り返し回数を1だけ増加(カウントアップ)する。
【0086】
次いでS114で繰り返し回数が所定回数、本実施形態では5回、未満か否かを判定し、5回未満であれば、S116で図9の気体組成検出処理へ移行する。5回以上(実際は5回)であれば、所定回数パージを繰り返しても気体組成に改善が見られなかったとして、S118でセンサフェールを解析するために診断処理へ移行する。S114で判断に使用する所定回数は、予め実験結果により決めておく。
【0087】
こうして、一旦パージ制御を行った後で通常の気体組成検出フローへ戻り、ガス循環系内の気体組成を検出して、不要気体が十分に減少したか否かを判定し、十分に不要気体が減少されていれば、パージ制御回数カウンタをクリアして該フローを終了し、また図9に戻り気体組成検出フローを実行する。
【0088】
不要気体が十分に減少していない時は、再度パージ制御フローを実行する。何回かこのフローを繰り返しても循環系の回復が行われず、パージ弁制御と気体組組成検出フローを続けて何度も繰り返す制御が続く時は、パージ弁故障などのシステムに機能失陥(フェール)が発生していると判断し、診断処理フローに移行する。
【0089】
図11は、本実施形態におけるフラッディング(水詰まり)除去制御を説明するフローチャートである。ρa2がρb に比べ低い値となる場合で、図13の閾値c未満且つ閾値d以上の範囲であれば、燃料電池スタック1内のアノードガス経路に余分な圧力損失が発生していると判断し、図11のフラッディング(水詰まり)除去制御を行う。まず、S120で任意に設定した所定時間パージ弁8を開いて、ガス循環系内の気体を外部へ放出する。所定時間経過すると、S112で気体組成検出してパージ弁を開制御したことの繰り返し回数を1だけ増加(カウントアップ)する。
【0090】
次いでS124で繰り返し回数が所定回数、本実施形態では5回、未満か否かを判定し、5回未満であれば、S126で図9の気体組成検出処理へ移行する。5回以上(実際は5回)であれば、所定回数パージを繰り返しても気体組成に改善が見られなかったとして、S128でセンサフェールを解析するために診断処理へ移行する。S124で判断に使用する所定回数は、予め実験結果により決めておく。
【0091】
図12の診断処理フローチャートでは、圧力調整弁4の開度を変動させてセンサの出力値に変化があるかを検出することで、変化の無いセンサをフェール(故障)として扱う。また、センサ出力値に変動が現れていてれば、センサ以外の他のフェールとして扱う。
【0092】
図12において、まずS130で、圧力調整弁4の開度を変更する。S132で静圧センサ6から静圧値データPb を取り込み、S134で全圧センサ7から全圧値データPa を取り込む。S136でPb が変化した否かを判定し、Pb が変化していなければ、静圧センサ(Pb センサ)6のフェールを処理すべく、S138でフェール処理へ移行する。
【0093】
S136でPb が変化していれば、S140でPa が変化した否かを判定し、Pa が変化していなければ、全圧センサ(Pa センサ)7のフェールを処理すべく、S142でフェール処理へ移行する。S140でPa が変化していれば、S144で気体組成検出とパージ弁制御の繰り返し回数を1だけ増加させ(カウントアップ)、S146で繰り返し回数が5回未満か否かを判定する。5回未満であれば正常として、S150で図9の気体組成検出へ移行する。5回以上であれば、その他のフェールを処理すべく、S148でフェール処理へ移行する。
【0094】
以上説明したように本実施形態によれば、ガス循環系内の燃料電池スタック入口側と出口側に圧力検出手段を配置することにより、燃料電池スタック内のフラッディングも検出することができる。
【0095】
また、全圧センサ7をスタック出口に設置とすることで、アノードガス循環系中で最もアノードガス濃度が低く、故に不要ガス濃度の高い燃料電池スタック出口とエジェクタ5迄の区間の速度ヘッド(流体の運動エネルギーを水柱の高さで表したもの)を含めた全圧が測定出来るので、循環系気体組成の測定精度向上を実現することができる。
【0096】
更に燃料電池スタック出口側の圧力センサ7と同じ区間にパージ弁8を設置させることで、パージ前に一時的に圧力を高めてからパージする等の制御を圧力を測定しながら行えるので、不要ガスのパージを効率化し、アノードガスを無駄に排出する量を削減することが出来る。
【0097】
以上の特徴により効率的に不要ガスを排除し、発電効率の向上の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料電池システムの第1実施形態における全体構成を説明するシステム構成図である。
【図2】第1実施形態における気体組成検出処理を説明するフローチャートである。
【図3】第1実施形態におけるパージ弁制御処理を説明するフローチャートである。
【図4】第1実施形態における診断処理を説明するフローチャートである。
【図5】ガス温度に対する飽和水蒸気量ρw の変化を示す図である。
【図6】第1実施形態におけるガス循環系内の気体組成状態を示す図である。
【図7】本発明に係る燃料電池システムの第2実施形態における全体構成を説明するシステム構成図である。
【図8】本発明に係る燃料電池システムの第3実施形態における全体構成を説明するシステム構成図である。
【図9】第3実施形態における気体組成検出処理を説明するフローチャートである。
【図10】第3実施形態におけるパージ弁制御処理を説明するフローチャートである。
【図11】第3実施形態におけるフラッディング除去処理を説明するフローチャートである。
【図12】第3実施形態における診断処理を説明するフローチャートである。
【図13】第3実施形態におけるガス循環系内の気体組成状態を示す図である。
【図14】第3実施形態における仮想出口側圧力値の係数Cp を示す図である。
【図15】発電電力に対するアノードガス消費係数Cs を示す図である。
【符号の説明】
1 燃料電池スタック
2 カソードガス吸気管
3 カソードガス排気管
4 アノードガス圧力調整弁
5 エジェクタ
6 静圧センサ
7 全圧センサ
8 パージ弁
9 アノードガス循環経路
10 制御用コンピュータ
11 ピトー管
Claims (8)
- アノードガス循環系、またはカソードガス循環系を有する燃料電池システムにおいて、
前記アノードガス循環系または前記カソードガス循環系の少なくとも一方のガス循環系の静圧及び全圧を検出する圧力検出手段と、
前記ガス循環系の水蒸気分圧を推定する水蒸気分圧推定手段と、を備え、
前記圧力検出手段が検出した静圧値または全圧値から気体流量値を求めて、この気体流量値から前記ガス循環系内の圧力測定点のガス流速値を求め、
静圧値と全圧値とガス流速値と水蒸気分圧に基づいて前記ガス循環系の気体密度を求め、
得られた気体密度とあらかじめ設定された所定の状態の気体密度と比較することによって、前記ガス循環系内の気体組成が変化したことを検出することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記圧力検出手段が検出する静圧及び全圧の何れか一方の圧力は、0気圧からの絶対圧力または大気圧からの相対圧力とし、他方の圧力は、前記圧力からの差圧(以後全圧と静圧の差を動圧と表記)により測定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記水蒸気分圧推定手段は、ガス循環系内に温度検出手段を備え、
該温度検出手段が検出した温度に基づいて水蒸気分圧を推定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。 - 前記圧力検出手段は、ベンチュリ管とピトー管の少なくとも一方を備えたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記圧力検出手段は、静圧を検出する静圧検出手段と全圧を検出する全圧検出手段とを個別に備え、
アノードガス循環系の燃料電池スタック入口側と出口側に分けて、一方に静圧検出手段を配置し、他方に全圧検出手段を配置し、
燃料電池スタック通過による圧力損失分、または発電によるアノードガスの消費量を推定して、燃料電池スタック入口側または出口側圧力値を補正し、
得られた気体密度と所定の状態の気体密度と比較することによって、ガス循環系内の気体組成が変化したこと、および燃料電池スタック内の水詰まりを検出することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。 - 前記圧力検出手段は、静圧を検出する静圧検出手段と全圧を検出する全圧検出手段とを個別に備え、
カソードガス循環系の燃料電池スタック入口側と出口側に分けて、一方に静圧検出手段を配置し、他方に全圧検出手段を配置し、
燃料電池スタック通過による圧力損失分、または発電による化合物生成量を推定して、燃料電池スタック入口側または出口側圧力値を補正し、
得られた気体密度と所定の状態の気体密度と比較することによって、ガス循環系内の気体組成が変化したこと、および燃料電池スタック内の水詰まりを検出することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。 - 前記ガス循環系の燃料電池スタック出口側に全圧検出手段を配設したことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の燃料電池システム。
- 燃料電池スタック出口側に配置した前記圧力検出手段でパージ直前またはパージ中の圧力または気体組成を検出し、これらの検出値に基づいて循環気体のパージ弁開度またはパージ時間を制御することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の燃料電池システム。
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-
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