JP7520954B2 - アルコール飲料及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルコール飲料及び該アルコール飲料の製造方法に関し、特には、酸味のとげとげしさを感じず、マイルド(まろやか)で味わいのある、新しい味感を持ったアルコール飲料に関するものである。
容器詰めアルコール飲料(レディ・トゥ・ドリンク(RTD)アルコール飲料等)の中でも、レモン風味のアルコール飲料、例えばレモン風味の酎ハイや、レモン風味のカクテル飲料は市場でも人気があり、最近では特に、レモンの爽やかな酸味、フレッシュ感が強調された、低甘味ですっきりした味わいのものが主流となってきている。
ところが昨今、容器詰めアルコール飲料の市場においては、消費者のニーズや飲用シーンが多様化してきている。レモン風味のアルコール飲料においても、前述の低甘味ですっきりした味わいのものには、酸味のとげとげした感じが強くて味わいに欠ける等の呈味上の問題があり、これらの問題の解決が求められている。
特開2017-184697号公報(特許文献1)は、γ-アミノ酪酸(GABA)を含有する非発酵アルコールテイスト飲料を記載し、これにより、味のまろやかさ、味の厚みが増強され、酸味刺激が抑制された非発酵アルコールテイスト飲料を提供できることを記載している。
特開2016-158549号公報(特許文献2)は、アルコール飲料に特定するものではないが、レモン果汁とイミダゾールジペプチドとを含有し、クエン酸換算の酸度をX(w/v%)とし、前記イミダゾールジペプチドの含有量をY(w/v%)とした場合に、Y/Xが0.0005~0.200であることを特徴とするレモン果汁含有飲料を記載しており、このようにクエン酸換算の酸度に対してイミダゾールジペプチドを所定量の範囲で含有させることで、このイミダゾールジペプチドが、レモン果汁由来の酸味のカドやイガイガ感を低減し、レモン果汁含有飲料の酸味をまろやかなものに改質することができるとしている。
特開2017-184697号公報 特開2016-158549号公報 特開2015-104323号公報
特許文献1~2に記載されるようなアルコール飲料によれば、マイルドで味わいのあるアルコール飲料が期待できるものの、γ-アミノ酪酸やイミダゾールジペプチドに由来する味を飲料に付与する問題もあり、好ましくない味を呈する恐れがある。このため、例えばレモン風味のアルコール飲料のような酸味のあるアルコール飲料に対して酸味刺激を抑制することができる新しい手法が依然として望まれている。
そこで、本発明の目的は、従来技術とは異なる手法で、酸味のとげとげしさを感じず、マイルド(まろやか)で味わいのある、新しい味感を持ったアルコール飲料を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるアルコール飲料の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討して、消費者のニーズや飲用シーンの多様化に対応できる新しい味感を持ったレモン風味のアルコール飲料の開発に取り組む中で、5-ヒドロキシメチルフルフラールに着目した。5-ヒドロキシメチルフルフラール(又は5-(ヒドロキシメチル)-2-フルアルデヒド)は、糖や炭水化物の熱分解により生成される有機化合物であり、牛乳や果汁、蒸留酒、蜂蜜などの食品を加熱すると、微量ながら生成することが知られている。
本発明者は、この5-ヒドロキシメチルフルフラールについて種々検討を重ねたところ、5-ヒドロキシメチルフルフラールと共に炭素数3~5のアルコールを配合することで、レモンの爽やかな風味を十分感じながらも酸味のとげとげしさを感じず、マイルド(まろやか)で味わいのある、新しい味感を持ったレモン風味のアルコール飲料を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
なお、5-ヒドロキシメチルフルフラールについて、例えば、特開2015-104323号公報(特許文献3)によれば、加熱処理によりレモン果汁含有飲料中に生成される5-ヒドロキシメチルフルフラール(以下「5HMF」ともいう)の含有量を特定し、その生成を抑制すること、つまり容器詰めレモン果汁含有飲料中の5HMF含有量を2.0ppm以下とすることで、加熱処理による風香味の劣化が抑えられ、また、製造時だけでなく経時的な褐変も抑えられた容器詰めレモン果汁含有飲料を提供できるとしている。特許文献3に記載される飲料は、アルコール飲料ではないものの、飲料中に含まれる5HMFの量を抑えることがよいとされており、5-ヒドロキシメチルフルフラールが飲料の味感の改善に注目されていたとは言えない。5-ヒドロキシメチルフルフラールと炭素数3~5のアルコールの併用による味のまろやかさの増強や酸味刺激の抑制といった効果は、従来の技術から予期できるものではなかった。
即ち、本発明のアルコール飲料は、5-ヒドロキシメチルフルフラールと、炭素数3~5のアルコールとを含有する。
本発明のアルコール飲料の好適例においては、5-ヒドロキシメチルフルフラールを0.05~20ppm含有する。
本発明のアルコール飲料の他の好適例においては、炭素数3~5のアルコールを0.05~15ppm含有する。
本発明のアルコール飲料の他の好適例においては、炭素数3~5のアルコールが、n-プロピルアルコール、イソブチルアルコール、及びイソアミルアルコールよりなる群から選択される少なくとも1種である。
本発明のアルコール飲料の他の好適例においては、柑橘類風味、特にレモン風味のアルコール飲料である。
本発明のアルコール飲料の他の好適例においては、レモン果汁を1.0w/v%以上含有する。
本発明のアルコール飲料の他の好適例においては、酸度が0.10~0.80g/100mLである。
本発明のアルコール飲料の他の好適例においては、糖度が3.0°Bx以上である。
本発明のアルコール飲料の他の好適例においては、単式蒸留アルコール含有液を含有する。
本発明のアルコール飲料の他の好適例においては、単式蒸留アルコール含有液が、焼酎又はウイスキーである。
本発明のアルコール飲料の他の好適例においては、アルコール濃度が3v/v%以上である。
本発明のアルコール飲料の他の好適例においては、容器詰めアルコール飲料である。
また、本発明のアルコール飲料の製造方法は、アルコール飲料に5-ヒドロキシメチルフルフラールと、炭素数3~5のアルコールとを含有させることを含む。
本発明によれば、酸味のとげとげしさを感じず、マイルド(まろやか)で味わいのある、新しい味感を持ったアルコール飲料を提供することができる。
以下に、本発明のアルコール飲料を詳細に説明する。本発明のアルコール飲料は、5-ヒドロキシメチルフルフラールと、炭素数3~5のアルコールとを含有することを特徴とする。本発明のアルコール飲料によれば、アルコール飲料に5-ヒドロキシメチルフルフラールと炭素数3~5のアルコールとを配合することで、酸味のとげとげしさを感じず、マイルド(まろやか)で味わいのある、新しい味感を持ったアルコール飲料を提供することができる。このため、本発明のアルコール飲料は、柑橘類風味、特にはレモン風味を有するアルコール飲料である場合に特に好適である。
本明細書において「アルコール飲料」とは、エチルアルコールを含有する飲料であり、通常、飲料中のエチルアルコール濃度が温度15℃の時において原容量百分中に1容量%以上である飲料を指す。アルコール飲料の具体例としては、日本酒、ビール及びワイン等の醸造酒、焼酎、ウイスキー、ブランデー及びウオッカ等の蒸留酒、酎ハイ、カクテル、梅酒及びリキュール等の混成酒が挙げられる。
本発明のアルコール飲料は、5-ヒドロキシメチルフルフラールを含有する。5-ヒドロキシメチルフルフラールは、炭素数3~5のアルコールと併用することで、酸味のとげとげしさを感じず、マイルド(まろやか)で味わいのある、新しい味感を持ったアルコール飲料を提供することが可能になる。
本発明のアルコール飲料において、5-ヒドロキシメチルフルフラールの含有量は、特に限定されるものではないが、多すぎると、アルコール飲料の風味に影響を及ぼす恐れもあるため、例えば100ppm未満が好ましい。
また、本発明のアルコール飲料中における5-ヒドロキシメチルフルフラールの含有量は、0.05~20ppmであることが好ましく、0.05~10ppmであることがより好ましく、0.2~10ppmであることが更に好ましい。5HMFの含有量が上記特定した好ましい範囲内にあると、味のまろやかさの増強効果や酸味刺激の抑制効果が高く、また、味の厚みを増強させることも可能である。そして、本発明のアルコール飲料がレモン風味のアルコール飲料のような柑橘類風味のアルコール飲料である場合、レモン風味などの柑橘類の風味を高いレベルで維持することができる。
5-ヒドロキシメチルフルフラールは、例えば香料や糖類加熱処理物として飲料に添加することで、その含有量を調整することができる。
本明細書において、成分の含有量をppmで表す場合、その含有量は、アルコール飲料全体の体積に対する該アルコール飲料に含まれる成分の重量の百万分率である。「ppm」は「w/v ppm」と表記することもできる。
本発明のアルコール飲料は、炭素数3~5のアルコールを含有する。炭素数3~5のアルコールは、5-ヒドロキシメチルフルフラールと併用することで、アルコール飲料の味のまろやかさを増強しつつ、酸味刺激を抑制することができ、更には味の厚みを増すことも可能である。なお、炭素数3~5のアルコールを単独で用いたとしても、本願発明の効果を十分に発揮することはできない。
炭素数3~5のアルコールとしては、プロピルアルコール(プロパノールとも呼ばれる)、ブチルアルコール(ブタノールとも呼ばれる)、ペンチルアルコール(ペンタノール、アミルアルコールとも呼ばれる)が挙げられるが、その中でも、n-プロピルアルコール、イソブチルアルコール及びイソアミルアルコールが好ましく、イソブチルアルコール及びイソアミルアルコールが更に好ましく、イソアミルアルコールが特に好ましい。また、これら炭素数3~5のアルコールは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のアルコール飲料において、炭素数3~5のアルコールの含有量は、特に限定されるものではないが、多すぎると、アルコール飲料の風味に影響を及ぼす恐れもあるため、例えば50ppm未満が好ましい。
また、本発明のアルコール飲料中における炭素数3~5のアルコールの含有量は、0.05~15ppmであることが好ましく、0.1~15ppmであることがより好ましく、1.5~15ppmであることが更に好ましい。炭素数3~5のアルコールの含有量が上記特定した好ましい範囲内にあると、味のまろやかさの増強効果や酸味刺激の抑制効果が高く、また、味の厚みを増強させることも可能である。そして、本発明のアルコール飲料がレモン風味のアルコール飲料のような柑橘類風味のアルコール飲料である場合、レモン風味などの柑橘類の風味を高いレベルで維持することができる。
本発明のアルコール飲料は、上述のとおり、5-ヒドロキシメチルフルフラールと、炭素数3~5のアルコールとを含有することを特徴とするものであり、5-ヒドロキシメチルフルフラール又は炭素数3~5のアルコールを単独で含有していても、本発明の効果が得られるものではない。
例えば、アルコール飲料に5-ヒドロキシメチルフルフラールを単独で0.05ppm、10ppm、20ppm添加した場合は、本発明の効果が得られなかった。特に5-ヒドロキシメチルフルフラールを20ppm添加したアルコール飲料では、炭素数3~5のアルコールと併用した場合に感じられなかった異臭(コゲ臭)を感じ、嗜好性が下がる結果となった。
また、炭素数3~5のアルコールとして、イソアミルアルコールを単独で0.05ppm、5ppm、15ppm添加した場合も、本発明の効果が得られなかった。特にイソアミルアルコールを15ppm添加したアルコール飲料では、5-ヒドロキシメチルフルフラールと併用した場合に感じられなかった雑味を感じ、嗜好性が下がる結果となった。
本発明のアルコール飲料は、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、ライム等の柑橘類の風味のあるアルコール飲料であることが好ましく、レモン風味のアルコール飲料であることが特に好ましい。本発明のアルコール飲料によれば、レモン等の柑橘類の持つ爽やかな風味を十分に感じながらも、酸味のとげとげしさを感じず、また、低甘味でありながらも、マイルドで味わいのあるアルコール飲料を提供することができる。なお、柑橘類の風味のあるアルコール飲料としては、柑橘類の果汁や柑橘類の香り成分を含有するアルコール飲料が挙げられる。レモン風味のアルコール飲料であれば、レモン果汁を含有するアルコール飲料や、リモネン、β-ピネン、γ-テルピネン、シトラール、α-ピネン等のレモン由来の香り成分を含有するアルコール飲料を挙げることができる。
本発明のアルコール飲料は、レモン果汁を1.0w/v%以上含有することが好ましく、3.0w/v%以上であることがより好ましい。レモン果汁の含有量の上限については特に制限はないものの、20.0w/v%以下であることを例示することができる。
レモン果汁の含有量がこの範囲であれば、本発明のアルコール飲料は、味のまろやかさの増強効果や酸味刺激の抑制効果が高く、また、味の厚みを増強させることも可能となる。
なお、レモン果汁が、ストレート果汁ではなく、濃縮果汁である場合、その含有量は、ストレート果汁に換算した値を意味する。
ストレート果汁への換算方法は、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)によって定まられている各果実に固有の糖度、又は酸度の基準値を用いて行う。具体的には、試料果汁の糖用屈折計示度(糖度)あるいは酸度を測定し、その果実に固有の糖度あるいは酸度の基準値で割れば、果汁の濃縮倍率を求めることができる。
本発明のアルコール飲料は、更に酸味料を含有してもよい。酸味料の具体例としては、アジピン酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム(クエン酸三ナトリウム等)、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸及びこれらの塩(カリウム塩、ナトリウム塩)が挙げられる。酸味料は、pH調整剤としても使用可能である。これら酸味料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のアルコール飲料は、酸度が0.10~0.80g/100mLであることが好ましく、0.20~0.60g/100mLであることが更に好ましい。例えば、上述した酸味料を加えることで、酸度を調整することができる。
なお、酸度は、クエン酸換算した酸度を示し、国税庁所定分析法 (平19国税庁訓令第6号)の8頁、総酸(遊離酸)にて定められた酸度の測定方法に基づいて算出される。
詳細には、酸度は、以下の方法により測定できる。
試料1~50mlを正確に量りとり、水で適宜希釈する。これを、0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液で滴定し、pHメーターで8.2を終点とし、下記の式により算出する。
(数式1):酸度(%)=A×f×100/W×0.0064(クエン酸酸度の場合)
A:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液による滴定量(ml)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液の力価
W:試料重量(g)
なお、数式1中、「0.0064」は、「0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液1mlに相当する無水クエン酸の重量(g)」である。
本発明のアルコール飲料は、更に甘味料を含有してもよい。甘味料としては、例えば、果糖、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖、麦芽糖、ショ糖、高果糖液糖、糖アルコール、オリゴ糖、はちみつ、水飴、ステビア末、ステビア抽出物、羅漢果末、羅漢果抽出物、甘草末、甘草抽出物、ソーマトコッカスダニエリ種子末、ソーマトコッカスダニエリ種子抽出物などの天然甘味料や、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、アスパルテーム、サッカリンなどの人工甘味料などが挙げられる。これら甘味料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のアルコール飲料は、糖度が3.0°Bx以上であることを例示することができるが、レモンの爽やかな酸味、フレッシュ感が強調され、飲み易さが損なわれないアルコール飲料を提供する観点から、糖度は12.0°Bx以下であることが好ましい。
本明細書において、糖度は、Brix(ブリックス)値であり、屈折糖度計や糖用屈折計(例えばデジタル屈折計Rx-5000(アタゴ社製))を用いて20℃にて測定される可溶性固形分量を指す。
本発明のアルコール飲料は、蒸留酒を含有することが好ましく、単式蒸留アルコール含有液を含有することがより好ましく、単式蒸留焼酎(焼酎乙類とも呼ばれる)や単式蒸留で製造されたウイスキー(モルトウイスキー等)を含有することが更に好ましい。
本明細書において「単式蒸留アルコール含有液」とは、醸造酒のようなアルコール発酵により得られたアルコール含有物を単式蒸留機により蒸留(単式蒸留)して得られる液を意味し、焼酎の他、焼酎以外の蒸留アルコール(例えばウイスキー、ブランデー、スピリッツ)の場合も含まれる。
また、単式蒸留アルコール含有液は、通常、エチルアルコールに加えてフーゼル油を含むものであり、炭素数3~5のアルコールを含有するものが好ましく、n-プロピルアルコール、イソブチルアルコール、及びイソアミルアルコールよりなる群から選択される炭素数3~5のアルコールを含有するものが更に好ましい。
本発明のアルコール飲料が、炭素数3~5のアルコールを含有する単式蒸留アルコール含有液を含む場合、上述した本発明のアルコール飲料に含まれる炭素数3~5のアルコールには、単式蒸留アルコール含有液に含まれるものも該当する。このため、本発明のアルコール飲料には、炭素数3~5のアルコールそれ自体を単独で用いてもよいし、例えば単式蒸留アルコール含有液のような他の成分との混合物の形態で用いてもよいし、それらを併用してもよい。
本発明のアルコール飲料は、アルコール濃度が3v/v%以上であることが好ましく、また、上限としては15v/v%以下であることを例示することができる。本発明のアルコール飲料においては、アルコール濃度が4~10v/v%であることが更に好ましい。
本明細書において、アルコール濃度は、アルコール飲料全体の体積に対する該アルコール飲料に含まれるエチルアルコールの体積の百分率で表され、「v/v%」と表記する。
本発明のアルコール飲料は、発泡性飲料であってもよいし、非発泡性飲料であってもよいが、二酸化炭素を含有する炭酸アルコール飲料であることが好ましい。
本発明のアルコール飲料は、その種類に応じてpHを適宜設定できるが、そのpHは、例えば2.5~5.0の範囲に調整される。
本発明のアルコール飲料は、飲用水を含み、アルコール飲料の種類に応じて、色素、香料等を適宜含有することができる。また、本発明のアルコール飲料には、更に必要に応じて、pH調整剤(重曹など)、ビタミン類、ペプチド、アミノ酸、水溶性食物繊維、酸化防止剤、安定化剤、乳化剤等、食品分野で通常用いられている原料や食品添加物を用いてもよい。
本発明のアルコール飲料は、容器詰め飲料として提供することができる。容器としては、特に限定されるものではないが、瓶、缶、樽等の他、プラスチック製の容器や紙製の容器等も挙げられる。
本発明のアルコール飲料は、常法により製造することができるものであるが、本発明のアルコール飲料の製造方法は、アルコール飲料に5-ヒドロキシメチルフルフラールと、炭素数3~5のアルコールとを含有させることを含む。本発明のアルコール飲料の製造方法において、5-ヒドロキシメチルフルフラール及び炭素数3~5のアルコールを添加するタイミングは特に限定されず、それぞれ独立して、任意のタイミングで加えることができる。例えば、アルコール飲料の製造過程における任意のタイミングで一緒に又は別々に添加してもよいし、また、アルコール飲料の製造後、飲用する際に5-ヒドロキシメチルフルフラール及び/又は炭素数3~5のアルコールを添加してもよい。
例えば、本発明のアルコール飲料は、その種類に応じて適宜選択される各種成分を混合し、得られた混合液に対して必要に応じて炭酸ガスを加えることにより調製できる。ここで、5-ヒドロキシメチルフルフラール及び炭素数3~5のアルコールは、他の成分と一緒に混合してもよいし、炭酸ガスの添加後に加えてもよい。5-ヒドロキシメチルフルフラール及び炭素数3~5のアルコールは、それぞれ独立した任意のタイミングで加えることができる。炭酸ガスは、例えば、炭酸ガスを直接加えて混合液中に溶け込ませることができるが、炭酸水を混合液に加えてもよい。また、成分の混合や炭酸ガスの添加後にろ過を行い、不溶物を除去する処理を行ってもよい。その後、容器に充填・密封することにより、容器詰め飲料としてアルコール飲料を製造することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。なお、官能試験1.から官能試験7.は、それぞれ別の日に行われた試験であるため、同一の配合処方であっても評価結果が若干異なる場合がある。
官能試験1.
<アルコール飲料の調製例>
表1に示される基本処方に従ってアルコール飲料を調製し、これを対照飲料Aとした。また、表1に示される基本処方に従って調製されたアルコール飲料に対して、表2に示される濃度になるように5-ヒドロキシメチルフルフラール及びイソアミルアルコールを添加して、試験飲料1~4を調製した。
これら調製された対照飲料及び試験飲料は、アルコール度数は8v/v%であり、炭酸ガス圧は2.3GV、酸度は0.35g/100mL、糖度は9.0°Bxであった。
なお、表1の基本処方に示される原材料中に5-ヒドロキシメチルフルフラール及び炭素数3~5のアルコールが含有されていないことを確認している。
Figure 0007520954000001
Figure 0007520954000002
<試験飲料の評価>
対照飲料A及び試験飲料1~4について、訓練された3名のパネリストにより、「新鮮なレモン香」、「酸味の刺激感」、「味のまろやかさ」及び「総合的な美味しさ」の官能評価を下記評価尺度に従い行った。パネリストの平均点及びコメントを表3に示す。
なお、パネリスト間で事前に同様のサンプルを試飲して、ディスカッションにより各評価項目に対する尺度合わせを実施した。
<評価尺度>
(新鮮なレモン香)
対照飲料との比較で、レモンの香りが同程度の場合を3点とし、1~5点の5段階で評価した。1点の場合は、レモンの香りがほとんど感じられず、数値が高くなるほど、レモンの新鮮な香りが強くなる。
(酸味の刺激感)
対照飲料との比較で、酸味の刺激感が同程度の場合を3点とし、1~5点の5段階で評価した。1点の場合は、酸味の不快な刺激がほとんど感じられず、数値が高くなるほど、酸味の不快な刺激が強くなる。
(味のまろやかさ)
対照飲料との比較で、味のまろやかさが同程度の場合を3点とし、1~5点の5段階で評価した。数値が高いほど、味がよりまろやかであることを示す。
(総合的な美味しさ)
対照飲料との比較で、同程度に美味しいと感じた場合を3点とし、1~5点の5段階で評価した。数値が高いほど、総合的に美味しく感じられる飲料であることを示す。
表3には、イソアミルアルコールの濃度を1.5ppmに固定し、5-ヒドロキシメチルフルフラールの濃度を0.2~100ppmの範囲内で変更したときの評価結果を示す。
すべての試験飲料で、味のまろやかさが増強され、酸味刺激が抑制できたことが分かる。なお、5-ヒドロキシメチルフルフラールの濃度が100ppmでは、特有の香味が感じられ、総合的な美味しさの評価は低下する傾向にあった。
Figure 0007520954000003
官能試験2.
<アルコール飲料の調製例>
表1に示される基本処方に従ってアルコール飲料を調製し、これを対照飲料Bとした。また、表1に示される基本処方に従って調製されたアルコール飲料に対して、表4に示される濃度になるように5-ヒドロキシメチルフルフラール及びイソアミルアルコールを添加して、試験飲料5~9を調製した。
これら調製された対照飲料及び試験飲料は、アルコール度数は8v/v%であり、炭酸ガス圧は2.3GV、酸度は0.35g/100mL、糖度は9.0°Bxであった。
Figure 0007520954000004
<試験飲料の評価>
対照飲料B及び試験飲料5~9について、上述した官能試験1と同様に、官能評価を行った。パネリストの平均点及びコメントを表5に示す。
表5には、5-ヒドロキシメチルフルフラールの濃度を2ppmに固定し、イソアミルアルコールの濃度を1.5~500ppmの範囲内で変更したときの評価結果を示す。
すべての試験飲料で、味のまろやかさが増強され、酸味刺激が抑制できたことが分かる。なお、イソアミルアルコールの濃度が50ppm以上では、イソアミルアルコール由来の香りが感じられ、総合的な美味しさの評価は低下する傾向にあった。
Figure 0007520954000005
官能試験3.
<アルコール飲料の調製例>
表1に示される基本処方に従ってアルコール飲料を調製し、これを対照飲料Cとした。また、表1に示される基本処方に従って調製されたアルコール飲料に対して、表6に示される濃度になるように5-ヒドロキシメチルフルフラール及びイソアミルアルコールを添加して、試験飲料10~14を調製した。
これら調製された対照飲料及び試験飲料は、アルコール度数は8v/v%であり、炭酸ガス圧は2.3GV、酸度は0.35g/100mL、糖度は9.0°Bxであった。
Figure 0007520954000006
<試験飲料の評価>
対照飲料C及び試験飲料10~14について、上述した官能試験1と同様に、官能評価を行った。パネリストの平均点及びコメントを表7に示し、各パネリストの点数を表8に示す。
表7~8には、5-ヒドロキシメチルフルフラールの濃度を0.05ppmに固定し、イソアミルアルコールの濃度を0.05~15ppmの範囲内で変更したときの評価結果を示す。すべての試験飲料で、味のまろやかさが増強され、酸味刺激が抑制できたことが分かる。
Figure 0007520954000007
Figure 0007520954000008
官能試験4.
<アルコール飲料の調製例>
表1に示される基本処方に従ってアルコール飲料を調製し、これを対照飲料Dとした。また、表1に示される基本処方に従って調製されたアルコール飲料に対して、表9に示される濃度になるように5-ヒドロキシメチルフルフラール及びイソアミルアルコールを添加して、試験飲料15~19を調製した。
これら調製された対照飲料及び試験飲料は、アルコール度数は8v/v%であり、炭酸ガス圧は2.3GV、酸度は0.35g/100mL、糖度は9.0°Bxであった。
Figure 0007520954000009
<試験飲料の評価>
対照飲料D及び試験飲料15~19について、上述した官能試験1と同様に、官能評価を行った。パネリストの平均点及びコメントを表10に示し、各パネリストの点数を表11に示す。
表10~11には、イソアミルアルコールの濃度の濃度を0.05ppmに固定し、5-ヒドロキシメチルフルフラールの濃度を0.05~30ppmの範囲内で変更したときの評価結果を示す。すべての試験飲料で、味のまろやかさが増強され、酸味刺激が抑制できたことが分かる。
Figure 0007520954000010
Figure 0007520954000011
官能試験5.
<アルコール飲料の調製例>
表1に示される基本処方に従ってアルコール飲料を調製し、これを対照飲料Eとした。また、表1に示される基本処方に従って調製されたアルコール飲料に対して、表12に示される濃度になるように5-ヒドロキシメチルフルフラール及びイソアミルアルコールを添加して、試験飲料20~23を調製した。
これら調製された対照飲料及び試験飲料は、アルコール度数は8v/v%であり、炭酸ガス圧は2.3GV、酸度は0.35g/100mL、糖度は9.0°Bxであった。
Figure 0007520954000012
<試験飲料の評価>
対照飲料E及び試験飲料20~23について、上述した官能試験1と同様に、官能評価を行った。パネリストの平均点及びコメントを表13に示し、各パネリストの点数を表14に示す。
表13~14には、イソアミルアルコールの濃度の濃度を15ppmに固定し、5-ヒドロキシメチルフルフラールの濃度を0.05~30ppmの範囲内で変更したときの評価結果を示す。すべての試験飲料で、味のまろやかさが増強され、酸味刺激が抑制できたことが分かる。
Figure 0007520954000013
Figure 0007520954000014
官能試験6.
<アルコール飲料の調製例>
表1に示される基本処方に従ってアルコール飲料を調製し、これを対照飲料Fとした。また、表1に示される基本処方に従って調製されたアルコール飲料に対して、表15に示される濃度になるように5-ヒドロキシメチルフルフラール及びイソアミルアルコールを添加して、試験飲料24~26を調製した。
これら調製された対照飲料及び試験飲料は、アルコール度数は8v/v%であり、炭酸ガス圧は2.3GV、酸度は0.35g/100mL、糖度は9.0°Bxであった。
Figure 0007520954000015
<試験飲料の評価>
対照飲料F及び試験飲料24~26について、上述した官能試験1と同様に、官能評価を行った。パネリストの平均点及びコメントを表16に示し、各パネリストの点数を表17に示す。
表16~17には、5-ヒドロキシメチルフルフラールの濃度の濃度を15ppmに固定し、イソアミルアルコールの濃度を0.2~10ppmの範囲内で変更したときの評価結果を示す。すべての試験飲料で、味のまろやかさが増強され、酸味刺激が抑制できたことが分かる。
Figure 0007520954000016
Figure 0007520954000017
官能試験7.
<アルコール飲料の調製例>
表1に示される基本処方に従って調製されたアルコール飲料に、乙類麦焼酎(ニッカウヰスキー製、イソアミルアルコール含有)0.50v/v%と、糖類加熱処理物(池田糖化工業製、5-ヒドロキシメチルフルフラール含有)0.005w/v%とを更に添加して、試験飲料27を調製した。
調製された試験飲料は、イソアミルアルコールを1.5ppm、5-ヒドロキシメチルフルフラールを1.2ppm含有したレモン風味のアルコール飲料であった。
訓練されたパネリストに試飲させたところ、不快な酸味刺激が抑制され、味のまろやかさが増強された、良好な味感を有したレモン風味のアルコール飲料であることが確認された。

Claims (9)

  1. 5-ヒドロキシメチルフルフラールを0.05~20ppmイソアミルアルコールを0.05~15ppm含有し、酸度が0.10~0.80g/100mLである、アルコール飲料。
  2. レモン風味のアルコール飲料である、請求項1に記載のアルコール飲料。
  3. レモン果汁を1.0w/v%以上含有する、請求項1又は2に記載のアルコール飲料。
  4. 糖度が3.0°Bx以上である、請求項1からのいずれかに記載のアルコール飲料。
  5. 単式蒸留アルコール含有液を含有する、請求項1からのいずれかに記載のアルコール飲料。
  6. 単式蒸留アルコール含有液が、焼酎又はウイスキーである、請求項1からのいずれかに記載のアルコール飲料。
  7. アルコール濃度が3v/v%以上である、請求項1からのいずれかに記載のアルコール飲料。
  8. 容器詰めアルコール飲料である、請求項1及び3からのいずれかに記載のアルコール飲料。
  9. アルコール飲料に5-ヒドロキシメチルフルフラールと、イソアミルアルコールとを含有させることを含む、請求項1~のいずれかに記載のアルコール飲料の製造方法。
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