JP7551670B2 - 保持装置 - Google Patents

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Description

本発明は、対象物を保持する保持装置に関する。
半導体を製造する際にウェハ等の対象物を保持する保持装置として、例えば、静電チャックが用いられる。静電チャックは、対象物が載置されるセラミックス基板と、セラミックス基板を支持する支持部と、セラミックス基板と支持部とを接合する接合部と、を備える。静電チャックは、稼働時にウェハ表面が150℃を超える温度で使用されることがある。セラミックス基板と支持部との熱膨張率が異なる場合、熱膨張差に伴い、セラミックス基板表面の反りや、接合部の剥がれが発生する虞があるため、接合部には高耐熱、高熱抵抗、および高柔軟性が求められる。
この問題に対し、接合部において、高耐熱性の第1層をセラミックス基板側に配置し、柔軟性が高い第2層を支持部材側に配置することにより、耐熱性と柔軟性のバランスをとり、剥がれを抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、接合部を多層構造とし、中央を凹んだ構造にすることで剥がれを防止する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許第5948513号公報 国際公開2019/176544号
しかしながら、特許文献1に記載の静電チャックにおいて、第1層の熱収縮率については言及されておらず、第1層の熱収縮率が大きい場合には、冷却後に反りが発生する問題があった。また、特許文献2に記載の静電チャックにおいても同様に、熱収縮率が大きい場合には、冷却後に反りが発生する問題がある。
このような課題は、静電チャックに限らず、CVD(chemical vapor deposition)、PVD(physical vapor deposition)、PLD(Pulsed Laser Deposition)等の真空装置用ヒーター装置、サセプタ、載置台等の保持装置に共通する課題である。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、対象物を保持する保持装置において、セラミックス基板の反りを抑制する技術を提供することを目的とする。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、対象物を保持する保持装置が提供される。この保持装置は、セラミックスを主成分とし、第1面と、前記第1面の裏面である第2面と、を有するセラミックス基板と、前記セラミックス基板に対して、前記第2面と向かい合うように配置され、前記セラミックスとは異なる熱膨張係数を有する材料を主成分とする支持部と、前記セラミックス基板と前記支持部との間に配置され、前記セラミックス基板と前記支
持部とを接合する接合部と、を備え、前記接合部は、前記セラミックス基板の前記第2面と接合される熱抵抗層と、前記熱抵抗層より弾性率が低く、前記支持部と接合される応力緩和層と、を有し、前記熱抵抗層は、前記応力緩和層より耐熱性が高い耐熱性樹脂からなり、350℃で2時間加熱した後の熱収縮率が0.5%以下である。
この形態の保持装置によれば、熱抵抗層の350℃で2時間加熱した後の熱収縮率が0.5%以下であるため、保持装置のセラミックス基板を昇温して保持した後に降温させたときに、熱抵抗層が元の大きさより縮もうとする力を抑制することができ、セラミック基板の平面度の変化(反り)を抑制することができる。
(2)上記形態の保持装置であって、前記熱抵抗層の弾性率が10(GPa)以下であってもよい。熱抵抗層の弾性率を10(GPa)以下にすると、保持装置の温度の昇降に伴い熱抵抗層の熱収縮が発生した際に、セラミックス基板を引っ張る力を抑制することができ、セラミックス基板の第1面の反りを、さらに抑制することができる。
(3)上記形態の保持装置であって、前記熱抵抗層を形成する材料の熱膨張係数と前記セラミックス基板の前記セラミックスの熱膨張係数との差が20×10-6(1/℃)以内であってもよい。このようにすると、保持装置の稼働による温度の昇降に伴う熱膨張に熱抵抗層が追従するため、熱抵抗層における残留応力を抑制することができる。その結果、熱抵抗層の熱収縮を抑制することができ、セラミックス基板の第1面の反りを抑制することができる。
(4)上記形態の保持装置であって、前記熱抵抗層の歪みが10(μm)以上であってもよい。このようにすると、熱抵抗層自身が容易に変形することができるため、熱抵抗層の応力緩和性を向上させることができ、セラミックス基板の第1面の反りをさらに抑制することができる。
(5)上記形態の保持装置であって、熱抵抗層の厚みが0.1(mm)以上であってもよい。このようにすると、保持装置の稼動による昇降温の際、熱抵抗層における急激な温度変化を抑制することができ、熱抵抗層の熱収縮率を小さくすることができ、セラミックス基板の第1面の反りをさらに抑制することができる。
(6)上記形態の保持装置であって、前記セラミックス基板の厚みが2(mm)以上であってもよい。このようにすると、セラミックス基板自身が変形し難くなり、セラミックス基板の反りを抑制することができる。
(7)上記形態の保持装置であって、前記セラミックス基板を200℃で50時間加熱させた後、前記セラミックス基板と前記熱抵抗層との間に空隙が存在しなくてもよい。このようにすると、このようにすると、保持装置の稼働による温度の昇降に伴うセラミックス基板と熱抵抗層との剥がれをより抑制することができる。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、保持装置を含む半導体製造装置などの形態で実現することができる。
実施形態の静電チャック10の外観構成を概略的に示す説明図である。 静電チャック10のXZ断面の構成を概略的に示す説明図である。 比較例の静電チャック10Pの昇温・降温に伴うセラミックス基板の変形の説明図である。 実施形態の静電チャック10の製造方法の説明図である。 歪みの測定方法の説明図である。
<実施形態>
図1は、実施形態の静電チャック10の外観構成を概略的に示す説明図である。図2は、静電チャック10のXZ断面の構成を概略的に示す説明図である。図1、図2には、方向を特定するために、互いに直交するXYZ軸が示されている。図2において、Y軸正方向は、紙面裏側に向かう方向である。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、静電チャック10は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。本実施形態における静電チャック10を、「保持装置」とも呼ぶ。
静電チャック10は、対象物(例えばウェハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウェハWを固定するために使用される。静電チャック10は、例えば、150℃以上の高温で長期間(例えば、1000時間以上)使用されることがある。
静電チャック10は、上下方向(Z軸方向)に並べて配置されたセラミックス基板100と、支持部200と、セラミックス基板100と支持部200とを接合する接合部300と、を備える。
セラミックス基板100は、略円形平面状の第1面S1と、第1面S1の裏面である第2面S2と、を有する板状部材である。本実施形態において、セラミックス基板100の第1面S1は、ウェハWが載置される載置面として機能する。セラミックス基板100は、いわゆるファインセラミックス、ニューセラミックスと言われるセラミックス(例えば、アルミナや窒化アルミニウム等)を主成分とする緻密体である。セラミックス基板100の第1面S1の直径は、例えば、50mm~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)である。
セラミックス基板100の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成された吸着電極116(図2)が配置されている。Z軸方向視での吸着電極116の形状は、例えば略円形である。吸着電極116に電源(不図示)から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミックス基板100の第1面S1に吸着固定される。
また、セラミックス基板100の内部には、吸着電極116よりも下側(Z軸マイナス側)に、Z軸方向視で渦巻き型のヒーター118(図2)が配置されている。本実施形態において、ヒーター118は、タングステンやモリブデン等により形成されたメタライズ層である。ヒーター118の形状は、本実施形態に限定されず、例えば、円盤形状等でもよい。他の実施形態では、セラミックス基板100は、ヒーター118を備えなくてもよい。
セラミックス基板100の厚みは特に限定されないが、2mm以上であることが好ましい。このようにすると、セラミックス基板100の厚みによりセラミックス基板100自身の反りを抑制することができる。
支持部200は、セラミックス基板100より径が大きい略円形平面状の板状部材である。支持部200は、熱伝導率が高い金属によって形成されている。例えば、アルミニウム、チタン、モリブデン、これらのそれぞれを主成分とする合金等を用いることができる。支持部200の直径は、例えば、220mm~550mm程度(通常は220mm~3
50mm)であり、支持部200の厚さは、例えば、20mm~40mm程度である。
支持部200の内部には冷媒流路210(図2)が形成されている。静電チャック10のセラミックス基板100に保持されたウェハWを、プラズマを利用して加工する際、ウェハWに対してプラズマから入熱され、ウェハWの温度が上昇する。支持部200に形成された冷媒流路210に冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)が流されると、支持部200が冷却される。接合部300を介した支持部200とセラミックス基板100との間の伝熱によりセラミックス基板100が冷却され、セラミックス基板100の第1面S1に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度制御が実現される。他の実施形態では、支持部は内部に冷媒流路が形成されていなくてもよく、外部から冷却してもよい。
接合部300は、セラミックス基板100の直径と等しい直径の略円形平面状の板状部材であり、セラミックス基板100と支持部200との間に配置され、セラミックス基板100と支持部200とを接合する。接合部300は、セラミックス基板100の第2面S2と接合される熱抵抗層310と、熱抵抗層310より弾性率が低く、支持部200と接合される応力緩和層320と、を有する。熱抵抗層310は主に耐熱性を担保し、応力緩和層は主にセラミックス基板100と支持部200の熱膨張率差に伴う応力を緩和する。
熱抵抗層310は、応力緩和層320より耐熱性が高い耐熱性樹脂からなり、350℃で2時間加熱した後の熱収縮率が0.5%以下である。耐熱性樹脂は、加熱重量減少が300度で5%以下であるものが好ましい。熱抵抗層310を形成する樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリイミド、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)、エポキシ、ポリベンズイミダゾール等を用いることができる。
図3は、比較例の静電チャック10Pの昇温・降温に伴うセラミックス基板の変形の説明図である。図3(A)は初期状態、図3(B)は高温状態、図3(C)は室温に戻ったときの状態を、それぞれ、示す。比較例の静電チャック10Pは、熱抵抗層310Pが実施形態と異なるものの、他の構成は同一である。熱抵抗層310Pは、熱収縮率が0.5%より大きい。上述の通り、静電チャックは、例えば、150℃以上の高温で1000時間以上使用されることがある。このような高温で使用されているとき、静電チャック10Pを構成する各部(セラミックス基板100、支持部200、および接合部300P)は、それぞれ、熱膨張する。このとき、支持部200が最も熱膨張が大きいため、接合部300の応力緩和層320が引き伸ばされる(図3(B))。
静電チャック10Pの高温、長時間の使用が終わった後、静電チャック10Pが室温に戻ると、熱抵抗層310Pの熱収縮によって、熱抵抗層310Pは昇温前(図3(A))より収縮する。そのため、セラミックス基板100が熱抵抗層310Pの収縮に伴い、内側に引っ張られ、セラミックス基板100が反る。応力緩和層320は反りに追従するため歪みが発生する。支持部200は元の大きさに戻る(図3(C))。
これに対し、本実施形態の静電チャック10では、熱抵抗層310の熱収縮率が0.5%以下であるため、温度の昇降を行った後の熱抵抗層310の熱収縮を抑制することができる。そのため、静電チャック10の温度の昇降後のプロセスにおいても、セラミックス基板100の第1面S1の平面度は変化を抑制することができる。結果的にセラミックス基板100の第1面S1の面内温度分布を略均一にすることができ、半導体製造における歩留まり向上に資することができる。
熱収縮率は、以下の方法により制御することができる。
(プロセスによる制御)
・熱圧着時の温度(熱板と樹脂)を高くすると熱収縮率は小さくなる。
・熱圧着時の圧力を高くすると熱収縮率は小さくなる。
・熱抵抗層の厚みを厚くすると熱収縮率は小さくなる。
・熱圧着時に徐冷を行うと熱収縮率は小さくなる。
(化学構造からの制御)
・ベンゼンやピリジンのような剛直な環構造を持つこと。
・直線的なパラ結合を有していること。
例えば、熱抵抗層の材料としてポリイミドを用いる場合、一般的に入手できるポリイミドは化学構造による熱収縮の調整がなされている。そのためプロセスによる制御の影響が大きいと考えられる。
熱抵抗層310の弾性率(ヤング率)は、特に限定されないが、10(GPa)以下であることが好ましい。静電チャックの温度の昇降後にセラミックス基板を引っ張る力は、熱抵抗層の弾性率×歪みで計算することができるため、弾性率や歪みに比例して大きくなる。静電チャックにおいて、熱抵抗層はセラミックス基板に接着されており、セラミックス基板の熱収縮率は小さいため、熱抵抗層の収縮が妨げられ、熱抵抗層の熱収縮に伴う力がそのままセラミックス基板を内側に引っ張る力として加わる。熱抵抗層310の弾性率を小さくすると、静電チャック10の温度の昇降に伴い、熱抵抗層310の熱収縮が発生した際にセラミックス基板100を引っ張る力を抑制することができ、セラミックス基板100の第1面S1の反りを抑制することができる。
熱抵抗層310を形成する材料の熱膨張係数は、特に限定されないが、セラミックス基板100のセラミックスの熱膨張係数との差が20×10-6(1/℃)以内であることが好ましい。熱抵抗層310を形成する材料の熱膨張係数が、セラミックス基板100のセラミックスの熱膨張係数と大きく異なる場合、静電チャックの稼働の度に熱抵抗層に残留応力が残ってしまう。詳しくは、以下の通りである。静電チャックの稼働時(例えば、150℃)は、熱抵抗層の膨張がセラミックス基板により妨げられるため、熱抵抗層は、セラミックス基板から縮む方向の力(圧縮力)を受けるので、伸びる方向の内部応力(圧縮応力)が生じている。熱抵抗層は、これを残留応力として蓄える。静電チャックの停止後(例えば、150℃で長期使用後)、熱抵抗層は、静電チャックの稼働前より小さくなろうとする。熱抵抗層が残留応力をためていると、熱収縮係数はより大きくなる。しかしながら、熱抵抗層はセラミックス基板に接着されているため、熱抵抗層は、セラミックス基板により縮みが抑制される。熱抵抗層は、セラミックス基板から伸びる方向の力(引張力)を受けるので、縮む方向の内部応力(引張応力)が生じている。このとき熱収縮率は熱膨張率より桁違いに大きいため、熱抵抗層の縮む力は非常に大きなものとなる。また稼働の度に内部応力は加算されていき、大きな力になってしまう。このように、熱抵抗層を形成する材料の熱膨張係数が、セラミックス基板のセラミックスの熱膨張係数と大きく異なる場合、静電チャックの温度の昇降の繰り返しに伴い、熱抵抗層に残留応力が蓄積され、セラミックス基板の反りが大きくなる虞がある。これに対し、熱抵抗層310を形成する材料の熱膨張係数を、セラミックス基板100のセラミックスの熱膨張係数と近くすると、静電チャック10の稼働による温度の昇降に伴う熱抵抗層310における残留応力を抑制することができる。その結果、熱抵抗層310の熱収縮を抑制することができ、セラミックス基板100の反りをより抑制することができる。
熱抵抗層の熱膨張係数は、樹脂構造中にベンゼンやピリジンなどの官能基を加えることで小さくすることができ、その添加量によって調整することができる。
熱抵抗層310の歪みは特に限定されないが、10(μm)以上であることが好ましい。歪みが大きいと、熱抵抗層310自身が容易に変形することができるため、応力緩和性
を向上させることができる。
熱抵抗層310の厚みは特に限定されないが、0.1(mm)以上であることが好ましい。熱抵抗層310を厚くすると、熱抵抗層310における温度の上昇及び下降がゆっくり進行するため、温度変化の影響を抑制することができ、熱収縮率を小さくすることができる。
静電チャック10において、セラミックス基板100を200℃で50時間加熱させた後、セラミックス基板100と熱抵抗層310との間に空隙が存在しないことが好ましい。このようにすると、静電チャック10の稼働による温度の昇降に伴うセラミックス基板100と熱抵抗層310との剥がれをより抑制することができる。空隙は超音波探傷測定で測定することができる。
なお、熱抵抗層310は、1層であっても、多層であってもよい。熱抵抗層310を多層にした場合は、多層構造全体で熱収縮を考える。
応力緩和層320は、熱抵抗層310より弾性率が低い。応力緩和層320として、接着シート(接着剤だけでなく、粘着剤および粘着テープ類も含まれる)を使用することができる。応力緩和層320の形成材料としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン、アクリル、ポリイミド等を用いることができる。形成材料として、柔軟性が高く、耐熱性も有するシリコーンを用いると、例えば、250℃等の高温下で静電チャック10を使用する場合にも、剥離を抑制することができるため、好ましい。
一般的に、静電チャックでは、セラミックス基板が高温であることと、セラミックス基板と支持部との熱膨張率差から、接合部は耐熱性と柔軟性が重視される。例えば、ポリイミドは耐熱性の高さが、接合部の材料として好ましいものの、シリコーン系接着剤に比べ柔軟性が低くヤング率が高いことから、接合部としてポリイミドを単体で用いた場合、反りや剥がれにつながる問題がある。そのためポリイミドの様な高耐熱かつ高熱抵抗の樹脂と、柔軟性の高いシリコーン樹脂等を組み合わせて用いることを検討した。しかしながら、静電チャックは150℃以上の高温で長期に使用することとなるため、ポリイミドは引き伸ばされた状態を維持することになり、長時間の使用後では熱収縮が発生してしまう。そのため、ポリイミドから成る熱抵抗層とセラミックス基板との熱膨張率を近くすることを検討したが、熱抵抗層とセラミックス基板との熱膨張率を近くしても、熱収縮によって熱抵抗層には縮む力が発生し、結果として静電チャックの平面度を損なう虞があった。これに対し、本実施形態の静電チャック10では、熱抵抗層310の350℃で2時間加熱した後の熱収縮率を0.5%以下にすることにより、セラミックス基板100の反りを抑制することができる。
図4は、実施形態の静電チャック10の製造方法の説明図である。
まず、セラミックス基板100のウエハ載置面となる第1面S1とは反対側の面である第2面S2に熱抵抗層310を形成する。未硬化の熱抵抗層310Uがシート状である場合は電極パターンで打ち抜いたシートを配置する。この時、必要に応じてシートを数枚重ね合わせた積層体として熱抵抗層を構成しても良い。また、熱抵抗層のセラミックス基板100と反対側の面に熱抵抗層以外の層(例えば、金属箔)を配置しても良い。
セラミックス基板100上に未硬化の熱抵抗層310Uを配置した状態で、真空状態にて熱圧着を行い、セラミックス基板100上に未硬化の熱抵抗層310Uを接着する(図4(A))。熱圧着の圧力は1MPa~7MPaが好ましく、特に2~5MPaが特に好ましい。また熱圧着の温度は100℃~400℃が好ましく、特に300℃~400℃が特に好ましい。熱圧着時の昇温、降温速度は20℃/分以下が好ましい。昇圧速度は0.
5MP以下が好ましく、圧着圧力に到達した際、5分以上加圧し続けることがより好ましい。
熱圧着後、熱抵抗層310Uはセラミックス基板100と一体化した状態で硬化する。
熱抵抗層310の形成材料がペースト状である場合は、セラミックス基板100上にスクリーン印刷等により未硬化の熱抵抗層を形成する。セラミックス基板100上に未硬化の熱抵抗層を設置した状態で、真空状態にて熱圧着を行い、セラミックス基板100上に未硬化の熱抵抗層を形成する。ペースト状態の場合は流れ出し防止用の樹脂壁を設けても良い。熱圧着の圧力は0.1MPa~10MPaが好ましく、特に2~5MPaが特に好ましい。また熱圧着の温度は100℃~400℃が好ましく、特に300℃~400℃が特に好ましい。熱圧着時の昇温、降温速度は20℃/分以下が好ましい。昇圧速度は0.5MPa/分以下が好ましく、圧着圧力に到達した際、5分以上加圧し続けることがより好ましい。熱圧着後、熱抵抗層はセラミックス基板と一体化した状態で硬化する。
応力緩和層320は支持部200の表面に形成する。未硬化の応力緩和層320Uがシート状の場合は、電極パターンで打ち抜いたのち、支持部200の表面に未硬化の応力緩和層320Uを配置する(図4(B))。未硬化の応力緩和層がペースト状の場合は、スクリーン印刷等の方法で支持部200の表面に形成する。
未硬化の応力緩和層320Uが形成された支持部200と、熱抵抗層310が形成されたセラミックス基板100を真空中で貼り合わせ(図4(C))、加熱硬化することで一体化することにより静電チャックを形成することができる。硬化は真空もしくは大気中のどちらでも良く、温度は100℃~200℃が好ましい。
また、熱抵抗層と応力緩和層との圧着温度が同一の場合は、未硬化の熱抵抗層と未硬化の応力緩和層を積層し、1回の圧着で静電チャック10を作製しても良い。すなわち、セラミックス基板100上に形成された未硬化の熱抵抗層の表面に未硬化の応力緩和層を作成しても良い。また、支持部200上に形成された未硬化の応力緩和層の表面に未硬化の熱抵抗層を作成しても良い。
以上説明したように、本実施形態の静電チャック10によれば、接合部300が、応力緩和層320より耐熱性が高い耐熱性樹脂からなる熱抵抗層310と、熱抵抗層310より弾性率が低い応力緩和層320と、を有するため、応力緩和層320によってセラミックス基板100と支持部200との熱膨張率差を緩和するとともに、熱抵抗層310によって応力緩和層320を熱的に保護することができる。
さらに、本実施形態の熱抵抗層310は、350℃で2時間加熱した後の熱収縮率が0.5%以下であるため、静電チャック10が高温(例えば、150℃以上)で長時間(例えば、1000時間以上)使用された後の熱抵抗層310の熱収縮を抑制することができる。そのため、静電チャック10の温度の昇降後のプロセスにおいても、セラミックス基板100の第1面S1の平面度は変化を抑制することができる。結果的にセラミックス基板100の第1面S1の面内温度分布を略均一にすることができ、半導体製造における歩留まり向上に資することができる。
実施例により本発明を更に具体的に説明する。
上記実施形態の静電チャック10の実施例1~7と、比較例1~6を用いて、セラミックス基板の反りを評価した。表1において、セラミックス基板の反り量が30μm未満を◎、30μm以上68μm未満を〇、68μm以上100μm未満を△、100μm以上を×と表示している。セラミックス基板の反り量が100μm以上であっても、保持は可
能であるものの、温度分布等を考慮して、100μm以上を×としている。
表1は、実施例1~7、および比較例1~6の要件(後述する)適否と評価結果を示し、表2は諸元とセラミック基板の反り量を示す。表1では、要件を満たすものに〇印、満たさないものに×印を付している。
Figure 0007551670000001
Figure 0007551670000002
1.保持装置の製造
実施例および比較例の保持装置は、下記の方法により製造された。
・実施例1
まず、公知の方法により、アルミナを主成分とするセラミックスグリーンシートを作製する。セラミックスグリーンシート上にヒーターや吸着用電極、ビア、通気孔を作製し、複数のセラミックグリーンシートを積層して熱圧着した後、還元雰囲気下1400℃~1600℃で焼成を行い、厚み1.8mmのセラミックス基板を得た。
セラミックス基板に厚さ25~30μmのポリイミドフィルムを積層した。ここでフィルムの厚みと枚数は最終的な狙い厚みとなるように調整した。ポリイミドフィルム積層体を2MPa、300℃でセラミックス基板に熱圧着し、セラミックス基板と熱抵抗層(ポリイミドフィルム積層体)の接合体を得た。この時の昇温・降温速度は20℃/分であり、昇圧速度は0.5MPa/分とした。圧力到達時の保持は10分行った。硬化したポリイミドフィルムの物性は表2の通りである。
支持部には応力緩和層としてアクリル系の接着シートを真空中で積層した。応力緩和層が貼り付けられた支持部と、熱抵抗層が貼り付けられたセラミックス基板を真空中で貼付け、真空中100℃以下の温度で仮硬化を行った後、大気中150℃で完全に硬化させた。これにより、セラミックス基板と支持部が、熱抵抗層および応力緩和層によって接合された保持装置を得た。
・実施例2
実施例1と同様にアルミナを主成分とするセラミックスグリーンシートを作製する。セラミックスグリーンシート上にヒーターや吸着用電極、ビア、通気孔を作製し、複数のセラミックグリーンシートを積層して熱圧着した後、還元雰囲気下1400℃~1600℃で焼成を行い、厚み1.8mmのセラミックス基板を得た。
セラミックス基板に厚さ25~30μmのポリイミドフィルムを積層した。ここでフィルムの厚みと枚数は最終的な狙い厚みとなるように調整した。ポリイミドフィル積層体を2MPa、300℃でセラミックス基板に熱圧着し、セラミックス基板と熱抵抗層(ポリイミドフィルム積層体)の接合体を得た。この時の昇温・降温速度は20℃/分であり、昇圧速度は0.5MPa/分とした。圧力到達時の保持は10分行った。硬化したポリイミドフィルムの物性は表2の通りである。
支持部には応力緩和層としてアクリル、エポキシ共重合体の接着シートを真空中で積層した。応力緩和層が貼り付けられた支持部と、熱抵抗層が貼り付けられたセラミックス基板を真空中で貼付け、真空中100℃以下の温度で仮硬化を行った後、大気中150℃で完全に硬化させた。
・実施例3
実施例1と同様にアルミナを主成分とするセラミックスグリーンシートを作製する。セラミックスグリーンシート上にヒーターや吸着用電極、ビア、通気孔を作製し、複数のセラミックグリーンシートを積層して熱圧着した後、還元雰囲気下1400℃~1600℃で焼成を行い、厚み1.8mmのセラミックス基板を得た。
セラミックス基板に厚さ25~30μmのポリイミドフィルムを積層した。ここでフィルムの厚みと枚数は最終的な狙い厚みとなるように調整した。ポリイミドフィル積層体積層体を4MPa、340℃でセラミックス基板に熱圧着し、セラミックス基板と熱抵抗層(ポリイミドフィルム積層体)の接合体を得た。この時の昇温・降温速度は20℃/分であり、昇圧速度は0.5MPa/分とした。圧力到達時の保持は10分行った。硬化したポリイミドフィルムの物性は表2の通りである。
支持部には応力緩和層としてシリコーン系の接着シートを真空中で積層した。応力緩和層が貼り付けられた支持部と、熱抵抗層が貼り付けられたセラミックス基板を真空中で貼付け、真空中100℃以下の温度で仮硬化を行った後、大気中150℃で完全に硬化させた。
・実施例4
実施例1と同様にアルミナを主成分とするセラミックスグリーンシートを作製する。セラミックスグリーンシート上にヒーターや吸着用電極、ビア、通気孔を作製し、複数のセラミックグリーンシートを積層して熱圧着した後、還元雰囲気下1400℃~1600℃で焼成を行い、厚み1.8mmのセラミックス基板を得た。
セラミックス基板にエポキシ系ペーストを印刷した。ここで、印刷の厚みは最終的な狙い厚みとなるように調整した。エポキシ系ペーストが印刷されたセラミックス基板である複合体を2MPa、150℃で熱圧着し、セラミックス基板と熱抵抗層(エポキシフィルム)の接合体を得た。この時の昇温・降温速度は20℃/分であり、昇圧速度は0.5MPa/分とした。圧力到達時の保持は10分行った。硬化したエポキシフィルムの物性は表2の通りである。
支持部には応力緩和層としてシリコーン系の接着シートを真空中で積層した。応力緩和層が貼り付けられた支持部と、熱抵抗層が貼り付けられたセラミックス基板を真空中で貼付け、真空中100℃以下の温度で仮硬化を行った後、大気中150℃で完全に硬化させた。
・実施例5
実施例1と同様にアルミナを主成分とするセラミックスグリーンシートを作製する。セラミックスグリーンシート上にヒーターや吸着用電極、ビア、通気孔を作製し、複数のセラミックグリーンシートを積層して熱圧着した後、還元雰囲気下1400℃~1600℃で焼成を行い、厚み1.8mmのセラミックス基板を得た。
セラミックス基板に厚さ50~60μmのポリイミドフィルムを積層した。ここでフィルムの厚みと枚数は最終的な狙い厚みとなるように調整した。ポリイミドフィルム積層体を4MPa、340℃でセラミックス基板に熱圧着し、セラミックス基板と熱抵抗層(ポリイミドフィルム積層体)の接合体を得た。この時の昇温・降温速度は10℃/分であり、昇圧速度は0.5MPa/分とした。圧力到達時の保持は20分行った。硬化したポリイミドフィルムの物性は表2の通りである。
支持部には応力緩和層としてシリコーン系の接着シートを真空中で積層した。応力緩和層が貼り付けられた支持部と、熱抵抗層が貼り付けられたセラミックス基板を真空中で貼付け、真空中100℃以下の温度で仮硬化を行った後、大気中150℃で完全に硬化させた。
・実施例6
実施例1と同様にアルミナを主成分とするセラミックスグリーンシートを作製する。セラミックスグリーンシート上にヒーターや吸着用電極、ビア、通気孔を作製し、複数のセラミックグリーンシートを積層して熱圧着した後、還元雰囲気下1400℃~1600℃で焼成を行い、厚み4.0mmのセラミックス基板を得た。
セラミックス基板に厚さ50~60μmのポリイミドフィルムを積層した。ここでフィルムの厚みと枚数は最終的な狙い厚みとなるように調整した。ポリイミドフィルム積層体を4MPa、340℃でセラミックス基板に熱圧着し、セラミックス基板と熱抵抗層(ポリイミドフィルム積層体)の接合体を得た。この時の昇温・降温速度は10℃/分であり、昇圧速度は0.5MPa/分とした。圧力到達時の保持は20分行った。硬化したポリイミドフィルムの物性は表2の通りである。
支持部には応力緩和層としてシリコーン系の接着シートを真空中で積層した。応力緩和層が貼り付けられた支持部と、熱抵抗層が貼り付けられたセラミックス基板を真空中で貼付け、真空中100℃以下の温度で仮硬化を行った後、大気中150℃で完全に硬化させた。
・実施例7
実施例1と同様にアルミナを主成分とするセラミックスグリーンシートを作製する。セラミックスグリーンシート上にヒーターや吸着用電極、ビア、通気孔を作製し、複数のセラミックグリーンシートを積層して熱圧着した後、還元雰囲気下1400℃~1600℃で焼成を行い、厚み6.0mmのセラミックス基板を得た。
セラミックス基板に厚さ50~60μmのポリイミドフィルムを積層した。ここでフィルムの厚みと枚数は最終的な狙い厚みとなるように調整した。ポリイミドフィルム積層体を5MPa、360℃でセラミックス基板に熱圧着し、セラミックス基板と熱抵抗層(ポリイミドフィルム積層体)の接合体を得た。この時の昇温・降温速度は10℃/分であり、昇圧速度は0.5MPa/分とした。圧力到達時のキープは20分行った。硬化したポリイミドフィルムの物性は表2の通りである。
支持部には応力緩和層としてシリコーン系の接着シートを真空中で積層した。応力緩和層が貼り付けられた支持部と、熱抵抗層が貼り付けられたセラミックス基板を真空中で貼付け、真空中100℃以下の温度で仮硬化を行った後、大気中150℃で完全に硬化させた。
・比較例1
実施例1と同様にアルミナを主成分とするセラミックスグリーンシートを作製する。セラミックスグリーンシート上にヒーターや吸着用電極、ビア、通気孔を作製し、複数のセラミックグリーンシートを積層して熱圧着した後、還元雰囲気下1400℃~1600℃で焼成を行い、厚み4.0mmのセラミックス基板を得た。
セラミックス基板に厚さ50~60μmのポリイミドフィルムを積層した。ここでフィルムの厚みと枚数は最終的な狙い厚みとなるように調整した。ポリイミドフィルム積層体を0.5MPa、270℃でセラミックス基板に熱圧着し、セラミックス基板と熱抵抗層(ポリイミドフィルム積層体)の接合体を得た。この時の昇温・降温速度は25℃/分であり、昇圧速度は1MPa/分とした。圧力到達時のキープは5分行った。硬化したポリイミドフィルムの物性は表2の通りである。
支持部には応力緩和層としてアクリル系の接着シートを真空中で積層した。応力緩和層が貼り付けられた支持部と、熱抵抗層が貼り付けられたセラミックス基板を真空中で貼付け、真空中100℃以下の温度で仮硬化を行った後、大気中150℃で完全に硬化させた。
・比較例2
実施例1と同様にアルミナを主成分とするセラミックスグリーンシートを作製する。セラミックスグリーンシート上にヒーターや吸着用電極、ビア、通気孔を作製し、複数のセラミックグリーンシートを積層して熱圧着した後、還元雰囲気下1400℃~1600℃で焼成を行い、厚み4.0mmのセラミックス基板を得た。
セラミックス基板にエポキシ系ペーストを印刷した。ここで、印刷の厚みは最終的な狙い厚みとなるように調整した。エポキシ系ペーストが印刷されたセラミックス基板である複合体を0.5MPa、80℃で熱圧着し、セラミックス基板と熱抵抗層(エポキシフィルム)の接合体を得た。この時の昇温・降温速度は25℃/分であり、昇圧速度は1MPa/分とした。圧力到達時の保持は5分行った。硬化したエポキシフィルムの物性は表2の通りである。
支持部には応力緩和層としてアクリル、エポキシ共重合体の接着シートを真空中で積層した。応力緩和層が貼り付けられた支持部と、熱抵抗層が貼り付けられたセラミックス基板を真空中で貼付け、真空中100℃以下の温度で仮硬化を行った後、大気中150℃で完全に硬化させた。
・比較例3
実施例1と同様にアルミナを主成分とするセラミックスグリーンシートを作製する。セラミックスグリーンシート上にヒーターや吸着用電極、ビア、通気孔を作製し、複数のセ
ラミックグリーンシートを積層して熱圧着した後、還元雰囲気下1400℃~1600℃で焼成を行い、厚み4.0mmのセラミックス基板を得た。
セラミックス基板に厚さ50~60μmのポリイミドフィルムを積層した。ここでフィルムの厚みと枚数は最終的な狙い厚みとなるように調整した。ポリイミドフィルム積層体を0.5MPa、270℃でセラミックス基板に熱圧着し、セラミックス基板と熱抵抗層(ポリイミドフィルム積層体)の接合体を得た。この時の昇温・降温速度は25℃/分であり、昇圧速度は1MPa/分とした。圧力到達時のキープは3分行った。硬化したポリイミドフィルムの物性は表2の通りである。
支持部には応力緩和層としてシリコーン系の接着シートを真空中で積層した。応力緩和層が貼り付けられた支持部と、熱抵抗層が貼り付けられたセラミックス基板を真空中で貼付け、真空中100℃以下の温度で仮硬化を行った後、大気中150℃で完全に硬化させた。
・比較例4
実施例1と同様にアルミナを主成分とするセラミックスグリーンシートを作製する。セラミックスグリーンシート上にヒーターや吸着用電極、ビア、通気孔を作製し、複数のセラミックグリーンシートを積層して熱圧着した後、還元雰囲気下1400℃~1600℃で焼成を行い、厚み4.0mmのセラミックス基板を得た。
セラミックス基板に厚さ50~60μmのポリイミドフィルムを積層した。ここでフィルムの厚みと枚数は最終的な狙い厚みとなるように調整した。ポリイミドフィルム積層体を0.5MPa、250℃でセラミックス基板に熱圧着し、セラミックス基板と熱抵抗層(ポリイミドフィルム積層体)の接合体を得た。この時の昇温・降温速度は25℃/分であり、昇圧速度は1MPa/分とした。圧力到達時のキープは3分行った。硬化したポリイミドフィルムの物性は表2の通りである。
支持部には応力緩和層としてシリコーン系の接着シートを真空中で積層した。応力緩和層が貼り付けられた支持部と、熱抵抗層が貼り付けられたセラミックス基板を真空中で貼付け、真空中100℃以下の温度で仮硬化を行った後、大気中150℃で完全に硬化させた。
・比較例5
実施例1と同様にアルミナを主成分とするセラミックスグリーンシートを作製する。セラミックスグリーンシート上にヒーターや吸着用電極、ビア、通気孔を作製し、複数のセラミックグリーンシートを積層して熱圧着した後、還元雰囲気下1400℃~1600℃で焼成を行い、厚み4.0mmのセラミックス基板を得た。
セラミックス基板に厚さ25~30μmのポリイミドフィルムを積層した。ここでフィルムの厚みと枚数は最終的な狙い厚みとなるように調整した。ポリイミドフィルム積層体を0.5MPa、200℃でセラミックス基板に熱圧着し、セラミックス基板と熱抵抗層(ポリイミドフィルム積層体)の接合体を得た。この時の昇温・降温速度は30℃/分であり、昇圧速度は1MPa/分とした。圧力到達時のキープは1分行った。硬化したポリイミドフィルムの物性は表2の通りである。
支持部には応力緩和層としてシリコーン系の接着シートを真空中で積層した。応力緩和層が貼り付けられた支持部と、熱抵抗層が貼り付けられたセラミックス基板を真空中で貼付け、真空中100℃以下の温度で仮硬化を行った後、大気中150℃で完全に硬化させた。
・比較例6
実施例1と同様にアルミナを主成分とするセラミックスグリーンシートを作製する。セラミックスグリーンシート上にヒーターや吸着用電極、ビア、通気孔を作製し、複数のセラミックグリーンシートを積層して熱圧着した後、還元雰囲気下1400℃~1600℃で焼成を行い、厚み1.8mmのセラミックス基板を得た。
セラミックス基板に厚さ25~30μmのポリイミドフィルムを積層した。ここでフィルムの厚みと枚数は最終的な狙い厚みとなるように調整した。ポリイミドフィルム積層体を0.5MPa、200℃でセラミックス基板に熱圧着し、セラミックス基板と熱抵抗層の接合体を得た。この時の昇温・降温速度は30℃/分であり、昇圧速度は1MPa/分とした。圧力到達時のキープは1分行った。硬化したポリイミドフィルムの物性は表2の通りである。
支持部には応力緩和層としてシリコーン系の接着シートを真空中で積層した。応力緩和層が貼り付けられた支持部と、熱抵抗層が貼り付けられたセラミックス基板を真空中で貼付け、真空中100℃以下の温度で仮硬化を行った後、大気中150℃で完全に硬化させた。
2.各物性の測定方法および評価方法
以下に説明する方法により、実施例および比較例の保持装置におけるセラミックス基板および熱抵抗層の物性の測定、および保持装置の評価を行った。
・熱収縮率
熱抵抗層の熱収縮率はJIS K 7133に準拠して実施した。熱抵抗層は、保持装置に搭載する厚みとなるようテフロン(登録商標)のフィルム上に成形し、各実施形態と同じ条件で熱圧着を実施して硬化させた。得られた熱抵抗層に前処理と切り出しを行ったのち、350℃2時間の熱処理を行った。熱処理前の試料長さL0と熱処理後の試料長さLから、L-L0/L0×100の計算式により熱収縮率を算出した。ここで、値が負の場合は熱収縮率となる。
・熱膨張率
セラミックス基板と熱抵抗層の熱膨張率は熱機械分析(リガク製 TMA8311)により測定した。熱抵抗層は、熱収縮率測定のため作製した試料を切り出して使用した。セラミックス基板は保持装置から切り出して使用した。
・弾性率(ヤング率)
熱抵抗層のヤング率は、公知の手法で試料の引っ張り試験を行い、弾性領域における応力-ひずみ曲線の傾きから算出した。実施例では、島津製作所製オートグラフAGSー5kNXを使用できるを使用した。熱収縮率測定のため作製した試料を切り出して使用した。
・厚み
熱抵抗層およびセラミックス基板の厚みは、保持装置を垂直方向に切断し、断面を光学顕微鏡で測定することで得た。
・歪み
図5は、歪みの測定方法の説明図である。
保持装置に搭載する厚みとなるよう熱抵抗層310Tをアルミニウム板Jの表面に成形し、同じ大きさのアルミニウム板Jで挟み、各実施例および比較例と同じ条件で熱圧着を実施して硬化させた。アルミニウム板Jの両端を引っ張り、ひずみを測定した。歪みは、公知の引張試験機(島津製作所製オートグラフAGSー5kNX)を使用して引張試験によって測定した。引張試験において、せん断応力が最大になったときのひずみを測定した。
・空隙
保持装置の空隙は超音波探傷測定で測定することができる。熱処理前後の保持装置に超音波探傷試験を行い、空隙の発生有無を確認した。この例では、日本電磁測器製UVS-
101を用いて測定した。
・反り(評価)
セラミックス基板表面が200℃となるようヒーター電極に通電し、支持部には30℃の冷却水を流し水冷した状態で、5時間保持した。通電を止め、室温に戻したのちにセラミックス基板表面の反りを測定した。レーザー式の3次元測定機(NEXIV)を使用し、セラミックス基板表面を1cm間隔で900点測定することで反りを測定した。全測定点における最大値と最小値の差を反りとした。
3.評価結果
表1、および表2に示すように、実施例1~7は比較例1~6と比べてセラミックス基板の反り量を抑制することができ、反り量は100μm以下であった。
表1は、下記要件1~7について、実施例および比較例の適否を示している。実施例および比較例において、熱抵抗層は、応力緩和層より耐熱性が高い耐熱性樹脂から成る。
〔1〕熱抵抗層は、350℃で2時間加熱した後の熱収縮率が0.5%以下である。
〔2〕熱抵抗層の弾性率が10(GPa)以下である。
〔3〕熱抵抗層を形成する材料の熱膨張係数と前記セラミックス基板の前記セラミックスの熱膨張係数との差が20×10-6(1/℃)以内である。
〔4〕前記熱抵抗層の歪みが10(μm)以上である。
〔5〕熱抵抗層の厚みが0.1(mm)以上である。
〔6〕セラミックス基板の厚みが2(mm)以上である。
〔7〕セラミックス基板を200℃で50時間加熱させた後、前記セラミックス基板と前記熱抵抗層との間に空隙が存在しない。
実施例1は、上記要件〔1〕および要件〔7〕を満たしている。
実施例2は、上記要件〔1〕および要件〔7〕に加え、要件〔2〕を満たしている。
実施例3は、上記要件〔1〕~〔2〕、および要件〔7〕に加え、要件〔3〕を満たしている。
実施例4は、上記要件〔1〕~〔3〕、および要件〔7〕に加え、要件〔4〕を満たしている。
実施例5は、上記要件〔1〕~〔4〕、および要件〔7〕に加え、要件〔5〕を満たしている。
実施例6は、上記要件〔1〕~〔5〕、および要件〔7〕に加え、要件〔6〕を満たし、上記要件〔1〕~〔7〕の全てを満たしている。
これに対して、比較例1~6は、上記要件〔1〕を満たしていない。比較例4はさらに要件〔4〕を満たしておらず、比較例5はさらに要件〔5〕を満たしておらず、比較例6はさらに要件〔6〕を満たしていない。すなわち、比較例6は全ての要件を満たしていない。
上述の通り、実施例1~7は、要件〔1〕を満たしており、熱抵抗層が応力緩和層より耐熱性が高い耐熱性樹脂からなり、350℃で2時間加熱した後の熱収縮率が0.5%以下である。そのため、保持装置のセラミックス基板を昇温して保持した後に降温させたときに、熱抵抗層が元の大きさより縮もうとする力を抑制することができ、比較例1~6と比較して、セラミックス基板の平面度の変化(反り)を抑制することができた。比較例1は、要件〔1〕以外の全ての要件を満たすものの、セラミックス基板の反り量が100μm以上である。このことから、要件〔1〕が、セラミックス基板の反りに及ぼす影響が最も大きいと考えられる。
実施例2は、さらに要件〔2〕を満たしており、熱抵抗層の弾性率(ヤング率)が実施例1より小さく、10(GPa)以下である。実施例2は、実施例1より熱抵抗層の弾性率が小さいため、保持装置の温度の昇降後の熱抵抗層310の熱収縮に伴いセラミックス基板100を引っ張る力を抑制することができ、実施例1より、セラミックス基板100の反りを抑制することができた。
実施例3は、さらに要件〔3〕を満たしており、熱抵抗層を形成する材料の熱膨張係数と、セラミックス基板100のセラミックスの熱膨張係数との差が実施例1、2より小さく、20×10-6(1/℃)以内である。そのため、保持装置の温度の昇降に伴う熱抵抗層における残留応力を実施例1、2より抑制することができ、熱抵抗層の熱収縮を抑制することができたため、セラミックス基板の反りを実施例1、2より抑制することができた。
実施例4は、さらに要件〔4〕を満たしており、熱抵抗層の歪みが実施例1~3より大きく、10(μm)以上である。そのため、実施例4の熱抵抗層は実施例1~3の熱抵抗層より変形し易く、熱抵抗層の応力緩和性が実施例1~3より高いため、実施例1~3よりセラミックス基板の反りを抑制することができた。
実施例5は、さらに要件〔5〕を満たしており、熱抵抗層310の厚みが実施例1~4より厚く、0.1(mm)以上である。熱抵抗層の厚みが実施例1~4より厚いため、熱抵抗層における温度の上昇及び下降が実施例1~4よりゆっくり進行する。そのため、温度変化の影響を実施例1~4より受けにくく、熱収縮率を小さくすることができ、実施例1~4よりセラミックス基板の反りを抑制することができた。
実施例6は、さらに要件〔6〕を満たしており、セラミックス基板の厚みが実施例1~5より厚く4.0mmであり、2mm以上である。このようにすると、セラミックス基板自身が反り難くなるため、実施例1~5よりセラミックス基板の反りを抑制することができた。
実施例7は、セラミックス基板の厚みがさらに厚く、6.0mmである。そのため、セラミックス基板自身がさらに反り難くなるため、実施例6よりセラミックス基板の反りを抑制することができた。
また、実施例1~7は、全て、要件〔7〕を満たすため、保持装置の温度の昇降によるセラミック基板と熱抵抗層との間の剥がれを抑制することができた。
これに対し、比較例1~6は、上記要件〔1〕を満たしておらず、セラミックス基板の反り量が100μm以上になった。
なお、実施例において、熱抵抗層としてポリイミド、またはエポキシを用いる例を示したが、例えば、PEEK(Poly Ether Ether Ketone)、ポリベンズイミダゾール等を用いた場合にも、上記実施例と同様の物性(熱収縮率等)にすることにより、セラミックス基板の反りに対して、同様の効果を得ることができる。セラミックス基板の反りについては、樹脂の種類より、熱収縮率、ヤング率等の物性が支配的に働くためである。
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
・上記実施形態では、セラミックス基板100の第1面S1の上に対象物が保持される例を示したが、セラミックス基板100の上に、さらに別のセラミックス基板を接合し、その上に対象物が保持される構成にしてもよい。
・上記実施形態において、保持装置として静電チャックを例示したが、保持装置は、静電チャックに限定されない。例えば、CVD、PVD、PLD(Pulsed Laser
Deposition)等の真空装置用ヒーター装置、サセプタ、載置台として構成することができる。
・上記実施形態において、保持装置として、略円形平面の板状部材の積層体を備える例を示したが、平面形状は上記実施形態に限定されない。例えば、矩形、多角形等であってもよい。
・接合層において、熱抵抗層と応力緩和層との間に、金属層等の他の層をさらに備えてもよい。熱抵抗層と応力緩和層との間に、銅(Cu)箔、アルミニウム(Al)箔、ステンレス箔等を配置してもよい。熱抵抗層と応力緩和層との馴染みが悪い場合に、上記の金属箔を接合補助層として用いることにより、熱抵抗層と応力緩和層との接合性を向上させることができる。
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
10、10P…静電チャック
100…セラミックス基板
116…吸着電極
118…ヒーター
200…支持部
210…冷媒流路
300、300P…接合部
310、310P、310T、310U…熱抵抗層
320、320U…応力緩和層
J…アルミニウム板
S1…第1面
S2…第2面
W…ウェハ

Claims (7)

  1. 対象物を保持する保持装置であって、
    アルミナを主成分とし、第1面と、前記第1面の裏面である第2面と、を有するセラミックス基板と、
    前記セラミックス基板に対して、前記第2面と向かい合うように配置され、前記セラミックス基板のセラミックスとは異なる熱膨張係数を有する材料を主成分とする支持部と、
    前記セラミックス基板と前記支持部との間に配置され、前記セラミックス基板と前記支持部とを接合する接合部と、
    を備え、
    前記接合部は、
    前記セラミックス基板の前記第2面と接合される熱抵抗層と、
    前記熱抵抗層より弾性率が低く、前記支持部と接合される応力緩和層と、を有し、
    前記熱抵抗層は、
    前記応力緩和層より耐熱性が高い耐熱性樹脂からなり、350℃で2時間加熱した後の熱収縮率が0.41%以下であることを特徴とする、
    保持装置。
  2. 請求項1に記載の保持装置であって、
    前記熱抵抗層の弾性率が10GPa以下であることを特徴とする、
    保持装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の保持装置であって、
    前記熱抵抗層を形成する材料の熱膨張係数と前記セラミックス基板のセラミックスの熱膨張係数との差が20×10-61/℃以内であることを特徴とする、
    保持装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の保持装置であって、
    前記熱抵抗層の歪みが10μm以上であることを特徴とする、
    保持装置。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の保持装置であって、
    前記熱抵抗層の厚みが0.1mm以上であることを特徴とする、
    保持装置。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の保持装置であって、
    前記セラミックス基板の厚みが2mm以上であることを特徴とする、
    保持装置。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の保持装置であって、
    前記セラミックス基板を200℃で50時間加熱させた後、前記セラミックス基板と前記熱抵抗層との間に空隙が存在しないことを特徴とする、
    保持装置。
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