以下、実施形態の直流電流遮断装置を、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る直流電流遮断装置の構成の一例を示す図である。図1には、複数の直流送電線LN(直流送電線LN-1~LN-n)の節点部分に構成する直流電流遮断装置1の一例を示している。直流電流遮断装置1は、例えば、半導体遮断器10と、複数の断路器20(断路器20-1-1~20-1-n、および断路器20-2-1~20-2-n)と、複数の転流回路30(転流回路30-1-1~30-1-n、および転流回路30-2-1~30-2-n)と、複数の補助断路器40(補助断路器40-1~40-n)と、機械接点100と、機械接点110と、電流抑制要素120と、制御装置200と、を備える。
直流電流遮断装置1では、それぞれの直流送電線LNに補助断路器40が直列に接続されている。そして、直流電流遮断装置1では、それぞれの直流送電線LNが所定の分岐点で二つの線路に分岐し、分岐したそれぞれの線路に、断路器20と転流回路30とが直列に接続され、対応する直流バスBに接続されている。それぞれの直流バスBは、半導体遮断器10に接続されている。例えば、直流送電線LN-1では、送電側に補助断路器40-1の第1極f-1が接続され、補助断路器40-1の第1極e-1側が二つの線路に分岐している。そして、直流送電線LN-1では、分岐した一方の線路の補助断路器40-1の第1極e-1側に転流回路30-1-1の第1端a-1-1が接続され、転流回路30-1-1の第2端b-1-1が断路器20-1-1の第1極c-1-1に接続され、断路器20-1-1の第2極d-1-1が直流バスB-1に接続されている。さらに、直流送電線LN-1では、分岐した他方の線路の補助断路器40-1の第1極e-1側に転流回路30-2-1の第2端b-2-1が接続され、転流回路30-2-1の第1端a-2-1が断路器20-2-1の第2極d-2-1に接続され、断路器20-2-1の第1極c-2-1が直流バスB-2に接続されている。直流送電線LN-2や直流送電線LN-nも同様である。分岐したそれぞれの線路において断路器20と転流回路30とが直列に接続された直列回路の構成は、「アーム」と呼ばれる構成である。直流電流遮断装置1では、それぞれの直流送電線LNにおいて分岐した同じ方向のアームを構成する断路器20が、対応する直流バスBを介して互いに接続されている。直流電流遮断装置1において、それぞれの直流バスBは、半導体遮断器10を介して接続されている。このため、直流電流遮断装置1における通常の送電においては、それぞれの直流送電線LNに属するそれぞれのアームを通って電流が流れる。つまり、二つの断路器20と二つの転流回路30とのそれぞれを通って電流が流れる。直流バスB-1に接続されるアームが構成された線路は、特許請求の範囲における「第1の線路」の一例であり、直流バスB-2に接続されるアームが構成された線路は、特許請求の範囲における「第2の線路」の一例である。
半導体遮断器10は、第1端g側から第2端h側に流れる電流を遮断する。半導体遮断器10は、例えば、互いに直列に接続された複数(図1には二つのみを示している)の半導体スイッチ部の直列回路と、アレスタとを備え、直列回路とアレスタとが並列に接続されている。半導体スイッチ部のそれぞれは、互いに並列に接続された半導体スイッチング素子とダイオードとを備える。より具体的には、半導体スイッチ部では、ダイオードのカソードと半導体スイッチング素子のコレクタとが互いに接続され、ダイオードのアノードと半導体スイッチング素子のエミッタとが接続されている。半導体スイッチング素子のゲートは、制御装置200によって制御(制御電圧または制御電流が印加)される。つまり、半導体遮断器10は、制御装置200によってオンまたはオフのいずれかの状態に制御される。半導体スイッチング素子は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子である。半導体スイッチング素子は、IGBTに限定されず、自己消弧を実現可能な半導体スイッチング素子であれば、いかなるスイッチング素子であってもよい。アレスタは、半導体スイッチ部の直列回路がオフ状態に制御された場合に、直流送電線LNのインダクタンス分のエネルギーに起因して発生するサージエネルギーを消費(吸収)する。この構成により、半導体遮断器10は、制御装置200による半導体スイッチ部のオンまたはオフのいずれかの状態への制御に応じて、第1端gと第2端hとの間に流れる電流を許容、あるいは阻止(遮断)する。直流電流遮断装置1では、半導体遮断器10の第1端gが直流バスB-1に接続され、第2端hが、機械接点100を介して直流バスB-2に接続されている。より具体的には、半導体遮断器10の第2端hは、機械接点100の第1極iに接続され、機械接点100の第2極jが、対応するそれぞれの断路器20-2の第1極c-2が接続された直流バスB-2に接続されている。さらに、半導体遮断器10の第2端hは、機械接点110の第2極lに接続されている。半導体遮断器10のオン状態は、特許請求の範囲における「導通状態」の一例であり、半導体遮断器10のオフ状態は、特許請求の範囲における「非導通状態」の一例である。
断路器20は、機械接点式のスイッチである。断路器20は、制御装置200によって開極または閉極のいずれかの状態に制御される。断路器20は、制御装置200によって閉極に制御された場合、第1極cと第2極dとの間に流れる電流を許容し、制御装置200によって開極に制御された場合、第1極cと第2極dとの間に流れる電流を阻止する。断路器20は、遮断器を備えてもよい。直流バスB-1に接続されるアームを構成する断路器20-1は、特許請求の範囲における「第1の機械式接点」の一例であり、直流バスB-2に接続されるアームを構成する断路器20-2は、特許請求の範囲における「第2の機械式接点」の一例である。
転流回路30は、第1端aと第2端bとの間に流れる電流の向きを切り替える(転流する)。転流回路30は、例えば、半導体スイッチ部とコンデンサとが互いに接続されたブリッジ回路と、遮断器とを備え、これらの構成要素が互いに並列に接続された並列回路である。半導体スイッチ部のそれぞれは、例えば、互いに並列に接続された半導体スイッチング素子とダイオードとを備える。図2は、第1の実施形態の転流回路30の構成の一例を示す図である。図2の(a)に示した転流回路30aは、図1に示した構成の転流回路30である。図2の(a)に示した転流回路30aは、例えば、四つの半導体スイッチ部302(半導体スイッチ部302-1~302-4)と、コンデンサ304とが互いに接続されたフルブリッジ回路と、遮断器306とを備える。図2の(b)に示した転流回路30bは、例えば、四つの半導体スイッチ部302(半導体スイッチ部302-1~302-4)と、コンデンサ304とが互いに接続されたフルブリッジ回路と、遮断器306と、二つのサイリスタ308(サイリスタ308-1および308-2)と、を備える。転流回路30bは、転流回路30aと同様のフルブリッジ回路と遮断器306との並列回路の両端の間に、サイリスタ308-1とサイリスタ308-2とが、互いに逆向きで並列に接続されている。転流回路30が備える半導体スイッチ部302のオン状態およびオフ状態は、制御装置200によって制御される。つまり、転流回路30は、制御装置200による半導体スイッチ部302のオンまたはオフのいずれかの状態への制御に応じて、第1端aと第2端bとの間に流れる電流を転流させる。転流回路30が備える遮断器306の開極および閉極は、制御装置200によって制御される。遮断器306は、制御装置200によって閉極に制御された場合、第1端aと第2端bとの間に流れる電流を、フルブリッジ回路を通さずに通過、つまり、フルブリッジ回路をバイパスさせ、制御装置200によって開極に制御された場合、第1端aと第2端bとの間に流れる電流を、フルブリッジ回路を通過させる。転流回路30bが備えるサイリスタ308のゲートは、制御装置200によって制御(制御電流が印加)される。これにより、転流回路30bでは、制御装置200によるサイリスタ308-1およびサイリスタ308-2の制御によって、第1端aと第2端bとを短絡させることができる。言い換えれば、転流回路30bは、制御装置200の制御によって、第1端aと第2端bとの間に流れる電流を、フルブリッジ回路を通さずに通過、つまり、フルブリッジ回路をバイパスさせることができる。転流回路30bにおいてフルブリッジ回路をバイパスさせる構成要素は、サイリスタ308に限定されない。例えば、転流回路30bにおいてフルブリッジ回路をバイパスさせる構成要素として、サイリスタ308の代わりに、自励式の半導体スイッチング素子を備えてもよい。直流バスB-1に接続されるアームを構成する転流回路30-1は、特許請求の範囲における「第1の転流回路」の一例であり、直流バスB-2に接続されるアームを構成する転流回路30-2は、特許請求の範囲における「第2の転流回路」の一例である。コンデンサ304は、特許請求の範囲における「蓄電要素」の一例であり、遮断器306は、特許請求の範囲における「内部機械式接点」の一例である。サイリスタ308は、特許請求の範囲における「短絡要素」の一例である。
補助断路器40は、機械接点式のスイッチである。補助断路器40は、制御装置200によって開極または閉極のいずれかの状態に制御される。補助断路器40は、制御装置200によって閉極に制御された場合、第1極eと第2極fとの間に流れる電流を許容し、制御装置200によって開極に制御された場合、第1極eと第2極fとの間に流れる電流を阻止する。
機械接点100は、機械接点式のスイッチである。機械接点100は、制御装置200によって開極または閉極のいずれかの状態に制御される。機械接点100は、制御装置200による開極または閉極のいずれかの状態への制御に応じて、第1極iと第2極jとの間を接続の状態、あるいは非接続(開放)の状態にする。機械接点100は、特許請求の範囲における「第4の機械式接点」の一例である。
機械接点110は、機械接点式のスイッチである。機械接点110は、制御装置200によって開極または閉極のいずれかの状態に制御される。機械接点110は、制御装置200による開極または閉極のいずれかの状態への制御に応じて、第1極kと第2極lとの間を接続の状態、あるいは非接続(開放)の状態にする。機械接点110の第2極lは、電流抑制要素120の第1端に接続されている。機械接点110は、特許請求の範囲における「第3の機械式接点」の一例である。
電流抑制要素120は、第1端と第2端との間に流れる電流、つまり、半導体遮断器10の第2端hから機械接点110を介して流れてきた電流を抑制する。電流抑制要素120の第2端は、直流送電線LNの負極、あるいは接地端に接続されている。図1には、電流抑制要素120の第2端が接地されている場合を示している。電流抑制要素120は、例えば、抵抗である。電流抑制要素120は、抵抗に限定されず、電流を抑制する構成であれば、いかなる構成であってもよい。例えば、電流抑制要素120は、リアクトルや、抵抗とリアクトルとが直列に接続された構成であってもよい。また、機械接点110と電流抑制要素120との位置関係は逆であってもよい。
制御装置200は、半導体遮断器10、断路器20、転流回路30、補助断路器40、および機械接点100を制御することにより、直流電流遮断装置1における直流送電線LNの遮断および導通を制御する。さらに、制御装置200は、これらの構成要素に加えて、機械接点110を制御することにより、転流回路30における転流の機能を実現するために必要なコンデンサ304への充電(初期充電)を制御する。制御装置200は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより以下の機能を実現するものである。制御装置200の機能のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。制御装置200の機能のうち一部または全部は、専用のLSIによって実現されてもよい。プログラムは、予め制御装置200が備えるHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体が制御装置200が備えるドライブ装置に装着されることで制御装置200が備える記憶装置にインストールされてもよい。
[直流電流遮断装置1におけるコンデンサ304への初期充電の第1の動作]
ここで、図3および図4を参照して、例えば、直流送電線LN-1が課電されているときに、制御装置200が、直流バスB-1側に接続されている転流回路30-1-1が備えるコンデンサ304(以下、「コンデンサ304-1-1」という)を初期充電させる動作の一例について説明する。図3および図4には、制御装置200によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置1内の電流の流れを示している。制御装置200は、以下のような手順でそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することにより、コンデンサ304-1-1を初期充電する。
(手順1-1):まず、制御装置200は、初期充電する転流回路30-1-1が接続されている直流送電線LN-1に属する補助断路器40-1を閉極させ、直流送電線LN-1から分岐して転流回路30-1-1が接続されている線路(以下、「分岐線路BL-1-1」という)に属する断路器20-1-1を閉極させる。そして、制御装置200は、転流回路30-1-1が備える遮断器306を開極させる。さらに、制御装置200は、直流送電線LN-1から分岐した直流バスB-2側の線路(以下、「分岐線路BL-2-1」という)に属する断路器20-2-1を含む、直流電流遮断装置1が備える他の断路器20、つまり、分岐線路BL-1-1に属する断路器20-1-1以外の断路器20を開極させる。そして、制御装置200は、機械接点100を開極させ、機械接点110を閉極させる。これにより、直流電流遮断装置1では、図3に示すような状態になる。制御装置200は、機械接点100を開極させてもよいが、閉極させた状態のままにしてもよい。これは、直流電流遮断装置1では、直流バスB-2側のそれぞれの線路に断路器20-2が接続されているため、コンデンサ304-1-1を初期充電させる際に直流送電線LN-1からの電力が、他の転流回路30に課電されることはないからである。
(手順1-2):次に、制御装置200は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部をオン状態にする。これにより、直流送電線LN-1からの電力による電流が、図4に示すような経路を通って流れる。より具体的には、直流送電線LN-1から、補助断路器40-1、転流回路30-1-1、断路器20-1-1、直流バスB-1、半導体遮断器10、機械接点110、電流抑制要素120を通って、接地された箇所に電流が流れる。このとき、転流回路30-1-1内では、半導体スイッチ部302-2を構成するダイオード、コンデンサ304-1-1、および半導体スイッチ部302-1を構成するダイオードを通って、電流が流れる。これにより、電流が流れる経路中にあるコンデンサ304-1-1に、流れた電流に応じた電荷が初期充電される。
(手順1-3):その後、コンデンサ304-1-1の初期充電が完了した後、制御装置200は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置1では、直流送電線LN-1からの電流の流れが停止し、コンデンサ304-1-1が充電されなくなる。このコンデンサ304-1-1の初期充電が完了したか否かは、制御装置200が、例えば、コンデンサ304-1-1の両端の電圧を検出する電圧検出器(不図示)が検出した検出値(電圧値)の情報を取得して判定する。制御装置200は、不図示の電圧検出器から取得した検出値の情報が、転流回路30-1-1における転流の機能を実現するために必要な所定の電圧値に達したことを表している場合に、コンデンサ304-1-1の初期充電が完了したと判定する。所定の電圧値は、必ずしも直流送電線LN-1に課電されている電圧値でなくてもよい。つまり、直流送電線LN-1の電圧値よりも低くてもよい。制御装置200におけるコンデンサ304-1-1の初期充電が完了したか否かの判定方法は、不図示の電圧検出器から検出値の情報を取得する方法に限定されず、コンデンサ304-1-1に所定量の電荷が充電されたことを判定することができる方法であれば、いかなる方法であってもよい。例えば、制御装置200は、コンデンサ304-1-1の初期充電を開始してからの経過時間に基づいて、コンデンサ304-1-1の初期充電が完了したことを判定してもよい。
(手順1-4):次に、制御装置200は、コンデンサ304-1-1の初期充電を開始する際に閉極させていた機械接点110、断路器20-1-1、および補助断路器40-1を開極させる。これにより、直流電流遮断装置1では、コンデンサ304-1-1に充電された電荷が保持される。機械接点100を開極させていた場合、制御装置200は、機械接点100を閉極させる。
このような構成および手順によって、直流電流遮断装置1では、課電されている直流送電線LN-1の電力によって、直流送電線LN-1から分岐した直流バスB-1側の分岐線路BL-1-1に属する転流回路30-1-1が備えるコンデンサ304-1-1を初期充電することができる。その後、制御装置200は、同様の手順を繰り返すことによって、課電されている直流送電線LN-2や直流送電線LN-nからの電力で、それぞれの直流送電線LNから分岐した直流バスB-1側の線路(以下、「分岐線路BL-1」という)に属する転流回路30が備えるコンデンサ304を初期充電することができる。半導体遮断器10では、コンデンサ304を初期充電する際にそれぞれの直流送電線LNから電流が流れた線路中のインダクタンス成分に蓄積されたサージエネルギーによって、しばらくの間、電流が流れ続ける場合もあるが、このサージエネルギーは、アレスタによって消費される。その際にもコンデンサ304に電流が流れ、コンデンサ304の電圧が上昇するので、それを見越して早めに半導体遮断器10の半導体スイッチ部をオフ状態にしてもよい。
[直流電流遮断装置1におけるコンデンサ304への初期充電の第2の動作]
次に、図5および図6を参照して、例えば、直流送電線LN-1が課電されているときに、制御装置200が、直流バスB-2側に接続されている転流回路30-2-1が備えるコンデンサ304(以下、「コンデンサ304-2-1」という)を初期充電させる動作の一例について説明する。図5および図6には、制御装置200によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置1内の電流の流れを示している。制御装置200は、以下のような手順でそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することにより、コンデンサ304-2-1を初期充電する。
(手順2-1):まず、制御装置200は、初期充電する転流回路30-2-1が接続されている直流送電線LN-1に属する補助断路器40-1を閉極させ、転流回路30-2-1が接続されている分岐線路BL-2-1に属する断路器20-2-1を閉極させる。そして、制御装置200は、転流回路30-2-1が備える遮断器306を開極させる。さらに、制御装置200は、分岐線路BL-1-1に属する断路器20-1-1を開極させる。直流電流遮断装置1において、直流バスB-2側に接続されている転流回路30-2が備えるコンデンサ304を初期充電させる場合、直流送電線LN-1からの電流を他の直流送電線LNに属するそれぞれの構成要素を通過させる。ここでは、直流送電線LN-1からの電流を直流送電線LN-2に属する構成要素を通過させるものとする。このため、制御装置200は、直流送電線LN-2に属する断路器20-1-2および断路器20-2-2と、転流回路30-1-2および転流回路30-2-2が備えるそれぞれの遮断器306とを閉極させる。制御装置200は、直流電流遮断装置1が備える他の断路器20は、開極させておく。そして、制御装置200は、機械接点100を開極させ、機械接点110を閉極させる。これにより、直流電流遮断装置1では、図5に示すような状態になる。
(手順2-2):次に、制御装置200は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部をオン状態にする。これにより、直流送電線LN-1からの電力による電流が、図6に示すような経路を通って流れる。より具体的には、直流送電線LN-1から、補助断路器40-1、転流回路30-2-1、断路器20-2-1、直流バスB-2、断路器20-2-2、転流回路30-2-2、転流回路30-1-2、断路器20-1-2、直流バスB-1、半導体遮断器10、機械接点110、電流抑制要素120を通って、接地された箇所に電流が流れる。このとき、転流回路30-2-1内では、半導体スイッチ部302-3を構成するダイオード、コンデンサ304-2-1、および半導体スイッチ部302-4を構成するダイオードを通って、電流が流れる。これにより、電流が流れる経路中にあるコンデンサ304-2-1に、流れた電流に応じた電荷が初期充電される。一方、転流回路30-2-2および転流回路30-1-2内では、遮断器306を通って、電流が流れる。つまり、電流は、転流回路30-2-2および転流回路30-1-2のそれぞれが備えるフルブリッジ回路をバイパスして通過する。このため、転流回路30-2-2および転流回路30-1-2のそれぞれが備えるコンデンサ304は、初期充電されない。
(手順2-3):その後、コンデンサ304-2-1の初期充電が完了した後、制御装置200は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置1では、直流送電線LN-1からの電流の流れが停止し、コンデンサ304-2-1が充電されなくなる。
(手順2-4):次に、制御装置200は、コンデンサ304-2-1の初期充電を開始する際に閉極させていた機械接点110、断路器20-2-1、補助断路器40-1、断路器20-1-2、断路器20-2-2、転流回路30-1-2が備える遮断器306、および転流回路30-2-2が備える遮断器306を開極させる。これにより、直流電流遮断装置1では、コンデンサ304-2-1に充電された電荷が保持される。制御装置200は、機械接点100を閉極させる。
このような構成および手順によって、直流電流遮断装置1では、課電されている直流送電線LN-1の電力によって、直流送電線LN-1から分岐した直流バスB-2側の分岐線路BL-2-1に属する転流回路30-2-1が備えるコンデンサ304-2-1を初期充電することができる。その後、制御装置200は、同様の手順を繰り返すことによって、課電されている直流送電線LN-2や直流送電線LN-nからの電力で、それぞれの直流送電線LNから分岐した直流バスB-2側の線路(以下、「分岐線路BL-2」という)に属する転流回路30が備えるコンデンサ304を初期充電することができる。
そして、制御装置200は、直流電流遮断装置1における通常の送電の制御を行い、仮にいずれかの直流送電線LNに事故が発生した場合には、その直流送電線LN(事故回線)を遮断させる。
[直流電流遮断装置1における直流送電線LNの遮断の動作]
ここで、参考として、例えば、直流送電線LN-1~LN-nが、直流バスB-1および直流バスB-2を介して互いに接続されて送電しているとき(ここでは、直流送電線LN-nから直流送電線LN-1および直流送電線LN-2に電流が流れているものとする)に、直流送電線LN-1において事故が発生した場合を例として、制御装置200が、直流送電線LN-1を遮断させる動作について説明する。
直流送電線LN-1~LN-nがそれぞれの直流バスBを介して互いに接続されて送電しているときの初期状態は、断路器20および補助断路器40が全て閉極され、転流回路30が備える遮断器306はが全て閉極され、転流回路30が備える半導体スイッチ部302および半導体遮断器10はオフ状態である。このため、直流電流遮断装置1では、直流バスB-1側および直流バスB-2側の全てのアームを通って、直流送電線LN-nから直流送電線LN-1および直流送電線LN-2に電流が流れている。ここで、直流送電線LN-1に事故が発生すると、まず、制御装置200は、事故が発生した直流送電線LN-1に属する直流バスB-1側の断路器20-1-1と、転流回路30-1-1が備える遮断器306を開極させ、事故が発生していない直流送電線LN-2や直流送電線LN-nに属する直流バスB-2側の断路器20-2と、転流回路30-2が備える遮断器306を開極させ、遮断器306を開極させたそれぞれの転流回路30が備えるフルブリッジ回路をオン状態にする。これにより、直流電流遮断装置1では、フルブリッジ回路をオン状態にした転流回路30が備えるコンデンサ304の電荷が放電されて、開極させた遮断器306に逆向きの電流が流れ、電流ゼロ点が発生する。次に、制御装置200は、半導体遮断器10をオン状態にし、遮断器306を開極させてオン状態にしたそれぞれの転流回路30が備えるフルブリッジ回路をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置1では、直流送電線LN-nに属する直流バスB-1側のアーム、直流バスB-1、半導体遮断器10、直流バスB-2、直流送電線LN-1に属する直流バスB-2側のアームを通る経路で、直流送電線LN-nから直流送電線LN-1に流れる電流が流れるようになる。そして、制御装置200は、半導体遮断器10をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置1では、事故が発生した直流送電線LN-1の電流が遮断される。その後、直流電流遮断装置1では、直流送電線LN-1のインダクタンス分のサージエネルギーが、半導体遮断器10が備えるアレスタによって消費される。最後に、制御装置200は、直流送電線LN-1の電流が完全にゼロになったら、事故が発生した直流送電線LN-1に属する直流バスB-2側の断路器20-2-1と、補助断路器40-1とを開極させ、直流送電線LN-1の遮断を完了する。そして、制御装置200は、事故が発生していない直流送電線LN-2や直流送電線LN-nに属する直流バスB-2側の転流回路30が備える遮断器306と、断路器20-2とを閉極させる。このように、直流電流遮断装置1における直流送電線LNの遮断の動作では、事故が発生した直流送電線LNに属する転流回路30が備える遮断器306、断路器20、および補助断路器40を開極させることによって事故が発生した直流送電線LNを遮断し、事故が発生していない他の直流送電線LNにおける送電を維持する。
[直流電流遮断装置1におけるコンデンサ304への初期充電の第3の動作]
ところで、第2の動作では、転流回路30-2-1が備えるコンデンサ304-2-1を初期充電させる際に、直流送電線LN-2に属するそれぞれの構成要素を閉極させて、直流バスB-2側から直流バスB-1側に電流を通過させている。このため、直流電流遮断装置1では、制御装置200がそれぞれの転流回路30が備える遮断器306の開極および閉極を制御することにより、電流を通過させる経路中にある複数のコンデンサ304を同時に初期充電させることができる。ここで、図7および図8を参照して、例えば、直流送電線LN-1が課電されているときに、制御装置200が、複数のコンデンサ304を同時に初期充電させる動作の一例について説明する。ここでは、制御装置200が、直流送電線LN-1および直流送電線LN-2に属するそれぞれの転流回路30が備えるコンデンサ304を同時に初期充電させる場合について説明する。ここでは、直流送電線LN-1からの電力で直流送電線LN-nに属する転流回路30が備えるコンデンサ304は初期充電させないものとする。図7および図8には、制御装置200によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置1内の電流の流れを示している。制御装置200は、以下のような手順でそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することにより、複数のコンデンサ304を同時に初期充電する。
(手順3-1):まず、制御装置200は、課電されている直流送電線LN-1に属する補助断路器40-1を閉極させ、初期充電する転流回路30が接続されているそれぞれの分岐線路BLに属する断路器20を閉極させる。ここでは、初期充電する転流回路30-1-1が接続されている断路器20-1-1と、転流回路30-2-1が接続されている断路器20-2-1と、転流回路30-1-2が接続されている断路器20-1-2と、転流回路30-2-2が接続されている断路器20-2-2とのそれぞれを閉極させる。そして、制御装置200は、転流回路30-1-1、転流回路30-2-1、転流回路30-1-2、転流回路30-2-2が備える遮断器306を開極させる。そして、制御装置200は、直流送電線LN-1からの電力で初期充電させない直流送電線LN-nに属する断路器20-1-nおよび断路器20-2-nと、転流回路30-1-nおよび転流回路30-2-nが備えるそれぞれの遮断器306とを含む、直流電流遮断装置1が備える他の断路器20および他の転流回路30が備える遮断器306は、開極させておく。そして、制御装置200は、機械接点100を開極させ、機械接点110を閉極させる。これにより、直流電流遮断装置1では、図7に示すような状態になる。ここで、直流送電線LN-nに属するいずれかの転流回路30が備えるコンデンサ304も同時に初期充電する場合、制御装置200は、直流送電線LN-nに属する断路器20-1-nおよび断路器20-2-nを閉極させ、初期充電させる転流回路30が備える遮断器306を開極させ、初期充電させない転流回路30が備える遮断器306を閉極させてもよい。
(手順3-2):次に、制御装置200は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部をオン状態にする。これにより、直流送電線LN-1からの電力による電流が、図8に示すような経路を通って流れる。より具体的には、直流送電線LN-1から、補助断路器40-1、転流回路30-1-1、断路器20-1-1を通って直流バスB-1に流れる。さらに、補助断路器40-1から流れた電流は、転流回路30-2-1、断路器20-2-1を通って、直流バスB-2に流れ、直流バスB-2から、直流送電線LN-2に属するそれぞれの断路器20と転流回路30とを通って直流バスB-1に流れる。直流バスB-1に流れた電流は、半導体遮断器10、機械接点110、電流抑制要素120を通って、接地された箇所に電流が流れる。このとき、遮断器306が開極されている転流回路30内では、半導体スイッチ部302-2を構成するダイオード、または半導体スイッチ部302-3を構成するダイオード、コンデンサ304、および半導体スイッチ部302-1を構成するダイオード、または半導体スイッチ部302-4を構成するダイオードを通って、電流が流れる。これにより、電流が流れる経路中にあるそれぞれのコンデンサ304に、流れた電流に応じた電荷が同時に初期充電される。ここで、直流送電線LN-nに属するいずれかの転流回路30が備えるコンデンサ304も同時に初期充電するために遮断器306が開極されている転流回路30でも同様に電流が流れるが、初期充電させないために遮断器306が閉極されている転流回路30内では、遮断器306を通ることによりフルブリッジ回路をバイパスして、電流が通過する。このため、遮断器306が閉極されている転流回路30が備えるコンデンサ304は、初期充電されない。
(手順3-3):その後、それぞれのコンデンサ304の初期充電が完了した後、制御装置200は、半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部をオフ状態にする。これにより、直流電流遮断装置1では、直流送電線LN-1からの電流の流れが停止し、それぞれのコンデンサ304が充電されなくなる。
(手順3-4):次に、制御装置200は、それぞれのコンデンサ304の初期充電を同時に開始する際に閉極させていた機械接点110、それぞれの断路器20(ここでは、断路器20-1-1、断路器20-2-1、断路器20-1-2、および断路器20-2-2)、補助断路器40-1を開極させる。これにより、直流電流遮断装置1では、それぞれのコンデンサ304に充電された電荷が保持される。制御装置200は、機械接点100を閉極させる。ここで、直流送電線LN-nに属するいずれかの転流回路30が備えるコンデンサ304も同時に初期充電するために断路器20-1-nと断路器20-2-nとを閉極させていた場合には、この断路器20-1-nおよび断路器20-2-nと、初期充電させない転流回路30が備える遮断器306とも開極させる。
このような構成および手順によって、直流電流遮断装置1では、課電されている直流送電線LN-1の電力によって、複数の転流回路30が備えるコンデンサ304を同時に初期充電することができる。
ところで、複数のコンデンサ304を同時に初期充電させる場合、それぞれのコンデンサ304においてすでに充電されている電荷量や、それぞれのコンデンサ304や線路のインピーダンスの特性のばらつきなどの要因によって、コンデンサ304の充電電圧がばらつくことが考えられる。この場合、制御装置200が、初期充電が完了したと判定するタイミングがコンデンサ304ごとに異なることも考えられる。この場合、制御装置200は、いずれかのコンデンサ304の初期充電が完了した後、手順3-3において半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部を一旦オフ状態にし、初期充電が完了したコンデンサ304を備える転流回路30の遮断器306を閉極させた後、つまり、初期充電が完了したコンデンサ304をバイパスした状態にして、初期充電が完了していないコンデンサ304に対する初期充電の制御を再開すればよい(つまり、手順3-1から再度行えばよい)。
しかし、制御装置200は、手順3-3において半導体遮断器10が備える半導体スイッチ部をオフ状態にすることなく、初期充電が完了したコンデンサ304を備える転流回路30内を流れる電流の経路を変えることによって、それぞれのコンデンサ304ごとに、初期充電を完了させることもできる。
図9は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1において転流回路30内を流れる電流の経路の一例を示す図である。図9の(a)には、転流回路30aが備えるコンデンサ304を充電させる際に流れる電流の経路の一例を示し、図9の(b)には、転流回路30aが備えるフルブリッジ回路、つまり、コンデンサ304をバイパスさせる際に流れる電流の経路の一例を示し、図9の(c)には、転流回路30aが備えるコンデンサ304の初期充電が完了した場合において変更させた電流の経路の一例を示している。図9の(d)には、転流回路30bが備えるコンデンサ304の初期充電が完了した場合において変更させた電流の経路の一例を示している。転流回路30bにおいてコンデンサ304を充電させる際に流れる電流の経路と、コンデンサ304をバイパスさせる際に流れる電流の経路とは、転流回路30aと同様であるため、図9においては、この場合の図示を省略している。図9の(a)~(d)に示したそれぞれの経路は、転流回路30aや転流回路30bが、直流バスB-1側に接続された転流回路30(例えば、転流回路30-1-1)である場合の一例である。
図9の(a)に示したように、直流バスB-1側に接続され、遮断器306が開極されている転流回路30では、コンデンサ304を初期充電させる場合、半導体スイッチ部302-2を構成するダイオード、コンデンサ304、および半導体スイッチ部302-1を構成するダイオードを通って、電流が流れる(初期充電の第1の動作における手順1-2や、初期充電の第3の動作における手順3-2を参照)。一方、図9の(b)に示したように、遮断器306が閉極されて、コンデンサ304をバイパスさせる転流回路30では、遮断器306を通って、電流が流れる(初期充電の第2の動作における手順2-2や、初期充電の第3の動作における手順3-2を参照)。
ここで、直流電流遮断装置1が備える転流回路30が転流回路30aの構成である場合、制御装置200は、図9の(a)に示したように電流を流して初期充電させているコンデンサ304において初期充電が完了したときに、半導体スイッチ部302-3をオン状態にする。これにより、転流回路30aでは、半導体スイッチ部302-2を構成するダイオード、半導体スイッチ部302-3を構成する半導体スイッチング素子の経路を通って、電流が流れるようになる。これにより、制御装置200は、複数のコンデンサ304を初期充電していたときにいずれかのコンデンサ304の初期充電が完了した場合、半導体スイッチ部302-3をオン状態にすることによって、遮断器306を開極するのとは別の方法で、転流回路30a内を流れる電流の経路を、初期充電が完了したコンデンサ304をバイパスさせる経路に変更することができる。コンデンサ304の初期充電が完了したときにオン状態にする半導体スイッチ部302は、半導体スイッチ部302-4であってもよい。この場合、転流回路30aでは、半導体スイッチ部302-4を構成する半導体スイッチング素子、半導体スイッチ部302-1を構成するダイオードの経路を通って、電流が流れるようになる。
さらに、直流電流遮断装置1が備える転流回路30が転流回路30bの構成である場合、制御装置200は、図9の(a)に示したように電流を流して初期充電させているコンデンサ304において初期充電が完了したときに、サイリスタ308-1をオン状態にする。これにより、転流回路30bでは、フルブリッジ回路を通って流れていた電流が、サイリスタ308-1を通って流れるようになる。これにより、制御装置200は、複数のコンデンサ304を初期充電していたときにいずれかのコンデンサ304の初期充電が完了した場合、サイリスタ308-1をオン状態にすることによって、遮断器306を開極するのとは別の方法で、転流回路30b内を流れる電流の経路を、初期充電が完了したコンデンサ304をバイパスさせる経路に変更することができる。
これらのことにより、直流電流遮断装置1では、複数のコンデンサ304を同時に初期充電させた場合でも、先に初期充電が完了したコンデンサ304に対する充電が継続されて、このコンデンサ304が過充電の状態になってしまったり、過充電によってコンデンサ304が破損してしまったりするのを防止することができる。
上記説明したように、第1の実施形態の直流電流遮断装置1によれば、課電されている直流送電線LNからの電力で、直流電流遮断装置1が備えるそれぞれの転流回路30内のコンデンサ304を初期充電することができる。さらに、第1の実施形態の直流電流遮断装置1では、直流電流遮断装置1が備える複数の転流回路30内のコンデンサ304を同時に初期充電させることもできる。しかも、第1の実施形態の直流電流遮断装置1においてコンデンサ304を初期充電するために設ける構成要素は、機械接点100、機械接点110、および電流抑制要素120が一つずつでよい。つまり、第1の実施形態の直流電流遮断装置1では、小規模な回路を追加することによって、それぞれの転流回路30が備えるコンデンサ304を初期充電する機能を実現することができる。
直流電流遮断装置1の構成は、図1に示した構成に限定されない。直流電流遮断装置1は、図4や、図6、図8に示すような経路と同様の経路で電流を流すことができる構成であれば、いかなる構成であってもよい。つまり、直流電流遮断装置1の構成は、図4や、図6、図8に示した経路と同様の経路で導通させることができる構成であれば、図1に示した構成要素以外の他の構成要素が経路中に設けられていてもよい。例えば、事故が発生した場合における電流の変化を抑制するための直流リアクトルがそれぞれの直流送電線LNの線路中に接続されている構成にしてもよい。例えば、それぞれのアームを構成する断路器20と転流回路30などの直列の接続関係は逆でもよい。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。図10は、第2の実施形態に係る直流電流遮断装置の構成の一例を示す図である。図10においては、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と共通する機能を有する構成要素については同一の符号を付している。図10に示した直流電流遮断装置2は、例えば、半導体遮断器10と、複数の断路器20(断路器20-1-1~20-1-n、および断路器20-2-1~20-2-n)と、複数の転流回路30(転流回路30-1-1~30-1-n、および転流回路30-2-1~30-2-n)と、複数の補助断路器40(補助断路器40-1~40-n)と、機械接点100と、機械接点110と、電流抑制要素120と、制御装置200と、を備える。直流電流遮断装置2は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と同様の構成である。図10に示した直流電流遮断装置2の構成では、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と同様に、機械接点100を備えているが、直流電流遮断装置2では、機械接点100が省略されてもよい。
直流電流遮断装置2には、交流電源Pが、電力変換装置PCを介して直流バスB-1側に接続されている。交流電源Pは、所定の交流電力を出力する電源である。交流電源Pは、交流電力を発電する発電設備(例えば、風力発電設備)や交流系統であってもよい。電力変換装置PCは、交流電源Pにより出力された交流電力を直流電力に変換する交直変換器である。電力変換装置PCは、交流電圧を所定の直流電圧に変換して、直流電流遮断装置2が備える直流バスB-1側に出力する。直流電流遮断装置2は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と同様に、直流バスBを介して互いに接続された直流送電線LN同士での送電に加え、電力変換装置PCから出力された直流電力のそれぞれの直流送電線LNによる送電も行う。このため、直流電流遮断装置2は、それぞれの直流送電線LNに接続されている転流回路30内のコンデンサ304の初期充電を、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と同様に、課電されている直流送電線LNからの電力で行うのに加えて、電力変換装置PCから出力された直流電力でも行うことができる。
直流電流遮断装置2では、制御装置200が、電力変換装置PCによる直流電力の出力の制御も行う。制御装置200は、例えば、電流制御や電圧制御によって、電力変換装置PCからの直流電力の出力を制御する。
[直流電流遮断装置2におけるコンデンサ304への初期充電の第1の動作]
ここで、図11および図12を参照して、制御装置200が、電力変換装置PCから出力された直流電力で、直流バスB-1側に接続されている転流回路30-1-1が備えるコンデンサ304-1-1を初期充電させる動作の一例について説明する。図11および図12には、制御装置200によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置2内の電流の流れを示している。制御装置200は、以下のような手順でそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することにより、コンデンサ304-1-1を初期充電する。
(手順4-1):まず、制御装置200は、初期充電する転流回路30-1-1が接続されている直流送電線LN-1から分岐して転流回路30-1-1が接続されている分岐線路BL-1-1に属する断路器20-1-1を閉極させる。そして、制御装置200は、転流回路30-1-1が備える遮断器306を開極させる。さらに、制御装置200は、直流送電線LN-1から分岐した直流バスB-2側の分岐線路BL-2-1に属する転流回路30-2-1が備える遮断器306と、断路器20-2-1とを閉極させる。つまり、制御装置200は、分岐線路BL-2-1に属する転流回路30-2-1が備えるフルブリッジ回路をバイパスして電流を通過させるようにする。制御装置200は、直流電流遮断装置2が備える他の断路器20、つまり、直流送電線LN-1に属する断路器20-1-1および断路器20-2-1以外の断路器20と、補助断路器40とを開極させる。そして、制御装置200は、機械接点110を閉極させる。これにより、直流電流遮断装置2では、図11に示すような状態になる。直流電流遮断装置2が機械接点100を備えている場合、制御装置200は、直流電流遮断装置2における通常の送電のときの状態と同様に、機械接点100を閉極させた状態のままにしておく。
(手順4-2):次に、制御装置200は、電力変換装置PCに直流電力を出力させる。これにより、電力変換装置PCからの直流電力による電流が、図12に示すような経路を通って流れる。より具体的には、電力変換装置PCから、直流バスB-1、断路器20-1-1、転流回路30-1-1、転流回路30-2-1、断路器20-2-1、直流バスB-2(機械接点100を含む)、機械接点110、電流抑制要素120を通って、接地された箇所に電流が流れる。このとき、転流回路30-1-1内では、半導体スイッチ部302-3を構成するダイオード、コンデンサ304-1-1、および半導体スイッチ部302-4を構成するダイオードを通って、電流が流れる。これにより、電流が流れる経路中にあるコンデンサ304-1-1に、流れた電流に応じた電荷が初期充電される。一方、転流回路30-2-1内では、遮断器306を通ることによりフルブリッジ回路、つまり、コンデンサ304をバイパスして、電流が通過する。このため、転流回路30-2-1が備えるコンデンサ304-2-1は、初期充電されない。
(手順4-3):その後、コンデンサ304-1-1の初期充電が完了した後、制御装置200は、電力変換装置PCに直流電力の出力を停止させる。これにより、直流電流遮断装置2では、電力変換装置PCからの電流の流れが停止し、コンデンサ304-1-1が充電されなくなる。
(手順4-4):次に、制御装置200は、コンデンサ304-1-1の初期充電を開始する際に閉極させていた機械接点110、断路器20-1-1、転流回路30-2-1が備える遮断器306、断路器20-2-1を開極させる。これにより、直流電流遮断装置2では、コンデンサ304-1-1に充電された電荷が保持される。
このような構成および手順によって、直流電流遮断装置2では、電力変換装置PCから出力された直流電力によって、直流送電線LN-1から分岐した直流バスB-1側の分岐線路BL-1-1に属する転流回路30-1-1が備えるコンデンサ304-1-1を初期充電することができる。その後、制御装置200は、同様の手順を繰り返すことによって、電力変換装置PCから出力された直流電力で、それぞれの直流送電線LNから分岐した直流バスB-1側の分岐線路BL-1に属する転流回路30が備えるコンデンサ304を初期充電することができる。さらに、直流電流遮断装置2では、制御装置200が、上述した手順と同様の手順によって、それぞれの直流送電線LNから分岐した直流バスB-2側の分岐線路BL-2に属する転流回路30が備えるコンデンサ304を初期充電することもできる。この場合、制御装置200は、上述した手順4-1において、分岐線路BL-1に属する転流回路30-1が備える遮断器306と、分岐線路BL-2に属する転流回路30-2が備える遮断器306との開極および閉極を逆にする。より具体的には、制御装置200は、分岐線路BL-1に属する転流回路30-1が備える遮断器306を閉極させて、フルブリッジ回路をバイパスして電流を通過させるようにし、分岐線路BL-2に属する転流回路30-2が備える遮断器306を開極させて、コンデンサ304を初期充電させるようにする。さらに、直流電流遮断装置2では、制御装置200が、上述した手順4-1において、分岐線路BL-1に属する転流回路30-1が備える遮断器306と、分岐線路BL-2に属する転流回路30-2が備える遮断器306との両方を開極させることにより、転流回路30-1と転流回路30-2とが備えるそれぞれのコンデンサ304を同時に初期充電させることもできる。
[直流電流遮断装置2におけるコンデンサ304への初期充電の第2の動作]
ここで、図13および図14を参照して、制御装置200が、電力変換装置PCから出力された直流電力で、複数のコンデンサ304を同時に初期充電させる動作の一例について説明する。ここでは、制御装置200が、直流送電線LN-1および直流送電線LN-2に属するそれぞれの転流回路30が備えるコンデンサ304を同時に初期充電させ、直流送電線LN-nに属する転流回路30が備えるコンデンサ304は初期充電させないものとする。図13および図14には、制御装置200によってそれぞれの構成要素が制御された状態における、直流電流遮断装置2内の電流の流れを示している。制御装置200は、以下のような手順でそれぞれの構成要素の開極、閉極、オン、オフを制御することにより、複数のコンデンサ304を同時に初期充電する。
(手順5-1):まず、制御装置200は、初期充電する転流回路30が接続されているそれぞれの直流送電線LN(分岐線路BL)に属する断路器20(ここでは、断路器20-1-1、断路器20-2-1、断路器20-1-2、および断路器20-2-2)を閉極させる。そして、制御装置200は、初期充電する転流回路30(ここでは、転流回路30-1-1、転流回路30-2-1、転流回路30-1-2、および転流回路30-2-2)が備える遮断器306を開極させる。さらに、制御装置200は、初期充電させない転流回路30が接続されているそれぞれの直流送電線LN(分岐線路BL)に属する断路器20(ここでは、断路器20-1-nおよび断路器20-2-n)と、初期充電させない転流回路30(ここでは、転流回路30-1-nおよび転流回路30-2-n)が備える遮断器306とを含む、直流電流遮断装置2が備える他の断路器20および他の転流回路30が備える遮断器306と、補助断路器40とを開極させる。そして、制御装置200は、機械接点110を閉極させる。これにより、直流電流遮断装置2では、図13に示すような状態になる。直流電流遮断装置2が機械接点100を備えている場合、制御装置200は、機械接点100を閉極させた状態のままにしておく。ここで、直流送電線LN-nに属するいずれかの転流回路30が備えるコンデンサ304も同時に初期充電する場合、制御装置200は、直流送電線LN-nに属する断路器20-1-nおよび断路器20-2-nを閉極させ、初期充電させる転流回路30が備える遮断器306を開極させ、初期充電させない転流回路30が備える遮断器306を閉極させてもよい。
(手順5-2):次に、制御装置200は、電力変換装置PCに直流電力を出力させる。これにより、電力変換装置PCからの直流電力による電流が、図14に示すような経路を通って流れる。より具体的には、電力変換装置PCから、直流バスB-1に流れ、断路器20-1-1、転流回路30-1-1、転流回路30-2-1、断路器20-2-1を通って、直流バスB-2に流れる。さらに、直流バスB-1に流れた電流は、断路器20-1-2、転流回路30-1-2、転流回路30-2-2、断路器20-2-2を通って、直流バスB-2に流れる。そして、直流バスB-2(機械接点100を含む)に流れた電流は、機械接点110、電流抑制要素120を通って、接地された箇所に電流が流れる。このとき、初期充電する転流回路30内では、半導体スイッチ部302-3を構成するダイオード、コンデンサ304、および半導体スイッチ部302-4を構成するダイオードを通って、電流が流れる。これにより、電流が流れる経路中にあるコンデンサ304に、流れた電流に応じた電荷が初期充電される。ここで、直流送電線LN-nに属するいずれかの転流回路30が備えるコンデンサ304も同時に初期充電する場合、直流バスB-1に流れた電流は、断路器20-1-n、初期充電する転流回路30内のフルブリッジ回路(コンデンサ304を含む)、初期充電しない、つまり、電流をバイパスする転流回路30内の遮断器306、断路器20-2-nを通って、直流バスB-2に流れる。
(手順5-3):その後、初期充電する転流回路30が備えるそれぞれのコンデンサ304の初期充電が完了した後、制御装置200は、電力変換装置PCに直流電力の出力を停止させる。これにより、直流電流遮断装置2では、電力変換装置PCからの電流の流れが停止し、それぞれのコンデンサ304が充電されなくなる。
(手順5-4):次に、制御装置200は、それぞれのコンデンサ304の初期充電を開始する際に閉極させていた機械接点110、それぞれの断路器20(ここでは、断路器20-1-1、断路器20-2-1、断路器20-1-2、および断路器20-2-2)、を開極させる。これにより、直流電流遮断装置2では、それぞれのコンデンサ304に充電された電荷が保持される。ここで、直流送電線LN-nに属するいずれかの転流回路30が備えるコンデンサ304も同時に初期充電するために断路器20-1-nと断路器20-2-nとを閉極させていた場合には、この断路器20-1-nおよび断路器20-2-nと、初期充電させない転流回路30が備える遮断器306とも開極させる。
このような構成および手順によって、直流電流遮断装置2では、電力変換装置PCから出力された直流電力によって、複数の転流回路30が備えるコンデンサ304を同時に初期充電することができる。
そして、制御装置200は、直流電流遮断装置2における通常の送電の制御を行い、仮にいずれかの直流送電線LNに事故が発生した場合には、その直流送電線LN(事故回線)を遮断させる。直流電流遮断装置2において、いずれかの直流送電線LNに事故が発生した場合に事故回線を遮断させる動作は、直流電流遮断装置1と同様である。従って、直流電流遮断装置2における事故回線の遮断動作に関する再度の詳細な説明は省略する。
上記説明したように、第2の実施形態の直流電流遮断装置2によれば、直流バスB-1に接続されている、直流電流遮断装置2の外部の電力変換装置PCから出力された直流電力で、直流電流遮断装置2が備えるそれぞれの転流回路30内のコンデンサ304を初期充電することができる。そして、第2の実施形態の直流電流遮断装置2でも、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と同様に、直流電流遮断装置2が備える複数の転流回路30内のコンデンサ304を同時に初期充電させることもできる。さらに、第2の実施形態の直流電流遮断装置2は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と同様の手順によって、課電されている直流送電線LNからの電力で、直流電流遮断装置2が備えるそれぞれの転流回路30内のコンデンサ304を初期充電(同時も含む)することもできる。しかも、第2の実施形態の直流電流遮断装置2においても、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と同様に、コンデンサ304を初期充電するために設ける構成要素は、機械接点100、機械接点110、および電流抑制要素120が一つずつでよい。つまり、コンデンサ304を初期充電するために設ける構成要素は、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と同様である。このため、第2の実施形態の直流電流遮断装置2でも、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と同様に、小規模な回路を追加することによって、それぞれの転流回路30が備えるコンデンサ304を初期充電する機能を実現することができる。しかも、第2の実施形態の直流電流遮断装置2では、電力変換装置PCから出力された直流電力で、それぞれの転流回路30が備えるコンデンサ304を初期充電させることもできるため、この場合には、より高精度で安全にコンデンサ304を初期充電することができる。
直流電流遮断装置2の構成は、図10に示した構成に限定されない。直流電流遮断装置2は、図12や図14に示すような経路と同様の経路で電流を流すことができる構成であれば、いかなる構成であってもよい。つまり、直流電流遮断装置2の構成は、図12や図14に示した経路と同様の経路で導通させることができる構成であれば、図10に示した構成要素以外の他の構成要素が経路中に設けられていてもよい。例えば、第1の実施形態の直流電流遮断装置1と同様に、事故が発生した場合における電流の変化を抑制するための直流リアクトルがそれぞれの直流送電線LNの線路中に接続されている構成にしてもよい。
上記に述べたとおり、各実施形態の直流電流遮断装置では、小規模な回路構成で、直流電流遮断装置が備える転流回路内のコンデンサを予め充電することができる。これにより、各実施形態の直流電流遮断装置では、仮に直流送電線で事故が発生した場合には、転流回路における転流の機能を実行させ、発生した事故による事故電流を半導体遮断器に転流させることができる。このことにより、各実施形態の直流電流遮断装置は、直流送電線を遮断させたり導通(接続)させたりする正常な動作を維持することができる。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、複数の直流送電線(LN)と、半導体遮断器(10)と、それぞれの直流送電線に対応し、少なくとも蓄電要素(304)と、蓄電要素を通過しない経路で電流を通過させる内部機械式接点(306)とを含み、対応する直流送電線に流れる電流を転流させる第1の転流回路(30-1)と、第1の転流回路に直列に接続された第1の機械式接点(20-1)とを有する複数の第1の線路(BL-1)と、それぞれの第1の線路における第1の機械式接点の第1の転流回路と接続された側とは逆側の一極と、半導体遮断器の第1端とを接続する第1の直流バス(B-1)と、それぞれの直流送電線に対応し、第1の転流回路と同様の構成の第2の転流回路(30-2)と、第2の転流回路に直列に接続された、第1の機械式接点と同様の構成の第2の機械式接点(20-2)とを有する複数の第2の線路(BL-2)と、それぞれの第2の線路における第2の機械式接点の第2の転流回路と接続された側とは逆側の一極と、半導体遮断器の第1端と逆側の第2端とを接続する第2の直流バス(B-2)と、半導体遮断器の第2端側に第3の機械式接点(110)を介して接続され、第3の機械式接点と接続された側とは逆側の一端が直流送電線の負極に接続、あるいは接地された電流抑制要素(120)と、少なくとも、第1の転流回路、第1の機械式接点、第2の転流回路、第2の機械式接点、半導体遮断器、および第3の機械式接点を制御し、蓄電要素を充電させる制御装置(200)と、を備えることにより、転流回路内の蓄電要素を予め充電するための構成を小規模な回路構成で実現することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。