JP7472579B2 - 蓄電素子用正極及び蓄電素子 - Google Patents

蓄電素子用正極及び蓄電素子 Download PDF

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Description

本発明は、蓄電素子用正極及び蓄電素子に関する。
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。上記非水電解質二次電池は、一般的には、セパレータで電気的に隔離された一対の電極と、この電極間に介在する非水電解質とを有し、両電極間でイオンの受け渡しを行うことで充放電するよう構成される。また、非水電解質二次電池以外の蓄電素子として、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタも広く普及している。
このような蓄電素子の正極に電子伝導性が良好なカーボンナノチューブを添加することで、充放電サイクル性能が改善することが知られている(特許文献1参照)。
特開2003-77476号公報
上記蓄電素子としては、各種用途において高い充放電サイクル性能を有することが求められている。しかしながら、カーボンナノチューブを正極に添加しても、必ずしも充放電サイクル性能が改善しない場合がある。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、カーボンナノチューブを用いて蓄電素子の充放電サイクル性能を確実に向上できる蓄電素子用正極を提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る蓄電素子用正極は、正極活物質とカーボンナノチューブとを含む正極合剤層を有し、上記正極合剤層のBET比表面積A[m/g]、上記正極活物質のBET比表面積B[m/g]、及び上記正極活物質の上記正極合剤層に対する含有割合C[質量%]を用いて、下記式1で表される上記正極活物質の上記正極合剤層1gあたりの表面積D[m]と、下記式2で表される上記正極活物質以外の成分の上記正極合剤層1gあたりの表面積E[m]との関係が下記式3を満たす。
D=B×C/100 ・・・1
E=A-D ・・・2
2.05≦E/D≦5.25 ・・・3
本発明の一側面に係る蓄電素子用正極は、カーボンナノチューブを用いて蓄電素子の充放電サイクル性能を確実に向上できる。
本発明の一実施形態に係る蓄電素子を示す外観斜視図である。 本発明の一実施形態に係る蓄電素子を複数個集合して構成した蓄電装置を示す概略図である。
本発明の一側面に係る蓄電素子用正極は、正極活物質とカーボンナノチューブとを含む正極合剤層を有し、上記正極合剤層のBET比表面積A[m/g]、上記正極活物質のBET比表面積B[m/g]、及び上記正極活物質の上記正極合剤層に対する含有割合C[質量%]を用いて、下記式1で表される上記正極活物質の上記正極合剤層1gあたりの表面積D[m]と、下記式2に表される上記正極活物質以外の成分の上記正極合剤層1gあたりの表面積E[m]との関係が下記式3を満たす。
D=B×C/100 ・・・1
E=A-D ・・・2
2.05≦E/D≦5.25 ・・・3
当該蓄電素子用正極は、正極合剤層がカーボンナノチューブを含有し、正極活物質に対する正極活物質以外の成分の表面積の比を特定のものとすることにより、蓄電素子の充放電サイクル性能を確実に向上できる。この理由は定かでは無いが、以下の理由が推測される。正極合剤層がカーボンナノチューブを含有することにより、正極合剤層中のイオン拡散性が向上する。カーボンナノチューブの平均直径及び添加量を調整し、上記正極活物質の上記正極合剤層1gあたりの表面積Dに対する上記正極活物質以外の成分の上記正極合剤層1gあたりの表面積Eの比が2.05以上5.25以下であることで、正極合剤層中の正極活物質の表面が、カーボンナノチューブを含む導電剤で適度に被覆される。その結果、正極活物質の一次粒子間や二次粒子間にカーボンナノチューブによる導電パスが形成されると考えられる。従って、当該蓄電素子用正極は、蓄電素子の充放電サイクル性能を向上できると推測される。ここで、「BET比表面積」は、液体窒素中に浸し、窒素ガスを供給することにより粒子表面に窒素分子が物理吸着することを基にその時の圧力と吸着量を測定することにより求められる。具体的な測定手法としては、一点法により、試料に対する窒素吸着量(m)を求める。得られた窒素吸着量を、試料の質量(g)で除した値をBET比表面積(m/g)とする。
当該蓄電素子用正極は、水銀圧入法により測定される上記正極合剤層のLog微分細孔容積分布において、細孔径20nm以上200nm以下の範囲における細孔径に対するLog微分細孔容積の比の平均値が3000cm/g以上であることが好ましい。カーボンナノチューブの平均直径及び添加量を調整し、上記細孔径20nm以上200nm以下の範囲における細孔径に対するLog微分細孔容積の比の平均値が3000cm/g以上とすることで、カーボンナノチューブが形成する細孔数がコントロールされ、カーボンナノチューブによる正極合剤層中のイオン拡散性向上効果がより発揮されると推測される。従って、カーボンナノチューブを添加することにより当該蓄電素子の放電レート性能を向上できる。ここで、「Log微分細孔容積(dV/d(logD))」とは、被測定物の細孔の大きさとその体積の関係を示すものであり、細孔径の測定ポイント間の細孔容積の増加分である差分細孔容積dVを、細孔径の対数扱いの差分値d(logD)で割った値をいう。そして、log微分細孔容積分布は、上記log微分細孔容積を各区間の平均細孔径に対してプロットしたものをいう。
上記カーボンナノチューブの平均直径が10nm以上70nm以下であることが好ましい。上記カーボンナノチューブの平均直径が10nm以上70nm以下であることで、当該蓄電素子の充放電サイクル性能をより向上できる。ここで、「平均直径」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた正極の観察において、任意の10個のカーボンナノチューブの直径を測定した平均値をいい、多層カーボンナノチューブのように複数のカーボンナノチューブが同軸管状になっている場合は、最外周のカーボンナノチューブの直径を測定するものとする。
本発明の一側面に係る蓄電素子は、当該正極を備える。当該蓄電素子は、当該正極を備えることで、充放電サイクル性能が優れる。
以下、本発明の一実施形態に係る正極、及び蓄電素子について、順に詳説する。
<蓄電素子用正極>
上記正極は、正極基材、及びこの正極基材に直接又は中間層を介して配される正極合剤層を有する。
(正極基材)
上記正極基材は、導電性を有する。「導電性」を有するとは、JIS-H0505(1975)に準拠して測定される体積抵抗率が1×10Ω・cm以下であることを意味し、「非導電性」とは、上記体積抵抗率が1×10Ω・cm超であることを意味する。
正極基材の平均厚さは、5μm以上50μm以下とすることが好ましく、10μm以上40μm以下とすることがより好ましい。正極基材の平均厚さを上記の範囲とすることで、正極基材の強度を高めつつ、蓄電素子の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。「基材の平均厚さ」とは、所定の面積の基材を打ち抜いた際の打ち抜き質量を、基材の真密度及び打ち抜き面積で除した値をいい、負極基材も同様である。
正極基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。正極基材の形状としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、正極基材としてはアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2014年)又はJIS-H-4160(2006年)に規定されるA1085、A1N30、A3003等が例示できる。
(正極合剤層)
正極合剤層は、正極活物質及びカーボンナノチューブを含有するいわゆる正極合剤から形成される。また、正極合剤は、必要に応じてその他の導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
上記正極活物質としては、例えば、公知の正極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。正極活物質としては、例えば、α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、ポリアニオン化合物、カルコゲン化合物、硫黄等が挙げられる。α-NaFeO型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、例えば、Li[LiNi1-x]O(0≦x<0.5)、Li[LiNiγCo(1-x-γ)]O(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LiCo(1-x)]O(0≦x<0.5)、Li[LiNiγMn(1-x-γ)]O(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LiNiγMnβCo(1-x-γ-β)]O(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)、Li[LiNiγCoβAl(1-x-γ-β)]O(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)等が挙げられる。スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、LiMn、LiNiγMn(2-γ)等が挙げられる。ポリアニオン化合物として、LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO、Li(PO、LiMnSiO、LiCoPOF等が挙げられる。カルコゲン化合物として、二硫化チタン、二硫化モリブデン、二酸化モリブデン等が挙げられる。これらの材料中の原子又はポリアニオンは、他の元素からなる原子又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。これらの材料は表面が他の材料で被覆されていてもよい。正極合剤層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。正極合剤層中の正極活物質の含有量は特に限定されないが、その下限としては、50質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限としては、99質量%が好ましく、98質量%でもよい。
(導電剤)
正極合剤層は、上述したように、導電剤としてカーボンナノチューブを含有する。カーボンナノチューブは、円筒形状の炭素材料である。カーボンナノチューブは、単層でも多層でもよい。また、カーボンナノチューブは、1種又は2種以上のものを併用してもよい。
カーボンナノチューブの平均直径としては特に限定されないが、その下限としては例えば1nmであり、正極合剤層形成用の正極合剤塗工液(正極合剤ペースト)の過剰な粘度上昇を抑制する観点から、5nmが好ましく、10nmがより好ましい。カーボンナノチューブの平均直径の上限としては、例えば100nmであり、70nmが好ましい。すなわち、カーボンナノチューブの平均直径としては、1nm以上100nm以下の範囲のものを用いることができ、5nm以上70nm以下であることが好ましく、10nm以上70nm以下であることがより好ましい。上記カーボンナノチューブの平均直径が10nm以上70nm以下であることで、当該蓄電素子の充放電サイクル性能をより向上できる。また、カーボンナノチューブの長さは特に限定されず、例えば1μm以上100μm以下のものを用いることができる。
上記その他の導電剤としては、導電性材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、例えば、炭素質材料、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。炭素質材料としては、黒鉛化炭素、非黒鉛化炭素、グラフェン系炭素等が挙げられる。非黒鉛化炭素としては、カーボンナノファイバー、ピッチ系炭素繊維、カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。グラフェン系炭素としては、グラフェン、フラーレン等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。その他の導電剤としては、これらの材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの材料を複合化して用いてもよい。その他の導電剤としては、これらの中でも電子伝導性及び塗工性の観点よりカーボンブラックが好ましく、中でもアセチレンブラックが好ましい。
正極合剤層におけるカーボンナノチューブの固形分換算の含有量の下限としては、0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.5質量%がさらに好ましいこともある。上記カーボンナノチューブの固形分換算の含有量の上限としては、7質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、2質量%が好ましいこともある。正極合剤層におけるカーボンナノチューブの含有量が上記範囲であることで、正極合剤層形成用の正極合剤塗工液(正極合剤ペースト)の過剰な粘度上昇を抑制しつつ、蓄電素子の充放電サイクル性能を向上できる。
上記カーボンナノチューブに対するその他の導電剤の質量比としては、0以上6以下が好ましい。上記カーボンナノチューブに対するその他の導電剤の質量比が上記範囲であることで、正極合剤層形成用の正極合剤塗工液(正極合剤ペースト)の過剰な粘度上昇を抑制できる。
正極合剤層における導電剤の総含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。導電剤の総含有量を上記の範囲とすることで、蓄電素子のエネルギー密度を高めることができる。
(その他の成分)
バインダーとしては、例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。
正極合剤層におけるバインダーの含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。バインダーの含有量を上記の範囲とすることで、正極活物質を安定して保持することができる。
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。増粘剤がリチウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させてもよい。
フィラーは、特に限定されない。フィラーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、二酸化ケイ素、アルミナ、二酸化チタン、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の無機酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、炭酸カルシウム等の炭酸塩、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。
正極合剤層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Nb、Sn、Sr、Ba、W等の遷移金属元素を正極活物質、導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
上記正極合剤層のBET比表面積A[m/g]、上記正極活物質のBET比表面積B[m/g]、及び上記正極活物質の上記正極合剤層に対する含有割合C[質量%]を用いて、下記式1で表される上記正極活物質の上記正極合剤層1gあたりの表面積D[m]と、下記式2で表される上記正極活物質以外の成分の上記正極合剤層1gあたりの表面積E[m]との関係は、下記式3を満たす。
D=B×C/100 ・・・1
E=A-D ・・・2
2.05≦E/D≦5.25 ・・・3
上記正極活物質の正極合剤層1gあたりの表面積Dに対する上記正極活物質以外の成分の上記正極合剤層1gあたりの表面積Eの比E/Dの下限としては、2.05であり、2.20が好ましいこともあり、3.00がより好ましいこともある。また、上記E/Dの上限としては、5.25であり、5.00がより好ましく、4.50がさらに好ましい。つまり、上記E/Dとしては、2.20以上5.00以下が好ましく、3.00以上5.00以下がより好ましく、3.00以上4.50以下がさらに好ましい。上記E/Dが上記範囲であることで、正極合剤層中の正極活物質の表面が、カーボンナノチューブを含む導電剤で適度に被覆される。その結果、正極活物質の劣化により生じたクラックや、正極活物質の一次粒子間や二次粒子間にカーボンナノチューブによる導電パスが形成されると考えられる。従って、当該正極を備える蓄電素子は充放電サイクル性能が向上すると推測される。
本願明細書において、BET比表面積は、以下の方法で測定する。ユアサアイオニクス社製比表面積測定装置(商品名:MONOSORB)を用いて、一点法により、試料に対する窒素吸着量(m)を求める。得られた窒素吸着量を、試料の質量(g)で除した値をBET比表面積(m/g)とする。測定に当たって、液体窒素を用いた冷却によるガス吸着を行う。また、冷却前に120℃、15分の予備加熱を行う。測定試料の投入量は、0.5g±0.01gとする。なお、BET比表面積の測定に供する正極活物質及び正極合剤層の試料は、次の方法により準備する。
当該蓄電素子を、0.1Cの電流で、通常使用時の放電終止電圧まで放電し、放電末状態とする。ここで、「通常使用時」とは、当該蓄電素子において推奨され、又は指定される放電条件を採用して当該蓄電素子を使用する場合をいう。放電末状態の蓄電素子を解体し、正極を取り出して作用極とし、金属Liを対極として単極電池を組み立て、0.1Cの電流で正極電位が3.0V(vs.Li/Li)となるまで放電する。単極電池を解体し、取り出した正極をジメチルカーボネートにより充分に洗浄した後、室温にて減圧乾燥を行う。乾燥後の正極から正極合剤層を、例えばスパチュラを用いて剥がし、BET比表面積の測定における正極合剤層の試料とする。剥がした正極合剤層から、バインダー、導電剤等を除去することにより、正極活物質を分離し、BET比表面積の測定における正極活物質の試料とする。バインダーの除去は、例えば有機溶媒に正極合剤層を浸漬した後、ろ過することにより行うことができる。導電剤の除去は、例えば大気雰囲気下、750℃程度で熱処理することにより行うことができる。なお、電池の解体からBET比表面積の測定までの作業は、露点-40℃以下の乾燥空気雰囲気中で行う。
水銀圧入法により測定される上記正極合剤層のLog微分細孔容積分布において、細孔径20nm以上200nm以下の範囲における細孔径に対するLog微分細孔容積の比の平均値の下限としては、3000cm/gであり、3500cm/gがより好ましい。一方、上記細孔径に対するLog微分細孔容積の比の平均値の上限としては、12000cm/gが好ましい。上記細孔径に対するLog微分細孔容積の比の平均値の範囲が上記範囲であることで、当該正極を備える蓄電素子は、カーボンナノチューブを添加することにより放電レート性能を向上できる。
上記正極合剤層の細孔径20nm以上200nm以下の範囲におけるLog微分細孔容積は、以下の手順に基づいて、水銀圧入法により測定する。
AutoPore9400(Micromeritics社)を用い、水銀圧入法にて細孔容積分布を測定する。水銀の接触角を130°、表面張力を484dynes/cmに設定する。測定する細孔径範囲は0.006~20μmとする。細孔径20nm以上200nm以下の範囲の測定ポイント数は11点とする。細孔径を横軸に、細孔容積を縦軸にプロットすることにより累積細孔容積カーブを求める。次に、測定ポイント間の差分容積dVを、細孔径の対数扱いの差分値d(logD)で割った値を求め、これを各区間の平均細孔径に対してプロットすることにより、Log微分細孔容積カーブを求める。「細孔径20nm以上200nm以下の範囲における細孔径に対するLog微分細孔容積の比の平均値」は、上記Log微分細孔容積カーブにおいて細孔径20nm以上200nm以下の範囲の各測定ポイントにおける各Log微分細孔容積の値を合計し、細孔径20nm以上200nm以下の範囲の測定ポイント数で除することにより求める。なお、細孔容積分布の測定に供する正極合剤層の試料は、次の方法により準備する。当該蓄電素子を、0.1Cの電流で、通常使用時の放電終止電圧まで放電し、放電末状態とする。ここで、「通常使用時」とは、当該蓄電素子において推奨され、又は指定される放電条件を採用して当該蓄電素子を使用する場合をいう。放電末状態の蓄電素子を解体し正極を取り出して作用極とし、金属Liを対極として単極電池を組み立て、0.1Cの電流で正極電位が3.0V(vs.Li/Li)となるまで放電する。単極電池を解体し、取り出した正極をジメチルカーボネートにより充分に洗浄した後、室温にて減圧乾燥を行う。乾燥後の正極を、所定サイズ(例えば2×2cm)に切り出し、細孔容積分布の測定における試料とする。電池の解体から細孔容積分布の測定までの作業は、露点-40℃以下の乾燥空気雰囲気中で行う。
(中間層)
中間層は、正極基材と正極合剤層との間に配される層である。中間層は、炭素粒子等の導電性を有する粒子を含むことで正極基材と正極合剤層との接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば、樹脂バインダー及び導電性を有する粒子を含む。
当該蓄電素子用正極によれば、カーボンナノチューブを添加することにより蓄電素子の充放電サイクル性能を向上できる。
<蓄電素子>
本発明の一実施形態に係る蓄電素子は、正極、負極及び非水電解質を有する。以下、蓄電素子の一例として、非水電解質二次電池について説明する。上記正極及び負極は、通常、セパレータを介して積層又は巻回により交互に重畳された電極体を形成する。この電極体はケースに収納され、このケース内に非水電解質が充填される。上記非水電解質は、正極と負極との間に介在する。また、上記ケースとしては、非水電解質二次電池のケースとして通常用いられる公知のアルミニウムケース、樹脂ケース等を用いることができる。
[正極]
当該蓄電素子に備わる正極は、上述したとおりである。
[負極]
上記負極は、負極基材と、上記負極基材の少なくとも一方の面に直接又は間接に積層される負極合剤層とを備える。負極は、負極基材と負極合剤層との間に配される中間層を備えていてもよい。上記中間層は正極の中間層と同様の構成とすることができる。
(負極基材)
負極基材は、導電性を有する。負極基材の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。負極基材の形状としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの観点から箔が好ましい。したがって、負極基材としては銅箔又は銅合金箔が好ましい。銅箔の例としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられる。
負極基材の平均厚さは、2μm以上35μm以下が好ましく、3μm以上30μm以下がより好ましく、4μm以上25μm以下がさらに好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。負極基材の平均厚さを上記の範囲とすることで、負極基材の強度を高めつつ、二次電池の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。「基材の平均厚さ」とは、所定の面積の基材を打ち抜いた際の打ち抜き質量を、基材の真密度及び打ち抜き面積で除した値をいう。
(負極合剤層)
負極合剤層は、負極活物質を含む。負極合剤層は、必要に応じて導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー等の任意成分は、上記正極で例示した材料から選択できる。
負極活物質としては、公知の負極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。負極活物質としては、例えば、金属Li;Si、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;LiTi12、LiTiO2、TiNb等のチタン含有酸化物;ポリリン酸化合物;炭化ケイ素;黒鉛(グラファイト)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)や易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等の非黒鉛質炭素等の炭素材料などが挙げられる。これらの材料の中でも、黒鉛及び非黒鉛質炭素が好ましい。負極合剤層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
「黒鉛」とは、充放電前又は放電状態において、X線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.33nm以上0.34nm未満の炭素材料をいう。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。
「非黒鉛質炭素」とは、充放電前又は放電状態においてX線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.34nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。非黒鉛質炭素としては、難黒鉛化性炭素や、易黒鉛化性炭素が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、例えば、樹脂由来の材料、石油ピッチまたは石油ピッチ由来の材料、石油コークスまたは石油コークス由来の材料、植物由来の材料、アルコール由来の材料等が挙げられる。「難黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.36nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。「易黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.34nm以上0.36nm未満の炭素材料をいう。
ここで、「放電状態」とは、負極活物質として炭素材料を含む負極を作用極として、金属Liを対極として用いた単極電池において、開回路電圧が0.7V以上である状態をいう。開回路状態での金属Li対極の電位は、Liの酸化還元電位とほぼ等しいため、上記単極電池における開回路電圧は、Liの酸化還元電位に対する炭素材料を含む負極の電位とほぼ同等である。つまり、上記単極電池における開回路電圧が0.7V以上であることは、負極活物質である炭素材料から、充放電に伴い吸蔵放出可能なリチウムイオンが十分に放出されていることを意味する。
負極合剤層における負極活物質の含有量は、60質量%以上99質量%以下が好ましく、90質量%以上98質量%以下がより好ましい。負極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、負極合剤層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
負極合剤層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を負極活物質、導電剤、バインダー、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
[セパレータ]
上記セパレータとしては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が用いられる。これらの中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。上記セパレータの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。また、これらの樹脂を複合してもよい。
なお、セパレータと電極(通常、正極)との間に、無機層が積層されていてもよい。この無機層は、耐熱層等とも呼ばれる多孔質の層である。また、多孔質樹脂フィルムの一方の面又は両面に無機層が形成されたセパレータを用いることもできる。上記無機層は、通常、無機粒子及びバインダーとで構成され、その他の成分が含有されていてもよい。
[非水電解質]
上記非水電解質としては、一般的な非水電解質二次電池(蓄電素子)に通常用いられる公知の非水電解質が使用できる。上記非水電解質は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解されている電解質塩を含む。なお、上記非水電解質は、固体電解質等であってもよい。
上記非水溶媒としては、一般的な蓄電素子用非水電解質の非水溶媒として通常用いられる公知の非水溶媒を用いることができる。上記非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、エステル、エーテル、アミド、スルホン、ラクトン、ニトリル等を挙げることができる。これらの中でも、環状カーボネート又は鎖状カーボネートを少なくとも用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用することがより好ましい。環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの体積比(環状カーボネート:鎖状カーボネート)としては、特に限定されないが、例えば5:95から50:50とすることが好ましい。
上記環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、スチレンカーボネート、カテコールカーボネート、1-フェニルビニレンカーボネート、1,2-ジフェニルビニレンカーボネート等を挙げることができ、これらの中でもECが好ましい。
上記鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート等を挙げることができ、これらの中でもEMCが好ましい。
上記電解質塩としては、一般的な蓄電素子用非水電解質の電解質塩として通常用いられる公知の電解質塩を用いることができる。上記電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等を挙げることができるが、リチウム塩が好ましい。
上記リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiBF、LiClO、LiN(SOF)等の無機リチウム塩、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、LiC(SO等の水素がフッ素で置換された炭化水素基を有するリチウム塩などを挙げることができる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPFがより好ましい。
上記非水電解質における上記電解質塩の濃度の下限としては、0.1mol/dmが好ましく、0.3mol/dmがより好ましく、0.5mol/dmがさらに好ましく、0.7mol/dmが特に好ましい。一方、この上限としては、特に限定されないが、2.5mol/dmが好ましく、2.0mol/dmがより好ましく、1.5mol/dmがさらに好ましい。
上記非水電解質には、その他の添加剤が添加されていてもよい。また、上記非水電解質として、常温溶融塩、イオン液体などを用いることもできる。
[蓄電素子の具体的構成]
本実施形態の蓄電素子の形状については特に限定されるものではなく、例えば、円筒型電池、ラミネートフィルム型電池、角型電池、扁平型電池、コイン型電池、ボタン型電池等が挙げられる。
図1に角型電池の一例としての蓄電素子1を示す。なお、同図は、ケース内部を透視した図としている。セパレータを挟んで巻回された正極及び負極を有する電極体2が角型のケース3に収納される。正極は正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続されている。負極は負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。
[蓄電素子の製造方法]
当該非水電解質二次電池(蓄電素子)は、正極として当該正極を用いること以外は、公知の方法により製造することができる。当該蓄電素子の製造方法は、例えば、正極を作製すること、負極を作製すること、非水電解質を調製すること、正極及び負極を、セパレータを介して積層又は巻回することにより交互に重畳された電極体を形成すること、正極及び負極(電極体)をケース(電池容器)に収容すること、並びに上記ケースに上記非水電解質を注入することを備えることができる。上記注入は、公知の方法により行うことができる。注入後、注入口を封止することにより非水電解質二次電池(蓄電素子)を得ることができる。
当該蓄電素子によれば、当該正極を備えることで、充放電サイクル性能が優れる。
<その他の実施形態>
なお、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成又は周知技術に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。また、ある実施形態の構成に対して周知技術を付加することができる。
上記実施の形態においては、蓄電素子が非水電解質二次電池である形態を中心に説明したが、その他の蓄電素子であってもよい。その他の蓄電素子としては、キャパシタ(電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ)等が挙げられる。非水電解質二次電池としては、リチウムイオン非水電解質二次電池が挙げられる。
本発明は、上記の蓄電素子を複数備える蓄電装置としても実現することができる。また、本発明の蓄電素子(セル)を単数又は複数個用いることにより組電池を構成することができ、さらにこの組電池を用いて蓄電装置を構成することができる。上記蓄電装置は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として用いることができる。さらに、上記蓄電装置は、エンジン始動用電源装置、補機用電源装置、無停電電源装置(UPS)等の種々の電源装置に用いることができる。
図2に、電気的に接続された2以上の蓄電素子1が集合した蓄電ユニット20をさらに集合した蓄電装置30の一例を示す。蓄電装置30は、2以上の蓄電素子1を電気的に接続するバスバー(図示せず)、2以上の蓄電ユニット20を電気的に接続するバスバー(図示せず)を備えていてもよい。蓄電ユニット20又は蓄電装置30は、1以上の蓄電素子の状態を監視する状態監視装置(図示せず)を備えていてもよい。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(正極の作製)
正極活物質として、組成式LiMeO(Meは、Ni/Co/Mn=60/20/20)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を用いた。導電剤として表1に記載の質量比のカーボンブラック及びカーボンナノチューブを用いた。用いたカーボンナノチューブの平均直径及び長さを表1に示す。バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを用いた。
分散媒としてN-メチルピロリドン(NMP)を用い、正極合剤層におけるバインダーの固形分換算の含有量が3質量%、正極活物質及び表1に記載の導電剤合計の固形分換算の含有量が残部となるように混合し、正極合剤ペーストを得た。次に、上記正極合剤ペーストを、正極基材であるアルミニウム箔の両面に、非塗布部(正極合剤層非形成部)を残して塗布し、100℃で乾燥し、ロールプレスすることにより、正極基材上に正極合剤層を形成した。正極合剤ペーストの塗布量は、固形分で18mg/cmとした。このようにして、実施例1から実施例5及び比較例1から比較例4の正極を得た。なお、下記の表1中の「-」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
(負極の作製)
負極活物質として黒鉛、バインダーとしてスチレン-ブタジエンゴム(SBR)、及び増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた。負極活物質、バインダー及び増粘剤を97:2:1の質量比で混合した混合物に水を適量加えて粘度を調整し、負極合剤ペーストを作製した。この負極合剤ペーストを、銅箔の両面に、非塗布部(負極合剤層非形成部)を残して塗布し、乾燥することにより負極合剤層を作製した。その後、ロールプレスを行い、負極を作製した。
(非水電解質の調製)
ECとEMCとを体積比30:70の割合で混合した混合溶媒に、LiPFを1mol/dmの濃度で溶解させ、非水電解質を調製した。
(蓄電素子の作製)
次に、ポリエチレン基材及び上記ポリエチレン基材上に形成された無機層からなるセパレータを介して、上記正極と上記負極とを積層し、電極体を作製した。この電極体をアルミニウム製の角形電槽缶に収納し、正極端子及び負極端子を取り付けた。このケース(角形電槽缶)内部に上記非水電解質を注入した後、封口し、実施例及び比較例の蓄電素子を得た。
(初期容量確認試験)
上記各蓄電素子について、25℃で4.25Vまで1.0Cの電流値で定電流充電した後、4.25Vで定電圧充電した。充電の終了条件は、総充電時間が3時間になるまでとした。充電後に10分間の休止を設けたのちに、25℃で2.75Vまで0.2Cの電流値で定電流放電した。放電後に10分間の休止を設けた。上記のサイクルを2回繰り返し、2回目の放電容量を初期の0.2C容量とした。
上記初期容量確認試験後の各蓄電素子について、上記正極合剤層のBET比表面積A及び上記正極活物質のBET比表面積Bの測定、上記正極活物質の上記正極合剤層1gあたりの表面積Dに対する上記正極活物質以外の成分の上記正極合剤層1gあたりの表面積Eの比の算出、Log微分細孔容積分布の測定、並びに細孔径20nm以上200nm以下の範囲における細孔径に対するLog微分細孔容積の比の平均値の算出を、上述の方法により行い、結果を表1に示した。
(充放電サイクル試験:容量維持率)
上記初期容量確認試験後の各蓄電素子について、60℃の恒温槽内に5時間保管した後、4.25Vまで1Cの電流値で定電流充電した。充電後に10分間の休止を設けた後に、2.75Vまで2Cの電流値で定電流放電した。放電後に10分間の休止を設けた。これら充電及び放電の工程を1サイクルとして、このサイクルを1000サイクル繰り返した。充電、放電及び休止ともに、60℃の恒温槽内で行った。充放電サイクル試験後の各非水電解質蓄電素子について、初期容量確認試験と同様にして、充放電サイクル試験後の容量確認試験を行った。初期の0.2C放電容量に対する1000サイクル試験後の0.2C放電容量の百分率を「0.2C容量維持率(%)」として表1に示す。
(放電レート性能試験:放電容量比率)
上記初期容量確認試験後の各蓄電素子について、25℃で4.25Vまで1Cの電流値で定電流充電したのちに、4.25Vで定電圧充電した。充電の終了条件は、充電電流が0.01Cになるまでとした。充電後に10分間の休止を設けたのちに、25℃で2.75Vまで0.2Cの電流値で定電流放電を行い、「0.2C放電容量」を測定した。放電後に10分間の休止を設けた。次に、25℃で4.25Vまで1Cの電流値で定電流充電したのちに、4.25Vで定電圧充電した。充電の終了条件は、充電電流が0.01Cになるまでとした。充電後に10分間の休止を設けたのちに、25℃で2.75Vまで5.0Cの電流値で定電流放電を行い、「5C放電容量」を測定した。
上記0.2C放電容量と、5C放電容量とから、放電レート性能を示す指標として、0.2C放電容量に対する5C放電容量の百分率を「放電容量比率(%)」として表1に示す。
Figure 0007472579000001
上記表1に示されるように、正極合剤層が導電剤としてカーボンナノチューブを含有し、正極活物質の正極合剤層1gあたりの表面積Dに対する上記正極活物質以外の成分の上記正極合剤層1gあたりの表面積Eの比が2.05以上5.25以下である実施例1から実施例5は、比較例1から比較例3と比較して充放電サイクル性能が優れていることがわかる。また、カーボンナノチューブの平均直径が顕著に小さい比較例4は、カーボンナノチューブによる高い凝集作用から、正極合剤ペーストの粘度が高く、正極合剤層を形成できなかった。
さらに、上記表1に示されるように、正極合剤層が導電剤として、カーボンナノチューブを含有し、水銀圧入法により測定される上記正極合剤層のLog微分細孔容積分布において、細孔径20nm以上200nm以下の範囲における細孔径に対するLog微分細孔容積の比の平均値が3000cm/g以上である実施例1から実施例5は、比較例1から比較例3と比較して放電レート性能も優れていることがわかる。
本発明は、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等の電源として使用される蓄電素子等に適用できる。
1 蓄電素子
2 電極体
3 ケース
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置

Claims (4)

  1. 正極活物質とカーボンナノチューブとを含む正極合剤層を有し、
    上記正極合剤層における上記正極活物質の含有量が80質量%以上であり、
    上記正極合剤層における上記カーボンナノチューブの固形分換算の含有量が0.1質量%以上であり、
    上記正極合剤層のBET比表面積A[m/g]、上記正極活物質のBET比表面積B[m/g]、及び上記正極活物質の上記正極合剤層に対する含有割合C[質量%]を用いて、下記式1で表される上記正極活物質の上記正極合剤層1gあたりの表面積D[m]と、下記式2で表される上記正極活物質以外の成分の上記正極合剤層1gあたりの表面積E[m]との関係が下記式3を満たす蓄電素子用正極。
    D=B×C/100 ・・・1
    E=A-D ・・・2
    2.05≦E/D≦5.25 ・・・3
  2. 水銀圧入法により測定される上記正極合剤層のLog微分細孔容積分布において、細孔径20nm以上200nm以下の範囲における細孔径に対するLog微分細孔容積の比の平均値が3000[cm/g]以上である請求項1に記載の蓄電素子用正極。
  3. 上記カーボンナノチューブの平均直径が10nm以上70nm以下である請求項1又は請求項2に記載の蓄電素子用正極。
  4. 請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の正極を備える蓄電素子。
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