JP7495597B2 - 自動二輪車用タイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、自動二輪車用タイヤに関する。
自動二輪車については、タイヤがパンクしても手押しによって移動することができる。パンクした場合における車両手押し性能を向上させた、自動二輪車用タイヤが特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている自動二輪車用タイヤは、サイドウォール部に補強ゴム層を設けている。
特開2019-127044号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている自動二輪車用タイヤについては、手押しによって車両すなわち自動二輪車を移動させる際、発熱を抑え、かつ、車両手押し性能を向上させることに関して改善の余地がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、耐発熱性能を低下させずに、車両手押し性能を向上させることのできる自動二輪車用タイヤを提供することである。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある形態による自動二輪車用タイヤは、一対のビードコアと、タイヤ子午断面において、前記一対のビードコアそれぞれの廻りにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返された後、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側にサイドウォール部まで巻き上げられたカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に設けられたトレッド部とを有する自動二輪車用タイヤであって、前記トレッド部におけるタイヤ内腔面のタイヤ赤道面と交差しない位置に設けられた補強ゴム層を含み、前記補強ゴム層は、前記トレッド部の端部より、タイヤ幅方向内側に配置され、前記トレッド部は溝を有し、前記トレッド部のセンター領域から前記トレッド部のショルダー領域に向かうにしたがって、前記溝の深さは浅くなり、前記溝の深さの最大値に対する前記溝の深さの最小値の比が0.3以上1.0未満である自動二輪車用タイヤである。
前記補強ゴム層は、前記カーカス層のタイヤ幅方向の最大幅位置よりタイヤ径方向外側に配置されていることが好ましい。また、前記補強ゴム層は、タイヤ周方向に連続していることが好ましい。
タイヤ断面高さSHに対する、前記トレッド部の端部までの高さSLHの比SLH/SHが、0.55以上0.80以下であることが好ましい。
前記トレッド部のタイヤ幅方向の幅TRWに対する、前記トレッド部のセンター領域におけるラジアスRcの比Rc/TRWが、0.45以上0.65以下であることが好ましい。
前記トレッド部の端部から、前記補強ゴム層の最も近い端部までのタイヤ径方向の距離をHaとし、前記トレッド部の端部から、前記補強ゴム層の最も遠い端部までのタイヤ径方向の距離をHbとし、前記トレッド部の端部から、タイヤ内腔面とタイヤ赤道面との交差位置までのタイヤ径方向の距離をHxとした場合に、比Ha/Hxが0.00以上0.60以下であり、かつ、比Hb/Hxが0.60以上0.95以下であることが好ましい。
前記タイヤ赤道面から、前記補強ゴム層の最も近い端部までのタイヤ幅方向の距離をWaとし、前記タイヤ赤道面から、前記補強ゴム層の最も遠い端部までのタイヤ幅方向の距離をWbとした場合、前記トレッド部のタイヤ幅方向の幅TRWに対して、比Wa/(TRW/2)が0.05以上0.45以下であり、かつ、比Wb/(TRW/2)が0.40以上0.90以下であることが好ましい。
前記補強ゴム層の最大ゲージは、0.8mm以上8.0mm以下であることが好ましい。
前記タイヤ赤道面から前記補強ゴム層の最大ゲージ位置までのタイヤ幅方向の距離をWmaxとした場合、前記トレッド部のタイヤ幅方向の幅TRWに対して、比Wmax/(TRW/2)が0.20以上0.60以下であることが好ましい。
前記補強ゴム層を構成するゴムの硬度は50以上90以下であり、前記補強ゴム層を構成するゴムの60℃におけるtanδが0.08以上0.30以下であることが好ましい。
本発明によれば、耐発熱性能を低下させずに、車両手押し性能を向上させることができる。
図1は、本実施形態に係る自動二輪車用タイヤの子午断面図である。 図2は、補強ゴム層の厚みの変化の例を示す概念図である。 図3は、補強ゴム層の厚みの変化の例を示す概念図である。 図4は、変形例に係る自動二輪車用タイヤの子午断面図である。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。また、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換又は変更を行うことができる。
(自動二輪車用タイヤ)
図1は、本実施形態に係る自動二輪車用タイヤ100(以下、適宜、タイヤ100と呼ぶ)の子午断面図である。以下の説明において、タイヤ径方向とは、タイヤ100の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、上記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ100の上記回転軸に直交するとともに、タイヤ100のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあってタイヤ100のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
図1において、本実施形態に係るタイヤ100は、一対のビード部1と、カーカス層2と、一対のビードコア3と、インナーライナ4と、トレッド部5と、サイドウォール部6とを備える。ビード部1は、ビードコア3を含む。カーカス層2は、1枚以上のカーカスを含む。本例のカーカス層2は、2枚のカーカス21、22を含む。カーカス層2は3枚以上のカーカスを含んでいてもよい。カーカス21、22は、複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆された構造になっている。カーカスコードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。インナーライナ4は、カーカス層2の内腔側に設けられる。サイドウォール部6は、ビード部1とトレッド部5との間の領域である。
図1においては、左右一対のビード部1、1に2枚のカーカス21、22が装架されている。タイヤ100は、ビード部1、1におけるビードコア3,3の廻りにカーカス21、22のそれぞれの端部がタイヤ内側から外側に折り返して巻き上げたターンアップ構造を有する。カーカス21および22は、それぞれのカーカスコードがタイヤ周方向に対して90度未満の角度で傾斜しているバイアス構造をなしている。このためサイドウォール部6,6では巻き上げられる前のカーカス21、22と巻き上げられた後のカーカス21、22との4枚が重なってそれぞれのカーカス21、22のカーカスコードが互いに交差するクロスプライ構造をなしている。また、トレッド部5におけるタイヤ内腔側では、2枚のカーカス21、22が重なってそれぞれのカーカスコードが互いに交差する。タイヤ100は、図示しないリムにリム組みされる。
トレッド部5は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、タイヤ100のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面がタイヤ100の輪郭となる。トレッド部5の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、溝5Mが設けられている。
(ショルダー部の肩落ち量)
タイヤ子午断面において、リム径相当の位置ROからトレッド部5の端部51までの距離をSLHとする。タイヤ断面高さSHに対する、距離SLHの比SLH/SHが、0.55以上0.80以下であることが好ましい。比SLH/SHが0.55未満であると、距離SLHが小さく、タイヤパンク時のトレッド部の変形量が大きくなり、車両手押し性能(以下、手押し性能と略称することがある)が悪化するため好ましくない。比SLH/SHが0.80を超えると、距離SLHが大きく、ショルダー部のゲージが厚くなり、耐発熱性能が低下するため好ましくない。
タイヤ断面高さSHは、リム径相当の位置ROからトレッド部5の頂部までの高さである。また、タイヤ断面高さSHは、タイヤの外径とリム径との差の1/2に等しい。タイヤ断面高さSH、距離SLHは、以下の条件によって測定する。すなわち、タイヤ100を正規リムに組んだ後、正規内圧に設定し、24時間放置後、再び空気圧を0kPaに戻した状態でタイヤ断面高さSH、距離SLHを測定する。以下の各項目についても同様の条件で測定する。
ここで、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。例えば、正規内圧は、250kPaである。
(トレッド部のラジアス)
ここで、トレッド部5のタイヤ幅方向の幅をTRWとした場合に、赤道面CLを中心とし、トレッド部5のタイヤ幅方向の幅TRWの50%(すなわちTRW/2に相当)の領域をセンター領域Wcと定義する。また、センター領域Wcのタイヤ幅方向の両外側の領域をショルダー領域Wsと定義する。トレッド部5のセンター領域WcにおけるラジアスをRc、トレッド部5のタイヤ幅方向の幅をTRWとした場合に、比Rc/TRWは0.45以上0.65以下であることが好ましい。比Rc/TRWが0.45未満であると、トレッド部5のセンター領域WcにおけるラジアスRcが小さく、タイヤパンク時のトレッド部5の変形量が大きくなる。その場合、車両手押し性能が悪化するため好ましくない。比Rc/TRWが0.65を超えると、トレッド部5のセンター領域WcにおけるラジアスRcが大きくなる。その場合、ショルダー領域Wsのゲージが厚くなり、耐発熱性能が低下するため好ましくない。
(補強ゴム層)
図1において、タイヤ100は、補強ゴム層7aおよび7bを備えている。補強ゴム層7aおよび7bは、トレッド部5の両方の端部51、51の間の範囲内において、インナーライナ4に接触して設けられる。本実施形態において、補強ゴム層7aおよび7bは、インナーライナ4の内腔側に設けられている。補強ゴム層7aおよび7bは、トレッド部5のタイヤ内腔側のタイヤ赤道面CLと交差しない位置に設けられている。トレッド部5のタイヤ内腔側に補強ゴム層7aおよび7bを設けることにより、内圧が無充填状態においてもトレッド部5のバックリングを抑止できる。
自動二輪車用タイヤ100は、トレッド部5のタイヤ赤道面CLに近いセンター領域Wcの接地圧が高く、センター領域Wcにおけるゴムの発熱量が大きい。そこで、トレッド部5において、タイヤ赤道面CLと交差しない位置に補強ゴム層7aおよび7bを配置する。補強ゴム層7aおよび7bをこのように配置することにより、トレッド部5の剛性を高め、かつ、耐発熱性能を損なうことなく、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させる。
補強ゴム層7a、7bは、タイヤ赤道面CLがタイヤ内面に交差するトレッドセンターにおける、カーカス層2のタイヤ径方向最外側の位置PO2と、トレッド部5の端部55との間に配置されていることが好ましい。すなわち、補強ゴム層7a、7bは、カーカス層2のタイヤ幅方向の最大幅位置P2よりタイヤ径方向外側に配置されることが好ましい。この位置に補強ゴム層7a、7bを設けることにより、トレッド部5の接地面の剛性を保ち、手押し性能が向上する。
また、補強ゴム層7aおよび7bは、タイヤ周方向に連続して設けられていることが好ましい。補強ゴム層7aおよび7bが途切れることなくタイヤ周方向に連続して設けられていることにより、トレッド部5の接地面の剛性を保ち、手押し性能が向上する。補強ゴム層7aおよび7bが不連続または断続的に設けられていてもよい。
タイヤ子午断面において、トレッド部5の端部51から、補強ゴム層7aの最も近い端部までのタイヤ径方向の距離をHaとし、トレッド部5の端部51から、補強ゴム層7aの最も遠い端部までのタイヤ径方向の距離をHbとし、トレッド部5の端部51から、トレッド部5におけるタイヤ内腔面とタイヤ赤道面CLとの交差位置までのタイヤ径方向の距離をHxとした場合に、比Ha/Hxが0.00以上0.60以下であり、かつ、比Hb/Hxが0.60以上0.95以下であることが好ましい。補強ゴム層7bについても同様である。
また、比Ha/Hxが0.15以上0.25以下であり、かつ、比Hb/Hxが0.65以上0.80以下であることがより好ましい。補強ゴム層7bについても同様である。
タイヤ赤道面CLと交差しないトレッド部に補強ゴム層7a、7bを配置することで、耐発熱性能を損なうことなく、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させる。補強ゴム層7a、7bが上記範囲よりトレッドセンター側に設けられると耐発熱性能が低下するため好ましくない。補強ゴム層7a、7bが上記範囲よりショルダー側に設けられるとタイヤパンク時の車両手押し性能の向上効果が小さくなるため好ましくない。
タイヤ子午断面において、タイヤ赤道面CLから、補強ゴム層7aの最も近い端部72までのタイヤ幅方向の距離をWaとし、タイヤ赤道面CLから、補強ゴム層7aの最も遠い端部71までのタイヤ幅方向の距離をWbとした場合、トレッド部5のタイヤ幅方向の幅TRWに対して、比Wa/(TRW/2)が0.05以上0.45以下であり、かつ、比Wb/(TRW/2)が0.40以上0.90以下であることが好ましい。補強ゴム層7bの最も近い端部74および最も遠い端部73についても同様である。
また、比Wa/(TRW/2)が0.15以上0.25以下であり、かつ、比Wb/(TRW/2)が0.55以上0.65以下であることがより好ましい。補強ゴム層7bについても同様である。
トレッド部5の、タイヤ赤道面CLと交差しない位置に補強ゴム層7a、7bを配置することにより、耐発熱性能を損なうことなく、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させることができる。補強ゴム層7a、7bが上記範囲よりトレッドセンター側に設けられていると、耐発熱性能が低下するため好ましくない。また、補強ゴム層7a、7bが上記範囲よりショルダー側に設けられていると、タイヤパンク時の車両手押し性能の向上効果が小さくなるため好ましくない。
(補強ゴム層の最大ゲージ)
タイヤ子午断面において、補強ゴム層7aの最も厚い場所のゲージすなわち最大ゲージGamaxは、0.8mm以上8.0mm以下であることが好ましい。補強ゴム層7bについても同様である。
補強ゴム層7aの最大ゲージGamaxは、0.8mm以上8.0mm以下であることがより好ましい。補強ゴム層7bについても同様である。
補強ゴム層7a、7bの最大ゲージGamaxが上記範囲を満たすことで、耐発熱性能を低下させることなく、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させることができる。最大ゲージGamaxが上記範囲より小さいと、トレッド部5の剛性が低下し、タイヤパンク時の車両手押し性能が低下するため好ましくない。また、最大ゲージGamaxが上記範囲より大きいと耐発熱性能が低下するため好ましくない。
ところで、補強ゴム層7a、7bの最大ゲージGamaxの位置は、1箇所に限らず、最大ゲージGamaxである範囲が連続していてもよい。図2および図3は、補強ゴム層7aの厚みの変化の例を示す概念図である。
図2の場合、補強ゴム層7aの最大ゲージGamaxの位置は、1箇所である。図2に示すように、補強ゴム層7aの厚みは、最大ゲージGamaxの位置から、端部71に向かって徐々に低下する。また、補強ゴム層7aの厚みは、最大ゲージGamaxの位置から、端部72に向かって徐々に低下する。補強ゴム層7aの最大ゲージGamaxの位置は、端部71から端部72までの中央位置であってもよいし、中央位置でなくてもよい。
図3の場合、補強ゴム層7aの最大ゲージGamaxである範囲H7が連続している。図3に示すように、補強ゴム層7aの厚みは、最大ゲージGamaxである範囲H7の端部の位置から、端部71に向かって徐々に低下する。また、補強ゴム層7aの厚みは、最大ゲージGamaxである範囲H7の端部の位置から、端部72に向かって徐々に低下する。範囲H7の位置は、端部71から端部72までの中央位置であってもよいし、中央位置でなくてもよい。なお、補強ゴム層7bについても同様である。
なお、カーカス層2が2枚以上のカーカスを含む場合において、各カーカス間に、補強ゴム層を備えても良い。すなわち、複数の補強ゴム層を備えていてもよい。その場合、補強ゴム層の合計ゲージは、最大ゲージGamaxの位置において2.0mm以上12.0mm以下であることが好ましい。
また、タイヤ子午断面において、タイヤ赤道面CLから補強ゴム層7aの最大ゲージ位置までのタイヤ幅方向の距離をWmaxとした場合、トレッド部5のタイヤ幅方向の幅TRWに対して、比Wmax/(TRW/2)が0.20以上0.60以下であることが好ましい。補強ゴム層7bについても同様である。
比Wmax/(TRW/2)が上記範囲を満たすことで、耐発熱性能を低下させることなく、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させることができる。比Wmax/(TRW/2)が上記範囲より小さいと、トレッド部5の剛性が低下し、タイヤパンク時の車両手押し性能が低下するため好ましくない。また、比Wmax/(TRW/2)が上記範囲より大きいと耐発熱性能が低下するため好ましくない。
(補強ゴム層の物性など)
補強ゴム層7a、7bを構成するゴムの硬度は50以上90以下であり、補強ゴム層7a、7bを構成するゴムの60℃における損失正接tanδが0.08以上0.30以下であることが好ましい。補強ゴム層7a、7bを構成するゴムの硬度が上記範囲を満たすことで、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させることができる。補強ゴム層7a、7bを構成するゴムの硬度が上記範囲より小さいと、トレッド部5の剛性が低下し、タイヤパンク時の車両手押し性能が低下するため好ましくない。また、損失正接tanδ(60℃)が上記の範囲を満たすことで、タイヤの耐発熱性能が向上する。
上記における硬度はJIS-A硬さであり、JIS K-6253に準拠して、Aタイプのデュロメータを用いて温度20℃の条件にて測定されるデュロメータ硬さである。上記の損失正接tanδはJIS-K6394に準拠して求められる。損失正接tanδは、(株)東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、温度60[℃]、剪断歪み10[%]、振幅±0.5[%]および周波数20[Hz]の条件で測定される。
ところで、トレッド部5は溝5Mを有することが好ましい。また、トレッド部5の赤道線CL付近のセンター領域Wcからトレッド部5のショルダー領域Wsに向かうにしたがって、溝5Mの深さMDは浅くなることが好ましい。そして、溝5Mの深さMDの最大値に対する溝5Mの深さMDの最小値の比が0.3以上1.0未満であることが好ましい。自動二輪車用のタイヤは、通常、トレッド部5のセンター領域Wcにおいて摩耗しやすい。そのため、摩耗速度が遅いショルダー領域Wsにおいて溝5Mの深さMDを浅くすることによって、トレッド部5の剛性を高め、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させることができる。なお、溝5Mの深さMDは、例えば、1mm以上10mm以下である。
上述したように、カーカス層2は積層された複数のカーカス21、22を含み、複数のカーカス21、22それぞれのカーカスコードがタイヤ周方向に対して90度未満の角度で傾斜しているバイアス構造を有する。特に、トレッドセンター領域Wcのラジアスが小さいバイアスタイヤに補強ゴム層7a、7bを設けることにより、タイヤパンク時の車両手押し性能の向上の効果を発揮できる。
(変形例)
図1を参照して説明した実施形態では、インナーライナ4のタイヤ内腔側に補強ゴム層7a、7bが配置されているが、その代わりにカーカス層2とインナーライナ4との間に、補強ゴム層が配置されていてもよい。
図4は、変形例に係る自動二輪車用タイヤの子午断面図である。図4に示すように、カーカス層2を構成するカーカス22とインナーライナ4との間に、補強ゴム層7c、7dが配置されていてもよい。図4に示す補強ゴム層7cの端部75、76の位置についても、上記と同様に、比Wa/(TRW/2)が0.05以上0.45以下であり、かつ、比Wb/(TRW/2)が0.40以上0.90以下であることが好ましい。補強ゴム層7dの端部77、78の位置についても同様である。これらの条件を満たすことにより、耐剥離性能および耐発熱性能を損なうことなく、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させることができる。
また、図1、図4を参照して説明した実施形態は、自動二輪車に限らず、自動三輪車のタイヤについても適用できる。すなわち、1つの前輪および2つの後輪を有する自動三輪車、2つの前輪および1つの後輪を有する自動三輪車に、補強ゴム層7a、7bまたは補強ゴム層7c、7dを設けてもよい。これらの補強ゴム層を設けることにより、自動三輪車のタイヤについても、耐発熱性能を損なうことなく、タイヤパンク時の車両手押し性能を向上させることができる。
(まとめ)
自動二輪車は、タイヤに内圧を充填していない状態でも手押しによる移動が可能という四輪自動車とは異なる特徴がある。しかし、車両の手押しによる移動が可能であるとはいえ、内圧を充填していない状態では、車両を押し難いという課題があった。また、補強ゴム層を配置することで車両の押し易さ向上に繋がるが、その配置や厚さによっては、押し心地が悪化し、手押し性能が低下する懸念もある。そこで、上記のように適切な位置に補強ゴム層を設けることにより、タイヤの空気圧が充填されない状態でのタイヤの潰れ量を低減し、車両の手押し性能および耐発熱性能を改善した自動二輪車用タイヤを実現できる。
(実施例)
本実施例では、条件が異なる複数種類の自動二輪車用タイヤについて、車両を押したときの手押し性能および耐発熱性能について評価した。タイヤサイズ90/90-12 54Jの自動二輪車タイヤを、正規リムにリム組みし、試験車両に装着した。本実施例では、ETRTO記載の標準リムが用いられた。
車両の手押し性能については、モニターによる押し心地(フィーリング)の官能評価を行った。タイヤを車両に装着し、内圧が無充填状態(0kPa)で、車両を手押しにて100m移動させた際の、押し心地の官能評価を行った。手押し性能は、後述する従来例を基準(100)とした指数評価を行った。数値が大きいほど押し易く、手押し性能が良好である。
耐発熱性能に関する評価には、室内ドラム試験機が用いられた。自動二輪車用タイヤを規格空気圧(250kPa)、かつ、規格荷重(2.08kN)とし、速度80km/hにて2時間走行した後のタイヤの発熱量を測定した。そして、この測定結果に基づいて後述する従来例を基準(100)とした指数評価を行った。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
表1から表4に示す実施例1から実施例33の自動二輪車用タイヤは、トレッド部5のタイヤ内腔側のタイヤ赤道面CLと交差しない位置に、補強ゴム層を含む自動二輪車用タイヤである。また、表1から表4に示す実施例1から実施例33の自動二輪車用タイヤにおいて、補強ゴム層の配置領域はトレッド領域のみであり、補強ゴム層はタイヤ周方向に連続している。
表1から表4に示す実施例1から実施例33の自動二輪車用タイヤは、補強ゴム層を有し、比SLH/SHが0.55以上0.80以下であるものとそうでないもの、比Rc/TRWが0.45以上0.65以下であるものとそうでないもの、比Ha/Hxが0.00以上0.60以下であるものとそうでないもの、比Hb/Hxが0.60以上0.95以下であるものとそうでないもの、比Wa/(TRW/2)が0.05以上0.45以下であるものとそうでないもの、比Wb/(TRW/2)が0.40以上0.90以下であるものとそうでないもの、補強ゴム層の最大ゲージが0.8mm以上8.0mm以下であるものとそうでないもの、比Wmax/(TRW/2)が0.20以上0.60以下であるものとそうでないもの、補強ゴム層のゴムの硬度が50以上90以下であるものとそうでないもの、補強ゴム層のゴムのtanδ(60℃)が0.08以上0.30以下であるものとそうでないもの、溝の深さがセンター領域Wcにおいて深いもの(表中の「A」)、または、ショルダー領域Wsにおいて深いもの(表中の「B」)、溝の深さの最大値に対する最小値の比が0.3以上1.0未満であるものとそうでないもの、である。
表1において、従来例のタイヤは、補強ゴム層を有しておらず、比SLH/SHが0.52、比Rc/TRWが0.45、センター領域Wcの溝深さよりもショルダー領域Wsの溝深さの方が大きい、自動二輪車用タイヤである。
表1において、比較例のタイヤは、サイドウォール部に補強ゴム層を設けており、比SLH/SHが0.52、比Rc/TRWが0.45、センター領域Wcの溝深さよりもショルダー領域Wsの溝深さの方が大きい、自動二輪車用タイヤである。
表1から表4に示す実施例1から実施例33を参照すると、補強ゴム層を有し、比SLH/SHが0.55以上0.80以下である場合、比Rc/TRWが0.45以上0.65以下である場合、比Ha/Hxが0.00以上0.60以下である場合、比Hb/Hxが0.60以上0.95以下である場合、比Wa/(TRW/2)が0.05以上0.45以下である場合、比Wb/(TRW/2)が0.40以上0.90以下である場合、補強ゴム層の最大ゲージが0.8mm以上8.0mm以下である場合、比Wmax/(TRW/2)が0.20以上0.60以下である場合、補強ゴム層のゴムの硬度が50以上90以下である場合、補強ゴム層のゴムのtanδ(60℃)が0.08以上0.30以下である場合、溝の深さがセンター領域Wcにおいて深い場合(表中の「A」)、溝の深さの最大値に対する最小値の比が0.3以上1.0未満である場合に、良好な結果が得られることがわかる。補強ゴム層7a、7bを設けることによって、自動二輪車用タイヤの重量が増加するものの、内圧が無充填状態においてもトレッド部5のバックリングを抑止できるため、耐発熱性能を低下させずに、車両手押し性能を向上させることができる。
Figure 0007495597000001
Figure 0007495597000002
Figure 0007495597000003
Figure 0007495597000004
1 ビード部
2 カーカス層
3 ビードコア
4 インナーライナ
5 トレッド部
5M 溝
6 サイドウォール部
7a、7b、7c、7d 補強ゴム層
21、22 カーカス
100 自動二輪車用タイヤ
CL タイヤ赤道面
Wc センター領域
Ws ショルダー領域

Claims (10)

  1. 一対のビードコアと、タイヤ子午断面において、前記一対のビードコアそれぞれの廻りにタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返された後、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側にサイドウォール部まで巻き上げられたカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ径方向外側に設けられたトレッド部とを有する自動二輪車用タイヤであって、
    前記トレッド部におけるタイヤ内腔面のタイヤ赤道面と交差しない位置に設けられた補強ゴム層を含み、
    前記補強ゴム層は、
    前記トレッド部の端部より、タイヤ幅方向内側に配置され
    前記トレッド部は溝を有し、
    前記トレッド部のセンター領域から前記トレッド部のショルダー領域に向かうにしたがって、前記溝の深さは浅くなり、
    前記溝の深さの最大値に対する前記溝の深さの最小値の比が0.3以上1.0未満である
    自動二輪車用タイヤ。
  2. 前記補強ゴム層は、
    前記カーカス層のタイヤ幅方向の最大幅位置よりタイヤ径方向外側に配置された請求項1に記載の自動二輪車用タイヤ。
  3. 前記補強ゴム層は、タイヤ周方向に連続している請求項1または2に記載の自動二輪車用タイヤ。
  4. タイヤ断面高さSHに対する、前記トレッド部の端部までの高さSLHの比SLH/SHが、0.55以上0.80以下である請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
  5. 前記トレッド部のタイヤ幅方向の幅TRWに対する、前記トレッド部のセンター領域におけるラジアスRcの比Rc/TRWが、0.45以上0.65以下である請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
  6. 前記トレッド部の端部から、前記補強ゴム層の最も近い端部までのタイヤ径方向の距離をHaとし、前記トレッド部の端部から、前記補強ゴム層の最も遠い端部までのタイヤ径方向の距離をHbとし、前記トレッド部の端部から、タイヤ内腔面とタイヤ赤道面との交差位置までのタイヤ径方向の距離をHxとした場合に、
    比Ha/Hxが0.00以上0.60以下であり、かつ、
    比Hb/Hxが0.60以上0.95以下である
    請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
  7. 前記タイヤ赤道面から、前記補強ゴム層の最も近い端部までのタイヤ幅方向の距離をWaとし、前記タイヤ赤道面から、前記補強ゴム層の最も遠い端部までのタイヤ幅方向の距離をWbとした場合、前記トレッド部のタイヤ幅方向の幅TRWに対して、
    比Wa/(TRW/2)が0.05以上0.45以下であり、かつ、
    比Wb/(TRW/2)が0.40以上0.90以下である
    請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
  8. 前記補強ゴム層の最大ゲージは、0.8mm以上8.0mm以下である
    請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
  9. 前記タイヤ赤道面から前記補強ゴム層の最大ゲージ位置までのタイヤ幅方向の距離をWmaxとした場合、前記トレッド部のタイヤ幅方向の幅TRWに対して、
    比Wmax/(TRW/2)が0.20以上0.60以下である
    請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ。
  10. 前記補強ゴム層を構成するゴムの硬度は50以上90以下であり、前記補強ゴム層を構成するゴムの60℃におけるtanδが0.08以上0.30以下である
    請求項1から請求項9のいずれか1つに記載の自動二輪車用タイヤ
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