JP7495904B2 - 既存岸壁の改良構造及び改良方法 - Google Patents
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Description
なお、本明細書における岸壁には、直立壁を有する矢板式岸壁、重力式岸壁、セル式岸壁等の船舶の接岸機能を有するものの他、同様の直立壁を有して船舶の接岸機能を有していない護岸も含む。
ここで改良が必要となる要因としては、耐震性向上(技術基準見直しと、用途変更(例えば耐震強化岸壁への指定)、既存構造の経年による劣化対応、供用期間の延長等である。
また、地盤改良後にさらなる改良が必要となった場合、水底地盤が固化しているため掘削などで困難をともなうという問題もある。
該新設壁体の上端部に設けられ、上面が水面よりも上方に設定された新設上部工と、
前記新設壁体と前記既存岸壁との隙間に該隙間を埋めるように配設された間詰材と、
前記新設壁体の水域側の水底面に打設された杭と、
該杭の杭頭部を連結一体化すると共に前記新設壁体の水域側に接するように設けられて前記新設壁体から水平力のみを前記杭に伝達する杭頭連結構造とを備えたことを特徴とするものである。
前記既存壁体と前記新設壁体との隙間に該隙間を埋めるように間詰材を配設する間詰工程と、
前記新設壁体の水域側の水底面に杭を打設する杭打設工程と、
該杭の杭頭部を連結一体化すると共に前記新設壁体の水域側に接するように設けられて前記新設壁体から水平力のみを前記杭に伝達するように前記杭頭連結構造を設置する杭頭連結構造設置工程と、
前記新設壁体の上端部に上面が水面より上方となるように新設上部工を設ける上部工設置工程とを備えたことを特徴とするものである。
また、水底地盤改良をしないので、さらなる改良の必要が生じた場合にも容易に対応できる。
さらに、本発明に係る既存岸壁の改良構造は、既存壁体と新設壁体との隙間に該隙間を埋めるように間詰材を配設しているので、既存岸壁(護岸)の構造が存在しないもの(地盤のみあるもの)としても設計が可能であり、既存岸壁の残存耐力が不明確(調査ができない)な場合に有効である。
以下、各構成の詳細と各構成の関係を説明する。
改良の対象となる既存岸壁3は控え杭17を備えた矢板式岸壁であり、この矢板式岸壁を構成する既存壁体5は、図1~図3に示すように、矢板によって形成されたものである。
控え杭17や、既存壁体5と控え杭17とを結ぶタイ材18の残存耐力の調査は掘削が必要なため困難である。
なお、既存壁体5を構成する矢板は鋼矢板に限定されるものではなく、鋼管矢板や、鋼矢板と鋼管矢板の組み合わせによって構成されたものも含む。
新設壁体7は、既存上部工19の水域側端の直下から水域側へ所定距離はなれた水面下に岸壁法線方向(図2の矢印X-X方向)に新規設置したものである。
なお、本実施の形態では、新設壁体7として鋼矢板を用いた例を示したが、新設壁体7としては鋼矢板に限定されるものではなく、鋼管矢板、鋼矢板を単独あるいは組合せの他、直線型鋼矢板にH鋼やCT鋼を取り付けたものなどを含み、要するに岸壁法線方向に連続した壁となっていればよい。
また、鋼矢板には、U型鋼矢板、ハット型鋼矢板、Z型鋼矢板、H型鋼矢板、直線型鋼矢板等が含まれる。
新設上部工9は、新設壁体7の上端部に、上面が水面8よりも上方になるように設けられている。ここで言う水面8とは、水域が港湾の場合には計画潮位における水面であり、河川の場合には計画高水位における水面である。
なお、新設上部工9は、既存上部工19の劣化更新のため、既存上部工19を一部または全部を撤去して新たに構築したものを含む。
間詰材11は、既存壁体5と新設壁体7との隙間に該隙間を埋めるように配設されて既存壁体5が水域側に変形しようとする水平力を新設壁体7に伝達するものである。間詰材11はかかる機能を発揮できれば、その材料等は限定されず、例えば土砂、石材、改良土、水中コンクリート、水中モルタルなど、新設壁体7と既存壁体5の水平方向の圧縮力の伝達が可能なものであればよい。
杭13は、例えば鋼管杭からなり、新設壁体7の水域側水底面12に打設されている。打設された杭13は複数本であり、これらの配置は、図2に示すように、格子状に配置されてもよいし、千鳥状に配置されてもよく、配置は特に限定されない。
また、図1、図2に示す例では、直杭としているが、複数の杭13の全部又は一部を斜杭としてもよい。
杭頭連結構造15は、杭13の杭頭部を連結一体化すると共に新設壁体7の水域側に接するように設けられて新設壁体7から水平力のみを杭13に伝達し、新設した新設壁体7が水域側に倒れ込むのを防止するためのものであり、
以下、杭頭連結構造15をより具体的に説明する。
骨組構造21は、図2に示すように、格子状に形成された各桁材21aの交差部21bに杭13が挿入される開口部を有する構造である。杭頭と開口部とは一体化されるが、この一体化の手法は従来のジャケット式岸壁、ストラット式岸壁で用いられる手法、具体的にはグラウト材の注入によればよい。
また、杭頭連結構造15は、各桁材21aと交差部21bによって構成されてもよいが、各桁材21a及び交差部21bの全体をコンクリート等で覆うようにした床版状の構造であってもよい。
水平部材23は、新設壁体7と骨組構造21との間に介在して、新設壁体7から受ける水平力を骨組構造21に伝達するための部材である。水平部材23は、例えば骨組構造21と新設壁体7との間に両者に荷重伝達可能な状態で当接するように配設されたH形鋼等の鋼材によって構成できる。
また、水平部材23は、骨組構造21と同様に、例えば形鋼等の鋼製部材によって形成してもよいし、あるいはプレキャストコンクリート構造、鋼コンクリート合成構造であってもよい。
また、本実施の形態の杭頭連結構造15は、骨組構造21を前提としているが、このような骨組構造21を前提とせず、図3に示すような、鉄筋コンクリート造25で構成されるものでもよい。
図3に示すような構造であれば、鉄筋コンクリート造25が水平部材23を兼用できる。
杭頭連結構造15を予め工場等において製作し、改良する既存岸壁のある施工現場に搬入する。
その後、新設壁体7と既存壁体5との間隙に、該隙間を埋めるように間詰材11を配設する(間詰工程)。間詰材11は、新設壁体7と既存壁体5の水平方向の圧縮力が伝われば良いので、適宜、土砂、石材、改良土、水中コンクリート、水中モルタルなどから選択すればよい。
次に、杭頭部を連結すると共に新設壁体7の水域側に接するように杭頭連結構造15を設置する(杭頭連結構造設置工程)。
このとき、杭頭連結構造15の上面が改良前の水底面12と同じかそれよりも下方になるように設置する場合、杭頭連結構造15の高さに相当する分だけ水底面12を掘削してから杭頭連結構造15を設置する。
なお、杭頭連結構造15が図1、図2に示した骨組構造21であって、予め工場で製作されたものである場合には、杭頭連結構造15の骨組構造21の交差部21bを、杭13の杭頭部にかぶせるように設置して杭13との連結をすればよい。
また、先に杭頭連結構造15を設置した後に、杭13を打設してもよい。
このようにすることで、杭頭連結構造15は、水底面12を改良前の状態よりも深い位置に設置される。
なお、既存の上部工の劣化更新のため、既存上部工19を一部または全部を撤去し、新設上部工9として新たに構築することを妨げるものではない。
新設壁体7を骨組構造21と杭13によって水域側から支持するようにしたので、新設壁体7の水域側の水底地盤改良が必要なく、環境に影響を与えることがない。
また、水底地盤改良をしないので、さらなる改良の必要が生じたい場合にも容易に対応できる。
耐震性不足の懸念があるが背後地盤で工事が出来ないような場合、すなわち設計対象地震の見直しなどで土留め(背後地盤)の地盤改良などの工事を行いたいが、背後の利用上の問題などで工事が出来ないような場合でも、陸上部での施工がなく水域側のみでの施工が可能であるため適用可能である。
また、図5に示すように、既存壁体5がコンクリートからなる堤体27を鋼管杭29で支持した防潮堤31であっても、上記実施の形態と同様の対応が可能である。
3 既存岸壁
5 既存壁体
7 新設壁体
8 水面
9 新設上部工
11 間詰材
12 水底面
13 杭
15 杭頭連結構造
17 控え杭
18 タイ材
19 既存上部工
21 骨組構造
21a 桁材
21b 交差部
23 水平部材
25 鉄筋コンクリート造
27 堤体
29 鋼管杭
31 防潮堤
33 アスファルト
Claims (2)
- 既存岸壁における既存上部工を有する既存壁体の水域側近傍に新たに地中に根入れされ、鋼矢板、鋼管矢板、鋼矢板と鋼管矢板の組合せ、又は直線型鋼矢板にH鋼やCT鋼を取り付けたものからなる新設壁体と、
該新設壁体の上端部に設けられ、上面が水面よりも上方に設定されて前記既存上部工に接合される新設上部工と、
前記新設壁体と前記既存岸壁との隙間に該隙間を埋めるように配設され、前記既存壁体に作用する荷重を水平方向のみの圧縮力として前記新設壁体に伝達する間詰材と、
前記新設壁体の水域側の水底面に打設された杭と、
該杭の杭頭部を連結一体化すると共に前記新設壁体の水域側に接するように設けられて前記新設壁体から水平力のみを前記杭に伝達する杭頭連結構造とを備え、
前記杭頭連結構造は、その上面が改良前の水底面よりも下方になるように設置されていることを特徴とする既存岸壁の改良構造。 - 鋼矢板、鋼管矢板、鋼矢板と鋼管矢板の組合せ、又は直線型鋼矢板にH鋼やCT鋼を取り付けたものからなる新設壁体を、既存岸壁における既存上部工を有する既存壁体の水域側近傍に新たに地中に根入れする新設壁体根入れ工程と、
前記既存壁体と前記新設壁体との隙間に該隙間を埋めて、前記既存壁体に作用する荷重の水平力のみを前記新設壁体に伝達するように間詰材を配設する間詰工程と、
前記新設壁体の水域側の水底面に杭を打設する杭打設工程と、
該杭の杭頭部を連結一体化すると共に前記新設壁体の水域側に接するように設けられて前記新設壁体から水平力のみを前記杭に伝達するように杭頭連結構造を設置する杭頭連結構造設置工程と、
前記新設壁体の上端部に上面が水面より上方となるように新設上部工を設けて前記既存上部工と接合する上部工設置工程とを備え、
前記新設壁体根入れ工程の後に、前記水域側水底面を掘削して水深を深くする水底面掘削工程を備えたことを特徴とする既存岸壁の改良方法。
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