JP7457353B2 - 軟骨細胞への分化促進剤、軟骨細胞の増殖促進剤および軟骨基質産生促進剤 - Google Patents

軟骨細胞への分化促進剤、軟骨細胞の増殖促進剤および軟骨基質産生促進剤 Download PDF

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Description

本発明は、軟骨前駆細胞から軟骨細胞への分化を促進し、さらに軟骨細胞の増殖および軟骨基質の産生を促進し得る軟骨細胞への分化促進剤、軟骨細胞の増殖促進剤および軟骨基質産生促進剤に関する。
軟骨は軟骨細胞とそれを取り囲む基質からなる結合組織である。加齢や、関節の先天的もしくは後天的異常、靭帯断裂等の外傷、体重の増加等によって生じる過度の力学的負荷(メカニカルストレス)等により、軟骨細胞数の減少と機能の低下を引き起し、軟骨組織の変性を来すことにより、変形性関節症等の疾患を引き起こすことが知られている。
かかる疾患に対しては、抗炎症剤の投与等の対症療法や局所の安静、装具療法、ヒアルロン酸の関節内注射等の保存療法、関節鏡下骨髄刺激法、自家骨軟骨柱移植術、自家培養軟骨移植術、高位脛骨骨切り術等の手術治療が行われている。
しかし、対症療法や保存療法は根本的な治療方法ではなく、手術療法のうち、関節鏡下骨髄刺激法や自家骨軟骨柱移植術は、小規模の軟骨欠損を対象としたものであり、重篤度の高い変形性膝関節症等、大規模な軟骨欠損への適用には向かないとされている。また、自家培養軟骨移植術においては、患者自身の細胞を関節より採取する必要があるため、侵襲性の問題が指摘されている。さらに、採取した細胞を大幅に増幅させる必要があるが、分化した軟骨細胞は増幅させることにより、その本来の軟骨細胞の機能を失う脱分化の問題も指摘されている。
それゆえ、軟骨細胞への分化もしくは軟骨細胞の増殖を促進し、あるいは軟骨基質の産生を促進する成分または軟骨の再生を促進する成分の探索が進められ、「ニューロコンドリン」と称するタンパク質であるC16N、当該C16NのアイソフォームであるC16N-1およびC16N-2、またはこれらのタンパク質の類似タンパク質(特許文献1)、破骨細胞分化因子(RANKL)作用物質であるペプチド、タンパク質(特許文献2)や、ハルミンまたはその塩(特許文献3)、ムベ葉抽出物(特許文献4)、20-ヒドロキシエクジゾン含有植物抽出物(特許文献5)等の植物由来成分が報告されている。
しかしながら、タンパク質やペプチドについては感作性や製剤安定性等における問題が懸念され、植物由来成分についても、安定性、安全性、効果等の面で十分に満足できるとはいえなかった。
従って、安定性および安全性に優れ、優れた軟骨細胞への分化促進作用もしくは軟骨細胞の増殖促進作用や軟骨基質産生促進作用を有し、軟骨の再生、さらには変形性関節症等の治療に有用な軟骨細胞への分化促進剤等が求められている。
国際公開第2000/001405号 国際公開第2010/038610号 特開2012-171947号公報 特表2016-520059号公報 特開2016-210767号公報
そこで本発明は、安定性および安全性に優れ、優れた軟骨細胞への分化促進作用や軟骨細胞増殖促進作用、さらには軟骨基質産生促進作用を有し、軟骨の再生、さらには変形性関節症等の軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防または改善に有用な軟骨細胞への分化促進剤、軟骨細胞の増殖促進剤および軟骨基質産生促進剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、甘草抽出物に含まれるリクイリチゲニンが軟骨前駆細胞の軟骨細胞への分化を促進し、さらに軟骨細胞の増殖を促進し、軟骨基質の産生を促進する作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を含有する、軟骨細胞への分化促進剤。
[2]リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を含有する、軟骨細胞の増殖促進剤。
[3]リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を含有する、軟骨基質の産生促進剤。
[4]リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を含有する、軟骨の再生剤。
[5][1]に記載の軟骨細胞への分化促進剤を含有する、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防または改善用医薬品。
[6]軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患が、変形性関節症である、[5]に記載の医薬品。
[7][2]に記載の軟骨細胞の増殖促進剤を含有する、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防または改善用医薬品。
[8]軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患が、変形性関節症である、[7]に記載の医薬品。
[9][3]に記載の軟骨基質の産生促進剤を含有する、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防または改善用医薬品。
[10]軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患が、変形性関節症である、[9]に記載の医薬品。
[11][1]に記載の軟骨細胞への分化促進剤を含有する、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防または改善用食品。
[12]軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患が、変形性関節症である、[11]に記載の食品。
[13][2]に記載の軟骨細胞の増殖促進剤を含有する、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防または改善用食品。
[14]軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患が、変形性関節症である、[13]に記載の食品。
[15][3]に記載の軟骨基質の産生促進剤を含有する、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防または改善用食品。
[16]軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患が、変形性関節症である、[15]に記載の食品。
[17]軟骨細胞への分化もしくは軟骨細胞の増殖、または軟骨基質の産生を促進する必要のある対象動物に、当該対象動物の軟骨細胞への分化もしくは軟骨細胞の増殖、または軟骨基質の産生を促進するために有効な量の、リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を摂取させること、または投与することを含む、軟骨細胞への分化もしくは軟骨細胞の増殖、または軟骨基質の産生を促進する方法。
[18]軟骨の低減もしくは欠損を予防または改善する必要のある対象動物に、当該対象動物の軟骨の低減もしくは欠損を予防または改善するために有効な量の、リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を摂取させること、または投与することを含む、軟骨の低減もしくは欠損を予防または改善する方法。
本発明により、安定性および安全性が高く、軟骨細胞への分化促進作用、軟骨細胞の増殖促進作用および軟骨基質産生促進作用に優れる軟骨細胞への分化促進剤、軟骨細胞の増殖促進剤および軟骨基質産生促進剤を提供することができる。
本発明の軟骨細胞への分化促進剤、軟骨細胞の増殖促進剤および軟骨基質産生促進剤は、軟骨の再生に有効で、変形性関節症等、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防または改善に有用である。
図1は、試験例1において、培養したATDC5細胞をアルシアンブルー染色した結果を示す図である。 図2は、試験例1において、アルシアンブルー染色した細胞から可溶化されたアルシアンブルー色素について、620nmにおける吸光度の測定結果を示す図である。図中、「**」は、コントロールに対し、P<0.01にて有意であることを示す。 図3は、試験例1において、培養24日後の培養上清および細胞消化液中の硫酸化グリコサミノグリカンの含有量を示す図である。図中、「**」は、コントロールに対し、P<0.01にて有意であることを示す。 図4は、試験例1において、培養24日後の細胞消化液中のDNA含有量を示す図である。図中、「*」は、コントロールに対し、P<0.05にて有意であることを示し、「**」は、コントロールに対し、P<0.01にて有意であることを示す。
本発明は、軟骨細胞への分化促進剤(以下、本明細書にて「本発明の分化促進剤」と称することがある)、軟骨細胞の増殖促進剤(以下、本明細書にて「本発明の増殖促進剤」と称することがある)、および軟骨基質産生促進剤(以下、本明細書にて「本発明の産生促進剤」と称することがある)を提供する。
本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、リクイリチゲニンを有効成分として含有する。
本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤に有効成分として含有されるリクイリチゲニンは、甘草に含有されるフラバノン配糖体(リクイリチン)のアグリコンであり、下記化学式で示される(2S)-2α-(4-ヒドロキシフェニル)-7-ヒドロキシ-3,4-ジヒドロ-2H-1-ベンゾピラン-4-オンの一般化学名称で表される。
本発明において、リクイリチゲニンは、自体公知の方法により甘草から抽出し、精製して用いることもできるが、たとえば、1-アセチル-2-ヒドロキシ-4-メトキシメトキシベンゼンと、4-メトキシメトキシベンズアルデヒドとをクライゼン・シュミット反応させ、次いでオキシ-マイケル付加させた後、メトキシメチル基を脱離させる等の方法により、化学的に合成して用いることもできる。
また、各社より市販されている製品を利用することもできる。
本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤には、リクイリチゲニンの7位の水酸基および4’位の水酸基のいずれかまたは双方がアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アルコキシアルキル基(メトキシメチル基、2-メトキシエトキシメチル基等)、アシル基(アセチル基等)等により置換された置換体や、前記水酸基のいずれかまたは双方に糖が結合した配糖体等、生体内で代謝されてリクイリチゲニンを生じ得る誘導体を用いることもできる。
かかる誘導体は、自体公知の方法により製造して用いることができる。
本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤には、リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より、1種または2種以上を選択して用いることができる。
本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上に、必要に応じて、製剤の分野で一般的に用いられる添加剤を加えて、製剤の分野で周知の製剤化手段、たとえば第十七改正日本薬局方製剤総則[3]製剤各条に記載された方法等により調製することができ、溶液状、懸濁液状、乳液状等の液状;ゲル状、ペースト状、クリーム状等の半固形状;粉末状、顆粒状、タブレット状、カプセル状等の固形状等の形態とすることができる。
上記添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、被覆剤、基剤、溶剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、安定化剤、粘稠剤、pH調整剤、抗酸化剤、防腐剤、保存剤、矯味剤、甘味剤、香料、着色剤等が挙げられる。
賦形剤としては、無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、デンプン(トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン等)、糖類(ブドウ糖、乳糖、白糖等)、糖アルコール(ソルビトール、マルチトール、マンニトール等)等が挙げられる。
結合剤としては、ゼラチン、カゼインナトリウム、デンプンおよび加工デンプン(トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン等)、セルロースおよびその誘導体(結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)等が挙げられる。
崩壊剤としては、ポビドン、クロスポビドン、セルロースおよびその誘導体(結晶セルロース、メチルセルロース等)等が挙げられる。
滑沢剤としては、タルク、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
被覆剤としては、メタクリル酸共重合体(メタクリル酸・アクリル酸エチル共重合体等)、メタクリレート共重合体(アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体等)等が挙げられる。
基剤としては、炭化水素(流動パラフィン等)、ポリエチレングリコール(マクロゴール400、マクロゴール1500等)等が挙げられる。
溶剤としては、精製水、一価アルコール(エタノール等)、多価アルコール(プロピレングリコール、グリセリン等)等が挙げられる。
乳化剤としては、非イオン性界面活性剤(ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等)、陰イオン性界面活性剤(アルキル硫酸ナトリウム、N-アシルグルタミン酸塩等)、精製大豆レシチン等が挙げられる。
分散剤としては、アラビアゴム、アルギン酸プロピレングリコール、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等)、陰イオン性界面活性剤(アルキル硫酸ナトリウム等)等が挙げられる。
懸濁化剤としては、アルギン酸ナトリウム、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等)等が挙げられる。
安定化剤としては、アジピン酸、エチレンジアミン四酢酸塩(エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等)、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン等が挙げられる。
粘稠剤としては、水溶性高分子(ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー等)、多糖類(アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、トラガント等)等が挙げられる。
pH調整剤としては、塩酸、リン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、水酸化ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等が挙げられる。
抗酸化剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸、没食子酸プロピル等が挙げられる。
防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル(パラオキシ安息香酸メチル等)等が挙げられる。
また、保存剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビトール、パラオキシ安息香酸エステル(パラオキシ安息香酸メチル等)、プロピレングリコール等が挙げられる。
矯味剤としては、アスコルビン酸、エリスリトール、5’-グアニル酸二ナトリウム、クエン酸、L-グルタミン酸ナトリウム、酒石酸、DL-リンゴ酸等が挙げられる。
また、甘味剤としては、アスパルテーム、ステビア、サッカリン等が挙げられる。
香料としては、オレンジエッセンス、l-メントール、d-ボルネオール、バニリン、リナロール等が挙げられる。
着色剤としては、タール色素(食用赤色2号、食用青色1号、食用黄色4号等)、無機顔料(ベンガラ、黄色三二酸化鉄、酸化チタン等)、天然色素(アナトー色素、ウコン色素、カロテノイド等)等が挙げられる。
上記した添加剤は、必要に応じて、1種または2種以上を用いることができる。
本発明の分化促進剤は、軟骨前駆細胞から軟骨細胞への分化を良好に促進し、軟骨細胞の形成を促進することができる。
また、本発明の増殖促進剤は、分化した軟骨細胞の増殖を促進することができる。
さらに、本発明の産生促進剤は、軟骨細胞による軟骨基質の産生を良好に促進することができる。
それゆえ、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、有効な軟骨の再生作用を有し、軟骨が損傷し、または炎症を受けた組織において、軟骨の低減または欠損を補う効果を奏する。
また、本発明の分化促進剤および増殖促進剤は、軟骨の低減、欠損した組織を補填するための軟骨細胞の培養に好適に用いることができる。
従って、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、変形性関節症等、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防または治療に好適に用いることができる。
さらに、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤に含有されるリクイリチゲニンは、古くから漢方薬として利用されてきた甘草に含まれる成分であり、安全性が高い成分である。
従って、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、長期間にわたり連続して摂取させまたは投与することができる。
本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤におけるリクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上の含有量は、リクイリチゲニン量に換算した量として通常0.00005重量%~100重量%であり、好ましくは0.0001重量%~100重量%であり、より好ましくは0.0002重量%~100重量%である。
また、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤の1日あたりの摂取量または投与量は、適用される対象(以下本明細書において、「適用対象」ともいう)の性別、年齢、適用対象において観察される軟骨の損傷や炎症もしくは軟骨欠損の状況および程度、ならびに本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤の形態、投与方法等により適宜決定されるが、適用対象がヒト成人である場合、リクイリチゲニンの量として、通常1mg~2000mgであり、好ましくは10mg~1250mgであり、より好ましくは50mg~250mgである。
上記の量は、1回で摂取させまたは投与してもよく、1日数回(たとえば2~3回)に分けて摂取させまたは投与してもよい。
また、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤の摂取または投与期間も、適用対象の軟骨の損傷や炎症もしくは軟骨欠損の状況および程度等に応じて適宜設定される。変形性関節症等の軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患が、加齢や長期にわたる力学的負荷等により引き起こされる症状や疾患であること、あるいは関節リウマチ等の自己免疫疾患等であること等を考慮すると、かかる症状や疾患を予防または改善するためには、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、長期間にわたり継続して摂取させまたは投与することが好ましい。
本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、単位包装形態とすることができる。本明細書において「単位包装形態」とは、特定量(たとえば、1回あたりの摂取量または投与量等)を1単位とし、該1単位または2単位以上が一つの容器に充填され、または包装体に包装される等して収容された形態をいい、たとえば、1回あたりの摂取量または投与量を1単位とする単位包装形態は、「1回あたりの摂取量または投与量単位の包装形態」と称する。単位包装形態に用いられる容器または包装体は、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤の形態等に応じて適宜選択し得るが、たとえば、紙製の容器または袋体、プラスチック製の容器または袋体、パウチ、アルミ缶、スチール缶、ガラス瓶、ペットボトル、PTP(press through pack)包装シート等が挙げられる。
本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤の適用対象としては、哺乳動物(たとえば、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ロバ、ブタ、ヒツジ等)や、鳥類(たとえば、アヒル、ニワトリ、ガチョウ、七面鳥等)等が挙げられる。
本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤をヒト以外の適用対象動物(以下、単に「対象動物」ともいう)に適用する場合、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤の摂取量または投与量は、対象動物の種類、性別、体重等に応じて適宜設定すればよい。
本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、上述した通り、軟骨前駆細胞から軟骨細胞への良好な分化促進作用、分化した軟骨細胞の増殖を促進する作用および軟骨細胞による軟骨基質の産生を促進する作用を有し、軟骨の再生剤として機能する。
従って、本発明は他の実施態様として、軟骨の再生剤(以下、本明細書にて「本発明の再生剤」とも称する)を提供する。
本発明の再生剤は、リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を含有する。
本発明の再生剤に含有されるリクイリチゲニンおよびその誘導体、本発明の再生剤におけるその含有量、1日あたりの投与量または摂取量および投与または摂取回数、投与または摂取期間については、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤について上記した通りである。
また、本発明の再生剤の形態、包装形態、適用対象についても、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤について上記した通りである。
本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、そのまま、またはさらに上記した製剤の分野で一般的な添加剤を加えて、医薬品(以下、本明細書において「本発明の医薬品」とも称する)として提供することができる。
本発明の医薬品は、錠剤、被覆錠剤、チュアブル錠、丸剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、エリキシル剤、リモナーゼ剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、経口ゼリー剤等の経口製剤、溶液状、懸濁液状、乳液状等の注射剤、用時溶解または懸濁して用いる固形状の注射剤、輸液剤、持続性注射剤等の注射用製剤等の剤形とすることができる。
上記の通り、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤に含有されるリクイリチゲニンは、主として、古くから漢方薬として利用される甘草から得られ、経口摂取に適することから、本発明の医薬品は、経口製剤として好適に提供され得る。
本発明の医薬品には、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、リクイリチゲニンに換算した含有量にして、通常0.001重量%~100重量%、好ましくは0.01重量%~100重量%、より好ましくは0.1重量%~100重量%含有される。
本発明の医薬品には、本発明の特徴を損なわない範囲で、さらに、アセトアミノフェン等の鎮痛剤;ロキソプロフェン、ジクロフェナク等の非ステロイド性抗炎症剤等、変形性関節症等の軟骨の損傷や炎症あるいは軟骨欠損に起因する疾患の症状の緩和に用いられる薬物を含有させることもできる。
本発明の医薬品は、変形性関節症等の軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患を有する者や、加齢や長期にわたる力学的負荷等により、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患を発症するリスクの高い者に対し、好適に投与され得る。
本発明の医薬品は、上記適用対象に対し、リクイリチゲニン量に換算した1日あたりの摂取量または投与量が、上記した1日あたりの摂取量または投与量となるように、投与される。
さらに、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、各種食品に添加して摂取させることができる。本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤が添加される食品は特に制限されず、一般的に食事やデザートに供される形態の食品であれば如何なるものでもよい。
たとえば、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤を茶類、清涼飲料水等の飲料に添加し、所望により適当な風味を加えて、機能性飲料とすることができる。
より具体的には、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、たとえば、茶系飲料、果実飲料等の清涼飲料水;緑茶、紅茶、中国茶等の茶類;牛乳、ヨーグルト等の乳製品;ゼリー、ビスケット、キャンディ、キャラメル等の菓子等に添加することができる。
本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、1日あたりに摂取される量の上記各種食品に対し、リクイリチゲニンに換算した量として、上記した1日あたりの摂取量となるように添加されることが好ましい。
また、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、そのまま、または必要に応じて一般的な食品添加物を加えて、通常の食品製造技術により、食品(以下、本明細書において「本発明の食品」とも称する)として提供することができる。
本発明の食品は、溶液状、懸濁液状、乳状等の液状;ゲル状、クリーム状、ペースト状等の半固形状;粉末状、顆粒状、シート状、カプセル状、タブレット状等の固形状等、種々の形態とすることができる。
さらに、本発明の食品は、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤を各種食品原材料に加え、必要に応じて一般的な食品添加物を加えて、清涼飲料水(果汁飲料、スポーツ飲料、コーヒー飲料、茶系飲料等)、茶(緑茶、白茶、黄茶、青茶、紅茶、黒茶、花茶等)、乳製品(乳酸菌飲料、発酵乳、バター、チーズ、ヨーグルト、加工乳、脱脂乳等)、食肉加工品(ハム、ソーセージ、ハンバーグ等)、魚肉練り製品(蒲鉾、竹輪等)、卵加工品(だし巻き、卵豆腐、茶碗蒸し等)、大豆加工品(味噌、豆腐、納豆等)、小麦加工品(パン、うどん、パスタ等)、魚介乾物(鰹節、煮干、ちりめんじゃこ等)、菓子(クッキー、ビスケット、ゼリー、チューイングガム、キャンディ、キャラメル、アイスクリーム等)、スープ(味噌汁、コンソメスープ、コーンスープ、ポタージュ等)、調味料(ドレッシング、ウスターソース、マヨネーズ等)等、種々の形態とすることができ、瓶詰め、缶詰、レトルトパウチ等の包装形態を採用することもできる。
上記食品添加物としては、製造用剤(かんすい、結着剤等)、増粘安定剤(キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等)、ゲル化剤(ゼラチン、寒天、カラギーナン等)、ガムベース(酢酸ビニル樹脂、ジェルトン、チクル等)、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、サポニン、レシチン等)、保存料(安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ε-ポリリシン等)、酸化防止剤(アスコルビン酸、エリソルビン酸、カテキン等)、光沢剤(セラック、パラフィンワックス、ミツロウ等)、防かび剤(チアベンダゾール、フルジオキソニル等)、膨張剤(炭酸水素ナトリウム、グルコノδ-ラクトン、ミョウバン等)、甘味料(アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア等)、苦味料(カフェイン、ナリンギン、ニガヨモギ抽出物等)、酸味料(クエン酸、酒石酸、乳酸等)、調味料(L-グルタミン酸ナトリウム、5’-イノシン酸二ナトリウム等)、着色料(アナトー色素、ウコン色素、クチナシ色素等)、香料(アセト酢酸エチル、アニスアルデヒド等の合成香料、オレンジ、ラベンダー等の天然香料)等が挙げられる。
本発明において、上記食品添加物は、1種または2種以上を用いることができる。
本発明の食品には、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤は、リクイリチゲニンに換算した含有量にして、通常0.00005重量%~100重量%、好ましくは0.0001重量%~100重量%、より好ましくは0.0002重量%~100重量%含有される。
さらに本発明の食品には、本発明の特徴を損なわない範囲で、カルシウム、タンパク質、コンドロイチン、グルコサミン等、軟骨の損傷や減少に有効な栄養素や、これら栄養素を含む食品素材を含有させることができる。
本発明の食品は、変形性関節症等、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患を有する者や、加齢や長期にわたる力学的負荷等により、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患を発症するリスクの高い者等に好適に摂取させ得る。また、中高齢者やスポーツ選手等に対し、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防を目的として、幅広く摂取させることができる。
従って、本発明の食品は、変形性関節症等、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防または改善用の特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の保健機能食品、病者用食品、高齢者用食品等の特別用途食品、健康補助食品、ダイエタリーサプリメント等としても提供され得る。
本発明の食品は、上記適用対象に対し、リクイリチゲニン量に換算した1日あたりの摂取量が、上記した1日あたりの摂取量となるように摂取させることが好ましい。
本発明はまた、上記した本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤と、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤を軟骨細胞への分化促進、軟骨細胞の増殖促進や軟骨基質の産生促進、あるいは軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防または改善に使用することができること、または使用すべきであることを記載した記載物とを含む、商業的パッケージを提供することができる。
さらに本発明は、軟骨細胞への分化もしくは軟骨細胞の増殖、または軟骨基質の産生を促進する必要のある対象動物における、軟骨細胞への分化もしくは軟骨細胞の増殖、または軟骨基質の産生を促進する方法(以下、本明細書において「本発明の促進方法」ともいう)を提供する。
本発明の促進方法は、軟骨細胞への分化もしくは軟骨細胞の増殖、または軟骨基質の産生を促進する必要のある対象動物に、当該対象動物の軟骨細胞への分化もしくは軟骨細胞の増殖、または軟骨基質の産生を促進するために有効な量の、リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を摂取させること、または投与することを含む。
さらに本発明は、軟骨の低減もしくは欠損を予防または改善する必要のある対象動物における、軟骨の低減もしくは欠損を予防または改善する方法(以下、本明細書において「本発明の予防または改善方法」ともいう)をも提供する。
本発明の予防または改善方法は、軟骨の低減もしくは欠損を予防または改善する必要のある対象動物に、当該対象動物の軟骨の低減もしくは欠損を予防または改善するために有効な量の、リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を摂取させること、または投与することを含む。
上記した本発明の促進方法および本発明の予防または改善方法における対象動物としては、哺乳動物(たとえば、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ロバ、ブタ、ヒツジ等)や、鳥類(たとえば、アヒル、ニワトリ、ガチョウ、七面鳥等)等が挙げられる。
本発明の促進方法は、軟骨の低減、欠損した組織を補填するための軟骨細胞の培養、または、低減、欠損した軟骨の再生に好適に用いることができる。
本発明の予防または改善方法は、変形性関節症等、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防または治療に好適に用いることができる。
ヒトの場合、本発明の促進方法および本発明の予防または改善方法は、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患を有する患者、または、加齢や長期にわたる力学的負荷等により、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患を発症するリスクの高い者に好適に適用される。
本発明の促進方法および本発明の予防または改善方法におけるリクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上の有効量は、対象動物の種類、年齢、性別、軟骨の炎症、損傷もしくは欠損の状況および程度等に応じて適宜決定されるが、本発明の分化促進剤、増殖促進剤および産生促進剤において、ヒトおよびヒト以外の対象動物について上記した摂取量または投与量と同様の量を、上記した回数および期間にて摂取させまたは投与することができる。
さらに、本発明の促進方法および本発明の予防または改善方法におけるリクイリチゲニンの摂取または投与方法としては、経口摂取または投与、注射、輸液による投与等が挙げられるが、医療機関にて医師の指導監督下に行う必要がなく、簡便に摂取させることができることから、経口摂取または投与が好ましい。
以下に試験例により、本発明についてさらに詳細に説明する。
以下の試験例において、リクイリチゲニンとしては、化学的な合成法、すなわち、1-アセチル-2-ヒドロキシ-4-メトキシメトキシベンゼンと、4-メトキシメトキシベンズアルデヒドとをクライゼン・シュミット反応させ、次いでオキシ-マイケル付加させた後、メトキシメチル基を脱離させる方法により合成したものを用いた。
[試験例1]リクイリチゲニンが軟骨細胞の分化、増殖および軟骨基質産生に及ぼす効果の検討
軟骨前駆細胞ATDC5細胞を用いて、リクリチゲニンが軟骨前駆細胞の軟骨細胞への分化、軟骨細胞の増殖および軟骨基質の産生に及ぼす効果を検討した。
すなわち、ATDC5細胞(国立研究開発法人理化学研究所バイオリソース研究センターより入手)をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)/ハムズ(Ham’s) F-12培地(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.5mLを入れたマイクロプレートに1×10cells/ウェルとなるように播種し、5体積%二酸化炭素存在下37℃にて培養した。培養3日目、6日目、9日目、12日目、15日目、18日目および21日目に、前記培地に、トランスフェリンおよび亜セレン酸ナトリウムをそれぞれ終濃度が10μg/mLおよび30nMとなるように添加し、さらに、リクイリチゲニンを2.5μM、5μM、10μMおよび20μMの各終濃度となるように添加した培地にてそれぞれ培地交換を行い、培養を継続した。
なお、リクイリチンゲニンを添加せずに、同様に処理した場合(リクイリチゲニン濃度=0μM)をコントロールとした。
培養24日後に、細胞をアルシアンブルー染色(1重量%、3重量%酢酸水溶液により調製、pH=2.5)し、グリコサミノグリカンを検出した。その結果を図1に示した。
次いで、染色された培養細胞のアルシアンブルー色素を6Mのグアニジン塩酸塩で可溶化し、プレートリーダー(インフィニット(Infinite)200 PRO、テカンジャパン株式会社製)にて620nmにおける吸光度を測定した(リクイリチゲニンの各濃度およびコントロールについて、それぞれn=4)。その結果を、平均値±標準偏差にて、図2に示した。測定結果については、リクイリチゲニンを添加した群とコントロールとの間で、対応のないt検定を実施した。
図1、2に示されるように、リクイリチゲニンを添加して培養することにより、アルシアンブルーで染色されるグリコサミノグリカンが増加することが認められ、10μMおよび20μMのリクイリチゲニンの添加により、コントロールに対し有意な吸光度の増加が認められた(P<0.01)。
また、培養24日後に、培養液から細胞と培養上清を分取し、細胞については10mMリン酸緩衝液(pH=7.4)で洗浄した後、100μg/mLのプロテイナーゼK溶液(50mMリン酸ナトリウムおよび5mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む水溶液(pH=7.1)にて調製)を添加し、37℃にて一晩インキュベートして消化した。培養上清と細胞の消化液をそれぞれ遠心分離し、得られた上清を試料とした。
各試料20μLを、16mg/Lのジメチルメチレンブルー溶液(40mMグリシン、27mM塩化ナトリウムおよび10mM酢酸を含む水溶液(pH=3.0)にて調製)200μLと混和し、525nmにおける吸光度を測定して、試料中の硫酸化グリコサミノグリカンを定量した(それぞれn=7)。培養上清および細胞消化液についての定量結果を、それぞれ平均値±標準偏差にて図3に示した。定量結果については、リクイリチゲニンを添加した群とコントロールとの間で、対応のないt検定を実施した。
さらに、細胞消化液中のDNA含有量を、ナノドロップワン(NanoDrop One)超微量分光光度計(サーモサイエンティフィック(Thermo Scientific)社製)を用いて測定し、細胞数の指標とした。測定結果は、平均値±標準偏差にて図4に示した。測定結果については、リクイリチゲニンを添加した群とコントロールとの間で、対応のないt検定を実施した。
図3に示されるように、培養上清および細胞消化液中における硫酸化グリコサミノグリカン量は、いずれもリクイリチゲニンの添加濃度に従って増加し、培養上清中の硫酸化グリコサミノグリカン量については10μM~20μMのリクイリチゲニンにより、細胞消化液中の硫酸化グリコサミノグリカン量については5μM~20μMのリクイリチゲニンにより、有意な増加が認められた(それぞれコントロールに対しp<0.01にて有意)。
また、図4に示されるように、細胞数の指標とした細胞消化液中のDNA含有量は、リクイリチゲニンの濃度に従って増加した(5μMにて、コントロールに対しP<0.05にて有意、10μMおよび20μMにてP<0.01にて有意)。
以上の結果により、リクイリチゲニンは、5μMという低濃度で、軟骨前駆細胞の軟骨細胞への分化を促進し、軟骨細胞によるグリコサミノグリカンの産生および分泌を促進し得ることが示唆された。また、リクイリチゲニンは、5μM~20μMの濃度で軟骨細胞の増殖を促進し、前記濃度範囲では細胞毒性を示さないことが示唆された。
従って、リクイリチゲニンは、非常に低濃度で軟骨前駆細胞の軟骨細胞への分化を促進し、さらに軟骨細胞の増殖および軟骨基質産生を促進して、軟骨再生作用を向上させる可能性が示唆された。
以上、詳述したように、本発明により、軟骨細胞への分化促進作用、軟骨細胞の増殖促進作用および軟骨基質産生促進作用に優れる軟骨細胞への分化促進剤、軟骨細胞の増殖促進剤および軟骨基質産生促進剤を提供することができる。
本発明の軟骨細胞への分化促進剤、軟骨細胞の増殖促進剤および軟骨基質産生促進剤は、安定性および安全性が高く、軟骨の再生に有効で、変形性関節症等、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防または改善に有用である。

Claims (16)

  1. リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を含有する、軟骨細胞への分化促進剤であって、リクイリチゲニンの誘導体が、リクイリチゲニンの7位の水酸基および4’位の水酸基のいずれかまたは双方が、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、メトキシメチル基、2-メトキシエトキシメチル基およびアセチル基からなる群より選択される1種以上により置換された置換体であり、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防に用いられる、軟骨細胞への分化促進剤
  2. リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を含有する、軟骨細胞の増殖促進剤であって、リクイリチゲニンの誘導体が、リクイリチゲニンの7位の水酸基および4’位の水酸基のいずれかまたは双方が、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、メトキシメチル基、2-メトキシエトキシメチル基およびアセチル基からなる群より選択される1種以上により置換された置換体であり、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防に用いられる、軟骨細胞の増殖促進剤
  3. リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を含有する、軟骨基質の産生促進剤であって、リクイリチゲニンの誘導体が、リクイリチゲニンの7位の水酸基および4’位の水酸基のいずれかまたは双方が、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、メトキシメチル基、2-メトキシエトキシメチル基およびアセチル基からなる群より選択される1種以上により置換された置換体であり、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防に用いられる、軟骨基質の産生促進剤
  4. リクイリチゲニンおよびその誘導体からなる群より選択される1種または2種以上を含有する、軟骨の再生剤であって、リクイリチゲニンの誘導体が、リクイリチゲニンの7位の水酸基および4’位の水酸基のいずれかまたは双方が、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、メトキシメチル基、2-メトキシエトキシメチル基およびアセチル基からなる群より選択される1種以上により置換された置換体であり、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防に用いられる、軟骨の再生剤
  5. 請求項1に記載の軟骨細胞への分化促進剤を含有する、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防用医薬品。
  6. 軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患が、変形性関節症である、請求項5に記載の医薬品。
  7. 請求項2に記載の軟骨細胞の増殖促進剤を含有する、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防用医薬品。
  8. 軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患が、変形性関節症である、請求項7に記載の医薬品。
  9. 請求項3に記載の軟骨基質の産生促進剤を含有する、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防用医薬品。
  10. 軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患が、変形性関節症である、請求項9に記載の医薬品。
  11. 請求項1に記載の軟骨細胞への分化促進剤を含有する、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防用食品。
  12. 軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患が、変形性関節症である、請求項11に記載の食品。
  13. 請求項2に記載の軟骨細胞の増殖促進剤を含有する、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防用食品。
  14. 軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患が、変形性関節症である、請求項13に記載の食品。
  15. 請求項3に記載の軟骨基質の産生促進剤を含有する、軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患の予防用食品。
  16. 軟骨の損傷、炎症に起因する症状や疾患、もしくは軟骨の欠損を呈する症状や疾患が、変形性関節症である、請求項15に記載の食品。
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