以下、実施形態の直流電流遮断装置を、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る直流電流遮断装置の構成の一例を示す図である。図1には、複数の直流送電線A(直流送電線A-1~A-n)の正側あるいは負側のいずれかの節点部分に構成する直流電流遮断装置1の一例を示している。直流電流遮断装置1は、例えば、複数の半導体遮断器10(半導体遮断器10-1、および10-2)と、複数の機械式接点20(機械式接点20-1~20-n)と、複数の転流回路30(転流回路30-1~30-n)と、複数の電流整流部40(電流整流部40-1-1~40-1-n、および電流整流部40-2-1~40-2-n)と、制御装置500と、を備える。
直流電流遮断装置1では、それぞれの直流送電線Aに機械式接点20と転流回路30とが直列に接続され、それぞれの直流送電線Aは、直流バスCを介して互いに接続されている。例えば、直流送電線A-1では、機械式接点20-1の第1極a-1が直流バスCに接続され、機械式接点20-1の第2極b-1が転流回路30の第1端c-1に接続され、転流回路30-1の第2端d-1が直流送電線A-1の送電側に接続されている。さらに、直流電流遮断装置1では、それぞれの直流送電線Aの送電側に、複数の電流整流部40が接続されている。例えば、直流送電線A-1では、転流回路30-1の第2端d-1側に、電流整流部40-1-1の第2端f-1-1と、電流整流部40-2-1の第1端e-2-1とが接続されている。直流送電線A-2~直流送電線A-nも同様である。直流電流遮断装置1における通常の送電においては、それぞれの直流送電線Aに属する機械式接点20と、転流回路30とのそれぞれを通って電流が流れる。
直流電流遮断装置1では、直流バスCが複数の半導体遮断器10の一端に接続され、それぞれの直流送電線Aに接続された電流整流部40の直流送電線Aとは逆側の一端が、対応する接続バスBに接続され、それぞれの接続バスBが対応する半導体遮断器10の他端に接続されている。より具体的には、半導体遮断器10-1の第2端h-1と半導体遮断器10-2の第1端g-2とが互いに接続され、さらに直流バスCに接続されている。直流送電線A-1~A-nのそれぞれに接続された電流整流部40-1-1~40-1-nのそれぞれの第1端e-1-1~e-1-nが接続バスB-1に接続され、接続バスB-1は、半導体遮断器10-1の第1端g-1に接続されている。直流送電線A-1~A-nのそれぞれに接続された電流整流部40-2-1~40-2-nのそれぞれの第2端f-2-1~f-2-nが接続バスB-2に接続され、接続バスB-2は、半導体遮断器10-2の第2端h-2に接続されている。
半導体遮断器10-1は、特許請求の範囲の請求項1における「半導体遮断器」の一例であり、半導体遮断器10-2は、特許請求の範囲の請求項2における「第2の半導体遮断器」の一例である。電流整流部40-1は、特許請求の範囲の請求項1における「電流整流部」の一例であり、電流整流部40-2は、特許請求の範囲の請求項2における「第2の電流整流部」の一例である。接続バスB-1は、特許請求の範囲の請求項1における「接続バス」の一例であり、接続バスB-2は、特許請求の範囲の請求項2における「第2の接続バス」の一例である。
半導体遮断器10は、第1端gと第2端hとの間に流れる電流を許容、あるいは阻止する。図2は、第1の実施形態の半導体遮断器10の構成の一例を示す図である。半導体遮断器10は、例えば、互いに同じ向きで直列に接続された複数(図2には二つのみを示している)の半導体スイッチ部101の直列回路と、アレスタ102とが並列に接続された構成の半導体遮断器10の一例である。半導体スイッチ部101のそれぞれは、例えば、互いに並列に接続された半導体スイッチング素子とダイオードとを備える。より具体的には、半導体スイッチ部101では、ダイオードのカソードと半導体スイッチング素子のコレクタとが互いに接続され、ダイオードのアノードと半導体スイッチング素子のエミッタとが接続されている。半導体スイッチング素子のゲートは、制御装置500によって制御(制御電圧が印加)される。つまり、半導体スイッチ部101は、制御装置500によってオンまたはオフのいずれかの状態に制御される。半導体スイッチング素子は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子である。半導体スイッチング素子は、IGBTに限定されず、自己消弧を実現可能な半導体スイッチング素子であれば、いかなるスイッチング素子であってもよい。アレスタ102は、半導体スイッチ部101の直列回路が備える複数の半導体スイッチ部101がオフ状態に制御された場合に、直流送電線Aのインダクタンス分のエネルギーに起因して発生するサージエネルギーを消費(吸収)する。この構成により、半導体遮断器10は、制御装置500による半導体スイッチ部101のオンまたはオフのいずれかの状態への制御に応じて、第1端gと第2端hとの間に流れる電流を許容、あるいは阻止(遮断)する。
機械式接点20は、機械接点式のスイッチである。図3は、第1の実施形態の機械式接点20の構成の一例を示す図である。機械式接点20は、一つ、あるいは複数の機械接点式スイッチ201を備える。図3の(a)には、一つの機械接点式スイッチ201で構成した機械式接点20aの一例を示し、図3の(b)には、複数(図3の(b)には二つのみを示している)の機械接点式スイッチ201で構成した機械式接点20bの一例を示している。機械式接点20は、機械接点式スイッチ201による構成に限定されず、断路器や遮断器で構成されてもよいし、機械接点式スイッチ201と、断路器や遮断器とが混在した構成であってもよい。機械接点式スイッチ201は、制御装置500によって開極または閉極のいずれかの状態に制御される。これらの構成により、機械式接点20は、制御装置500による機械接点式スイッチ201の開極または閉極のいずれかの状態への制御に応じて、第1極aと第2極bとの間に流れる電流を許容、あるいは阻止(遮断)する。機械式接点20には、図3に示した機械式接点20aまたは機械式接点20bのいずれかの構成が適用される。
転流回路30は、第1端cと第2端dとの間に流れる電流の向きを切り替える(転流する)、あるいは遮断する。図4は、第1の実施形態の転流回路30の構成の一例を示す図である。図4の(a)~(c)には、例えば、半導体スイッチ部301と、アレスタ302と、を備える転流回路30の一例を示している。図4の(a)に示した転流回路30aは、一つの半導体スイッチ部301と、アレスタ302と、を備える構成のものである。図4の(b)に示した転流回路30bは、互いに同じ向きで直列に接続された複数(図4の(b)には二つのみを示している)の半導体スイッチ部301の直列回路と、アレスタ302とが並列に接続された構成のものである。図4の(c)に示した転流回路30cは、互いに逆向きで直列に接続された複数(図4の(c)には二つのみを示している)の半導体スイッチ部301の直列回路と、アレスタ302とが並列に接続された構成のものである。図4の(d)および(e)には、機械式接点と、半導体素子および電圧源を互いに接続したHブリッジ回路と、を備える転流回路30の一例を示している。図4の(d)に示した転流回路30dは、例えば、機械式接点303と、二つの半導体スイッチ部、二つのダイオード、および一つのコンデンサを互いに接続した単方向Hブリッジ回路304とが並列に接続された構成のものである。図4の(e)に示した転流回路30eは、例えば、機械式接点303と、四つの半導体スイッチ部、および一つのコンデンサを互いに接続した双方向Hブリッジ回路305とが並列に接続された構成のものである。図4の(f)に示した転流回路30fは、例えば、インダクタンス306、コンデンサ307、およびスイッチ回路308を直列に接続した直列回路と、機械式接点303とが並列に接続された構成の転流回路30の一例である。図4の(g)に示した転流回路30gは、例えば、インダクタンス306、コンデンサ307、および双方向Hブリッジ回路305を直列に接続した直列回路と、機械式接点303とが並列に接続された構成の転流回路30の一例である。
半導体スイッチ部301(単方向Hブリッジ回路304および双方向Hブリッジ回路305が備える半導体スイッチ部を含む)は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部101と同様に、例えば、互いに並列に接続された半導体スイッチング素子とダイオードとを備える。より具体的には、半導体スイッチ部301では、ダイオードのカソードと半導体スイッチング素子のコレクタとが互いに接続され、ダイオードのアノードと半導体スイッチング素子のエミッタとが接続されている。半導体スイッチング素子のゲートは、制御装置500によって制御(制御電圧が印加)される。半導体スイッチング素子は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部101の半導体スイッチング素子と同様に、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などのスイッチング素子である。ただし、半導体スイッチ部301が備える半導体スイッチング素子は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部101の半導体スイッチング素子よりも耐圧が低いものであってもよい。半導体スイッチング素子は、IGBTに限定されず、自己消弧を実現可能な半導体スイッチング素子であれば、いかなるスイッチング素子であってもよい。半導体スイッチ部301は、制御装置500によってオンまたはオフのいずれかの状態に制御される。アレスタ302は、半導体スイッチ部301がオフ状態に制御された場合に、対応する回路のインダクタンス分のエネルギーに起因して発生するサージエネルギーを消費(吸収)することにより、流れる電流を遮断する。ただし、アレスタ302も、半導体遮断器10が備えるアレスタ102よりも耐圧が低いものであってもよい。機械式接点303は、機械式接点20と同様の機械接点式のスイッチである。ただし、機械式接点303は、機械式接点20よりも耐圧が低いものであってもよい。機械式接点303は、制御装置500によって開極または閉極のいずれかの状態に制御される。双方向Hブリッジ回路305は、単方向Hブリッジ回路304におけるダイオードを半導体スイッチ部に代えた構成である。単方向Hブリッジ回路304と双方向Hブリッジ回路305とのそれぞれが備えるコンデンサは、「電圧源」の一例である。スイッチ回路308は、制御装置500によって開状態または閉状態のいずれかの状態に制御される。
このような構成により、転流回路30は、制御装置500からの半導体スイッチ部301(単方向Hブリッジ回路304および双方向Hブリッジ回路305が備える半導体スイッチ部を含む)や、機械式接点303、スイッチ回路308の制御に応じて、第1端cと第2端dとの間に流れる電流を転流させる、あるいは遮断する。転流回路30には、図4に示した転流回路30a~転流回路30gのいずれかの構成が適用される。
電流整流部40は、第1端eと第2端fとの間の電流を選択的な向きで流す。より具体的には、電流整流部40は、対応する接続バスBに接続された半導体遮断器10側と対応する直流送電線A側との間に流れる電流を許容し、その逆の向きに流れる電流を阻止する。図5は、第1の実施形態の電流整流部40の構成の一例を示す図である。図5の(a)に示した電流整流部40aは、例えば、互いに同じ向きで直列に接続された複数(図5の(a)には二つのみを示している)のダイオード401を備える構成の電流整流部40の一例である。図5の(b)に示した電流整流部40bは、例えば、互いに同じ向きで直列に接続された複数(図5の(b)には二つのみを示している)のサイリスタ402を備える構成の電流整流部40の一例である。図5の(c)に示した電流整流部40cは、例えば、互いに同じ向きで直列に接続された複数(図5の(c)には二つのみを示している)の半導体スイッチ部403の直列回路と、アレスタ404とが並列に接続された構成の電流整流部40の一例である。図5の(d)に示した電流整流部40dは、例えば、一つの半導体スイッチ部403とアレスタ404とが並列に接続された並列回路と、機械式接点405とが直列に接続された構成の電流整流部40の一例である。図5の(e)に示した電流整流部40eは、例えば、互いに逆向きで直列に接続された二つの半導体スイッチ部403と、アレスタ404とが並列に接続された並列回路と、機械式接点405とが直列に接続された構成の電流整流部40の一例である。図5の(f)および(g)には、機械式接点405と、半導体素子と電圧源とが互いに接続されたHブリッジ回路と、を備える電流整流部40の一例を示している。図5の(f)に示した電流整流部40fは、例えば、機械式接点405と、二つの半導体スイッチ部と、二つのダイオードと、コンデンサとが互いに接続された単方向Hブリッジ回路406とが並列に接続された構成のものである。図5の(g)に示した電流整流部40gは、例えば、機械式接点405と、四つの半導体スイッチ部と、コンデンサとが互いに接続された双方向Hブリッジ回路407とが並列に接続された構成のものである。
サイリスタ402のゲートは、制御装置500によって制御(制御電流が印加)される。半導体スイッチ部403(単方向Hブリッジ回路406および双方向Hブリッジ回路407が備える半導体スイッチ部を含む)は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部101と同様に、例えば、互いに並列に接続された半導体スイッチング素子とダイオードとを備える。より具体的には、半導体スイッチ部403では、ダイオードのカソードと半導体スイッチング素子のコレクタとが互いに接続され、ダイオードのアノードと半導体スイッチング素子のエミッタとが接続されている。半導体スイッチング素子のゲートは、制御装置500によって制御(制御電圧が印加)される。半導体スイッチング素子は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部101の半導体スイッチング素子と同様に、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などのスイッチング素子である。ただし、半導体スイッチ部403が備える半導体スイッチング素子は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部101の半導体スイッチング素子よりも耐圧が低いものであってもよい。半導体スイッチング素子は、IGBTに限定されず、自己消弧を実現可能な半導体スイッチング素子であれば、いかなるスイッチング素子であってもよい。半導体スイッチ部403は、制御装置500によってオンまたはオフのいずれかの状態に制御される。アレスタ404は、半導体スイッチ部403がオフ状態に制御された場合に、対応する直流送電線Aから対応する半導体遮断器10までの間のインダクタンス分のエネルギーに起因して発生するサージエネルギーを消費(吸収)する。ただし、アレスタ404も、半導体遮断器10が備えるアレスタ102よりも耐圧が低いものであってもよい。双方向Hブリッジ回路407は、単方向Hブリッジ回路406におけるダイオードを半導体スイッチ部に代えた構成である。単方向Hブリッジ回路406と双方向Hブリッジ回路407とのそれぞれが備えるコンデンサは、「電圧源」の一例である。機械式接点405は、機械式接点20と同様の機械接点式のスイッチである。ただし、機械式接点405は、機械式接点20よりも耐圧が低いものであってもよい。機械式接点405は、制御装置500によって開極または閉極のいずれかの状態に制御される。
このような構成により、電流整流部40は、制御装置500からのサイリスタ402や、半導体スイッチ部403(単方向Hブリッジ回路406および双方向Hブリッジ回路407が備える半導体スイッチ部を含む)、機械式接点405の制御に応じて、第1端eと第2端fとの間の電流を選択的な向きで流す。電流整流部40には、図5に示した電流整流部40a~電流整流部40gのいずれかの構成が適用される。
制御装置500は、半導体遮断器10、機械式接点20、転流回路30、および電流整流部40を制御することにより、直流電流遮断装置1における直流送電線Aの遮断および導通を制御する。制御装置500は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより以下の機能を実現するものである。制御装置500の機能のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。制御装置500の機能のうち一部または全部は、専用のLSIによって実現されてもよい。プログラムは、予め制御装置500が備えるHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が制御装置500が備えるドライブ装置に装着されることで制御装置500が備える記憶装置にインストールされてもよい。
このような構成によって、直流電流遮断装置1では、高耐圧を実現するために絶縁材や構造物の部品が大規模化してしまう半導体遮断器10を、全ての直流送電線Aを遮断するための構成要素として共有する。これにより、直流電流遮断装置1では、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができる。
直流電流遮断装置1の構成は、図1~5に示した構成に限定されない。例えば、それぞれの直流送電線Aに補助断路器が接続されている構成にしてもよいし、さらに、事故が発生した場合における電流の変化を抑制するための直流リアクトルがそれぞれの直流送電線Aの線路中に接続されている構成にしてもよい。
[直流電流遮断装置1における第1の具体例]
次に、直流電流遮断装置1の第1の具体例について説明する。図6は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1の第1の具体例の構成の一例を示す図である。図6に示した直流電流遮断装置1aは、機械式接点20に図3の(a)に示した機械式接点20aを適用し、転流回路30に図4の(e)に示した転流回路30eを適用し、電流整流部40に図5の(a)に示した電流整流部40aを適用した構成である。直流電流遮断装置1aでは、それぞれの直流送電線Aに、補助断路器60が接続されている一例を示している。より具体的には、直流送電線A-1に補助断路器60-1が、直流送電線A-2に補助断路器60-2が、直流送電線A-nに補助断路器60-nが、それぞれ接続されている一例を示している。
補助断路器60は、直流送電線Aを物理的に完全に接続または切り離すための断路器である。補助断路器60は、例えば、機械式接点20と同様の機械接点式のスイッチである。補助断路器60は、直流送電線Aが送電している時には閉極され、事故が発生した直流送電線A(事故回線)を遮断する動作が完了した後に開極される。補助断路器60は、制御装置500によって開極または閉極のいずれかの状態に制御される。補助断路器60は、補助的に利用される断路器であるため、直流電流遮断装置1においては省略されてもよい。
[直流電流遮断装置1の第1の具体例における直流送電線Aの遮断の動作]
ここで、図7~図10を参照して、例えば、直流送電線A-1~A-nが直流バスCを介して互いに接続され、直流送電線A-nから直流送電線A-1および直流送電線A-2に電流が流れているときに、直流送電線A-1において事故が発生した場合を例として、制御装置500が、直流送電線A-1を遮断させる動作の一例について説明する。図7~図10には、制御装置500によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置1a内の電流の流れを示している。
直流送電線A-1~A-nが直流バスCを介して互いに接続されて送電している定常の送電状態(初期状態)において、機械式接点20、転流回路30が備える機械式接点303、および補助断路器60の全てが閉極され、転流回路30が備える双方向Hブリッジ回路305内の半導体スイッチ部、および半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部101は全てオフ状態である。この場合、直流電流遮断装置1aでは、図7に示すように、直流送電線A-nから、直流バスCを介して直流送電線A-1および直流送電線A-2に電流が流れている状態である。ここで、直流送電線A-1に事故が発生した場合、制御装置500は、以下のような手順でそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することにより、事故が発生した直流送電線A-1を遮断する。
(手順1-1):まず、制御装置500は、事故が発生した直流送電線A-1に属する転流回路30-1が備える機械式接点303を開極させる。そして、制御装置500は、転流回路30-1が備える双方向Hブリッジ回路305内の半導体スイッチ部をオン状態にしてコンデンサの電荷を放電し、機械式接点303に流れる電流をゼロにする。これにより、直流電流遮断装置1aでは、図8に示すように、直流送電線A-1における事故電流は、転流回路30-1において、機械式接点303から双方向Hブリッジ回路305に転流する。
(手順1-2):次に、制御装置500は、事故が発生した直流送電線A-1に属する機械式接点20-1を開極させ、接続バスB-1に接続されている半導体遮断器10-1が備える半導体スイッチ部101をオン状態にし、転流回路30-1が備える双方向Hブリッジ回路305をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置1aでは、図9に示すように、直流送電線A-1における事故電流が、転流回路30-1から半導体遮断器10-1に転流するようになり、接続バスB-1、および電流整流部40-1-1を通って、直流送電線A-1に流れるようになる。これにより、機械式接点20-1に流れる電流はゼロになる。なお、機械式接点20-1を開極させるタイミングは、手順1-1のタイミングであってもよい。
(手順1-3):次に、制御装置500は、半導体遮断器10-1が備える半導体スイッチ部101をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置1aでは、直流送電線A-1の電流が遮断される。その後も、直流電流遮断装置1aでは、線路中のインダクタンス成分に蓄積されたサージエネルギーによって、事故電流がしばらくの間流れ続けるが、このサージエネルギーは、半導体遮断器10-1が備えるアレスタ102によって消費される。
(手順1-4):次に、制御装置500は、直流送電線A-1に流れる電流がゼロになった後(例えば、直流送電線A-1に流れる電流がゼロになったと見なすことができる時間が経過した後)、事故が発生した直流送電線A-1に属する補助断路器60-1を開極させる。これにより、制御装置500は、事故が発生した直流送電線A-1を電気的に隔離する動作を完了する。これにより、直流電流遮断装置1aでは、図10に示すように、事故が発生していない直流送電線A-nから他の直流送電線A(図10では、直流送電線A-2)への送電が維持される。
このような手順によって、直流電流遮断装置1aでは、事故が発生した直流送電線A-1に属する機械式接点20-1、転流回路30-1が備える機械式接点303、および補助断路器60-1を開極させることによって事故が発生した直流送電線A-1を遮断し、事故が発生していない他の直流送電線Aにおける送電を維持することができる。
そして、直流電流遮断装置1aでは、半導体遮断器10を共有しているため、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができる。
上述した直流電流遮断装置1aにおける直流送電線A-1の遮断動作の一例では、事故電流を、接続バスB-1に接続されている半導体遮断器10-1に転流させる場合について説明した。しかし、事故電流は、図7~図10に示した向きと反対方向に流れる場合もある。この場合、制御装置500は、事故電流を接続バスB-2に接続されている半導体遮断器10-2に転流させるように制御すればよい。より具体的には、制御装置500は、手順1-2において、半導体遮断器10-2が備える半導体スイッチ部101をオン状態にして事故電流を半導体遮断器10-2に転流させ、手順1-3において、半導体遮断器10-2が備える半導体スイッチ部101をオフ状態にして事故電流を遮断すればよい。
[直流電流遮断装置1における第2の具体例]
次に、直流電流遮断装置1の第2の具体例について説明する。図11は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1の第2の具体例の構成の一例を示す図である。図11に示した直流電流遮断装置1bは、機械式接点20に図3の(a)に示した機械式接点20aを適用し、転流回路30に図4の(c)に示した転流回路30cを適用し、電流整流部40に図5の(a)に示した電流整流部40aを適用した構成である。直流電流遮断装置1bでは、直流電流遮断装置1aにおいてそれぞれの直流送電線Aに接続されていた補助断路器60を省略している。
直流電流遮断装置1bの構成では、定常の送電状態における導通損失が転流回路30で発生するが、事故が発生した直流送電線Aを遮断するときに事故電流を半導体遮断器10に転流させる手順は、直流電流遮断装置1aに比べて簡素である。より具体的には、直流電流遮断装置1bにおいて事故が発生した直流送電線Aを遮断するときの制御装置500の手順では、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部101をオン状態にしてから、転流回路30が備える半導体スイッチ部301をオフ状態にすることにより、機械式接点20に流れる事故電流を半導体遮断器10に転流させる。これにより、直流電流遮断装置1bにおいても、直流電流遮断装置1aと同様に、事故が発生した直流送電線Aを遮断し、事故が発生していない他の直流送電線Aにおける送電を維持することができる。
そして、直流電流遮断装置1bでも、半導体遮断器10を共有しているため、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができる。
[直流電流遮断装置1における変形例]
次に、直流電流遮断装置1の変形例について説明する。図12は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1の変形例の構成の一例を示す図である。図12においては、図1に示した直流電流遮断装置1と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付している。第1の変形例の直流電流遮断装置1-2は、例えば、半導体遮断器10-1と、複数の機械式接点20(機械式接点20-1~20-n)と、複数の転流回路30(転流回路30-1~30-n)と、複数の電流整流部40(電流整流部40-1-1~40-1-n)と、制御装置500と、を備える。直流電流遮断装置1-2では、図1に示した直流電流遮断装置1から、接続バスB-2に接続されたそれぞれの構成要素が省略されている。直流電流遮断装置1-2が備えるその他の構成要素やその接続は、直流電流遮断装置1と同様である。従って、直流電流遮断装置1-2でも、半導体遮断器10を、全ての直流送電線Aを遮断するための構成要素として共有し、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができる。
[直流電流遮断装置1の変形例における具体例]
ここで、直流電流遮断装置1-2の具体例について説明する。図13は、第1の実施形態の変形例の直流電流遮断装置1-2の第1の具体例の構成の一例を示す図である。図13に示した直流電流遮断装置1-2aは、機械式接点20に図3の(a)に示した機械式接点20aを適用し、転流回路30に図4の(d)に示した転流回路30dを適用し、電流整流部40に図5の(a)に示した電流整流部40aを適用した構成である。直流電流遮断装置1-2aの構成は、図6に示した直流電流遮断装置1aから、接続バスB-2に接続されたそれぞれの構成要素を省略した構成とほぼ同様の構成である。ただし、直流電流遮断装置1-2aでは、直流電流遮断装置1aにおいてそれぞれの直流送電線Aに接続されていた補助断路器60も省略している。
図14は、第1の実施形態の変形例の直流電流遮断装置1-2の第2の具体例の構成の一例を示す図である。図14に示した直流電流遮断装置1-2bは、機械式接点20に図3の(a)に示した機械式接点20aを適用し、転流回路30に図4の(c)に示した転流回路30cを適用し、電流整流部40に図5の(a)に示した電流整流部40aを適用した構成である。直流電流遮断装置1-2bの構成は、図11に示した直流電流遮断装置1bから、接続バスB-2に接続されたそれぞれの構成要素を省略した構成である。
直流電流遮断装置1-2aや直流電流遮断装置1-2bにおいて事故が発生した直流送電線Aを遮断するときに制御装置500がそれぞれの構成要素を制御する手順は、上述した直流電流遮断装置1aや直流電流遮断装置1bにおける手順と同様である。従って、直流電流遮断装置1-2aや直流電流遮断装置1-2bにおいても、直流電流遮断装置1aや直流電流遮断装置1bと同様に、事故が発生した直流送電線Aを遮断し、事故が発生していない他の直流送電線Aにおける送電を維持することができる。
そして、直流電流遮断装置1-2aや直流電流遮断装置1-2bでも、半導体遮断器10を共有しているため、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができる。さらに、直流電流遮断装置1-2aや直流電流遮断装置1-2bでは、接続バスB-2に接続されたそれぞれの構成要素が省略されている。このため、直流電流遮断装置1-2aや直流電流遮断装置1-2bでは、直流電流遮断装置1aや直流電流遮断装置1bよりも、さらに部品点数を削減した直流電流遮断装置を実現することができる。ただし、直流電流遮断装置1-2aや直流電流遮断装置1-2bは、図7~図10を参照して説明した直流電流遮断装置1aの遮断動作における事故電流の向き、つまり、事故電流の遮断方向が、直流電流遮断装置1-2aや直流電流遮断装置1-2bから直流送電線Aに向かう方向に限定される。
上記説明したように、第1の実施形態の直流電流遮断装置1によれば、多端子の直流送電システムに適用され、一部(ここでは、半導体遮断器10)を共通化してコストやサイズを低減することができる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。図15は、第2の実施形態に係る直流電流遮断装置の構成の一例を示す図である。図15においては、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付している。図15には、複数の直流送電線A(直流送電線A-1~A-n)の正側あるいは負側のいずれかの節点部分に構成する直流電流遮断装置2の一例を示している。直流電流遮断装置2は、例えば、複数の半導体遮断器10(半導体遮断器10-1、および10-2)と、複数の機械式接点20(機械式接点20-1~20-n)と、複数の転流回路30(転流回路30-1-1~30-1-n、および転流回路30-2-1~30-2-n)と、複数の電流整流部40(電流整流部40-1-1~40-1-n、および電流整流部40-2-1~40-2-n)と、制御装置500と、を備える。直流電流遮断装置2は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1が備える機械式接点20に直列に接続された転流回路30が省略され、直流電流遮断装置1が備える電流整流部40に転流回路30が直列に接続された構成である。図15に示した直流電流遮断装置2では、電流整流部40の直流送電線A側に転流回路30が直列に接続された構成を示しているが、転流回路30は、断路器40の接続バスB側に直列に接続されてもよい。
直流電流遮断装置2では、それぞれの直流送電線Aに機械式接点20が直列に接続され、それぞれの直流送電線Aは、直流バスCを介して互いに接続されている。例えば、直流送電線A-1では、機械式接点20-1の第1極a-1が直流バスCに接続され、機械式接点20-1の第2極b-1が直流送電線A-1の送電側に接続されている。さらに、直流電流遮断装置2では、それぞれの直流送電線Aの送電側に、転流回路30と電流整流部40とが直列に接続された複数の接続回路が接続されている。例えば、直流送電線A-1では、機械式接点20-1の第2極b-1側に、転流回路30-1-1の第1端c-1-1と電流整流部40-1-1の第2端f-1-1とが接続された接続回路における転流回路30-1-1の第2端d-1-1と、転流回路30-2-1の第2端d-2-1と電流整流部40-2-1の第1端e-2-1とが接続された接続回路における転流回路30-2-1の第1端c-2-1とが接続されている。直流送電線A-2~直流送電線A-nも同様である。直流電流遮断装置2における通常の送電においては、それぞれの直流送電線Aに属する機械式接点20を通って電流が流れる。
直流電流遮断装置2では、直流バスCが複数の半導体遮断器10の一端に接続され、それぞれの直流送電線Aに接続された接続回路の直流送電線Aとは逆側の一端が、対応する接続バスBに接続され、それぞれの接続バスBが対応する半導体遮断器10の他端に接続されている。より具体的には、半導体遮断器10-1の第2端h-1と半導体遮断器10-2の第1端g-2とが互いに接続され、さらに直流バスCに接続されている。直流送電線A-1~A-nのそれぞれに接続された接続回路における電流整流部40-1-1~40-1-nのそれぞれの第1端e-1-1~e-1-nが接続バスB-1に接続され、接続バスB-1は、半導体遮断器10-1の第1端g-1に接続されている。直流送電線A-1~A-nのそれぞれに接続された接続回路における電流整流部40-2-1~40-2-nのそれぞれの第2端f-2-1~f-2-nが接続バスB-2に接続され、接続バスB-2は、半導体遮断器10-2の第2端h-2に接続されている。
半導体遮断器10-1は、特許請求の範囲の請求項3における「半導体遮断器」の一例であり、半導体遮断器10-2は、特許請求の範囲の請求項4における「第2の半導体遮断器」の一例である。転流回路30-1は、特許請求の範囲の請求項3における「転流回路」の一例であり、転流回路30-2は、特許請求の範囲の請求項4における「第2の転流回路」の一例である。電流整流部40-1は、特許請求の範囲の請求項3における「電流整流部」の一例であり、電流整流部40-2は、特許請求の範囲の請求項4における「第2の電流整流部」の一例である。転流回路30-1と電流整流部40-1とが直列に接続された接続回路は、特許請求の範囲の請求項3における「接続部」の一例であり、転流回路30-2と電流整流部40-2とが直列に接続された接続回路は、特許請求の範囲の請求項4における「第2の接続部」の一例である。接続バスB-1は、特許請求の範囲の請求項3における「接続バス」の一例であり、接続バスB-2は、特許請求の範囲の請求項4における「第2の接続バス」の一例である。
直流電流遮断装置2が備える半導体遮断器10、および機械式接点20のそれぞれの構成は、直流電流遮断装置1と同様である。つまり、直流電流遮断装置2においても、半導体遮断器10には、図2に示した半導体遮断器10の構成が適用され、機械式接点20には、図3に示した機械式接点20aまたは機械式接点20bのいずれかの構成が適用される。
直流電流遮断装置2が備える転流回路30、および電流整流部40のそれぞれの構成は、直流電流遮断装置1と同様の構成のもの含むが、直流電流遮断装置1と異なる構成のもの含む。図16は、第2の実施形態の転流回路30の構成の一例を示す図である。図16の(h)に示した転流回路30hは、例えば、半導体スイッチ部301と、コンデンサ307と、を備える構成の転流回路30の一例である。図16の(i)および(j)には、Hブリッジ回路を備える転流回路30の一例を示している。図16の(i)に示した転流回路30iは、例えば、単方向Hブリッジ回路304を備える構成のものである。図16の(j)に示した転流回路30jは、例えば、双方向Hブリッジ回路305を備える構成のものである。直流電流遮断装置2が備える転流回路30には、図16に示した転流回路30h~転流回路30j、あるいは図4に示した転流回路30d~転流回路30gのいずれかの構成、つまり、転流回路30a~転流回路30c以外のいずれかの構成が適用される。直流電流遮断装置2が備える電流整流部40には、図5に示した電流整流部40a~電流整流部40eのいずれかの構成、つまり、電流整流部40fおよび電流整流部40g以外のいずれかの構成が適用される。
このような構成によって、直流電流遮断装置2でも、直流電流遮断装置1と同様に、高耐圧を実現するために絶縁材や構造物の部品が大規模化してしまう半導体遮断器10を、全ての直流送電線Aを遮断するための構成要素として共有する。これにより、直流電流遮断装置2でも、直流電流遮断装置1と同様に、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができる。
直流電流遮断装置2の構成は、図15に示した構成に限定されない。例えば、それぞれの直流送電線Aに補助断路器が接続されている構成にしてもよいし、さらに、事故が発生した場合における電流の変化を抑制するための直流リアクトルがそれぞれの直流送電線Aの線路中に接続されている構成にしてもよい。
[直流電流遮断装置2における変形例]
次に、直流電流遮断装置2の変形例について説明する。図17は、第2の実施形態の直流電流遮断装置2の変形例の構成の一例を示す図である。図17においては、図15に示した直流電流遮断装置2と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付している。変形例の直流電流遮断装置2-2は、例えば、半導体遮断器10-1と、複数の機械式接点20(機械式接点20-1~20-n)と、複数の転流回路30(転流回路30-1-1~30-1-n)と、複数の電流整流部40(電流整流部40-1-1~40-1-n)と、制御装置500と、を備える。直流電流遮断装置2-2では、図15に示した直流電流遮断装置2から、接続バスB-2に接続されたそれぞれの構成要素が省略されている。直流電流遮断装置2-2が備えるその他の構成要素やその接続は、直流電流遮断装置2と同様である。従って、直流電流遮断装置2-2でも、半導体遮断器10を、全ての直流送電線Aを遮断するための構成要素として共有し、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができる。
直流電流遮断装置2-2において事故が発生した直流送電線Aを遮断するときに制御装置500がそれぞれの構成要素を制御する手順も、第1の実施形態の直流電流遮断装置1(より具体的には、例えば、直流電流遮断装置1の変形例である直流電流遮断装置1-2aや直流電流遮断装置1-2b)における手順と等価なものになるようにすればよい。これにより、直流電流遮断装置2-2においても、直流電流遮断装置1(直流電流遮断装置1-2aや直流電流遮断装置1-2b)と同様に、事故が発生した直流送電線Aを遮断し、事故が発生していない他の直流送電線Aにおける送電を維持することができる。
そして、直流電流遮断装置2-2でも、半導体遮断器10を共有しているため、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができ、接続バスB-2に接続されたそれぞれの構成要素が省略されているため、直流電流遮断装置2よりも、さらに部品点数を削減した直流電流遮断装置を実現することができる。ただし、直流電流遮断装置2-2でも、直流電流遮断装置1(直流電流遮断装置1-2aや直流電流遮断装置1-2b)と同様に、事故電流の遮断方向が、直流電流遮断装置2-2から直流送電線Aに向かう方向に限定される。
[直流電流遮断装置2における具体例]
次に、直流電流遮断装置2の具体例について説明する。図18は、第2の実施形態の直流電流遮断装置2の具体例の構成の一例を示す図である。図18に示した直流電流遮断装置2aは、機械式接点20に図3の(a)に示した機械式接点20aを適用し、転流回路30に図16の(i)に示した転流回路30iを適用し、電流整流部40に図5の(a)に示した電流整流部40aを適用した構成である。直流電流遮断装置2aにおいて、接続バスB-2に接続されたそれぞれの構成要素を省略すると、図17に示した直流電流遮断装置2-2の具体例の構成の一例となる。
直流電流遮断装置2aにおいて事故が発生した直流送電線Aを遮断するときに制御装置500がそれぞれの構成要素を制御する手順は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1における手順と等価なものになるようにすればよい。これにより、直流電流遮断装置2aにおいても、直流電流遮断装置1と同様に、事故が発生した直流送電線Aを遮断し、事故が発生していない他の直流送電線Aにおける送電を維持することができる。
上記説明したように、第2の実施形態の直流電流遮断装置2によれば、多端子の直流送電システムに適用され、一部(ここでは、半導体遮断器10)を共通化してコストやサイズを低減することができる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。図19は、第3の実施形態に係る直流電流遮断装置の構成の一例を示す図である。図19においては、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付している。図19には、複数の直流送電線A(直流送電線A-1~A-n)の正側あるいは負側のいずれかの節点部分に構成する直流電流遮断装置3の一例を示している。直流電流遮断装置3は、例えば、半導体遮断器10と、複数の機械式接点20(機械式接点20-1~20-n)と、複数の転流回路30(転流回路30-1~30-n)と、複数の電流整流部40(電流整流部40-1-1~40-1-n、および電流整流部40-2-1~40-2-n)と、制御装置500と、を備える。直流電流遮断装置3は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1が備える半導体遮断器10が一つになり、直流バスCと半導体遮断器10とが直接接続されていない構成である。このため、直流電流遮断装置3では、半導体遮断器10が、接続バスB-1と接続バスB-2との間に流れる電流を遮断する機能を持つことになる。
直流電流遮断装置3では、それぞれの直流送電線Aに機械式接点20と転流回路30とが直列に接続され、それぞれの直流送電線Aは、直流バスCを介して互いに接続されている。例えば、直流送電線A-1では、機械式接点20-1の第1極a-1が直流バスCに接続され、機械式接点20-1の第2極b-1が転流回路30の第1端c-1に接続され、転流回路30-1の第2端d-1が直流送電線A-1の送電側に接続されている。さらに、直流電流遮断装置3では、それぞれの直流送電線Aの送電側に、複数の電流整流部40が接続されている。例えば、直流送電線A-1では、転流回路30-1の第2端d-1側に、電流整流部40-1-1の第2端f-1-1と、電流整流部40-2-1の第1端e-2-1とが接続されている。直流送電線A-2~直流送電線A-nも同様である。直流電流遮断装置3における通常の送電においては、それぞれの直流送電線Aに属する機械式接点20と、転流回路30とのそれぞれを通って電流が流れる。
直流電流遮断装置3では、それぞれの直流送電線Aに接続された電流整流部40の直流送電線Aとは逆側の一端が、対応する接続バスBに接続され、それぞれの接続バスBが半導体遮断器10の一端に接続されている。より具体的には、直流送電線A-1~A-nのそれぞれに接続された電流整流部40-1-1~40-1-nのそれぞれの第1端e-1-1~e-1-nが接続バスB-1に接続され、接続バスB-1は、半導体遮断器10の第1端gに接続されている。直流送電線A-1~A-nのそれぞれに接続された電流整流部40-2-1~40-2-nのそれぞれの第2端f-2-1~f-2-nが接続バスB-2に接続され、接続バスB-2は、半導体遮断器10の第2端hに接続されている。
電流整流部40-1は、特許請求の範囲の請求項5における「電流整流部」の一例であり、電流整流部40-2は、特許請求の範囲の請求項5における「第2の電流整流部」の一例である。接続バスB-1は、特許請求の範囲の請求項5における「接続バス」の一例であり、接続バスB-2は、特許請求の範囲の請求項5における「第2の接続バス」の一例である。
直流電流遮断装置3が備える半導体遮断器10、機械式接点20、転流回路30、および電流整流部40のそれぞれの構成は、直流電流遮断装置1と同様である。つまり、直流電流遮断装置3においても、半導体遮断器10には、図2に示した半導体遮断器10の構成が適用され、機械式接点20には、図3に示した機械式接点20aまたは機械式接点20bのいずれかの構成が適用され、転流回路30には、図4に示した転流回路30a~転流回路30gのいずれかの構成が適用され、電流整流部40には、図5に示した電流整流部40a~電流整流部40gのいずれかの構成が適用される。
このような構成によって、直流電流遮断装置3でも、直流電流遮断装置1と同様に、高耐圧を実現するために絶縁材や構造物の部品が大規模化してしまう半導体遮断器10を、全ての直流送電線Aを遮断するための構成要素として共有する。これにより、直流電流遮断装置3でも、直流電流遮断装置1と同様に、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができる。
直流電流遮断装置3の構成は、図19に示した構成に限定されない。例えば、それぞれの直流送電線Aに補助断路器が接続されている構成にしてもよいし、さらに、事故が発生した場合における電流の変化を抑制するための直流リアクトルがそれぞれの直流送電線Aの線路中に接続されている構成にしてもよい。
[直流電流遮断装置3における具体例]
次に、直流電流遮断装置3の具体例について説明する。図20は、第3の実施形態の直流電流遮断装置3の具体例の構成の一例を示す図である。図20に示した直流電流遮断装置3aは、機械式接点20に図3の(a)に示した機械式接点20aを適用し、転流回路30に図4の(d)に示した転流回路30dを適用し、電流整流部40に図5の(a)に示した電流整流部40aを適用した構成である。
[直流電流遮断装置3の具体例における直流送電線Aの遮断の動作]
ここで、図21~図24を参照して、例えば、直流送電線A-1~A-nが直流バスCを介して互いに接続され、直流送電線A-nから直流送電線A-1および直流送電線A-2に電流が流れているときに、直流送電線A-1において事故が発生した場合を例として、制御装置500が、直流送電線A-1を遮断させる動作の一例について説明する。図21~図24には、制御装置500によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置3a内の電流の流れを示している。
直流送電線A-1~A-nが直流バスCを介して互いに接続されて送電している定常の送電状態(初期状態)において、機械式接点20、および転流回路30が備える機械式接点303の全てが閉極され、転流回路30が備える単方向Hブリッジ回路304内の半導体スイッチ部、および半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部101は全てオフ状態である。この場合、直流電流遮断装置3aでは、図21に示すように、直流送電線A-nから、直流バスCを介して直流送電線A-1および直流送電線A-2に電流が流れている状態である。ここで、直流送電線A-1に事故が発生した場合、制御装置500は、以下のような手順でそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することにより、事故が発生した直流送電線A-1を遮断する。
(手順2-1):まず、制御装置500は、事故が発生した直流送電線A-1に属する転流回路30-1が備える機械式接点303を開極させる。そして、制御装置500は、転流回路30-1が備える単方向Hブリッジ回路304内の半導体スイッチ部をオン状態にしてコンデンサの電荷を放電し、機械式接点303に流れる電流をゼロにする。これにより、直流電流遮断装置3aでは、図22に示すように、直流送電線A-1における事故電流は、転流回路30-1において、機械式接点303から単方向Hブリッジ回路304に転流する。
(手順2-2):次に、制御装置500は、事故が発生した直流送電線A-1に属する機械式接点20-1を開極させ、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部101をオン状態にし、転流回路30-1が備える単方向Hブリッジ回路304をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置3aでは、図23に示すように、直流送電線A-1における事故電流が、転流回路30-1から半導体遮断器10に転流するようになり、電流整流部40-2-n、接続バスB-2、半導体遮断器10、接続バスB-1、および電流整流部40-1-1を通って、直流送電線A-1に流れるようになる。これにより、機械式接点20-1に流れる電流はゼロになる。なお、機械式接点20-1を開極させるタイミングは、手順2-1のタイミングであってもよい。
(手順2-3):次に、制御装置500は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部101をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置3aでは、直流送電線A-1の電流が遮断される。その後も、直流電流遮断装置3aでは、線路中のインダクタンス成分に蓄積されたサージエネルギーによって、事故電流がしばらくの間流れ続けるが、このサージエネルギーは、半導体遮断器10が備えるアレスタ102によって消費される。
(手順2-4):その後、制御装置500は、直流送電線A-1に流れる電流がゼロになると(例えば、直流送電線A-1に流れる電流がゼロになったと見なすことができる時間が経過した後)、事故が発生した直流送電線A-1を電気的に隔離する動作を完了する。これにより、直流電流遮断装置3aでは、図24に示すように、事故が発生していない直流送電線A-nから他の直流送電線A(図24では、直流送電線A-2)への送電が維持される。
このような手順によって、直流電流遮断装置3aでは、事故が発生した直流送電線A-1に属する機械式接点20-1、および転流回路30-1が備える機械式接点303を開極させることによって事故が発生した直流送電線A-1を遮断し、事故が発生していない他の直流送電線Aにおける送電を維持することができる。
そして、直流電流遮断装置3aでも、半導体遮断器10を共有しているため、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができる。しかも、直流電流遮断装置3aでは、図21~図24に示した向きと反対方向に流れる事故電流を遮断する場合も、同じ半導体遮断器10で対応することができる。この場合、転流回路30としては、双方向の電流を転流させられる構成のもの(例えば、図4の(e)に示した双方向Hブリッジ回路305を用いた転流回路30e)を適用する。
[直流電流遮断装置3における第1の変形例]
次に、直流電流遮断装置3の第1の変形例について説明する。図25は、第3の実施形態の直流電流遮断装置3の第1の変形例の構成の一例を示す図である。図25においては、図19に示した直流電流遮断装置3と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付している。第1の変形例の直流電流遮断装置3-2は、例えば、半導体遮断器10と、複数の機械式接点20(機械式接点20-1~20-n)と、複数の転流回路30(転流回路30-1~30-n)と、複数の電流整流部40(電流整流部40-1-1~40-1-n、および電流整流部40-2-1~40-2-n)と、制御装置500と、を備える。
直流電流遮断装置3-2は、直流電流遮断装置3のようにそれぞれの直流送電線Aが直流バスCを介して互いに接続されている構成ではなく、図25に示した節点接続部E内のように、それぞれの直流送電線Aが、機械式接点20および転流回路30を介して互いに接続されている構成である。より具体的には、直流送電線A-1に属する機械式接点20-1の第1極a-1は、直流送電線A-1に接続され、直流送電線A-1に属する転流回路30-1の第2端d-1は、直流送電線A-2に接続されている。直流送電線A-2に属する機械式接点20-2の第1極a-2は、直流送電線A-2に接続され、直流送電線A-2に属する転流回路30-2の第2端d-2は、直流送電線A-3(不図示)に接続されている。同様に、不図示の直流送電線A-[n-1]に属する不図示の機械式接点20-[n-1]の第1極a-[n-1]は、不図示の直流送電線A-[n-1]に接続され、不図示の直流送電線A-[n-1]に属する不図示の転流回路30-[n-1]の第2端d-[n-1]は、直流送電線A-nに接続されている。そして、直流送電線A-nに属する転流回路30-nの第2端d-nは、直流送電線A-nに接続され、直流送電線A-nに属する機械式接点20-nの第1極a-nは、直流送電線A-1に接続されている。例えば、直流電流遮断装置3における直流送電線Aの節点部分の結線をスター結線(星形結線、Y結線)といった場合、直流電流遮断装置3-2における直流送電線Aの節点部分の結線は、デルタ結線(Δ結線、三角結線)ということもできる。このため、直流電流遮断装置3-2では、それぞれの直流送電線Aに属する転流回路30が、接続されている二つの直流送電線Aの間に流れる双方向の電流を転流させる機能も持つことになる。
電流整流部40-1は、特許請求の範囲の請求項6における「電流整流部」の一例であり、電流整流部40-2は、特許請求の範囲の請求項6における「第2の電流整流部」の一例である。接続バスB-1は、特許請求の範囲の請求項6における「接続バス」の一例であり、接続バスB-2は、特許請求の範囲の請求項6における「第2の接続バス」の一例である。
直流電流遮断装置3-2における直流送電線Aの節点部分の結線は、上述した結線に限定されるものではなく、隣接する直流送電線A同士が機械式接点20および転流回路30を介して互いに接続されていれば、直流送電線A-1と直流送電線A-nとの機械式接点20および転流回路30を介した接続は、必ずしも必要ではない。つまり、上述したように、直流送電線A-1と直流送電線A-nとを接続して全ての直流送電線Aをループさせる機械式接点20および転流回路30(図25では、機械式接点20-nおよび転流回路30-nは、省略してもよい。
直流電流遮断装置3-2が備えるその他の構成要素やその接続は、直流電流遮断装置3と同様である。従って、直流電流遮断装置3-2でも、半導体遮断器10を、全ての直流送電線Aを遮断するための構成要素として共有し、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができる。さらに、直流電流遮断装置3-2において、上述したように、全ての直流送電線Aをループさせる機械式接点20および転流回路30を省略した場合には、直流電流遮断装置3よりも、さらに部品点数を削減した直流電流遮断装置を実現することができる。
直流電流遮断装置3-2において事故が発生した直流送電線Aを遮断するときに制御装置500がそれぞれの構成要素を制御する手順は、上述した直流電流遮断装置3aにおける手順と等価なものになるようにすればよい。これにより、直流電流遮断装置3-2においても、直流電流遮断装置3(直流電流遮断装置3a)と同様に、事故が発生した直流送電線Aを遮断し、事故が発生していない他の直流送電線Aにおける送電を維持することができる。
[直流電流遮断装置3における第2の変形例]
次に、直流電流遮断装置3の第2の変形例について説明する。図26は、第3の実施形態の直流電流遮断装置3の第2の変形例の構成の一例を示す図である。図26においては、図19に示した直流電流遮断装置3と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付している。第2の変形例の直流電流遮断装置3-3は、例えば、半導体遮断器10と、複数の機械式接点20(機械式接点20-1~20-n、機械式接点20-1-1~20-1-n、および機械式接点20-2-1~20-2-n)と、複数の転流回路30(転流回路30-1~30-n、転流回路30-1-1~30-1-n、および転流回路30-2-1~30-2-n)と、制御装置500と、を備える。
直流電流遮断装置3-3は、直流電流遮断装置3においてそれぞれの直流送電線Aに接続されているそれぞれの電流整流部40が、機械式接点20と転流回路30とが直列に接続された複数の接続回路に代わった構成である。例えば、直流送電線A-1では、転流回路30-1の第2端d-1側に、転流回路30-1-1の第1端c-1-1と機械式接点20-1-1の第2極b-1-1とが接続された接続回路における転流回路30-1-1の第2端d-1-1と、転流回路30-2-1の第2端d-2-1と機械式接点20-2-1の第1極a-2-1とが接続された接続回路における転流回路30-2-1の第1端c-2-1とが接続されている。直流送電線A-2~直流送電線A-nも同様である。
直流電流遮断装置3-3では、それぞれの直流送電線Aに接続された接続回路の直流送電線Aとは逆側の一端が、対応する接続バスBに接続され、それぞれの接続バスBが半導体遮断器10の一端に接続されている。より具体的には、直流送電線A-1~A-nのそれぞれに接続された接続回路における機械式接点20-1-1~20-1-nのそれぞれの第1極a-1-1~a-1-nが接続バスB-1に接続され、接続バスB-1は、半導体遮断器10の第1端gに接続されている。直流送電線A-1~A-nのそれぞれに接続された接続回路における機械式接点20-2-1~20-2-nのそれぞれの第2極b-2-1~b-2-nが接続バスB-2に接続され、接続バスB-2は、半導体遮断器10の第2端hに接続されている。
機械式接点20は、特許請求の範囲の請求項7における「第1の機械式接点」の一例であり、機械式接点20-1は、特許請求の範囲の請求項7における「第2の機械式接点」の一例であり、機械式接点20-2は、特許請求の範囲の請求項7における「第3の機械式接点」の一例である。転流回路30は、特許請求の範囲の請求項7における「第1の転流回路」の一例であり、転流回路30-1は、特許請求の範囲の請求項7における「第2の転流回路」の一例であり、転流回路30-2は、特許請求の範囲の請求項7における「第3の転流回路」の一例である。機械式接点20-1と転流回路30-1とが直列に接続された接続回路は、特許請求の範囲の請求項7における「第1の接続部」の一例であり、機械式接点20-2と転流回路30-2とが直列に接続された接続回路は、特許請求の範囲の請求項7における「第2の接続部」の一例である。接続バスB-1は、特許請求の範囲の請求項7における「第1の接続バス」の一例であり、接続バスB-2は、特許請求の範囲の請求項7における「第2の接続バス」の一例である。
直流電流遮断装置3-3が備える半導体遮断器10、および機械式接点20のそれぞれの構成は、直流電流遮断装置1と同様である。つまり、直流電流遮断装置3-3においても、半導体遮断器10には、図2に示した半導体遮断器10の構成が適用され、機械式接点20には、図3に示した機械式接点20aまたは機械式接点20bのいずれかの構成が適用される。直流電流遮断装置3-3が備える転流回路30の構成は、直流電流遮断装置1と同様の構成のものと、第2の実施形態の直流電流遮断装置2と同様の構成のものとを含む。より具体的には、転流回路30-1~30-nには、図4に示した転流回路30a~転流回路30cのいずれかの構成が適用され、転流回路30-1-1~30-1-n、および転流回路30-2-1~30-2-nには、図4に示した転流回路30d~転流回路30g、あるいは図16に示した転流回路30h~転流回路30jのいずれかの構成が適用される。
直流電流遮断装置3-3が備えるその他の構成要素やその接続は、直流電流遮断装置3と同様である。従って、直流電流遮断装置3-3でも、半導体遮断器10を、全ての直流送電線Aを遮断するための構成要素として共有し、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができる。
直流電流遮断装置3-3において事故が発生した直流送電線Aを遮断するときに制御装置500がそれぞれの構成要素を制御する手順は、上述した直流電流遮断装置3aにおける手順と等価なものになるようにすればよい。これにより、直流電流遮断装置3-3においても、直流電流遮断装置3(直流電流遮断装置3a)と同様に、事故が発生した直流送電線Aを遮断し、事故が発生していない他の直流送電線Aにおける送電を維持することができる。
[直流電流遮断装置3における第3の変形例]
次に、直流電流遮断装置3の第3の変形例について説明する。図27は、第3の実施形態の直流電流遮断装置3の第3の変形例の構成の一例を示す図である。図27においては、図19に示した直流電流遮断装置3と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付している。第3の変形例の直流電流遮断装置3-4は、例えば、半導体遮断器10と、複数の機械式接点20(機械式接点20-1~20-n)と、複数の転流回路30(転流回路30-1~30-n)と、複数の電流整流部40(電流整流部40-1-1~40-1-n、電流整流部40-2-1、および電流整流部40-2-2)と、制御装置500と、を備える。
直流電流遮断装置3-4は、直流電流遮断装置3においてそれぞれの直流送電線Aに接続されている電流整流部40の内、一部の電流整流部40を省略した構成である。より具体的には、接続バスB-2に接続された電流整流部40-2-3(不図示)~40-2-nを省略して、接続バスB-2側の電流整流部40-2を二つのみにした構成である。これは、直流電流遮断装置3では、上述したように、半導体遮断器10が、接続バスB-1と接続バスB-2との間に流れる電流を遮断する機能も持つため、接続バスB-2側の電流整流部40-2は、少なくとも二つあれば、事故が発生した直流送電線Aを遮断する遮断動作を行うことができるからである。
直流電流遮断装置3-4では、転流回路30-1~30-nに、図4に示した転流回路30a~転流回路30cのいずれかの構成、つまり、転流回路30d~転流回路30g以外のいずれかの構成が適用される。
直流電流遮断装置3-4において事故が発生した直流送電線Aを遮断するときに制御装置500がそれぞれの構成要素を制御する手順は、上述した直流電流遮断装置3aにおける手順と等価なものになるようにすればよい。これにより、直流電流遮断装置3-4においても、直流電流遮断装置3(直流電流遮断装置3a)と同様に、事故が発生した直流送電線Aを遮断し、事故が発生していない他の直流送電線Aにおける送電を維持することができる。
そして、直流電流遮断装置3-4でも、半導体遮断器10を共有しているため、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができ、接続バスB-2側の電流整流部40-2は二つのみにしているため、直流電流遮断装置3よりも、さらに部品点数を削減した直流電流遮断装置を実現することができる。
第3の変形例のような構成は、図25に示した第1の変形例の直流電流遮断装置3-2や、図26に示した第2の変形例の直流電流遮断装置3-3においても適用することができる。このとき、直流電流遮断装置3-3では、接続バスB-2側の接続回路を二つ(例えば、転流回路30-2-1と機械式接点20-2-1とが接続された接続回路と、転流回路30-2-2と機械式接点20-2-2とが接続された接続回路との二つ)のみにした構成にする。つまり、直流電流遮断装置3-3では、接続バスB-2側の機械式接点20と転流回路30とを少なくとも二つずつにした構成にする。
上記説明したように、第3の実施形態の直流電流遮断装置3によれば、多端子の直流送電システムに適用され、一部(ここでは、半導体遮断器10)を共通化してコストやサイズを低減することができる。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について説明する。図28は、第4の実施形態に係る直流電流遮断装置の構成の一例を示す図である。図28においては、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付している。図28には、複数の直流送電線A(直流送電線A-1~A-n)の正側あるいは負側のいずれかの節点部分に構成する直流電流遮断装置4の一例を示している。直流電流遮断装置4は、例えば、半導体遮断器10と、複数の機械式接点20(機械式接点20-1-1~20-1-n、および機械式接点20-2-1~20-2-n)と、複数の転流回路30(転流回路30-1-1~30-1-n、および転流回路30-2-1~30-2-n)と、制御装置500と、を備える。直流電流遮断装置4は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1においてそれぞれの直流送電線Aに直列に接続されていた機械式接点20と転流回路30とが省略された構成である。このため、直流電流遮断装置4では、直流バスCも省略されている。このため、直流電流遮断装置4では、接続バスBを介して、それぞれの直流送電線Aが半導体遮断器10に接続されることになる。
直流電流遮断装置4では、それぞれの直流送電線Aに、機械式接点20と転流回路30とが直列に接続された複数の接続回路が接続されている。例えば、直流送電線A-1では、転流回路30-1-1の第1端c-1-1と機械式接点20-1-1の第2極b-1-1とが接続された接続回路における転流回路30-1-1の第2端d-1-1と、転流回路30-2-1の第2端d-2-1と機械式接点20-2-1の第1極a-2-1とが接続された接続回路における転流回路30-2-1の第1端c-2-1とが接続されている。直流送電線A-2~直流送電線A-nも同様である。
直流電流遮断装置4では、それぞれの直流送電線Aに接続された接続回路の直流送電線Aとは逆側の一端が、対応する接続バスBに接続され、それぞれの接続バスBが半導体遮断器10の一端に接続されている。より具体的には、直流送電線A-1~A-nのそれぞれに接続された接続回路における機械式接点20-1-1~20-1-nのそれぞれの第1極a-1-1~a-1-nが接続バスB-1に接続され、接続バスB-1は、半導体遮断器10の第1端gに接続されている。直流送電線A-1~A-nのそれぞれに接続された接続回路における機械式接点20-2-1~20-2-nのそれぞれの第2極b-2-1~b-2-nが接続バスB-2に接続され、接続バスB-2は、半導体遮断器10の第2端hに接続されている。直流電流遮断装置4における通常の送電においては、それぞれの直流送電線Aに属するそれぞれの接続回路を通って電流が流れる。つまり、二つの機械式接点20と二つの転流回路30とのそれぞれを通って電流が流れる。
機械式接点20-1は、特許請求の範囲の請求項8における「第1の機械式接点」の一例であり、機械式接点20-2は、特許請求の範囲の請求項8における「第2の機械式接点」の一例である。転流回路30-1は、特許請求の範囲の請求項8における「第1の転流回路」の一例であり、転流回路30-2は、特許請求の範囲の請求項8における「第2の転流回路」の一例である。機械式接点20-1と転流回路30-1とが直列に接続された接続回路は、特許請求の範囲の請求項8における「第1の接続部」の一例であり、機械式接点20-2と転流回路30-2とが直列に接続された接続回路は、特許請求の範囲の請求項7における「第2の接続部」の一例である。接続バスB-1は、特許請求の範囲の請求項8における「第1の接続バス」の一例であり、接続バスB-2は、特許請求の範囲の請求項8における「第2の接続バス」の一例である。
直流電流遮断装置4が備える半導体遮断器10、および機械式接点20のそれぞれの構成は、直流電流遮断装置1と同様である。つまり、直流電流遮断装置4においても、半導体遮断器10には、図2に示した半導体遮断器10の構成が適用され、機械式接点20には、図3に示した機械式接点20aまたは機械式接点20bのいずれかの構成が適用される。直流電流遮断装置4が備える転流回路30の構成は、直流電流遮断装置1と同様の構成のものを含む。より具体的には、転流回路30-1-1~30-1-n、および転流回路30-2-1~30-2-nには、図4に示した転流回路30c、あるいは転流回路30d~転流回路30gのいずれかの構成が適用される。
このような構成によって、直流電流遮断装置4でも、直流電流遮断装置1と同様に、高耐圧を実現するために絶縁材や構造物の部品が大規模化してしまう半導体遮断器10を、全ての直流送電線Aを遮断するための構成要素として共有する。これにより、直流電流遮断装置4でも、直流電流遮断装置1と同様に、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができる。
直流電流遮断装置4の構成は、図28に示した構成に限定されない。例えば、それぞれの直流送電線Aに補助断路器が接続されている構成にしてもよいし、さらに、事故が発生した場合における電流の変化を抑制するための直流リアクトルがそれぞれの直流送電線Aの線路中に接続されている構成にしてもよい。
[直流電流遮断装置4における具体例]
次に、直流電流遮断装置4の具体例について説明する。図29は、第4の実施形態の直流電流遮断装置4の第1の具体例の構成の一例を示す図である。図29に示した直流電流遮断装置4aは、機械式接点20に図3の(a)に示した機械式接点20aを適用し、転流回路30に図4の(c)に示した転流回路30cを適用した構成である。
図30は、第4の実施形態の直流電流遮断装置4の第2の具体例の構成の一例を示す図である。図30に示した直流電流遮断装置4bは、機械式接点20に図3の(a)に示した機械式接点20aを適用し、転流回路30に図4の(e)に示した転流回路30eを適用した構成である。
[直流電流遮断装置4の具体例における直流送電線Aの遮断の動作]
ここで、図31~図34を参照して、例えば、直流送電線A-1~A-nが接続回路を介して互いに接続され、直流送電線A-nから直流送電線A-1および直流送電線A-2に電流が流れているときに、直流送電線A-1において事故が発生した場合を例として、制御装置500が、直流送電線A-1を遮断させる動作の一例について説明する。図31~図34には、制御装置500によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置4b内の電流の流れを示している。
直流送電線A-1~A-nが接続回路を介して互いに接続されて送電している定常の送電状態(初期状態)において、機械式接点20、および転流回路30が備える機械式接点303の全てが閉極され、転流回路30が備える双方向Hブリッジ回路305内の半導体スイッチ部、および半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部101は全てオフ状態である。この場合、直流電流遮断装置4bでは、図31に示すように、直流送電線A-nから、接続バスB-1側の機械式接点20および転流回路30と、接続バスB-2側の機械式接点20および転流回路30とのそれぞれを介して直流送電線A-1および直流送電線A-2に電流が流れている状態である。ここで、直流送電線A-1に事故が発生した場合、制御装置500は、以下のような手順でそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することにより、事故が発生した直流送電線A-1を遮断する。
(手順3-1):まず、制御装置500は、事故が発生した直流送電線A-1に属する接続バスB-2側の転流回路30-2-1が備える機械式接点303とを開極させる。さらに、制御装置500は、事故が発生していない直流送電線A-2に属する接続バスB-1側の転流回路30-1-2が備える機械式接点303と、直流送電線A-nに属する接続バスB-1側の転流回路30-1-nが備える機械式接点303と、を開極させる。そして、制御装置500は、開極したそれぞれの転流回路30(つまり、転流回路30-2-1、転流回路30-1-2、および転流回路30-1-n)が備える双方向Hブリッジ回路305内の半導体スイッチ部をオン状態にしてコンデンサの電荷を放電し、対応するそれぞれの機械式接点303に流れる電流をゼロにする。これにより、直流電流遮断装置4bでは、図32に示すように、直流送電線A-1における事故電流は、それぞれの転流回路30において、機械式接点303から対応する双方向Hブリッジ回路305に転流する。
(手順3-2):次に、制御装置500は、事故が発生した直流送電線A-1に属する接続バスB-2側の機械式接点20-2-1と、事故が発生していない直流送電線A-2に属する接続バスB-1側の機械式接点20-1-2、および直流送電線A-nに属する接続バスB-1側の機械式接点20-1-nと、を開極させ、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部101をオン状態にし、手順3-1においてオン状態にした転流回路30が備える双方向Hブリッジ回路305をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置4bでは、図33に示すように、直流送電線A-1における事故電流が、転流回路30-2-1、転流回路30-1-2、および転流回路30-1-nから半導体遮断器10に転流するようになり、転流回路30-2-n、機械式接点20-2-n、接続バスB-2、半導体遮断器10、接続バスB-1、機械式接点20-1-1、および転流回路30-1-1を通って、直流送電線A-1に流れるようになる。なお、機械式接点20-2-1、機械式接点20-1-2、および機械式接点20-1-nを開極させるタイミングは、手順3-1のタイミングであってもよい。
(手順3-3):次に、制御装置500は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部101をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置4bでは、直流送電線A-1の電流が遮断される。その後も、直流電流遮断装置4bでは、線路中のインダクタンス成分に蓄積されたサージエネルギーによって、事故電流がしばらくの間流れ続けるが、このサージエネルギーは、半導体遮断器10が備えるアレスタ102によって消費される。
(手順3-4):その後、制御装置500は、直流送電線A-1に流れる電流がゼロになると(例えば、直流送電線A-1に流れる電流がゼロになったと見なすことができる時間が経過した後)、事故が発生した直流送電線A-1に属する接続バスB-1側の機械式接点20-1-1を開極させる。これにより、制御装置500は、事故が発生した直流送電線A-1を電気的に隔離する動作を完了する。これにより、直流電流遮断装置4bでは、図34に示すように、事故が発生していない直流送電線A-nから他の直流送電線A(図34では、直流送電線A-2)への送電が維持される。
制御装置500は、事故が発生した直流送電線A-1の隔離が完了した後に、事故が発生していない直流送電線A-2~A-nに属する接続バスB-1側の転流回路30-1~30-nが備える機械式接点303を閉極させ、機械式接点20-2~20-nを閉極させてもよい。これにより、直流電流遮断装置4bでは、図31と同様に、それぞれの直流送電線A(ただし、直流送電線A-1以外)に、接続バスB-1側の機械式接点20および転流回路30と、接続バスB-2側の機械式接点20および転流回路30とのそれぞれを介して直流送電線A-nから電流が流れている状態になる。
このような手順によって、直流電流遮断装置4bでは、事故が発生した直流送電線A-1に属する機械式接点20-1、および転流回路30-1が備える機械式接点303を開極させることによって事故が発生した直流送電線A-1を遮断し、事故が発生していない他の直流送電線Aにおける送電を維持することができる。
そして、直流電流遮断装置4bでも、半導体遮断器10を共有しているため、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができる。しかも、直流電流遮断装置4bでは、図31~図34に示した向きと反対方向に流れる事故電流を遮断する場合も、同じ半導体遮断器10で対応することができる。
上記説明したように、第4の実施形態の直流電流遮断装置4によれば、多端子の直流送電システムに適用され、一部(ここでは、半導体遮断器10)を共通化してコストやサイズを低減することができる。
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について説明する。図35は、第5の実施形態に係る直流電流遮断装置の構成の一例を示す図である。図35においては、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付している。図35には、複数の直流送電線A(直流送電線A-1~A-n)の節点部分に構成する直流電流遮断装置5の一例を示している。直流電流遮断装置5は、例えば、半導体遮断器10と、複数の機械式接点20(機械式接点20-1~20-n)と、複数の転流回路30(転流回路30-1~30-n)と、複数の電流整流部40(電流整流部40-1~40-n)と、制御装置500と、を備える。直流電流遮断装置5は、事故が発生した直流送電線Aを遮断する際に、事故電流を接地側に落とす(流す)構成の直流電流遮断装置である。
直流電流遮断装置5では、それぞれの直流送電線Aに機械式接点20と転流回路30とが直列に接続され、それぞれの直流送電線Aは、直流バスCを介して互いに接続されている。例えば、直流送電線A-1では、機械式接点20-1の第1極a-1が直流バスCに接続され、機械式接点20-1の第2極b-1が転流回路30の第1端c-1に接続され、転流回路30-1の第2端d-1が直流送電線A-1の送電側に接続されている。さらに、直流電流遮断装置5では、それぞれの直流送電線Aの送電側に、電流整流部40が接続されている。例えば、直流送電線A-1では、転流回路30-1の第2端d-1側に、電流整流部40-1の第2端f-1が接続されている。直流送電線A-2~直流送電線A-nも同様である。直流電流遮断装置5における通常の送電においては、それぞれの直流送電線Aに属する機械式接点20と、転流回路30とのそれぞれを通って電流が流れる。
直流電流遮断装置5では、直流バスCが半導体遮断器10の一端に接続され、それぞれの直流送電線Aに接続された電流整流部40の直流送電線Aとは逆側の一端と、半導体遮断器10の他端とが、接地されている。より具体的には、半導体遮断器10の第2端hが直流バスCに接続されている。直流送電線A-1~A-nのそれぞれに接続された電流整流部40-1~40-nのそれぞれの第1端e-1~e-nと、半導体遮断器10の第1端gとが、グラウンドGNDに接続(接地)されている。グラウンドGNDは、大地またはそれに準ずる同一導体である。グラウンドGNDは、特許請求の範囲の請求項9における「大地または大地に相当する導体」の一例である。
直流電流遮断装置5が備える半導体遮断器10、機械式接点20、および転流回路30のそれぞれの構成は、直流電流遮断装置1と同様である。つまり、直流電流遮断装置5においても、半導体遮断器10には、図2に示した半導体遮断器10の構成が適用され、機械式接点20には、図3に示した機械式接点20aまたは機械式接点20bのいずれかの構成が適用され、転流回路30には、図4に示した転流回路30a~転流回路30gのいずれかの構成が適用される。
直流電流遮断装置5が備える電流整流部40の構成は、直流電流遮断装置1と同様の構成のもの含むが、直流電流遮断装置1と異なる構成のもの含む。図36は、第5の実施形態の電流整流部40の構成の一例を示す図である。図36に示した電流整流部40hは、例えば、互いに同じ向きで直列に接続された複数(図36には二つのみを示している)のダイオード401の直列回路と、互いに同じ向きで直列に接続された複数(図36には二つのみを示している)のサイリスタ402の直列回路とが、電流を流す向きが互いに逆向きとなるように並列に接続された構成の電流整流部40の一例である。直流電流遮断装置5が備える電流整流部40には、図36に示した電流整流部40h、あるいは図5に示した電流整流部40a~電流整流部40gのいずれかの構成が適用される。
このような構成によって、直流電流遮断装置5でも、直流電流遮断装置1と同様に、高耐圧を実現するために絶縁材や構造物の部品が大規模化してしまう半導体遮断器10を、全ての直流送電線Aを遮断するための構成要素として共有する。これにより、直流電流遮断装置5でも、直流電流遮断装置1と同様に、部品点数を大幅に削減した直流電流遮断装置を実現することができる。
直流電流遮断装置5の構成は、図35に示した構成に限定されない。例えば、それぞれの直流送電線Aに補助断路器が接続されている構成にしてもよいし、さらに、事故が発生した場合における電流の変化を抑制するための直流リアクトルがそれぞれの直流送電線Aの線路中に接続されている構成にしてもよい。
[直流電流遮断装置5における具体例]
次に、直流電流遮断装置5の具体例について説明する。図37は、第5の実施形態の直流電流遮断装置5の具体例の構成の一例を示す図である。図37に示した直流電流遮断装置5aは、機械式接点20に図3の(a)に示した機械式接点20aを適用し、転流回路30に図4の(d)に示した転流回路30dを適用し、電流整流部40に図36に示した電流整流部40hを適用した構成である。
直流電流遮断装置5aにおいて事故が発生した直流送電線Aを遮断するときに制御装置500がそれぞれの構成要素を制御する手順は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1における手順と等価なものになるようにすればよい。これにより、直流電流遮断装置5aにおいても、直流電流遮断装置1と同様に、事故が発生した直流送電線Aを遮断し、事故が発生していない他の直流送電線Aにおける送電を維持することができる。さらに、直流電流遮断装置5aでは、制御装置500が、上述した第1の実施形態の直流電流遮断装置1の手順1-1において転流回路30を動作させる前に電流整流部40hをオン状態にすることにより、機械式接点20や転流回路30に印加される電圧をゼロに近づけることもできる。
上記説明したように、第5の実施形態の直流電流遮断装置5によれば、多端子の直流送電システムに適用され、一部(ここでは、半導体遮断器10)を共通化してコストやサイズを低減することができる。
上記に述べたとおり、各実施形態の直流電流遮断装置では、複数の直流送電線節点部分の半導体遮断器を、全ての直流送電線Aを遮断するための構成要素として共有する。これにより、各実施形態の直流電流遮断装置では、高耐圧を実現するために絶縁材や構造物の部品が大規模化してしまう半導体遮断器を削減し、コストやサイズを低減することができる。そして、各実施形態の直流電流遮断装置では、いずれかの直流送電線に事故が発生した場合に、制御装置が、機械式接点、転流回路、および電流整流部を制御して、事故電流が必ず半導体遮断器を通るようにした後に、事故が発生した直流送電線を遮断する。これにより、各実施形態の直流電流遮断装置では、事故が発生していない直流送電線による正常な送電を維持することができる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、機械式接点(20)と、機械式接点に直列に接続された転流回路(30)とを有する複数の直流送電線(A)と、半導体遮断器(10-1)と、それぞれの直流送電線に属する機械式接点の第1極と、半導体遮断器の一端とを接続する直流バス(C)と、それぞれの直流送電線に対応し、対応する直流送電線に属する転流回路における機械式接点と逆側の一端に選択的な向きで電流を流す複数の電流整流部(40-1)と、それぞれの電流整流部における対応する直流送電線と逆側の第1端と、半導体遮断器の他端とを接続する接続バス(B-1)と、を備えることにより、多端子の直流送電システムに適用される直流電流遮断装置の一部を共通化してコストやサイズを低減することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。