JP7497219B2 - 誘電特性評価方法及び品質管理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、クロスおよび不織布等の布の誘電特性評価方法、及び品質管理方法に関する。
現在、スマートフォン等の情報端末の高性能化、高速通信化に伴い、使用されるプリント配線板において、高密度化、極薄化とともに、低誘電率化、低誘電正接化が著しく進行している。このプリント配線板の絶縁材料としては、ガラスクロスをエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂(以下、「マトリックス樹脂」という。)に含浸させて得られるプリプレグを積層して加熱加圧硬化させた積層板が広く使用されている。上記の高速通信基板に使用されるマトリックス樹脂の誘電率は3程度であるのに対し、一般的なEガラスクロスの誘電率は6.7程度であり、積層時の高い誘電率の問題が顕在化してきている。なお、信号の伝送ロスは、Edward A. Wolff式:
伝送損失∝√ε×tanδ
に示されるように、誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)が小さい材料ほど改善されることが知られている。そのため、Eガラスとは異なるガラス組成を有するDガラス、NEガラス、Lガラス、シリカガラス等から形成された低誘電率ガラスクロスが提案されている(例えば、特許文献1~5参照)。
特開平5-170483号公報 特開2009-263569号公報 特開2009-19150号公報 特開2009-263824号公報 特開2018-197411号公報
第5世代移動通信システム(5G)を代表とする次世代高速通信に使用されるプリント配線板用ガラスクロスは、クロス表面上のシワや毛羽等の外観欠点の管理だけでなく、電気信号の伝送損失に大きく影響を与える誘電特性の品質管理も、今後、強く顧客から求められると予想される。しかしながら、これまではガラスクロスの誘電特性を評価するためにはエポキシ樹脂や低分子ポリフェニレンエーテルといった熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを作成したのちに、所定の枚数のプリプレグを積層させた状態で加熱プレスすることで得られる積層板(以下、単に「基板」ともいう)を作成し、当該積層板の誘電特性を測定することで、間接的にガラスクロスの誘電特性を評価するしかなかった。このような間接的な評価によって得られる誘電特性は、含侵させる樹脂の種類、含有量、架橋度、及び樹脂中に含まれる残留溶媒、異物等の外乱による影響を受けるために、ガラスクロス本来が有する誘電特性と乖離した結果が得られる可能性がある。また、一般的に基板からガラスクロスの誘電特性を推定する方法は非常に時間がかかる上に、その測定精度は不十分であることが多い。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、樹脂を含浸させずにガラスクロス等の布の誘電特性を簡便にかつ精度よく測定すること、及び、外観上の欠点だけでなく、誘電特性も含めて品質管理された布を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために検討した結果、ガラスクロス及び不織布等の布に樹脂を含浸させずに誘電特性を測定できる評価手法を見出し、さらには当該測定結果が予め設定された基準値の範囲内であるかを判定する工程を有する、布の品質管理方法を見出し、本発明の完成に至った。
本発明の実施形態の例を以下の項目[1]~[12]に列記する。
[1]
ガラス繊維および/または有機繊維を含む布の誘電特性を、共振法を用いて測定する工程を含む、誘電特性評価方法。
[2]
上記布が、ガラス繊維を織って作られたクロスである、項目1に記載の誘電特性評価方法。
[3]
上記布が、ガラス繊維を含む不織布である、項目1に記載の誘電特性評価方法。
[4]
上記ガラス繊維が、少なくとも1種類以上のEガラス以外のガラス種から構成される、項目2又は3に記載の誘電特性評価方法。
[5]
上記布が、有機繊維を織って作られたクロスである、項目1に記載の誘電特性評価方法。
[6]
上記布が、有機繊維を含む不織布である、項目1に記載の誘電特性評価方法。
[7]
上記測定工程における測定面積が10mm以上である、項目1~6のいずれか一項に記載の誘電特性評価方法。
[8]
上記測定工程が、スプリットシリンダー共振器を用いて行われる、項目1~7のいずれか一項に記載の誘電特性評価方法。
[9]
上記測定工程が、開放型共振器を用いて行われる、項目1~7のいずれか一項に記載の誘電特性評価方法。
[10]
上記測定工程が、NRDガイド励振誘電体共振器を用いて行われる、項目1~7のいずれか一項に記載の誘電特性評価方法。
[11]
ガラス繊維および/または有機繊維を含む布の誘電特性を、共振法を用いて測定する工程、及びその測定結果が予め設定された基準値の範囲内であるかを判定する工程を含む、布の品質管理方法。
本発明の誘電特性評価方法、及び品質管理方法により、樹脂を含浸させずにガラスクロス等の布の誘電特性を簡便にかつ精度よく測定すること、及び、外観上欠点だけでなく、誘電特性も含めて品質管理された布を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する
が、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が
可能である。
本実施形態の誘電特性方法は、ガラス繊維または有機繊維を含む布の誘電特性を、共振法を用いて測定する工程を含む。
《布》
本実施形態において、布は、ガラス繊維及び/又は有機繊維を含む。布は、繊維を織って作られたクロス、または繊維を含む不織布であってよい。その繊維は、ガラス繊維又は有機繊維のいずれか一方を含んでもよく、ガラス繊維及び有機繊維が両方含まれていてもよい。
[有機繊維]
本実施形態の有機繊維は、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル等の絶縁性に優れた有機繊維であることが好ましい。有機繊維としては、炭素繊維等の導電性繊維もまた挙げられる。
[ガラスクロス]
本実施形態の布は、ガラス繊維を含むことが好ましく、ガラス繊維を織って作られたクロス(以下、ガラスクロスともいう)であることがより好ましい。一般に、ガラスクロスは、複数本のガラスフィラメントから成るガラス糸の経糸及び緯糸から構成されている。ガラスクロスは、一般に、整経、製織、脱糊(ヒートクリーニング)、表面処理、及び開繊等の工程を行うことで製造される。
ガラスクロスの織り構造については、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、朱子織り、綾織り等の織り構造が挙げられる。これらの中でも、織り構造は、平織り構造がより好ましい。
ガラスクロスを構成するガラス糸(ガラスフィラメントを含む)は、好ましくはシランカップリング剤により表面処理されている。シランカップリング剤としては、例えば、下記の一般式(1)で示されるシランカップリング剤を使用することが好ましい。
X(R)3-nSiY ・・・(1)
式(1)中、Xはアミノ基及び不飽和二重結合基のうち少なくとも1つを有する有機官能基であり、Yは、各々独立して、アルコキシ基であり、nは1以上3以下の整数であり、Rは、メチル基、エチル基及びフェニル基からなる群より選ばれる基である。
具体的に使用できるシランカップリング剤としては、例えば、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ジ(ビニルベンジル)アミノエチル)-N-γ-(N-ビニルベンジル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N-β-(N-ベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリ同エトキシシラン及びその塩酸塩、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の公知の単体、又はこれらの混合物が挙げられる。
本実施形態のガラスクロスの表面処理方法は、特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤を含む処理液によってガラスフィラメントの表面をシランカップリング剤で覆う被覆工程と、加熱乾燥によりシランカップリング剤をガラスフィラメントの表面に固着させる固着工程と、を有する方法が挙げられる。処理液は、0.1重量%~3.0重量%のシランカップリング剤を含有することが好ましい。被覆工程によって、ガラスフィラメントの表面をシランカップリング剤でほぼ完全に覆うことが好ましい。
本実施形態のガラスクロスの表面処理方法は、ガラスフィラメントの表面に固着したシランカップリング剤の少なくとも一部を水等の洗浄液により洗浄することにより、シランカップリング剤の付着量を調整する調製工程を含んでいてもよい。洗浄は、高圧スプレー水等で行うことができる。
シランカップリング剤を溶解又は分散させる溶媒としては、水、又は有機溶媒のいずれも使用できるが、安全性及び地球環境保護の観点から、水を主溶媒とすることが好ましい。水を主溶媒とした処理液を得る方法としては、シランカップリング剤を直接水に投入する方法、シランカップリング剤を水溶性有機溶媒に溶解させて有機溶媒溶液とした後に該有機溶媒溶液を水に投入する方法のいずれかの方法が好ましい。シランカップリング剤の処理液中での水分散性、安定性を向上させるために、界面活性剤を併用することも可能である。
上記の被覆工程、固着工程、及び調製工程は、製織工程後に、ガラスクロスに対して行うことが好ましい。さらに、必要に応じて、製織工程後に、ガラスクロスのガラス糸を開繊する開繊工程を行ってもよい。なお、調製工程を製織工程後に行う場合には、調整工程が開繊工程を兼ねるものであってもよい。なお、開繊前後ではガラスクロスの組成は通常変化しない。上記製造方法により、ガラス糸を構成するガラスフィラメント1本1本の表面全体に、ほぼ完全、かつ均一にシランカップリング剤層を形成することができると考えられる。
処理液をガラスクロスに塗布する方法としては、(A)処理液をバスに溜め、ガラスクロスを浸漬、通過させる方法(以下、「浸漬法」という。)、(B)ロールコーター、ダイコーター、またはグラビアコーター等で処理液をガラスクロスに直接塗布する方法等が可能である。上記(A)の浸漬法にて塗布する場合は、ガラスクロスの処理液への浸漬時間を0.5秒以上、1分以下に選定することが好ましい。
ガラスクロスに処理液を塗布した後、溶媒を加熱乾燥させる方法としては、熱風、電磁波等公知の方法が挙げられる。加熱乾燥温度は、シランカップリング剤とガラスとの反応が十分に行われるように、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上である。また、加熱乾燥温度は、シランカップリング剤が有する有機官能基の劣化を防ぐために、好ましくは300℃以下であり、より好ましくは200℃以下である。
開繊工程の開繊方法としては、特に限定されないが、例えば、ガラスクロスを、スプレー水(高圧水開繊)、バイブロウォッシャー、超音波水、マングル等で開繊加工する方法が挙げられる。開繊加工によるガラスクロスの引張強度の低下を抑えるため、ガラス糸を製織する際の接触部材の低摩擦化、又は集束剤の最適化と高付着量化等の対策を施すことが好ましい。開繊加工時に、ガラスクロスに掛ける張力を下げることにより、通気度をより小さくすることができる傾向にある。
開繊工程後においても、任意の工程を有していてもよい。任意の工程としては、特に限定されないが、例えば、スリット加工工程が挙げられる。
[ガラス種]
ガラス糸を構成するガラスフィラメントのガラス種は限定されないが、Eガラス、Dガラス、NEガラス、Lガラス、L2ガラス、Sガラス、Tガラス、及びQガラスから成る群から選択される少なくとも1つでもよい。低誘電率、低誘電正接の観点からは、Eガラス以外のガラス種を用いることが好ましい。本実施形態の誘電特性評価方法では、含浸樹脂の影響を受けやすく、誘電特性の測定結果にばらつきの生じやすい低誘電率、低誘電正接のガラス糸を用いたガラスクロスにおいても、精度よく誘電特性を評価することができる。
上記観点から、ガラス糸の誘電率は、40GHzの周波数において、7.50Fm-1以下であることが好ましく、7.00Fm-1以下であることがより好ましく、6.50Fm-1以下であることがさらに好ましく、6.00Fm-1以下であることが特に好ましく、ガラス糸の誘電正接は、40GHzの周波数において、0.00700以下であることが好ましく、0.00650以下であることがより好ましく、0.00600以下であることがさらに好ましく、0.00550以下であることが特に好ましい。
《誘電特性評価方法》
本実施形態の誘電特性評価方法は、共振法を用いて布の誘電特性を測定する工程を含むことを特徴とする。上記測定工程における測定方法は、共振法を用いた測定方法であれば、特定の方法のみに限定されない。当該測定方法によれば、測定サンプルとしての基板を作製して誘電特性を評価する従来の測定方法に対し、簡便にかつ精度よく測定することができる。共振法を用いることによって布の誘電特性を簡便にかつ精度よく測定できる理由としては、理論に限定されないが、共振法は高周波数領域での低損失材料を評価することに適しているためである。共振法以外の誘電特性評価法としては集中定数法や反射伝送法が知られている。集中定数法では測定資料を2枚の電極で挟んでコンデンサを形成する必要があるため、オペレーションが非常に煩雑であり、反射伝送法では低損失材料を評価する場合、ポートのマッチング特性の影響が強く表れ、試料の誘電正接を高精度に評価することが困難といった問題点がある。以上のことから当該布の誘電特性の評価法は共振法が好ましい。
本測定工程において、共振法を用いた好ましい測定機器として、スプリットシリンダー共振器、開放型共振器、及びNRDガイド励振誘電体共振器が挙げられる。しかしながら、共振法の原理を利用していれば、上記測定機器以外で布の誘電特性を評価してもよい。
プリント配線板用に用いられる上記布の誘電特性を測定するため、測定機器の測定可能範囲は、誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)について、それぞれDk=1.1Fm-1~50Fm-1、Df=1.0×10-6~1.0×10-1の範囲が好ましく、Dk=1.5Fm-1~10Fm-1、Df=1.0×10-5~5.0×10-1の範囲がより好ましく、Dk=2.0Fm-1~5Fm-1、Df=5.0×10-5~1.0×10-2の範囲がさらに好ましい。
測定機器の測定可能な周波数は10GHz以上であることが好ましい。より好ましくは、15GHz以上、さらに好ましくは20GHz以上である。周波数が10GHz以上であると、プリント配線板用基板のガラスクロスとして実際に使用される場合に想定される周波数帯領域での特性評価を行うことが可能である。
より大面積で布の誘電特性を測定し、当該測定結果が予め設定された基準値の範囲内であるかを判定するために、当該測定方法の測定面積は、10mm以上であることが好ましい。当該測定方法の測定面積は、15mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることが更に好ましい。
測定可能なサンプルの厚みは特に限定されないが、3μm~300μmであることが好ましい。5μm~200μmがさらに好ましく、7μm~150μmが特に好ましい。
《品質管理方法》
本実施形態の布の品質管理方法は、ガラス繊維および/または有機繊維を含む布の誘電特性を、共振法を用いて測定する工程、及び当該測定結果が予め設定された基準値の範囲内であるかを判定する工程を含む。測定工程は、上記「誘電特性評価方法」の欄で説明した方法を用いることができる。
基準値としては、誘電率および誘電正接の平均値、標準偏差、及び変動係数等、並びにこれらの組み合わせであってよい。誘電率の平均値及び誘電正接の平均値は、上記「布」の欄で説明した値を基準値としてもよい。誘電率の標準偏差は、ガラス糸の場合、40GHzの周波数において、0.10以下、0.07以下、0.06以下又は0.05以下とすることができる。誘電正接の標準偏差は、ガラス糸の場合、40GHzの周波数において、0.00020以下、0.00017以下、0.00016以下、又は0.00015以下とすることができる。
上記測定工程は、上記判定工程で判定可能であれば、オンラインでの測定、もしくはオフラインでの測定でもどちらでも構わない。また、測定は上記シランカップリング剤による表面処理後だけでなく、ヒートクリーニング工程後等でも必要があれば実施することができる。
以下に実施例を挙げて、本実施形態を詳細に説明する。ただし、本実施形態は実施例に限定されるものではない。
[ガラスクロスの厚さの測定方法]
ガラス長繊維及びガラス長繊維を用いたガラスクロスなどの製品の一般試験方法について規定する、JIS R 3420の7.10に準じて、マイクロメータを用いて、スピンドルを静かに回転させて測定面に平行に軽く接触させ、ラチェットが3回音をたてた後の目盛を読み取った。
[目付(布重量)の測定方法]
クロスの目付は、クロスを所定のサイズでカットし、その重量をサンプル面積で除することで求めた。本実施例ではガラスクロスを10cmのサイズに切り出し、その重量を測定することで、各ガラスクロスの目付を求めた。
[換算厚み]
ガラスクロスは空気とガラスからなる不連続の面状体であるため、各ガラスクロスの目付を密度で除することで、共振法で測定する際に必要な換算厚みを算出した。
換算厚み(μm)=目付(g/m)÷密度(g/cm
[ガラスクロスサンプル1]
ガラスフィラメントの平均径7μmのEガラスヤーンを用いて、経糸密度60本/inch、緯糸密度58本/inchのガラスクロス(スタイル:2116)を作製した。得られたガラスクロスを、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(東レダウコーニング株式会社製;Z6032)を水に分散させた処理液に浸漬し、加熱乾燥した。次にスプレーで高圧水開繊を実施し、加熱乾燥して製品を得た。
[ガラスクロスサンプル2~8]
ガラス種および織密度を表1に示すように変更し、各ガラスクロスサンプル2~8を作製した。シランカップリング剤の処理はガラスクロスサンプル1と同様の方法で加工を行った。
[基板の作製方法]
上述の製造方法で得たガラスクロスに、ポリフェニレンエーテル樹脂ワニス(変性ポリフェニレンエーテル樹脂30質量部、トリアリルイソシアヌレート10質量部、トルエン60質量部、触媒0.1質量部の混合物)を含浸させ、120℃で2分間乾燥後プリプレグを得た。この際、プリプレグ100質量%あたりの樹脂含量が60質量%となるようにスリット間距離を調節した。このプリプレグを重ね、さらに上下に厚さ12μmの銅箔を重ね、200℃、40kg/cmで60分間加熱加圧して基板を得た。得られた基板の銅箔を除去することで誘電率評価のための基板評価サンプルを得た。
[実施例1、スプリットシリンダー共振器での測定]
主にマイクロ波回路に用いる誘電体基板用ファインセラミックス材料の、マイクロ波帯における誘電特性の測定方法について規定する、JIS R1641/IEC 62562に準拠して、各ガラスクロスの誘電率および誘電正接を測定した。具体的には、各共振器での測定に必要なサイズにサンプリングしたガラスクロスサンプルを23℃50%RHの恒温恒湿オーブンに8時間以上保管して調湿してからスプリットシリンダー共振器(EMラボ社製)およびインピーダンスアナライザー(Agilent Technologies社製)を用いて測定した。測定は各サンプルで5回実施し、その平均値、標準偏差、変動係数を求めた。また、各サンプルの厚みは上記換算厚みを用いて、測定を行った。
[実施例2、開放型共振器での測定]
主にミリ波回路に用いる低損失誘電体基板用ファインセラミックスの、開放型共振器方法によるミリ波帯における誘電特性の測定方法を規定する、JIS R1660-2に準拠して、各ガラスクロスの誘電率および誘電正接を測定した。具体的には測定に必要なサイズにサンプリングしたガラスクロスサンプルを24℃40%RHの恒温恒湿環境の部屋で8時間以上調湿を行った後に、開放型共振器(キーサイト・テクノロジー社製)のサンプルホルダー部分に静置した。ベクトルネットワークアナライザー(キーサイト・テクノロジー社製)を用いて、所定の周波数帯でのガラスクロスの誘電率および誘電正接を評価した。測定は各サンプルで5回実施し、その平均値、標準偏差、変動係数を求めた。また、各サンプルの厚みは上記換算厚みを用いて、測定を行った。
[実施例3、NRDガイド励振誘電体共振器での測定]
主にミリ波フィルタ、共振器に用いる低損失誘電体共振器用ファインセラミックス材料のNRDガイド励振誘電体共振器方法によるミリ波帯における誘電特性の測定方法を規定する、JIS R1660-3に準拠して、各ガラスクロスの誘電率および誘電正接を測定した。具体的には測定に必要なサイズにサンプリングしたガラスクロスサンプルを23℃50%RHの恒温恒湿環境の部屋で8時間以上調湿を行った後に、NRDガイド励振誘電体共振器上のサンプル保持部に静置させた。NRDガイドの誘電体ストリップの材質はPTFEを用いた。また、短絡用導体およびNRDガイドの導体は高誘電率の観点から銅を用いた。ベクトルネットワークアナライザー(Agilent Technologies社製)を用いて、所定の周波数帯でのガラスクロスの誘電率および誘電正接を評価した。測定は各サンプルで5回実施し、その平均値、標準偏差、変動係数を求めた。また、各サンプルの厚みは上記換算厚みを用いて、測定を行った。
[比較例1]
上述の「基板の作製方法」で作製した基板評価サンプルの、周波数10GHzにおける誘電率および誘電正接を、空洞共振器(EMラボ社製)、およびインピーダンスアナライザー(Agilent Technologies社製)を用いて測定した。測定は各サンプルで5回実施し、その平均値、標準偏差、変動係数を求めた。また、得られた基板誘電率および基板誘電正接から、ガラスクロスの体積分率、および樹脂の誘電率2.5、および樹脂の誘電正接0.0007をもとに、ガラスクロスの誘電率、および誘電正接を算出した。
[比較例2]
上述の「基板の作製方法」で作製した基板評価サンプルを、JIS R1641/IEC 62562に準拠して測定することで、基板の誘電率および誘電正接を求めた。具体的には各共振器での測定に必要なサイズにサンプリングした基板サンプルを23℃50%RHの恒温恒湿オーブンに8時間以上保管して調湿してからスプリットシリンダー共振器(EMラボ社製)およびインピーダンスアナライザー(Agilent Technologies社製)を用いて測定した。測定は各サンプルで5回実施し、その平均値、標準偏差、変動係数を求めた。また、得られた基板誘電率および基板誘電正接から、ガラスクロスの体積分率、および樹脂の誘電率2.5、及び樹脂の誘電正接0.0007をもとに、ガラスクロスの誘電率、および誘電正接を算出した。
Figure 0007497219000001
Figure 0007497219000002
本実施形態による布の誘電特性評価方法及び品質管理方法は、布の誘電特性を簡便にかつ精度よく測定することができるため、特にプリント配線板に用いられるガラスクロスの評価及び品質管理に好適に用いられる。

Claims (10)

  1. ガラス繊維および/または有機繊維から構成される、3μm~300μmの厚みを有する布の誘電特性を、共振法を用いて測定する工程を含む、誘電特性評価方法であって、前記誘電特性は、前記布の厚みとして、前記布の目付(g/m)÷密度(g/cm)で算出される換算厚み(μm)を用いて測定され
    前記測定工程における測定面積が10mm 以上である、誘電特性評価方法。
  2. 前記布が、ガラス繊維を織って作られたクロスである、請求項1に記載の誘電特性評価方法。
  3. 前記布が、ガラス繊維を含む不織布である、請求項1に記載の誘電特性評価方法。
  4. 前記ガラス繊維が、少なくとも1種類以上のEガラス以外のガラス種から構成される、請求項2又は3に記載の誘電特性評価方法。
  5. 前記布が、有機繊維を織って作られたクロスである、請求項1に記載の誘電特性評価方法。
  6. 前記布が、有機繊維を含む不織布である、請求項1に記載の誘電特性評価方法。
  7. 前記測定工程が、スプリットシリンダー共振器を用いて行われる、請求項1~のいずれか一項に記載の誘電特性評価方法。
  8. 前記測定工程が、開放型共振器を用いて行われる、請求項1~のいずれか一項に記載の誘電特性評価方法。
  9. 前記測定工程が、NRDガイド励振誘電体共振器を用いて行われる、請求項1~のいずれか一項に記載の誘電特性評価方法。
  10. ガラス繊維および/または有機繊維から構成される、3μm~300μmの厚みを有する布の誘電特性を、共振法を用いて測定する工程、及びその測定結果が予め設定された基準値の範囲内であるかを判定する工程を含む、布の品質管理方法であって、前記誘電特性は、前記布の厚みとして、前記布の目付(g/m)÷密度(g/cm)で算出される換算厚み(μm)を用いて測定され
    前記測定工程における測定面積が10mm 以上である、品質管理方法。
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