JP7669069B2 - 熱電体、熱電発電素子、多層熱電体、多層熱電発電素子、熱電発電機、及び熱流センサ - Google Patents
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Description
非特許文献2では、希土類系磁石として、SmCo合金に関して、様々な組成比率に関して、詳細な結晶構造と磁気的物性の説明がある。しかし、異常ネルンスト効果に関しては、言及されていない。本発明者の一部が執筆している非特許文献3、4では、SmCo5系磁石における異常ネルンスト効果に関する研究を報告しているが、アモルファスに関する報告は含まれていない。
また、従来の異常ネルンスト効果を用いた熱電変換材料では、バルク永久磁石を除き、保磁力や、飽和磁化に対する残留磁化の比率が小さいため異常ネルンスト効果の動作に外部磁場印加が必要であるという課題がある。
そこで、本発明の熱電体では、どんな基板上にも成膜できること、面内磁化に対して高い保磁力と飽和磁化に対する高い残留磁化の比率を示すことができる熱電体を提供することを目的とする。
また、本発明の多層熱電体では、大きな保磁力と残留磁化を持つ面内容易磁化方向を持つ希土類系金属間アモルファス磁性合金材料と、巨大な異常ネルンスト効果を持つ他の強磁性材料との積層構造を用いることで、従来の強磁性材料に外部磁場をかけずに大きな異常ネルンスト効果による電圧生成を実現できる、多層熱電体を提供することを目的とする。
面内方向に磁化容易軸を持ち、アモルファス構造を有することを特徴とする。
〔2〕本発明の熱電体〔1〕において、好ましくは、SmpCo100-p(0<p≦50)が含まれることを特徴とする。
〔3〕本発明の熱電体〔2〕において、好ましくは、15≦p≦35であり、さらに好ましくは20≦p≦30であるとよい。
〔4〕本発明の熱電体〔1〕において、好ましくは、Smp(FeqCo100-q)100-p(0<p≦50、0≦q≦100)が含まれることを特徴とする。
〔5〕本発明の熱電体〔4〕において、好ましくは、15≦p≦35、5≦q≦45であり、さらに好ましくは20≦p≦30、10≦q≦35であることを特徴とする。
〔6〕本発明の熱電発電素子は、本発明の熱電体〔1〕~〔5〕と、前記熱電体を担持する基板と、を有するとよい。
〔8〕本発明の多層熱電体〔7〕において、好ましくは、前記大きな保磁力は、保磁力10mT以上の場合をいい、前記飽和磁化に対する大きな残留磁化比率は0.3以上をいい、前記大きな異常ネルンスト効果は、熱電能1μV/K以上をいい、前記巨大な異常ネルンスト効果は、熱電能5μV/K以上をいうとよい。
〔9〕本発明の多層熱電発電素子は、本発明の多層熱電体〔7〕又は〔8〕と、前記熱電体を担持する基板と、を有するとよい。
〔10〕本発明の熱電発電素子〔1〕~〔6〕、又は多層熱電発電素子〔7〕~〔9〕を用いた曲げられる熱電発電機であるとよい。
〔11〕本発明の熱電発電素子〔1〕~〔6〕、又は多層熱電発電素子〔7〕~〔9〕を用いた曲げられる熱流センサであるとよい。
本発明の多層熱電発電素子は、大きな保磁力・残留磁化を持つ面内容易磁化方向と、大きな異常ネルンスト効果を示す、希土類系金属間アモルファス磁性合金材料と、巨大な異常ネルンスト効果を持つ他の強磁性材料との積層構造を用いることで、従来の強磁性材料に外部磁場をかけずに大きな異常ネルンスト効果を実現できる。
「熱電変換材料」は、熱を電気に変えることができる物質で、例えば発電用モジュールや温調素子に使用され、環境に優しいエネルギー、またエネルギー節約の更なる効率アップに役立つものである。
「ネルンスト効果」とは、1886年にE.Nernstらによって報告された現象であり、温度勾配∇Tをかけた伝導性物質に、外部磁場Hを印加すると、Hと∇Tの外積方向に電界を生じさせる現象である(非特許文献1参照)
「異常ネルンスト効果」は、磁性体特有の現象であり、外部磁場ではなく、磁性体の磁化Mと温度勾配∇Tの外積方向に電界を生じさせる現象である(非特許文献1参照)。以下、異常ネルンスト効果はANE(anomalous Nernst effect)と略して表記することがある。
「サーモパイル」は、複数の熱電変換材料を直列あるいは並列に接続したもので、熱起電力を昇圧するために用いる構造である。
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す、入力熱流と出力電流が直交する横型熱電変換のための典型的なネルンスト・サーモパイル構造を説明する図で、(a)は磁化Mの方向が基板に対して均一な場合、(b)は磁化Mの方向が隣接する熱電体の間で右向きと左向きが交互に現れる場合を示している。
本発明の熱電体は、異常ネルンスト効果を利用した熱電発電素子に用いられる、磁性体膜である。本発明の熱電体11は、面内方向に磁化容易軸を持ち、アモルファス構造を有することを特徴とする。これを用いることで、外部磁場フリーで面内方向に起電力が発生可能な横型熱電変換素子が得られる。
図1(a)は、本発明の熱電変換材料を用いた熱電発電素子10を説明する図である。図1(a)に示した熱電発電素子10は、基板13と、この基板13の上に配置(担持)された熱電体11及び接続体12と、接続端子14とを有している。図1(a)では、熱電体11の材料をMaterial Aと表記し、接続体12の材料をMaterial Bと表記している。
熱電体11は、典型的には、アモルファスSm20Co80薄膜等の希土類系金属間アモルファス磁性合金膜(磁性体膜)によって構成されている。希土類系金属間アモルファス磁性合金膜は、面内方向の磁気異方性が強く、面内方向に磁化容易軸を有する。このため、希土類系金属間アモルファス磁性合金膜は、大きな保磁力と、飽和磁化に対して大きな残留磁化を示し、外部磁場を印加後ゼロ磁場に戻しても磁化が維持される。希土類系金属間アモルファス磁性合金の磁化方向は、印加される外部磁場の方向を向き、任意の方向に制御可能であるため、異常ネルンスト効果の出力を制御するのに好適である。熱電体11を構成する材料(Material A)として、希土類系金属間アモルファス磁性合金は、SmpCo100-p(0<p≦50)や、Smp(FeqCo100-q)100-p(0<p≦50、0≦q≦100)を含んでいることが好ましく、SmpCo100-p(15≦p≦35)や、Smp(FeqCo100-q)100-p(15≦p≦50、5≦q≦45)を含んでいることがより好ましく、SmpCo100-p(20≦p≦30)や、Smp(FeqCo100-q)100-p(20≦p≦30、10≦q≦35)を含んでいることがさらに好ましい。
また、熱電体11は、一様な合金膜であってもよいが、例えば、ナノスケールで、異種の単一金属層を交互に積層した多層構造等であってもよく、これらに限定されない。
尚、磁性体膜の厚さは、例えば、10nmから1μm程度とすることができるが、これに特に限定されない。
接続体12は、Material Bとして、異常ネルンスト効果を示さない非磁性体(例えば銅(Cu)、クロム(Cr)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt))によって構成されている。あるいは接続体12は、Material Bとして、熱電体11と逆符号の異常ネルンスト係数を持つ強磁性体(例えばFe、NdFeB、MnGa)、熱電体11よりも低い異常ネルンスト係数を持つ強磁性体SmnFe1-n(0≦n≦100)によって構成されていてもよい。
基板13は、MgO、Si-SiO2、Al2O3、AlN、ガラス、ダイヤモンド、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミドフィルム(Kapton(DuPont社の登録商標))、ポリマー等によって構成されている。
接続端子14は、ここでは接続体12と同じ材料(Material B)が用いられたもので、熱電体11の両端に設けられている。なお、接続端子14は熱電体11と同じ材料(Material A)でも良く、図1において熱電体11と接続体12の配置を入れ替えても良い。
図1(b)は、本発明の熱電変換材料を用いた熱電発電素子20を説明する図である。図1(b)に示した熱電発電素子20は、基板23と、この基板23の上に配置(担持)された熱電体21及び逆方向磁化接続体22と、接続端子24とを有している。図1(b)では、熱電体21と逆方向磁化接続体22の材料をいずれもMaterial Aと表記し、接続端子24の材料を、Material Bと表記している。
熱電体21及び逆方向磁化接続体22は、上記熱電体11と同様に、アモルファスSm20Co80薄膜等の希土類系金属間アモルファス磁性合金膜によって構成されている。
熱電体21と逆方向磁化接続体22とが同一の材料であっても、逆向きの磁化方向Mを有する熱電体21と逆方向磁化接続体22が交互に配置されることで、ANE電場が打ち消しあわず昇圧される。
基板23は、上述の基板13と同様に、シリコンや酸化マグネシウム等によって構成されている。
接続端子24は、Material Bとして、ここでは接続体12と同じ材料を用いたものであるとよく、例えば異常ネルンスト効果を示さない非磁性体(例えば銅(Cu)、クロム(Cr)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)によって構成されている。接続端子24は、熱電体21の両端に設けられている。なお、接続端子24は、熱電体21および逆方向磁化接続体22と同一の材料(Material A)であってもよい。
ここで、希土類系金属間アモルファス磁性合金として、SmpCo100-pの最適な組成比率を検討するために、SmpCo100-pのpを0~100まで変化させたアモルファス組成傾斜材料を含む膜(以下、単に「アモルファスSmpCo100-p(0≦p≦100)組成傾斜膜」ともいう。)を作製し、その物性(構造及び熱電性能)の評価を行った。
図2Aは、アモルファスSmpCo100-p(0≦p≦100)組成傾斜膜の構造を模式的に示したもので、平面図を示している。図2Bはその断面図を示している。MgO基板の上に、SmとCoの組成傾斜材料からなり、1層あたりのSmとCoの合計厚さが1nmの積層体が100層積層されており、その最上層に酸化防止用のアルミ薄膜が蒸着してある。厚さ1nmの積層体は、図2A、図2B中のx軸方向に向かってSmの組成比率が0at%から100at%へと増加している組成傾斜層であり、図2A中(A)で示す右側がSmの組成比率が高い領域であり、図2A中(B)で示す大略中央付近がCoとSmの組成比率が大略等しい領域であり、図2A中(C)で示す左側がCoの組成比率が高い領域である。
図2Eは図2A中(B)で示す大略中央付近のCoとSmの組成比率が大略等しい領域の断面明視野(BF)-STEM像とマイクロビーム電子線回折パターンを示している。Sm-Co二元合金相のほとんどがアモルファス相であることが確認された。
図2Fは図2A中(C)で示す左側のCoの組成比率が高い領域の断面明視野(BF)-STEM像とマイクロビーム電子線回折パターンを示している。Coが豊富な領域では、結晶構造を示す回折像が得られている。
図3は、MgO基板上のアモルファスSmpCo100-p(0≦p≦100)組成傾斜膜における、異常エッティングスハウゼン効果による単位電荷電流密度あたりの温度変化の組成依存性を示す図である。0at%<Sm≦40at%の領域では、電流を流した際に、電流と磁化の両方に垂直な方向に熱流が生成され、温度変化が見られ、特に、Sm=15~35at%の領域では大きな温度変化が見られ、20~30at%では温度変化が最大となる。熱電応用に適した合金組成範囲として、少なくとも大きな異常ネルンスト効果が示される0<p≦50であればよいが、上記結果より、異常エッティングスハウゼン効果と異常ネルンスト効果との相反関係から、十分に大きな異常ネルンスト効果が存在することが示唆される0<p≦40の範囲が好ましく、15≦p≦35の範囲がより好ましく、20≦p≦30の範囲がさらに好ましい。
次に、好ましい組成範囲のアモルファスSmpCo100-p(0<p≦50)膜として、アモルファスSm20Co80膜からなる熱電体を作製し、その熱電性能を評価した。
図4(a)はアモルファスSm20Co80膜の積層状態を示す断面模式図である。MgO基板の上に、1層あたりSm層とCo層の合計厚さ1nmの積層体が100層積層されており、最上層にキャップ層としてアルミが蒸着してある。
図4(b)は蒸着したアモルファスSm20Co80膜の面内磁化の磁場依存性カーブ(黒塗りのデータ点)を示す図である。図4(b)より、アモルファスSm20Co80膜は面内に磁場を印加した際に、大きな保磁力と飽和磁化に対する大きな残留磁化比率を示すことがわかる。また、同じ膜を大気圧で1時間100℃に加熱した後の面内磁化の磁場依存性カーブ(白塗りのデータ点)も示している。ほぼ重なり合った磁化過程は、これらの合金の安定性を裏付けている。
図4(c)はヒーター出力を変えた場合のANE電場の外部磁場依存性を示す図である。実際の使用形態のように面に垂直方向に熱流を与え、面内方向に磁化させる場合、膜の厚さ方向に温度勾配を付けるため、その定量は難しい。図4(c),(d)では温度勾配を定量的に測定するため、膜面に垂直な方向に磁場を印加することでアモルファスSm20Co80膜を磁化させ、面内方向に温度勾配を付けた。面内温度勾配の定量は容易であり、アモルファスであるためSm20Co80膜の電子輸送特性は等方的な特性を示すことから、この配置で異常ネルンスト係数を見積もることができる。図4(c)より、ANE電場は磁場に対して奇の依存性を示し、アモルファスSm20Co80膜の磁化が飽和すると電場も飽和していることがわかる。また、ヒーター出力を上げると電場が増加した(図4(c)中、最も薄い色の線は、ヒーター出力が高い場合の結果を示し、最も濃い色の線は、ヒーター出力の低い場合の結果を示す。)。これらの振る舞いはANEと整合している。ただし、膜面に垂直な方向に磁場を印加しているため、保磁力や残留磁化は現れていない。
図4(d)はANE電場の温度勾配依存性を示す図である。アモルファスSm20Co80膜は、Sm20Co80組成で1.07μV/Kの異常ネルンスト係数を示している。このように、本発明のアモルファスSmpCo100-p(0<p≦50)膜から構成される熱電体では、比較的高い異常ネルンスト効果による熱電能が得られる。
次に、上記作製したアモルファスSm20Co80膜からなる熱電体を熱流束検知用サーモパイル(熱電発電素子10)に用いたときの熱電性能を評価した。
図5(a)はアモルファスSm20Co80薄膜を用いた熱流束検知用サーモパイルの概略構造を示す図で、図1(a)に示したものと同様である。
図5(c)はPEN基板上に蒸着したアモルファスSm20Co80膜の上記実験構成によるANE電圧信号の観測結果を示す図で、横軸は面内方向に印加される磁場の強度Hを示している。図5(c)が示すように、ANE電場の特徴である磁場に対して奇の依存性を示す信号が得られており、面内方向に磁場を印加していることからアモルファスSm20Co80膜の大きな保磁力と残留磁化を反映した結果が得られている。すなわち、ゼロ磁場においても有限のANE電場が観測されている。
図5(d)はPEN基板上に蒸着したアモルファスSm20Co80膜の上記実験構成によるANE電圧信号の観測結果を示す図で、横軸は試料面を貫く方向の熱流密度JQを示している。各熱電体のワイヤーの幅と隣接するワイヤーの間隔を狭めることで、出力電圧を増加させることができる。図5(d)は出力電圧VANEが熱流密度JQに比例して大きくなることを示しており、VANE/JQが熱流センサとしての感度を表す。これより、良好な感度を有し、ゼロ磁場で動作する熱流センサが得られることがわかった。
さらに、希土類系金属間アモルファス磁性合金として、Smp(FeqCo100-q)100-pの最適な組成比率を検討するために、Smp(FeqCo100-q)100-pのpを20とし、qを0~100まで変化させたアモルファス組成傾斜材料を含む膜(以下、単に「アモルファスSm20(FeqCo100-q)80組成傾斜膜」ともいう)を作製し、その物性(構造及び熱電性能)評価を行った。
図6(a)は、本発明の一実施例を示す、アモルファスSm20(FeqCo100-q)80(0≦q≦100)組成傾斜膜の積層状態を示す断面模式図である。MgO基板の上に、1層あたり厚さ0.37nmのSm層と、FeとCoの組成傾斜材料からなる厚さが0.63nmの組成傾斜層と、が積層された合計厚さ1nmの積層体が、100層積層されており、その最上層に酸化防止用のアルミ薄膜が蒸着してある。尚、実際には製造誤差により、アモルファスSm20(FeqCo100-q)80(0≦q≦100)組成傾斜膜の組成比率は、Sm20Co80からSm17Fe83へと変化した。
図6(c)は図6(b)に示すXRDで得られた結果を確認するための断面明視野(BF)-STEM画像を示している。
図6(d)は図6(b)に示すXRDで得られた結果を確認するためのマイクロビーム電子回折パターンを示している。
図6(c)及び図6(d)からも、アモルファスSm20(FeqCo100-q)80(0≦q≦100)組成傾斜膜のすべてがアモルファス相であることが確認された。
図7は、MgO基板上のアモルファスSm20(FeqCo100-q)80(0≦q≦100)組成傾斜膜における異常エッティングスハウゼン効果による単位電荷電流密度あたりの温度変化の組成依存性を示している。0at%≦Fe≦90at%の領域では、電流を流した際に、電流と磁化の両方に垂直な方向に熱流が生成され、温度変化が見られ、特に、Fe=5~45at%の領域では大きな温度変化が見られ、10~35at%で最大となる。熱電応用に適した合金組成範囲としては、少なくとも大きな異常ネルンスト効果が示される0≦q≦100の範囲であればよいが、上記結果より、異常エッティングスハウゼン効果と異常ネルンスト効果との相反関係から、十分に大きな異常ネルンスト効果が存在することが示唆される0≦q≦90の範囲が好ましく、5≦q≦45の範囲がより好ましく、10≦q≦35の範囲がさらに好ましい。
次に、好ましい組成範囲に含まれるアモルファスSm20(FeqCo100-q)80(0≦q≦100)膜として、アモルファスSm20(Fe23Co77)80膜(熱電体)を作製し、これを用いた熱電発電素子の熱電性能を評価した。
図8(a)は、アモルファスSm20(Fe23Co77)80膜製造プロセスの概略図を示している。
図8(b)は、蒸着したSm20(Fe23Co77)80膜の面内磁化の磁場依存性カーブを示している。図8(b)より、Sm20(Fe23Co77)80膜も面内に磁場を印加した際に、大きな保磁力と飽和磁化に対する大きな残留磁化比率を示すことがわかる。
図8(c)はヒーター出力を変えたときのANE電圧の外部磁場依存性を示している。図8(c)、(d)の実験において膜面の垂直方向に磁場を印加し、面内方向に温度勾配を付けた。その理由は、図4(c)、(d)と同様である。図5(c)より、ANE電場は磁場に対して奇の依存性を示し、アモルファスSm20(Fe23Co77)80膜の磁化が飽和すると電場も飽和していることがわかる。また、ヒーター出力を上げると電場が増加した(図5(c)中、最も濃い色の線は、ヒーター出力が高い場合の結果を示し、最も薄い色の線は、ヒーター出力の低い場合の結果を示す。)。これらの振る舞いはANEと整合している。ただし、膜面に垂直な方向に磁場を印加しているため、保磁力や残留磁化は現れていない。
図8(d)はANE電圧の温度勾配依存性を示している。Sm20(Fe23Co77)80組成の薄膜の異常ネルンスト係数は1.55μV/Kである。以上のことから、本発明のアモルファスSmp(FeqCo100-q)100-p(0<p≦50、0≦q≦100)膜から構成される熱電体では、高い熱電能が得られることがわかった。
図9は、本発明の第2の実施形態を示す、本材料と巨大な異常ネルンスト効果を持つ他の磁性材料を用いた多層サーモパイル構造の概略を示している。
図9(a)は、本発明の熱電変換材料を用いた多層熱電発電素子30を説明する図である。図9(a)に示した多層熱電発電素子30は、基板33と、この基板33の上に配置された多層熱電体31及び接続体32と、接続端子34を有している。
第1の磁性材料層311は、大きな異常ネルンスト効果を示す。第1の磁性材料層311の異常ネルンスト係数(熱電能)は、1μV/K以上であることが好ましく、異常ネルンスト係数は必ずしも巨大である必要はない。第1の磁性材料層311は、薄膜の面内方向に強い磁気異方性を有するため、面内磁場に対して大きな保磁力と残留磁化比率を示す磁化容易軸を持つ。このため、第1の磁性材料層311は、ゼロ磁場で熱起電力を生成できる。このような第1の磁性材料層311において、保磁力は10mT以上であるとよく、残留磁化比率は0.3以上であるとよい。
第2の磁性材料層312は、巨大な異常ネルンスト効果を示し、異常ネルンスト係数が巨大な磁性材料から構成される。第2の磁性材料層312の異常ネルンスト係数(熱電能)は、第1の磁性材料層311の異常ネルンスト係数(熱電能)よりも大きく、例えば、5μV/K以上であることが好ましい。第2の磁性材料層312は、面内方向の磁気異方性が弱いために、単独での厚膜化や細線化によって、残留磁化が著しく低下する。このため、第2の磁性材料層312は、ゼロ磁場で動作しなくなる。
そこで、希土類系金属間アモルファス磁性合金からなる第1の磁性材料層311と第2の磁性材料層312の両者を接合すると、交換結合により巨大な異常ネルンスト係数を示す第2の磁性材料層312をゼロ磁場でも一方向に磁化させることができるため、ゼロ磁場動作と大きな異常ネルンスト係数の両立が可能になる。第2の磁性材料層312の磁性材料としては、Fe-Ga合金、Fe-Al合金、Co2MnGaなどのホイスラー合金、YbMnBi2などの反強磁性体がある。
また、接続体32には、接続体12と同様の材料が用いられるが、SmpCo100-p(0<p≦50)等の希土類系金属間アモルファス磁性合金を用いてもよい。接続体32の磁化方向を多層熱電体31の磁化方向と逆向きにできるならば、接続体32は多層熱電体31と同一の積層体で構成されていても良い。なお、多層熱電体31と接続体32の配置を入れ替えても良い。
一方、基板33には、基板13と同様の材料が用いられる。
接続端子34は、ここでは接続体32と同じ材料が用いられたもので、多層熱電体31の両端に設けられている。接続端子34は多層熱電体31と同一の積層体で構成されていても良い。
なお、図9(a)では、第1の磁性材料層311の材料をMaterial Aと表記し、第2の磁性材料層312の材料をMaterial Cと表記し、接続体32の材料をMaterial Bと表記している。
多層熱電体41は、熱電体11と同様の材料が用いられた第1の磁性材料層412と、熱電体11とは異なる巨大な異常ネルンスト効果を持つ磁性材料が用いられた第2の磁性材料層411とよりなる。図9(b)に示す実施例では、図9(a)に示す実施例と比較すると、第1の磁性材料層412と第2の磁性材料層411の積層順序が逆になっている。
接続体42は、基板43の表面に、各多層熱電体41、41、…に平行に配置されている。隣接する一対の多層熱電体41、41の間に1つの接続体42が配置されており、接続体42は、一方の熱電体1の一端側と他方の熱電体1の他端側とを電気的に接続している。これにより、多層熱電体41は、接続体42によって電気的に直列に接続されている。
本発明の熱電体によれば、フレキシブル基板を含むあらゆる種類の基板上に、室温でマグネトロンスパッタリング法や蒸着法等を用いて製造することができる、希土類系金属間アモルファス磁性合金を用いている。そのため、様々な種類のサーモパイル構造に汎用的に使用することができる。本発明の熱電体は、曲げられる熱電発電機や曲げられる熱流センサの実現にも使用できる。
11、21 熱電体
12 接続体
13、23 基板
14、24 端子
22 逆方向磁化接続体
30、40 多層熱電発電素子
31、41、51 多層熱電体
311、412 第1の磁性材料層
312、411 第2の磁性材料層
32、42 接続体
33、43 基板
34、44 端子
Claims (13)
- 異常ネルンスト効果を利用した外部磁場フリーで動作する熱電発電素子に用いられる、磁性体膜である熱電体であって、
面内方向に磁化容易軸を持ち、アモルファス構造を有し、Sm p Co 100-p (0<p≦40)又はSm p (Fe q Co 100-q ) 100-p (0<p≦40、0≦q≦100)を含むことを特徴とする、熱電体。 - SmpCo100-pにおいて、15≦p≦35であることを特徴とする、請求項1に記載の熱電体。
- Sm p Co 100-p において、20≦p≦30であることを特徴とする、請求項2に記載の熱電体。
- Smp(FeqCo100-q)100-pにおいて、15≦p≦35、5≦q≦45であることを特徴とする、請求項1に記載の熱電体。
- Sm p (Fe q Co 100-q ) 100-p において、20≦p≦30、10≦q≦35であることを特徴とする、請求項4に記載の熱電体。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の熱電体と、
前記熱電体を担持する基板と、を有することを特徴とする、熱電発電素子。 - 面内方向において、大きな保磁力と飽和磁化に対する大きな残留磁化比率とを示す磁化容易軸を持ち、大きな異常ネルンスト効果を示す、Sm p Co 100-p (0<p≦40)又はSm p (Fe q Co 100-q ) 100-p (0<p≦40、0≦q≦100)を含む希土類系金属間アモルファス磁性合金からなる第1の磁性材料層と、
巨大な異常ネルンスト効果を示す、前記希土類系金属間アモルファス磁性合金材料と異なる磁性材料からなる第2の磁性材料層と、の積層構造を有することを特徴とする、
多層熱電体。 - 前記大きな保磁力は、保磁力10mT以上をいい、
前記飽和磁化に対する大きな残留磁化比率は、0.3以上をいい、
前記大きな異常ネルンスト効果は、熱電能1μV/K以上をいい、
前記巨大な異常ネルンスト効果は、熱電能5μV/K以上をいう、
請求項7に記載の多層熱電体。 - 請求項7又は8に記載の多層熱電体と、
前記多層熱電体を担持する基板と、を有することを特徴とする、多層熱電発電素子。 - 請求項6に記載の熱電発電素子を用いた曲げられる熱電発電機。
- 請求項6に記載の熱電発電素子を用いた曲げられる熱流センサ。
- 請求項9に記載の多層熱電発電素子を用いた曲げられる熱電発電機。
- 請求項9に記載の多層熱電発電素子を用いた曲げられる熱流センサ。
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