JP7498139B2 - 保持装置 - Google Patents

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Description

本開示は、保持装置に関する。
従来、対象物を保持する保持装置として、例えば、半導体を製造する際にウェハ等の対象物を保持する静電チャックが知られている。静電チャックは、対象物が載置されるセラミック部と、冷媒流路が形成されるベース部と、セラミック部とベース部とを接合する接合部と、を備える。また、このような静電チャックは、一般に、保持の対象物であるウェハを加熱するためのヒータを備えて、温度制御を行っている。例えば、引用文献1には、熱伝導性を高めるためのフィラーを混合した有機系接着剤の層でヒータを挟むことにより、接合部を形成する構成が開示されている。
特開2013-009001号公報
しかしながら、接着剤を介してヒータを配置して、対象物を載置するセラミック部を加熱する場合には、ヒータ配置のパターンにかかわらず、局所的に面内温度分布が不均一になる場合があるという新たな課題を、本願発明者らは見出した。このような課題は、静電チャックに限らず、セラミック部を加熱するヒータを、接着剤を介して配置する保持装置に共通する課題であり、面内温度分布を均一化する技術が望まれていた。
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の一形態によれば、対象物を保持する保持装置が提供される。この保持装置は、セラミックを主成分とし、板状に形成されるセラミック部と、前記セラミック部を加熱するヒータ電極部と、前記セラミック部の厚み方向に垂直な面方向に広がるように形成されて、前記セラミック部と前記ヒータ電極部との双方に接触し、接着剤および無機フィラーを含む接着剤層と、を備え、前記無機フィラーは、該無機フィラーの一部として、前記ヒータ電極部における前記接着剤層と接する表面に形成された凹凸における最大高さよりも小さな球相当径を有する微粒子フィラーを含む。
この形態の保持装置によれば、接着剤層が、無機フィラーの一部として、ヒータ電極部の表面の凹凸における最大高さよりも小さな球相当径を有する微粒子フィラーを含むため、ヒータ電極部の表面の凹凸の凹部内に微粒子フィラーが入り込む。そのため、接着剤層におけるヒータ電極部との界面近傍において、熱伝導性を高めると共に熱抵抗を抑え、熱伝導効率を面内で均一化することができる。その結果、セラミック部における面内温度分布を均一化することができる。
(2)上記形態の保持装置において、前記無機フィラーにおける前記微粒子フィラーの含有割合は、1体積%以上、30体積%以下としてもよい。このような構成とすれば、セラミック部における面内温度分布を均一化する効果が高まると共に、硬化前の接着剤層の粘度が高まることに起因して接着剤層を形成する際の操作性が低下することを抑えることができる。
(3)上記形態の保持装置において、前記微粒子フィラーのアスペクト比が、1.5以下であることとしてもよい。このような構成とすれば、微粒子フィラーが、ヒータ電極部の表面の凹凸に入りやすくなるため、セラミック部における面内温度分布を均一化する効果を高めることができる。
(4)上記形態の保持装置において、前記無機フィラーにおける前記微粒子フィラー以外のフィラーのアスペクト比が、1.5以下であることとしてもよい。このような構成とすれば、接着剤層において、無機フィラーが少なく接着剤が多く存在する領域が生じ難くなり、セラミック部における面内温度分布を均一化する効果を高めることができる。
(5)上記形態の保持装置において、前記接着剤層の断面において、前記ヒータ電極部との界面に接する領域における前記無機フィラーの面積割合と、前記接着剤層の厚み方向中央を含む領域における前記無機フィラーの面積割合との差が、1%以下であることとしてもよい。このような構成とすれば、接着剤層に無機フィラーが均一に含まれることにより、接着剤層において熱伝導効率のばらつきを抑えることができ、面内温度分布を均一化する効果を高めることができる。
(6)上記形態の保持装置において、前記無機フィラーの平均粒子径が200μm以下であることとしてもよい。このような構成とすれば、硬化前の接着剤層において、無機フィラーの沈降速度を小さくして、接着剤層における無機フィラーの分散状態を、より良好にすることができる。その結果、面内温度分布を均一化する効果を高めることができる。
(7)上記形態の保持装置において、前記無機フィラーの真密度が2.0g/cm以上6.5g/cm以下であることとしてもよい。このような構成とすれば、硬化前の接着剤層において、無機フィラーの沈降速度を小さくして、接着剤層における無機フィラーの分散状態を、より良好にすることができる。その結果、面内温度分布を均一化する効果を高めることができる。
(8)上記形態の保持装置において、さらに、金属を含み、板状に形成されるベース部を備え、前記接着剤層は、前記セラミック部と前記ベース部との間に配置され、前記セラミック部と前記ベース部とを接合し、前記ヒータ電極部は、少なくとも一部が前記接着剤層の内部に配置されていることとしてもよい。このような構成とすれば、セラミック部とベース部との間に配置されたヒータ電極部からセラミック部への熱伝導効率のばらつきを抑え、セラミック部における面内温度分布を均一化することができる。
(9)上記形態の保持装置において、前記セラミック部は、前記保持装置の載置対象物を載置する載置面を有する上層部と、前記ヒータ電極部が一の面に形成された下層部と、に分割されており、前記接着剤層は、前記上層部における前記載置面の裏面と、前記下層部における前記一の面との間に配置され、前記上層部と前記下層部とを接合することとしてもよい。このような構成とすれば、セラミック部を構成する上層部と下層部との間に配置されたヒータ電極部から上層部への熱伝導効率のばらつきを抑え、上層部における面内温度分布を均一化することができる。
(10)上記形態の保持装置において、前記セラミック部は、前記保持装置の載置対象物を載置する載置面を有する上層部と、前記ヒータ電極部が内部に形成された下層部と、に分割されており、前記ヒータ電極部は、前記セラミック部から露出するヒータ電極露出部を有し、前記接着剤層は、前記上層部と前記下層部との間に配置され、前記上層部と前記下層部とを接合し、前記ヒータ電極露出部の表面に接触することとしてもよい。このような構成とすれば、セラミック部を構成する下層部に配置されたヒータ電極部から上層部への熱伝導効率のばらつきを抑え、上層部における面内温度分布を均一化することができる。
本開示は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、保持装置の製造方法や、接合部の形成方法などの形態で実現することが可能である。
第1実施形態の静電チャックの外観の概略を表す斜視図。 静電チャックの構成を模式的に表す断面図。 ヒータ電極部表面の最大高さの求め方を示す説明図。 ヒータ電極部と接着剤層との境界の様子を模式的に表す断面図。 ヒータ電極部と接着剤層との境界の様子を模式的に表す断面図。 ヒータ電極部と接着剤層との境界の様子を模式的に表す断面図。 接着剤層の断面のSEM画像を示す説明図。 接着剤層の断面のSEM画像を示す説明図。 ヒータ電極部と接着剤層との境界の様子を模式的に表す断面図。 ヒータ電極部と接着剤層との境界の様子を模式的に表す断面図。 接着剤層の中程の領域の様子を模式的に表す断面図。 接着剤層の形成時に無機フィラーが沈降する様子を仮想的に表す断面図。 接着剤層の形成時に無機フィラーが沈降する様子を仮想的に表す断面図。 第2実施形態の静電チャックの構成を模式的に表す断面図。 第3実施形態の静電チャックの構成を模式的に表す断面図。 第4実施形態の静電チャックの構成を模式的に表す断面図。 各サンプルの条件および評価結果をまとめて示す説明図。
A.第1実施形態:
(A-1)静電チャックの構造:
図1は、第1実施形態における静電チャック10の外観の概略を表す斜視図である。図2は、静電チャック10の構成を模式的に表す断面図である。図1では、静電チャック10の一部を破断して示している。また、図1および図2には、方向を特定するために、互いに直交するXYZ軸を示している。各図に示されるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれ同じ向きを表す。本願明細書においては、Z軸は鉛直方向を示し、X軸およびY軸は水平方向を示している。なお、図1および図2は、各部の配置を模式的に表しており、各部の寸法の比率を正確に表すものではない。
静電チャック10は、対象物を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバ内で、対象物であるウェハWを固定するために使用される。静電チャック10は、セラミック部20と、ベース部30と、接合部40と、を備える。これらは、-Z軸方向(鉛直下方)に向かって、セラミック部20、接合部40、ベース部30の順に積層されている。本実施形態における静電チャック10を、「保持装置」とも呼ぶ。
セラミック部20は、略円形の板状部材であり、セラミック(例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム等)を主成分として形成されている。本願明細書において、特定成分が「主成分である」とは、当該特定成分の含有率が、50体積%以上であることを意味する。セラミック部20の直径は、例えば、50mm~500mm程度とすればよく、通常は200mm~350mm程度である。セラミック部20の厚さは、例えば1mm~10mm程度とすればよい。
図2に示すように、セラミック部20の内部には、チャック電極23が配置されている。チャック電極23は、例えば、タングステンやモリブデンなどの導電性材料により形成されている。チャック電極23に対して図示しない電源から電圧が印加されると、静電引力が発生し、この静電引力によってウェハWがセラミック部20の載置面24に吸着固定される。チャック電極23は、双極型であってもよく、単極型であってもよい。
ベース部30は、金属を含み、略円形に形成された板状部材である。ベース部30は、例えば、アルミニウム、マグネシウム、モリブデン、チタン、タングステン、ニッケルのうちの少なくとも一種の金属を含むこととすることができる。ベース部30による冷却効率を高めつつ製造コストを抑える観点からは、ベース部30における金属の含有割合が高い方が望ましく、ベース部30は、金属を主成分とすることが望ましい。例えば、汎用性が高いアルミニウムを90質量%以上含有すること(例えば、A6061、A5052などのアルミニウム合金により構成すること)が望ましい。ただし、ベース部30は、セラミックなどの金属以外の成分を含んでいてもよい。ベース部30の直径は、例えば、220mm~550mm程度とすればよく、通常は220mm~350mmである。ベース部30の厚さは、例えば、20mm~40mm程度とすればよい。
ベース部30の内部には、複数の冷媒流路32がXY平面に沿うように形成されている。冷媒流路32に、例えばフッ素系不活性液体や水や液体窒素等の冷媒を流すことにより、ベース部30が冷却される。そして、接合部40を介したベース部30とセラミック部20との間の伝熱によりセラミック部20が冷却され、セラミック部20の載置面24に保持されたウェハWが冷却される。これにより、ウェハWの温度制御が実現される。ベース部30の内部に冷媒流路32を有する形態の他、ベース部30の外部からベース部30を冷却することにより、ベース部30に冷却機能を持たせてもよい。なお、図2では、冷媒流路32の記載を省略している。
接合部40は、セラミック部20とベース部30との間に配置されて、セラミック部20とベース部30とを接合する。接合部40は、例えばシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、あるいはエポキシ系樹脂等の樹脂材料によって形成される接着剤と、無機材料によって形成される無機フィラーと、を含む接着剤層45を備える。さらに、接合部40は、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成されると共に、セラミック部20を加熱することによって載置面24に吸着固定されたウェハWを加熱する、抵抗発熱体としてのヒータ電極部60を備える(図2参照)。ヒータ電極部60は、ウェハW全体を加熱可能となるように予め定められたパターンにて、XY平面に平行な方向に広がるように、接着剤層45の内部、具体的には、接着剤層45の厚み方向の中程に配置されている。そのため、接着剤層45は、セラミック部20の厚み方向に垂直な面方向(XY平面に平行な方向)に広がるように形成されて、セラミック部20とヒータ電極部60との双方に接触している。接合部40の厚さは、例えば0.1mm~1.0mm程度とすることができる。接合部40の構成については、後に詳しく説明する。
静電チャック10には、さらに、複数のガス供給路50が形成されている。ガス供給路50は、セラミック部20、接合部40,およびベース部30をZ方向に貫通して設けられており、載置面24に形成されたガス吐出口52において開口している(図1参照)。ガス供給路50は、図示しないガス供給装置から、例えばヘリウムガス等の不活性ガスを供給されて、載置面24とウェハWとの間の空間に対して、ガス吐出口52から不活性ガスを供給する。これにより、セラミック部20とウェハWとの間の伝熱性を高めて、ウェハWの温度分布の制御性がさらに高められる。なお、ガス供給路50は必須ではなく、静電チャック10にガス供給路50を設けないこととしてもよい。
(A-2)接合部の構成:
以下では、接合部40の構成について説明する。接合部40は、既述したように、樹脂によって構成される接着剤と無機フィラーとを含む接着剤層45と、ヒータ電極部60と、を備える。
無機フィラーとしては、セラミックや金属酸化物や金属や他の無機化合物を含む種々の無機材料から成る、粒状あるいは粉体状等の物質を用いることができる。具体的には、無機フィラーとしては、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ:Al)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO)、酸化イットリウム(イットリア:Y)、フッ化イットリウム(YF)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)、二酸化ケイ素(シリカ:SiO)、酸化鉄、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を用いることができる。上記のような無機フィラーは、例えば粉末状で、接着剤層45内に分散して用いられる。無機フィラーを構成する上記のような無機材料は、一般に、接着剤である樹脂よりも熱伝導率が高いため、接着剤層45に無機フィラーを添加することにより、接合部40における熱伝導性を高めることができる。特に、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムや炭化ケイ素は、熱伝導率がより高いため望ましい。
無機フィラーは、当該無機フィラーの一部として、ヒータ電極部60における接着剤層45と接する表面に形成された凹凸における最大高さRy(以下では、単に最大高さRyとも呼ぶ)よりも小さな球相当径を有する「微粒子フィラー」を含む。なお、無機フィラーにおいて、微粒子フィラー以外のフィラー、すなわち、上記した最大高さRy以上の球相当径を有するフィラーを、「大径フィラー」とも呼ぶ。「球相当径」とは、歪な形の粒子を球として仮定した場合の直径であり、粒子の体積から換算される値である。
無機フィラーの球相当径は、無機フィラーの粒度分布分析の結果を用いて求めることができる。無機フィラーの粒度分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。なお、無機フィラーは、無機フィラーを用いた静電チャックの製造工程における温度や圧力等の条件下において、物理的あるいは化学的にほとんど変化しないため、製造前の粉末の状態と、製造後の接着剤中に分散する状態との間で、球相当径や体積は実質的に変化しないと考えられる。そのため、接着剤に混合する前の無機フィラーについて球相当径を測定するならば、得られた球相当径は、製造された静電チャックの接着剤層中の値と、実質的に同等であると考えられる。また、製造された静電チャックが備える接着剤層中の無機フィラーの球相当径は、接着剤層から無機フィラーを取り出して測定することができる。具体的には、静電チャックの接着剤層の部分を、接着剤に応じて適宜選択した溶解剤(例えば、シリコーン系樹脂を用いる場合には、シリコーン樹脂溶解剤KSR-2(関東化学製))を用いて溶解させ、溶解液中に含まれる無機フィラーを遠心分離によって採集する。そして、得られた無機フィラーの粒度分布を、レーザ回析式粒度分布測定装置を用いて測定すればよい。無機フィラーは、上記のような接着剤層からの回収の工程においても、物理的あるいは化学的にほとんど変化しないため、接着剤層から回収して得られた無機フィラーの粒度分布も、接着剤に混合する前の粒度分布と同等になる。
図3は、ヒータ電極部60の表面に形成された凹凸における最大高さRyの求め方を示す説明図である。最大高さRyを求めるには、静電チャック10のヒータ電極部60の断面を、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)にて観察し、50μm×50μmの視野で切り取る。そして、ヒータ電極部60における接着剤層45と接する表面において、最も凸となっている(凹凸における凸部の高さが最も高い)2点を結び直線Aとする。また、直線Aに平行な直線であって、ヒータ電極部60の内部に向かって最も凹となる点を通過する直線Bを取る。直線Aと直線Bとの距離を、最大高さRyとする。本実施形態では、ヒータ電極部60の両面が接着剤層45と接触しているため、ヒータ電極部60の各々の面について、上記のようにして最大高さを求め、その平均値を、ヒータ電極部60における最大高さRyとしている。なお、ヒータ電極部60において、各々の面に形成される凹凸の高さが異なる場合には、各々の面について別個に求めた最大高さRyを用いてもよい。
本実施形態のヒータ電極部60は、タングステンやモリブデンによって形成される金属箔(プレート)を、セラミック部20の加熱のために予め定められたパターンに切り取ることにより作製される。本実施形態のヒータ電極部60は、接着剤層45と接する表面に、高さが1~数十μm程度の凹凸を有している。ヒータ電極部60の表面に対して、例えば、エッチングや研磨などの加工を施してもよい。なお、ヒータ電極部60の表面に形成された凹凸の高さは、ヒータ電極部60の厚さに対して十分に小さく、ヒータ電極部60の表面全体の表面粗さを反映する値である。
図4は、ヒータ電極部60と接着剤層45との境界の様子を模式的に表す断面図である。本実施形態では、接着剤層が、無機フィラーとして、微粒子フィラー41Aおよび大径フィラー41Bを備える。微粒子フィラー41Aは、ヒータ電極部60表面の最大高さRyよりも小さな球相当径を有しているため、微粒子フィラー41Aの一部は、ヒータ電極部60表面の凹凸における凹部に入り込む。
(A-3)静電チャックの製造方法:
次に、本実施形態における静電チャック10の製造方法を説明する。はじめに、チャック電極23が内部に配置された板状のセラミック部20を作製する。内部にチャック電極23を備えるセラミック部20は、例えば、公知のシート積層法やプレス成形法により作製することができる。このとき、セラミック部20には、通電用ビアやガス供給路50等の通気口が形成される。そして、さらに、ベース部30と、接合部40を形成するための接着シートと、ヒータ電極部60と、を準備する。
接着シートは、接着剤層45の構成材料を真空下で撹拌することにより接着ペーストを作製し、作製された接着ペーストを、ロールコーター等を用いてシート状に成形した後、適宜設定した温度および時間の条件下で加熱し、半硬化させることにより作製される。接着剤層45の構成材料は、硬化前の接着剤と、無機フィラーとを含み、さらに、必要に応じて選択されたカップリング剤、硬化触媒、架橋剤等を含む。
セラミック部20の載置面24とは反対側の面に、上記した接着シートを貼り付け、接着シートにおいて、通電用ビアや通気口上の部分を除去した後、接着シート上に、ヒータ電極部60を配置する。また、ベース部30上にも、上記した未硬化状態の接着シートを貼り付け、接着シートにおいて、通電用ビアや通気口上の部分を除去する。その後、接着シートを貼り付けた面同士が対抗するように、セラミック部20とベース部30とを重ね合わせて真空中で貼付け、加熱によって接着シートを硬化させることにより、セラミック部20とベース部30とが接合部40により接合される。その後、必要に応じて外周の研磨等の後処理を行うことにより、静電チャック10が製造される。
上記のように、未硬化状態の接着シートが貼り付けられた面同士を対抗させてセラミック部20とベース部30とを積層して接着する際には、積層構造の上方に配置されるセラミック部20の質量や、積層工程で生じる圧力によって、接着シートが加圧され、ヒータ電極部60の表面の凹凸内に接着剤が侵入する。このとき、無機フィラーのうちの微粒子フィラー41Aは、接着剤と共に上記凹凸内に侵入し、図4に示すような接着剤層45を得ることができる。
以上のように構成された本実施形態の静電チャックによれば、接着剤層45が、無機フィラーの一部として、ヒータ電極部60の表面の凹凸における最大高さRyよりも小さな球相当径を有する微粒子フィラー41Aを含むため、ヒータ電極部60の表面の凹凸の凹部内に微粒子フィラー41Aが入り込む。そのため、接着剤層45におけるヒータ電極部60との界面近傍において、熱伝導性を高めると共に熱抵抗を抑え、熱伝導効率を界面全体で均一化することができる。その結果、ヒータ電極部60によって加熱されるセラミック部20における面内温度分布を均一化することができる。面内温度分布が不均一になると、例えば、静電チャック10においては、半導体製造装置の真空チャンバ内で進行するエッチングの速度がばらついて、ウェハWの品質にばらつきが生じる可能性がある。本実施形態によれば、面内温度分布のばらつきを抑えることにより、面内温度分布のばらつきに起因して生じる不都合を抑えることができる。
図5は、無機フィラーが微粒子フィラー41Aを含まず、大径フィラー41Bのみを含む場合の、ヒータ電極部60と接着剤層45との境界の様子を模式的に表す断面図である。図5に示すように、無機フィラーが微粒子フィラー41Aを含まない場合には、ヒータ電極部60の表面の凹凸の凹部内に無機フィラーが入り込むことができない。そのため、接着剤層45におけるヒータ電極部60との界面近傍において、図5に領域Rとして示すような、無機フィラーが少なく、接着剤が多く存在する領域(樹脂リッチな領域)が生じる。このような樹脂リッチな領域では、局所的に、ヒータ電極部60から接着剤層45への熱伝導効率が低下するため、面内温度分布の不均一化が引き起こされる。
また、本実施形態では、無機フィラーとして、微粒子フィラー41Aと大径フィラー41Bとの双方を備えるため、接着剤層45全体としての熱伝導効率を高めることができる。微粒子フィラー41Aと大径フィラー41Bとの双方を備えることにより、接着剤層45の熱伝導効率が向上する理由は、以下のように考えられる。
図6は、接着剤層45が、無機フィラーとして微粒子フィラー41Aのみを含む場合の、ヒータ電極部60と接着剤層45との境界の様子を模式的に表す断面図である。接着剤層45に含まれる無機フィラーの量が同程度であったとしても、図6に示すように、比較的粒径が小さいフィラーのみを含む場合には、フィラーの粒径が小さいことにより、大径フィラー41Bが存在する場合に比べて、フィラーの粒子間に存在する接着剤の割合が多くなる。すなわち、無機フィラーによって接着剤層45内に形成される熱伝導の経路(伝熱パス)において、介在する接着剤の量が多くなり、無機フィラーにより接着剤層45の熱伝導効率を向上させる効果が抑えられる。大径フィラー41Bは、接着剤に介在されることなく伝熱する距離をより長く確保できるため、無機フィラーの一部が大径フィラー41Bであることにより、接着剤層45全体の熱伝導効率を高めることができる。本実施形態は、大径フィラー41Bと微粒子フィラー41Aとの双方を備えることにより、効率よく伝熱される大径フィラー41B間を、微粒子フィラー41Aによって形成される伝熱パスによってつなぐことができ、接着剤層45全体の伝熱性能を高めることができる。
上記のように、接着剤層45全体の熱伝導効率を確保する観点から、接着剤層45が含む無機フィラーの粒径の広がりは0.01~300μm程度が望ましい。特に微粒子フィラー41Aの粒径の広がりは、0.01~5μm程度が好ましい。また、接合部40の厚みは、0.1mm~1.0mm程度が好ましいため、無機フィラーの平均粒子径は、20~200μm程度が望ましい。
また、微粒子フィラー41Aが大径フィラー41B間で伝熱パスを形成しつつ、ヒータ電極部60表面の凹凸の凹部内に微粒子フィラー41Aが入って熱伝導性を高める効果を確保する観点から、無機フィラーにおける微粒子フィラー41Aの含有割合は、1体積%以上とすることが望ましい。ただし、無機フィラーが微粒子フィラー41Aを含有することにより、所望の程度に熱伝導性が高まるならば、無機フィラーにおける微粒子フィラー41Aの含有割合は1体積%未満であってもよい。また、大径フィラー41Bによって接着剤層45全体の伝熱効率を確保しつつ、微粒子フィラー41Aの含有割合が増加することに起因して硬化前の接着剤層の粘度が高まって、接着剤層45を形成する際の操作性が低下することを抑える観点から、無機フィラーにおける微粒子フィラー41Aの含有割合は、30体積%以下であることが望ましい。ただし、接着剤層45全体の伝熱性能や、硬化前の接着剤層の粘度の高まりが許容範囲であれば、無機フィラーにおける微粒子フィラー41Aの含有割合は30体積%を超えていてもよい。
無機フィラーにおける微粒子フィラー41Aの含有割合(体積%)は、既述した無機フィラーの粒度分布分析の結果を用いて求めることができる。粒度分布分析により、各粒子の体積が求められる。粒度分布分析の結果、最大高さRyよりも球相当径が小さい粒子を微粒子フィラーとし、無機フィラー全体の体積の合計に対する、微粒子フィラーの体積の合計の割合を、無機フィラーにおける微粒子フィラー41Aの含有割合(体積%)とすればよい。
本実施形態の無機フィラーにおいて、微粒子フィラー41Aのアスペクト比は、1.5以下であることが望ましい。また、本実施形態の無機フィラーにおいて、大径フィラー41Bのアスペクト比は、1.5以下であることが望ましい。ここで、「アスペクト比」とは、フィラー粒子の長径の長さ(長径L)を短径の長さ(短径W)で除した値(L/W)を意味する。「長径L」とは、フィラー粒子の断面を観察したときの、フィラー粒子の外周上の2点間の最長直線距離をいう。また、「短径W」とは、上記断面において、最長直線距離となる上記2点を結ぶ直線に垂直な方向の、フィラー粒子の外周上の2点間の距離の最大値をいう。
以下に、アスペクト比の求め方を、より具体的に説明する。無機フィラー中の微粒子フィラー41Aのアスペクト比を求める際は、静電チャック10の接着剤層45の断面を走査電子顕微鏡(SEM)により、例えば3000倍で観察し、10μm×10μmの視野を切り取る。視野中に観察される微粒子フィラー41Aの50個について、長径Lと短径Wとを測定し、長短比L/Wを計算する。得られた値の平均値を、微粒子フィラー41Aのアスペクト比とする。無機フィラーの微粒子以外のフィラー、すなわち、大径フィラー41Bのアスペクト比を求める際は、静電チャック10の接着剤層45の断面を走査電子顕微鏡(SEM)により、例えば500~1000倍で観察し、200μm×200μmの視野を切り取る。視野中に観察される大径フィラー41Bの10個について、長径Lと短径Wを測定し、長短比L/Wを計算する。得られた値の平均値を、大径フィラー41Bのアスペクト比とする。
図7および図8は、接着剤層45の断面のSEM画像を示す説明図である。図7では、10μm×10μmの視野中に、微粒子フィラー41Aが分散する様子が現れている。本実施形態の静電チャック10では、既述したように、ヒータ電極部60の表面の凹凸の高さが10~数十μm程度であるため、上記のような視野では、フィラー粒子のほとんどが微粒子フィラー41Aである様子が観察される。また、図8では、200μm×200μmの視野中に、大径フィラー41Bを含むフィラー粒子が分散する様子が現れている。
図9は、微粒子フィラー41Aのアスペクト比が1.5より大きい場合の、ヒータ電極部60と接着剤層45との境界の様子を模式的に表す断面図である。また、図10は、大径フィラー41Bのアスペクト比が1.5より大きい場合の、ヒータ電極部60と接着剤層45との境界の様子を模式的に表す断面図である。
微粒子フィラー41Aのアスペクト比が1に近く、微粒子フィラー41Aの形状が球に近いほど、ヒータ電極部60の表面の凹凸に微粒子フィラー41Aが入りやすくなり、伝熱性能が高まる。これに対して、図9に示すように、微粒子フィラー41Aのアスペクト比が1.5よりも大きく細長い形状の場合には、球相当径が同等でアスペクト比がより1に近い微粒子フィラーを用いる場合に比べて、微粒子フィラー41Aが、ヒータ電極部60の表面の凹凸に入り難くなり、熱伝導効率が局所的に低下して、面内温度分布が不均一になる可能性がある。そのため、微粒子フィラー41Aのアスペクト比を1.5以下にすることにより、面内温度分布を、より均一化することができる。ただし、静電チャック10の載置面24における面内温度分布のばらつきの程度が許容範囲であれば、微粒子フィラー41Aのアスペクト比は1.5を超えていてもよい。
また、大径フィラー41Bのアスペクト比が1に近く、大径フィラー41Bの形状が球に近いほど、接着剤層45内において、樹脂リッチな部分が生じ難く、面内温度分布を均一化しやすい。これに対して、図10に示すように、大径フィラー41Bのアスペクト比が1.5よりも大きく細長い形状の場合には、球相当径が同等でアスペクト比がより1に近い大径フィラーを用いる場合に比べて、接着剤層45内において、図5に領域Rとして示すような樹脂リッチな領域が生じ易い。このような樹脂リッチ領域は、局所的に熱伝導効率が低下するため、面内温度分布が不均一になる可能性がある。そのため、大径フィラー41Bのアスペクト比を1.5以下にすることにより、面内温度分布を、より均一化することができる。ただし、静電チャック10の載置面24における面内温度分布のばらつきの程度が許容範囲であれば、大径フィラー41Bのアスペクト比は1.5を超えていてもよい。
本実施形態において、接着剤層45の任意の断面において、無機フィラーが占める面積の割合が、ヒータ電極部60の近傍の領域と、ヒータ電極部60から離間した接着剤層45の中程の領域とでほぼ同じであり、接着剤層45全体で、無機フィラーが均一に含まれることが望ましい。具体的には、例えば、接着剤層45の断面を観察したときに、ヒータ電極部60との界面に接する領域における無機フィラーの面積割合と、接着剤層45の厚み方向中央を含む領域における無機フィラーの面積割合との差が、1%以下であることが望ましい。さらに、接着剤層45全体で、無機フィラーが均一に含まれるためには、接着剤層45の任意の断面における任意の2つの領域における無機フィラーの面積割合を比較したときに、両者の差が1%以下であることが、より望ましい。
図11は、接着剤層45における微粒子フィラー41Aの含有割合が、図4と同等である場合の、ヒータ電極部60から離間した接着剤層45の厚み方向中央部の様子を模式的に表す断面図である。図4および図11に示すように、接着剤層45全体で無機フィラーが均一に含まれるならば、接着剤層45全体で、熱伝導効率のばらつきを抑えることができ、面内温度分布を均一化することができる。
以下では、接着剤層45の断面における場所ごとの無機フィラーの面積割合の求め方を説明する。無機フィラーの面積割合を求めるには、静電チャック10から、ヒータ電極部60と接着剤層45とが接する部分を含むように接着剤層45を切り出し、断面視ができるように研磨加工を行う。研磨は、例えば、接着剤層45中の無機フィラーが脱粒しないように、イオンミリング法によるCP(クロスセクションポリッシャ)加工により実施すればよい。このようにして得られたサンプルについて、接着剤層45の部分を走査電子顕微鏡(SEM)により観察し、接着剤層45の厚み方向中央部と、ヒータ電極部60との境界近傍とについて、SEM画像を200μm×200μmの範囲で切り出す。この時、ヒータ電極部60が視野に入っていても良い。得られた画像から、無機フィラーが占める面積をSa、無機フィラーと接着剤とが占める面積(切り出した画像全体の面積)をSbとして、「Sa/Sb×100」を計算することにより、無機フィラーの占める面積割合を算出する。このような解析は、例えば、WinROOF(三谷商事株式会社製)やImageJなどの画像処理ソフトウエアを用いて行うことができる。
また、本実施形態において、無機フィラーの平均粒子径は、200μm以下であることが望ましい。無機フィラーの平均粒子径は、既述した無機フィラーの粒度分布分析の結果を用いて求めることができる。また、本実施形態において、無機フィラーの真密度は、2.0g/cm以上6.5g/cm以下であることが望ましい。無機フィラーの真密度は、無機フィラーとして使用した材料の化学組成から計算することができる。無機フィラーの平均粒子径、および、無機フィラーの真密度のうちの少なくとも一方が、上記した条件を満たすことにより、硬化前の接着剤層45において無機フィラーが沈降する速度を十分に小さくすることができる。
図12および図13は、接着剤層45の形成時に、硬化前の接着剤層45内で無機フィラーが沈降する様子を仮想的に表す断面図である。図12は、接着剤層45の厚み方向の中程の様子を表しており、図13は、接着剤層45におけるヒータ電極部60の下面との境界近傍の様子を表している。図12および図13では、無機フィラーが沈降する様子を、破線矢印により表している。図12および図13に示すように、無機フィラーの沈降速度が大きいと、接着剤層45において、接着剤層45が硬化するまでの間に無機フィラーが沈降し得る。既述したように、接合部40の作製過程では、セラミック部20とベース部30との間で未硬化状態の接着剤層45に圧力が加わるときに、接着剤中に分散する微粒子フィラー41Aが接着剤と共にヒータ電極部60表面の凹凸内に入り込む。しかしながら、接着剤の硬化に要する時間に対して無機フィラーの沈降速度が大きい場合には、図13に示すように、上記凹凸内の微粒子フィラー41Aが沈降して、上記凹凸近傍が樹脂リッチになる。
上記のように硬化前の接着剤層45において無機フィラーが沈降すると、接着剤層45内で伝熱パスを形成する無機フィラーの分布状態が不均一となり、面内温度分布が不均一になり得る。接着剤層45の硬化までの間の無機フィラーの沈降が抑えられるように、無機フィラーの沈降速度を小さくすることで、面内温度分布を、より均一化することができる。無機フィラーの終末沈降速度uは、以下の(1)式で表すことができる。
Figure 0007498139000001

(式中、ρは、無機フィラーの密度であり、ρは、溶媒(硬化前の接着剤)の密度であり、gは、重力加速度であり、dは、無機フィラーの粒子径であり、μは、溶媒(硬化前の接着剤)の粘度である。)
(1)式より、無機フィラーの密度が低いほど、また、無機フィラーの粒子径が小さいほど、終末沈降速度が小さくなることが理解される。そのため、接着剤層を構成する接着剤として広く用いられるシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、あるいはエポキシ系樹脂等を用いて接着剤層45を構成する場合には、これらの樹脂の一般的な密度および粘度を考慮すると、無機フィラーの平均粒子径が200μm以下であること、あるいは、無機フィラーの真密度が2.0g/cm以上6.5g/cm以下であることにより、無機フィラーの沈降速度を十分に小さくすることができる。無機フィラーの沈降速度を十分に小さくすることにより、硬化後の接着剤層45全体において、無機フィラーを十分に均一に分散させることができる。無機フィラーが十分に均一に分散することにより、接着剤層45の断面において、ヒータ電極部60との界面に接する領域における無機フィラーの面積割合と、接着剤層45の厚み方向中央を含む領域における無機フィラーの面積割合との差を、1%以下にすることが容易になる。
ただし、無機フィラーが微粒子フィラーおよび大径フィラーを含むことにより、面内温度分布を所望の均一状態にできるならば、無機フィラーの平均粒子径や無機フィラーの真密度は、既述した条件を満たさないこととしてもよい。無機フィラーの平均粒子径や無機フィラーの真密度が既述した条件を満たさない場合であっても、例えば、硬化前の接着剤層の調整時に、より十分に無機フィラーと接着剤とを混合して、硬化後の接着剤層における無機フィラーの分散状態を高めることとしてもよい。
なお、既述した無機フィラーに係る条件において、真密度の下限値は、静電チャック10の製造工程における無機フィラーの取り扱いの容易性を確保するための値である。また、接着剤層45を構成する接着剤として使用する樹脂の粘度は、3~50Pa・sであることが好ましく、上記樹脂の密度は、0.9~1.0g/cmであることが好ましい。樹脂の粘度が低すぎると、無機フィラーの粒子の沈降速度が大きくなり、接着剤の硬化中に無機フィラーが重力で沈降するため、接着剤層45中の粒子分布に差が生じ易くなる。一方、樹脂の粘度が高すぎると、無機フィラーと接着剤との混合が困難になり得る。
(1)式を用いて求められる終末沈降速度の例を以下に示す。ここでは、溶媒(硬化前の接着剤)の密度を1×10kg/mとし、溶媒(硬化前の接着剤)の粘度を100Pa・Sとして計算している。
無機フィラーとして、粒子径150μmの酸化アルミニウム(アルミナ:Al、真密度は3.9×10kg/m)を使用した場合には、終末沈降速度は3.68×10-7m/sとなる。また、無機フィラーの空間率を0.56として補正した干渉沈降を考慮すると、無機フィラーとして粒子径150μmのアルミナを使用したときの干渉沈降速度は、2.44×10-8m/sとなる。この結果は、1時間で8.8×10-2m沈降することを示す。
これに対して、無機フィラーとして、粒子径300μmの酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO、真密度は5.7×10kg/m)を使用した場合には、終末沈降速度は2.45×10-6m/sとなる。また、無機フィラーの空間率を0.56として補正した干渉沈降を考慮すると、無機フィラーとして粒子径300μmのジルコニアを使用したときの干渉沈降速度は、1.63×10-7m/sとなる。この結果は、1時間で5.87×10-1mm沈降することを示す。
B.第2実施形態:
図14は、第2実施形態の静電チャック110の構成を、図2と同様にして模式的に表す断面図である。第2実施形態の静電チャック110は、ヒータ電極部60の配置以外は第1実施形態と同様の構成を有している。第2実施形態の静電チャック110において、第1実施形態の静電チャック10と共通する部分には同じ参照番号を付す。
第2実施形態の静電チャック110のヒータ電極部60は、セラミック部20の下面(-Z軸方向の面)上に設けられている。このようなヒータ電極部60は、例えば以下のようにして形成することができる。すなわち、タングステン粒子や白金粒子(例えば、粒径10μm~数10μm)を、硬化前の接着剤および有機溶剤と混合することで、ヒータペーストを作製する。そのヒータペーストを、セラミック部20の下面上に、スクリーン印刷もしくは塗布することで、ヒータパターンを形成する。形成されたヒータパターンを、脱脂および焼成することにより、セラミック部20上にヒータ電極部60が形成される。ここで、ヒータ電極部60には、高さが1~数十μm程度の凹凸が形成される。その後、ベース部30上に、既述した接着シートを貼り付け、接着シートにおいて、通電用ビアや通気口上の部分を除去した後、接着シートとヒータ電極部60とが対向するように、セラミック部20とベース部30とを重ね合わせて真空中で貼付ける。そして、加熱によって接着シートを硬化させることにより、セラミック部20とベース部30とが、接合部40により接合される。
このような構成としても、セラミック部20とヒータ電極部60との双方に接触する接着剤層45が、接着剤と共に大径フィラーおよび微粒子フィラーを含むことにより、ヒータ電極部60の表面の凹凸内に、微粒子フィラーが侵入する。そのため、第1実施形態と同様に、静電チャック110における面内温度分布を均一化する効果が得られる。上記した製造方法において、焼成の工程は、ヒータパターンを構成するタングステンや白金の融点以下で行われるため、得られたヒータ電極部60においては、材料として用いた金属粒子の形状が残り、表面には凹凸が形成される。そのため、このようなヒータ電極部60の表面の凹凸に微粒子フィラーが侵入することにより、接着剤層45におけるヒータ電極部60との界面近傍において、樹脂リッチ領域の形成を抑えて、伝熱性能を高めることができる。
C.第3実施形態:
図15は、第3実施形態の静電チャック210の構成を、図2と同様にして模式的に表す断面図である。第3実施形態の静電チャック210は、セラミック部20に代えてセラミック部220を備え、ヒータ電極部60がセラミック部220内に配置されている点で、第1実施形態と異なっている。第3実施形態の静電チャック210において、第1実施形態の静電チャック10と共通する部分には同じ参照番号を付す。
第3実施形態のセラミック部220は、セラミックを主成分として形成される板状部材である上層部21と下層部22とを備える。上層部21は、上面が載置面24となっており、内部にチャック電極23が設けられている。下層部22は、上層部21とベース部30との間に配置されており、上面上にヒータ電極部60が形成されると共に、下面側において、接着剤を含む第1接合部240を介してベース部30に接合されている。上層部21における載置面24の裏面と、下層部22の上面との間には、接着剤および無機フィラーを含む接着剤層245と、上記したヒータ電極部60と、を備える第2接合部242が配置されて、上層部21と下層部22とを接合している。
第3実施形態のセラミック部220の作製方法について説明する。内部にチャック電極23を備える上層部21、および下層部22は、例えば、公知のシート積層法やプレス成形法により作製することができる。このとき、上層部21および下層部22には、通電用ビアやガス供給路50等の通気口が形成される。ヒータ電極部60は、第2実施形態におけるセラミック部20の下面に形成したヒータ電極部60と同様にして、ヒータペーストを用いてヒータパターンを下層部22の上面に形成することにより、作製することができる。そして、上層部21の下面に、例えばスクリーン印刷等により、無機フィラーを含む未硬化状態の接着剤層を形成し、未硬化状態の接着剤層とヒータ電極部60とが対向するように、上層部21と下層部22とを重ね合わせて真空中で貼付ける。その後、加熱によって接着剤を硬化させることにより、上層部21と下層部22とが、第2接合部242により接合されて、セラミック部220が得られる。なお、下層部22の上面にヒータ電極部60を設けた後に、上層部21との接合に先立って、ヒータ電極部60に通電して発熱状態を測定し、ヒータ電極部60における局所的に発熱量が少ない部位を削って抵抗を高めることにより、ヒータ電極部60の発熱時の温度分布を均一化してもよい。
このような構成としても、セラミック部220の上層部21とヒータ電極部60との双方に接触する接着剤層245が、接着剤と共に大径フィラーおよび微粒子フィラーを含むことにより、ヒータ電極部60の表面の凹凸内に、微粒子フィラーが侵入する。そのため、第1実施形態と同様に、静電チャック210における面内温度分布を均一化する効果が得られる。
D.第4実施形態:
図16は、第4実施形態の静電チャック310の構成を、図2と同様にして模式的に表す断面図である。第4実施形態の静電チャック310は、セラミック部20に代えてセラミック部320を備え、ヒータ電極部60がセラミック部320内に配置されている点で、第1実施形態と異なっている。第4実施形態の静電チャック310において、第1実施形態の静電チャック10と共通する部分には同じ参照番号を付す。
第4実施形態のセラミック部320は、セラミックを主成分として形成される板状部材である上層部21と下層部322とを備える。上層部21は、上面が載置面24となっており、内部にチャック電極23が設けられている。下層部322は、上層部21とベース部30との間に配置されており、内部にヒータ電極部60が形成されると共に、下面側において、接着剤を含む第1接合部240を介してベース部30に接合されている。上層部21における載置面24の裏面と、下層部322の上面との間には、接着剤および無機フィラーを含む接着剤層345を備える第2接合部342が配置されて、上層部21と下層部322とを接合している。
下層部322には、上面から下方(-Z軸方向)に穿たれた溝327が形成されている。溝327は、ヒータ電極部60に達するように設けられており、ヒータ電極部60は、溝327においてセラミック部320(下層部322)から露出する。ヒータ電極部60において、溝327でセラミック部320から露出する部位は、「ヒータ電極露出部64」と呼ぶ。第2接合部342を構成する接着剤層345は、溝327においてヒータ電極露出部に接触する。
第4実施形態のセラミック部320の作製方法について説明する。内部にチャック電極23を備える上層部21、および、内部にヒータ電極部60を備える下層部322は、例えば、公知のシート積層法やプレス成形法により作製することができる。このとき、上層部21および下層部322には、通電用ビアや通気口が形成される。また、下層部322の上面では、ヒータ電極部60の特定箇所の直上において、ブラスト加工等により下層部322の表層を除去して、ヒータ電極部60の一部が露出するヒータ電極露出部64が形成された溝327を設ける。加工の際、ヒータ電極露出部64の表面には、高さが1~数十μm程度の凹凸が形成される。また、伝熱パスを良好に形成する観点から、溝327には大径フィラー41Bが入り込むことが好ましく、溝327を上面視したときの外周の径および溝327の高さは、100μm以上であることが好ましい。そして、上層部21の下面に、未硬化状態の既述した接着シートを貼り付け、接着シートにおいて、通電用ビアや通気口上の部分を除去する。その後、下層部322における溝327が形成された面と接着シートとが対抗するように、上層部21と下層部322とを重ね合わせて真空中で貼付ける。その後、加熱によって接着剤を硬化させることにより、上層部21と下層部322とが、第2接合部342により接着されて、セラミック部320が得られる。このとき、無機フィラーを含む接着剤は、変形に伴って溝327に侵入する。
このような構成としても、セラミック部320の上層部21および下層部322と、ヒータ電極部60との双方に接触する接着剤層345が、接着剤と共に大径フィラーおよび微粒子フィラーを含むことにより、ヒータ電極部60の表面の凹凸内に、微粒子フィラーが侵入する。そのため、第1実施形態と同様に、静電チャック310における面内温度分布を均一化する効果が得られる。
E.他の実施形態:
本開示は、静電引力を利用してウェハWを保持する静電チャック以外の保持装置に適用してもよい。すなわち、セラミック部と、セラミック部を加熱するヒータ電極部と、セラミック部とヒータ電極部との双方に接触する接着剤層とを備え、セラミック部の表面上に対象物を保持する他の保持装置、例えば、CVD、PVD、PLD等の真空装置用ヒータ装置や、真空チャック等にも同様に適用可能である。
以下では、本開示の保持装置について、実施例に基づいて説明する。ここでは、図2に示した静電チャック10と同様に、接合部40の内部にヒータ電極部60を配置した静電チャックとして、サンプルS1~S8の8種の静電チャックを作製し、載置面における温度ばらつきを評価した。
<サンプルS1>
公知の手法により、アルミナを主成分とするセラミック顆粒を作製した。セラミック顆粒をプレス成形し、得られたセラミックプレス成形体を金型中に載置した。載置したセラミックプレス成形体の上にチャック電極23を載置し、さらにチャック電極23の上に、セラミックス顆粒をプレス成形した成形体を載置した後、高温、高圧下でホットプレスを実施して焼成体を得た。得られた焼成体に通電用ビア、通気口を形成し、セラミック部20を得た。セラミック部20の載置面24とは反対側の面に、接着剤としてシリコーン接着剤を含む未硬化状態の接着シートを貼り付けた。通電用ビアおよび通気口上のシリコーン接着剤を除去した後、接着シート上に、所定のパターン形状で加工されたヒータ電極部60を置いた。同様に、ベース部30の上面にも、未硬化状態の接着シートを貼り付け、通電用ビアおよび通気口上のシリコーン接着剤を除去した。接着シート同士が対向するようにセラミック部20とベース部30とを重ねて真空中で貼付け、加熱によってシリコーン接着剤を硬化させ、静電チャックを得た。
サンプルS1を作製するために用いたシリコーン接着剤は、以下のようにして調整した。すなわち、粘度が10Pa・sのポリジメチルシロキサンに、無機フィラーとして、平均粒子径311μmのアルミナ粉末を添加、混合し、主剤とした。ここで、使用したアルミナ粉末は、微粒子フィラーに相当する粒径のアルミナが含まれているものを使用した。得られた主剤に、カップリング剤、硬化触媒、架橋剤を添加、混合し、シリコーン接着剤を得た。ここで、シリコーン接着剤中に占めるアルミナの割合は、75質量%であった。得られたシリコーン接着剤をシート状に成形し、加熱によって一部硬化させることで、サンプルS1に係る接着シートを得た。
<サンプルS2>
用いた接着シートが異なる点以外は、サンプルS1と同様にして作製した。サンプルS2を作製するために用いたシリコーン接着剤は、以下のようにして調整した。すなわち、粘度が10Pa・sのポリジメチルシロキサンに、無機フィラーとして、平均粒子径291μmのシリカ粉末を添加、混合し、主剤とした。ここで、粒子径1.5μmの微粒子シリカ粉末を、無機フィラー全体の15体積%となるように添加した。得られた主剤に、カップリング剤、硬化触媒、架橋剤を添加、混合し、シリコーン接着剤を得た。ここで、シリコーン接着剤中に占めるシリカの割合は、75質量%であった。得られたシリコーン接着剤をシート状に成形し、加熱によって一部硬化させることで、サンプルS2に係る接着シートを得た。
<サンプルS3>
用いた接着シートが異なる点以外は、サンプルS1と同様にして作製した。サンプルS3を作製するために用いたシリコーン接着剤は、以下のようにして調整した。すなわち、粘度が10Pa・sのポリジメチルシロキサンに、無機フィラーとして、平均粒子径254μmのアルミナ粉末を添加、混合し、主剤とした。ここで、使用したアルミナ粉末は、微粒子フィラーに相当する粒径のアルミナが含まれているものを使用した。得られた主剤に、カップリング剤、硬化触媒、架橋剤を添加、混合し、シリコーン接着剤を得た。ここで、シリコーン接着剤中に占めるシリカの割合は、75質量%であった。得られたシリコーン接着剤をシート状に成形し、加熱によって一部硬化させることで、サンプルS3に係る接着シートを得た。
<サンプルS4>
用いた接着シートが異なる点以外は、サンプルS1と同様にして作製した。サンプルS4を作製するために用いたシリコーン接着剤は、以下のようにして調整した。すなわち、粘度が10Pa・sのポリジメチルシロキサンに、無機フィラーとして、平均粒子径120μmのアルミナ粉末を添加、混合し、主剤とした。ここで、使用したアルミナ粉末は、微粒子フィラーに相当する粒径のアルミナが含まれているものを使用した。得られた主剤に、カップリング剤、硬化触媒、架橋剤を添加、混合し、シリコーン接着剤を得た。ここでシリコーン接着剤中に占めるアルミナの割合は、75質量%であった。得られたシリコーン接着剤をシート状に成形し、加熱によって一部硬化させることで、サンプルS4に係る接着シートを得た。
<サンプルS5>
用いた接着シートが異なる点以外は、サンプルS1と同様にして作製した。サンプルS5を作製するために用いたシリコーン接着剤は、以下のようにして調整した。すなわち、粘度が10Pa・sのポリジメチルシロキサンに、無機フィラーとして、平均粒子径155μmのFe-Si合金粉末を添加、混合し、主剤とした。ここで、使用した合金粉末は、粒子径がほぼ均一であって、微粒子フィラーに相当する粒径の粒子を含まない粉末であった。得られた主剤に、カップリング剤、硬化触媒、架橋剤を添加、混合し、シリコーン接着剤を得た。ここでシリコーン接着剤中に占める合金の割合は、75質量%であった。得られたシリコーン接着剤をシート状に成形し、加熱によって一部硬化させることで、サンプルS5に係る接着シートを得た。
<サンプルS6>
用いた接着シートが異なる点以外は、サンプルS1と同様にして作製した。サンプルS6を作製するために用いたシリコーン接着剤は、以下のようにして調整した。すなわち、粘度が10Pa・sのポリジメチルシロキサンに、無機フィラーとして、平均粒子径50μmのシリカ粉末を添加、混合し、主剤とした。ここで、使用したシリカ粉末は、粒子径がほぼ均一であって、微粒子フィラーに相当する粒径の粒子を含まない粉末であった。得られた主剤に、カップリング剤、硬化触媒、架橋剤を添加、混合し、シリコーン接着剤を得た。ここでシリコーン接着剤中に占める合金の割合は、75質量%であった。得られたシリコーン接着剤をシート状に成形し、加熱によって一部硬化させることで、サンプルS6に係る接着シートを得た。
<サンプルS7>
用いた接着シートが異なる点以外は、サンプルS1と同様にして作製した。サンプルS7を作製するために用いたシリコーン接着剤は、以下のようにして調整した。すなわち、粘度が10Pa・sのポリジメチルシロキサンに、無機フィラーとして、平均粒子径180μmのアルミナ粉末を添加、混合し、主剤とした。ここで、使用したアルミナ粉末は、粒子径がほぼ均一であって、微粒子フィラーに相当する粒径の粒子を含まない粉末であった。得られた主剤に、カップリング剤、硬化触媒、架橋剤を添加、混合し、シリコーン接着剤を得た。ここでシリコーン接着剤中に占める合金の割合は、75質量%であった。得られたシリコーン接着剤をシート状に成形し、加熱によって一部硬化させることで、サンプルS7に係る接着シートを得た。
<サンプルS8>
用いた接着シートが異なる点以外は、サンプルS1と同様にして作製した。サンプルS8を作製するために用いたシリコーン接着剤は、以下のようにして調整した。すなわち、粘度が10Pa・sのポリジメチルシロキサンに、無機フィラーとして、平均粒子径150μmのアルミナ粉末を添加、混合し、主剤とした。ここで、使用したアルミナ粉末は、粒子径がほぼ均一であって、微粒子フィラーに相当する粒径の粒子を含まない粉末であった。得られた主剤に、カップリング剤、硬化触媒、架橋剤を添加、混合し、シリコーン接着剤を得た。ここでシリコーン接着剤中に占める合金の割合は、75質量%であった。得られたシリコーン接着剤をシート状に成形し、加熱によって一部硬化させることで、サンプルS8に係る接着シートを得た。
作製したサンプルS1~S8の静電チャックについて、「ヒータ電極部60の表面に形成された凹凸における最大高さRy」、「無機フィラーの球相当径α」、「無機フィラーにおける微粒子フィラーの含有割合(体積%)」、「無機フィラーのアスペクト比」、「接着剤層の断面において、ヒータ電極部との界面に接する領域における無機フィラーの面積割合と、接着剤層の厚み方向中央を含む領域における無機フィラーの面積割合との差(以下では、面積割合差とも呼ぶ)」、「真密度」、「平均粒子径」を求めて、ヒータ電極部60を用いた加熱を行ったときの載置面24における面内温度分布(温度ばらつき)を評価した。
「最大高さRy」は、図3を用いて説明した既述した方法により測定した。「無機フィラーの球相当径α」は、無機フィラーの粒度分布分析の結果を用いて、粒子の体積から換算して求めた。無機フィラーの粒度分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、Partica-LA-500)を用いて測定した。「無機フィラーにおける微粒子フィラーの含有割合(体積%)」も、上記した無機フィラーの粒度分布分析の結果を用いて求めた。粒度分布分析の結果、最大高さRyよりも球相当径が小さい粒子を微粒子フィラーとし、上記した微粒子フィラーの含有割合(体積%)を求めた。
なお、既述したように、無機フィラーは、無機フィラーを用いた静電チャックの製造工程における温度や圧力等の条件下において、物理的あるいは化学的にほとんど変化しないため、製造前の粉末の状態と、製造後の接着剤中に分散する状態との間で、球相当径や体積は実質的に変化しないと考えられる。そのため、各サンプルが備える無機フィラーの球相当径αや、無機フィラーにおける微粒子フィラーの含有割合(体積%)や、平均粒子径は、接着剤に混合する前の無機フィラーを粒度分布分析することにより測定した。
「無機フィラーのアスペクト比」としては、微粒子フィラーのアスペクト比と大径フィラーのアスペクト比とを別々に求め、さらに両者の平均値を求めた。微粒子フィラーのアスペクト比を求めるには、接着剤層45の断面を、走査電子顕微鏡(SEM)により3000倍で観察し、図7に示すように10μm×10μmの視野を切り取った。そして、視野中に観察される微粒子フィラー50個について、長径Lと短径Wとを測定し、長短比L/Wを計算し、得られた値の平均値を、微粒子フィラーのアスペクト比とした。大径フィラーのアスペクト比を求めるには、接着剤層45の断面を、走査電子顕微鏡(SEM)により500~1000倍で観察し、200μm×200μmの視野を切り取った。そして、視野中に観察される大径フィラー10個について、長径Lと短径Wを測定し、長短比L/Wを計算し、得られた値の平均値を、大径フィラーのアスペクト比とした。なお、いずれのサンプルにおいても、微粒子フィラーのアスペクト比と大径フィラーのアスペクト比とは、ほぼ同じ値であった。
「面積割合差」は、以下のようにして測定した。まず、各サンプルである静電チャックから、ヒータ電極部60と接着剤層45とが接する部分を含むように接着剤層45を切り出し、断面視ができるように研磨加工を行った。研磨は、接着剤層45中の無機フィラーが脱粒しないように、イオンミリング法によるCP(クロスセクションポリッシャ)加工により実施した。このようにして得られたサンプルについて、接着剤層45の部分を走査電子顕微鏡(SEM)により観察し、接着剤層45の厚み方向中央部と、ヒータ電極部60との境界近傍とについて、SEM画像を200μm×200μmの範囲で切り出した。この時、ヒータ電極部60が視野に入っていても良いこととした。得られた画像から、無機フィラーが占める面積をSa、無機フィラーと接着剤とが占める面積(切り出した画像全体の面積)をSbとして、「Sa/Sb×100」を計算することにより、無機フィラーの占める面積割合を算出した。このような解析は、画像処理ソフトウエアImageJを用いて行った。上記した解析の後、ヒータ電極部との界面に接する領域について求めた無機フィラーの面積割合と、接着剤層の厚み方向中央を含む領域について求めた無機フィラーの面積割合との差を算出し、「面積割合差」とした。
「真密度」は、使用した各無機フィラーの材料の化学組成から計算した。「平均粒子径」は、既述した無機フィラーの粒度分布分析の結果を用いて求めた。
面内温度分布を評価するための温度ばらつきは、静電チャックのセラミック部20が150℃となるように各静電チャックを稼働させて、載置面24の温度を、赤外放射温度計を用いて測定することにより求めた。載置面24における最も温度が高い箇所の温度と、最も温度が低い箇所の温度との差を、「温度ばらつき」とした。
図17は、各サンプルの条件および評価結果をまとめて示す説明図である。図17では、各サンプルのうち、無機フィラーの一部として微粒子フィラーを含むサンプルについては、「Ry>α」の欄に「YES」と記載した。サンプルS5~S8は、微粒子フィラーを含んでおらず(「Ry>α」が「NO」)、比較例に相当する。
図17に示すように、無機フィラーの一部として微粒子フィラーを含むサンプルS1~S4は、微粒子フィラーを含まないサンプルS5~S8に比べて温度ばらつきが小さく、面内温度分布を均一化する効果が得られることが、確認された。また、サンプルS1~S4の中でも、「微粒子フィラーの含有割合が1体積%以上、30体積%以下」、微粒子フィラーや大径フィラーの「アスペクト比が、1.5以下」、「面積割合差が1%以下」、「無機フィラーの真密度が2.0g/cm以上6.5g/cm以下」、「無機フィラーの平均粒子径が200μm以下」のうちの少なくとも一つの条件を満たすサンプルS2~S4が、いずれも満たさないサンプルS1に比べて温度ばらつきが小さく、面内温度分布を均一化する効果が高まることが確認された。特に、上記した条件をすべて満たすサンプルS4は、温度ばらつきが最も小さくなった。
本開示は、上述の実施形態等に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
10,110,210,310…静電チャック
20,220,320…セラミック部
21…上層部
22,322…下層部
23…チャック電極
24…載置面
26…端子
30…ベース部
32…冷媒流路
40…接合部
41A…微粒子フィラー
41B…大径フィラー
45,245,345…接着剤層
50…ガス供給路
52…ガス吐出口
60…ヒータ電極部
62…端子
64…ヒータ電極露出部
240…第1接合部
242,342…第2接合部
327…溝

Claims (9)

  1. 対象物を保持する保持装置であって、
    セラミックを主成分とし、板状に形成されるセラミック部と、
    前記セラミック部を加熱するヒータ電極部と、
    前記セラミック部の厚み方向に垂直な面方向に広がるように形成されて、前記セラミック部と前記ヒータ電極部との双方に接触し、接着剤および無機フィラーを含む接着剤層と、
    を備え、
    前記無機フィラーは、該無機フィラーの一部として、前記ヒータ電極部における前記接着剤層と接する表面に形成された凹凸における最大高さよりも小さな球相当径を有する微粒子フィラーを含み、
    前記接着剤層の断面において、前記ヒータ電極部との界面に接する領域における前記無機フィラーの面積割合と、前記接着剤層の厚み方向中央を含む領域における前記無機フィラーの面積割合との差が、1%以下であることを特徴とする
    保持装置。
  2. 請求項1に記載の保持装置であって、
    前記無機フィラーにおける前記微粒子フィラーの含有割合は、1体積%以上、30体積%以下であることを特徴とする
    保持装置。
  3. 請求項1または2に記載の保持装置であって、
    前記微粒子フィラーのアスペクト比が、1.5以下であることを特徴とする
    保持装置。
  4. 請求項1から3までのいずれか一項に記載の保持装置であって、
    前記無機フィラーにおける前記微粒子フィラー以外のフィラーのアスペクト比が、1.5以下であることを特徴とする
    保持装置。
  5. 請求項1からまでのいずれか一項に記載の保持装置であって、
    前記無機フィラーの平均粒子径が200μm以下であることを特徴とする
    保持装置。
  6. 請求項1からまでのいずれか一項に記載の保持装置であって、
    前記無機フィラーの真密度が2.0g/cm以上6.5g/cm以下であることを特徴とする
    保持装置。
  7. 請求項1からまでのいずれか一項に記載の保持装置であって、さらに、
    金属を含み、板状に形成されるベース部を備え、
    前記接着剤層は、前記セラミック部と前記ベース部との間に配置され、前記セラミック部と前記ベース部とを接合し、
    前記ヒータ電極部は、少なくとも一部が前記接着剤層の内部に配置されていることを特徴とする
    保持装置。
  8. 請求項1からまでのいずれか一項に記載の保持装置であって、
    前記セラミック部は、前記保持装置の載置対象物を載置する載置面を有する上層部と、前記ヒータ電極部が一の面に形成された下層部と、に分割されており、
    前記接着剤層は、前記上層部における前記載置面の裏面と、前記下層部における前記一の面との間に配置され、前記上層部と前記下層部とを接合することとを特徴とする
    保持装置。
  9. 請求項1からまでのいずれか一項に記載の保持装置であって、
    前記セラミック部は、前記保持装置の載置対象物を載置する載置面を有する上層部と、前記ヒータ電極部が内部に形成された下層部と、に分割されており、
    前記ヒータ電極部は、前記セラミック部から露出するヒータ電極露出部を有し、
    前記接着剤層は、前記上層部と前記下層部との間に配置され、前記上層部と前記下層部とを接合し、前記ヒータ電極露出部の表面に接触することを特徴とする
    保持装置。
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