人工ニューラルネットワーク(以後、ニューラルネットワークと呼称する。)において、シナプスの結合強度は、ニューラルネットワークに既存の情報を与えることによって、変化することができる。このように、ニューラルネットワークに既存の情報を与えて、結合強度を決める処理を「学習」と呼ぶ場合がある。
また、「学習」を行った(結合強度を定めた)ニューラルネットワークに対して、何らかの情報を与えることにより、その結合強度に基づいて新たな情報を出力することができる。このように、ニューラルネットワークにおいて、与えられた情報と結合強度に基づいて新たな情報を出力する処理を「推論」又は「認知」と呼ぶ場合がある。
ニューラルネットワークのモデルとしては、例えば、ホップフィールド型、階層型などが挙げられる。特に、多層構造としたニューラルネットワークを「ディープニューラルネットワーク」(DNN)と呼称し、ディープニューラルネットワークによる機械学習を「ディープラーニング」と呼称する場合がある。
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductor又は単にOSともいう)などに分類される。例えば、トランジスタの活性層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、金属酸化物が増幅作用、整流作用、及びスイッチング作用の少なくとも1つを有するトランジスタのチャネル形成領域を構成し得る場合、当該金属酸化物を、金属酸化物半導体(metal oxide semiconductor)、略してOSと呼ぶことができる。また、OS FET、又はOSトランジスタと記載する場合においては、金属酸化物又は酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
また、本明細書等において、各実施の形態(又は実施例)に示す構成は、他の実施の形態(又は他の実施例)に示す構成と適宜組み合わせて、本発明の一態様とすることができる。また、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、互いに構成例を適宜組み合わせることが可能である。
なお、ある一つの実施の形態(又は実施例)の中で述べる内容(一部の内容でもよい)は、その実施の形態(又はその実施例)で述べる別の内容(一部の内容でもよい)と、一つ若しくは複数の別の実施の形態(又は一つ若しくは複数の別の実施例)で述べる内容(一部の内容でもよい)との少なくとも一つの内容に対して、適用、組み合わせ、又は置き換えなどを行うことができる。
なお、実施の形態(又は実施例)の中で述べる内容とは、各々の実施の形態(又は実施例)において、様々な図を用いて述べる内容、又は明細書に記載される文章を用いて述べる内容のことである。
なお、ある一つの実施の形態(又は実施例)において述べる図(一部でもよい)は、その図の別の部分、その実施の形態(又はその実施例)において述べる別の図(一部でもよい)と、一つ若しくは複数の別の実施の形態(又は一つ若しくは複数の別の実施例)において述べる図(一部でもよい)との少なくとも一つの図に対して、組み合わせることにより、さらに多くの図を構成させることができる。
本明細書に記載の実施の形態(又は実施例)について図面を参照しながら説明している。但し、実施の形態(又は実施例)は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、実施の形態(又は実施例)の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態の発明の構成(又は実施例の構成)において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、斜視図などにおいて、図面の明確性を期すために、一部の構成要素の記載を省略している場合がある。
本明細書等において、複数の要素に同じ符号を用いる場合、特に、それらを区別する必要があるときには、符号に“_1”、“[n]”、“[m,n]”等の識別用の符号を付記して記載する場合がある。
また、本明細書の図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。例えば、ノイズによる信号、電圧、若しくは電流のばらつき、又は、タイミングのずれによる信号、電圧、若しくは電流のばらつきなどを含むことが可能である。
また、本明細書等について、In:Ga:Zn=4:2:3またはその近傍とは、原子数の総和に対して、Inが4の場合、Gaが1以上3以下(1≦Ga≦3)であり、Znが2以上4.1以下(2≦Zn≦4.1)とする。また、In:Ga:Zn=5:1:6またはその近傍とは、原子数の総和に対して、Inが5の場合、Gaが0.1より大きく2以下(0.1<Ga≦2)であり、Znが5以上7以下(5≦Zn≦7)とする。また、In:Ga:Zn=1:1:1またはその近傍とは、原子数の総和に対して、Inが1の場合、Gaが0.1より大きく2以下(0.1<Ga≦2)であり、Znが0.1より大きく2以下(0.1<Zn≦2)とする。また、In:Ga:Zn=5:1:3またはその近傍とは、原子数の総和に対して、Inが5の場合、Gaが0.5以上1.5以下(0.5≦Ga≦1.5)であり、Znが2以上4.1以下(2≦Zn≦4.1)とする。また、In:Ga:Zn=10:1:3またはその近傍とは、原子数の総和に対して、Inが10の場合、Gaが0.5以上1.5以下(0.5≦Ga≦1.5)であり、Znが2以上4.1以下(2≦Zn≦4.1)とする。また、In:Zn=2:1またはその近傍とは、原子数の総和に対して、Inが1の場合、Znは0.25より大きく0.75以下(0.25<Zn≦0.75)とする。また、In:Zn=5:1またはその近傍とは、原子数の総和に対して、Inが1の場合、Znは0.12より大きく0.25以下(0.12<Zn≦0.25)とする。また、In:Zn=10:1またはその近傍とは、原子数の総和に対して、Inが1の場合、Znは0.07より大きく0.12以下(0.07<Zn≦0.12)とする。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様のシステムについて、説明する。
図1は、ニューラルネットワークを利用したAIにおける、“回路図面”や“特許請求の範囲に記載された回路構成”などをネットリストに変換する機能を有するシステム(電子機器と呼称する場合がある。)を示している。また、当該システムは、変換したネットリストを用いて、既存のデータベース内を検索する機能を有する。
ネットリストとは、電子回路などにおいて、当該電子回路に含まれている回路素子、論理回路、信号変換回路、電位レベル変換回路、電圧源、電流源、切り替え回路、増幅回路などの接続情報を有するデータである。具体的には、ネットリストは、電子回路に含まれている回路素子、回路などが有する端子の接続先が記載されたデータであり、回路シミュレータや回路設計ソフトウェアなどに用いられる。
図1に示すシステムSIHは、電子機器EDを有する。電子機器EDは、入出力インターフェースINTFCと、制御部CTLと、変換部PTNと、データベースDTB1と、データベースDTB2と、記憶部MPと、を有する。
入出力インターフェースINTFCは、制御部CTLに電気的に接続されている。入出力インターフェースINTFCは、ユーザがシステムSIHを利用する場合において、ユーザと電子機器EDとの間で情報の入出力を行う機能を有する。入出力インターフェースINTFCとしては、例えば、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、液晶ディスプレイなどの表示装置、キーボード、ポインティングデバイス(例えば、マウスなどが挙げられる。)などのハードウェアが挙げられる。また、表示装置は、タッチパネルなどの入力デバイスを有してもよい。
記憶部MPは、制御部CTLに電気的に接続されている。記憶部MPは、揮発性の記憶装置、不揮発性の記憶装置などを有する。
揮発性の記憶装置としては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが挙げられる。揮発性の記憶装置は、例えば、演算の過程やソフトウェアの起動の最中などに必要なデータを一時的に記憶する、などの機能を有する。
不揮発性の記憶装置としては、例えば、HDD(ハードディスクドライブ)、SSD(ソリッドステートドライブ)、光学ディスク、磁気テープなどが挙げられる。なお、本明細書等において、光学ディスク、磁気テープなどを用いる場合、読み出し及び書き込みが可能な装置と、光学ディスク、磁気テープなどと、をまとめて不揮発性の記憶装置と呼称する。不揮発性の記憶装置は、例えば、ソフトウェアの実行プログラム、回路構成が描かれた図面、回路構成のネットリストなどを保存する機能を有する。
変換部PTNは、制御部CTLに電気的に接続されている。変換部PTNは、回路図、回路を文章で表現した文書ファイル(例えば、特許明細書の特許請求の範囲など)などをネットリストに変換する機能を有する。変換部PTNは、例えば、ニューラルネットワークを構成した演算回路としてもよい。また、変換部PTNにニューラルネットワークが構成されている場合、当該ニューラルネットワークは既に学習が済んでおり、当該ニューラルネットワークに含まれているニューロン同士の重み係数は定まっているものとする。
データベースDTB1は、制御部CTLに電気的に接続されている。データベースDTB1は、例えば、特許明細書、論文、資料などの文献データを保存する機能を有する。
データベースDTB2は、制御部CTLに電気的に接続されている。データベースDTB2は、例えば、データベースDTB1に保存されている文献データに記載されている回路のネットリストなどを保存する機能を有する。また、当該ネットリストには、当該ネットリストと当該文献データの回路構成とを紐付けするための、管理番号、管理記号などが含まれていてもよい。
なお、データベースDTB1、データベースDTB2は、互いに一つのデータベースとしてまとめてもよい。
また、データベースDTB1、データベースDTB2には、上記の通り、文献データやネットリストなどが保存されているので、データベースDTB1、データベースDTB2は、記憶部MPに含まれていてもよい。特に、データベースDTB1、データベースDTB2は、記憶部MPの不揮発性の記憶装置とするのが好ましい。
また、図2に示すとおり、電子機器EDは、外部インターフェースINFを有してもよい。外部インターフェースINFは、電子機器EDの外部にある電子機器WSVと通信を行う機能を有する。そのため、外部インターフェースINFは、制御部CTLと、電子機器WSVと、に電気的に接続されている。
電子機器WSVは、例えば、外部サーバなどとすることができる。そのため、外部インターフェースINFは、インターネット回線などによって、電子機器WSVに接続されていることが好ましい。
電子機器WSVは、例えば、データベースWDTB1と、データベースWDTB2と、変換部WPTNと、を有する。データベースWDTB1には、データベースDTB1と同様に、文献データが格納されている。また、データベースWDTB2には、データベースDTB2と同様に、データベースWDTB1の文献データに記載されている回路のネットリストなどが格納されている。変換部WPTNは、変換部PTNと同様に、回路図、回路を文章で表現した文書ファイルなどをネットリストに変換する機能を有する。
データベースWDTB1、データベースWDTB2、変換部WPTNの少なくとも一は、外部サーバとして機能してもよい。データベースWDTB1、データベースWDTB2、変換部WPTNの少なくとも一を外部サーバとして設けることによって、設けたサーバの規模、記憶容量、演算能力などを高めることができる場合がある。例えば、データベースWDTB1を外部サーバとして機能することによって、データベースWDTB1は、データベースDTB1よりも多くの文献データを格納できる場合がある。また、例えば、データベースWDTB2を外部サーバとして機能することによって、データベースWDTB2は、データベースDTB2よりも多くのネットリストなどの情報を格納することができる場合がある。また、例えば、変換部WPTNは、変換部PTNよりも規模の大きい演算回路を有することができる場合がある。
<<動作例1>>
ここで、図1のシステムSIHにおける動作例について説明する。図3は、システムSIHの動作例を示したフローチャートであって、システムSIHの動作例は、ステップSTI01乃至ステップSTI03を有する。また、図3には動作例の開始を“START”と記載し、動作例の終了を“END”と記載している。なお、本動作例では、回路図、又は回路を文章で表現した文書ファイルをネットリストに変換する動作について説明する。
ステップSTI01は、ユーザが入出力インターフェースINTFCを用いて、電子機器EDの制御部CTLに回路図、又は回路を文章で表現した文書ファイルを入力するステップを有する。ユーザによる当該回路図の入力手段としては、例えば、回路設計ソフトウェア、回路シミュレータ、ペイントソフトウェア、CADソフトウェアなどを用いて、回路図を作成する手段などが挙げられる。また、ユーザによる当該文書ファイルの入力手段としては、文書作成ソフトウェア、テキストエディタなどを用いて、文書ファイルを作成する手段などが挙げられる。また、作成途中の回路図や文書ファイル、作成された回路図、文書ファイルなどは一時的に記憶部MPに保存されていてもよい。なお、本明細書等では、ステップSTI01で作成した回路図、又は文書ファイルを入力データと呼称する。
なお、ステップSTI01において、入力データとしては、作成したもの以外に、データベースDTB1から読み出した回路図、文書ファイルなどを適用してもよい。
ステップSTI02は、ステップSTI01で作成した入力データを変換部PTNでネットリストに変換するステップを有する。具体的には、例えば、ユーザは、入出力インターフェースINTFCを用いて、制御部CTLに対して、入力データと、当該入力データをネットリストに変換する命令を含む信号を送信する。制御部CTLは、当該入力データと当該信号を受け取ることで、当該入力データを変換部PTNへ送信する。変換部PTNは、当該入力データを受け取ることで、当該入力データをネットリストへ変換する。
入力データが回路図である場合、入力データのネットリストへの変換方法としては、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などを用いた方法が好ましい。また、入力データが文書ファイルである場合、入力データなどのネットリストへの変換方法としては、例えば、再帰型ニューラルネットワークなどを用いる方法が好ましい。入力データのネットリストへの変換方法の具体例については、後述する。
なお、変換されたネットリストは、一時的に記憶部MPに保存してもよい。
ステップSTI03は、ステップSTI02で変換されたネットリストを、入出力インターフェースINTFCに含まれている表示装置などに出力するステップを有する。具体的には、例えば、ステップSTI02で変換されたネットリストは、制御部CTLを介して、入出力インターフェースINTFCに含まれている表示装置などに送信される。その後、当該表示装置などで当該ネットリストを表示することで、ユーザが入力データから変換したネットリストの内容を確認することができる。
ステップSTI03が行われた後、本動作は終了する。
<<動作例2>>
次に、図3に示すフローチャートとは異なる、図1のシステムSIHにおける動作例について説明する。図4は、システムSIHの動作例を示したフローチャートであって、当該フローチャートは、図3の動作例に更にステップSTI04乃至ステップSTI08を加えた動作例となっている。なお、本動作例は、変換されたネットリストを用いて回路の検索を行う方法について説明する。
図4のフローチャートに示す、ステップSTI01乃至ステップSTI03については、図3のフローチャートのステップSTI01乃至ステップSTI03の説明の記載を参酌する。
ステップSTI04は、ステップSTI02で変換されたネットリストを用いて、データベースDTB2に対して回路の検索を行うステップを有する。具体的には、例えば、制御部CTLは、データベースDTB2に対して、データベースDTB2に保存されている文献データに紐付けされたネットリストの読み出しを行うための命令を含む信号を送信する。そして、データベースDTB2は、当該信号を受け取ることによって、ネットリストを読み出して、制御部CTLに送信し、制御部CTLは、ステップSTI02で変換されたネットリストとデータベースDTB2に含まれているネットリストとの比較を行う。
なお、データベースDTB2からの文献データに紐付けされたネットリストの読み出しは、データベースDTB2に保存されている全てのネットリストを対象としてもよいし、条件をつけて、データベースDTB2に保存されている一部のネットリストに絞ってもよい。
また、ステップSTI04で行われる検索は、ステップSTI02で変換されたネットリストに完全に一致するものを抽出してもよいし、部分的に一致するもの(類似するもの)を抽出してもよい。
また、検索に用いる変換されたネットリストは、一時的に記憶部MPに保存してもよい。
また、ステップSTI04において行われる回路の検索は、AIを用いてもよい。具体的には、例えば、AIを用いて、ステップSTI02で変換されたネットリストと、データベースDTB2に保存されている文献データに紐付けされたネットリストと、のそれぞれの記述を比較し、互いのネットリストにおいて、回路素子の種類、数、接続構成などがどのくらい一致しているかを表す類似度を算出して、当該類似度の高いものから検索結果を出力してもよい。
ステップSTI05は、ステップSTI04の検索において、ステップSTI02で変換されたネットリストがデータベースDTB2で見つかったか否かの判定を行うステップを有する。ここでいう、データベースDTB2で見つかったネットリストとは、ステップSTI04で検索したネットリストと完全に一致する場合と、部分的に一致する場合と、を含むものとする。当該判定において、ステップSTI04で検索したネットリストがデータベースDTB2で見つかった場合、本動作は、ステップSTI06に移行する。また、当該判定において、ステップSTI04で検索したネットリストがデータベースDTB2で見つからなかった場合、本動作は、ステップSTI07に移行する。
ステップSTI06は、ステップSTI04の検索においてデータベースDTB2で見つかったネットリストに対応する文献データを、データベースDTB1から読み出すステップを有する。具体的には、例えば、制御部CTLは、データベースDTB1に対して、ステップSTI04の検索に引っかかった、データベースDTB2から読み出したネットリストに対応する文献データを読み出すための命令を含む信号を送信する。データベースDTB1は、当該信号を受け取ることによって、当該文献データを読み出して、制御部CTLに送信する。制御部CTLは、当該文献データを入出力インターフェースINTFCに含まれている表示装置などに送信する。その後、当該表示装置などで当該文献データを表示することで、ユーザが文献データの内容を確認することができる。
なお、検索に用いた変換されたネットリスト、及びデータベースDTB1から読み出された文献データは、一時的に記憶部MPに保存してもよい。
ステップSTI06が行われた後、本動作は終了する。
ステップSTI07は、ステップSTI04の検索において、ステップSTI02で変換されたネットリストがデータベースDTB2から見つからなかった結果を出力するステップを有する。具体的には、例えば、制御部CTLは、入出力インターフェースINTFCに対して、ステップSTI02で変換されたネットリストが、データベースDTB2で見つからなかったという情報を送信する。これによって、当該表示装置などで当該情報を表示することで、ユーザが、ステップSTI02で変換されたネットリストはデータベースDTB2では見つからなかったという検索結果を確認することができる。
ステップSTI08は、入力データをデータベースDTB1に格納し、ステップSTI02で変換されたネットリストをデータベースDTB2に格納するステップを有する。具体的には、ユーザは、入出力インターフェースINTFCを用いて、制御部CTLに対して、入力データと、ステップSTI02で変換されたネットリストと、を保存する命令を含む信号を送信する。制御部CTLは、当該信号を受け取ることで、入力データと、入力データをデータベースDTB1に書き込む命令を含む信号と、をデータベースDTB1に送信し、かつステップSTI02で変換されたネットリストと、当該ネットリストをデータベースDTB2に書き込む命令を含む信号と、をデータベースDTB2に送信する。このとき、データベースDTB1に送信される入力データと、データベースDTB2に送信される変換されたネットリストは、一時的にそれらが記憶されている記憶部MPから、制御部CTLを介して、送信してもよい。
ステップSTI08が行われた後、本動作は終了する。
なお、本発明の一態様の動作方法は、上述のステップSTI01乃至ステップSTI08に限定されない。本明細書等において、フローチャートに示す処理は、機能毎に分類し、互いに独立したステップとして示している。しかしながら実際の処理等においては、フローチャートに示す処理を機能毎に切り分けることが難しく、一つのステップに複数のステップが係わる場合や、複数のステップにわたって一つのステップが関わる場合があり得る。そのため、フローチャートに示す処理は、明細書で説明したステップ毎に限定されず、状況に応じて適切に入れ替えることができる。具体的には、状況に応じて、場合によって、又は、必要に応じて、ステップの順序の入れ替え、ステップの追加、及び削除などを行うことができる。例えば、ステップSTI08は、ユーザが望まないのであれば、本動作例から削除して、行わなくてもよい。
なお、本発明の一態様の動作方法は、本実施の形態で説明した動作例に限定されない。例えば、上述では、電子機器EDの変換部PTNを用いて入力データからネットリストに変換する動作例について説明したが、変換部PTNは、代わりに電子機器WSVの変換部WPTNを用いてもよい。また、上述では、電子機器EDのデータベースDTB1、及びデータベースDTB2を用いてネットリストの回路を検索する動作例を説明したが、データベースDTB1、及びデータベースDTB2は、代わりに電子機器WSVのデータベースWDTB1及びデータベースWDTB2を用いてもよい。
また、本発明の一態様によって、電子機器EDと外部の電子機器WSVとを用いて、入力データからネットリストへの変換を行うサービス、及び/又はネットリストを用いた回路の検索サービスなどを有料とした、ビジネスモデルを提供してもよい。
<<ネットリストへの変換方法の例1>>
次に、上記の動作例のステップSTI02において、入力データを回路図としたとき、当該回路図をネットリストに変換する場合の方法について説明する。
図5は、回路図からネットリストに変換する流れを示した模式図である。
図5の段階PH1は、ステップSTI02に変換部PTNに入力される入力データとする画像の一例を示している。画像PICには、回路図が描かれており、当該回路図は、回路記号と、配線と、それらの接続構成を示している。また、場合によっては、図5の画像PICに示すとおり、画像PICには、回路記号の名称、配線の名称を示す文字、符号などが含まれていてもよい。また、図5の画像PICに示す回路図には、回路記号の名称、配線の名称を示す文字、符号などは含まれていなくてもよい。
図5の段階PH2は、変換部PTNに段階PH1の画像PICが入力されて、画像PICに対して、物体領域の認識が行われている一例を示している。図5の段階PH2の左側の画像PICでは、回路記号と、電気的な接続部分(画像PICに示す回路図の黒丸などに相当する。)と、を認識して、それぞれを点線で囲んだ様子を示している。また、状況に応じて、物体領域の認識は、配線も含めて行ってもよい。
上記に示した物体領域の認識の方法としては、例えば、Objectness、CPMC(Constrained Parametric Min-Cuts)、Object Proposalsなどが挙げられる。
続いて、物体領域の認識が完了した後には、それぞれの物体領域に対して、画像認識を行う。これによって、点線で囲まれた回路記号がどのような回路素子なのかを変換部PTNに認識させることができる。例えば、図5の段階PH2の左側の画像PICにおいて、画像認識を行うことで、変換部PTNは、例えば、太い破線に囲まれた回路記号を容量素子と認識し、また、例えば、太い一点鎖線に囲まれた回路記号をトランジスタと認識することができる。変換部PTNは、回路記号が何の回路素子を示すかを認識することで、当該回路記号にネットリストに記述するための名称(例えば、文字、略称、符号、単語など)を付することができる。
また、同様に、画像認識を行うことで、変換部PTNは、点線で囲まれた電気的な接続部分(黒丸など)を認識することができる。これにより、変換部PTNは、電気的な接続部分(黒丸など)に対して、ネットリストに記述するための名称(例えば、文字、略称、符号、単語など)を付することができる。
画像認識を行う方法としては、例えば、AIを用いて、変換部PTNに対して、あらかじめ教師データとして回路記号を学習させておき、変換部PTNに入力データとして画像PICが与えられたときに、学習された回路記号に基づいて、画像PICに含まれている回路記号を抽出する方法が挙げられる。
また、画像認識を行う方法としては、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などを用いることができる。また、畳み込みニューラルネットワークを用いる場合、あらかじめ、畳み込みニューラルネットワークの畳み込み層のフィルタとして、回路記号の画像、電気的な接続部分(黒丸など)の画像、それらの画像の一部を用いればよい。これにより、畳み込みニューラルネットワークによる計算によって、画像PICに含まれている回路記号、電気的な接続部分(黒丸など)などと、当該フィルタと、の類似度を算出することができ、当該類似度から、画像PICに含まれている回路記号、電気的な接続部分(黒丸など)などを識別することができる。
また、電気的な接続部分(黒丸など)と回路記号との接続を、変換部PTNに認識させる場合、物体領域の認識と画像認識とを繰り返し行うのが好ましい。具体的には、物体領域の認識と画像認識とを一度行って、変換部PTNに電気的な接続部分(黒丸など)を認識させ、かつ電気的な接続部分(黒丸など)に対してネットリストに記述するための記号を付する。次に、1回目の画像認識によって、電気的な接続部分(黒丸など)に接続されている配線がどの方向に延線しているかを判別し、2回目の物体領域の認識において、当該延線の方向に領域を広げて、配線と電気的な接続部分(黒丸など)とをまとめて物体領域として認識させる。その後、2回目の画像認識で、再度配線がどの方向に延線しているかを判別して、3回目以降は、同様に物体領域の認識と画像認識とを繰り返す。これによって、変換部PTNは、電気的な接続部分(黒丸など)に接続されている配線を、同様に物体領域の認識と画像認識との繰り返し回数に応じて、認識させることができ、最終的に変換部PTNは、回路記号と電気的な接続部分(黒丸など)との電気的な接続を認識させることができる。図5の段階PH2の左側の画像PICには、一例として、物体領域の認識と画像認識とを繰り返し行うことによって得られる配線の領域として、太い二点鎖線に囲まれた領域を図示している。
なお、段階PH1の画像PICに回路記号の名称、配線の名称を示す文字、符号などが含まれている場合、図5の段階PH2の右側の画像PICのとおり、それら名称、文字、符号などを、物体領域の認識の段階で回路記号及び電気的な接続部分と共に認識を行ってもよい。これにより、物体領域の認識により取得したそれら名称、文字、符号などを、同様に物体領域の認識を行った回路記号、電気的な接続部分に対して紐付けを行うことができる。また、回路記号、電気的な接続部分に対して紐付けした名称、文字、符号などをネットリストに記述する記号、文字などとして扱うことができる。
図5の段階PH3では、図5の段階PH2において、変換部PTNが認識した回路記号と電気的な接続部分(黒丸など)との接続構成をネットリストに記述する一例を示している。
ネットリストNTLの左端には、画像PICで認識した回路記号が、回路素子の名称CSW(例えば、文字、略称、符号、単語など)として記載されている。例えば、Tr[1]、Tr[2]は、画像PICに描かれている回路図のトランジスタを示し、C[1]は、画像PICに描かれている回路図の容量素子を示し、EL[1]は、画像PICに描かれている回路図の発光素子を示している。
また、ネットリストNTLには、回路記号の接続構成を示す情報として、回路素子の名称CSWの右側に、スペースSPCを介して、電気的な接続部分(黒丸など)の名称CNP(例えば、文字、略称、符号、単語など)が記載されている。なお、回路記号の端子が複数ある場合は、名称CNP同士の間にスペースが設けられていることが好ましい。また、電気的な接続部分(黒丸など)の名称CNPが記載されている順番は、その列に記載されている名称CSWの回路記号の端子によって定められる。例えば、ネットリストNTLでは、トランジスタの各端子の電気的な接続については、ソース又はドレインの一方、ゲート、ソース又はドレインの他方、の順に記載するように定められている。また、例えば、ネットリストNTLでは、発光素子の各端子の電気的な接続については、入力端子、出力端子の順に記載するように定められている。
上記のとおり、物体領域の認識と画像認識とを行うことによって、入力データとする回路図をネットリストに変換することができる。
<<ネットリストへの変換方法の例2>>
次に、上記の動作例のステップSTI02において、入力データを文書ファイルなどとしたとき、当該回路図をネットリストに変換する場合の方法について説明する。
図6は、文書ファイルからネットリストに変換する流れを示した模式図である。
図6の段階PH4は、ステップSTI02に変換部PTNに入力される入力データとする文書ファイルの一例を示している。図6の段階PH4に示している文書ファイルDOCには、変換部PTNを用いてネットリストへの変換を行うための情報として、回路構成が文章として記載されている。
回路構成を文章として表現している文書ファイルDOCとしては、例えば、特許明細書に記載されている回路の説明の箇所、特許明細書に付随する特許請求の範囲、などとすることができる。なお、ここでの変換方法の例としては、文書ファイルDOCには、次の表1に示すとおりの文章が記載されているものとする。
変換部PTNは、入力データとして上記のような文書ファイルDOCが入力されたとき、一例として、文書ファイルDOCに対してテキスト分析が行われる。
また、テキスト分析を行う方法としては、例えば、AIを用いて、変換部PTNに対して、あらかじめ教師データとして文書ファイル(例えば、論文、特許の公開公報に記載の特許請求の範囲など)とその文書ファイルに対応するネットリストを学習させておくことが好ましい。これにより、変換部PTNに入力データとして文書ファイルが与えられたときに、学習させた内容に基づいて、当該文書ファイルからネットリストに変換を行うことができる。
また、上述した教師データの作製方法としては、例えば、ソフトウェアを用いて、1個のネットリストから複数の文書ファイル(例えば、内容が同じであるが、記述が異なる複数の“特許請求の範囲”など。)を生成する方法などが挙げられる。
また、テキスト分析を行う方法としては、例えば、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)などを用いることができる。
文書ファイルDOCに対してテキスト分析が行われることで、変換部PTNは、文書ファイルDOCに示されている回路構成から回路素子、配線、又は電気的な接続点を認識することができる。例えば、文書ファイルDOCの1段落目の文章に対して、テキスト分析を行うことで、変換部PTNは、文書ファイルDOCに示されている回路構成には、第1のトランジスタ、第2のトランジスタ、容量素子、発光素子が含まれていることを認識することができる。続いて、例えば、2段落目、3段落目、5段落目、7段落目のそれぞれの文章に対して、テキスト分析を行うことで、変換部PTNは、文書ファイルDOCに示されている回路構成には、信号線、走査線、第1の電源線、第2の電源線が電気的に接続されているということを認識することができる。ここで、変換部PTNは、回路素子の名称CSW(例えば、文字、略称、符号、単語など)として、例えば、第1のトランジスタをTr[1]、第2のトランジスタをTr[2]、容量素子をC[1]、発光素子をEL[1]と名称を付け、かつ電気的な接続点の名称CNP(例えば、文字、略称、符号、単語など)として、信号線、走査線、第1の電源線、第2の電源線のそれぞれを、例えば、N1、N2、N5、N6と名称を付けることによって、この段階において、図6の段階PH5のネットリストNTLを記述することができる。
なお、図6の段階PH5に図示しているネットリストNTLは、上述した図5の段階PH3に図示したネットリストNTLの記載のルールと同一であるものとする。そのため、回路素子の名称CSWと電気的な接続点の名称CNPとの間にはスペースSPCが設けられている。
段階PH5から続けて、文書ファイルDOCに対してテキスト分析を行うことによって、変換部PTNは、より詳細のネットリストNTLを記述することができる。例えば、文書ファイルDOCの4段落目、8段落目の文章に対して、テキスト分析を行うことで、変換部PTNは、第1のトランジスタのソースと、第2のトランジスタのゲートと、容量素子の一対の電極の一方と、は同じ電気的な接続点に接続していることを認識することができる。ここでは、変換部PTNは、当該電気的な接続点をN3と名称を付けるものとする。
更に、文書ファイルDOCの6段落目、9段落目の文章に対して、テキスト分析を行うことで、変換部PTNは、第2のトランジスタのソースと、発光素子の入力端子と、容量素子の一対の電極の他方と、は同じ電気的な接続点に接続していることを認識することができる。ここでは、変換部PTNは、当該電気的な接続点をN4と名称を付けるものとする。
上記のとおり、文書ファイルDOCに対してテキスト分析を行い、文書ファイルDOCに記載されている回路構成に含まれている回路素子を判定し、かつそれらの電気的な接続を抽出することによって、変換部PTNは、図6の段階PH6に図示するネットリストNTLを記述することができる。
本実施の形態で述べたシステムを用いることによって、回路図、又は文書ファイルからネットリストに変換することができ、かつ、データベースから、変換されたネットリストの検索を行うことができる。また、データベースに、雑誌、理工学書、論文、学会や講演会などにおける資料、特許の公開公報、特許公報などの技術文献が保存されている場合(著作権などの知的財産権の侵害行為、及び知的財産権に関する法律の違反行為が行われていないことを前提とする。)、ユーザは、当該システムを用いることによって、ユーザが作成した回路図、又は文書ファイルが新規事項であるかどうかを判定することができる。また、ユーザは、当該システムを用いることによって、ユーザが作成した回路図、又は文書ファイルが周知事項であるかどうかを判定することができる。つまり、ユーザは、当該システムを用いることで、ユーザが作成した回路図、又は文書ファイルに関して、先行技術の調査をより効率的に行うことができる。
ここで、具体的に、図1のシステムSIHを用いた、ネットリストの検索例について説明する。
例えば、図7に示すとおり、図1のシステムSIHにおいて、データベースDTB1には、情報PKEDDと、情報PKPDと、情報HSCDと、情報HSPDと、が保存され、データベースDTB2には、ネットリストPKEDNと、ネットリストPKPNと、ネットリストHSCNと、ネットリストHSPNと、が保存されている場合を考える(但し、図7には、入出力インターフェースINTFC、制御部CTL、変換部PTN、記憶部MPを省略している)。
情報PKEDDは、例えば、公知の電子機器の回路図、仕様書などを有し、情報PKPDは、例えば、ユーザ以外が携わった技術内容(特許明細書、特に特許図面、特許請求の範囲。論文、雑誌など)などを有し、情報HSCDは、例えば、ユーザが携わった特許明細書(出願の有無は問わない。)の回路の特許請求の範囲などを有し、情報HSPDは、例えば、ユーザが携わった特許明細書(出願の有無は問わない。)の回路の図面などを有する。
また、ネットリストPKEDNは、情報PKEDDに含まれる回路図などに対応するネットリストを有し、ネットリストPKPNは、情報PKPDに含まれる特許図面、特許請求の範囲などに対応するネットリストを有し、ネットリストHSCNは、情報HSCDに含まれる特許請求の範囲などに対応するネットリストを有し、ネットリストHSPNは、情報HSPDに含まれる特許図面などに対応するネットリストと有する。なお、図7には、ネットリストと情報との紐付けの表現として、ネットリストPKEDNと情報PKEDDとの間、ネットリストPKPNと情報PKPDとの間、ネットリストHSCNと情報HSCDとの間、ネットリストHSPNと情報HSPDとの間には、太い実線を記載している。
ここで、第1の検索SRC1として、公知の電子機器の回路図に対応する一つのネットリストPKEDNを、ユーザが携わった特許出願の特許請求の範囲などの複数のネットリストHSCNを検索範囲として、検索する場合を考える。このとき、複数のネットリストHSCNから、ネットリストPKEDNに該当するネットリストが見つかり、かつ当該電子機器の公知となった日よりも、見つかったネットリストに対応する特許の出願日が過去であった場合、当該電子機器によるユーザの特許への抵触を見つけることができる。つまり、第1の検索SRC1を行うことによって、公知の電子機器を対象にユーザの特許の抵触の調査を行うことができる。
また、第2の検索SRC2として、ユーザが携わる特許出願を行う前の特許請求の範囲の一つのネットリストHSCNを、公知の電子機器の回路図などに対応する複数のネットリストPKEDNと、ユーザ以外が携わった技術内容などに対応する複数のネットリストPKPNと、を検索範囲として、検索する場合を考える。このとき、複数のネットリストPKEDN及び複数のネットリストPKPNから、ネットリストHSCNに該当するネットリストが見つかった場合、ネットリストHSCNは公知であると判断することができる。つまり、第2の検索SRC2を行うことによって、ユーザの携わった発明の新規性の調査を、特許出願の前に行うことができる。これによって、ユーザが携わる特許出願の特許有効性を高めることができる場合がある。
また、第3の検索SRC3として、公知の電子機器の回路図に対応する一つのネットリストPKEDNを、ユーザが携わった特許出願の図面などの複数のネットリストHSPNを検索範囲として、検索する場合を考える。このとき、複数のネットリストHSPNから、ネットリストPKEDNに該当するネットリストが見つかり、かつ当該電子機器の公知となった日よりも、見つかったネットリストに対応する特許の出願日が過去であった場合、当該電子機器は、ユーザが携わった特許出願の内容を利用したものである可能性があるということができる。つまり、第3の検索SRC3を行うことによって、公知の電子機器の回路図と、ユーザが携わった特許出願の内容の回路図と、の類似の度合いを調べることができる。
なお、上記では、第3の検索SRC3として、公知の電子機器の回路図に対応する一つのネットリストPKEDNを、ユーザが携わった特許出願の図面などの複数のネットリストHSPNを検索範囲として検索する場合を説明したが、第3の検索SRC3は、ユーザが携わった特許出願の図面などの一つのネットリストHSPNを、公知の電子機器の回路図に対応する複数のネットリストPKEDNを検索範囲として検索してもよい。この検索においても、公知の電子機器の回路図と、ユーザが携わった特許出願の内容の回路図と、の類似の度合いを調べることができる。
また、第1の検索SRC1、第3の検索SRC3は、同時に行われてもよい。
また、第1の検索SRC1、第2の検索SRC2、第3の検索SRC3のそれぞれは、AIを用いることができる。例えば、AIを用いることによって、被検索のネットリストと、検索範囲に含まれているネットリストと、のそれぞれの記述を比較し、互いのネットリストにおいて、回路素子の種類、数、接続構成などがどのくらい一致しているかを表す類似度を算出して、当該類似度の高いものから検索結果を出力することができる。
上記のとおり、図1のシステムSIHでは、データベースDTB1に保存されている情報PKEDDと、情報PKPDと、情報HSCDと、情報HSPDと、のそれぞれは、データベースDTB2に保存されているネットリストに紐付けされている。また、第1の検索SRC1、第2の検索SRC2、第3の検索SRC3のそれぞれは、ネットリストを別のファイル(例えば、回路図、文書ファイルなど。)に変換せずに検索を行うことができるため、検索を容易にし、かつ検索の速度を速めることができる。
また、上記では、図1のシステムSIHを用いた検索例を示したが、図2のシステムSIHを用いても、上記と同様の検索例を行うことができる。
ところで、変換部PTN又は変換部WPTNが有するニューラルネットワークに対して、学習を行わせる場合、大量のデータ(ビッグデータと呼ばれる場合がある。)が必要になる。大量のデータを用意する方法としては、例えば、ネットリストを自動的にランダムで生成するプログラムを作成し、その後に回路設計ソフトウェア、回路シミュレータなどを用いて、当該ネットリストから画像データを作成する。このとき、ネットリストの生成と、画像データの作成と、が一連で行えるようにプログラムを組むことが好ましい。これにより、ネットリストと回路の画像データとの組を、学習用のデータとして用意することができる。また、大量のデータを用意する方法としては、例えば、ネットリストを自動的にランダムで生成するプログラムを作成し、更に、自動的に生成されたネットリストから文書ファイルを作成するプログラムを作成する。このとき、ネットリストの生成と、文書ファイルの作成と、が一連で行えるようにプログラムを組むことが好ましい。これにより、ネットリストと文書ファイルの組を、学習用のデータとして用意することができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様のシステムに用いられる、ニューラルネットワークの演算を行う演算回路の一例について説明する。
<階層型のニューラルネットワーク>
初めに、階層型のニューラルネットワークについて説明する。階層型のニューラルネットワークは、一例としては、一の入力層と、一又は複数の中間層(隠れ層)と、一の出力層と、を有し、合計3以上の層によって構成されている。図8Aに示す階層型のニューラルネットワーク100はその一例を示しており、ニューラルネットワーク100は、第1層乃至第R層(ここでのRは4以上の整数とすることができる。)を有している。特に、第1層は入力層に相当し、第R層は出力層に相当し、それら以外の層は中間層に相当する。なお、図8Aには、中間層として第(k-1)層、第k層(ここでのkは3以上R-1以下の整数とする。)を図示しており、それ以外の中間層については図示を省略している。
ニューラルネットワーク100の各層は、一又は複数のニューロンを有する。図8Aにおいて、第1層はニューロンN1
(1)乃至ニューロンNp
(1)(ここでのpは1以上の整数である。)を有し、第(k-1)層はニューロンN1
(k-1)乃至ニューロンNm
(k-1)(ここでのmは1以上の整数である。)を有し、第k層はニューロンN1
(k)乃至ニューロンNn
(k)(ここでのnは1以上の整数である。)を有し、第R層はニューロンN1
(R)乃至ニューロンNq
(R)(ここでのqは1以上の整数である。)を有する。
なお、図8Aには、ニューロンN1
(1)、ニューロンNp
(1)、ニューロンN1
(k-1)、ニューロンNm
(k-1)、ニューロンN1
(k)、ニューロンNn
(k)、ニューロンN1
(R)、ニューロンNq
(R)に加えて、第(k-1)層のニューロンNi
(k-1)(ここでのiは1以上m以下の整数である。)、第k層のニューロンNj
(k)(ここでのjは1以上n以下の整数である。)も図示しており、それ以外のニューロンについては図示を省略している。
次に、前層のニューロンから次層のニューロンへの信号の伝達、及びそれぞれのニューロンにおいて入出力される信号について説明する。なお、本説明では、第k層のニューロンNj
(k)に着目している。
図8Bは、第k層のニューロンNj
(k)と、ニューロンNj
(k)に入力される信号と、ニューロンNj
(k)から出力される信号と、を示している。
具体的には、第(k-1)層のニューロンN1
(k-1)乃至ニューロンNm
(k-1)のそれぞれの出力信号であるz1
(k-1)乃至zm
(k-1)が、ニューロンNj
(k)に向けて出力されている。そして、ニューロンNj
(k)は、z1
(k-1)乃至zm
(k-1)に応じてzj
(k)を生成して、zj
(k)を出力信号として第(k+1)層(図示しない。)の各ニューロンに向けて出力する。
前層のニューロンから次層のニューロンに入力される信号は、それらのニューロン同士を接続するシナプスの結合強度(以後、重み係数と呼称する。)によって、信号の伝達の度合いが定まる。ニューラルネットワーク100では、前層のニューロンから出力された信号は、対応する重み係数を乗じられて、次層のニューロンに入力される。iを1以上m以下の整数として、第(k-1)層のニューロンNi
(k-1)と第k層のニューロンNj
(k)との間のシナプスの重み係数をwi
(k-1)
j
(k)としたとき、第k層のニューロンNj
(k)に入力される信号は、式(D1)で表すことができる。
つまり、第(k-1)層のニューロンN1
(k-1)乃至ニューロンNm
(k-1)のそれぞれから第k層のニューロンNj
(k)に信号が伝達するとき、当該信号であるz1
(k-1)乃至zm
(k-1)には、それぞれの信号に対応する重み係数(w1
(k-1)
j
(k)乃至wm
(k-1)
j
(k))が乗じられる。そして、第k層のニューロンNj
(k)には、w1
(k-1)
j
(k)・z1
(k-1)乃至wm
(k-1)
j
(k)・zm
(k-1)が入力される。このとき、第k層のニューロンNj
(k)に入力される信号の総和uj
(k)は、式(D2)となる。
また、重み係数w1
(k-1)
j
(k)乃至wm
(k-1)
j
(k)と、ニューロンの信号z1
(k-1)乃至zm
(k-1)と、の積和の結果には、偏りとしてバイアスを与えてもよい。バイアスをbとしたとき、式(D2)は、次の式に書き直すことができる。
ニューロンNj
(k)は、uj
(k)に応じて、出力信号zj
(k)を生成する。ここで、ニューロンNj
(k)からの出力信号zj
(k)を次の式で定義する。
関数f(uj
(k))は、階層型のニューラルネットワークにおける活性化関数であり、ステップ関数、線形ランプ関数、シグモイド関数などを用いることができる。なお、活性化関数は、全てのニューロンにおいて同一でもよいし、又は異なっていてもよい。加えて、ニューロンの活性化関数は、層毎において、同一でもよいし、異なっていてもよい。
ところで、各層のニューロンが出力する信号、重み係数w、または、バイアスbは、アナログ値としてもよいし、デジタル値としてもよい。デジタル値としては、例えば、2値としてもよいし、3値としてもよい。さらに大きなビット数の値でもよい。一例として、アナログ値の場合、活性化関数として、例えば、線型ランプ関数、シグモイド関数などを用いればよい。デジタル値の2値の場合、例えば、出力を-1若しくは1、又は、0若しくは1、とするステップ関数を用いればよい。また、各層のニューロンが出力する信号は3値以上としてもよく、この場合、活性化関数は3値以上、例えば出力は-1、0、若しくは1とするステップ関数、又は、0、1、若しくは2とするステップ関数などを用いればよい。また、例えば、5値を出力する活性化関数として、-2、-1、0、1、若しくは2とするステップ関数などを用いてもよい。各層のニューロンが出力する信号、重み係数w、または、バイアスbについて、少なくとも一つについて、デジタル値を用いることにより、回路規模を小さくすること、消費電力を低減すること、または、演算スピードを速くすること、などができる。また、各層のニューロンが出力する信号、重み係数w、または、バイアスbの少なくとも一つについて、アナログ値を用いることにより、演算の精度を向上させることができる。
ニューラルネットワーク100は、第1層(入力層)に入力信号が入力されることによって、第1層(入力層)から最後の層(出力層)までの各層において順次に、前層から入力された信号を基に、式(D1)、式(D2)(又は式(D3))、式(D4)を用いて出力信号を生成して、当該出力信号を次層に出力する動作を行う。最後の層(出力層)から出力された信号が、ニューラルネットワーク100によって計算された結果に相当する。
<演算回路の構成例1>
次に、上述のニューラルネットワーク100において、積和演算及び活性化関数の演算を行う回路の一例について説明する。
図9は、演算回路MAC1の構成例を示している。図9に示す演算回路MAC1は、後述するメモリセルに保持された第1データと、入力された第2データと、の積和演算を行い、かつ当該積和演算の結果を用いて活性化関数の演算を行う回路である。なお、第1データ、及び第2データは、一例としては、アナログデータ、又は多値のデータ(離散的なデータ)とすることができる。
演算回路MAC1は、電流源回路CSと、カレントミラー回路CMと、回路WDDと、回路WLDと、回路CLDと、回路OFSTと、活性化関数回路ACTVと、メモリセルアレイCAを有する。
メモリセルアレイCAは、メモリセルAM[1]と、メモリセルAM[2]と、メモリセルAMref[1]と、メモリセルAMref[2]と、を有する。メモリセルAM[1]、及びメモリセルAM[2]は、第1データを保持する役割を有し、メモリセルAMref[1]、及びメモリセルAMref[2]は、積和演算を行うために必要になる参照データを保持する機能を有する。なお、参照データも、第1データ、及び第2データと同様に、アナログデータ、又は多値のデータ(離散的なデータ)とすることができる。
なお、図9のメモリセルアレイCAは、メモリセルが行方向に2個、列方向に2個、マトリクス状に配置されているが、メモリセルアレイCAは、メモリセルが行方向に3個以上、列方向に3個以上、マトリクス状に配置されている構成としてもよい。また、積和演算でなく乗算を行う場合、メモリセルアレイCAは、メモリセルが行方向に1個、列方向に2個以上、マトリクス状に配置されている構成としてもよい。
メモリセルAM[1]と、メモリセルAM[2]と、メモリセルAMref[1]と、メモリセルAMref[2]と、は、それぞれトランジスタTr11と、トランジスタTr12と、容量C1と、を有する。
なお、トランジスタTr11は、OSトランジスタであることが好ましい。加えて、トランジスタTr11のチャネル形成領域は、インジウム、元素M(元素Mとしては、例えば、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は複数種などが挙げられる。)、亜鉛の少なくとも一を含む酸化物であることがより好ましい。トランジスタTr11は、特に実施の形態3に記載するトランジスタの構造であることが更に好ましい。
トランジスタTr11として、OSトランジスタを用いることにより、トランジスタTr11のリーク電流を抑えることができるため、計算精度の高い積和演算回路を実現できる場合がある。また、トランジスタTr11として、OSトランジスタを用いることにより、トランジスタTr11が非導通状態における、保持ノードから書き込みワード線へのリーク電流を非常に小さくすることができる。つまり、保持ノードの電位のリフレッシュ動作を少なくすることができるため、積和演算回路の消費電力を低減することができる。
また、トランジスタTr12に対しても、OSトランジスタを用いることで、トランジスタTr11と同時に作製することができるため、積和演算回路の作製工程を短縮することができる場合がある。また、トランジスタTr12のチャネル形成領域には、酸化物でなく、シリコンが含まれていてもよい。シリコンとしては、例えば、非晶質シリコン(水素化アモルファスシリコンと呼ぶ場合がある)、微結晶シリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコンなどとしてもよい。
メモリセルAM[1]と、メモリセルAM[2]と、メモリセルAMref[1]と、メモリセルAMref[2]と、のそれぞれにおいて、トランジスタTr11の第1端子は、トランジスタTr12のゲートと電気的に接続されている。トランジスタTr12の第1端子は、配線VRと電気的に接続されている。容量C1の第1端子は、トランジスタTr12のゲートと電気的に接続されている。
メモリセルAM[1]において、トランジスタTr11の第2端子は、配線WDと電気的に接続され、トランジスタTr11のゲートは、配線WL[1]と電気的に接続されている。トランジスタTr12の第2端子は、配線BLと電気的に接続され、容量C1の第2端子は、配線CL[1]と電気的に接続されている。なお、図9では、メモリセルAM[1]において、トランジスタTr11の第1端子と、トランジスタTr12のゲートと、容量C1の第1端子と、の接続箇所をノードNM[1]としている。加えて、配線BLからトランジスタTr12の第2端子に流れる電流をIAM[1]とする。
メモリセルAM[2]において、トランジスタTr11の第2端子は、配線WDと電気的に接続され、トランジスタTr11のゲートは、配線WL[2]と電気的に接続されている。トランジスタTr12の第2端子は、配線BLと電気的に接続され、容量C1の第2端子は、配線CL[2]と電気的に接続されている。なお、図9では、メモリセルAM[2]において、トランジスタTr11の第1端子と、トランジスタTr12のゲートと、容量C1の第1端子と、の接続箇所をノードNM[2]としている。加えて、配線BLからトランジスタTr12の第2端子に流れる電流をIAM[2]とする。
メモリセルAMref[1]において、トランジスタTr11の第2端子は、配線WDrefと電気的に接続され、トランジスタTr11のゲートは、配線WL[1]と電気的に接続されている。トランジスタTr12の第2端子は、配線BLrefと電気的に接続され、容量C1の第2端子は、配線CL[1]と電気的に接続されている。なお、図9では、メモリセルAMref[1]において、トランジスタTr11の第1端子と、トランジスタTr12のゲートと、容量C1の第1端子と、の接続箇所をノードNMref[1]としている。加えて、配線BLrefからトランジスタTr12の第2端子に流れる電流をIAMref[1]とする。
メモリセルAMref[2]において、トランジスタTr11の第2端子は、配線WDrefと電気的に接続され、トランジスタTr11のゲートは、配線WL[2]と電気的に接続されている。トランジスタTr12の第2端子は、配線BLrefと電気的に接続され、容量C1の第2端子は、配線CL[2]と電気的に接続されている。なお、図9では、メモリセルAMref[2]において、トランジスタTr11の第1端子と、トランジスタTr12のゲートと、容量C1の第1端子と、の接続箇所をノードNMref[2]としている。加えて、配線BLrefからトランジスタTr12の第2端子に流れる電流をIAMref[2]とする。
上述したノードNM[1]、ノードNM[2]、ノードNMref[1]、及びノードNMref[2]は、それぞれのメモリセルの保持ノードとして機能する。
配線VRは、メモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]、メモリセルAMref[1]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr12の第1端子-第2端子間に電流を流すための配線である。そのため、配線VRは、所定の電位を与えるための配線として機能する。なお、本実施の形態では、配線VRが与える電位は、基準電位、又は基準電位よりも低い電位とすることができる。
電流源回路CSは、配線BLと、配線BLrefと、に電気的に接続されている。電流源回路CSは、配線BL及び配線BLrefに対して電流を供給する機能を有する。なお、配線BL、配線BLrefのそれぞれに対して供給する電流量は、互いに異なっていてもよい。本構成例では、電流源回路CSから配線BLに流れる電流をICとし、電流源回路CSから配線BLrefに流れる電流をICrefとする。
カレントミラー回路CMは、配線ILと、配線ILrefと、を有する。配線ILは、配線BLと電気的に接続され、図9では、配線ILと配線BLの接続箇所をノードNPとして図示している。配線ILrefは、配線BLrefと電気的に接続され、図9では、配線ILrefと配線BLrefの接続箇所をノードNPrefとしている。カレントミラー回路CMは、ノードNPrefの電位に応じた電流を、配線BLrefのノードNPrefから配線ILrefに排出し、且つ当該電流と同じ量の電流を配線BLのノードNPから配線ILに排出する機能を有する。なお、図9では、ノードNPから配線ILに排出する電流、及びノードNPrefから配線ILrefに排出する電流をICMと記している。加えて、配線BLにおいて、カレントミラー回路CMからメモリセルアレイCAに流れる電流をIBと記し、配線BLrefにおいて、カレントミラー回路CMからメモリセルアレイCAに流れる電流をIBrefと記す。
回路WDDは、配線WDと、配線WDrefと、に電気的に接続されている。回路WDDは、メモリセルアレイCAが有するそれぞれのメモリセルに格納するためのデータを送信する機能を有する。
回路WLDは、配線WL[1]と、配線WL[2]と、に電気的に接続されている。回路WLDは、メモリセルアレイCAが有するメモリセルにデータを書き込む際に、データの書き込み先となるメモリセルを選択する機能を有する。
回路CLDは、配線CL[1]と、配線CL[2]と、に電気的に接続されている。回路CLDは、メモリセルアレイCAが有するそれぞれのメモリセルの容量C1の第2端子に対して、電位を印加する機能を有する。
回路OFSTは、配線BLと、配線OLと、に電気的に接続されている。回路OFSTは、配線BLから回路OFSTに流れる電流量、及び/又は配線BLから回路OFSTに流れる電流の変化量を計測する機能を有する。加えて、回路OFSTは、当該計測の結果を配線OLに出力する機能を有する。なお、回路OFSTは、当該計測の結果をそのまま電流として配線OLに出力する構成としてもよいし、当該計測の結果を電圧に変換して、配線OLに出力する構成としてもよい。なお、図9では、配線BLから回路OFSTに流れる電流をIαと記している。
例えば、回路OFSTは、図10に示す構成とすることができる。図10において、回路OFSTは、トランジスタTr21と、トランジスタTr22と、トランジスタTr23と、容量C2と、抵抗R1と、を有する。
容量C2の第1端子は、配線BLと電気的に接続され、抵抗R1の第1端子は、配線BLと電気的に接続されている。容量C2の第2端子は、トランジスタTr21の第1端子と電気的に接続され、トランジスタTr21の第1端子は、トランジスタTr22のゲートと電気的に接続されている。トランジスタTr22の第1端子は、トランジスタTr23の第1端子と電気的に接続され、トランジスタTr23の第1端子は、配線OLと電気的に接続されている。なお、容量C2の第1端子と、抵抗R1の第1端子と、の電気的接続点をノードNaとし、容量C2の第2端子と、トランジスタTr21の第1端子と、トランジスタTr22のゲートと、の電気的接続点をノードNbとする。
抵抗R1の第2端子は、配線VrefLと電気的に接続されている。トランジスタTr21の第2端子は、配線VaLと電気的に接続され、トランジスタTr21のゲートは、配線RSTと電気的に接続されている。トランジスタTr22の第2端子は、配線VDDLと電気的に接続されている。トランジスタTr23の第2端子は、配線VSSLと電気的に接続され、トランジスタTr23のゲートは、配線VbLと電気的に接続されている。
配線VrefLは、電位Vrefを与える配線であり、配線VaLは、電位Vaを与える配線であり、配線VbLは、電位Vbを与える配線である。配線VDDLは、電位VDDを与える配線であり、配線VSSLは、電位VSSを与える配線である。特に、ここでの回路OFSTの構成例では、電位VDDを高レベル電位とし、電位VSSを低レベル電位としている。配線RSTは、トランジスタTr21の導通状態と非導通状態とを切り替えるための電位を与える配線である。
図10に示す回路OFSTより、トランジスタTr22と、トランジスタTr23と、配線VDDLと、配線VSSLと、配線VbLと、によって、ソースフォロワ回路が構成されている。
図10に示す回路OFSTより、抵抗R1と、配線VrefLと、によって、ノードNaには、配線BLから流れてくる電流、及び抵抗R1の抵抗に応じた電位が与えられる。
図10に示す回路OFSTの動作例について説明する。配線BLから1回目の電流(以後、第1電流と呼称する。)が流れたとき、抵抗R1と、配線VrefLと、により、ノードNaに第1電流と抵抗R1の抵抗とに応じた電位が与えられる。また、このとき、トランジスタTr21を導通状態として、ノードNbに電位Vaを与える。その後、トランジスタTr21を非導通状態とする。
次に、配線BLから2回目の電流(以後、第2電流と呼称する。)が流れたとき、第1電流が流れたときと同様に、抵抗R1と、配線VrefLと、により、ノードNaに第2電流と抵抗R1の抵抗とに応じた電位が与えられる。このとき、ノードNbはフローティング状態となっているので、ノードNaの電位が変化したことで、容量結合によって、ノードNbの電位も変化する。ノードNaの電位の変化をΔVNaとし、容量結合係数を1としたとき、ノードNbの電位はVa+ΔVNaとなる。トランジスタTr22のしきい値電圧をVthとしたとき、配線OLから電位Va+ΔVNa-Vthが出力される。ここで、電位Vaをしきい値電圧Vthとすることで、配線OLから電位ΔVNaを出力することができる。
電位ΔVNaは、第1電流から第2電流への変化量と、抵抗R1の抵抗値と、電位Vrefと、に応じて定まる。抵抗R1の抵抗値と、電位Vrefと、は既知とすることができるため、図10に示す回路OFSTを用いることにより、電位ΔVNaから、配線BLに流れる電流の変化量を求めることができる。
活性化関数回路ACTVは、配線OLと、配線NILと、に電気的に接続されている。活性化関数回路ACTVには、配線OLを介して、回路OFSTで計測した電流の変化量の結果が入力される。活性化関数回路ACTVは、当該結果に対して、あらかじめ定義された関数系に従った演算を行う回路である。当該関数系としては、例えば、シグモイド関数、tanh関数、ソフトマックス関数、ReLU関数、しきい値関数などを用いることができ、これらの関数は、ニューラルネットワークにおける活性化関数として適用される。
<演算回路の動作例1>
次に、演算回路MAC1の動作例について説明する。
図11に演算回路MAC1の動作例のタイミングチャートを示す。図11のタイミングチャートは、時刻T01乃至時刻T09における、配線WL[1]、配線WL[2]、配線WD、配線WDref、ノードNM[1]、ノードNM[2]、ノードNMref[1]、ノードNMref[2]、配線CL[1]、及び配線CL[2]の電位の変動を示し、電流IB-Iα、及び電流IBrefの大きさの変動を示している。特に、電流IB-Iαは、配線BLから、メモリセルアレイCAのメモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]に流れる電流の総和を示している。
<<時刻T01から時刻T02まで>>
時刻T01から時刻T02までの間において、配線WL[1]に高レベル電位(図11ではHighと表記している。)が印加され、配線WL[2]に低レベル電位(図11ではLowと表記している。)が印加されている。加えて、配線WDには接地電位(図11ではGNDと表記している。)よりもVPR-VW[1]大きい電位が印加され、配線WDrefには接地電位よりもVPR大きい電位が印加されている。更に、配線CL[1]、及び配線CL[2]にはそれぞれ基準電位(図11ではREFPと表記している。)が印加されている。
なお、電位VW[1]は、第1データの一に対応する電位である。また、電位VPRは、参照データに対応する電位である。
このとき、メモリセルAM[1]、及びメモリセルAMref[1]のそれぞれのトランジスタTr11のゲートに高レベル電位が印加されるため、メモリセルAM[1]、及びメモリセルAMref[1]のそれぞれのトランジスタTr11は、オン状態となる。そのため、メモリセルAM[1]において、配線WDとノードNM[1]との間が導通状態になるため、ノードNM[1]の電位は、VPR-VW[1]となる。同様に、メモリセルAMref[1]において、配線WDrefとノードNMref[1]との間が導通状態になるため、ノードNMref[1]の電位は、VPRとなる。
ここで、メモリセルAM[1]、及びメモリセルAMref[1]のそれぞれのトランジスタTr12の第2端子から第1端子に流れる電流を考える。配線BLからメモリセルAM[1]のトランジスタTr12の第2端子を介して第1端子に流れる電流をIAM[1],0としたとき、IAM[1],0は次の式で表すことができる。
kは、トランジスタTr12のチャネル長、チャネル幅、移動度、及びゲート絶縁膜の容量などで決まる定数である。また、Vthは、トランジスタTr12のしきい値電圧である。
配線BLrefからメモリセルAMref[1]のトランジスタTr12の第2端子を介して第1端子に流れる電流をIAMref[1],0としたとき、同様に、IAMref[1],0は次の式で表すことができる。
なお、メモリセルAM[2]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr11のゲートに低レベル電位が印加されるため、メモリセルAM[2]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr11は、オフ状態となる。このため、ノードNM[2]、及びノードNMref[2]への電位の書き込みは行われない。
<<時刻T02から時刻T03まで>>
時刻T02から時刻T03までの間において、配線WL[1]に低レベル電位が印加される。このとき、メモリセルAM[1]、及びメモリセルAMref[1]のそれぞれのトランジスタTr11のゲートに低レベル電位が印加されるため、メモリセルAM[1]、及びメモリセルAMref[1]のそれぞれのトランジスタTr11はオフ状態となる。
また、配線WL[2]には、時刻T02以前から引き続き、低レベル電位が印加されている。このため、メモリセルAM[2]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr11は、時刻T02以前から引き続きオフ状態となっている。
上述のとおり、メモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]、メモリセルAMref[1]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr11はオフ状態となっているため、時刻T02から時刻T03までの間では、ノードNM[1]、ノードNM[2]、ノードNMref[1]、及びノードNMref[2]のそれぞれの電位が保持される。
特に、演算回路MAC1の回路構成の説明で述べたとおり、メモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]、メモリセルAMref[1]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr11にOSトランジスタを適用することによって、トランジスタTr11の第1端子-第2端子間に流れるリーク電流を小さくすることができるため、ノードNM[1]、ノードNM[2]、ノードNMref[1]、及びノードNMref[2]のそれぞれの電位を長時間保持することができる。
時刻T02から時刻T03までの間において、配線WD、及び配線WDrefには接地電位が印加されている。メモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]、メモリセルAMref[1]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr11は、オフ状態となっているため、配線WD、及び配線WDrefからの電位の印加によって、ノードNM[1]、ノードNM[2]、ノードNMref[1]、及びノードNMref[2]のそれぞれに保持されている電位が書き換えられることは無い。
<<時刻T03から時刻T04まで>>
時刻T03から時刻T04までの間において、配線WL[1]に低レベル電位が印加され、配線WL[2]に高レベル電位が印加されている。加えて、配線WDには接地電位よりもVPR-VW[2]大きい電位が印加され、配線WDrefには接地電位よりもVPR大きい電位が印加されている。更に、時刻T02以前から引き続き、配線CL[1]、及び配線CL[2]には、それぞれ基準電位が印加されている。
なお、電位VW[2]は、第1データの一に対応する電位である。
このとき、メモリセルAM[2]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr11のゲートに高レベル電位が印加されるため、メモリセルAM[2]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr11は、オン状態となる。そのため、メモリセルAM[2]において、配線WDとノードNM[2]との間が導通状態になるため、ノードNM[2]の電位は、VPR-VW[2]となる。同様に、メモリセルAMref[2]において、配線WDrefとノードNMref[2]との間が導通状態になるため、ノードNMref[2]の電位は、VPRとなる。
ここで、メモリセルAM[2]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr12の第2端子から第1端子に流れる電流を考える。配線BLからメモリセルAM[2]のトランジスタTr12の第2端子を介して第1端子に流れる電流をIAM[2],0としたとき、IAM[2],0は次の式で表すことができる。
配線BLrefからメモリセルAMref[2]のトランジスタTr12の第2端子を介して第1端子に流れる電流をIAMref[2],0としたとき、同様に、IAMref[2],0は次の式で表すことができる。
<<時刻T04から時刻T05まで>>
ここで、時刻T04から時刻T05までの間における、配線BL及び配線BLrefに流れる電流について説明する。
配線BLrefには、電流源回路CSからの電流が供給される。加えて、配線BLrefには、カレントミラー回路CM、メモリセルAMref[1]、及びメモリセルAMref[2]によって電流が排出される。配線BLrefにおいて、電流源回路CSから供給される電流をICrefとし、カレントミラー回路CMによって排出される電流をICM,0としたとき、キルヒホッフの法則により次の式が成り立つ。
配線BLには、電流源回路CSからの電流が供給される。加えて、配線BLには、カレントミラー回路CM、メモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]によって電流が排出される。さらに、配線BLから回路OFSTにも電流が流れる。配線BLにおいて、電流源回路CSから供給される電流をICとし、配線BLから回路OFSTに流れる電流をIα,0としたとき、キルヒホッフの法則により次の式が成り立つ。
<<時刻T05から時刻T06まで>>
時刻T05から時刻T06までの間において、配線CL[1]に基準電位よりもVX[1]高い電位が印加される。このとき、メモリセルAM[1]、及びメモリセルAMref[1]のそれぞれの容量C1の第2端子に、電位VX[1]が印加されるため、トランジスタTr12のゲートの電位が上昇する。
なお、電位Vx[1]は、第2データの一に対応する電位である。
なお、トランジスタTr12のゲートの電位の増加分は、配線CL[1]の電位変化に、メモリセルの構成によって決まる容量結合係数を乗じた電位となる。該容量結合係数は、容量C1の容量、トランジスタTr12のゲート容量、寄生容量などによって算出される。本動作例では、説明の煩雑さを避けるため、配線CL[1]の電位の増加分もトランジスタTr12のゲートの電位の増加分も同じ値として説明する。これは、メモリセルAM[1]、及びメモリセルAMref[1]におけるそれぞれの容量結合係数を1としていることに相当する。
容量結合係数を1としているため、メモリセルAM[1]、及びメモリセルAMref[1]のそれぞれの容量C1の第2端子に、電位VX[1]が印加されることによって、ノードNM[1]、及びノードNMref[1]の電位は、それぞれVX[1]上昇する。
ここで、メモリセルAM[1]、及びメモリセルAMref[1]のそれぞれのトランジスタTr12の第2端子から第1端子に流れる電流を考える。配線BLからメモリセルAM[1]のトランジスタTr12の第2端子を介して第1端子に流れる電流をIAM[1],1としたとき、IAM[1],1は次の式で表すことができる。
つまり、配線CL[1]に電位VX[1]を印加することによって、配線BLからメモリセルAM[1]のトランジスタTr12の第2端子を介して第1端子に流れる電流は、IAM[1],1-IAM[1],0(図11では、ΔIAM[1]と表記する。)増加する。
同様に、配線BLrefからメモリセルAMref[1]のトランジスタTr12の第2端子を介して第1端子に流れる電流をIAMref[1],1としたとき、IAMref[1],1は次の式で表すことができる。
つまり、配線CL[1]に電位VX[1]を印加することによって、配線BLrefからメモリセルAMref[1]のトランジスタTr12の第2端子を介して第1端子に流れる電流は、IAMref[1],1-IAMref[1],0(図11では、ΔIAMref[1]と表記する。)増加する。
ここで、配線BL及び配線BLrefに流れる電流について説明する。
配線BLrefには、時刻T04から時刻T05までの間と同様に、電流源回路CSからの電流ICrefが供給される。同時に、配線BLrefには、カレントミラー回路CM、メモリセルAMref[1]、及びメモリセルAMref[2]によって電流が排出される。配線BLrefにおいて、カレントミラー回路CMによって排出される電流をICM,1としたとき、キルヒホッフの法則により次の式が成り立つ。
配線BLには、時刻T04から時刻T05までの間と同様に、電流源回路CSからの電流ICが供給される。同時に、配線BLには、カレントミラー回路CM、メモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]によって電流が排出される。さらに、配線BLから回路OFSTにも電流が流れる。配線BLにおいて、配線BLから回路OFSTに流れる電流をIα,1としたとき、キルヒホッフの法則により次の式が成り立つ。
時刻T04から時刻T05までの間における、配線BLから回路OFSTに流れる電流Iα,0と、時刻T05から時刻T06までの間における、配線BLから回路OFSTに流れる電流Iα,1と、の差をΔIαとする。以後、ΔIαを、演算回路MAC1における、差分電流と呼称する。差分電流ΔIαは、式(E1)乃至式(E10)を用いて、次の式のとおりに表すことができる。
<<時刻T06から時刻T07まで>>
時刻T06から時刻T07までの間において、配線CL[1]には基準電位が印加されている。このとき、メモリセルAM[1]、及びメモリセルAMref[1]のそれぞれの容量C1の第2端子に、基準電位が印加されるため、ノードNM[1]、及びノードNMref[1]の電位は、それぞれ時刻T04から時刻T05までの間の電位に戻る。
<<時刻T07から時刻T08まで>>
時刻T07から時刻T08までの間において、配線CL[1]に基準電位よりもVX[1]高い電位が印加され、配線CL[2]に基準電位よりもVX[2]高い電位が印加される。このとき、メモリセルAM[1]、及びメモリセルAMref[1]のそれぞれの容量C1の第2端子に電位VX[1]が印加され、メモリセルAM[2]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれの容量C1の第2端子に電位VX[2]が印加される。このため、メモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]、メモリセルAMref[1]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr12のゲートの電位が上昇する。
メモリセルAM[1]、及びメモリセルAMref[1]のそれぞれのノードの電位の変化は、時刻T05から時刻T06までの間の動作を参酌する。メモリセルAM[2]、及びメモリセルAMref[2]についても同様に、それぞれのメモリセルの容量結合係数を1として説明する。
容量結合係数を1としているため、メモリセルAM[2]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれの容量C1の第2端子に、電位VX[2]が印加されることによって、ノードNM[2]、及びノードNMref[2]の電位は、それぞれVX[2]上昇する。
ここで、メモリセルAM[2]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr12の第2端子から第1端子に流れる電流を考える。配線BLからメモリセルAM[1]のトランジスタTr12の第2端子を介して第1端子に流れる電流をIAM[2],1としたとき、IAM[2],1は次の式で表すことができる。
つまり、配線CL[2]に電位VX[2]を印加することによって、配線BLからメモリセルAM[2]のトランジスタTr12の第2端子を介して第1端子に流れる電流は、IAM[2],1-IAM[2],0(図11では、ΔIAM[2]と表記する。)増加する。
同様に、配線BLrefからメモリセルAMref[2]のトランジスタTr12の第2端子を介して第1端子に流れる電流をIAMref[2],1としたとき、IAMref[2],1は次の式で表すことができる。
つまり、配線CL[2]に電位VX[2]を印加することによって、配線BLrefからメモリセルAMref[2]のトランジスタTr12の第2端子を介して第1端子に流れる電流は、IAMref[2],1-IAMref[2],0(図11では、ΔIAMref[2]と表記する。)増加する。
ここで、配線BL及び配線BLrefに流れる電流について説明する。
配線BLrefには、時刻T04から時刻T05までの間と同様に、電流源回路CSからの電流ICrefが供給される。同時に、配線BLrefには、カレントミラー回路CM、メモリセルAMref[1]、及びメモリセルAMref[2]によって電流が排出される。配線BLrefにおいて、カレントミラー回路CMによって排出される電流をICM,2としたとき、キルヒホッフの法則により次の式が成り立つ。
配線BLには、時刻T04から時刻T05までの間と同様に、電流源回路CSからの電流ICが供給される。同時に、配線BLには、カレントミラー回路CM、メモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]によって電流が排出される。さらに、配線BLから回路OFSTにも電流が流れる。配線BLにおいて、配線BLから回路OFSTに流れる電流をIα,3としたとき、キルヒホッフの法則により次の式が成り立つ。
時刻T04から時刻T05までの間における、配線BLから回路OFSTに流れる電流Iα,0と、時刻T07から時刻T08までの間における、配線BLから回路OFSTに流れる電流Iα,3と、の差となる差分電流ΔIαは、式(E1)乃至式(E8)、式(E12)乃至式(E15)用いて、次の式のとおりに表すことができる。
式(E11)、式(E16)に示すとおり、回路OFSTに入力される差分電流ΔIαは、複数の第1データである電位VWと、複数の第2データである電位VXと、の積の和に応じた値となる。つまり、差分電流ΔIαを回路OFSTで計測することによって、第1データと第2データとの積和の値を求めることができる。
<<時刻T08から時刻T09まで>>
時刻T08から時刻T09までの間において、配線CL[1]、及び配線CL[2]には基準電位が印加されている。このとき、メモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]、メモリセルAMref[1]、及びメモリセルAMref[2]のそれぞれの容量C1の第2端子に、基準電位が印加されるため、ノードNM[1]、ノードNM[2]、ノードNMref[1]、及びノードNMref[2]の電位は、それぞれ時刻T06から時刻T07までの間の電位に戻る。
時刻T05から時刻T06までの間において、配線CL[1]にVX[1]を印加し、時刻T07から時刻T08までの間において、配線CL[1]及び配線CL[2]にそれぞれVX[1]、VX[2]を印加したが、配線CL[1]及び配線CL[2]に印加する電位は、基準電位REFPよりも低くてもよい。配線CL[1]、及び/又は配線CL[2]に、基準電位REFPよりも低い電位を印加した場合、配線CL[1]、及び/又は配線CL[2]に接続されているメモリセルの保持ノードの電位を、容量結合によって低くすることができる。これにより、積和演算において、第1データと、負の値である第2データの一との積を行うことができる。例えば、時刻T07から時刻T08までの間において、配線CL[2]に、VX[2]でなく-VX[2]を印加した場合、差分電流ΔIαは、次の式の通りに表すことができる。
なお、本動作例では、2行2列のマトリクス状に配置されているメモリセルを有するメモリセルアレイCAについて扱ったが、1行、且つ2列以上のメモリセルアレイ、又は3行以上、且つ3列以上のメモリセルアレイについても同様に、積和演算を行うことができる。この場合の積和演算回路は、複数列のうち1列を、参照データ(電位VPR)を保持するメモリセルとすることで、複数列のうち残りの列の数だけ積和演算処理を同時に実行することができる。つまり、メモリセルアレイの列の数を増やすことで、高速な積和演算処理を実現する半導体装置を提供することができる。また、行数を増やすことによって、積和演算における、足し合わせる項数を増やすことができる。行数を増やした場合の、差分電流ΔIαは、次の式で表すことができる。
本実施の形態で述べた積和演算回路を、上述した隠れ層として適用する場合、重み係数ws[k]s[k-1]
(k)を第1データとして、同じ列の各メモリセルAMに格納し、第(k-1)層の第s[k-1]ニューロンからの出力信号zs[k-1]
(k-1)を各行の配線CLから印加する電位(第2データ)とすることで、差分電流ΔIαから第1データと第2データとの積和を求めることができる。加えて、当該積和の値を用いて活性化関数の値を求めることによって、活性化関数の値を信号として第k層の第s[k]ニューロンの出力信号zs[k]
(k)とすることができる。
また、本実施の形態で述べた積和演算回路を、上述した出力層として適用する場合、重み係数ws[L]s[L-1]
(L)を第1データとして、同じ列の各メモリセルAMに格納し、第(L-1)層の第s[L-1]ニューロンからの出力信号zs[L-1]
(L-1)を各行の配線CLから印加する電位(第2データ)とすることで、差分電流ΔIαから、第1データと第2データとの積和を求めることができる。加えて、当該積和の値を用いて活性化関数の値を求めることによって、活性化関数の値を信号として第L層の第s[L]ニューロンの出力信号zs[L]
(L)とすることができる。
なお、本実施の形態で述べた入力層は、入力信号を第2層に出力するバッファ回路として機能してもよい。
ところで、本実施の形態で述べた演算回路では、メモリセルAMの行数が前層のニューロンの数となる。換言すると、メモリセルAMの行数は、次層の1つのニューロンに入力される前層のニューロンの出力信号の数に対応する。そして、メモリセルAMの列数が、次層のニューロンの数となる。換言すると、メモリセルAMの列数は、次層のニューロンから出力される出力信号の数に対応する。つまり、前層、次層のそれぞれのニューロンの個数によって、演算回路のメモリセルアレイの行数、及び列数が定まるため、構成したいニューラルネットワークに応じて、メモリセルアレイの行数、及び列数を定めて、設計すればよい。
また、本実施の形態で述べた演算回路は、状況に応じて、構成を変更してもよい。例えば、図9に示した演算回路MAC1は、図12に示す演算回路MAC1に変更してもよい。図12の演算回路MAC1は、図9の演算回路MAC1に対して、メモリセルアレイCAのメモリセルAM[1]及びメモリセルAM[1]が含まれる列にメモリセルAMBを加えた構成となっている。
メモリセルAMBは、配線WDと、配線BLと、配線WLBと、配線CLBと、に電気的に接続されている。また、配線WLBは、回路WLDに電気的に接続され、配線CLBは、回路CLDに電気的に接続されている。
メモリセルAMBにおいて、トランジスタTr11の第1端子と、トランジスタTr12のゲートと、容量C1の第1端子と、の接続箇所をノードNMBとしている。
配線WLBは、メモリセルAMBにデータを書き込む際に、回路WLDからメモリセルAMBに対して、選択信号を供給する配線として機能する。また、配線CLBは、メモリセルAMBの容量C1の第2端子に対して、定電位を印加する配線として機能する。当該定電位としては、接地電位、又は低レベル電位とするのが好ましい。
図12の演算回路MAC1の動作例としては、例えば、図11のタイミングチャートにおいて、時刻T01から時刻T05までの間では、メモリセルAMBのトランジスタTr12がオフ状態となるように、ノードNMBに接地電位、低レベル電位、又は配線VRが与える電位を保持する。そして、図11のタイミングチャートにおいて、時刻T05から時刻T09までの間では、メモリセルAMBのトランジスタTr12のソース-ドレイン間に任意の電流IBIASが流れるように、ノードNMBに電位VBIASを保持する。このとき、IBIASは次の式で表される。
このとき、式(E16)、式(E18)は、次の式に書き換えることができる。
式(E20)、式(E21)は、積和演算の結果に対して、更に任意のバイアスを与える演算に相当する。つまり、図12の演算回路MAC1を用いることによって、式(D3)の演算を行うことができる。なお、IBIASは、ノードNMBの電位でなく、配線CLBが与える電位によっても決まるため、例えば、図11のタイミングチャートにおいて、時刻T01から時刻T05までの間では、メモリセルAMBのトランジスタTr12がオフ状態となるように、配線CLBに接地電位を与え、時刻T05から時刻T09までの間に、配線CLBの電位を接地電位から任意の電位に変化させて、メモリセルAMBのトランジスタTr12のソース-ドレイン間に任意の電流IBIASが流れるようにしてもよい。
また、例えば、図9に示した演算回路MAC1は、図13に示す演算回路MAC1Aに変更してもよい。図13の演算回路MAC1Aは、図9の演算回路MAC1における電流源回路CSとカレントミラー回路CMとをまとめた回路CMSと、回路OFSTと活性化関数回路ACTVとをまとめた回路OFACと、メモリセルアレイCAと、を有する。
回路CMSは、一例として、カレントミラー回路CMと、電流源回路CS1と、電流源回路CS2と、スイッチSW3と、を有する。
カレントミラー回路CMは、一例として、トランジスタTr31と、トランジスタTr32と、を有する。また、電流源回路CS1は、一例として、トランジスタTr33と、容量C6と、スイッチSW1と、を有する。また、電流源回路CS2は、一例として、トランジスタTr34と、容量C7と、スイッチSW2と、を有する。
回路OFACは、一例として、スイッチSW4と、抵抗REと、を有する。
なお、トランジスタTr31乃至トランジスタTr33のそれぞれは、図13に示すとおり、pチャネル型トランジスタとすることが好ましい。また、トランジスタTr34は、図13に示すとおり、nチャネル型トランジスタとすることが好ましい。トランジスタTr31乃至トランジスタTr34のそれぞれは、例えば、Siトランジスタを用いることができる。
また、トランジスタTr31乃至トランジスタTr34は、特に断りの無い場合は、オン状態のときには飽和領域で動作する場合を含むものとする。すなわち、上述したそれぞれのトランジスタのゲート電圧、ソース電圧、及びドレイン電圧は、飽和領域で動作する範囲での電圧に適切にバイアスされている場合を含むものとする。
なお、スイッチSW1乃至スイッチSW4のそれぞれは、例えば、電気的なスイッチ、機械的なスイッチなどを用いることができる。特に、スイッチSW1乃至スイッチSW4のそれぞれに電気的なスイッチを用いる場合、当該電気的なスイッチとしては、OSトランジスタ、Siトランジスタなどを用いることができる。
メモリセルアレイCAについては、図9の演算回路MAC1のメモリセルアレイCAの説明の記載を参酌する。なお、図13では、回路CLDと、回路WDDと、回路WLDと、のそれぞれを省略している。
カレントミラー回路CMにおいて、トランジスタTr31の第1端子は、配線VHEに電気的に接続され、トランジスタTr31の第2端子は、トランジスタTr31のゲートと、配線BLrefに電気的に接続されている。トランジスタTr32の第1端子は、配線VHEに電気的に接続され、トランジスタTr32の第2端子は、スイッチSW3の第1端子と、回路OFACのスイッチSW4の第1端子と、に電気的に接続されている。
電流源回路CS1において、トランジスタTr33の第1端子は、配線VHEに電気的に接続され、トランジスタTr33の第2端子は、スイッチSW1の第1端子と、スイッチSW3の第2端子と、配線BLと、に電気的に接続され、トランジスタTr33のゲートは、スイッチSW1の第2端子と、容量C6の第1端子と、に電気的に接続されている。容量C6の第2端子は、配線VHEに電気的に接続されている。
電流源回路CS2において、トランジスタTr34の第1端子は、配線VLEに電気的に接続され、トランジスタTr34の第2端子は、スイッチSW2の第1端子と、スイッチSW3の第1端子と、回路OFACのスイッチSW4の第1端子と、に電気的に接続され、トランジスタTr34のゲートは、スイッチSW2の第2端子と、容量C7の第1端子と、に電気的に接続されている。容量C7の第2端子は、配線VLEに電気的に接続されている。
回路OFACにおいて、スイッチSW4の第2端子は、抵抗REの第1端子に電気的に接続され、抵抗REの第2端子は、配線VcLに電気的に接続されている。
配線VHEは、定電圧を供給する配線として機能する。当該定電圧としては、例えば、高レベル電位などとすることができる。また、配線VLEは、定電圧を供給する配線として機能する。当該定電圧としては、例えば、低レベル電位、接地電位などとすることができる。また、配線VcLは、定電圧を供給する配線として機能する。当該定電圧としては、例えば、高レベル電位、低レベル電位、接地電位などとすることができる。
カレントミラー回路CMは、トランジスタTr31の第2端子の電位に応じた電流を、配線VHEからトランジスタTr31の第2端子に供給し、かつ配線VHEからトランジスタTr32の第2端子に供給する機能を有する。なお、このとき、トランジスタTr31のソース-ドレイン間と、トランジスタTr32のソース-ドレイン間と、のそれぞれに流れる電流量は、互いに等しいことが好ましい。
回路OFACに含まれる抵抗REは、スイッチSW4を介して、抵抗REの第1端子に入力された電流を電圧に変換する機能を有する。つまり、回路OFACは、例えば、電流電圧変換回路として機能する。
次に、演算回路MAC1Aの具体的な動作例について説明する。
初めにメモリセルアレイCAに含まれているメモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]のそれぞれの保持ノードには、VPR-VW[1]、VPR-VW[2]が保持されているものとする。また、メモリセルアレイCAに含まれているメモリセルAMref[1]、メモリセルAMref[2]のそれぞれの保持ノードには、両者ともVPRが保持されているものとする。また、配線CL[1]、配線CL[2]のそれぞれには、電位REFPが入力されているものとする。
このとき、メモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]、メモリセルAMref[1]、メモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr12に流れる電流は、式(E1)、式(E3)、式(E2)、式(E4)となる。
次に、図14に示すとおり、スイッチSW1と、スイッチSW2と、のそれぞれをオン状態にし、スイッチSW3と、スイッチSW4と、のそれぞれをオフ状態にする。
ここで、配線BLに流れる電流をI3としたとき、電流I3は、メモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]のそれぞれのトランジスタTr12のソース-ドレイン間に流れる電流量の合計となるため、式(E1)、式(E3)より、I3=IAM[1],0+IAM[2],0とすることができる。
また、電流源回路CS1において、スイッチSW1はオン状態となっているため、トランジスタTr33はダイオード接続の構成となっている。このため、トランジスタTr33のゲートは、電流I3に応じた電位となって、トランジスタTr33のソース-ドレイン間に電流I3が流れる。
そして、このときに、電流源回路CS1において、スイッチSW1はオフ状態とすることで、トランジスタTr33のゲートの電流I3に応じた電位は、容量C6によって保持される。これによって、電流源回路CS1は、配線BLに対して出力する電流量をI3に固定することができる。
一方、配線BLrefに流れる電流をI4としたとき、電流I4は、メモリセルAMref[1]、メモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr12のソース-ドレイン間に流れる電流量の合計となるため、式(E2)、式(E4)より、I4=IAMref[1],0+IAMref[2],0とすることができる。
これにより、カレントミラー回路CMにおいて、トランジスタTr31のソース-ドレイン間には電流I4が流れる。このため、トランジスタTr32のソース-ドレイン間にも電流I4が流れる。
トランジスタTr32のソース-ドレイン間に流れる電流I4は、電流源回路CS2に流れる。スイッチSW2はオン状態となっているため、トランジスタTr34はダイオード接続の構成となっている。このため、トランジスタTr34のゲートは、電流I4に応じた電位となって、トランジスタTr34のソース-ドレイン間に電流I4が流れる。
ここで、電流源回路CS2において、スイッチSW2はオフ状態とすることで、トランジスタTr34のゲートの電流I4に応じた電位は、容量C7によって保持される。これによって、電流源回路CS2は、配線VLEに対して出力する電流量をI4に固定することができる。
次に、演算回路MAC1Aが図14から図15に動作が変化したとき、配線CL[1]の電位がVX[1]+REFPに変化し、かつ配線CL[2]の電位がVX[2]+REFPに変化したものとする。
このとき、メモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]、メモリセルAMref[1]、メモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr12に流れる電流は、式(E7)、式(E12)、式(E8)、式(E13)に変化する。
また、図15に示す通り、スイッチSW3と、スイッチSW4と、のそれぞれをオン状態にする。
ここで、配線BLに流れる電流をI1としたとき、電流I1は、メモリセルAM[1]、メモリセルAM[2]のそれぞれのトランジスタTr12のソース-ドレイン間に流れる電流量の合計となるため、式(E7)、式(E12)より、I1=IAM[1],1+IAM[2],1とすることができる。
また、配線BLrefに流れる電流をI2としたとき、電流I2は、メモリセルAMref[1]、メモリセルAMref[2]のそれぞれのトランジスタTr12のソース-ドレイン間に流れる電流量の合計となるため、式(E8)、式(E13)より、I2=IAMref[1],1+IAMref[2],1とすることができる。
これにより、カレントミラー回路CMにおいて、トランジスタTr31のソース-ドレイン間には電流I2が流れる。このため、トランジスタTr32のソース-ドレイン間にも電流I2が流れる。
ここで、回路OFACのスイッチSW4がオン状態となっているため、回路OFACと回路CMSとの間で電流が流れる。スイッチSW4の第1端子-第2端子間に流れる電流をI5としたとき、I5=I1-I2-I3+I4=2k(VW[1]VX[1]+VW[2]VX[2])と式(E16)と同様に積和を算出することができる。
また、図15の演算回路MAC1Aの等価回路としては、図16に示す回路とすることができる。図16に示す電流源CI1は、図15のメモリセルAM[1]とメモリセルAM[2]に相当し、図16に示す電流源CI2は、電流源回路CS1に相当し、図16に示す電流源CI3は、電流源回路CS2に相当し、図16に示す電流源CI4は、カレントミラー回路CM2に相当する。
なお、図13の演算回路MAC1AのメモリセルアレイCAは、2行2列のマトリクス状に配置されているメモリセルを有するメモリセルアレイについて扱ったが、1行、且つ2列以上のメモリセルアレイ、又は3行以上、且つ3列以上のメモリセルアレイについても同様に、積和演算を行うことができる。この場合の積和演算回路は、複数列のうち1列を、参照データ(電位VPR)を保持するメモリセルとすることで、複数列のうち残りの列の数だけ積和演算処理を同時に実行することができる。また、行数を増やすことによって、積和演算における、足し合わせる項数を増やすことができるため、この場合、電流I5は、式(E18)と同様にI5=2kΣVW[i]VX[i]と表すことができる。
ここで、回路OFACにおいて、電流I5が抵抗REによって電圧に変換される。図13には図示していないが、回路OFACは、当該電圧に応じて、あらかじめ定義された活性化関数に従って演算を行う回路とすることによって、図9の演算回路MAC1と同様に、階層型のニューラルネットワークの演算を行うことができる。
<演算回路の構成例2>
次に、上述のニューラルネットワーク100において、演算回路MAC1とは回路構成が異なる、積和演算及び活性化関数の演算を行う回路の一例について説明する。
図17は、演算回路MAC2の構成例を示している。図17に示す演算回路MAC2は、各セルに保持した電圧に応じた第1データと、入力された第2データと、の積和演算を行い、かつ当該積和演算の結果を用いて活性化関数の演算を行う回路である。なお、第1データ、及び第2データは、一例としては、アナログデータ、又は多値のデータ(離散的なデータ)とすることができる。
演算回路MAC2は、回路WCSと、回路XCSと、回路WSDと、回路SWS1と、回路SWS2と、セルアレイCA2と、変換回路ITRZ[1]乃至変換回路ITRZ[m]と、を有する。
セルアレイCA2は、セルIM[1,1]乃至セルIM[m,n](ここでの、mは1以上の整数であり、nは1以上の整数である。)と、セルIMref[1]乃至セルIMref[m]と、を有する。セルIM[1,1]乃至セルIM[m,n]は、第1データに応じた電流量に相当する電位を保持する機能を有し、セルIMref[1]乃至セルIMref[m]は、保持した電位と積和演算を行うために必要になる第2データに応じた電圧を信号線XCL[1]乃至XCL[m]に供給する機能を有する。
なお、図17のセルアレイCA2は、セルが行方向にn+1個、列方向にm個、マトリクス状に配置されているが、セルアレイCA2は、セルが行方向に2個以上、列方向に1個以上、マトリクス状に配置されている構成としてもよい。
セルIM[1,1]乃至セルIM[m,n]は、トランジスタF1と、トランジスタF2と、容量C5と、を有し、セルIMref[1]乃至セルIMref[m]は、それぞれトランジスタF1mと、トランジスタF2mと、容量C5mと、を有する。
なお、トランジスタF1及びトランジスタF1mは、特に断りの無い場合は、オン状態の場合は最終的に線形領域で動作する場合を含むものとする。すなわち、上述したそれぞれのトランジスタのゲート電圧、ソース電圧、及びドレイン電圧は、線形領域で動作する範囲での電圧に適切にバイアスされている場合を含むものとする。ただし、本発明の一態様は、これに限定されない。例えば、トランジスタF1、トランジスタF1mは、オン状態のときは飽和領域で動作してもよく、また、線形領域で動作する場合と飽和領域で動作する場合とが混在してもよい。
また、トランジスタF2及びトランジスタF2mは、特に断りの無い場合は、サブスレッショルド領域で動作する場合(つまり、トランジスタF2又はトランジスタF2mにおいて、ゲート-ソース間電圧がしきい値電圧よりも低い場合)を含むものとする。すなわち、上述したそれぞれのトランジスタのゲート電圧、ソース電圧、及びドレイン電圧は、サブスレッショルド領域で動作する範囲での電圧に適切にバイアスされている場合を含むものとする。このため、トランジスタF2及びトランジスタF2mは、ソース-ドレイン間にオフ電流が流れるように動作する場合を含む。
また、トランジスタF1、及び/又はトランジスタF1mは、トランジスタTr11と同様に、OSトランジスタであることが好ましい。加えて、トランジスタF1、及び/又はトランジスタF1mのチャネル形成領域は、インジウム、元素M(元素Mとしては、例えば、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は複数種などが挙げられる。)、亜鉛の少なくとも一を含む酸化物であることがより好ましい。トランジスタTr1、及び/又はトランジスタF1mは、特に実施の形態3に記載するトランジスタの構造であることが更に好ましい。
トランジスタF1、及び/又はトランジスタF1mとして、OSトランジスタを用いることにより、トランジスタF1、及び/又はトランジスタF1mのリーク電流を抑えることができるため、計算精度の高い積和演算回路を実現できる場合がある。また、トランジスタF1、及び/又はトランジスタF1mとして、OSトランジスタを用いることにより、トランジスタF1、及び/又はトランジスタF1mが非導通状態における、保持ノードから書き込みワード線へのリーク電流を非常に小さくすることができる。つまり、保持ノードの電位のリフレッシュ動作を少なくすることができるため、積和演算回路の消費電力を低減することができる。
また、トランジスタF2、及び/又はトランジスタF2mに対しても、OSトランジスタを用いることにより、サブスレッショルド領域の広い電流範囲で動作させることができるため、消費電流を低減することができる。また、トランジスタF2、及び/又はトランジスタF2mに対しても、OSトランジスタを用いることで、トランジスタTr11と同時に作製することができるため、積和演算回路の作製工程を短縮することができる場合がある。また、トランジスタF2、及び/又はトランジスタF2mは、チャネル形成領域にシリコンを含むトランジスタとしてもよい。シリコンとしては、例えば、非晶質シリコン(水素化アモルファスシリコンと呼ぶ場合がある)、微結晶シリコン、多結晶シリコン、単結晶シリコンなどを用いることができる。
セルIM[1,1]乃至セルIM[m,n]のそれぞれにおいて、トランジスタF1の第1端子は、トランジスタF2のゲートと電気的に接続されている。トランジスタF2の第1端子は、配線VEと電気的に接続されている。容量C5の第1端子は、トランジスタF2のゲートと電気的に接続されている。
ところで、本発明の一態様は、トランジスタのバックゲートの接続構成に依らない。図17において、トランジスタF1、トランジスタF2には、バックゲートが図示され、当該バックゲートを有している構成を示している。図17には、当該バックゲートの接続構成については図示されていないが、当該バックゲートの電気的な接続先は、設計の段階で決めることができる。例えば、バックゲートを有するトランジスタにおいて、そのトランジスタのオン電流を高めるために、ゲートとバックゲートとを電気的に接続してもよい。つまり、例えば、トランジスタM2のゲートとバックゲートとを電気的に接続してもよい。また、例えば、バックゲートを有するトランジスタにおいて、そのトランジスタのしきい値電圧を変動させるため、または、そのトランジスタのオフ電流を小さくするために、外部回路などと電気的に接続されている配線を設けて、当該外部回路などによってトランジスタのバックゲートに電位を与えてもよい。なお、これについては、トランジスタF1m、トランジスタF2m、後述するトランジスタF3[1]乃至トランジスタF3[n]、トランジスタF4[1]乃至トランジスタF4[n]、更に、図17だけでなく明細書の他の箇所に記載されているトランジスタ、又は他の図面に図示されているトランジスタについても同様である。
また、本発明の一態様の半導体装置は、当該半導体装置に含まれるトランジスタの構造に依らない。例えば、図17に図示しているトランジスタF1、トランジスタF2は、図17に示すとおり、バックゲートを有さないような構成、つまり、シングルゲート構造のトランジスタとしてもよい。また、一部のトランジスタはバックゲートを有している構成であり、別の一部のトランジスタは、バックゲートを有さない構成であってもよい。なお、これについては、トランジスタF1m、トランジスタF2m、後述するトランジスタF3[1]乃至トランジスタF3[n]、トランジスタF4[1]乃至トランジスタF4[n]、更に、図17に示す回路図だけでなく、明細書の他の箇所に記載されているトランジスタ、又は他の図面に図示されているトランジスタについても同様である。
配線VEは、セルIM[1,1]、セルIM[m,1]、セルIM[1,n]、及びセルIM[m,n]のそれぞれのトランジスタF2の第1端子-第2端子間に電流を流すための配線であって、また、セルIMref[1]、及びセルIMref[m]のそれぞれのトランジスタF2の第1端子-第2端子間に電流を流すための配線として機能する。一例としては、配線VEは、定電圧を供給する配線として機能する。当該定電圧としては、例えば、低レベル電位、接地電位などとすることができる。
セルIM[1,1]において、トランジスタF1の第2端子は、配線WCL[1]と電気的に接続され、トランジスタF1のゲートは、配線WSL[1]と電気的に接続されている。トランジスタF2の第2端子は、配線WCL[1]と電気的に接続され、容量C5の第2端子は、配線XCL[1]と電気的に接続されている。なお、図17では、セルIM[1,1]において、トランジスタF1の第1端子と、トランジスタF2のゲートと、容量C5の第1端子と、の接続箇所をノードNN[1,1]としている。
セルIM[m,1]において、トランジスタF1の第2端子は、配線WCL[1]と電気的に接続され、トランジスタF1のゲートは、配線WSL[m]と電気的に接続されている。トランジスタF2の第2端子は、配線WCL[1]と電気的に接続され、容量C5の第2端子は、配線XCL[m]と電気的に接続されている。なお、図17では、セルIM[m,1]において、トランジスタF1の第1端子と、トランジスタF2のゲートと、容量C5の第1端子と、の接続箇所をノードNN[m,1]としている。
セルIM[1,n]において、トランジスタF1の第2端子は、配線WCL[n]と電気的に接続され、トランジスタF1のゲートは、配線WSL[1]と電気的に接続されている。トランジスタF2の第2端子は、配線WCL[n]と電気的に接続され、容量C5の第2端子は、配線XCL[1]と電気的に接続されている。なお、図17では、セルIM[1,n]において、トランジスタF1の第1端子と、トランジスタF2のゲートと、容量C5の第1端子と、の接続箇所をノードNN[1,n]としている。
セルIM[m,n]において、トランジスタF1の第2端子は、配線WCL[n]と電気的に接続され、トランジスタF1のゲートは、配線WSL[m]と電気的に接続されている。トランジスタF2の第2端子は、配線WCL[n]と電気的に接続され、容量C5の第2端子は、配線XCL[m]と電気的に接続されている。なお、図17では、セルIM[m,n]において、トランジスタF1の第1端子と、トランジスタF2のゲートと、容量C5の第1端子と、の接続箇所をノードNN[m,n]としている。
セルIMref[1]において、トランジスタF1mの第2端子は、配線XCL[1]と電気的に接続され、トランジスタF1mのゲートは、配線WSL[1]と電気的に接続されている。トランジスタF2mの第2端子は、配線XCL[1]と電気的に接続され、容量C5の第2端子は、配線XCL[1]と電気的に接続されている。なお、図17では、セルIMref[1]において、トランジスタF1mの第1端子と、トランジスタF2mのゲートと、容量C5の第1端子と、の接続箇所をノードNNref[1]としている。
セルIMref[m]において、トランジスタF1mの第2端子は、配線XCL[m]と電気的に接続され、トランジスタF1mのゲートは、配線WSL[m]と電気的に接続されている。トランジスタF2mの第2端子は、配線XCL[m]と電気的に接続され、容量C5の第2端子は、配線XCL[m]と電気的に接続されている。なお、図17では、セルIMref[m]において、トランジスタF1mの第1端子と、トランジスタF2mのゲートと、容量C5の第1端子と、の接続箇所をノードNNref[m]としている。
上述したノードNN[1,1]、ノードNN[m,1]、ノードNN[1,n]、ノードNN[m,n]、ノードNNref[1]、及びノードNMref[m]は、それぞれのセルの保持ノードとして機能する。
回路SWS1は、トランジスタF3[1]乃至トランジスタF3[n]を有する。トランジスタF3[1]の第1端子は、配線WCL[1]に電気的に接続され、トランジスタF3[1]の第2端子は、回路WCSに電気的に接続され、トランジスタF3[1]のゲートは、配線SWL1に電気的に接続されている。トランジスタF3[m]の第1端子は、配線WCL[m]に電気的に接続され、トランジスタF3[m]の第2端子は、回路WCSに電気的に接続され、トランジスタF3[m]のゲートは、配線SWL1に電気的に接続されている。
トランジスタF3[1]乃至トランジスタF3[n]は、トランジスタTr11と同様に、OSトランジスタであることが好ましい。加えて、トランジスタF1、及び/又はトランジスタF1mのチャネル形成領域は、インジウム、元素M(元素Mとしては、例えば、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は複数種などが挙げられる。)、亜鉛の少なくとも一を含む酸化物であることがより好ましい。トランジスタF3[1]乃至トランジスタF3[n]は、特に実施の形態3に記載するトランジスタの構造であることが更に好ましい。
回路SWS1は、回路WCSと、配線WCL[1]乃至配線WCL[n]のそれぞれと、の間の導通状態と非導通状態との切り替えを行う回路として機能する。
回路SWS2は、トランジスタF4[1]乃至トランジスタF4[n]を有する。トランジスタF4[1]の第1端子は、配線WCL[1]に電気的に接続され、トランジスタF4[1]の第2端子は、変換回路ITRZ[1]に電気的に接続され、トランジスタF4[1]のゲートは、配線SWL2に電気的に接続されている。トランジスタF4[m]の第1端子は、配線WCL[m]に電気的に接続され、トランジスタF4[m]の第2端子は、変換回路ITRZ[1]に電気的に接続され、トランジスタF4[m]のゲートは、配線SWL2に電気的に接続されている。
トランジスタF4[1]乃至トランジスタF4[n]は、トランジスタTr11と同様に、OSトランジスタであることが好ましい。加えて、トランジスタF1、及び/又はトランジスタF1mのチャネル形成領域は、インジウム、元素M(元素Mとしては、例えば、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は複数種などが挙げられる。)、亜鉛の少なくとも一を含む酸化物であることがより好ましい。トランジスタF4[1]乃至トランジスタF4[n]は、特に実施の形態3に記載するトランジスタの構造であることが更に好ましい。
回路SWS2は、配線WCL[1]と回路ITRZ[1]との間、及び配線WCL[n]と回路ITRZ[n]との間、の導通状態、非導通状態の切り替えを行う回路として機能する。
回路WCSは、セルアレイCA2が有するそれぞれのセルに格納するためのデータを送信する機能を有する。
回路XCSは、配線XCL[1]乃至配線XCL[m]に電気的に接続されている。回路XCSは、セルアレイCA2が有するセルIMref[1]乃至セルIMref[m]のそれぞれに対して、参照データに応じた電流、又は第2データに応じた電流を流す機能を有する。
回路WSDは、配線WSL[1]乃至配線WSL[m]に電気的に接続されている。回路WSDは、セルアレイCA2が有するセルに第1データを書き込む際に、配線WSL[1]乃至配線WSL[m]に所定の信号を送信することによって、データの書き込み先となるメモリセルを選択する機能を有する。
また、回路WSDは、配線SWL1と、配線SWL2と、に電気的に接続されている。回路WSDは、配線SWL1に所定の信号を送信することによって、回路WCSとセルアレイCA2との間を導通状態又は非導通状態にする機能と、配線SWL2に所定の信号を送信することによって、変換回路ITRZ[1]乃至変換回路ITRZ[m]とセルアレイCA2との間を導通状態又は非導通状態にする機能と、を有する。
変換回路ITRZ[1]乃至変換回路ITRZ[m]のそれぞれは、入力端子と、出力端子と、を有する。変換回路ITRZ[1]乃至変換回路ITRZ[m]のそれぞれは、入力端子に入力された電流に応じた電圧に変換して、出力端子から出力する機能を有する。変換回路ITRZ[1]乃至変換回路ITRZ[m]のそれぞれは、一例として、回路OFSTを適用することができる。また、変換回路ITRZ[1]乃至変換回路ITRZ[m]のそれぞれは、活性化関数回路ACTVを有してもよく、変換された電圧を用いて、活性化関数の演算を行って、当該演算の結果を出力端子に出力してもよい。
<演算回路の動作例2>
次に、演算回路MAC2の動作例について説明する。
図18に演算回路MAC2の動作例のタイミングチャートを示す。図18のタイミングチャートは、時刻T11から時刻T23までの間、及びそれらの近傍における、配線SWL1、配線SWL2、配線WSL[i](iは1以上m-1以下の整数とする。)、配線WSL[i+1]、配線XCL[i]、配線XCL[i+1]、ノードNN[i,j]、ノードNNref[i]、ノードNN[i+1,j]、ノードNNref[i+1]の電位の変動を示している。更に、図18のタイミングチャートには、セルIM[i,j]に含まれているトランジスタF2の第1端子-第2端子間に流れる電流量IF2[i,j]と、セルIMref[i]に含まれているトランジスタF2mの第1端子-第2端子間に流れる電流量IF2m[i]と、セルIM[i+1,j]に含まれているトランジスタF2の第1端子-第2端子間に流れる電流量IF2[i+1,j]と、セルIMref[i+1]に含まれているトランジスタF2mの第1端子-第2端子間に流れる電流量IF2m[i+1]と、のそれぞれの変動についても示している。
なお、本動作例において、配線VEの電位は接地電位GNDとする。また、時刻T11より前において、セルIM[i,j]、セルIM[i+1,j]に含まれているそれぞれのトランジスタF1、セルIMref[i]、セルIMref[i+1]に含まれているトランジスタF1mをオン状態にして、ノードNN[i,j]、ノードNNref[i]、ノードNN[i+1,j]、ノードNNref[i+1]のそれぞれの電位を、接地電位GNDにしているものとする。
また、初期設定として、セルIM[1,1]乃至セルIM[m,n]に含まれているそれぞれのトランジスタF1、セルIMref[1]乃至セルIMref[m]に含まれているトランジスタF1mをオン状態にして、ノードNN[1,1]乃至ノードNN[m,n]、ノードNNref[1]乃至ノードNNref[m]の電位を接地電位GNDとする。
<<時刻T11から時刻T12まで>>
時刻T11から時刻T12までの間において、配線SWL1に高レベル電位(図18ではHighと表記している。)が印加され、配線SWL2に低レベル電位(図18ではLowと表記している。)が印加されている。これにより、トランジスタF3[1]乃至トランジスタF3[n]のそれぞれのゲートに高レベル電位が印加されて、トランジスタF3[1]乃至トランジスタF3[n]のそれぞれがオン状態となり、トランジスタF4[1]乃至トランジスタF4[n]のそれぞれのゲートに低レベル電位が印加されて、トランジスタF4[1]乃至トランジスタF4[n]のそれぞれがオフ状態となる。
また、時刻T11から時刻T12までの間では、配線WSL[i]、配線WSL[i+1]には低レベル電位が印加されている。これにより、セルアレイCA2のi行目のセルIM[i,1]乃至セルIM[i,n]に含まれているトランジスタF1のゲートと、セルIMref[i]に含まれているトランジスタF1mのゲートと、に低レベル電位が印加されて、それぞれのトランジスタF1とトランジスタF1mとがオフ状態となる。また、セルアレイCA2のi+1行目のセルIM[i+1,1]乃至セルIM[i+1,n]に含まれているトランジスタF1のゲートと、セルIMref[i+1]に含まれているトランジスタF1mのゲートと、に低レベル電位が印加されて、それぞれのトランジスタF1とトランジスタF1mとがオフ状態となる。
また、時刻T11から時刻T12までの間では、配線XCL[i]、配線XCL[i+1]には接地電位GNDが印加されている。
また、時刻T11から時刻T12までの間では、配線WCL[j]、配線XCL[i]、配線XCL[i+1]には電流が流れない。そのため、IF2[i,j]、IF2m[i]IF2[i+1,j]、IF2m[i+1]は0となる。
<<時刻T12から時刻T13まで>>
時刻T12から時刻T13までの間において、配線WSL[i]に高レベル電位が印加される。これにより、セルアレイCA2のi行目のセルIM[i,1]乃至セルIM[i,n]に含まれているトランジスタF1のゲートと、セルIMref[i]に含まれているトランジスタF1mのゲートと、に高レベル電位が印加されて、それぞれのトランジスタF1とトランジスタF1mとがオン状態となる。また、時刻T12から時刻T13までの間において、配線WSL[i]を除く配線WSL[1]乃至配線WSL[m]には低レベル電位が印加されており、セルアレイCA2のi行目以外のセルIM[1,1]乃至セルIM[m,n]に含まれているトランジスタF1と、i行目以外のセルIMref[1]乃至セルIMref[m]に含まれているトランジスタF1mは、オフ状態になっているものとする。
更に、配線XCL[1]乃至配線XCL[m]には低レベル電位が印加される。
<<時刻T13から時刻T14まで>>
時刻T13から時刻T14までの間において、回路WCSから、トランジスタF3[j]を介してセルアレイCA2に電流量としてI0[i,j]の電流が流れる。このとき、セルアレイCA2のi行目のセルIM[i,j]に含まれているトランジスタF1の第1端子と配線WCL[j]との間が導通状態となっており、かつセルアレイCA2のi行目以外のセルIM[1,j]乃至セルIM[m,j]に含まれているトランジスタF1の第1端子と配線WCL[j]との間が非導通状態となっているので、配線WCL[j]からセルIM[i,j]に電流量I0[i,j]の電流が流れる。
ところで、セルIM[i,j]に含まれているトランジスタF1がオン状態になることによって、セルIM[i,j]に含まれているトランジスタF2はダイオード接続の構成となる。そのため、配線WCL[j]からセルIM[i,j]に電流が流れるとき、トランジスタF2のゲートと、トランジスタF2の第2端子と、のそれぞれの電位はほぼ等しくなる。当該電位は、配線WCL[j]からセルIM[i,j]に流れる電流量とトランジスタF2の第1端子の電位(ここではGND)などによって定められる。本動作例では、配線WCL[j]からセルIM[i,j]に電流量I0[i,j]の電流が流れることによって、トランジスタF2のゲート(ノードNN[i,j])の電位は、Vg[i,j]になるものとする。つまり、トランジスタF2において、ゲート-ソース間電圧がVg[i,j]-GNDとなり、トランジスタF2の第1端子-第2端子間には、電流量I0[i,j]の電流が流れる。
ここで、トランジスタF2のしきい値電圧をVthとしたとき、トランジスタF2がサブスレッショルド領域で動作する場合の電流量I0[i,j]は次の式の通りに記述できる。
なお、IaはVgがVth[i,j]であるときのドレイン電流であって、Kは温度、デバイス構造などによって定められる補正係数である。
また、時刻T13から時刻T14までの間において、回路XCSから、配線XCL[i]に電流量としてIref0の電流が流れる。このとき、セルIMref[i]に含まれているトランジスタF1mの第1端子と配線XCL[i]との間が導通状態となっているので、配線XCL[i]からセルIMref[i]に電流量Iref0の電流が流れる。
セルIM[i,j]と同様に、セルIMref[i]に含まれているトランジスタF1mがオン状態になることによって、セルIMref[i,j]に含まれているトランジスタF2mはダイオード接続の構成となる。そのため、配線XCL[i]からセルIMref[i]に電流が流れるとき、トランジスタF2mのゲートと、トランジスタF2mの第2端子と、のそれぞれの電位はほぼ等しくなる。当該電位は、配線XCL[i]からセルIMref[i]に流れる電流量とトランジスタF2mの第1端子の電位(ここではGND)などによって定められる。本動作例では、配線XCL[i]からセルIMref[i]に電流量Iref0の電流が流れることによって、トランジスタF2のゲート(ノードNNref[i])はVgm[i]になるものとし、また、このときの配線XCL[i]の電位もVgm[i]とする。つまり、トランジスタF2mにおいて、ゲート-ソース間電圧がVgm[i]-GNDとなり、トランジスタF2mの第1端子-第2端子間には、電流量Iref0の電流が流れる。
ここで、トランジスタF2mのしきい値電圧をVthm[i]としたとき、トランジスタF2mがサブスレッショルド領域で動作する場合の電流量Iref0は次の式の通りに記述できる。なお、補正係数Kは、セルIM[i,j]に含まれているトランジスタF2と同一とする。例えば、トランジスタのデバイス構造、サイズ(チャネル長、チャネル幅)を同一とする。また、製造上のばらつきにより、各トランジスタの補正係数Kはばらつくが、後述の議論が実用上十分な精度で成り立つ程度にばらつきが抑えられているものとする。
ここで、第1データである重み係数w[i,j]を次の通りに定義する。
したがって、式(F1)は、次の式に書き換えることができる。
<<時刻T14から時刻T15まで>>
時刻T14から時刻T15までの間において、配線WSL[i]に低レベル電位が印加される。これにより、セルアレイCA2のi行目のセルIM[i,1]乃至セルIM[i,n]に含まれているトランジスタF1のゲートと、セルIMref[i]に含まれているトランジスタF1mのゲートと、に低レベル電位が印加されて、それぞれのトランジスタF1とトランジスタF1mとがオフ状態となる。
セルIM[i,j]に含まれているトランジスタF1がオフ状態になることによって、容量C5には、トランジスタF2のゲート(ノードNN[i,j])の電位と、配線XCL[i]の電位と、の差であるVg[i,j]-Vgm[i]が保持される。また、セルIMref[i]に含まれているトランジスタF1がオフ状態になることによって、容量C5mには、トランジスタF2mのゲート(ノードNNref[i])の電位と、配線XCL[i]の電位と、の差である0が保持される。なお、容量C5mが保持する電位は、時刻T13から時刻T14の動作においてトランジスタF1m、トランジスタF2mのそれぞれのトランジスタ特性などに応じて0ではない電位(ここではΔとする。)となる場合もある。しかし、ノードNNref[i]の電位は、配線XCL[i]の電位にΔを加えた電位になると考えることで、以下の議論が成り立つ。
<<時刻T15から時刻T16まで>>
時刻T15から時刻T16までの間において、配線XCL[i]にGNDが印加される。このため、i行目のセルIM[i,1]乃至セルIM[i,n]のそれぞれに含まれている容量C5による容量結合によってノードNN[i,1]乃至ノードNN[i,n]の電位が変化し、セルIMref[i]に含まれている容量C5による容量結合によってノードNNref[i]の電位が変化する。
ノードNN[i,1]乃至ノードNN[i,n]の電位の変化量は、配線XCL[i]の電位の変化量に、セルアレイCA2に含まれているそれぞれのセルIM[i,1]乃至セルIM[i,n]の構成によって決まる容量結合係数を乗じた電位となる。該容量結合係数は、容量C5の容量、トランジスタF2のゲート容量、寄生容量などによって算出される。セルIM[i,1]乃至セルIM[i,n]のそれぞれにおいて、容量C5による容量結合係数をpとしたとき、セルIM[i,j]のノードNN[i,j]の電位は、時刻T14から時刻T15までの間の時点における電位から、p(Vgm[i]-GND)低下する。
同様に、配線XCL[i]の電位が変化することによって、セルIMref[i]に含まれている容量C5mによる容量結合によって、ノードNNref[i]の電位も変化する。容量C5mによる容量結合係数を、容量C5と同様にpとしたとき、セルIMref[i]のノードNNref[i]の電位は、時刻T14から時刻T15までの間の時点における電位から、p(Vgm[i]-GND)低下する。
これによって、セルIM[i,j]のノードNN[i,j]の電位が低下するため、トランジスタF2はオフ状態となり、同様に、セルIMref[i]のノードNNref[i]の電位が低下するため、トランジスタF2mもオフ状態となる。そのため、時刻T15から時刻T16までの間において、IF2[i,j]、IF2m[i]のそれぞれは0となる。
<<時刻T16から時刻T17まで>>
時刻T16から時刻T17までの間において、配線WSL[i+1]に高レベル電位が印加される。これにより、セルアレイCA2のi+1行目のセルIM[i+1,1]乃至セルIM[i+1,n]に含まれているトランジスタF1のゲートと、セルIMref[i+1]に含まれているトランジスタF1mのゲートと、に高レベル電位が印加されて、それぞれのトランジスタF1とトランジスタF1mとがオン状態となる。また、時刻T16から時刻T17までの間において、配線WSL[i+1]を除く配線WSL[1]乃至配線WSL[m]には低レベル電位が印加されており、セルアレイCA2のi+1行目以外のセルIM[1,1]乃至セルIM[m,n]に含まれているトランジスタF1と、i+1行目以外のセルIMref[1]乃至セルIMref[m]に含まれているトランジスタF1mは、オフ状態になっているものとする。
更に、配線XCL[1]乃至配線XCL[m]には低レベル電位が印加される。
<<時刻T17から時刻T18まで>>
時刻T17から時刻T18までの間において、回路WCSから、トランジスタF3[j]を介してセルアレイCA2に電流量としてI0[i+1,j]の電流が流れる。このとき、セルアレイCA2のi+1行目のセルIM[i+1,j]に含まれているトランジスタF1の第1端子と配線WCL[j]との間が導通状態となっており、かつセルアレイCA2のi+1行目以外のセルIM[1,j]乃至セルIM[m,j]に含まれているトランジスタF1の第1端子と配線WCL[j]との間が非導通状態となっているので、配線WCL[j]からセルIM[i+1,j]に電流量I0[i+1,j]の電流が流れる。
ところで、セルIM[i+1,j]に含まれているトランジスタF1がオン状態になることによって、セルIM[i+1,j]に含まれているトランジスタF2はダイオード接続の構成となる。そのため、配線WCL[j]からセルIM[i+1,j]に電流が流れるとき、トランジスタF2のゲートと、トランジスタF2の第2端子と、のそれぞれの電位はほぼ等しくなる。当該電位は、配線WCL[j]からセルIM[i+1,j]に流れる電流量とトランジスタF2の第1端子の電位(ここではGND)などによって定められる。本動作例では、配線WCL[j]からセルIM[i+1,j]に電流量I0[i+1,j]の電流が流れることによって、トランジスタF2のゲート(ノードNN[i+1,j])の電位は、Vg[i+1,j]になるものとする。つまり、トランジスタF2において、ゲート-ソース間電圧がVg[i+1,j]-GNDとなり、トランジスタF2の第1端子-第2端子間には、電流量I0[i+1,j]の電流が流れる。
ここで、トランジスタF2のしきい値電圧をVth[i+1,j]としたとき、トランジスタF2がサブスレッショルド領域で動作する場合の電流量I0[i+1,j]は次の式の通りに記述できる。なお、補正係数は、セルIM[i,j]に含まれているトランジスタF2、セルIMref[i]に含まれているトランジスタF2mと同様のKとしている。
また、時刻T17から時刻T18までの間において、回路XCSから、配線XCL[i+1]に電流量としてIref0の電流が流れる。このとき、セルIMref[i+1]に含まれているトランジスタF1mの第1端子と配線XCL[i+1]との間が導通状態となるので、配線XCL[i+1]からセルIMref[i+1]に電流量Iref0の電流が流れる。
セルIM[i+1,j]と同様に、セルIMref[i+1]に含まれているトランジスタF1mがオン状態になることによって、セルIMref[i+1,j]に含まれているトランジスタF2mはダイオード接続の構成となる。そのため、配線XCL[i+1]からセルIMref[i+1]に電流が流れるとき、トランジスタF2mのゲートと、トランジスタF2mの第2端子と、のそれぞれの電位はほぼ等しくなる。当該電位は、配線XCL[i+1]からセルIMref[i+1]に流れる電流量とトランジスタF2mの第1端子の電位(ここではGND)などによって定められる。本動作例では、配線XCL[i+1]からセルIMref[i+1]に電流量Iref0の電流が流れることによって、トランジスタF2のゲート(ノードNNref[i+1])はVgm[i+1]になるものとし、また、このときの配線XCL[i+1]の電位もVgm[i+1]とする。つまり、トランジスタF2mにおいて、ゲート-ソース間電圧がVgm[i+1]-GNDとなり、トランジスタF2mの第1端子-第2端子間には、電流量Iref0の電流が流れる。
ここで、トランジスタF2mのしきい値電圧をVthm[i+1,j]としたとき、トランジスタF2mがサブスレッショルド領域で動作する場合の電流量Iref0は次の式の通りに記述できる。なお、補正係数Kは、セルIM[i+1,j]に含まれているトランジスタF2と同一とする。
ここで、第1データである重み係数w[i+1,j]を次の通りに定義する。
したがって、式(F5)は、次の式に書き換えることができる。
<<時刻T18から時刻T19まで>>
時刻T18から時刻T19までの間において、配線WSL[i+1]に低レベル電位が印加される。これにより、セルアレイCA2のi行目のセルIM[i+1,1]乃至セルIM[i+1,n]に含まれているトランジスタF1のゲートと、セルIMref[i+1]に含まれているトランジスタF1mのゲートと、に低レベル電位が印加されて、それぞれのトランジスタF1とトランジスタF1mとがオフ状態となる。
セルIM[i+1,j]に含まれているトランジスタF1がオフ状態になることによって、容量C5には、トランジスタF2のゲート(ノードNN[i+1,j])の電位と、配線XCL[i+1]の電位と、の差であるVg[i+1,j]-Vgm[i+1]が保持される。また、セルIMref[i+1]に含まれているトランジスタF1がオフ状態になることによって、容量C5mには、トランジスタF2mのゲート(ノードNNref[i+1])の電位と、配線XCL[i+1]の電位と、の差である0が保持される。なお、C5mが保持する電位は、時刻T18から時刻T19の動作においてトランジスタF1mやトランジスタF2mのトランジスタ特性などに応じて0ではない電位(ここでは、Δとする。)となる場合もある。しかし、ノードNNref[i]の電位は、配線XCL[i]の電位にΔを加えた電位になると考えることで、以下の議論が成り立つ。
<<時刻T19から時刻T20まで>>
時刻T19から時刻T20までの間において、配線XCL[i+1]にGNDが印加される。このため、i+1行目のセルIM[i+1,1]乃至セルIM[i+1,n]のそれぞれに含まれている容量C5による容量結合によってノードNN[i,1]乃至ノードNN[i+1,n]の電位が変化し、セルIMref[i+1]に含まれている容量C5による容量結合によってノードNNref[i+1]の電位が変化する。
ノードNN[i+1,1]乃至ノードNN[i+1,n]の電位の変化量は、配線XCL[i+1]の電位の変化量に、セルアレイCA2に含まれているそれぞれのセルIM[i+1,1]乃至セルIM[i+1,n]の構成によって決まる容量結合係数を乗じた電位となる。該容量結合係数は、容量C5の容量、トランジスタF2のゲート容量、寄生容量などによって算出される。セルIM[i+1,1]乃至セルIM[i+1,n]のそれぞれにおいて、容量C5による容量結合係数を、セルIM[i,1]乃至セルIM[i,n]のそれぞれにおける容量C5による容量結合係数と同様に、pとしたとき、セルIM[i+1,j]のノードNN[i+1,j]の電位は、時刻T18から時刻T19までの間の時点における電位から、p(Vgm[i+1]-GND)低下する。
同様に、配線XCL[i+1]の電位が変化することによって、セルIMref[i+1]に含まれている容量C5mによる容量結合によって、ノードNNref[i+1]の電位も変化する。容量C5mによる容量結合係数を、容量C5と同様にpとしたとき、セルIMref[i+1]のノードNNref[i+1]の電位は、時刻T18から時刻T19までの間の時点における電位から、p(Vgm[i+1]-GND)低下する。
これによって、セルIM[i+1,j]のノードNN[i+1,j]の電位が低下するため、トランジスタF2はオフ状態となり、同様に、セルIMref[i+1]のノードNNref[i]の電位が低下するため、トランジスタF2mもオフ状態となる。そのため、時刻T19から時刻T20までの間において、IF2[i+1,j]、IF2m[i+1]のそれぞれは0となる。
<<時刻T20から時刻T21まで>>
時刻T20から時刻T21までの間において、配線SWL1に低レベル電位が印加されている。これにより、トランジスタF3[1]乃至トランジスタF3[n]のそれぞれのゲートに低レベル電位が印加されて、トランジスタF3[1]乃至トランジスタF3[n]のそれぞれがオフ状態となる。
<<時刻T21から時刻T22まで>>
時刻T21から時刻T22までの間において、配線SWL2に高レベル電位が印加されている。これにより、トランジスタF4[1]乃至トランジスタF4[n]のそれぞれのゲートに高レベル電位が印加されて、トランジスタF4[1]乃至トランジスタF4[n]のそれぞれがオフ状態となる。
<<時刻T22から時刻T23まで>>
時刻T22から時刻T23までの間において、回路XCSから、配線XCL[i]に電流量としてIref0のx[i]倍であるx[i]Iref0の電流が流れる。なお、本動作例では、xは、第2データであるニューロンの信号の値に相当する。このとき、配線XCL[i]の電位は、0からVgm[i]+ΔV[i]に変化するものとする。
配線XCL[i]の電位が変化することによって、セルアレイCA2のi行目のセルIM[i,1]乃至セルIM[i,n]のそれぞれに含まれている容量C5による容量結合によって、ノードNN[i,1]乃至ノードNN[i,n]の電位も変化する。そのため、セルIM[i,j]のノードNN[i,j]の電位は、Vg[i,j]+pΔV[i]となる。
同様に、配線XCL[i]の電位が変化することによって、セルIMref[i]に含まれている容量C5mによる容量結合によって、ノードNNref[i]の電位も変化する。そのため、セルIMref[i]のノードNNref[i]の電位は、Vgm[i]+pΔV[i]となる。
これによって、時刻T22から時刻T23までの間において、トランジスタF2の第1端子-第2端子間に流れる電流I1[i,j]、トランジスタF2mの第1端子-第2端子間に流れる電流Iref1[i,j]は、次の通りに記述できる。
式(F9)、式(F10)より、x[i]は次の式で表すことができる。
そのため、式(F9)は、次の式に書き換えることができる。
つまり、セルIM[i,j]に含まれているトランジスタF2の第1端子-第2端子間に流れる電流は、第1データである重み係数w[i,j]と、第2データであるニューロンの信号の値x[i]と、の積に比例する。
また、時刻T22から時刻T23までの間において、回路XCSから、配線XCL[i+1]に電流量としてIref0のx[i+1]倍であるx[i+1]Iref0の電流が流れる。なお、本動作例では、xは、第2データであるニューロンの信号の値に相当する。このとき、配線XCL[i+1]の電位は、0からVgm[i+1]+ΔV[i+1]に変化するものとする。
配線XCL[i+1]の電位が変化することによって、セルアレイCA2のi+1行目のセルIM[i+1,1]乃至セルIM[i+1,n]のそれぞれに含まれている容量C5による容量結合によって、ノードNN[i+1,1]乃至ノードNN[i+1,n]の電位も変化する。そのため、セルIM[i+1,j]のノードNN[i+1,j]の電位は、Vg[i+1,j]+pΔV[i+1]となる。
同様に、配線XCL[i+1]の電位が変化することによって、セルIMref[i+1]に含まれている容量C5mによる容量結合によって、ノードNNref[i+1]の電位も変化する。そのため、セルIMref[i+1]のノードNNref[i+1]の電位は、Vgm[i+1]+pΔV[i+1]となる。
これによって、時刻T22から時刻T23までの間において、トランジスタF2の第1端子-第2端子間に流れる電流I1[i+1,j]、トランジスタF2mの第1端子-第2端子間に流れる電流Iref1[i+1,j]は、次の通りに記述できる。
式(F13)、式(F14)より、x[i+1]は次の式で表すことができる。
そのため、式(F13)は、次の式に書き換えることができる。
つまり、セルIM[i+1,j]に含まれているトランジスタF2の第1端子-第2端子間に流れる電流は、第1データである重み係数w[i+1,j]と、第2データであるニューロンの信号の値x[i+1]と、の積に比例する。
ここで、変換回路ITRZ[j]から、トランジスタF4[j]と配線WCL[j]とを介して、セルIM[i,j]及びセルIM[i+1,j]に流れる電流の総和を考える。当該電流の総和をIS[j]とすると、IS[j]は、式(F12)と式(F16)より、次の式で表すことができる。
したがって、変換回路ITRZ[j]から出力される電流は、第1データである重み係数w[i,j]及びw[i+1,j]と、第2データであるニューロンの信号の値x[i]及びx[i+1]と、の積和に比例した電流となる。
なお、上述の動作例では、セルIM[i,j]、及びセルIM[i+1,j]に流れる電流の総和について扱ったが、複数のセルとして、セルIM[1,j]乃至セルIM[m,j]のそれぞれに流れる電流の総和についても扱ってもよい。この場合、式(F17)は、次の式に書き直すことができる。
このため、3行以上且つ2列以上のセルアレイCA2を有する演算回路MAC2の場合でも、上記の通り、積和演算を行うことができる。この場合の積和演算回路は、複数列のうち1列を、電流量としてIref0、及びxIref0を保持するセルとすることで、複数列のうち残りの列の数だけ積和演算処理を同時に実行することができる。つまり、メモリセルアレイの列の数を増やすことで、高速な積和演算処理を実現する半導体装置を提供することができる。
本実施の形態で述べた積和演算回路を、上述した隠れ層として適用する場合、重み係数ws[k]s[k-1]
(k)を第1データとして、第1データに応じた電流量を同じ列の各セルIMに順次記憶させて、第(k-1)層の第s[k-1]ニューロンからの出力信号zs[k-1]
(k-1)を第2データとして、第2データに応じた電流を回路XCSから各行の配線XCLに対して流すことで、回路ITRZから出力される電流ISから第1データと第2データとの積和を求めることができる。加えて、当該積和の値を用いて活性化関数の値を求めることによって、活性化関数の値を信号として第k層の第s[k]ニューロンの出力信号zs[k]
(k)とすることができる。
また、本実施の形態で述べた積和演算回路を、上述した出力層として適用する場合、重み係数ws[L]s[L-1]
(L)を第1データとして、第1データに応じた電流量を同じ列の各セルIMに順次記憶させて、第(L-1)層の第s[L-1]ニューロンからの出力信号zs[L-1]
(L-1)を第2データとして、第2データに応じた電流を回路XCSから各行の配線XCLに対して流すことで、回路ITRZから出力される電流ISから、第1データと第2データとの積和を求めることができる。加えて、当該積和の値を用いて活性化関数の値を求めることによって、活性化関数の値を信号として第L層の第s[L]ニューロンの出力信号zs[L]
(L)とすることができる。
なお、本実施の形態で述べた入力層は、入力信号を第2層に出力するバッファ回路として機能してもよい。
また、本実施の形態では、演算回路MAC1及び演算回路MAC2に含まれているトランジスタをOSトランジスタ、又はSiトランジスタとした場合について説明したが、本発明の一態様は、これに限定されない。演算回路MAC1及び演算回路MAC2に含まれているトランジスタは、例えば、Geなどの半導体を活性層にしたトランジスタ、ZnSe、CdS、GaAs、InP、GaN、SiGeなどの化合物半導体を活性層としたトランジスタ、カーボンナノチューブを活性層としたトランジスタ、有機半導体を活性層としたトランジスタ等を用いることができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した演算回路の構成例、及び当該演算回路に適用可能なトランジスタの構成例について説明する。
<半導体装置の構成例>
図19に示す半導体装置は、トランジスタ300と、トランジスタ500と、容量素子600と、を有している。図21Aはトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、図21Bはトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図であり、図21Cはトランジスタ300のチャネル幅方向の断面図である。
トランジスタ500は、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタ(OSトランジスタ)である。トランジスタ500は、オフ電流が小さいため、これを半導体装置、例えば、演算回路MAC1などに含まれるメモリセルアレイCAのトランジスタTr11などに用いることにより、長期にわたり書き込んだデータを保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度が少ない、あるいは、リフレッシュ動作を必要としないため、半導体装置の消費電力を低減することができる。
本実施の形態で説明する半導体装置は、図19に示すようにトランジスタ300、トランジスタ500、容量素子600を有する。トランジスタ500はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子600はトランジスタ300、及びトランジスタ500の上方に設けられている。なお、容量素子600は、上記実施の形態で説明した演算回路MAC1などに含まれるメモリセルアレイCAの容量C1、回路OFSTの容量C2などとすることができる。
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、導電体316、絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、ソース領域又はドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bを有する。なお、トランジスタ300は、例えば、上記実施の形態で説明した演算回路MAC1などに含まれるメモリセルアレイCAのトランジスタTr12などに適用することができる。
また、基板311としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)を用いるのが好ましい。
トランジスタ300は、図21Cに示すように、半導体領域313の上面及びチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ300をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ300のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ300のオフ特性を向上させることができる。
なお、トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
半導体領域313のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、又はドレイン領域となる低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。又は、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。又はGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ300をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、又はホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。
なお、導電体の材料によって仕事関数が決まるため、当該導電体の材料を選択することで、トランジスタのしきい値電圧を調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウムなどの金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
なお、図19に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。例えば、半導体装置をOSトランジスタのみの単極性回路とする場合、図20に示すとおり、トランジスタ300の構成を、酸化物半導体を用いているトランジスタ500と同様の構成にすればよい。なお、トランジスタ500の詳細については後述する。
トランジスタ300を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326が順に積層して設けられている。
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。また、本明細書中において、酸化窒化アルミニウムとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化アルミニウムとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
また、絶縁体324には、基板311、又はトランジスタ300などから、トランジスタ500が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS)などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm2以下、好ましくは5×1015atoms/cm2以下であればよい。
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326には容量素子600、又はトランジスタ500と接続する導電体328、及び導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、及び導電体330は、プラグ又は配線としての機能を有する。また、プラグ又は配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、及び導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
各プラグ、及び配線(導電体328、導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を、単層又は積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。又は、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
絶縁体326、及び導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、図19において、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
絶縁体354、及び導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、図19において、絶縁体360、絶縁体362、及び絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、及び絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体366は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
絶縁体364、及び導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、図19において、絶縁体370、絶縁体372、及び絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、及び絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体376は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
絶縁体374、及び導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、図19において、絶縁体380、絶縁体382、及び絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、及び絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体386は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、及び導電体386を含む配線層、について説明したが、本実施の形態に係る半導体装置はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
絶縁体384上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
例えば、絶縁体510、及び絶縁体514には、例えば、基板311、又はトランジスタ300を設ける領域などから、トランジスタ500を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、及び絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
特に、酸化アルミニウムは、酸素、及びトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
また、例えば、絶縁体512、及び絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、及び絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516には、導電体518、及びトランジスタ500を構成する導電体(例えば、導電体503)等が埋め込まれている。なお、導電体518は、容量素子600、又はトランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
特に、絶縁体510、及び絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、及び水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、酸素、水素、及び水に対するバリア性を有する層で、分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
絶縁体516の上方には、トランジスタ500が設けられている。
図21A、図21Bに示すように、トランジスタ500は、絶縁体514及び絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503と、絶縁体516及び導電体503の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に互いに離れて配置された導電体542a及び導電体542bと、導電体542a及び導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の底面及び側面に配置された酸化物530cと、酸化物530cの形成面に配置された絶縁体550と、絶縁体550の形成面に配置された導電体560と、を有する。
また、図21A、図21Bに示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、及び導電体542bと、絶縁体580との間に絶縁体544が配置されることが好ましい。また、図21A、図21Bに示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、図21A、図21Bに示すように、絶縁体580、導電体560、及び絶縁体550の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
なお、以下において、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。
なお、トランジスタ500では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明の一態様はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530bの単層、酸化物530bと酸化物530aの2層構造、酸化物530bと酸化物530cの2層構造、又は4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明の一態様はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、図19、図21Aに示すトランジスタ500は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
ここで、導電体560は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体542a及び導電体542bは、それぞれソース電極又はドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、及び導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542a及び導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ500において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ500の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542a又は導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と導電体542a及び導電体542bとの間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ500のスイッチング速度を向上させ、高い周波数特性を有せしめることができる。
導電体560は、第1のゲート(トップゲートともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体503は、第2のゲート(ボトムゲートともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体503に印加する電位を、導電体560に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ500のしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体503に負の電位を印加することにより、トランジスタ500のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体503に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
導電体503は、酸化物530、及び導電体560と、重なるように配置する。これにより、導電体560、及び導電体503に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体503から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。本明細書等において、第1のゲート電極、及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
また、導電体503は、導電体518と同様の構成であり、絶縁体514及び絶縁体516の開口の内壁に接して導電体503aが形成され、さらに内側に導電体503bが形成されている。なお、トランジスタ500では、導電体503a及び導電体503bを積層する構成について示しているが、本発明の一態様はこれに限られるものではない。例えば、導電体503は、単層、又は3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
ここで、導電体503aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、又は酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、又は上記酸素のいずれか一又は、すべての拡散を抑制する機能とする。
例えば、導電体503aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体503bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
また、導電体503が配線の機能を兼ねる場合、導電体503bは、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。その場合、導電体503aは、必ずしも設けなくともよい。なお、導電体503bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタン、又は窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
絶縁体520、絶縁体522、及び絶縁体524は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損を低減し、トランジスタ500の信頼性を向上させることができる。
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、又は3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、又は100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
また、上記過剰酸素領域を有する絶縁体と、酸化物530と、を接して加熱処理、マイクロ波処理、またはRF処理のいずれか一または複数の処理を行っても良い。当該処理を行うことで、酸化物530中の水、または水素を除去することができる。例えば、酸化物530において、VoHの結合が切断される反応が起きる、別言すると「VOH→VO+H」という反応が起きて、脱水素化することができる。このとき発生した水素の一部は、酸素と結合してH2Oとして、酸化物530、または酸化物530近傍の絶縁体から除去される場合がある。また、水素の一部は、導電体542a、及び導電体542bに拡散または捕獲(ゲッタリングともいう)される場合がある。
また、上記マイクロ波処理は、例えば、高密度プラズマを発生させる電源を有する装置、または、基板側にRFを印加する電源を有する装置を用いると好適である。例えば、酸素を含むガスを用い、且つ高密度プラズマを用いることより、高密度の酸素ラジカルを生成することができ、基板側にRFを印加することで、高密度プラズマによって生成された酸素ラジカルを、効率よく酸化物530、または酸化物530近傍の絶縁体中に導入することができる。また、上記マイクロ波処理は、圧力を133Pa以上、好ましくは200Pa以上、さらに好ましくは400Pa以上とすればよい。また、マイクロ波処理を行う装置内に導入するガスとしては、例えば、酸素と、アルゴンとを用い、酸素流量比(O2/(O2+Ar))が50%以下、好ましくは10%以上30%以下で行うとよい。
また、トランジスタ500の作製工程中において、酸化物530の表面が露出した状態で、加熱処理を行うと好適である。当該加熱処理は、例えば、100℃以上450℃以下、より好ましくは350℃以上400℃以下で行えばよい。なお、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。例えば、加熱処理は酸素雰囲気で行うことが好ましい。これにより、酸化物530に酸素を供給して、酸素欠損(VO)の低減を図ることができる。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で行ってもよい。または、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で加熱処理した後に、連続して窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理を行っても良い。
なお、酸化物530に加酸素化処理を行うことで、酸化物530中の酸素欠損を、供給された酸素により修復させる、別言すると「VO+O→null」という反応を促進させることができる。さらに、酸化物530中に残存した水素に供給された酸素が反応することで、当該水素をH2Oとして除去する(脱水化する)ことができる。これにより、酸化物530中に残存していた水素が酸素欠損に再結合してVOHが形成されるのを抑制することができる。
また、絶縁体524が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素は、絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。また、導電体503が、絶縁体524や、酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、又は(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層又は積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、及び高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
特に、不純物、及び酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウム、ハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウム、ハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
又は、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。又はこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコン又は窒化シリコンを積層して用いてもよい。
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコン及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体と、酸化シリコン又は酸化窒化シリコンと、を組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体520を得ることができる。
なお、図21A、図21Bのトランジスタ500では、3層の積層構造からなる第2のゲート絶縁膜として、絶縁体520、絶縁体522、及び絶縁体524が図示されているが、第2のゲート絶縁膜は、単層、2層、又は4層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、酸化物530として適用できるIn-M-Zn酸化物は、CAAC-OS(C-Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、CAC-OS(Cloud-Aligned Composite Oxide Semiconductor)であることが好ましい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、In酸化物などを用いてもよい。
また、トランジスタ500には、キャリア濃度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物のキャリア濃度を低くする場合においては、金属酸化物中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、金属酸化物中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
特に、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、金属酸化物中に酸素欠損を形成する場合がある。また、酸化物530中の酸素欠損に水素が入った場合、酸素欠損と水素とが結合しVOHを形成する場合がある。VOHはドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。また、金属酸化物中の水素は、熱、電界などのストレスによって動きやすいため、金属酸化物に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。本発明の一態様においては、酸化物530中のVOHをできる限り低減し、高純度真性または実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VOHが十分低減された金属酸化物を得るには、金属酸化物中の水分、水素などの不純物を除去すること(脱水、脱水素化処理と記載する場合がある。)と、金属酸化物に酸素を供給して酸素欠損を補填すること(加酸素化処理と記載する場合がある。)が重要である。VOHなどの不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
酸素欠損に水素が入った欠陥は、金属酸化物のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、金属酸化物においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、金属酸化物のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
よって、金属酸化物を酸化物530に用いる場合、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、当該金属酸化物は、バンドギャップが高く、真性(I型ともいう。)、又は実質的に真性である半導体であって、かつチャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度は、1×1018cm-3未満であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、導電体542a及び導電体542bと酸化物530とが接することで、酸化物530中の酸素が導電体542a及び導電体542bへ拡散し、導電体542a及び導電体542bが酸化する場合がある。導電体542a及び導電体542bが酸化することで、導電体542a及び導電体542bの導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物530中の酸素が導電体542a及び導電体542bへ拡散することを、導電体542a及び導電体542bが酸化物530中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
また、酸化物530中の酸素が導電体542a及び導電体542bへ拡散することで、導電体542aと酸化物530bとの間、および、導電体542bと酸化物530bとの間に異層が形成される場合がある。当該異層は、導電体542a及び導電体542bよりも酸素を多く含むため、当該異層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体542a又は導電体542bと、当該異層と、酸化物530bとの3層構造は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構造とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造と呼ぶ、またはMIS構造を主としたダイオード接合構造と呼ぶ場合がある。
なお、上記異層は、導電体542a及び導電体542bと酸化物530bとの間に形成されることに限られず、例えば、異層が、導電体542a及び導電体542bと酸化物530cとの間に形成される場合や、導電体542a及び導電体542bと酸化物530bとの間、導電体542a及び導電体542bと酸化物530cとの間に形成される場合がある。
酸化物530においてチャネル形成領域として機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる複数の酸化物層の積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530a又は酸化物530bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
具体的には、酸化物530aとして、InとGaとZnとの原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:4、または1:1:0.5の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530bとして、InとGaとZnとの原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:3、または1:1:1の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530cとして、InとGaとZnとの原子数比がIn:Ga:Zn=1:3:4、またGaとZnの原子数比がGa:Zn=2:1、またはGa:Zn=2:5の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530cを積層構造とする場合の具体例としては、InとGaとZnとの原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:3と、In:Ga:Zn=1:3:4との積層構造、またGaとZnの原子数比がGa:Zn=2:1と、InとGaとZnとの原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:3との積層構造、GaとZnの原子数比がGa:Zn=2:5と、InとGaとZnとの原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:3との積層構造、酸化ガリウムと、InとGaとZnとの原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:3との積層構造などが挙げられる。
また、例えば、酸化物530aに用いる金属酸化物における元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における元素Mに対するInの原子数比より小さい場合、酸化物530bとして、InとGaとZnとの原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:6またはその近傍、In:Ga:Zn=5:1:3またはその近傍、In:Ga:Zn=10:1:3またはその近傍などの組成であるIn-Ga-Zn酸化物を用いることができる。
また、上述した以外の組成としては、酸化物530bには、例えば、In:Zn=2:1の組成、In:Zn=5:1の組成、In:Zn=10:1の組成、これらのいずれか一の近傍の組成などを有する金属酸化物を用いることができる。
これらの酸化物530a、酸化物530b、酸化物530cを上記の原子数比の関係を満たして組み合わせることが好ましい。例えば、酸化物530a、および酸化物530cを、In:Ga:Zn=1:3:4の組成およびその近傍の組成を有する金属酸化物、酸化物530bを、In:Ga:Zn=4:2:3から4.1の組成およびその近傍の組成を有する金属酸化物とするのが好ましい。なお、上記組成は、基体上に形成された酸化物中の原子数比、またはスパッタターゲットにおける原子数比を示す。また、酸化物530bの組成として、Inの比率を高めることで、トランジスタのオン電流、または電界効果移動度などを高めることができるため好適である。
また、酸化物530a及び酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530a及び酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
ここで、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化又は連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、及び酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530a及び酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、及び酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は高いオン電流を得られる。
酸化物530b上には、ソース電極、及びドレイン電極として機能する導電体542a、及び導電体542bが設けられる。導電体542a、及び導電体542bとしては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、又は上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、又は、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。更に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素又は酸素に対するバリア性があるため好ましい。
また、図21A、図21Bでは、導電体542a、及び導電体542bを単層構造として示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
また、チタン膜又は窒化チタン膜と、そのチタン膜又は窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜又は窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜又は窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜又は窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜又は窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫又は酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
また、図21Aに示すように、酸化物530の、導電体542a(導電体542b)との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域543a、及び領域543bが形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域又はドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域又はドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
酸化物530と接するように上記導電体542a(導電体542b)を設けることで、領域543a(領域543b)の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543a(領域543b)に導電体542a(導電体542b)に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543a(領域543b)のキャリア濃度が増加し、領域543a(領域543b)は、低抵抗領域となる。
絶縁体544は、導電体542a、及び導電体542bを覆うように設けられ、導電体542a、及び導電体542bの酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、ネオジム、ランタン又は、マグネシウムなどから選ばれた一種、又は二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。また、絶縁体544として、窒化酸化シリコン又は窒化シリコンなども用いることができる。
特に、絶縁体544として、アルミニウム、又はハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム、及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542a、及び導電体542bが耐酸化性を有する材料、又は、酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
絶縁体544を有することで、絶縁体580に含まれる水、及び水素などの不純物が酸化物530c、絶縁体550を介して、酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化するのを抑制することができる。
絶縁体550は、第1のゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、酸化物530cの内側(上面、及び側面)に接して配置することが好ましい。絶縁体550は、上述した絶縁体524と同様に、過剰に酸素を含み、かつ加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素、及び窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、及び酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として、酸化物530cの上面に接して設けることにより、絶縁体550から、酸化物530cを通じて、酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水又は水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
また、絶縁体550が有する過剰酸素を、効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
なお、絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜と同様に、積層構造としてもよい。トランジスタの微細化、及び高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合があるため、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
第1のゲート電極として機能する導電体560は、図21A、図21Bでは2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体550に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、又は酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530に適用できる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、導電体560aの電気抵抗値を低下させて導電体にすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
また、導電体560bは、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン、又は窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542a、及び導電体542b上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素、及び窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、又は樹脂などを有することが好ましい。特に、酸化シリコン、及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接して設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530へと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水又は水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、及び導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に、埋め込まれるように形成される。
半導体装置を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく、形成することができる。
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、及び絶縁体550の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550、及び絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、及び窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素などの不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524などと同様に、膜中の水又は水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、及び絶縁体544に形成された開口に、導電体540a、及び導電体540bを配置する。導電体540a及び導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540a及び導電体540bは、後述する導電体546、及び導電体548と同様の構成である。
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
特に、酸化アルミニウムは、酸素、及びトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、及び絶縁体586には、導電体546、及び導電体548等が埋め込まれている。
導電体546、及び導電体548は、容量素子600、トランジスタ500、又はトランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体546、及び導電体548は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
なお、トランジスタ500の形成後、トランジスタ500を囲むように開口を形成し、当該開口を覆うように、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体を形成してもよい。上述のバリア性の高い絶縁体でトランジスタ500を包み込むことで、外部から水分、および水素が侵入するのを防止することができる。または、複数のトランジスタ500をまとめて、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体で包み込んでもよい。なお、トランジスタ500を囲むように開口を形成する場合、例えば、絶縁体514または絶縁体522に達する開口を形成し、絶縁体514または絶縁体522に接するように上述のバリア性の高い絶縁体を形成すると、トランジスタ500の作製工程の一部を兼ねられるため、好適である。なお、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体としては、例えば、絶縁体522と同様の材料を用いればよい。
続いて、トランジスタ500の上方には、容量素子600が設けられている。容量素子600は、導電体610と、導電体620、絶縁体630とを有する。
また、導電体546、及び導電体548上に、導電体612を設けてもよい。導電体612は、トランジスタ500と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体610は、容量素子600の電極としての機能を有する。なお、導電体612、及び導電体610は、同時に形成することができる。
導電体612、及び導電体610には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、又は上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。又は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
図19では、導電体612、及び導電体610は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、及び導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
絶縁体630を介して、導電体610と重畳するように、導電体620を設ける。なお、導電体620は、金属材料、合金材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
導電体620、及び絶縁体630上には、絶縁体650が設けられている。絶縁体650は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体650は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制するとともに、信頼性を向上させることができる。又は、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化又は高集積化を図ることができる。
次に、図19、図20に図示している、OSトランジスタの別の構成例について説明する。図22A、図22Bは、図21A、図21Bに示すトランジスタ500の変形例であって、図22Aは、トランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、図22Bはトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図である。なお、図22A、図22Bに示す構成は、トランジスタ300等、本発明の一態様の半導体装置が有する他のトランジスタにも適用することができる。
図22A、図22Bに示す構成のトランジスタ500は、絶縁体402及び絶縁体404を有する点が、図21A、図21Bに示す構成のトランジスタ500と異なる。また、導電体540aの側面に接して絶縁体552が設けられ、導電体540bの側面に接して絶縁体552が設けられる点が、図21A、図21Bに示す構成のトランジスタ500と異なる。さらに、絶縁体520を有さない点が、図21A、図21Bに示す構成のトランジスタ500と異なる。
図22A、図22Bに示す構成のトランジスタ500は、絶縁体512上に絶縁体402が設けられている。また、絶縁体574上、及び絶縁体402上に絶縁体404が設けられている。
図22A、図22Bに示す構成のトランジスタ500では、絶縁体514、絶縁体516、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、及び絶縁体574が設けられており、絶縁体404がこれらを覆う構造になっている。つまり、絶縁体404は、絶縁体574の上面、絶縁体574の側面、絶縁体580の側面、絶縁体544の側面、絶縁体524の側面、絶縁体522の側面、絶縁体516の側面、絶縁体514の側面、絶縁体402の上面とそれぞれ接する。これにより、酸化物530等は、絶縁体404と絶縁体402によって外部から隔離される。
絶縁体402及び絶縁体404は、水素(例えば、水素原子、水素分子などの少なくとも一)又は水分子の拡散を抑制する機能が高いことが好ましい。例えば、絶縁体402及び絶縁体404として、水素バリア性が高い材料である、窒化シリコン又は窒化酸化シリコンを用いることが好ましい。これにより、酸化物530に水素等が拡散することを抑制することができるので、トランジスタ500の特性が低下することを抑制することができる。よって、本発明の一態様の半導体装置の信頼性を高めることができる。
絶縁体552は、絶縁体581、絶縁体404、絶縁体574、絶縁体580、及び絶縁体544に接して設けられる。絶縁体552は、水素又は水分子の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。たとえば、絶縁体552として、水素バリア性が高い材料である、窒化シリコン、酸化アルミニウム、又は窒化酸化シリコン等の絶縁体を用いることが好ましい。特に、窒化シリコンは水素バリア性が高い材料であるので、絶縁体552として用いると好適である。絶縁体552として水素バリア性が高い材料を用いることにより、水又は水素等の不純物が、絶縁体580等から導電体540a及び導電体540bを通じて酸化物530に拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580に含まれる酸素が導電体540a及び導電体540bに吸収されることを抑制することができる。以上により、本発明の一態様の半導体装置の信頼性を高めることができる。
図23は、トランジスタ500及びトランジスタ300を図22A、図22Bに示す構成とした場合における、半導体装置の構成例を示す断面図である。導電体546の側面に、絶縁体552が設けられている。
また、図22A、図22Bに示すトランジスタ500は、状況に応じて、トランジスタの構成を変更してもよい。例えば、図22A、図22Bのトランジスタ500は、変更例として、図24に示すトランジスタにすることができる。図24Aはトランジスタのチャネル長方向の断面図であり、図24Bはトランジスタのチャネル幅方向の断面図である。図24A、図24Bに示すトランジスタは、酸化物530cが酸化物530c1及び酸化物530c2の2層構造である点で、図22A、図22Bに示すトランジスタと異なる。
酸化物530c1は、絶縁体524の上面、酸化物530aの側面、酸化物530bの上面及び側面、導電体542a及び導電体542bの側面、絶縁体544の側面、及び絶縁体580の側面と接する。酸化物530c2は、絶縁体550と接する。
酸化物530c1として、例えばIn-Zn酸化物を用いることができる。また、酸化物530c2として、酸化物530cが1層構造である場合に酸化物530cに用いることができる材料と同様の材料を用いることができる。例えば、酸化物530c2として、n:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]、Ga:Zn=2:1[原子数比]、またはGa:Zn=2:5[原子数比]の金属酸化物を用いることができる。
酸化物530cを酸化物530c1及び酸化物530c2の2層構造とすることにより、酸化物530cを1層構造とする場合より、トランジスタのオン電流を高めることができる。そのため、トランジスタは、例えばパワーMOSトランジスタとして適用することができる。なお、図21A、図21Bに示す構成のトランジスタが有する酸化物530cも、酸化物530c1と酸化物530c2の2層構造とすることができる。
図24A、図24Bに示す構成のトランジスタは、例えば、図19、図20に示すトランジスタ300に適用することができる。また、例えば、トランジスタ300は、前述のとおり、上記実施の形態で説明した演算回路MAC1などに含まれるメモリセルアレイCAのトランジスタTr12などに適用することができる。なお、図24A、図24Bに示すトランジスタは、本発明の一態様の半導体装置が有する、トランジスタ300、500以外のトランジスタにも適用することができる。
図25は、トランジスタ500を図21Aに示すトランジスタの構成とし、トランジスタ300を図24Aに示すトランジスタの構成とした場合における、半導体装置の構成例を示す断面図である。なお、図23と同様に、導電体546の側面に絶縁体552を設ける構成としている。図25に示すように、本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタ300とトランジスタ500を両方ともOSトランジスタとしつつ、トランジスタ300とトランジスタ500のそれぞれを異なる構成にすることができる。
次に、図19、図20の半導体装置に適用できる容量素子について説明する。
図26A乃至図26Cでは、図19に示す半導体装置に適用できる容量素子600の一例として容量素子600Aについて示している。図26Aは容量素子600Aの上面図であり、図26Bは容量素子600Aの一点鎖線L3-L4における断面を示した斜視図であり、図26Cは容量素子600Aの一点鎖線W3-L4における断面を示した斜視図である。
導電体610は、容量素子600Aの一対の電極の一方として機能し、導電体620は、容量素子600Aの一対の電極の他方として機能する。また、絶縁体630は、一対の電極に挟まれる誘電体として機能する。
絶縁体630としては、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化酸化ハフニウム、窒化ハフニウム、酸化ジルコニウムなどを用いればよく、積層または単層で設けることができる。
また、例えば、絶縁体630には、酸化窒化シリコンなどの絶縁耐力が大きい材料と、高誘電率(high-k)材料との積層構造を用いてもよい。当該構成により、容量素子600Aは、高誘電率(high-k)の絶縁体を有することで、十分な容量を確保でき、絶縁耐力が大きい絶縁体を有することで、絶縁耐力が向上し、容量素子600Aの静電破壊を抑制することができる。
なお、高誘電率(high-k)材料(高い比誘電率の材料)の絶縁体としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物またはシリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。
または、絶縁体630は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)または(Ba、Sr)TiO3(BST)などのhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いてもよい。例えば、絶縁体630を積層とする場合、酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムと、酸化ジルコニウムと、が順に形成された3層積層や、酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムと、酸化ジルコニウムと、酸化アルミニウムと、が順に形成された4層積層などを用いれば良い。また、絶縁体630としては、ハフニウムと、ジルコニウムとが含まれる化合物などを用いても良い。半導体装置の微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体、および容量素子に用いる誘電体の薄膜化により、トランジスタや容量素子のリーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体、および容量素子に用いる誘電体として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減、および容量素子の容量の確保が可能となる。
容量素子600は、導電体610の下部において、導電体546と、導電体548とに電気的に接続されている。導電体546と、導電体548は、別の回路素子と接続するためのプラグ、又は配線として機能する。また図26A乃至図26Cでは、導電体546と、導電体548と、をまとめて導電体540と記載している。
また、図26A乃至図26Cでは、図を明瞭に示すために、導電体546及び導電体548が埋め込まれている絶縁体586と、導電体620及び絶縁体630を覆っている絶縁体650と、を省略している。
なお、図19、図20、図26A乃至図26Cに示す容量素子600はプレーナ型であるが、容量素子の形状はこれに限定されない。例えば、容量素子600は、図27A乃至図27Cに示すシリンダ型の容量素子600Bとしてもよい。
図27Aは容量素子600Bの上面図であり、図27Bは容量素子600Bの一点鎖線L3-L4における断面図であり、図27Cは容量素子600Bの一点鎖線W3-L4における断面を示した斜視図である。
図27Bにおいて、容量素子600Bは、導電体540が埋め込まれている絶縁体586上の絶縁体631と、開口部を有する絶縁体651と、一対の電極の一方として機能する導電体610と、一対の電極の他方として機能する導電体620と、を有する。
また、図27Cでは、図を明瞭に示すために、絶縁体586と、絶縁体650と、絶縁体651と、を省略している。
絶縁体631としては、例えば、絶縁体586と同様の材料を用いることができる。
また、絶縁体631には、導電体540に電気的に接続されるように導電体611が埋め込まれている。導電体611は、例えば、導電体330、導電体518と同様の材料を用いることができる。
絶縁体651としては、例えば、絶縁体586と同様の材料を用いることができる。
また、絶縁体651は、前述の通り、開口部を有し、当該開口部は導電体611に重畳している。
導電体610は、当該開口部の底部と、側面と、に形成されている。つまり、導電体610は、導電体611に重畳し、かつ導電体611に電気的に接続されている。
なお、導電体610の形成方法としては、エッチング法などによって絶縁体651に開口部を形成し、次に、スパッタリング法、ALD法などによって導電体610を成膜する。その後、CMP(Chemichal Mechanical Polishing)法などによって、開口部に成膜された導電体610を残して、絶縁体651上に成膜された導電体610を除去すればよい。
絶縁体630は、絶縁体651上と、導電体610の形成面上と、に位置する。なお、絶縁体630は、容量素子において、一対の電極に挟まれる誘電体として機能する。
導電体620は、絶縁体651の開口部が埋まるように、絶縁体630上に形成されている。
絶縁体650は、絶縁体630と、導電体620と、を覆うように形成されている。
図27A乃至図27Cに示すシリンダ型の容量素子600Bは、プレーナ型の容量素子600Aよりも静電容量の値を高くすることができる。そのため、例えば、上記の実施の形態で説明した容量C1、容量C2などとして、容量素子600Bを適用することによって、長時間、容量の端子間の電圧を維持することができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、上記の実施の形態で説明したOSトランジスタに用いることができる金属酸化物であるCAC-OS(Cloud-Aligned Composite Oxide Semiconductor)、及びCAAC-OS(c-axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)の構成について説明する。
<金属酸化物の構成>
CAC-OS又はCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OS又はCAC-metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(又はホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OS又はCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OS又はCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
また、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
また、CAC-OS又はCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
また、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OS又はCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
すなわち、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、又は金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
<金属酸化物の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)及び非晶質酸化物半導体などがある。
また、酸化物半導体は、結晶構造に着目した場合、上記とは異なる分類となる場合がある。ここで、酸化物半導体における、結晶構造の分類について、図28Aを用いて説明を行う。図28Aは、酸化物半導体、代表的にはIGZO(Inと、Gaと、Znと、を含む金属酸化物)の結晶構造の分類を説明する図である。
図28Aに示すように、IGZOは、大きく分けてAmorphous(無定形)と、Crystalline(結晶性)と、Crystal(結晶)と、に分類される。また、Amorphousの中には、completely amorphousが含まれる。また、Crystallineの中には、CAAC(c-axis aligned crystalline)、nc(nanocrystalline)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)が含まれる。なお、Crystallineの分類には、single crystal、poly crystal、及びcompletely amorphousは除かれる。また、Crystalの中には、single crystal、及びpoly crystalが含まれる。
なお、図28Aに示す太枠内の構造は、Amorphous(無定形)と、Crystal(結晶)との間の中間状態であり、新しい境界領域(New crystalline phase)に属する構造である。当該構造は、Amorphousと、Crystalとの間の境界領域にある。すなわち、当該構造は、エネルギー的に不安定なAmorphous(無定形)や、Crystal(結晶)とは全く異なる構造と言い換えることができる。
なお、膜または基板の結晶構造は、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)像を用いて評価することができる。ここで、石英ガラス、及びCrystallineに分類される結晶構造を有するIGZO(結晶性IGZOともいう。)のXRDスペクトルを図28B、図28Cに示す。また、図28Bが石英ガラス、図28Cが結晶性IGZOのXRDスペクトルである。なお、図28Cに示す結晶性IGZOの組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]近傍である。また、図28Cに示す結晶性IGZOの厚さは、500nmである。
図28Bの矢印に示すように、石英ガラスは、XRDスペクトルのピークの形状がほぼ左右対称である。一方で、図28Cの矢印に示すように、結晶性IGZOは、XRDスペクトルのピークが左右非対称である。XRDスペクトルのピークの形状が左右非対称であることは、結晶の存在を明示している。別言すると、XRDスペクトルのピークの形状が左右対称でないと、Amorphousであるとは言えない。なお、図28Cには、2θ=31°、またはその近傍に結晶相(IGZO crystal phase)を明記してある。XRDスペクトルのピークにおいて、形状が左右非対称となる由来は当該結晶相(微結晶)に起因すると推定される。
具体的には、図28Cに示す、結晶性IGZOのXRDスペクトルにおいて、2θ=34°またはその近傍にピークを有する。また、微結晶は、2θ=31°またはその近傍にピークを有する。酸化物半導体膜を、X線回折像から評価する場合、図28Cに示すように、2θ=34°またはその近傍のピークよりも低角度側のスペクトルの幅が広くなる。これは、酸化物半導体膜中に、2θ=31°またはその近傍にピークを有する微結晶が内在することを示唆している。
また、膜の結晶構造は、極微電子線回折法(NBED:Nano Beam Electron Diffraction)によって観察される回折パターン(極微電子線回折パターンともいう。)にて評価することができる。基板温度を室温として成膜したIGZO膜の回折パターンを図28Dに示す。なお、図28Dに示すIGZO膜は、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]である酸化物ターゲットを用いて、スパッタリング法によって成膜される。また、極微電子線回折法では、プローブ径を1nmとして電子線回折が行われた。
図28Dに示すように、室温成膜したIGZO膜の回折パターンでは、ハローではなく、スポット状のパターンが観察される。このため、室温成膜したIGZO膜は、結晶状態でもなく、非晶質状態でもない、中間状態であり、非晶質状態であると結論することはできないと推定される。
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、及び七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
なお、明確な結晶粒界(グレインバウンダリー)が確認される結晶構造は、いわゆる多結晶(polycrystal)と呼ばれる。結晶粒界は、再結合中心となり、キャリアが捕獲されトランジスタのオン電流の低下、または電界効果移動度の低下を引き起こす可能性が高い。よって、明確な結晶粒界が確認されないCAAC-OSは、トランジスタの半導体層に好適な結晶構造を有する結晶性の酸化物の一つである。なお、CAAC-OSを構成するには、Znを有する構成が好ましい。例えば、In-Zn酸化物、及びIn-Ga-Zn酸化物は、In酸化物よりも結晶粒界の発生を抑制できるため好適である。
また、CAAC-OSは、インジウム、及び酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、及び酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。また、CAAC-OSは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対しても安定である。したがって、OSトランジスタにCAAC-OSを用いると、製造工程の自由度を広げることが可能となる。
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆又は低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
<酸化物半導体を有するトランジスタ>
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
また、トランジスタには、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性又は実質的に高純度真性という場合があり、また、真性又は実質的に真性という場合がある。
また、高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体にアルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1016atoms/cm3以下にする。
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア濃度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
本実施例では、実施の形態2で説明した演算回路MAC1のメモリセルAMにおいて、第1データと第2データとの積の演算が適切に行われているかを確認するため、実際に回路を試作し、各種測定、及び各種計算を行った。
<測定及び計算>
図29Aに示す乗算回路AMEは、実際に試作した演算回路の一部であって、実施の形態2で説明した演算回路MAC1のメモリセルAMに相当する。そのため、乗算回路AMEに含まれているトランジスタM1、容量CPのそれぞれは、図9に示すメモリセルAMに含まれているトランジスタM1、容量C1に相当する。特に、乗算回路AMEに含まれているトランジスタM2-1、トランジスタM2-2は、図9に示すメモリセルAMに含まれているトランジスタM2に相当している。つまり、トランジスタM2-1とトランジスタM2-2が直列に電気的に接続され、互いのゲートが電気的に接続されている。なお、本実施例では、トランジスタM2-1、トランジスタM2-2をまとめてトランジスタM2と呼称する。また、図29Aに示す配線VYは、図9の配線BLに相当し、図29Aに示す配線BWは、図9の配線WDに相当し、図29Aに示す配線VXは、図9の配線CLに相当し、図29Aに示す配線WWは、図9の配線WLに相当する。
更に、乗算回路AMEに含まれているトランジスタM1はバックゲートを有しており、当該バックゲートは、配線BGに電気的に接続されている。
トランジスタM1は、チャネル形成領域にIn-Ga-Zn酸化物が含まれているOSトランジスタとし、また、トランジスタM1のチャネル長(以下、L長と記載する。)を0.35μmとし、チャネル幅(以下、W長と記載する。)を0.35μmとしている。また、トランジスタM2は、チャネル形成領域に単結晶シリコンが含まれているSiトランジスタとし、また、トランジスタM2-1、トランジスタM2-2のL長を8μmとし、W長を0.32μmとしている。
図29Bは、光学顕微鏡を用いて撮影した、試作した乗算回路AMEを有するセルアレイCA3の上面の写真である。セルアレイCA3において、乗算回路AMEは、9×16個のマトリクス状に配置されている。セルアレイCA3の1つの乗算回路AMEは、電極パッドEP1乃至電極パッドEP6のそれぞれと電気的に接続されている。なお、電極パッドEP1は配線WWに電気的に接続され、電極パッドEP2は配線BWに電気的に接続され、電極パッドEP3は配線VXに電気的に接続され、電極パッドEP4は配線BGに電気的に接続され、電極パッドEP5は配線VYに電気的に接続され、電極パッドEP6は配線VRに電気的に接続されている。
乗算回路AMEにおいて、データの書き込み、データの保持、データの読み出しのそれぞれの動作を行った。
乗算回路AMEにデータを書き込むとき、配線WWに5V、配線VXに0V、配線BGに-6V、配線VYに3V、配線VRに0Vの電圧を与えた。また、ノードNMに書き込むデータは、0.1V刻みで0V以上2.5V以下の範囲の電位VWとし、当該電位を配線BWから与えた。
乗算回路AMEに書き込まれたデータを保持するとき、配線WWを0V、配線BWを0V、配線VXを0V、配線BGを-6V、配線VYを0V、配線VRを0Vとして、乗算回路AMEに電圧を与えた。
乗算回路AMEから書き込まれたデータを読み出すとき、配線WWに0V、配線BWに0V、配線BGに-6V、配線VYに3V、配線VRに0Vの電圧を与えた。また、配線VXに与える電位は、0.1V刻みで0V以上3.0V以下の範囲の電位VXとした。
乗算回路AMEにおいて、書き込み動作、データ保持、読み出し動作のそれぞれを行ったときの、配線WW、配線BW、配線VX、配線BG、配線VY、配線VRのそれぞれに与えられる電位を下の表にまとめた。
ここで、乗算回路AMEに書き込まれたデータを読み出すとき、配線VYから、トランジスタM2のソース-ドレイン間を介して、配線VRに流れる電流を測定した。
図30Aは、電位VWと電位VXとソース-ドレイン間電流IDS(VW、VX)の特性を示している。図30Aより、VXを任意の電位に固定して、VWを増加することによって、IDS(VW、VX)が増加する結果が得られた。なお、VWを増加することは、M2の閾値をマイナスにシフトする事に相当する。また、VWを任意の電位に固定して、VXを増加することによって、IDS(VW、VX)が増加する結果が得られた。また、VWを1.5Vとし、VXを1.5Vとしたとき、IDS(VW、VX)は概ね1.3μAと見積もられた。
ここで、VW0を1.5Vとし、VX0を1.5Vとすると、IDS(VW0、VX0)=1.3μAとなる。更に、VW0に電圧変化量としてΔVWを与えたときのIDS(VW0+ΔVW、VX0)、VX0に電圧変化量としてΔVXを与えたときのIDS(VW0、VX0+ΔVX)、そして、VW0に電圧変化量としてΔVWを与え、かつVX0に電圧変化量としてΔVXを与えたときのIDS(VW0+ΔVW、VX0+ΔVX)を考える。そして、ΔIyを次の式で定義する。
なお、VW0+ΔVWは、配線BWから与えられる電圧であるため、ΔVWの電圧の範囲は-1V以上1V以下となる。また、VX0+ΔVXは、配線BWから与えられる電圧であるため、ΔVXの電圧の範囲は-1.5V以上1.5V以下となる。
そして、式(E1)、式(E2)、式(E7)、式(E8)を利用して、ΔIyを計算すると次の式の通りとなる。
ここで、kを1/2とする(適当な値で規格化する)ことによって、ΔIyと、ΔVWと、ΔVXと、の関係は、図30Bで表すことができる。つまり、ΔVWとΔVXとの積に応じて、差分電流ΔIyが定まる。したがって、乗算回路AMEを用いて、トランジスタM2のソース-ドレイン間に流れる電流として、IDS(VW0、VX0)、IDS(VW0+ΔVW、VX0)、IDS(VW0、VX0+ΔVX)、IDS(VW0+ΔVW、VX0+ΔVX)のそれぞれを測定し、これらの電流から差分電流ΔIyを算出することによって、ΔVWとΔVXの積を求めることができる。
図31は、85℃、27℃、-40℃のそれぞれの温度条件において、乗算回路AMEのノードNMに、0.5V(ΔVW=-1.0V)、2.5V(ΔVW=1.0V)の電位を書き込んで、その後に読み出し動作を行って得られた、読み出した電流の温度依存性を示したグラフである。図31より、27℃と比較した場合、85℃では傾きが40%増えており、-40℃では傾きが30%減っている結果となった。なお、85℃、及び-40℃のそれぞれの場合の結果は、飽和移動度の温度依存性を示している。また、温度により傾きは異なるが、各ΔVWにおけるΔIyとΔVXとの相関は、0.989以上となっており、温度に応じて当該相関を適切な規格化を行うことで、傾きの補正を容易に行うことができると考えられる。
図32A及び図32Bは、ノードNMにデータを保持した後において、トランジスタM2のソース-ドレイン間に流れる電流量の時間変化を示したグラフである。図32Aの測定条件として、ΔVXを1.0Vとし(配線VXの電位を2.5Vとし)、図32Bの測定条件として、ΔVXを-1.0Vとした(配線VXの電位を0.5Vとした)。図32A及び図32Bのそれぞれにおいて、ノードNMに保持した電位を0.5V(ΔVW=-1.0V)、1.0V(ΔVW=-0.5V)、1.5V(ΔVW=0V)、2.0V(ΔVW=0.5V)、2.5V(ΔVW=1.0V)の4条件として、それぞれの条件において、トランジスタM2のソース-ドレイン間に流れる電流Iyを測定した。
図32A及び図32Bのとおり、1.0×102秒から1.0×105秒までの間では、それぞれの条件において、トランジスタM2のソース-ドレイン間に流れる電流Iyが変化しない結果となった。なお、図32Aのそれぞれの条件において、1.0×105秒までの差分電流ΔIyの変化率は4.8%未満であった。また、図32Bのそれぞれの条件において、1.08×105秒までの差分電流ΔIyの変化率は4%未満であった。
図33Aは、乗算回路AMEのノードNMに、0.5V(ΔVW=-1.0V)、1.0V(ΔVW=-0.5V)、2.0V(ΔVW=0.5V)、2.5V(ΔVW=1.0V)の4条件の電位を書き込み、その後に差分電流ΔIyを読み出して得られた、乗算回路AMEにおける乗算特性を示したグラフである。また、図33Aには、比較として、ΔIy=1.0×VX、ΔIy=0.5×VX、ΔIy=-0.5×VX、ΔIy=-1.0×VXの一次関数の直線を図示している。図33Aより、乗算回路AMEにおける乗算特性の結果は、ΔIy=1.0×VX、ΔIy=0.5×VX、ΔIy=-0.5×VX、ΔIy=-1.0×VXのそれぞれの一次関数に概ね一致していることが分かった。
図33Bは、乗算回路AMEのノードNMに、0.5V(ΔVW=-1.0V)、1.0V(ΔVW=-0.5V)、2.0V(ΔVW=0.5V)、2.5V(ΔVW=1.0V)の4条件の電位を書き込み、その後に読み出し動作を行って得られた、データの書き込みのばらつきの度合いを示したグラフである。なお、図33Bの測定条件として、ΔVXを1.0Vとしている(配線VXの電位を2.5Vとしている。)。書き込み動作の後に、読み出し動作をして差分電流ΔIyの算出を50回繰り返して、50回の平均を当該ΔVWでの差分電流ΔIyとした。これを1セットとし、各ΔIWについて50セット分の差分電流ΔIyの測定を行った。
図33Bにおいて、横軸には差分電流ΔIyを示し、縦軸には累積度数を示している。図33Bより、データの書き込みのばらつきは、概ね-0.4%以上0.4%以下の範囲に収まっている。
また、12個の乗算回路AMEについて、それぞれのノードNMに、0.5V(ΔVW=-1.0V)、1.0V(ΔVW=-0.5V)、2.0V(ΔVW=0.5V)、2.5V(ΔVW=1.0V)を書き込んだときの、個々の乗算回路AMEから読み出したΔIyの素子ばらつきの度合いを図34に示す。図34は、それぞれのΔVWにおけるΔVXの依存性を示しており、図34よりΔVX=0の近傍(-0.02より大きく0.02より小さい領域)を除いて、ΔIyの素子ばらつきは、各ΔVW、ΔVXについては5%未満となっている。なお、ΔIyの素子ばらつきのΔVXにおける依存性は弱く、また、ΔVWに対しては絶対値に依存しない傾向が示されている。このΔIyの素子ばらつきの原因としては、例えば、Siトランジスタの飽和移動度のばらつき、Siトランジスタの飽和領域でのドレイン電流がグラデュアル近似(2乗近似)からずれていることによる寄与が大きいと考えられる。なお、図34における素子ばらつきσmeasは、(ΔVW,ΔVX)=(+1,+1)のとき、σmeas=0.023、(ΔVW,ΔVX)=(+1,-1)のとき、σmeas=0.025、(ΔVW,ΔVX)=(-1,+1)のとき、σmeas=0.034、(ΔVW,ΔVX)=(-1,-1)のとき、σmeas=0.032となった。
また、図34のΔIyの素子ばらつきの原因の妥当性を確認するため、モンテカルロ解析を行った結果を図35A乃至図35Dに示す。図35A乃至図35Dには、ローカルばらつきを設定し、図29Aの回路構成において、(ΔVW,ΔVX)=(+1,+1)、(+1,-1)、(-1,+1)、(-1,-1)のそれぞれの場合でのシミュレーションによって、得られた素子ばらつきを示している。図35A乃至図35Dにおける素子ばらつきσsimは、(ΔVW,ΔVX)=(+1,+1)のとき、σsim=0.051、(ΔVW,ΔVX)=(+1,-1)のとき、σsim=0.038、(ΔVW,ΔVX)=(-1,+1)のとき、σsim=0.025、(ΔVW,ΔVX)=(-1,-1)のとき、σsim=0.017となった。測定で得られた素子ばらつきσmeasは、図34より0.023以上0.034以下となったので、モンテカルロ解析によって求められた素子ばらつきσsimは、0.017以上0.051以下と概ね一致していることが確認できた。
次に、図29BのセルアレイCA3を有する演算回路を用いた場合の、3層全結合型の人工ニューラルネットワークのモデルの推論精度を計算した。当該ニューラルネットワークのモデルは図36に示しており、当該ニューラルネットワークは、入力層と、中間層と、出力層と、を有する。入力層は784個のニューロンを有し、中間層は100個のニューロンを有し、出力層は10個のニューロンを有する。
当該ニューラルネットワークを計算機上で、プログラム言語であるPythonを用いて実装し、かつ実装したニューラルネットワークで手書き文字データセットMNISTを用いた学習により、重み係数を算出した。次に、図29BのセルアレイCA3を有する演算回路を図36のモデルにおける乗算とし、当該重み係数をセルアレイCA3の乗算回路AMEのそれぞれに保持して、推論を行った。なお、中間層における活性化関数をシグモイド関数とし、出力層における活性化関数をソフトマックス関数とした。この結果、図29BのセルアレイCA3を有する演算回路における推論精度は、97.77%であった。なお、図36のモデルにおいて、積和演算における演算を理想的な乗算(プログラム言語Pythonを用いて計算機上で計算を行う)とした場合の推論精度は97.89%であった。したがって、図36のモデルにおいて、本実施例の演算回路を用いた場合の推論精度は、積和演算を理想的な乗算とした場合の推論精度とほぼ変わらない結果となった。
本実施例では、実施の形態2で説明した演算回路MAC1Aにおいて、第1データと第2データとの積和の演算が適切に行われているかを確認するため、回路シミュレータを用いて、各種計算を行った。
初めに、各種計算を行うための回路構成について説明する。図37は、図13に示す演算回路MAC1Aを変更した回路構成の例である。そのため、図37に示す演算回路MAC1Aにおいて、図13の演算回路MAC1Aと内容が重複する箇所については、説明を省略する。
図37に示す演算回路MAC1Aは、図13のメモリセルアレイCAのメモリセルAMの列を複数配置し、かつ図13の回路CMS及び図13の回路OFACを変更した構成となっている。また、図37のメモリセルアレイCAのメモリセルAMは、複数の行に配置されていてもよい。
図37のメモリセルアレイCAのメモリセルAMは複数の列に配置されているため、図37の回路CMSは、複数の列に配置されているメモリセルAMに応じて、図13の回路CMSを変更した構成としている。例えば、図37の回路CMSに含まれているカレントミラー回路CMは、図13のトランジスタTr32に相当する、トランジスタTr32[1]及びトランジスタTr32[2]と、図13の電流源回路CS1に相当する、電流源回路CS1[1]及び電流源回路CS1[2]と、図13の電流源回路CS2に相当する、電流源回路CS2[1]及び電流源回路CS2[2]と、図13のスイッチSW3に相当する、スイッチSW3[1]及びスイッチSW3[2]と、を有する。
なお、図30のトランジスタTr32[1]、電流源回路CS1[1]、及び電流源回路CS2[1]は、メモリセルアレイCAの1列目に配置されているメモリセルAM[1,1]及びメモリセルAM[2,1]に保持される第1データと、メモリセルAM[1,1]及びメモリセルAM[2,1]に入力される第2データと、の積和演算を行うための回路である。また、図30のトランジスタTr32[2]、電流源回路CS1[2]、及び電流源回路CS2[2]は、メモリセルアレイCAの1列目に配置されているメモリセルAM[1,2]及びメモリセルAM[2,2]に保持される第1データと、メモリセルAM[1,2]及びメモリセルAM[2,2]に入力される第2データと、の積和演算を行うための回路である。
また、回路OFACは、図13のスイッチSW4に相当する、スイッチSW4[1]及びスイッチSW4[2]と、図13の抵抗REに相当する、抵抗RE[1]及び抵抗RE[2]と、オペアンプOP[1]と、オペアンプOP[2]と、を有する。
スイッチSW4[1]の第1端子は、スイッチSW3[1]の第1端子に電気的に接続され、スイッチSW4[1]の第2端子は、抵抗RE[1]の第1端子と、オペアンプOP[1]の反転入力端子と、に電気的に接続されている。オペアンプOP[1]の非反転入力端子は、配線VdLに電気的に接続され、オペアンプOP[1]の出力端子は、抵抗RE[1]の第2端子と、配線NIL[1]と、に電気的に接続されている。つまり、抵抗RE[1]とオペアンプOP[1]とによって、電流電圧変換回路が構成されている。
スイッチSW4[2]、抵抗RE[2]、及びオペアンプOP[2]については、スイッチSW4[1]、抵抗RE[1]、及びオペアンプOP[1]と同様の電気的な接続の構成となっている。そのため、抵抗RE[2]とオペアンプOP[2]についても、電流電圧変換回路が構成されている。
配線VdLは、定電圧を供給する配線として機能する。特に、当該定電圧は、上述した電流電圧変換回路の参照電位として入力される。
抵抗RE[1]とオペアンプOP[1]とによって構成されている電流電圧変換回路は、メモリセルアレイCAの1列目のメモリセルAMと、電流源回路CS1[1]と、電流源回路CS2[1]と、トランジスタTr32[1]と、によって生成される電流I5を電圧に変換する機能を有する。また、抵抗RE[2]とオペアンプOP[2]とによって構成されている電流電圧変換回路は、メモリセルアレイCAの2列目のメモリセルAMと、電流源回路CS1[2]と、電流源回路CS2[2]と、トランジスタTr32[2]と、によって生成される電流I5を電圧に変換する機能を有する。
ここで、図37のメモリセルアレイCAを、メモリセルAMがn行1列のマトリクス状に配置された構成として、回路シミュレータを用いて、演算回路MAC1Aにおける、第1データと第2データとの積和演算を行った。
なお、メモリセルAM、メモリセルAMrefの回路構成は、図13に示すメモリセルAM、メモリセルAMrefと同様とする。また、トランジスタTr12と、トランジスタTr31乃至トランジスタTr34と、をSiトランジスタとして想定し、L長を8μmとし、W長を0.32μmとした。また、トランジスタTr11をOSトランジスタと想定し、L長を0.35μmとし、W長を0.35μmとした。
回路シミュレータに入力した演算回路MAC1AのメモリセルアレイCAに含まれているメモリセルAMをメモリセルAM[1,1]乃至メモリセルAM[25,1]とし、第2データを入力する配線CLを配線CL[1]乃至配線CL[25]とした(つまり、n=25とした)。メモリセルAM[1,1]乃至メモリセルAM[25,1]のそれぞれには、第1データ(重み係数)として“-1”に応じた電位、又は“+1”に応じた電位を保持し、配線CL[1]乃至配線CL[25]に第2データ(ニューロンの信号の値)として“-1”、“0”、又は“+1”に応じた電位を入力した。
図38Aは、回路シミュレータに入力した演算回路MAC1Aによって計算された、複数の条件での積和演算の計算値を示すグラフである。本計算では、25μsから44μsまでの期間において、配線CL[1]乃至配線CL[25]に第2データ(ニューロンの信号の値)として“+1”を入力し、また、44μsから62μsまでの期間において、配線CL[1]乃至配線CL[25]に第2データ(ニューロンの信号の値)として“0”を入力し、また、62μsから80μsまでの期間において、配線CL[1]乃至配線CL[25]に第2データ(ニューロンの信号の値)として“-1”を入力している。また、図38Aのグラフの実線は、メモリセルAM[1,1]乃至メモリセルAM[25,1]のそれぞれに第1データ(重み係数)として“+1”を保持した条件での計算結果であり、図38Aのグラフの破線は、メモリセルAM[1,1]乃至メモリセルAM[25,1]のそれぞれに第1データ(重み係数)として“-1”を保持した条件での計算結果である。
図38Aのグラフに示す実線のとおり、25個の第1データ(重み係数)の“+1”と、25個の第2データ(ニューロンの信号の値)の“+1”と、の積和の結果が25に近い値となった。同様に、25個の第1データ(重み係数)の“+1”と、25個の第2データ(ニューロンの信号の値)の“0”と、の積和の結果がほぼ0となり、また、25個の第1データ(重み係数)の“+1”と、25個の第2データ(ニューロンの信号の値)の“-1”と、の積和の結果がほぼ-25となった。
また、図38Aのグラフに示す破線のとおり、25個の第1データ(重み係数)の“-1”と、25個の第2データ(ニューロンの信号の値)の“+1”と、の積和の結果が-25に近い値となった。同様に、25個の第1データ(重み係数)の“-1”と、25個の第2データ(ニューロンの信号の値)の“0”と、の積和の結果がほぼ0となり、また、25個の第1データ(重み係数)の“-1”と、25個の第2データ(ニューロンの信号の値)の“-1”と、の積和の結果がほぼ25となった。
上記の結果より、演算回路MAC1Aによる積和演算がほぼ正確に実現できているといえる。
図38Bは、演算回路MAC1AのメモリセルアレイCAの行数のnを1、2、4、9、16、25として、それぞれの場合における積和演算の計算値を示したグラフである。条件CND1は、全ての第1データ(重み係数)を“+1”とし、全ての第2データ(ニューロンの信号の値)を“+1”とした場合の計算値の結果を示し、条件CND2は、全ての第1データ(重み係数)を“0”とし、全ての第2データ(ニューロンの信号の値)を“0”とした場合の計算値の結果を示し、条件CND3は、全ての第1データ(重み係数)を“-1”とし、全ての第2データ(ニューロンの信号の値)を“+1”とした場合の計算値の結果を示している。
上記の結果より、演算回路MAC1Aによる積和演算が行数に比例していることがいえる。
図39A及び図39Bは、演算回路MAC1Aに含まれているトランジスタTr12及びトランジスタTr31乃至トランジスタTr34に対して、製造プロセスにおける特性ばらつきを与えて、積の値がどの程度ばらついたかを示すヒストグラムである。具体的には、演算回路MAC1AのメモリセルアレイCAのメモリセルAMを1行1列のマトリクスとして配置し(つまりn=1とし)、メモリセルAMに含まれているトランジスタTr12及びトランジスタTr31乃至トランジスタTr34に特性ばらつきを与えて、それぞれの特性ばらつきに対して、第1データ(重み係数)と第2データ(ニューロンの信号の値)の積を算出し、当該積の値のばらつきを図39A及び図39Bにまとめている。
図39Aは、第1データ(重み係数)を“-1”とし、第2データ(ニューロンの信号の値)を“+1”とした積のばらつきの度合いと、第1データ(重み係数)を“+1”とし、第2データ(ニューロンの信号の値)を“-1”とした積のばらつきの度合いと、を示したヒストグラムである。また、図39Bは、第1データ(重み係数)を“+1”とし、第2データ(ニューロンの信号の値)を“+1”とした積のばらつきの度合いと、第1データ(重み係数)を“-1”とし、第2データ(ニューロンの信号の値)を“-1”とした積のばらつきの度合いと、を示したヒストグラムである。
標準偏差をσとしたとき、図39A及び図39Bのそれぞれに示すヒストグラムにおける3σは、0.1未満となった。つまり、演算回路MAC1Aを用いることで、トランジスタTr11に対して製造プロセスにおける特性ばらつきが発生しても、±1×±1の乗算の結果に表れるばらつきは、十分に許容範囲であるということがいえる。
次に、プログラム言語(Python)を用いてニューラルネットワークの演算を全て計算機によって実行した場合と、図37に示す演算回路MAC1Aを回路シミュレータによって構成して、シミュレーション上で演算回路MAC1Aを動作させてニューラルネットワークの演算を行った場合と、のそれぞれの推論精度を比較した結果について説明する。
本演算に用いるニューラルネットワークは、図36に示す階層型のニューラルネットワークのモデルとして、入力層は784個のニューロンを有し、中間層は100個のニューロンを有し、出力層は10個のニューロンを有するものとした。また、入力層と中間層との間の重み係数とニューロンの出力信号との積和演算結果に施す活性化関数をシグモイド関数と、中間層と出力層とニューロンの出力信号との積和演算結果に施す活性化関数をソフトマックス関数とした。
また、当該ニューラルネットワークの学習には、MNISTのデータセットのうち60,000個を用いた。また、テストとして、ニューラルネットワークの推論には、10,000個を用いた。
なお、重み係数については、あらかじめ、当該ニューラルネットワークを計算機上でプログラム言語(Python)を用いて実装して、上述したMNISTのデータセット60,000個を用いた学習によって、取得した。
プログラム言語を用いて上述したニューラルネットワークの演算を全て計算機によって実行した場合、推論精度は96.52%であった。また、シミュレーション上で演算回路MAC1Aを動作させて上述したニューラルネットワークの演算を行った場合における推論精度は、96.25%であり、プログラム言語を用いたニューラルネットワークの演算での推論精度とほぼ同等の結果となった。
また、ニューラルネットワークの出力の結果を図40Aに示す。図40Aの左側のグラフは、回路シミュレータによって構成されたニューラルネットワークの演算が行われた結果であり、図40Aの右側のグラフは、プログラム言語(Python)を用いて構成したニューラルネットワークの演算が行われた結果である。図40Aには、テスト用データ10,000個から一例として100個の手書き文字(“0”乃至“9”の手書き文字がそれぞれ10個)を各ニューラルネットワークの入力画像として与えたときの、出力層の各ニューロンの出力OUT[0]乃至OUT[9]を表している。それぞれのグラフの横軸は、“0”乃至“9”の手書き文字の入力を示しており、グラフの縦軸は、出力層のニューロンから出力された値(なお、それぞれのグラフの縦軸の範囲を-20以上20以下としている)を示している。
図40Aから、回路シミュレータによって構成されたニューラルネットワークを用いた、“0”乃至“9”の手書き文字の識別は、精度良く行われていることが分かる。また、回路シミュレータによって構成されたニューラルネットワークによる演算結果は、プログラム言語(Python)を用いて構成したニューラルネットワークの場合と、ほぼ同様の結果となることが分かった。
また、テスト用データ10,000個(“0”乃至“9”の手書き文字がそれぞれ1000個)を、回路シミュレータによって構成されたニューラルネットワーク、及びプログラム言語(Python)を用いて構成したニューラルネットワークのそれぞれに入力したときの、それぞれの出力層のニューロンの出力OUT[0]乃至OUT[9]の値の相関を図40Bに示す。図40Bのそれぞれのグラフにおいて、横軸は、プログラム言語(Python)を用いて構成したニューラルネットワークの出力層のニューロンから出力された値であって、縦軸は、回路シミュレータによって構成されたニューラルネットワークの出力層のニューロンから出力された値となっている。
図40Bに示すグラフのそれぞれの相関係数は、次の表のとおりである。表より、OUT[0]乃至OUT[9]のそれぞれの相関係数は、0.99以上となっている。
図41には、上記の回路シミュレータによって構成されたニューラルネットワークにおける、出力層のニューロンの出力OUT[0]乃至OUT[9]の出力波形の一例を示している。入力信号に対する出力信号の遅延は40ns程度であり、動作周波数は25MHz程度が期待できる。また、消費電力は15.6mWである。これらより、演算効率を見積もると、3.2TOPS/Wが得られる。