JP7471101B2 - 防指紋構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、防指紋構造体に係り、更に詳細には、付着皮脂の残留を抑止した防指紋構造体に関する。
物品の表面に指紋が付着していると物品が汚れているように見え、不快な印象を与えることがある。
特許文献1の国際公開2013/008645には、微細な凹凸を有し、かつフッ素含有化合物を含有する塗膜は、塗膜に付着する皮脂の量が少なく、塗膜に付着し残留した皮脂が凝集せずに微分散するため、汚れを目立たなくすることができる旨が開示されている。
国際公開2013/008645
しかしながら、物品の表面に接触した皮脂の残留を防止するには、物品の表面が超撥油性(皮脂の接触角≧150度)を有する必要があり、フッ素化合物による表面改質によっては超撥油性を発現することはできないため、物品の表面に不可避的に付着した皮脂が残留してしまう。
また、物品の表面に付着し残留した皮脂の凝集を防止して指紋を目立たなくしたとしても、物品の表面に皮脂が残留し蓄積してしまうため、汚れを目立たなくすることによっては、物品の汚れを防止できない。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接触した皮脂の残留を防止できる防指紋構造体を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、防指紋構造体に接触した指(皮脂)が離れる際に、防指紋構造体表面のフッ素系オイルを分断し、指と接触した部分のフッ素系オイルを、不可避的に付着した皮脂と共に指側に移行させることで、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の防指紋構造体は、基材上に、多孔質層と、改質層と、フッ素系オイルを含有するオイル層とがこの順に積層されて成る。
そして、上記多孔質層が、SiO を蒸着処理したものであり、
上記改質層が、アルコキシシラン部とパーフルオロエーテル主鎖部とから構成されたパーフルオロポリエーテル系改質剤の上記アルコキシシラン部が上記多孔質層のSiO に結合して形成され、
上記改質層のフッ素含有率が、38~60mol%であり、
上記フッ素系オイルが、下記式(1)を満たす;

表面自由エネルギー[mJ/m]×動粘度[cSt]≦700 ・・・式(1)
本発明によれば、指と接触した部分のフッ素系オイルを指(皮脂)側に移行させることとしたため、防指紋構造体表面に不可避的に付着した皮脂が残留することを防止できる。
本発明の防指紋構造体について詳細に説明する。
上記防指紋構造体は、基材上に、多孔質層と、改質層と、フッ素系オイルを含有するオイル層とがこの順に積層されて成る。
<改質層>
上記改質層は、パーフルオロポリエーテル系改質剤の結合部が上記多孔質層に結合することで形成されたものである。
上記改質層により、多孔質層の表面エネルギーが減少して、フッ素系オイルが多孔質層の表面に広がり、防指紋構造体の表面にフッ素系オイルの平滑面(オイル層)が形成される。
本発明の改質層は、そのフッ素含有率が、38~60mol%であり、さらに44mol%以上であることが好ましい。
本発明の防指紋構造体は、改質層のフッ素含有率が38~60mol%であり、多孔質層の表面がパーフルオロポリエーテル系改質剤のフッ素で覆われているため、押圧などによってオイル層が押し退けられ、指(皮脂)が多孔質層に達した場合であっても改質層によって皮脂を忌避することができる。
したがって、皮脂が改質欠陥を介して多孔質層に付着しピン止めされることがないため、防指紋構造体に接触した皮脂が残留することがない。
上記改質層は、上記多孔質層に結合したパーフルオロポリエーテル系改質剤が下記式(2)を満たすことが好ましい。

X/(X+Y)≦0.20以下 ・・・式(2)

但し、式(2)中、
Xはパーフルオロポリエーテル系改質剤のアルコキシシラン部の(-OR)結合と(-CH-CH-)結合の合計含有率[mol%]を表わし、
Yは、パーフルオロポリエーテル系改質剤のパーフルオロポリエーテル主鎖部の(-CF-)結合と(CF-O-)結合と(-CF)結合の合計含有率[mol%]を表わす。
上記パーフルオロポリエーテル系改質剤としては、従来公知のフッ素系シランカップリング剤を使用することができ、具体的には、パーフルオロポリエーテル含有エトキシシラン等を挙げることができる。
上記パーフルオロポリエーテル系改質剤は、パーフルオロポリエーテル主鎖部とアルコキシ基を複数有するアルコキシシラン部とを有する。
パーフルオロポリエーテル含有エトキシシランを構造式(1)に示す。
Figure 0007471101000001
但し、構造式(1)中Rは、メトキシ基又はエトキシ基を表わし、nは整数を表わす。
かかる改質剤は、アルコキシシラン部のアルコキシ基(-OR)が加水分解してシラノール基(Si-OH)を生成し、このシラノール基が多孔質層表面の水酸基と脱水縮合して、パーフルオロポリエーテル系改質剤が多孔質層の表面に結合することで改質層を形成する。
上記多孔質層に結合した改質剤は、アルコキシシラン部のアルコキシ基が結合に使用されて(-OR)結合が減少するので、改質層中のアルコキシシラン部の(-OR)結合と(-CH-CH-)結合の合計含有率、すなわち、式(2)のXが減少する。
また、式(2)のYが大きくなると、パーフルオロポリエーテル主鎖部の嵩が増加して、パーフルオロポリエーテル系改質剤の1分子が多孔質層を改質できる範囲が広くなるため、上記式(2)は改質欠陥の指標となる。
つまり、式(2)のX/(X+Y)≦0.20以下は、改質欠陥が極めて少ないことを表わしている。上記X/(X+Y)は、0.18以下であることがより好ましい。
上記パーフルオロポリエーテル系改質剤は、Yが18~25[mol%]であることが好ましい。パーフルオロポリエーテル主鎖部が短すぎると充分な改質効果が得られ難くなる場合がある。また、パーフルオロポリエーテル主鎖部が長すぎると、後述するフッ素系オイルの分子と絡み合いが強くなり、フッ素系オイルを強力に保持するようになって、フッ素系オイルが指側(皮脂側)に移行し難くなることがある。
上記アルコキシシラン部の(-OR)結合と(-CH-CH-)結合の合計含有率[mol%]、パーフルオロポリエーテル主鎖部の(-CF-)結合と(CF-O-)結合と(-CF)結合の合計含有率[mol%]は、X線光電子分光分析法(以下、XPS分析と記す)により測定できる。
本発明では、下記の装置と条件にて、表面の元素組成測定を行い、検出された元素の中でフッ素原子数の割合(mol%)を測定した。また、炭素原子C1sについて、試料表面の-CF-結合、-CF-O-結合、-CF結合、-CO結合、-(CH)n-結合の割合を測定した。
装置名:X線光電子分光分析装置 PHI製 Quantum-2000
X線源:Monochromated Al Kα線(1486.6 eV) 40W
光電子取り出し角度:45° (測定深さ:約4nm)
測定エリア:200μmφ
試料前処理:供試体を適当大に加工して測定した。
本発明の改質層は、清浄な蒸着槽内で多孔質層にイオンビームを照射しての多孔質層の表面を洗浄し、上記蒸着槽内で多孔質層表面のOH基に対して過剰のパーフルオロポリエーテル系改質剤を蒸着させることで形成できる。
空気中には炭化水素等のコンタミが多く存在し、蒸着槽の外で多孔質層の表面を洗浄しても蒸着槽に入れるまでにコンタミが付着してしまい、付着したコンタミによってパーフルオロポリエーテル系改質剤の結合が阻害されて改質欠陥が生じる。
本発明においては、清浄な蒸着槽内の多孔質層に対してイオンビームを照射して多孔質層の表面を洗浄し、上記蒸着槽から外に出すことなく、上記多孔質層に対して過剰のパーフルオロポリエーテル系改質剤を蒸着させるため、改質欠陥の発生を著しく低下させることができる。
また、清浄な蒸着槽内で洗浄した多孔質層に対し、SiOを蒸着してからパーフルオロポリエーテル系改質剤を蒸着させることが好ましい。
パーフルオロポリエーテル系改質剤を蒸着させる前に、SiOを蒸着させることで多孔質層の表面にSiOに由来するOH基が形成され、このOH基によってパーフルオロポリエーテル系改質剤が多孔質層に結合し易くなり、改質欠陥の発生を防止できる。
改質層は、加熱処理を施すことで、パーフルオロポリエーテル系改質剤多孔質層の表面に定着し、指(皮脂)が多孔質層に達した場合であっても改質欠陥の発生を抑制することができる。加熱温度は改質剤にもよるが120~180℃であることが好ましい。
<オイル層>
本発明の防指紋構造体のオイル層は、フッ素系オイルを含有する。
上記フッ素系オイルは、下記式(1)を満たす。

表面自由エネルギー[mJ/m]×動粘度[cSt]≦700 ・・・式(1)
上記式(1)を満たすフッ素系オイルは、皮脂に対する忌避性が高く、かつ動粘度(20℃)が低く分子同士の凝集力が小さいため、防指紋構造体に触れた指が離れる際、指に曳ずられて指との接触部分でフッ素系オイルが分断され、フッ素系オイルが僅かに指側に移行する。したがって、防指紋構造体に接触した皮脂が防指紋構造体側に残留することがない。
これに対し、上記式(1)を満たさないフッ素系オイルは、皮脂に対する忌避性を有していても、凝集力が大きく指側に移行し難いため、フッ素系オイルの表面に不可避的に付着した皮脂が表面に残留し易い。
なお、20℃動粘度の測定はJIS K2283:2000に準じ、ガラス製毛管式粘度計を用いて測定できる。
このJIS規格に記載の通り、ガラス製毛管式粘度計による動粘度の計算方法は,粘度計の特性項目を用いて,次式で表すことができる。
Figure 0007471101000002
なお,式中のEはガラス製毛管式粘度計毎に規定された値を用いる。
上記フッ素系オイルは、さらに下記式(3)を満たすことが好ましい。

表面自由エネルギー[mJ/m]×動粘度[cSt]≦450 ・・・式(3)
式(3)を満たす動粘度(20℃)が低いフッ素系オイルは、指と接触した部分のフッ素系オイルがさらに分断され易く、不可避的に付着した皮脂が防指紋構造体表面に残留することを防止できる。
フッ素系オイルの表面自由エネルギー(25℃)は、16.6~23[mJ/m]であることが好ましい。フッ素オイルの表面自由エネルギーが低すぎると蒸発減量が大きくなり、十分な耐熱性が得られない。皮脂の表面エネルギーは、30[mJ/m]程度であり、フッ素オイルの表面自由エネルギーが高くなりすぎるとフッ素オイル上に皮脂が残留し易くなることがある。
フッ素系オイルなどの液体の表面自由エネルギーは、いろいろな方法で測定されるが、簡便な方法として、懸滴法がある。鉛直下向きの細管の先端から液体を押し出すと、細管の先端に液滴がぶら下がる。このぶら下がった液滴を「懸滴」と呼ぶ。この懸滴の形状は、ぶら下がった液体の量、密度、表面自由エネルギーに依存するので、懸滴の形状を解析すれば表面自由エネルギーを求めることができる。フッ素系オイルの場合、表面自由エネルギーが小さい為に、ぶら下がった「懸滴」状態の維持が難しく、測定し難いことがある。その場合は鉛直下向きの細管の先端を水などの液体に入れた状態で行うと、「懸滴」状態の維持が比較的容易になり、測定しやすい。また、懸滴形状の解析方法によって、懸滴法にはいくつかの方法があり、例えば、懸滴の最大径de、および、懸滴最下端からdeだけ上の位置での懸滴径dsを実測して表面張力を算出するds/de法を適用することができる。
上記フッ素系オイルとしては、パーフルオロポリエーテルオイルを使用することができる。パーフルオロポリエーテルオイルは、上記改質剤と同様にパーフルオロポリエーテル鎖を有するため、上記改質層との親和性が高く、フッ素系オイルの減耗が抑止される。
上記フッ素系オイルの平均分子量は、上記式(1)を満たせば特に制限はないが、1500~4000であることが好ましく、さらに2000~3500であることが好ましい。
平均分子量が小さすぎると、上記改質剤分子との絡み合いが小さく、減耗し易くなることがあり、平均分子量が大きすぎると上記改質剤分子との絡み合いが大きくなって、指側に移行し難くなることがある。
また、上記フッ素系オイルの構造は、側鎖を有しない直鎖型、側鎖を有する側鎖型のいずれでもよいが、側鎖型のフッ素系オイルであることが好ましい。
直鎖型のフッ素系オイルは、側鎖型に比してファンデルワールス力が大きく、上記改質剤のパーフルオロポリエーテル主鎖部との結合力が大きくなって指側に移行し難くなることがある。
側鎖型のフッ素系オイルとしては、デュポン社製のクライトックス100~102等を挙げることができ、また、直鎖型のフッ素系オイルとしては、ソルベイ社製のフォンブリンM03等を挙げることができる。
上記フッ素系オイルは、120℃で24時間放置したとき、上記フッ素系オイルの蒸発減量が35質量%以下であることが好ましい。蒸発減量が35質量%を超えると防指紋構造体の耐久性が低下し易くなることがある。
上記オイル層は、上記改質層を形成した多孔質層に上記フッ素系オイルを付与し、余剰のフッ素系オイルを拭き取ることで形成できる。
<多孔質層>
上記多孔質層は、複数の空孔が互いに連通して三次元にランダムに配置した、所謂、スポンジ状の構造体であり、空孔内及び/又は表面に上記フッ素系オイルを保持する。
上記多孔質層は、酸化ケイ素を主体とする金属酸化物から成ることが好ましい。
多孔質層が、硬度の高い酸化ケイ素を含む金属酸化物であることで、耐摺動性が向上し、防指紋構造体の耐久性が向上する。
上記多孔質層を構成する金属酸化物としては、石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス等、酸化ケイ素(SiO)を60wt%以上含むものを挙げることができる。
上記多孔質層の平均膜厚(h)は、50~1000nmであることが好ましい。多孔質層の平均膜厚が50nm以上であることで上記フッ素系オイルを充分保持することができ、防指紋構造体の耐久性が向上する。
また、1000nm以下であることで、多孔質層作製時の体積収縮等によるクラックの発生を防止できる。
上記多孔質層は、従来公知の方法で形成することができ、多孔質層の形成方法としては、例えば、ゾルゲル法等を挙げることができる。
<基材>
上記基材としては、多孔質層を形成できれば特に制限はなく、例えば、鋼板やガラスなどの無機基材や、樹脂や塗膜などの有機基材を用いることができる。
本発明の防指紋構造体は、自動車のバックミラー、ルームミラー、カーナビゲーションの液晶画面、メーターパネル等、指紋によって視認性が低下する自動車部品の他、インストルメントパネル、コンソール、ドアノブ等、指紋汚れにより意匠性が低下する自動車部品にも好適に使用できる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(多孔質層の作製)
純水1.16g、TEG(トリエチレングリコール)1.50g、IPA(イソプロピルアルコール)0.78g、濃硫酸0.30gをこの順番で混合して溶液Aを調整した。
また、Si(OEt)12(コルコート社製エチルシリケート40)8.04g、IPA(イソプロピルアルコール)0.78gをこの順番で混合して溶液Bを調整した。
溶液Aをマグネットスターラーにより1500rpmで撹拌しながら溶液Bを投入し、温度上昇が止まってから30分間撹拌した後、5倍に希釈されるようにIPAを投入し、さらに1500rpmで1分間撹拌して塗布液を得た。
大気圧プラズマ処理したソーダライムガラス板(5cm×10cm×1.8mm厚)に、上記塗布液を下記条件でスピンコートした後、すぐにスピナーから取り出して、2分間平面上に静置して風乾した。
スピンコートの条件
塗布液の滴下量を1500[μL]とし、100rpmで3秒間塗布し、さらに500rpmで5秒間、1000rpmで15秒間塗布した。
(焼成)
150℃の乾燥機内に1時間放置して仮焼成した後、乾燥機から取り出して、室温まで放置した。さらに、常温のマッフル炉に入れ、30~45分かけて500℃まで昇温させて時間保持したのち加熱を停止し、マッフル炉内で150℃まで徐冷後、取り出して室温まで放置して多孔質層を形成した。
(改質層)
多孔質層を形成した基材を清浄な蒸着槽に入れ、多孔質層にイオンビームを照射しての多孔質層の表面を洗浄した。続けて上記蒸着槽内でSiOを蒸着させる前処理を行った。SiOを蒸着させた多孔質層に対し、過剰のパーフルオロポリエーテル系改質剤(DAIKIN オプツールDSX)を蒸着させて膜厚が7nmの改質層を形成した。
(オイル層)
改質層にフッ素系オイル(デュポン社製:Krytox101、分子量:1780、表面自由エネルギー:16.6[mJ/m]、動粘度:17.4[cSt])を付与し、余剰のフッ素オイルを拭き取って、フッ素系オイルの保持量が0.0011[g]の防指紋構造体を得た。
[実施例2]
SiOを蒸着させる前処理を行わずに過剰のパーフルオロポリエーテル系改質剤を蒸着させ膜厚が15nmの改質層を形成する他は実施例1と同様にして防指紋構造体を得た。
[実施例3]
フッ素系オイルを、デュポン社製:Krytox102(分子量:2190、表面自由エネルギー:16.8[mJ/m]、動粘度:38[cSt])に代える他は実施例1と同様にして防指紋構造体を得た。
[実施例4]
フッ素系オイルを、ソルベイ社製:FomblinM03の低分子量成分分留品(分子量:3200、表面自由エネルギー:23[mJ/m]、動粘度:19[cSt])に代える他は実施例1と同様にして防指紋構造体を得た。
[実施例5]
フッ素系オイルを、ソルベイ社製:FomblinM03(分子量:3900、表面自由エネルギー:23[mJ/m]、動粘度:30[cSt])に代える他は実施例1と同様にして防指紋構造体を得た。
[実施例6]
フッ素系オイルを、デュポン社製:Krytox100(分子量:1550、表面自由エネルギー:16.4[mJ/m]、動粘度:12[cSt])に代える他は実施例1と同様にして防指紋構造体を得た。
[実施例7]
(多孔質層の作製)
純水 0.52gと1N塩酸 0.48gを混合して溶液Aを調整した。
また、オルトチタン酸テトラブチル(東京化成工業製Tetrabutyl Orthotitanate) 0.93gとエタノール 14.42gを混合して溶液Bを調整した。
溶液Aをマグネットスターラーにより1500rpmで撹拌しながら溶液Bを投入し、温度上昇が止まってから30分間撹拌して塗布液を得た。
上記塗布液を用いて多孔質層を形成する他は実施例2と同様にして防指紋構造体を得た。
[実施例8]
膜厚が10nmの改質層を形成する他は実施例1と同様にして防指紋構造体を得た。
[実施例9]
膜厚が10nmの改質層を形成した後、150℃で30分間加熱する他は実施例7と同様にして防指紋構造体を得た。
[実施例10]
膜厚が7nmの改質層を形成した後、150℃で30分間加熱する他は実施例1と同様にして防指紋構造体を得た。
[実施例11]
膜厚が5nmの改質層を形成した後、150℃で30分間加熱する他は実施例1と同様にして防指紋構造体を得た。
[比較例1]
多孔質層の表面をプラズマ洗浄し、パーフルオロポリエーテル系改質剤(DAIKIN オプツールDSX)をスプレー塗工して膜厚が30nmの改質層を形成する他は、実施例2と同様にして防指紋構造体を得た。
[比較例2]
パーフルオロポリエーテル系改質剤(フロロサーフ FG-5020TH)を浸漬塗工して膜厚が30nmの改質層を形成する他は、比較例1と同様にして防指紋構造体を得た。
[比較例3]
フッ素系オイルを、デュポン社製:Krytox103(分子量:2660、表面自由エネルギー:17.3[mJ/m]、動粘度:82[cSt])に代える他は実施例1と同様にして防指紋構造体を得た。
[比較例4]
フッ素系オイルを、デュポン社製:Krytox104(分子量:3480、表面自由エネルギー:18.3[mJ/m]、動粘度:177[cSt])に代える他は実施例1と同様にして防指紋構造体を得た。
[比較例5]
トリアセチルセルロースフィルムの表面にナノインプリント法でピッチ100nm、高さ10nmの円錐状凹凸を形成して多孔質層とした。この多孔質層の表面をプラズマ洗浄し、パーフルオロポリエーテル系改質剤(DAIKIN オプツールDSX)をスプレー塗工し、膜厚が30nmの改質層を形成して防指紋構造体を得た。
実施例1~11、比較例1~5の防指紋構造体の構成を表1に示す。
Figure 0007471101000003
<評価>
実施例1~11、比較例1~5の防指紋構造体に防指紋構造体に模擬指紋を付着させ、以下の方法で評価した。 改質層のXPS分析結果とあわせて評価結果を表2に示す。
[模擬指紋の付着]
防指紋構造体への模擬指紋の付着は、(1)模擬指紋液の調製、(2)模擬指紋シートの作製、(3)模擬指紋液のシリコーンゴムへの転写、(4)模擬指紋の成形材料表面への付着の4ステップで行った。
(1)模擬指紋液の調製
下記材料を下記比率で秤量後、30分間マグネチックスターラーにて攪拌して模擬指紋液を得た。

オレイン酸 14質量部
シリカ粒子(数平均粒子径 2μm) 6質量部
イソプロピルアルコール 80質量部

なお、上記シリカ粒子の数平均粒子径は、シリカ粒子を分散媒(イソプロピルアルコール)に固形分濃度5質量%にて混合、超音波にて分散後、導電テープ上に滴下して観察サンプルを調製して求めた。
(2)模擬指紋シートの作製
支持基材としてPET樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗工されている”ルミラー”(登録商標)U46(東レ(株)製)に、上記模擬指紋液をワイヤーバー(♯7)で塗工し、50℃で2分間乾燥して模擬指紋シートを得た。
(3)模擬指紋のシリコーンゴムへの転写
JIS K6253:1997のゴム硬度50のシリコーンゴムを#250の耐水ペーパーでJIS B0601:2001の表面粗さをRa=3μmに研磨した。
次いで、前記耐水ペーパーで研磨したシリコーンゴムを30KPaの圧力で上記模擬指紋シートに押し付けた。
模擬指紋液の付着量は0.9g/m~1.1g/mであった。
なお、シリコーンゴムへの模擬指紋液の付着量(g/m)は、シリコーンゴムの面積と付着前後の質量差から求めた。
(4)防指紋構造体への模擬指紋の付着
模擬指紋液が転写されたシリコーンゴムを、防指紋構造体の表面に30KPaで押し付けて防指紋構造体の表面に形成された痕跡を模擬指紋とした。
[指紋の拡散反射光の色△E
防指紋構造体のオイル層とは反対の面(基材側)に黒ビニールテープを貼り付け、模擬指紋を付着前の防指紋構造体と、模擬指紋を付着させた防指紋構造体との拡散光の反射色を、コニカミノルタ株式会社製分光測色計CM-3600Aを使用して、JIS Z8722:2009に基づき、鏡面反射光トラップを用いた(de:8°)Sb10W10条件で測定し、指紋を付着前後の色差△Eを求めた。
[官能性評価]
模擬指紋を付着させた各防指紋構造体を晴天下のクルマのナビ液晶画面上の固定し、運転席に着座した複数のパネラーの評価の平均点から気になりやすさを評価した。
「全く気にならない」を5点、「ほとんど気にならない」を4点、「あまり気にならない」を3点、「やや気になる」を2点、「とても気になる」を1点とした。

平均点が4点以上 :◎
平均点が3点以上4点未満 :○
平均点が2点以上3点未満 :△
平均点が2点未満 :×
Figure 0007471101000004
上記評価結果より、改質層のフッ素含有率が38~60mol%を満たし、式(1)を具備する実施例1~11は、指紋の残留が抑制され、指紋汚れが気にならないことがわかる。
また、実施例1と実施例2との比較から、SiO蒸着(前処理)を行うと、改質欠陥の発生が抑制され、押圧しても多孔質層に皮脂がピン止めされずに指紋の残留が抑制されることがわかる。
さらに、側鎖型のフッ素系オイルを用いた実施例4は、実施例1~3のフッ素系オイルよりも分子量が大きいにも拘わらず、指紋の残留が抑制されていることから、フッ素系オイルが側鎖型であると指側に移行し易く指紋の残留が抑制されることがわかる。
実施例6は、指紋の残留を抑制できたが、蒸発減量が大きく他の実施例に比して耐久性が低下した。
加えて、改質層形成後に加熱処理した実施例9~11は、多孔質表面に改質剤が定着し、指(皮脂)が多孔質層まで達した場合にも改質欠陥の発生が抑制され、指紋汚れの発生が防止されていることがわかる。
なお、実施例1と実施例8との比較や、実施例9~11の比較から、改質層の膜厚が厚くなるほどフッ素含有率が高くなるとは限らないことがわかる。これは、余剰に成膜された改質剤は基材と結合していないシラノールなどの官能基を膜中に含むために、膜自体が均一に成膜されにくくなり、かえってフッ素含有率が低くなるからと推定される。

Claims (7)

  1. 基材上に、多孔質層と、改質層と、フッ素系オイルを含有するオイル層とがこの順に積層されて成り、
    上記多孔質層が、SiO を蒸着処理したものであり、
    上記改質層が、アルコキシシラン部とパーフルオロエーテル主鎖部とから構成されたパーフルオロポリエーテル系改質剤の上記アルコキシシラン部が上記多孔質層のSiO に結合して形成され、
    上記改質層のフッ素含有率が、38~60mol%であり、
    上記フッ素系オイルが、下記式(1)を満たすことを特徴とする防指紋構造体。

    表面自由エネルギー[mJ/m]×動粘度[cSt]≦700 ・・・式(1)
  2. 上記改質層のフッ素含有率が、44~60mol%であることを特徴とする請求項1に記載の防指紋構造体。
  3. 上記フッ素系オイルが、下記式(3)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の防指紋構造体。

    表面自由エネルギー[mJ/m]×動粘度[cSt]≦450 ・・・式(3)
  4. 上記フッ素系オイルは、120℃で24時間放置したときの蒸発減量が35質量%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つの項記載の防指紋構造体。
  5. フッ素系オイルが、パーフルオロポリエーテルオイルであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つの項に記載の防指紋構造体。
  6. 上記多孔質層が、金属酸化物から成ることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つの項に記載の防指紋構造体。
  7. 請求項1~6のいずれか1つの項に記載の防指紋構造体を有することを特徴とする自動車部品。
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