以下、図面を参照しながら、本発明の実施の一形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。
図1は、本実施形態に係る印刷システム1の概念図である。本実施形態に係る印刷システム1は、プリンタ10と、測色装置80と、端末200とを備えている。印刷システム1は、媒体5(図2参照)に吐出されたインクの色濃度を測定可能な測色装置80を使用して、プリンタ10から媒体5に吐出されたインクの色濃度を測定し、色濃度を補正する色濃度補正値を算出する。以下、プリンタ10、測色装置80および端末200について順に説明する。
図2は、本実施形態に係るプリンタ10の正面図である。図3は、図2のIII-III断面におけるプリンタ10の断面図である。以下の説明において、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいるユーザ、ここでは後述の操作パネル13と対向する位置にいるユーザから見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、上記ユーザがプリンタ10から遠ざかる方を前方、上記ユーザがプリンタ10に近づく方を後方とする。
図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を示している。また、図面中の符号Yは主走査方向を示し、符号Xは副走査方向を示している。本実施形態では、主走査方向Yは左右方向である。副走査方向Xは平面視において主走査方向Yと交差しており、ここでは主走査方向Yと直交している。副走査方向Xは、例えば前後方向である。ただし、これら方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
本実施形態に係るプリンタ10は、いわゆるロールtoロールタイプのプリンタである。ただし、プリンタ10は、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタであってもよい。また、本実施形態に係るプリンタ10は、いわゆるインクジェット方式のプリンタである。ただし、プリンタ10の方式は、インクジェット方式に限定されず、例えばドットインパクト方式のプリンタであってもよいし、レーザプリンタやサーマルプリンタであってもよい。
図2に示すように、プリンタ10は、媒体5に対して印刷を行うものである。媒体5は例えばロール状の記録紙であり、いわゆるロール紙である。媒体5は、熱が付与されると加温する性質を持ち、かつ、熱が付与されると媒体5に吐出されたインクの乾燥が促進される。なお、媒体5の種類などは特に限定されない。例えば媒体5は、普通紙やインクジェット用印刷紙などの紙類以外に、ポリ塩化ビニルやポリエステルなどの樹脂製のシートやフィルム、板材、織布や不織布などの布帛、その他の媒体であってもよい。また、媒体5は、交換可能なものである。印刷後の媒体5は、プリンタ10から適宜取り外され、新たな媒体5がプリンタ10に取り付けられる。
本実施形態では、図2に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体10aと、ガイドレール20と、キャリッジ22と、インクヘッド24(図3参照)と、ホルダ55と、ヘッド移動機構30と、プラテン40(図3参照)と、媒体移動機構50と、制御装置60とを備えている。
プリンタ本体10aは、主走査方向Yに延びたケーシングを有している。プリンタ本体10aには、脚11が設けられている。脚11は、プリンタ本体10aを支持し、プリンタ本体10aから下方に延びている。なお、図3では、脚11の図示は省略されている。
図2に示すように、プリンタ10は、操作パネル13を備えている。操作パネル13は、プリンタ本体10aに設けられ、詳しくはプリンタ本体10aの右側の前面に設けられている。ただし、操作パネル13の設置位置は特に限定されない。操作パネル13は、例えば解像度、インクの濃さなどの印刷に関する情報や、印刷中のプリンタ10のステータスなどが表示される表示部14と、印刷に関する情報を入力するための入力キー15とを有する。なお、操作パネル13の表示部14は、表示装置の一例である。
ガイドレール20は、プリンタ本体10aに固定されており、主走査方向Yに延びている。キャリッジ22は、ガイドレール20に摺動可能に係合している。キャリッジ22は、ガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
図3に示すように、インクヘッド24は、プラテン40に向かってインクを吐出する。詳しくは、インクヘッド24は、プラテン40に支持された媒体5に向かってインクを吐出する。インクヘッド24は、キャリッジ22に設けられている。インクヘッド24は、キャリッジ22と共にガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
なお、インクヘッド24の数は特に限定されない。図4は、キャリッジ22、インクヘッド24、および、測色装置80が取り付けられたホルダ55を模式的に示す正面図である。図5は、キャリッジ22、インクヘッド24、測色装置80が取り外されたホルダ55を模式的に示す底面図である。本実施形態では、図4に示すように、インクヘッド24の数は4つである。複数のインクヘッド24は、主走査方向Yに並んで配置されている。
本実施形態では、図5に示すように、インクヘッド24の下面には、複数のノズル26が形成されたノズル面25が設けられている。1つのインクヘッド24において、複数のノズル26が副走査方向Xに並んで配置されている。ノズル26は、プラテン40に向かって下方に開口しており、ノズル26から下方に向かってインクが吐出される。
各インクヘッド24から異なる色のインクが吐出される。各インクヘッド24から吐出されるインクの色は、特に限定されないが、例えばシアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどのプロセスカラーインク、および、クリアインク、ホワイトインクなどの特色インクのうちの何れかの色である。本実施形態では、各インクヘッド24から吐出されるインクは、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、および、ブラックインクの何れかである。
本実施形態では、インクヘッド24は、消耗品であり、経年劣化するものである。そのため、インクヘッド24は、所定の回数の印刷が行われた後、新しいインクヘッド24に交換されることが好ましい。インクヘッド24は、キャリッジ22に対して交換可能に構成されている。
以下の説明において、シアンインクを吐出するインクヘッド24を、第1インクヘッド24aと称し、マゼンタインクを吐出するインクヘッド24を、第2インクヘッド24bと称する。イエローインクを吐出するインクヘッド24を、第3インクヘッド24cと称し、ブラックインクを吐出するインクヘッド24を、第4インクヘッド24dと称する。インクヘッド24は、インクヘッド24a~24dの総称である。
図6は、インクヘッド24とカートリッジ28との関係を示す概念図である。図6に示すように、複数のインクヘッド24には、それぞれインクチューブ27を介してカートリッジ28が接続されている。複数のカートリッジ28には、それぞれ接続先のインクヘッド24が吐出するインクが収容されている。カートリッジ28は、インク収容体の一例である。ただし、インク収容体は、カートリッジ28に限定されず、例えばパウチ状の容器であってもよいし、ボトル状の容器であってもよい。
ここでは、第1インクヘッド24aに接続されたカートリッジ28は、シアンインクが収容された第1カートリッジ28aであり、第2インクヘッド24bに接続されたカートリッジ28は、マゼンタインクが収容された第2カートリッジ28bである。第3インクヘッド24cに接続されたカートリッジ28は、イエローインクが収容された第3カートリッジ28cであり、第4インクヘッド24dに接続されたカートリッジ28は、ブラックインクが収容された第4カートリッジ28dである。カートリッジ28は、カートリッジ28a~28dの総称である。
図6に示すように、プリンタ10は、収容部29を備えている。収容部29は、所定の空間を有しており、カートリッジ28が収容される。図2に示すように、収容部29は、プリンタ本体10aに設けられている。なお、プリンタ本体10aに対する収容部29の位置は特に限定されないが、ここでは、収容部29は、プリンタ本体10aの左側部分に設けられている。
カートリッジ28は、収容部29に交換可能に収容されており、インクヘッド24に交換可能に接続されている。例えばカートリッジ28に収容されたインクの量が所定量よりも少なくなったとき、カートリッジ28は、インクヘッド24および収容部29から取り外される。そして、新たなカートリッジ28であって、新たなインクが収容されたカートリッジ28を収容部29に収容し、インクチューブ27を介してインクヘッド24に接続する。
図4に示すように、ホルダ55は、キャリッジ22に設けられている。ホルダ55には、測色装置80が着脱可能に設けられる。なお、キャリッジ22に対するホルダ55の位置は特に限定されない。本実施形態では、ホルダ55は、キャリッジ22の左部であって、インクヘッド24よりも左方に配置されている。しかしながら、ホルダ55は、キャリッジ22の右部であって、インクヘッド24よりも右方に配置されていてもよい。
なお、ホルダ55に測色装置80を取り付ける構成は特に限定されない。本実施形態では、図5に示すように、ホルダ55は、リング状に形成されており、上下に貫通した貫通孔56を有している。この貫通孔56に測色装置80を挿入し、図示しない締結部材によってホルダ55を締め付ける。このことで、ホルダ55に対して測色装置80が固定される。
ホルダ55は、プラテン40に対して相対的に上下方向に移動可能に構成されている。本実施形態では、プリンタ10は、プラテン40に対してホルダ55を相対的に上下方向に移動させる上下移動機構58を備えている。ここでは、上下移動機構58は、ホルダ55を上下方向に移動させる。なお、上下移動機構58の構成は特に限定されない。図示は省略するが、上下移動機構58は、例えばホルダ55に摺動可能に係合し、上下方向に延びたレールと、ホルダ55に接続され、ホルダ55を上下に移動させるモータとを有している。
図2に示すように、ヘッド移動機構30は、キャリッジ22と共にインクヘッド24(図3参照)を主走査方向Yに移動させる機構である。ヘッド移動機構30の構成は特に限定されない。本実施形態では、ヘッド移動機構30は、左右のプーリ31a、31bと、ベルト32と、スキャンモータ33とを有している。
左のプーリ31aは、ガイドレール20の左端部に設けられている。右のプーリ31bは、ガイドレール20の右端部に設けられている。ベルト32は、無端状のベルトであり、左右のプーリ31a、31bに巻き掛けられている。ベルト32には、キャリッジ22が取り付け固定されている。ここでは、右のプーリ31bには、スキャンモータ33が接続されている。スキャンモータ33が駆動することで、右のプーリ31bが回転し、ベルト32が走行する。このことで、キャリッジ22およびインクヘッド24は、ガイドレール20に沿って主走査方向Yに移動する。
図3に示すように、プラテン40は、媒体5を支持する。媒体5への印刷は、プラテン40上で行われる。プラテン40は、ガイドレール20、キャリッジ22およびインクヘッド24の下方に配置されている。プラテン40は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに広がっている。プラテン40は、支持台の一例である。
本実施形態では、プラテン40は、媒体5を交換可能に支持する。ここでは、例えばロール状の媒体5は、プリンタ10の供給装置(図示せず)に取り付けられ、供給装置からプラテン40に供給される。供給装置に取り付けられた媒体5が取り外され、新たな媒体5が供給装置に取り付けられたとき、プラテン40に支持された媒体5が交換されたという。
本実施形態では、プラテン40の後方にはリアエプロン42が配置され、プラテン40の前方にはフロントエプロン44が配置されている。リアエプロン42は、プラテン40と連続し、媒体5を上記供給装置からプラテン40に案内するものである。リアエプロン42は、プラテン40から離れるほど下方に向かうように湾曲している。フロントエプロン44は、プラテン40と連続し、プラテン40に支持されている媒体5の部分を、媒体5を巻き取る巻き取り装置(図示せず)に案内するものである。フロントエプロン44は、プラテン40から離れるほど下方に向かうように湾曲している。
媒体移動機構50は、プラテン40に支持された媒体5を副走査方向Xに移動させる機構である。なお、媒体移動機構50の構成は特に限定されない。本実施形態では、図2に示すように、媒体移動機構50は、グリットローラ51と、ピンチローラ52と、フィードモータ53と、を有している。
図3に示すように、グリットローラ51は、プラテン40に設けられている。ここでは、グリットローラ51の一部がプラテン40から上方に露出しており、グリットローラ51の他の一部がプラテン40に埋設されている。ピンチローラ52は、媒体5を上から押さえ付けるものである。ピンチローラ52は、プラテン40の上方であって、グリットローラ51の上方に配置されている。ピンチローラ52は、グリットローラ51と対向する位置に設けられている。ピンチローラ52は、上下に移動可能に構成されている。なお、グリットローラ51およびピンチローラ52のそれぞれの設置位置および数は特に限定されない。本実施形態では、図2に示すように、グリットローラ51およびピンチローラ52は、プラテン40の左端部および右端部の近傍にそれぞれ配置されている。
フィードモータ53は、グリットローラ51に接続されている。グリットローラ51とピンチローラ52との間に媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ53が駆動する。フィードモータ53が駆動してグリットローラ51が回転すると、媒体5は副走査方向Xに移動する。
図2に示す制御装置60は、印刷に関する制御、および、媒体5に吐出されたインクの色濃度を補正する制御をする装置である。制御装置60の構成は特に限定されない。例えば、制御装置60は、コンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという。)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置60は、プリンタ本体10aの内部に設けられている。ただし、制御装置60はプリンタ本体10aの内部に設けられていなくてもよい。例えば制御装置60は、プリンタ本体10aの外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置60は、有線または無線を介してプリンタ本体10aの基板(図示せず)などと通信可能に接続されている。
図7は、印刷システム1のブロック図である。図7に示すように、制御装置60は、操作パネル13の表示部14および入力キー15と通信可能に接続されている。制御装置60は、インクヘッド24に通信可能に接続されており、インクヘッド24からのインクの吐出のタイミングや吐出量を制御する。
制御装置60は、ヘッド移動機構30(詳しくはスキャンモータ33)、および、媒体移動機構50(詳しくはフィードモータ53)に通信可能に接続されている。制御装置60は、ヘッド移動機構30を制御することで、インクヘッド24の主走査方向Yの移動を制御する。また、制御装置60は、媒体移動機構50を制御することで、プラテン40に支持された媒体5の副走査方向Xへの移動を制御する。また、制御装置60は、上下移動機構58に通信可能に接続されている。制御装置60は、上下移動機構58を制御することで、プラテン40に対するホルダ55の上下方向の移動を制御する。
以上、プリンタ10の構成について説明した。次に、図1に示す測色装置80について説明する。測色装置80は、プリンタ10に対して着脱可能に設けられるものであり、プリンタ10に対して使用されるものである。図4に示すように、測色装置80は、プリンタ10において、プラテン40に支持された媒体5に吐出されたインクの色濃度を測定することが可能である。測色装置80は、キャリッジ22に設けられたホルダ55に対して着脱可能に設けられている。
本実施形態において、測色装置80の構成は特に限定されない。図8は、測色装置80の斜視図である。図9は、測色装置80の縦断面図である。ここでは、図9に示すように、測色装置80は、棒状の測色ケース81と、測色ケース81に固定されたハウジング85と、基板86と、光源87a、87bと、センサ88とを有している。
測色ケース81は、上下方向に延びた円柱状のものであり、かつ、中空のものである。図8に示すように、測色ケース81の下部は、テーパ状であり、下方に向かうほど細くなる先細り形状である。本実施形態では、図9に示すように、測色ケース81の下面は、測定面82を構成している。図4に示すように、ホルダ55に測色装置80を取り付けたとき、測定面82は、プラテン40と対向しており、プラテン40の上面と平行である。図9に示すように、測定面82には、測定孔83が形成されている。
本実施形態では、図8に示すように、測色ケース81の下部の周囲には、上下方向に延びた複数のリブ84が形成されている。複数のリブ84は、測色ケース81の下部の周囲を囲むように配置されている。複数のリブ84によって、測色ケース81の下部は補強されている。本実施形態では、測定面82には、複数のリブ84の下面が含まれる。
図9に示すように、ハウジング85は、測色ケース81の下部の内部に配置されている。基板86は、ハウジング85の上方に配置され、ハウジング85に支持されている。光源87a、87bおよびセンサ88は、ハウジング85の上部に配置されており、基板86に固定されている。本実施形態では、光源87a、87bおよびセンサ88は、測色装置80がホルダ55に設けられたときにおける水平方向に並んで配置されている。光源87aと光源87bとの間に、センサ88が配置されている。
本実施形態では、ハウジング85には、光源87aと測定面82の測定孔83とを繋ぐ光通路85aと、光源87bと測定孔83とを繋ぐ光通路85bと、センサ88と測定孔83とを繋ぐ反射通路85cとが形成されている。光通路85a、85bは、測定孔83に向かって斜めに延びている。反射通路85cは、光通路85aと光通路85bとの間に配置され、上下方向に延びている。
基板86は、例えば光源87a、87bの点滅の切り替えを行い、センサ88が測定した情報を受信する。基板86は、例えばガラス製のプリント基板によって構成されているが、ガラス製に限定されない。
本実施形態では、測色装置80は、記憶装置86aを備えている。記憶装置86aは、例えばROMやRAMによって構成されている。記憶装置86aは、測色ケース81内に配置されている。記憶装置86aは、基板86に組み込まれている。
光源87aから発せられた光は、光通路85aを通じて測定孔83に到達する。光源87bから発せられた光は、光通路85bを通じて測定孔83に到達する。プラテン40に支持された媒体5に吐出されたインクの色濃度を測定する場合、測定孔83に到達した光は、媒体5に照射される。光源87a、87bは、例えばLEDによって構成されている。光源87a、87bは例えば白色を発光する。しかしながら、光源87a、87bは、LEDに限定されず、光源87a、87bが発光する光の色は、白色に限定されない。
測定孔83に到達した光源87a、87bの光は、媒体5によって反射される。媒体5によって反射された光は、反射通路85cを通ってセンサ88に到達する。センサ88は、反射通路85cを通った光を受ける。ここでの詳しい説明は省略するが、測色装置80は、光源87a、87bから発せられた光と、センサ88が受けた光とに基づいて、媒体5に吐出されたインクの色の濃度を測定する。
センサ88は、インクの色の濃度を測定することができるのであれば、その種類は特に限定されない。本実施形態では、センサ88は、例えばフォトダイオード、CCDイメージセンサ、または、CMOSイメージセンサである。
なお、本実施形態では、図7に示すように、プリンタ10の制御装置60は、測色装置80の基板86および記憶装置86aに通信可能に接続されている。ここでは、制御装置60は、無線によって基板86および記憶装置86aに接続されているが、基板86および記憶装置86aと有線で接続されてもよい。制御装置60は、基板86を介して測色装置80の光源87a、87bおよびセンサ88に通信可能に接続されている。制御装置60は、媒体5に吐出されたインクの色濃度を測色装置80に測定させる際、光源87a、87bを点灯させるタイミングを制御し、センサ88からインクの色濃度に関する情報(例えば反射光量)を受信する。
次に、図1に示す端末200について説明する。端末200は、プリンタ10に信号を送ることで、プリンタ10を操作することが可能である。また、端末200は、プリンタ10および測色装置80に対して、色濃度キャリブレーションを実行することを指示することが可能に構成されている。端末200は、例えばパーソナルコンピュータによって実現されるものである。端末200は、汎用のコンピュータによって実現されるものであってもよいし、専用のコンピュータによって実現されるものであってもよい。
図示は省略するが、端末200は、ディスプレイを一例とする表示画面と、キーボードやマウスなどの操作部と、端末制御装置とを備えている。この端末制御装置には、プリンタ10を操作するための専用のアプリケーションがインストールされている。作業者は、上記アプリケーションを起動し、上記アプリケーションを操作することで、プリンタ10に印刷データや各種信号を送信する。プリンタ10は、受信した印刷データに基づいて媒体5に印刷を行ったり、測色装置80を使用して、媒体5に吐出されたインクの色濃度を測定したりする。
ところで、プリンタ10において、各色のインクは、所定の濃度(以下、基準濃度N1(図7参照)という。)となるように媒体5に吐出される。しかしながら、媒体5に実際に吐出されたインクの色濃度は、基準濃度N1よりも濃かったり薄かったりすることがあり得る。そのため、本実施形態に係るプリンタ10では、媒体5に実際に吐出されたインクの色濃度が基準濃度N1となるように、インクの色濃度を調整する色濃度補正値V1を算出する。そして、媒体5に対して、基準濃度N1となるようなインクを吐出する際、色濃度補正値V1に基づいてインクを吐出する。
上記のように、インクの色濃度を調整する色濃度補正値V1を決定する処理のことを色濃度キャリブレーションという。この色濃度キャリブレーションは、インクの色濃度に誤差が生じるおそれがあるときに行われることが好ましい。このインクの色濃度の誤差とは、基準濃度N1となるようにインクを吐出したときに、実際の色濃度が基準濃度N1からズレていることをいう。
従来(例えば特許文献2で開示された発明)では、色濃度キャリブレーションは、例えばプラテン40に支持された媒体5(図2参照)、および、収容部29に収容されたカートリッジ28(図6参照)の少なくとも一方が交換されたときに実行されていた。しかしながら、媒体5の交換のときや、カートリッジ28の交換以外のときに色濃度の誤差が生じることがあった。そこで、本願発明者は、媒体5の交換、および、カートリッジ28の交換以外に、どのようなときにインクの色濃度の誤差が生じるかを検討した。種々の検討の結果、本願発明者は、インクヘッド24を交換したときに、インクの色濃度の誤差が生じることを見出した。
インクヘッド24は、インクを媒体5に吐出するものであり、所定の回数使用されることで交換されることが好ましいものである。インクヘッド24は、消耗品であり得る。また、インクヘッド24は、個体差があり得る。このように、インクヘッド24は個体差があるため、インクヘッド24の交換前後で、インクの色濃度に誤差が生じることがあり得る。
そこで、本実施形態では、媒体5の交換やカートリッジ28の交換以外に、インクヘッド24が交換されたとき、ユーザの必要に応じて、色濃度キャリブレーションを実行することとする。次に、本実施形態で実行される色濃度キャリブレーションについて説明する。ここでは、色濃度キャリブレーションは、プリンタ10の制御装置60によって自動で実行される。
図7に示すように、色濃度キャリブレーションを実行するにあたり、制御装置60は、記憶部61と、判定処理部63と、表示処理部65と、キャリブレーション実行部67と、を備えている。キャリブレーション実行部67は、基準チャート印刷部68aと、色濃度測定部68bと、補正値算出部68cとを有している。記憶部61は、第1記憶部、第2記憶部、第3記憶部の一例である。なお、上述した制御装置60の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置60の各部は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。なお、制御装置60の各部の具体的な制御については、後述する。
次に、色濃度キャリブレーションを実行する基本的な手順について、図10のフローチャートに沿って説明する。
まず図10のステップS101では、図7の判定処理部63は、色濃度キャリブレーションを実行するタイミングであるか否かを判定する。ここでは、判定処理部63は、プラテン40に支持された媒体5、収容部29に収容されたカートリッジ28、および、インクヘッド24の何れかが交換されたか否かを判定する。
ここで、プラテン40に支持された媒体5が交換されるときとは、例えば媒体5をプラテン40に供給する上述の供給装置に、ロール状の媒体5が取り付けられたときのことをいう。カートリッジ28が交換されるときとは、インクヘッド24に接続されるときであり、カートリッジ28内のインク量が所定量より少なくなったときに交換されるときである。カートリッジ28が交換されるときとは、第1~第4カートリッジ28a~28dのうちの少なくとも1つが交換されるときである。インクヘッド24が交換されるときとは、所定の回数、使用されて、キャリッジ22に付け替えられたときであり、第1~第4インクヘッド24a~24dのうちの少なくとも1つが交換されるときである。
以下、プラテン40に支持された媒体5、収容部29に収容されたカートリッジ28、および、インクヘッド24のことを交換部品100(図10のステップS101参照)という。ステップS101において、判定処理部63は、交換部品100の何れかが交換されたか否かを判定する。
なお、判定処理部63が交換部品100の何れかが交換されたか否かを判定する具体的な手順は特に限定されない。ここでは、図示は省略するが、例えば交換部品100、すなわち媒体5、カートリッジ28、および、インクヘッド24には、型番やシリアルナンバーなどの個体番号が記憶された被読取体(例えばバーコードやICタグなど)が付されている。この被読取体に記憶された個体番号は、プリンタ10の記憶部61に記憶される。判定処理部63は、記憶部61に交換部品100の何れかの個体番号が新たに記憶されたときに、交換部品100の何れかが交換されたと判定する。
なお、記憶部61に個体番号を記憶させる手順は特に限定されない。上記被読取体に記憶された個体番号は、例えば読取装置(例えばバーコードリーダなど)で読み込まれる。読取装置は、プリンタ10と通信可能に接続され、かつ、プリンタ10に取り付けられたものであってもよいし、プリンタ10と通信可能なパーソナルコンピュータに接続されるものであってもよい。上記読取装置で読み込まれた個体番号は、プリンタ10に直接送信、または、上記パーソナルコンピュータを介してプリンタ10に間接的に送信される。なお、読取装置を使用しないことも可能である。読取装置を使用しない場合には、例えばサービスマンなどの作業者が、操作パネル13の入力キー15を操作して、交換部品100の個体番号を入力することで、個体番号がプリンタ10に送信されてもよい。交換部品100の個体番号が送信された後、記憶部61に交換部品100の個体番号が記憶される。
ステップS101において、判定処理部63によって交換部品100の何れかが交換されていないと判定されたとき、色濃度キャリブレーションは実行されずに図10のフローチャートは終了し、次いで印刷が適宜行われる。一方、ステップS101において、判定処理部63によって交換部品100の何れかが交換されたと判定されたとき、次に図10のステップS103に進む。
図11は、確認画面DP1の一例を示す図である。ステップS103では、図7の表示処理部65は、図11に示すように、確認画面DP1を操作パネル13の表示部14に表示する。ただし、確認画面DP1は、例えば端末200のディスプレイなどの表示画面に表示されてもよい。確認画面DP1は、色濃度キャリブレーションを実行するか否かをユーザに確認させるための画面である。確認画面DP1には、選択メッセージM1と、実行ボタンBT11と、非実行ボタンBT12とが表示されている。
選択メッセージM1は、ユーザに対するメッセージであり、色濃度キャリブレーションを実行するか否かを選択することを確認するためのメッセージである。図11の一例では、選択メッセージM1として「色濃度キャリブレーションを実行しますか?」というメッセージが確認画面DP1に表示される。なお、選択メッセージM1の他に、実際に交換された交換部品100に関する交換情報が確認画面DP1に表示されてもよい。交換情報とは、実際に交換された交換部品100の種類(または個体)に関する情報、例えば媒体5であれば媒体5の材質、インクカートリッジ28であればインクの色、インクヘッド24であればインクヘッド24から吐出されるインクの色などである。このように交換情報が表示されることで、ユーザは、交換情報に基づいて、色濃度キャリブレーションを実行するか否かを判断することができる。
実行ボタンBT11は、色濃度キャリブレーションを実行することを指示するためのボタンである。実行ボタンBT11がユーザによって入力キー15(図2参照)を介して選択されると、色濃度キャリブレーションが実行される。非実行ボタンBT12は、色濃度キャリブレーションを実行しないことを指示するためのボタンである。非実行ボタンBT12がユーザによって入力キー15を介して選択されると、色濃度キャリブレーションが実行されない。なお、ここで、ボタンBT11、BT12が選択されるとは、例えば入力キー15をユーザが操作して、ボタンBT11、BT12を押すことをいう。
次に、図10のステップS105では、制御装置60は、実行ボタンBT11がユーザによって選択されたか否かを判定する。ここで、実行ボタンBT11が選択されずに、非実行ボタンBT12が選択されたとき、色濃度キャリブレーションは実行されずに図10のフローチャートは終了し、次いで印刷が適宜行われる。一方、実行ボタンBT11が選択されたとき、次に図10のステップS107に進む。
ステップS107では、図7のキャリブレーション実行部67は、色濃度キャリブレーションを実行する。ここでは、キャリブレーション実行部67は、プラテン40に支持された媒体5に吐出されたインクの色濃度を測色装置80で測定し、測色装置80が測定した色濃度である測定濃度MC1が所定の基準濃度N1(図7参照)となるように色濃度補正値V1を決定する。本実施形態では、ステップS107の色濃度キャリブレーションは、ステップS1071の基準チャートC1の印刷、ステップS1073の測定濃度MC1の測定、および、ステップS1075の色濃度補正値V1の算出を順に実行することで行われる。
図12は、基準チャートC1を示す図である。図10のステップS1071では、図7の基準チャート印刷部68aは、プラテン40に支持された媒体5に基準チャートC1(図12参照)を印刷する。
基準チャートC1は、媒体5に吐出されたインクの色濃度を補正するための色濃度補正値V1を算出するために使用される印刷物である。図12に示すように、基準チャートC1は、パッチPを有する。パッチPとは、所定の色のインク、および、所定の基準濃度N1で形成されたものである。このパッチPの色濃度を測色装置80で測定する。そして、パッチPの色濃度に関する色濃度補正値V1を算出する。そのため、本実施形態では、パッチP毎に色濃度補正値V1が算出される。
本実施形態では、基準チャートC1は、第1パッチP100~P110と、第2パッチP200~P210と、第3パッチP300~P310と、第4パッチP400~P410とを有する。ここでは、基準チャートC1は、44個のパッチPによって構成されているが、基準チャートC1を構成するパッチPの数は特に限定されない。
第1パッチP100~P110は、第1インクヘッド24aから吐出されたシアンインクによって形成されたパッチである。第1パッチP100~P110のそれぞれの色濃度の基準濃度N1は、0%~100%の間で、第1パッチP100~P110の順に所定の割合(ここでは10%)の間隔で大きくなっている。例えば第1パッチP100の基準濃度N1は0%であり、第1パッチP110の基準濃度N1は100%である。第1パッチP105の基準濃度N1は50%である。
第2パッチP200~P210は、第2インクヘッド24bから吐出されたマゼンタインクによって形成されたパッチである。第2パッチP200~P210のそれぞれの色濃度の基準濃度N1は、0%~100%の間で、第2パッチP200~P210の順に10%の間隔で大きくなっている。第3パッチP300~P310は、第3インクヘッド24cから吐出されたイエローインクによって形成されたパッチである。第3パッチP300~P310のそれぞれの色濃度の基準濃度N1は、0%~100%の間で、第3パッチP300~P310の順に10%の間隔で大きくなっている。第4パッチP400~P410は、第4インクヘッド24dから吐出されたブラックインクによって形成されたパッチである。第4パッチP400~P410のそれぞれの色濃度の基準濃度N1は、0%~100%の間で、第4パッチP400~P410の順に10%の間隔で大きくなっている。
以下の説明において、第1パッチP100~P110、第2パッチP200~P210、第3パッチP300~P310、および、第4パッチP400~P410を総称して、パッチPという。
本実施形態では、第1パッチP100~P110は、主走査方向Yに並んで配置されており、第1パッチP100~P110の列のことを第1パッチ列P1という。同様に、第2パッチP200~P210は、主走査方向Yに並んで配置されており、第2パッチP200~P210の列のことを第2パッチ列P2という。第3パッチP300~P310は、主走査方向Yに並んで配置されており、第3パッチP300~P310の列のことを第3パッチ列P3という。第4パッチP400~P410は、主走査方向Yに並んで配置されており、第4パッチP400~P410の列のことを第4パッチ列P4という。パッチ列P1~P4は、副走査方向Xに並んで配置されている。
本実施形態では、パッチP毎に、基準濃度N1が設定されている。基準チャート印刷部68aは、基準濃度N1になるようにパッチPを媒体5に印刷する。なお、ここでは、インクの色毎、かつ、インクの濃度毎、言い換えると、基準チャートC1を構成するパッチPの数の基準濃度N1が存在する。なお、図7に示すように、基準濃度N1は、記憶部61に予め記憶されている。
なお、基準チャート印刷部68aによって基準チャートC1(図12参照)が媒体5に印刷されているとき、ホルダ55に取り付けられた測色装置80は、測定面82が媒体5から離間した位置に配置されるように上下方向の位置が調整されている。ここでは、上下移動機構58は、測定面82が媒体5から上方に離間するようにホルダ55を上方に移動させている。
本実施形態では、基準チャート印刷部68aは、基準チャートC1を構成する第1パッチP100~P110と、第2パッチP200~P210と、第3パッチP300~P310と、第4パッチP400~P410とを、プラテン40に支持された媒体5に印刷する。ここでは、基準チャート印刷部68aは、ヘッド移動機構30を制御して、インクヘッド24を主走査方向Yに移動させる。インクヘッド24が主走査方向Yに移動している間、基準チャート印刷部68aは、インクヘッド24から、プラテン40に支持された媒体5に対してインクを吐出する。このことで、1スキャン分の印刷が完了する。1スキャン分の印刷が完了した後、基準チャート印刷部68aは、媒体5を副走査方向Xに所定の距離移動させるように、媒体移動機構50を制御する。媒体5の副走査方向Xへの移動が完了した後、次のスキャン分の印刷を行うため、基準チャート印刷部68aは、インクヘッド24を主走査方向Yに移動させる。このように、インクヘッド24の主走査方向Yへの移動と、媒体5の副走査方向Xへの移動とを繰り返し行うことで、基準チャートC1が媒体5に印刷される。
このように図10に示すステップS1071において、基準チャートC1の印刷が行われた後、次に、ステップS1073では、図7の色濃度測定部68bは、媒体5に印刷された基準チャートC1の各パッチPのインクの実際の色濃度である測定濃度MC1を測定する。本実施形態では、図12に示すように、基準チャートC1は、44個のパッチPによって構成されており、色濃度測定部68bは、それぞれのパッチPの実際の測定濃度MC1を測定する。
本実施形態では、第1パッチP100~P110、第2パッチP200~P210、第3パッチP300~P310、および、第4パッチP400~P410におけるそれぞれの測定濃度MC1を測定する手順は同じである。そこで、以下、測定濃度MC1を測定する手順の一例として、シアンインクで形成され、かつ、基準濃度N1が50%である第1パッチP105の測定濃度MC1を測定する制御について説明する。
色濃度測定部68bは、平面視において測色装置80の測定面82と、プラテン40に支持された媒体5に印刷された第1パッチP105の少なくとも一部とが重なるように、ヘッド移動機構30および媒体移動機構50を制御する。次に、色濃度測定部68bは、第1パッチP105に測定面82を接触させるように、上下移動機構58を制御する。その後、第1パッチP105に測定面82を接触させた状態で、色濃度測定部68bは、測色装置80によって測定濃度MC1を測定する。
ここでは、色濃度測定部68bは、測色装置80の基板86に濃度要求信号を送信する。測色装置80は、濃度要求信号を受信した後、光源87a、87bを適宜点滅させて、センサ88が受けた光に基づいて測定信号を作成する。その後、測色装置80は、測定信号を色濃度測定部68bに送信する。色濃度測定部68bは、測定信号を受信し、受信した測定信号に基づいて第1パッチP105に対する測定濃度MC1を測定する。このように第1パッチP105の測定濃度MC1を測定した後、色濃度測定部68bは、第1パッチP105(言い換えると媒体5)から測定面82を離間させるように上下移動機構58を制御する。
以上のようにして、第1パッチP105に対する測定濃度MC1が測定される。同様の手順で、色濃度測定部68bは、他のパッチPに対する測定濃度MC1を測定する。なお、色濃度測定部68bによって測定された各パッチPの測定濃度MC1は、記憶部61に記憶される。
このように各パッチPの測定濃度MC1を測定した後、図10のステップS1075では、図7の補正値算出部68cは、インクの色毎、および、インクの濃度毎に基準濃度N1に対する色濃度補正値V1を算出する。上述のように、基準濃度N1は、インクの色毎、および、インクの濃度毎に設定されている。本実施形態では、インクは4色であり、インクの色濃度は、10%間隔で設定されているため11段階である。そのため、基準濃度N1は、44個存在する。補正値算出部68cによって算出される色濃度補正値V1は、インクの色毎、および、インクの濃度毎に存在する。そのため、本実施形態では、色濃度補正値V1は、44個存在する。
本実施形態では、すべての色濃度補正値V1の算出手順は同じである。そのため、以下では、シアンインクの濃度が50%における基準濃度N1に対する色濃度補正値V1を算出する手順について説明する。本実施形態では、補正値算出部68cは、色濃度測定部68bによって測定された第1パッチP105の測定濃度MC1と、第1パッチP105の基準濃度N1とに基づいて、シアンインクの濃度が50%における色濃度を補正する色濃度補正値V1を算出する。ここでは、補正値算出部68cは、第1パッチP105における基準濃度N1と測定濃度MC1との差を、シアンインクの濃度が50%における色濃度補正値V1とする。なお、補正値算出部68cによって算出された色濃度補正値V1は、記憶部61に記憶される。
以上のようにして、図10のステップS107の色濃度キャリブレーションが実行される。媒体5に印刷物を印刷する際、補正値算出部68cによって算出された色濃度補正値V1で、各インクの各色濃度を補正しながら、インクヘッド24からインクを吐出させる。このことで、媒体5に実際に吐出されたインクの濃度が基準濃度N1となるため、色濃度の誤差が発生し難くなる。
ところで、本実施形態では、媒体5の種類、カートリッジ28の個体(詳しくは、カートリッジ28に収容されたインクの個体)、および、インクヘッド24の個体に応じて、色濃度補正値V1が決定されている。以下の説明において、交換部品100が交換されることで、交換部品100の種類または個体が異なるものとする。例えば媒体5の型番が同じで同じ材料で形成された媒体5に交換された場合であっても、媒体5の種類は異なるものとする。例えばカートリッジ28の型番が同じで、同じ成分および同じ色のインクが収容されたカートリッジ28に交換された場合であっても、カートリッジ28の個体は異なるものとする。例えばインクヘッド24の型番が同じで同じ形状および材料で形成されたインクヘッド24に交換された場合であっても、インクヘッド24の個体は異なるものとする。
図13は、補正情報テーブルTB1の一例を示す図である。ここで、図13に示すように、媒体5の種類に関する情報のことを媒体情報111という。インクヘッド24の個体に関する情報のことをヘッド情報112という。カートリッジ28のインクの個体に関する情報のことをインク情報113という。本実施形態では、媒体情報111と、ヘッド情報112と、インク情報113との組み合わせに応じて色濃度補正値V1が決定される。
本実施形態では、図7の記憶部61には、図13に示すような補正情報テーブルTB1が記憶されている。補正情報テーブルTB1は、複数の補正情報110がリスト化されたものである。補正情報110は、色濃度補正値V1と、媒体情報111と、ヘッド情報112と、インク情報113とが関連付けられた情報である。
ここでは、キャリブレーション実行部67によって色濃度キャリブレーションを実行して決定された色濃度補正値V1が補正情報110に適宜追加される。このとき、色濃度補正値V1を決定したときにインクが吐出された媒体5の種類が媒体情報111となる。また、色濃度補正値V1を決定したときにインクを吐出したインクヘッド24の個体がヘッド情報112となり、色濃度補正値V1を決定したときに収容部29に収容されていたカートリッジ28のインクの個体がインク情報113となる。そして、色濃度キャリブレーションが実行されて決定された色濃度補正値V1が追加された補正情報110は、補正情報テーブルTB1に適宜追加される。
図13の一例では、色濃度補正値V1が補正値Aの場合、補正値Aには、媒体A、ヘッドA、インクAが関連付けられている。そのため、色濃度キャリブレーションによって補正値Aが決定されていたとき、媒体A、ヘッドA、インクAのカートリッジ28がプリンタ10に取り付けられていたことになる。
図14は、済印刷情報テーブルTB2の一例を示す図である。本実施形態では、記憶部61には、図14に示すような済印刷情報テーブルTB2が記憶されている。済印刷情報テーブルTB2は、プリンタ10によって印刷が行われたときの印刷情報である済印刷情報120がリスト化されたものである。済印刷情報120は、済印刷データ121と、済媒体情報122と、済ヘッド情報123と、済インク情報124と、済色濃度補正値V11とが関連付けられた情報である。済印刷情報120は、印刷の履歴情報でもある。
済印刷データ121は、プリンタ10によって既に印刷された印刷データのことである。済媒体情報122は、済印刷データ121がプリンタ10で印刷されたときに、プラテン40に支持されていた媒体5の種類に関する情報(言い換えると、媒体情報111)のことである。済ヘッド情報123は、済印刷データ121がプリンタ10で印刷されたときに、インクを吐出していたインクヘッド24の個体に関する情報(言い換えると、ヘッド情報112)である。済インク情報124は、済印刷データ121がプリンタ10で印刷されたときに、収容部29に収容されていたカートリッジ28のインクの個体に関する情報(言い換えると、インク情報113)である。済色濃度補正値V11は、済印刷データ121がプリンタ10で印刷されたときに使用されていた色濃度補正値V1のことである。
例えば図14の一例では、印刷Bの済印刷データ121は、ヘッドAからインクAが吐出されることで、媒体Bに印刷されたものであり、このとき、色濃度補正値V1として補正値Bを使用して色濃度を調整したものである。
本実施形態では、済印刷データ121が印刷されたとき、済印刷データ121と、済媒体情報122と、済ヘッド情報123と、済インク情報124と、済色濃度補正値V11とが関連付けられた済印刷情報120が作成される。そして、作成された済印刷情報120は、済印刷情報テーブルTB2に適宜追加される。
図15は、プリンタ情報130の一例を示す図である。本実施形態では、記憶部61には、図15に示すようなプリンタ情報130が記憶されている。プリンタ情報130は、プリンタ10に現在取り付けられている交換部品100の種類または個体に関する情報である。ここでは、プリンタ情報130は、現媒体情報131と、現ヘッド情報132と、現インク情報133とを有する。現媒体情報131は、プラテン40に支持されている現在の媒体5の種類に関する情報(言い換えると、媒体情報111)である。現ヘッド情報132は、プリンタ10のキャリッジ22に現在取り付けられているインクヘッド24の個体に関する情報(言い換えると、ヘッド情報112)である。現インク情報133は、収容部29に収容された現在のカートリッジ28のインクの個体に関する情報(言い換えると、インク情報113)である。
図16は、ジョブリストJL1の一例を示す図である。本実施形態では、記憶部61には、図16に示すようなジョブリストJL1が記憶されている。ジョブリストJL1は、これから印刷される印刷データ140をリスト化したものである。プリンタ10は、ジョブリストJL1に示された印刷データ140の順で印刷を行う。
本実施形態では、図7に示すように、プリンタ10の制御装置60は、印刷制御部70を備えている。印刷制御部70は、ジョブリストJL1内の印刷データ140を、ジョブリストJL1に示された順に印刷を行う。図16の一例では、印刷制御部70は、印刷データ140の印刷A、印刷B、印刷C、印刷D、印刷Eの順で印刷する。
ところで、印刷データ140を印刷する際、キャリブレーション実行部67によって決定された色濃度補正値V1を使用して、媒体5に吐出されるインクの色濃度を調整する。このことで、交換部品100の交換前後で同じ印刷データ140を印刷する場合であっても、同じ色合いの印刷、言い換えると色濃度の誤差を抑えた印刷を行うことができる。
また、過去に印刷した印刷データ140と同じ印刷データ140を印刷する場合、言い換えると、これから印刷しようとする印刷データ140が、図14の済印刷情報120の済印刷データ121と一致する場合、一致した済印刷データ121に関連付けられた済色濃度補正値V11を使用することで、色合いが同じ印刷を効率よく行うことができる。例えば印刷Aの印刷データ140を印刷する場合、図14に示す印刷Aの済印刷データ121に関連付けられた補正値Aの済色濃度補正値V11が使用されるとよい。
しかしながら、この場合、印刷データ140と一致する済印刷データ121に関連付けられた済媒体情報122と、済ヘッド情報123と、済インク情報124とが、それぞれ図15に示すプリンタ情報130の現媒体情報131と、現ヘッド情報132と、現インク情報133と一致しているときに、済色濃度補正値V11が使用されることが好ましい。一致しない場合には、色濃度キャリブレーションを実行して、新たに色濃度補正値V1を決定した方が好ましい。
しかしながら、色濃度キャリブレーションの実行は、時間を要するため、色濃度キャリブレーションを実行する回数は少ない方が好ましい。そこで、本実施形態では、色濃度キャリブレーションを実行する回数を少なくするために、印刷システム1は、ジョブリストJL1内の印刷データ140の入れ替えを行うデータ入替機能を有する。
次に、データ入替機能について説明する。本実施形態では、データ入替機能を実現するため、図7に示すように、制御装置60は、更に、抽出処理部72と、入替判定部74と、入替実行部76とを備えている。
図17、図18は、図16のジョブリストJL1の印刷データ140を入れ替えた後の印刷データ140と、媒体情報111と、ヘッド情報112と、インク情報113との関係を示した図である。図17、図18において、媒体情報111、ヘッド情報112、インク情報113は、それぞれ図14の済媒体情報122、済ヘッド情報123、済インク情報124に対応している。ここでのデータ入替機能では、図15のプリンタ情報130の現媒体情報131と、現ヘッド情報132と、現インク情報133とのすべてが一致する済印刷情報120の済印刷データ121(図14参照)に対応した印刷データ140を、先に印刷するように、ジョブリストJL1内の印刷データ140の入れ替えを行う。図15の一例では、現媒体情報131、現ヘッド情報132、現インク情報133は、それぞれ媒体B、ヘッドB、インクAであるため、図14の済印刷情報120において、済媒体情報122、済ヘッド情報123、済インク情報124が、それぞれ媒体B、ヘッドB、インクAである印刷Eの済印刷データ121(すなわち、印刷データ140)が先に印刷される(図17、図18参照)。
詳しくは、ここでは、図7の抽出処理部72は、図16のジョブリストJL1の印刷データ140のうちの1つを抽出印刷データとして抽出する。抽出処理部72は、例えば印刷Eの印刷データ140を抽出印刷データとして抽出する。次に、抽出処理部72は、図14に示す印刷Eである済印刷データ121と関連付けられた済媒体情報122と、済ヘッド情報123と、済インク情報124とを抽出する。ここでは、印刷Eに関連付けられた媒体B、ヘッドB、インクAが抽出される。
次に、図7の入替判定部74は、抽出処理部72によって抽出された済媒体情報122、済ヘッド情報123、済インク情報124(ここでは、媒体B、ヘッドB、インクA)が、図15のプリンタ情報130の現媒体情報131、現ヘッド情報132、現インク情報133とすべて一致するか否かを判定する。ここでは、全てが一致するため、図7の入替実行部76は、ジョブリストJL1において、印刷Eの印刷データ140が、他の印刷A~印刷Dよりも先に印刷されるようにジョブリストJL1の印刷データ140の入れ替えを行う。本実施形態では、図17に示すように、印刷Eの印刷データ140が最も早く印刷される。なお、印刷Eの印刷データ140は、第1抽出印刷データの一例である。
ところで、交換部品100のうち最も交換し易いものは、媒体5である。そのため、本実施形態に係るデータ入替機能では、上記のようにプリンタ情報130と全てが一致する印刷データ140が先に印刷されるように、ジョブリストJL1の印刷データ140の入れ替えを行った後、次に、図15の現媒体情報131である媒体Bと一致する済媒体情報122に関連付けられた済印刷データ121(ここでは、印刷B)(図14参照)が優先的に印刷されることが好ましい。
例えば抽出処理部72は、図16に示すジョブリストJL1から印刷Bの印刷データ140を抽出印刷データとして抽出する。ここで、印刷Bの印刷データ140は、第2抽出印刷データの一例である。そして、抽出処理部72は、図14に示すように、印刷Bである済印刷データ121と関連付けられた済媒体情報122(媒体B)と、済ヘッド情報123(ヘッドA)と、済インク情報124(インクA)とを抽出する。入替判定部74は、抽出処理部72によって抽出された済ヘッド情報123が現ヘッド情報132(図15参照)と一致するか否かを判定すると共に、抽出処理部72によって抽出された済媒体情報122が現媒体情報131(図15参照)と一致するか否かを判定する。ここでは、済ヘッド情報123がヘッドAであるため、現ヘッド情報132と不一致し、済媒体情報122が媒体Bであるため、現媒体情報131と一致する。
このとき、入替実行部76は、印刷Eの印刷の後に印刷Bの印刷が行われるように、ジョブリストJL1の印刷データ140の順を入れ替える。ここでは、入替実行部76は、印刷Bが2番目に印刷されるように入れ替えを行う(図17参照)。
なお、図15の現媒体情報131および現ヘッド情報132と一致しない済媒体情報122および済ヘッド情報123に関連付けられた済印刷データ121(詳しくは、印刷データ140)は、上述の印刷Bの印刷データ140の後に印刷されることが好ましい。例えば抽出処理部72は、図16に示すジョブリストJL1から印刷Aの印刷データ140を抽出印刷データとして抽出する。ここで、印刷Aの印刷データ140は、第3抽出印刷データの一例である。
そして、抽出処理部72は、図14に示すように、印刷Aである済印刷データ121と関連付けられた済媒体情報122(媒体A)と、済ヘッド情報123(ヘッドA)と、済インク情報124(インクA)とを抽出する。ここでは、済ヘッド情報123がヘッドAであるため、入替判定部74によって図15の現ヘッド情報132と不一致であると判定され、済媒体情報122が媒体Aであるため、入替判定部74によって図15の現媒体情報131と不一致であると判定される。
このとき、入替実行部76は、印刷Bの印刷の後に印刷Aの印刷が行われるように、ジョブリストJL1の印刷データ140の順を入れ替える。ここでは、入替実行部76は、図17に示すように、印刷Aが3番目に印刷されるように入れ替えを行う。
なお、本実施形態では、図14に示すように、印刷C、印刷Dの済印刷データ121に関連付けられた済媒体情報122および済ヘッド情報123は、印刷Aと同様に、それぞれ媒体AおよびヘッドAであるため、ジョブリストJL1において、印刷Bの印刷の後に、印刷C、印刷Dの印刷が行われるように、ジョブリストJL1の入れ替えが行われる。本実施形態では、入替実行部76は、図17に示すように、印刷Cが印刷Aの後に印刷され、印刷Dが印刷Cの後に印刷されるようにジョブリストJL1の印刷データ140の入れ替えを行う。言い換えると、入替実行部76は、済媒体情報122、済ヘッド情報123、および済インク情報124が全て同じである印刷データ140は、連続で印刷されるようにジョブリストJL1の印刷データ140の入れ替えを行う。
本実施形態では、図17に示すように、印刷E、印刷B、印刷A、印刷C、印刷Dの順に印刷データ140に対する印刷が行われる。なお、交換部品100のうち交換頻度が少なく、容易に取り替え難いのは、インクヘッド24である。そのため、ヘッドAと関連付けられていた印刷A~印刷Dにおけるヘッド情報112は、図18に示す網掛け部分のように、ヘッドBに変更される。
ここでは、まず印刷Eの印刷データ140に対する印刷の際、媒体B、ヘッドB、インクAで印刷が行われる。印刷Eの印刷前において、判定処理部63は、印刷Eの済印刷データ121に関連付けられた済媒体情報122(媒体B)、済ヘッド情報123(ヘッドB)、済インク情報124(インクA)が、プリンタ情報130と一致するか否かを判定する。ここでは、全て一致するため、図11に示すような確認画面DP1の表示は行われず、かつ、色濃度キャリブレーションは実行されず、図13に示す補正情報110における補正値Cの色濃度補正値V1を使用して、印刷Eを行う。
本実施形態では、図15に示すプリンタ情報130と全てが一致する済媒体情報122、済ヘッド情報123、済インク情報124と関連付けられた印刷Eの印刷データ140の印刷が先に行われるように、ジョブリストJL1の印刷データ140が入れ替えられる(図17参照)。印刷Eの印刷の際、色濃度補正値V1として補正値Cが使用されるため、キャリブレーション実行部67は、色濃度キャリブレーションを実行しないように構成される。よって、色濃度キャリブレーションを実行することなく、印刷Eの印刷が行われるため、効率よく印刷されることができる。
次に、図18に示すように、印刷Bの印刷データ140に対する印刷の際、印刷Eと同様に、媒体B、ヘッドB、インクAで印刷が行われる。そのため、確認画面DP1は表示されず、かつ、色濃度キャリブレーションは実行されず、図13に示す補正情報110における補正値Cの色濃度補正値V1を使用して、印刷Bを行う。
本実施形態では、現媒体情報131と一致し、現ヘッド情報132と不一致する済印刷情報120に対応した印刷Bの印刷データ140を、印刷Eの印刷データ140の後に印刷されるように、ジョブリストJL1の印刷データ140が入れ替えられる(図17参照)。ここでは、印刷Bは、印刷Eと同様の媒体Bに対して印刷が行われるため、媒体5を交換することなく印刷Bを印刷することができる。よって、媒体5を交換する手間を削減することができる。また、本実施形態では、印刷制御部70は、印刷Eと同様に、色濃度補正値V1として補正値Cを使用して印刷Bの印刷を行うことが可能であるため、色濃度キャリブレーションが実行されることなく、効率よく印刷されることができる。
図18に示すように、印刷Aの印刷データ140に対する印刷の際、媒体A、ヘッドB、インクAで印刷が行われる。ここでは、媒体A、ヘッドB、インクAの組み合わせと一致する補正情報110は存在しない(図13参照)。この場合、プリンタ10において、プラテン40に支持される媒体5を媒体Aに交換した上で、色濃度キャリブレーションが実行される。なお、媒体Aに交換されることで、プリンタ情報130の現媒体情報131が媒体Bから媒体Aに変更される。本実施形態では、色濃度キャリブレーションが実行される際には、表示処理部65によって確認画面DP1(図11参照)が表示される。そして、ユーザが実行ボタンBT11を選択したとき、キャリブレーション実行部67によって色濃度キャリブレーションが実行される。なお、ここでは、媒体A、ヘッドB、インクAの組み合わせに対する色濃度補正値V1として、補正値Dが決定される。印刷制御部70は、色濃度補正値V1として補正値Dを使用して、印刷Aの印刷を行う。
図18に示すように、印刷Aに対する印刷の後、印刷Cおよび印刷Dが順に印刷されるが、印刷Cおよび印刷Dの印刷では、印刷Aと同様に、媒体A、ヘッドB、インクAで印刷が行われる。印刷Aの印刷後において、プラテン40には、媒体Aの媒体5が支持されたままであるため、プリンタ情報130と一致する。そのため、確認画面DP1は表示されず、かつ、色濃度キャリブレーションは実行されず、印刷Aの時の印刷と同様に、色濃度補正値V1として補正値Dを使用して、印刷Cおよび印刷Dが順に印刷される。
本実施形態では、図15に示す現媒体情報131と不一致し、かつ、現ヘッド情報132と不一致する済印刷情報120に対応した印刷Aの印刷データ140を、印刷Bの印刷データ140の後に印刷されるように、ジョブリストJL1の印刷データ140が入れ替えられる(図17参照)。このような場合、プラテン40に支持される媒体5を媒体Bから媒体Aに交換した上で、色濃度キャリブレーションが実行されることで、印刷Aを印刷することができる。その後、同じ媒体Aで印刷される印刷Cおよび印刷Dを順に印刷することで、印刷Aと同様の補正値Dを色濃度補正値V1として使用して、媒体5を交換することなく、印刷Cおよび印刷Dを印刷することができる。よって、効率よく印刷することができる。
このように、本実施形態では、図17に示すように、ジョブリストJL1の印刷データ140の入れ替えを行うことで、色濃度キャリブレーションの実行回数を抑えることができる。よって、色濃度キャリブレーションを実行することで生じる時間を減らすことができる。
以上、本実施形態では、図7に示すように、印刷システム1は、媒体5にインクを吐出することで、媒体5に印刷を行うプリンタ10と、媒体5に吐出されたインクの色濃度を測定可能な測色装置80と、制御装置60と、を備えている。図2および図3に示すように、プリンタ10は、媒体5を交換可能に支持するプラテン40と、プラテン40に支持された媒体5にインクを吐出し、交換可能なインクヘッド24と、インクヘッド24に交換可能に接続されたカートリッジ28が収容される収容部29と、を備えている。図7に示すように、制御装置60は、判定処理部63と、キャリブレーション実行部67とを備えている。判定処理部63は、プラテン40に支持された媒体5、収容部29に収容されたカートリッジ28、および、インクヘッド24を交換部品100(図10参照)としたとき、交換部品100の何れかが交換されたか否かを判定する(図10のステップS101参照)。キャリブレーション実行部67は、判定処理部63によって交換部品100の何れかが交換されたと判定されたとき、プラテン40に支持された媒体5に吐出されたインクの色濃度を測色装置80で測定し、測色装置80が測定した色濃度である測定濃度MC1が所定の基準濃度N1となるように色濃度補正値V1を決定する色濃度キャリブレーションを実行する(図10のステップS107参照)。
インクヘッド24は、インクを媒体5に吐出するものであり、所定の回数使用されることで交換されることが好ましいものである。インクヘッド24は、消耗品であり得る。また、インクヘッド24は、個体差があり得る。このように、インクヘッド24は個体差があるため、インクヘッド24の交換前後で、インクの色濃度に誤差が生じることがあり得る。そこで、本実施形態では、媒体5が交換されたとき、および、カートリッジ28が交換されたとき以外のインクヘッド24が交換されたときに、色濃度キャリブレーションを実行して色濃度補正値V1を決定する。そして、決定した色濃度補正値V1に基づいて印刷を行うことで、色濃度の誤差を小さくすることができる。
本実施形態では、図7に示すように、キャリブレーション実行部67は、基準チャート印刷部68aと、色濃度測定部68bと、補正値算出部68cとを有している。基準チャート印刷部68aは、判定処理部63によって交換部品100の何れかが交換されたと判定されたとき、プラテン40に支持された媒体5に、所定の色のインク、かつ、所定の基準濃度N1で印刷されるパッチPを有する基準チャートC1(図12参照)を、プラテン40に支持された媒体5に印刷する(図10のステップS1071参照)。色濃度測定部68bは、測色装置80によってパッチPの測定濃度MC1を測定する(図10のステップS1073参照)。補正値算出部68cは、色濃度測定部68bによって測定された測定濃度MC1と、基準濃度N1とに基づいて、媒体5に吐出されたインクの色濃度を補正する色濃度補正値V1を算出する(図10のステップS1075参照)。このように、基準チャートC1を媒体5に印刷し、基準チャートC1のパッチPを測色装置80で測定することで、所定の色、かつ、所定の色濃度のインクの色濃度を測定し易い。
本実施形態では、図7に示すように、制御装置60は、表示処理部65を備えている。表示処理部65は、判定処理部63によって交換部品100の何れかが交換されたと判定されたとき、色濃度キャリブレーションを実行するか否かを選択する選択メッセージM1と共に、実行ボタンBT11および非実行ボタンBT12を、操作パネル13の表示部14に表示する(図11および図10のステップS103参照)。キャリブレーション実行部67は、ユーザが実行ボタンBT11を選択したとき、色濃度キャリブレーションを実行する。色濃度キャリブレーションは時間を要するため、ユーザによって色濃度の誤差よりも、印刷時間の短縮を優先することがあり得る。そのため、ユーザによって色濃度キャリブレーションを実行するか否かを選択させることで、あらゆるユーザに対応した印刷システム1を提供することができる。
なお、本実施形態では、印刷システム1は、色濃度キャリブレーション実行方法を具現化したものである。色濃度キャリブレーション実行方法は、媒体5に吐出されたインクの色濃度を補正する方法である。色濃度キャリブレーションは、判定工程と、キャリブレーション実行工程とを包含する。判定工程は、制御装置60の判定処理部63によって実現される。判定工程では、交換部品100の何れかが交換されたか否かを判定する。キャリブレーション実行工程は、制御装置60のキャリブレーション実行部67によって実現される。キャリブレーション判定工程では、判定工程で交換部品100の何れかが交換されたと判定したとき、色濃度キャリブレーションを実行する。
ここでは、キャリブレーション実行工程は、基準チャート印刷工程と、色濃度測定工程と、補正値算出工程とを包含する。基準チャート印刷工程は、制御装置60の基準チャート印刷部68aによって実現される。基準チャート印刷工程では、判定工程で交換部品100の何れかが交換されたと判定したとき、基準チャートC1を、プリンタ10のプラテン40に支持された媒体5に印刷させる。色濃度測定工程は、制御装置60の色濃度測定部68bによって実現される。色濃度測定工程では、測色装置80を使用して、パッチPの測定濃度MC1を測定する。補正値算出工程は、制御装置60の補正値算出部68cによって実現される。補正値算出工程では、色濃度測定工程で測定した測定濃度MC1と、基準濃度N1とに基づいて、媒体5に吐出されたインクの色濃度を補正する色濃度補正値V1を算出する。
ここでは、色濃度キャリブレーション実行方法は、表示工程を更に包含する。表示工程は、制御装置60の表示処理部65によって実現される。表示工程では、判定工程で交換部品100の何れかが交換されたと判定したとき、色濃度キャリブレーションを実行するか否かを選択する選択メッセージM1と共に、実行ボタンBT11および非実行ボタンBT12を表示装置(例えば端末200のディスプレイ)に表示する。キャリブレーション実行工程では、ユーザが実行ボタンBT11を選択したとき、色濃度キャリブレーションを実行する。
なお、本実施形態では、測色装置80は、プリンタ10のホルダ55に取り付けられ、プリンタ10によって自動で色濃度キャリブレーションが実行されていた。しかしながら、測色装置80は、ユーザが手動で色濃度を測定するものであってもよい。この場合、ユーザは、測色装置80を手に持ち、媒体5に印刷された基準チャートC1のパッチPに測定面82を接触させるように測色装置80を操作する。なお、測定の結果は、例えば測色装置80の記憶装置86aに記憶される。このように、測色装置80を使用して手動で色濃度キャリブレーションを実行することで、色濃度キャリブレーション実行方法を実現することができる。