JP7324384B2 - 筒内圧力検出方法、筒内圧センサ診断方法及び内燃機関制御装置 - Google Patents
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Description
本発明は、筒内圧力検出方法、筒内圧センサ診断方法及び内燃機関制御装置に関する。
近年、車両の燃費向上のため、理論空燃比よりも薄い混合気を燃焼して内燃機関を運転する技術や、燃焼後の排気ガスの一部を取り入れて再度吸気させる技術などを導入した内燃機関の制御装置が開発されている。
この種の内燃機関の制御装置では、燃焼室における燃料や空気の量が理論値から乖離するため、点火プラグによる燃料への着火遅れが生じやすくなる。この着火遅れの期間や頻度は、部品ばらつきや運転条件の変化に応じて異なる。複数の気筒により構成される内燃機関において、全ての気筒で着火遅れを抑制するには、着火遅れの頻度が高い気筒に合わせて、燃料を増量するか、排気ガスの再循環量を減らす必要がある。
しかし、燃料を増量したり、排気ガスの再循環量を減らしたりすることは、燃費向上の抑制となる。そのため、気筒ごとの部品特性に合わせた、気筒別の燃焼制御が求められる。燃料噴射装置や点火コイルの気筒別の制御を行うには、気筒別の筒内圧力から着火遅れを検出する必要がある。したがって、気筒別の筒内圧力を精度良く検知する必要がある。
特許文献1には、点火放電と筒内圧力(p)の関係式が開示されている。この関係式によると、放電電圧(V)と、放電電流(I)と、放電路長さ(l)により、筒内圧力(p)を算出可能である。
しかし、特許文献1に開示されている関係式では、放電路長さ(l)を計測する必要がある。放電路は、点火プラグ電極間におけるガスの流れの影響を受けて伸長する。そして、放電路長さの計測には、燃焼室内の可視化が必要なため、現実的には困難である。さらに、筒内のガス流動は、燃焼サイクルによるばらつきが大きいため、点火プラグ電極間におけるガスの流れの推定は困難である。このため、特許文献1に開示された関係式では、気筒別の筒内圧力(p)を精度良く検知することができない、という問題がある。
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、放電路伸長の影響を受けずに、筒内圧力(p)を精度良く検知することにある。
上記構成の筒内圧力検出方法によれば、放電路伸長の影響されずに筒内圧力(p)を精度良く検知することができる。
なお、上述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
なお、上述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
1.実施形態
以下、本発明の一実施形態に係る内燃機関制御装置について説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
以下、本発明の一実施形態に係る内燃機関制御装置について説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
[内燃機関システム]
まず、本実施形態による内燃機関システムの構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の基本構成例を示す全体構成図である。
まず、本実施形態による内燃機関システムの構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の基本構成例を示す全体構成図である。
図1に示す内燃機関100は、単気筒でも複数気筒を有するものでもよいが、実施形態では、4気筒を有する内燃機関100を例示して説明する。図1に示すように、内燃機関100では、外部から吸引した空気はエアクリーナ110、吸気管111、吸気マニホールド112を通流する。吸気マニホールド112を通った空気は、吸気弁151が開いたときに各気筒150に流入する。各気筒150に流入する空気量は、スロットル弁113により調整される。スロットル弁113で調整された空気量は、流量センサ114により測定される。
スロットル弁113には、スロットルの開度を検出するスロットル開度センサ113aが設けられている。スロットル開度センサ113aで検出されたスロットル弁113の開度情報は、制御装置(Electronic Control Unit:ECU)1に出力される。
本実施形態では、スロットル弁113として、電動機で駆動される電子スロットル弁を適用する。しかし、本発明に係るスロットル弁としては、空気の流量を適切に調整できるものであれば、その他の方式によるものを適用してもよい。
各気筒150に流入したガスの温度は、吸気温センサ115で検出される。
クランクシャフト123に取り付けられたリングギア120の径方向外側には、クランク角センサ121が設けられている。クランク角センサ121は、クランクシャフト123の回転角度を検出する。本実施形態では、クランク角センサ121は、10°毎及び燃焼周期毎のクランクシャフト123の回転角度を検出する。
シリンダヘッドのウォータジャケット(図示せず)には、水温センサ122が設けられている。水温センサ122は、内燃機関100の冷却水の温度を検出する。
また、車両には、アクセルペダル125の変位量(踏み込み量)を検出するアクセルポジションセンサ(Accelerator Position Sensor:APS)126が設けられている。アクセルポジションセンサ126は、運転者の要求トルクを検出する。アクセルポジションセンサ126で検出された運転者の要求トルクは、後述する制御装置1に出力される。制御装置1は、この要求トルクに基づいて、スロットル弁113を制御する。
燃料タンク130に貯留された燃料は、燃料ポンプ131によって吸引及び加圧される。燃料ポンプ131によって吸引及び加圧された燃料は、燃料配管133に設けられたプレッシャレギュレータ132で所定の圧力に調整される。そして、所定の圧力に調整された燃料は、燃料噴射装置(インジェクタ)134から各気筒150内に噴射される。プレッシャレギュレータ132で圧力調整された後の余分な燃料は、戻り配管(図示せず)を介して燃料タンク130に戻される。
燃料噴射装置134の制御は、後述する制御装置1の燃料噴射制御部82の燃料噴射パルス(制御信号)に基づいて行われる。
各気筒150には、排気弁152と、排気マニホールド160が取り付けられている。排気弁152が開くと、気筒150から排気マニホールド160に排気ガスが排出される。排気マニホールド160は、燃焼後のガス(排気ガス)を、気筒150の外側に排出する。排気マニホールド160の排気側には、三元触媒161が設けられている。三元触媒161は、排気ガスを浄化する。三元触媒161により浄化された排気ガスは、大気に排出される。
三元触媒161の上流側には、上流側空燃比センサ162が設けられている。上流側空燃比センサ162は、各気筒150から排出された排気ガスの空燃比を連続的に検出する。
また、三元触媒161の下流側には、下流側空燃比センサ163が設けられている。下流側空燃比センサ163は、理論空燃比近傍でスイッチ的な検出信号を出力する。本実施形態の下流側空燃比センサ163は、O2センサである。
各気筒150の上部には、点火プラグ200が各々設けられている。点火プラグ200は、放電(点火)により火花を発生させ、その火花が、気筒150内の空気と燃料との混合気に着火する。これにより、気筒150内で爆発が起こり、ピストン170が押し下げられる。ピストン170が押し下げられることにより、クランクシャフト123が回転する。点火プラグ200には、点火プラグ200に供給される電気エネルギー(電圧)を生成する点火コイル300が接続されている。
前述したスロットル開度センサ113a、流量センサ114、クランク角センサ121、アクセルポジションセンサ126、水温センサ122等の各種センサからの出力信号は、制御装置1に出力される。制御装置1は、これら各種センサからの出力信号に基づいて、内燃機関100の運転状態を検出する。そして、制御装置1は、気筒150内に送出する空気量、燃料噴射装置134からの燃料噴射量、点火プラグ200の点火タイミング等の制御を行う。
[点火プラグ]
次に、点火プラグ200について、図2を参照して説明する。
図2は、点火プラグ200を説明する部分拡大図である。
次に、点火プラグ200について、図2を参照して説明する。
図2は、点火プラグ200を説明する部分拡大図である。
図2に示すように、点火プラグ200は、中心電極210と、外側電極220とを有している。中心電極210は、絶縁体230を介してプラグベース(不図示)に支持されている。これにより、中心電極210は、絶縁されている。外側電極220は接地されている。
点火コイル300(図1参照)において電圧が発生すると、中心電極210に所定の電圧(本実施形態では、例えば20,000V~40,000V)が印加される。中心電極210に所定の電圧が印加されると、中心電極210と外側電極220との間で放電(点火)が生じる。そして、放電により発生した火花が、気筒150内の空気と燃料との混合気に着火する。
なお、気筒150内におけるガス成分の絶縁破壊を起こして放電(点火)が発生する電圧は、中心電極210と外側電極220との間に存在する気体(ガス)の状態や気筒150の筒内圧に応じて変動する。この放電が発生する電圧を絶縁破壊電圧と言う。
点火プラグ200の放電制御(点火制御)は、後述する制御装置1の点火制御部83により行われる。
[制御装置のハードウェア構成]
次に、制御装置1のハードウェアの全体構成を説明する。
次に、制御装置1のハードウェアの全体構成を説明する。
図1に示すように、制御装置1は、アナログ入力部10と、デジタル入力部20と、A/D(Analog/Digita)変換部30と、RAM(Random Access Memory)40と、MPU(Micro-Processing Unit)50と、ROM(Read Only Memory)60と、I/O(Input/Output)ポート70と、出力回路80と、を有する。
アナログ入力部10には、スロットル開度センサ113a、流量センサ114、アクセルポジションセンサ126、上流側空燃比センサ162、下流側空燃比センサ163、水温センサ122等の各種センサからのアナログ出力信号が入力される。
アナログ入力部10には、A/D変換部30が接続されている。アナログ入力部10に入力された各種センサからのアナログ出力信号は、ノイズ除去等の信号処理が行われた後、A/D変換部30でデジタル信号に変換される。そして、A/D変換部30により変換されたデジタル信号は、RAM40に記憶される。
デジタル入力部20には、クランク角センサ121からのデジタル出力信号が入力される。
デジタル入力部20には、I/Oポート70が接続されている。デジタル入力部20に入力されたデジタル出力信号は、I/Oポート70を介してRAM40に記憶される。
RAM40に記憶された各出力信号は、MPU50で演算処理される。
MPU50は、ROM60に記憶された制御プログラム(図示せず)を実行することで、RAM40に記憶された出力信号を、制御プログラムに従って演算処理する。MPU50は、制御プログラムに従って、内燃機関100を駆動する各アクチュエータ(例えば、スロットル弁113、プレッシャレギュレータ132、点火プラグ200等)の作動量を規定する制御値を算出し、その制御値をRAM40に一時的に記憶する。
RAM40に記憶されたアクチュエータの作動量を規定する制御値は、I/Oポート70を介して出力回路80に出力される。
出力回路80には、各種センサ(例えば、アクセルポジションセンサ126)からの出力信号に基づいて内燃機関の全体制御を行う全体制御部81(図3参照)と、燃料噴射装置134のプランジャロッド(不図示)の駆動を制御する燃料噴射制御部82(図3参照)と、点火プラグ200に印加する電圧を制御する点火制御部83(図3参照)の機能などが設けられている。
[制御装置の機能ブロック]
次に、制御装置1の機能構成を、図3を参照して説明する。
次に、制御装置1の機能構成を、図3を参照して説明する。
図3は、制御装置1の機能構成を説明する機能ブロック図である。
制御装置1の各機能は、MPU50がROM60記憶された制御プログラムを実行することにより、出力回路80における各種機能として実現される。出力回路80における各種機能は、例えば、燃料噴射制御部82による燃料噴射装置134の制御や、点火制御部83による点火プラグ200の放電制御がある。
図3に示すように、制御装置1の出力回路80は、全体制御部81と、燃料噴射制御部82と、点火制御部83とを有する。
[全体制御部]
全体制御部81は、アクセルポジションセンサ126に接続されており、アクセルポジションセンサ126からの要求トルク(加速信号S1)を受け付ける。全体制御部81は、後述する筒内圧力検出処理により筒内圧力(p)を検出する。
全体制御部81は、アクセルポジションセンサ126に接続されており、アクセルポジションセンサ126からの要求トルク(加速信号S1)を受け付ける。全体制御部81は、後述する筒内圧力検出処理により筒内圧力(p)を検出する。
全体制御部81は、アクセルポジションセンサ126からの要求トルク(加速信号S1)と、検出した筒内圧力(p)とに基づいて、燃料噴射制御部82と、点火制御部83の全体的な制御を行う。
[燃料噴射制御部]
燃料噴射制御部82は、内燃機関100の各気筒150を判別する気筒判別部84と、クランクシャフト123のクランク角を計測する角度情報生成部85と、エンジン回転数を計測する回転数情報生成部86と、に接続されている。燃料噴射制御部82は、気筒判別部84からの気筒判別情報S3と、角度情報生成部85からのクランク角度情報S4と、回転数情報生成部86からのエンジン回転数情報S5と、を受け付ける。
燃料噴射制御部82は、内燃機関100の各気筒150を判別する気筒判別部84と、クランクシャフト123のクランク角を計測する角度情報生成部85と、エンジン回転数を計測する回転数情報生成部86と、に接続されている。燃料噴射制御部82は、気筒判別部84からの気筒判別情報S3と、角度情報生成部85からのクランク角度情報S4と、回転数情報生成部86からのエンジン回転数情報S5と、を受け付ける。
また、燃料噴射制御部82は、気筒150内に吸気される空気の吸気量を計測する吸気量計測部87と、エンジン負荷を計測する負荷情報生成部88と、エンジン冷却水の温度を計測する水温計測部89と、に接続されている。燃料噴射制御部82は、吸気量計測部87からの吸気量情報S6と、負荷情報生成部88からのエンジン負荷情報S7と、水温計測部89からの冷却水温度情報S8と、を受け付ける。
燃料噴射制御部82は、受け付けた各情報に基づいて、燃料噴射装置134から噴射される燃料の噴射量と噴射時間を算出する。そして、燃料噴射制御部82は、算出した燃料の噴射量と噴射時間とに基づいて生成した燃料噴射パルスS9を燃料噴射装置134に送信する。
[点火制御部]
点火制御部83は、全体制御部81のほか、気筒判別部84と、角度情報生成部85と、回転数情報生成部86と、負荷情報生成部88と、水温計測部89とに接続されており、これらからの各情報を受け付ける。
点火制御部83は、全体制御部81のほか、気筒判別部84と、角度情報生成部85と、回転数情報生成部86と、負荷情報生成部88と、水温計測部89とに接続されており、これらからの各情報を受け付ける。
点火制御部83は、受け付けた各情報に基づいて、点火コイル300の1次側コイル310(図8参照)に通電する電流量(通電角)と、通電開始時間と、1次側コイル310に通電した電流を遮断する時間(点火時間)を算出する。
点火制御部83は、算出した通電量と、通電開始時間と、点火時間とに基づいて、点火コイル300の1次側コイル310に通電信号SAを出力することで、点火プラグ200による放電制御(点火制御)を行う。
[内燃機関の運転状態と点火プラグ周囲のガス流速との関係]
次に、内燃機関100の運転状態と点火プラグ200周囲のガス流速との関係を、図4を参照して説明する。
図4は、内燃機関100の運転状態と点火プラグ200周囲のガス流速との関係を説明する図である。
次に、内燃機関100の運転状態と点火プラグ200周囲のガス流速との関係を、図4を参照して説明する。
図4は、内燃機関100の運転状態と点火プラグ200周囲のガス流速との関係を説明する図である。
図4に示すように、一般的に、エンジン回転数や負荷が高いほど、気筒150内のガス流速が高くなり、点火プラグ200周囲のガスが高流速になる。したがって、エンジン回転数や負荷が高い場合は、点火プラグ200の中心電極210と外側電極220との間において、ガスが高速に流れることとなる。
また、排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)が行われる内燃機関100では、エンジン回転数と負荷の関係に応じて、例えば図4に示すようにEGR率が設定される。なお、EGR率をより高く設定する高EGR領域を拡大するほど、低燃費化や低排気化を実現できる。しかし、高EGR領域では、火炎核が成長する確率が下がるため、点火プラグ200において着火不良が生じやすくなる。
[点火プラグの電極間における放電路と流速の関係]
次に、点火プラグの電極間における放電路と流速の関係を、図5A,Bを参照して説明する。
図5A,Bは、点火プラグの電極間における放電路と流速の関係を説明する図である。
次に、点火プラグの電極間における放電路と流速の関係を、図5A,Bを参照して説明する。
図5A,Bは、点火プラグの電極間における放電路と流速の関係を説明する図である。
図5A,Bに示すように、点火プラグ200の中心電極210と外側電極220の間に絶縁破壊が生じると、電極210,220間に流れる電流が一定値以下になるまでの間、電極210,220間に放電路211が形成される。この放電路211に可燃ガスが接触すると、火炎核が成長して燃焼に至る。放電路211は、電極210,220間のガス流れの影響を受けて移動するため、図5Aに示すように、ガス流速が高いほど短時間で長い放電路211を形成する。一方、図5Bに示すように、ガス流速が低いほど放電路211が短くなる。
内燃機関100が高EGR率で運転される場合は、可燃ガスが放電路211と接触しても火炎核が成長する確率が下がる。そのため、可燃ガスが放電路211と接触する機会を増やす必要がある。前述したように、放電路211は、ガスの絶縁を破壊して生成される。したがって、放電路211の維持に必要な電流を一定とすれば、放電路211の維持には、放電路211の長さに応じた電力の供給が必要となる。
ガス流速が高い場合は、短時間で大きな電力を点火コイル300から点火プラグ200へ出力するように点火コイル300の通電制御を行う。これにより、図5Aに示すような長い放電路211を形成することができる。その結果、放電路211は、広範な空間のガスとの接触機会を得ることが可能となる。
一方、ガス流速が低い場合は、点火コイル300から点火プラグ200へ小さな電力を長時間出力し続けるように点火コイル300の通電制御を行う。これにより、図5Bに示すような短い放電路211の形成を維持することができる。その結果、放電路211は、点火プラグ200の電極付近を通過するガスとの接触機会をより長時間にわたって得ることができる。
[点火コイルの電気回路]
次に、一実施形態に係る点火コイルについて、図6を参照して説明する。
図6は、一実施形態に係る点火コイルを含む電気回路を説明する図である。
次に、一実施形態に係る点火コイルについて、図6を参照して説明する。
図6は、一実施形態に係る点火コイルを含む電気回路を説明する図である。
図6に示す電気回路400は、点火コイル300を有している。点火コイル300は、所定の巻き数で巻かれた1次側コイル310と、1次側コイル310よりも多い巻き数で巻かれた2次側コイル320と、を含んで構成される。
1次側コイル310の一端は、直流電源330に接続されている。これにより、1次側コイル310には、所定の電圧(例えば12V)が印加される。1次側コイル310の他端は、イグナイタ(通電制御回路)340のコレクタ(C)端子に接続されており、イグナイタ340を介して接地されている。イグナイタ340には、トランジスタや電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)などが用いられる。
イグナイタ340のベース(B)端子は、点火制御部83に接続されている。点火制御部83から出力された通電信号SAは、イグナイタ340のベース(B)端子に入力される。イグナイタ340のベース(B)端子に通電信号SAが入力されると、イグナイタ340のコレクタ(C)端子とエミッタ(E)端子間が通電状態となり、コレクタ(C)端子とエミッタ(E)端子間に電流が流れる。これにより、点火制御部83からイグナイタ340を介して点火コイル300の1次側コイル310に通電信号SAが出力される。その結果、1次側コイル310に電流が流れて電力(電気エネルギー)が蓄積される。
点火制御部83からの通電信号SAの出力が停止すると、1次側コイル310に流れる電流が遮断される。その結果、1次側コイル310に対するコイルの巻き数比に応じた高電圧が2次側コイル320に発生する。なお、点火プラグ200と2次側コイル320との間には、2次電圧を検出する電圧検出部と、2次電流を検出する電流検出部が設けられている。
2次側コイル320に発生する高電圧は、点火プラグ200の中心電極210(図5A,B参照)に印加される。これにより、点火プラグ200の中心電極210と、外側電極220との間に電位差が発生する。この中心電極210と外側電極220との間に発生した電位差が、ガス(気筒150内の混合気)の絶縁破壊電圧Vm以上になると、ガス成分が絶縁破壊されて中心電極210と外側電極220との間に放電が生じる。その結果、燃料(混合気)への点火(着火)が行われる。点火制御部83は、通電信号SAを用いて電気回路400を上述しように動作させ、点火コイル300の通電を制御する。
[点火放電と筒内圧力の関係式]
次に、点火放電と筒内圧力の関係式について説明する。
次に、点火放電と筒内圧力の関係式について説明する。
KIMの関係式は、誘導放電またはグロー放電時に成立するとされている。この関係式において、V2は2次電圧、I2は2次電流、pは筒内圧力、p0は大気圧、lは放電路の長さを表す。したがって、V2、I2、p、lは変数であり、p0は固定値である。
上述の式(2)では、l、I2、p、p0からV2を算出する。式(2)を式(3)~式(5)のように変換することで、l、I2、V2、p0からpを算出することが可能となる。なお、式(5)は、上述の式(1)と同じである。
[関係式のみを用いた筒内圧力の算出]
次に、上述の式(5)のみを用いて算出した筒内圧力(p)について、図7を参照して説明する。
図7は、上述の式(5)のみを用いて算出した筒内圧力(p)の精度を評価した例を示す図である。
次に、上述の式(5)のみを用いて算出した筒内圧力(p)について、図7を参照して説明する。
図7は、上述の式(5)のみを用いて算出した筒内圧力(p)の精度を評価した例を示す図である。
図7に示す各グラフの横軸は、放電開始後の時間[msec]を表す。図7に示す各グラフの縦軸は、2次電流(I2)[A]、2次電圧(V2)[kV]、筒内圧力(p)[kPa]を表す。
図7において、2次電流(I2)、2次電圧(V2)及び筒内圧力(p)を示す実線は、実測値である。実測値は、2個の点火コイルを用いて時間差で連続放電することにより、放電期間を延長して測定している。これにより、測定可能期間を長くすることができ、より多くの情報から燃焼指標を算出できる。
また、筒内圧力(p)を示す破線は、上述の式(5)を用いて算出した算出値である。具体的には、放電路の長さ(l)を電極間距離とし、2次電流(I2)と2次電圧(V2)の測定値を、関係式へ代入した結果が、破線で示す筒内圧力(p)である。筒内圧力(p)を示す実線は、燃焼圧センサを用いて筒内圧力(p)を測定した実測値である。
図7に示すように、2次電流(I2)と2次電圧(V2)の波形には、放電路の伸長や再放電に伴う変動が見られる。そして、筒内圧力(p)の算出値(破線)は、実測値(実線)に対して乖離と一致を繰り返している。これは、再放電開始時に放電路が電極間の最短距離で形成されているときに、上述の式(5)、すなわちKIMの関係式が成立していると考えられる。そして、放電後は、筒内のガス流れの影響により放電路が伸長するため、上述の式(5)により算出した筒内圧力が、実測した筒内圧力に対して乖離すると考えられる。したがって、単に上述の式(5)を用いて筒内圧力(p)を算出する場合は、精度が低下するという問題がある。
[筒内圧力の周波数成分]
次に、筒内圧力(p)の周波数成分について、図8を参照して説明する。
図8は、筒内圧力(p)の周波数成分の例について説明する図である。
次に、筒内圧力(p)の周波数成分について、図8を参照して説明する。
図8は、筒内圧力(p)の周波数成分の例について説明する図である。
図8は、図7に示す筒内圧力(p)の波形について、FFT(Fast Fourier transform)処理した結果を示している。図8に示すグラフの横軸は次数を表し、縦軸はフーリエ係数(振幅)を表す。図8において、実線は、実測値の波形をFFT処理したものであり、破線は、上述の式(5)を用いた算出値の波形をFFT処理したものである。
図8に示すように、算出値に係る破線には、3つの極大部が確認できる。各極大部を含むそれぞれの帯域を、次数が小さい方から低周波帯A、中周波帯B、高周波帯Cとする。低周波帯Aにおける破線は、低周波帯Aにおける実線と略一致している。実線は、筒内圧力の成分のみであるため、この周波数帯域(低周波帯A)における破線は、筒内圧力の成分であると考える。
一方、中周波帯B及び高周波帯Cにおいて、破線は、実線から乖離している。この乖離の要因としては、放電路の伸長による2次電流(I2)と2次電圧(V2)の緩やかな変動と、再放電による2次電流(I2)と2次電圧(V2)の急激な変動が挙げられる。つまり、中周波帯Bにおける破線には、放電路伸長の周波数成分が含まれ、高周波帯Cにおける破線には、再放電の周波数成分が含まれていると考えられる。
また、再放電に伴う絶縁破壊は、容量放電(アーク放電)が生じる。上述したように、KIMの関係式は、誘導放電またはグロー放電時に成立するとされている。したがって、高周波帯Cでは、KIMの関係式を適用できない。
そこで、本実施形態では、2次電流(I2)と2次電圧(V2)の波形から中周波帯B及び高周波帯C(すなわち、高周波成分)を除去し、その後、上述の式(5)を用いて筒内圧力(p)を算出する。これにより、放電路伸長と再放電の周波数成分の影響を無くした算出値(筒内圧力(p))を得ることができる。放電路伸長の周波数成分を除去すると、仮想的な無風状態となり、放電路の長さが電極間(電極210,220間)の最短距離に固定される。なお、本発明に係る高周波成分は、放電路伸長の周波数成分と再放電の周波数成分を含むものである。
中周波帯B及び高周波帯Cの除去を行う際に、一般的なアナログローパスフィルタ回路を用いると、応答遅れや位相ずれが生じる。その結果、算出した筒内圧力の精度が低下する。そのため、低周波帯Aと中周波帯Bの間にカットオフ次数を設け、カットオフ次数以上の破線の値をゼロにして逆FFT処理を行う。これにより、応答遅れや位相ずれを低減することができる。
[筒内圧力検出処理]
次に、本実施形態に係る全体制御部81により行われる筒内圧力検出処理について、図9を参照して説明する。
図9は、本実施形態に係る筒内圧力検出処理の手順を示すフローチャートである。
次に、本実施形態に係る全体制御部81により行われる筒内圧力検出処理について、図9を参照して説明する。
図9は、本実施形態に係る筒内圧力検出処理の手順を示すフローチャートである。
まず、全体制御部81は、2次電流(I2)及び2次電圧(V2)を検出する(S1)。S1の処理では、2次電流(I2)及び2次電圧(V2)の放電波形(放電期間の波形)を検出する。
次に、全体制御部81は、放電波形から高周波成分を除去し、除去した波形から2次電流(I2)及び2次電圧(V2)の値を取得する(S2)。S2の処理では、予め定められたカットオフ次数以上(次数範囲)をゼロとするようにFFT処理を行い、その後、逆FFT処理を行うことのより、高周波成分を除去する。なお、カットオフ次数は、燃焼圧センサ(実測値を得るために用意した基準センサ)を用いて取得した筒内圧力の波形における周波数成分に基づいて定める。
次に、全体制御部81は、KIMの関係式を変換して得た上述の式(5)を用いて筒内圧力(p)を算出する(S3)。S3の処理後、全体制御部81は、筒内圧力検出処理を終了する。このように、2次電流(I2)及び2次電圧(V2)の放電波形から高周波成分を除去することにより、仮想的な無風状態にすることができ、放電路伸長の影響を取り除くことができる。すなわち、放電路の長さを電極間の最短距離に固定することができる。その結果、筒内圧力(p)を精度良く検知(算出)することができる。
図10は、本実施形態に係る筒内圧力(p)の検出精度を評価した例を示す図である。図10に示す各グラフの横軸は、放電開始後の時間[msec]を表す。図7に示す各グラフの縦軸は、2次電流(I2)[A]、2次電圧(V2)[kV]、筒内圧力(p)[kPa]を表す。
図10において、2次電流(I2)及び2次電圧(V2)を示す実線は、上述したFFT処理及び逆FFT処理を行って高周波成分を除去したものである。また、筒内圧力(p)を示す実線は、燃焼圧センサを用いて筒内圧力(p)を測定した実測値である。筒内圧力(p)を示す破線は、上述の式(5)を用いて算出した算出値である。具体的には、放電路の長さ(l)を電極間距離とし、高周波成分を除去した2次電流(I2)と2次電圧(V2)を、関係式へ代入した結果が、破線で示す筒内圧力(p)である。
上述の式(5)を用いて算出した算出値である破線は、燃焼圧センサを用いた実測値である実線との乖離が小さくなる。これにより、筒内圧力(p)の検知精度(算出精度)が向上していることが確認できる。その結果、気筒別の燃焼制御を高精度に行うことができ、車両の燃費を向上することができる。
2.まとめ
以上説明したように、上述した実施形態に係る筒内圧力検出方法は、2次側コイル(2次側コイル320)の情報を用いて筒内圧力(p)を検出する。この筒内圧力検出方法では、2次側コイルの放電波形から高周波成分を除去し、高周波成分を除去した放電波形から2次電流(I2)及び2次電圧(V2)の情報を取得する。そして、上述の式(1)(式(5))から筒内圧力(p)を算出する。これにより、点火プラグ(点火プラグ200)の電極間(中心電極210と外側電極220との間)を仮想的な無風状態にして、放電路伸長や再放電の影響を取り除いて筒内圧力(p)を検出することができる。その結果、精度の良い筒内圧力(p)の検出を行うことができ、気筒の部品特性に合わせた燃焼制御を実現することができる。したがって、燃費の向上を図ることができる。また、燃焼圧センサを用いて筒内圧力(p)を検出する必要がないため、部品点数を削減して内燃機関システムの低コスト化を実現することができる。
以上説明したように、上述した実施形態に係る筒内圧力検出方法は、2次側コイル(2次側コイル320)の情報を用いて筒内圧力(p)を検出する。この筒内圧力検出方法では、2次側コイルの放電波形から高周波成分を除去し、高周波成分を除去した放電波形から2次電流(I2)及び2次電圧(V2)の情報を取得する。そして、上述の式(1)(式(5))から筒内圧力(p)を算出する。これにより、点火プラグ(点火プラグ200)の電極間(中心電極210と外側電極220との間)を仮想的な無風状態にして、放電路伸長や再放電の影響を取り除いて筒内圧力(p)を検出することができる。その結果、精度の良い筒内圧力(p)の検出を行うことができ、気筒の部品特性に合わせた燃焼制御を実現することができる。したがって、燃費の向上を図ることができる。また、燃焼圧センサを用いて筒内圧力(p)を検出する必要がないため、部品点数を削減して内燃機関システムの低コスト化を実現することができる。
また、上述した実施形態に係る筒内圧力検出方法において、式(1)における放電路の長さ(l)は、点火プラグ(点火プラグ200)における電極間の最短距離である。これにより、再現性の高い電極間距離を放電路の長さとして用いることができる。また、放電路の長さの検知を不要にすることができる。
また、上述した実施形態に係る筒内圧力検出方法において、高周波成分の除去は、2次電流と2次電圧の波形データについて予め定めた次数範囲をゼロとするようにFFT処理を行い、その後逆FFT処理を行うことにより達成される。これにより、高周波成分を除去すると共に、応答遅れや位相ずれを低減することができる。
また、上述した実施形態に係る筒内圧力検出方法において、予め定めた次数範囲は、燃焼圧センサを用いて取得した実測値の圧力波形における周波数成分から定める。これにより、除去する高周波成分を正確に定めることができ、放電路伸長の周波数成分や再放電の周波数成分をより確実に除去することができる。
また、上述した実施形態に係る内燃機関制御装置(制御装置1)は、1次側コイル(1次側コイル310)と、1次側コイルの通電が遮断されると、起電力が生じる2次側コイルと、2次側コイルに接続された点火プラグ(点火プラグ200)とを有する。そして、2次側コイルの放電波形から高周波成分を除去し、高周波成分を除去した放電波形から2次電流及び2次電圧の情報を取得し、上述の式(1)(式(5))から筒内圧力を算出する制御部(全体制御部81)を備える。これにより、放電路伸長や再放電の影響を取り除いて筒内圧力(p)を検出することができる。その結果、精度の良い筒内圧力(p)の検出を行うことができ、気筒の部品特性に合わせた燃焼制御を実現することができる。したがって、燃費の向上を図ることができる。また、燃焼圧センサを用いて筒内圧力(p)を検出する必要がないため、部品点数を削減して内燃機関システムの低コスト化を実現することができる。
なお、本発明に係る筒内圧力検出方法並びに内燃機関制御装置は、筒内圧センサ(燃焼圧センサ)を備えた内燃機関にも適用可能である。その場合は、筒内圧センサの出力と筒内圧力検出方法を用いて検出した筒内圧力(p)とを比較することで筒内圧センサの診断を実施することも可能である。また、筒内圧センサが故障した場合には、本発明に係る筒内圧検出方法を用いて筒内圧力を検出して、内燃機関を制御することでフェールオペレーショナルな制御を実現可能となる。
以上、本発明の筒内圧力検出方法、筒内圧センサ診断方法及び内燃機関制御装置の実施形態について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の筒内圧力検出方法、筒内圧センサ診断方法及び内燃機関制御装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
また、上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、全体制御部81が筒内圧力検出処理を行う構成にした。しかし、本発明に係る筒内圧力検出処理は、制御装置1とは別に設けた制御部、例えば、デジタルシグナルプロセッサ(DNP)としてもよい。この場合は、2次側コイルのノイズが制御装置1に混入することを防止することができる。また、制御装置1とは別に筒内圧力検出処理を行う制御部を設けた場合は、その制御部と制御装置1によって内燃機関制御装置が構成される。
1…制御装置、 10…アナログ入力部、 20…デジタル入力部、 30…A/D変換部、 40…RAM、 50…MPU、 60…ROM、 70…I/Oポート、 80…出力回路、 81…全体制御部、 82…燃料噴射制御部、 83…点火制御部、 84…気筒判別部、 85…角度情報生成部、 86…回転数情報生成部、 87…吸気量計測部、 88…負荷情報生成部、 89…水温計測部、 100…内燃機関、 110…エアクリーナ、 111…吸気管、 112…吸気マニホールド、 113…スロットル弁、 115…吸気温センサ、 120…リングギア、 123…クランクシャフト、 125…アクセルペダル、 130…燃料タンク、 131…燃料ポンプ、 132…プレッシャレギュレータ、 133…燃料配管、 134…燃料噴射装置、 150…気筒、 151…吸気弁、 152…排気弁、 160…排気マニホールド、 161…三元触媒、 170…ピストン、 200…点火プラグ、 210…中心電極、 211…放電路、 220…外側電極、 230…絶縁体、 300…点火コイル、 310…1次側コイル、 320…2次側コイル、 330…直流電源、 340…イグナイタ(通電制御回路)、 400…電気回路
Claims (6)
- 前記放電路の長さは、前記点火プラグにおける電極間の最短距離である
請求項1に記載の筒内圧力検出方法。 - 前記高周波成分の除去は、2次電流と2次電圧の波形データについて予め定めた次数範囲をゼロとするようにFFT処理を行い、その後逆FFT処理を行うことにより達成される
請求項1又は2に記載の筒内圧力検出方法。 - 前記予め定めた次数範囲は、燃焼圧センサを用いて取得した実測値の圧力波形における周波数成分から定める
請求項3に記載の筒内圧力検出方法。 - 請求項1に記載の筒内圧検出方法で検出した筒内圧力と、筒内圧センサの出力とを用いて、該筒内圧センサの診断を実施する筒内圧センサ診断方法。
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