以下、本発明の実施形態にかかる内燃機関用制御装置を説明する。
以下、本発明の一実施形態にかかる内燃機関用制御装置の一態様である制御装置1を説明する。この実施の形態では、制御装置1により、4気筒の内燃機関100の各気筒150に各々設けられた点火プラグ200の放電(点火)を制御する場合を例示して説明する。
以下、実施の形態において、内燃機関100の一部の構成又は全ての構成及び制御装置1の一部の構成又は全ての構成を組み合わせたものを、内燃機関100の制御装置1と言う。
[内燃機関] 図1は、内燃機関100及び内燃機関用点火装置の要部構成を説明する図である。
図2は、点火プラグ200の電極210、220を説明する部分拡大図である。
内燃機関100では、外部から吸引した空気はエアクリーナ110、吸気管111、吸気マニホールド112を通流し、吸気弁151が開くと各気筒150に流入する。各気筒150に流入する空気量は、スロットル弁113により調整され、スロットル弁113で調整された空気量は、流量センサ114により測定される。
スロットル弁113には、スロットルの開度を検出するスロットル開度センサ113aが設けられている。このスロットル開度センサ113aで検出されたスロットル弁113の開度情報は、制御装置(Electronic Control Unit:ECU)1に出力される。
なお、スロットル弁113は、電動機で駆動される電子スロットル弁が用いられるが、空気の流量を適切に調整できるものであれば、その他の方式によるものでもよい。
各気筒150に流入したガスの温度は、吸気温センサ115で検出される。
クランクシャフト123に取り付けられたリングギア120の径方向外側には、クランク角センサ121が設けられている。このクランク角センサ121により、クランクシャフト123の回転角度が検出される。実施の形態では、クランク角センサ121は、例えば10°毎及び燃焼周期毎のクランクシャフト123の回転角度を検出する。
シリンダヘッドのウォータジャケット(図示せず)には、水温センサ122が設けられている。この水温センサ122により、内燃機関100の冷却水の温度を検出する。
また、車両には、アクセルペダル125の変位量(踏み込み量)を検出するアクセルポジションセンサ(Accelerator Position Sensor:APS)126が設けられている。このアクセルポジションセンサ126により、運転者の要求トルクを検出する。このアクセルポジションセンサ126で検出された運転者の要求トルクは、後述する制御装置1に出力される。制御装置1は、この要求トルクに基づいて、スロットル弁113を制御する。
燃料タンク130に貯留された燃料は、燃料ポンプ131によって吸引及び加圧された後、プレッシャレギュレータ132が設けられた燃料配管133を通流し、燃料噴射弁(インジェクタ)134に誘導される。燃料ポンプ131から出力された燃料は、プレッシャレギュレータ132で所定の圧力に調整され、燃料噴射弁(インジェクタ)134から各気筒150内に噴射される。プレッシャレギュレータ132で圧力調整された結果、余分な燃料は戻り配管(図示せず)を介して燃料タンク130に戻される。
内燃機関100のシリンダヘッド(図示せず)には、燃焼圧センサ(CylinderPressure Sensor:CPS、筒内圧センサとも言う)140が設けられている。燃焼圧センサ140は、各気筒150内に設けられており、気筒150内の圧力(燃焼圧)を検出する。
燃焼圧センサ140は、圧電式又はゲージ式の圧力センサが用いられ、広い温度領域に渡って気筒150内の燃焼圧(筒内圧)を検出することができるようになっている。
各気筒150には、排気弁152と、燃焼後のガス(排気ガス)を気筒150の外側に排出する排気マニホールド160が取り付けられている。この排気マニホールド160の排気側には、三元触媒161が設けられている。排気弁152が開くと、気筒150から排気マニホールド160に排気ガスが排出される。この排気ガスは、排気マニホールド160を通って三元触媒161で浄化された後、大気に排出される。
三元触媒161の上流側には、上流側空燃比センサ162が設けられている。この上流側空燃比センサ162は、各気筒150から排出された排気ガスの空燃比を連続的に検出する。
また、三元触媒161の下流側には、下流側空燃比センサ163が設けられている。この下流側空燃比センサ163は、理論空燃比近傍でスイッチ的な検出信号を出力する。実施の形態では、下流側空燃比センサ163は、例えばO2センサである。
また、各気筒150の上部には、点火プラグ200が各々設けられている。点火プラグ200の放電(点火)により、気筒150内の空気と燃料との混合気に火花が着火し、気筒150内で爆発が起こり、ピストン170が押し下げられる。ピストン170が押し下げられることにより、クランクシャフト123が回転する。
点火プラグ200には、点火プラグ200に供給される電気エネルギー(電圧)を生成する点火コイル300が接続されている。点火コイル300で発生した電圧により、点火プラグ200の中心電極210と外側電極220との間に放電が生じる(図2参照)。
図2に示すように、点火プラグ200では、中心電極210は、絶縁体230により絶縁状態で支持されている。この中心電極210に所定の電圧(実施の形態では、例えば20,000V~40,000V)が印加される。
外側電極220は、接地電極240により中心電極210と所定の間隔を空けて支持されるとともに、接地電極240を介して接地されている。中心電極210に所定の電圧が印加されると、中心電極210と外側電極220との間で放電(点火)が生じる。
なお、点火プラグ200において、中心電極210と外側電極220との間に存在する気体(ガス)の状態や筒内圧によって、ガス成分の絶縁破壊を起こして放電(点火)が発生する電圧が変動する。この放電が発生する電圧を絶縁破壊電圧と言う。
点火プラグ200の放電制御(点火制御)は、後述する制御装置1の点火制御部83により行われる。
図1に戻って、前述したスロットル開度センサ113a、流量センサ114、クランク角センサ121、アクセルポジションセンサ126、水温センサ122、燃焼圧センサ140等の各種センサからの出力信号は、制御装置1に出力される。制御装置1では、これら各種センサからの出力信号に基づいて、内燃機関100の運転状態を検出し、気筒150内に送出する空気量、燃料噴射量、点火プラグ200の点火タイミング等の制御を行う。
[制御装置のハードウェア構成] 次に、制御装置1のハードウェアの全体構成を説明する。
図1に示すように、制御装置1は、アナログ入力部10と、デジタル入力部20と、A/D(Analog/Digital)変換部30と、RAM(Random Access Memory)40と、MPU(Micro-Processing Unit)50と、ROM(Read Only Memory)60と、I/O(Input/Output)ポート70と、出力回路80と、を有する。
アナログ入力部10には、スロットル開度センサ113a、流量センサ114、アクセルポジションセンサ126、上流側空燃比センサ162、下流側空燃比センサ163、燃焼圧センサ140、水温センサ122等の各種センサからのアナログ出力信号が入力される。
アナログ入力部10には、A/D変換部30が接続されている。アナログ入力部10に入力された各種センサからのアナログ出力信号は、ノイズ除去等の信号処理が行われた後、A/D変換部30でデジタル信号に変換され、RAM40に記憶される。
デジタル入力部20には、クランク角センサ121からのデジタル出力信号が入力される。
デジタル入力部20には、I/Oポート70が接続されており、デジタル入力部20に入力されたデジタル出力信号は、このI/Oポート70を介してRAM40に記憶される。
RAM40に記憶された各出力信号は、MPU50で演算処理される。
MPU50は、ROM60に記憶された制御プログラム(図示せず)を実行することで、RAM40に記憶された出力信号を、制御プログラムに従って演算処理する。MPU50は、制御プログラムに従って、内燃機関100を駆動する各アクチュエータ(例えば、スロットル弁113、プレッシャレギュレータ132、点火プラグ200等)の作動量を規定する制御値を算出し、RAM40に一時的に記憶する。
RAM40に記憶されたアクチュエータの作動量を規定する制御値は、I/Oポート70を介して出力回路80に出力される。
出力回路80には、点火プラグ200に印加する電圧を制御する点火制御部83(図3参照)の機能などが設けられている。
[制御装置の機能ブロック] 次に、本発明の実施形態にかかる制御装置1の機能構成を説明する。
図3は、本発明の一実施形態にかかる制御装置1の機能構成を説明する機能ブロック図である。この制御装置1の各機能は、例えばMPU50がROM60に記憶された制御プログラムを実行することで、出力回路80で実現される。
図3に示すように、第1の実施形態にかかる制御装置1の出力回路80は、全体制御部81と、燃料噴射制御部82と、点火制御部83とを有する。
全体制御部81は、アクセルポジションセンサ126と、燃焼圧センサ140(CPS)に接続されており、アクセルポジションセンサ126からの要求トルク(加速信号S1)と、燃焼圧センサ140からの出力信号S2とを受け付ける。
全体制御部81は、アクセルポジションセンサ126からの要求トルク(加速信号S1)と、燃焼圧センサ140からの出力信号S2とに基づいて、燃料噴射制御部82と点火制御部83の全体的な制御を行う。
燃料噴射制御部82は、内燃機関100の各気筒150を判別する気筒判別部84と、クランクシャフト123のクランク角を計測する角度情報生成部85と、エンジン回転数を計測する回転数情報生成部86と、に接続されており、気筒判別部84からの気筒判別情報S3と、角度情報生成部85からのクランク角度情報S4と、回転数情報生成部86からのエンジン回転数情報S5と、を受け付ける。
また、燃料噴射制御部82は、気筒150内に吸気される空気の吸気量を計測する吸気量計測部87と、エンジン負荷を計測する負荷情報生成部88と、エンジン冷却水の温度を計測する水温計測部89と、に接続されており、吸気量計測部87からの吸気量情報S6と、負荷情報生成部88からのエンジン負荷情報S7と、水温計測部89からの冷却水温度情報S8と、を受け付ける。
燃料噴射制御部82は、受け付けた各情報に基づいて、燃料噴射弁134から噴射される燃料の噴射量と噴射時間(燃料噴射弁制御情報S9)を算出し、算出した燃料の噴射量と噴射時間とに基づいて燃料噴射弁134を制御する。
点火制御部83は、全体制御部81のほか、気筒判別部84と、角度情報生成部85と、回転数情報生成部86と、負荷情報生成部88と、水温計測部89とに接続されており、これらからの各情報を受け付ける。
点火制御部83は、受け付けた各情報に基づいて、点火コイル300の1次側コイル(図示せず)に通電する電流量(通電角)と、通電開始時間と、1次側コイルに通電した電流を遮断する時間(点火時間)とを算出する。
点火制御部83は、算出した通電角と、通電開始時間と、点火時間とに基づいて、点火コイル300の1次側コイルに点火信号SAを出力することで、点火プラグ200による放電制御(点火制御)を行う。
なお、少なくとも、点火制御部83が点火信号SAを用いて点火プラグ200の点火制御を行う機能は、本発明の内燃機関用制御装置に相当する。
図4は、内燃機関100の運転状態と点火プラグ200周囲のガス流速との関係を説明する図である。図4に示すように、一般にはエンジン回転数や負荷が高いほど、気筒150内のガス流速が高くなり、点火プラグ200周囲のガスも高流速になる。したがって、点火プラグ200の中心電極210と外側電極220の間において、ガスが高速に流れることとなる。また、排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)が行われる内燃機関100では、エンジン回転数と負荷の関係に応じて、例えば図4に示すようにEGR率が設定される。なお、EGR率をより高く設定する高EGR領域を拡大するほど、低燃費化や低排気化を実現できるが、点火プラグ200において着火不良が生じやすくなる。
図5は、点火プラグ200の電極間における放電路と流速の関係を説明する図である。点火コイル300において2次側コイルに高電圧が発生し、点火プラグ200の中心電極210と外側電極220の間に絶縁破壊が生じると、これらの電極間に流れる電流が一定値以下になるまでの間、点火プラグ200の電極間に放電路が形成される。この放電路に可燃ガスが接触すると、火炎核が成長して燃焼に至る。放電路は、電極間のガス流れの影響を受けて移動するため、ガス流速が高いほど短時間で長い放電路を形成し、ガス流速が低いほど放電路が短くなる。図5(a)はガス流速が高いときの放電路211の例を示しており、図5(b)はガス流速が低いときの放電路212の例を示している。
内燃機関100が高EGR率で運転される場合、可燃ガスが放電路と接触しても火炎核が成長する確率が下がるため、可燃ガスが放電路と接触する機会を増やす必要がある。前述のように、放電路はガスの絶縁を破壊して生成されるため、放電路の維持に必要な電流を一定とすれば、放電路の長さに応じた電力の出力が必要となる。このため、ガス流速が高い場合は、短時間で大きな電力を点火コイル300から点火プラグ200へ出力するように点火コイル300の通電制御を行い、これにより図5(a)のような長い放電路211を形成することで、より広範な空間のガスと接触機会を得ることが好ましい。一方、ガス流速が低い場合は、小さな電力を長時間の間に点火コイル300から点火プラグ200へ出力し続けるように点火コイル300の通電制御を行い、これにより図5(b)のような短い放電路212の形成を維持することで、点火プラグ200の電極付近を通過するガスとの接触機会をより長時間にわたって得ることが好ましい。
[第1の実施形態:点火コイルの電気回路] 次に、本発明の第1の実施形態にかかる点火コイル300を含む電気回路400を説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態にかかる点火コイル300を含む電気回路400を説明する図である。電気回路400において、点火コイル300は、所定の巻き数で巻かれた1次側コイル310と、1次側コイル310よりも多い巻き数で巻かれた2次側コイル320と、を含んで構成される。
1次側コイル310の一端は、直流電源330に接続されている。これにより、1次側コイル310には、所定の電圧(例えば12V)が印加される。
1次側コイル310の他端は、イグナイタ340に接続されており、イグナイタ340を介して接地されている。イグナイタ340には、トランジスタや電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)などが用いられる。
イグナイタ340のベース(B)端子は、点火制御部83に接続されている。点火制御部83から出力された点火信号SAは、イグナイタ340のベース(B)端子に入力される。イグナイタ340のベース(B)端子に点火信号SAが入力されると、イグナイタ340のコレクタ(C)端子とエミッタ(E)端子間が通電状態となり、コレクタ(C)端子とエミッタ(E)端子間に電流が流れる。これにより、点火制御部83からイグナイタ340を介して点火コイル300の1次側コイル310に点火信号SAが出力され、1次側コイル310に電流が流れて電力(電気エネルギー)が蓄積される。
点火制御部83からの点火信号SAの出力が停止して、1次側コイル310に流れる電流が遮断されると、1次側コイル310に対するコイルの巻き数比に応じた高電圧が2次側コイル320に発生する。
点火信号SAにより2次側コイル320に発生する高電圧が、点火プラグ200(中心電極210)に印加されることで、点火プラグ200の中心電極210と、外側電極220との間に電位差が発生する。この中心電極210と外側電極220との間に発生した電位差が、ガス(気筒150内の混合気)の絶縁破壊電圧Vm以上になると、ガス成分が絶縁破壊されて中心電極210と外側電極220との間に放電が生じ、燃料(混合気)への点火(着火)が行われる。
2次側コイル320と点火プラグ200の間には、2次側コイル320に流れる2次電流を検知するための電流検知部370が設けられている。電流検知部370は、検知した2次電流値を点火制御部83へ送信する。
点火制御部83は、以上説明したような電気回路400の動作により、点火信号SAを用いて点火コイル300の通電を制御する。これにより、点火プラグ200を制御するための点火制御を実施する。
[従来の点火コイルの放電制御] 次に、従来の点火コイルの放電制御について説明する。図7は、従来の放電制御における点火コイルへ入力される制御信号と出力の関係を説明するタイミングチャートの一例を示す図である。図7のタイミングチャートは、点火コイル300を用いてガスが高流速の場合に点火プラグ200を放電させたときの一例である。図7では、点火制御部83から出力される点火信号SAと、この点火信号SAに応じて1次側コイル310に流れる1次電流I1、点火コイル300に蓄積される電気エネルギーE、2次側コイル320に流れる2次電流I2、および2次側コイル320に発生する2次電圧V2との関係を示している。なお、2次電流I2と2次電圧V2の測定ポイントは、点火プラグ200と点火コイル300の間としている。また、1次電流I1の測定ポイントは、直流電源330と点火コイル300の間としている。
点火信号SAがHIGHになると、イグナイタ340が1次側コイル310を通電し、1次電流I1が上昇する。1次側コイル310の通電中は、点火コイル300内の電気エネルギーEが時間と共に上昇する。
その後、点火信号SAがLOWになると、イグナイタ340は1次側コイル310の通電を遮断する。これにより、2次側コイル320へ起電力が生じて、点火コイル300から点火プラグ200への電気エネルギーEの供給が開始される。点火プラグ200の電極間の絶縁が破壊されると、点火プラグ200の放電が開始される。このような絶縁破壊を伴う点火プラグ200の放電は、容量放電と呼ばれる。点火プラグ200の放電開始後は、点火コイル300内の電気エネルギーEが時間と共に減少し、点火プラグ200の放電が維持される。このような絶縁破壊を伴わない点火プラグ200の放電は、誘導放電と呼ばれる。
2次電流I2は、容量放電時に大きく上昇する。この容量放電による2次電流I2は短時間で終了する。点火プラグ200の放電が開始されて電極間に放電路が形成されると、2次電流I2は急激に低下し、その後の誘導放電時には時間と共に減少する。放電路はガスの流れと共に伸長するため、時間経過と共に2次電圧V2が上昇する。このとき、点火プラグ200の電極間に存在するガスの流速に応じて、放電路の維持に必要な2次電流I2の大きさが変化する。
2次電流I2が、放電路の維持に必要な最低値から、放電できなくなる最大値までの間になると、点火プラグ200は放電路の吹き消えと再放電を繰り返す。このように放電路の吹き消えと再放電が繰り返される2次電流I2の範囲を、以下では「断続運転領域」と言う。すなわち、2次電流I2が断続運転領域に入ると、放電路を維持できなくなり、放電路がガス流れによって吹き消えることで、点火プラグ200の放電が中断する。このとき、放電路が無くなっても点火コイル300内の電気エネルギーEは残っているため、点火プラグ200において容量放電を伴う再放電(リストライク)が発生する。図7の例では、初放電が1回と再放電3回となっており、容量放電回数は4回である。
点火コイル300内の電気エネルギーEが減少すると、それに伴って2次電流I2も低下する。2次電流I2が放電できなくなる最大値以下になると、点火プラグ200の放電が停止する。このように点火プラグ200の放電が不可能となって停止する2次電流I2の範囲を、以下では「放電不可領域」と言う。
本発明では、以下で説明するような放電制御を行うことにより、容量放電回数を抑制した点火プラグ200の放電を実現する。
[第1の実施形態:点火コイルの放電制御] 次に、本発明の第1の実施形態にかかる点火コイルの放電制御について説明する。
図8は、点火プラグ200の電極間にガスの流れがないと仮定した場合の放電開始後の2次電流I2の時間変化の様子を示す図である。図8に示すように、点火プラグ200の放電時間の継続とともに、点火コイル300内に残存する電気エネルギーが次第に低下していき、これに伴って2次電流I2が低下する。そして、2次電流I2が前述の放電できなくなる最大値(放電維持電流)以下になると、点火プラグ200の放電が維持できなくなり、放電が停止して2次電流I2が急落する。
図9は、点火信号SAの出力を停止してから点火プラグ200の放電が継続している間の経過時間(火花時間)と放電抵抗の関係をグラフで表した図である。図9に示すように、点火プラグ200の放電(火花放電)が開始される前は放電抵抗が非常に大きく、放電中には放電抵抗が低下する。このように、点火プラグ200の電極間における放電抵抗は、放電前と放電中で大きな差があり、それぞれの状態において必要なエネルギーが異なることが分かる。つまり、点火プラグ200の放電を継続するために必要なエネルギーに比べて、点火プラグ200の放電を開始するために必要なエネルギーの方が、より大きなエネルギーが必要となる。
点火コイル300から出力可能な電気エネルギーの大きさは、放電電流と相関がある。そのため、点火プラグ200の放電前と放電中とでは、放電を開始または継続するのに必要な電流が異なることになる。
図10は、本発明の第1の実施形態にかかる放電制御の概要を説明する図である。本発明の第1の実施形態では、図10に示すように、点火プラグ200の放電を開始するために必要な2次電流I2の最小値を閾値I2tと設定し、1次側コイル310の通電終了後、点火プラグ200の放電中に2次電流I2が閾値I2tよりも低下すると、1次側コイル310を再通電する。これにより2次電流I2が遮断され、点火プラグ200の電極間に形成された放電路がカットされて放電が停止する。その後、再び1次側コイル310の通電を停止しても、この時点では閾値I2tまで到達するための電気エネルギーが点火コイル300内に蓄積されていないため、点火プラグ200は再放電されない。したがって、容量放電回数を抑制した点火プラグ200の放電を実現することが可能となる。
[第1の実施形態:点火コイルの放電制御フロー] 次に、上記の放電制御を実施する際の点火制御部83による点火コイル300の制御方法を説明する。図11は、本発明の第1の実施形態にかかる点火制御部83による点火コイル300の制御方法を説明するフローチャートの一例である。本実施形態において、点火制御部83は、車両のイグニッションスイッチがONされて内燃機関100の電源が投入されると、図11のフローチャートに従って点火コイル300の制御を開始する。なお、図11のフローチャートに示す処理は、内燃機関100の1サイクル分の処理を表しており、点火制御部83は各サイクルごとに図11のフローチャートに示す処理を実施する。
ステップS101において、点火制御部83は、図11のフローチャートに示す処理を開始する。
ステップS102において、点火制御部83は、所定のタイミングで点火信号SAの出力を開始し、その後、所定のタイミングで点火信号SAの出力を停止する。これにより、点火コイル300から点火プラグ200に電気エネルギーEの供給が開始され、点火プラグ200の放電が開始されて(ステップS103)、点火コイル300に2次電流I2が流れる。
ステップS104において、電流検知部370は、点火プラグ200の放電中における2次電流I2の値を検出し、2次電流値I2nとして点火制御部83へ伝送する。
ステップS105において、点火制御部83は、内燃機関100の運転条件を検出する。
ステップS106において、点火制御部83は、ステップS105で検出した内燃機関100の運転条件に基づいて、2次電流I2の閾値I2tを設定する。具体的には、予め運転条件ごとに定めた閾値I2tのマップへ、ステップS201で検出したエンジン回転数と推定負荷を代入することで、運転条件に応じた閾値I2tを設定する。
ステップS107において、点火制御部83は、ステップS104で電流検知部370が検出した2次電流値I2nと、ステップS106で設定した閾値I2tとを比較する。その結果、I2t>I2nの場合、すなわち2次電流値I2nが閾値I2tよりも低下したら、ステップS108へ進む。一方、I2t>I2nではない場合、すなわち2次電流値I2nが閾値I2t以上である場合は、ステップS104へ戻って2次電流値I2nの検出を継続する。
ステップS108において、点火制御部83は、点火信号SAをOFF(LOW)からON(HIGH)に切り替え、1次側コイル310を再通電する。
ステップS109において、点火制御部83は、1次側コイル310を再通電したときの通電目標時間T3を設定する。この通電目標時間T3は、2次電流I2を確実に遮断できる程度の短時間でよく、主にイグナイタ340を構成するIGBT素子の応答性能で決められる。
ステップS110において、点火制御部83は、ステップS108で1次側コイル310の再通電を開始してから現在までの時間(再通電時間)が、ステップS109で設定した通電目標時間T3以上であるか否かを判定する。その結果、再通電時間が通電目標時間T3以上であればステップS111へ進み、そうでない場合はステップS110をやり直す。
ステップS111において、点火制御部83は、点火信号SAをON(HIGH)からOFF(LOW)に切り替え、1次側コイル310の通電を遮断する。なお、ステップS109で通電目標時間T3を短く設定することにより、この時点では閾値I2tまで到達するための電気エネルギーが点火コイル300内に蓄積されないため、ステップS111で1次側コイル310の通電を遮断しても、点火プラグ200は再放電されない。
ステップS112において、点火制御部83は、図11のフローチャートに示す処理を終了する。
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)内燃機関用の制御装置1は、内燃機関100の気筒150内で放電して燃料への点火を行う点火プラグ200に対し電気エネルギーを与える点火コイル300の通電を制御する点火制御部83を備える。点火コイル300は、1次側に配置された1次側コイル310と、2次側に配置された2次側コイル320とを有する。点火制御部83は、1次側コイル310の通電終了後、点火プラグ200の放電中に2次側コイル320に流れる2次電流I2が、点火プラグ200の容量放電に必要な所定の閾値I2tよりも低下した場合に、1次側コイル310を再通電するように、点火コイル300の通電を制御する。このようにしたので、点火プラグ200によるガスへの着火不良を抑えつつ、内燃機関100における点火プラグ200の電極摩耗を抑制することができる。
(2)点火制御部83は、1次側コイル310を再通電してからの経過時間が所定の通電目標時間T3に到達すると(ステップS110:Yes)、1次側コイル310の通電を遮断する(ステップS111)。このようにしたので、2次電流I2を確実に遮断して点火プラグ200の電極間に形成された放電路をカットするとともに、1次側コイル310の通電を遮断した後に点火プラグ200が再放電されてしまうのを防止することができる。
(3)電気回路400は、2次電流I2を検知する電流検知部370を備える。点火制御部83は、電流検知部370が点火プラグ200の放電中に検知した2次電流I2の値を表す2次電流値I2nが閾値I2tよりも低下した場合に(ステップS107:Yes)、1次側コイル310を再通電する(ステップS108)。このようにしたので、点火プラグ200の放電中に2次側コイル320に流れる2次電流I2が、点火プラグ200の容量放電に必要な所定の閾値I2tよりも低下した場合に、1次側コイル310を確実に再通電することができる。
(4)点火制御部83は、内燃機関100の運転条件に基づいて、閾値I2tを設定する(ステップS105、S106)。このようにしたので、内燃機関100の運転条件に応じて適切な閾値I2tを設定することができる。
[第2の実施形態:点火コイルの電気回路] 次に、本発明の第2の実施形態にかかる点火コイル300を含む電気回路400Aを説明する。
図12は、本発明の第2の実施形態にかかる点火コイル300を含む電気回路400Aを説明する図である。本実施形態では、点火コイル300は、第1の実施形態で説明した図8と同様の構成を有している。すなわち、本実施形態の点火コイル300も、所定の巻き数で巻かれた1次側コイル310と、1次側コイル310よりも多い巻き数で巻かれた2次側コイル320と、を含んで構成される。
本実施形態において、電気回路400Aは、第1の実施形態で説明した電気回路400と比べて、電流検知部370の代わりに電圧検知部380が2次側コイル320と点火プラグ200の間に設けられている点が異なっている。電圧検知部380は、検知した2次電圧値を点火制御部83へ送信する。
点火制御部83は、以上説明したような電気回路400Aの動作により、点火信号SAを用いて点火コイル300の通電を制御する。これにより、点火プラグ200を制御するための点火制御を実施する。
[第2の実施形態:点火コイルの放電制御] 次に、本発明の第2の実施形態にかかる点火コイルの放電制御について説明する。
図13は、従来の放電制御において点火制御部83から出力される点火信号SAと1次電流I1、2次電圧V2および点火プラグ200の電極間に形成される放電路との関係を示す図である。図13に示すように、点火信号SAがOFF(LOW)からON(HIGH)に切り替えられると、イグナイタ340が1次側コイル310を通電し、1次電流I1が上昇する。その後、点火信号SAがON(HIGH)からOFF(LOW)に切り替えられると、イグナイタ340は1次側コイル310の通電を遮断する。これにより、2次側コイル320に起電力が生じて2次電圧V2が上昇し、点火コイル300から点火プラグ200への電気エネルギーEの供給が開始される。点火プラグ200の電極間の絶縁が破壊されると、点火プラグ200の放電(容量放電)が開始され、電極間に放電路が形成される。
点火プラグ200の放電開始後は、点火コイル300内の電気エネルギーEが時間と共に減少し、点火プラグ200の放電(誘導放電)が維持される。燃焼室内のガスが高流速の場合、電極間に形成された放電路は、ガスに流されて時間の経過とともに伸長する。その結果、電極上の放電位置が次第に移動し、やがては電極の先端部分から別の箇所、例えば外側電極220を支持する接地電極240において放電路が形成されてしまう現象(ショートカット)が発生することがある。この場合、意図しない部分に過大な電流が流れることで発熱が生じ、電極の消耗が促進されてしまう。
2次電圧V2は、主に点火プラグ200の電極間の抵抗値の影響を受ける。そのため、2次電圧V2は放電路の長さと相関がある。また、2次電圧V2と放電路の長さをそれぞれ微分して比較すると、2次電圧V2の変化と点火プラグ200の電極間におけるガス流速との間にも相関があることが分かる。つまり、2次電圧V2の変化から、点火プラグ200の電極間におけるガス流速の検知が可能である。
なお、図13では、前述のような放電路のショートカットが生じる2次電圧V2の範囲を「摩耗領域」として示している。点火プラグ200において、放電開始からショートカットへ至るまでの時間は、中心電極210の先端部分から接地電極240までの距離と、燃焼室内のガス流速とによって定まる。中心電極210の先端部分から接地電極240までの距離は固定であり変化しないが、燃焼室内のガス流速は多数の要因、例えば点火プラグ200の取り付け位置の回転方向、燃料ガスの気筒分配、エンジン回転数、スロットル開度、EGR弁開度、吸排気動弁の開閉時期等によって変化する。また、これらの要因に加えて、サイクルごとのばらつきも発生する。つまり、放電開始からショートカットへ至るまでの時間の推定には、同じサイクル内で検知したガス流速を用いる必要がある。
図14は、本発明の第2の実施形態にかかる放電制御において点火制御部83から出力される点火信号SAと1次電流I1、2次電圧V2および点火プラグ200の電極間に形成される放電路との関係を示す図である。第2の実施形態では、図12で説明したように、点火プラグ200の放電開始後に電圧検知部380が検知した2次電圧V2を、点火制御部38へ送信する。
点火制御部38においては、電圧検知部380から送信された2次電圧V2の変化から、ガス流速を算出する。なお、2次電圧V2の変化からガス流速を算出する方法としては、例えば、事前の適合試験での測定結果より得た実験値から変換係数を算出し、この変換係数を用いて算出してもよいし、あるいは、一般的に知られている変換公式を用いて算出してもよい。そして、算出したガス流速と、予め定めた中心電極210の先端部分から接地電極240までの距離とに基づき、放電開始からショートカット発生までの時間(ショートカット時間)を算出する。その際、一般的にはガス流速に応じて放電路が直線ではなく円弧を描いて伸長するため、中心電極210の先端部分から接地電極240までの距離を補正した上で、ショートカット時間を算出する必要がある。この補正に必要な係数については、予め実験的に求めてもよいし、放電路が理想的な円弧であると仮定して算出することも可能である。
上記のようにしてショートカット時間を算出できたら、点火制御部38は、放電開始からの経過時間が算出したショートカット時間を超える前に、点火信号SAをOFF(LOW)からON(HIGH)に切り替える。これにより、2次側コイル320からの出力が停止して、2次電流I2が遮断され、放電路がカットされる。その後、予め定めた時間が経過した後に点火信号SAをON(HIGH)からOFF(LOW)に切り替えることで、点火プラグ200の再放電が開始されるため、ショートカットを防止できることになる。再放電後についても、ショートカットの可能性があるため、同様の制御を継続することが望ましい。
なお、上記の放電制御方法では、2次電圧V2の検出および記録、ガス流速の算出、ショートカット時間の算出という一連の手順に必要な演算処理の実行に、ある程度の時間を要する。そのため、点火プラグ200の放電開始直後のなるべく早い時期に2次電圧V2の検出を行うことで、その後の演算処理時間を確保することが好ましい。
また、ガス流速が十分に遅いことが分かっている場合や、点火制御部38の演算処理能力が十分に高い場合には、2次電圧V2から放電路の長さを逐次推定し、その推定結果を予め定めたショートカットが発生する放電路の長さと比較することで、点火信号SAの切り替えタイミングを決定する方法もある。この場合、点火制御部38は、推定した放電路の長さが、ショートカットが発生する放電路の長さから予め定めたマージン分を引いた値を超過したことを認識した時点で、点火信号SAをOFF(LOW)からON(HIGH)に切り替える。このようにすれば、演算時間以上のマージンが必要となるが、サイクルごとに異なる放電中の流速変化にも対応できるという利点がある。
[第2の実施形態:点火コイルの放電制御フロー] 次に、上記の放電制御を実施する際の点火制御部83による点火コイル300の制御方法を説明する。以下では、ガス流速からショートカット時間を算出して1次側コイル310の再通電タイミングを決定する場合の制御方法を「第1の制御方法」とし、放電路の長さを算出して1次側コイル310の再通電タイミングを決定する場合の制御方法を「第2の制御方法」として、それぞれの具体的な放電制御フローを説明する。
図15は、本発明の第2の実施形態にかかる点火制御部83による点火コイル300の第1の制御方法を説明するフローチャートの一例である。本実施形態において、点火制御部83は、車両のイグニッションスイッチがONされて内燃機関100の電源が投入されると、図15のフローチャートに従って点火コイル300の制御を開始する。なお、図15のフローチャートに示す処理は、内燃機関100の1サイクル分の処理を表しており、点火制御部83は各サイクルごとに図15のフローチャートに示す処理を実施する。
ステップS201において、点火制御部83は、図15のフローチャートに示す処理を開始する。
ステップS202において、点火制御部83は、所定のタイミングで点火信号SAの出力を開始し、その後、所定のタイミングで点火信号SAの出力を停止する。これにより、点火コイル300から点火プラグ200に電気エネルギーEの供給が開始され、点火プラグ200の放電が開始されて(ステップS203)、点火コイル300に2次電流I2が流れる。
ステップS204において、電流検知部370は、ステップS203で点火信号SAの出力を停止した時刻を放電開始時期T2として記録する。
ステップS205において、電圧検知部380は、点火プラグ200の放電中における2次電圧V2の値を検出し、点火制御部83へ伝送する。
ステップS206において、点火制御部83は、ステップS205で電圧検知部380が検知した2次電圧V2に基づいて、点火プラグ200の電極間におけるガス流速を算出する。ここでは、ステップS204で記録した放電開始時期T2からの2次電圧V2の変化に基づき、電極間のガス流速を推定する。2次電圧V2の変化からガス流速を算出する方法としては、事前の適合試験での測定結果より得た実験値から変換係数を算出してもよいし、あるいは、一般的に知られている変換公式を用いてもよい。
ステップS207において、点火制御部83は、予め定められた中心電極210の先端部分から接地電極240までの距離L1を取得する。
ステップS208において、点火制御部83は、ステップS206で算出したガス流速と、ステップS207で取得した距離L1とに基づいて、放電開始からショートカットが発生するまでのショートカット時間T1を算出する。ここで、一般的には点火プラグ200の電極間に形成される放電路は直線ではなく、円弧を描く。そのため、距離L1の補正が必要となる。この補正に必要な係数については、実験的に求めてもよいし、放電路が理想的な円弧であると仮定して算出することも可能である。
ステップS209において、点火制御部83は、ステップS203で点火プラグ200の放電を開始してから現在までの経過時間と、ステップS208で算出したショートカット時間T1とを比較する。その結果、経過時間がショートカット時間T1未満である場合はそのまま待機し、ショートカット時間T1以上になったらステップS210へ進む。
ステップS210において、点火制御部83は、点火信号SAをOFF(LOW)からON(HIGH)に切り替え、1次側コイル310を再通電する。
ステップS211において、点火制御部83は、1次側コイル310を再通電したときの通電目標時間T3を設定する。この通電目標時間T3は、2次電流I2を確実に遮断できる程度の短時間でよく、主にイグナイタ340を構成するIGBT素子の応答性能で決められる。
ステップS212において、点火制御部83は、ステップS210で1次側コイル310の再通電を開始してから現在までの時間(再通電時間)が、ステップS211で設定した通電目標時間T3以上であるか否かを判定する。その結果、再通電時間が通電目標時間T3以上であればステップS213へ進み、そうでない場合はステップS212をやり直す。
ステップS213において、点火制御部83は、点火信号SAをON(HIGH)からOFF(LOW)に切り替え、1次側コイル310の通電を遮断する。これにより、点火プラグ200の再放電を開始する。
ステップS214において、点火制御部83は、図15のフローチャートに示す処理を終了する。
図16は、本発明の第2の実施形態にかかる点火制御部83による点火コイル300の第2の制御方法を説明するフローチャートの一例である。本実施形態において、点火制御部83は、車両のイグニッションスイッチがONされて内燃機関100の電源が投入されると、図16のフローチャートに従って点火コイル300の制御を開始する。なお、図16のフローチャートに示す処理は、内燃機関100の1サイクル分の処理を表しており、点火制御部83は各サイクルごとに図16のフローチャートに示す処理を実施する。
ステップS301において、点火制御部83は、図16のフローチャートに示す処理を開始する。
ステップS302において、点火制御部83は、所定のタイミングで点火信号SAの出力を開始し、その後、所定のタイミングで点火信号SAの出力を停止する。これにより、点火コイル300から点火プラグ200に電気エネルギーEの供給が開始され、点火プラグ200の放電が開始されて(ステップS303)、点火コイル300に2次電流I2が流れる。
ステップS304において、点火制御部83は、予め定められたショートカット発生時の放電路の長さLsを取得する。
ステップS305において、点火制御部83は、ステップS304で取得したショートカット発生時の放電路長さLsから所定のマージン分を引くことで、放電路の長さに対する閾値Lthを算出する。
ステップS306において、電圧検知部380は、点火プラグ200の放電中における2次電圧V2の値を検出し、点火制御部83へ伝送する。
ステップS307において、点火制御部83は、ステップS306で電圧検知部380が検知した2次電圧V2に基づいて、点火プラグ200の電極間における放電路の長さを算出する。
ステップS308において、点火制御部83は、ステップS307で算出した現在の放電路の長さと、ステップS305で算出した閾値Lthとを比較する。その結果、現在の放電路の長さが閾値Lth未満である場合は、ステップS306へ戻って放電路の長さの推定を継続し、閾値Lth以上になったらステップS309へ進む。
ステップS309において、点火制御部83は、点火信号SAをOFF(LOW)からON(HIGH)に切り替え、1次側コイル310を再通電する。
ステップS310において、点火制御部83は、1次側コイル310を再通電したときの通電目標時間T3を設定する。
ステップS311において、点火制御部83は、ステップS309で1次側コイル310の再通電を開始してから現在までの時間(再通電時間)が、ステップS310で設定した通電目標時間T3以上であるか否かを判定する。その結果、再通電時間が通電目標時間T3以上であればステップS312へ進み、そうでない場合はステップS311をやり直す。
ステップS312において、点火制御部83は、点火信号SAをON(HIGH)からOFF(LOW)に切り替え、1次側コイル310の通電を遮断する。これにより、点火プラグ200の再放電を開始する。
ステップS313において、点火制御部83は、図16のフローチャートに示す処理を終了する。
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)内燃機関用の制御装置1は、内燃機関100の気筒150内で放電して燃料への点火を行う点火プラグ200に対し電気エネルギーを与える点火コイル300の通電を制御する点火制御部83を備える。点火コイル300は、1次側に配置された1次側コイル310と、2次側に配置された2次側コイル320とを有する。点火制御部83は、1次側コイル310の通電終了後、点火プラグ200の放電中に点火プラグ200の電極間に形成された放電路が外側電極220を支持する接地電極240に到達するタイミングよりも前に、1次側コイル310を再通電するように、点火コイル300の通電を制御する。このようにしたので、点火プラグ200によるガスへの着火不良を抑えつつ、内燃機関100における点火プラグ200の電極摩耗を抑制することができる。
(2)第1の制御方法では、点火制御部83は、1次側コイル310の通電終了後、点火プラグ200の放電中に2次側コイル320に発生する2次電圧V2に基づいて電極間のガス流速を推定し(ステップS206)、推定したガス流速に基づいて、点火コイル300の通電を制御する(ステップS208~S210)。このようにしたので、放電路が外側電極220を支持する接地電極240に到達するタイミングよりも前に、確実に1次側コイル310を再通電させるように、点火コイル300の通電を制御することができる。
(3)第2の制御方法では、点火制御部83は、1次側コイル310の通電終了後、点火プラグ200の放電中に2次側コイル320に発生する2次電圧V2に基づいて放電路の長さを推定し(ステップS307)、推定した放電路の長さに基づいて、点火コイル300の通電を制御する(ステップS308、S309)。このようにしても、放電路が外側電極220を支持する接地電極240に到達するタイミングよりも前に、確実に1次側コイル310を再通電させるように、点火コイル300の通電を制御することができる。さらに、サイクルごとに異なる放電中の流速変化にも対応可能である。
(4)点火制御部83は、1次側コイル310を再通電してからの経過時間が所定の通電目標時間T3に到達すると(ステップS212,S311:Yes)、1次側コイル310の通電を遮断する(ステップS213,S312)。このようにしたので、2次電流I2を確実に遮断して点火プラグ200の電極間に形成された放電路をカットするとともに、1次側コイル310の通電を遮断した後に点火プラグ200を素早く再放電させることができる。
なお、以上説明した各実施形態において、図3で説明した制御装置1の各機能構成は、前述のようにMPU50で実行されるソフトウェアにより実現してもよいし、あるいはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現してもよい。また、これらを混在して使用してもよい。
以上説明した第1、第2の実施形態は、それぞれ単独で適用してもよいし、両方を同時に適用してもよい。また、内燃機関100の運転条件等に基づいて、いずれかを選択的に適用可能としてもよい。
以上説明した各実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。