JP7805751B2 - インクジェット記録用水系インク - Google Patents

インクジェット記録用水系インク

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Description

本発明は、インクジェット記録用水系インクに関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録媒体に直接吐出し、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、記録媒体として普通紙が使用可能、被印刷物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。
近年ではデジタル印刷の普及により、民生用印刷に留まらず、低吸液性のコート紙や、非吸液性の樹脂フィルムを用いた商業印刷、産業印刷への利用が進んでいる。
それに伴い、インクには高い保存安定性と、低吸液性や非吸液性の記録媒体に対する高い耐水性が求められており、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、再分散性を維持しつつ、記録物の耐水性に優れ、かつインクの保存安定性に優れる水系インクとして、顔料を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子と、水溶性塩基化合物と、水とを含有する顔料水分散体であって、該粒子を構成する水不溶性架橋ポリマーが、カルボキシ基と、水不溶性架橋剤由来のエステル基を含む架橋構造とを有し、該水不溶性架橋ポリマーの鹸化価が170~300mgKOH/gであり、該水溶性塩基化合物が水溶性アミン化合物を含有する顔料水分散体と、水溶性有機溶媒とを含有するインクジェット記録用水系インクが開示されている。
特許文献2には、印字濃度を維持しつつ、吐出安定性、画像堅牢性に優れた水系インクとして、顔料を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子と、ポリマーエマルジョンと、水とを含有する水系インクであって、架橋ポリマー粒子を構成する水不溶性架橋ポリマーが、酸価が200mgKOH/g以上であるカルボン酸モノマー由来の構成単位と疎水性モノマー由来の構成単位とを有するポリマーをエポキシ化合物で架橋してなるものであり、ポリマーエマルジョンを構成するポリマーが、カルボン酸モノマー由来の構成単位と疎水性モノマー由来の構成単位とを含有する、水系インクが開示されている。
特開2018-28080号公報 特開2019-14883号公報
インクジェット記録用水系インクには、高度な生産性向上が求められているが、インクジェット記録を休止した後、再度記録を開始する際にインクを正常に吐出できなくなるという問題があり、再印刷時の吐出安定性の改善が求められている。
特許文献1及び2に記載の水系インクではある程度の改善はなされているが、保存安定性、吐出安定性、記録物の耐水性について、更なる改善が望まれる。
本発明は、保存安定性、吐出安定性に優れ、かつ耐水性に優れる記録物を得ることができるインクジェット記録用水系インクを提供することを課題とする。
本発明者らは、顔料、水不溶性架橋ポリマー粒子、及び有機溶剤を含有する水系インクにおいて、ポリマーのカルボキシ基に対するナトリウムイオンやアンモニウムイオンの量を調整して使用することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、顔料、水不溶性架橋ポリマー粒子、有機溶剤、及び水を含有するインクジェット記録用水系インクであって、
該水不溶性架橋ポリマー粒子が、カルボキシ基を有し、酸価が45mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である架橋構造を有するポリマーAからなり、
インク中に存在する該ポリマーAのカルボキシ基の全モル量に対して、アルカリ金属イオンを15モル%以上65モル%以下、アンモニウムイオンを55モル%以上145モル%以下含有し、
アルカリ金属イオンとアンモニウムイオンの合計含有量が該ポリマーAのカルボキシ基の全モル量に対して100モル%以上185モル%以下である、インクジェット記録用水系インクを提供する。
本発明によれば、保存安定性、吐出安定性に優れ、かつ耐水性に優れる記録物を得ることができるインクジェット記録用水系インクを提供することができる。
[インクジェット記録用水系インク]
本発明のインクジェット記録用水系インクは、顔料、水不溶性架橋ポリマー粒子、有機溶剤、及び水を含有するインクジェット記録用水系インク(以下、単に「本発明インク」ともいう)であって、
該水不溶性架橋ポリマー粒子が、カルボキシ基を有し、酸価が45mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である架橋構造を有するポリマーAからなり、
インク中に存在する該ポリマーAのカルボキシ基の全モル量に対して、アルカリ金属イオンを15モル%以上65モル%以下、アンモニウムイオンを55モル%以上145モル%以下含有し、
アルカリ金属イオンとアンモニウムイオンの合計含有量が該ポリマーAのカルボキシ基の全モル量に対して100モル%以上185モル%以下である。
なお、本明細書において、「記録」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「記録物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。
「水系」とは、インクに含有される媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。
また、「低吸水性」とは、低吸液性、非吸液性を含む概念であり、記録媒体と純水との接触時間100m秒における該記録媒体の吸水量が0g/m以上10g/m以下であることを意味する。
本発明のインクジェット記録用水系インクは、保存安定性、吐出安定性に優れ、かつ耐水性に優れる記録物を得ることができる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
インクジェット記録用水系インクは、吐出ノズル近傍で強い乾燥条件に晒されることで、気液界面付近で凝集物を生成し、ノズル閉塞の問題が生じる。ここで、インクに含まれる水不溶性ポリマー粒子が架橋構造を有し、かつ該水不溶性架橋ポリマー粒子を構成するポリマーの酸価を45mgKOH/g以上とすることにより、吐出ノズル近傍で強い乾燥条件に晒された場合でも、ポリマー粒子同士間の静電反発力を高く保つことができ、凝集物の生成を抑制できるため、保存安定性、吐出安定性が向上すると考えられる。
また、該水不溶性架橋ポリマー粒子を構成するポリマーのカルボキシ基全量に対して15モル%以上65モル%以下のアルカリ金属イオンが同一系中に存在することにより、凝集物が生成したとしても、インク中に水との親和性が高いアルカリ金属イオンが存在するため、再度インク成分に満たされた際に、具体的にはノズルパージ等の際に、元の分散状態を回復できるため吐出安定性が優れると考えられる。
さらに、水不溶性架橋ポリマー粒子を構成するポリマーの酸価が180mgKOH/g以下であることにより、低吸水性記録媒体上で画像形成されたインク塗膜の耐水性が向上する。また、アルカリ金属イオンの量を、その系中に存在するカルボキシ基全量に対して前記の量とし、それに加えて系中に存在する水不溶性架橋ポリマー粒子のカルボキシ基全量に対して55モル%以上145モル%以下のアンモニウムイオンをさらに含有させることにより、画像形成後に耐水性が発現するまでの時間を早めることができる。
さらに、アルカリ金属イオンとアンモニウムイオンの合計含有量を系中に存在する水不溶性架橋ポリマー粒子のカルボキシ基全量に対して100モル%以上185モル%以下にすることにより、中和塩を形成していない塩基(アンモニウムイオン)がインク中に存在することで凝集物の再分散が促進され、吐出安定性が向上すると考えらえる。
<顔料>
本発明に用いられる顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよく、レーキ顔料、蛍光顔料を用いることもできる。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロム等の金属酸化物、真珠光沢顔料等が挙げられる。特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料の具体例としては、アゾレーキ顔料、不溶性モノアゾ顔料、不溶性ジスアゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料類;フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ベンツイミダゾロン顔料、スレン顔料等の多環式顔料類等が挙げられる。
色相は特に限定されず、ホワイト、ブラック、グレー等の無彩色顔料;イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色の有機顔料をいずれも用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンから選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
体質顔料としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
上記の顔料は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
顔料は、カルボキシ基を有する水不溶性ポリマーに由来する構造と、該水不溶性ポリマーのカルボキシ基と反応可能な架橋剤に由来する構造からなる架橋構造を有する水不溶性架橋ポリマーにより水系インク中に分散されていることが好ましい。
顔料の分散形態としては、保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、顔料を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子の形態が好ましい。本明細書において、顔料を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子(以下「顔料含有架橋ポリマー粒子」ともいう)とは、架橋構造を有する水不溶性ポリマーが顔料を包含した形態の粒子、水不溶性架橋ポリマーと顔料からなる粒子の表面に顔料の一部が露出している形態の粒子、水不溶性架橋ポリマーが顔料の一部に吸着している形態の粒子のいずれか又はこれらの混合物を意味する。
(カルボキシ基を有する水不溶性ポリマー)
顔料含有架橋ポリマー粒子を構成するカルボキシ基を有する水不溶性ポリマー(以下、「ポリマーa」ともいう)は、水系媒体中に顔料を分散させる顔料分散能を有するポリマーであり、カルボキシ基を有する。ポリマーaは、水溶性でも水不溶性でもよいが、水不溶性ポリマーであることが好ましい。ポリマーaが水溶性ポリマーであっても架橋により水不溶性ポリマーとなる。
ここで、「水不溶性」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、飽和に達するまで25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であることをいう。水不溶性ポリマーがアニオン性ポリマーの場合、その溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
ポリマーaは、本発明インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、ビニル単量体の付加重合により得られるビニル系ポリマーであることが好ましい。
ビニル系ポリマーは、(a-1)カルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位を含有し、(a-1)成分と(a-2)疎水性モノマーとを含むモノマー混合物Aを共重合させてなるビニル系ポリマーがより好ましい。該ビニル系ポリマーは、(a-1)成分由来の構成単位と(a-2)成分由来の構成単位を有する。
(a-1)カルボキシ基含有モノマーとしては、カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上がより好ましい。
(a-2)疎水性モノマーの具体例としては、特開2018-83938号公報の段落〔0020〕~〔0022〕に記載のものが挙げられる。これらの中では、炭素数1以上22以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましい。
ポリマーaは、更に(a-3)ノニオン性モノマーを用いることができる。
(a-3)成分の具体例としては、特開2018-83938号公報の段落〔0018〕に記載のものが挙げられる。これらの中では、メトキシポリエチレングリコール(n=1~30)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2~30)(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上が好ましい。
以上の観点から、ポリマーaは、(a-1)成分として、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上由来の構成単位と、(a-2)成分として、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上、好ましくはスチレン及びα-メチルスチレンから選ばれる1種以上由来の構成単位とを有する(メタ)アクリル-スチレン系樹脂であることが好ましい。
(モノマー混合物A中の各成分又はポリマーa中の各構成単位の含有量)
ポリマーa製造時における、モノマー混合物A中の各成分の含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又はポリマーa中の各構成単位の含有量は、顔料の分散安定性、及び本発明インクの保存安定性及び吐出安定性を向上させる観点から、次のとおりである。
(a-1)成分の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
(a-2)成分の含有量は、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下であり、そして、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上である。
(a-3)成分を含有する場合、その含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
(a-1)成分と(a-2)成分の質量比[(a-1)/(a-2)]は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.25以上であり、そして、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.8以下である。
本発明においてポリマーa中における(a-1)~(a-3)成分由来の構成単位の含有量は、測定により求めることができるし、ポリマーaの製造時における(a-1)~(a-3)成分を含む原料モノマーの仕込み比率で代用することもできる。
(ポリマーaの製造)
ポリマーaは、モノマー混合物Aを公知の重合法により共重合させることにより製造することができる。重合法としては溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に制限はないが、水、低級脂肪族アルコール、メチルエチルケトン等のケトン類、エーテル類、エステル類等の極性溶媒が好ましい。
重合の際には、アゾ化合物、過硫酸塩等の重合開始剤やメルカプタン類等の重合連鎖移動剤を用いることができる。重合温度は、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるが、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは80℃以下である。
ポリマーaとして、市販品を用いることもできる。かかる市販品としては、BASFジャパン株式会社製のジョンクリル690等のスチレン-アクリル樹脂等が挙げられる。
ポリマーaの数平均分子量は、顔料のインク中の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上、更に好ましくは8000以上であり、そして、好ましくは15万以下、より好ましくは10万以下、更に好ましくは5万以下である。
ポリマーaの酸価は、上記と同様の観点から、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは80mgKOH/g以上、更に好ましくは100mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは500mgKOH/g以下、より好ましくは400mgKOH/g以下、更に好ましくは300mgKOH/g以下である。
ポリマーの数平均分子量及び酸価の測定は、実施例に記載の方法により行うことができる。
<顔料含有架橋ポリマー粒子の製造>
顔料を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子(顔料含有架橋ポリマー粒子)は、効率的に製造する観点から、下記の工程I~工程IIIを有する方法により、顔料水分散体として、製造することが好ましい。
工程I:ポリマーa、有機溶媒、顔料、及び水を含有する混合物(以下、「顔料混合物」ともいう)を分散処理して、顔料を含有するポリマー粒子(以下、「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)の顔料分散液を得る工程
工程II:工程Iで得られた顔料分散液から前記有機溶媒を除去して、顔料含有ポリマー粒子の水分散液(以下、「顔料水分散液」ともいう)を得る工程
工程III:工程IIで得られた顔料水分散液を、架橋剤で架橋処理し、架橋構造を有するポリマーAと顔料からなる顔料含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体を得る工程
(工程I)
工程Iでは、まず、ポリマーaを有機溶媒に溶解させ、次に顔料、水、中和剤、及び必要に応じて界面活性剤等を、得られたポリマー溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。
ポリマーaを溶解させる有機溶媒に制限はないが、炭素数1~3の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等が好ましく、顔料への濡れ性、ポリマーaの溶解性、及びポリマーaの顔料への吸着性を向上させる観点から、炭素数4以上8以下のケトンがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが更に好ましく、メチルエチルケトンがより更に好ましい。ポリマーaを溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
(ポリマーaの中和)
ポリマーaのカルボキシ基の少なくとも一部は、中和剤を用いて中和される。中和する場合は、pHが6以上10以下になるように中和することが好ましい。
中和剤としては、得られる水系インクの保存安定性、吐出安定性を向上させる観点から、アルカリ金属イオンを生ずるアルカリ金属水酸化物を用いる。
アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン及びカリウムイオンから選ばれる1種以上が好ましい。すなわち、アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
また、工程1の前に、ポリマーaを予めアルカリ金属イオンで中和しておいてもよい。
中和剤は、十分かつ均一に中和を促進させる観点から、水溶液として用いることが好ましい。中和剤水溶液の濃度は、3質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、また、50質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
工程1におけるポリマーaのアルカリ金属イオンによる中和度(以下、「ポリマーaの中和度」ともいう)は、得られる水系インクの保存安定性、吐出安定性を向上させる観点から、ポリマーaのカルボキシ基の全モル量に対して、好ましくは7モル%以上であり、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは13モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは28モル%以下、更に好ましくは26モル%以下である。
ここでポリマーaの中和度とは、顔料混合物中の中和剤(アルカリ金属イオン)のモル数を同じく顔料混合物中のポリマーaのカルボキシ基のモル数で除した値、即ち「顔料混合物中のアルカリ金属イオンのモル数/顔料混合物中のポリマーaのカルボキシ基のモル数」の値である。
(顔料混合物の分散処理)
工程Iにおいては、前記顔料混合物を分散処理して、顔料含有ポリマー粒子の顔料分散液を得る。顔料分散液を得るための分散方法に特に制限はない。本分散だけで顔料粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは顔料混合物に機械力を付与して予備分散させた後、更に剪断応力を加えて本分散を行い、顔料粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
機械力を付与する方法に特に制限はなく、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。
本分散の剪断応力を加える手段としては、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製)等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。これらの中では、顔料を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いる場合、処理圧力やパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができる。処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは80MPa以上、より好ましくは120MPa以上であり、そして、好ましくは300MPa以下、より好ましくは250MPa以下である。また、パス回数は、好ましくは3以上、より好ましくは5以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
(工程II)
工程IIでは、工程Iで得られた顔料分散液から、公知の方法で有機溶媒を除去することで、顔料含有ポリマー粒子の水分散液(顔料水分散液)を得ることができる。得られた顔料水分散液中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。
(工程III)
工程IIIでは、顔料水分散液中に存在する顔料含有ポリマー粒子を構成するポリマーaのカルボキシ基の一部と化学反応して架橋し、顔料含有ポリマー粒子の表層部に架橋構造を形成させる。すなわち、顔料分散液中の顔料含有ポリマー粒子を構成するポリマーaは架橋剤によって架橋され、架橋構造を有するポリマーAとなり、顔料含有架橋ポリマー粒子となる。
(架橋剤)
本発明で用いられる架橋剤は、得られる水系インクの保存安定性、吐出安定性を向上させる観点から、ポリマーaのカルボキシ基と反応可能な官能基を分子内に2個以上有する化合物が好ましく、多官能エポキシ化合物がより好ましい。
多官能エポキシ化合物としては、好ましくは分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物、より好ましくはグリシジルエーテル基を有する化合物、更に好ましくは炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのグリシジルエーテル化合物である。
多価アルコールのグリシジルエーテル化合物を用いることで、得られる水不溶性架橋ポリマー粒子の架橋構造を多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物由来のものとすることができる。
多官能エポキシ化合物のエポキシ基の数は、効率よくカルボキシ基と反応させて顔料含有架橋ポリマー粒子の保存安定性等を高める観点から、1分子あたり2以上、好ましくは3以上であり、そして、1分子あたり好ましくは6以下、市場入手性の観点から、より好ましくは4以下である。
多官能エポキシ化合物の具体例としては、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
これらの中では、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル及びペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルから選ばれる1種以上が好ましい。
ポリマーaの架橋反応は、ポリマーaで顔料を分散した後に行うことが好ましい。その反応温度は、反応の完結と経済性の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは85℃以下である。
また、反応時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、そして、好ましくは12時間以下、より好ましくは10時間以下である。
水不溶性架橋ポリマー粒子を構成するポリマーAの架橋度は、好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
ポリマーAの架橋度は、ポリマーの酸価と架橋剤のエポキシ基の当量から計算される見かけの架橋度である。すなわち、架橋度は「顔料水分散液に加えた架橋剤のエポキシ基のモル数/顔料水分散液中のポリマーaのカルボキシ基のモル数」である。
ポリマーaを架橋した後に得られるポリマーAの酸価は、45mgKOH/g以上であり、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは55mgKOH/g以上、更に好ましくは60mgKOH/g以上であり、そして、180mgKOH/g以下であり、好ましくは170mgKOH/g以下、より好ましくは160mgKOH/g以下、更に好ましくは150mgKOH/g以下である。
顔料水分散体中の顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、水系インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは60nm以上、より好ましくは70nm以上、更に好ましくは80nm以上であり、また、好ましくは200nm以下、より好ましくは160nm以下、更に好ましくは150nm以下である。
水系インク中の顔料含有架橋ポリマー粒子の平均粒径は、水系顔料分散体中の平均粒径と実質的に同じである。
得られる顔料水分散体の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、顔料水分散体の分散安定性を向上させる観点及び水系インクの調製を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
なお、顔料水分散体の固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
[本発明インクの製造方法]
本発明インクは、前記工程IIIで得られた顔料含有架橋ポリマー粒子を含む顔料水分散体と、アンモニア水と、有機溶剤と、水と、必要に応じて、界面活性剤等の各種添加剤とを混合することにより、効率的に製造することができる。
上記各成分の混合方法に特に制限はない。
(本発明インク中のアルカリ金属イオン)
本発明インクは、本発明インク中に存在する水不溶性架橋ポリマーAのカルボキシ基の全モル量に対して、15モル%以上65モル%に相当するアルカリ金属イオンを含有する。
アルカリ金属イオン含有量は、得られる水系インクの保存安定性、吐出安定性を向上し、耐水性に優れる記録物を得る観点から、ポリマーAのカルボキシ基の全モル量に対して、好ましくは20モル%以上60モル%以下、より好ましくは25モル%以上55モル%以下、更に好ましくは30モル%以上55モル%以下、より更に好ましくは35モル%以上55モル%以下である。
本発明インク中のアルカリ金属イオン含有量は、架橋前のポリマーaのカルボキシ基を調整する際に用いたアルカリ金属イオン、及び本発明インクの調製の際に新たに加えられたアルカリ金属イオンがある場合は、それら全てのアルカリ金属イオンのインク中の存在量を合算した上で、本発明インク中に存在する架橋後のポリマーAのカルボキシ基の全モル量に対するモル%を計算する。
(本発明インク中のアンモニウムイオン)
本発明インクには、アルカリ金属イオンが存在するが、それに加えて、アンモニウムイオンも同時に存在することが好ましい。アンモニウムイオンはアンモニア水に由来するものが好ましい。
アンモニア水の量は、得られる水系インクの保存安定性、吐出安定性を向上し、耐水性に優れる記録物を得る観点から、アンモニウムイオンの含有量として、本発明インク中に存在する水不溶性架橋ポリマー粒子のカルボキシ基の全モル量に対して、55モル%以上であり、好ましくは60モル%以上、より好ましくは65モル%以上、更に好ましくは70モル%以上であり、そして、145モル%以下であり、好ましくは140モル%以下、より好ましく135モル%以下、更に好ましく130モル%以下である。
本発明インクには、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂等からなる顔料を含有しないポリマー粒子を添加することができる。その際、該ポリマーをアンモニウムイオンで中和したものを用いて、アンモニウムイオンの含有量が、インク中に存在するポリマーAのカルボキシ基の全モル量に対して、55モル%以上145モル%以下の範囲となるようにして調整することもできる。
本発明インクにおいて、アルカリ金属イオンとアンモニウムイオンの合計含有量は、上記と同様の観点から、本発明インク中に存在する水不溶性架橋ポリマー粒子を構成するポリマーのカルボキシ基の全モル量に対して、100モル%以上であり、好ましくは105モル%以上、より好ましくは110モル%以上、更に好ましくは115モル%以上であり、そして、185モル%以下であり、好ましくは180モル%以下、より好ましく175モル%以下、更に好ましく170モル%以下である。
<本発明インク中の有機溶剤>
本発明インクで用いられる有機溶剤は、25℃で液体であっても固体であってもよいが、該有機溶剤を25℃の水100mlに溶解させたときに、その溶解量は10ml以上である水溶性有機溶剤であることが好ましい。
有機溶剤は、得られる水系インクの保存安定性等を向上させる観点から、その沸点は、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは120℃以上、より更に好ましくは140℃以上であり、そして、好ましくは260℃以下、より好ましく250℃以下、更に好ましく240℃以下である。
水溶性有機溶剤としては、アルキレングリコールエーテル等のグリコールエーテル、プロピレングリコール等の多価アルコール、アミド化合物等が挙げられる。これらの中では、アルキレングリコールエーテルが好ましく、モノアルキレングリコールエーテルがより好ましい。
モノアルキレングリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等から選ばれる1種以上が挙げられる。
これらの中では、上記と同様の観点から、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
<その他の添加剤等>
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの中では、非イオン性界面活性剤が好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤から選ばれる1種以上がより好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品例としては、Air Products & Chemicals社製のサーフィノールシリーズ、川研ファインケミカル株式会社製のアセチレノールシリーズ等が挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の具体例としては、信越化学工業株式会社製のKFシリーズ、日信化学工業株式会社製のシルフェイスSAG、ビックケミー・ジャパン株式会社製のBYKシリーズ等が挙げられる。
本発明インクの製造方法に用いられるその他の添加剤としては、定着助剤、保湿剤、湿潤剤、浸透剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等が挙げられる。
定着助剤としては、水不溶性ポリマー粒子を含有するエマルションが挙げられ、水不溶性ポリマー粒子としては、ポリウレタン及びポリエステル等の縮合系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂及びアクリルシリコーン系樹脂等のビニル系樹脂の粒子が挙げられる。
上記の製造方法により得られる本発明インクの各成分の含有量、インク物性は以下のとおりである。
(本発明インク中の顔料の含有量)
本発明インク中の顔料の含有量は、本発明インクの印刷濃度を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上である。また、吐出安定性、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましく8質量%以下である。
(本発明インク中の水不溶性架橋ポリマーの含有量)
本発明インク中の水不溶性架橋ポリマーの含有量は、好ましくは本発明インク全体に対して2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
(本発明インク中の顔料含有架橋ポリマー粒子の含有量)
本発明インク中の顔料含有架橋ポリマー粒子の含有量は、顔料と水不溶性架橋ポリマーとの合計で、好ましくは本発明インク全体に対して3質量%以上、より好ましくは5量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは16質量%以下である。
(本発明インク中の有機溶剤の含有量)
本発明インク中の有機溶剤の含有量は、インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは本発明インク全体に対して15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、より好ましくは22質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
(本発明インク中の水の含有量)
本発明インク中の水の含有量は、吐出安定性の向上の観点から、好ましくは本発明インク全体に対して25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上であり、そして、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である。
(本発明インク物性)
本発明インクの32℃の粘度は、インクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくは2mPa・s以上、より好ましくは3mPa・s以上であり、更に好ましくは5mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下、より好ましくは9mPa・s以下、更に好ましくは7mPa・s以下である。
本発明インクのpHは、インクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくは7以上、より好ましくは7.5以上、更に好ましくは7.9以上であり、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、好ましくは10以下であり、より好ましくは9.5以下であり、更に好ましくは9.2以下である。
[インクジェット記録方法]
本発明インクは、公知のインクジェット記録装置に装填し、記録媒体にインク液滴として吐出させて、記録画像等を得ることができる。
インクジェット記録装置としては、サーマル式及びピエゾ式があるが、ピエゾ式のインクジェット記録用水系インクとして用いることがより好ましい。
用いることができる記録媒体としては、高吸水性の普通紙、低吸水性のコート紙、及び非吸水性の樹脂フィルムが挙げられる。コート紙としては、汎用光沢紙、多色フォームグロス紙等が挙げられ、樹脂フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が挙げられる。
以下の実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。なお、各物性等の測定方法は以下のとおりである。
(1)ポリマーの数平均分子量の測定
N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8320GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSKgel SuperAWM-H、TSKgel SuperAW3000、TSKgel guardcolum Super AW-H)、流速:0.5mL/min〕により、標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレンキット〔PStQuick B(F-550、F-80、F-10、F-1、A-1000)、PStQuick C(F-288、F-40、F-4、A-5000、A-500)、東ソー株式会社製〕を用いて測定した。
測定サンプルは、ガラスバイアル中に樹脂0.1gを前記溶離液10mLと混合し、25℃で10時間、マグネティックスターラーで撹拌し、シリンジフィルター(DISMIC-13HP PTFE 0.2μm、アドバンテック株式会社製)で濾過したものを用いた。
(2)ポリマーの酸価の測定
電位差自動滴定装置(京都電子工業株式会社製、電動ビューレット、型番:APB-610)にポリマーをトルエンとアセトン(2:1)を混合した滴定溶剤に溶かし、電位差滴定法により0.1N水酸化カリウム/エタノール溶液で滴定し、滴定曲線上の変曲点を終点とした。 水酸化カリウム溶液の終点までの滴定量から酸価を算出した。
(3)水分散体の固形分濃度の測定
赤外線水分計「FD-230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させた後、測定試料の水分(%)を測定し、下記式により固形分濃度を算出した。
固形分濃度(%)=100-測定試料の水分(%)
調製例1(水不溶性ポリマーa-1の調製)
アクリル酸31部、スチレン69部を混合して、モノマー混合液を調製した。反応容器内に、MEK10部、2-メルカプトエタノール(重合連鎖移動剤)0.2部、及び前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、モノマー混合液の残りの90%、前記重合連鎖移動剤0.13部、MEK30部、及びアゾ系ラジカル重合開始剤(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル、富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名:V-65)1.1部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記モノマー混合液を撹拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。
滴下終了から65℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.1部をMEK2部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させた後に減圧乾燥して水不溶性ポリマーa-1(数平均分子量:19000、酸価:241mgKOH/g)を得た。
調製例2~6(水不溶性ポリマーa-2~a-6の調製)
調製例1において、表1に示すようにモノマー成分の量を変えた以外は、調製例1と同様にして、水不溶性ポリマーa-2~a-6を調製した、結果を表1に示す。
実施例1(水系インクの製造)
(1)顔料水分散液の調製
ポリマーとして調製例1で得られた水不溶性ポリマーa-1 100部をMEK78.6部と混合し、更にポリマーa-1のカルボキシ基を中和するナトリウムイオンとして5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分:16.9%)24.7部を加え中和した(中和度:24.7モル%)。
更にイオン交換水800部を加え、その中にシアン顔料(PB15:3;C.I.ピグメント・ブルー15:3、ディーアイシー株式会社製、商品名:TGR-SD)100部を加え、ディスパー(浅田鉄工株式会社製、商品名:ウルトラディスパー)を用いて、20℃でディスパー翼を7000rpmで回転させる条件で60分間撹拌した。得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)で200MPaの圧力で10パス分散処理して顔料分散液(固形分濃度18.1%、顔料濃度9%)を得た。
(2)顔料水分散体の架橋処理
上記(1)で得られた顔料分散液にイオン交換水250部を加え、撹拌した後、減圧下60℃でMEKを完全に除去し、更に一部の水を除去して、固形分濃度を20%(顔料濃度10%)とした後に、エポキシ架橋剤としてトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:デナコールEX-321、エポキシ価140)23.8部を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱して、ポリマーのカルボキシ基と反応させ、架橋構造が炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールがトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテル化合物由来のものである水不溶性架橋アクリルポリマー粒子の顔料水分散体を得た。
(3)アンモニウムイオンの追加、インクの調製
上記(2)で顔料水分散体を得た後、5時間放置し、室温まで降温した後に、追加の中和剤として25%アンモニア水14.2部、有機溶剤としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社製)540部、アセチレングリコール系非イオン界面活性剤(Air Products & Chemicals社製、商品名:サーフィノール104、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール)15部を添加し、合計量が2000部となるようイオン交換水を添加した。5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム和光純薬株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過して、水系インク1(顔料含有架橋ポリマー粒子の含有量:10%)を得た。
得られた水系インク1は、水不溶性架橋ポリマー粒子の酸価が118mgKOH/gであり、該ポリマー粒子のカルボキシ基の40モル%がナトリウムイオンで中和され、更にアンモニウムイオンを該ポリマー粒子のカルボキシ基の80モル%に相当する量を含有していた。
実施例2~16、比較例1~10(水系インクの製造)
実施例1において、表2-1及び表3に示すように条件を変えた以外は、実施例1と同様にして、水系インク2~16、31~40を得た。詳細を表2-1及び表3に示す。
実施例17
(1)顔料水分散液の調製
実施例1(1)において、水不溶性ポリマーa-1 100部を40部に変えた以外は、実施例1(1)と同様にして、顔料分散液(固形分濃度13.4%、顔料濃度9.6%)を得た。
(2)顔料水分散体の架橋処理
上記(1)で得られた顔料分散液にイオン交換水250部を加え、撹拌した後、減圧下60℃でMEKを完全に除去し、更に一部の水を除去して、固形分濃度を14%(顔料濃度10%)とした後に、エポキシ架橋剤としてトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:デナコールEX-321、エポキシ価140)9.52部を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱して、ポリマーのカルボキシ基と反応させ、架橋構造が炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールがトリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテル化合物由来のものである架橋構造を有するナトリウムイオンで中和された水不溶性架橋アクリルポリマー粒子(酸価118mgKOH/g)の顔料水分散体を得た。
(3)顔料を含有しない水不溶性架橋ポリマー分散体の調製
調製例1で得られた水不溶性ポリマーa-1 60部をイオン交換水100部と混合し、更に25%アンモニア水14.2部を加え、ねじ口付きガラス瓶中でマグネティックスターラーを用いて、90℃で3時間撹拌させて、自己乳化させた後にトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル14.28部を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら90℃で3時間加熱した。3時間経過後、室温まで降温しアンモニウムイオンで中和された顔料を含有しない水不溶性架橋ポリマー粒子(酸価118mgKOH/g)の分散体を得た。
(4)インクの調製
上記(1)で顔料水分散体を得た後、5時間放置し、室温まで降温した後に、上記(3)で得られた顔料を含有しない水不溶性ポリマー粒子の分散体を全量、有機溶剤としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル 540部、アセチレングリコール系非イオン界面活性剤(サーフィノール104)15部を添加し、合計量が2000部となるようイオン交換水を添加した後にスターラーで撹拌しながら90℃で3時間加熱した。3時間経過後、室温まで降温し、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム和光純薬株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過して、水系インク17(顔料含有架橋ポリマー粒子の含有量:10%)を得た。
得られた水系インク17は、水不溶性架橋ポリマーの酸価が118mgKOH/gであり、該ポリマーのカルボキシ基の40モル%がナトリウムイオンで中和され、更にアンモニウムイオンを該ポリマーのカルボキシ基の80モル%に相当する量を含有していた。
実施例18~22
実施例11において、有機溶剤として用いたジプロピレングリコールモノメチルエーテルを、表2-2に示す有機溶剤に変えた以外は、実施例11と同様にして、水系インク18~22を得た。結果を表2-2に示す。
上記で得られた水系インクの保存安定性、インクジェット印刷物の耐水性、インクジェット印刷における吐出安定性の評価を、以下の方法で行った。結果を表2-1、表2-2、及び表3に示す。
<水系インクの保存安定性の評価>
上記で得られた水系インク40gを50mlのスクリュー瓶に入れて密栓し、温度70℃に設定した恒温槽に4日間保存した。
保存前後の平均粒径変化率を下記式より求め、保存安定性を評価した。
平均粒径変化率(%)=(保存後のインク中のポリマー粒子の平均粒径/保存前のインク中のポリマー粒子の初期平均粒径)×100
平均粒径変化率が100%に近いほど保存安定性に優れることを示す。
<インクジェット印刷の評価>
(1)インクジェット印刷物の作成
A4サイズのコート紙(王子製紙株式会社製、商品名:OKトップコート+)に、水系インクを用いて、以下のインクジェット記録方式により画像を形成した。
(インクジェット記録方式)
温度25±1℃、相対湿度30±5%の環境で、インクジェット記録ヘッド(京セラ株式会社製、商品名:KJ4B-HD06MHG-STDV、ピエゾ式)を装備した印刷評価装置(株式会社トライテック製)に水系インクを充填した。
記録ヘッド電圧26V、駆動周波数10kHz、吐出液適量12pl、記録ヘッド温度32℃、解像度600dpi、吐出前フラッシング回数200発、負圧-4.0kPaを設定し、記録媒体の長手方向と搬送方向が同じになる向きに、記録媒体を搬送台に減圧で固定した。前記印刷評価装置に印刷命令を転送し、Duty0~100%の5%刻みの階調画像を印刷し、印刷物を得た。
(2)吐出安定性の評価
上記(1)で印刷物を調製した後、30分間印刷機を停止させ記録ヘッドを大気暴露させた。30分間経過後、インクジェット記録ヘッドからインクを一度パージし、ワイプ後に印刷を再開した際のノズル欠け状態を観察し、下記式によりノズル回復率(%)を算出し、吐出安定性を評価した。
ノズル回復率(%)=(正常吐出ノズル数/全ノズル数)×100
ノズル回復率(%)が大きいほどノズル回復性が優れていると判断され、数値として90%以上であれば、実用上使用できる。
(3)耐水性の評価
上記(1)で得られた印刷物を3分間静置後、イオン交換水1000mLを入れたステンレス製バットの中に10秒間浸漬させてDuty%0~100%の5%刻みの階調画像を順次指で軽く擦り、剥がれがみられた画像のDutyの部分を耐水性評価の数値として記録した。
剥がれなかったDutyが大きいインクほど耐水性が高いと判断される。耐水性評価の数値が50%以上であれば実用上使用できる。
表2-1、表2-2、及び表3から、実施例1~22で得られた水系インクは、比較例1~10で得られた水系インクに比べて、保存安定性、吐出安定性が優れ、かつ耐水性に優れる記録物を得ることができることが分かる。

Claims (7)

  1. 顔料、水不溶性架橋ポリマー粒子、有機溶剤、及び水を含有するインクジェット記録用水系インクであって、
    該水不溶性架橋ポリマー粒子が、カルボキシ基を有し、酸価が45mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である架橋構造を有するポリマーAからなり、
    インク中に存在する該ポリマーAのカルボキシ基の全モル量に対して、アルカリ金属イオンを15モル%以上65モル%以下、アンモニウムイオンを55モル%以上145モル%以下含有し、
    アルカリ金属イオンとアンモニウムイオンの合計含有量が該ポリマーAのカルボキシ基の全モル量に対して100モル%以上185モル%以下である、インクジェット記録用水系インク。
  2. アルカリ金属イオンが、ナトリウムイオン及びカリウムイオンから選ばれる1種以上である、請求項1に記載のインクジェット記録用水系インク。
  3. 水不溶性架橋ポリマー粒子の架橋構造が炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物由来のものである、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水系インク。
  4. 有機溶剤が、グリコールエーテルを含有する請求項1~3のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
  5. 有機溶剤の含有量が、インク中15質量%以上40質量%以下である、請求項1~4のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
  6. 顔料が、顔料を含有する水不溶性架橋ポリマー粒子の形態である、請求項1~5のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
  7. 水不溶性架橋ポリマーの含有量が、インク中2質量%以上15質量%以下である、請求項1~6のいずれかに記載のインクジェット記録用水系インク。
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