JP2005139680A - 矢板式護岸構造物およびその工法 - Google Patents

矢板式護岸構造物およびその工法 Download PDF

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Abstract

【課題】陸上施工を基本とし、改修工事に要する工期・工費を抑え、航路幅も縮小することなく、環境に与える影響が少なくてすむ矢板式護岸構造物およびその工法を提供する。
【解決手段】岸壁法面を被覆する鋼矢板1と、鋼矢板1の上部をつなぐ上部工5と、を備えた既設護岸構造物を改修して形成される矢板式護岸構造物であって、既設鋼矢板1のうち劣化の少ない健全部1bに打設されたスタッド11と、既設護岸の前面の海底に所定間隔で複数に打ち込まれた親抗12と、親杭12の頭部12aと既設上部工5を緊結する締結具13と、親杭12間に挿入され、海底面に打ち込まれたプレキャストパネル14と、既設鋼矢板1とプレキャストパネル14の間に打設された間詰めコンクリート15と、既設上部工5と一体化して構築された新設の上部工16と、プレキャストパネル14に隣接する前面海底部に施工された根固工17と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、鋼矢板の腐食等により老朽化した護岸構造物の改修する技術に関する。すなわち、本発明は、港湾や漁港などの護岸や岸壁として使用している既設の構造物のうち、鋼材の腐食などによって老朽化の著しい矢板式護岸構造物を対象とする。また、本発明は、老朽化した護岸構造物を改修(リニューアル)するとともに、護岸前面の水深を大きくすることにより将来的な接岸船舶の大型化にも対応する技術に関する。
港湾や漁港では、高潮や津波、波浪などから港湾施設や後背地を防護するために護岸工事が行われる。
港湾や漁港における護岸の構造は、自然条件や港湾の利用形態などにより、重力式、矢板式、セル式、桟橋式などの構造様式がある。
例えば、図8はタイロッド式構造の護岸構造物を示している。
すなわち、タイロッド式構造は、鋼矢板1と控杭2をタイロッド3で直結し根入れ地盤とタイロッド取付点を支承とし壁体を安定させるものである。なお、4は法覆(のりふく)工としての裏込石、5は鋼矢板1の上部をつなぐ上部工、6は舗装コンクリートを示す。
鋼矢板1は、連続して壁状に地盤中に打ち込み、横方向の外力に抵抗させて土止め壁として用いる。控杭2は鋼矢板1の背後地に打ち込まれた控え直杭である。
ところで、港湾や漁港などの岸壁は、昭和30年代以前に建設されたものが多く残されている。その構造形式も杭式や矢板式などの鋼材を使用したものが多い。なお、鋼材は、潮の満ち引きにより海面と接触したり接触しなかったりする部分において腐食劣化が激しく、海中に潜っている部分においては腐食劣化は少ないことが多い。
そこで、鋼材の腐食による老朽化が激しい部分は改修工事の必要性が生じてくる。
一般に、港湾や漁港における老朽化した護岸の改修工事の方法としては、(a)新たに護岸を造り替える方法の他、(b)既設護岸の前面に新しく桟橋構造物などを構築する法線前出し方式などの方法が採用されている。
しかし、これら改修工事の方法では、改修工事に多大な工費や工期を要するといった問題が生じる。また、護岸法線を前出しする場合には、航路幅を縮小してしまうなどの問題が生じる。
更に、これらの従来の方法では、作業船等の使用により海面の占有期間が長くなることによる航行船舶への影響や、工事中の周辺海域へ与える環境影響などが問題となる。
本発明は、上記の技術的課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、大型作業船の使用を最小限に抑えた陸上施工を基本とし、改修工事に要する工期・工費を抑え、航路幅も縮小することなく、環境に与える影響が少なくてすむ矢板式護岸構造物およびその工法を提供することを課題とする。
本発明は、矢板式護岸構造物およびその工法であり、前述の技術的課題を解決すべく以下のような構成とされている。
すなわち、本発明の矢板式護岸構造物は、
岸壁法面を被覆するために壁状に複数配列された鋼矢板と、前記鋼矢板の上部をそれぞれつなぐ上部工と、を備えた既設護岸構造物を改修して形成される矢板式護岸構造物であって、
前記既設鋼矢板のうち劣化の少ない健全部に打設されたスタッドと、
前記既設護岸の前面の海底に所定間隔で複数に打ち込まれた親抗と、
前記親杭の頭部と前記既設上部工を緊結する締結具と、
前記親杭間に挿入され、海底面に打ち込まれたプレキャストパネルと、
前記既設鋼矢板とプレキャストパネルの間に打設された間詰めコンクリートと、
前記既設上部工と一体化して構築された新設の上部工と、
とを備えたことを特徴とする。
また、本発明の矢板式護岸構造物は、前記打ち込まれたプレキャストパネルに隣接する前面海底部に施工された根固工を更に備えたことを特徴とする。
更に、本発明の矢板式護岸構造物の工法は、
岸壁法面を被覆するために壁状に複数配列された鋼矢板と、前記鋼矢板の上部をそれぞれつなぐ上部工と、を備えた既設護岸構造物を改修する矢板式護岸構造物の工法であって、
前記既設鋼矢板のうち劣化の少ない健全部にスタッドを打設するステップと、
前記既設護岸の前面の海底に所定間隔で複数の親杭を打ち込むステップと、
前記親杭の頭部と前記既設上部工を締結具で緊結するステップと、
前記親杭間にプレキャストパネルを挿入し、海底面に打ち込むステップと、
前記既設鋼矢板とプレキャストパネルの間に間詰めコンクリートを打設するステップと、
前記既設上部工と一体化して新設の上部工を構築するステップと、
前記打ち込まれたプレキャストパネルに隣接する前面海底部を浚渫するステップと、
浚渫した前面海底部に根固工を施工するステップと、
を備えたことを特徴とする。
本技術は、港湾や漁港における老朽化した護岸構造物(矢板式護岸)を改修(リニューアル)することを目的にしたものである。また、矢板式護岸前面の海底面にプレキャストパネルを打ち込み、既設矢板とパネルの間にコンクリートを充填するもので、構造の単純化と施工の簡略化を図り、護岸の改修工事における工期短縮を図ったものである。
改修後の断面構造は、プレキャストパネル内に埋め込んだ鉄筋と、劣化の進んでいない深部の鋼矢板を活用した鋼・コンクリートのハイブリット構造とする。そして、パネルを海底面下に打ち込むことによって護岸改修後に海底面に浚渫でき、前面水深を大きくできる。
また、劣化の進んでいない地中部および海底付近の既設鋼矢板をそのまま活かした構造とするため、改修断面の構造を簡素化できる。更に、作業船を使用せず、一部のダイバー作業を除き、全ての施工を陸上から行われると共に、工種が単純なため改修工期を短くできる。
以上説明したように、本発明によれば、(1)航路幅等の確保を考慮し、護岸法線が極力前出ししない構造となる。(2)既設護岸法線と改修後の護岸法線の差が小さく、航路
幅の影響が少ない。(3)パネルを打ち込むことによって護岸改修後に海底面を浚渫でき、前面水深を大きくできる。(4)劣化の進んでいない地中部及び海底付近の既設鋼矢板をそのまま活かした構造とするため、改修断面の構造を簡素化できる。(5)作業船を使用せず、一部のダイバー作業を除き、全ての施工を陸上から行えると共に、工種が単純なため改修工期を短くできる。(6)プレキャストパネルを海棲生物が生息し易い構造とすることにより、環境共生の護岸に改修することも可能である。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。
本発明に係る最良の形態の矢板式護岸構造物10は、港湾や漁港における既設のタイロッド式構造の護岸構造物(図8参照)を改修工事し、図1に示すように、形成されるものである。
(既設の護岸構造物部分の概要)
まず、既設の護岸構造物について図8に基づき説明する。
既設の護岸構造物は、港湾や漁港における係船岸などの護岸構造物であり、高潮や津波、波浪などから港湾施設や後背地を防護するためのものである。
既設の護岸構造物は、タイロッド式構造のものであり、図8に示すように、鋼矢板1と控杭2をタイロッド3で直結し根入れ地盤とタイロッド取付点を支承している。なお、4は法覆(のりふく)工としての裏込石、5は鋼矢板1の上部をつなぐ上部工、6は舗装コンクリートを示す。また、鋼矢板1は、横方向に連続して壁状に地盤中に打ち込まれている。また、控杭2は控え直杭であり、鋼矢板1の背後地に打ち込まれている。
なお、鋼矢板1としてはU形、Z形、H形、直線形など種々のものがあり、断面性能についても多くの種類があり、使用目的や条件に応じて任意に選択できるので、もっとも広く使用されている。
既設の護岸構造物部分において、潮の満ち引きにより海面と接触したり接触しなかったりする部分(腐食劣化部)は腐食劣化が激しく、海中に潜っている部分(健全部)は腐食劣化が少ない。なお、この最良の形態の工法は、劣化していない健全部をできるだけ活かして形成されるものである。
(矢板式護岸構造物10の概要)
矢板式護岸構造物10は、劣化の少ない海底付近の既設鋼矢板1に打設されたスタッド11と、既設護岸の前面の海底に所定間隔で複数に打ち込まれた親抗12と、親杭頭部12aと既設上部抗5を緊結する締結具13と、親杭12間にを挿入され、海底面に打ち込まれたプレキャストパネル14と、既設鋼矢板1とプレキャストパネル14の間に打設された水中コンクリート(間詰めコンクリート)15と、既設上部工5と一体化して構築された新設の上部工16と、プレキャストパネル14に隣接する前面海底部に施工された根固工17とを備えている。
スタッド11は、劣化の少ない既設鋼矢板1の健全部1bに複数打設し、後で打設される間詰めコンクリート15と定着することで、既設鋼矢板1との定着性を高める機能を果たす。
親抗12は、H300程度のH形鋼であり、既設護岸(鋼矢板1)の前面(約1.0m)離れた海底に、それぞれの親抗12が1.5m〜2.5m間隔で打ち込まれる。親抗12は、バイブロハンマーを用いて打撃振動により打ち込まれる。
締結具13は、鉄筋コンクリート用棒鋼であり、既設上部抗5側に打ち込まれた棒鋼と親杭(H形鋼)頭部12aのフランジ部に固定され既設上部抗5側に突き出た棒鋼とから構成される。なり、既設上部抗5側に打ち込まれた棒鋼と親杭頭部12a側の棒鋼とは締結されている。
プレキャストパネル14は、幅1.5〜2.5m,t=200mm程度のコンクリート矢板であり、親抗12のフランジにプレキャストパネル14がかかるように親抗12間に挿入される(図2参照)。また、プレキャストパネル14は、バイブロハンマーを用いて打撃振動により打ち込まれる。
なお、コンクリート矢板は重量が大きく取扱いが不便である反面、腐食に対して有利であり、浅い水路側溝や簡単な永久土止め壁として用いられることが多い。コンクリート矢板としては鉄筋コンクリート矢板(RC矢板)、プレストレストコンクリート矢板(PC矢板)、加圧コンクリート矢板などがある。
(矢板式護岸構造物10の工法)
次に、本発明の矢板式護岸構造物の工法について説明する。なお、ここでは既設のタイロッド式構造の護岸構造物部分(図8参照)を図1に示す矢板式護岸構造物10に改修するものとして説明する。
まず、図3に示すように、既設鋼矢板1のうち劣化の少ない健全部1bにスタッド11を打設する。
次に、親抗12の打設位置に打設ガイドを設置し、この打設ガイドに沿って親抗12を既設護岸の前面の海底に2.5m間隔で立設する(図2参照)。次に、クレーン50の先端にバイブロハンマー51を設置し、クレーン作業によりバイブロハンマー51で親杭12を打ち込む。
次に、既設上部抗5側に棒鋼を打ち込むと共に、親杭(H形鋼)頭部12aのフランジ部に棒鋼を固定し、既設上部抗5側に打ち込まれた棒鋼と親杭頭部12a側の棒鋼とを締結する。
次に、図4に示すように、クレーン作業により親杭12間にプレキャストパネル14を挿入し、クレーン作業によりバイブロハンマー51でプレキャストパネル14を海底面に打ち込む。
次に、図5に示すように、ポンプ車60からノズルを介して既設鋼矢板1とプレキャストパネル14との間に水中不分離コンクリート(間詰めコンクリート)15を打設する。
次に、図6に示すように、既設上部工5と一体化して新設の上部工16を構築する。すなわち、上部工16の型枠を形成して鉄筋を配筋し、ポンプ車60からノズルを介してコンクリートを打設する。
次に、図7に示すように、クレーン50の先端にクラムシェル52を設置し、クレーン作業により打ち込まれたプレキャストパネル14に隣接する前面海底部を浚渫し、護岸水深を大きくする。例えば、1.5m浚渫する。
次に、図1に示すように、浚渫した前面海底部に根固工17を施工する。
このように矢板式護岸構造物の工法は、既設の矢板式護岸の改修を目的にしたものである。また、この工法では、護岸前面の海底面にプレキャストパネル14を打ち込み、既設矢板1とパネル14の間に間詰めコンクリート15を充填するもので、構造の単純化と施工の簡略化を図り、護岸の改修工事における工期短縮を図ったものである。また、航路幅等の確保を考慮し、護岸法線は極力前出ししない構造とすることができる。更に、既設護岸法線と改修後の護岸法線の差が小さく、航路幅の影響が少ない工法である。
更にまた、改修後の矢板式護岸構造物の断面構造は、プレキャストパネル14内に埋め込んだ鉄筋と、劣化の進んでいない深部(健全部1b)の鋼矢板1を活用した鋼・コンクリートのハイブリット構造となっている。そして、パネル14を海底面下に打ち込むことによって護岸改修後に海底面に浚渫でき、前面水深を大きくできる。
更にまた、劣化の進んでいない地中部および海底付近の既設鋼矢板(健全部1b)をそのまま活かした構造とするため、改修断面の構造を簡素化できる。また、作業船を使用せず、一部のダイバー作業を除き、全ての施工を陸上から行うことができ、工種が単純なため改修工期を短くできる。
更にまた、プレキャストパネルを海棲生物が生息し易い構造とすることにより、環境共生の護岸に改修することも可能である。
なお、上述の実施形態では、H形鋼の親杭やコンクリート矢板のプレキャストパネルを用いる場合で説明したが、本発明は、上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
本発明の矢板式護岸構造物を示す断面図である。 本発明の矢板式護岸構造物を示す正面図である。 本発明の矢板式護岸構造物の工法を示す説明図であり、親杭打設を示す。 本発明の矢板式護岸構造物の工法を示す説明図であり、パネル打設を示す。 本発明の矢板式護岸構造物の工法を示す説明図であり、間詰めコンクリート打設を示す。 本発明の矢板式護岸構造物の工法を示す説明図であり、上部工施工を示す。 本発明の矢板式護岸構造物の工法を示す説明図であり、護岸前面浚渫及び根固工施工を示す。 改修前の護岸構造物を示す断面図である。
符号の説明
1 鋼矢板
1a 腐食劣化部
1b 健全部
2 控杭
3 タイロッド
4 裏込石
5 上部工
6 舗装コンクリート
10 矢板式護岸構造物
11 スタッド
12 親杭
13 締結具
14 プレキャストパネル
15 水中不分離コンクリート(間詰めコンクリート)
16 上部工
17 根固工

Claims (3)

  1. 岸壁法面を被覆するために壁状に複数配列された鋼矢板と、前記鋼矢板の上部をそれぞれつなぐ上部工と、を備えた既設護岸構造物を改修して形成される矢板式護岸構造物であって、
    前記既設鋼矢板のうち劣化の少ない健全部に打設されたスタッドと、
    前記既設護岸の前面の海底に所定間隔で複数に打ち込まれた親抗と、
    前記親杭の頭部と前記既設上部工を緊結する締結具と、
    前記親杭間に挿入され、海底面に打ち込まれたプレキャストパネルと、
    前記既設鋼矢板とプレキャストパネルの間に打設された間詰めコンクリートと、
    前記既設上部工と一体化して構築された新設の上部工と、
    とを備えたことを特徴とする矢板式護岸構造物。
  2. 前記打ち込まれたプレキャストパネルに隣接する前面海底部に施工された根固工を備えた請求項1に記載の矢板式護岸構造物。
  3. 岸壁法面を被覆するために壁状に複数配列された鋼矢板と、前記鋼矢板の上部をそれぞれつなぐ上部工と、を備えた既設護岸構造物を改修する矢板式護岸構造物の工法であって、
    前記既設鋼矢板のうち劣化の少ない健全部にスタッドを打設するステップと、
    前記既設護岸の前面の海底に所定間隔で複数の親杭を打ち込むステップと、
    前記親杭の頭部と前記既設上部工を締結具で緊結するステップと、
    前記親杭間にプレキャストパネルを挿入し、海底面に打ち込むステップと、
    前記既設鋼矢板とプレキャストパネルの間に間詰めコンクリートを打設するステップと、
    前記既設上部工と一体化して新設の上部工を構築するステップと、
    前記打ち込まれたプレキャストパネルに隣接する前面海底部を浚渫するステップと、
    浚渫した前面海底部に根固工を施工するステップと、
    を備えたことを特徴とする矢板式護岸構造物の工法。
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