JP7598486B2 - 内燃機関の点火装置、電子制御装置、及び内燃機関の制御方法 - Google Patents

内燃機関の点火装置、電子制御装置、及び内燃機関の制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、内燃機関の点火装置、電子制御装置、及び内燃機関の制御方法に関する。
近年、排気ガス規制の強化に伴って、内燃機関における排気触媒(三元触媒)の性能向上が求められている。内燃機関の排気触媒では、プラチナなどの高価な貴金属が使用されている。そのため、排気ガス規制が強化されるに従って、排気性能向上のため多くの貴金属を使用する必要があり、排気触媒の製造コストが増加してしまう。
この種の内燃機関では、温度が外気温よりも低い冷機始動時に多量の炭化水素(Hydrocarbon:HC)が発生する。冷機始動時に炭化水素が発生する要因は、主に2つある。1つ目は、筒内温度が低いことにより燃料の気化が遅れて生じる一部の未然燃料が燃焼完了後に気化することである。燃焼完了後に気化した未然燃料は、酸化されないまま炭化水素として排出される。2つ目は、点火時期までに気化される燃料が減り、筒内の空燃比が大きくなる(燃料が希薄化する)ことである。この場合は、要求点火エネルギーが増大して、失火が増えることにより、炭化水素が増える。そのため、冷機始動時の炭化水素の発生を抑えることにより、排気触媒で用いられる貴金属の量を減らし、排気触媒の製造コストを削減することが試みられている。
しかしながら、内燃機関では、冷機始動時の点火装置(点火プラグ)の点火不良(消炎)を防止するため、冷機始動時の燃料の噴射量を多くする(筒内の空燃比を小さくする)制御が行われる。この結果、冷機始動時の炭化水素の発生量が増加し、排気触媒のコスト削減が困難になる。
特許文献1には、内燃機関の1燃焼サイクルにおいて、通常の点火タイミングとは異なるタイミングで複数回の点火不良(消炎)を防止する内燃機関用点火装置が開示されている。このような内燃機関用点火装置においては、点火回数の増加に伴って点火コイルの電力変換量が増加するため、点火コイルの発熱量が増大する。
特許文献1に記載された内燃機関用点火装置は、発熱量の増大に伴う点火コイルの過熱を抑制するために、一つの気筒の一度のサイクル中に点火を目的として二回以上の放電を実行する。この場合は、一回のみ放電を実行する場合と比較して、点火コイルに通電する時間の長さが短縮される。
特開2020-165352号公報
しかしながら、特許文献1に開示された内燃機関点火装置は、点火コイルの温度が所定値未満であるというマルチ点火許可条件が成立すると、点火コイルに通電する時間の長さが短縮される。これにより、主点火の通電時間、すなわち、点火コイルへの充電エネルギーは、一度のサイクル中に一回のみ点火を実行する場合よりも低減してしまう。主点火の充電エネルギーが低減されると、放電時に絶縁破壊できないことや、要求点火エネルギーへ達しないことなどによる、点火不良(消炎)が生じてしまう。そのため、特許文献1に記載された内燃機関点火装置は、マルチ点火許可条件時に点火不良(消炎)が発生し易くなり、炭化水素の発生を抑えることが困難になる。
本発明は、上記の問題点を考慮し、内燃機関の冷機始動時における炭化水素の発生を抑えることを目的とする。
上記課題を解決し、本目的を達成するため、本発明の点火装置は、制御部から出力される点火信号に応じて点火プラグに放電を生じさせる点火コイルと、点火コイルの温度が予め定められた第1の温度以上になると、点火信号を遮断する点火信号遮断回路と、を備える。点火信号は、点火プラグを予熱するための多重点火信号と、多重点火信号とは異なる周波数であり、点火プラグの放電により混合気に点火するための主点火信号と、を有する。点火信号遮断回路は、点火コイルの温度が第1の温度よりも低い第2の温度に達すると、点火信号のうちの多重点火信号を遮断する。
本発明によれば、内燃機関の冷機始動時における炭化水素の発生を抑えることができる。
一実施形態に係る内燃機関の基本構成例を示す全体構成図である。 一実施形態に係る点火プラグを説明する部分拡大図である。 一実施形態に係る内燃機関の制御装置の機能構成を説明する機能ブロック図である。 電極の温度と絶縁破壊電圧と空燃比との関係を説明する図である。 点火コイルを含む電気回路の一例を示す回路図である。 多重点火の放電波形例である。 失火回数と炭化水素排出量の関係を説明する図である。 失火回数と環境温度との関係を示す図である。 炭化水素と環境温度との関係を示す図である。 多重点火と主点火を実行する際の遷移を示す図である。 点火信号の周波数に対する発熱量と着火性の関係を示した概念図である。 多重点火ありの場合と多重点火無しの場合における遷移時間と点火コイルの温度の関係を示した概念図である。 従来の点火コイルの温度とHC濃度の変化を示すタイミングチャートである。 一実施形態に係る点火コイルを含む電気回路の一例を示す回路図である。 一実施形態に係る多重点火ありの場合と通常点火の場合における遷移時間と点火コイルの温度の関係を示した概念図である。 一実施形態に係る点火信号の周波数に対する発熱量と着火性の関係を示した概念図である。 本発明の点火コイルの温度とHC濃度の変化を示すタイミングチャートである。 一実施形態に係る多重点火切替処理を示すフローチャートである。 一実施形態に係る燃料噴射量切替処理を示すフローチャートである。
<実施形態>
以下、実施の形態例にかかる内燃機関制御装置について説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
[内燃機関システム]
まず、一実施形態に係る内燃機関システムの構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の基本構成例を示す全体構成図である。
図1に示す内燃機関100は、単気筒でも複数気筒を有するものでもよいが、実施形態では、4気筒を有する内燃機関100を例示して説明する。
図1に示すように、内燃機関100では、外部から吸引した空気はエアクリーナ110、吸気管111、吸気マニホールド112を通流する。吸気マニホールド112を通った空気は、吸気弁151が開いたときに各気筒150に流入する。各気筒150に流入する空気量は、スロットル弁113により調整される。スロットル弁113で調整された空気量は、流量センサ114により測定される。
スロットル弁113には、スロットルの開度を検出するスロットル開度センサ113aが設けられている。スロットル開度センサ113aで検出されたスロットル弁113の開度情報は、制御装置(Electronic Control Unit:ECU)1に出力される。
本実施形態では、スロットル弁113として、電動機で駆動される電子スロットル弁を適用する。しかし、本発明に係るスロットル弁としては、空気の流量を適切に調整できるものであれば、その他の方式によるものを適用してもよい。
各気筒150に流入した空気の温度は、吸気温センサ115で検出される。
クランクシャフト123に取り付けられたリングギア120の径方向外側には、クランク角センサ121が設けられている。クランク角センサ121は、クランクシャフト123の回転角度を検出する。本実施形態では、クランク角センサ121は、10°毎及び燃焼周期毎のクランクシャフト123の回転角度を検出する。
シリンダヘッドのウォータジャケット(図示せず)には、水温センサ122が設けられている。水温センサ122は、内燃機関100の冷却水の温度を検出する。
また、車両には、アクセルペダル125の変位量(踏み込み量)を検出するアクセルポジションセンサ(Accelerator Position Sensor)126が設けられている。アクセルポジションセンサ126は、運転者の要求トルクを検出する。アクセルポジションセンサ126で検出された運転者の要求トルクは、後述する内燃機関制御装置1に出力される。内燃機関制御装置1は、この要求トルクに基づいて、スロットル弁113を制御する。
燃料タンク130に貯留された燃料は、燃料ポンプ131によって吸引及び加圧される。燃料ポンプ131によって吸引及び加圧された燃料は、燃料配管133に設けられたプレッシャレギュレータ132で所定の圧力に調整される。そして、所定の圧力に調整された燃料は、燃料噴射装置(インジェクタ)134から各気筒150内に噴射される。プレッシャレギュレータ132で圧力調整された後の余分な燃料は、戻り配管(図示せず)を介して燃料タンク130に戻される。
燃料噴射装置134の制御は、後述する内燃機関制御装置1の燃料噴射制御部82(図3参照)の燃料噴射パルス(制御信号)に基づいて行われる。
内燃機関100のシリンダヘッド(図示せず)には、筒内圧センサ(Cylinder Pressure Sensor、燃焼圧センサとも言う)140が設けられている。筒内圧センサ140は、各気筒150内に設けられており、気筒150内の圧力(燃焼圧)を検出する。筒内圧センサ140は、例えば、圧電式又はゲージ式の圧力センサが適用されている。これにより、広い温度領域に渡って気筒150内の筒内圧を検出することができる。
各気筒150には、排気弁152と、排気マニホールド160が取り付けられている。排気弁152が開くと、気筒150から排気マニホールド160に排気ガスが排出される。排気マニホールド160は、燃焼後のガス(排気ガス)を、気筒150の外側に排出する。排気マニホールド160の排気側には、三元触媒161が設けられている。三元触媒161は、排気ガスを浄化する。三元触媒161により浄化された排気ガスは、大気に排出される。
三元触媒161の上流側には、上流側空燃比センサ162が設けられている。上流側空燃比センサ162は、各気筒150から排出された排気ガスの空燃比を連続的(リニア)に検出する。本実施形態の上流側空燃比センサ162は、リニア空燃比センサである。
また、三元触媒161の下流側には、下流側空燃比センサ163が設けられている。下流側空燃比センサ163は、理論空燃比近傍でスイッチ的な検出信号を出力する。本実施形態の下流側空燃比センサ163は、O2センサである。
各気筒150の上部には、点火プラグ200が各々設けられている。点火プラグ200は、放電(点火)により火花を発生させ、その火花が、気筒150内の空気と燃料との混合気に着火する。これにより、気筒150内で爆発が起こり、ピストン170が押し下げられる。ピストン170が押し下げられることにより、クランクシャフト123が回転する。点火プラグ200には、点火プラグ200に供給される電気エネルギー(電圧)を生成する点火コイル300が接続されている。
前述したスロットル開度センサ113a、流量センサ114、クランク角センサ121、アクセルポジションセンサ126、水温センサ122、筒内圧センサ140等の各種センサからの出力信号は、内燃機関制御装置1(以下、「制御装置1」とする)に出力される。制御装置1は、これら各種センサからの出力信号に基づいて、内燃機関100の運転状態を検出する。そして、制御装置1は、気筒150内に吸引する空気量、燃料噴射装置134からの燃料噴射量、点火プラグ200の点火タイミング等の制御を行う。
[点火プラグ]
次に、点火プラグ200について、図2を参照して説明する。
図2は、点火プラグ200を説明する部分拡大図である。
図2に示すように、点火プラグ200は、中心電極210と、外側電極220とを有している。中心電極210は、絶縁体230を介してプラグベース(不図示)に支持されている。これにより、中心電極210は、絶縁されている。外側電極220は接地されている。
点火コイル300(図1参照)において電圧が発生すると、中心電極210に所定の電圧(例えば20,000V~40,000V)が印加される。中心電極210に所定の電圧が印加されると、中心電極210と外側電極220との間で放電(点火)が生じる。そして、放電により発生した火花が、気筒150内の空気と燃料との混合気に着火する。
なお、気筒150内におけるガス成分の絶縁破壊を起こして放電(点火)が発生する電圧は、中心電極210と外側電極220との間に存在する気体(気筒内の混合気)の状態や気筒150の筒内圧に応じて変動する。この放電が発生する電圧を絶縁破壊電圧と言う。
点火プラグ200の放電制御(点火制御)は、後述する制御装置1の点火制御部83(図3参照)により行われる。
[制御装置のハードウェア構成]
次に、制御装置1のハードウェアの全体構成を説明する。
図1に示すように、制御装置1は、アナログ入力部10と、デジタル入力部20と、A/D(Analog/Digital)変換部30と、RAM(Random Access Memory)40と、MPU(Micro-Processing Unit)50と、ROM(Read Only Memory)60と、I/O(Input/Output)ポート70と、出力回路80と、を有する。
アナログ入力部10には、スロットル開度センサ113a、流量センサ114、アクセルポジションセンサ126、上流側空燃比センサ162、下流側空燃比センサ163、筒内圧センサ140、水温センサ122等の各種センサからのアナログ出力信号が入力される。
アナログ入力部10には、A/D変換部30が接続されている。アナログ入力部10に入力された各種センサからのアナログ出力信号は、ノイズ除去等の信号処理が行われた後、A/D変換部30でデジタル信号に変換される。そして、A/D変換部30により変換されたデジタル信号は、RAM40に記憶される。
デジタル入力部20には、クランク角センサ121からのデジタル出力信号が入力される。
デジタル入力部20には、I/Oポート70が接続されている。デジタル入力部20に入力されたデジタル出力信号は、I/Oポート70を介してRAM40に記憶される。
RAM40に記憶された各出力信号は、MPU50で演算処理される。
MPU50は、ROM60に記憶された制御プログラム(図示せず)を実行することで、RAM40に記憶された出力信号を、制御プログラムに従って処理する。MPU50は、制御プログラムに従って、内燃機関100を駆動する各アクチュエータ(例えば、スロットル弁113、プレッシャレギュレータ132、点火プラグ200等)の作動量を規定する制御値を算出し、その制御値をRAM40に一時的に記憶する。
RAM40に記憶されたアクチュエータの作動量を規定する制御値は、I/Oポート70を介して出力回路80に出力される。
出力回路80には、全体制御部81、燃料噴射制御部82、点火制御部83などの機能が設けられている(図3参照)。全体制御部81は、各種センサ(例えば、筒内圧センサ140)からの出力信号に基づいて内燃機関の全体制御を行う。燃料噴射制御部82は、燃料噴射装置134のプランジャロッド(不図示)の駆動を制御する。点火制御部83は、点火プラグ200に印加する電圧を制御する。
[制御装置の機能ブロック]
次に、制御装置1の機能構成を、図3を参照して説明する。
図3は、制御装置1の機能構成を説明する機能ブロック図である。
制御装置1の各機能は、MPU50がROM60記憶された制御プログラムを実行することにより、出力回路80における各種機能として実現される。出力回路80における各種機能は、例えば、燃料噴射制御部82による燃料噴射装置134の制御や、点火制御部83による点火プラグ200の放電制御がある。
図3に示すように、制御装置1の出力回路80は、全体制御部81と、燃料噴射制御部82と、点火制御部83とを有する。
[全体制御部]
全体制御部81は、アクセルポジションセンサ126と、筒内圧センサ140に接続されている。全体制御部81は、アクセルポジションセンサ126からの要求トルク(加速信号S1)と、筒内圧センサ140からの出力信号S2とを受け付ける。
全体制御部81は、アクセルポジションセンサ126からの要求トルク(加速信号S1)と、筒内圧センサ140からの出力信号S2とに基づいて、燃料噴射制御部82と、点火制御部83の全体的な制御を行う。
[燃料噴射制御部]
燃料噴射制御部82は、内燃機関100の各気筒150を判別する気筒判別部84と、クランクシャフト123のクランク角を計測する角度情報生成部85と、エンジン回転数を計測する回転数情報生成部86と、に接続されている。燃料噴射制御部82は、気筒判別部84からの気筒判別情報S3と、角度情報生成部85からのクランク角度情報S4と、回転数情報生成部86からのエンジン回転数情報S5と、を受け付ける。
また、燃料噴射制御部82は、気筒150内に吸気される空気の吸気量を計測する吸気量計測部87と、エンジン負荷を計測する負荷情報生成部88と、エンジン冷却水の温度を計測する水温計測部89と、に接続されている。燃料噴射制御部82は、吸気量計測部87からの吸気量情報S6と、負荷情報生成部88からのエンジン負荷情報S7と、水温計測部89からの冷却水温度情報S8と、を受け付ける。
燃料噴射制御部82は、受け付けた各情報に基づいて、燃料噴射装置134から噴射される燃料の噴射量と噴射時間を算出する。そして、燃料噴射制御部82は、算出した燃料の噴射量と噴射時間とに基づいて生成した燃料噴射パルスS9を燃料噴射装置134に送信する。
[点火制御部]
点火制御部83は、全体制御部81のほか、気筒判別部84と、角度情報生成部85と、回転数情報生成部86と、負荷情報生成部88と、水温計測部89とに接続されており、これらからの各情報を受け付ける。
点火制御部83は、受け付けた各情報に基づいて、点火コイル300の1次側コイル310(図5参照)に通電する電流量と、通電開始時間(通電角)と、1次側コイル310に通電した電流を遮断する時間(点火時間)を算出する。
点火制御部83は、算出した通電量と、通電開始時間と、点火時間とに基づいて、点火コイル300の1次側コイル310に点火信号SAを出力することで、点火プラグ200による放電制御(点火制御)を行う。
[電極の温度と絶縁破壊電圧と空燃比]
次に、点火プラグ200の電極の温度と絶縁破壊電圧と空燃比との関係について、図4を参照して説明する。
図4は、点火プラグの電極の温度と絶縁破壊電圧と空燃比との関係を説明する図である。
内燃機関100の冷機始動時において、点火プラグ200の電極の温度が低くなるほど、着火に必要な空燃比を小さく(燃料を濃く)する必要がある。
図4に示すように、内燃機関100では、空燃比が大きく(燃料が薄く)なるほど、放電(点火)による混合気への着火がされ難くなる。したがって、空燃比が大きく(燃料が薄く)なるほど、混合気に着火させるための絶縁破壊電圧を高くする必要がある。
たとえば、絶縁破壊電圧を一定(点火コイル300の出力電流を一定)にした場合は、点火プラグ200の電極の温度が低くなるほど、空燃比を小さく(燃料を濃く)しないと絶縁破壊電圧を越えることができない。その結果、内燃機関100では、混合気における燃料の割合が多くなった分、燃焼した際の炭化水素(HC)の発生が多くなる。
換言すれば、冷機始動時における点火プラグ200の電極の温度を高くするほど(図4の太線矢印参照)混合気に着火させるための絶縁破壊電圧は低くなるので、空燃比を大きく(燃料を薄く)しても絶縁破壊電圧を越えることができる。その結果、燃焼した際の炭化水素の発生を少なくすることができる。そこで、内燃機関100では、冷機始動時における点火プラグ200の電極の温度を、放電(点火)前に高めておくようにするとよい。これにより、冷機始動時の空燃比を大きくして、炭化水素(HC)の発生を抑えることができる。
図4に示すように、点火プラグ200の電極温度が低い場合において、所定の絶縁破壊電圧で着火させるための空燃比はP1である。一方、点火プラグ200の電極温度が高い場合において、所定の絶縁破壊電圧で着火させるための空燃比はP1よりも大きいP2となる(P2>P1)。よって、点火プラグ200の電極温度が高くなるほど、着火に必要な燃料を薄くすることができ、燃焼により発生する炭化水素(HC)が少なくなる。
[点火コイルを含む電気回路]
次に、点火コイルを含む電気回路について、図5を参照して説明する。
図5は、点火コイルを含む電気回路を説明する図である。
図5に示す電気回路500は、点火コイル300を有している。点火コイル300は、所定の巻き数で巻かれた1次側コイル310と、1次側コイル310よりも多い巻き数で巻かれた2次側コイル320と、を含んで構成される。
1次側コイル310の一端は、直流電源330に接続されている。これにより、1次側コイル310には、所定の電圧(例えば12V)が印加される。1次側コイル310の他端は、イグナイタ(通電制御回路)340のドレイン(D)端子に接続されており、イグナイタ340を介して接地されている。イグナイタ340には、トランジスタや電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)などが用いられる。
イグナイタ340のゲート(G)端子は、温度スイッチ部350を介して点火制御部83に接続されている。温度スイッチ部350は、点火コイル300の過熱による破損防止を目的として設置されている。温度スイッチ部350は、温度検出部351を備えている。温度検出部351は、イグナイタ340を介して点火コイル300の温度を検出する。温度スイッチ部350は、温度検出部351が検出した温度が予め定めた閾値A(第1の温度)以上になると、点火制御部83からイグナイタ340へ出力された点火信号SAを遮断する。
温度スイッチ部350が点火信号SAを遮断すると、1次側コイル310への通電が停止するため、イグナイタ340の過熱を回避できる。温度検出部351が検出した温度が第1の温度未満の場合に点火制御部83から出力された点火信号SAは、イグナイタ340のゲート(G)端子に入力される。
イグナイタ340のゲート(G)端子に点火信号SAが入力されると、イグナイタ340のドレイン(D)端子とソース(S)端子間が通電状態となり、ドレイン(D)端子とソース(S)端子間に電流が流れる。これにより、点火制御部83からイグナイタ340を介して点火コイル300の1次側コイル310に点火信号SAが出力される。その結果、1次側コイル310に電流が流れて電力(電気エネルギー)が蓄積される。
点火制御部83からの点火信号SAの出力が停止すると、1次側コイル310に流れる電流が遮断される。その結果、1次側コイル310に対するコイルの巻き数比に応じた高電圧が2次側コイル320に発生する。
2次側コイル320に発生する高電圧は、点火プラグ200の中心電極210(図2参照)に印加される。これにより、点火プラグ200の中心電極210と、外側電極220との間に電位差が発生する。この中心電極210と外側電極220との間に発生した電位差が、ガス(気筒150内の混合気)の絶縁破壊電圧Vm以上になると、ガス成分が絶縁破壊されて中心電極210と外側電極220との間に放電が生じる。その結果、燃料(混合気)への点火(着火)が行われる。点火プラグ200と、点火コイル300を有する電気回路500は、本発明に係る点火機関に対応する。
中心電極210と外側電極220の間に発生する放電経路は、数千℃の高温となる。放電経路は、周囲ガスと電極210,220に接しているため、放電の発熱エネルギーは、周囲ガスと電極210,220へ分配される。そして、周囲ガスへ分配された分の発熱エネルギーは、周囲ガスを加熱して着火を促進する。
[多重点火の放電波形]
次に、多重点火の放電波形について、図6を参照して説明する。
図6は、多重点火の放電波形例である。
図6に示すように、通常の点火時期の放電(放電開始)後に、点火信号のONとOFFを繰り返すことで、複数回の放電を追加して多重点火を行うことができる。この追加放電による多重点火は、少なくとも燃料噴射開始まで継続できる。
[空燃比と要求点火エネルギー]
次に、失火回数と炭化水素排出量について、図7~図9を参照して説明する。
図7は、失火回数と炭化水素排出量の関係を説明する図である。図8は、失火回数と環境温度との関係を示す図である。図9は、炭化水素と環境温度との関係を示す図である。
図7に示すように、失火回数と炭化水素排出量の間には、1次元の相関関係がある。つまり、冷機始動における炭化水素の発生原因は、失火である。失火は、点火によって生成した火炎核が成長できず、消炎した際に生じる。火炎核を成長させるためには、電路や火炎核から電極へ伝わる熱量を抑制する必要がある。
点火装置において多重点火を実行して、点火プラグ200の電極を予め加熱しておくと、電路および火炎核と電極間の温度差が縮小する。その結果、電路や火炎核から電極へ伝わる熱量を抑制することができる。したがって、図8に示すように、環境温度が高いほど失火回数を低減することができる。そして、図9に示すように、環境温度が高いほど炭化水素排出量を低減することができる。
[点火信号の周波数と点火コイルの温度]
次に、点火信号SAの周波数と点火コイルの温度の関係について、図10~図13を参照して説明する。
図10は、多重点火と主点火を実行する際の遷移を示す図である。図11は、点火信号の周波数に対する発熱量と着火性の関係を示した概念図である。図12は、多重点火ありの場合と多重点火無しの場合における遷移時間と点火コイルの温度の関係を示した概念図である。図13は、従来の点火コイルの温度とHC濃度の変化を示すタイミングチャートである。
本実施形態において実行する多重点火は、主点火前に点火プラグ200の電極を予熱することが目的である。そのため、多重点火は、主点火の前に実施される。また、多重点火は、予熱点火とも言える。図10に示すように、主点火は、1放電当たりの点火エネルギーを増やすことで、着火性を向上できる。一方、多重点火による予熱は、単位時間当たりの点火エネルギーを増やすことで電極加熱量を向上できる。
点火プラグ200における電極の予熱には、点火回数の制限はない。そのため、複数の点火を行うことで、点火コイル300の電力変換量を増加できる。したがって、点火プラグ200における電極の予熱には、多重点火制御が必要となる。そして、多重点火は、主点火と比べて、点火信号SAの周波数を高くする必要がある。すなわち、点火制御部83(図3参照)は、主点火を実行させるための主点火信号と、多重点火(予熱点火)を実行させるための多重点火信号を出力する。多重点火信号は、主点火信号よりも周波数が高い。
図11に示すように、点火信号の周波数を増やすと、点火プラグ200における電極の発熱量が増える。その結果、点火プラグ200の着火性が向上する。図12に示すように、主点火のみの通常点火と比べて、多重点火(予熱点火)の発熱量は大きい。そのため、多重点火を行う場合は、点火コイル300の温度が短時間で耐熱温度の上限に達してしまう。
冷機始動における炭化水素を低減するためには、暖機が完了するまでの期間(例えば、60秒程)に、多重点火を実行する必要がある。しかし、冷却始動時に多重点火を実行すると、暖機が完了するよりも前に点火コイル300の温度が耐熱温度の上限に達してしまう。そして、図13に示すように、温度検出部351(図5参照)が検出した温度が予め定めた閾値A(第1の温度)以上になると、点火制御部83からイグナイタ340への点火信号を遮断する。これにより、失火が発生して、炭化水素の排出量が増大する。
[点火コイルを含む電気回路]
次に、本発明に係る点火コイルを含む電気回路について、図14を参照して説明する。
図14は、本発明に係る点火コイルを含む電気回路の一例を示す回路図である。
図14に示すように、本発明に係る電気回路501は、点火コイル300を有している。点火コイル300は、所定の巻き数で巻かれた1次側コイル310と、1次側コイル310よりも多い巻き数で巻かれた2次側コイル320と、を含んで構成される。
1次側コイル310の一端は、直流電源330に接続されている。これにより、1次側コイル310には、所定の電圧(例えば12V)が印加される。1次側コイル310の他端は、イグナイタ(通電制御回路)340のドレイン(D)端子に接続されており、イグナイタ340を介して接地されている。イグナイタ340には、トランジスタや電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)などが用いられる。
イグナイタ340のゲート(G)端子は、温度スイッチ部360又は温度スイッチ部360とフィルタ部370を介して点火制御部83に接続されている。フィルタ部370は、例えば、ローパスフィルタである。フィルタ部370は、低周波である主点火信号を通過させる。そして、フィルタ部370は、高周波である多重点火信号を遮断する。
周波数の検出方法としては、例えば、カウンタ回路でカウントしたパルス幅を基に判定する方法を採用することができる。この方法を採用する場合は、デジタル処理となるため、点火ノイズの影響を受け難くすることができる。
温度スイッチ部360は、点火コイル300の過熱による破損防止を目的として設置されている。温度スイッチ部360は、温度検出部351を備えている。温度スイッチ部360は、温度検出部351が検出した温度の領域(低温域、中温域、高温域)に応じて接続先を切り替える。
低温域である場合に、温度スイッチ部360は、点火制御部83とイグナイタ340を直結する。これにより、点火制御部83から出力された多重点火信号及び主点火信号は、イグナイタ340へ伝達される。
高温域は、上述した閾値A(第1の温度)以上の領域である。高温域である場合に、温度スイッチ部360は、点火制御部83とイグナイタ340の接続を切断する。これにより、点火制御部83から出力された多重点火信号及び主点火信号は、イグナイタ340へ伝達されない。
中温域は、予め定められた閾値B(第2の温度)以上閾値A(第1の温度)未満の領域である。中温域である場合に、温度スイッチ部360は、フィルタ部370を介して点火制御部83とイグナイタ340を接続する。これにより、点火制御部83から出力された高周波である多重点火信号は、フィルタ部370によって遮断される。一方、点火制御部83から出力された低周波である主点火信号は、フィルタ部370を通過して、イグナイタ340へ伝達される。
中温域は、低温域と比べて、点火コイルと周囲温度との温度差が大きいため、点火コイルの冷却効率が上昇する。そのため、温度検出部351により温度を検出して、閾値B以上となる中温域に達するまで主点火と多重点火(予熱点火)を繰り返す場合は、温度検出部351を設けずに、推定した低温域で主点火と多重点火を繰り返すよりも、多重点火を実行する期間を長くすることができる。なお、低温域は、エンジンの水温や吸気温度と点火信号(通電量)などで間接的に推定することが可能である。
温度検出部351によって検出した温度が、予め定めた閾値A(第1の温度)未満の場合に、点火制御部83から出力された点火信号SA(主点火信号のみ、又は主点火信号と多重点火信号)は、イグナイタ340のゲート(G)端子に入力される。イグナイタ340のゲート(G)端子に点火信号SAが入力されると、イグナイタ340のドレイン(D)端子とソース(S)端子間が通電状態となり、ドレイン(D)端子とソース(S)端子間に電流が流れる。これにより、点火制御部83からイグナイタ340を介して点火コイル300の1次側コイル310に点火信号SAが出力される。その結果、1次側コイル310に電流が流れて電力(電気エネルギー)が蓄積される。
点火制御部83からの点火信号SAの出力が停止すると、1次側コイル310に流れる電流が遮断される。その結果、1次側コイル310に対するコイルの巻き数比に応じた高電圧が2次側コイル320に発生する。
2次側コイル320に発生する高電圧は、点火プラグ200の中心電極210(図2参照)に印加される。これにより、点火プラグ200の中心電極210と、外側電極220との間に電位差が発生する。この中心電極210と外側電極220との間に発生した電位差が、ガス(気筒150内の混合気)の絶縁破壊電圧Vm以上になると、ガス成分が絶縁破壊されて中心電極210と外側電極220との間に放電が生じる。その結果、燃料(混合気)への点火(着火)が行われる。点火プラグ200と、点火コイル300を有する電気回路500は、本発明に係る点火装置に対応する。
中心電極210と外側電極220の間に発生する放電経路は、数千℃の高温となる。放電経路は、周囲ガスと電極210,220に接しているため、放電の発熱エネルギーは、周囲ガスと電極210,220へ分配される。そして、周囲ガスへ分配された分の発熱エネルギーは、周囲ガスを加熱して着火を促進する。
図14に示すように、点火制御部83は、通電制御回路831と、出力モニタ回路832とを有する。通電制御回路831は、点火信号SAの出力を制御する。出力モニタ回路832は、通電制御回路831から出力された点火信号SAを検出して、検出結果を通電制御回路831に送信する。
通電制御回路831は、点火信号SAの指示出力値と、出力モニタ回路832から得た出力結果である検出値を比較し、指示出力値と検出値が異なる場合に、フィルタ部370において多重点火信号が遮断されたと判定する。そして、燃料噴射制御部82(図3参照)は、多重点火信号が遮断された場合に、着火性低下分を補うために燃料噴射量を増やす。
[多重点火制御のメカニズム]
次に、多重点火制御のメカニズムについて、図15~図17を参照して説明する。
図15は、本発明における多重点火ありの場合と多重点火無しの場合における遷移時間と点火コイルの温度の関係を示した概念図である。図16は、本発明における点火信号の周波数に対する発熱量と着火性の関係を示した概念図である。図17は、本発明の点火コイルの温度とHC濃度の変化を示すタイミングチャートである。
上述したように、冷機始動では、炭化水素を低減するために、暖機が完了するまで(例えば、60秒程度)多重点火を実行する必要がある。しかし、多重点火(予熱点火)は、通常点火と比べて点火コイル300の発熱量が大きいため、短時間で点火コイル300の温度が、耐熱温度の上限(閾値A)に達する。したがって、冷機始動において多重点火を実行し続けると、暖機が完了する前に点火コイル300の温度が耐熱温度の上限(閾値A)に達してしまう。
点火コイル300の温度が耐熱温度の上限(閾値A)に達すると、温度スイッチ部360(図14参照)により点火信号SAが遮断されて、失火が生じる。これにより、炭化水素の抑制効果を十分に得られない。また、点火コイル300の温度が耐熱温度の上限(閾値A)に達すると、点火コイル300の破損や劣化が生じることがある。
そこで、本実施形態では、新たに閾値Bを設定し、閾値B以上閾値A未満を中温域とした。そして、温度検出部351で検出した温度が中温域である場合に、温度スイッチ部360は、点火信号SAがフィルタ部370を通過する経路を選択する。フィルタ部370は、点火信号SAのうちの多重点火信号を遮断し、主点火信号のみを通過させる。その結果、主点火信号のみがイグナイタ340に伝達され、点火プラグ200の予熱が停止される。したがって、失火を抑制することができ、炭化水素の発生を抑制することができる。
図15に示すように、点火プラグ200の予熱が停止されると、点火コイル300は、その周囲との温度差があることで冷却される。これにより、温度検出部351で検出した温度が低温域に戻る。その結果、温度スイッチ部360は、点火信号SAがフィルタ部370を通過しないでイグナイタ340に伝達される経路を選択する。したがって、図17に示すように、失火を抑制しながら多重点火を繰り返すことができ、炭化水素の発生を抑制することができる。
図16に示すように、点火信号SAの周波数を増やすと、点火コイル300の発熱量が増えて、混合気の着火性が向上する。しかし、温度検出部351で検出した温度が閾値B以上(中温域)になると、主点火のみが実行されるため、一時的に点火コイル300の発熱量と混合気の着火性が低下する。このとき、混合気の着火性が低下した分を補うために、燃料噴射量を増やすとよい。
例えば、冷機始動時ではない通常時の燃料噴射量をTとする。冷機始動時は、混合気の着火性を改善するために、通常時よりも燃料噴射量を増量する。この増量分をaとすると、冷機始動時の燃料噴射量は、T+aとなる。そして、冷機始動時に多重点火(予熱点火)を行うことにより、燃料噴射量を減量しても着火性を維持できる。この減量分をbとすると、多重点火を実行する場合の燃料噴射量は、T+a-bとなる。
主点火のみが実行される場合は、多重点火が実行される場合に減量した分の燃料量を増やして、燃料噴射量をT+aにする。これにより、炭化水素の発生は微量で増加する(図17参照)。しかし、燃料噴射量をT+aにすることで、失火を防げるため、全体として炭化水素の発生を抑制することができる。また、多重点火を実行する場合の燃料噴射量を、主点火のみが実行される場合の燃料噴射量から減量することにより、炭化水素の排出量を低減することができる。
[多重点火切替処理]
次に、本実施形態に係る多重点火切替処理について、図18を参照して説明する。
図18は、多重点火切替処理の例を示すフローチャートである。
多重点火切替処理を開始すると、点火制御部83(図3参照)は、エンジン始動から現在まで経過した時間を取得する。そして、点火制御部83は、エンジン始動から現在まで経過した時間が、予め定めた規定値以内であるか否かを判定する(S110)。予め定めた規定値は、上述した暖機が完了するまでの期間に相当する。
ステップS110において、エンジン始動から現在まで経過した時間が、予め定めた規定値以内でないと判定したとき(S110がNO判定の場合)、点火制御部83は、多重点火切替処理を終了する(S120)。
一方、ステップS110において、エンジン始動から現在まで経過した時間が、予め定めた規定値以内であると判定したとき(S110がYES判定の場合)、温度スイッチ部360は、温度検出部351により検出された温度(以下、「コイル温度」とする)が予め定められた閾値A以上であるか否かを判定する(S130)。
ステップS130において、コイル温度が予め定められた閾値A以上であると判定したとき(S130がYES判定の場合)、温度スイッチ部360は、点火信号SAを遮断する経路を選択する(S140)。これにより、点火制御部83から出力された点火信号SAは、イグナイタ340に伝達されず、点火プラグ200による着火が停止される。ステップS140の処理後、点火制御部83は、処理をステップS110に移す。
一方、ステップS130において、コイル温度が予め定められた閾値A以上でないと判定したとき(S130がNO判定の場合)、温度スイッチ部360は、コイル温度が予め定められた閾値B以上であるか否かを判定する(S150)。
ステップ150において、コイル温度が予め定められた閾値B以上であると判定したとき(S150がYES判定の場合)、温度スイッチ部360は、点火信号SAがフィルタ部370を通過する経路を選択する(S160)。これにより、点火信号SAにおける多重点火信号がフィルタ部370によって遮断され、主点火信号のみがイグナイタ340に伝達される。その結果、点火プラグ200では、予熱を目的とした点火が行われず、主点火のみが行われる。ステップS160の処理後、点火制御部83は、処理をステップS110に移す。
一方、ステップ150において、コイル温度が予め定められた閾値B以上でないと判定したとき(S150がNO判定の場合)、温度スイッチ部360は、点火信号SAがフィルタ部370を通過せずにイグナイタ340へ伝達される経路を選択する(S170)。これにより、点火信号SAにおける多重点火信号及び主点火信号がイグナイタ340に伝達される。その結果、点火プラグ200では、予熱を目的とした点火と、主点火とが行われる。ステップS170の処理後、点火制御部83は、処理をステップS110に移す。
[燃料噴射量切替処理]
次に、本実施形態に係る燃料噴射量切替処理について、図19を参照して説明する。
図19は、燃料噴射量切替処理の例を示すフローチャートである。
燃料噴射量切替処理を開始すると、燃料噴射制御部82(図3参照)は、エンジン始動から現在まで経過した時間を取得する。そして、燃料噴射制御部82は、エンジン始動から現在まで経過した時間が、予め定めた規定値以内であるか否かを判定する(S210)。予め定めた規定値は、上述した暖機が完了するまでの期間に相当する。
ステップS210において、エンジン始動から現在まで経過した時間が、予め定めた規定値以内でないと判定したとき(S210がNO判定の場合)、点火制御部83は、燃料噴射量切替処理を終了する(S220)。
一方、ステップS210において、エンジン始動から現在まで経過した時間が、予め定めた規定値以内であると判定したとき(S210がYES判定の場合)、点火制御部83は、多重点火信号を含む点火信号SAを出力する(S230)。次に、点火制御部83は、点火信号SAの指示出力値と、出力モニタ回路832から得た検出値が異なるか否かを判定する(S240)。
ステップS240において、点火信号SAの指示出力値と検出値が異なると判定したとき(S240がYES判定の場合)、燃料噴射制御部82は、燃料噴射量を第1燃料噴射量に設定する(S250)。点火制御部83は、点火信号SAの指示出力値と検出値が異なる場合に、フィルタ部370が多重点火信号を遮断したと判断する。そして、点火制御部83は、多重点火信号が遮断されたことを示す遮断情報を燃料噴射制御部82に送る。燃料噴射制御部82は、遮断情報を受けた場合に、点火信号SAの指示出力値と検出値が異なることを検知する。ステップS250の処理後、燃料噴射制御部82は、処理をステップS210に移す。
一方、ステップS240において、点火信号SAの指示出力値と検出値が一致すると判定したとき(S240がNO判定の場合)、燃料噴射制御部82は、燃料噴射量を第2燃料噴射量に設定する(S260)。点火制御部83は、点火信号SAの指示出力値と検出値が一致する場合に、多重点火信号がイグナイタ340に伝達されたと判断する。ステップS260の処理後、燃料噴射制御部82は、処理をステップS210に移す。
第1燃料噴射量は、冷機始動時に多重点火信号が遮断された場合の燃料噴射量である。第1燃料噴射量は、上述したT+aに相当する。一方、第2燃料噴射量は、冷機始動時に多重点火信号がイグナイタ340に伝達された場合の燃料噴射量である。第2燃料噴射量は、上述したT+a-bに相当する。したがって、第2燃料噴射量は、第1燃料噴射量よりも少ない。
このように、本実施形態に係る点火装置は、点火制御部83(制御部)から出力される点火信号SAに応じて点火プラグ200に放電を生じさせる点火コイル300と、点火コイル300の温度が予め定められた閾値A(第1の温度)以上になると、点火信号SAを遮断する温度スイッチ部360(点火信号遮断回路)とを備える。点火信号SAは、点火プラグ200を予熱するための多重点火信号と、多重点火信号とは異なる周波数であり、点火プラグ200の放電により混合気に点火するための主点火信号とを有する。フィルタ部370(点火信号遮断回路)は、点火コイル300の温度が閾値Aよりも低い閾値B(第2の温度)に達すると、点火信号SAのうちの多重点火信号を遮断する。これにより、失火を抑制しながら多重点火を繰り返すことができ、炭化水素の発生を抑制することができる。
また、温度スイッチ部360(スイッチ部)とフィルタ部370は、本発明に係る点火信号遮断回路を構成する。フィルタ部370は、主点火信号を通過させ、多重点火信号を遮断する。温度スイッチ部360は、点火コイル300が閾値A(第1の温度)以上である場合に点火信号SAを遮断する経路を選択する。また、温度スイッチ部360は、点火コイル300が閾値B(第2の温度)に達した場合にフィルタ部370を通過する経路を選択する。さらに、温度スイッチ部360は、閾値B未満である場合にフィルタ部370を通過しない経路を選択する。これにより、点火コイル300の温度が閾値Bに達したときに、簡単な回路構成で多重点火信号を遮断することができる。
また、温度スイッチ部360(スイッチ部)は、点火コイル300の温度を検出する温度検出部351を有する。これにより、温度検出部を温度スイッチ部360とは別に設ける場合よりも、点火装置を簡単な構成にすることができる。また、既存の温度検出部付きの温度スイッチを適用することができ、コスト削減を図ることができる。
また、制御装置1(電子制御装置)は、上述の点火装置に点火信号SAを出力する全体制御部81(制御部)を有する。全体制御部81は、点火装置が点火信号SAのうちの多重点火信号を遮断した場合に、多重点火信号及び主点火信号に応じて点火プラグ200に放電を生じさせる場合よりも、燃料噴射量を増加させる。これにより、多重点火信号を遮断しているときの失火を防ぐことができ、炭化水素の発生を抑制することができる。
また、全体制御部81(制御部)は、出力した点火信号を検出する出力モニタ回路832と、通電制御回路831とを有する。通電制御回路831は、出力モニタ回路832により検出された点火信号SAの検出値と、点火信号SAの指示出力値とを比較して、点火装置が点火信号SAのうちの多重点火信号を遮断したことを検知する。これにより、点火信号SAを検出する検出部と、その検出結果を全体制御部81の送信する送信部を点火装置に設ける必要が無い。その結果、点火装置のコスト削減を図ることができる。
通電制御回路831
また、上述の点火装置を備える内燃機関100の制御方法は、点火コイル300の温度を検出する温度検出ステップと、多重点火信号遮断ステップとを備える。多重点火信号遮断ステップは、点火コイル300の温度が閾値A(第1の温度)よりも低い閾値B(第2の温度)に達すると、点火信号SAのうちの多重点火信号を遮断する。これにより、失火を抑制しながら多重点火を繰り返すことができ、炭化水素の発生を抑制することができる。
また、内燃機関100の制御方法は、多重点火信号遮断ステップが実行された場合に、燃料噴射量を増加させる燃料補正ステップを備える。これにより、多重点火信号を遮断しているときの失火を防ぐことができ、炭化水素の発生を抑制することができる。
本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
また、上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1…内燃機関制御装置、 10…アナログ入力部、 20…デジタル入力部、 30…A/D変換部、 40…RAM、 50…MPU、 60…ROM、 70…I/Oポート、 80…出力回路、 81…全体制御部、 82…燃料噴射制御部、 83…点火制御部、 84…気筒判別部、 85…角度情報生成部、 86…回転数情報生成部、 87…吸気量計測部、 88…負荷情報生成部、 89…水温計測部、 100…内燃機関、 110…エアクリーナ、 111…吸気管、 112…吸気マニホールド、 113…スロットル弁、 113a…スロットル開度センサ、 114…流量センサ、 115…吸気温センサ、 120…リングギア、 121…クランク角センサ、 122…水温センサ、 123…クランクシャフト、 125…アクセルペダル、 126…アクセルポジションセンサ、 130…燃料タンク、 131…燃料ポンプ、 132…プレッシャレギュレータ、 133…燃料配管、 134…燃料噴射装置、 140…筒内圧センサ、 150…気筒、 151…吸気弁、 152…排気弁、 160…排気マニホールド、 161…三元触媒、 162…上流側空燃比センサ、 163…下流側空燃比センサ、 170…ピストン、 200…点火プラグ、 210…中心電極、 220…外側電極、 230…絶縁体、 300…点火コイル、 310…1次側コイル、 320…2次側コイル、 330…直流電源、 340…イグナイタ、350,360…温度スイッチ部、 351…温度検出部、 370…フィルタ部 500,501…電気回路、 831…通電制御回路、 832…出力モニタ回路

Claims (7)

  1. 制御部から出力される点火信号に応じて点火プラグに放電を生じさせる点火コイルと、
    前記点火コイルの温度が予め定められた第1の温度以上になると、前記点火信号を遮断する点火信号遮断回路と、を備え
    前記点火信号は、前記点火プラグを予熱するための多重点火信号と、前記多重点火信号とは異なる周波数であり、前記点火プラグの放電により混合気に点火するための主点火信号と、を有し、
    前記点火信号遮断回路は、前記点火コイルの温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度に達すると、前記点火信号のうちの前記多重点火信号を遮断する
    内燃機関の点火装置。
  2. 前記点火信号遮断回路は、
    前記主点火信号を通過させ、前記多重点火信号を遮断するフィルタ部と、
    前記点火コイルが前記第1の温度以上である場合に前記点火信号を遮断する経路を選択し、前記点火コイルが前記第2の温度に達した場合に前記フィルタ部を通過する経路を選択し、前記第2の温度未満である場合に前記フィルタ部を通過しない経路を選択するスイッチ部と、を有する
    請求項1に記載の内燃機関の点火装置。
  3. 前記スイッチ部は、前記点火コイルの温度を検出する温度検出部を有する
    請求項2に記載の内燃機関の点火装置。
  4. 点火装置に点火信号を出力する制御部を有する電子制御装置において、
    前記点火装置は、
    制御部から出力される点火信号に応じて点火プラグに放電を生じさせる点火コイルと、
    前記点火コイルが予め定められた第1の温度以上になると、前記点火信号を遮断する点火信号遮断回路と、備え
    前記点火信号は、前記点火プラグを予熱するための多重点火信号と、前記多重点火信号とは異なる周波数であり、前記点火プラグの放電により混合気に点火するための主点火信号と、を有し、
    前記点火信号遮断回路は、前記第1の温度よりも低い第2の温度に達すると、前記点火信号のうちの前記多重点火信号を遮断し、
    前記制御部は、前記点火装置が前記点火信号のうちの前記多重点火信号を遮断した場合に、前記多重点火信号及び前記主点火信号に応じて前記点火プラグに放電を生じさせる場合よりも、燃料噴射量を増加させる
    電子制御装置。
  5. 前記制御部は、
    出力した点火信号を検出する出力モニタ回路と、
    前記出力モニタ回路により検出された点火信号の検出値と、点火信号の指示出力値とを比較して、前記点火装置が前記点火信号のうちの前記多重点火信号を遮断したことを検知する通電制御回路と、を有する
    請求項4記載の電子制御装置。
  6. 制御部から出力される点火信号に応じて点火プラグに放電を生じさせる点火コイルと、前記点火コイルの温度が予め定められた第1の温度以上になると、前記点火信号を遮断する点火信号遮断回路と、備え、前記点火信号は、前記点火プラグを予熱するための多重点火信号と、前記多重点火信号とは異なる周波数であり、前記点火プラグの放電により混合気に点火するための主点火信号と、を有する点火装置を備える内燃機関の制御方法であって、
    前記点火コイルの温度を検出する温度検出ステップと、
    前記点火コイルの温度が前記第1の温度よりも低い第2の温度に達すると、前記点火信号のうちの前記多重点火信号を遮断する多重点火信号遮断ステップと、を備える
    内燃機関の制御方法。
  7. 前記多重点火信号遮断ステップが実行された場合に、燃料噴射量を増加させる燃料補正ステップを備える
    請求項6に記載の内燃機関の制御方法。
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