JP7554143B2 - 固体電解コンデンサ用セパレータ及び固体電解コンデンサ並びにそれらの製造方法 - Google Patents

固体電解コンデンサ用セパレータ及び固体電解コンデンサ並びにそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、固体電解コンデンサ用セパレータ及び固体電解コンデンサに関する。以下、「固体電解コンデンサ用セパレータ」を「セパレータ」と略記する場合がある。また、「固体電解コンデンサ」を「コンデンサ」と略記する場合がある。
固体電解質として、ポリピロールやポリチオフェンなどの導電性高分子を用いる固体電解コンデンサ(固体電解キャパシタ)では、箔状の陽極電極及び陰極電極を、セパレータを介して巻き取り、巻回素子を形成し、この巻回素子中のセパレータに導電性高分子の重合液を含浸させて重合させたり、導電性高分子分散液を含浸させたりすることによって、セパレータを覆う導電性高分子膜が形成される。
従来、コンデンサのセパレータとしては、エスパルトや麻パルプなどの天然セルロース繊維、溶剤紡糸セルロース繊維、再生セルロース繊維等のセルロース繊維の叩解物を主体とする紙製セパレータが使用されている(特許文献1及び2)。これら紙セパレータ中のセルロース繊維は、導電性高分子を重合する際に用いる酸化剤と反応して導電性高分子の重合を阻害することから、重合を阻害しないように、予め炭化処理が施される。炭化処理によって紙製セパレータの強度は著しく低下するため、強度が低下した紙製セパレータに形成した導電性高分子膜は破れやすく、ショートや漏れ電流不良率が高くなる問題があった。近年、電子機器の高機能化、小型・軽量化による利用分野の拡大に伴い、コンデンサの使用環境、条件が厳しくなっており、コンデンサのリフロー耐熱性の要求温度も高くなってきている。
そのため、リフロー耐熱性を有するセパレータとして、フィブリル化耐熱性繊維を含む不織布を用いたセパレータが検討されている(特許文献3~13)。しかし、原料に用いるフィブリル化耐熱性繊維がセパレータの空隙を埋めることによって、導電性高分子の重合液又は導電性高分子分散液の含浸性が不均一となり、コンデンサのESR(等価直列抵抗)が高くなる場合があった。また、リフロー処理後のESRが悪化する場合があった。
特開平5-267103号公報 特開2017-69229号公報 特開2007-242584号公報 特開2001-332451号公報 特開2004-235293号公報 国際公開第2005/101432号パンフレット 特開2016-204798号公報 特開2020-53425号公報 特開2020-88024号公報 特開2020-88049号公報 特開2020-88089号公報 特開2020-102500号公報 特開2020-141047号公報
本発明の課題は、耐熱性に優れた固体電解コンデンサ用セパレータと、ESRが低く、リフロー処理後もESRが変化し難い固体電解コンデンサを提供することにある。
上記課題は、下記手段によって解決された。
(1)湿式不織布からなる固体電解コンデンサ用セパレータにおいて、湿式不織布が、10~30質量%のフィブリル化耐熱性繊維、60~85質量%の非フィブリル化合成短繊維、1~10質量%のフィブリル化天然セルロース繊維を含有し、かつ、平均孔径が2.8~17.0μmであり、2.0~20.0μmの範囲の孔径頻度が全孔径の80%以上であり、20.0μm超の孔径頻度が20%以下であることを特徴とする固体電解コンデンサ用セパレータ。
(2)上記(1)記載の固体電解コンデンサ用セパレータを含有する固体電解コンデンサ。
本発明によれば、耐熱性に優れた固体電解コンデンサ用セパレータと、ESRが低く、リフロー処理後もESRが変化し難い固体電解コンデンサを提供することができる。
<固体電解コンデンサ>
本発明において、固体電解コンデンサは、電解質として、導電性を有する機能性高分子(導電性高分子)を用いる固体電解コンデンサを指す。導電性を有する機能性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアセン、これらの誘導体などが挙げられる。本発明において、固体電解コンデンサは、これらの機能性高分子と電解液を併用した、ハイブリッド電解コンデンサであっても良い。電解液としては、イオン解離性の塩を溶解させた水溶液、イオン解離性の塩を溶解させた有機溶媒、イオン性液体(固体溶融塩)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、アセトニトリル(AN)、γ-ブチロラクトン(BL)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、ジメトキシメタン(DMM)、スルホラン(SL)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。
<フィブリル化耐熱性繊維>
本発明において、フィブリル化耐熱性繊維とは、融点又は熱分解温度が250℃以上であり、高圧ホモジナイザー、リファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置などを用いて微細化処理され、フィルム状でなく、主に繊維軸と平行な方向に非常に細かく分割された部分を有する繊維状で、少なくとも一部の繊維径が1μm以下になっている繊維である。
融点又は熱分解温度が250℃以上の耐熱性繊維としては、例えば、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリ-p-フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル類からなる単繊維又は複合繊維が挙げられる。これらの中でも全芳香族ポリアミドが電解液との親和性に優れるため好ましい。
フィブリル化耐熱性繊維の変法濾水度は0~700mlであることが好ましく、より好ましくは30~600mlであり、さらに好ましくは100~500mlであり、特に好ましくは200~450mlである。フィブリル化耐熱性繊維の変法濾水度が700ml超である場合、フィブリル化があまり進んでいないため、太い幹繊維が多く存在して、繊維径分布が広くなり、地合斑や厚み斑が生じる場合がある。また、フィブリル化耐熱性繊維の変法濾水度が0ml未満である場合、ESRが高くなる場合がある。フィブリル化耐熱性繊維のフィブリル化が進むと、変法濾水度は下がり続ける。そして、変法濾水度が0mlに達した後も、さらにフィブリル化すると、繊維がメッシュを通りすぎるようになり、変法濾水度が逆に上昇し始める。本発明では、このように、変法濾水度が逆上昇し始めた状態を「変法濾水度が0ml未満」と称している。
なお、「変法濾水度」とは、「ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度を0.1質量%にした以外はJIS P8121-2:2012に準拠して測定した値」である。
フィブリル化耐熱性繊維において、質量加重平均繊維長は、0.10mm以上2.00mm以下であることが好ましく、0.20mm以上1.50mm以下であることがより好ましい。また、長さ加重平均繊維長は、0.10mm以上2.00mm以下であることが好ましく、0.30~1.00mmであることがより好ましく、0.40~0.75mmであることがさらに好ましく、0.50~0.70mmであることが特に好ましい。平均繊維長が好ましい範囲よりも短い場合、セパレータから脱落する場合やセパレータが毛羽立つ場合があり、平均繊維長が好ましい範囲よりも長い場合、ダマになる場合がある。
本発明において、質量加重平均繊維長と長さ加重平均繊維長は、KajaaniFiberLabV3.5(Metso Automation社製)を使用して、投影繊維長(Proj)モードにおいて測定した質量加重平均繊維長(L(w))と長さ加重平均繊維長(L(l))である。
フィブリル化耐熱性繊維の平均繊維幅は、0.5μm以上40.0μm以下が好ましく、3.0μm以上35.0μm以下がより好ましく、5.0μm以上30.0μm以下がさらに好ましい。平均繊維幅が40.0μmを超えた場合、セパレータの厚みを薄くし難くなる場合があり、平均繊維幅が0.5μm未満の場合、地合斑や厚み斑が生じる場合がある。
本発明において、フィブリル化耐熱性繊維の平均繊維幅は、KajaaniFiberLabV3.5(Metso Automation社製)を使用して測定した繊維幅(Fiber Width)である。
フィブリル化耐熱性繊維の含有率は、セパレータに含まれる繊維全体に対して、10~30質量%であり、12~28質量%がより好ましく、15~25質量%がさらに好ましい。該含有率が10質量%未満である場合、耐熱性が低くなる。該含有率が30質量%を超えると、セパレータが緻密になり過ぎ、ESRが高くなる。
<非フィブリル化合成短繊維>
非フィブリル化合成短繊維は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ジエン、ポリウレタン、フェノール、メラミン、フラン、尿素、アニリン、不飽和ポリエステル、フッ素、シリコーン、これらの誘導体などの樹脂からなる短繊維、上記した耐熱性繊維が挙げられる。非フィブリル化合成短繊維は、セパレータの引張強度や突刺強度を強くする。
非フィブリル化合成短繊維は、単一の樹脂からなる繊維(単繊維)であっても良いし、2種以上の樹脂からなる複合繊維であっても良い。また、本発明のセパレータに含まれる非フィブリル化合成短繊維は、1種でも良いし、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。複合繊維は、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型が挙げられる。
非フィブリル化合成短繊維の繊度は、0.007~2.5dtexが好ましく、0.02~2.0dtexがより好ましく、0.1~1.1dtexがさらに好ましく、0.1~0.6dtexが特に好ましい。繊度が2.5dtexを超えた場合、厚さ方向における繊維本数が少なくなるため、厚みを薄くしにくくなる。繊度が0.007dtex未満の場合、繊維の安定製造が困難になる。
非フィブリル化合成短繊維の繊維長としては、1mm以上10mm以下が好ましく、1mm以上6mm以下がより好ましい。繊維長が10mmを超えた場合、地合不良となることがある。一方、繊維長が1mm未満の場合には、セパレータの機械的強度が弱くなる場合がある。
非フィブリル化合成短繊維の含有率は、セパレータに含まれる繊維全体に対して、60~85質量%であり、62~80質量%がより好ましく、65~75質量%がさらに好ましい。該含有率が60質量%未満である場合、セパレータの機械的強度が弱くなる。該含有率が85質量%を超えた場合、耐熱性が低くなる。
<フィブリル化天然セルロース繊維>
フィブリル化天然セルロース繊維は、溶剤紡糸セルロース繊維等のフィブリル化再生セルロース繊維に比べ、繊維1本の太さの均一性が劣る傾向にあるが、繊維間の物理的な絡みと水素結合力が強いという特徴を有する。フィブリル化天然セルロース繊維の変法濾水度は0~400mlであることが好ましく、50~350mlがより好ましく、70~300mlがさらに好ましく、90~250mlが特に好ましい。該変法濾水度が400mlを超えると、繊維径分布が広くなり、地合斑や厚み斑になる場合がある。フィブリル化天然セルロース繊維のフィブリル化が進むと、変法濾水度は下がり続ける。そして、変法濾水度が0mlに達した後もフィブリル化した状態を「変法濾水度が0ml未満」と称している。該変法濾水度が0ml未満の場合、セパレータから脱落する場合やセパレータが毛羽立つ場合がある。
フィブリル化天然セルロース繊維の長さ加重平均繊維長は、0.10~2.00mmであることが好ましく、0.10~1.00mmであることがより好ましく、0.10~0.50mmであることがさらに好ましく、0.10~0.40mmであることが特に好ましい。該長さ加重平均繊維長が0.10mm未満である場合、セパレータから脱落する場合やセパレータが毛羽立つ場合があり、2.00mmより長い場合、ダマになる場合がある。
フィブリル化天然セルロース繊維の原料としては、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等の木材パルプ;コットンリンターパルプ、コットンパルプ、麻、バガス、ケナフ、竹、藁等を由来とする非木材パルプ;等を使用することができる。中でも、フィブリル化後の繊維強度や品質の安定性やセルロース純度の観点から、コットン由来の原料が好ましい。
フィブリル化天然セルロース繊維は、リファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃により剪断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間で剪断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に少なくとも20MPaの圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより繊維に剪断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等で処理されたもので、この中でも、特に高圧ホモジナイザーで処理されたものが好ましい。
フィブリル化天然セルロース繊維の含有率は、セパレータに含まれる繊維全体に対して、1~10質量%であり、1~9質量%がより好ましく、1~8質量%がさらに好ましい。該含有率が1質量%未満である場合、セパレータの機械的強度が弱くなり、また、コンデンサのショート不良が起きやすくなる。該含有率が10質量%を超えると、セパレータが緻密になり過ぎ、ESRが高くなる。
<固体電解コンデンサ用セパレータ>
本発明のセパレータは、湿式不織布からなるセパレータであり、湿式不織布が、10~30質量%のフィブリル化耐熱性繊維、60~85質量%の非フィブリル化合成短繊維、1~10質量%のフィブリル化天然セルロース繊維を含有し、かつ、平均孔径が2.8~17.0μmであり、2.0~20.0μmの範囲の孔径頻度が全孔径の80%以上であり、20.0μm超の孔径頻度が20%以下であることを特徴とする。本発明によれば、セパレータの空隙を過度に塞ぐことなく、均一な細孔分布とすることができることから、導電性高分子の重合液の含浸性が均一となり、コンデンサのESRを低くすることができる。また、リフロー処理後もESRが変化し難いという効果を達成できる。さらに、セパレータが微細で耐熱性の高いフィブリル化耐熱性繊維を含むことにより、セパレータの熱寸法安定性が向上し、耐熱性に優れたセパレータを得ることができる。
セパレータの平均孔径は、2.8~17.0μmであり、3.0~15.0μmがより好ましく、3.2~13.0μmがさらに好ましい。平均孔径が2.8μm未満である場合、セパレータが緻密になり過ぎ、ESRが高くなる。平均孔径が17.0μmを超える場合、セパレータの緻密性が不足し、コンデンサのショート不良が起きやすくなる。
本発明のセパレータは、2.0~20.0μmの範囲の孔径頻度が全孔径の80%以上であり、20.0μm超の孔径頻度が20%以下である。セパレータの孔径頻度がこの範囲であることによって、孔の分布がなだらかに広く分布することがないため、セパレータの均一性が高くなり、導電性高分子の重合液の含浸性が均一となり、ESRを低くすることができる。セパレータの孔径頻度がこの範囲を外れると、セパレータの均一性が下がり、ESRが高くなり、また、リフロー処理後にESRが変化する。
セパレータの孔径頻度は、2.0~20.0μmの範囲の孔径頻度が全孔径の85%以上であり、20.0μm超の孔径頻度が15%以下であることがより好ましく、2.0~20.0μmの範囲の孔径頻度が全孔径の90%以上であり、20.0μm超の孔径頻度が10%以下であることがさらに好ましい。
本発明において、平均孔径が2.8~17.0μmであり、2.0~20.0μmの範囲の孔径頻度が全孔径の80%以上であり、20.0μm超の孔径頻度が20%以下であるセパレータとする方法としては、繊維の繊維径、繊維の含有率、セパレータの坪量、セパレータの厚み等の調整、湿式抄紙法における抄紙網の選定、抄紙スラリー濃度、抄紙スラリーの温度の調整、抄紙スラリーへの増粘剤添加量、分散剤添加量の調整、脱水強度の調整などが挙げられる。抄紙スラリーの分散が均一となり、セパレータの細孔分布を均一とすることができることから、抄紙スラリーへ増粘剤や分散剤を添加することが好ましい。
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。これらの中でもポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシドが好ましい。
本発明において、平均孔径・孔径頻度は、PMI社製、商品名:パームポロメーターCFP-1500Aを用いて、ハーフドライ試験法(ASTM E1294-89)に準じて測定した孔径分布から求めた、セパレータの平均孔径、孔径頻度である。区間幅0.1μmとした孔径分布から全区間のうち、区間2.0~20.0μmの比率(%)及び20.0μm超の比率(%)を求め、孔径頻度とした。
本発明において、セパレータの坪量は、8~22g/mが好ましく、9~20g/mがより好ましく、10~18g/mがさらに好ましい。坪量が22g/mを超える場合、ESRが高くなり過ぎる場合がある。坪量が8g/m未満である場合、十分な強度を得ることが難しい場合や耐熱性が劣る場合がある。なお、坪量は、JIS P8124:2011(紙及び板紙-坪量測定法)に規定された方法に基づき測定される。
本発明において、セパレータの厚みは、15~70μmが好ましく、20~67μmがより好ましく、25~65μmがさらに好ましい。厚みが70μmを超える場合、ESRが高くなり過ぎる場合がある。厚みが15μm未満である場合、十分な強度を得ることが難しい場合や耐熱性が劣る場合がある。なお、厚みは、JIS C2300-2:2010に規定された方法に基づき、5N荷重時の外側マイクロメーターにより測定されたセパレータ1枚の値である。
本発明において、セパレータは、湿式抄紙法で製造された湿式不織布である。湿式抄紙法は、繊維を水に分散して均一な抄紙スラリーとし、この抄紙スラリーを抄紙機で漉きあげて湿潤ウェブを得、湿潤ウェブを乾燥させて湿式不織布を作製する。抄紙機としては、円網、長網、傾斜型、傾斜短網等の抄紙網を単独で使用する抄紙機や、これらの抄紙網を複数組み合わせた複合抄紙機が挙げられる。湿式不織布を製造する工程においては、必要に応じて、水流交絡処理を施しても良い。抄紙スラリーには、繊維原料の他に、必要に応じて、分散剤、増粘剤、消泡剤などを適宜添加することができる。湿式不織布に対して、熱処理、カレンダー処理、熱カレンダー処理などの加工処理を施しても良い。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
A1:変法濾水度250mlのフィブリル化全芳香族ポリアミド
A2:変法濾水度350mlのフィブリル化ポリイミド
B1:繊度0.1dtex、繊維長3mmのポリエステル短繊維
B2:繊度0.3dtex、繊維長3mmのポリエステル短繊維
B3:繊度1.1dtex、繊維長5mmの熱融着性芯鞘ポリエステル短繊維
B4:繊度0.1dtex、繊維長3mmのアクリル短繊維
C1:変法濾水度270ml、長さ加重平均繊維長0.22mmのフィブリル化天然セルロース繊維
C2:変法濾水度500mlの麻パルプ
<セパレータ>
(実施例1)
表1に示した原料と配合量に従って調成した抄紙用スラリーに、分子量1400万のアニオン性ポリアクリルアミド系増粘剤を全繊維に対して0.6質量%になるように添加し、5分間均一になるまで撹拌した後、円網・円網コンビネーション抄紙機を用いて湿潤ウェブを得て、表面温度140℃のシリンダードライヤーによって乾燥して、湿式不織布を得た。その後、200℃に加熱した金属ロールに、湿式不織布の両面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、表2に示す実施例1のセパレータを作製した。
(実施例2、3)
表1に示した原料と配合量に従って調成した抄紙用スラリーに、分子量1400万のアニオン性ポリアクリルアミド系増粘剤を全繊維に対して0.6質量%になるように添加し、5分間均一になるまで撹拌した後、円網・傾斜コンビネーション抄紙機を用いて湿潤ウェブを得て、表面温度140℃のシリンダードライヤーによって乾燥して、湿式不織布を得た。その後、200℃に加熱した金属ロールに、湿式不織布の両面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、表2に示す実施例2、3のセパレータを作製した。
(実施例4)
表1に示した原料と配合量に従って調成した抄紙用スラリーに、分子量1400万のアニオン性ポリアクリルアミド系増粘剤を全繊維に対して0.6質量%になるように添加し、5分間均一になるまで撹拌した後、円網・円網コンビネーション抄紙機を用いて湿潤ウェブを得て、表面温度140℃のシリンダードライヤーによって乾燥して、湿式不織布を得た。その後、200℃に加熱した金属ロールに、湿式不織布の両面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、表2に示す実施例4のセパレータを作製した。
(実施例5)
表1に示した原料と配合量に従って調成した抄紙用スラリーに、分子量1400万のアニオン性ポリアクリルアミド系増粘剤を全繊維に対して0.6質量%になるように添加し、5分間均一になるまで撹拌した後、円網抄紙機を用いて湿潤ウェブを得て、表面温度140℃のシリンダードライヤーによって乾燥して、湿式不織布を得た。その後、200℃に加熱した金属ロールに、湿式不織布の両面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、表2に示す実施例5のセパレータを作製した。
(実施例6)
表1に示した原料と配合量に従って調成した抄紙用スラリーに、分子量1400万のアニオン性ポリアクリルアミド系増粘剤を全繊維に対して0.6質量%になるように添加し、5分間均一になるまで撹拌した後、傾斜抄紙機を用いて湿潤ウェブを得て、表面温度140℃のシリンダードライヤーによって乾燥して、湿式不織布を得た。その後、200℃に加熱した金属ロールに、湿式不織布の両面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、表2に示す実施例6のセパレータを作製した。
(比較例1)
表1に示した原料と配合量に従って調成した抄紙用スラリーから、円網・円網コンビネーション抄紙機を用いて湿潤ウェブを得て、表面温度140℃のシリンダードライヤーによって乾燥して、湿式不織布を得た。その後、200℃に加熱した金属ロールに、湿式不織布の両面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、表2に示す比較例1のセパレータを作製した。
(比較例2)
表1に示した原料と配合量に従って調成した抄紙用スラリーから、円網・傾斜コンビネーション抄紙機を用いて湿潤ウェブを得て、表面温度140℃のシリンダードライヤーによって乾燥して、湿式不織布を得た。その後、200℃に加熱した金属ロールに、湿式不織布の両面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、表2に示す比較例2のセパレータを作製した。
(比較例3~6)
表1に示した原料と配合量に従って調成した抄紙用スラリーから、円網抄紙機を用いて湿潤ウェブを得て、表面温度140℃のシリンダードライヤーによって乾燥して、湿式不織布を得た。その後、200℃に加熱した金属ロールに、湿式不織布の両面を接触させて熱処理し、さらにカレンダー処理して厚み調整し、表2に示す比較例3~6のセパレータを作製した。
<実施例1~6及び比較例1~5の評価用固体電解コンデンサの作製>
厚み50μm、エッチング孔1~5μmのアルミニウム箔の表面を酸化処理して、酸化アルミニウム誘電体を形成させ、これを陽極として用いた。酸化処理する前のアルミニウム箔を陰極として用いた。実施例1~6及び比較例1~5の固体電解コンデンサ用セパレータを陽極の誘電体上に配置し、陰極と合わせて巻き取り、固体電解コンデンサ素子を作製した。この素子を3,4-エチレンジオキシチオフェン:p-トルエンスルホン酸第二鉄の50質量%ブタノール溶液を質量比で1:20になるように混合した溶液(導電性高分子モノマー液)に浸漬し、引き上げて200℃で30分加熱してポリエチレンジオキシチオフェンを重合した。この素子をメタノールで洗浄してセパレータに残留している未反応の3,4-エチレンジオキシチオフェンとp-トルエンスルホン酸第二鉄を除去した後、120℃で乾燥させた。同様に、ポリエチレンジオキシチオフェンの重合作業をもう1回繰り返した後、素子をアルミニウム製外装缶に収納して封口し、定格電圧25V、定格静電容量33μFの固体電解コンデンサを作製した。
<比較例6の評価用固体電解コンデンサの作製>
厚み50μm、エッチング孔1~5μmのアルミニウム箔の表面を酸化処理して、酸化アルミニウム誘電体を形成させ、これを陽極として用いた。酸化処理する前のアルミニウム箔を陰極として用いた。比較例6の固体電解コンデンサ用セパレータを陽極の誘電体上に配置し、陰極と合わせて巻き取り、固体電解コンデンサ素子を作製した。この素子を230℃で2時間加熱してセパレータを炭化処理した後、3,4-エチレンジオキシチオフェン:p-トルエンスルホン酸第二鉄の50質量%ブタノール溶液を質量比で1:20になるように混合した溶液(導電性高分子モノマー液)に浸漬し、引き上げて200℃で30分加熱してポリエチレンジオキシチオフェンを重合した。この素子をメタノールで洗浄してセパレータに残留している未反応の3,4-エチレンジオキシチオフェンとp-トルエンスルホン酸第二鉄を除去した後、120℃で乾燥させた。同様に、ポリエチレンジオキシチオフェンの重合作業をもう1回繰り返した後、素子をアルミニウム製外装缶に収納して封口し、定格電圧25V、定格静電容量33μFの固体電解コンデンサを作製した。
[耐熱性]
セパレータを100mm巾×100mm長さに切り、耐熱ガラス板に挟んで、180℃の恒温乾燥機に1時間静置し、長さ方向及び巾方向の収縮率を算出した。長さ方向及び巾方向の収縮率の平均値が2.7%未満であれば「○」、2.7%以上3.0%未満であれば「△」、3.0%以上であれば「×」で表し、表3に示した。
[ESR]
実施例及び比較例の固体電解コンデンサのESRを、20℃、100kHzの条件で測定し、20個の平均値が30mΩ未満であれば「○」、30mΩ以上35mΩ未満であれば「△」、35mΩ以上であれば「×」で表し、表3に示した。
[リフロー後ESR変化]
実施例及び比較例の固体電解コンデンサを260℃の半田浴に10秒間浸漬して取り出し、20℃まで冷却する。これを1サイクルとして、2サイクル繰り返した後の固体電解コンデンサのESRを、20℃、100kHzの条件で測定し、20個の平均値をリフロー後ESRとした。リフロー後ESRがリフロー前ESRに比べ、1.05倍未満であれば「○」、1.05倍以上1.10倍未満であれば「△」、1.10倍以上であれば「×」で表し、表3に示した。
実施例1~6の固体電解コンデンサ用セパレータは、10~30質量%のフィブリル化耐熱性繊維、60~85質量%の非フィブリル化合成短繊維、1~10質量%のフィブリル化天然セルロース繊維を含有し、かつ、平均孔径が2.8~17.0μmであり、2.0~20.0μmの範囲の孔径頻度が全孔径の80%以上であり、20.0μm超の孔径頻度が20%以下である湿式不織布であるため、セパレータの耐熱性、コンデンサのESRに優れていた。また、リフロー後ESR変化の悪化も少なかった。
一方、比較例1の固体電解コンデンサ用セパレータは、フィブリル化耐熱性繊維の含有量が少ないため、耐熱性が劣っていた。また、平均孔径が大きく、2.0~20.0μmの範囲の孔径頻度が低く、20.0μm超の孔径頻度が高いことから、リフロー後ESR変化が大きかった。
比較例2の固体電解コンデンサ用セパレータは、フィブリル化耐熱性繊維の含有量が多く、平均孔径が小さいため、コンデンサのESRが劣っていた。
比較例3の固体電解コンデンサ用セパレータは、フィブリル化天然セルロース繊維の含有量が多いため、コンデンサのESRが劣っていた。
比較例4の固体電解コンデンサ用セパレータは、フィブリル化天然セルロース繊維を含有量が少なく、2.0~20.0μmの範囲の孔径頻度が低く、20.0μm超の孔径頻度が高いことから、リフロー後ESR変化が大きかった。
比較例5の固体電解コンデンサ用セパレータは、2.0~20.0μmの範囲の孔径頻度が低く、20.0μm超の孔径頻度が高いことから、リフロー後ESR変化が大きかった。
比較例6の固体電解コンデンサ用セパレータは、フィブリル化耐熱性繊維を含有しないため、耐熱性が劣っていた。また、2.0~20.0μmの範囲の孔径頻度が低く、20.0μm超の孔径頻度が高いことから、リフロー後ESR変化が大きかった。
実施例1~5の比較から、実施例1の固体電解コンデンサ用セパレータと比較して、フィブリル化耐熱性繊維の含有量が多いことから、実施例2~5の固体電解コンデンサ用セパレータの耐熱性は優れていた。また、実施例1~6の比較から、実施例1の固体電解コンデンサ用セパレータと比較して、平均孔径が小さく、2.0~20.0μmの範囲の孔径頻度が高く、20.0μm超の孔径頻度が低いことから、実施例2~6の固体電解コンデンサ用セパレータでは、リフロー後ESR変化が小さく、優れていた。
実施例1~4及び6の比較から、実施例2の固体電解コンデンサ用セパレータと比較して、坪量が小さく、厚みが薄く、平均孔径が大きいことから、実施例1、3、4及び6の固体電解コンデンサ用セパレータでは、コンデンサのESRが優れていた。
実施例1、3~6の比較から、実施例5の固体電解コンデンサ用セパレータと比較して、フィブリル化耐熱性繊維の含有量が少ないことから、実施例1、3、4及び6の固体電解コンデンサ用セパレータでは、コンデンサのESRが優れていた。
実施例2~6の比較から、実施例6の固体電解コンデンサ用セパレータと比較して、坪量が大きく、厚いことから、実施例2~5の固体電解コンデンサ用セパレータでは、コンデンサの耐熱性が優れていた。
本発明は、固体電解コンデンサ用セパレータ又はハイブリッド電解コンデンサ用セパレータとして好適に利用できる。

Claims (4)

  1. 湿式不織布からなる固体電解コンデンサ用セパレータにおいて、湿式不織布が、10~30質量%のフィブリル化耐熱性繊維、60~85質量%の非フィブリル化合成短繊維、1~10質量%のフィブリル化天然セルロース繊維及び増粘剤を含有し、かつ、平均孔径が2.8~17.0μmであり、2.0~20.0μmの範囲の孔径頻度が全孔径の80%以上であり、20.0μm超の孔径頻度が20%以下であることを特徴とする固体電解コンデンサ用セパレータ。
  2. 請求項1記載の固体電解コンデンサ用セパレータを含有する固体電解コンデンサ。
  3. 湿式不織布からなる固体電解コンデンサ用セパレータの製造方法において、10~30質量%のフィブリル化耐熱性繊維、60~85質量%の非フィブリル化合成短繊維、及び、1~10質量%のフィブリル化天然セルロース繊維を水に分散した抄紙スラリーに増粘剤を添加し、該抄紙スラリーを抄紙機で漉きあげて湿潤ウェブを得て、該湿潤ウェブを乾燥させて湿式不織布を作製することを特徴とする固体電解コンデンサ用セパレータの製造方法。
  4. 請求項3記載の固体電解コンデンサ用セパレータの製造方法で製造された固体電解コンデンサ用セパレータを含有する固体電解コンデンサの製造方法。
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