以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る車両用灯具システムのブロック図である。図1では、車両用灯具システム1の構成要素の一部を機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックは、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
車両用灯具システム1は、配光可変ランプ2と、車両検出装置4と、配光制御装置6とを備える。これらは全て同じ筐体に内蔵されていてもよいし、いくつかの部材は筐体の外部、言い換えれば車両側に設けられてもよい。なお、配光可変ランプ2と車両検出装置4の後述するカメラ8とを同じ筐体内に配置することで、両者の視差をより簡単に小さくすることができる。
配光可変ランプ2は、強度分布が可変である可視光ビームL1を車両の前方領域に照射可能な白色光源である。配光可変ランプ2は、配光制御装置6から配光パターンPTNを指示するデータを受け、配光パターンPTNに応じた強度分布を有する可視光ビームL1を出射する。これにより、車両前方に配光パターンPTNが形成される。配光パターンPTNは、配光可変ランプ2が自車前方の仮想鉛直スクリーン900上に形成する照射パターン902の2次元の照度分布と把握される。配光可変ランプ2の構成は特に限定されず、例えばLED(発光ダイオード)、LD(レーザーダイオード)、有機または無機EL(エレクトロルミネセンス)等の半導体光源と、半導体光源を駆動して点灯させる点灯回路とを含み得る。
配光可変ランプ2は、配光パターンPTNに応じた照度分布を形成するために、例えばDMD(Digital Mirror Device)や液晶デバイス等のマトリクス型のパターン形成デバイス、あるいは光源光で自車前方を走査するスキャン光学型のパターン形成デバイスなどを含み得る。
車両検出装置4は、車両の前方領域に位置する前方車両を検出する装置である。前方車両は、対向車と先行車とを含む。車両検出装置4は、カメラ8と、画像生成部10と、検出部12とを備える。画像生成部10および検出部12は、デジタルプロセッサで構成することができ、例えばCPUを含むマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified IC)などで構成してもよい。各部は、自身を構成する集積回路が、メモリに保持されたプログラムを実行することで動作する。配光制御装置6についても同様である。
カメラ8は、可視光領域に感度を有し、車両の前方領域を撮像する。カメラ8は、車両前方の物標による可視光ビームL1の反射光L2を撮像する。カメラ8は、イメージセンサ14と、調光用の複数のフィルタ16とを有する。
図2は、イメージセンサ14およびフィルタ16の模式図である。イメージセンサ14は、マトリクス状に配列された複数の撮像素子18を有する。本実施の形態の撮像素子18には、第1撮像素子群18a、第2撮像素子群18b、第3撮像素子群18cおよび第4撮像素子群18dが含まれる。第1撮像素子群18a~第4撮像素子群18dには、光透過率が異なるフィルタ16が設けられる。また、第1撮像素子群18a~第4撮像素子群18dのそれぞれに属する撮像素子18が1つずつ2行2列に集まって素子ユニット20が構成され、複数の素子ユニット20がマトリクス状に配列されている。なお説明の便宜上、図2では第1撮像素子群18aに属する撮像素子18のそれぞれに符号「18a」を付している。第2撮像素子群18b~第4撮像素子群18dについても同様である。
フィルタ16は、各撮像素子18の前面に配置されて、各撮像素子18に入射する光の量を調整する。本実施の形態のフィルタ16には、第1フィルタ16a、第2フィルタ16b、第3フィルタ16cおよび第4フィルタ16dが含まれる。第1フィルタ16aは、第1撮像素子群18aに属する各撮像素子18に設けられる。第2フィルタ16bは、第2撮像素子群18bに属する各撮像素子18に設けられる。第3フィルタ16cは、第3撮像素子群18cに属する各撮像素子18に設けられる。第4フィルタ16dは、第4撮像素子群18dに属する各撮像素子18に設けられる。
第1フィルタ16a~第4フィルタ16dは、それぞれ異なる光透過率を有する。具体的には、第1フィルタ16aは、第1撮像素子群18aへの入射光量を第2撮像素子群18b~第4撮像素子群18dへの入射光量よりも低減する。第2フィルタ16bは、第2撮像素子群18bへの入射光量を第3撮像素子群18cおよび第4撮像素子群18dへの入射光量よりも低減する。第4フィルタ16dは、第4撮像素子群18dへの入射光量を第3撮像素子群18cへの入射光量よりも低減する。一例として、第1フィルタ16aの光透過率は0.25(25%)であり、第2フィルタ16bの光透過率は0.50(50%)であり、第3フィルタ16cの光透過率は1.00(100%)であり、第4フィルタ16dの光透過率は0.75(75%)である。
第1フィルタ16a~第4フィルタ16dにより、第1撮像素子群18a~第4撮像素子群18dへの入射光量を異ならせることができる。第1フィルタ16a~第4フィルタ16dは、それぞれが1つずつ2行2列に集まってフィルタユニット22を構成し、複数のフィルタユニット22がマトリクス状に配列される。各フィルタユニット22は、各素子ユニット20に対応する。
また、第1フィルタ16aには、赤色の光を透過し青色および緑色の光をカットする赤色フィルタ(R)と、緑色の光を透過し赤色および青色の光をカットする緑色フィルタ(G)と、青色の光を透過し赤色および緑色の光をカットする青色フィルタ(B)とが含まれる。同様に、第2フィルタ16b、第3フィルタ16cおよび第4フィルタ16dのそれぞれにも、赤色フィルタ、緑色フィルタおよび青色フィルタが含まれる。各フィルタユニット22は、同色の第1フィルタ16a~第4フィルタ16dで構成される。
イメージセンサ14は、フィルタ16を透過した光を各撮像素子18で光電変換して電気信号を生成し、画像生成部10に送信する。画像生成部10は、第1撮像素子群18a~第4撮像素子群18dから得られる情報に基づいて、画像データを生成する。
図3(A)~図3(D)は、画像生成部10により生成されるRAW画像のモデル図である。画像生成部10は、第1撮像素子群18aから得られる情報を抽出して、図3(D)に示す第1RAW画像24aを生成する。また、画像生成部10は、第2撮像素子群18bから得られる情報を抽出して、図3(C)に示す第2RAW画像24bを生成する。また、画像生成部10は、第3撮像素子群18cから得られる情報を抽出して、図3(A)に示す第3RAW画像24cを生成する。なお、後述する検出部12による車両検出処理には用いられないが、画像生成部10は、第4撮像素子群18dから得られる情報を抽出して、図3(D)に示す第4RAW画像24dを生成することができる。
画像生成部10は、一度の露光で第1撮像素子群18a、第2撮像素子群18b、第3撮像素子群18cおよび第4撮像素子群18dのそれぞれから得られる情報に基づいて、第1RAW画像24a~第4RAW画像24dを生成する。この場合、テールランプTL、ストップランプSLおよびヘッドランプHLの中で最も輝度の低いテールランプTLを第3撮像素子群18cで撮像できるように露光時間が設定される。
図4(A)~図4(C)は、画像生成部10により生成される実際のRAW画像を示す図である。図4(A)に示す画像は、実際に得られる第1RAW画像24aの一例である。図4(B)に示す画像は、実際に得られる第2RAW画像24bの一例である。図4(C)に示す画像は、実際に得られる第3RAW画像24cの一例である。
第1RAW画像24aは、光透過率が最も低い第1フィルタ16aを透過した光から生成される。第2RAW画像24bは、光透過率が2番目に低い第2フィルタ16bを透過した光から生成される。第3RAW画像24cは、光透過率が最も高い第3フィルタ16cを透過した光から生成される。このため、第3RAW画像24cは、第1RAW画像24aおよび第2RAW画像24bよりも低輝度の光点を含む。また、第2RAW画像24bは、第1RAW画像24aよりも低輝度の光点を含む。
自車前方に先行車および対向車が存在する場合、先行車のテールランプTL、先行車のストップランプSLおよび対向車のヘッドランプHLは、この順に輝度が大きくなる。したがって、図4(A)に示すように、第1RAW画像24aは、ヘッドランプHLの光点を含むが、テールランプTLの光点およびストップランプSLの光点を含まない。また、図4(B)に示すように、第2RAW画像24bは、ストップランプSLの光点およびヘッドランプHLの光点を含むが、テールランプTLの光点は含まない。また、図4(C)に示すように、第3RAW画像24cは、テールランプTL、ストップランプSLおよびヘッドランプHLの各光点を含む。
なお、第1撮像素子群18a~第4撮像素子群18dから得られる情報を様々な組み合わせで足し合わせることで、第1RAW画像24a~第4RAW画像24dの4種類の明るさの画像だけでなく、最大15種類の明るさの画像を生成することができる。
画像生成部10は、第1撮像素子群18aから得られる情報に基づいて第1画像26aを生成し、第2撮像素子群18bから得られる情報に基づいて第2画像26bを生成し、第3撮像素子群18cから得られる情報に基づいて第3画像26cを生成する。図5(A)は第1画像26aを示す図であり、図5(B)は第2画像26bを示す図であり、図5(C)は第3画像26cを示す図である。
具体的には、画像生成部10は、輝度に関する所定のしきい値を用いて第1RAW画像24aに二値化処理を施すことで、第1RAW画像24aからヘッドランプHLの光点を抽出し、第1画像26aを生成する。また、画像生成部10は、赤色に関する所定のしきい値を用いて第2RAW画像24bに二値化処理を施すことで、第2RAW画像24bからストップランプSLの光点を抽出し、第2画像26bを生成する。また、画像生成部10は、赤色に関する所定のしきい値を用いて第3RAW画像24cに二値化処理を施すことで、第3RAW画像24cからテールランプTLの光点を抽出し、第3画像26cを生成する。
第3RAW画像24cに含まれるストップランプSLは、露光時間の長さから白飛びしている。このため、赤色による二値化によって、第3RAW画像24cからヘッドランプHLとともにストップランプSLも除外することができる。一方、第2フィルタ16bは第3フィルタ16cよりも光透過率が低いため、同じ露光時間でも第2RAW画像24bではストップランプSLの白飛びが抑制される。このため、赤色による二値化によって第2RAW画像24bにおいてストップランプSLとヘッドランプHLとを選別することができる。
上述したように、画像生成部10は、一度の露光で第1RAW画像24a~第4RAW画像24dを生成している。したがって、画像生成部10は、一度の露光で第1画像26a、第2画像26bおよび第3画像26cを生成することができる。画像生成部10は、生成した第1画像26a~第3画像26cの情報を検出部12に送る。
検出部12は、第1画像26a、第2画像26bおよび第3画像26cに基づいて前方車両を検出する。具体的には、検出部12は、第1画像26aに含まれる光点から対向車のヘッドランプHLを検出する。また、検出部12は、第2画像26bに含まれる光点から先行車のストップランプSLを検出する。また、検出部12は、第3画像26cに含まれる光点から先行車のテールランプTLを検出する。
検出部12は、テールランプTLやストップランプSLに基づいて先行車を検出することができる。また、検出部12は、ヘッドランプHLに基づいて対向車を検出することができる。検出部12は、アルゴリズム認識やディープラーニング等を含む公知の方法を用いて、先行車および対向車を検出することができる。検出部12は、検出結果を示す信号を配光制御装置6に送信する。
配光制御装置6は、車両検出装置4の検出結果に基づいて配光可変ランプ2を制御する。図6は、配光制御装置6が決定する配光パターンPTNの一例を示す図である。配光制御装置6は、検出部12の検出結果に基づいて、遮光部Sを含む配光パターンPTNを決定する。遮光部Sは、テールランプTL、ストップランプSLおよびヘッドランプHLの各光点を基準に定められる。遮光部Sを含む配光パターンPTNを形成することで、先行車や対向車に与えるグレアを抑制することができる。「ある部分を遮光する」とは、その部分の輝度(照度)を完全にゼロとする場合のほか、その部分の輝度(照度)を低下させる場合も含む。
配光制御装置6は、テールランプTLに基づいて先行車に対する遮光部Sを定める場合、テールランプTLの2つの光点の車幅方向外側に所定のマージンMを加えた領域を遮光部Sの車幅方向の範囲とする。マージンMは、例えば先行車のサイドミラーを含むように、その大きさが設定される。また、配光制御装置6は一例として、テールランプTLの2つの光点から上方の領域を遮光部Sの鉛直方向の範囲とする。
テールランプTLの2つの光点よりもマージンMの分だけ車幅方向に広い遮光部Sを設けることで、サイドミラーを介して先行車の運転者に光が照射されることを回避できる。これにより、先行車に与えるグレアをより確実に抑制することができる。
ストップランプSLに基づいて先行車に対する遮光部Sを定める場合も同様に、配光制御装置6は、ストップランプSLの2つの光点の車幅方向外側にマージンMを加えた領域を遮光部Sとする。一方、配光制御装置6は、ヘッドランプHLに基づいて対向車に対する遮光部Sを定める場合、マージンMを設けずにヘッドランプHLの一方の光点から他方の光点までの領域を遮光部Sとする。
配光制御装置6は、決定した配光パターンPTNに応じた強度分布を有する可視光ビームL1を出射するように配光可変ランプ2を制御する。例えば、配光可変ランプ2がDMDを含む場合、配光制御装置6は光源の点消灯と、DMDを構成する各ミラー素子のオン/オフ切り替えとを制御する。これにより、前方車両と重なる遮光部Sを有する配光パターンPTNが形成され、前方車両の運転者にグレアを与えることなく自車両の運転者の視認性を高めることができる。
本実施の形態では、一度の露光で生成した複数種の画像に基づいて先行車および対向車を検出している。このため、各ランプの輝度に合わせて露光時間を異ならせて複数回撮像する場合に比べて、高速に移動する先行車および対向車の位置を高精度に捉えることができる。
図7は、車両用灯具システム1が実行するADB制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、例えば図示しないライトスイッチによってADB制御の実行指示がなされ、且つイグニッションがオンのときに所定のタイミングで繰り返し実行される。まず、カメラ8で車両の前方領域が撮像される(S101)。次に、イメージセンサ14の各撮像素子群から得られる情報に基づいて、第1RAW画像24a~第3RAW画像24cが生成される。また、第1RAW画像24a~第3RAW画像24cから、第1画像26a~第3画像26cが生成される(S102)。
続いて、第1画像26a~第3画像26cに基づいて、前方車両の有無が判断される(S103)。前方車両が存在する場合(S103のY)、遮光部Sを含む配光パターンPTNが決定される(S104)。前方車両が存在しない場合(S103のN)、遮光部Sを含まない配光パターンPTNが決定される(S105)。その後、決定された配光パターンPTNが形成され(S106)、本ルーチンが終了する。
なお、例えば図8に示す変形例1のように、カメラ8は、光透過率の異なる2種類のフィルタ16のみを備えていてもよい。図8は、変形例1に係るフィルタ16の模式図である。この場合であっても、少なくとも2種類の明るさの画像を一度の露光で生成することができるため、輝度の異なる複数の物標の位置を高精度に捉えることができる。
例えば、光透過率が0.25である第1フィルタ16aと、光透過率が1.00である第3フィルタ16cとをイメージセンサ14に設けることで、ヘッドランプHLを含む第1画像26aと、テールランプTLを含む第3画像26cとが得られる。これにより、第1画像26aに基づいて対向車を検出でき、第3画像26cに基づいて先行車を検出できる。
光透過率が1.00である第3フィルタ16cは省略することもできる。つまり、第3撮像素子群18cにはフィルタ16を設けなくてもよい。この場合であっても、第1フィルタ16aがあれば(つまりフィルタ16の光透過率は1種類)、少なくともテールランプTLおよびヘッドランプHLを抽出できる。なお、第1フィルタ16aのみが設けられる場合、第1フィルタ16aが設けられる第1撮像素子群18a以外の撮像素子18を第2撮像素子群18bと読み替えることができる。また、第1フィルタ16aと第2フィルタ16bとがあれば(つまりフィルタ16の光透過率は2種類)、テールランプTL、ストップランプSLおよびヘッドランプHLを抽出できる。また、フィルタ16の光透過率は、3種類あるいは5種類以上であってもよい。
以上説明したように、本実施の形態に係る車両検出装置4は、第1撮像素子群18aおよび第2撮像素子群18bを含む複数の撮像素子18を有するイメージセンサ14、ならびに第1撮像素子群18aへの入射光量を第2撮像素子群18bへの入射光量よりも低減する第1フィルタ16aを有し、車両の前方領域を撮像するカメラ8と、第1撮像素子群18aから得られる情報に基づいて第1画像26aを生成し、第2撮像素子群18bから得られる情報に基づいて第2画像26bを生成する画像生成部10と、第1画像26aおよび第2画像26bに基づいて前方車両を検出する検出部12とを備える。
また、本実施の形態の車両用灯具システム1は、強度分布が可変である可視光ビームL1を車両の前方領域に照射可能な配光可変ランプ2と、車両検出装置4と、車両検出装置4の検出結果に基づいて配光可変ランプ2を制御する配光制御装置6とを備える。
少なくとも第1撮像素子群18aに第1フィルタ16aを設けることで、画像生成部10は、一度の露光で第1撮像素子群18aおよび第2撮像素子群18bのそれぞれから得られる情報に基づいて、明るさの異なる第1画像26aおよび第2画像26bを生成することができる。
異なる露光時間で複数回撮像して明るさの異なる複数の画像を生成する場合、撮像を繰り返すうちに、高速に移動する先行車や対向車の位置がずれてしまう。したがって、先行車や対向車に対して高精度に遮光部Sを重ね合わせることは困難である。これに対し、一回の露光で明るさの異なる複数の画像を生成することで、先行車や対向車の位置を高精度に捉えることができる。これにより、ADB制御の精度を向上させることができ、車両運転の安全性を高めることができる。また、前方車両に限らず、輝度の異なる複数の物標の位置を高精度に捉えることができる。抽出対象となる物標は、第1フィルタ16aの光透過率を調整することで選択できる。
また、本実施の形態のイメージセンサ14は、第3撮像素子群18cを含む。カメラ8は、第2撮像素子群18bへの入射光量を第3撮像素子群18cへの入射光量よりも低減する第2フィルタ16bを有する。画像生成部10は、第3撮像素子群18cから得られる情報に基づいて第3画像26cを生成する。検出部12は、第1画像26a、第2画像26bおよび第3画像26cに基づいて前方車両を検出する。これにより、ADB制御の精度をより向上させることができる。
また、検出部12は、第1画像26aに含まれる光点から対向車のヘッドランプHLを検出し、第2画像26bに含まれる光点から先行車のストップランプSLを検出し、第3画像26cに含まれる光点から先行車のテールランプTLを検出する。これにより、先行車と対向車とをより正確に区別することができる。ADB制御において先行車と対向車とを区別することができれば、先行車に対する遮光部Sはサイドミラーを含むように設定し、対向車に対する遮光部Sはサイドミラーを含まないように設定することができる。これにより、前方車両へのグレアの回避と自車両の視認性向上とをより高い次元で実現することができる。
以上、本発明の実施の形態1について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
上述した実施の形態1に係る発明は、以下に記載する項目によって特定されてもよい。
[項目1]
車両の前方領域に位置する前方車両を検出する車両検出方法であって、
第1撮像素子群(18a)および第2撮像素子群(18b)を含む複数の撮像素子(18)を有するイメージセンサ(14)、ならびに第1撮像素子群(18a)への入射光量を第2撮像素子群(18b)への入射光量よりも低減する第1フィルタ(16a)を有するカメラ(8)で前方領域を撮像し、
第1撮像素子群(18a)から得られる情報に基づいて第1画像(26a)を生成し、第2撮像素子群から得られる情報に基づいて第2画像(26b)を生成し、
第1画像(26a)および第2画像(26b)に基づいて前方車両を検出することを含む車両検出方法。
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2に係る車両用灯具システムのブロック図である。図9では、車両用灯具システム1001の構成要素の一部を機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックは、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
車両用灯具システム1001は、配光可変ランプ1002と、撮像装置1004と、配光制御装置1006とを備える。これらは全て同じ筐体に内蔵されていてもよいし、いくつかの部材は筐体の外部、言い換えれば車両側に設けられてもよい。
配光可変ランプ1002は、自車前方に並ぶ複数の個別領域Rそれぞれに照射する光の光度を独立に調節可能である。つまり、配光可変ランプ1002は、強度分布が可変である可視光ビームL1を車両の前方領域に照射可能である。複数の個別領域Rは、例えばマトリクス状に配列される。配光可変ランプ1002は、配光制御装置1006から配光パターンPTNに関するデータを受け、配光パターンPTNに応じた強度分布を有する可視光ビームL1を出射する。これにより、車両前方に配光パターンPTNが形成される。配光パターンPTNは、配光可変ランプ1002が自車前方の仮想鉛直スクリーン1900上に形成する照射パターン1902の2次元の照度分布と把握される。
配光可変ランプ1002の構成は特に限定されず、例えばマトリクス状に配列された複数の光源と、各光源を独立に駆動して点灯させる点灯回路とを含む。光源の好ましい例としては、LED(発光ダイオード)、LD(レーザーダイオード)、有機または無機EL(エレクトロルミネセンス)等の半導体光源が挙げられる。各個別領域Rと各光源とが対応付けられて、各光源から各個別領域Rに対して個別に光が照射される。
なお、配光可変ランプ1002は、配光パターンPTNに応じた照度分布を形成するために、たとえばDMD(Digital Mirror Device)や液晶デバイス等のマトリクス型のパターン形成デバイスや、光源光で自車前方を走査するスキャン光学型のパターン形成デバイスを含んでもよい。配光可変ランプ1002の分解能(解像度)は、例えば1000~130万ピクセルである。また、配光可変ランプ1002が1つの配光パターンPTNの形成に要する時間は、例えば0.1~5msである。
撮像装置1004は、可視光領域に感度を有し、車両の前方領域を撮像する。撮像装置1004は、車両前方の物体による可視光ビームL1の反射光L2を撮像する。撮像装置1004が取得した画像IMGは、配光制御装置1006に送られる。
配光制御装置1006は、撮像装置1004から得られる情報、つまり画像IMGに基づいて配光可変ランプ1002を制御し、配光パターンPTNを動的、適応的に制御するADB制御を実行する。配光制御装置1006は、デジタルプロセッサで構成することができ、例えばCPUを含むマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified IC)などで構成してもよい。
配光制御装置1006は、輝度解析部1008と、物標解析部1010と、ランプ制御部1012とを備える。以下、配光制御装置1006が有する各部の基本動作を説明する。各部は、自身を構成する集積回路が、メモリに保持されたプログラムを実行することで動作する。
輝度解析部1008は、撮像装置1004から得られる画像IMGに基づいて、各個別領域Rの輝度を解析する。輝度解析部1008が実行する輝度解析には、所定の輝度しきい値を用いて画像IMGにおける各画素の輝度値を2値化することが含まれる。輝度解析部1008は、解析結果をランプ制御部1012に送る。輝度しきい値は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
物標解析部1010は、撮像装置1004から得られる画像IMGに基づいて、自車前方に存在する所定の物標を検出する。物標解析部1010によって検出される所定の物標は、例えば自発光体であり、具体例としては対向車や先行車等の前方車両である。物標解析部1010は、アルゴリズム認識やディープラーニング等を含む公知の方法を用いて物標を検出することができる。例えば、物標解析部1010は、前方車両を示す特徴点を予め保持している。そして、物標解析部1010は、撮像装置1004の撮像データの中に前方車両を示す特徴点を含むデータが存在する場合、前方車両の位置を認識する。前記「前方車両を示す特徴点」とは、例えば対向車のヘッドランプ、先行車のテールランプあるいは先行車のストップランプの推定存在領域に現れる所定光度以上の光点である。物標解析部1010は、自車前方の物標情報をランプ制御部1012に送る。
ランプ制御部1012は、輝度解析部1008の解析結果に基づいて各個別領域Rに照射する光の照度を定めて、前方領域に形成する配光パターンPTNを決定する。また、ランプ制御部1012は、決定した配光パターンPTNに関するデータを配光可変ランプ1002に送り、配光パターンPTNを形成するよう配光可変ランプ1002を制御する。例えば、配光可変ランプ1002がDMDを含む場合、ランプ制御部1012は光源の点消灯と、DMDを構成する各ミラー素子のオン/オフ切り替えとを制御する。これにより、自車前方に配光パターンPTNが形成される。
また、ランプ制御部1012は、形成すべき配光パターンPTNを決定する際、複数の個別領域Rに含まれる第1個別領域群と第2個別領域群とに、基準配光パターンをタイミングをずらして定期的に形成する。基準配光パターンは、前方領域の輝度に依存しない固定照度領域を少なくとも一部に含む。
ランプ制御部1012は、基準配光パターンが形成された個別領域群に形成する部分配光パターンを基準配光パターンの形成下での輝度に基づいて更新し、基準配光パターンを非形成の個別領域群に形成する部分配光パターンを維持する。
つまり、ランプ制御部1012は、複数の個別領域Rを少なくとも第1個別領域群と第2個別領域群とに分けて、第1個別領域群には第1部分配光パターンを形成し、第2個別領域群には第2部分配光パターンを形成する。また、ランプ制御部1012は、基準配光パターンを第1個別領域群と第2個別領域群とにタイミングをずらして定期的に形成する。
そして、ランプ制御部1012は、第1個別領域群に基準配光パターンを形成した場合は、基準配光パターンの形成下での第1個別領域群の輝度に基づいて第1部分配光パターンを更新する。また、この第1部分配光パターンの更新のタイミングでは、第2部分配光パターンは現状のまま維持する。一方、第2個別領域群に基準配光パターンを形成した場合は、基準配光パターンの形成下での第2個別領域群の輝度に基づいて第2部分配光パターンを更新する。また、この第2部分配光パターンの更新のタイミングでは、第1部分配光パターンは現状のまま維持する。したがって、第1部分配光パターンと前記第2部分配光パターンとがサイクルをずらして更新される。
以下、配光制御装置1006が実行する配光制御(ADB制御)について説明する。図10(A)~図10(H)、図11(A)~図11(H)および図12(A)~図12(D)は、配光制御装置1006が実行する配光制御を説明するための模式図である。図10(A)、図10(E)、図11(A)、図11(E)および図12(A)は、撮像装置1004から得られる画像IMGである。図10(B)、図10(F)、図11(B)、図11(F)および図12(B)は、配光制御装置1006によって生成される遮光パターンPTNbである。図10(C)、図10(G)、図11(C)、図11(G)および図12(C)は、基準配光パターンPTNaである。図10(D)、図10(H)、図11(D)、図11(H)および図12(D)は、配光制御装置1006が決定した配光パターンPTNである。
ADB制御が開始されると、まずランプ制御部1012は、配光パターンPTN0を形成するよう配光可変ランプ1002を制御する。配光パターンPTN0は、ADB制御の最初に形成するパターンであり、一例として基準配光パターンPTNaが用いられる。ランプ制御部1012は、基準配光パターンPTNaに関する情報を予め保持している。配光パターンPTN0が形成されると、図10(A)に示すように、撮像装置1004によって配光パターンPTN0の形成下にある自車前方の状況を映す画像IMGが得られる。
配光パターンPTN0は、前方領域の輝度に依存しない固定照度のパターンである。例えば配光パターンPTN0は、配光制御の開始前に自車両の走行環境に応じて運転者が選択した、もしくは車両用灯具システム1001が選択した配光パターンで構成される。一例として配光パターンPTN0は、ロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンのいずれかで構成される。
自車両が市街地を走行中であれば、ADB制御が実行されていない間に形成する配光パターンとして、ロービーム用配光パターンが選択されることが多い。この場合、配光パターンPTN0は、ロービーム用配光パターンである。また、自車両が郊外を走行中であれば、ADB制御が実行されていない間に形成する配光パターンとして、ハイビーム用配光パターンが選択されることが多い。この場合、配光パターンPTN0は、ハイビーム用配光パターンである。図10(A)には、配光パターンPTN0としてハイビーム用配光パターンが図示されている。
また、本実施の形態では、複数の個別領域Rが左側個別領域群RL、中央個別領域群RCおよび右側個別領域群RRの3群に分けられる。したがって、配光パターンPTN0は、左側個別領域群RLに重なる左側部分配光パターンPTNLと、中央個別領域群RCに重なる中央部分配光パターンPTNCと、右側個別領域群RRに重なる右側部分配光パターンPTNRとで構成される。
図10(B)に示すように、輝度解析部1008は、配光パターンPTN0の形成下で撮像装置1004が撮像した画像IMGに基づいて、各個別領域Rの輝度を解析する。そして、ランプ制御部1012は、輝度解析部1008の解析結果に基づいて、遮光パターンPTNbを生成する。例えば輝度解析部1008は、画像IMGに輝度値の2値化処理を施す。そして、ランプ制御部1012は、2値化処理が施された画像における各画素の輝度値を反転させることで遮光パターンPTNbを生成する。つまり、ランプ制御部1012は、所定のしきい値よりも輝度の高い個別領域Rに照射する光の照度をしきい値よりも輝度の低い個別領域Rに照射する光の照度よりも下げる配光パターンを決定する。遮光パターンPTNbは、左側部分配光パターンPTNL、中央部分配光パターンPTNCおよび右側部分配光パターンPTNRで構成される。
図10(A)に示す例では、左側個別領域群RLに第1標識1102が存在し、中央個別領域群RCに第2標識1104が存在し、右側個別領域群RRにデリニエータ1106が存在する。配光パターンPTN0が照射された第1標識1102、第2標識1104およびデリニエータ1106は、画像IMGにおいて高輝度体として撮像される。このため、遮光パターンPTNbの左側部分配光パターンPTNLには、第1標識1102に対応する低照度領域1102aが含まれる。また、中央部分配光パターンPTNCには、第2標識1104に対応する低照度領域1104aが含まれる。また、右側部分配光パターンPTNRには、デリニエータ1106に対応する低照度領域1106aが含まれる。低照度領域1102a,1104a,1106aの照度は、例えば0である。
また、物標解析部1010は、配光パターンPTN0の形成下で撮像された画像IMGに基づいて、所定の物標として例えば前方車両の有無を検出する。図10(A)に示す例では前方車両が存在しない。このため、物標解析部1010によって物標は検出されず、図10(C)に示すように、基準配光パターンPTNaの形状は維持される。
基準配光パターンPTNaは、前方領域の輝度に依存しない固定照度領域1014を少なくとも一部に含むパターンである。図10(A)に示す例では自車前方に前方車両が存在しないため、基準配光パターンPTNaは全体が固定照度領域1014で構成される。固定照度領域1014の照度は、例えば基準配光パターンPTNaがハイビーム用配光パターンである場合は、法規で定められるハイビーム用配光パターンの照度に準ずる。また、基準配光パターンPTNaは、左側部分配光パターンPTNL、中央部分配光パターンPTNCおよび右側部分配光パターンPTNRで構成される。
続いて、ランプ制御部1012は、生成した遮光パターンPTNbと基準配光パターンPTNaとに基づいて、図10(D)に示すように、次に形成すべき配光パターンPTN1を決定する。
ランプ制御部1012は、一例として左側部分配光パターンPTNL、中央部分配光パターンPTNC、右側部分配光パターンPTNRの順に、部分配光パターンを更新する。したがって、ランプ制御部1012は、遮光パターンPTNbの左側部分配光パターンPTNLを配光パターンPTN1の左側部分配光パターンPTNLに定める。また、次回の更新対象となる部分配光パターンは、中央部分配光パターンPTNCである。したがって、ランプ制御部1012は、基準配光パターンPTNaの中央部分配光パターンPTNCを配光パターンPTN1の中央部分配光パターンPTNCに定める。配光パターンPTN1の右側部分配光パターンPTNRは、前回形成した配光パターンPTN0の右側部分配光パターンPTRに維持される。以上より、次回形成する配光パターンPTN1は、左側部分配光パターンPTNLが低照度領域1102aを含むパターンとなる。
ランプ制御部1012は、決定した配光パターンPTN1のうち、前回の配光パターンPTN0から維持される右側部分配光パターンPTNRを除く、左側部分配光パターンPTNLおよび中央部分配光パターンPTNCのデータを配光可変ランプ1002に転送する。これにより、図10(E)に示すように、配光パターンPTN1が自車前方に形成される。そして、撮像装置1004によって配光パターンPTN1の形成下にある自車前方の状況を示す画像IMGが生成される。
続いて、図10(F)に示すように、得られた画像IMGに輝度解析部1008が輝度解析を実施す。そして、ランプ制御部1012が遮光パターンPTNbを生成する。左側個別領域群RLに形成される左側部分配光パターンPTNLは、第1標識1102と重なる低照度領域1102aを含む。また、第1標識1102は、自発光体ではない。したがって、得られる画像IMGにおいて、第1標識1102は高輝度体として撮像されない。一方、中央個別領域群RCに形成される中央部分配光パターンPTNCは基準配光パターンPTNaに由来し、右側個別領域群RRに形成される右側部分配光パターンPTNRは配光パターンPTN0に由来する。したがって、第2標識1104およびデリニエータ1106は、画像IMGにおいて高輝度体として撮像される。
このため、生成される遮光パターンPTNbの左側部分配光パターンPTNLには、低照度領域1102aが含まれない。一方、中央部分配光パターンPTNCには、低照度領域1104aが含まれる。また、右側部分配光パターンPTNRには、低照度領域1106aが含まれる。また、物標解析部1010により、配光パターンPTN1の形成下で撮像された画像IMGに基づいて、物標検出が実施される。この結果、図10(G)に示すように、基準配光パターンPTNaが維持される。
続いて、ランプ制御部1012は、生成した遮光パターンPTNbと基準配光パターンPTNaとに基づいて、図10(H)に示すように、次に形成すべき配光パターンPTN2を決定する。中央部分配光パターンPTNCが今回の更新対象であるため、ランプ制御部1012は、遮光パターンPTNbの中央部分配光パターンPTNCを配光パターンPTN2の中央部分配光パターンPTNCに定める。また、次回の更新対象となる部分配光パターンは、右側部分配光パターンPTNRである。したがって、ランプ制御部1012は、基準配光パターンPTNaの右側部分配光パターンPTNRを配光パターンPTN2の右側部分配光パターンPTNRに定める。配光パターンPTN2の左側部分配光パターンPTNLは、前回形成した配光パターンPTN1の左側部分配光パターンPTNLに維持される。以上より、次回形成する配光パターンPTN2は、左側部分配光パターンPTNLが低照度領域1102aを含み、中央部分配光パターンPTNCが低照度領域1104aを含むパターンとなる。
ランプ制御部1012は、決定した配光パターンPTN2のうち、前回の配光パターンPTN1から維持される左側部分配光パターンPTNLを除く、中央部分配光パターンPTNCおよび右側部分配光パターンPTNRのデータを配光可変ランプ1002に転送する。これにより、図11(A)に示すように、配光パターンPTN2が自車前方に形成される。そして、撮像装置1004によって配光パターンPTN2の形成下にある自車前方の状況を示す画像IMGが生成される。
続いて、図11(B)に示すように、輝度解析部1008が画像IMGに輝度解析を実施する。そして、ランプ制御部1012が遮光パターンPTNbを生成する。左側部分配光パターンPTNLは低照度領域1102aを含み、中央部分配光パターンPTNCは低照度領域1104aを含む。そして、第1標識1102および第2標識1104は自発光体ではない。したがって、画像IMGにおいて第1標識1102および第2標識1104は高輝度体として撮像されない。一方、右側部分配光パターンPTNRは基準配光パターンPTNaに由来する。したがって、デリニエータ1106は、画像IMGにおいて高輝度体として撮像される。
このため、生成される遮光パターンPTNbの左側部分配光パターンPTNLには低照度領域1102aが含まれず、中央部分配光パターンPTNCには低照度領域1104aが含まれない。一方、右側部分配光パターンPTNRには、低照度領域1106aが含まれる。また、物標解析部1010により、配光パターンPTN2の形成下で撮像された画像IMGに基づいて、物標検出が実施される。この結果、図11(C)に示すように、基準配光パターンPTNaが維持される。
続いて、ランプ制御部1012は、生成した遮光パターンPTNbと基準配光パターンPTNaとに基づいて、図11(D)に示すように、次に形成すべき配光パターンPTN3を決定する。右側部分配光パターンPTNRが今回の更新対象であるため、ランプ制御部1012は、遮光パターンPTNbの右側部分配光パターンPTNRを配光パターンPTN3の右側部分配光パターンPTNRに定める。また、次回の更新対象となる部分配光パターンは、左側部分配光パターンPTNLである。したがって、ランプ制御部1012は、基準配光パターンPTNaの左側部分配光パターンPTNLを配光パターンPTN3の左側部分配光パターンPTNLに定める。配光パターンPTN3の中央部分配光パターンPTNCは、前回形成した配光パターンPTN2の中央部分配光パターンPTNCに維持される。以上より、次回形成する配光パターンPTN3は、中央部分配光パターンPTNCが低照度領域1104aを含み、右側部分配光パターンPTNRが低照度領域1106aを含むパターンとなる。
ランプ制御部1012は、決定した配光パターンPTN3のうち、前回の配光パターンPTN2から維持される中央部分配光パターンPTNCを除く、左側部分配光パターンPTNLおよび右側部分配光パターンPTNRのデータを配光可変ランプ1002に転送する。これにより、図11(E)に示すように、配光パターンPTN3が自車前方に形成される。そして、撮像装置1004によって配光パターンPTN3の形成下にある自車前方の状況を示す画像IMGが生成される。
続いて、図11(F)に示すように、得られた画像IMGに輝度解析部1008が輝度解析を実行する。そして、ランプ制御部1012が遮光パターンPTNbを生成する。中央部分配光パターンPTNCは低照度領域1104aを含み、右側部分配光パターンPTNRは低照度領域1106aを含む。そして、第2標識1104およびデリニエータ1106は自発光体ではない。したがって、画像IMGにおいて第2標識1104およびデリニエータ1106は高輝度体として撮像されない。一方、左側部分配光パターンPTNLは基準配光パターンPTNaに由来する。したがって、第1標識1102は、画像IMGにおいて高輝度体として撮像される。
このため、生成される遮光パターンPTNbの中央部分配光パターンPTNCには低照度領域1104aが含まれず、右側部分配光パターンPTNRには低照度領域1106aが含まれない。一方、左側部分配光パターンPTNLには、低照度領域1102aが含まれる。また、物標解析部1010により、配光パターンPTN3の形成下で撮像された画像IMGに基づいて、物標検出が実施される。この結果、図11(G)に示すように、基準配光パターンPTNaが維持される。
続いて、ランプ制御部1012は、生成した遮光パターンPTNbと基準配光パターンPTNaとに基づいて、図11(H)に示すように、次に形成すべき配光パターンPTN4を決定する。左側部分配光パターンPTNLが今回の更新対象であるため、ランプ制御部1012は、遮光パターンPTNbの左側部分配光パターンPTNLを配光パターンPTN4の左側部分配光パターンPTNLに定める。また、次回の更新対象となる部分配光パターンは、中央部分配光パターンPTNCである。したがって、ランプ制御部1012は、基準配光パターンPTNaの中央部分配光パターンPTNCを配光パターンPTN4の中央部分配光パターンPTNCに定める。配光パターンPTN4の右側部分配光パターンPTNRは、前回形成した配光パターンPTN3の右側部分配光パターンPTNRに維持される。以上より、次回形成する配光パターンPTN4は、左側部分配光パターンPTNLが低照度領域1102aを含み、右側部分配光パターンPTNRが低照度領域1106aを含むパターンとなる。
ランプ制御部1012は、決定した配光パターンPTN4のうち、前回の配光パターンPTN3から維持される右側部分配光パターンPTNRを除く、左側部分配光パターンPTNLおよび中央部分配光パターンPTNCのデータを配光可変ランプ1002に転送する。これにより、図12(A)に示すように、配光パターンPTN4が自車前方に形成される。そして、撮像装置1004によって配光パターンPTN4の形成下にある自車前方の状況を示す画像IMGが生成される。
続いて、図12(B)に示すように、得られた画像IMGに輝度解析部1008が輝度解析を実施する。そして、ランプ制御部1012が遮光パターンPTNbを生成する。左側部分配光パターンPTNLは低照度領域1102aを含み、右側部分配光パターンPTNRは低照度領域1106aを含む。したがって、画像IMGにおいて第1標識1102およびデリニエータ1106は高輝度体として撮像されない。一方、中央部分配光パターンPTNCは基準配光パターンPTNaに由来する。したがって、第2標識1104は、画像IMGにおいて高輝度体として撮像される。
このため、生成される遮光パターンPTNbの左側部分配光パターンPTNLには低照度領域1102aが含まれず、右側部分配光パターンPTNRには低照度領域1106aが含まれない。一方、中央部分配光パターンPTNCには、低照度領域1104aが含まれる。また、物標解析部1010により、配光パターンPTN4の形成下で撮像された画像IMGに基づいて、物標検出が実施される。この結果、図12(C)に示すように、基準配光パターンPTNaが維持される。
続いて、ランプ制御部1012は、生成した遮光パターンPTNbと基準配光パターンPTNaとに基づいて、図12(D)に示すように、次に形成すべき配光パターンPTN5を決定する。ここで決定される配光パターンPTN5は、図10(H)に示す配光パターンPTN2と同じである(第1標識1102、第2標識1104、デリニエータ1106の配置が同じ場合)。つまり、中央部分配光パターンPTNCが今回の更新対象であるため、ランプ制御部1012は、遮光パターンPTNbの中央部分配光パターンPTNCを配光パターンPTN5の中央部分配光パターンPTNCに定める。また、次回の更新対象となる部分配光パターンは、右側部分配光パターンPTNRである。したがって、ランプ制御部1012は、基準配光パターンPTNaの右側部分配光パターンPTNRを配光パターンPTN5の右側部分配光パターンPTNRに定める。配光パターンPTN5の左側部分配光パターンPTNLは、前回形成した配光パターンPTN4の左側部分配光パターンPTNLに維持される。以上より、次回形成する配光パターンPTN5は、配光パターンPTN2と同じパターンとなる。
ランプ制御部1012は、決定した配光パターンPTN5のうち、前回の配光パターンPTN4から維持される左側部分配光パターンPTNLを除く、中央部分配光パターンPTNCおよび右側部分配光パターンPTNRのデータを配光可変ランプ1002に転送する。これにより、図11(A)に示すように、配光パターンPTN5(配光パターンPTN2)が自車前方に形成される。以降は、図11(A)~図11(H)および図12(A)~図12(D)に示す制御が繰り返される。
自車前方に自発光体などの所定の物標が存在する場合、ランプ制御部1012は、物標解析部1010の検出結果に基づいて、当該物標の存在位置に応じて定まる特定個別領域R1に対して特定照度値を定める。そして、ランプ制御部1012は、特定照度値で構成される特定照度領域1108を含めた基準配光パターンPTNaを形成する。以下、所定の物標が存在する場合における配光制御について説明する。なお、以下の説明では、一例として前方車両1110を所定の物標とする。
図13(A)~図13(H)、図14(A)~図14(H)および図15(A)~図15(D)は、配光制御装置1006が実行する配光制御を説明するための模式図である。図13(A)、図13(E)、図14(A)、図14(E)および図15(A)は、撮像装置1004から得られる画像IMGである。図13(B)、図13(F)、図14(B)、図14(F)および図15(B)は、配光制御装置1006によって生成される遮光パターンPTNbである。図13(C)、図13(G)、図14(C)、図14(G)および図15(C)は、基準配光パターンPTNaである。図13(D)、図13(H)、図14(D)、図14(H)および図15(D)は、配光制御装置1006が決定した配光パターンPTNである。
ADB制御が開始されると、まずランプ制御部1012は、配光パターンPTN0を形成するよう配光可変ランプ1002を制御する。配光パターンPTN0としては、一例として基準配光パターンPTNaが用いられる。この段階では前方車両1110を未検出であるため、基準配光パターンPTNaは特定照度領域1108を含まない。配光パターンPTN0が形成されると、図13(A)に示すように、撮像装置1004によって配光パターンPTN0の形成下にある自車前方の状況を映す画像IMGが得られる。図13(A)には、配光パターンPTN0の一例としてハイビーム用配光パターンが図示されている。
図13(B)に示すように、輝度解析部1008は、配光パターンPTN0の形成下で撮像装置1004が撮像した画像IMGに基づいて、各個別領域Rの輝度を解析する。ランプ制御部1012は、輝度解析部1008の解析結果に基づいて遮光パターンPTNbを生成する。上述のように、輝度解析には画像IMGの輝度値の2値化処理が含まれ、パターン形成には2値化画像の輝度反転処理が含まれる。
図13(A)に示す例では、左側個別領域群RLに第1標識1102が存在し、右側個別領域群RRにデリニエータ1106が存在する。また、前方に2台の前方車両1110が存在する。左側の前方車両1110は、自車両と同じ方向に進む先行車であり、全体が中央個別領域群RCに含まれる。右側の前方車両1110は、自車両とは反対方向に進む対向車であり、中央個別領域群RCと右側個別領域群RRとにまたがって存在する。
配光パターンPTN0が照射された第1標識1102およびデリニエータ1106は、画像IMGにおいて高輝度体として撮像される。また、前方車両1110の灯具、つまり先行車のヘッドランプ、および対向車のテールランプあるいはストップランプは、それ自体が発光する光点であるため、画像IMGにおいて高輝度体として撮像される。よって、遮光パターンPTNbの左側部分配光パターンPTNLには、第1標識1102に対応する低照度領域1102aが含まれる。また、中央部分配光パターンPTNCには、前方車両1110の光点に対応する低照度領域1110aが含まれる。また、右側部分配光パターンPTNRには、前方車両1110の光点に対応する低照度領域1110aと、デリニエータ1106に対応する低照度領域1106aとが含まれる。低照度領域1102a,1106a,1110aの照度は、例えば0である。
また、物標解析部1010は、配光パターンPTN0の形成下で撮像された画像IMGに基づいて、所定の物標として前方車両1110を検出する。ランプ制御部1012は、物標解析部1010の解析結果に基づいて特定個別領域R1を定める。例えば、ランプ制御部1012は、前方車両1110の灯具に由来する2つの光点間の水平方向距離aに対して、予め定められた所定比率の鉛直方向距離bを選択する。そして、横a×縦bの範囲と重なる個別領域Rを特定個別領域R1と定める。特定個別領域R1の下端には、前方車両1110の光点と重なる個別領域Rが含まれる。また特定個別領域R1には、前方車両1110の運転者と重なる個別領域Rが含まれる。
そして、ランプ制御部1012は、基準配光パターンPTNaにおいて特定個別領域R1と重なる部分に対し、特定照度値を定める。所定の物標が前方車両1110である場合、特定個別領域R1に対して例えば特定照度値「0」が設定される。また、ランプ制御部1012は、基準配光パターンPTNaにおいて特定個別領域R1を除く個別領域Rと重なる部分に対して、前方領域の輝度に依存しない照度値、例えばハイビーム用配光パターンに準ずる照度値を定める。これにより図13(C)に示すように、基準配光パターンPTNaは、特定照度値で構成される特定照度領域1108と、前方領域の輝度に依存しない照度値で構成される固定照度領域1014とを含む基準配光パターンPTNaに更新される。
続いて、ランプ制御部1012は、生成した遮光パターンPTNbと、更新した基準配光パターンPTNaとに基づいて、図13(D)に示すように、次に形成すべき配光パターンPTN1を決定する。
ランプ制御部1012は、一例として左側部分配光パターンPTNL、中央部分配光パターンPTNC、右側部分配光パターンPTNRの順に、部分配光パターンを更新する。したがって、ランプ制御部1012は、遮光パターンPTNbの左側部分配光パターンPTNLと基準配光パターンPTNaの左側部分配光パターンPTNLとをor演算等により合成して得られるパターンを、配光パターンPTN1の左側部分配光パターンPTNLに定める。当該合成により、基準配光パターンPTNaの左側部分配光パターンPTNLに特定照度領域1108が含まれる場合に、特定照度領域1108を配光パターンPTNに含めることができる。なお、図10(A)~図12(D)に基づいて説明した配光制御においても、部分配光パターンの更新時に、更新対象となる部分配光パターンと基準配光パターンとを合成してもよい。
また、次回の更新対象となる部分配光パターンは、中央部分配光パターンPTNCである。したがって、ランプ制御部1012は、基準配光パターンPTNaの中央部分配光パターンPTNCを配光パターンPTN1の中央部分配光パターンPTNCに定める。配光パターンPTN1の右側部分配光パターンPTNRは、前回形成した配光パターンPTN0の右側部分配光パターンPTNRに維持される。以上より、次回形成する配光パターンPTN1は、左側部分配光パターンPTNLが低照度領域1102aを含み、中央部分配光パターンPTNCが特定照度領域1108を含むパターンとなる。
ランプ制御部1012は、決定した配光パターンPTN1のうち、前回の配光パターンPTN0から維持される右側部分配光パターンPTNRを除く、左側部分配光パターンPTNLおよび中央部分配光パターンPTNCのデータを配光可変ランプ1002に転送する。これにより、図13(E)に示すように、配光パターンPTN1が自車前方に形成される。そして、撮像装置1004によって配光パターンPTN1の形成下にある自車前方の状況を示す画像IMGが生成される。
続いて、図13(F)に示すように、得られた画像IMGに輝度解析部1008が輝度解析を実施する。そして、ランプ制御部1012が遮光パターンPTNbを生成する。左側個別領域群RLに形成される左側部分配光パターンPTNLは、第1標識1102と重なる低照度領域1102aを含む。したがって、得られる画像IMGにおいて、第1標識1102は高輝度体として撮像されない。一方、右側個別領域群RRに形成される右側部分配光パターンPTNRは、配光パターンPTN0に由来する。したがって、デリニエータ1106は、画像IMGにおいて高輝度体として撮像される。また、中央個別領域群RCおよび右側個別領域群RRに存在する前方車両1110の灯具に由来する光点は、照射される配光パターンの形状にかかわらず画像IMGにおいて高輝度体として撮像される。
このため、生成される遮光パターンPTNbの左側部分配光パターンPTNLには、低照度領域1102aが含まれない。一方、右側部分配光パターンPTNRには、低照度領域1106aが含まれる。また、中央部分配光パターンPTNCおよび右側部分配光パターンPTNRには、低照度領域1110aが含まれる。
また、物標解析部1010は、配光パターンPTN1の形成下で撮像された画像IMGに基づいて前方車両1110を検出する。ランプ制御部1012は、物標解析部1010の解析結果に基づいて特定個別領域R1を定め、図13(G)に示すように基準配光パターンPTNaを更新する。これにより、前方車両1110の移動に対して特定照度領域1108を追従させることができる。
続いて、ランプ制御部1012は、生成した遮光パターンPTNbと更新した基準配光パターンPTNaとに基づいて、図13(H)に示すように、次に形成すべき配光パターンPTN2を決定する。中央部分配光パターンPTNCが今回の更新対象であるため、ランプ制御部1012は、遮光パターンPTNbの中央部分配光パターンPTNCと基準配光パターンPTNaの中央部分配光パターンPTNCとを合成して得られるパターンを配光パターンPTN2の中央部分配光パターンPTNCに定める。
また、次回の更新対象となる部分配光パターンは、右側部分配光パターンPTNRである。したがって、ランプ制御部1012は、基準配光パターンPTNaの右側部分配光パターンPTNRを配光パターンPTN2の右側部分配光パターンPTNRに定める。配光パターンPTN2の左側部分配光パターンPTNLは、前回形成した配光パターンPTN1の左側部分配光パターンPTNLに維持される。以上より、次回形成する配光パターンPTN2は、左側部分配光パターンPTNLが低照度領域1102aを含み、中央部分配光パターンPTNCおよび右側部分配光パターンPTNRが特定照度領域1108を含むパターンとなる。
ランプ制御部1012は、決定した配光パターンPTN2のうち、前回の配光パターンPTN1から維持される左側部分配光パターンPTNLを除く、中央部分配光パターンPTNCおよび右側部分配光パターンPTNRのデータを配光可変ランプ1002に転送する。これにより、図14(A)に示すように、配光パターンPTN2が自車前方に形成される。そして、撮像装置1004によって配光パターンPTN2の形成下にある自車前方の状況を示す画像IMGが生成される。
続いて、図14(B)に示すように、得られた画像IMGに輝度解析部1008が輝度解析を実施する。そして、ランプ制御部1012が遮光パターンPTNbを生成する。左側部分配光パターンPTNLは低照度領域1102aを含む。したがって、画像IMGにおいて第1標識1102は高輝度体として撮像されない。一方、右側部分配光パターンPTNRは基準配光パターンPTNaに由来する。したがって、デリニエータ1106は、画像IMGにおいて高輝度体として撮像される。また、中央個別領域群RCおよび右側個別領域群RRに存在する前方車両1110の灯具に由来する光点は、画像IMGにおいて高輝度体として撮像される。
このため、生成される遮光パターンPTNbの左側部分配光パターンPTNLには低照度領域1102aが含まれない。一方、右側部分配光パターンPTNRには、低照度領域1106aが含まれる。また、中央部分配光パターンPTNCおよび右側部分配光パターンPTNRには、低照度領域1110aが含まれる。
また、物標解析部1010は、配光パターンPTN2の形成下で撮像された画像IMGに基づいて前方車両1110を検出する。ランプ制御部1012は、物標解析部1010の解析結果に基づいて特定個別領域R1を定め、図14(C)に示すように基準配光パターンPTNaを更新する。
続いて、ランプ制御部1012は、生成した遮光パターンPTNbと更新した基準配光パターンPTNaとに基づいて、図14(D)に示すように、次に形成すべき配光パターンPTN3を決定する。右側部分配光パターンPTNRが今回の更新対象であるため、ランプ制御部1012は、遮光パターンPTNbの右側部分配光パターンPTNRと基準配光パターンPTNaの右側部分配光パターンPTNRとを合成して得られるパターンを配光パターンPTN3の右側部分配光パターンPTNRに定める。
また、次回の更新対象となる部分配光パターンは、左側部分配光パターンPTNLである。したがって、ランプ制御部1012は、基準配光パターンPTNaの左側部分配光パターンPTNLを配光パターンPTN3の左側部分配光パターンPTNLに定める。配光パターンPTN3の中央部分配光パターンPTNCは、前回形成した配光パターンPTN2の中央部分配光パターンPTNCに維持される。以上より、次回形成する配光パターンPTN3は、中央部分配光パターンPTNCが特定照度領域1108を含み、右側部分配光パターンPTNRが低照度領域1106aおよび特定照度領域1108を含むパターンとなる。
ランプ制御部1012は、決定した配光パターンPTN3のうち、前回の配光パターンPTN2から維持される中央部分配光パターンPTNCを除く、左側部分配光パターンPTNLおよび右側部分配光パターンPTNRのデータを配光可変ランプ1002に転送する。これにより、図14(E)に示すように、配光パターンPTN3が自車前方に形成される。そして、撮像装置1004によって配光パターンPTN3の形成下にある自車前方の状況を示す画像IMGが生成される。
続いて、図14(F)に示すように、得られた画像IMGに輝度解析部1008が輝度解析を実施する。そして、ランプ制御部1012が遮光パターンPTNbを生成する。右側部分配光パターンPTNRは低照度領域1106aを含む。したがって、画像IMGにおいてデリニエータ1106は高輝度体として撮像されない。一方、左側部分配光パターンPTNLは基準配光パターンPTNaに由来する。したがって、第1標識1102は、画像IMGにおいて高輝度体として撮像される。また、中央個別領域群RCおよび右側個別領域群RRに存在する前方車両1110の灯具に由来する光点は、画像IMGにおいて高輝度体として撮像される。
このため、生成される遮光パターンPTNbの右側部分配光パターンPTNRには低照度領域1106aが含まれない。一方、左側部分配光パターンPTNLには、低照度領域1102aが含まれる。また、中央部分配光パターンPTNCおよび右側部分配光パターンPTNRには、低照度領域1110aが含まれる。
また、物標解析部1010は、配光パターンPTN3の形成下で撮像された画像IMGに基づいて前方車両1110を検出する。ランプ制御部1012は、物標解析部1010の解析結果に基づいて特定個別領域R1を定め、図14(G)に示すように基準配光パターンPTNaを更新する。これにより、前方車両1110の移動に対して特定照度領域1108を追従させることができる。
続いて、ランプ制御部1012は、生成した遮光パターンPTNbと更新した基準配光パターンPTNaとに基づいて、図14(H)に示すように、次に形成すべき配光パターンPTN4を決定する。左側部分配光パターンPTNLが今回の更新対象であるため、ランプ制御部1012は、遮光パターンPTNbの左側部分配光パターンPTNLと基準配光パターンPTNaの左側部分配光パターンPTNLとを合成して得られるパターンを配光パターンPTN4の左側部分配光パターンPTNLに定める。
また、次回の更新対象となる部分配光パターンは、中央部分配光パターンPTNCである。したがって、ランプ制御部1012は、基準配光パターンPTNaの中央部分配光パターンPTNCを配光パターンPTN4の中央部分配光パターンPTNCに定める。配光パターンPTN4の右側部分配光パターンPTNRは、前回形成した配光パターンPTN3の右側部分配光パターンPTNRに維持される。以上より、次回形成する配光パターンPTN4は、左側部分配光パターンPTNLが低照度領域1102aを含み、中央部分配光パターンPTNCが特定照度領域1108を含み、右側部分配光パターンPTNRが低照度領域1106aおよび特定照度領域1108を含むパターンとなる。
ランプ制御部1012は、決定した配光パターンPTN4のうち、前回の配光パターンPTN3から維持される右側部分配光パターンPTNRを除く、左側部分配光パターンPTNLおよび中央部分配光パターンPTNCのデータを配光可変ランプ1002に転送する。これにより、図15(A)に示すように、配光パターンPTN4が自車前方に形成される。そして、撮像装置1004によって配光パターンPTN4の形成下にある自車前方の状況を示す画像IMGが生成される。
続いて、図15(B)に示すように、得られた画像IMGに輝度解析部1008が輝度解析を実施する。そして、ランプ制御部1012が遮光パターンPTNbを生成する。左側部分配光パターンPTNLは低照度領域1102aを含み、右側部分配光パターンPTNRは低照度領域1106aを含む。したがって、画像IMGにおいて第1標識1102およびデリニエータ1106は高輝度体として撮像されない。また、中央個別領域群RCおよび右側個別領域群RRに存在する前方車両1110の灯具に由来する光点は、画像IMGにおいて高輝度体として撮像される。
このため、生成される遮光パターンPTNbの左側部分配光パターンPTNLには低照度領域1102aが含まれず、右側部分配光パターンPTNRには低照度領域1106aが含まれない。一方、中央部分配光パターンPTNCおよび右側部分配光パターンPTNRには、低照度領域1110aが含まれる。
また、物標解析部1010は、配光パターンPTN4の形成下で撮像された画像IMGに基づいて前方車両1110を検出する。ランプ制御部1012は、物標解析部1010の解析結果に基づいて特定個別領域R1を定め、図15(C)に示すように基準配光パターンPTNaを更新する。
続いて、ランプ制御部1012は、生成した遮光パターンPTNbと更新した基準配光パターンPTNaとに基づいて、図15(D)に示すように、次に形成すべき配光パターンPTN5を決定する。ここで決定される配光パターンPTN5は、図13(H)に示す配光パターンPTN2と同じである(第1標識1102、デリニエータ1106、前方車両1110の配置が同じ場合)。つまり、中央部分配光パターンPTNCが今回の更新対象であるため、ランプ制御部1012は、遮光パターンPTNbの中央部分配光パターンPTNCと基準配光パターンPTNaの中央部分配光パターンPTNCとを合成して得られるパターンを配光パターンPTN5の中央部分配光パターンPTNCに定める。
また、次回の更新対象となる部分配光パターンは、右側部分配光パターンPTNRである。したがって、ランプ制御部1012は、基準配光パターンPTNaの右側部分配光パターンPTNRを配光パターンPTN5の右側部分配光パターンPTNRに定める。配光パターンPTN5の左側部分配光パターンPTNLは、前回形成した配光パターンPTN4の左側部分配光パターンPTNLに維持される。以上より、次回形成する配光パターンPTN5は、配光パターンPTN2と同じパターンとなる。
ランプ制御部1012は、決定した配光パターンPTN5のうち、前回の配光パターンPTN4から維持される左側部分配光パターンPTNLを除く、中央部分配光パターンPTNCおよび右側部分配光パターンPTNRのデータを配光可変ランプ1002に転送する。これにより、図14(A)に示すように、配光パターンPTN5(配光パターンPTN2)が自車前方に形成される。以降は、図14(A)~図14(H)および図15(A)~図15(D)に示す制御が繰り返される。
上述の説明において、左側個別領域群RL、中央個別領域群RCおよび右側個別領域群RRのうちの任意の2つが第1個別領域群と第2個別領域群に相当する。また、左側部分配光パターンPTNL、中央部分配光パターンPTNCおよび右側部分配光パターンPTNRの任意の2つが第1部分配光パターンおよび第2部分配光パターンに相当する。なお、複数の個別領域Rの分割数は3つに限らず、2つであっても4つ以上であってもよい。
上述の配光制御において、第1標識1102等の反射物は、光の照射と非照射が所定のタイミングで繰り返される。このように、各反射物に間欠的に光が照射されることで、継続的に光が照射される場合に比べて、反射光の強度を弱めることができる。また、前方車両1110には継続的に特定照度領域1108が形成される。したがって、前方車両1110の運転者に与えるグレアを抑制することができる。
反射物の減光について、具体的には、3つの個別領域群に対する配光パターンが順番に更新される。このため、更新のサイクルにおいて各個別領域群には3回に1回の割合で基準配光パターンPTNaが照射される。したがって、第1標識1102等の反射物は、3回に2回の割合で遮光される。よって、約66%の減光率が得られる。この減光率は、更新サイクル中に次回の更新を待機するステップを含めることで、調整することができる。
例えば、更新サイクルの1ステップ目では、左側部分配光パターンPTNLの更新とともに、2ステップ目での中央部分配光パターンPTNCの更新のために中央個別領域群RCに基準配光パターンPTNaが照射される。2ステップ目では、中央部分配光パターンPTNCの更新とともに、3ステップ目での右側部分配光パターンPTNRの更新のために右側個別領域群RRに基準配光パターンPTNaが照射される。
3ステップ目では、右側部分配光パターンPTNRは更新される。しかしながら、4ステップ目での更新のための左側個別領域群RLへの基準配光パターンPTNaの照射は行われず、左側個別領域群RLに対しては2ステップ目と同じ左側部分配光パターンPTNLが照射される。そして、5ステップ目で左側個別領域群RLに基準配光パターンPTNaが照射され、中央個別領域群RCおよび右側個別領域群RRには4ステップ目と同じ中央部分配光パターンPTNCおよび右側部分配光パターンPTNRが照射される。これにより、各反射物は4回に3回の割合で減光されることになるため、減光率を75%に上げることができる。
図16は、配光制御装置1006が実行する配光制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、例えば図示しないライトスイッチによって配光制御の実行指示がなされ、且つイグニッションがオンのときに所定のタイミングで繰り返し実行される。
配光制御装置1006は、最初の配光パターンPTNの形成タイミングにあるか判断する(S1101)。最初の配光パターンPTNの形成であるか否かは、例えば後述する更新フラグの有無に基づいて判断することができる。最初の配光パターンPTNの形成タイミングである場合(S1101のY)、配光制御装置1006は、基準配光パターンPTNaを形成するよう配光可変ランプ1002を制御する(S1102)。そして、配光制御装置1006は、撮像装置1004から画像データを取得する(S1103)。最初の配光パターンPTNの形成タイミングでない場合(S1101のN)、既に配光パターンPTNが形成されていることを意味するため、配光制御装置1006は、ステップS1103に移行する。
配光制御装置1006は、画像データに基づいて物標を検出し、検出結果に基づいて基準配光パターンPTNaを更新する(S1104)。続いて、配光制御装置1006は、前回のルーチンにおける配光パターンの更新が右側部分配光パターンPTNRの更新であったか判断する(S1105)。右側部分配光パターンPTNRの更新であったか否かは、例えば右側部分配光パターンPTNRの更新フラグの有無に基づいて判断することができる。前回の更新が右側部分配光パターンPTNRであった場合(S1105のY)、配光制御装置1006は、左側部分配光パターンPTNLを更新するとともに、中央部分配光パターンPTNCを基準配光パターンPTNaとする(S1106)。配光制御装置1006は、ステップS1106で決定した配光パターンPTNを形成し(S1107)、左側部分配光パターンPTNLの更新フラグを生成してメモリに保持し、既存の更新フラグを削除して本ルーチンを終了する。なお、更新フラグは、配光制御の停止にともなって消去される。
前回の更新が右側部分配光パターンPTNRでなかった場合(S1105のN)、配光制御装置1006は、前回のルーチンにおける配光パターンの更新が左側部分配光パターンPTNLの更新であったか判断する(S1108)。左側部分配光パターンPTNLの更新であったか否かは、例えば左側部分配光パターンPTNLの更新フラグの有無に基づいて判断することができる。前回の更新が左側部分配光パターンPTNLであった場合(S1108のY)、配光制御装置1006は、中央部分配光パターンPTNCを更新するとともに、右側部分配光パターンPTNRを基準配光パターンPTNaとする(S1109)。配光制御装置1006は、ステップS1109で決定した配光パターンPTNを形成し(S1107)、中央部分配光パターンPTNCの更新フラグを生成してメモリに保持し、既存の更新フラグを削除して本ルーチンを終了する。
前回の更新が左側部分配光パターンPTNLでなかった場合(S1108のN)、この場合は更新対象が右側部分配光パターンPTNRであることを意味するため、配光制御装置1006は、右側部分配光パターンPTNRを更新するとともに、左側部分配光パターンPTNLを基準配光パターンPTNaとする(S1110)。配光制御装置1006は、ステップS1110で決定した配光パターンPTNを形成し(S1107)、右側部分配光パターンPTNRの更新フラグを生成してメモリに保持し、既存の更新フラグを削除して本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施の形態に係る配光制御装置1006は、撮像装置1004から得られる情報に基づいて自車前方に並ぶ複数の個別領域Rそれぞれの輝度を解析する輝度解析部1008と、輝度解析部1008の解析結果に基づいて各個別領域Rに照射する光の照度を定めて前方領域に形成する配光パターンPTNを決定し、決定した配光パターンPTNを形成するよう配光可変ランプ1002を制御するランプ制御部1012と、を備える。ランプ制御部1012は、複数の個別領域Rに含まれる第1個別領域群と第2個別領域群とに、前方領域の輝度に依存しない固定照度領域1014を少なくとも一部に含む基準配光パターンPTNaをタイミングをずらして定期的に形成し、基準配光パターンPTNaが形成された個別領域群に形成する部分配光パターンを基準配光パターンPTNaの形成下での輝度に基づいて更新し、基準配光パターンPTNaを非形成の個別領域群に形成する部分配光パターンを維持する。
また、本実施の形態に係る車両用灯具システム1001は、強度分布が可変である可視光ビームL1を前方領域に照射可能な配光可変ランプ1002と、撮像装置1004と、本実施の形態の配光制御装置1006と、を備える。
このように、本実施の形態では配光パターンPTNを切り替える際に、配光パターンPTNの一部のみを切り替えている。つまり、配光パターンPTNを部分的に更新している。これにより、配光パターンPTNの全体を切り替える場合に比べて、配光パターンPTNの切り替え時にランプ制御部1012から配光可変ランプ1002へ送るデータ量を減らすことができる。よって、コストの増加を抑えながら配光パターンPTNの切り替え速度を上げることができる。この結果、ADB制御での配光パターンの高速切り替えを実現できる。
また、配光制御装置1006は、各個別領域群に対して基準配光パターンPTNaを定期的に形成し、基準配光パターンPTNaの形成下で得られる画像データに基づいて配光パターンPTNを決定する。これにより、撮像装置1004の画角と配光可変ランプ1002の光出射角にずれがあったとしても、形成すべき配光パターンPTNと実際に形成する配光パターンPTNとの乖離の進行を抑制することができる。よって、配光パターンPTNの形成精度の低下を抑制することができる。また、撮像装置1004と配光可変ランプ1002とを物理的に高精度に位置合わせすることなく、また、画像データの演算処理により補正を施すことなく、配光パターンPTNの形成精度の低下を抑制することができる。したがって、本実施の形態によれば、車両用灯具システム1001の構成の複雑化を抑制しながら配光パターンPTNの形成精度を維持することができる。
また、ランプ制御部1012は、所定のしきい値よりも輝度の高い個別領域Rに照射する光の照度をしきい値よりも輝度の低い個別領域Rに照射する光の照度よりも下げる。これにより、自車前方の反射物からの光によって運転者がグレアを受けることを抑制することができる。
また、配光制御装置1006は、撮像装置1004から得られる情報に基づいて自車前方に存在する所定の物標を検出する物標解析部1010を備える。ランプ制御部1012は、物標の存在位置に応じて定まる特定個別領域R1に対して特定照度値を定め、特定照度値で構成される特定照度領域1108を含めた基準配光パターンPTNaを形成する。これにより、基準配光パターンPTNaの形成下においても、物標に対して特定照度値の光を照射することができる。したがって、例えば物標が前方車両1110である場合には、基準配光パターンPTNaの形成によって前方車両1110の運転者に与えるグレアを低減することができる。
以上、本発明の実施の形態2について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
以下の態様も本発明に含めることができる。
車両の前方領域を撮像する撮像装置(1004)から得られる情報に基づいて、強度分布が可変である可視光ビーム(L1)を前方領域に照射可能な配光可変ランプ(1002)を制御する配光制御方法であって、
自車前方に並ぶ複数の個別領域(R)に含まれる第1個別領域群と第2個別領域群とに、前方領域の輝度に依存しない基準配光パターン(PTNa)をタイミングをずらして定期的に形成し、
基準配光パターン(PTNa)が形成された個別領域群に形成する部分配光パターンを基準配光パターン(PTNa)の形成下での輝度に基づいて更新し、基準配光パターン(PTNa)を非形成の個別領域群に形成する部分配光パターンを維持することを含む配光制御方法。
(実施の形態3)
図17は、実施の形態3に係る車両用灯具システムのブロック図である。図17では、車両用灯具システム2001の構成要素の一部を機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックは、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
車両用灯具システム2001は、配光可変ランプ2002と、赤外照明2004と、撮像装置2006と、配光制御装置2008と、を備える。これらは全て同じ筐体に内蔵されていてもよいし、いくつかの部材は筐体の外部、言い換えれば車両側に設けられてもよい。
配光可変ランプ2002は、強度分布が可変である可視光ビームL1を車両の前方領域に照射可能な光源ユニットである。配光可変ランプ2002は、自車前方に並ぶ複数の個別領域それぞれに照射する光の光度を独立に調節可能である。配光可変ランプ2002は、配光制御装置2008から配光パターンPTNに関するデータを受け、配光パターンPTNに応じた強度分布を有する可視光ビームL1を出射する。これにより、車両前方に配光パターンPTNが形成される。配光パターンPTNは、配光可変ランプ2002が自車前方の仮想鉛直スクリーン2900上に形成する照射パターン2902の2次元の照度分布と把握される。
配光可変ランプ2002の構成は特に限定されず、例えばマトリクス状に配列された複数の光源と、各光源を独立に駆動して点灯させる点灯回路とを含む。光源の好ましい例としては、LED(発光ダイオード)、LD(レーザーダイオード)、有機または無機EL(エレクトロルミネセンス)等の半導体光源が挙げられる。各個別領域と各光源とが対応付けられて、各光源から各個別領域に対して個別に光が照射される。
なお、配光可変ランプ2002は、配光パターンPTNに応じた照度分布を形成するために、たとえばDMD(Digital Mirror Device)や液晶デバイス等のマトリクス型のパターン形成デバイスや、光源光で自車前方を走査するスキャン光学型のパターン形成デバイスを含んでもよい。配光可変ランプ2002の分解能(解像度)は、例えば1000~130万ピクセルである。
赤外照明2004は、赤外線L22を車両の前方領域に照射可能な光源ユニットである。赤外線L22は、近赤外であってもよいし、より長波長の光であってもよい。赤外照明2004は、所定の赤外線パターンに応じた強度分布を有する赤外線L22を出射する。本実施の形態の赤外照明2004は、後述する赤外線撮像部2012の撮像範囲全体を照らす、全体が均等な照度の赤外線パターンを形成する。赤外線パターンの形状は固定であってもよい。また、赤外照明2004は、継続的に赤外線L22を照射する。赤外照明2004の構成は特に限定されず、たとえば、LD(レーザダイオード)やLED(発光ダイオード)などの半導体光源と、半導体光源を駆動して点灯させる点灯回路と、を含み得る。
撮像装置2006は、可視光撮像部2010と、赤外線撮像部2012と、を有する。可視光撮像部2010は、可視光領域に感度を有し、車両の前方領域を撮像する。可視光撮像部2010は、車両前方の物体による可視光ビームL1の反射光L3を撮像する。可視光撮像部2010は、赤外線に対して不感である。可視光撮像部2010が取得した可視光画像IMG1は、配光制御装置2008に送られる。
赤外線撮像部2012は、赤外線領域に感度を有し、車両の前方領域を撮像する。赤外線撮像部2012は、車両前方の物体による赤外線L22の反射光L4を撮像する。赤外線撮像部2012は、少なくとも赤外線L22の波長域に感度を有していればよい。赤外線撮像部2012が取得した赤外線画像IMG2は、配光制御装置2008に送られる。
本実施の形態では、可視光撮像部2010は可視光カメラで構成され、赤外線撮像部2012は、可視光カメラとは別体の赤外線カメラで構成される。しかしながら、この構成に限らず、例えば1つのカメラのイメージセンサにおいて、可視光透過フィルタを設けた一部の撮像素子で可視光撮像部2010を構成し、赤外線透過フィルタを設けた他の一部の撮像素子で赤外線撮像部2012を構成してもよい。
配光制御装置2008は、撮像装置2006から得られる可視光画像IMG1および赤外線画像IMG2に基づいて配光可変ランプ2002を制御し、配光パターンPTNを動的、適応的に制御するADB制御を実行する。配光制御装置2008は、デジタルプロセッサで構成することができ、例えばCPUを含むマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified IC)などで構成してもよい。
配光制御装置2008は、パターン決定部2014と、ランプ制御部2016と、を備える。パターン決定部2014は、可視光撮像部2010から得られる可視光画像IMG1、および赤外線撮像部2012から得られる赤外線画像IMG2に基づいて、配光パターンPTNを決定する。ランプ制御部2016は、配光パターンPTNを車両の前方領域に形成するよう配光可変ランプ2002を制御する。例えば、配光可変ランプ2002がDMDを含む場合、ランプ制御部2016は光源の点消灯と、DMDを構成する各ミラー素子のオン/オフ切り替えとを制御する。これにより、自車前方に配光パターンPTNが形成される。各部は、自身を構成する集積回路が、メモリに保持されたプログラムを実行することで動作する。以下、配光制御装置2008が有する各部の動作を説明する。
図18(A)~図18(B)、図19(A)~図19(E)および図20(A)~図20(E)は、配光制御装置2008の動作を説明するための模式図である。図18(A)、図19(A)および図20(A)は、可視光撮像部2010から得られる可視光画像IMG1である。図19(B)および図20(B)は、パターン決定部2014によって生成される第1前駆パターンPTN2aである。図19(C)および図20(C)は、赤外線撮像部2012から得られる赤外線画像IMG2である。図19(D)および図20(D)は、パターン決定部2014によって生成される第2前駆パターンPTN2bである。図18(B)、図19(E)および図20(E)は、パターン決定部2014によって生成される配光パターンPTNである。
配光制御装置2008は、配光制御(ADB制御)を開始すると、まず開始処理を実行する。開始処理では、ランプ制御部2016が基準配光パターンPTN20を形成するよう配光可変ランプ2002を制御する。基準配光パターンPTN20は、前方領域の輝度に依存しない固定照度のパターンである。ランプ制御部2016は、基準配光パターンPTN20に関する情報を予め保持している。
例えば基準配光パターンPTN20は、配光制御の開始前に自車両の走行環境に応じて運転者が選択していた、もしくは車両用灯具システム2001が選択していた配光パターンで構成される。一例として基準配光パターンPTN20は、ロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンのいずれかで構成される。自車両が市街地を走行中であれば、配光制御が実行されていない間に形成する配光パターンとして、ロービーム用配光パターンが選択されることが多い。この場合、基準配光パターンPTN20は、ロービーム用配光パターンである。また、自車両が郊外を走行中であれば、配光制御が実行されていない間に形成する配光パターンとして、ハイビーム用配光パターンが選択されることが多い。この場合、基準配光パターンPTN20は、ハイビーム用配光パターンである。図18(A)には、基準配光パターンPTN20としてハイビーム用配光パターンが図示されている。
基準配光パターンPTN20が形成されると、図18(A)に示すように、可視光撮像部2010によって開始配光パターンPTN20の形成下にある自車前方の状況を映す可視光画像IMG1が生成される。
続いて図18(B)に示すように、パターン決定部2014は、得られた可視光画像IMG1に基づいて、開始配光パターンPTN21を生成する。例えば、パターン決定部2014は、所定のしきい値を用いて可視光画像IMG1に輝度値の2値化処理を施す。これにより、可視光画像IMG1中にしきい値よりも輝度の高い光点が存在する場合、可視光画像IMG1の2値化画像には当該光点が残る。しきい値は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
図18(A)に示す例では、自車前方に標識2102と、デリニエータ2104と、2台の前方車両2106とが存在する。左側の前方車両2106は自車両と同じ方向に進む先行車であり、右側の前方車両2106は自車両とは反対方向に進む対向車である。基準配光パターンPTN20が照射された標識2102およびデリニエータ2104は、可視光画像IMG1において、しきい値よりも輝度の高い高輝度体として撮像される。また、前方車両2106の灯具2108、つまり先行車のヘッドランプ、および対向車のテールランプあるいはストップランプは、それ自体が発光する光点である。このため、灯具2108は、可視光画像IMG1において、しきい値よりも輝度の高い高輝度体として撮像される。よって、可視光画像IMG1の2値化画像には、標識2102、デリニエータ2104および灯具2108に由来する光点が含まれる。
続いて、パターン決定部2014は、車幅方向に所定の長さを有する第1構造要素を用い、第1構造要素の中心画素を注目画素に対応付けて、2値化画像に横膨張処理を施す。これにより、車幅方向に所定の間隔で並ぶ光点のペアが2値化画像中に存在する場合、光点のペアがつながって横膨張部が生成される。横膨張処理によって連結される光点のペアの間隔は、第1構造要素の車幅方向の長さに応じて決まる。例えば、第1構造要素の車幅方向の長さは、前方車両2106の一対の灯具2108の間隔に対応付けられる。これにより、2値化画像に含まれる灯具2108由来の光点のペアが連結される。なお、標識2102および前方車両2106は、それぞれ単体の光点であるため、横膨張処理が施されても単体の光点のままである。
続いて、パターン決定部2014は、横膨張処理が施された画像における各画素の輝度値を反転させて反転画像を生成する。反転画像において、標識2102およびデリニエータ2104に由来する光点、および灯具2108に由来する横膨張部は低輝度値(低画素値)となり、その他の部分は高輝度値(高画素値)となる。また、パターン決定部2014は、上下方向に所定の長さを有する第2構造要素を用い、第2構造要素の上端画素を注目画素に対応付けて、反転画像に対し縦収縮処理を施す。これにより、反転画像における低輝度値の部分の上方に位置する高輝度値の部分が上方向に収縮する。
この結果、図18(B)に示すように、複数の縦長の第1低照度部2018を有する開始配光パターンPTN21が生成される。各第1低照度部2018は、その下端部が標識2102、デリニエータ2104および灯具2108のそれぞれと重なる。第1低照度部2018は、可視光画像IMG1に含まれる光点に基づいて定まり、開始配光パターンPTN21における他部分、つまり第1低照度部2018以外の部分よりも照度が低い部分である。
つまり、パターン決定部2014は、しきい値よりも輝度の高い個別領域に基づいて定める特定領域に照射する光の照度が、しきい値よりも輝度の低い個別領域に照射する光の照度よりも低い開始配光パターンPTN21を決定する。第1低照度部2018の照度は、例えば0である。また、開始配光パターンPTN21の他部分の照度は、基準配光パターンPTN20に準ずる。なお、可視光画像IMG1から開始配光パターンPTN21を決定する際の画像処理は上述のものに限定されず、例えば、横膨張処理、上膨張処理、反転処理の順に各処理を施してもよいし、上膨張処理、横膨張処理、反転処理の順に各処理を施してもよい。
ランプ制御部2016は、開始配光パターンPTN21のデータを配光可変ランプ2002に転送する。これにより、図19(A)に示すように、開始配光パターンPTN21が自車前方に形成される。そして、可視光撮像部2010によって、開始配光パターンPTN21の形成下にある自車前方の状況を示す可視光画像IMG1が生成される。
続いて図19(B)に示すように、パターン決定部2014は、得られた可視光画像IMG1に基づいて第1前駆パターンPTN2aを生成する。パターン決定部2014は、上述した開始配光パターンPTN21の場合と同じ生成手順で第1前駆パターンPTN2aを生成することができる。
開始配光パターンPTN21は、標識2102およびデリニエータ2104と重なる第1低照度部2018を含む。また、標識2102およびデリニエータ2104は、自発光体ではない。したがって、得られる可視光画像IMG1において、標識2102およびデリニエータ2104は高輝度体として撮像されない。一方、開始配光パターンPTN21は、前方車両2106と重なる第1低照度部2018を含む。しかしながら、灯具2108は自発光体である。このため、得られる可視光画像IMG1において、灯具2108は高輝度体として撮像される。
したがって、生成される第1前駆パターンPTN2aには、前方車両2106と重なる第1低照度部2018は含まれるが、標識2102と重なる第1低照度部2018およびデリニエータ2104と重なる第1低照度部2018は含まれない。第1低照度部2018は、可視光画像IMG1に含まれる灯具2108由来の光点に基づいて定まる。第1低照度部2018は、少なくとも一部が前方車両2106の運転者と重なる。第1低照度部2018は、第1前駆パターンPTN2aにおける他部分、つまり第1低照度部2018以外の部分よりも照度が低い部分である。
また図19(C)に示すように、赤外線撮像部2012によって、赤外線L22の照射下にある自車前方の状況を映す赤外線画像IMG2が生成される。パターン決定部2014は、図19(D)に示すように、得られた赤外線画像IMG2に基づいて第2前駆パターンPTN2bを生成する。例えば、パターン決定部2014は、所定のしきい値を用いて赤外線画像IMG2に輝度値の2値化処理を施す。これにより、赤外線画像IMG2中にしきい値よりも輝度の高い光点が存在する場合、赤外線画像IMG2の2値化画像には当該光点が残る。
図19(C)に示す例では、自車前方に標識2102と、デリニエータ2104と、2台の前方車両2106とが存在する。赤外線L22が照射された標識2102およびデリニエータ2104は、赤外線画像IMG2において、しきい値よりも輝度の高い高輝度体として撮像される。また、前方車両2106の灯具2108は、光源がハロゲンランプ等の場合には、それ自体が赤外線を発する。このため、灯具2108は、赤外線画像IMG2において、しきい値よりも輝度の高い高輝度体として撮像される。よって、赤外線画像IMG2の2値化画像には、標識2102、デリニエータ2104および灯具2108に由来する光点が含まれる。
続いて、パターン決定部2014は、2値化画像における各画素の輝度値を反転させる。これにより、第2前駆パターンPTN2bが生成される。第2前駆パターンPTN2bは、第2低照度部2020を含む。第2低照度部2020は、赤外線画像IMG2に含まれる標識2102、デリニエータ2104および灯具2108由来の光点に基づいて定まる。第2低照度部2020は、標識2102、デリニエータ2104および灯具2108と重なる。第2低照度部2020は、第2前駆パターンPTN2bにおける他部分、つまり第2低照度部2020以外の部分よりも照度が低い部分である。ただし、第2低照度部2020は、第1低照度部2018よりも照度が高い。例えば、第1低照度部2018の照度は0であり、第2低照度部2020の照度は0より大きい。また一例として、第2低照度部2020の照度は、第1低照度部2018および第2低照度部2020を除く部分の照度の25~75%である。
なお、光源がLED等の場合、灯具2108は赤外線をほとんど発しない。このため、赤外線画像IMG2において、灯具2108は高輝度体として撮像されない場合がある。しかしながら、灯具2108由来の光点が赤外線画像IMG2に含まれるか否かは、配光制御装置2008が実行する配光制御において特に問題とならない。
続いて、図19(E)に示すように、パターン決定部2014は、第1前駆パターンPTN2aおよび第2前駆パターンPTN2bを合成して配光パターンPTNを決定する。例えば、パターン決定部2014は、第1前駆パターンPTN2aと第2前駆パターンPTN2bとをor演算処理等により合成して配光パターンPTNを生成する。これにより、配光パターンPTNには、第1低照度部2018および第2低照度部2020が含まれる。第1低照度部2018は前方車両2106と重なり、第2低照度部2020は標識2102およびデリニエータ2104と重なる。
第1前駆パターンPTN2aに含まれる第1低照度部2018と第2前駆パターンPTN2bに含まれる第2低照度部2020とが重なる場合、パターン決定部2014は、配光パターンPTNにおいて第1低照度部2018と第2低照度部2020とが重なる部分を第1低照度部2018とする。本実施の形態では、第1前駆パターンPTN2aには前方車両2106と重なる第1低照度部2018が含まれる。また、第2前駆パターンPTN2bには前方車両2106の灯具2108と重なる第2低照度部2020が含まれる。したがって、配光パターンPTNにおける灯具2108に対応する部分には、第1低照度部2018と第2低照度部2020とが重なる。これに対し、パターン決定部2014は、灯具2108と重なる部分を第1低照度部2018とする。
ランプ制御部2016は、配光パターンPTNに関するデータを配光可変ランプ2002に転送する。これにより、図20(A)に示すように、配光パターンPTNが自車前方に形成される。そして、可視光撮像部2010によって、配光パターンPTNの形成下にある自車前方の状況を示す可視光画像IMG1が生成される。
続いて図20(B)に示すように、パターン決定部2014は、得られた可視光画像IMG1に基づいて第1前駆パターンPTN2aを生成する。第1前駆パターンPTN2aの生成手順は、上述のとおりである。
配光パターンPTNは、標識2102およびデリニエータ2104と重なる第2低照度部2020を含む。したがって、得られる可視光画像IMG1において、標識2102およびデリニエータ2104は高輝度体として撮像されない。一方、灯具2108は、自発光体であるため、得られる可視光画像IMG1において高輝度体として撮像される。したがって、生成される第1前駆パターンPTN2aには、前方車両2106と重なる第1低照度部2018は含まれるが、標識2102と重なる第1低照度部2018およびデリニエータ2104と重なる第1低照度部2018は含まれない。
例えば、第1前駆パターンPTN2aを生成する際の2値化処理に用いるしきい値は、第2低照度部2020の光が照射された標識2102およびデリニエータ2104に由来する光点の輝度よりも高く、灯具2108に由来する光点の輝度よりも低い値に設定される。これにより、第1前駆パターンPTN2aの生成過程で得られる2値化画像において、灯具2108由来の光点は残り、標識2102由来およびデリニエータ2104由来の光点は除去される。つまり、可視光画像IMG1における灯具2108由来の光点は高輝度部として処理され、標識2102由来およびデリニエータ2104由来の光点は低輝度部として処理される。
また図20(C)に示すように、赤外線撮像部2012によって、赤外線L22の照射下にある自車前方の状況を映す赤外線画像IMG2が生成される。パターン決定部2014は、図20(D)に示すように、得られた赤外線画像IMG2に基づいて第2前駆パターンPTN2bを生成する。第2前駆パターンPTN2bの生成手順は、上述のとおりである。図20(C)に示す例では、自車前方に標識2102と、デリニエータ2104と、2台の前方車両2106とが存在する。したがって、生成される第2前駆パターンPTN2bには、標識2102、デリニエータ2104および灯具2108に対応する第2低照度部2020が含まれる。
続いて、図20(E)に示すように、パターン決定部2014は、第1前駆パターンPTN2aおよび第2前駆パターンPTN2bを合成して配光パターンPTNを決定する。配光パターンPTNの生成手順は、上述のとおりである。これにより、配光パターンPTNには、第1低照度部2018および第2低照度部2020が含まれる。第1低照度部2018は前方車両2106と重なり、第2低照度部2020は標識2102およびデリニエータ2104と重なる。ここで決定される配光パターンPTNは、図19(E)に示す配光パターンPTNと同じである(標識2102、デリニエータ2104、前方車両2106の配置が同じ場合)。
ランプ制御部2016は、配光パターンPTNに関するデータを配光可変ランプ2002に転送する。これにより、図20(A)に示すように、配光パターンPTNが自車前方に形成される。以降は、図20(A)~図20(E)に示す制御が繰り返される。
上述の配光制御において、標識2102やデリニエータ2104等の反射物には第2低照度部2020が重なる。つまり、これらの反射物には、第1低照度部2018および第2低照度部2020を除く領域に照射される光よりも低照度の光が照射される。これにより、反射物からの反射光の強度を弱めることができる。よって、自車両の運転者が受けるグレアを抑制することができる。また、前方車両2106には第1低照度部2018が重なる。つまり、前方車両2106には、第1低照度部2018を除く領域に照射される光よりも低照度の光が照射されるか、光が照射されない。よって、前方車両2106の運転者に与えるグレアを抑制することができる。
図21は、配光制御装置2008が実行する配光制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、例えば図示しないライトスイッチによって配光制御の実行指示がなされ、且つイグニッションがオンのときに所定のタイミングで繰り返し実行される。
配光制御装置2008は、最初の配光パターンPTNの形成タイミングにあるか判断する(S2101)。最初の配光パターンPTNの形成であるか否かは、例えば配光パターンPTNの形成フラグの有無に基づいて判断することができる。最初の配光パターンPTNの形成タイミングである場合(S2101のY)、配光制御装置2008は、基準配光パターンPTN20を形成するよう配光可変ランプ2002を制御する(S2102)。そして、配光制御装置2008は、基準配光パターンPTN20の形成下で可視光撮像部2010が撮像した可視光画像IMG1を取得する(S2103)。
配光制御装置2008は、可視光画像IMG1に基づいて開始配光パターンPTN21を生成し、開始配光パターンPTN21を形成するよう配光可変ランプ2002を制御する(S2104)。そして、配光制御装置2008は、開始配光パターンPTN21の形成下で可視光撮像部2010が撮像した可視光画像IMG1と、赤外線L22の照射下で赤外線撮像部2012が撮像した赤外線画像IMG2と、を取得する(S2105)。
最初の配光パターンPTNの形成タイミングでない場合(S2101のN)、この場合は既に配光パターンPTNが形成されていることを意味する。このため、配光制御装置2008は、基準配光パターンPTN20および開始配光パターンPTN21を形成することなく、ステップS2105に移行する。そして、配光制御装置2008は、配光パターンPTNの形成下で可視光撮像部2010が撮像した可視光画像IMG1と、赤外線L22の照射下で赤外線撮像部2012が撮像した赤外線画像IMG2と、を取得する(S2105)。
配光制御装置2008は、取得した可視光画像IMG1に基づいて第1前駆パターンPTN2aを生成し、取得した赤外線画像IMG2に基づいて第2前駆パターンPTN2bを生成する(S2106)。続いて、配光制御装置2008は、第1前駆パターンPTN2aおよび第2前駆パターンPTN2bを合成して、配光パターンPTNを決定する(S2107)。そして、配光制御装置2008は、決定した配光パターンPTNを形成するよう配光可変ランプ2002を制御し(S2108)、配光パターンPTNの形成フラグを生成してメモリに保持して、本ルーチンを終了する。なお、配光パターンPTNの形成フラグは、配光制御の停止にともなって消去される。
以上説明したように、本実施の形態に係る配光制御装置2008は、可視光領域に感度を有し車両の前方領域を撮像する可視光撮像部2010から得られる可視光画像IMG1、および赤外線領域に感度を有し前方領域を撮像する赤外線撮像部2012から得られる赤外線画像IMG2に基づいて、配光パターンPTNを決定するパターン決定部2014と、配光パターンPTNを前方領域に形成するよう、強度分布が可変である可視光ビームL1を前方領域に照射可能な配光可変ランプ2002を制御するランプ制御部2016と、を備える。
パターン決定部2014は、可視光画像IMG1に含まれる光点に基づいて他部分よりも照度が低い第1低照度部2018を定め、第1低照度部2018を含む第1前駆パターンPTN2aを生成する。また、パターン決定部2014は、赤外照明2004からの赤外線L22の照射下で撮像された赤外線画像IMG2に含まれる光点に基づいて他部分よりも照度が低く且つ第1低照度部2018よりも照度が高い第2低照度部2020を定め、第2低照度部2020を含む第2前駆パターンPTN2bを生成する。そして、パターン決定部2014は、第1前駆パターンPTN2aおよび第2前駆パターンPTN2bを合成して、第1低照度部2018および第2低照度部2020を含む配光パターンPTNを決定する。
また、本実施の形態に係る車両用灯具システム2001は、配光可変ランプ2002と、赤外線を前方領域に照射可能な赤外照明2004と、可視光撮像部2010および赤外線撮像部2012を有する撮像装置2006と、本実施の形態の配光制御装置2008と、を備える。
可視光画像IMG1中の光点に基いて第1低照度部2018を定めることで、配光パターンPTNを形成した際に、自発光体である灯具2108を有する前方車両2106に対して第1低照度部2018を重ねることができる。また、赤外線画像IMG2中の光点に基づいて第2低照度部2020を定めることで、配光パターンPTNを形成した際に、標識2102やデリニエータ2104等の反射物に対して第2低照度部2020を重ねることができる。また、反射物への第2低照度部2020の形成によって、反射物を第1低照度部2018の形成対象から外すことができる。
第1低照度部2018は、配光パターンPTNにおいて第1低照度部2018以外の部分よりも照度の低い部分である。第2低照度部2020は、配光パターンPTNにおいて第1低照度部2018よりも照度が高く、第1低照度部2018および第2低照度部2020以外の部分よりも照度の低い部分である。したがって、配光パターンPTNの形成によって前方車両2106の運転者が受けるグレアを抑制することができるとともに、反射物からの反射光によって自車両の運転者が受けるグレアを抑制することができる。
また、反射物からの反射光の強度を弱める方法としては、反射物に対して可視光ビームL1を間欠的に照射して、反射物への照射光量を減らすことが考えられる。しかしながら、この場合は、反射物が明るい状態と暗い状態とが繰り返されるため、配光パターンPTNの切り替え速度が遅いと運転者がちらつきを感じる恐れがある。したがって、配光パターンの高速な切り替えが必要となる。しかしながら、配光パターンの高速切り替えを実現するために車両用灯具システムの通信速度を高速化すると、ADB制御に要するコストが高くなってしまう。
これに対し、本実施の形態では、反射物に対して第2低照度部2020が継続的に重ねられる。つまり、反射物に対して低照度の光が継続的に照射される。これにより、配光パターンの切り替え速度を上げることなく、反射物に対して運転者がちらつきを感じることを抑制することができる。また、第2低照度部2020の照度を調整することで、反射物の減光率を簡単に調整することができる。
また、可視光画像IMG1から第1低照度部2018を含む第1前駆パターンPTN2aを生成し、赤外線画像IMG2から第2低照度部2020を含む第2前駆パターンPTN2bを生成している。このため、可視光画像IMG1において前方車両2106と標識2102等の反射物とを区別することなく、前方車両2106に対し第1低照度部2018を対応付け、標識2102等に対して第2低照度部2020を対応付けることができる。したがって、本実施の形態によれば、前方車両2106を特定するためのアルゴリズム認識やディープラーニング等を含む高度な画像解析を省略することができる。よって、ADB制御の簡略化を図ることができる。
また、パターン決定部2014は、配光パターンPTNにおいて第1低照度部2018と第2低照度部2020とが重なる部分を第1低照度部2018とする。これにより、前方車両2106の運転者に与えるグレアをより確実に抑制することができる。
また、本実施の形態では、第1低照度部2018の照度は0であり、第2低照度部2020の照度は0より大きい。これにより、前方車両2106の運転者が受けるグレアをより抑制することができる。
以上、本発明の実施の形態3について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
以下の態様も本発明に含めることができる。
可視光領域に感度を有し車両の前方領域を撮像する可視光撮像部(2010)から得られる可視光画像(IMG1)、および赤外線領域に感度を有し前方領域を撮像する赤外線撮像部(2012)から得られる赤外線画像(IMG2)に基づいて、配光パターン(PTN)を決定し、
配光パターン(PTN)を前方領域に形成するよう、強度分布が可変である可視光ビーム(L1)を前方領域に照射可能な配光可変ランプ(2002)を制御することを含み、
配光パターン(PTN)の決定は、
可視光画像(IMG1)に含まれる光点に基づいて他部分よりも照度が低い第1低照度部(2018)を定め、当該第1低照度部(2018)を含む第1前駆パターン(PTN2a)を生成し、
赤外照明(2004)からの赤外線(L2)の照射下で撮像された赤外線画像(IMG2)に含まれる光点に基づいて他部分よりも照度が低く且つ第1低照度部(2018)よりも照度が高い第2低照度部(2020)を定め、当該第2低照度部(2020)を含む第2前駆パターン(PTN2b)を生成し、
第1前駆パターン(PTN2a)および第2前駆パターン(PTN2b)を合成して、第1低照度部(2018)および第2低照度部(2020)を含む配光パターン(PTN)を決定することを含む配光制御方法。
(実施の形態4)
図22は、実施の形態4に係る車両用灯具システムのブロック図である。図22では、車両用灯具システム3001の構成要素の一部を機能ブロックとして描いている。これらの機能ブロックは、ハードウェア構成としてはコンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や回路で実現され、ソフトウェア構成としてはコンピュータプログラム等によって実現される。これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。例えば、灯具制御部3008や画像生成部3010は、デジタルプロセッサで構成することができ、例えばCPUを含むマイコンとソフトウェアプログラムの組み合わせで構成してもよいし、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specified IC)などで構成してもよい。
車両用灯具システム3001は、車両用灯具3002と、撮像装置3004と、筐体3006と、灯具制御部3008と、画像生成部3010と、を備える。
車両用灯具3002は、車両3100の前方領域に光を照射する装置である。例えば車両用灯具3002は、強度分布が可変である可視光ビームL1を車両3100の前方領域に照射して所定の配光パターンを形成可能な配光可変ランプである。車両用灯具3002は、灯具制御部3008から配光パターンに関するデータを受け、配光パターンに応じた強度分布を有する可視光ビームL1を出射する。これにより、車両前方に配光パターンが形成される。配光パターンは、車両用灯具3002が自車前方の仮想鉛直スクリーン3900上に形成する照射パターン3902の2次元の照度分布と把握される。
車両用灯具3002の構成は特に限定されず、例えばマトリクス状に配列された複数の光源と、各光源を独立に駆動して点灯させる点灯回路とを含む。光源の好ましい例としては、LED(発光ダイオード)、LD(レーザーダイオード)、有機または無機EL(エレクトロルミネセンス)等の半導体光源が挙げられる。
車両用灯具3002は、配光パターンに応じた照度分布を形成するために、たとえばDMD(Digital Mirror Device)や液晶デバイス等のマトリクス型のパターン形成デバイスや、光源光で自車前方を走査するスキャン光学型のパターン形成デバイスを含んでもよい。車両用灯具3002の分解能(解像度)は、例えば1000~130万ピクセルである。また、車両用灯具3002が1つの配光パターンの形成に要する時間は、例えば0.1~5msである。なお、車両用灯具3002は、強度分布が固定の可視光ビームを照射するものであってもよい。
撮像装置3004は、車両3100の前方領域を撮像する。撮像装置3004は、例えば車両用灯具3002が出射する光の波長域に感度を有する公知のカメラで構成され、車両前方の物体による可視光ビームL1の反射光L2を撮像する。本実施の形態の撮像装置3004は、所定のタイミングで繰り返し前方領域を撮像する。
筐体3006は、車両用灯具3002および撮像装置3004を収容する。筐体3006の構造は特に限定されない。例えば筐体3006は、車両前方側に開口部を有するランプボディと、ランプボディの開口部を覆うように取り付けられた透光カバーと、を有する。ランプボディと透光カバーとで区画される灯室に、車両用灯具3002および撮像装置3004が収容される。
本実施の形態の車両用灯具3002は、第1灯具3002aおよび第2灯具3002bを含む。第1灯具3002aおよび第2灯具3002bは、灯具制御部3008によって点消灯が互いに独立に切り替えられる。また、本実施の形態の撮像装置3004は、第1撮像装置3004aおよび第2撮像装置3004bを含む。さらに、本実施の形態の筐体3006は、第1灯具3002aおよび第1撮像装置3004aを収容する第1筐体3006a、ならびに第2灯具3002bおよび第2撮像装置3004bを収容する第2筐体3006bを含む。第1灯具3002aおよび第1撮像装置3004aを収容する第1筐体3006aは車両3100の左前端部に配置され、第2灯具3002bおよび第2撮像装置3004bを収容する第2筐体3006bは車両3100の右前端部に配置される。なお、各筐体の配置は特に限定されない。
灯具制御部3008は、車両用灯具3002の点消灯を制御する。灯具制御部3008は、車両3100側に設けられてもよいし、筐体3006内に設けられてもよい。図23は、車両用灯具3002の点消灯タイミングと撮像装置3004の撮像タイミングとを説明する波形図である。図23に示すように、灯具制御部3008は、同じ筐体3006に収容される車両用灯具3002および撮像装置3004について、撮像装置3004の撮像中に車両用灯具3002を消灯し、撮像装置3004の非撮像中に車両用灯具3002を点灯する。つまり、車両用灯具3002が光を照射するタイミングと撮像装置3004が露光するタイミングとが互いにずれている。
車両用灯具3002が点灯すると、車両用灯具3002から照射された光の一部は、筐体3006の透光カバーに反射して筐体3006内に戻り得る。車両用灯具3002が収容される筐体3006内に撮像装置3004を内蔵すると、この撮像装置3004で自車前方を撮像した際に、撮像装置3004が生成する画像データに反射光が写り込んでしまうおそれがある。画像データに反射光が写り込むと、前方領域の状況を高精度に把握することが困難になる。これに対し、灯具制御部3008は、撮像装置3004の露光タイミングに合わせて、同じ筐体3006に内蔵される車両用灯具3002を消灯する。これにより、画像データへの反射光の写り込みを抑制することができる。なお、前記「消灯」は、ADB制御、ADAS、自動運転技術等における前方領域の状況判断に支障を来さない程度の光を車両用灯具3002が照射する状態を含む。
本実施の形態では、第1撮像装置3004aと第2撮像装置3004bとは撮像タイミングが互いに異なる。つまり、第1撮像装置3004aの撮像中に第2撮像装置3004bは非撮像状態にあり、第2撮像装置3004bの撮像中に第1撮像装置3004aは非撮像状態にある。また、第1撮像装置3004aと第2撮像装置3004bとは、交互に撮像を繰り返す。そして、灯具制御部3008は、第1撮像装置3004aの撮像中に第1灯具3002aを消灯し第2灯具3002bを点灯する。また灯具制御部3008は、第2撮像装置3004bの撮像中に第1灯具3002aを点灯し第2灯具3002bを消灯する。
第1撮像装置3004aが撮像する際、同じ第1筐体3006aに収容される第1灯具3002aを消灯することで、反射光の写り込みを抑制することができる。また、第1撮像装置3004aが撮像する際、異なる第2筐体3006bに収容される第2灯具3002bを点灯することで、第2灯具3002bによって明るさが高められた前方領域を第1撮像装置3004aが撮像することができる。
同様に、第2撮像装置3004bが撮像する際、同じ第2筐体3006bに収容される第2灯具3002bを消灯することで、反射光の写り込みを抑制することができる。また、第2撮像装置3004bが撮像する際、異なる第1筐体3006aに収容される第1灯具3002aを点灯することで、第1灯具3002aによって明るさが高められた前方領域を第2撮像装置3004bが撮像することができる。
また、第1撮像装置3004aおよび第2撮像装置3004bが交互に撮像することで、前方領域を連続的に撮像することができる。これにより、ADB制御、ADAS、自動運転技術等において、前方領域の状況の変化により高精度に追従することができる。第1撮像装置3004aおよび第2撮像装置3004bが生成した画像データは、画像生成部3010に送られる。
画像生成部3010は、撮像装置3004から得られる複数の画像データを合成して合成画像データを生成する。画像生成部3010は、車両3100側に設けられてもよいし、筐体3006内に設けられてもよいし、撮像装置3004に内蔵されてもよい。
例えば画像生成部3010は、撮像装置3004から得られるN枚の画像を加算合成して合成画像を生成する。これにより、合成前の画像のN倍の明度の合成画像を得ることができる。上述のとおり、撮像装置3004は所定のタイミングで撮像を繰り返し、灯具制御部3008は撮像装置3004の非撮像時に車両用灯具3002から光を照射させている。したがって、撮像装置3004の1回の撮像時間あるいは露光時間が長いと、前方領域の明暗の変化や車両用灯具3002の明滅が自車両の運転者や他の交通参加者(他車両の運転者や歩行者等)に視認されてしまう。
この明暗の変化や明滅は運転者等に違和感を与え得るため、撮像装置3004の1回の撮像時間を短くする必要がある。しかしながら、撮像時間が短いと十分な明度の画像を生成できないおそれがある。これに対し、複数の画像を加算合成して合成画像を生成することで、種々の制御に必要な明度の合成画像を生成することができる。例えば、1回の撮像時間が1msである場合、5枚の画像を加算合成することで撮像時間5msに相当する合成画像を得ることができる。なお、合成する画像の枚数は、設計者による実験やシミュレーションに基づき適宜設定することが可能である。
また、1回の撮像で得られる画像が十分な明度を有する場合、画像生成部3010は、撮像装置3004から得られるN枚の画像を加算平均合成して合成画像を生成してもよい。これにより、S/N比の向上した合成画像を生成することができる。なお、画像生成部3010は、第1撮像装置3004aの画像データと第2撮像装置3004bの画像データとを組み合わせて合成してもよいし、組み合わせずに別々に合成してもよい。
画像生成部3010は、生成した合成画像データを車両3100が備える車両ECU3102に送る。車両ECU3102は、取得した合成画像をADASや自動運転技術等に利用することができる。また、画像生成部3010は、合成画像データを灯具制御部3008に送る。
灯具制御部3008は、撮像装置3004から得られる画像データ(合成画像データを含む)に基づいて、前方領域に形成する配光パターンを決定する。そして、決定した配光パターンを形成するよう車両用灯具3002を制御する。つまり、灯具制御部3008は、撮像装置3004から得られる画像データに基づいて車両用灯具3002を制御し、配光パターンを動的、適応的に制御するADB制御を実行する。
例えば、灯具制御部3008は、撮像装置3004から得られる合成画像データに基づいて、自車前方に存在する所定の物標を検出する。検出される所定の物標は例えば自発光体であり、具体例としては対向車や先行車等の前方車両である。灯具制御部3008は、アルゴリズム認識やディープラーニング等を含む公知の方法を用いて物標を検出することができる。例えば、灯具制御部3008は、前方車両を示す特徴点を予め保持している。そして、灯具制御部3008は、撮像装置3004の撮像データの中に前方車両を示す特徴点を含むデータが存在する場合、前方車両の位置を認識する。前記「前方車両を示す特徴点」とは、例えば対向車のヘッドランプ、先行車のテールランプあるいは先行車のストップランプの推定存在領域に現れる所定光度以上の光点である。
灯具制御部3008は、物標の検出結果に基づいて前方領域に形成する配光パターンを決定する。例えば、灯具制御部3008は、検出した前方車両と重なる遮光部を有する配光パターンを決定する。そして、灯具制御部3008は、決定した配光パターンに関するデータを車両用灯具3002に送り、配光パターンを形成するよう車両用灯具3002を制御する。例えば、車両用灯具3002がDMDを含む場合、灯具制御部3008は光源の点消灯と、DMDを構成する各ミラー素子のオン/オフ切り替えとを制御する。これにより、自車前方に配光パターンが形成される。
図24は、車両用灯具システム3001が実行する配光制御の一例を示すフローチャートである。このフローは、例えば図示しないライトスイッチによって配光制御の実行指示がなされ、且つイグニッションがオンのときに所定のタイミングで繰り返し実行される。
灯具制御部3008は、最初の配光パターンの形成タイミングにあるか判断する(S3101)。最初の配光パターンの形成であるか否かは、例えば後述する更新フラグの有無に基づいて判断することができる。最初の配光パターンの形成タイミングである場合(S3101のY)、灯具制御部3008は、基準配光パターンを形成するよう車両用灯具3002を制御する(S3102)。灯具制御部3008は、基準配光パターンの情報を予め保持している。基準配光パターンは、前方領域の輝度に依存しない固定照度のパターンであり、例えばロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンのいずれかで構成される。最初の配光パターンの形成タイミングでない場合(S3101のN)、既に配光パターンが形成されていることを意味するため、ステップS3103に移行する。
撮像装置3004は、配光パターンの形成下で前方領域を繰り返し撮像し、画像データを生成する(S3103)。撮像装置3004のオン/オフは、例えば配光制御の実行指示によって切り替えられる。画像生成部3010は、生成された画像が規定数に到達したか判断する(S3104)。画像が規定数に到達していない場合(S3104のN)、当該判断を繰り返す。画像が規定数に到達した場合(S3104のY)、画像生成部3010は、合成画像データを生成する(S3105)。灯具制御部3008は、生成された合成画像データに基づいて新たな配光パターンを決定し、決定した配光パターンを形成するよう車両用灯具3002を制御する。これにより、配光パターンが更新される(S3106)。灯具制御部3008は、配光パターンの更新フラグを生成してメモリに保持し、本ルーチンを終了する。なお、更新フラグは、配光制御の停止にともなって消去される。
以上説明したように、本実施の形態に係る車両用灯具システム3001は、車両3100の前方領域に光を照射する車両用灯具3002と、前方領域を撮像する撮像装置3004と、車両用灯具3002および撮像装置3004を収容する筐体3006と、車両用灯具3002の点消灯を制御する灯具制御部3008と、を備える。灯具制御部3008は、撮像装置3004の撮像中に車両用灯具3002を消灯し、撮像装置3004の非撮像中に車両用灯具3002を点灯する。
これにより、車両用灯具3002と撮像装置3004とが同じ筐体3006に収容されている構成において、車両用灯具3002から照射される光が筐体3006に内面反射して画像に写り込むことを抑制することができる。この結果、撮像装置3004の撮像精度を高めることができ、ADB制御、ADAS、自動運転技術等の精度を高めることができる。また、画像に反射光が写り込むことを抑制するために、撮像装置3004にレンズフードを取り付けたり、撮像装置3004の取付位置を工夫したりするといった対策をとる必要がない。このため、車両用灯具3002や撮像装置3004の配置の自由度を高めることができ、意匠上の制約を緩和することができる。
また、車両用灯具システム3001は、撮像装置3004から得られる複数の画像データを合成して合成画像データを生成する画像生成部3010を備える。これにより、より明度の高い画像あるいはよりS/N比の向上した画像を得ることができる。よって、ADB制御、ADAS、自動運転技術等の精度をより高めることができる。
また、本実施の形態の車両用灯具3002は、第1灯具3002aおよび第2灯具3002bを含む。撮像装置3004は、第1撮像装置3004aおよび第2撮像装置3004bを含む。筐体3006は、第1灯具3002aおよび第1撮像装置3004aを収容する第1筐体3006a、ならびに第2灯具3002bおよび第2撮像装置3004bを収容する第2筐体3006bを含む。また、第1撮像装置3004aと第2撮像装置3004bとは撮像タイミングが互いに異なる。そして、灯具制御部3008は、第1撮像装置3004aの撮像中に第1灯具3002aを消灯し第2灯具3002bを点灯し、第2撮像装置3004bの撮像中に第1灯具3002aを点灯し第2灯具3002bを消灯する。これにより、第1撮像装置3004aと第2撮像装置3004bとのそれぞれが撮像する際に、画像への反射光の写り込みを抑制しながら、前方領域の明るさを維持することができる。また、前方領域を連続的に撮像することができるため、前方領域の状況の変化により高精度に追従することができる。
また、本実施の形態の車両用灯具3002は、強度分布が可変である可視光ビームL1を前方領域に照射して所定の配光パターンを形成可能である。そして、灯具制御部3008は、撮像装置3004から得られる画像データに基づいて前方領域に形成する配光パターンを決定し、決定した配光パターンを形成するよう車両用灯具3002を制御する。これにより、前方領域の状況に適した配光パターンをより高精度に形成することができる。
以上、本発明の実施の形態4について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
(変形例2)
実施の形態4に係る車両用灯具システム3001は2つの撮像装置3004(第1撮像装置3004aおよび第2撮像装置3004b)を有するが、本変形例に係る車両用灯具システム3001は1つの撮像装置3004を有する。つまり、本変形例では、車両用灯具3002は第1灯具3002aおよび第2灯具3002bを含む。また、筐体3006は、第1灯具3002aを収容する第1筐体3006a、および第2灯具3002bを収容する第2筐体3006bを含む。また、撮像装置3004は、第1筐体3006aに収容される。そして、本変形例の灯具制御部3008は、撮像装置3004の撮像中に第1灯具3002aを消灯し、撮像装置3004の非撮像中に第1灯具3002aを点灯し、撮像装置3004の撮像中および非撮像中に第2灯具3002bを点灯する。
つまり、本変形例では、撮像装置3004の撮像中も非撮像中も第2灯具3002bの光照射を継続する。これにより、前方領域の明るさの変化を小さくすることができる。このため、自車両の運転者や他の交通参加者が前方領域の明暗の変化によって受ける違和感を低減することができる。また、撮像装置3004の1回の撮像時間を延ばすことができる。このため、明度の高い画像データを得ることができ、合成画像データを生成する際に合成する画像数を減らすことができる。また、撮像装置3004の数を減らして、車両用灯具システム3001の搭載コストを削減することができる。