JP2020064753A - 加速器、およびそれを用いた加速器システム、粒子線治療システム - Google Patents

加速器、およびそれを用いた加速器システム、粒子線治療システム Download PDF

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Abstract

【課題】高効率で負イオンを加速器外に取り出すことができる加速器、およびそれを用いた加速器システム、粒子線治療システムを提供する。
【解決手段】固定主磁場および高周波電場を用いてHビームを加速するサイクロトロン10であって、固定主磁場を発生させる主電磁石20と、主電磁石20の内側に形成された空間に配置されており、Hビームの周回軌道のうち取り出しエネルギー軌道を含む領域に、Hビームの周回軌道の径方向外側に向かって弱くなる磁場勾配を有する取り出し磁場領域、およびHビームの周回軌道の径方向外側に向かって強くなる磁場勾配を有する取り出し磁場領域を形成する磁場形成部と、を備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、加速器、およびそれを用いた加速器システム、粒子線治療システムに関する。
一台の加速器によって放射線治療用及びRI製造用の各用途に応じた電流量の加速粒子を取り出すことを可能とし、その結果として、稼働率の向上を図り易くすることを目的として、特許文献1には、放射線治療用の陽子ビーム及びRI製造用の陽子ビームのそれぞれをサイクロンから取り出すために、サイクロンに少なくとも二つ設けられた取出ポートと、サイクロン内を周回する負イオンを取出ポートに誘導するフォイルと、負イオンをサイクロンに供給するイオン源と、フォイルの進退量及びイオン源による負イオンの供給量の少なくとも一方を制御して取出ポートから取り出される陽子ビームの電流量を制御する制御装置と、を備える粒子加速システムが記載されている。
特開2010−287419号公報
粒子線治療の普及に伴い、装置の小型化、低コスト化、加速器性能の向上(蓄積電荷量やビーム特性など)への要求が高まっている。
粒子線治療には、ビームを周回させて加速するサイクロトロンやシンクロサイクロトロンなどの円形加速器、シンクロトロンなどの円環加速器がよく用いられている。
円環加速器の一種であるシンクロトロンを用いた粒子線治療システムでは、主加速器であるシンクロトロンの他に、ビームエネルギーを数MeVから数十MeVまで加速する入射用の加速器(入射器)が別途必要である。
一般的に、円環加速器に用いられる入射器には線形加速器が使用されており、円環加速器の外周側に設置されている。そのため、入射器と円環加速器とを合わせた加速器システムの設置面積が大きくなる、という課題があった。
さらに、円環加速器の蓄積電荷量を高める有効な方法の一つとして、入射エネルギーを高くし、空間電荷によるビーム発散量を抑えることにより蓄積電荷量(空間電荷制限)を高める方法がある。しかしながら、入射エネルギーを高くするためには線形加速器の全長をより長くする必要があり、さらに加速器システムの設置スペースが大きくなる、という課題がある。
また、円環加速器に効率よく空間電荷制限までビームを入射するには、リウビルの定理から、従来用いられている入射セプタム電磁石、もしくは静電インフレクタを用いた入射に比べて荷電変換入射を用いたほうが位相空間においてビームを重ねて入射できることから有利である。
また、負イオンを加速するサイクロトロンもPET薬剤生成用等でよく用いられている。
ここで、特許文献1に記載されているように、荷電変換入射では、Hビームを薄膜にあてることによりHビームに変換する、という荷電変換取り出しが行われている。
この方法はビームを取り出す方法としては簡便であり、優れた方法である。しかしながら、取り出されるビームがHビームであるため、そのままでは後段の円環加速器に荷電変換入射をすることができない、という課題がある。そこで、静電デフレクタを用いた取り出しを行う必要がある。しかしながら、静電デフレクタを用いる場合は取り出し効率が著しく減少するため、実用的ではない、という課題がある。
このように、従来の加速器では、高効率でHビーム等の負イオンからなるビームを加速器外に取り出すことができなかった。
本発明は、高効率で負イオンを加速器外に取り出すことができる加速器、およびそれを用いた加速器システム、粒子線治療システムを提供する。
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、固定主磁場および高周波電場を用いて負イオンビームを加速する加速器であって、前記固定主磁場を発生させる主電磁石と、前記主電磁石の内側に形成された空間に配置されており、前記負イオンビームの周回軌道のうち取り出しエネルギー軌道を含む領域に、前記負イオンビームの周回軌道の径方向外側に向かって弱くなる磁場勾配を有する第1取り出し磁場領域、および前記負イオンビームの周回軌道の径方向外側に向かって強くなる磁場勾配を有する第2取り出し磁場領域を形成する磁場形成部と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、高効率で負イオンを加速器外に取り出すことができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
本発明の実施例1の加速器の外観を示す図である。 実施例1の加速器の断面構造を示す図である。 実施例1の加速器の断面のうち、ビーム周回軌道と取り出し磁場領域の位置関係を示す図である。 図3のA−A’断面図である。 図4のC−C’断面図である。 図3のB−B’断面図である。 図6のD−D’断面図である。 実施例1の加速器のHビームの周回軌道を示す図である。 実施例1の加速器において、ビーム取り出し磁場を印加していないときのHビームの周回軌道の一部分を拡大した図である。 実施例1の加速器において、ビーム取り出し磁場を印加しているときのHビームの周回軌道の一部分を拡大した図である。 本発明の実施例2の加速器における、図3のA−A’断面に相当する部分の断面図である。 実施例2の加速器における、図3のB−B’断面に相当する部分の断面図である。 本発明の実施例3の加速器における、図3のA−A’断面に相当する部分の断面図である。 実施例3の加速器における、図3のB−B’断面に相当する部分の断面図である。 本発明の実施例4の加速器における、図3のA−A’断面に相当する部分の断面図である。 実施例4の加速器における、図3のB−B’断面に相当する部分の断面図である。 本発明の実施例5の加速器システムの概略構成を示す図である。 本発明の実施例6の加速器システムの概略構成を示す図である。 本発明の実施例7の加速器システムの概略構成を示す図である。 本発明の実施例8の粒子線治療システムの概略構成を示す図である。 実施例8の粒子線治療システムの運転パターンの一例を示す図である。
以下に本発明の加速器、およびそれを用いた加速器システム、粒子線治療システムの実施例を、図面を用いて説明する。
<実施例1>
本発明の加速器の実施例1について図1乃至図10を用いて説明する。
図1は、本実施例1の加速器の外観を示す図である。図2は、加速器の断面構造を示す図である。図3は、加速器の断面のうち、ビーム周回軌道と取り出し磁場領域の位置関係を示す図である。図4は、図3のA−A’断面図である。図5は、図4のC−C’断面図である。図6は、図3のB−B’断面図である。図7は、図6のD−D’断面図である。図8は、Hビームの周回軌道を示す図である。図9は、ビーム取り出し磁場を印加していないときのHビームの周回軌道の一部分を拡大した図である。図10は、ビーム取り出し磁場を印加しているときのHビームの周回軌道の一部分を拡大した図である。
最初に、図1および図2を用いて、加速器の構成の概略について説明する。サイクロトロン10の外観を図1に、断面構成を図2に示す。
図1や図2に示す本実施例1のサイクロトロン10は、固定主磁場および高周波電場を用いてHビームを加速する装置である。図1では、中心磁場1.5[T]、取り出すHビームのエネルギーは20[MeV]、取り出しエネルギーのビームの回転半径は約0.5[m]を想定している。
なお、加速する粒子はHに限られず、例えば後述する実施例6,7のように炭素等の重粒子の負イオンを加速することができる。
図1に示すように、サイクロトロン10は上下方向に分割可能な主電磁石20によってその外殻が形成されており、ビーム加速領域となる内部は真空引きされている。
サイクロトロン10の外周部側には、高周波印加系40が設けられている。サイクロトロン10では、この高周波印加系40を用いてHイオンを加速する高周波電場を生成する。
主電磁石20の上部にはイオン源30が設置されており、低エネルギービーム輸送用貫通口24を通してビームがサイクロトロン10内部に入射される。イオン源30としては、マイクロ波イオン源やECRイオン源などを適用できる。なお、イオン源は、主電磁石20内部の真空引きされたビーム加速領域内部に配置しても良く、その場合はPIG型イオン源などが適用できる。
図2に示されるように、固定主磁場を発生させる主電磁石20は、磁極25(図11等参照)、主コイル21、リターンヨーク22、真空容器23から構成される。
リターンヨーク22には貫通口が複数あり、そのうち加速されたビームを取り出すビーム取り出し貫通口28、内部のコイル導体を外部に引き出すためのコイル用貫通口26、真空引き用貫通口29、加速高周波印加用貫通口27がリターンヨーク22の接続面上に設けられている。
また、図2に示されるように、サイクロトロン10は、ディー電極44、および静電デフレクタ60を有する。
真空容器23は、Hビームの加速空間を高真空状態に保持するための容器である。
図2に示すように、真空容器23の外部には、円環状の主コイル21がリターンヨーク22の内壁に沿って設置されている。主コイル21は、コイル周囲にクライオスタットを設置して超伝導コイルとするが、常伝導コイルも用いることができる。
真空容器23の内部側には、Hビームの加速に必要な磁場を形成するための一対の磁極25が設けられている。磁極25は、平面視で円形をなし、上下面対称の形状を成している。また、磁極25は、Hビームの周回軌道を挟んで、上下方向(図1の紙面に直交する方向)に対面して配置されている。磁極25は、その表面に設置されるトリムコイル(図示省略)と共に、主コイル21が励磁された際に磁化されてビーム周回や取り出しに適する磁場分布を形成する。
ディー電極44は、真空容器23の内部でHビームを加速するための電場を発生させる電極である。ディー電極44は、互いに径方向に対向するように配置されている。ディー電極44は、それを励振する高周波電源42に接続されている。
磁極25の中心部には、サイクロトロン10の外部又は内部に設けられたイオン源30から送られてきたHビームを偏向して、周回軌道に乗せるイオン引き出し電極32が配置される。
図3は取り出しエネルギービーム周回軌道12と取り出し磁場領域50,52との関係を示している。本実施例のサイクロトロン10では、図2および図3に示すように、取り出しエネルギービーム周回軌道12を含むように取り出し磁場領域50,52を形成する。
取り出し磁場領域50は、図4に示すように、Hビームの周回軌道のうち、取り出しエネルギー軌道を含む領域に配置されている上側取り出し磁場生成コイル51A,下側取り出し磁場生成コイル51Bによって生成される。
この取り出し磁場領域50は、図5に示すように、Hビームの周回軌道の径方向外側に向かって弱くなる磁場勾配を有している。なお、図5では、縦軸は磁場強度、横軸はサイクロトロン10の半径方向の距離である。
上側取り出し磁場生成コイル51Aおよび下側取り出し磁場生成コイル51Bは、図4に示すように、上下それぞれ3ターンのコイルで、径方向内側と外側とでコイル密度に変化を持たせて取り出しに有効な磁場領域を拡大している。なお、コイル形状、コイル巻き数、配置等は図4に示す形態に制限されるものではなく、取り出し条件によって最適な磁場分布となるように調整することができる。
取り出し磁場領域52は、図6に示すように、Hビームの周回軌道のうち、取り出しエネルギー軌道を含む領域に配置されている上側取り出し磁場生成コイル53A,下側取り出し磁場生成コイル53Bによって生成される。
この取り出し磁場領域52は、図7に示すように、Hビームの周回軌道の径方向外側に向かって強くなる磁場勾配を有している。なお、図7では、縦軸は磁場強度、横軸はサイクロトロン10の半径方向の距離である。
上側取り出し磁場生成コイル53Aおよび下側取り出し磁場生成コイル53Bについても、図6に示すように、上下それぞれ3ターンのコイルで、径方向内側と外側とでコイル密度に変化を持たせて取り出しに有効な磁場領域を拡大している。なお、コイル形状、コイル巻き数、配置等は図6に示す形態に制限されるものではなく、取り出し条件によって最適な磁場分布となるように調整することができる。
これら上側取り出し磁場生成コイル51A、下側取り出し磁場生成コイル51B、上側取り出し磁場生成コイル53A、下側取り出し磁場生成コイル53Bは取り出し磁場生成電源49から供給される電流によって励磁される。
図2に戻り、静電デフレクタ60は、取り出し磁場領域50,52によってセパレーションが増大したHビームを偏向させて、ビーム取り出し貫通口28中の引出軌道に引き出してサイクロトロン10外に取り出すための装置である。
この静電デフレクタ60は、取り出し磁場領域50よりビーム進行方向に対して下流側、かつ取り出し磁場領域52よりビーム進行方向に対して上流側に、すなわち取り出し磁場領域50,52に挟まれるように配置されている。
静電デフレクタ60は、Hビームに対して可変的に電場を与えうる導入ギャップを有しており、この導入ギャップにHビームを導いて偏向させる。静電デフレクタ60は、それを励振する静電デフレクタ電源48に接続されている。
なお、静電デフレクタ60の替わりに、セプタム電磁石を用いることができる。
サイクロトロン10では、主コイル21に通電することで上下一対の磁極25の間に磁場を発生させると共に、ディー電極44に高周波電圧が付与されることで、Hビームが加速されつつ、螺旋状の周回軌道を進行する。
径方向の外周側に達したHビームは、取り出し磁場領域50,52によってビーム軌道が乱されるとともに静電デフレクタ60で偏向され、取り出しビーム15としてビーム取り出し貫通口28を通じてサイクロトロン10の外部に引き出される。
図8は、シミュレーションによって求めた取り出しエネルギー付近のビームの周回軌道を示す図である。
図8に示すように、取り出しエネルギー近傍まで加速されたHビームの回転半径は取り出し磁場領域50の作る磁場領域で大きくなり、取り出し磁場領域52の作る磁場領域で小さくなることで、継続的に図8中yマイナス方向に大きくずれていく。
このシミュレーション結果を図10に、比較のために取り出し磁場領域50,52が形成されていない場合のシミュレーション結果を図9に示す。図9は取り出し磁場領域50,52を励磁していない場合の領域Eでのターンセパレーションを、図10は取り出し磁場領域50,52を励磁している場合の領域Eでのターンセパレーションを示しており、図9および図10は共に横軸は図8のx方向、縦軸は図8のy方向である。
図9に示すように、領域取り出し磁場領域50,52が励磁されていない場合であっても、加速に伴ってビームの周回軌道はずれる。しかしながら、そのずれ幅は小さく、このような小さいずれ幅は取り出しエネルギーに達したビームの周回軌道とその直前のビームの周回軌道との間の間隔が短いことを意味する。従って、ビームを取り出すための静電デフレクタ60の構造や配置をいくら工夫したとしても、取り出しの際にHビームが静電デフレクタ60に衝突してビームの一部が失われる。このため、Hビーム取り出し効率を改善する余地があることが分かる。
一方、図10に示すように、取り出し磁場領域50,52が励磁されている場合は、エネルギーが大きくなるにつれて、図9に示す加速のみの軌道のずれに対して外周側に大きくずれ、セパレーションが大きくなっていくことがわかる。このような大きなずれが生じることで、静電デフレクタ60に入射する際にHビームが静電デフレクタ60に衝突する総量を大きく減らすことができ、Hビーム取り出し効率を従来に比べて大きくすることができる。
次に、本実施例の効果について説明する。
上述した本発明の実施例1の固定主磁場および高周波電場を用いてHビームを加速するサイクロトロン10は、固定主磁場を発生させる主電磁石20と、主電磁石20の内側に形成された空間に配置されており、Hビームの周回軌道のうち取り出しエネルギー軌道を含む領域に、Hビームの周回軌道の径方向外側に向かって弱くなる磁場勾配を有する取り出し磁場領域50、およびHビームの周回軌道の径方向外側に向かって強くなる磁場勾配を有する取り出し磁場領域52を形成する磁場形成部と、を備えている。
これによって、ビームのセパレーションを従来よりも大きくすることができるため、取り出し部に設置した静電デフレクタ60やセプタム電磁石などの取り出し機構によるビームロスを大幅に軽減でき、従来に比べて高効率でHビームを取り出すことが可能となる。
また、磁場形成部によってセパレーションが増大する領域にHビームをサイクロトロン10外に取り出す静電デフレクタ60あるいはセプタム電磁石を更に備えたため、静電デフレクタ60やセプタム電磁石に衝突して失われるHビーム量を最小限にすることができ、より高効率でHビームをサイクロトロン10外へ取り出すことができる。
更に、磁場形成部の取り出し磁場領域50は、径方向外側に向かって弱くなる磁場勾配を形成する上側取り出し磁場生成コイル51A,下側取り出し磁場生成コイル51Bによって生成され、磁場形成部の取り出し磁場領域52は、径方向外側に向かって強くなる磁場勾配を形成する上側取り出し磁場生成コイル53A,下側取り出し磁場生成コイル53Bによって生成されることで、取り出しエネルギーに達したHビームにのみ取り出し磁場を印加することができる。すなわち、ビームの加速中はコイルを通電しないことで、加速中のビームの軌道が乱されることを確実に抑制でき、ビームをより安定に加速することができる。
なお、本実施形態では加速器としてサイクロトロン10を用いる場合について説明したが、シンクロサイクロトロンなどの加速器にも本発明を適用することができる。
また、加速器の用途は特に限定されず、後述する実施例8のような粒子線治療や高エネルギー実験、PET薬剤生成用等に用いることができる。
<実施例2>
本発明の実施例2の加速器について図11および図12を用いて説明する。実施例1と同じ構成には同一の符号を示し、説明は省略する。以下の実施例においても同様とする。
図11は、本実施例2の加速器における、図3のA−A’断面に相当する部分の断面図である。図12は、図3のB−B’断面に相当する部分の断面図である。図11および図12の横軸はサイクロトロン10の半径方向、縦軸はサイクロトロン10の垂直方向を示している。
本実施例のサイクロトロンは、実施例1のサイクロトロン10のうち、取り出し磁場領域50、および取り出し磁場領域52を生成する構造が異なる。
具体的には、取り出し磁場領域50は、実施例1で説明した上側取り出し磁場生成コイル51A,下側取り出し磁場生成コイル51Bの替わりに、主電磁石20の磁極25のうち、図11に示すような磁極25の対向面に切り欠き54を形成することにより生成する。磁極25の反対側の磁極の表面側にも上下対称で切り欠き54が形成されている。
径方向外側に向かって磁場を強くする取り出し磁場領域52は、上側取り出し磁場生成コイル53A,下側取り出し磁場生成コイル53Bの替わりに、主電磁石20の磁極25のうち、図12に示すような磁極25の対向面に形成されるシムと呼ばれる突起55を設けることにより生成する。磁極25の反対側の磁極の表面側にも上下対称で突起55が形成されている。
切り欠き54、および突起55は取り出し条件によって最適な磁場分布となるように調整することができる。
その他の構成・動作は前述した実施例1の加速器と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
本発明の実施例2の加速器においても、前述した実施例1の加速器とほぼ同様な効果が得られる。
また、磁場形成部の取り出し磁場領域50は、主電磁石20の磁極25の対向面に形成される切り欠き54によって生成され、磁場形成部の取り出し磁場領域52は、主電磁石20の磁極25の対向面に形成される突起55によって生成されることにより、コイルによって発生させる取り出し磁場をゼロにでき、コイル通電電流を無くすことができる。このため、熱負荷や電源コストを抑制することができる、との効果が得られる。
なお、本実施例のように切り欠き54や突起55を設けるとともに、実施例1のように上側取り出し磁場生成コイル51A,53A,下側取り出し磁場生成コイル51B,53Bを併せて設置することが可能である。これにより、実施例1に比べて取り出し用コイル系統の小型化を図ることができるとともに、実施例1と同様に取り出しエネルギーに達する前のHビームに取り出し磁場が影響することを抑制することができる。
<実施例3>
本発明の実施例3の加速器について図13および図14を用いて説明する。
図13は、本実施例3の加速器における、図3のA−A’断面に相当する部分の断面図である。図14は、図3のB−B’断面に相当する部分の断面図である。図13および図14の横軸はサイクロトロン10の半径方向、縦軸はサイクロトロン10の垂直方向を示している。
本実施例のサイクロトロンも、実施例2と同様に、実施例1のサイクロトロン10のうち、取り出し磁場領域50、および取り出し磁場領域52を生成する構造が異なる。
具体的には、磁場を弱くする取り出し磁場領域50は、実施例1で説明した上側取り出し磁場生成コイル51A,下側取り出し磁場生成コイル51Bの替わりに、図13に示すように、磁性材料である取り出し磁場生成シム56A,56Bを磁極25の内側に形成される空間に設置することで生成する。これにより、周辺の磁束を径方向外側に流すことができ、Hビームの感じる磁場を径方向外側に向かって弱くする。
これら取り出し磁場生成シム56A,56Bは、図13に示すように、非磁性体の支持体56Cにより支持されており、この支持体56Cはボルト等の固定部材56Dによって磁極25の側面側に固定されている。
また、磁極25の反対側の磁極の表面側の空間にも上下対称で取り出し磁場生成シムが配置されている。この取り出し磁場生成シムについても、取り出し磁場生成シム56A,56Bと同様に支持体等によって支持される。
また、径方向外側に向かって磁場を強くする取り出し磁場領域52は、上側取り出し磁場生成コイル53A,下側取り出し磁場生成コイル53Bの替わりに、図14に示すように、磁性材料である取り出し磁場生成シム57を磁極25の内側に形成される空間に設置することで生成する。これにより、周辺の磁束を径方向内周側に流すことができ、Hビームの感じる磁場を径方向外側に向かって強くする。
なお、図14では省略しているが、取り出し磁場生成シム57は図13に示すような支持体56Cと固定部材56Dとによって磁極25に対して固定されている。
また、磁極25の反対側の磁極の表面側の空間にも上下対称で取り出し磁場生成シムが配置されており、支持体等によって固定されている。
図13や図14では、取り出し磁場生成シムを2個あるいは1個配置しているが、その個数、配置、形状は特に図13や図14に示す形態に制限されるものではなく、取り出し条件によって最適な磁場分布となるように調整することができる。
その他の構成・動作は前述した実施例1の加速器と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
本発明の実施例3の加速器においても、前述した実施例1の加速器とほぼ同様な効果が得られる。
また、磁場形成部の取り出し磁場領域50は、主電磁石20の内側に形成された空間に配置される取り出し磁場生成シム56A,56Bによって生成され、磁場形成部の取り出し磁場領域52は、主電磁石20の内側に形成された空間に配置される取り出し磁場生成シム57によって生成されることによっても、コイルによって発生させる取り出し磁場をゼロにすることができ、コイル通電電流を無くすことができるので、熱負荷や電源コストを抑制することができる、との効果が得られる。
なお、本実施例のように取り出し磁場生成シム56A,56B,57を設置するとともに、実施例1のように上側取り出し磁場生成コイル51A,53A,下側取り出し磁場生成コイル51B,53Bを併せて設置することが可能である。これにより、実施例1に比べて取り出しコイル系統の小型化を図るとともに、実施例1のように取り出しエネルギーに達する前のHビームに取り出し磁場が影響することを抑制することができる。
<実施例4>
本発明の実施例4の加速器について図15および図16を用いて説明する。
図15は、本実施例4の加速器における、図3のA−A’断面に相当する部分の断面図である。図16は、図3のB−B’断面に相当する部分の断面図である。図15および図16の横軸はサイクロトロン10の半径方向、縦軸はサイクロトロン10の垂直方向を示している。
本実施例のサイクロトロンも、実施例2,3と同様に、実施例1のサイクロトロン10のうち、取り出し磁場領域50、および取り出し磁場領域52を生成する構造が異なる。
具体的には、磁場を弱くする取り出し磁場領域50は、実施例1で説明した上側取り出し磁場生成コイル51A,下側取り出し磁場生成コイル51Bの替わりに、図15に示すように、磁性材料である取り出し磁場生成シム56A,56Bに加えて磁場補正シム58A,58Bを設置することで生成する。これにより、取り出しエネルギーより低エネルギー側(内周部分)に与えられる磁場の擾乱を防ぐことができ、周回ビームが安定に周回して、加速されるようにすることができる。
磁極25の反対側の磁極の表面側の空間にも上下対称で取り出し磁場生成シムおよび磁場補正シムが配置されている。
取り出し磁場領域52については、上側取り出し磁場生成コイル53A,下側取り出し磁場生成コイル53Bの替わりに、図16に示すように、磁性材料である取り出し磁場生成シム57、および磁場補正シム59を配置することによって生成する。
磁極25の反対側の磁極の表面側の空間にも上下対称で取り出し磁場生成シムおよび磁場補正シムが配置されている。
図15等では省略しているが、取り出し磁場生成シム56A,56B,57や磁場補正シム58A,58B,59等は図13に示すような支持体56Cと固定部材56Dとによって磁極25に対して固定されている。
図15や図16では補正シムを2個づつ、あるいは1個づつ配置している場合を励磁しているが、その個数、配置、形状は特に制限されるものではなく、最適な磁場分布となるように調整することができる。
その他の構成・動作は前述した実施例3の加速器と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
本発明の実施例4の加速器においても、前述した実施例3の加速器とほぼ同様な効果が得られる。
また、磁場形成部の取り出し磁場領域50は、主電磁石20の内側に形成された空間に配置される取り出し磁場生成シム56A,56B、磁場補正シム58A,58Bによって生成され、磁場形成部の取り出し磁場領域52は、主電磁石20の内側に形成された空間に配置される取り出し磁場生成シム57、磁場補正シム59によって生成されることにより、磁場補正シム58A,58B,59によって取り出し磁場からの漏洩磁場が抑制されるため、Hビームは取り出しエネルギーに達する前に軌道が乱されにくくなり、Hビームをより安定に加速することができる。
なお、本実施例のように取り出し磁場生成シム56A,56B,57や磁場補正シム58A,58B,59を設置するとともに、実施例1のように上側取り出し磁場生成コイル51A,53A,下側取り出し磁場生成コイル51B,53Bを併せて設置することが可能である。
<実施例5>
本発明の実施例5の加速器を備えた加速器システムについて図17を用いて説明する。
図17は、本実施例5の加速器システムの概略構成を示す図である。
図17に示すように、本実施例は、実施例1に示した取り出し構造を有するサイクロトロン10を備えた加速器システム100である。
加速器システム100は、実施例1に示したサイクロトロン10と、セプタム電磁石102と、荷電変換薄膜106と、サイクロトロン10によって加速されたビームを更に高エネルギーまで加速するシンクロトロン101と、を備えている。
サイクロトロン10は、シンクロトロン101の内周側に配置されている。サイクロトロン10の構成・動作は前述した実施例1のサイクロトロン10と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
なお、実施例1に示したサイクロトロン10の替わりに実施例2−4の何れかで説明したサイクロトロンを備えることができる。
サイクロトロン10から取り出されたHビームは、セプタム電磁石102によって曲げられ、シンクロトロン101の周回ビームと入射Hビームをマージする軌道マージ電磁石104に導かれ、合流する。
シンクロトロン101は、複数の偏向電磁石108と、複数の四極電磁石110と、複数の六極電磁石109と、加速空胴111と、取り出し用の出射高周波印加装置112と、取り出し用の出射静電デフレクタ113と、制御装置114と、軌道マージ電磁石104と、荷電変換薄膜106等により構成される。
偏向電磁石108はシンクロトロン101中を周回するビームを偏向して所定の周回軌道を形成する。
四極電磁石110は、周回ビームに対して収束あるいは発散の力を加えて周回ビームのチューンを周回ビームが安定となる値に保つ。
六極電磁石109は、周回ビームに中心軌道からの距離の二乗に比例する強度の磁場を印加し、周回ビーム粒子の水平方向の位置と傾きにより定義される位相空間上に水平ベータトロン振動の安定限界を形成する。
加速空胴111は周回ビームに進行方向の高周波電圧を印加して周回ビームを進行方向の所定の位相に捕獲し、所定のエネルギーまで加速する。
出射高周波印加装置112は、周回ビームに水平チューンと同期する周波数の水平方向の高周波電圧を印加し、周回ビーム粒子の水平ベータトロン振動の振幅を増大させる。水平ベータトロン振動の振幅が増大して安定限界を越えた周回ビーム粒子は水平ベータトロン振動の振幅を急激に増大させ、出射静電デフレクタ113に入射する。
出射静電デフレクタ113は、入射した周回ビーム粒子を水平方向に偏向する。
制御装置114は、シンクロトロン101内の上述した各機器の動作を制御する装置であり、コンピュータ等で構成されている。これらを構成するコンピュータは、CPUやメモリ、インターフェース等を備えており、各機器の動作の制御や後述する各種演算処理等が様々なプログラムに基づいて実行される。これらのプログラムは内部記録媒体や外部記録媒体、データサーバに格納されており、CPUによって読み出され、実行される。
なお、動作の制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに別れていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていても良い。更には、各種プログラムは、プログラム配布サーバや内部記憶媒体や外部記録媒体からインストールされてもよい。
また、図17では、制御装置114は出射高周波印加装置112や加速空胴111にのみ接続されているように記載されているが、実際はすべての機器に直接的、あるいは間接的に接続されている。
荷電変換薄膜106は、例えば炭素製のシートからなり、サイクロトロン10によって加速されたHビームをHビームに変換し、シンクロトロン101に入射させる部材である。この荷電変換薄膜106は、軌道マージ電磁石104の下流側に配置されている。
軌道マージ電磁石104は、電磁石104Bを有している。以下、周回ビームと入射Hビームとのマージについて説明する。
セプタム電磁石102によって曲げられたHビームは、軌道マージ電磁石104に導かれた後、電磁石104Bに入射する。電磁石104Bで偏向されたHビームは、荷電変換薄膜106を通過することで電子がはぎとられて(荷電変換されて)Hビームになる。Hビームは、偏向電磁石104C,104Dを通り、シンクロトロン101の周回軌道に乗る。シンクロトロン101内を周回したHビームは軌道マージ電磁石104の位置へ戻り、その直前で偏向電磁石104Aを通過して電磁石104Bに入射する。電磁石104Bに再び入射したHビームは、次に入射するHビームと合流する。これを繰り返すことによって、シンクロトロン101内にHビームが蓄積される。
蓄積、加速されたHビームは、出射静電デフレクタ113を通してシンクロトロン101外へ取り出されて利用される。
本発明の実施例5の加速器を備えた加速器システム100は、前述した実施例1乃至実施例4の何れかの加速器を備えている。
ここで、入射器ならびに後段の主加速器で構成される加速器システムの設置面積を減少させようとした場合、円環加速器の内周側に入射器を置くことが考えられる。しかし、その場合、線形加速器では入射器の全長の制限から入射エネルギーを低くしなければ設置できず、円環加速器で蓄積できる電荷量を減少させなければならない、という課題があった。
荷電変換入射による高効率入射についても、線形加速器を用いた場合と同様の課題が残っていた。
一方、負イオンを加速するサイクロトロンを用いた場合、取り出し効率の減少から、入射に必要な十分な取り出し電流を得ることが困難であり、円環加速器内に入射器を設置し、高エネルギー入射と荷電変換入射による円環加速器の蓄積電荷量の大幅増加を実現する方法はなかった。
しかしながら、本実施例5のように、シンクロトロン101の入射器として従来に比べて高効率でHビームを取り出し可能な実施例1乃至実施例4の何れかのサイクロトロン10を適用することにより、入射器サイズを大幅に大きくすることなく入射エネルギーを高くでき、後段のシンクロトロン101の蓄積電荷量を大幅に増加させることが可能となる。このため、従来は困難であった加速器システム100の小型化と大電流化を同時に実現することができる。
また、サイクロトロン10によって加速されたHビームをHビームに変換し、シンクロトロン101に入射させる荷電変換薄膜106を更に備えることにより、入射器であるサイクロトロン10からの高効率でのHビームの直接の取り出しと荷電変換薄膜106による荷電変換入射との組み合わせが得られる。これにより、後段のシンクロトロン101に空間電荷制限までビームを蓄積することができ、より大電流化を図ることができる。
更に、サイクロトロン10は、シンクロトロン101の内周側に配置されることにより、加速器システム100の大幅な設置面積削減が可能となる。
<実施例6>
本発明の実施例6の加速器を備えた加速器システムについて図18を用いて説明する。
図18は、本実施例6の加速器システムの概略構成を示す図である。
なお、本実施例では、説明の都合上、図17に示すような加速器システム100のうち、サイクロトロン10からシンクロトロン101Aまでの構成について記載する。
上述した実施例1−4で説明したサイクロトロン10からのHビーム取り出しの構成・手法と、実施例5で説明したそのビームをシンクロトロン101に荷電変換入射する構成・手法は、Hイオン以外の種類の負イオンに対しても有効である。
その一例として、本実施例の加速器システムは、図18に示すようにシンクロトロン101の内周側に設置したサイクロトロン10でC4−ビームを加速し、シンクロトロン101Aに荷電変換入射する。
サイクロトロン10から取り出されたC4−は最終的に荷電変換薄膜106でC6+に荷電変換されシンクロトロン101Aを周回するが、C4−とC6+をマージする軌道マージ電磁石104でのセパレーションが小さいため、セプタム電磁石102で曲げた後、更に小型のセプタム電磁石102Aを用いることでC4−とC6+の軌道を合わせる。なお、小型のセプタム電磁石102Aの替わりに静電インフレクタを用いることができる。
その他の構成・動作は前述した実施例5の加速器を備えた加速器システムと略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
本発明の実施例6の加速器を備えた加速器システムにおいても、前述した実施例5の加速器を備えた加速器システムとほぼ同様な効果が得られる。
<実施例7>
本発明の実施例7の加速器を備えた加速器システムについて図19を用いて説明する。
図19は、本実施例7の加速器システムの概略構成を示す図である。
本実施例の加速器システムは、実施例5,6で説明した加速器ステムのうち、軌道マージ電磁石104の替わりに、シンクロトロン101Bの偏向電磁石108Aを用いるものである。
なお、本実施例でも、説明の都合上、図17に示すような加速器システムのうち、サイクロトロン10からシンクロトロン101Bまでの構成について記載する。
軌道マージ電磁石104を使用しない本実施例では、C4−ビームをシンクロトロン101Bの外側から入射する必要がある。そのため、サイクロトロン10から取り出したC4−ビームをシンクロトロン101Bの外側に一旦導き、セプタム電磁石102Bによって偏向電磁石108A内の荷電変換薄膜106でC4−ビームとC6+ビームとが同一軌道となるようにビーム軸を調整する。
その他の構成・動作は前述した実施例5や実施例6の加速器を備えた加速器システムと略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
本発明の実施例7の加速器を備えた加速器システムにおいても、前述した実施例5や実施例6の加速器を備えた加速器システムとほぼ同様な効果が得られる。
<実施例8>
本発明の実施例8の粒子線治療システムについて図20および図21を用いて説明する。
図20は、本実施例8の粒子線治療システムの概略構成を示す図である。図21は、図20に示す粒子線治療システムの運転パターンの一例を示す図である。
図20に示すように、本実施例の粒子線治療システム200は、加速器システム100、回転ガントリ210、照射装置220、制御システム230を備えている。
制御システム230は、加速器システム100や回転ガントリ210、照射装置220を構成する各機器の動作を制御する装置であり、コンピュータ等で構成されている。制御システム230も実施例5で説明した制御装置114と同様にCPUやメモリ、インターフェース等を備えており、各機器の動作の制御や後述する各種演算処理等が様々なプログラムに基づいて実行される。
加速器システム100の構成・動作は前述した実施例5の加速器システム100と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。なお、加速器システム100は、実施例5に記載されたものに限られず、実施例6や実施例7で説明した加速器システムを適用することができる。
回転ガントリ210は、複数の偏向電磁石211、複数の四極電磁石212、複数の六極電磁石213等を有している。この回転ガントリ210は、回転軸210Aを中心に回転可能に構成されており、照射装置220を回転軸210Aの周りで旋回させる回転装置である。
照射装置220は、2台の走査電磁石225,226、ビーム位置モニタ222および線量モニタ224等を有している。走査電磁石225,226やビーム位置モニタ222、線量モニタ224は、照射装置1007の中心軸、すなわちビーム軸に沿って配置されている。
ビーム位置モニタ222および線量モニタ224は、走査電磁石225,226の下流に配置される。走査電磁石225および走査電磁石226は、それぞれイオンビームを偏向し、イオンビームを照射装置220の中心軸に垂直な平面内において互いに直交する方向に走査する。ビーム位置モニタ222は照射されるビームの通過位置を計測する。線量モニタ224は照射されるビームの線量を計測する。
照射装置220に設置されたビーム位置モニタ222、線量モニタ224により所定の照射が完了した場合、制御システム230からシンクロトロン101からのビーム取り出しを停止する制御信号が出される。
以下、図21を用いて、粒子線治療システム200のうち、加速器システム100内の運転パターンの一例を説明する。
図21ではサイクロトロン10のイオン引き出し電極電源34とビーム加速用の高周波電源42の運転パターン、ならびに取り出し磁場生成コイルの励磁パターンとサイクロトロン出射ビーム、シンクロトロン蓄積ビーム、出射ビームの代表的なタイミングチャートを示している。図21中、縦軸は上から順に加速電圧およびイオン引き出し電極、取り出しコイル励磁状態、サイクロトロン出射ビーム、シンクロトロン蓄積ビーム、シンクロトロン出射ビームとし、横軸は全て時間とする。
制御システム230から入力されるシンクロトロン入射準備完了信号とともに、サイクロトロン10の加速用の高周波電源42や、イオン引き出し電極電源34、取り出し磁場生成電源49を立ち上げる。
実施例1で説明したように、サイクロトロン10は内部もしくは外部にイオン源30を有しており、イオン源からビームを取り出すためのイオン引き出し電極32とそのイオン引き出し電極電源34のON/OFFでサイクロトロン10内へのHイオンの供給をON/OFFする。
イオン源30から取り出されたHビームはディー電極44により加速されて、シンクロトロン101に出射される。シンクロトロン101へ入射する前に、荷電変換薄膜106により荷電変換されてHビームとなる。
加速したHビームをシンクロトロン101に出射した後は、制御システム230からの入射停止信号に基づいてサイクロトロン10の高周波電源42や、イオン引き出し電極電源34、取り出し磁場生成電源49を立ち下げ、待機モードに移行する。
シンクロトロン101に入射されたHビームは、がん病巣204の深さに応じたエネルギーまで更に加速される。更に加速されたHビームはシンクロトロン101から取り出され、回転ガントリ210を経由して照射装置220へと運ばれ、患者202のがん病巣204に照射される。
本発明の実施例8の粒子線治療システム200は、前述した実施例5の加速器システム100を備えていることから、従来の粒子線治療システムより小型であるとともに、高電流密度による粒子線の照射時間を短くすることによって患者スループットを向上させることができる、という効果が得られる。
なお、粒子線治療システム200がビーム輸送系を備えている場合について説明したが、ビーム輸送系を設けずに加速器システム100と回転ガントリや照射装置とを直接接続することができる。
また、治療に用いる粒子線を照射する装置として回転ガントリ210を用いる場合について説明したが、固定された照射装置を用いることができる。また、照射装置は一つに限られず、1組の加速器システム100に対して複数設けることができる。
また、照射方法は特に限定されず、走査電磁石を用いるスキャニング方式の他に、ワブラー法や二重散乱体法など粒子線の分布を広げた後でコリメータやボーラスを用いて標的の形状に合わせた線量分布を形成する照射方式を用いることができる。
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
10…サイクロトロン(加速器)
12…取り出しエネルギービーム周回軌道
15…取り出しビーム
20…主電磁石
21…主コイル
22…リターンヨーク
23…真空容器
24…低エネルギービーム輸送用貫通口
26…コイル用貫通口
27…加速高周波印加用貫通口
28…ビーム取り出し貫通口
29…真空引き用貫通口
30…イオン源
32…イオン引き出し電極
34…イオン引き出し電極電源
40…高周波印加系
42…高周波電源
44…ディー電極
48…静電デフレクタ電源
49…取り出し磁場生成電源
50…取り出し磁場領域(第1取り出し磁場領域)
51A,53A…上側取り出し磁場生成コイル
52…取り出し磁場領域(第2取り出し磁場領域)
51B,53B…下側取り出し磁場生成コイル
54…切り欠き
55…突起
56A,56B,57…取り出し磁場生成シム
58A,58B,59…磁場補正シム
60…静電デフレクタ
100…加速器システム
101…シンクロトロン(円環加速器)
102,102A,102B…セプタム電磁石
104…軌道マージ電磁石
106…荷電変換薄膜(荷電変換膜)
108,108A…偏向電磁石
109…六極電磁石
110,115…四極電磁石
111…加速空胴
112…出射高周波印加装置
113…出射静電デフレクタ
114…制御装置
115…四極電磁石
200…粒子線治療システム
210…回転ガントリ
211…偏向電磁石
212…四極電磁石
213…六極電磁石
220…照射装置
222…ビーム位置モニタ
224…線量モニタ
225,226…走査電磁石
230…制御システム
202…患者
204…がん病巣

Claims (8)

  1. 固定主磁場および高周波電場を用いて負イオンビームを加速する加速器であって、
    前記固定主磁場を発生させる主電磁石と、
    前記主電磁石の内側に形成された空間に配置されており、前記負イオンビームの周回軌道のうち取り出しエネルギー軌道を含む領域に、前記負イオンビームの周回軌道の径方向外側に向かって弱くなる磁場勾配を有する第1取り出し磁場領域、および前記負イオンビームの周回軌道の径方向外側に向かって強くなる磁場勾配を有する第2取り出し磁場領域を形成する磁場形成部と、を備えた
    ことを特徴とする加速器。
  2. 請求項1に記載の加速器において、
    前記磁場形成部の前記第1取り出し磁場領域は、径方向外側に向かって弱くなる磁場勾配を形成するコイル、前記主電磁石の磁極の対向面に形成される切り欠き、前記主電磁石の内側に形成された空間に配置されるシム、のうち少なくともいずれか1つによって生成される
    ことを特徴とする加速器。
  3. 請求項1に記載の加速器において、
    前記磁場形成部の前記第2取り出し磁場領域は、径方向外側に向かって強くなる磁場勾配を形成するコイル、前記主電磁石の磁極の対向面に形成される突起、前記主電磁石の内側に形成された空間に配置されるシム、のうち少なくともいずれか1つによって生成される
    ことを特徴とする加速器。
  4. 請求項1に記載の加速器において、
    前記磁場形成部によってセパレーションが増大した領域に前記負イオンビームを前記加速器外に取り出す静電デフレクタあるいはセプタム電磁石を更に備えた
    ことを特徴とする加速器。
  5. 請求項1に記載の加速器と、
    前記加速器によって加速された前記負イオンビームを更に加速する円環加速器と、備えた
    ことを特徴とする加速器システム。
  6. 請求項5に記載の加速器システムにおいて、
    前記加速器によって加速された前記負イオンビームを陽イオンビームに変換し、前記円環加速器に入射させる荷電変換膜を更に備えた
    ことを特徴とする加速器システム。
  7. 請求項5に記載の加速器システムにおいて、
    前記加速器は、前記円環加速器の内周側に配置された
    ことを特徴とする加速器システム。
  8. 請求項5に記載の加速器システムを備えたことを特徴とする粒子線治療システム。
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