JP2020165352A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】火花点火式内燃機関の制御において、マルチ点火を実施可能な領域をより拡大する。【解決手段】点火コイルに通電後その通電を遮断することで生じる誘導電圧を点火プラグの電極に印加しその電極間に放電を惹起する火花点火式内燃機関を制御する制御装置であって、点火コイルまたはその周辺の温度が所定値未満であることを含むマルチ点火許可条件が成立していることを条件として一つの気筒の一度のサイクル中に点火を目的として二回以上の放電を実行し、さもなくば一つの気筒の一度のサイクル中に点火を目的として一回の放電を実行することとし、一つの気筒の一度のサイクル中に点火を目的として二回以上の放電を実行する場合、一回のみ放電を実行する場合と比較して、一回目の放電を惹起するために点火コイルに通電する時間の長さをより短縮する内燃機関の制御装置を構成した。【選択図】図7

Description

本発明は、火花点火式内燃機関を制御する制御装置に関する。
火花点火式の内燃機関において、気筒に充填された混合気に点火するための点火プラグは、点火コイルにて発生する誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で絶縁破壊による放電を惹起する。
点火コイルに通電する電気回路上には、半導体スイッチング素子を有するイグナイタが設けられている。イグナイタの半導体スイッチを点弧する(ON状態(導通状態)とする)と、点火コイルの一次側に電流が流れる。一次側コイルを流れる一次電流は、半導体スイッチを点弧している間逓増する。その後、然るべき火花点火のタイミングにて半導体スイッチを消弧する(OFF状態(非導通状態)とする)と、一次電流が遮断された瞬間の自己誘導作用により点火コイルの一次側に高電圧が発生する。そして、一次側と磁気回路及び磁束を共有する二次側コイルにさらに高い誘導電圧が発生する。この高い誘導電圧が点火プラグの中心電極に印加されることで、中心電極と接地電極との間に放電が発生する(以上、例えば下記特許文献1を参照)。
また、車両等に搭載される内燃機関について、排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置を備えたものが知られている。EGR装置は、内燃機関の排気通路の所定箇所と吸気通路の所定箇所とを外部EGR通路により接続し、排気の一部をEGR通路を介して吸気通路に還流させて吸気に混交するものである。EGRにより、気筒における混合気の燃焼温度を低下させて有害物質であるNOxの排出量を削減しつつ、ポンピングロスの低減を図ることができる。
EGR通路上には、当該EGR通路を開閉し、EGR通路を流れるEGRガスの流量を増減調整するための流量制御弁であるEGRバルブが設置される。EGRバルブの弁体は、ステッピングモータ、サーボモータ等を用いて駆動する(以上、例えば下記特許文献2を参照)。
特開2016−089631号公報 特開2019−023444号公報
近時、一つの気筒の一度のサイクル(4ストロークエンジンでは、吸気行程−圧縮行程−膨脹行程−排気行程の一連を一サイクルとする)中に、点火を目的として二回以上の放電を実行するマルチ点火(マルチスパーク、多重放電)を実施することが検討されている。
マルチ点火は、メインとなる点火の直後に追加的な点火を実行し、気筒内の燃料または混合気の着火燃焼を補強し、以て燃焼の不安定化ないし失火の発生を防止することを企図している。マルチ点火により、吸気に占めるEGRガスの割合であるEGR率の上限を引き上げることが可能となり、内燃機関の燃費性能の一層の向上を期待できるものと考えられる。
だが、マルチ点火を実施することにより、一サイクル中に一回火花点火を行う従来の点火装置に比して、点火コイルに通電している時間が必然的に長くなる。その帰結として、点火コイルの発熱量が増大し、点火コイルが熱害を受けて損傷するおそれが生じる。それ故、恒常的にマルチ点火を行うことは困難であり、点火コイルの過剰な昇温を回避しながら、マルチ点火と一回点火とを適宜切り替える必要がある。
本発明は、マルチ点火を実施可能な領域をより拡大することを所期の目的としている。
本発明では、点火コイルに通電後その通電を遮断することで生じる誘導電圧を点火プラグの電極に印加しその電極間に放電を惹起する火花点火式内燃機関を制御する制御装置であって、点火コイルまたはその周辺の温度が所定値未満であることを含むマルチ点火許可条件が成立していることを条件として一つの気筒の一度のサイクル中に点火を目的として二回以上の放電を実行し、さもなくば一つの気筒の一度のサイクル中に点火を目的として一回の放電を実行することとし、一つの気筒の一度のサイクル中に点火を目的として二回以上の放電を実行する場合、一回のみ放電を実行する場合と比較して、一回目の放電を惹起するために点火コイルに通電する時間の長さをより短縮する内燃機関の制御装置を構成した。
本発明によれば、火花点火式内燃機関の制御において、マルチ点火を実施可能な領域をより拡大することができる。
本発明の一実施形態における火花点火式内燃機関及びその制御装置の概略構成を示す図。 同実施形態の内燃機関の点火装置の回路図。 同実施形態の制御装置が実施するマルチ点火における火花点火のタイミングの一例を示す図。 同実施形態の制御装置が実施するマルチ点火における一次電流及び二次電流の推移を示す図。 同実施形態における、エンジン回転数及びアクセル開度とマルチ点火の実施の要否との関係を示す図。 同実施形態における、エンジン回転数及び蓄電装置の端子電圧とマルチ点火の実施の可否との関係を示す図。 同実施形態の制御装置がプログラムに従い実行する処理の手順例を示す図。 同実施形態の制御装置が記憶している、内燃機関の運転領域とEGRバルブの開度との関係を規定するマップデータを示す図。 マルチ点火を実施するか否かにより変動する燃焼限界のEGR率を示す図。 EGRバルブの開度を縮小してから吸気通路に還流するEGRガス量が減少するまでのタイムラグを示す図。 同実施形態の制御装置がプログラムに従い実行する処理の手順例を示す図。 同実施形態の制御装置がプログラムに従い実行する処理の手順例を示す図。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態における内燃機関は、ポート噴射式の4ストローク火花点火エンジンであり、複数の気筒1(例えば、三気筒。図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気ポート近傍には、吸気ポートに向けて燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部にそれぞれ、点火プラグ12を取り付けてある。
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
外部EGR装置2は、排気通路4を流れる排気の一部を吸気通路3に還流させて吸気に混交する外部EGRを実現するものである。このEGR装置2は、排気通路4における触媒41の上流側と吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流側とを連通する外部EGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における排気マニホルド42またはその下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所、特にサージタンク33に接続している。
内燃機関には、各気筒1の少なくとも吸気バルブの開閉タイミングを可変制御できるVVT(Variable Valve Timing)機構5が付帯することがある。吸気バルブタイミングを調節するためのVVT機構5は、例えば、各気筒1の吸気バルブを駆動するカムシャフトのクランクシャフトに対する回転位相を液圧(潤滑油圧)によって変化させるベーン式のものや、電動機によって変化させる電動式のもの(モータドライブVVT)である。周知の通り、カムシャフトは、内燃機関の出力軸であるクランクシャフトから回転駆動力の供給を受け、クランクシャフトに従動して回転する。クランクシャフトとカムシャフトとの間には、回転駆動力を伝達するための巻掛伝動装置(図示せず)が介在している。巻掛伝動装置は、クランクシャフト側に設けたクランクスプロケット(または、プーリ)と、カムシャフト側に設けたカムスプロケット(または、プーリ)と、これらスプロケット(または、プーリ)に巻き掛けるタイミングチェーン(または、タイミングベルト)とを要素とする。VVT機構5は、カムシャフトをカムスプロケットに対し相対的に回動させることを通じて、カムシャフトのクランクシャフトに対する回転位相を変化させ、以て吸気バルブの開閉タイミングを変更する。
排気バルブの開閉タイミングを調節するためのVVT機構は、例えば、各気筒1の排気バルブを駆動するカムシャフトのクランクシャフトに対する回転位相を液圧や電動機によって変化させるものである。なお、このVVT機構は存在しないことがあり、その場合、排気バルブタイミングは不変である。
図2に、火花点火式内燃機関の点火装置の電気回路を例示する。点火プラグ12は、点火コイル14にて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で放電を惹起するものである。点火コイル14は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の半導体スイッチング素子131を有するイグナイタ13とともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
内燃機関の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0からの点火信号iをイグナイタ13が受けると、まずイグナイタ13の半導体スイッチ131が点弧して点火コイル14の一次側141に電流が流れ、その直後の火花点火のタイミングで半導体スイッチ131が消弧してこの電流が遮断される。すると、自己誘導作用が起こり、一次側141に高電圧が発生する。そして、一次側141と二次側142とは磁気回路及び磁束を共有するので、二次側142にさらに高い誘導電圧が発生する。二次側142の誘導電圧は、10kVないし30kVに達する。この高い誘導電圧が点火プラグ12の中心電極に印加され、中心電極と接地電極との間で放電が起こる。
点火コイル14の一次側コイル141は、半導体スイッチ131を介して車載の蓄電装置16に接続する。蓄電装置16は、バッテリ(鉛バッテリ、リチウムイオンバッテリ、ニッケル水素バッテリ、その他)やキャパシタ等である。複数の種類の蓄電装置16を組み合わせて車両に搭載することもあり得る。
半導体スイッチ131を点弧し、蓄電装置16から供給される直流電圧を一次側コイル141に印加して通電を開始すると、一次側コイル141を含む一次側(低圧系)の回路を流れる一次電流は逓増する。蓄電装置16及び一次側コイル141を含む一次側の電気回路をRL直列回路と仮定すると、t=0時点にて直流電圧Eの印加を開始した場合の一次電流I(t)は、
I(t)≒{1−e-(R/L)t}E/R
となる。即ち、過渡現象として一次電流は逓増するが、その増加の速さは徐々に衰える。通電の開始から長時間が経過すると、一次電流はE/Rに飽和する。但し、現実には、後述する電流制限機能が働くことで、一次側コイル141への通電を続けていても一次電流がそれ以上増加しなくなるため、飽和値E/Rには必ずしも到達しない。
一次電流が必要十分に大きくなった状態で、ECU0は、気筒1の点火タイミングに合わせて、当該気筒1に付随するイグナイタ13の半導体スイッチ131を消弧し、当該気筒1に付随する点火コイル14の一次側コイル141への通電を遮断する。それにより、同点火コイル14にて発生する誘導電圧を、当該気筒1の点火プラグ12の中心電極に印加し、以て点火プラグ12の中心電極と接地電極との間での絶縁破壊による放電を惹起する。
因みに、イグナイタ13は、一次電流の過大化を抑制する電流制限機能を有している。この電流制限機能は、今日普及している既製のイグナイタのそれと同様である。具体的には、制御回路132が、検出抵抗133を介して、一次電流を当該抵抗133の両端間電圧の形で恒常的に計測する。そして、その一次電流(抵抗133の両端間電圧)の大きさが規定値以下である間は半導体スイッチ131を点弧するが、規定値を超えたときには半導体スイッチ131を消弧する。これにより、一次電流の大きさを規定値にクリップする。
また、イグナイタ13には、例えばツェナーダイオード134を使用した一次電圧設定部を付設している。この一次電圧設定部は、半導体スイッチ131を高電圧から保護する目的で、点火コイル14の一次側コイル141に誘導される一次電圧の大きさを所定値に抑制する役割を担う。半導体スイッチ131がIGBTである場合、電圧クランプ用のツェナーダイオード134はIGBT131のコレクタ−ゲート間に介在し、そのアノードがIGBT131のゲートに接続し、カソードがIGBT131のコレクタに接続する。ツェナーダイオード134は、IGBT131を消弧することで点火コイル14の一次側コイル141に誘起される一次電圧の大きさを、例えば350Vないし600Vの範囲内のある値(一例として、560V)にクリップし、一次電圧がそれ以上大きく高まることを阻止する働きをする。
加えて、イグナイタ13は、点火コイル14またはイグナイタ13自身の温度が上限値を超えるような異常発熱を感知した場合に、一次側コイル141への通電を強制的に遮断する機能をも有している。
本実施形態の内燃機関の点火装置は、各気筒1毎に、当該気筒1の点火プラグ12に対して火花点火用の高電圧を供給するための点火コイル14を一個ずつ有している。各気筒1毎の点火コイル14はそれぞれ、一個の一次側コイル141と、一個の二次側コイル142とが対をなすものである。そして、その一次側コイル141と二次側コイル142とは、ダイオード15を介して接続している。ダイオード15は、二次側142からの逆流を防ぐノイズ防止用のものである。
点火コイル14への通電やバルブ23、32、モータの駆動、その他車両に実装された電装系等への電力供給源となる発電機17は、内燃機関の出力軸であるクランクシャフトからエンジントルクの供給を受けて発電し、その発電した電力を車載の蓄電装置16に蓄電する。
発電機17は、自動車用発電機として旧来より用いられているオルタネータであることもあれば、内燃機関のクランクシャフトまたは車両の車軸(そして、駆動輪)を駆動する電動機としての機能を兼ね備えたモータジェネレータまたはISG(Integrated Starter Generator)であることもある。内燃機関と発電機17とは、例えばベルト及びプーリを要素とする巻掛伝動装置等を介して接続される。
発電機17に付随するICレギュレータまたはコントローラ171は、ECU0から発される、発電機17の出力電圧の目標値を指令する制御信号mを受け付ける。そして、その指令された目標電圧に蓄電装置16の端子電圧(または、電装系に供給する電源電圧)を追従せしめるべく、半導体スイッチング素子をスイッチ動作させて励磁(界磁)巻線に印加する励磁電流の大きさを調節するPWM(Pulse Width Modulation)制御を実施する。発電機17の出力電圧は、励磁巻線を流れる励磁電流が大きいほど大きくなる。
また、発電機17は、車両の減速時に回生制動を行い、車両の運動エネルギを電気エネルギとして回収することができる。ECU0は、運転者によるアクセルペダルの踏込量が0または0に近い所定値以下となったとき、即ち内燃機関及び車両の減速が要求されているときに、発電機17の励磁巻線を流れる励磁電流の上限値及び発電機17の出力電圧を引き上げる制御信号mをICレギュレータまたはコントローラ171に与える。
本実施形態のECU0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。ECU0は、複数基のECUまたはコントローラが、CAN(Controller Area Network)等の電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されてなるものであることがある。
ECU0の入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、内燃機関のクランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するクランク角センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求されるエンジン負荷率またはエンジントルク)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、車載の蓄電装置16の端子電圧及び/または端子電流(特に、バッテリ電圧及び/またはバッテリ電流)を検出するセンサから出力される電圧/電流信号e、内燃機関の温度を示唆する冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号f、吸気カムシャフトの複数のカム角にてカム角センサから出力されるカム角信号g、外気温を検出する外気温センサから出力される外気温信号h等が入力される。
ECU0の出力インタフェースからは、イグナイタ13に対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、EGRバルブ23に対して開度操作信号l、発電機17のICレギュレータまたはコントローラ171に対して発電機17を制御するための制御信号m、VVT機構5に対してバルブタイミングの制御信号n等を出力する。
ECU0のプロセッサは、メモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒1に充填される吸気の量、新気の分圧及びEGRガスの分圧を推算する。そして、それらに基づき、吸気量(新気量)に見合った要求燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング、要求EGR率(または、EGRガス量)、発電機17の発電量(出力電圧)、吸気バルブ及び/または排気バルブの開閉タイミング等といった各種運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、l、m、nを出力インタフェースを介して印加する。
本実施形態のECU0は、一つの気筒1の一度のサイクル中に、換言すれば当該気筒1における圧縮行程から膨脹行程に亘る期間に、二回以上の火花点火を実行するマルチ点火を実施することができる。マルチ点火における、点火プラグ12の電極間で惹起される各回の放電は何れも、気筒1に充填された混合気即ち気筒1内に存在する燃料への点火を目的とする。マルチ点火は、メインとなる点火の直後に追加的な点火を実行することで、混合気の着火燃焼を補強し、失火の発生または燃焼の不安定化を防止することを企図している。マルチ点火により、吸気のEGR率を従来よりも高めることが可能となり、及び/または、従来であればEGRを行い得なかった運転領域においてもEGRを行うことが許容され、内燃機関の燃費性能の一層の向上やエミッションの良化を見込める。
同一サイクル中でのマルチ点火を実現するためには、点火コイル14の一次側コイル141を流れる一次電流の増加の速度をできる限り高める、つまりは点火コイル14に必要な電気エネルギを蓄えるための所要時間をできる限り短縮することが求められる。本実施形態の内燃機関の点火装置の点火コイル14は、その巻数やコアの大きさ等を調整することで、一次電流の増加速度を、一サイクル中に一回の火花点火を実行する従来の点火装置におけるそれよりも速めてある。だが、その背反として、一次側コイル141と二次側コイル142との巻数差に依存する、二次側コイル142に発生する二次電圧が低下し得る。そこで、一次側コイル141の誘導起電力(誘導起電圧)を、従来の点火装置よりも大きくしている。
本実施形態では、メインとなる一回目の点火の後、最大で三回の点火を追加することを想定している。図3に、マルチ点火における火花点火のタイミングを例示する。この図示例は、気筒1の同一サイクル中に、メインの点火の後に点火を一回追加、合計で二回の点火を実行する態様である。図3中、クランク角度が0°CAの時点が気筒1の圧縮上死点であり、クランク角度が負値である時期は同気筒1の圧縮上死点前(BTDC)の圧縮行程中、正値である時期は圧縮上死点後(ATDC)の膨張行程中である。時点S4は一回目のメインの点火のタイミングを表し、時点S5は追加的な二回目の点火のタイミングを表している。一回目の点火タイミングは、従来の火花点火式内燃機関の制御と同様に決定することができる。その上で、一回目の点火に次ぐ二回目の点火のタイミングは、気筒1における質量燃焼割合(Mass Fraction Burnt)が所定値、例えば5%となるようなクランク角度以前に設定することが望ましい。MFBとは、気筒1内に供給される一サイクルあたりの燃料の質量に対する、燃焼した燃料の質量の比である。MFBは、例えば、クランク角度θの関数として下式で表される。
MFB=[1−cos{π(θ−θ0)/θb}]/2
ここで、θ0は燃焼の始まりのクランク角度であり、θbは燃焼の終わりのクランク角度である。図3中、A1はMFBが5%に達する時点を表し、A2はMFBが50%に達する時点を表す。二回目の点火タイミングのクランク角度は大きくは変動しないが、高回転域では低回転域と比較して最大で10°CA程度遅角する。これは、エンジン回転数と、一次側コイル141を流れる一次電流を増大させるのに要する時間との兼ね合いによる。
図4に、マルチ点火を実施する場合の、火花点火装置における半導体スイッチ131の点弧/消弧、並びに点火コイル14の一次側コイル141及び二次側コイル142を流れる電流の推移を例示する。この図示例は、気筒1の同一サイクル中に合計で二回の点火を実行する態様である。図4中、時点T0は一回目の点火の準備として半導体スイッチ131を点弧し一次側コイル141への通電を開始する時点を表し、時点T1は一回目の点火のために半導体スイッチ131を消弧し一次側コイルへ141の通電を遮断する時点を表している。時点T1は、点火プラグ12の電極間での一回目の放電の開始時点、つまりは気筒1における一回目の点火タイミングに合致する。
その後の時点T3は、二回目の点火の準備として半導体スイッチ131を点弧し一次側コイル141への通電を再び開始する時点を表し、時点T4は二回目の点火のために半導体スイッチ131を消弧し一次側コイルへ141の通電を遮断する時点を表している。時点T4は、点火プラグ12の電極間での二回目の放電の開始時点、つまりは気筒1における二回目の点火タイミングに合致する。
本実施形態にあって、二回目の点火の準備として半導体スイッチ131を再点弧する時点T3は、直近の一回目の点火のための放電が終息する時点T2よりも早い。仮に、時点T3にて半導体スイッチ131を再点弧しないとすると、一回目の放電が継続されて、図4中に破線で描画しているように、二次側コイル142及び点火プラグ12の電極間の放電路を流れる電流の量が時間の経過に伴って減少してゆき、結果ある時点T2で0または0に近い極小値になるはずである。しかしながら、電流量が低減する放電の後期は、必ずしも気筒1内での燃料の着火燃焼に寄与しないため、電力の浪費であり、にもかかわらず放電を持続することで無為に点火プラグ12の電極を損耗させることにもなり得る。
そこで、本実施形態では、二次側コイル142または点火プラグ12の電極間の放電路を流れる電流の大きさがある量以下となる時点T3で、半導体スイッチ131を再点弧する。点火プラグ12の電極間での放電中に半導体スイッチ131を点弧すると、点火コイル14の一次側141への通電が再開され、点火プラグ12の中心電極に印加される電圧が低落して、電極間での放電が強制的に中断される。このとき、点火コイル14には、中断された先の放電のために誘起された余剰の磁束が残存している。いわば、次回の放電の惹起のために点火コイル14への通電を再開する時点T3で、既にある程度のエネルギが点火コイル14に蓄えられており、これを次回の放電に用いることができる。従って、次回の放電の惹起のために点火コイル14に通電する時間、即ち一次側コイル141を流れる一次電流を火花点火に必要な大きさまで増大させるための所要時間が短縮されるので、一回目の放電と二回目の放電との時間間隔が間延びせず、好適なタイミングで次回の放電を惹起することが可能となる。つまるところ、着火燃焼に必ずしも寄与しない放電の後期に費やされるエネルギを、次回の放電に充当することができる。
マルチ点火の実施を許可する条件は、例えば、現在の内燃機関の運転領域[エンジン回転数,アクセル開度(または、エンジン負荷率、エンジントルク、サージタンク33内吸気圧、気筒1に充填される吸気に占める新気の分圧、気筒1に充填される新気量若しくは燃料噴射量)]が所定の領域R1内にあり、現在の蓄電装置16の蓄電量または端子電圧が所定値以上であり、なおかつ現在の点火コイル14の温度または点火コイル14の周辺の温度が所定値よりも低いことである。
マルチ点火許可条件に関して補足する。図5に、マルチ点火を許可する運転領域R1及び許可しない運転領域R2、R3を示す。エンジン回転数が顕著に高くない領域R1では、単位時間あたりの火花点火の実行頻度も高くなく、マルチ点火を複数サイクルに亘って続行しても点火コイル14が過剰に昇温しないため、マルチ点火を実施することができる。
領域R1と比較してアクセル開度がより大きい領域R2では、気筒1に充填される吸気量及び燃焼噴射量が多く(特に、高負荷域では、気筒1に新気が多く流入して相対的にEGRガスが少なくなる)、元来燃焼が不安定となりにくいので、マルチ点火を実施する必要性に乏しい。従って、マルチ点火を実施せず、電力消費及び点火コイル14の温度上昇を抑制する。
エンジン回転数が顕著に高い領域R3では、必然的に単位時間あたりの火花点火の実行頻度が高くなり、点火コイル14が過剰に昇温して熱害を受ける懸念が生ずるので、マルチ点火を実施しない。
蓄電装置16の蓄電量または端子電圧が所定値未満に低い場合にも、マルチ点火を許可しない。点火コイル14の一次側141に印加される電圧が低いと、一次電流の増加の速度が遅くなるからである。蓄電装置16の現在の蓄電量は、電圧/電流信号eを参照して知得または推算することができる。
さらに、点火コイル14またはその周辺の温度が所定値以上に高い場合にも、マルチ点火を許可しない。これは、点火コイル14の過剰な昇温を避けて熱害を未然に防止する意図であることは言うまでもない。点火コイル14の温度に影響を及ぼす周辺の温度の例としては、内燃機関の冷却水の温度、吸気通路3を気筒1に向かって流れる吸気の温度、外気の温度等を挙げることができる。内燃機関自体の温度が高いほど、吸気の温度が高いほど、また外気の温度が高いほど、点火コイル14の温度は上昇しやすく低下しにくい。また、内燃機関の温度が高いと、点火コイル14が内燃機関から受熱して昇温することもある。
マルチ点火を実施しない場合には、一回点火を実施する。即ち、従来の火花点火式内燃機関の制御に倣い、一つの気筒1の一度のサイクル中に、メインとなる一回目の火花点火のみを実行する。
しかして、本実施形態のECU0は、マルチ点火を実施する場合と、マルチ点火を実施せず一回点火を実施する場合とで、一回目の火花点火の放電を惹起するために点火コイル14の一次側コイル141に通電する時間(図4における時点T0から時点T1までの時間)の長さを変更する。
これまで研究されてきたシステムでは、マルチ点火を実施するか否かによって、一回目の点火の準備として一次側コイル141に通電する時間の長さを切り替えることはしていなかった。一次側コイル141に通電する時間の長さは、基本的に、一次側コイル141を流れる一次電流が火花点火に必要な大きさに増大するまでの所要時間、及び点火コイル14の発熱量が許容限度を超えないような上限時間のうちの、何れか短い方により決定される。前者の所要時間は、蓄電装置16の蓄電量または端子電圧が高いほど(一次側コイル141への印加電圧が高くなるために)短縮する。後者の上限時間は、エンジン回転数が高いほど(単位時間あたりの火花点火の実行頻度が高くなって点火コイル14の発熱量が増すために)短縮する。
現在の蓄電装置16の蓄電量または端子電圧が高いときには、前者の所要時間が短くなるので、一回目の点火の準備として一次側コイル141に通電する時間も短くできる。一回目の通電時間が短ければ、点火コイル14の発熱も少なくて済み、マルチ点火を実施することが可能となる。他方、現在のエンジン回転数が高いときには、後者の上限時間が短くなる。後者の上限時間が短いときには、点火コイル14の発熱量が許容限度に達するおそれがあることから、マルチ点火を実施することが不可能となる。まとめると、図6に示すように、エンジン回転数が比較的低く、かつ蓄電装置16の蓄電量または端子電圧が比較的高い領域Mでは、前者の所要時間が後者の上限時間よりも短く、マルチ点火の実施が許可される。だが、それよりもエンジン回転数が高いか、蓄電装置16の蓄電量または端子電圧が低い領域S、Nでは、前者の所要時間が後者の上限時間よりも長く、マルチ点火の実施が許可されない。
従前のシステムでは、前者の所要時間を、既に点火コイル14の温度が顕著に高く、点火コイル14を含む電気回路の抵抗が増大している状態を前提として設定していた。しかしながら、実際には、点火コイル14の温度がそこまでは高くないことも少なくない。点火コイル14の温度が低く、電気抵抗が増大していない状態では、一次側コイル141を流れる一次電流の増加の速度がより速くなり、一次電流が必要十分な大きさに増大するまでの所要時間が想定していた前提よりも短くなる。
そこで、図7に示すように、本実施形態のECU0は、点火コイル14またはその周辺の温度が所定値未満に低く、マルチ点火を実施する場合において(ステップS1)、点火コイル14またはその周辺の温度が所定値以上に高い、またはマルチ点火を実施しない場合と比較して、一回目の火花点火の放電を惹起するために一次側コイル141に通電する時間の長さをより短縮する(ステップS2)。このように、一回目の通電時間を短縮すれば、その分だけ点火コイル14の総発熱量が減少し、点火コイル14が熱害を受けるリスクも低下する。この結果として、従前のシステムでは図6中の領域Mにおいてのみマルチ点火を実施することが可能であったとしても、本実施形態によれば図6中の領域Mだけでなく領域Nにおいてもマルチ点火を実施することが可能となる。つまり、マルチ点火を実施可能な領域がより拡大する。
点火コイル14またはその周辺の温度が所定値以上に高い、またはマルチ点火を実施しない場合には、マルチ点火を実施する場合と比較して、一回目の火花点火の放電を惹起するために一次側コイル141に通電する時間の長さをより延長する(ステップS3)。
本実施形態のECU0は、現在の内燃機関の運転領域に応じて、気筒1に充填される吸気に占める外部EGRガスの割合である外部EGR率、換言すればEGRバルブ23の開度を調整する。原則として、EGR率は、アクセル開度が中程度の中負荷領域において最大となり、そこからアクセル開度が縮小するほど低下し、またアクセル開度が拡大するほど低下する傾向にある。アクセル開度が0または0に近いアイドリング中ないし低負荷の運転領域や、アクセル開度が全開または全開に近い全負荷(Wide Open Throttle)ないし高負荷の運転領域では、要求されるEGR率が0となり、EGRバルブ23を全閉する。
ECU0のメモリには予め、内燃機関の運転領域を示すパラメータ[エンジン回転数,アクセル開度(または、エンジン負荷率、エンジントルク、サージタンク33内吸気圧、気筒1に充填される吸気に占める新気の分圧、気筒1に充填される新気量若しくは燃料噴射量)]と、具現するべきEGRバルブ23の開度(特に、EGRバルブ23を駆動するステッピングモータに与えるステップ(パルス)数)との関係を規定したマップデータが格納されている。図8に、マップデータを例示する。実線M1、M1’と、破線M2、M2’と、鎖線M3、M3’とでは、前提となるアクセル開度の大きさが異なる。そして、細い実線M1と太い実線M1’とでは、アクセル開度の大きさが等しい。細い破線M2と太い破線M2’との関係、細い鎖線M3と太い鎖線M3’との関係も、同様である。
図8中、細線M1、M2、M3は、上述したマルチ点火許可条件が成立せず、EGRガス量を増量することが許されないときの、内燃機関の運転領域とEGRバルブ23の開度との関係を規定する基礎マップデータを表している。対して、太線M1、M2、M3は、マルチ点火許可条件が成立しており、EGRガス量を増量することが許されるときの、内燃機関の運転領域とEGRバルブ23の開度との関係を規定する増量マップデータを表している。内燃機関の運転領域が同等であれば、増量マップデータが指示するEGRバルブ23の開度は基礎マップデータが指示するEGRバルブ23の開度よりも大きくなる。
これは、図9に示すように、マルチ点火を実施する場合、一回点火を実施する場合と比較して混合気の着火燃焼が安定することから、EGRガス量を増量して吸気のEGR率をより高く引き上げることが許容されることによる。図9中、細線が一回点火を実施する場合の燃焼変動率(図示平均有効圧力の標準偏差を平均値で除した値)、太線がマルチ点火を実施する場合の燃焼変動率である。図9に示しているように、マルチ点火を実施する場合の燃焼限界のEGR率L’は、一回点火を実施する場合の燃焼限界のEGR率Lよりも高い。
因みに、ECU0が記憶保持している増量マップデータは、内燃機関の各運転領域毎のEGRバルブ23の開度それ自体であることもあれば、同じくECU0が記憶保持している基礎マップデータが指示するEGRバルブ23の開度に加算する内燃機関の各運転領域毎の開度の増分(即ち、太線M1’、M2’、M3’と細線M1、M2、M3との差分)を記述したものであることもある。
EGRバルブ23の開度を拡大してEGRガス量を増量している状況の下で、EGRガス量を増量することがこれ以上許されなくなったときには、EGRバルブ23の開度を、増量マップデータに基づく開度から、基礎マップデータに基づく開度へと縮小する。ところが、図10に示すように、EGRバルブ23の開度を縮小する操作を行ったとしても、排気通路4からEGR通路21を通じて吸気通路3へと還流するEGRガスの流量は即座に減少するわけではない。EGRバルブ23の開度を縮小した時点t1後、実際に吸気通路3に流入するEGRガスの量が十分に低減する時点t2までの「EGRガス遅れ」のタイムラグ中に、混合気への点火をマルチ点火から一回点火に切り替えると、点火制御の移行により燃焼限界のEGR率が低下するにもかかわらず、過剰な量のEGRガスが混合気に含まれる状態が続いて、燃焼の悪化を招く。
以上の問題に鑑み、本実施形態では、EGRガス量を増量することが許されなくなったときに、EGR制御については、増量マップデータを参照してEGRバルブ23の開度を決定する制御から、基礎マップデータを参照してEGRバルブ23の開度を決定する制御へと即時に切り替える。その一方で、点火制御については、マルチ点火から一回点火に即時に切り替えることはせず、所要の時間の経過を待って一回点火へと切り替える。つまり、EGR制御の移行と点火制御の移行との間に時間差を設けて、マルチ点火を過渡的に継続する制御を実行する。
図11に示すように、本実施形態のECU0は、少なくともマルチ点火許可条件が成立しており、EGRガス量を増量して吸気のEGR率を引き上げることが許される場合に(ステップS4)、増量マップデータを参照してEGRバルブ23の開度をより拡大する(ステップS5)。ステップS5では、現在の内燃機関の運転領域を示すパラメータをキーとして増量マップデータを検索し(増量マップデータがEGRバルブ23の開度の増分を記述したものであるならば、併せて基礎マップデータをも検索し)、具現するべきEGRバルブ23の目標開度を知得して、その目標開度にEGRバルブ23を操作する。現在の運転領域に合致するEGRバルブ23の目標開度がマップデータに定義されていないならば、現在の運転領域に近い領域に対応する複数の目標開度をマップデータから読み出し、それら目標開度値からの内挿(または、補間)によって、現在の運転領域に応じたEGRバルブ23の目標開度を算定する。
マルチ点火許可条件が成立していない、またはその他の事由により、EGRガス量を増量することが許されない場合には、基礎マップデータを参照してEGRバルブ23の開度を制御する(ステップS6)。ステップS6では、現在の内燃機関の運転領域を示すパラメータをキーとして基礎マップデータを検索し、具現するべきEGRバルブ23の目標開度を知得して、その目標開度にEGRバルブ23を操作する。現在の運転領域に合致するEGRバルブ23の目標開度がマップデータに定義されていないならば、現在の運転領域に近い領域に対応する複数の目標開度をマップデータから読み出し、それら目標開度値からの内挿によって、現在の運転領域に応じたEGRバルブ23の目標開度を算定する。
並びに、図12に示すように、ECU0は、マルチ点火許可条件が成立しており(ステップS7)、EGRガス量を増量することが許される場合に(ステップS8)、EGRガス量の増量とともにマルチ点火を実施する(ステップS9)。また、EGRガス量を増量することが許されないとしても、現時点でEGRガス遅れのタイムラグ中であるならば(ステップS10)、過渡制御としてマルチ点火の実施を継続する(ステップS9)。
ステップS10にて、ECU0は、EGRガス量を増量している状況の下でEGRガス量を増量することが許されなくなった時点から、所要の時間が経過したか否を判定する。そして、現時点で未だ所要の時間が経過していないのであれば、EGRガス遅れのタイムラグ中であるとして、マルチ点火を続行する。ここに言う所要の時間とは、吸気通路3から気筒1に吸引される吸気のEGR率が十分に低下するために必要な時間であって、EGRバルブ23から気筒1の吸気ポートまでの間のEGR通路21及び吸気通路3の容積が大きいほど長くなる。加えて、吸気通路3から気筒1に吸引される単位時間あたりの吸気の量は、単位時間あたりの内燃機関のサイクル数(吸気行程の回数)即ちエンジン回転数が高いほど多くなる。故に、ステップS10にて、現在のエンジン回転数が高いほど上記の所要の時間を短く設定し、現在のエンジン回転数が低いほど上記の所要の時間を長く設定することが好ましい。これは、単位時間あたりの吸気量が多いほど上記の所要の時間を短くすることを意味する。あるいは、上記の所要の時間を、EGRガス量を増量することが許されなくなった時点を起点とした内燃機関のサイクル数の形で設定する(所定サイクル数を経たならば、ステップS10の条件が成立したものと判断する)ようにしても構わない。
マルチ点火許可条件が成立していない、またはEGRガス量を増量することが許されずEGRガス遅れのタイムラグ中でもないときには、マルチ点火を実施せず、一回点火を実施する(ステップS11)。
本実施形態では、点火コイル14(の一次側141)に通電後その通電を遮断することで(二次側142に)生じる誘導電圧を点火プラグ12の電極に印加しその電極間に放電を惹起する火花点火式内燃機関を制御する制御装置0であって、点火コイル14またはその周辺の温度が所定値未満であることを含むマルチ点火許可条件が成立していることを条件として一つの気筒1の一度のサイクル中に点火を目的として二回以上の放電を実行し、さもなくば一つの気筒1の一度のサイクル中に点火を目的として一回の放電を実行することとし、一つの気筒1の一度のサイクル中に点火を目的として二回以上の放電を実行する場合、一回のみ放電を実行する場合と比較して、一回目の放電を惹起するために点火コイル14に通電する時間の長さをより短縮する内燃機関の制御装置0を構成した。
本実施形態によれば、火花点火式内燃機関の制御において、マルチ点火を実施可能な領域をより拡大することができる。そして、マルチ点火の実施に伴い、EGRガス量を増量してEGRによる効用を十分に享受することが可能となる。
また、本実施形態では、排気通路4の所定箇所と吸気通路3の所定箇所とを接続するEGR通路21及びこのEGR通路21上に設置されたEGRバルブ23を備える排気ガス再循環装置2が付帯した火花点火式内燃機関を制御する制御装置0であって、所定のマルチ点火許可条件が成立していることを条件として一つの気筒1の一度のサイクル中に点火を目的として二回以上の放電を実行し、さもなくば一つの気筒1の一度のサイクル中に点火を目的として一回の放電を実行することとし、マルチ点火許可条件が成立しEGRガス量を増量することが許される場合における内燃機関の運転領域とEGRバルブ23の開度との関係を規定する増量マップデータと、EGRガス量を増量することが許されない場合における内燃機関の運転領域とEGRバルブ23の開度との関係を規定する基礎マップデータとを記憶しており、マルチ点火許可条件が成立しEGRガス量を増量することが許されるならば増量マップデータを参照してEGRバルブ23の開度を操作し、EGRガス量を増量することが許されないならば増量マップデータによらずに基礎マップデータを参照してEGRバルブ23の開度を操作する内燃機関の制御装置0を構成した。
本実施形態によれば、メインとなる一回目の火花点火により気筒1内の燃料または混合気に着火し、さらにその上に二回目以降の火花点火を追加的に実行することで、燃焼を従来よりも安定化させることができる。このようなマルチ点火により、失火のおそれが低下する、即ち失火に対する耐力が向上するため、吸気のEGR率を従来よりも高めることが可能となり、及び/または、従来であればEGRを行い得なかった運転領域においてもEGRを行うことが許容されて、内燃機関の燃費性能の一層の向上やエミッションの良化を見込める。
気筒1の一度のサイクル中における火花点火の回数は、現在の点火コイル14の温度等による制約を受ける。現在の吸気の目標EGR率を基準に点火回数を決定しようとすると、目標EGR率の算出後、その目標EGR率を基に点火回数を決定し、だがマルチ点火が許可されない場合に、再度目標EGR率を算出して、最終的なEGRバルブ23の開度及び点火回数を定めることとなり、演算及び制御が煩雑となる。本実施形態では、マルチ点火許可条件が成立していないときには基礎マップデータに基づいてEGRバルブ23の開度を定め、マルチ点火許可条件が成立しておりEGRガス量を増量することが許されるときには増量マップデータに基づいてEGRバルブ23の開度を定めるため、演算及び制御が簡明化する。
加えて、本実施形態では、EGRガス量を増量している状況にあって、EGRガス量を増量することが許されなくなったときに、増量マップデータを参照してEGRバルブ23の開度を操作する制御から、増量マップデータによらずに基礎マップデータを参照してEGRバルブの開度を操作する制御へと即時に移行する一方で、所要の時間が経過するまでは、一つの気筒1の一度のサイクル中に点火を目的として二回以上の放電を実行するマルチ点火制御を続行し、その時間の経過を待って、一つの気筒1の一度のサイクル中に点火を目的として一回の放電を実行する一回点火制御へと移行することとしているため、EGRガス量の増量制御を終了してEGRバルブ23の開度を縮小する際に混合気の燃焼が不安定化する問題を有効に回避できる。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。各部の具体的な構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明は、車両等に搭載される火花点火式内燃機関の制御に適用することができる。
0…制御装置(ECU)
1…気筒
12…点火プラグ
13…イグナイタ
131…半導体スイッチ
14…点火コイル
141…一次側コイル
142…二次側コイル
2…外部EGR装置
21…EGR通路
23…EGRバルブ
3…吸気通路
4…排気通路
b…クランク角信号
c…アクセル開度信号
d…吸気温・吸気圧信号
e…電圧/電流信号
f…冷却水温信号
i…点火信号
l…EGRバルブの開度操作信号

Claims (1)

  1. 点火コイルに通電後その通電を遮断することで生じる誘導電圧を点火プラグの電極に印加しその電極間に放電を惹起する火花点火式内燃機関を制御する制御装置であって、
    点火コイルまたはその周辺の温度が所定値未満であることを含むマルチ点火許可条件が成立していることを条件として一つの気筒の一度のサイクル中に点火を目的として二回以上の放電を実行し、さもなくば一つの気筒の一度のサイクル中に点火を目的として一回の放電を実行することとし、
    一つの気筒の一度のサイクル中に点火を目的として二回以上の放電を実行する場合、一回のみ放電を実行する場合と比較して、一回目の放電を惹起するために点火コイルに通電する時間の長さをより短縮する内燃機関の制御装置。
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