JP7467729B1 - 搬送装置 - Google Patents
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Abstract
Description
クレーン車に代わる搬送装置として、特許文献1~3には、作業エリアの上方に横架されるレールと、当該レールに沿って横行可能なチェーンブロック(巻上機)とを備えるものが開示されている。特許文献1~3の搬送装置では、巻上機によって床版を吊り上げ、そのまま横行させることで、床版を移動させている。
また、特許文献1~3の搬送装置は、走行架台を備えているため、作業エリアの変遷に伴って移設可能である。
特許文献3の搬送装置は、その全長に亘ってレールが配置されているため、チェーンブロックの横行距離は大きくなる。しかし、特許文献3の搬送装置は、作業エリアに乗り入れて使用するものであり、作業終了後に作業エリアから移設させる際には、新設床版上を走行させる必要があるため、新設床版上に軌条や鉄板を敷設する等の作業が必要となる。
このような観点から、本発明は、搬送対象物の横行距離を大きくすることができ、かつ、作業エリアを走行せずに移設できる搬送装置を提供することを課題とする。
前記支持架台は、前記横行手段を支持する支持レールと、前記床版に立設される複数の支持体と、前記床版上を走行可能な複数の走行手段とを有し、前記支持レールは、前記作業エリアの上方に配置される作業側レール部と、前記準備エリアの上方に配置される準備側レール部とを有する。
前記作業側レール部には、少なくとも一つの前記支持体が接続されており、前記準備側レール部には、少なくとも一つの前記支持体が接続されているとともに、前記走行手段が取り付けられている。
前記準備側レール部から前記作業側レール部に向かう方向を前方向としたとき、前記電源ユニットは、前記支持架台の後端部から後方に向かって片持ち状に張り出している。
本発明に係る搬送装置は、前記支持体が前記床版に接地する固定モードと前記走行手段
のみが前記床版に接地する可動モードとを切り替え可能である。
また、本発明に係る搬送装置は、固定モードと可動モードとを切り替え可能である。可動モードでは、準備エリアに配置した走行手段によって搬送装置が支持されるので、作業エリアを走行せずに搬送装置を移設できる。
また、前記支持架台が、前記走行手段と前記準備側レール部との間に介設される支持脚を有し、前記支持脚が長さ調節可能な補助支柱を有している場合には、前記補助支柱を伸ばすことで、前記可動モードに切り替えるとよい。
このようにすると、固定モードと可動モードの切り替えが容易になる。
図1は、実施形態に係る搬送装置を示す斜視図である。図2は、実施形態に係る搬送装置を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図3は、実施形態に係る搬送装置を示す図であって、(a)は図2(b)のA-A断面図、(b)は図2(b)のB-B断面図である。
本実施形態に係る搬送装置100は、橋梁上の既設床版を新設床版に取り替える際に使用する床版搬送用の工事用設備である。作業現場に搬出入する荷物は床版であり、搬送装置100によって搬送される搬送対象物は、「吊り治具8を取り付けた床版7」または「吊り治具8のみ」である。なお、図1~図3に示された床版7は、既設の床版であるが、新設の床版であってもよい。また、床板の形状等に制限はなく、平板状の床版のみならず、壁高欄と一体になったL型の床版等も含まれる。
なお、搬送装置100は、作業エリアAにおいて既設床版の撤去作業および新設床版の設置作業の両方を行う場合だけでなく、作業エリアAにおいて既設床版の撤去作業のみを行う場合や、作業エリアAにおいて新設床版の設置作業のみを行う場合にも使用できる。
すなわち、搬送装置100は、搬送対象物を吊り上げて横行させるための各種設備ユニット(横行手段2、吊持手段3、電源ユニット5など)を支持架台1に搭載して構成した工事用設備である。
支持架台1は、設備ユニットを支持する構造体であり、作業エリアAおよび準備エリアBに設置される。
支持架台1は、設備ユニットを使用して床版を搬出入するときの形態である固定モード(図1~図3、図6、図7参照)と、搬送装置100を移設するときの形態である可動モード(図8(c)参照)とを切替可能である。
支持架台1自体を作業現場に搬出入するとき(図12~図14参照)は、複数(本実施形態では二つ)の架台ユニット1A,1Bに分割された形態となる。すなわち、本実施形態の支持架台1は、二つの架台ユニット1A,1Bを連結したものである。固定モードでは、一方の架台ユニット1A(第一の架台ユニット1A)が作業エリアAに設置され、他方の架台ユニット1B(第二の架台ユニット1B)が準備エリアBに設置される。なお、支持架台1の分割数や架台ユニット1A,1Bの設置場所は、支持架台1の大きさや作業現場の状況に応じて適宜設定すればよい。
また、支持架台1は、固定モード以外の形態において使用される設備として、走行手段14と、第一支持脚15と、第二支持脚16と、運搬用支持脚17とを備えている。
図3(b)に示すように、支持レール11は、主桁11aと、主桁11aの上面に設けられた上側軌条11bと、主桁11aの下面に設けられた下側軌条11cとを備えている。
主桁11aは、設備ユニットおよび搬送対象物の重量に耐え得る強度・剛性を有した部材であり、フランジを上下に配したI形鋼からなる。
上側軌条11bは、横行手段2の横行をガイドする部材であって、角形鋼管からなり、主桁11aの上側フランジの上面に固定されている。
下側軌条11cは、吊持手段3の横行をガイドする部材であって、フランジを上下に配したI形鋼からなり、主桁11aの下側フランジの下面に固定されている。
なお、主桁11a、上側軌条11b、下側軌条11cを構成する鋼材の種類は特に限定されず、I形鋼、H形鋼、溝形鋼、角形鋼管などの中から適宜選択できる。
支持体12は、図1に示すように、支持レール11に取り付けられたブラケット12aと、ブラケット12aに取り付けられたメイン支柱12bとを備えている。
ブラケット12aは、支持レール11の外側面(主桁11aのウェブ)から側方に向かって張り出している。ブラケット12aは、支持レール11とメイン支柱12bを繋いでいる。
メイン支柱12bは、ブラケット12aから下方に向かって延出している。メイン支柱12bは、長さ調節機構を有している。本実施形態のメイン支柱12bは、直動アクチュエータ(例えば油圧ジャッキ等)であり、ブラケット12aに取り付けられたシリンダと、シリンダに対して出没可能なロッドと、ロッドの下端に取り付けられたシューとを備えている。
横桁13は、支持レール11の内側面(主桁11aのウェブ)に固定された桁受部13aと、桁受部13aに接続された桁本体部13bとを備えている。本実施形態の横桁13は、左右一対の桁受部13a,13aと、左右の桁受部13a,13aに架設された桁本体部13bを備えている。
桁受部13aは、一方の支持レール11の内側面から他方の支持レール11に向かって張り出している。桁受部13aは、角筒状を呈していて、桁本体部13bの端部を収容可能である。
桁本体部13bは、角筒状を呈している。桁本体部13bの端部は、桁受部13aに挿入されている。桁本体部13bは、桁受部13aに対してスライド可能である。桁受部13aと桁本体部13bとをスライド可能に連結することによって、横桁13の長さ調節機構が形成されている。すなわち、桁受部13aに対する桁本体部13bの挿入長さを大きくすると、横桁13が縮んだ状態となり、桁受部13aから桁本体部13bを引き出すと、横桁13が伸びた状態となる。
なお、桁受部13aは、桁本体部13bの一端側のみに配置してもよい。この場合には、桁本体部13bの他端を支持レール11に直接固定する。
走行手段14は、多軸多輪(本実施形態では2軸4輪)の無軌条式台車であり、車軸を回転させる駆動源(例えばインホイールモータ)を備えている。なお、走行手段14は、軌条式台車であってもよいし、軸数、輪数、駆動源の種類、駆動源の有無にも制限はない。
本実施形態の走行手段14は、第二支持脚16の下端に取り付けられており、走行面(床版の上面等)に垂直な軸回りに回転可能である。すなわち、走行手段14は、床版上を支持レール11の長手方向(橋軸方向)に走行可能であるとともに、床版上を横桁13の長手方向(橋軸直角方向)に走行可能である。本実施形態では、横行手段2、吊持手段3を第二の架台ユニット1Bに移動させるとともに、搬送装置100全体を低空頭にすることにより、搬送装置100の重心が架台ユニット1B側かつ下側に移動し、四つの走行手段14だけで走行可能となる(図8(c)参照)。
ブラケット15aは、作業側レール部11Aの外側面から側方に向かって張り出している。ブラケット15aは、角筒状を呈していて、張出部15bの端部を収容可能である。
張出部15b(図12(b)参照)は、角筒状を呈していて、ブラケット15aに挿入されている。張出部15bは、ブラケット15aに対して進退可能である。すなわち、作業側レール部11Aのウェブに箱型のブラケット15aが取り付けられるとともに、箱型のブラケット15aの中に箱型の張出部15bが挿入されていて、張出部15bをブラケット15aから引き出すことが可能である。作業側レール部11Aのウェブを挟んでブラケット15aの反対側には、スチフナーからなる補強部15dが形成されている。
補助支柱15cは、張出部15bの端部に取り付けられている。補助支柱15cは、張出部15bの端部において横軸回りに回動可能であり、支持レール11に沿う収納状態(図1参照)と、鉛直方向に沿う使用状態(図12(b)(c)参照)とを選択可能である。補助支柱15cは、長さ調節機構を有している。本実施形態の補助支柱15cは、直動アクチュエータ(例えば油圧ジャッキ等)であり、張出部15bに取り付けられたシリンダと、シリンダに対して出没可能なロッドと、ロッドの先端に取り付けられたシューとを備えている。補助支柱15cは、床版に立設された状態で、第一の架台ユニット1Aを昇降可能である。
上記のとおり、第一支持脚15は、固定モード以外の形態において使用される荷役用支持脚であり、第一の架台ユニット1Aの本体(作業側レール部11A)から側方に向けて延出する延出部(ブラケット15aおよび張出部15b)と、延出部から下向きに延出する補助支柱15c(図12(b)(c)参照)を備えている。
第二の架台ユニット1Bには、左右に二つずつ、合わせて四つの第二支持脚16,16,…が備わっている。なお、第二支持脚16の位置や数は、図示のものに限定されず、架台ユニット1Bや大きさや重量等に応じて変更可能であるが、一直線上に並ばない少なくとも三つの第二支持脚16を備えることが好ましい。
ブラケット16aは、準備側レール部11Bの外側面から側方に向かって張り出している。ブラケット16aは、角筒状を呈していて、張出部16bの端部を収容可能である。
張出部16bは、角筒状を呈していて、ブラケット16aに挿入されている。張出部16bは、ブラケット16aに対して進退可能である。すなわち、準備側レール部11Bのウェブに箱型のブラケット16aが取り付けられるとともに、箱型のブラケット16aの中に箱型の張出部16bが挿入されていて、張出部16bをブラケット16aから引き出すことが可能である。準備側レール部11Bのウェブを挟んでブラケット16aの反対側には、スチフナーからなる補強部16dが形成されている。
補助支柱16cは、張出部16bの端部に取り付けられている。補助支柱16cは、長さ調節機構を有している。本実施形態の補助支柱16cは、直動アクチュエータ(例えば油圧ジャッキ等)であり、張出部16bに取り付けられたシリンダと、シリンダに対して出没可能なロッドとを備えている。ロッドの下端は、走行手段14に取り付けられている。補助支柱16cは、走行手段14が走行面(床版の上面等)に接地した状態(補助支柱16cが走行面に立設された状態)で、架台ユニット1Bを昇降可能である。
上記のとおり、第二支持脚16は、固定モード以外の形態において使用される荷役用支持脚であり、第二の架台ユニット1Bの本体(準備側レール部11B)から側方に向けて延出する延出部(ブラケット16aおよび張出部16b)と、延出部から下向きに延出する補助支柱16c(図14(b)参照)を備えている。
第一の架台ユニット1Aには、左右に一つずつ、合わせて二つの運搬用支持脚17,17,…が備わっている。なお、運搬用支持脚17の位置や数は、図示のものに限定されず、架台ユニット1Aや大きさや重量等に応じて変更可能である。
運搬用支持脚17は、支持レール11の作業側レール部11Aに取り付けられた回動台座17aと、回動台座17aに取り付けられた補助支柱17bとを備えている。
回動台座17aは、作業側レール部11Aの外側面(ウェブ)に取り付けられている。
補助支柱17bは、回動台座17aに取り付けられている。補助支柱17bは、回動台座17aに備わる横軸回りに回動可能であり、支持レール11に沿う収納状態(図1参照)と、鉛直方向に沿う使用状態(図12、13参照)とを選択可能である。
横行手段2は、搬送対象物(吊り治具8を取り付けた床版7等)を横行させる機能を有するものであり、支持架台1に支持されている。本実施形態の横行手段2は、吊持手段3に吊持されていない搬送対象物を保持した状態で、支持レール11に沿って移動可能である。横行手段2は、支持レール11の下側に配置されている。
図4は、横行手段2、吊持手段3および吊り治具8を示す拡大斜視図である。なお、図4では、支持レール11の図示を省略している。
横行手段2は、前後方向に移動(横行)するための構成として、支持レール11(図1~図3参照)に沿って走行可能な横行台車21と、横行台車21に駆動力を付与する台車用駆動源22を備えている。また、横行手段2は、搬送対象物を保持可能な保持部23と、保持部23に駆動力を付与する保持部用駆動源24とを備えている。
横行台車21は、保持部用軌条21dを備えている。保持部用軌条21dは、保持部23の左右方向への移動(横行)をガイドする部材であって、台枠の上面に固定されている。
なお、図示は省略するが、横行台車21の横行(前後方向への移動)を阻止する状態と許容する状態を切り替えるロック機構として、支持架台1に係合するストッパを横行台車21に設けるか、横行台車21に係合するストッパを支持架台1に設けてもよい。
台車用駆動源22は、駆動輪21aの車軸を回転させる駆動源(例えば電動モータ)であり、横行台車21の台枠上に搭載されている。なお、横行台車21をワイヤー等で牽引する場合は、台車用駆動源を支持架台1に取り付ける。
本実施形態の保持部23は、横行台車21から垂れ下がる前後一対の腕部23a,23aと、腕部23a,23aに支持された基部23bと、上下方向の軸を中心に回動可能な旋回体23cと、旋回体23cに設けられた掛合部23dとを備えている。
腕部23aは、保持部用軌条21dに沿って横方向(左右方向)に移動可能である。腕部23aの上端部は、保持部用軌条21dに上側から覆い被さり、図示せぬ車輪を介して台枠上に載置される。車輪は、腕部23aの上端部に内蔵されており、保持部用軌条21dに沿って台枠上を転動する。
基部23bは、横行台車21の下方において腕部23a,23aに架設されている。基部23bは、旋回体23cを支持する略円形の基部本体と、基部本体から腕部23aの下側に張り出すフランジとを備えている。図示は省略するが、基部23bは、旋回体23cを支持する環状の受部(例えばスラスト玉軸受)を備えている。腕部23aの下端部は、基部23bのフランジに接合されている。
掛合部23dは、スリングを介することなく吊り治具8に掛合可能である。図3の(b)に示すように、本実施形態の掛合部23dは、旋回体23cの下面に突設されたL字状のフックである。掛合部23dは、旋回体23cの回転中心軸を中心とする仮想円の周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では二つ)配置されている。
なお、図示は省略するが、保持部23の横行(左右方向への移動)を阻止する状態と許容する状態を切り替えるロック機構として、横行台車21に係合するストッパを保持部23に設けるか、保持部23に係合するストッパを横行台車21に設けてもよい。
本実施形態の第一駆動源24aは、横行台車21の下方に配置された直動アクチュエータ(例えば電動アクチュエータ)であり、シリンダと、当該シリンダに対して進出・縮退するロッドとを備えている。第一駆動源24aは、横行台車21と一方の腕部23aとに固定される。本実施形態では、ロッドの先端が横行台車21の左右方向の一端(本実施形態では左端)に固定されており、シリンダが一方の腕部23aに固定されている。第一駆動源24aは、横行台車21に反力をとって一方の腕部23aを押し引きすることで、保持部23をスライドさせる。なお、第一駆動源24aの最大出力は、搬送対象物を保持した状態の保持部23を移動させることができない大きさとすることが好ましい。また、直動アクチュエータに代えて、腕部23aに内蔵された車輪を駆動する電動モータを第一駆動源としてもよい。
第二駆動源(図示略)は、腕部23aまたは基部23bに取り付けられた電動モータであり、旋回体23dcのギヤに歯合するピニオンを正逆回転させることで、旋回体23cを回動させる。
吊持手段3は、搬送対象物を搬送元から横行手段2に向けて上昇させる機能、および、搬送対象物を横行手段2から搬送先に向けて下降させる機能を有するものであり、支持架台1に支持されている。吊持手段3は、横行手段2の上方に配置されている。このようにすると、吊持手段3の揚程を短くすることが可能となる。
本実施形態の吊持手段3は、支持レール11の上側に配置されており、搬送対象物を吊持していない状態であれば、支持レール11に沿って移動可能である。すなわち、吊持手段3は、スリング35を介して搬送対象物を昇降可能であるとともに支持レール11に沿って移動可能である。なお、搬送対象物を吊持していない状態とは、例えば、スリング35が搬送対象物から外れた状態や、スリング35が搬送対象物に接続されているもののスリング35が弛んだ状態である。
図4に示すように、吊持手段3は、前後方向に移動(横行)するための構成として、支持レール11(図1~図3参照)に沿って走行可能な吊持台車31と、吊持台車31に駆動力を付与する台車用駆動源32とを備えている。また、吊持手段3は、左右方向に移動(横行)するための構成として、吊持台車31上において横方向に移動可能な支持フレーム33と、支持フレーム33に駆動力を付与するフレーム用駆動源34とを備えている。さらに、吊持手段3は、搬送対象物を昇降させるための構成として、搬送対象物に接続されるスリング35と、スリング35の繰り出し長さを調節する操出部36と、スリング35に作用する引張力を測定するロードセル37とを備えている。
吊持台車31は、支持フレーム用軌条31cを備えている。支持フレーム用軌条31cは、支持フレーム33の左右方向への横行をガイドする部材であって、台枠の上面に固定されている。支持フレーム用軌条31cには、前方または後方に窪む係止溝が形成されている。
なお、図示は省略するが、吊持台車31の横行(前後方向への移動)を阻止する状態と許容する状態を切り替えるロック機構として、支持架台1に係合するストッパを吊持台車31に設けるか、吊持台車31に係合するストッパを支持架台1に設けてもよい。
図3(b)に示す台車用駆動源32は、駆動輪31aの車軸を回転させる駆動源(例えば電動モータ)であり、吊持台車31の台枠下に搭載されている。台車用駆動源32の最大出力(最大トルク)は、吊持手段3に搬送対象物を吊り下げた状態で駆動輪31aの車軸を回転させることができない大きさとすることが好ましい。なお、吊持台車31をワイヤー等で牽引する場合は、台車用駆動源を支持架台1に取り付ける。
本実施形態の支持フレーム33は、間隔をあけて配置された一対の支持梁33a,33aと、支持梁33aの一端側に配置されたスペーサ33bと、支持梁33aの他端側に配置された取付座33cと、支持梁33aの上面に配置された操出部用軌条33dとを備えている。
スペーサ33bは、支持梁33a,33aの前端側の間隔を保持する部材であり、支持梁33a,33aの前端部同士を繋いでいる。
取付座33cは、操出部36の一部の構成要素を支持する部材であり、支持梁33a,33aの後端部に設けられている。本実施形態の取付座33cは、支持梁33a,33aの後端部同士を繋ぐ中央部と、支持梁33a,33aの左右に張り出す張出部とを備えている。
操出部用軌条33dは、操出部36の構成要素うち、前後方向にスライドする部材をガイドする部材であって、支持梁33aの上面に固定されている。
なお、図示は省略するが、支持フレーム33は、支持フレーム用軌条31cの係止溝に入り込む逸脱阻止部、支持フレーム用軌条31c上を転動する車輪などをさらに備えている。支持フレーム33に設けた逸脱阻止部を支持フレーム用軌条31cの係止溝に係止することで、支持フレーム33の前後移動や浮き上がりが阻止される。
本実施形態のフレーム用駆動源34は、吊持台車31の上方に配置された直動アクチュエータ(例えば電動アクチュエータ)であり、シリンダと、当該シリンダに対して進出・縮退するロッドとを備えている。フレーム用駆動源34は、吊持台車31と一方の支持梁33aとに固定される。本実施形態では、ロッドの先端が吊持台車31に固定されており、シリンダが一方の支持梁33aに固定されている。フレーム用駆動源34は、吊持台車31に反力をとって一方の支持梁33aを押し引きすることで、支持フレーム33を横行させる。
ストロークが大きい直動アクチュエータをフレーム用駆動源34とする場合には、吊持台車31の左右方向の一端と、吊持台車31の一端から遠い方の支持梁33aとに直動アクチュエータを固定するとよい。この場合、電動アクチュエータは、吊持台車31の一端に近い方の支持梁33aを貫通または交差するように配置する。本実施形態のフレーム用駆動源34(電動アクチュエータ)は、左側の支持梁33aを貫通している。ロッドの先端は、吊持台車31の左端に固定されており、シリンダは、吊持台車31の左端から遠い方の支持梁33a(右側の支持梁33a)の右側面に固定されている。なお、電動アクチュエータは、吊持台車31の一端に近い方の支持梁33a(本実施形態では左側)に固定してもよい。
なお、フレーム用駆動源34の最大出力は、搬送対象物を吊持した状態の支持フレーム33を移動させることができない大きさとすることが好ましい。また、直動アクチュエータに代えて、支持梁33aに内蔵された車輪を駆動する電動モータや、ワイヤーを介して支持フレーム33を牽引するウインチをフレーム用駆動源としてもよい。
本実施形態の操出部36は、支持フレーム33に支持された固定シーブ36aと、支持フレーム33にスライド可能に支持されたスライド部36bと、固定シーブ36aに対して接近離間する移動シーブ36cと、スライド部36bを固定シーブ36aに対して接近離間させる直動アクチュエータ36dとを備えている。
固定シーブ36aは、吊持台車31の台枠の上方に配置されているが、少なくとも固定シーブ36aの後端は、台枠の中央部(開口部)の上方に位置している。固定シーブ36aの外周には、スリング35が掛け回される少なくとも一つ(本実施形態では二つ)の溝部が形成されている。
スライド部36bは、スリング接続部361と、シーブ支持部362とを備えている。
スリング接続部361は、移動シーブ36cの前方かつ固定シーブ35aおよび移動シーブ36cよりも高い位置に設けられている。スリング接続部361には、固定シーブ36aから斜め上方に延出するスリング35の端部が接続されている。
シーブ支持部362は、移動シーブ36cを挟んで対向する一対の軸受け板と、両軸受け板に架設された軸部363とを備えている。シーブ支持部362は、支持梁33aの側面(ウェブ)に間隔をあけて対向している。
軸部363は、支持梁33aのスリット33eを貫通し、支持フレーム33の外側に突出している。スライド部36bが前後方向にスライドする際、軸部363はスリット33e内を前後方向にスライドする。つまり、スリット33eは、スライド部36bのガイドとして機能する。
移動シーブ36cの外周には、スリング35が掛け回される少なくとも一つ(本実施形態では一つ)の溝部が形成されている。
直動アクチュエータ36dは、シリンダと、当該シリンダに対して進出・縮退するロッドとを備えている。直動アクチュエータ36dは、支持フレーム33とスライド部36bとに固定される。本実施形態では、シリンダが支持フレーム33の取付座33c(より具体的には、取付座33cの張出部)に固定されており、ロッドの先端がスライド部36bの軸部363に固定されている。直動アクチュエータ36dは、支持フレーム33に反力をとって軸部363を押し引きすることで、スライド部36bを前後方向にスライドさせる。軸部363を押し引きする際は、スリット33eの上下の縁によって軸部363の上下動が抑制される。
より具体的に説明すると、搬送対象物から上方に向けて延びるスリング35は、固定シーブ36aの一の溝部に対して後側から略1/4周ほど掛け回されて移動シーブ36cに向かい、移動シーブ36cの溝部に対して上側から略半周ほど掛け回されて再び固定シーブ36aに向かい、固定シーブ36aの他の溝部に対して下側から略半周ほど掛け回されたうえで、スリング接続部361に接続されている。
そして、直動アクチュエータ36dのロッドを進出させてスライド部36bを前方に移動させると、スリング接続部361および移動シーブ36cが固定シーブ36aから遠ざかり、操出部36に巻き取られるスリング35の長さが増すことで、スリング35の下端(搬送対象物側の端部)が上昇する。
また、直動アクチュエータ36dのロッドを縮退させてスライド部36bを後方に移動させると、スリング接続部361および移動シーブ36cが固定シーブ36aに近づき、操出部36に巻き取られるスリング35の長さが減ることで、スリング35の下端(搬送対象物側の端部)が下降する。
例えば、直動アクチュエータ36dは、電動に限らず、油圧式でもよい。
また、固定シーブ36aの溝部の数、移動シーブ36cの溝部の数は、スリング35の繰り出し長さと直動アクチュエータ36dのストローク量に応じて適宜変更可能である。
スリング35の繰り出し長さが直動アクチュエータ36dのストローク量以下である場合には、移動シーブ36cを省略してもよい。この場合、固定シーブ36aの溝部は一つでよい。
なお、移動シーブ36cを設けると、搬送対象物を吊り上げる際に必要となる力が搬送対象物の重量よりも小さくなるので、直動アクチュエータ36dの出力(推力)よりも大きい重量の搬送対象物を吊り上げることが可能となる。
ちなみに、本実施形態では、固定シーブ36aとスライド部36bとの間にスリング35が3本配置されるので、スリング35の繰り出し長さ(吊持手段3の揚程)は、直動アクチュエータ36dのストローク量の3倍となる。
図5は、実施形態に係る搬送装置100の機能ブロック図である。
制御装置4は、ロードセル37で取得されたデータまたはコントローラCからの指令に基づいて横行手段2および吊持手段3を制御する。制御装置4は、支持架台1や設備ユニット(横行手段2、吊持手段3、電源ユニット5)に設けることができる。本実施形態の制御装置4は、判定手段41と、横行制御手段42と、昇降制御装置43と、回転制御手段44とを備えている。
本実施形態の判定手段41は、ロードセル37で取得されたデータ(引張力の大きさ)に基づいて吊持状態であるか否かを判定する。すなわち、判定手段41は、ロードセル37で計測された引張力の大きさが閾値を超えた場合には、搬送対象物がスリング35に吊られた状態(吊持状態)であると判定し、閾値以下である場合には、搬送対象物がスリング35に吊られていない状態(非吊持状態)であると判定する。ロードセル37から出力される引張力の値は、スリング35に作用している引張力を反映した値であるので、ロードセル37で取得されたデータを使用すると、吊持状態であるか否か(すなわち、操出部36に搬送対象物の重量が作用しているか否か)を容易かつ確実に判定できる。
閾値は、搬送対象物(床版7および吊り治具8)の重量に基づいて都度設定してもよいし、搬送対象物が吊り治具8のみの場合を想定し、吊り治具8の重量を下回る固定値としてもよい。
判定手段41により吊持状態であると判定され、横行制御手段42により横行阻止制御が実行されると、横行手段2および吊持手段3は横行阻止状態となり、コントローラCを介して横行手段2または吊持手段3の移動(前後方向への移動または左右方向への移動)を制御装置4に指示しても、停止状態が維持される。
横行阻止制御は、例えば、横行手段2の駆動源(台車用駆動源22、保持部用駆動源24)および吊持手段3の駆動源(台車用駆動源32、フレーム用駆動源34)を非作動とする制御である。駆動源が電動である場合は、駆動源を非作動とする制御として、駆動源への電力の供給を停止する制御(電源回路の開閉器をオフにする制御)を実行することが好ましい。駆動源が流体圧(油圧や空気圧など)で作動する場合は、駆動源を非作動とする制御として、流体の供給を停止する制御(ポンプを停止する制御や流体の流路に設けた開閉弁を閉じる制御など)や、流体圧をリリーフする制御を実行することが好ましい。
なお、横行台車21、保持部23、吊持台車31および支持フレーム33の横行を阻止するロック機構(ストッパなど)を備えている場合には、横行制御手段42は、横行阻止制御として、ロック機構を作動させる制御(ストッパを出現させる制御等)を実行する。
回転制御手段44は、横行手段2の旋回体23cの回転方向がコントローラCの操作通りになるよう保持部用駆動源24の一つである第二駆動源(図示略)を制御する機能を備えている。
図1に示す電源ユニット5は、電動の駆動源や制御装置4に電力を供給する設備ユニットであり、支持架台1に支持されている。
電源ユニット5は、支持レール11,11の端部に取り付けられた台座51と、台座51に載置された発電機とを備えている。
台座51は、第二の架台ユニット1Bの後端部(準備側レール部11Bの後端部)に取り付けられており、架台ユニット1Bの後端部から後方に向かって片持ち状に張り出している。
発電機52の電力供給先に制限はないが、本実施形態では、横行手段2の駆動源(台車用駆動源22、保持部用駆動源24)、吊持手段3の駆動源(台車用駆動源32、フレーム用駆動源34)、ロードセル37、制御装置4などに図示せぬ電力ケーブルを介して電力を供給している。
なお、搬送装置100を移設する過程において、支持架台1の形態を可動モード(図8(c)参照)にするとき(搬送装置100を第二支持脚16だけで自立させるとき)は、電源ユニット5がカウンターウエイトとなる。台座51と電源ユニット52の重量だけでバランスが取れない場合は、錘となる部材(図示略)を台座51に搭載してもよい。
吊り治具8は、図1に示すように、横行手段2および吊持手段3に掛合可能な機構を備える床版搬送用の冶具であり、床版7に取り付けられる。
図4に示すように、吊り治具8は、スリング35を掛合可能な第一掛合部86と、横行手段2の保持部23に掛合可能な第二掛合部87とを備えている。すなわち、吊り治具8は、スリング35に掛合可能な第一掛合部86と横行手段2の保持部23に掛合可能な第二掛合部87とを別々に備えるものである。
このような吊り治具8を床版7に取り付ければ、スリング35で吊り上げた搬送対象物(吊り治具8を取り付けた床版7)を横行手段2に受け渡すことができ、あるいは、横行手段2に保持された搬送対象物を吊持手段3に受け渡すことができる。
さらに、本実施形態の吊り治具8は、基部81を補強する補強部82と、基部81と補強部82とを繋ぐ荷重分散部83と、荷重分散部83と柱部85とを繋ぐ脚部84とを備えている。
補強部82は、鋼材からなり、基部81を構成する四つの鋼材のうち、対向する二つの鋼材を繋ぐように配置されている。補強部82の端部は、基部81に接合されている。補強部82の向きに制限はないが、本実施形態の補強部82は、基部81の長手方向に沿って配置されている。また、補強部82の本数にも制限はないが、本実施形態では、二本の補強部82,82が基部81の短手方向に間隔をあけて並設されている。二本の補強部82,82は、柱部85を挟んで対向している。
荷重分散部83は、補強部82と交差する方向に配置された鋼材(鋼棒など)からなり、基部81を構成する四つの鋼材のうち、補強部82と平行な二つの鋼材と、補強部82,82とを貫通している。すなわち、荷重分散部83は、基部81の短手方向に沿って配置されている。荷重分散部83の本数に制限はないが、本実施形態では、二本の荷重分散部83,83が基部81の長手方向に間隔をあけて並設されている。荷重分散部83,83は、柱部85を挟んで対向している。
脚部84は、柱部85の下部から荷重分散部83に向かって張り出す鋼材(例えば鋼板)からなる。荷重分散部83は、脚部84を貫通している。
柱部85は、基部81の中央部に配置された鋼材(鋼管など)からなり、補強部82、荷重分散部83および脚部84を介して基部81に連結されている。柱部85は、基部81の上方に向かって延出しており、吊り治具8を横行手段2の保持部23に向けて上昇させると、開口部23eに挿入される。
また、基部81と柱部85との間に、補強部82、荷重分散部83および脚部84を介在させると、吊り治具8を用いて荷物を吊持あるいは保持した際、柱部85に作用する力を基部81と補強部82に好適に分散させることができるので、吊り治具8に大きな変形が生じ難くなる。
搬送装置100を使用すると、吊持手段3によって搬送対象物を吊り上げ、吊り上げた搬送対象物を横行手段2に受け渡した後、横行手段2によって搬送対象物を横行させることができる。
また、搬送装置100は、搬送対象物がスリング35に吊られた状態(負荷状態)であるか否かを判定することができ、かつ、負荷状態であると判定されたときは横行手段2および吊持手段3の横行を阻止する状態となる。すなわち、搬送装置100を使用すると、搬送対象物をスリング35に吊った状態で横行させないという作業手順を遵守することができる。ちなみに、スリングに吊った搬送対象物を横行できない機構を備えている搬送装置100は、クレーン等安全規則におけるクレーンに該当するものではない。
以下、搬送装置100の使用例として、橋梁上の既設床版を新設床版に取り替える床版取替方法を例示する。
図1に示すように、床版取替方法に使用する搬送装置100は、作業エリアA(図1においてドットを付したエリア)および準備エリアBに設置される。
本実施形態に係る床版取替方法は、搬送装置100を使用した床版移動方法によって既設の床版7を所定の搬出先(準備エリアB)に移動する床版撤去工程と、床版7の搬出先に運び込まれた新設の床版(図示略)を、搬送装置100を使用した床版移動方法によって床版7の搬出元(作業エリアA)に移動する床版設置工程と、を備える。
床版撤去工程では、図6(a)(b)に示すように、作業エリアAにおいて吊持手段3によって搬送対象物(吊り治具8を取り付けた既設の床版7)を上昇させ、作業エリアAの上方において搬送対象物を横行手段2に受け渡した後、図6(c)および図7(a)に示すように、横行手段2によって搬送対象物を準備エリアBの上方まで横行させる。
また、床版撤去工程では、図7に示すように、空荷状態の吊持手段3を横行手段2の上方まで回送させ、準備エリアBの上方において搬送対象物を横行手段2から吊持手段3に 受け渡した後、吊持手段3によって搬送対象物を運搬車両6の荷台61まで下降させる。
本実施形態に係る床版移動方法は、吊上げ準備工程(図6(a))、吊上げ工程および横行準備工程(図6(b))、横行工程(図6(c))、回送工程および吊下げ準備工程(図7(a))、吊下げ工程(図7(b))を備えている。なお、以下の説明において、図6および図7に示されていない横行手段2,吊持手段3および吊り治具8の具体的構成は、図4を参照して説明する。
治具搬送作業は、吊上げ準備工程における搬送対象物である吊り治具8を、横行手段2を用いて床版7の上方まで移動させる作業である。吊り治具8は、横行手段2の保持部23に保持させる。なお、治具搬送作業中は、吊持手段3のスリング35に引張力が作用しない非吊持状態となる(図5に示す判定手段41により非吊持状態であると判定される)ため、横行手段2および吊持手段3の移動(横行)が許容される。横行手段2を前後方向に横行させて吊り治具8を撤去対象の床版7の上方まで移動させたら、横行手段2の保持部23を左右方向に横行させて、床版7の重心を通る鉛直線上に吊り治具8の柱部85(吊り治具8の重心)が一致するように吊り治具8の位置調整を行う。吊り治具8の位置調整が完了したら、吊持手段3を前後方向に横行させるとともに、支持フレーム33を左右方向に横行させて、横行手段2の保持部23の中心とスリング35が一致するように吊持手段3の位置調整を行う。
治具下降作業は、スリング35に吊り下げられた吊り治具8を、床版7まで下降させる作業である。治具下降作業は、吊持手段3の操出部36を作動させることにより行う。吊り治具8を床版7上に載置したら、スリング35の下端部を吊り治具8の第一掛合部86から取り外す。
治具固定作業は、吊り治具8を床版7に固定する作業である。治具固定作業は、例えば、床版7に貫設したPC鋼棒等の締結部品を吊り治具8に締着することにより行う。
スリング接続作業は、スリング35を搬送対象物(吊り治具8を取り付けた床版7)に接続する作業である。スリング接続作業では、スリング35の下端部を吊り治具8の第一掛合部86に掛合する。
なお、治具下降作業の完了後、スリング35の下端部を吊り治具8の第一掛合部86から取り外さない場合は、治具固定作業を行うことにより、スリング接続作業も完了する。
なお、吊り治具8の第一掛合部86の位置を搬送対象物の重心に合わせているので、吊上げ工程中の搬送対象物の姿勢を安定させることができる。
横行手段2の保持部23の下方まで搬送対象物を上昇させたら、保持部23の開口部23eに吊り治具8の柱部85を挿入させつつ、さらに搬送対象物を上昇させ、吊り治具8の掛合孔87a,87aの一端側に横行手段2掛合部23d,23dを挿入する。
なお、吊上げ工程中は、吊持手段3のスリング35に引張力が作用する吊持状態となる(判定手段41により吊持状態であると判定される)ため、横行手段2および吊持手段3の移動(横行)は阻止される。
なお、スリング35の下端部と吊り治具8の第一掛合部86との掛合状態を解除すると、搬送対象物の自重が横行手段2に作用し、吊持手段3のスリング35に引張力が作用しない非吊持状態となる(判定手段41により非吊持状態であると判定される)ため、横行準備工程後は、横行手段2および吊持手段3の移動(横行)が許容される。
横行準備工程の完了後、横行工程を開始する前、または、横行工程の途中で、搬送対象物の向きを変更する回転工程を行ってもよい。図6(c)に示すように、本実施形態では、搬送対象物の長手方向の寸法が、左右に隣り合うメイン支柱12b,12bの間隔よりも大きいため、横行工程の途中で、搬送対象物の短手方向が左右方向となるように搬送対象物を90度回転させている。回転工程は、横行手段2の旋回体23cを回転させることにより行う。
横行手段2の移動先まで吊持手段3を回送させれば、横行手段2に保持された搬送対象物を下降させる際にも吊持手段3を利用することが可能となる。
搬送対象物を荷台61上に載置したら、床版7から吊り治具8を取り外し、吊持手段3を使用して吊り治具8を上昇させる。
吊下げ工程が完了したら、運搬車両6により床版7を準備エリアBから作業現場外に運び出す。
すなわち、床版設置工程では、荷台61に載置された搬送対象物(吊り治具8を取り付けた新設の床版)を吊持手段3によって上昇させ、準備エリアBの上方において搬送対象物を吊持手段3から横行手段2に受け渡した後、横行手段2によって搬送対象物を作業エリアAの上方まで横行させる。
さらに、床版設置工程では、空荷状態の吊持手段3を横行手段2の上方まで回送させ、作業エリアAの上方において搬送対象物を横行手段2から吊持手段3に受け渡した後、吊持手段3によって搬送対象物を作業エリアAまで下降させる。
作業エリアAでの床版取替作業が完了したら、搬送装置100を移動させる。図8および図9は、搬送装置100の移動方法を説明する図である。
本実施形態の搬送装置移動方法は、支持架台1の形態を固定モードから可動モードに変更する第一のモード変更工程(図8)と、搬送装置100を自走させる自走工程と、支持架台1の形態を可動モードから固定モードに変更する第二のモード変更工程(図9)を備えている。なお、固定モードは、支持体12が床版に接地する形態であり、可動モードは、走行手段14のみが床版に接地する形態である。
第一の重心移動作業は、図8(a)に示すように、吊り治具8を保持した横行手段2を支持架台1の後部(第二の架台ユニット1B)に移動させるとともに、吊持手段3を支持架台1の後部(第二の架台ユニット1B)に移動させる作業である。すなわち、第一の重心移動作業は、支持架台1に搭載された設備ユニット(横行手段2、吊持手段3、電源ユニット5)および吊り治具8を第二の架台ユニット1Bに集約し、搬送装置100の重心位置を架台ユニット1B内に移動させる作業である。
第二の重心移動作業は、図8(b)に示すように、支持架台1の支持レール11,11を下降させる作業である。すなわち、第二の重心移動作業は、支持架台1に搭載された設備ユニット(横行手段2、吊持手段3、電源ユニット5)および吊り治具8を支持レール11,11とともに下降させ、搬送装置100の重心位置を下側に移動させる作業である。本実施形態では、支持体12のメイン支柱12bの長さ調節機構(直動アクチュエータ)を作動させ、メイン支柱12bを縮めることで、支持レール11,11を下降させる。
受替え作業は、図8(c)に示すように、搬送装置100の自重を支持体12から走行手段14に受け替える作業である。本実施形態では、第二支持脚16の補助支柱16cの長さ調節機構(直動アクチュエータ)を作動させ、補助支柱16cを伸ばすことで、搬送装置100の自重を支持体12から走行手段14に受け替える。走行手段14が床版(走行面)に接地したら、補助支柱16cをさらに伸ばし、支持体12を宙に浮かせた状態とする。受替え作業が完了すると、支持架台1の形態が可動モードに切り替わり、準備エリアBに配置した四つの走行手段14のみによって搬送装置100が支持される。
本実施形態では、補助支柱16cを縮めることで、搬送装置100の自重を走行手段14から支持体12に受け替え、メイン支柱12bを伸ばすことで、設備ユニットとともに支持レール11,11を上昇させる。
第二のモード変更工程が完了すると、支持架台1の形態が固定モードに切り替わり、支持体12によって搬送装置100が支持される。
また、支持体12が長さ調節可能なメイン支柱12bを備えており、第二支持脚16が長さ調節可能な補助支柱16cを備えているので、固定モードと可動モードの切り替えが容易である。
搬送装置100は、図10および図11に示すように、運搬車両6に搭載可能なユニットに分けて作業現場に搬入され、あるいは作業現場から搬出される。
図10は、搬送装置100を構成する第一の架台ユニット1Aを運搬車両6に積載した状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。図11は、搬送装置100を構成する第二の架台ユニット1Bを運搬車両6に積載した状態を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
本実施形態では、支持架台1を第一の架台ユニット1Aと第二の架台ユニット1Bに分けて運搬車両6に積載する。図示は省略するが、設備ユニット(横行手段2、吊持手段3、電源ユニット5等)は支持架台1から取り外し、架台ユニット1A,1Bとは別の運搬車両6に積載する。
図11(a)に示すように、架台ユニット1Bを荷台61に積載する際は、前後の横桁13,13を縮めて、架台ユニット1Bの幅寸法を運搬車両6の車幅よりも小さくする。また、図11(b)に示すように、支持体12のメイン支柱12bを縮めたうえで、四つの支持体12,12,…によって架台ユニット1Bを荷台61上に自立させる。
搬送装置100は、クレーンを使用せずに組み立てることができる。
以下、図12~図16を参照して、搬送装置100の組立方法を説明する。図12~図16は、搬送装置100の組立方法を説明する図である。
本実施形態の組立方法は、支持架台1を組み立てる架台設置工程(図12~図14、図15(a)(b))と、支持架台1に設備ユニットを搭載する設備組立工程(図15(c)、図16)とを備えている。
続いて、図12(b)に示すように、架台ユニット1Aに収納されている荷役用支持脚(第一支持脚15)を使用時の形態に変化させる。具体的には、ブラケット15a(図1参照)に収容された張出部15bを引き出すとともに、張出部15bの端部において横軸回りに補助支柱15cを回転させ、補助支柱15cを鉛直方向に沿う状態にする。
その後、図12(c)に示すように、補助支柱15cを伸し、補助支柱15cの下端が床版(運搬車両6の走行面)に接地したら、補助支柱15cをさらに伸ばし、架台ユニット1Aを荷台61から浮かせた状態にする。つまり、架台ユニット1Aに備わる荷役用支持脚(第一支持脚15)によって架台ユニット1Aを床版上に自立させる。
架台ユニット1Aを荷台61から浮かせたら、運搬車両6を移動させる(図13(a)参照)。
続いて、図13(b)に示すように、第一支持脚15の補助支柱15cを縮めて、支持体12と運搬用支持脚17を床版に接地させる。
その後、図13(c)に示すように、第一支持脚15の補助支柱15cを収納時の形態(支持レール11に沿う状態)に変化させ、支持体12と運搬用支持脚17によって架台ユニット1Aを床版上に自立させる。架台ユニット1Aに備わる本設の支持体12は二つであるが、支持体12に加えて二つの運搬用支持脚17,17を備えているため、組立後と同様の姿勢で仮置きすることができる。
続いて、図14(b)に示すように、第二の架台ユニット1Bに収納されている荷役用支持脚(第二支持脚16)を使用時の形態に変化させる。具体的には、ブラケット16a(図1参照)に収容された張出部16bを引き出す。
その後、図14(c)に示すように、補助支柱16cを伸し、走行手段14が床版(走行面)に接地したら、補助支柱16cをさらに伸ばし、第二の架台ユニット1Bを荷台61から浮かせた状態にする。つまり、架台ユニット1Bに備わる荷役用支持脚(第二支持脚16)によって架台ユニット1Bを床版上に自立させる。架台ユニット1Bを荷台61から浮かせたら、運搬車両6を移動させる。
続いて、図15(a)に示すように、第二の架台ユニット1Bを走行手段14で自走させて、第一の架台ユニット1Aに隣接する位置まで移動させ、さらに、第二支持脚16の補助支柱16cを縮めて、第二の架台ユニット1Bの高さを第一の架台ユニット1Aの高さに合わせる。
なお、走行手段14を備えた第二の架台ユニット1Bは、床版(運搬車両6の走行面)上の任意の位置に移動できるので、例えば、第一の架台ユニット1Aから離れた場所で運搬車両6から下ろした後、架台ユニット1Aに隣接する位置まで移動させてもよい。
拡幅作業では、まず、支持体12のメイン支柱12bを伸ばし、支持架台1を床版から浮かせた状態にする。その後、図15(b)に示すように、走行手段14の向きを支持レール11に直交する方向(左右方向)に変更する。続いて、支持体12のメイン支柱12bを縮めるか、あるいは、第二支持脚16の補助支柱16cを伸ばして、走行手段14を床版に接地させる。走行手段14が床版に接地したら、補助支柱16cをさらに伸ばし、支持体12を床版から浮かせ、支持架台1の形態を可動モードに切り替える。その後、走行手段14を左右方向に走行させることで、支持レール11,11の間隔を広げ、横桁13を伸ばす。支持架台1の形態を可動モードにすれば、走行手段14によって支持架台1が支持されるので、支持レール11,11の間隔調節をスムーズに行うことができる。
拡幅作業が完了したら、第二支持脚16の補助支柱16cを縮めるか、あるいは、支持体12のメイン支柱12bを伸ばし、支持体12によって支持架台1を床版上に自立させ、走行手段14を床版から浮かせた状態にする。その後、走行手段14の向きを支持レール11に沿う方向(前後方向)に変更する。
本実施形態の設備組立工程は、吊持手段3を支持架台1に設置する第一の設置作業(図15(c))と、横行手段2を支持架台1に設置する第二の設置作業(図16(a))と、電源ユニット5を支持架台1に設置する第三の設置作業(図16(b))とを備えている。
支持架台1に搭載する設備ユニット(横行手段2、吊持手段3および電源ユニット5)および吊り治具8は、作業順に並べて運搬車両6の荷台61に積載することが好ましい。本実施形態では、荷台61の後部から前部に向かって、吊持手段3、横行手段2、吊り治具8、電源ユニット5の順に並べている。
横行手段2を支持架台1に取り付けたら、支持体12のメイン支柱12bを伸ばし、支持レール11,11を上昇させる。その後、吊り治具8を積載した運搬車両6を後進させ、荷台61を支持架台1の内部空間内に進入させる(車両進入工程)。具体的には、横行手段2の保持部23(図4参照)の直下に吊り治具8の第二掛合部87(図4参照)を位置させる。次に、荷台61上の吊り治具8の高さに合わせて支持架台1の高さ(支持レール11の高さ)を調整する(高さ調整工程)。具体的には、支持体12のメイン支柱12bを縮め、支持レール11,11とともに横行手段2を下降させ、横行手段2の保持部23(図4参照)に柱部85(図4参照)を入り込ませつつ、吊り治具8の第二掛合部87を保持部23の掛合部23d(図4参照)に掛合させる。吊り治具8を横行手段2に保持させたら、横行手段2を荷台61よりも前方に移動させる。
その後、運搬車両6を移動させ、図16(c)に示すように、支持体12のメイン支柱12bを伸ばすと、床版を搬出入可能な搬送装置100が得られる。
搬送装置100は、クレーンを使用せずに解体(分解)することができる。
図示は省略するが、搬送装置100の解体方法は、組立方法と逆の手順で行う。解体途中の様子は、図12~図16に示す組立途中の様子と同様である。
すなわち、本実施形態の解体方法は、支持架台1から設備ユニットを取り外す設備分解工程と、支持架台1を分解する架台分解工程とを備える。
車両進入工程では、運搬車両6の荷台61の少なくとも一部を支持架台1の内部空間内に進入させる。
高さ調整工程では、支持架台1の高さ(すなわち、支持レール11の高さ)を調整して、支持架台1上の設備ユニットの高さを荷台61の高さに合わせる。
取外し工程では、荷台61の高さに合わせた設備ユニットを支持架台1から取り外す。
このような手順であれば、設備ユニットの高さを荷台61の高さを合わせた状態で、設備ユニットを荷台61に近接させることができるので、支持架台1から取り外した設備ユニットをクレーンで吊り上げることなく荷台61に積載することができる。
縮幅作業では、支持架台1の形態を可動モードに切り替えたうえで、支持レール11,11の間隔を狭める。
第一の架台ユニット1Aの積載作業では、架台ユニット1Aから床版(運搬車両6の走行面)に荷役用支持脚(第一支持脚15,15)を下ろし、床版上に立設された荷役用支持脚によって架台ユニット1Aを上昇させる。支持体12の下端の高さが荷台61の上面の高さを上回ったら、架台ユニット1Aの内部空間内に運搬車両6の荷台61を進入させる。その後、荷役用支持脚によって架台ユニット1Aを下降させると、架台ユニット1Aを荷台61上に載置することができる。
第二の架台ユニット1Bの積載作業では、架台ユニット1Bから床版(運搬車両6の走行面)に荷役用支持脚(第二支持脚16,16)を下ろし、床版上に立設された荷役用支持脚によって架台ユニット1Bを上昇させる。支持体12の下端の高さが荷台61の上面の高さを上回ったら、架台ユニット1Bの内部空間内に運搬車両6の荷台61を進入させる。その後、荷役用支持脚によって架台ユニット1Bを下降させると、架台ユニット1Bを荷台61上に載置することができる。
搬送装置100は、吊持手段3のスリング35に吊られた搬送対象物をそのまま横行させるのではなく、吊持手段3に吊持された搬送対象物を横行手段2に受け渡した後、横行手段2によって搬送対象物を横行させるものである。搬送装置100は、以下のような作用効果を奏する。
(1)搬送対象物を吊った状態にあるときは横行させないという作業手順を遵守することができる。
(2)作業エリアAに立設される支持体12と準備エリアBに立設される支持体12とによって支持レール11が支持されるので、支持体12の本数や間隔を適宜設定することにより、支持レール11の長さ(すなわち、搬送対象物の横行可能距離)を大きくすることができる。また、搬送装置100(支持架台1)を可動モードにすると、準備エリアBに配置した走行手段14によって搬送装置100が支持されるので、作業エリアAを走行せずに搬送装置100を移設できる。
(3)クレーンを使用せずに荷台61への架台ユニット1A,1Bの積み込みまたは荷台61からの架台ユニット1A,1Bの積み下ろしが可能となる。
(4)クレーンを使用することなく支持架台1に設備ユニットを脱着することができる。
(5)施工条件に応じて搬送装置100の諸元やレイアウトを容易に変更することができる。
(6)搬送対象物を横行させる際の安定性を高めることが可能となる。
(7)スリング35に吊持されていない搬送対象物を横行させることができるため、スリング35に吊り下げたまま横行させる場合に比べて、横行時に大きな揺れが発生することを抑制できる。
(8)吊り治具8を使用すると、横行手段2と吊持手段3との間で搬送対象物を受け渡す作業を効率良く行うことができる。
1 支持架台
1A 架台ユニット
1B 架台ユニット
11 支持レール
11A 作業側レール部
11B 準備側レール部
12 支持体
12a ブラケット
12b メイン支柱
13 横桁
14 走行手段
15 第一支持脚(荷役用支持脚)
15a ブラケット
15c 補助支柱
16 第二支持脚(荷役用支持脚)
16a ブラケット
16c 補助支柱
17 運搬用支持脚
2 横行手段(設備ユニット)
21 横行台車
21a 駆動輪
21b 従動輪
22 台車用駆動源
23 保持部
23d 掛合部
23e 開口部
24 保持部用駆動源
3 吊持手段(設備ユニット)
31 吊持台車
31a 駆動輪
31b 従動輪
32 台車用駆動源
33 支持フレーム
33a 支持梁
33e スリット
34 フレーム用駆動源
35 スリング
36 操出部
36a 固定シーブ
36b スライド部
361 スリング接続部
362 シーブ支持部
363 軸部
36d 直動アクチュエータ
37 ロードセル
4 制御装置
41 判定手段
42 横行制御手段
5 電源ユニット(設備ユニット)
51 台座
52 発電機
6 運搬車両
61 荷台
7 床版(搬送対象物)
8 吊り治具(搬送対象物)
81 基部
82 補強部
83 荷重分散部
84 脚部
85 柱部
86 第一掛合部
87 第二掛合部
87a 掛合孔
A 作業エリア
B 準備エリア
Claims (3)
- 床版に対する作業を行う作業エリアおよび当該作業エリアに隣接する準備エリアに設置される支持架台と、
搬送対象物を横行させる横行手段と、
前記横行手段に電力を供給する電源ユニットとを備える搬送装置であって、
前記支持架台は、前記横行手段を支持する支持レールと、前記床版に立設される複数の支持体と、前記床版上を走行可能な複数の走行手段とを有し、
前記支持レールは、前記作業エリアの上方に配置される作業側レール部と、前記準備エリアの上方に配置される準備側レール部とを有し、
前記作業側レール部には、少なくとも一つの前記支持体が接続されており、
前記準備側レール部には、少なくとも一つの前記支持体が接続されているとともに、前記走行手段が取り付けられており、
前記準備側レール部から前記作業側レール部に向かう方向を前方向としたとき、前記電源ユニットは、前記支持架台の後端部から後方に向かって片持ち状に張り出しており、
前記支持体が前記床版に接地する固定モードと前記走行手段のみが前記床版に接地する可動モードとを切り替え可能である、ことを特徴とする搬送装置。 - 前記支持体は、長さ調節可能なメイン支柱を有し、
前記メイン支柱を縮めることで、前記可動モードに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。 - 前記支持架台は、前記走行手段と前記準備側レール部との間に介設される支持脚を有し、
前記支持脚は、長さ調節可能な補助支柱を有し、
前記補助支柱を伸ばすことで、前記可動モードに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
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