JP7460491B2 - 液圧式打撃装置 - Google Patents
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Description
空打防止機構は、空打状態ではロッドが正規の打撃位置を越えて前進しているので、ピストンが正規の打撃位置よりも所定距離前進すると液圧式打撃装置の作動を強制的に停止するというものである。
さらに、この液圧式打撃装置では、第二制御弁連通ポート105を、第二制御弁300'(a)ないし300''(b)を介して、高圧通路350とストローク調整通路351とに選択的に連通可能に接続するというスプール換装型の機構となっている。なお、図4に示す技術の基本的な構成は、前室常時高圧接続-後室高低圧切換式の液圧式打撃装置であり、その作動機序についての説明は省略する。
すなわち、図4での(a)に示すように、第二制御弁300'にストローク調整スプール320を装着した場合、この状態でプランジャ305を操作すると、第二制御弁連通ポート105~第二制御弁連通路115~シリンダ連通ポート307~テーパ部322~ストローク調整ポート308~ストローク調整通路351からなる経路(以下、「ストローク調整経路」という)の通過流量をゼロから上限値まで無段階で調整可能である。
ストローク調整モードにおいて、例えば地山掘削作業を行う際に、破砕対象物が硬岩の場合は、ロングストロークに設定して一打撃あたりの打撃力を増大させ、破砕対象物が軟岩の場合や内部に破砕帯があり不安定な場合は、ショートストロークに設定して一打撃あたりの打撃力を減少させて作業を行う。
したがって、ピストン後室102は、後室ポート104~後室通路113~後室ポート222~中空通路228~前室通路223を経て高圧回路110に接続され、これにより、ピストン120は前方へと付勢されて前死点で停止する。このように、第二制御弁300''は空打防止機構として機能する。以下、この作動状態を「空打防止モード」という。
これに対し、スプール換装型の油圧ブレーカでは、ストローク調整モードと空打防止モードとを切替えるためには、上述したように、第二制御弁に装着するスプールを、ストローク調整スプールおよび空打防止スプールのいずれか一方に交換する必要がある。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、スプールの交換作業を不要にするとともに、ストローク調整モードと空打防止モードとを切替えて作動可能な液圧式打撃装置を提供することを課題とする。
すなわち、各モードの機能向上要素は、両モード間では相反する関係にあるものの、これを上手くバランスさせるために、追加した第一流量調整手段と第二流量調整手段の調整作業はモード切替を繰り返しながら行うところ、このような構成によれば、モード切替作業が容易なため、調整作業を支障なく行うことが可能となる。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。なお、図4に比較例として示したスプール換装型の液圧式打撃装置との対比を明瞭とするために、同一または対応する構成には同一符号を付して説明する。
シリンダ100の後部にはバックヘッド400が装着されている。バックヘッド400には高圧のバックヘッドガスGが封入されている。また、シリンダ100の前部にはフロントヘッド500が装着されている。フロントヘッド500の内部にはロッド501が摺嵌されている。
このピストン120が、シリンダ100の内部に摺嵌されることで、シリンダ100内の前後に、ピストン前室101とピストン後室102とがそれぞれ画成されている。ピストン前室101には、前室ポート103が設けられ、前室ポート103は、前室通路112を介して高圧回路110に常時接続されている。
中径部123の外径は、小径部124の外径よりも大きく設定されている。これにより、ピストン前室101およびピストン後室102におけるピストン120の受圧面積、すなわち、前側大径部121と中径部123の径差、および後側大径部122と小径部124の径差はピストン後室102側の方が大きくなっている。
シリンダ100には、前室ポート103と後室ポート104との間に前方から後方へ向けて順に、第二制御弁連通ポート105、第一制御弁連通ポート106、および低圧ポート107が、軸方向に互いに離隔した位置に設けられている。低圧ポート107は低圧通路116を介して低圧回路111に接続されている。
バルブ主室214には、前方から後方へ向けて順に、前側低圧ポート218およびバルブ制御ポート220が設けられ、バルブ後室215には後側低圧ポート221および後室ポート222が設けられている。
バルブ201は、中径部202と小径部204の受圧面積差により常時後方へと付勢されており、弁制御ポート220に高圧油が供給されると、大径部203の後側段付面209の受圧面積が加算されて前方へと移動するようになっている。
一方、バルブ201が前端位置、すなわち、前端面206が弁室前端面216に当接した場合には、後室ポート222は、後側低圧ポート221との連通が遮断されるとともに、後端面207と弁室後端面217との間、および中空通路228を介して高圧接続された弁室212と連通するので、ピストン後室102が高圧接続されるようになっている。
スプール室302aには、共通スプール310が、軸方向にスライド移動可能に摺嵌されている。共通スプール310は、図2に軸線に沿った縦断面図を示すように、中実の円筒体であり、軸方向の上方から下方へ向けて順に、小径部311、上側大径部312、テーパ部313および下側大径部314を有する。
ここで、この共通スプール310は、軸方向での収嵌位置の変更に応じ、小径部311が、本発明に係る空打防止部を構成し、上側大径部312、テーパ部313および下側大径部314が、本発明に係るストローク調整部315を構成する。
シリンダ連通ポート307は、第二制御弁連通路115を介して第二制御弁連通ポート105と連通している。また、ストローク調整ポート308は、ストローク調整通路351およびバルブ制御通路226を介してバルブ制御ポート220と連通している。
したがって、ピストン120を後退工程から前進工程へと切換えるタイミングを変更して打撃サイクルをロングストロークからショートストロークへと変化させることが可能となる。このように、本実施形態では、共通スプール310の軸方向での収嵌位置を上方の位置に移動させると、第二制御弁300は周知のストローク調整機構として機能する。
空打防止モードにおいて、第二制御弁300は、第二制御弁連通ポート105が第二制御弁連通路115~シリンダ連通ポート307~小径部311~高圧ポート306~高圧通路350からなる空打防止経路を介して常時高圧回路110に接続される。ピストン120が打撃位置を越えてさらに所定距離前進したとき、円環溝125によって第二制御弁連通ポート105と第一制御弁連通ポート106とが連通する。
したがって、ピストン後室102は、後室ポート104~後室通路113~後室ポート222~中空通路228~前室通路223を経て高圧回路110に接続され、これにより、ピストン120は前方へと付勢されて前死点で停止する。このように、共通スプール310の軸方向での収嵌位置を下方の位置へ移動させると、第二制御弁300は、「空打防止モード」として機能する。
ここで、液圧式打撃装置を油圧ブレーカに適用する場合において、地山掘削作業ではストローク調整モードを選択し、小割作業では空打防止モードを選択することが好ましいことは前述した通りである。これに対し、比較例として図4に示した、スプール換装型の液圧式打撃装置では、両モードの切替え作業は、第二制御弁のスプールをそれぞれのモードに対応した別個のスプールに交換する必要があった。
これに対し、第一実施形態の液圧式打撃装置によれば、第二制御弁300には、軸方向での収嵌位置の変更に応じた空打防止部およびストローク調整部を備える共通スプール310が装着されているので、ストローク調整モードと空打防止モードとをスプール交換作業なしで切替えることができる。そのため、モード切替の作業性が大幅に改善されるとともに、油圧回路内への異物の混入のおそれもない。
この状態で高圧回路110にポンプPから圧油が供給され、バルブ201が後端位置への復帰を完了する前にピストン後室102が高圧接続されると、これにより、ピストン後室102が高圧接続される。そのため、ピストン120は前死点で停止したままとなり油圧ブレーカは始動しない。
しかし、バルブ制御ポート220~バルブ制御通路226、114~第一制御弁連通ポート106からなる閉回路内に残圧があり、加えて、作動油の温度が低く流動性が低い場合には、バルブ201の動きが悪くなり、油圧ブレーカの始動が不安定となる場合がある(以下、「残圧による始動不安定」という)。
すなわち、オペレータが意図せずに、ストローク調整モードから空打防止モードへと作動モードが切替わったことになるので、作業性が悪化する(以下、「還流による作業性悪化」という)。
しかし、このときのピストン120には、ピストン前室101とピストン後室102との受圧面積差によって発生する圧油の付勢力と、バックヘッド400のガス圧Gによる付勢力とが合算された推力Fが作用している。そのため、再始動時の大きな反力となっていた(以下、「空打防止からの再始動困難性」という)。
これに対し、本出願人は、これらの課題を解決する方策として、図3に示す、第二実施形態の液圧式打撃装置を提案している(特許文献2)。
(差異点1)
第二実施形態の液圧式打撃装置では、低圧ポート107の後方であって、ピストン120'が前死点で停止したときに、ピストン大径部122によってピストン後室102との遮断が維持される位置に追加低圧ポート108を設け、低圧ポートの通過流量を調整する第一流量調整手段として低圧通路116に絞り130を設け、追加低圧ポートの通過流量を調整する第二流量調整手段として、追加低圧通路117に絞り131を設けている。
第二実施形態の液圧式打撃装置では、ピストン120'が前死点で停止したときに、第一制御弁連通ポート106と低圧ポート107とをリーク流量で連通する第一連通経路として、ドレン溝140をピストン大径部122の外周面に設けている(ピストン大径部122の前縁には前縁部122aを形成している)。
第二実施形態の液圧式打撃装置では、ピストン120'が前死点で停止したときに、ピストン後室102と追加低圧ポート108とをリーク流量で連通する第二連通経路として、ドレンスリット141をシリンダ100'の内周面に設けている。
なお、ドレン溝140を設けることにより、ストローク調整モードにおける残圧による始動不安定は改善される一方で、空打防止モードにおいては、空打防止機構が作動する局面で空打防止経路の圧油がドレン溝140を介して低圧ポート107へと流出し、バルブ201が作動するための充分な油量がバルブ制御ポート220へと送られず、その結果として、空打防止機構の作動が不安定になるという新たな課題も浮上する(以下、「空打防止機構の作動不安定」という)。
そして、これら差異点による作動機序は、それぞれトレードオフの関係にあり、特に、異なる作業モード間では全く相反する場合がある。そのため、絞り130、131の調整は非常に繊細なものとなる。なお、第二実施形態の液圧式打撃装置における追加ドレン手段および絞り130、131については、特許文献2にて詳細に述べているのでここでは記載を省略する。
すなわち、絞り130、131の通過流量を調整するにあたっては、液圧式打撃装置をストローク調整モードと空打防止モードとに切替えながら、どちらのモードにおいても最適に作動するようにバランスさせる必要がある。このモード切替作業は、何度も繰り返す場合もあるため、モード切替作業において、スプールの交換が不要である、本発明の共通スプール310は、絞り130、131の調整にも有効であるといえる。
なお、本発明に係る液圧式打撃装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
例えば、プランジャ305と共通スプール310とを一体に形成してもよく、この場合、スプール自体は長大になるものの、スプリング316とその装着のための座繰り314aを省略することができるので、構成の簡素化が可能となる。
また、絞り130、131は、必ずしも両方を備える必要は無く、ドレン溝140およびドレンスリット141のリーク量の設定状態によってはどちらか一方を備えていればよい。
さらに、本発明の各実施形態は、ソリッドなシリンダ100を例に説明をしたが、これに限らず、ピストン120およびシリンダ100にライナを介装する、ライナ式の液圧式打撃位置であってもよい。
101 ピストン前室
102 ピストン後室
103 前室ポート
104 後室ポート
105 第二制御弁連通ポート
106 第一制御弁連通ポート
107 低圧ポート
108 追加低圧ポート
110 高圧回路
111 低圧回路
112 前室通路
113 後室通路
114 バルブ制御通路
115 第二制御弁連通路
116 低圧通路
117 追加低圧通路
118 低圧ポート
120、120' ピストン
121 前側大径部
122 後側大径部
122a 前縁部
123 中径部
124 小径部
125 円環溝
130 絞り(第一流量調整手段)
131 絞り(第二流量調整手段)
140 ドレン溝(第一連通手段)
141 ドレンスリット(第二連通手段)
200 第一制御弁
201 バルブ
202 中径部
203 大径部
204 小径部
205 排油溝
206 前端面
207 後端面
209 段付面
212 バルブ室
213 バルブ前室
214 バルブ主室
215 バルブ後室
216 バルブ室前端面
217 バルブ室後端面
218 前側低圧ポート
220 バルブ制御ポート
221 後側低圧ポート
222 後室ポート
223 前室通路
224 前側低圧通路
226 バルブ制御通路
227 後側低圧通路
228 中空通路
300、300'、300'' 第二制御弁
301 ハウジング
302 スリーブ
302a スプール室
303 プラグ
304 ロックナット
305 プランジャ
306 高圧ポート
307 シリンダ連通ポート
308 ストローク調整ポート
310 共通スプール
311 小径部(空打防止部)
312 上側大径部
313 テーパ部
314 下側大径部
314a 座繰り
315 ストローク調整部
316 スプリング
320 ストローク調整スプール
321 上側大径部
322 テーパ部
323 下側大径部
330 空打防止スプール
331 小径部
332 大径部
350 高圧通路
351 ストローク調整通路
400 バックヘッド
500 フロントヘッド
501 ロッド
F 推力
G ガス
P ポンプ
T タンク
Claims (3)
- シリンダと、該シリンダに前後進可能に摺嵌されて二つの大径部および該二つの大径部の間の位置に設けられた円環溝を有するピストンと、該ピストンの前後進動作を制御する第一制御弁と、を備え、前記シリンダには、前記ピストンの前記二つの大径部によってピストン前室およびピストン後室が当該シリンダの軸方向の前後に画成されている液圧式打撃装置であって、
前記ピストンのピストンストロークをロングストロークとショートストロークとの間で調整するストローク調整機構と、
前記ピストンが打撃位置を越えて所定距離前進すると前記ピストンの作動を停止させる空打防止機構と、
前記ストローク調整機構および前記空打防止機構のいずれか一方のモードを選択する第二制御弁と、を備え、
前記第二制御弁には、軸方向での自身の収嵌位置の変更に応じて、前記空打防止機構を選択する油路を連通させるように機能する空打防止部、および、前記ストローク調整機構を選択する油路を連通させるように機能するストローク調整部を有する共通スプールが装着されていることを特徴とする液圧式打撃装置。 - 当該液圧式打撃装置は、前記ピストン前室が常時高圧接続されるとともに、前記ピストン後室が前記第一制御弁の作動に応じて高圧接続と低圧接続とに切り替えられる前室常時高圧接続-後室高低圧切換式の装置であり、
前記シリンダには、前記ピストン前室と前記ピストン後室との間に当該シリンダの軸方向の前方から後方に向けて、第二制御弁連通ポート、第一制御弁連通ポートおよび低圧ポートがこの順に設けられ、
前記円環溝は、前記ピストンが前進したときには、打撃位置の手前で前記第一制御弁連通ポートと前記低圧ポートとを連通させるとともに、前記ピストンが打撃位置を越えて更に所定距離前進したときには、前記第一制御弁連通ポートと前記第二制御弁連通ポートとを連通させるようになっている請求項1に記載の液圧式打撃装置。 - 前記低圧ポートよりも前記シリンダの軸方向後方であって、前記ピストンが前死点で停止したときに、前記ピストンの前記大径部によって前記ピストン後室との遮断が維持される位置に設けられた追加低圧ポートと、前記低圧ポートの通過流量を調整可能に設けられた第一流量調整手段と、前記追加低圧ポートの通過流量を調整可能に設けられた第二流量調整手段と、を備え、
前記ピストンが前死点で停止したときに前記第一制御弁連通ポートと前記低圧ポートとをリーク流量で連通する第一連通経路が、前記ピストンの後側の大径部の外周面に設けられ、
前記ピストンが前死点で停止したときに前記ピストン後室と前記追加低圧ポートとをリーク流量で連通する第二連通経路が、少なくとも前記ピストンの後側の大径部の外周面と前記シリンダ内周面とのいずれかに設けられている請求項2に記載の液圧式打撃装置。
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