JP4354380B2 - 無段変速機の発進時変速制御装置 - Google Patents

無段変速機の発進時変速制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、予め設定した変速線図から到達変速比を求め当該到達変速比を基に目標変速比を算出するコントローラと、このコントローラから指令される目標変速比に基づいてエンジン等の駆動源からの入力を無段階に変速する無段変速機とを備える無段変速機の変速制御装置に関するものである。
無段変速機は、車両を停止させる際、次の発進に備えてその実変速比をなるべく大きな変速比に戻しておくことが好ましい。一方、無段変速機にあっては、例えば、ベルト式無段変速機の如く、実変速比を算出するに際し、入出力回転要素である入出力プーリの回転数を用いるのが一般的であるが、回転数センサの性能上、回転数が極端に低いと回転数の検出が不可能になる領域がある。
このため、回転数が読めない領域、例えば、実変速比をフィードバックして変速制御する、いわゆる変速フォードバック制御を実行できない領域では、所定の目標変速比に向かって変速制御する、いわゆる変速フィードフォワード制御を実行することにより、実変速比が発進性能等を考慮した最大変速比に到達したものとみなし、再発進時は、最大変速比から発進することを前提にした変速指令を行っていた。
しかしながら、こうした変速制御装置にあっては、次に説明するような問題が依然存在していた。
図5は、ベルト式無段変速機に用いた従来の変速制御装置により生じる問題を説明するタイムチャートであり、ブレーキ操作による急停車からアクセルペダルの踏み込みに伴う発進時を例示している。なお、以下の説明においては、実変速比iが目標変速比ipに一致するものとして説明する。
ベルト式無段変速機の変速制御装置は、例えば、コントローラにおいて、アクセル開度APO及び車速TVO等の運転状態を基に予め設定した変速線図から最終的に到達すべき変速比(以下、到達変速比という。)Ipを求めたのち、これを基に更に実変速線の応答性を考慮して目標変速比ipを算出し、この目標変速比ipをベルト式無段変速機に指令することにより、当該目標変速比ipに実変速比iを追従させている。
このため、目標変速比ipは、実線iに示す如く、最終的に到達すべき到達変速比Ipに対して必ずしも一致しないことが現状で、特に、時間T1のブレーキ操作による停車が急停車である場合は、次の発進に備えてできる限りLow(ロー)側に戻しておくべき実変速比iも、停車時において到達すべき最大変速比imaxまで戻らないまま、無段変速機が時間T3にて停止してしまうことがある。しかも、この場合、実変速比iの算出に用いる回転センサはその性能上、極端に低回転になる時間T2にて実変速比iの計測を終了せざるを得ないため、コントローラは、時間T3でも、時間T2にて停止の際に最後に検出した実変速比i(=ia)で停止していると認識している。
これに対し、時間T4にて再発進を開始した場合、コントローラは、時間T5まで回転センサから実測値を検出できないため、実変速比iが最大変速比Imaxであるかどうかと無関係に、一点鎖線に示す如くに、初期値を最大変速比Imaxとする目標変速比ip´を指令し、この目標変速比ip´に実変速比iを追従させる。
ところが、時間T5にて回転数の検出が可能となると、そのときの実変速比ibを算出できるため、変速フィードバック制御が働いて実変速比iが修正される。
通常の変速フィードバックゲインでは、実変速比iが大きく修正されるため、急変速によるベルト滑りやショック又は違和感を与えたり、領域Xに示す如く、ハンチングを起こしたりする。逆に、実変速比iを修正しないと、動力性能が悪化するばかりではなく、変速フィードバック制御の積分分が蓄積されるため、次の挙動に悪影響を与えることが懸念される。即ち、こうした変速追従性の中では、実変速比iは最大変速比imaxを初期値とする目標変速比ip´に近づこうとLow側にダウンシフト(変速)するが、ある時間T6を越えると目標変速比ip´が実変速比iをHi(ハイ)側にアップシフト(変速)しようとする。このため、ある時間T6を越えるとLow側にダウンシフトしようとしていた実変速比iは追いかけるようにHi側にアップシフトすることになり、運転者に違和感を与えていた。
これに対し、再発進時に無段変速機を制御するコントローラが認識している変速比と実変速比iとの間にズレを考慮して、発進時の目標変速比ipを、停止直前に検出した実変速比i(=ia)に固定しておき、この目標変速比ip(=ia)に実変速比iが到達した時点で当該目標変速比ipの固定を解除する変速制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許第3058016号
また、無段変速機においては最大変速比から変速が開始される車速はスロットル開度に応じて異なるため、目標変速比をスロットル開度に応じて最大変速比からHi側へアップシフトさせる変速制御装置も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特許第3277852号
しかしながら、こうした変速制御装置にあってもなお、各種センサからの実測が可能になったときの実変速比iと、実測が不可能な状態で指令された目標変速比ipとの間に大きなズレが生じて急変速を発生し、また、実変速比iが各種センサからの実測値を基にした変速フィードバック制御により目標変速比ipに近づく際にも急変速が発生してそれに伴うベルト滑りやショック若しくは違和感を生じ、更に、実変速比iが目標変速比ipに対してオーバーシュートやハンチングを起こすという問題を改善するに至ってはいない。
本発明の解決すべき課題は、上述した事実認識に基づいてなされたものであり、各種センサからの実測が可能になったときの実変速比と、実測が不可能な状態で指令された目標変速比との間に生じたズレに起因する急変速やこの急変速に伴うベルト滑りや運転者に与えるショック若しくは違和感を防止すると共に、実変速比が目標変速比に対してオーバーシュートやハンチングを起こす可能性を軽減することにある。
本発明は、運転状態に応じた目標変速比を算出するコントローラと、このコントローラから指令される目標変速比に基づいてエンジン等の駆動源からの入力を無段階に変速する無段変速機とを備える無段変速機の変速制御装置において、前記コントローラは、実変速比が予め設定された設定変速比よりもHi側にある発進時には、発進後最初に算出した実変速比を初期値とする目標変速比と、前記設定変速比を初期値とする仮想目標変速比とを演算し、前記仮想目標変速比と前記目標変速比との差分が第一の所定値まで縮まったのちは当該目標変速比の変速速度を低下させるよう指令を行う発進時変速制御手段を設けたことを特徴とするものである。
また、本発明においては、前記コントローラに、前記目標変速比を固定する目標変速比固定手段を設けることが好ましい。
更に、本発明においては、前記コントローラに、前記差分が前記第一の所定値よりも小さな第2の所定値まで縮まったのちは新たな目標変速比として、前記仮想目標変速比を選択する目標変速比選択手段を設けることが好ましい。
本発明にあっては、実変速比が予め設定された設定変速比よりもHI側にある発進時には、発進後最初に算出した実変速比を初期値とする目標変速比に基づいて無段変速機の実変速比をLow側に変速させるが、これと同時に、前記設定変速比を初期値とする仮想目標変速比を演算し、当該仮想目標変速比と前記目標変速比との差分が第一の所定値まで縮まると変速速度を低下させてLow側への変速を緩やかに行う。
かかる構成によれば、発進後最初に算出した実変速比を初期値とする目標変速比と、前記設定変速比を初期値とする仮想目標変速比との間のズレが小さくなるため、例えば、変速フィードバック制御を開始した直後も急変速は発生せず、また、変速フィードバック制御により目標変速比に近づく際にも急変速が発生しないため、それに伴うベルト滑りやショック若しくは違和感も生じない。更に、かかる構成によれば、実変速比が目標変速比に対してオーバーシュートやハンチングを起こす可能性も軽減できる。
特に、本発明にあっては、前記差分が、第一の所定値まで縮まったのちに目標変速比を固定すれば、Low側への変速を行ったのち、そのままHi側への変速を行うという急激な変化を伴う変速にならないため、こうした急変化を伴う変速に起因する違和感も軽減することができる。
更に本発明にあっては、前記差分が第一の所定値よりも小さな第2の所定値まで縮まったのちは新たな目標変速比として、前記仮想目標変速比を選択してHi側へ変速させれば、実変速比が目標変速比に対してオーバーシュートを起こす可能性を更に軽減することができる。また、かかる構成によれば、本来Low側からHi側に変速させるべき発進状態においてLow側に変速させるという矛盾をなくして実変速比が目標変速比に対してハンチングを起こす可能性を更に軽減することができる。
以下、図面を参照して、本発明の形態を詳細に説明する。
図1は、ベルト式無段変速機1の変速制御装置を含むパワートレーンの概略を示し、このベルト式無段変速機1はプライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3を両者のV溝が整列するよう配して具え、これらプーリ2,3のV溝にVベルト4を掛け渡す。プライマリプーリ2の前方にはエンジン5を同軸配置し、このエンジン5およびプライマリプーリ2間にエンジン5の側から順次ロックアップトルクコンバータ6および前後進切り替え機構7を設ける。
前後進切り替え機構7は、ダブルピニオン遊星歯車組7aを主たる構成要素とし、そのサンギヤがトルクコンバータ6を介してエンジン5に結合し、キャリアがプライマリプーリ2に結合する。前後進切り替え機構7は更に、ダブルピニオン遊星歯車組7aのサンギヤおよびキャリア間を直結する前進クラッチ7bおよびリングギヤを固定する後進ブレーキ7cを具え、前進クラッチ7bの締結時にエンジン5からトルクコンバータ6を経由した入力回転をそのままプライマリプーリ2に伝達し、後進ブレーキ7cの締結時にエンジン5からトルクコンバータ6を経由した入力回転を逆転減速下にプライマリプーリ2へ伝達するものとする。
プライマリプーリ2への回転はVベルト4を介してセカンダリプーリ3に伝達され、セカンダリプーリ3の回転はその後、出力軸8、歯車組9およびディファレンシャルギヤ装置10を経て図示せざる車輪に至る。
上記の動力伝達中にプライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3間における回転伝動比(変速比)を変更可能にするために、プライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3のV溝を形成するフランジのうち一方を固定フランジ2a,3aとし、他方のフランジ2b,3bを軸線方向へ変位可能な可動フランジとする。これら可動フランジ2b,3bはそれぞれ、詳しくは後述するごとくに制御するライン圧PLを元圧として作り出したプライマリプーリ圧Ppriおよびセカンダリプーリ圧Psecをプライマリプーリ室2cおよびセカンダリプーリ室3cに供給することにより固定フランジ2a,3aに向け付勢し、これによりVベルト4をプーリフランジに摩擦係合させてプライマリプーリ2およびセカンダリプーリ3間での前記動力伝達を可能にする。
また変速に際しては、後述のごとく目標変速比ipに対応させて発生させたプライマリプーリ圧Ppriおよびセカンダリプーリ圧Psec間の差圧により両プーリ2,3のV溝幅を変更して、これらプーリ2,3に対するVベルト4の巻き掛け円弧径を連続的に変化させることで目標変速比ipを実現することができる。
プライマリプーリ圧Ppriおよびセカンダリプーリ圧Psecは、前進走行レンジの選択時に締結すべき前進クラッチ7bおよび後進走行レンジの選択時に締結すべき後進ブレーキ7cの締結油圧の出力と共に変速制御油圧回路20によって制御される。この回路20は、図2に示す如く、エンジン駆動されるオイルポンプ21、プレッシャレギュレータ弁23、減圧弁24及び変速制御弁25を具える。ポンプ21から油路22に吐出された作動油は、プレッシャレギュレータ弁23のソレノイド23aをデューティー制御することにより所定のライン圧PLに調圧される。このライン圧PLはまた2つに分岐し、その一方は、減圧弁24のソレノイド24aをデューティー制御することによりセカンダリプーリ室3cに供給されるセカンダリプーリ圧Psecに調圧され、その他方は、後述する変速制御弁25によりプライマリプーリ室2cに供給されるプライマリプーリ圧Ppriに調圧される。
変速制御弁25は、中立位置25aと、増圧位置25bと、減圧位置25cとを有し、これら弁位置を切り換えるために変速制御弁25を変速リンク26の中程に連結し、該変速リンク26の一端に、変速アクチュエータとしてのステップモータ27を、また他端にプライマリプーリの可動フランジ2bを連結する。
ステップモータ27は、基準位置から目標変速比ipに対応したステップ数Stepだけ進んだ操作位置にされ、かかるステップモータ27の操作により変速リンク26が可動フランジ2bとの連結部を支点にして揺動することにより、変速制御弁25を中立位置25aから増圧位置25bまたは減圧位置25cとなす。これにより、プライマリプーリ圧Ppriがライン圧PLを元圧として増圧されたり、またはドレンにより減圧され、セカンダリプーリ圧Psecとの差圧が変化することでHi側変速比へのアップシフトまたはロー(Low)側変速比へのダウンシフトを生じ、目標変速比Ipに向けての変速が生起される。
当該変速の進行は、プライマリプーリの可動フランジ2cを介して変速リンク26の対応端にフィードバックされ、変速リンク26がステップモータ27との連結部を支点にして、変速制御弁25を増圧位置25bまたは減圧位置25cから中立位置25aに戻す方向へ揺動する。これにより、目標変速比ipが達成される時に変速制御弁25が中立位置25aに戻され、目標変速比ipを保つことができる。
プレッシャレギュレータ弁23のソレノイド駆動デューティー、減圧弁24のソレノイド駆動デューティー、およびステップモータ27への変速指令(ステップ数Step)は、図1に示す前進クラッチ7bおよび後進ブレーキ7cへ締結油圧を供給するか否かの制御と共に変速機コントローラ100により決定する。
変速機コントローラ100は、マイクロコンピュータ等の高速な演算能力をもったIC(集積回路)であって、ベルト式無段変速機1(変速制御油圧回路20)を循環する作動油の油温TMPを検出する油温センサ101からの信号と、プライマリプーリ圧Ppriを検出するプライマリプーリ圧センサ102からの信号と、セカンダリプーリ圧Psecを検出するセカンダリプーリ圧センサ103からの信号と、プライマリプーリ回転数Npriを検出するプライマリプーリ回転センサ104からの電気信号と、セカンダリプーリ回転数Nsecを検出するセカンダリプーリ回転センサ105からの電気信号と、スロットル開度TVOを検出するスロットル開度センサ106からの信号と、インヒビタスイッチ107からの選択レンジ信号と、急減速Gを検出する減速度センサ108からの信号と、ブレーキペダルの踏む込みに応じてON/OFFされるブレーキスイッチ109からの信号と、アクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ110からの信号と、エンジン5の制御を司るエンジンコントローラ200からの変速機入力トルクに関した信号(エンジン回転数や燃料噴時間)とが入力される。
これにより、変速機コントローラ100は、油温TMP、プライマリプーリ圧Ppri、セカンダリプーリ圧Psec、プライマリプーリ回転数Npri、セカンダリプーリ回転数Nsec、スロットル開度TVO、選択レンジ信号、ブレーキスイッチON/OFF、アクセル開度APOおよびエンジンコントローラ200からの入力トルクに関連した情報に応じて目標変速比ipを決定し、この目標変速比ipが達成されるようにステップモータ27を駆動制御すると共に、変速速度(目標変速比の単位時間当たりの変化)V1等に応じてプライマリプーリ圧Ppri及びセカンダリプーリ圧Psecを制御する。
なお、本形態において、変速機コントローラ100は、図3に示す如くの変速線図を有し、この変速線図を基に、車速VSPとアクセル開度APOから目標とするプライマリプーリ回転数Npriを算出し、この目標プライマリプーリ回転数Npriをセカンダリプーリ回転センサ105から検出した実セカンダリプーリ回転数Nsecで除算することで到達変速比Ipを求める。そして、この到達変速比Ipを基に実変速線の応答性を考慮して目標変速比ipを算出し、この目標変速比ipに実変速比iを追従させるべくベルト式無段変速機1に変速指令を行う。なお、図4は、到達変速比Ip(一点鎖線)を基に算出した目標変速比ip(破線)に追従する実変速比i(実線)を例示するタイムチャートである。目標変速比ipと実変速比iとのズレは、プライマリプーリ回転センサ104から検出したプライマリプーリ回転数Npriとセカンダリプーリ回転数Nsecとで算出した実変速比iに基づく変速フィードバック制御により調整するものとする。
図5は、本形態の作用を説明するためのタイムチャートであり、ブレーキ操作による急停車からアクセルペダルの踏み込みに伴う発進までを例示している。また、図6は、図5のタイムチャートにおける領域Xを示す要部拡大図である。
図5を参照すると、変速機コントローラ100は、時間t1でブレーキ操作が行われると、各種センサからの実測値を基に図3の変速線図から到達変速比Ipとして予め設定された最大変速比imaxを求め、この最大変速比imaxを基に応答性等を考慮した一点鎖線に示す如くの目標変速比ip´を算出し、この目標変速比ip´をベルト式無段変速機1に指令する。これにより、無段変速機1は、時間t1でブレーキ操作が行われると、到達変速比Ipを最大変速比imaxとする目標変速比ip´により実変速比iをLow側にダウンシフトさせる。
しかしながら、急停車であると、極端にプーリ回転数が低下するため、時間t2にて目標変速比ip´が最大変速比imaxであっても、図4に示す如く、実変速比iは最大変速比imaxまで戻らない。この場合、時間t2からの後は、プライマリプーリ回転センサ104及びセカンダリプーリ回転センサ105からの実測がその性能上できなくなるため、変速機コントローラ200は、この時間t2にて検出した実変速比i(=ia)を停止の際に最後に算出した停止時実変速比iaとして記憶しておく。
即ち、変速機コントローラ100は、ブレーキスイッチがONされた時間t1から回転センサ104,105による実変速比iの算出が不可能になる時間t2までの間に、減速度センサ108から検出した減速度Gを基に急減速であるかどうかを判断し、急減速であるときには、時間t2にて算出した実変速比iaを記憶しておく。
次に、時間t3にて停車したのち時間t4で発進する場合は、前回記憶しておいた停止時実変速比iaを目標変速比ipの初期値として読み込んで、この目標変速比ip(=ia)を回転センサ104,105からの回転数検出が可能になる時間t5まで保持する。これにより、無段変速機1は、時間t4から回転センサ104,105からの回転数検出が可能になる時間t5まで実変速比i(=ia)を保持する。なお、変速機コントローラ100は、同時に、停止時実変速比iaが、最大変速比imaxよりもHi側であるかどうかを判別するが、本形態では、図5に示す如く、停止時実変速比iaが最大変速比imaxよりもHi側である。
時間t5以降は、回転センサ104,105からの回転数検出が可能になるため、変速機コントローラ200は、時間t5にて各種センサの実測値により、実変速比i(=ib)を算出し、この実変速比ibを発進の際に最初に算出した実変速比(以下、「発進開始時実変速比」という。)とする。また、変速機コントローラ100は、停止時実変速比iaが最大変速比imaxよりもHi側であるため、発進開始時実変速比ibを初期値として、各種センサからの実測値を基に図3の変速線図から到達変速比Ipを求め、この到達変速比Ipを基に発進に際しての目標変速比ipを算出する。なお、本形態において、目標変速比ipの変速速度V(=ip/t)には制限が加えられており、既存の方法を用いてプライマリプーリ回転数Npriと実変速比iを引数として、所定のマップにて規定される。これにより、時間t5以降は、発進開始時実変速比ibを初期値する目標変速比ipをベルト式無段変速機1に指令し、その実変速比iを目標変速比ipに追従させる(本形態において、目標変速比ipと実変速比iとは便宜上一致するものとする。)。
また本形態の変速機コントローラ100では、同時に時間t5にて最大変速比imaxを初期値として一点鎖線で示す如く本来発進の際に指令すべき仮想目標変速比ip´を別途求め、この仮想目標変速比ip´と、発進の際に実際に指令する目標変速比ipとの差分Δ(=ip´−ip)を常時算出しており、この差分Δが時間t6にて、車種や使用環境に応じて予め設定した第一の所定値Δ1(=id−ic)まで縮まったと判断されると、この時間t6から変速速度Vを時間t5〜t6間の変速速度Vよりも低下させるように無段変速機1に指令をするが、本形態では特に、時間t6以降の変速速度Vをゼロ(V=0)して目標変速比ipをip=icに固定するように指令する。これにより、無段変速機1は、その実変速比iが時間t6における変速比icに固定される。
しかし、最大変速比imaxを初期値として求められた仮想目標変速比ip´は依然、Hi側にアップシフトしているので、実際に指令される目標変速比ipとの差分Δは小さくなり続ける。このため、時間t7にて、差分Δが、第一の所定値Δ1よりも小さく当該所定値Δ1と同様、車種や使用環境に応じて予め設定した第2の所定値Δ2(=if−ic)(Δ1>Δ2)まで縮まったのちは、新たな目標変速比ipとして、仮想目標変速比ip´を選択する。即ち、変速機コントローラ200は、時間t7から実変速比iが仮想目標変速比ip´に追従するように無段変速機1に対してHi側へのアップシフト指令をする。これにより、ベルト式無段変速機1は、時間t7から仮想目標変速比ip´を新たな目標変速比ipとしてHi側にアップシフトされて時間t8にて実変速比iが仮想目標変速比ip´に一致する。
即ち、本形態にあっては、前回の停止の際に時間t2にて最後に指令した実変速比i(=ia)が予め設定された最大変速比imaxよりもHi側であって、各種センサからの実測が可能になったときは、発進の際に時間t5にて最初に算出した実変速比i(=ib)を初期値として発進の際に実際に指令する目標変速比ipを算出して、実際上は、この目標変速比ipに基づいて無段変速機1の実変速比iをLow側に変速させるが、これと同時に、最大変速比imaxを初期値として仮想目標変速比ip´を別途求め、この仮想目標変速比ip´と目標変速比ipとの差分Δが第一の所定値Δ1まで縮まると変速速度Vを低下させてLow側への変速を緩やかにする。
かかる構成によれば、各種センサからの実測が可能になった時間t5の実変速比i(=ib)と、各種センサからの実測が不可能な状態で最大変速比imax又は前回の停止の際に最期に算出した実変速比iを初期値に算出した目標変速比ip´とのズレが小さくなるため、時間t5で回転センサ等の実測値が検出できるようになって、例えば、変速フィードバック制御を開始した直後も急変速は発生せず、また、実変速比iが各種センサからの実測値を基に変速フィードバック制御により目標変速比ipに近づく際にも急変速が発生しないため、それに伴うベルト滑りやショック若しくは違和感も生じない。更に、かかる構成によれば、図7の領域Xに示す如く、実変速比iが目標変速比ipに対してオーバーシュートやハンチングを起こす可能性も軽減できる。
特に、本形態にあっては、差分Δが、時間t7にて第一の所定値Δ1まで縮まったのちは目標変速比ipの変速速度Vをゼロして当該目標変速比ipを時間t6における変速比icに固定すれば、Low側へのダウンシフトを行ったのち、そのままHi側へのアップシフトを行うという急激な変化を伴う変速にならないため、こうした急変化を伴う変速に起因する違和感も軽減することができる。
更に本形態にあっては、差分Δが、時間t7にて第一の所定値Δ1よりも小さな第2の所定値Δ2まで縮まったのちは新たな目標変速比ipとして、仮想目標変速比ip´を選択してHi側へアップシフトさせれば、実変速比iが目標変速比ipに対してオーバーシュートを起こす可能性を更に軽減することができる。また、かかる構成によれば、本来Low側からHi側にアップシフトさせるべき発進状態においてLow側にダウンシフトさせるという矛盾をなくして実変速比iが目標変速比ipに対してハンチングを起こす可能性を更に軽減することができる。
上述したところは、本発明の一形態を示したに過ぎず、当業者によれば、請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、到達変速比Ipの最大変速比Imaxには、無段変速機がそのハードウェア上で実際に出せ得る限界の変速比、いわゆる、最ロー変速比を用いることができるが、これに限ることなく、車種や使用環境などに合わせて適宜選択することができる。また、図3,4にて説明した理想変速比線LIと実変速比iとの差分ΔがΔ(=Ic−ic)となる時間t6までの変速制御は、実変速比iを理想変速比線LIに向かってダウンシフトさせるものであれば、本形態の変速制御に限定されるものではない。
更に、パワートレーンもその駆動源がエンジン単体のものに限らず、モータ併用のいわゆるハイブリッドタイプであってもよい。無段変速機も、ベルト式無段変速機に限らず、トロイダル型等の様々なタイプの無段変速機に対応させることができ、その制御方法も、運転者のシフトレバー操作でレンジを選択し当該レンジの変速線図に基づいて変速を行う自動変速モードのみに限らず、シフトレバー操作に応じた変速を行う手動変速モードを併用したものであってもよい。
本発明の一形態であるベルト式無段変速機の変速制御装置を含むパワートレーンの概略を示すシステム図である。 同形態の変速制御装置を示す要部詳細図である。 到達変速比を求める際に用いられる目標プライマリプーリ回転数を算出するための変速線図である。 図3から求めた到達変速比を基に算出した目標変速比に追従する実変速比を例示するタイムチャートである。 同形態の作用を説明するためのタイムチャートである。 図5のタイムチャートにおける領域Xを示す要部拡大図である。。 ベルト式無段変速機に用いた従来の変速制御装置により生じる問題を説明するタイムチャートである。
符号の説明
1 ベルト式無段変速機
2 プライマリプーリ
3 セカンダリプーリ
4 ベルト
5 エンジン
100 変速機コントローラ
102 プライマリ圧センサ
103 セカンダリ圧センサ
104 プライマリプーリ回転センサ
105 セカンダリプーリ回転センサ
106 スロットル開度センサ
107 インヒビタスイッチ
108 減速度センサ
109 ブレーキスイッチ
200 エンジンコントローラ

Claims (3)

  1. 運転状態に応じた目標変速比を算出するコントローラと、このコントローラから指令される目標変速比に基づいてエンジン等の駆動源からの入力を無段階に変速する無段変速機とを備える無段変速機の変速制御装置において、
    前記コントローラは、実変速比が予め設定された設定変速比よりもHi側にある発進時には、発進後最初に算出した実変速比を初期値とする目標変速比と、前記設定変速比を初期値とする仮想目標変速比とを演算し、前記仮想目標変速比と前記目標変速比との差分が第一の所定値まで縮まったのちは当該目標変速比の変速速度を低下させるよう指令を行う発進時変速制御手段を設けたことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
  2. 前記コントローラに、前記目標変速比を固定する目標変速比固定手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
  3. 前記コントローラに、前記差分が前記第一の所定値よりも小さな第2の所定値まで縮まったのちは新たな目標変速比として、前記仮想目標変速比を選択する目標変速比選択手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の無段変速機の変速制御装置。

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