JP7479304B2 - 粘弾性ダンパで配管を支持する支持構造 - Google Patents
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Description
特許文献3には、「建築物12に取り付けたロッド体14の先端部にピストン14bを形成する。基礎部16に取り付けた筒状ケース体18内に皿ばね20を積層状態で収納し、この皿ばね20を筒状ケース体18の底部18aと、筒状ケース体18内に摺動可能に挿入したピストン14bとの間に挟持する。皿ばね20の鉛直ばね定数を、建築物12の静的荷重W1が作用した状態で、皿ばね20の鉛直ばね特性Sの変位点Pに位置するように予め設定する。筒状ケース体18の内部を密閉して粘性流体を封入する。ピストン14bに上下両側面を貫通するオリフィス22を形成する。」(第1頁;要約の解決手段)と記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載された固定部材における、摩擦による配管応答減衰は、静止摩擦力が動摩擦力より大きいという特性を有しているため、配管系の熱移動に追従させられない問題があった。
しかしながら、特許文献2に記載された永久磁石は、ピストンの両側に配置されていることから、配管の自重荷重を支持できない問題があった。
また、特許文献2に記載された配管用制御装置は、取付用アイに取付ボルトを通すことで、配管を支持する支持具と接続することにより、配管系への取付を行っており、熱移動量の大きい配管系には適用できない問題点があった。
しかしながら、特許文献3に記載された免振装置は、皿ばねの弾性力が据付前に予め決められている必要があるため、装置を分解しないと、支持する荷重を変更できない問題点があった。
そして、本発明の粘弾性ダンパで配管を支持する支持構造の粘弾性ダンパは、ピストン部が移動する際に粘性流体が通過するための穴が、ピストン部に設けられ、弾性体の弾性力によってピストン部が移動することにより、支持する対象物に天板部の天板が接触する構成である。
さらに、本発明の粘弾性ダンパで配管を支持する支持構造は、上記の構成の粘弾性ダンパを使用して支持する対象物が配管であり、少なくとも配管を下方から支持する位置および配管を上方から支持する位置にそれぞれ粘弾性ダンパが設置された構成である。
さらに、上記の粘弾性ダンパにおいて、穴は、ピストン部が対象物に向かう方向に移動する際には穴の断面積が大きくなり、ピストン部が対象物から離れる方向に移動する際には穴の断面積が小さくなる機構を有し、この機構は、穴がピストン部の底を貫通する穴であって、穴の中間部に穴の他の部分より幅の広い空間が設けられ、空間内に穴の他の部分より幅の大きい球状の物体が入れられて、空間の両側の穴の断面を共に四角形状として、両側の穴で四角形の辺の長さ又は縦横比が異なることにより、両側の穴で球状の物体との隙間の大きさが異なる構成である。
さらに、本発明の粘弾性ダンパは、ピストン部と天板部を接離可能に係合し、ピストン部の底から天板部の天板までの高さを変化させることが可能な機構部と、を備える。
そして、本発明の粘弾性ダンパは、ピストン部が移動する際に粘性流体が通過するための穴が、ピストン部に設けられ、弾性体の弾性力によってピストン部が移動することにより、支持する対象物に天板部の天板が接触する構成である。
弾性体として、バネを用いた場合には、弾性体を比較的簡単な構成とすることができ、弾性体が占める容積を小さくできる。
なお、弾性体は、バネに限定されず、ゴム等の他の弾性体を用いることも可能である。
この構成としたときには、弾性体の弾性力によって、天板部の天板を、粘弾性ダンパが支持する対象物の移動に追随させて、対象物に接触させることができる。
上記の機構部にネジを採用する場合には、例えば、天板部とピストン部にネジを設けて、天板部を回すことにより、ピストン部の底から天板部の天板までの高さを変化させる。
上記の機構部にターンバックルを採用する場合には、例えば、建築用の鋼製束に使用されているターンバックルと同様に、ターンバックルを回すことにより、上下の板の間隔を変化させる。
例えば、天板部とピストン部のうち、一方に突起部、他方に深さの異なる溝をそれぞれ設けて、突起部を溝に差し込むことで、ピストン部の底から天板部の天板までの高さが決まる構成が考えられる。突起部は、中心軸から放射状に2個以上設けて、突起部と同じ個数で同じ深さの溝を1組として、深さの異なる複数の組の溝を設ける。この構成では、天板部を持ち上げて、突起部を差し込む溝を変えることにより、高さを変化させることができる。
そして、メンテナンスや上記の高さを変える必要がある際に、機構部を調整して、高さを変える。
そして、例えば、天板部の方を円柱形、ピストン部の方を円筒形とすれば、天板部を簡略化及び小型化できる。
ピストン部に設ける穴の個数や位置は限定されないが、特に、ピストン部の中心軸からの距離が同じで、中心軸から見た角度が等間隔であるように、2個以上の穴を設ければ、穴を通過して移動する粘性流体からピストン部が受ける力が均等になる。
このような機構を設けることにより、ピストン部が対象物に向かい方向に移動する際に、穴の断面積を大きくして粘性抵抗が小さくなるので、ピストン部が移動しやすくなり、天板及びピストン部が対象物の移動に追随しやすくなる。また、ピストン部が対象物から離れる方向に移動する際に、穴の断面積を小さくして粘性抵抗が大きくなるので、対象物の振動が減衰する。
なお、上記の穴の断面積が変わる機構の構成は、以下の例に限定されるものではなく、他の構成を採用することも可能である。
さらに、例えば、空間の上側(天板部側)の穴の断面を円形状にして、空間の底側(弾性体)側の穴の断面を四角形状にして、球状の物体を空間に入れる構成が考えられる。このように構成すると、ピストン部が下降する際は、粘性流体により物体が上側に押されるので、円形状の穴を球状の物体が完全に塞ぐ。一方、ピストン部が上昇する際は、粘性流体により物体が下側に押されるので、四角形状の穴を球状の物体が塞ぐが、四角形状の穴と球状の物体との間に隙間が残ることから、ピストン部が下降する際と比較して、穴の断面積が隙間の分大きくなる。
なお、空間の上側の穴と下側の穴の断面を共に四角形状として、空間の上側の穴と空間の底側の穴とで、四角形の辺の長さ又は縦横比を変えて、下側の穴の方を上側の穴よりも球状の物体との隙間が大きい構成としても、同様に穴の断面積を変えることができる。
さらに、例えば、空間以外の穴の断面を円形状にして、球状の物体を空間に入れ、球状の物体の材質を、粘性流体と比重が同程度の物質、又は粘性流体より比重が軽い物質とする。このように構成すると、ピストン部が下降する際は、(1)と同様に空間の上側の穴が物体で塞がれるが、ピストン部が上昇する際は、粘性流体が下方に押す力に対して浮力等が抗力となるので、空間の底側の穴が物体で塞がれにくくなる。このように、空間の底側の穴が塞がれにくいので、(1)の構成と比較して、穴の断面積の変化を大きくすることができる。
扉状の部材の枚数は、1枚のみの構成も、穴を囲うように複数枚に分けた構成も、可能である。
ただし、前述したピストン部の穴の断面積が変化する機構は、特に対象物を下方から支持する位置に設置された場合に、有効である。対象物を上方から支持する位置や、対象物を側方から支持する位置に、粘弾性ダンパが設置される場合には、対象物を支持する方向に合うように当該機構の構成を変更するか、当該機構を設けない。
これにより、粘弾性ダンパを分解しなくても、機構部を調整することによってピストン部の底から天板部の天板までの高さを変化させて、粘弾性ダンパが支持する荷重を調整できる。
これにより、粘性抵抗によって、ピストン部が移動する方向と同じ方向の対象物の振動を減衰できるので、対象物の地震応答を低減できる。
これにより、粘性抵抗を大きくして、対象物の振動を大きく減衰させたり、粘性抵抗を小さくして、ピストン部が対象物の動きに追随しやすくしたりすることができる。
以下、本発明の実施例1の粘弾性ダンパを、図1~図2を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1の粘弾性ダンパの全貌を示す破断側面図である。
そして、粘弾性ダンパ1は、天板2と、ピストン部4と、ハウジング部5と、コイルバネ6と、を備え、建物床11の上に設置されている。
また、天板2と、天板2から下方に延びる接続部3aとにより、天板部3が構成される。
下部板4aは、水平な板状であり、例えば、円板状に形成されている。
流量調整穴4bは、下部板4aを貫通しており、下部板4aに2個以上設けられている。
主軸部4cは、上下に延びて形成され、下端部が下部板4aに接続され、上端部が上部板4dに接続されている。
上部板4dは、水平な板状であり、例えば、円板状に形成されている。上部板4dは、下部板4aよりも、横幅(下部板4a及び上部板4dが共に円板状の場合は直径)が大きく形成されている。
収容部4eは、上部板4dの上に設けられ、天板部3の接続部3aを収容する。
そして、ハウジング部5は、本体部5aと底板5bで囲まれた空間に、粘性流体を内包している。
また、ハウジング部5の穴5cを通すように、ピストン部4が取り付けされている。即ち、ピストン部4の上部板4dはハウジング部5の外部にあるが、下部板4aはハウジング部5の内部に挿入されている。そして、下部板4aは、ハウジング部5内の空間を、上部空間7aと下部空間7bに仕切っている。
コイルバネ6は、その自然長よりも縮められた状態で下部板4aと底板5bの間に取り付けられている。即ち、コイルバネ6の弾性力によって、ピストン部4の下部板4aは、ハウジング部5の底板5bから離れ、支持する対象物である配管100に向かう方向(図1の場合は上方向)に作用する力が加えられる。これにより、この粘弾性ダンパ1は、配管100の自重荷重をコイルバネ6の弾性力により支持することができる。
この機構は、上部空間7aから下部空間7bに粘性流体が移動する際には、流量調整穴4bの断面積が大きくなり粘性抵抗を小さくし、逆に下部空間7bから上部空間7aに粘性流体が移動する際には、流量調整穴4bの断面積が小さくなり粘性抵抗を大きくする。
この機構により、粘弾性ダンパ1は、配管100が下方に移動した際に反力を与えることで、地震等による上下の振動を減衰させる。
即ち、配管100が下方に移動した際には、天板2及びピストン部4が下方(配管100から離れる方向)に移動し、下部空間7bの粘性流体が流量調整穴4bを通して上部空間7aに移動することで、ピストン部4に粘性抵抗が上方に作用する。このとき、流量調整穴4bは断面積が小さくなることで、より大きな粘性抵抗を発生させる。また、コイルバネ6の弾性力も上方に作用する。これらの反力により、配管100の振動を減衰させる。
一方、配管100が上方に移動した際には、コイルバネ6の弾性力によりピストン部4が上方(配管100に向かう方向)に押し上げられ、上部空間7aの粘性流体が流量調整穴4bを通して下部空間7bに移動する。このとき、流量調整穴4bは、その断面積が大きくなることにより、発生する粘性抵抗が小さくなり、ピストン部4の移動を妨げにくくなる。これにより、天板2及びピストン部4が配管100の上昇に追従できるようにする。
このようにして、配管100の下降時に反力を発生することで、振動を減衰させる効果を発揮する。
この機構により、天板部3の接続部3aと、ピストン部4の上板部4dとの間の空間8の高さが変化するので、その結果、ピストン部4の下部板4aから天板部3の天板2までの高さHも変化する。
これに対して、図2は、空間8を高くして、高さHを大きくするように調整した状態を示す破断側面図である。
一方、空間8を低くして、高さHを小さくするように調整したときには、図1に示すように、コイルバネ6が伸び、より小さな弾性力が上方に作用することになる。
このように、空間8の高さを変化させて高さHを調整することによって、コイルバネ6から作用する弾性力の大きさを調整して、粘弾性ダンパ1が支持する荷重を調整できる。
しかし、本実施例の粘弾性ダンパ1では、天板2が配管100と接触しているのみで固定されていないことから、図1~図2の左右方向及び紙面に垂直な方向の配管100の熱移動に対しては、この粘弾性ダンパ1が配管100に反力を加えることはない。
一方、上下方向の配管100の熱移動に対しては、配管100の移動に伴い天板2及びピストン部4が上下し、コイルバネ6が伸び縮みすることで弾性力が変化する。そこで、コイルバネ6のバネ定数を十分小さいものにしておくことにより、弾性力の変化を小さくすることができ、熱移動に対する反力を無視可能な程度にできる。このようにして、配管100の熱移動を拘束しない機構とすることが好ましい。
この機構部によって、高さHを変化させることにより、ハウジング部5とピストン部4を接続するコイルバネ6の状態を変化させて、コイルバネ6から作用する弾性力の大きさを変化できる。
これにより、粘弾性ダンパ1を分解しなくても、機構部を調整することによってピストン部4の底から天板部3の天板2までの高さHを変化させて、粘弾性ダンパ1が支持する荷重を調整できる。
これにより、粘性抵抗によって、ピストン部4を移動させる上下方向の配管100の振動を減衰できるので、配管100の地震応答を低減できる。
これにより、粘性抵抗を大きくして、配管100の振動を大きく減衰させたり、粘性抵抗を小さくして、ピストン部4が配管100の動きに追随しやすくしたりすることができる。
次に、本発明の実施例2の粘弾性ダンパを、図3を参照して説明する。なお、図3において、図1~図2と同一の符号は同一の部品を示すので、再度の説明は省略する。
実施例2では、建物床11に固定された架構12に粘弾性ダンパを固定することとし、配管100の上方と下方の両方に粘弾性ダンパを設置する点が実施例1と比較した場合の変更点である。
図3は、本発明の実施例2の粘弾性ダンパの全貌を示す概略側面図である。
即ち、粘弾性ダンパ(第2の粘弾性ダンパ)21は、底板5bが上方にあり、天板2が下方にあって下方の配管100に接触するように、設置されている。
このように、配管100の上方に粘弾性ダンパ21を設置することで、配管100に地震等による上下振動が発生した際に、配管100の上昇時及び下降時の両方で反力を発生できるため、振動減衰の効果を高めることができる。
従って、粘弾性ダンパ(第2の粘弾性ダンパ)21では、配管100の振動や移動に対する応答の方向に合わせて、穴の断面積が変化する機構の構成を変更するか、あるいは、穴の断面積が変化する機構を設けないで、断面積が変化しない通常の穴とする。
これにより、配管100の下方のみに粘弾性ダンパ1を設置した場合と比較して、振動減衰の効果を高めることができる。
実施例1では、配管100の下方に1個の粘弾性ダンパ1を配置し、実施例2では、配管100の下方及び上方にそれぞれ合計2個の粘弾性ダンパ1,21を設置していた。
配管に対して設置する粘弾性ダンパの数は1個又は2個に限定されず、例えば、特許文献1のワイヤーロープ耐震サポートのように、配管の上下左右に合計4個の粘弾性ダンパを設置することも可能である。
本発明の粘弾性ダンパは、配管系の支持の用途には限定されず、その他の対象物の支持の用途に適用することが可能である。例えば、建物やその他の重量物を対象物とする支持の用途にも、本発明の粘弾性ダンパを適用することができる。
粘弾性ダンパのピストン部の底に、実施例1の流量調整穴4bの代わりに、断面積が変化せずに断面積が一定である穴を設けることも可能である。そして、断面積が一定である穴を設けた場合でも、穴を通る粘性流体によりピストン部の動きに対して粘性抵抗を発生させて、ピストン部が動く方向の対象物の振動を減衰できるので、対象物の地震応答を低減できる。
Claims (4)
- 粘性流体を内包するハウジング部と、
前記ハウジング部に挿入されたピストン部と、
前記ハウジング部の内部に収納され、前記ピストン部と接続された弾性体と、
板状の天板を有し、前記ピストン部の前記ハウジング部とは反対側に設けられた天板部と、
前記ピストン部と前記天板部を接離可能に係合して、前記ピストン部の底から前記天板部の前記天板までの高さを変化させることが可能な機構部と、を備え、
前記ピストン部が移動する際に前記粘性流体が通過するための穴が、前記ピストン部に設けられ、
前記弾性体の弾性力によって前記ピストン部が移動することにより、支持する対象物に前記天板部の前記天板が接触する粘弾性ダンパを使用して、
支持する前記対象物が配管であり、少なくとも前記配管を下方から支持する位置および前記配管を上方から支持する位置にそれぞれ前記粘弾性ダンパが設置され、
前記粘弾性ダンパにおいて、前記穴は、前記ピストン部が前記対象物に向かう方向に移動する際には前記穴の断面積が大きくなり、前記ピストン部が前記対象物から離れる方向に移動する際には前記穴の断面積が小さくなる機構を有し、
前記機構は、前記穴が前記ピストン部の底を貫通する穴であって、前記穴の中間部に前記穴の他の部分より幅の広い空間が設けられ、前記空間内に前記穴の他の部分より幅の大きい球状の物体が入れられて、前記空間の両側の前記穴の断面を共に四角形状として、両側の前記穴で四角形の辺の長さ又は縦横比が異なることにより、両側の前記穴で前記球状の物体との隙間の大きさが異なる構成である
粘弾性ダンパで配管を支持する支持構造。 - 前記弾性体は、前記ピストン部が前記対象物に向かう方向に弾性力を作用させる、請求項1に記載の粘弾性ダンパで配管を支持する支持構造。
- 前記機構部は、前記ピストン部と前記天板部にそれぞれ設けられたネジで構成され、前記天板部に設けられたネジを回転させることにより、前記ピストン部の底から前記天板部の前記天板までの高さが変化する請求項1に記載の粘弾性ダンパで配管を支持する支持構造。
- 前記弾性体がバネである請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の粘弾性ダンパで配管を支持する支持構造。
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