以下、実施形態の直流電流遮断装置を、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る直流電流遮断装置の構成の一例を示す図である。図1には、三つの直流送電線LN(直流送電線LN-1~LN-3)の節点部分に構成する直流電流遮断装置1の一例を示している。さらに、図1には、それぞれの直流送電線LNに、直流リアクトル20が接続されている一例を示している。より具体的には、直流送電線LN-1に直流リアクトル20-1が、直流送電線LN-2に直流リアクトル20-2が、直流送電線LN-3に直流リアクトル20-3が、それぞれ接続されている一例を示している。
直流電流遮断装置1は、例えば、直流バス30と、三つの断路器40(断路器40-1~40-3)と、三つの遮断器50(遮断器50-1~50-3)と、三つの補助断路器60(補助断路器60-1~60-3)と、三つの転流回路70(転流回路70-1~70-3)と、三つのリアクトル80(リアクトル80-1~80-3)と、三つのダイオード90(ダイオード90-1~90-3)と、半導体遮断器10と、アレスタ11と、制御装置100と、を備える。
断路器40、遮断器50、および補助断路器60は、機械接点式のスイッチである。断路器40と、遮断器50と、補助断路器60とのそれぞれは、制御装置100によって開極または閉極のいずれかの状態に制御される。直流電流遮断装置1では、それぞれの直流送電線LNにおいて、断路器40と、遮断器50と、補助断路器60とが直列に接続され、直流バス30を介して互いに接続されている。例えば、直流送電線LN-1では、断路器40-1の第1極a-1が直流バス30に接続されている。さらに、直流送電線LN-1では、断路器40-1の第2極b-1が遮断器50-1の第1極c-1に接続され、遮断器50-1の第2極d-1が補助断路器60-1の第1極e-1に接続され、補助断路器60-1の第2極f-1が直流リアクトル20-1の第1端に接続されている。直流リアクトル20-1の第2端は、直流送電線LN-1の送電側に接続されている。直流送電線LN-2および直流送電線LN-3も同様である。このため、直流電流遮断装置1における通常の送電においては、それぞれの直流送電線LNに属する断路器40と、遮断器50と、補助断路器60とのそれぞれを通って電流が流れる。断路器40は、特許請求の範囲の請求項1における「第1の機械式接点」、あるいは請求項3における「機械式接点」の一例であり、遮断器50は、特許請求の範囲の請求項1における「第2の機械式接点」の一例である。
半導体遮断器10は、第1端g側から第2端h側に流れる電流を遮断する。半導体遮断器10は、例えば、互いに直列に接続された複数(図1には二つのみを示している)の半導体スイッチ部を備える。半導体スイッチ部のそれぞれは、互いに並列に接続された半導体スイッチング素子とダイオードとを備える。より具体的には、半導体スイッチ部では、ダイオードのカソードと半導体スイッチング素子のコレクタとが互いに接続され、ダイオードのアノードと半導体スイッチング素子のエミッタとが接続されている。半導体スイッチング素子のゲート(ベース)は、制御装置100によって制御(制御電圧が印加)される。つまり、半導体遮断器10は、制御装置100によってオンまたはオフのいずれかの状態に制御される。半導体スイッチング素子は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子である。半導体スイッチング素子は、IGBTに限定されず、自己消弧を実現可能な半導体スイッチング素子であれば、いかなるスイッチング素子であってもよい。直流電流遮断装置1では、半導体遮断器10の第1端gが直流バス30に接続され、第2端hがそれぞれのダイオード90のアノードに接続されている。従って、半導体遮断器10は、オン状態のときに直流バス30側から直流送電線LN側に流れる電流を許容し、オフ状態のときに流れる電流を遮断する。半導体遮断器10のオン状態は、特許請求の範囲における「導通状態」の一例であり、半導体遮断器10のオフ状態は、特許請求の範囲における「非導通状態」の一例である。
アレスタ11は、半導体遮断器10に並列に接続され、半導体遮断器10がオフ状態に制御された場合に、直流送電線LNのインダクタンス分のエネルギーに起因して発生するサージエネルギーを消費(吸収)する。
ダイオード90は、半導体遮断器10の第2端hと、対応する直流送電線LNとの間の電流を選択的な向きで流す。より具体的には、ダイオード90は、半導体遮断器10の第2端h側から直流送電線LN側に流れる電流を許容し、その逆の向きに流れる電流を阻止する。直流電流遮断装置1では、それぞれのダイオード90のカソードが、対応する転流回路70の第1端iおよびリアクトル80の第1端に接続されている。
転流回路70は、第1端iと第2端jとの間に流れる電流の向きを切り替える(転流する)。転流回路70は、例えば、半導体スイッチ部、ダイオード、およびコンデンサを備え、これらの構成要素が互いに接続されたブリッジ回路である。半導体スイッチ部のそれぞれは、例えば、互いに並列に接続された半導体スイッチング素子とダイオードとを備える。図2は、第1の実施形態の転流回路70の構成の一例を示す図である。図2の(a)に示した転流回路70aは、図1に示したフルブリッジ回路である。転流回路70aは、例えば、二つの半導体スイッチ部702(半導体スイッチ部702-1および702-2)と、二つのダイオード704(ダイオード704-1および704-2)と、コンデンサ706と、を備える。図2の(b)に示した転流回路70bは、例えば、四つの半導体スイッチ部702(半導体スイッチ部702-1~702-4)と、コンデンサ706と、を備える。転流回路70bは、転流回路70aにおけるダイオード704を半導体スイッチ部702に代えた構成のフルブリッジ回路である。転流回路70が備える半導体スイッチ部702のオン状態およびオフ状態は、制御装置100によって制御される。つまり、転流回路70は、制御装置100による半導体スイッチ部702のオンまたはオフのいずれかの状態への制御に応じて、第1端iと第2端jとの間に流れる電流を転流させる。直流電流遮断装置1では、転流回路70の第2端jが、対応する直流送電線LNに属する断路器40の第2極bと遮断器50の第1極cとの間に接続されている。直流電流遮断装置1では、リアクトル80の第2端が、対応する直流送電線LNに属する遮断器50の第2極dと補助断路器60の第1極eとの間に接続されている。ダイオード90、転流回路70、およびリアクトル80の構成は、特許請求の範囲の請求項1における「電流整流部」の一例である。コンデンサ706は、特許請求の範囲の請求項9における「電圧源」の一例である。
制御装置100は、断路器40、遮断器50、補助断路器60、転流回路70、および半導体遮断器10を制御することにより、直流電流遮断装置1における直流送電線LNの遮断および導通を制御する。制御装置100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより以下の機能を実現するものである。制御装置100の機能のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。制御装置100の機能のうち一部または全部は、専用のLSIによって実現されてもよい。プログラムは、予め制御装置100が備えるHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が制御装置100が備えるドライブ装置に装着されることで制御装置100が備える記憶装置にインストールされてもよい。
[直流電流遮断装置1における直流送電線LNの遮断の動作]
ここで、例えば、直流送電線LN-1~LN-3が直流バス30を介して互いに接続されて送電しているときに、直流送電線LN-1において事故が発生した場合を例として、制御装置100が、直流送電線LN-1を遮断させる動作について説明する。
直流送電線LN-1~LN-3が直流バス30を介して互いに接続されて送電しているときの初期状態は、断路器40、遮断器50、および補助断路器60が閉極され、転流回路70および半導体遮断器10はオフ状態である。ここで、直流送電線LN-1に事故が発生すると、まず、制御装置100は、事故が発生した直流送電線LN-1に属する断路器40-1と遮断器50-1とを開極させ、転流回路70-1をオン状態にする。すると、転流回路70-1が備えるコンデンサの電荷が放電されて、遮断器50-1に逆向きの電流が流れ、電流ゼロ点が発生する。これにより、遮断器50-1にはこれ以上の電流が流れなくなる。次に、制御装置100は、半導体遮断器10をオン状態にし、転流回路70-1をオフ状態にする。すると、直流送電線LN-1の電流が半導体遮断器10に転流し、断路器40-1の電流がゼロになる。最後に、制御装置100は、半導体遮断器10をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置1では、直流送電線LN-1の電流が遮断される。その後、直流送電線LN-1のインダクタンス分のサージエネルギーは、半導体遮断器10に並列に接続されたアレスタ11によって消費される。制御装置100は、直流送電線LN-1の電流が完全にゼロになったら補助断路器60-1を開極させ、直流送電線LN-1の遮断を完了する。このように、直流電流遮断装置1における直流送電線LNの遮断の動作では、事故が発生した直流送電線LNに属する断路器40、遮断器50、および補助断路器60を開極させることによって事故が発生した直流送電線LNを遮断し、事故が発生していない他の直流送電線LNにおける送電を維持する。
[直流電流遮断装置1における直流送電線LNの導通(接続)の動作]
次に、例えば、直流送電線LN-3のみが課電されており、直流送電線LN-1およびLN-2が課電されていない状態である場合を例として、制御装置100が、直流送電線LN-3と直流送電線LN-2とを直流バス30を介して導通させる動作について説明する。まず、直流電流遮断装置1における動作と比較するため、直流送電線LN-3と直流送電線LN-2とを導通させるために一般的に考えられる手順を説明する。
初期状態において、全ての断路器40、遮断器50、および補助断路器60は開極されている。この状態において制御装置100が、直流送電線LN-3に属する断路器40-3、遮断器50-3、および補助断路器60-3を閉極させると、直流送電線LN-3から直流バス30まで課電されるが、電流は流れない。次に、制御装置100は、直流送電線LN-2に属する補助断路器60-2を閉極させる。その後、制御装置100は、直流送電線LN-2に属する断路器40-2および遮断器50-2を閉極させて、直流送電線LN-3と直流送電線LN-2とを接続する。これにより、直流送電線LN-2には、直流送電線LN-2の容量成分を充電する電流が直流送電線LN-3から流れ込む。このようにして、制御装置100は、一般的に考えられる手順による直流送電線LN-3と直流送電線LN-2とを直流バス30を介して導通させる動作を完了する。
上述したような一般的に考えられる手順のように、直流送電線LN-2に属する断路器40-2や遮断器50-2を単純に閉極させてしまうと、直流送電線LN-2に流れ込んだ電流によって、例えば、閉極しようとする断路器40-2の機械式の接点部分にアークが発生し、このアークによって接点部分が溶着してしまう懸念がある。このため、直流電流遮断装置1では、制御装置100が、以下のような手順でそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することにより、機械式の接点部分の溶着を防止する。
[第1の動作]
図3~図5を参照して、例えば、直流送電線LN-3のみが課電されており、直流送電線LN-1およびLN-2が課電されていない状態である場合において、制御装置100が、機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流送電線LN-3と直流送電線LN-2とを直流バス30を介して導通させる動作、つまり、直流送電線LN-3に対して直流送電線LN-2を投入する動作について説明する。図3~図5には、制御装置100によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置1内の電流の流れを示している。
初期状態において、全ての断路器40、遮断器50、および補助断路器60は開極されている。そして、直流送電線LN-3は課電されている状態(直流送電線LN-3の先に電源が接続されている状態)であり、直流送電線LN-1およびLN-2が課電されていない状態である。
(手順1-1):まず、制御装置100は、直流送電線LN-3に属する断路器40-3、遮断器50-3、および補助断路器60-3を閉極させ、直流送電線LN-2に属する補助断路器60-2を閉極させる。言い換えれば、制御装置100は、手順1-1において、直流送電線LN-3に接続する直流送電線LN-2に属する断路器40-2および遮断器50-2を、開極されている状態で維持させる。この場合、直流電流遮断装置1では、図3に示すように、直流送電線LN-3から直流バス30まで課電されるが、電流は流れていない状態である。
(手順1-2):次に、制御装置100は、半導体遮断器10をオン状態にする。これにより、直流電流遮断装置1では、図4に示すように、課電された直流送電線LN-3から、直流バス30、半導体遮断器10、ダイオード90-2、およびリアクトル80-2を介して、直流送電線LN-2に電流が流れ込む。そして、直流送電線LN-2の容量成分が充電され、直流送電線LN-2に属する断路器40-2の第1極a-2と遮断器50-2の第2極d-2との間の電圧が上昇する。ただし、この電圧の上昇は、半導体遮断器10と、ダイオード90-2と、リアクトル80-2との電圧降下分に相当する電圧であるため、断路器40-2と遮断器50-2との極間の電圧は、低い電圧である。
(手順1-3):次に、制御装置100は、例えば、直流送電線LN-2の容量成分が十分に充電されたと見なすことができる時間が経過した後、直流送電線LN-2に属する断路器40-2および遮断器50-2を閉極させる。このとき、制御装置100は、断路器40-2と遮断器50-2との内、耐圧の低い方から閉極させる。これにより、直流電流遮断装置1では、図5に示すように、課電された直流送電線LN-3から、直流バス30、断路器40-2、遮断器50-2、および補助断路器60-2を介して、電流が直流送電線LN-2に流れ込むようになる。つまり、直流送電線LN-3から、機械接点式のスイッチのみを通って、直流送電線LN-2に電流が流れるようになる。これは、直流送電線LN-2に属する断路器40-2や遮断器50-2の方が、半導体遮断器10よりも抵抗成分が小さいためである。これにより、半導体遮断器10には、直流送電線LN-3から流れる電流がゼロになる。ここで、上述したように、断路器40-2と遮断器50-2との極間の電圧は低い。このため、手順1-3において断路器40-2と遮断器50-2とを閉極させたことにより、仮に断路器40-2や遮断器50-2の接点部分にアークが発生したとしても、このアークのエネルギーは小さく(熱は低く)、接点部分が溶着してしまうことはない。
(手順1-4):次に、制御装置100は、半導体遮断器10をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置1において、直流送電線LN-3と直流送電線LN-2とを直流バス30を介して導通させる動作が完了する。
このような手順によって、直流電流遮断装置1では、断路器40や遮断器50における機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流バス30を介して直流送電線LN-3と直流送電線LN-2とを導通させる。
[第2の動作]
次に、図6~図8を参照して、直流電流遮断装置1における第2の動作の一例について説明する。第2の動作は、例えば、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3とが課電されており、直流送電線LN-1が課電されていない状態である場合において、制御装置100が、機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と直流送電線LN-1とを直流バス30を介して導通させる動作、つまり、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3に対して直流送電線LN-1を投入する動作について説明する。図6~図8には、制御装置100によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置1内の電流の流れを示している。
初期状態において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3は課電されている状態(直流送電線LN-2および直流送電線LN-3の先に電源が接続されている状態)であり、直流送電線LN-1が課電されていない状態である。そして、直流送電線LN-2に属する断路器40-2、遮断器50-2、および補助断路器60-2と、直流送電線LN-3に属する断路器40-3、遮断器50-3、および補助断路器60-3とが閉極されている状態である。この場合、直流電流遮断装置1では、図6に示すように、直流バス30を介して、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間に電流が流れている。つまり、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間で、電流が互いに融通されている。
(手順2-1):まず、制御装置100は、直流送電線LN-1に属する補助断路器60-1を閉極させる。言い換えれば、制御装置100は、手順2-1において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3に接続する、直流送電線LN-1に属する断路器40-1および遮断器50-1を、開極されている状態で維持させる。この場合、直流電流遮断装置1では、図6に示すように、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間で直流バス30を介して電流が流れているが、直流送電線LN-1には電流は流れていない状態である。つまり、初期状態における電流の流れは変わっていない状態である。
(手順2-2):次に、制御装置100は、半導体遮断器10をオン状態にする。これにより、直流電流遮断装置1では、図7に示すように、課電された直流送電線LN-2または直流送電線LN-3から、直流バス30、半導体遮断器10、ダイオード90-1、およびリアクトル80-1を介して、直流送電線LN-1に電流が流れ込み、直流送電線LN-1の容量成分が充電される。これにより、直流送電線LN-1に属する断路器40-1の第1極a-1と遮断器50-1の第2極d-1との間の電圧が上昇するが、この電圧の上昇も、半導体遮断器10と、ダイオード90-1と、リアクトル80-1との電圧降下分に相当する電圧である。つまり、第2の動作においても、断路器40-1と遮断器50-1との極間の電圧は低い。
(手順2-3):次に、制御装置100は、例えば、直流送電線LN-1の容量成分が十分に充電されたと見なすことができる時間が経過した後、直流送電線LN-1に属する断路器40-1および遮断器50-1を閉極させる。このときも、制御装置100は、第1の動作と同様に、断路器40-1と遮断器50-1との内、耐圧の低い方から閉極させる。これにより、直流電流遮断装置1では、図8に示すように、課電された直流送電線LN-2および直流送電線LN-3から、直流バス30、断路器40-1、遮断器50-1、および補助断路器60-1を介して、電流が直流送電線LN-1に流れ込むようになる。つまり、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3から、機械接点式のスイッチのみを通って、直流送電線LN-1に電流が流れるようになる。この場合も、第1の動作と同様に、断路器40-1と遮断器50-1との極間の電圧は低いため、仮に断路器40-1や遮断器50-1の接点部分にアークが発生したとしても、このアークのエネルギーによって接点部分が溶着してしまうことはない。
(手順2-4):次に、制御装置100は、半導体遮断器10をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置1において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と、直流送電線LN-1とを直流バス30を介して導通させる動作が完了する。
このような手順によって、直流電流遮断装置1における第2の動作では、断路器40や遮断器50における機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流バス30を介して直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と、直流送電線LN-1とを導通させる。
このような構成および手順によって、直流電流遮断装置1では、それぞれの直流送電線LNに属する断路器40や遮断器50における機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流バス30を介してそれぞれの直流送電線LN同士を導通させる。
直流電流遮断装置1の構成は、図1に示した構成に限定されない。例えば、ダイオード90に代えて、機械接点式のスイッチや半導体スイッチング素子を備える構成にしてもよいし、機械接点式のスイッチと半導体スイッチング素子とを直並列に接続した構成にしてもよいし、機械接点式のスイッチとブリッジ回路とを並列に接続した構成にしてもよい。例えば、半導体遮断器10は、同様の構成の半導体遮断器を逆向きにも接続した双方向型の構成にしてもよい。例えば、遮断器50や、転流回路70とリアクトル80とダイオード90との構成を、直並列に複数接続した構成にしてもよいし、これらの構成を半導体遮断器で構成してもよい。例えば、直流リアクトル20や、リアクトル80、補助断路器60を省略した構成にしてもよい。
上記説明したように、第1の実施形態の直流電流遮断装置1によれば、課電開始時に機械式接点の溶着を防止することができる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。図9は、第2の実施形態に係る直流電流遮断装置の構成の一例を示す図である。図9においては、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付している。図9に示した直流電流遮断装置2は、例えば、直流バス30と、三つの断路器40(断路器40-1~40-3)と、三つの転流回路71(転流回路71-1~71-3)と、三つの補助断路器60(補助断路器60-1~60-3)と、三つのダイオード90(ダイオード90-1~90-3)と、半導体遮断器10と、アレスタ11と、制御装置100と、を備える。直流電流遮断装置2は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1が備えるそれぞれの遮断器50が転流回路71に代わった構成である。このため、直流電流遮断装置2における通常の送電においては、それぞれの直流送電線LNに属する断路器40と、転流回路71と、補助断路器60とのそれぞれを通って電流が流れる。さらに、直流電流遮断装置2では、それぞれの直流送電線LNに属する転流回路70とリアクトル80とが省略されている。
転流回路71は、同じ直流送電線LNに属する断路器40の第2極bに接続された第1端kと、補助断路器60の第1極eに接続された第2端lとの間に流れる電流を遮断する。転流回路71は、例えば、半導体スイッチ部、およびアレスタを備える。半導体スイッチ部のそれぞれは、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部702と同様に、例えば、互いに並列に接続された半導体スイッチング素子とダイオードとを備える。図10は、第2の実施形態の転流回路71の構成の一例を示す図である。転流回路71は、例えば、互いに逆向きで直列に接続された二つの半導体スイッチ部712(半導体スイッチ部712-1および712-2)と、一つのアレスタ714と、を備える。半導体スイッチ部712のそれぞれは、互いに並列に接続された半導体スイッチング素子とダイオードとを備える。より具体的には、半導体スイッチ部712では、ダイオードのカソードと半導体スイッチング素子のコレクタとが互いに接続され、ダイオードのアノードと半導体スイッチング素子のエミッタとが接続されている。半導体スイッチング素子のゲート(ベース)は、制御装置100によって制御(制御電圧が印加)される。つまり、半導体スイッチ部712は、制御装置100によってオンまたはオフのいずれかの状態に制御される。そして、転流回路71は、制御装置100による半導体スイッチ部712のオンまたはオフのいずれかの状態への制御に応じて、第1端kと第2端lとの間に流れる電流を許容、あるいは阻止(遮断)する。半導体スイッチング素子は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部702の半導体スイッチング素子と同様に、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などのスイッチング素子である。ただし、半導体スイッチ部712が備える半導体スイッチング素子は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部702の半導体スイッチング素子よりも耐圧が低いものであってもよい。半導体スイッチング素子は、IGBTに限定されず、自己消弧を実現可能な半導体スイッチング素子であれば、いかなるスイッチング素子であってもよい。アレスタ714は、二つの半導体スイッチ部712の直列接続に対して並列に接続され、二つの半導体スイッチ部712がオフ状態に制御された場合に、対応する直流送電線LNのインダクタンス分のエネルギーに起因して発生するサージエネルギーを消費(吸収)することにより、直流送電線LNを遮断する。ただし、アレスタ714も、半導体遮断器10に並列に接続されたアレスタ11よりも耐圧が低いものであってもよい。転流回路71は、特許請求の範囲の請求項3における「転流回路」の一例である。転流回路71のオン状態は、特許請求の範囲の請求項4における「導通状態」の一例であり、転流回路71のオフ状態は、特許請求の範囲の請求項4における「非導通状態」の一例である。
直流電流遮断装置2において、それぞれのダイオード90のカソードは、対応する直流送電線LNに属する転流回路71の第2端lと補助断路器60の第1極eとの間に接続されている。直流電流遮断装置2において、ダイオード90は、特許請求の範囲の請求項3における「電流整流部」の一例である。
[直流電流遮断装置2における直流送電線LNの遮断の動作]
ここで、例えば、直流送電線LN-1~LN-3が直流バス30を介して互いに接続されて送電しているときに、直流送電線LN-1において事故が発生した場合を例として、制御装置100が、直流送電線LN-1を遮断させる動作について説明する。
初期状態は、断路器40、および補助断路器60が閉極され、転流回路71はオン状態であり、半導体遮断器10はオフ状態である。ここで、直流送電線LN-1に事故が発生すると、まず、制御装置100は、半導体遮断器10をオン状態にする。そして、事故が発生した直流送電線LN-1に属する断路器40-1を開極させ、転流回路71-1をオフ状態にする。すると、電流は、断路器40-1と転流回路71-1から半導体遮断器10に転流し、転流回路71-1にはこれ以上の電流が流れなくなる。転流回路71-1が備えるアレスタ714は、断路器40-1と転流回路71-1のサージエネルギーを消費する。そして、制御装置100は、半導体遮断器10をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置2では、直流送電線LN-1の電流が遮断される。その後、制御装置100は、直流送電線LN-1のインダクタンス分のサージエネルギーが半導体遮断器10に並列に接続されたアレスタ11によって消費され、直流送電線LN-1の電流が完全にゼロになったら、補助断路器60-1を開極させ、直流送電線LN-1の遮断を完了する。このように、直流電流遮断装置2における直流送電線LNの遮断の動作でも、半導体遮断器10をオン状態にし、事故が発生した直流送電線LNに属する断路器40、および補助断路器60を開極させ、転流回路71をオフ状態にすることによって事故が発生した直流送電線LNを遮断し、事故が発生していない他の直流送電線LNにおける送電を維持する。
[直流電流遮断装置2における直流送電線LNの導通(接続)の動作]
直流電流遮断装置2においても、いずれかの直流送電線LNに対して他の直流送電線LNを投入させる一般的に考えられる手順では、投入する直流送電線LNに属する断路器40における機械式の接点部分がアークによって接点部分が溶着してしまう懸念がある。また、先に断路器40を閉路状態(閉極状態)にしてから転流回路71をオン状態にしようとすると、耐圧の低い転流回路71は、印加電圧に耐えられずに破壊されてしまう。このため、直流電流遮断装置2でも、制御装置100が、以下のような手順でそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することにより、機械式の接点部分の溶着を防止する。
図11~図13を参照して、制御装置100が、機械式の接点部分の溶着を防止した上で、課電されている直流送電線LNに対して課電されていない他の直流送電線LNを投入する場合の直流電流遮断装置2の動作の一例について説明する。以下の動作は、例えば、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3とが課電されており、直流送電線LN-1が課電されていない状態である場合において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と直流送電線LN-1とを直流バス30を介して導通させる(直流送電線LN-2および直流送電線LN-3に対して直流送電線LN-1を投入する)動作である。図11~図13には、制御装置100によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置2内の電流の流れを示している。
初期状態において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3は課電されている状態であり、直流送電線LN-1が課電されていない状態である。そして、直流送電線LN-2に属する断路器40-2、および補助断路器60-2と、直流送電線LN-3に属する断路器40-3、および補助断路器60-3とが閉極されている状態であり、直流送電線LN-2に属する転流回路71-2と、直流送電線LN-3に属する転流回路71-3とがオン状態にされている状態である。この場合、直流電流遮断装置2では、図11に示すように、直流バス30を介して、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間に電流が流れて、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間で電流が互いに融通されている。
(手順3-1):まず、制御装置100は、直流送電線LN-1に属する補助断路器60-1を閉極させる。言い換えれば、制御装置100は、手順3-1において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3に接続する、直流送電線LN-1に属する断路器40-1を開極されている状態で維持させ、転流回路71-1をオフ状態で維持させる。この場合、直流電流遮断装置2では、図11に示すように、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間で直流バス30を介して電流が流れているが、直流送電線LN-1には電流は流れていない状態(初期状態における電流の流れは変わっていない状態)である。
(手順3-2):次に、制御装置100は、半導体遮断器10をオン状態にする。これにより、直流電流遮断装置2では、図12に示すように、課電された直流送電線LN-2または直流送電線LN-3から、直流バス30、半導体遮断器10、およびダイオード90-1を介して、直流送電線LN-1に電流が流れ込む。これにより、直流送電線LN-1に属する断路器40-1の第1極a-1と転流回路71-1の第2端l-1との間の電圧が上昇するが、この電圧の上昇は、半導体遮断器10と、ダイオード90-1との電圧降下分に相当する電圧であるため、断路器40-1の第1極a-1と転流回路71-1の第2端l-1との間の電圧は、低い電圧である。
(手順3-3):次に、制御装置100は、転流回路71-1をオン状態にし、直流送電線LN-1に属する断路器40-1を閉極させる。これにより、直流電流遮断装置2では、図13に示すように、課電された直流送電線LN-2および直流送電線LN-3から、直流バス30、断路器40-1、転流回路71-1、および補助断路器60-1を介して、電流が直流送電線LN-1に流れ込むようになる。ここで、上述したように、断路器40-1の第1極a-1と転流回路71-1の第2端l-1との間の電圧は低いため、仮に断路器40-1の機械式の接点部分にアークが発生したとしても、このアークのエネルギーによって断路器40-1の接点部分が溶着してしまうことはない。また、先に断路器40-1を閉極させ、その後に転流回路71-1をオン状態にしてもよい。上述したように、断路器40-1の第1極a-1と転流回路71-1の第2端l-1との間の電圧は低いため、この手順をとっても転流回路71-1は破壊されない。また、最後に導通させるのが半導体を用いた転流回路71-1なので、オン状態にする時にアークは発生しない。
(手順3-4):次に、制御装置100は、半導体遮断器10をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置2において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と、直流送電線LN-1とを直流バス30を介して導通させる動作が完了する。
このような手順によって、直流電流遮断装置2では、断路器40における機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流バス30を介して直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と、直流送電線LN-1とを導通させる。
このような構成および手順によって、直流電流遮断装置2では、それぞれの直流送電線LNに属する断路器40における機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流バス30を介してそれぞれの直流送電線LN同士を導通させる。
上記説明したように、第2の実施形態の直流電流遮断装置2によれば、課電開始時に機械式接点の溶着を防止することができる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。図14は、第3の実施形態に係る直流電流遮断装置の構成の一例を示す図である。図14においては、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付している。図14に示した直流電流遮断装置3は、例えば、直流バス30と、三つの断路器40(断路器40-1~40-3)と、三つの補助断路器60(補助断路器60-1~60-3)と、三つの転流回路72(転流回路72-1~72-3)と、三つのダイオード90(ダイオード90-1~90-3)と、半導体遮断器10と、アレスタ11と、制御装置100と、を備える。直流電流遮断装置3は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1が備えるそれぞれの直流送電線LNに属する遮断器50とリアクトル80とが省略された構成である。このため、直流電流遮断装置3における通常の送電においては、それぞれの直流送電線LNに属する断路器40と補助断路器60とのそれぞれを通って電流が流れる。さらに、直流電流遮断装置3では、それぞれの直流送電線LNに対応する転流回路70が、転流回路72に代わっている。
転流回路72は、第1端mと第2端nとの間に流れる電流の向きを切り替える(転流する)。転流回路72は、例えば、コンデンサを備えるフルブリッジ回路である。転流回路72は、例えば、図2の(b)に示した転流回路70bである。転流回路72は、図2の(a)に示した転流回路70aであってもよいし、フルブリッジ回路と、リアクトルと、コンデンサとの直接接続とし、フルブリッジ回路の出力で共振を拡大させることによって電流ゼロ点を発生させる方式の構成であってもよい。以下の説明においては、転流回路72が図2の(b)に示した転流回路70bであるものとする。転流回路72は、特許請求の範囲の請求項5における「転流回路」の一例である。転流回路72のオン状態は、特許請求の範囲の請求項6における「導通状態」の一例であり、転流回路72のオフ状態は、特許請求の範囲の請求項6における「非導通状態」の一例である。転流回路72およびダイオード90の構成は、特許請求の範囲の請求項5における「接続部」の一例である。
[直流電流遮断装置3における直流送電線LNの遮断の動作]
ここで、例えば、直流送電線LN-1~LN-3が直流バス30を介して互いに接続されて送電しているときに、直流送電線LN-1において事故が発生した場合を例として、制御装置100が、直流送電線LN-1を遮断させる動作について説明する。
初期状態は、断路器40、および補助断路器60が閉極され、転流回路72および半導体遮断器10はオフ状態である。ここで、直流送電線LN-1に事故が発生すると、まず、制御装置100は、事故が発生した直流送電線LN-1に属する断路器40-1を開極させ、転流回路72-1をオン状態にする。すると、転流回路72-1が備えるコンデンサの電荷が放電されて、断路器40-1に逆向きの電流が流れ、電流ゼロ点が発生する。これにより、断路器40-1にはこれ以上の電流が流れなくなる。そして、制御装置100は、半導体遮断器10をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置3では、直流送電線LN-1の電流が遮断される。その後、制御装置100は、直流送電線LN-1のインダクタンス分のサージエネルギーが半導体遮断器10に並列に接続されたアレスタ11によって消費され、直流送電線LN-1の電流が完全にゼロになったら、補助断路器60-1を開極させ、直流送電線LN-1の遮断を完了する。このように、直流電流遮断装置3における直流送電線LNの遮断の動作でも、事故が発生した直流送電線LNに属する断路器40、および補助断路器60を開極させ、転流回路72を動作させることによって事故が発生した直流送電線LNを遮断し、事故が発生していない他の直流送電線LNにおける送電を維持する。
[直流電流遮断装置3における直流送電線LNの導通(接続)の動作]
直流電流遮断装置3においても、いずれかの直流送電線LNに対して他の直流送電線LNを投入させる一般的に考えられる手順では、投入する直流送電線LNに属する断路器40における機械式の接点部分がアークによって接点部分が溶着してしまう懸念がある。このため、直流電流遮断装置3でも、制御装置100が、以下のような手順でそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することにより、機械式の接点部分の溶着を防止する。
図15~図17を参照して、制御装置100が、機械式の接点部分の溶着を防止した上で、課電されている直流送電線LNに対して課電されていない他の直流送電線LNを投入する場合の直流電流遮断装置3の動作の一例について説明する。以下の動作は、例えば、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3とが課電されており、直流送電線LN-1が課電されていない状態である場合において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と直流送電線LN-1とを直流バス30を介して導通させる(直流送電線LN-2および直流送電線LN-3に対して直流送電線LN-1を投入する)動作である。図15~図17には、制御装置100によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置3内の電流の流れを示している。
初期状態において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3は課電されている状態であり、直流送電線LN-1が課電されていない状態である。そして、直流送電線LN-2に属する断路器40-2、および補助断路器60-2と、直流送電線LN-3に属する断路器40-3、および補助断路器60-3とが閉極されている状態である。この場合、直流電流遮断装置3では、図15に示すように、直流バス30を介して、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間に電流が流れて、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間で電流が互いに融通されている。
(手順4-1):まず、制御装置100は、直流送電線LN-1に属する補助断路器60-1を閉極させる。言い換えれば、制御装置100は、手順4-1において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3に接続する、直流送電線LN-1に属する断路器40-1を開極されている状態で維持させる。この場合、直流電流遮断装置3では、図15に示すように、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間で直流バス30を介して電流が流れているが、直流送電線LN-1には電流は流れていない状態(初期状態における電流の流れは変わっていない状態)である。
(手順4-2):次に、制御装置100は、直流送電線LN-1に対応する転流回路72-1をオン状態にする。さらに、制御装置100は、半導体遮断器10をオン状態にする。ただし、このときの制御装置100における転流回路72-1のオン状態への制御は、いずれかの直流送電線LNを遮断する際の制御とは異なる。より具体的には、直流送電線LNを遮断する場合、制御装置100は、転流回路72(図2の(b)に示した転流回路70b)が備える対角上の半導体スイッチ部702をオン状態にする。これに対して、直流送電線LNを投入する場合、制御装置100は、転流回路72(転流回路70b)が備える半導体スイッチ部702-2と半導体スイッチ部702-3との二つの半導体スイッチ部702のみ、あるいは半導体スイッチ部702-1と半導体スイッチ部702-4との二つの半導体スイッチ部702のみをオン状態にする。つまり、直流送電線LNを投入する場合、制御装置100は、転流回路72-1が半導体遮断器10の第2端h側から直流送電線LN-1側にのみ電流を流すようにオン状態にする。これにより、直流電流遮断装置3では、図16に示すように、課電された直流送電線LN-2または直流送電線LN-3から、直流バス30、半導体遮断器10、ダイオード90-1、および転流回路72-1を介して、直流送電線LN-1に電流が流れ込む。これにより、直流送電線LN-1に属する断路器40-1の第1極a-1と第2極b-1との間の電圧が上昇するが、この電圧の上昇は、半導体遮断器10と、ダイオード90-1と、転流回路72-1との電圧降下分に相当する電圧であるため、断路器40-1の両極の間の電圧は、低い電圧である。
(手順4-3):次に、制御装置100は、直流送電線LN-1に属する断路器40-1を閉極させる。これにより、直流電流遮断装置3では、図17に示すように、課電された直流送電線LN-2および直流送電線LN-3から、直流バス30、断路器40-1、および補助断路器60-1を介して、電流が直流送電線LN-1に流れ込むようになる。ここで、上述したように、断路器40-1の両極の間の電圧は低いため、仮に断路器40-1の機械式の接点部分にアークが発生したとしても、このアークのエネルギーによって断路器40-1の接点部分が溶着してしまうことはない。
(手順4-4):次に、制御装置100は、半導体遮断器10と転流回路72-1とをオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置3において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と、直流送電線LN-1とを直流バス30を介して導通させる動作が完了する。
このような手順によって、直流電流遮断装置3では、断路器40における機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流バス30を介して直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と、直流送電線LN-1とを導通させる。
このような構成および手順によって、直流電流遮断装置3では、それぞれの直流送電線LNに属する断路器40における機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流バス30を介してそれぞれの直流送電線LN同士を導通させる。
上記説明したように、第3の実施形態の直流電流遮断装置3によれば、課電開始時に機械式接点の溶着を防止することができる。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について説明する。図18は、第4の実施形態に係る直流電流遮断装置の構成の一例を示す図である。図18においては、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付している。図18に示した直流電流遮断装置4は、例えば、直流バス30と、三つの断路器40(断路器40-1~40-3)と、三つの遮断器50(遮断器50-1~50-3)と、三つの補助断路器60(補助断路器60-1~60-3)と、三つの転流回路70(転流回路70-1~70-3)と、三つのリアクトル80(リアクトル80-1~80-3)と、三つのダイオード90(ダイオード90-1~90-3)と、三つのダイオード91(ダイオード91-1~91-3)と、半導体遮断器10と、半導体遮断器15と、アレスタ11と、アレスタ16と、制御装置100と、を備える。図18に示した直流電流遮断装置4では、転流回路70が図2の(b)に示した転流回路70bである構成を示している。直流電流遮断装置4は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1に、半導体遮断器15、アレスタ16、および三つのダイオード91が追加された構成である。直流電流遮断装置4における通常の送電においては、直流電流遮断装置1と同様に、それぞれの直流送電線LNに属する断路器40と、遮断器50と、補助断路器60とのそれぞれを通って電流が流れる。
半導体遮断器15は、第1端o側から第2端p側に流れる電流を遮断する。半導体遮断器15の構成は、半導体遮断器10と同様である。半導体遮断器15も、制御装置100によってオンまたはオフのいずれかの状態に制御される。直流電流遮断装置4では、半導体遮断器15の第1端oがそれぞれのダイオード91のカソードに接続され、第2端pが直流バス30に接続されている。従って、半導体遮断器15は、オン状態のときに直流送電線LN側から直流バス30側に流れる電流を許容し、オフ状態のときに流れる電流を遮断する。つまり、半導体遮断器15は、直流電流遮断装置4において、半導体遮断器10とは逆側に流れる電流を遮断する。半導体遮断器10は、特許請求の範囲の請求項7における「第1の半導体遮断器」の一例であり、半導体遮断器15は、特許請求の範囲の請求項7における「第2の半導体遮断器」の一例である。
アレスタ16は、半導体遮断器15に並列に接続され、半導体遮断器15がオフ状態に制御された場合に、直流送電線LNのインダクタンス分のエネルギーに起因して発生するサージエネルギーを消費(吸収)する。アレスタ16は、アレスタ11と同様のものである。
ダイオード91は、半導体遮断器15の第1端oと、対応する直流送電線LNとの間の電流を選択的な向きで流す。より具体的には、ダイオード91は、対応する直流送電線LN側から半導体遮断器15の第1端o側に流れる電流を許容し、その逆の向きに流れる電流を阻止する。つまり、ダイオード91は、直流電流遮断装置4において、ダイオード90とは逆側に流れる電流を許容し、その逆の向きに流れる電流を阻止する。直流電流遮断装置4では、それぞれのダイオード91のアノードが、対応するリアクトル80の第2端および遮断器50の第2極d側の直流送電線LNに接続されている。
[直流電流遮断装置4における直流送電線LNの遮断の動作]
直流電流遮断装置4において、制御装置100がいずれかの直流送電線LNを遮断させる動作は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と同様である。
[直流電流遮断装置4における直流送電線LNの導通(接続)の動作]
直流電流遮断装置4においても、いずれかの直流送電線LNに対して他の直流送電線LNを投入させる一般的に考えられる手順では、投入する直流送電線LNに属する断路器40や遮断器50における機械式の接点部分がアークによって接点部分が溶着してしまう懸念がある。このため、直流電流遮断装置4でも、制御装置100が、以下のような手順でそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することにより、機械式の接点部分の溶着を防止する。
[第1の動作]
図19~図21を参照して、制御装置100が、機械式の接点部分の溶着を防止した上で、課電されている直流送電線LNに対して課電されていない他の直流送電線LNを投入する場合の直流電流遮断装置4の動作の一例について説明する。第1の動作は、例えば、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3とが課電されており、直流送電線LN-1が課電されていない状態である場合において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と直流送電線LN-1とを直流バス30を介して導通させる(直流送電線LN-2および直流送電線LN-3に対して直流送電線LN-1を投入する)動作である。図19~図21には、制御装置100によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置4内の電流の流れを示している。
初期状態において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3は課電されている状態であり、直流送電線LN-1が課電されていない状態である。そして、直流送電線LN-2に属する断路器40-2、遮断器50-2、および補助断路器60-2と、直流送電線LN-3に属する断路器40-3、遮断器50-3、および補助断路器60-3とが閉極されている状態である。この場合、直流電流遮断装置4では、図19に示すように、直流バス30を介して、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間に電流が流れて、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間で電流が互いに融通されている。
(手順5-1):まず、制御装置100は、直流送電線LN-1に属する補助断路器60-1を閉極させる。言い換えれば、制御装置100は、手順5-1において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3に接続する、直流送電線LN-1に属する断路器40-1および遮断器50-1を、開極されている状態で維持させる。この場合、直流電流遮断装置4では、図19に示すように、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間で直流バス30を介して電流が流れているが、直流送電線LN-1には電流は流れていない状態(初期状態における電流の流れは変わっていない状態)である。
(手順5-2):次に、制御装置100は、半導体遮断器10をオン状態にする。これにより、直流電流遮断装置4では、図20に示すように、課電された直流送電線LN-2または直流送電線LN-3から、直流バス30、半導体遮断器10、ダイオード90-1、およびリアクトル80-1を介して、直流送電線LN-1に電流が流れ込み、直流送電線LN-1の容量成分が充電される。これにより、直流送電線LN-1に属する断路器40-1の第1極a-1と遮断器50-1の第2極d-1との間の電圧が上昇するが、この電圧の上昇は、半導体遮断器10と、ダイオード90-1と、リアクトル80-1との電圧降下分に相当する電圧であるため、低い電圧である。
(手順5-3):次に、制御装置100は、例えば、直流送電線LN-1の容量成分が十分に充電されたと見なすことができる時間が経過した後、直流送電線LN-1に属する断路器40-1および遮断器50-1を閉極させる。これにより、直流電流遮断装置4では、図21に示すように、課電された直流送電線LN-2および直流送電線LN-3から、直流バス30、断路器40-1、遮断器50-1、および補助断路器60-1、つまり、機械接点式のスイッチのみを介して、電流が直流送電線LN-1に流れ込むようになる。この場合も、上述したように、断路器40-1と遮断器50-1との極間の電圧は低いため、仮に断路器40-1や遮断器50-1の接点部分にアークが発生したとしても、このアークのエネルギーによって接点部分が溶着してしまうことはない。
(手順5-4):次に、制御装置100は、半導体遮断器10をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置4において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と、直流送電線LN-1とを直流バス30を介して導通させる動作が完了する。
このような手順によって、直流電流遮断装置4における第1の動作では、断路器40や遮断器50における機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流バス30を介して直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と、直流送電線LN-1とを導通させる。
[第2の動作]
ところで、直流電流遮断装置4では、半導体遮断器15、アレスタ16、および三つのダイオード91が追加されている。この構成により、例えば、直流送電線LN-3のみが課電されており、直流送電線LN-1およびLN-2が課電されていない状態である場合において、制御装置100が、機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流バス30を介して直流送電線LN-1と直流送電線LN-2とを一斉に直流送電線LN-3に導通させる、つまり、直流送電線LN-3に対して直流送電線LN-1と直流送電線LN-2とを同時に投入することもできる。ここで、図22~図24を参照して、この場合の動作について説明する。図22~図24には、制御装置100によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置4内の電流の流れを示している。
初期状態において、直流送電線LN-3は課電されている状態であり、直流送電線LN-1およびLN-2が課電されていない状態である。そして、全ての断路器40、遮断器50、および補助断路器60は開極されている。この場合、直流電流遮断装置4では、いずれの直流送電線LNにも電流が流れていない状態である。
(手順6-1):まず、制御装置100は、それぞれの直流送電線LNに属する補助断路器60を閉極させる。言い換えれば、制御装置100は、手順6-1において、それぞれの直流送電線LNに属する断路器40および遮断器50を、開極されている状態で維持させる。この場合、直流電流遮断装置4では、図22に示すように、直流送電線LN-3から遮断器50-3の第2極d-3まで課電されるが、電流は流れていない状態である。
(手順6-2):次に、制御装置100は、半導体遮断器10と半導体遮断器15とのそれぞれをオン状態にする。これにより、直流電流遮断装置4では、図23に示すように、課電された直流送電線LN-3から、ダイオード91-3、半導体遮断器15、直流バス30、半導体遮断器10、ダイオード90-1、およびリアクトル80-1を介して、直流送電線LN-1に電流が流れ込む。同様に、直流電流遮断装置4では、課電された直流送電線LN-3から、ダイオード91-3、半導体遮断器15、直流バス30、半導体遮断器10、ダイオード90-2、およびリアクトル80-2を介して、直流送電線LN-2に電流が流れ込む。これにより、直流送電線LN-1と直流送電線LN-2とのそれぞれの容量成分が充電される。そして、直流送電線LN-1に属する断路器40-1の第1極a-1と遮断器50-1の第2極d-1との間の電圧、および直流送電線LN-2に属する断路器40-2の第1極a-2と遮断器50-2の第2極d-2との間の電圧のそれぞれが上昇する。この電圧の上昇は、直流送電線LN-1では、半導体遮断器10、ダイオード90-1、およびリアクトル80-1の電圧降下分に相当する電圧であり、直流送電線LN-2では、半導体遮断器10、ダイオード90-2、およびリアクトル80-2の電圧降下分に相当する電圧であり、直流送電線LN-3では、ダイオード91-3および半導体遮断器15の電圧降下分に相当する電圧である。このため、直流送電線LN-1に属する断路器40-1の第1極a-1と遮断器50-1の第2極d-1との極間、直流送電線LN-2に属する断路器40-2の第1極a-2と遮断器50-2の第2極d-2との極間、および直流送電線LN-3に属する断路器40-3の第1極a-3と遮断器50-3の第2極d-3との極間のそれぞれの極間の電圧は、低い電圧である。
(手順6-3):次に、制御装置100は、例えば、直流送電線LN-2の容量成分が十分に充電されたと見なすことができる時間が経過した後、それぞれの直流送電線LNに属する断路器40および遮断器50を閉極させる。このとき、制御装置100は、断路器40と遮断器50との内、耐圧の低い方から閉極させる。これにより、直流電流遮断装置4では、図24に示すように、課電された直流送電線LN-3から、直流バス30、断路器40-1、遮断器50-1、および補助断路器60-1を介して、電流が直流送電線LN-1に電流が流れ込むようになる。同様に、直流電流遮断装置4では、課電された直流送電線LN-3から、直流バス30、断路器40-2、遮断器50-2、および補助断路器60-2を介して、電流が直流送電線LN-2に電流が流れ込むようになる。つまり、直流送電線LN-3から、機械接点式のスイッチのみを通って、直流送電線LN-1および直流送電線LN-2に電流が一斉に流れるようになる。この場合も、上述したように、直流送電線LN-1、直流送電線LN-2、および直流送電線LN-3のそれぞれに属する断路器40の第1極aと遮断器50の第2極dとの極間の電圧は低いため、仮にいずれかの断路器40や遮断器50の接点部分にアークが発生したとしても、このアークのエネルギーによって接点部分が溶着してしまうことはない。
(手順6-4):次に、制御装置100は、半導体遮断器10と半導体遮断器15とのそれぞれをオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置4において、直流バス30を介して直流送電線LN-1と直流送電線LN-2とを一斉に直流送電線LN-3に導通させる動作が完了する。
このような手順によって、直流電流遮断装置4における第2の動作では、断路器40や遮断器50における機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流バス30を介して一斉に、直流送電線LN-3に直流送電線LN-1と直流送電線LN-2とを導通させる。
このような構成および手順によって、直流電流遮断装置4では、それぞれの直流送電線LNに属する断路器40や遮断器50における機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流バス30を介してそれぞれの直流送電線LN同士を導通させる。
直流電流遮断装置4では、第1の実施形態の直流電流遮断装置1に、半導体遮断器15、アレスタ16、および三つのダイオード91が追加された構成を示したが、半導体遮断器15、アレスタ16、および三つのダイオード91は、第2の実施形態の直流電流遮断装置2や、第3の実施形態の直流電流遮断装置3に追加されてもよい。この構成の場合において、制御装置100が機械式の接点部分の溶着を防止した上でそれぞれの構成要素を制御する手順は、上述した直流電流遮断装置4における手順と等価なものになるようにすればよい。
上記説明したように、第4の実施形態の直流電流遮断装置4によれば、課電開始時に機械式接点の溶着を防止することができる。
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について説明する。図25は、第5の実施形態に係る直流電流遮断装置の構成の一例を示す図である。図25においては、第1の実施形態の直流電流遮断装置1および第4の実施形態の直流電流遮断装置4と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付している。図25に示した直流電流遮断装置5は、例えば、直流バス31と、直流バス32と、三つの断路器40(断路器40-1~40-3)と、三つの遮断器50(遮断器50-1~50-3)と、三つの補助断路器60(補助断路器60-1~60-3)と、三つの転流回路70(転流回路70-1~70-3)と、三つのリアクトル80(リアクトル80-1~80-3)と、三つのダイオード90(ダイオード90-1~90-3)と、三つのダイオード91(ダイオード91-1~91-3)と、半導体遮断器10と、アレスタ11と、制御装置100と、を備える。図25に示した直流電流遮断装置5では、転流回路70が図2の(b)に示した転流回路70bである構成を示している。直流電流遮断装置5は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1が備える直流バス30が、直流バス31と直流バス32との二つの直流バスに別れ、三つのダイオード91が追加された構成である。直流電流遮断装置5における通常の送電においては、直流電流遮断装置1と同様に、それぞれの直流送電線LNに属する断路器40と、遮断器50と、補助断路器60とのそれぞれを通って電流が流れる。
直流電流遮断装置5では、それぞれの直流送電線LNに属する断路器40の第1極aが直流バス31に接続され、半導体遮断器10の第1端gが直流バス32に接続されている。さらに、直流電流遮断装置5では、直流バス32にそれぞれのダイオード91のカソードに接続され、それぞれのダイオード91のアノードが、対応するリアクトル80の第2端および遮断器50の第2極d側の直流送電線LNに接続されている。このため、直流電流遮断装置5において、それぞれのダイオード91は、対応する直流送電線LN側から直流バス32側に流れる電流を許容し、その逆の向きに流れる電流を阻止する。直流バス31は、特許請求の範囲の請求項11における「第1の直流バス」の一例であり、直流バス32は、特許請求の範囲の請求項11における「第2の直流バス」の一例である。ダイオード90、転流回路70、およびリアクトル80の構成は、特許請求の範囲の請求項11における「第1の電流整流部」の一例であり、ダイオード91は、特許請求の範囲の請求項11における「第2の電流整流部」の一例であり、ダイオード90、転流回路70、リアクトル80、およびダイオード91の構成は、特許請求の範囲の請求項11における「接続部」の一例である。
[直流電流遮断装置5における直流送電線LNの遮断の動作]
直流電流遮断装置5において、制御装置100がいずれかの直流送電線LNを遮断させる動作は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と同様である。
[直流電流遮断装置5における直流送電線LNの導通(接続)の動作]
直流電流遮断装置5においても、いずれかの直流送電線LNに対して他の直流送電線LNを投入させる一般的に考えられる手順では、投入する直流送電線LNに属する断路器40や遮断器50における機械式の接点部分がアークによって接点部分が溶着してしまう懸念がある。このため、直流電流遮断装置5でも、制御装置100が、以下のような手順でそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することにより、機械式の接点部分の溶着を防止する。
図26~図28を参照して、制御装置100が、機械式の接点部分の溶着を防止した上で、課電されている直流送電線LNに対して課電されていない他の直流送電線LNを投入する場合の直流電流遮断装置5の動作の一例について説明する。以下の動作は、例えば、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3とが課電されており、直流送電線LN-1が課電されていない状態である場合において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と直流送電線LN-1とを直流バス31を介して導通させる(直流送電線LN-2および直流送電線LN-3に対して直流送電線LN-1を投入する)動作である。図26~図28には、制御装置100によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置5内の電流の流れを示している。
初期状態において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3は課電されている状態であり、直流送電線LN-1が課電されていない状態である。そして、直流送電線LN-2に属する断路器40-2、遮断器50-2、および補助断路器60-2と、直流送電線LN-3に属する断路器40-3、遮断器50-3、および補助断路器60-3とが閉極されている状態である。この場合、直流電流遮断装置5では、図26に示すように、直流バス31を介して、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間に電流が流れて、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間で電流が互いに融通されている。
(手順7-1):まず、制御装置100は、直流送電線LN-1に属する補助断路器60-1を閉極させる。言い換えれば、制御装置100は、手順7-1において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3に接続する、直流送電線LN-1に属する断路器40-1および遮断器50-1を、開極されている状態で維持させる。この場合、直流電流遮断装置5では、図26に示すように、直流送電線LN-2と直流送電線LN-3との間で直流バス31を介して電流が流れているが、直流送電線LN-1には電流は流れていない状態(初期状態における電流の流れは変わっていない状態)である。
(手順7-2):次に、制御装置100は、半導体遮断器10をオン状態にする。これにより、直流電流遮断装置5では、図27に示すように、課電された直流送電線LN-2または直流送電線LN-3から、ダイオード91-2またはダイオード91-3、直流バス32、半導体遮断器10、ダイオード90-1、およびリアクトル80-1を介して、直流送電線LN-1に電流が流れ込み、直流送電線LN-1の容量成分が充電される。これにより、直流送電線LN-1に属する断路器40-1の第1極a-1と遮断器50-1の第2極d-1との間の電圧が上昇するが、この電圧の上昇は、ダイオード91-2またはダイオード91-3と、半導体遮断器10と、ダイオード90-1と、リアクトル80-1との電圧降下分に相当する電圧であるため、低い電圧である。
(手順7-3):次に、制御装置100は、例えば、直流送電線LN-1の容量成分が十分に充電されたと見なすことができる時間が経過した後、直流送電線LN-1に属する断路器40-1および遮断器50-1を閉極させる。これにより、直流電流遮断装置5では、図28に示すように、課電された直流送電線LN-2および直流送電線LN-3から、直流バス31、断路器40-1、遮断器50-1、および補助断路器60-1、つまり、機械接点式のスイッチのみを介して、電流が直流送電線LN-1に流れ込むようになる。この場合も、上述したように、断路器40-1と遮断器50-1との極間の電圧は低いため、仮に断路器40-1や遮断器50-1の接点部分にアークが発生したとしても、このアークのエネルギーによって接点部分が溶着してしまうことはない。
(手順7-4):次に、制御装置100は、半導体遮断器10をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置5において、直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と、直流送電線LN-1とを直流バス31を介して導通させる動作が完了する。
このような手順によって、直流電流遮断装置5では、断路器40や遮断器50における機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流バス31を介して直流送電線LN-2および直流送電線LN-3と、直流送電線LN-1とを導通させる。
このような構成および手順によって、直流電流遮断装置5では、それぞれの直流送電線LNに属する断路器40や遮断器50における機械式の接点部分の溶着を防止した上で、直流バス31を介してそれぞれの直流送電線LN同士を導通させる。
直流電流遮断装置5では、第1の実施形態の直流電流遮断装置1が備える直流バス30が、直流バス31と直流バス32との二つの直流バスに別れ、三つのダイオード91が追加された構成を示したが、直流バスを分けて三つのダイオード91を追加する構成は、第2の実施形態の直流電流遮断装置2や、第3の実施形態の直流電流遮断装置3、第4の実施形態の直流電流遮断装置4に適用してもよい。この構成の場合において、制御装置100が機械式の接点部分の溶着を防止した上でそれぞれの構成要素を制御する手順は、上述した直流電流遮断装置5における手順と等価なものになるようにすればよい。
上記説明したように、第5の実施形態の直流電流遮断装置5によれば、課電開始時に機械式接点の溶着を防止することができる。
上記に述べたとおり、各実施形態の直流電流遮断装置では、直流バスを介して直流送電線LN同士を導通させる、つまり、いずれかの直流送電線LNに対して他の直流送電線LNを投入させる際に、半導体遮断器をオン状態にして断路器40や遮断器50などの機械式接点の両極の間の電圧を低くした後に、機械式接点を閉極させる。これにより、各実施形態の直流電流遮断装置では、仮に機械式接点の接点部分にアークが発生したとしても、このアークのエネルギー(熱)によって接点部分が溶着してしまうことを防止することができる。このことにより、各実施形態の直流電流遮断装置は、直流送電線LNを遮断させたり導通(接続)させたりする正常な動作を維持することができる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、直列に接続された第1の機械式接点(40)と第2の機械式接点(50)とを有する複数の直流送電線(LN)と、半導体遮断器(10)と、それぞれの直流送電線に属する第1の機械式接点の第1極と、半導体遮断器の第1端とを接続する直流バス(30)と、それぞれの直流送電線に対応し、半導体遮断器の第2端と、対応する直流送電線が属する第1の機械式接点の第2極と少なくとも第2の機械式接点の第1極との間の箇所とを接続し、電流を選択的な向きで流す複数の電流整流部(90,80,70)と、第1の機械式接点、第2の機械式接点、半導体遮断器、および電流整流部を制御する制御装置(100)と、を備え、制御装置は、課電された直流送電線である第1の直流送電線(例えばLN-3)と、課電されていない他の直流送電線である第2の直流送電線(例えばLN-2)とを直流バスを介して導通させる際に、半導体遮断器を導通状態にした後に、第2の直流送電線に属する第1の機械式接点、および第2の機械式接点を閉極させることにより、課電開始時に機械式接点の溶着を防止することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。