JP7458309B2 - レーザイオン源、円形加速器および粒子線治療システム - Google Patents
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Description
本発明は、レーザイオン源、円形加速器および粒子線治療システムに関する。
レーザ光をターゲットに照射し、発生したプラズマを利用してイオンビームを生成するイオン源を利用した円形加速器が、非特許文献1に記載されている。この文献には、「ターゲット表面は垂直な磁力線に45°の位置に配置した。このイオン源はサイクロトロンの磁極間に配置されている」という記載がある。
V.B.Kutner et al. The laser ion source of multiply charged ions for the U-200 LNR JINR cyclotron, Review of Scientific Instruments 63,2835(1992)
非特許文献1には、レーザイオン源を有する円形加速器が記載されている。レーザイオン源は、レーザパワーを増加させることによって、他の方式のイオン源では難しい、例えば炭素6価イオンなど、高い価数のイオンの生成が容易に行える。
レーザイオン源では、生成するイオン種にあったターゲットへレーザ光を照射することにより、生成されたプラズマからイオンビームを引き出す。レーザ光は、その特性からパルス状に照射される。したがって、生成されるイオンビームのパルス幅は、レーザ光のパルス幅以上にすることが難しく、例えば数マイクロ秒程度であった。
このため、レーザイオン源を有する円形加速器を、長いパルス幅が必要となるシステム、例えば粒子線治療システムなどに適用するのは難しい。一方、線形加速器では、レーザ光の照射されるターゲットと、生成されたプラズマからイオンビームを引き出す引き出し電極との間の距離を長くすることにより、プラズマの膨張時間を利用してパルス幅を長くすることができる。
非特許文献1では、装置全体を小型化できる。しかし、非特許文献1では、周回軌道中心の磁極間ギャップにターゲットが設置され、ターゲットに近い場所に引き出し電極が設置されるため、ターゲットと引き出し電極間の距離が短くなる。したがって、非特許文献1では、引き出されるイオンビームのパルス幅を長くすることができない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、比較的長いパルス幅のイオンビームを得ることができるようにしたレーザイオン源、円形加速器および粒子線治療システムを提供することにある。
上記課題を解決すべく、本発明に従うレーザイオン源は、レーザ光を出力するレーザ発振器と、レーザ発振器からのレーザ光が照射されることによりプラズマを生成させるターゲットと、生成されたプラズマを、イオンビームを引き出す引き出し電極へ向けて輸送させるプラズマ輸送部とを備え、プラズマ輸送部の少なくとも一部は、イオンビームの周回軌道を発生させる磁場を形成する磁極内に設けられる。
本発明によれば、生成されたプラズマを磁極内の残留磁場により収束させることができるため、比較的長いパルス幅のイオンビームを効率よく得ることができる。
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、円形加速器の主磁極の内部にプラズマ輸送部の少なくとも一部を配置することにより、主磁極の残留磁場を用いてプラズマを収束させる。
本実施形態に係るレーザイオン源は、例えば、主磁極を形成する電磁石のヨーク内に、ターゲットと、引き出し電極と、ターゲットから引き出し電極へプラズマを輸送するプラズマ輸送部とをヨークの厚み方向に沿って配置する。これにより、本実施形態のレーザイオン源は、長パルスかつ大電流のイオンビームを得ることができる。
通常、生成されるプラズマは広範囲に広がり、広がったプラズマの一部の領域からしかイオンビームを引き出すことができないため、プラズマの利用効率は低い。そこで、ターゲットと引き出し電極との間にコイルを別途設け、そのコイルの発する磁場によりプラズマを収束させて、利用効率を上げることが考えられる。ターゲットと引き出し電極との間にコイルを有するレーザイオン源をもしも円形加速器の外部に取り付ける場合、長いパルス幅のイオンビームを得るためには、ターゲットから引き出し電極までのプラズマ輸送部が長くなり、装置全体が大型化する。
そこで、本実施形態では、特定構造のレーザイオン源を用いる。このレーザイオン源は、レーザ光をターゲットに照射してプラズマを生成するレーザイオン源であって、プラズマを発生させるターゲットと、プラズマが輸送されるプラズマ輸送部と、引出し電極と、を有し、プラズマ輸送部の少なくとも一部が、円形加速器の主磁極内に形成される。
本実施形態によれば、レーザイオン源を小型化し、比較的長いパルス幅で、かつ大電流のイオンビームを得ることができる。
図1~図5を用いて第1実施例を説明する。以下の実施例では、レーザイオン源20、レーザイオン源を有する円形加速器2、円形加速器2を含む粒子線治療システム1について説明する。しかし、本実施例のレーザイオン源20および円形加速器2は、例えば、実験設備、動植物の品種改良システムなどのように、粒子線治療システム1以外の粒子加速システムにも適用可能である。
図1を用いて、粒子線治療システム1の全体構成について説明する。図1に示すように、粒子線治療システム1は、例えば、サイクロトロン型の円形加速器2と、ビーム輸送系3と、照射装置4と、制御装置5を含む。
レーザイオン源20で発生させたイオンは、加速器2により加速されてイオンビーム12となる。加速されたイオンビーム12は加速器2から出射され、「ビーム輸送装置」としてのビーム輸送系3により照射装置4まで輸送される。
ビーム輸送系3は、複数の偏向電磁石30により、イオンビーム12を照射装置4へ輸送する。照射装置4へ輸送されたイオンビーム12は、患部の形状に合致するように整形され、照射ノズル40から治療台6上の患者60の標的に向けて所定量照射される。
加速器2、ビーム輸送系3、照射装置4、治療台6などの粒子線治療システム1内の各装置の動作は、制御装置5によって制御される。
制御装置5は、中央演算装置(CPU)50およびCPU50に接続されたメモリ51を有する。制御装置5は、図示せぬデータベースに記憶された治療計画に基づいて、粒子線治療システム1の各装置を動かすための制御プログラムを実行し、粒子線治療システム1を制御する。
実行される動作の制御処理は、1つのコンピュータプログラムであってもよいし、制御処理ごとにそれぞれ別のコンピュータプログラムであってもよいし、あるいは、複数の制御処理が一つのコンピュータプログラムで実行され、他の複数の制御処理がそれぞれ別々のコンピュータプログラムで実行されてもよい。
コンピュータプログラムの一部またはすべては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていてもよい。さらには、各種コンピュータプログラムは、図示せぬプログラム配信サーバまたは記憶媒体から制御装置5にインストールされてもよい。
粒子線治療システム1に含まれる各装置は、各々が独立した装置として構成されて、有線ネットワークまたは無線ネットワークで接続されてもよいし、2つ以上の装置が一体化されてもよい。
図2~図5を用いて、加速器2の構成例を説明する。図2は、本実施例の加速器2の側面の断面図であり、図3、図4、図5は加速器2の横断面図である。横断面図については、磁極の形状によって異なる高周波加速電極25を用いるため、一例として異なる形状の磁極を有する場合を例示する。なお、高周波加速電極25の形状は、図示された以外の形状に限らず、周回軌道が得られ、イオンビームを加速できる形状であればよい。
図2および図3に示すように、加速器2は、例えば、レーザイオン源20、主磁極21、円環状コイル22、真空容器23、高周波加速電極25、インフレクタ26を含んで構成される。
レーザイオン源20は、例えば、レーザ発振器201、ミラー202,203、集光レンズ204、ターゲット205、引き出し電極206を含んで構成される。レーザイオン源20は、ターゲット205で発生したプラズマを引き出し電極206へ輸送するプラズマ輸送部207を持つ。
レーザ発振器201は、所定波長のレーザ光LBを出力する。レーザ光LBは、ミラー202および203により反射されて集光レンズ204に輸送される。レーザ光LBは、集光レンズにより収束されて、ターゲット205へ照射される。
ターゲット205の表面では、レーザアブレーションプラズマが生成される。このプラズマは、初速度をもってあらゆる方向へ拡散する。
拡散したプラズマは、主磁極である磁極21内の残留磁場B1によって収束され、プラズマ輸送部207内を引き出し電極206へ向けて輸送される。ここでの主磁極21は、ヨークにコイルが巻回された電磁石である。2つの円盤状の主磁極21が空隙を挟んで対向して配置されている。プラズマ輸送部207は、主磁極21のヨークに形成された取付穴210内に設けられており、その内部は真空である。取付穴210の一端側は、レーザ光の入射する入射口となっている。取付穴210の他端側には、引き出し電極206が設けられている。
本実施例では、残留磁場B1を利用することによって、別途コイルを設置することなくプラズマを収束させて引き出し電極206へ導くことができる。したがって、本実施例のレーザイオン源20は、部品点数を削減でき、製造コストを低減できる。
引き出し電極206には高電位が印加されている。引き出し電極206の電界により、引き出し電極206へ輸送されたプラズマからイオンビーム12が引き出される。イオンビーム12は、磁極21間に設けられたインフレクタ26によって、主磁極21の中心軸に平行な方向(主磁極21の厚み方向)から主磁極21の中心軸と直交する平面に平行な方向(主磁極21の広がり方向)へ進行方向が変換される。
さらに、イオンビーム12は、主磁極21および磁極24による主磁場B0によって螺旋運動し、周回ごとに高周波加速電極25によってエネルギが増加する。これにより、イオンビーム12は、所定のエネルギまで加速する。所定のエネルギまで加速されたイオンビーム12は、図示せぬ取り出し機構によって、主磁極21の外へ取り出される。
主磁極21は、中心部分に間隙を有するよう対向して設置された一対の磁性体であり、例えば鉄などから形成される。図3に示すように、主磁極21には、イオンビーム12の周回軌道を発生させるように向かい合う磁極24aが設置され、イオンビームの周回に必要な磁場をその磁極間に発生させる。図3~図5では、イオンビーム12の周回軌道の異なる例を幾つか説明するために、高周波加速電極25を高周波加速電極25a、磁極24を磁極24aと呼ぶなどのように、符号にアルファベット小文字を添えて区別する。
磁極24の形状を変えることによって、磁極ギャップ方向のイオンビーム12の収束力を生成可能である。磁極24の形状に応じて高周波加速電極25の形状も、例えば25a、25b、25cのように変化させる。
図3に示す円形加速器2aの高周波加速電極25aは、平坦な磁極で形成されており、平坦、あるいは半径方向に一様に傾斜する磁場を用いた場合の例である。磁極24aの磁極中心とイオンビーム12の軌道中心とは一致する。
図4は、円形加速器2bの偏心軌道の場合の横断面を示す。図4に示す高周波加速電極25bは、半径方向に一様に傾斜する磁場に加えて、イオンビーム12bの軌道中心を磁極中心から偏心させた場合の例である。
図5は、円形加速器2cの磁極24cに凹凸を設けた場合の横断面を示す。この例では、高周波加速電極25cは、凸磁極24cによって主磁場B0を発生させる。さらに、この例では、凸磁極24cのエッジにより形成された傾斜磁場によって、周回するイオンビームの集束力を増加させ、安定周回させる。
磁極24cの形状は、図4に示す例に限定されない。主磁場B0が発生する磁極ギャップ間の対向する上下面は対称形状である。なお、図示した高周波加速電極25は、高周波電源(不図示)により外部から高周波を印加することができる。高周波加速電極25の形状については、周回加速が可能であればよく、形状は限定されない。
図2に示す筒状の真空容器23は、対向する各主磁極21によって気密に挟まれており、全体としてひとつの真空容器を形成すると共に、磁気回路を構成する。真空容器23は、非磁性体材料から形成される。磁極24を真空容器23の一部(天井面と底面)として利用する例に代えて、磁極ギャップ内に独立した真空容器を別途設けてもよい。
円環状コイル22は、真空容器23の外側(大気側)に設置されており、上下一対の主磁極21間に主磁場B0を発生させる。円環状コイル22は、常電導材料から形成されたコイルでもよいし、あるいは超電導材料から形成されたコイルでもよい。円環状コイル22は、真空容器23内に設置してもよい。
レーザイオン源20は、上述の通り、例えばレーザ発振器201、ミラー202,203、集光レンズ204、ターゲット205、引き出し電極206、プラズマ輸送部207を備える。ターゲット205および引き出し電極206は、真空中に配置される。
レーザ発振器201は、例えば、Nb:YAGレーザ発振器、またはCO2レーザ発振器である。レーザの種類は問わない。レーザ発振器201は、例えばパルス幅や出力電力に基づいて選択される。
ターゲット205は、レーザイオン源20が必要とするイオンを含む材料から形成されている。例えば、炭素イオンが必要な場合、カーボン材がターゲット205として使用される。
プラズマ輸送部207は、高電位である。対向する一対の引き出し電極206は、プラズマ輸送部207の端部に設けられている。引き出し電極206のうち一方の電極は、プラズマ輸送部207と同じ高電位に設定される。引き出し電極206のうち他方の電極は、接地電位に設定される。高電位の電極と設置電位の電極との間に生成される電界により、プラズマPLからイオンビーム12が引き出される。
ターゲット205にレーザ光が照射されることにより生成されたレーザプラズマPLは、磁極21内の真空領域に生成され、プラズマ輸送部207を介して引き出し電極206へ輸送される。
本実施例では、プラズマ輸送部207を磁極21内に設置することによって、磁極21内に残存する磁場B1により、生成されたプラズマPLを収束させる。生成されたプラズマPLは、この残留磁場B1に巻き付くような形で収束され、引き出し電極部206へ到達する。このため、引き出し電極206により、プラズマPLからイオンビーム12を効率よく引き出すことが可能となる。
取付穴210の径寸法にもよるが、例えば、主磁場B0が4テスラの場合、残留磁場B1は、最大2テスラ程度である。引き出し電極206は、図示していないが絶縁支持部材により支持されている。引き出し電極206は、絶縁支持部材により真空中に保持されてもよい。あるいは、真空を維持するための真空封止部材を別途設けることにより、引き出し電極206を真空中に設置することもできる。
集光レンズ204およびミラー202,203は、真空中に設けられてもよいし、大気中に設けられてもよい。
ターゲット205を含むプラズマ輸送部207は、その全てが磁極21内にある必要はない。プラズマ輸送部207の一部が磁極21外にあっても、残留磁場B1でプラズマPLを収束させることができる。例えば、ターゲット205を磁極21の外に配置し、プラズマ輸送部207の一部を主磁極21内に設置してもよい。プラズマ輸送部207の少なくとも一部が主磁極21内にあればよい。
このように構成される本実施例によれば、レーザイオン源20を小型化、簡素化することができ、効率的にイオンビーム12を取り出すことができる。
本実施例の粒子線治療システム1は、対向する主磁極21、高周波加速電極25およびレーザイオン源20を備えた加速器2と、加速器2によって加速されたイオンビーム12を照射する照射装置4と、イオンビームを照射装置4まで輸送するビーム輸送系3と、イオンビームを照射する患者60を載置する治療台6と、を備えている。そして、本実施例のレーザイオン源20は、レーザ発振器201と、ミラー202,203と、集光レンズ204と、ターゲット205と、プラズマ輸送部207と、引き出し電極206を含んで構成されており、主磁極21内部にプラズマ輸送部207が配置される。したがって、本実施例では、主磁極21内の残留磁場B1によってプラズマPLを収束させることができ、効率よくイオンビームを引き出す。
すなわち、本実施例では、主磁極21内の残留磁場B1を利用してプラズマを収束させるため、別途プラズマ収束用のコイルを加速器2の外に設けたりする必要がなく、低コストに、プラズマ輸送部207内でプラズマPLを収束させることができる。
したがって、本実施例のレーザイオン源20は、プラズマPLの膨張を利用してイオンビーム12のパルス幅を長くすることができ、プラズマの利用効率を高くできる。さらに、本実施例のレーザイオン源20によれば、主磁極21の外部にプラズマ輸送部207が突出することがないため、小型で高性能の加速器2を得ることができる。そして、本実施例のレーザイオン源20を備える円形加速器2と、円形加速器2を備える粒子線治療システム1も、小型、低コスト、高性能といった効果を得ることができる。
図6を用いて第2実施例を説明する。本実施例を含む以下の各実施例では、第1実施例との相違を中心に述べる。図6は、レーザイオン源20dに補助磁極208,209を取り付けた場合の、レーザイオン源20の拡大横断面である。図6では、主磁極21内の磁場分布を調整するために、補助磁極208,209を設けている。
取付穴210の入射口のうち、ターゲット205に対応する領域には、「第1磁性体」としての第1補助磁極208が配置されている。「第2磁性体」としての第2補助磁極209は、 ターゲット205の両面のうちレーザ照射面の反対側に位置する背面側に配置されている。第1補助磁極208または第2補助磁極209の少なくともいずれか一方が配置されればよい。
補助磁極208,209を追加する理由を説明する。ターゲット205、引き出し電極206、プラズマ輸送部207を主磁極21内に設置した場合、プラズマPLの軌道を偏向させる磁場B2(偏向磁場B2とも呼ぶ)が発生する。特に、レーザイオン源20dを主磁極21の中心軸から外れた位置に設置するほど、偏向磁場B2は大きくなる。
例えば、図4に示す偏心した周回軌道を得る場合には、レーザイオン源20を磁極中心から変位させるため、プラズマPLに対する偏向磁場B2の影響が大きくなる。そこで、本実施例では、偏向磁場B2の低減と残留磁場B1の強度調整とのために、磁場分布補正用として、第1補助磁極208を追加する。第1補助磁極208は、レーザ光LBを主磁極21へ導入する入射口付近に配置する。第1補助磁極208の形状、位置、姿勢、厚さ寸法、材質などを調整することにより、偏向磁場B2の強度と残留磁場B1の強度とを調整することができる。
ターゲット205の裏面側にも第2補助磁極209を設置することにより、さらに、偏向磁場B2および残留磁場B1を低減することができる。これらの磁場の強さを低減する効果は磁場解析により確認できる。補助磁極208、209は磁性体である。補助磁極208,209の形状は、残留磁場の調整量などに基づいて決定すればよい。
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに、本実施例では、イオンビーム12の周回軌道の中心が主磁極21の磁極中心から変位しており、偏心した周回軌道となる場合でも、磁場B1,B2の影響を弱めることができ、小型、低コスト、かつ高性能のレーザイオン源20dを実現できる。
図7を用いて、第3実施例を説明する。図7は、引き出し電極206の位置をターゲット205の中心軸上からずらした位置に取り付けた場合のレーザイオン源20eの横断面である。
レーザイオン源20を主磁極21の中心軸から外れた位置に設置すると、プラズマPLの軌道を偏向させる残留磁場B2(偏向磁場B2)が発生する。この偏向磁場B2によってプラズマPLが偏向される。
そこで、本実施例では、主磁極21内の偏向磁場B2によって偏向されたプラズマPLからイオンビーム12を引き出す。本実施例のレーザイオン源20eは、偏向磁場B2によって偏向されたプラズマPLの偏向量に合わせて、引き出し電極206を設ける。すなわち、本実施例では、主磁極21の中心軸に平行なターゲット205の中心軸AXからずらして、引き出し電極206を設置する。換言すれば、本実施例のレーザイオン源20eは、偏向磁場B2により偏向されたプラズマPLに合わせて、引き出し電極206の位置を設定する。
このように構成される本実施例も第1実施例と同様の作用効果を奏する。さらに本実施例では、引き出し電極206の位置を偏向磁場B2により偏向されたプラズマPLに合わせてずらすことにより、効率よくイオンビーム12を引き出すことができる。
図8を用いて第4実施例を説明する。本実施例に係るレーザイオン源20fは、第2実施例で述べたレーザイオン源20dと第3実施例で述べたレーザイオン源20eを結合させたものである。
このように構成される本実施例も第1、第2、第3実施例と同様の作用効果を得ることができる。さらに本実施例では、偏向磁場B2により偏向されたプラズマPLの位置に応じて引き出し電極206の配置を設定する構成と、補助磁極208,209により磁場B1,B2を低減する構成とが結合するため、プラズマPLの位置を調整することができ、引き出し電極206の位置ずれ量ΔLを小さくできる。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、様々な変形例が含まれる。上記実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることもできる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成を追加・削除・置換することもできる。上述した実施形態に含まれる技術的特徴は、特許請求の範囲に明示された組み合わせに限らず、適宜組み合わせることができる。
1:粒子線治療システム、2:円形加速器、3:ビーム輸送系、4:照射装置、5:制御装置、6:治療台、20:レーザイオン源、21:主磁極、22:コイル、23:真空容器、24:磁極、25:高周波加速電極、26:インフレクタ、201:レーザ発振器、205:ターゲット、296:引き出し電極、207:プラズマ輸送部、208.209:補助電極
Claims (7)
- レーザイオン源であって、
レーザ光を出力するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器からのレーザ光が照射されることによりプラズマを生成させるターゲットと、
前記生成されたプラズマを、イオンビームを引き出す引き出し電極へ向けて輸送させるプラズマ輸送部と
を備え、
前記プラズマ輸送部の少なくとも一部は、前記イオンビームの周回軌道を発生させる磁場を形成する磁極内に設けられる
レーザイオン源。 - 請求項1に記載のレーザイオン源において、
前記磁極には前記プラズマ輸送部の設けられる取付穴が形成されており、前記取付穴の一端側は前記レーザ光の入射する入射口となっており、前記取付穴の他端側には前記引き出し電極が設けられており、
前記入射口のうち、前記ターゲットに対応する領域に第1磁性体を配置する
レーザイオン源。 - 請求項1に記載のレーザイオン源において、
前記ターゲットは前記レーザ光の照射されるレーザ照射面と、前記レーザ照射面の反対側に位置する背面とを有し、
前記背面側に第2磁性体を配置する
レーザイオン源。 - 請求項2に記載のレーザイオン源において、
前記引き出し電極は、前記磁極の中心軸から変位した位置で前記取付穴の他端側に設けられる
レーザイオン源。 - 請求項1に記載のレーザイオン源において、
前記磁極には前記プラズマ輸送部の設けられる取付穴が形成されており、前記取付穴の一端側は前記レーザ光の入射する入射口となっており、前記取付穴の他端側には前記引き出し電極が設けられており、
前記入射口のうち、前記ターゲットに対応する領域に第1磁性体を配置されており、
前記ターゲットは前記レーザ光の照射されるレーザ照射面と、前記レーザ照射面の反対側に位置する背面とを有し、前記背面側には第2磁性体が配置されており、
前記引き出し電極は、前記磁極の中心軸から変位した位置で前記取付穴の他端側に設けられる
レーザイオン源。 - 円形加速器であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載のレーザイオン源と前記磁極を含む円形加速器。 - 粒子線治療システムであって、
請求項6に記載の円形加速器と、
前記円形加速器からのイオンビームを輸送するビーム輸送装置と、
前記ビーム輸送装置により輸送された前記イオンビームを被照射体へ照射させる照射装置と、
を備える粒子線治療システム。
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