JP7545586B2 - 車両の制御装置、車両の制御方法、及びプログラム - Google Patents

車両の制御装置、車両の制御方法、及びプログラム Download PDF

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Description

本発明は、車両の制御装置、車両の制御方法、及びプログラムに関する。
特許文献1には、車両の停止時に所定の条件が成立した場合にエンジンを停止させるアイドリングストップ制御と、車両が減速中であって、そのまま停止するとアイドリングストップ制御に移行する可能性が高い場合には、車両が走行中であってもエンジンを停止させるコーストストップ制御と、を行う車両のエンジン自動停止制御装置が開示されている。このエンジン自動停止制御装置では、コースト走行時に所定の条件が成立するとエンジンを停止させるコーストストップ制御を実行し(コーストストップ状態)、車両停止後に所定の条件が成立するとコーストストップ制御からアイドリングストップ制御に移行する(アイドリングストップ状態)。
国際公開第2013/099490号
ところで、コーストストップ状態からアイドリングストップ状態へ移行する際に、アイドリングストップ状態からの発進性を確保するために、アイドリングストップ状態を抜ける前にクラッチ(前進クラッチ)を予め締結させておくことが考えられる。しかしながら、クラッチが締結されるタイミングによっては、運転者が意図しない車両の挙動が発生し、運転者に違和感を与えるおそれがある。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、運転者の意図しない車両の挙動の発生を抑制して、運転者に違和感を与えることを防止することを目的とする。
本発明のある態様によれば、車両の走行中にエンジンへの燃料供給を停止すると共に前記エンジンと駆動輪との間のクラッチを解放するコーストストップ制御と、前記車両の停止中に前記エンジンを自動停止させるアイドリングストップ制御と、を実行可能な車両の制御装置であって、コーストストップ状態から前記エンジンが停止したまま前記車両が停止してアイドリングストップ状態になると、解放されていた前記クラッチを締結させ、所定操作が実施されると、前記エンジンを始動させて前記アイドリングストップ状態を抜け、前記クラッチの油圧の大きさが、前記クラッチが駆動力を伝達しない解放油圧と前記クラッチが完全締結状態となる締結油圧との間である場合には、前記所定操作が実施されたとしても前記エンジンを始動させない車両の制御装置が提供される。
上記態様によれば、クラッチの油圧が駆動力を伝達しない解放油圧と完全締結状態となる締結油圧との間である場合には、エンジンは始動しない。そのため、クラッチの伝達トルク容量が上昇しているときにエンジンの駆動力がクラッチを介して駆動輪に伝達されることが防止される。したがって、運転者の意図しない車両の挙動の発生を抑制して、運転者に違和感を与えることを防止することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置を備える車両の概略構成図である。 図2は、制御装置が行うクラッチの締結処理をフローチャートで示す図である。 図3は、制御装置が行うクラッチの締結処理の一例のタイミングチャートである。 図4は、制御装置が行うクラッチの締結処理の別の例のタイミングチャートである。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両100の制御装置としてのエンジンコントローラ30及び変速機コントローラ40を備える車両100の概略構成図である。図1に示すように、車両100は、駆動源としてのエンジン10と、自動変速機20と、エンジン10と自動変速機20との間に設けられたトルクコンバータ2と、エンジンコントローラ30と、変速機コントローラ40と、を備える。
トルクコンバータ2には、ロックアップクラッチ2aが設けられる。ロックアップクラッチ2aは、車両100が所定のロックアップ車速以上で走行している場合に締結される。ロックアップクラッチ2aが締結されると、トルクコンバータ2の入力要素としての入力軸2bと出力要素としての出力軸2cとが直結し、入力軸2bと出力軸2cとが同速回転する。よって、ロックアップクラッチ2aが締結された状態では、エンジン1の出力軸10aの回転がそのままトルクコンバータ2の出力軸2cから自動変速機20に伝達される。
自動変速機20は、動力伝達機構としての前後進切替機構3と、変速機構としてのバリエータ4と、油圧制御回路5と、オイルポンプ6と、を備える。
車両100においては、エンジン10で発生した回転が、トルクコンバータ2、前後進切替機構3、バリエータ4、歯車組7、ディファレンシャルギヤ装置8を経て駆動輪50に伝達される。
前後進切替機構3は、ダブルピニオン遊星歯車組を主たる構成要素とし、そのサンギヤをトルクコンバータ2を介してエンジン10に結合し、キャリアをバリエータ4の入力軸4d(プライマリプーリ4a)に結合する。前後進切替機構3は更に、ダブルピニオン遊星歯車組のサンギヤ及びキャリア間を直結するクラッチとしての前進クラッチ(FWD/C)3a、及びリングギヤを固定する後進ブレーキ3b(REV/B)を備え、前進クラッチ3aの締結時にエンジン10からトルクコンバータ2を経由した入力回転をそのままプライマリプーリ4aに伝達し、後進ブレーキ3bの締結時にエンジン10からトルクコンバータ2を経由した入力回転を逆転減速してプライマリプーリ4aへ伝達する。
バリエータ4は、入力軸4dに伝達されたエンジン10の回転を変速して出力軸4eから駆動輪50に伝達する無段変速機構である。バリエータ4は、動力伝達経路においてエンジン10側に設けられたプライマリプーリ4aと、駆動輪50側に設けられたセカンダリプーリ4bと、プライマリプーリ4aとセカンダリプーリ4bとに掛け回された無端状部材としてのベルト4cと、を備える。
バリエータ4では、プライマリプーリ4aに供給される油圧とセカンダリプーリ4bに供給される油圧とが制御されることで、各プーリ4a、4bとベルト4cとの接触半径が変更され、変速比Rvが変更される。
オイルポンプ6は、エンジン10の回転が入力されエンジン10の動力の一部を利用して駆動される機械式のオイルポンプである。オイルポンプ6から吐出された油は、油圧制御回路5に供給される。
油圧制御回路5は、オイルポンプ6から供給された作動油の圧力を調圧して必要な油圧を生成するレギュレータバルブ5a、プライマリプーリ4aに供給される油圧を調整するプライマリソレノイドバルブ5b、セカンダリプーリ4bに供給される油圧を調整するセカンダリソレノイドバルブ5c、ロックアップクラッチ2aに供給される油圧を調整するロックアップソレノイドバルブ5d、前進クラッチ3aに供給される油圧及び後進ブレーキ3bに供給される油圧を調整するセレクトソレノイドバルブ5e、前進クラッチ3a及び後進ブレーキ3bへの油圧の供給経路を切り換えるマニュアルバルブ5f、等を有する。
油圧制御回路5は、変速機コントローラ40からの制御信号に基づき、調整された油圧をトルクコンバータ2、前後進切替機構3、バリエータ4の各部位に供給する。
エンジンコントローラ30は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータで構成される。エンジンコントローラ30は、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することで各種の処理を行う。エンジンコントローラ30は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
エンジンコントローラ30は、車両100の各部位の状態を検出する各種センサからの信号に基づきエンジン10の回転速度ENGREV(以下、エンジン回転速度ENGREVともいう。)及びエンジントルクTe等を制御する。
変速機コントローラ40は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータで構成される。変速機コントローラ40とエンジンコントローラ30とは通信可能に接続されており、適宜情報が共有される。変速機コントローラ40は、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することで各種の処理を行う。変速機コントローラ40は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。変速機コントローラ40とエンジンコントローラ30とを統合して1つのコントローラとしてもよい。
変速機コントローラ40は、車両100の各部位の状態を検出する各種センサからの信号に基づきロックアップクラッチ2aの締結状態、バリエータ4の変速比Rv、前進クラッチ3a及び後進ブレーキ3bの締結状態等を制御する。
変速機コントローラ40には、アクセルペダル41の操作量に対応したアクセルペダル開度APOを検出するアクセル開度センサ61からの信号、ブレーキペダル42の操作量に対応したブレーキ液圧BRPを検出するブレーキ液圧センサ62からの信号、シフター63の位置を検出するインヒビタスイッチ64からの信号、トルクコンバータ2の出力軸2cの回転速度Ntを検出するタービン回転速度センサ65からの信号、バリエータ4の入力軸4d(プライマリプーリ4a)の回転速度Npを検出するプライマリ回転速度センサ66からの信号、バリエータ4の出力軸4e(セカンダリプーリ4b)の回転速度Nsを検出するセカンダリ回転速度センサ67からの信号、プライマリプーリ4aに供給されるプライマリ油圧Ppを検出するプライマリ油圧センサ68からの信号、セカンダリプーリ4bに供給されるセカンダリ油圧Psを検出するセカンダリ油圧センサ69からの信号、エンジン回転速度ENGREVを検出するエンジン回転速度センサ70からの信号、等が入力される。
本実施形態では、エンジンコントローラ30及び変速機コントローラ40は、車両100の停止中に所定の条件が成立した場合にエンジン10を自動停止させるアイドリングストップ制御と、車両100がコースト走行中であって、そのまま停止するとアイドリングストップ制御に移行する可能性が高い場合に、エンジン10への燃料供給を停止すると共にエンジン10と駆動輪50との間の前進クラッチ3aを解放するコーストストップ制御と、を実行可能である。即ち、エンジンコントローラ30及び変速機コントローラ40は、コースト走行時に所定の条件が成立するとエンジン10を停止させるコーストストップ制御を実行し(コーストストップ状態)、車両100の停止後に所定の条件が成立するとコーストストップ制御からアイドリングストップ制御に移行させる(アイドリングストップ状態)。
変速機コントローラ40は、コーストストップ状態からエンジン10が停止したまま車両100が停止してアイドリングストップ状態になると、アイドリングストップ状態からの発進性を確保するために、解放されていた前進クラッチ3aを、アイドリングストップ状態を抜ける前に予め締結させておく。
また、車両100では、アイドリングストップ状態である場合に運転者が所定操作を実施すると、エンジンコントローラ30は、エンジン10を始動させてアイドリングストップ状態を抜ける。所定操作は、運転者がアクセルペダル41を踏み込む操作である。これに限らず、所定操作は、例えば、運転者がブレーキペダル42から足を離す操作等の他の操作であってもよい。
しかしながら、前進クラッチ3aのトルク容量が増加しているときにエンジン10が始動すると、前進クラッチ3aがスリップ状態から急に締結されて、運転者の意図しない車両100の挙動が発生するおそれがある。即ち、前進クラッチ3aが締結されるタイミングによっては、運転者が意図しない車両100の挙動が発生し、運転者に違和感を与えるおそれがある。そこで、運転者の意図しない車両100の挙動の発生を抑制して、運転者に違和感を与えることを防止するために、以下の制御を行う。
続いて、図2を参照して、変速機コントローラ40が行う前進クラッチ3aの締結処理について説明する。図2は、変速機コントローラ40が行う前進クラッチ3aの締結処理をフローチャートで示す図である。この前進クラッチ3aの締結処理は、変速機コントローラ40にて一定時間ごとに繰り返し実行される。
この前進クラッチ3aの締結処理は、コーストストップ状態からアイドリングストップ状態へ移行した場合、即ちアイドリングストップ状態にて前進クラッチ3aが解放されている場合に実行される。前進クラッチ3aの締結処理は、コーストストップ状態を経ずにアイドリングストップ状態になった場合、即ちアイドリングストップ状態にて前進クラッチ3aが締結されている場合には実行されない。なお、前進クラッチ3aが駆動力を伝達しない状態での前進クラッチ3aの油圧を「解放油圧」と称し、前進クラッチ3aが完全締結状態となった状態での前進クラッチ3aの油圧を「締結油圧」と称する。
ステップS11では、変速機コントローラ40は、前進クラッチ3aの圧力室に油を供給する。
ステップS12では、変速機コントローラ40は、前進クラッチ3aの油圧室に油を充填するプリチャージ中であるか否かを判定する。プリチャージとは、クラッチの締結制御開始時に所定時間だけプリチャージ圧まで指示圧をステップ状に上昇させて、その後、所定圧まで低下させる制御である。ステップS12では、具体的には、変速機コントローラ40は、前進クラッチ3aに供給される油圧の大きさが、前進クラッチ3aの油圧室に油を充填するプリチャージ中の大きさであるか否かを判定する(単に、プリチャージ圧の指示圧を出している間をプリチャージ中と判定してもよい)。ステップS12にて、プリチャージ中であると判定された場合には、ステップS13へ移行する。一方、ステップS12にて、プリチャージ中でないと判定された場合には、ステップS14へ移行する。
ステップS13では、変速機コントローラ40は、エンジン10の始動を許可する信号をエンジンコントローラ30に送信する。このとき、運転者によってアイドリングストップ状態を抜ける所定操作が行われると、エンジン10が始動する。
このように、前進クラッチ3aの油圧の大きさが前進クラッチ3aの油圧室に油を充填するプリチャージ中である場合には、エンジン10の始動が許可される。プリチャージの間は、前進クラッチ3aに伝達トルク容量がないので、前進クラッチ3aを介してエンジン10の駆動力が駆動輪50に伝達されることはない。したがって、運転者の意図しない車両100の挙動の発生を抑制して、運転者に違和感を与えることを防止することができる。
ステップS14では、変速機コントローラ40は、前進クラッチ3aが締結を開始したか否かを判定する。具体的には、変速機コントローラ40は、前進クラッチ3aに供給される油圧が、前進クラッチ3aが締結を開始する大きさ以上であるか否かを判定する。ステップS14にて、前進クラッチ3aが締結を開始していない、即ち前進クラッチ3aが未だ当接していないと判定された場合には、ステップS17へ移行し、エンジン10の始動が許可される。
即ち、前進クラッチ3aの油圧の大きさが、前進クラッチ3aが当接するまでの大きさである場合には、エンジン10の始動が許可される。前進クラッチ3aが当接するまでは、前進クラッチ3aに伝達トルク容量がないので、前進クラッチ3aを介してエンジン10の駆動力が駆動輪50に伝達されることはない。したがって、運転者の意図しない車両100の挙動の発生を抑制して、運転者に違和感を与えることを防止することができる。
一方、ステップS14にて、前進クラッチ3aが締結を開始したと判定された場合には、ステップS15へ移行する。
ステップS15では、変速機コントローラ40は、前進クラッチ3aが締結を完了したか否かを判定する。具体的には、変速機コントローラ40は、前進クラッチ3aに供給される油圧が、前進クラッチ3aが締結を完了したときの大きさに達したか否かを判定する。ステップS15にて、前進クラッチ3aが締結を完了していないと判定された場合には、ステップS16へ移行する。
ステップS16では、変速機コントローラ40は、エンジン10の始動を禁止する信号をエンジンコントローラ30に送信する。このとき、運転者によってアイドリングストップ状態を抜ける所定操作が行われたとしても、エンジン10は始動しない。
このように、前進クラッチ3aの油圧の大きさが、前進クラッチ3aが駆動力を伝達しない解放油圧と前進クラッチ3aが完全締結状態となる締結油圧との間である場合、即ち前進クラッチ3aのトルク容量が増加しているときには、運転者による所定操作が実施されたとしてもエンジン10は始動しない。よって、前進クラッチ3aのトルク容量が増加しているときにエンジン10が始動して、前進クラッチ3aがスリップ状態から急に締結されることが防止される。
仮に、前進クラッチ3aの油圧が上昇している間にエンジン10が始動したとすると、油圧が低い状態から高い状態に移行する間にエンジン10が始動することになる。そのため、エンジン回転速度ENGREVが上昇しながら、前進クラッチ3aはスリップ状態から締結状態へ移行することになる。このような場合には、エンジン回転速度ENGREVの上昇に伴うイナーシャトルクも駆動輪50に伝達され、運転者に違和感を与えるおそれがある。これに対して、本実施形態では、前進クラッチ3aが締結を開始した後で前進クラッチ3aの油圧が上昇している間には、エンジン10を始動させないので、運転者に違和感を与えることを防止することができる。
一方、ステップS15にて、前進クラッチ3aが締結を完了したと判定された場合には、ステップS17へ移行する。
ステップS17では、変速機コントローラ40は、エンジン10の始動を許可する信号をエンジンコントローラ30に送信する。このとき、運転者によってアイドリングストップ状態を抜ける所定操作が行われると、エンジン10が始動する。
次に、図3及び図4を参照して、エンジンコントローラ30及び変速機コントローラ40が行う前進クラッチ3aの締結処理について具体的に説明する。図3は、エンジンコントローラ30及び変速機コントローラ40が行う前進クラッチ3aの締結処理の一例のタイミングチャートである。図4は、エンジンコントローラ30及び変速機コントローラ40が行う前進クラッチ3aの締結処理の別の例のタイミングチャートである。
図3及び図4では、横軸は、時間t[sec]であり、縦軸は、アクセルペダル開度APO、車速[km/h]、プライマリプーリ回転速度(PRIREV:実線)[rpm]、タービン回転速度(TBNREV:破線)[rpm]、エンジン回転速度(ENGREV:一点鎖線)[rpm]、前進クラッチ3aの指示圧(実線)、前進クラッチ3aの実圧(破線)、エンジン10への要求信号、及びエンジントルクTe(N・m)を各々示す。なお、図4では、図3と異なる一部の時間のみを示している。
図3に示す例では、時刻t1にて、アクセルペダル41の操作がされておらず車速が徐々に低下するコースト走行にて、前進クラッチ3aが解放される。これにより、エンジン10が自動停止してコーストストップ状態となる。
時刻t2では、車速が0となり、車両100が停止する。これにより、車両100は、コーストストップ状態からアイドリングストップ状態へ移行する。また、時刻t2では、アイドリングストップ状態からの発進性を確保するために、前進クラッチ3aを締結状態にするための油圧の供給が開始される。
このように、変速機コントローラ40は、車両100が停止したら、解放されていた前進クラッチ3aの締結を開始する。アイドリングストップ状態に移行した後に前進クラッチ3aを締結するので、アイドリングストップ状態を抜ける場合には、前進クラッチ3aは締結状態となっている。よって、エンジン10の駆動力をすぐに駆動輪50に伝達できるので、発進性を向上させることができる。
時刻t2から時刻t3の間には、プリチャージが行われ、前進クラッチ3aの油圧室への油の供給が開始される。即ち、前進クラッチ3aに供給される締結油圧の大きさが、解放油圧から前進クラッチ3aが締結を開始する前の状態まで上昇するプリチャージが行われる。プリチャージが行われている間(プリチャージ圧が指示されている間)は、変速機コントローラ40は、エンジン10の始動を許可する信号をエンジンコントローラ30に送信している。
時刻t3では、プリチャージが終了し、指示圧が低下する。時刻t3から時刻t4の間には、プリチャージのときよりも低い指示圧で前進クラッチ3aの油圧室に油が供給される。時刻t4では、油圧室に供給された油によって、前進クラッチ3aが当接する。即ち、時刻t4に到達する前の時点では、前進クラッチ3aは、入力側の摩擦伝達部材と出力側の摩擦伝達部材とが接触しておらず、未だ伝達トルク容量がない状態であり、時刻t4に到達した時点で、前進クラッチ3aの入力側の摩擦伝達部材と出力側の摩擦伝達部材とが接触する。このように、前進クラッチ3aが完全開放状態から当接状態に移行するまでの制御をガタ詰め制御ともいい、プリチャージはガタ詰め制御の一部である。この摩擦伝達部材が非接触状態から接触状態に移行した直後(ガタ詰め制御が完了した時点)、つまり摩擦伝達部材が当接した瞬間は、伝達トルク容量がない状態である。この状態から更に油圧室に油圧が供給されることにより、伝達トルク容量が大きくなってゆく。
時刻t4から時刻t6の間には、前進クラッチ3aの油圧室に供給された油の圧力が、締結油圧まで上昇する。即ち、前進クラッチ3aの伝達トルク容量が0の状態から徐々に増加する。このときの前進クラッチ3aの指示圧の傾きは、アクセルペダル41の開度が大きいほど大きな傾きである。前進クラッチ3aの伝達トルク容量が徐々に増加する間は、変速機コントローラ40は、エンジン10の始動を禁止する信号をエンジンコントローラ30に送信している。
なお、図3に示す例では、変速機コントローラ40は、前進クラッチ3aの伝達トルク容量が締結油圧まで上昇する時刻t6までではなく、その先の時刻t7までエンジン10の始動を禁止する信号をエンジンコントローラ30に送信している。これは、前進クラッチ3aの実圧を検出するためのセンサが設けられないので、前進クラッチ3aの油圧室の油圧が確実に締結油圧まで上昇するまで、エンジン10の始動を禁止するためである。時刻t6から時刻t7までの時間の長さは、前進クラッチ3aの油圧室に供給される油の温度が低いほど長く設定される。
時刻t5は、時刻t4と時刻t6との間の時刻である。時刻t5において、アクセルペダル41が操作されると、通常であれば、エンジン10が始動してアイドリングストップ状態を抜ける。しかしながら、本実施形態では、変速機コントローラ40は、エンジン10の始動を禁止する信号をエンジンコントローラ30に送信している。よって、時刻t5ではエンジン10は始動せず、時刻t7になってからエンジン10が始動することになる。
以上のように、時刻t4以降の前進クラッチ3aの油圧が駆動力を伝達しない解放油圧と完全締結状態となる締結油圧との間である場合には、エンジン10は始動しない。そのため、前進クラッチ3aの伝達トルク容量が上昇しているときにエンジン10の駆動力が前進クラッチ3aを介して駆動輪50に伝達されることが防止される。したがって、運転者の意図しない車両100の挙動の発生を抑制して、運転者に違和感を与えることを防止することができる。また、本実施形態のように、実際に前進クラッチ3aが伝達トルク容量を持ち始める時刻t4からエンジン10が始動しないように制御するだけでなく、時刻t2以降の前進クラッチ3aが解放油圧と完全締結状態となる時刻t6(又は、確実に完全締結状態となる時刻t7)まで、エンジン10が始動しないように制御してもよい。
一方、図4に示す例では、時刻t8にて、車速が0となり、車両100が停止する。これにより、車両100は、コーストストップ状態からアイドリングストップ状態へ移行する。また、時刻t8では、アイドリングストップ状態からの発進性を確保するために、前進クラッチ3aを締結状態にするためにプリチャージが実施され、油圧の供給が開始される。
時刻t9は、前進クラッチ3aに供給される締結油圧の大きさが、前進クラッチ3aが締結を開始する前(摩擦伝達部材が当接する前)の状態まで上昇するプリチャージが行われている間の時刻である。時刻t9から時刻t10までのプリチャージが行われている間は、変速機コントローラ40は、エンジン10の始動を許可する信号をエンジンコントローラ30に送信している(時刻t9以前も同様)。よって、時刻t9において、アクセルペダル41が操作されると、エンジン10が始動してアイドリングストップ状態を抜ける。
プリチャージの間は、前進クラッチ3aに伝達トルク容量がないので、前進クラッチ3aを介してエンジン10の駆動力が駆動輪50に伝達されることはない。したがって、運転者の意図しない車両100の挙動の発生を抑制して、運転者に違和感を与えることを防止することができる。
時刻t10では、図3の時刻t3と同様に、プリチャージが終了し、指示圧が低下する。時刻t10及び時刻t11は、図3の時刻t3及び時刻t4と同様であり、時刻t12及び時刻t13は、図3の時刻t6及び時刻t7と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
以上の本実施形態の構成及び作用効果について、まとめて説明する。
(1)(6)車両100の走行中にエンジン10への燃料供給を停止すると共にエンジン10と駆動輪50との間の前進クラッチ3aを解放するコーストストップ制御と、車両100の停止中にエンジン10を自動停止させるアイドリングストップ制御と、を実行可能な車両100の制御装置(エンジンコントローラ30及び変速機コントローラ40)は、コーストストップ状態からエンジン10が停止したまま車両100が停止してアイドリングストップ状態になると、解放されていた前進クラッチ3aを締結させ、所定操作が実施されると、エンジン10を始動させてアイドリングストップ状態を抜け、前進クラッチ3aの油圧の大きさが、前進クラッチ3aが駆動力を伝達しない解放油圧と前進クラッチ3aが完全締結状態となる締結油圧との間である場合には、所定操作が実施されたとしてもエンジン10を始動させない。
この構成では、前進クラッチ3aの油圧が駆動力を伝達しない解放油圧と完全締結状態となる締結油圧との間である場合には、エンジン10は始動しない。そのため、前進クラッチ3aの伝達トルク容量が上昇しているときにエンジン10の駆動力が前進クラッチ3aを介して駆動輪50に伝達されることが防止される。したがって、運転者の意図しない車両100の挙動の発生を抑制して、運転者に違和感を与えることを防止することができる。
(2)変速機コントローラ40は、前進クラッチ3aの油圧室に油を充填するプリチャージの間は、エンジン10の始動を許可する。
この構成では、プリチャージの間は、前進クラッチ3aに伝達トルク容量がないので、前進クラッチ3aを介してエンジン10の駆動力が駆動輪50に伝達されることはない。したがって、運転者の意図しない車両100の挙動の発生を抑制して、運転者に違和感を与えることを防止することができる。
(3)変速機コントローラ40は、前進クラッチ3aが当接するまでは、エンジン10の始動を許可する。
この構成では、前進クラッチ3aが当接するまでは、前進クラッチ3aに伝達トルク容量がないので、前進クラッチ3aを介してエンジン10の駆動力が駆動輪50に伝達されることはない。したがって、運転者の意図しない車両100の挙動の発生を抑制して、運転者に違和感を与えることを防止することができる。
(4)変速機コントローラ40は、前進クラッチ3aが締結を開始した後で前進クラッチ3aの油圧が上昇している間には、エンジン10を始動させない。
仮に、前進クラッチ3aの油圧が上昇している間にエンジン10が始動したとすると、油圧が低い状態から高い状態に移行する間にエンジン10が始動することになる。そのため、エンジン回転速度ENGREVが上昇しながら、前進クラッチ3aはスリップ状態から締結状態へ移行することになる。このような場合には、エンジン回転速度ENGREVの上昇に伴うイナーシャトルクも駆動輪50に伝達され、運転者に違和感を与えるおそれがある。これに対して、本実施形態では、前進クラッチ3aが締結を開始した後で前進クラッチ3aの油圧が上昇している間には、エンジン10を始動させないので、運転者に違和感を与えることを防止することができる。
(5)変速機コントローラ40は、車両100が停止したら、解放されていた前進クラッチ3aの締結を開始する。
この構成では、アイドリングストップ状態に移行した後に前進クラッチ3aを締結するので、アイドリングストップ状態を抜ける場合には、前進クラッチ3aは締結状態となっている。よって、エンジン10の駆動力をすぐに駆動輪50に伝達できるので、発進性を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態では、自動変速機20が無段変速機である場合について説明した。しかしながら、自動変速機20は、有段変速機構を有する自動変速機であってもよい。
エンジンコントローラ30及び変速機コントローラ40が実行する各種プログラムは、例えばCD-ROM等の非一過性の記録媒体に記憶されたものを用いてもよい。
100 車両
1 エンジン
3a 前進クラッチ(クラッチ)
10 エンジン
30 エンジンコントローラ(制御装置,コンピュータ)
40 変速機コントローラ(制御装置,コンピュータ)
50 駆動輪

Claims (7)

  1. 車両の走行中にエンジンへの燃料供給を停止すると共に前記エンジンと駆動輪との間のクラッチを解放するコーストストップ制御と、前記車両の停止中に前記エンジンを自動停止させるアイドリングストップ制御と、を実行可能な車両の制御装置であって、
    コーストストップ状態から前記エンジンが停止したまま前記車両が停止してアイドリングストップ状態になると、解放されていた前記クラッチを締結させ、
    所定操作が実施されると、前記エンジンを始動させて前記アイドリングストップ状態を抜け、
    前記クラッチの油圧の大きさが、前記クラッチが駆動力を伝達しない解放油圧と前記クラッチが完全締結状態となる締結油圧との間である場合には、前記所定操作が実施されたとしても前記エンジンを始動させない、
    車両の制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両の制御装置であって、
    前記クラッチの油圧室に油を充填するプリチャージの間は、前記エンジンの始動を許可する、
    車両の制御装置。
  3. 請求項1又は2に記載の車両の制御装置であって、
    前記クラッチが当接するまでは、前記エンジンの始動を許可する、
    車両の制御装置。
  4. 請求項1又は2に記載の車両の制御装置であって、
    前記クラッチが締結を開始した後で前記クラッチの油圧が上昇している間には、前記エンジンを始動させない、
    車両の制御装置。
  5. 請求項1又は2に記載の車両の制御装置であって、
    前記車両が停止したら、解放されていた前記クラッチの締結を開始する、
    車両の制御装置。
  6. 車両の走行中にエンジンへの燃料供給を停止すると共に前記エンジンと駆動輪との間のクラッチを解放するコーストストップ制御と、前記車両の停止中に前記エンジンを自動停止させるアイドリングストップ制御と、を実行可能な車両の制御方法であって、
    コーストストップ状態から前記エンジンが停止したまま前記車両が停止してアイドリングストップ状態になると、解放されていた前記クラッチを締結させ、
    所定操作が実施されると、前記エンジンを始動させて前記アイドリングストップ状態を抜け、
    前記クラッチの油圧の大きさが、前記クラッチが駆動力を伝達しない解放油圧と前記クラッチが完全締結状態となる締結油圧との間である場合には、前記所定操作が実施されたとしても前記エンジンを始動させない、
    車両の制御方法。
  7. 車両の走行中にエンジンへの燃料供給を停止すると共に前記エンジンと駆動輪との間のクラッチを解放するコーストストップ制御と、前記車両の停止中に前記エンジンを自動停止させるアイドリングストップ制御と、を実行可能な車両のコンピュータが実行可能なプログラムであって、
    コーストストップ状態から前記エンジンが停止したまま前記車両が停止してアイドリングストップ状態になると、解放されていた前記クラッチを締結させる手順と、
    所定操作が実施されると、前記エンジンを始動させて前記アイドリングストップ状態を抜けるが、前記クラッチの油圧の大きさが、前記クラッチが駆動力を伝達しない解放油圧と前記クラッチが完全締結状態となる締結油圧との間である場合には、前記所定操作が実施されたとしても前記エンジンを始動させない手順と、
    を前記コンピュータに実行させる、
    プログラム。
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