JP7456535B1 - 二軸延伸ポリプロピレンフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】より長時間安定に製膜可能であり、且つより高い耐電圧性(特に、高温での耐電圧性)のものの歩留まり率がより高いポリプロピレンフィルムを提供すること。【解決手段】第1の面及び第2の面を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、前記第1の面の略楕円状の斑点の平均最大長さが3.0mm以下であり、且つ前記斑点外の平均突出山部高さRpkと前記斑点内の平均突出山部高さRpkとの差が0.040μm以下である、二軸延伸ポリプロピレンフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等に関する。
ポリプロピレンフィルムは、高い耐電圧性や低い誘電損失特性等の優れた電気特性を有し、且つ、高い耐湿性を有する。そのため、広く電子機器や電気機器に用いられている。具体的には、例えば、高電圧コンデンサ;コンバータ、インバータ等の電力変換回路のフィルタ用コンデンサや平滑用コンデンサ等に使用されるフィルムとして利用されている。
特に、近年、ポリプロピレンフィルムは、電気自動車やハイブリッド自動車等の駆動モーターを制御するインバーター電源機器用コンデンサとして、広く用いられ始めている。自動車等に用いられるインバーター電源機器用コンデンサは、小型、軽量、高容量であり、且つ、長期間に亘る高い信頼性が求められている。
特許文献1には、突起の0.1mmあたりの個数及び10点平均粗さが所定の関係を満たしているコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムが開示されている。特許文献1には、上述した構成のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムの効果として、薄いフィルムであっても加工適性に優れ、低温(-40℃)から高温(150℃)までの広範囲の雰囲気温度条件下でも高耐電圧性を発揮することが記載されている。
国際公開第2013/146367号
電気自動車やハイブリッド自動車等のコンデンサの樹脂フィルムとして利用されるポリプロピレンフィルムは、近年のコンデンサの小型化及び高容量化により、フィルムの厚みを薄く、電極面積を大きくすることが要求されている。また近年においては更なるコストの低廉化の要請が強く、フィルムの生産方法としては樹脂シートを高速で延伸成形する方法が検討され、且つ高い歩留まりで耐電圧性(特に、高温での耐電圧性)を有するコンデンサ素子を製造し得ることが求められる。
そこで、本発明は、より長時間安定に製膜可能であり、且つより高い耐電圧性(特に、高温での耐電圧性)のものの歩留まり率がより高いポリプロピレンフィルムを提供することを課題とする。
本発明者は研究を進める中で、以下の知見を見出した。
上記用途のポリプロピレンフィルムは、厚みが薄く柔軟であることから、その延伸前駆体のキャストシートも薄く柔軟である。このようなキャストシートを連続的に搬送した場合、該シートと搬送ロールの間には気泡が随伴して侵入し易い状態となる。かかる場合、ロールへの密着は不均一になり、密着しなかった部分は、シート表面に楕円状の窪みとなって現れる。
また、搬送ロールは、キャストシート表面にβ結晶を発現させ、且つ延伸前のシートに可塑性を与える目的から、加温されている。前記の楕円状の窪み部分がシート表面に点在した場合、当該部分は搬送ロールへの密着状態がそれ以外の部分と異なることから、β結晶の生成と延伸時の粗化の状態に差が生じる。かかる場合、フィルム表面には楕円状の斑点が点在して現れる。
「斑点」とそれ以外の部分の表面粗さの差が拡大すると、横延伸時にフィルムは破断する傾向にある。これは、シート面内において異なった熱履歴で成形された部分があると、横延伸時の樹脂の可塑性が局所的に不均一になり、フィルムの延伸破断を誘発すると考えられる。
また、斑点は、実用上、コンデンサ素子の耐電圧性の低下をもたらし、歩留まりを著しく低下させる傾向がある。シート面内において局所的に表面粗さの差があると、巻回された金属化ポリプロピレンフィルムの内部において、局所的な層間密着の差が生じ、電界集中によりフィルムが破損すると考えられる。
本発明者は上記知見に基づいてさらに研究を進めた結果、第1の面及び第2の面を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、前記第1の面の略楕円状の斑点の平均最大長さが3.0mm以下であり、且つ前記斑点外の平均突出山部高さRpkと前記斑点内の平均突出山部高さRpkとの差が0.040μm以下である、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、であれば、上記課題を解決できることを見出した。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
項1. 第1の面及び第2の面を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、
前記第1の面の略楕円状の斑点の平均最大長さが3.0mm以下であり、且つ
前記斑点外の平均突出山部高さRpkと前記斑点内の平均突出山部高さRpkとの差が0.040μm以下である、
二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項2. 前記斑点外の平均突出谷部深さRvkと前記斑点内の平均突出谷部深さRvkとの差が0.020μm以下である、項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項3. 遅相軸角度の変化幅が0.3°以上2.8°以下の範囲である、項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項4. 前記第1の面の11.5mm×8.6mmの領域当たりの略楕円状の斑点の平均個数が0.6個以下である、項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項5. 前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、重量平均分子量Mwが25万以上45万以下であり、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比(Mw/Mn)が5.0以上12.0以下であり、230℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが7.0g/10分以下であり、且つヘプタン不溶分が96.0%以上99.5%以下である、項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項6. 厚みが1.7μm以上6.5μm以下である、項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項7. 単層フィルムである、項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項8. コンデンサ用である、項1~7のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
項9. 項1~7のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に配置された金属層とを含む、金属層一体型ポリプロピレンフィルム。
項10. 項9に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを含む、コンデンサ。
項11. 表面の任意の位置において、幅手方向に長さ0.1mmの仮想線を任意の位置に設けた際に、該仮想線と1本以上15本以下の溝が交差し、かつ該溝幅が1μm以上10μm以下のマイクロクラック表面を有するキャスティングドラムを用いてキャストシートを得ること、及び前記キャストシートを二軸延伸処理することを含む、項1~7のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造する方法。
本発明によれば、より長時間安定に製膜可能であり、且つより高い耐電圧性(特に、高温での耐電圧性)のものの歩留まり率がより高いポリプロピレンフィルムを提供することができる。
略楕円状の斑点の代表的なものの写真像を示す。 代表的な斑点について、長軸と短軸を示す。 代表的な斑点について、斑点内の突出山部高さRpk及び突出谷部深さRvkの測定箇所を丸で示す。
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
本明細書においては、各パラメータについて記載された上限及び/又は下限からなる範囲を基に、複数の範囲間で上限及び/又は下限を任意に入れ替えた範囲も、例示される。
1.二軸延伸ポリプロピレンフィルム
本発明は、その一態様において、第1の面及び第2の面を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、前記第1の面の略楕円状の斑点の平均最大長さが3.0mm以下であり、且つ前記斑点外の平均突出山部高さRpkと前記斑点内の平均突出山部高さRpkとの差が0.040μm以下である、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(本明細書において、「本発明のポリプロピレンフィルム」と示すこともある。)、に関する。以下に、これについて説明する。
本発明のポリプロピレンフィルムが有する2つの主面の内、一方の面が第1の面であり、他方の面が第2の面である。第1の面は、コンデンサ作製時に金属層を積層させる面である。
本発明のポリプロピレンフィルムの第1の面の略楕円状の斑点の平均最大長さが3.0mm以下である(特性1)。
特性1に関する「斑点」とは、後述の測定方法の画像上で視認することができるものであり、周囲とは粗化程度及び/又は粗化表面形状が異なる領域である。斑点の最大長さ(長径)は、例えば10mm以下、8mm以下、7mm以下、6mm以下、又は5mm以下であることができる。
さらに、本発明の好ましい態様において、製膜安定性及び/又はより高い耐電圧性のものの歩留まり率をさらに向上させることができるという観点から、第1の面の11.5mm×8.6mmの領域当たりの略楕円状の斑点の平均個数が0.6個以下であることが好ましい。
斑点の平均個数及び斑点の平均最大長さの測定方法は以下のとおりである。
測定対象である二軸延伸ポリプロピレンフィルムそれぞれの幅方向の中央位置から、50mm×50mmの測定用サンプルを、長手方向10mおきに合計10箇所で切り出す。次に、デジタルスコープ(株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-2000)を用いて、レンズ倍率:30倍、光量:フルレンジの50%、測定方法:反射測定、視野範囲:11.5mm×8.6mmにて各測定用サンプルの一方の面(コンデンサ作製時に金属層を積層させる面)について「ハレーション除去+鮮鋭モード(色合いが鮮やかで輪郭を強調させ、ギラつきを取り除く処理を行う)」の画像を観察し、その視野範囲内に観測された略楕円状の「斑点」(代表的なものを図1に示す。)の個数を計測する。なお、視野内に斑点の一部が収まっていない場合は、その斑点は計測しない。各測定用サンプル(合計10個)の視野範囲の斑点の個数を合計し、得られた合計値を10(=測定用サンプル数)で除して、視野範囲(11.5mm×8.6mmの領域)当たりの楕円状の斑点の平均個数を求める。また、上記で計測したそれぞれの斑点について、二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおける長手方向の径と幅手方向の径を測定し、長い方(斑点の長径)を斑点の最大長さとする(図2に示す代表例の場合であれば、横方向の径が長径である)。それぞれの斑点の最大長さを合計し、得られた合計値を斑点の個数で除して、斑点の平均最大長さを求める。
斑点の平均個数は、製膜安定性、歩留まり率等の観点から、好ましくは0個以上0.3個以下、より好ましくは0個以上0.1個以下、特に好ましくは0個である。
斑点の平均最大長さは、製膜安定性、歩留まり率等の観点から、好ましくは0mm以上1.0mm以下、より好ましくは0mm以上0.5mm以下、特に好ましくは0mm(=斑点の平均個数が0個)である。
本発明のポリプロピレンフィルムの斑点外の平均突出山部高さRpkと斑点内の平均突出山部高さRpkとの差は0.040μm以下である(特性2)。
斑点外の平均突出山部高さRpkと斑点内の平均突出山部高さRpkとの差の測定方法は以下のとおりである。
光干渉式非接触表面形状測定機として(株)菱化システム製の「VertScan2.0(型式:R5500GML)」を使用して、測定対象である二軸延伸ポリプロピレンフィルムの一方の面(コンデンサ作製時に金属層を積層させる面)の突出山部高さRpkを測定する。まず、WAVEモードを用い、530whiteフィルタ及び1×BODYの鏡筒を適用し、×10対物レンズを用いて、一視野あたり470.92μm×353.16μmの計測を行う。
斑点内については、上述の斑点の個数の測定方法によって計測した全ての斑点それぞれについて、図3に示す5箇所(長軸と短軸の交点、長軸の一方の端と前記交点とを結ぶ線の中央、長軸の他方の端と前記交点とを結ぶ線の中央、短軸の一方の端と前記交点とを結ぶ線の中央、短軸の他方の端と前記交点とを結ぶ線の中央)それぞれで計測する。
斑点外に関しては、上述の斑点の個数の測定方法で切り出した測定用サンプルそれぞれの中央で計測を行う。
得られたデータに対して、メディアンフィルタ(3×3)によるノイズ除去処理を行ない、その後、カットオフ値30μmによるガウシアンフィルタ処理を行い、うねり成分を除去する。これにより、測定表面の状態を適切に計測できる状態とする。次に、「VertScan2.0」の解析ソフトウェア「VS-Viewer」を用いて解析を行い、潤滑性評価パラメータ―の突出山部高さRpkにつき、上記箇所で得られた各値の平均値を算出する。具体的には以下のとおりである。
斑点内の突出山部高さRpkの測定値を合計し、得られた合計値をX(=測定した斑点の個数×5(1つの斑点内の測定箇所))で除して、斑点内の平均突出山部高さRpkを求める。
各測定用サンプルの斑点外の突出山部高さRpkの測定値を合計し、得られた合計値を10(=測定用サンプル数)で除して、斑点外の平均突出山部高さRpkを求める。
斑点外の平均突出山部高さRpkから斑点内の平均突出山部高さRpkを減じて、両者の差を求める。
斑点外の平均突出山部高さRpkと斑点内の平均突出山部高さRpkとの差は、製膜安定性、歩留まり率等の観点から、好ましくは0μm以上0.030μm以下、より好ましくは0μm以上0.010μm以下、特に好ましくは0μmである。なお、当該差は、斑点の平均個数が0個の場合は、0μmである。
斑点外の平均突出山部高さRpk(=斑点の平均個数が0個の場合のフィルムの平均突出山部高さRpk)は、コンデンサ素子の高温耐用性等の観点から、好ましくは0.010μm以上0.095μm以下、より好ましくは0.015μm以上0.090μm以下、さらに好ましくは0.020μm以上0.085μm以下である。
斑点の平均個数が0個を超える個数である場合の斑点内の平均突出山部高さRpkは、製膜安定性、歩留まり率等の観点から、好ましくは0.003μm以上0.095μm以下、より好ましくは0.005μm以上0.090μm以下、さらに好ましくは0.010μm以上0.085μm以下である。
特性1と後述の特性2とが組み合わされていることにより、製膜安定性及びより高い耐電圧性のものの歩留まり率をより向上させることができる。限定的な解釈を望むものではないが、その理由は次のとおりであると考えられる。特性1及び特性2を満たせば、フィルムの製造工程において、延伸前駆体であるキャストシートの熱履歴が適度に均一化されていたと考えられ、結果的に横延伸時の可塑性も均一化し、フィルム破断が抑制されると考えられる。また、このようなフィルムを用いてコンデンサを作製した場合、高い歩留りで耐電圧性を有するコンデンサを効率的に得ることができる。このようなフィルムを用いて作製されたコンデンサは、その内部において、フィルム層間の空隙が適度に均一化され、局所的な層間密着に起因した電界集中が発生しづらくなると考えられる。これにより、コンデンサ内部において局所的な発熱によるフィルムの破損が抑制され、前記のような効果を得ることができると考えられる。
製膜安定性及び/又はより高い耐電圧性のものの歩留まり率をさらに向上させることができるという観点から、本発明のポリプロピレンフィルムの斑点外の平均突出谷部深さRvkと斑点内の平均突出谷部深さRvkとの差は0.020μm以下であることが好ましい。当該差は、より好ましくは0μm以上0.015μm以下、さらに好ましくは0μm以上0.010μm以下であり、特に好ましくは0μmである。なお、当該差は、斑点の平均個数が0個の場合は、0μmである。限定的な解釈を望むものではないが、当該差を上記範囲とすることにより、局所的に厚さの薄い部分から漏れ電流が発生し難くなり、また横延伸時の可塑性も均一化されることになり、結果として製膜安定性及び/又はより高い耐電圧性のものの歩留まり率をさらに向上させることができると考えられる。
斑点外の平均突出谷部深さRvkと斑点内の平均突出谷部深さRvkとの差の測定方法は、上記した斑点外の平均突出山部高さRpkと斑点内の平均突出山部高さRpkとの差の測定方法に準じる。
斑点内の突出谷部深さRvkの測定値を合計し、得られた合計値をX(=測定した斑点の個数×5(1つの斑点内の測定箇所))で除して、斑点内の平均突出谷部深さRvkを求める。
各測定用サンプルの斑点外の突出谷部深さRvkの測定値を合計し、得られた合計値を10(=測定用サンプル数)で除して、斑点外の平均突出谷部高深さRvkを求める。
斑点外の平均突出谷部深さRvkから斑点内の平均突出谷部深さRvkを減じて、両者の差を求める。
斑点外の平均突出谷部深さRvk(=斑点の平均個数が0個の場合のフィルムの平均突出谷部深さRvk)は、コンデンサ素子の高温耐用性等の観点から、好ましくは0.005μm以上0.060μm以下、より好ましくは0.010μm以上0.050μm以下、さらに好ましくは0.015m以上0.040μm以下である。
斑点の平均個数が0個を超える個数である場合の斑点内の平均突出谷部深さRvkは、製膜安定性および絶縁欠陥個数の低減等の観点から、好ましくは0.001μm以上0.045μm以下、より好ましくは0.002μm以上0.040μm以下、さらに好ましくは0.003μm以上0.035μm以下である。
製膜安定性及び/又はより高い耐電圧性のものの歩留まり率をさらに向上させることができるという観点から、本発明のポリプロピレンフィルムは、巻出し-巻取り機構をもつ絶縁欠陥検査装置を用いて厚み1μmあたり直流電圧600Vを印可させた際の10mあたりの絶縁欠陥個数が1.0個以下であることが好ましい。当該個数は、より好ましくは0個/10m以上0.5個/10m以下、より好ましくは0個/10m以上0.1個/10m以下、特に好ましくは0個/10mである。限定的な解釈を望むものではないが、このようなフィルムを用いて作製されたコンデンサは、高温環境で長時間の使用でもショート破壊によるフィルムの破損が起き難く、高い信頼性を得ることができる。
絶縁欠陥個数の測定方法は以下のとおりである。
巻出し-巻取り機構をもつ絶縁欠陥検査装置を用いて、測定対象である二軸延伸ポリプロピレンフィルムの絶縁欠陥個数(個/10m)を測定する。高電圧電極とアースした金属ローラの間に、測定対象であるポリプロピレンフィルムを通してフィルムを走行させ、その際に直流電圧を印加し、絶縁欠陥部で生じる放電の数を装置付帯のカウンターにて計測する。計測数を測定面積で除して、フィルムの絶縁欠陥個数(個/10m)を算出する。測定条件は、下記の通りとする。
・高電圧電極とアースした金属ローラとの間隔:50μm
・フィルムがアースした金属ローラと接する抱き角度:120°
・高電圧電極の形状:厚さ4mmで金属ローラと同じ幅の金属板
・巻出し速度:20m/min
・直流電圧:600V/μm
・測定面積:472m
・試験環境温度:20℃。
製膜安定性及び/又はより高い耐電圧性のものの歩留まり率をさらに向上させることができるという観点から、本発明のポリプロピレンフィルムは、遅相軸角度の変化幅が0.3°以上2.8°以下の範囲であることが好ましい。当該変化幅は、より好ましくは0.3°以上2.0°以下、さらに好ましくは0.3°以上1.5°以下、よりさらに好ましくは0.3°以上1.0°以下である。
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの遅相軸角度とは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの幅方向と遅相軸とがなす鋭角の角度を意味している。本発明のポリプロピレンフィルムは、第一方向およびこれと直交する第二方向の二軸に延伸が施されている。前記二軸延伸によって高分子が面内に配向されるため、二軸延伸フィルムは複屈折を有するようになる。フィルム面内において、屈折率が最大となる方位は、光の進む速度が遅い(位相が遅れる)方位となることから、遅相軸と呼ばれる。
逐次二軸延伸方法では、まず、キャスト原反シートを流れ方向(MD方向)に延伸し、引き続き、当該シートを横方向(TD方向)に延伸する。この場合、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの遅相軸においては、第二方向の横方向の屈折率は第一方向の流れ方向の屈折率よりも大きくなる傾向にある。ここでは、第二方向の横方向が遅相軸となる。
横方向(TD方向)の延伸において、完全に横方向へ延伸を施した場合には(完全に流れ方向に対して直交方向へ延伸を施した場合には)、本明細書で定義する遅相軸角度は0°となる。しかしながら、実際には、延伸時に収縮応力や機械的な外力、フィルムの熱可塑性などが作用し、完全に横方向(TD方向)へ延伸することが出来ず、遅相軸角度は0°よりも大きくなる傾向にある。
長手方向において遅相軸角度の変化幅が大きい部位は、延伸が不均一であるため、フィルムに歪みが発生し易い。前記の延伸の不均一性は、実用上、コンデンサの耐電圧性能の低下をもたらし、歩留まりを著しく低下させる傾向がある。これは、長手方向の延伸が不均一な場合、高温下にさらされたコンデンサ内部において寸法変化が不均一となり、局所的な層間密着により電界集中が発生し、フィルムが破損することが原因と考えられる。遅相軸角度の長手方向の変化幅を0.3°以上2.8°以下の範囲に制御することで、長手方向における前記のトラブルが抑制されると考えられる。
遅相軸角度の変化幅及び平均遅相軸角度の測定方法は以下のとおりである。
測定対象である二軸延伸ポリプロピレンフィルムの中央から、50mm×50mmの測定用サンプルを長手方向に10mおきに、合計10箇所(0m、10m、20m、30m、40m、50m、60m、70m、80m、及び90mの位置)で切り出す。次に、前記測定用サンプルの幅手方向を0°とし、前記測定用サンプルの幅手方向と遅相軸とがなす鋭角の角度を遅相軸角度として測定する。10枚の測定用サンプルのうち、遅相軸角度の最大値と最小値の差を「変化幅」とし、平均値を「平均遅相軸角度」として求める。測定装置及び測定条件は以下の通りである。
測定装置:大塚電子株式会社製レタデーション測定装置 RE-100
光源:レーザー発光ダイオード(LED)
バンドパスフィルター:550nm(測定波長)
測定間隔:0.1sec
積算回数:10time
測定点数:15point
ゲイン:10dB
測定環境:温度23℃、湿度60%。
平均遅相軸角度は、フィルム生産上の歩留り率等の観点から、好ましくは0°以上20°以下、より好ましくは0°以上15°以下、さらに好ましくは0°以上13°以下である。
本発明のポリプロピレンフィルムの厚みは、コンデンサに使用した場合のコンデンサの小型化及び高容量化をより向上させることができる観点から、上限は6.5μm以下が好ましく、5.5μm以下がより好ましく、3.5μm以下が更に好ましく、3.0μm以下が特に好ましく、2.8μm以下が最も好ましい。また、製造上の観点から、下限は、0.8μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.7μm以上が更に好ましく、2.0μm以上が特に好ましい。また、厚みを上記範囲とすることは、製膜安定性及び/又はより高い耐電圧性のものの歩留まり率の観点からも好ましい。本明細書における二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みの測定方法は、実施例に記載の方法による。
本発明のポリプロピレンフィルムの層構成は特に制限されない。本発明のポリプロピレンフィルムは、1層からなる単層であってもよいし、同一又は異なる組成を有する複数の層であってもよい。本発明のポリプロピレンフィルムは、好ましくは1層又は複数層のフィルム状成形層からなるフィルムであり、より好ましくは単層フィルム(1層のフィルム状成形層からなるフィルム)である。
本発明のポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレン樹脂を含む限り、特にその構成材料は限定されない。ポリプロピレン樹脂としては、特に制限されず、例えば、アイソタクチックポリプロピレン等のプロピレンホモポリマー、プロピレンとエチレンとのコポリマー、長鎖分岐ポリプロピレン、超高分子量ポリプロピレン等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性の観点から好ましくはアイソタクチックポリプロピレンが挙げられる。
前記ポリプロピレン樹脂の含有量は、本発明のポリプロピレンフィルム全体に対して(ポリプロピレンフィルム全体を100質量%としたときに)、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。前記ポリプロピレン樹脂の含有量の上限は、本発明のポリプロピレンフィルム全体に対して、例えば、100質量%、98質量%等である。
前記ポリプロピレン樹脂は、1種単独であってもよいし、また、2種以上の組み合わせであってもよい。
ここで、本発明のポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が2種以上である場合、含有量の多い方のポリプロピレン樹脂を、本明細書では、「主成分のポリプロピレン樹脂」という。また、本発明のポリプロピレンフィルムに含まれるポリプロピレン樹脂が1種である場合、当該ポリプロピレン樹脂を、本明細書では、「主成分のポリプロピレン樹脂」という。
以下、本明細書において、主成分であるか否かを特に明記せずに「ポリプロピレン樹脂」というときは、特段の断りがない限り、主成分としてのポリプロピレン樹脂と、主成分以外のポリプロピレン樹脂との両方を意味する。例えば、「前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwは、25万以上45万以下であることが好ましい。」と記載されている場合、主成分としてのポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwが25万以上45万以下であることが好ましいことと、主成分以外のポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwが25万以上45万以下であることが好ましいこととの両方を意味する。
前記ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mwは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みの均一性、力学特性、熱-機械特性等の観点から、25万以上45万以下であることが好ましく、25万以上42万以下であることがより好ましく、25万以上40万以下であることがさらに好ましく、26万以上39万以下であることがよりさらに好ましい。このようなポリプロピレン樹脂を用いることで、フィルムの絶縁破壊は抑制され、小型かつ高容量型のコンデンサ用に適した、極薄化された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることが容易となる。ポリプロピレン樹脂を2種以上使用する場合、上記Mwが25万以上33万未満(好ましくは25万以上30万以下、より好ましくは26万以上29万以下)のポリプロピレン樹脂(好ましくは主成分のポリプロピレン樹脂)と上記Mwが33万以上45万以下(好ましくは35万以上42万以下、より好ましくは37万以上40万以下、さらに好ましくは37万以上39万以下)のポリプロピレン樹脂(好ましくは主成分以外のポリプロピレン樹脂)を併用することが好ましい。
前記ポリプロピレン樹脂の数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比(Mw/Mn)は、二軸延伸時に適度な樹脂流動性が得られ、厚みムラのない極薄化された二軸延伸プロピレンフィルムを得ることが容易となる観点から、5.0以上12.0以下であることが好ましく、5.0以上10.0以下であることがより好ましく、5.0以上9.0以下であることがさらに好ましい。ポリプロピレン樹脂を2種以上使用する場合、上記比が5.0以上7.0未満(好ましくは5.0以上6.5以下)のポリプロピレン樹脂(好ましくは主成分のポリプロピレン樹脂)と上記比が7.0以上12.0以下(好ましくは7.5以上10.0以下、より好ましくは7.5以上9.0以下)のポリプロピレン樹脂好ましくは主成分以外のポリプロピレン樹脂)を併用することが好ましい。
ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定方法は、実施例に記載の方法による。
前記ポリプロピレン樹脂の230℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)は、特に限定はされないが、延伸性等の観点から7.0g/10分以下であることが好ましく、本発明のポリプロピレンフィルムの厚みの精度を高める観点から0.5g/10分以上6.0g/10分以下であることがより好ましい。ポリプロピレン樹脂を2種以上使用する場合、上記MFRが4.0g/10分以上7.0g/10分未満(好ましくは4.5g/10分以上6.5g/10分以下、より好ましくは5.0g/10分以上6.0g/10分以下)のポリプロピレン樹脂(好ましくは主成分のポリプロピレン樹脂)と上記MFRが0.5g/10分以上4.0g/10分未満(好ましくは1.0g/10分以上3.5g/10分以下、より好ましくは1.5g/10分以上3.0g/10分以下)のポリプロピレン樹脂好ましくは主成分以外のポリプロピレン樹脂)を併用することが好ましい。前記ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートの測定方法は、実施例記載の方法による。
前記ポリプロピレン樹脂のヘプタン不溶分(HI)は、96.0%以上99.5%以下であることが好ましく、97.0%以上99.0%以下であることがより好ましい。ここで、ヘプタン不溶分は、多いほど樹脂の立体規則性が高いことを示す。このようなポリプロピレン樹脂を用いることで、結晶性が適度に向上し、初期耐電圧性及び長期間に渡る耐電圧性が向上する。ヘプタン不溶分(HI)の測定方法は、実施例記載の方法による。
主成分のポリプロピレン樹脂の含有量は、ポリプロピレン樹脂100質量%に対して、好ましくは50質量%超100質量%以下、より好ましくは55質量%以上85質量%以下、さらに好ましくは60質量%以上75質量%以下、よりさらに好ましくは60質量%以上70質量%以下である。
前記ポリプロピレン樹脂は、一般的に公知の重合方法を用いて製造することができる。前記重合方法としては、例えば、気相重合法、塊状重合法及びスラリー重合法を例示できる。
重合は、1つの重合反応機を用いる単段(一段)重合であってもよく、2つ以上の重合反応器を用いた多段重合であってもよい。また、重合は、反応器中に水素又はコモノマーを分子量調整剤として添加して行ってもよい。
重合の際の触媒には、一般的に公知のチーグラー・ナッタ触媒を使用することができ、前記ポリプロピレン樹脂を得ることができる限り特に限定されない。前記触媒は、助触媒成分やドナーを含んでもよい。触媒や重合条件を調整することによって、分子量、分子量分布、立体規則性等を制御することができる。
前記ポリプロピレン樹脂の分子量分布等は、樹脂混合(ブレンド)により調整することができる。例えば、互いに分子量や分子量分布の異なるもの2種類以上の樹脂を混合する方法が挙げられる。一般的には、主樹脂に、それより平均分子量が高い樹脂、又は、低い樹脂を、樹脂全体を100質量%とすると、主樹脂が55質量%以上90質量%以下である2種のポリプロピレン混合系が、低分子量成分量の調整が行い易いため、好ましい。
なお、前記の混合調整方法を採用する場合、平均分子量の目安として、メルトフローレート(MFR)を用いても構わない。この場合、主樹脂と添加樹脂のMFRの差は、1~30g/10分程度としておくのが、調整の際の利便性の観点から好ましい。
樹脂混合する方法としては、特に制限はないが、主樹脂と添加樹脂の重合粉、又は、ペレットを、ミキサー等を用いてドライブレンドする方法や、主樹脂と添加樹脂の重合粉、又は、ペレットを、混練機に供給し、溶融混練してブレンド樹脂を得る方法が挙げられる。
前記ミキサーや前記混練機は、特に制限されない。前記混練機は、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプ、それ以上の多軸スクリュータイプの何れでもよい。2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のどちらの混練タイプでも構わない。
溶融混練によるブレンドの場合は、良好な混練物が得られれば、混練温度は特に制限されない。一般的には、200℃から300℃の範囲であり、樹脂の劣化を抑制する観点から、230℃から270℃が好ましい。また、樹脂の混練混合の際の劣化を抑制するため、混練機に窒素などの不活性ガスをパージしても構わない。溶融混練された樹脂は、一般的に公知の造粒機を用いて、適当な大きさにペレタイズしてもよい。これにより、混合ポリプロピレン原料樹脂ペレットを得ることができる。
上記したポリプロピレン樹脂を用いることにより、上記したフィルム特性に調整し易くなり、製膜安定性及び/又はより高い耐電圧性のものの歩留まり率の観点からも好ましい。
本発明のポリプロピレンフィルムは、添加剤を含んでもよい。「添加剤」とは、一般的に、ポリプロピレン樹脂に使用される添加剤である限り特に制限されない。
前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、架橋剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤、ブロッキング防止剤、無機粒子、樹脂粒子等が挙げられる。前記ポリプロピレン樹脂は、前記添加剤を、本発明のポリプロピレンフィルムに悪影響を与えない量で(例えば、本発明のポリプロピレンフィルム100質量%に対して、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、又は0.1質量%以下)含めてもよい。
2.二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法
二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、樹脂ペレットから延伸前駆体にあたるキャストシートを得て、続いてキャストシートを二軸延伸処理することにより、製造することができる。後述の実施例の結果から明らかなとおり、キャスティングドラム表面のマイクロクラック、エアーナイフの吹き出しエアー速度、エアーナイフの吹き出し口とキャストシートの距離、延伸ニップロール温度、延伸ニップロール硬度等を制御することにより、具体的には以下の方法に従って製造することにより、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができる。
上記製造条件の中でも、キャスティングドラム表面のマイクロクラックは重要な条件である。この観点から、本発明は、その一態様において、表面の任意の位置において、幅手方向に長さ0.1mmの仮想線を任意の位置に設けた際に、該仮想線と1本以上15本以下の溝が交差し、かつ該溝幅が1μm以上10μm以下のマイクロクラック表面を有するキャスティングドラムを用いてキャストシートを得ること、及び前記キャストシートを二軸延伸処理することを含む、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造する方法、に関する。
以下、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造方法について詳述する。
2-1.キャストシートの製造
キャストシートは、公知の方法を使用して成形することができる。例えば、ポリプロピレン樹脂ペレット、ドライ混合されたポリプロピレン樹脂ペレットあるいは、予め溶融混練して作製した混合ポリプロピレン樹脂ペレット類を押出機に供給して、加熱溶融し、フィルターを通して異物や変性ポリマーを除去した後、Tダイからシート状に押し出し、少なくとも1個以上の金属ドラム(キャスティングドラム)で、冷却、固化させることでキャストシートを成形することができる。
押出機内においては、ポリプロピレン樹脂は少なからず熱劣化や酸化劣化により変性する。このようなポリマー変性を抑制する観点から、溶融押し出し時の樹脂温度は、170℃以上320℃以下、好ましくは200℃以上300℃以下である。また、押出機内の窒素置換、スクリュー形状、キャスト時のTダイの内部形状、酸化防止剤の添加量、などにより劣化を抑制することが可能である。
キャスティングドラムの温度は、80℃以上140℃以下が好ましく、90℃以上105℃以下に保持することがより好ましい。このような温度範囲で得られるキャストシートのβ晶分率は、X線法で5%以上20%以下程度となる、前記β晶分率の範囲においては、フィルム表面の粗さは適度に向上し、コンデンサ特性と素子巻き加工性の両方の特性を満足させることができる。
キャスティングドラムの表面は、特に限定はされるものではないが、本発明の所望の物性を容易に得ることができる点で、サンドブラストロールもしくはセラミックロールのように凹凸表面を有するロール、または、巻込み空気の排出路を有するマイクロクラックロールが好ましい。これらのロールの製造方法は公知であり、例えばマイクロクラックロールについては、例えば特許6974939号公報に記載の方法に従って又は準じて製造することができる。マイクロクラックは、金属メッキ層のストレスにより生じるものであり、金属メッキ層の厚さ、メッキ条件、加熱処理、薬品処理、多層化などにより、形状や個数を制御することができる。例えば、クロムメッキの場合、メッキ厚は100μm~400μmとすることが好ましく、より好ましくは120μm~350μm、さらに好ましくは150μm~300μmである。この範囲にすることで、溝の形状や個数の制御がより容易となり、且つロールを加温した際に、ひび割れがより起こり難くなる。
マイクロクラックロールに関しては、そのロール表面の任意の位置に、幅手方向に長さ0.1mmの仮想線を設けた際、該仮想線と1本以上15本以下の溝が交差することが好ましく、より好ましくは2本以上10本以下、さらに好ましくは3本以上8本以下の溝が交差しているとよい。また、前記の溝幅は1μm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上9μm以下、さらに好ましくは3μm以上8μm以下であるとよい。前記の溝本数および溝幅の範囲のものを使用することで、キャスティングドラムとキャストシートの間に侵入する空気が適度に排出され、薄膜化されたキャストシートであっても密着搬送が容易となり、極薄化された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることが容易となる。また、薄膜化されたキャストシートの成形速度を高速化してもキャストシート厚みが波打つような現象、いわゆるドローレゾナンス(サージング)現象が発生しにくくなり、長手方向に均一な厚みを有する極薄化された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを容易に得ることができる。
キャスティングドラムへ密着させる方法は、エアーナイフ法、タッチロール法、静電印加法、水冷キャスト法などのいずれの方法を用いてもよいが、シート密着に関する調整が容易で、簡易的に取り扱うことができるエアーナイフ法が好ましい。
エアーナイフを用いた場合、吹き出しエアーの風速は、好ましくは70m/秒以上130m/秒以下、より好ましくは80m/秒以上120m/秒以下、さらに好ましくは90m/秒以上110m/秒以下である。また、エアーナイフの吹き出し口とキャストシートの距離は、好ましくは2mm以上5mm以下、より好ましくは2mm以上4mm以下である。このような範囲でエアーナイフを使用すると、Tダイからシート状に押し出された薄膜化された樹脂をキャスティングドラムへ適度に密着させることができ、且つTダイ出口からキャスティングドラムに密着するまでの溶融状態の樹脂の膜振れを抑制できる。結果的に、上記したフィルム特性を容易に得ることができる。
2-2.二軸延伸処理
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、前記のキャストシートを縦及び横に二軸に配向させる二軸延伸を行うことで得られ、延伸方法としては同時又は逐次の二軸延伸方法が挙げられるが、安定的に厚みを均一化させフィルムの機械強度を高める観点から、逐次二軸延伸方法が好ましい。
逐次二軸延伸方法としては、まずキャストシートを70℃以上135℃以下、好ましくは80℃以上130℃以下に保たれた搬送ロールを通して予熱し、続いて、長手方向への延伸の直前に130℃以上155℃以下、好ましくは140℃以上150℃以下に加温することが好ましい。このようにキャストシートを加温することで、キャストシートの過度な熱膨張が抑制され、後述する長手方向の延伸前においてシートの平面性が維持され易く、搬送ロールに対しシートが均一に密着され易くなる。
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを容易に得る観点から、長手方向の延伸の直前においては、キャストシートの表裏両面を同時に加温する方法が好ましい。その方法は特に限定されるものではないが、キャストシートの面内の熱履歴の差を抑制する観点から、延伸ニップロールを加温する方法、または電磁放射線で加温する方法が好ましい。延伸直前のキャストシートの固定と当該シートの温度調整を同時にできる観点から、延伸ニップロールを加温する方法がより好ましい。
延伸ニップロールを加温する場合は、キャストシートの表裏両面の熱履歴差を抑制する観点から、延伸ニップロールの温度は95℃以上170℃以下であることが好ましく、より好ましくは100℃以上150℃以下である。
延伸ニップロールを加温する場合は、キャストシート表面の形状にロール表面の形状が追従するよう、該ロールのゴム硬度は40°以上80°以下であることが好ましく、より好ましくは50°以上70°以下である。
その後、長手方向に3倍以上7倍以下、好ましくは4倍以上6倍以下に延伸して、直ちに室温に冷却する。
長手方向に延伸した後に、当該延伸フィルムをテンターに導いて、80℃以上140℃以下に加温されたクリップで両端を把持し、140℃以上185℃以下、好ましくは150℃以上175℃以下の温度で予熱をした後に、140℃以上170℃以下、好ましくは150℃以上160℃以下の温度で、6倍以上12倍以下、好ましくは8倍以上11倍以下で幅方向に延伸する。
その後、緩和、熱固定を施して巻き取る。巻き取られたフィルムは、20℃以上45℃以下の雰囲気中でエージング処理を施した後、所望の製品幅に断裁することができる。
3.金属層一体型ポリプロピレンフィルム
本発明は、その一態様において、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に配置された金属層とを含む、金属層一体型ポリプロピレンフィルム(本明細書において、「本発明の金属層一体型ポリプロピレンフィルム」と示すこともある。)も提供する。以下、本発明の金属層一体型ポリプロピレンフィルムについて詳細に説明する。本発明の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを巻回して得られるコンデンサは、初期耐電圧性、高温高電圧下での長期耐用性に優れる。
本発明のポリプロピレンフィルムは、コンデンサとして加工するために片面又は両面に電極を付けることができる。そのような電極は、本実施形態が目的とするコンデンサを得ることができる限り特に限定されず、通常コンデンサを製造するために使用される電極を用いることができる。電極として、例えば、金属箔、少なくとも片面を金属化した紙及びプラスチックフィルム等を例示することができる。
コンデンサには、小型及び軽量化が一層要求されるので、本発明のポリプロピレンフィルムの片面もしくは両面を直接金属化して電極を形成することが好ましい。用いられる金属は、例えば、亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、及びニッケルなどの金属単体、それらの複数種の混合物、及びそれらの合金などを使用することができるが、環境、経済性及びコンデンサ性能などを考慮すると、亜鉛及びアルミニウムが、好ましい。
ポリプロピレンフィルムの表面を直接金属化する方法として、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法を例示することが出来、本実施形態が目的とするコンデンサを得ることができる限り特に限定されない。生産性及び経済性などの観点から、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法として、一般的にるつぼ法式やワイヤー方式などを例示することができるが、本実施形態が目的とするコンデンサを得ることができる限り特に限定されず、適宜最適なものを選択することができる。
金属蒸着膜の膜抵抗は、コンデンサの電気特性の点から、1Ω/□以上100Ω/□以下が好ましい。この範囲内でも高めであることがセルフヒーリング(自己修復)特性の点から望ましく、更に安全性の観点を踏まえると、膜抵抗は5Ω/□以上50Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以上30Ω/□以下であることが更に好ましい。金属蒸着膜の膜抵抗は、例えば当業者に既知の四端子法によって金属蒸着中に測定することができる。金属蒸着膜の膜抵抗は、例えば蒸発源の出力を調整して蒸発量を調整することによって調節することができる。
フィルムの片面に金属蒸着膜を形成する際、フィルムを巻回した際にコンデンサとなるよう、フィルムの片方の端部から一定幅は蒸着せずに絶縁マージンが形成される。さらに、本発明の金属層一体型ポリプロピレンフィルムとメタリコン電極との接合を強固にするため、絶縁マージンと逆の端部に、ヘビーエッジ構造を形成することが好ましく、ヘビーエッジの膜抵抗は通常1Ω/□以上8Ω/□以下であり、1Ω/□以上5Ω/□以下であることが好ましい。金属膜の厚みは特に限定されないが、1nm以上200nm以下が好ましい。
形成する金属蒸着膜のマージンパターンには特に制限はないが、コンデンサの保安性等の特性を向上させる点からは、フィッシュネットパターン、Tマージンパターン等のいわゆる特殊マージンを含むパターンとすることが好ましい。特殊マージンを含むパターンで金属蒸着膜をポリプロピレンフィルムの片面に形成すると、得られるコンデンサの保安性が向上し、コンデンサの破壊、ショートの抑制等の点からも効果的であり、好ましい。
マージンを形成する方法としては、蒸着時にテープによりマスキングを施すテープ法、オイルの塗布によりマスキングを施すオイル法等、公知の方法を何ら制限なく使用することができる。
本発明の金属層一体型ポリプロピレンフィルムは、フィルムの長尺方向に沿って巻き付ける巻き付け加工を経て、後述の本発明のコンデンサに加工され得る。すなわち、本発明の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを2枚1対として、金属層とポリプロピレンフィルムとが交互に積層されるように重ね合わせて巻回する。その後、両端面に金属溶射によって一対のメタリコン電極を形成してフィルムコンデンサを作製する工程によりコンデンサが得られる。
4.コンデンサ
本発明は、その一態様において、本発明の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを含むコンデンサを提供する(本明細書において、「本発明のコンデンサ」と示すこともある。)。以下、本発明のコンデンサについて詳細に説明する。
コンデンサを作製する工程では、フィルムの巻き付け加工が行われる。例えば、本発明の金属層一体型ポリプロピレンフィルムにおける金属層とポリプロピレンフィルムとが交互に積層されるように、更には、絶縁マージン部が逆サイドとなるように、2枚1対の本発明の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを重ね合わせて巻回する。この際、2枚1対の本発明の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを1~2mmずらして積層することが好ましい。用いる巻回機は特に制限されず、例えば、株式会社皆藤製作所製の自動巻取機3KAW-N2型等を利用することができる。
扁平型コンデンサを作製する場合、巻回後、通常、得られた巻回物に対してプレスが施される。プレスによってコンデンサの巻締まり・素子成形を促す。層間ギャップの制御・安定化を施す点から、与える圧力は、ポリプロピレンフィルムの厚み等によってその最適値は変わるが、例えば2~20kg/cm2である。
続いて、巻回物の両端面に金属を溶射してメタリコン電極を設けることによって、コンデンサを作製する。コンデンサに対して、更に所定の熱処理が施される。すなわち、本実施形態では、コンデンサに対し、80~125℃の温度で1時間以上の真空下にて熱処理を施す工程(以下、「熱エージング」と称することがある)を含む。
コンデンサに対して熱処理を施す上記工程において、熱処理の温度は、80℃以上130℃以下であり、好ましくは90℃以上125℃以下である。前記の温度で熱処理を施すことによって熱エージングの効果が得られる。具体的には、本発明の金属層一体型ポリプロピレンフィルムに基づくコンデンサを構成するフィルム間の空隙が減少し、コロナ放電が抑制され、しかも本発明の金属層一体型ポリプロピレンフィルムの内部構造が変化して結晶化が進む。その結果、耐電圧性が向上するものと考えられる。熱処理の温度が所定温度より低い場合には、熱エージングによる上記効果が十分に得られない。一方、熱処理の温度が所定温度より高い場合には、ポリプロピレンフィルムに熱分解や酸化劣化等が生じることがある。
コンデンサに対して熱処理を施す方法としては、例えば、真空雰囲気下で、恒温槽を用いる方法や高周波誘導加熱を用いる方法等を含む公知の方法から適宜選択してもよい。具体的には、恒温槽を用いる方法を採用することが好ましい。
熱処理を施す時間は、機械的及び熱的な安定を得る点で、1時間以上とすることが好ましく、10時間以上とすることがより好ましいが、熱シワや型付等の成形不良を防止する点で、20時間以下とすることがより好ましい。熱エージングを施したコンデンサのメタリコン電極には、通常、リード線が溶接される。また、耐候性を付与し、とりわけ湿度劣化を防止するため、コンデンサをケースに封入してエポキシ樹脂でポッティングすることが好ましい。本発明のコンデンサは、本発明の金属層一体型ポリプロピレンフィルムに基づく小型かつ大容量型のコンデンサであって、初期耐電圧性及び高温高電圧下での長期耐用性を有するものである。
本発明のポリプロピレンフィルムを利用した、本発明のコンデンサは、高温環境で好適に使用され、小型、さらには、高容量(例えば、静電容量が、5μF以上、好ましくは10μF以上、さらに好ましくは20μF以上、よりさらに好ましくは30μF以上、とりわけ好ましくは40μF以上。静電容量の上限は特に制限されず、例えば100μF、80μF、70μF、又は60μFである。)のコンデンサとすることができる。従って、本発明のコンデンサは、電子機器、電気機器などに使用されている、高電圧コンデンサ、各種スイッチング電源、コンバータ及びインバータ等のフィルタ用コンデンサ及び平滑用コンデンサ等として利用することができる。また、本発明のコンデンサは、近年需要が高まっている電気自動車及びハイブリッド自動車等の駆動モーターを制御するインバータ用コンデンサ、コンバータ用コンデンサ等としても好適に利用することができる。
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(1)樹脂の特性測定
(1-1)ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)の測定
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、以下の条件で、実施例及び比較例で原料として使用したポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。
具体的に、東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵高温GPC装置であるHLC-8121GPC-HT型を使用した。カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgel GMHHR-H(20)HTを3本連結して使用した。140℃のカラム温度で、溶離液として、トリクロロベンゼンを、1.0ml/minの流速で流して測定した。検量線を、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いて作製し、測定された分子量の値をポリスチレンの値に換算して、重量平均分子量(Mw)、及び数平均分子量(Mn)を得た。このMwとMnの値を用いて分子量分布(Mw/Mn)を得た。
(1-2)ヘプタン不溶分(HI)の測定
実施例及び比較例で原料として使用したポリプロピレン樹脂について、10mm×35mm×0.3mmにプレス成形して約3gの測定用サンプルを作製した。次に、ヘプタン約150mLを加えてソックスレー抽出を8時間行った。抽出前後の試料質量よりヘプタン不溶分を算出した。
(1-3)メルトフローレート(MFR)の測定
実施例及び比較例で原料として使用したポリプロピレン樹脂について、原料樹脂ペレットの形態でのメルトフローレート(MFR)を、東洋精機株式会社のメルトインデックサを用いてJIS K 7210の条件Mに準じて測定した。具体的には、まず、試験温度230℃にしたシリンダ内に、4gに秤りとった試料を挿入し、2.16kgの荷重下で3.5分予熱した。その後、30秒間で底穴より押出された試料の重量を測定し、MFR(g/10min)を求めた。上記の測定を3回繰り返し、その平均値をMFRの測定値とした。
(2)キャスティングドラムの準備
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造過程において二軸延伸処理に供するシート(キャストシート)を製造する際に使用する金属ドラム(キャスティングドラム)として、A~Eのキャスティングドラムを準備した。
キャスティングドラムの表面の任意の位置において、幅手方向に長さ0.1mmの仮想線を任意の位置に設けた際に、該仮想線と交差する溝の本数、及び該溝幅の平均値を測定した。具体的には次のようにして測定した。キャスティングドラムの円周方向に4箇所(時計で0度、90度、180度、270度)、幅方向に3箇所(面長100に対して、10(片端)、50(中央)、90(片端))の、計12箇所を観察し、その画面中央に幅手方向0.1mmの仮想線を引いて、交差する溝本数と溝幅を測定し、平均値を算出した。
溝本数及び溝幅を表1に示す。
Figure 0007456535000001
(3)二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造
表2の製造条件に従って二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造した。二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みは、マイクロメーター(JIS-B7502)を用いて、JIS-C2330に準拠して測定した。
<実施例1>
ポリプロピレン樹脂A(Mw=27万、Mw/Mn=5.7、ヘプタン不溶分=97.8%、MFR=5.6g/10min、プライムポリマー製)と、ポリプロピレン樹脂B(Mw=38万、Mw/Mn=8.3、ヘプタン不溶分=98.8%、MFR=2.3g/10min、大韓油化製)とを、A:B=65:35の質量比で押出機へ供給し、樹脂温度230℃で溶融した。その後、ポリマー管の途中に設置したフィルターにて異物や変性ポリマーなどを除去した後、Tダイを用いて押出し、表面温度を92℃に保持したキャスティングドラムに巻きつけて固化させて、厚さ0.1mmのキャストシートを60m/分の速度で作製した。尚、キャスティングドラムは、表1のAを使用した。
また、キャスティングドラムへ密着させる方法としては、エアーナイフを使用し、吹き出しエアーの風速は110m/s、エアーナイフの吹き出し口とキャストシートの距離は3mmとした。
得られたキャストシートを130℃の温度で予熱し、145℃に加温した搬送ロールと110℃に加温したゴム硬度70°の延伸ニップロールでキャストシートをはさみ込み、長手方向に5倍延伸し、直ちに室温に戻した。
その後、該延伸フィルムをテンターへ導き、110℃のクリップで両端を把持して170℃で予熱し、155℃の温度で幅手方向に10倍に延伸した後、緩和、及び熱固定を施して厚み2.3μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムをロール状に巻き取った。
<実施例2>
キャストシートの製造において、エアーナイフの吹き出し口とシートの距離を5mmにしたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<実施例3>
キャストシートの製造において、エアーナイフの吹き出しエアーの風速を70m/秒にしたこと以外は、実施例2と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<実施例4>
キャストシートの製造において、キャスティングドラムを表1のBにしたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<実施例5>
キャストシートの製造において、キャスティングドラムを表1のCにしたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<実施例6>
キャストシートの製造において、キャスティングドラムを表1のE、エアーナイフの吹き出しエアーの風速を130m/秒、エアーナイフの吹き出し口とシートの距離を2mmにし、且つ長手方向の延伸処理において、延伸ニップロールの温度を130℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<実施例7>
長手方向の延伸処理において、延伸ニップロールのゴム硬度を50°にしたこと以外は、実施例6と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<実施例8>
キャストシートの製造において、キャスティングドラムを表1のD、エアーナイフの吹き出し風速を70m/秒、エアーナイフの吹き出し口とシートの距離を5mmにしたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<実施例9>
最終的に巻き取った二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みを1.8μmにしたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<実施例10>
最終的に巻き取った二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みを6μmにしたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<実施例11>
キャストシートの製造において、押出機へ供給する樹脂をAにしたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<比較例1>
キャストシートの製造において、エアーナイフの吹き出しエアーの風速を140m/秒にしたこと以外は、実施例1と同様にした。このようにした場合、Tダイからシート状に押し出された樹脂とキャスティングドラムの間にエアーナイフの風が入り込み、且つTダイ出口からキャスティングドラムに密着するまでの溶融状態の樹脂の膜振れが顕著になったため、二軸延伸フィルムを作製することは出来なかった。
<比較例2>
キャストシートの製造において、エアーナイフの吹き出しエアー風速を70m/秒、エアーナイフの吹き出し口とシートの距離を5mmにしたこと以外は、実施例4と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<比較例3>
キャストシートの製造において、エアーナイフの吹き出しエアー風速を70m/秒、エアーナイフの吹き出し口とシートの距離を5mmにしたこと以外は、実施例5と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<比較例4>
長手方向の延伸処理において、延伸ニップロールの温度を90℃にしたこと以外は、実施例6と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<比較例5>
最終的に巻き取った二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みを1.6μmにしたこと以外は、実施例1と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
<比較例6>
長手方向の延伸処理において、延伸ニップロールの温度を90℃とし、且つ延伸ニップロールの硬度を50°としたこと以外は、実施例12と同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
Figure 0007456535000002
(4)二軸延伸ポリプロピレンフィルムの特性測定
(4-1)斑点の測定
実施例及び比較例の二軸延伸ポリプロピレンフィルムそれぞれの幅方向の中央位置から、50mm×50mmの測定用サンプルを、長手方向10mおきに合計10箇所で切り出した。次に、デジタルスコープ(株式会社キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX-2000)を用いて、レンズ倍率:30倍、光量:フルレンジの50%、測定方法:反射測定、視野範囲:11.5mm×8.6mmにて各測定用サンプルの一方の面(コンデンサ作製時に金属層を積層させる面)について「ハレーション除去+鮮鋭モード(色合いが鮮やかで輪郭を強調させ、ギラつきを取り除く処理を行う)」の画像を観察し、その視野範囲内に観測された略楕円状の「斑点」(代表的なものを図1に示す。)の個数を計測した。なお、視野内に斑点の一部が収まっていない場合は、その斑点は計測しなかった。各測定用サンプル(合計10個)の視野範囲の斑点の個数を合計し、得られた合計値を10(=測定用サンプル数)で除して、視野範囲(11.5mm×8.6mmの領域)当たりの楕円状の斑点の平均個数を求めた。
また、上記で計測したそれぞれの斑点について、二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおける長手方向の径と幅手方向の径を測定し、長い方(斑点の長径)を斑点の最大長さとした(図2に示す代表例の場合であれば、横方向の径が長径である)。それぞれの斑点の最大長さを合計し、得られた合計値を斑点の個数で除して、斑点の平均最大長さを求めた。
(4-2)突出山部高さRpk及び突出谷部深さRvkの測定
光干渉式非接触表面形状測定機として(株)菱化システム製の「VertScan2.0(型式:R5500GML)」を使用して、実施例及び比較例の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの一方の面(コンデンサ作製時に金属層を積層させる面)の突出山部高さRpk及び突出谷部深さRvkを測定した。まず、WAVEモードを用い、530whiteフィルタ及び1×BODYの鏡筒を適用し、×10対物レンズを用いて、一視野あたり470.92μm×353.16μmの計測を行った。
斑点内については、上記(4-1)で計測した全ての斑点それぞれについて、図3に示す5箇所(長軸と短軸の交点、長軸の一方の端と前記交点とを結ぶ線の中央、長軸の他方の端と前記交点とを結ぶ線の中央、短軸の一方の端と前記交点とを結ぶ線の中央、短軸の他方の端と前記交点とを結ぶ線の中央)それぞれで計測した。
斑点外に関しては、測定用サンプルそれぞれの中央で計測を行った。
得られたデータに対して、メディアンフィルタ(3×3)によるノイズ除去処理を行ない、その後、カットオフ値30μmによるガウシアンフィルタ処理を行い、うねり成分を除去した。これにより、測定表面の状態を適切に計測できる状態とした。次に、「VertScan2.0」の解析ソフトウェア「VS-Viewer」を用いて解析を行い、潤滑性評価パラメータ―の突出山部高さRpkおよび突出谷部深さRvkにつき、上記箇所で得られた各値の平均値を算出した。具体的には以下のとおりである。
斑点内の突出山部高さRpkの測定値を合計し、得られた合計値をX(=測定した斑点の個数×5(1つの斑点内の測定箇所))で除して、斑点内の平均突出山部高さRpkを求めた。
各測定用サンプルの斑点外の突出山部高さRpkの測定値を合計し、得られた合計値を10(=測定用サンプル数)で除して、斑点外の平均突出山部高さRpkを求めた。
斑点外の平均突出山部高さRpkから斑点内の平均突出山部高さRpkを減じて、両者の差を求めた。
また、斑点外の平均突出山部高さRpkと斑点内の平均突出山部高さRpkを足して、得られた値を2で割った値をフィルムの平均突出山部高さRpkとした。なお、斑点の平均個数が0の場合は、測定用サンプルそれぞれの中央の測定平均値をフィルムの平均突出山部高さRpkとした。
斑点内の突出谷部深さRvkの測定値を合計し、得られた合計値をX(=測定した斑点の個数×5(1つの斑点内の測定箇所))で除して、斑点内の平均突出谷部深さRvkを求めた。
各測定用サンプルの斑点外の突出谷部深さRvkの測定値を合計し、得られた合計値を10(=測定用サンプル数)で除して、斑点外の平均突出谷部高深さRvkを求めた。
斑点外の平均突出谷部深さRvkから斑点内の平均突出谷部深さRvkを減じて、両者の差を求めた。
また、斑点外の平均突出谷部深さRvkと斑点内の平均突出谷部深さRvkを足して、得られた値を2で割った値をフィルムの平均突出谷部深さRvkとした。なお、斑点の平均個数が0の場合は、測定用サンプルそれぞれの中央の測定平均値をフィルムの平均突出谷部深さRvkとした。
(4-3)絶縁欠陥個数の測定
巻出し-巻取り機構をもつ絶縁欠陥検査装置を用いて、実施例及び比較例の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの絶縁欠陥個数(個/10m)を測定した。高電圧電極とアースした金属ローラの間に、試験対象のポリプロピレンフィルムを通してフィルムを走行させ、その際に直流電圧を印加し、絶縁欠陥部で生じる放電の数を装置付帯のカウンターにて計測した。計測数を測定面積で除して、フィルムの絶縁欠陥個数(個/10m)を算出した。測定条件は、下記の通りとした。
・高電圧電極とアースした金属ローラとの間隔:50μm
・フィルムがアースした金属ローラと接する抱き角度:120°
・高電圧電極の形状:厚さ4mmで金属ローラと同じ幅の金属板
・巻出し速度:20m/min
・直流電圧:600V/μm
・測定面積:472m
・試験環境温度:20℃。
(4-4)遅相軸角度及び遅相軸角度の変化幅の測定
実施例及び比較例の二軸延伸ポリプロピレンフィルムそれぞれの中央から、50mm×50mmの測定用サンプルを長手方向に10mおきに、合計10箇所(0m、10m、20m、30m、40m、50m、60m、70m、80m、及び90mの位置)で切り出した。次に、前記測定用サンプルの幅手方向を0°とし、前記測定用サンプルの幅手方向と遅相軸とがなす鋭角の角度を遅相軸角度として測定した。10枚の測定用サンプルのうち、遅相軸角度の最大値と最小値の差を「変化幅」として求めた。測定装置及び測定条件は以下の通りである。
測定装置:大塚電子株式会社製レタデーション測定装置 RE-100
光源:レーザー発光ダイオード(LED)
バンドパスフィルター:550nm(測定波長)
測定間隔:0.1sec
積算回数:10time
測定点数:15point
ゲイン:10dB
測定環境:温度23℃、湿度60%。
(4-5)測定結果
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの特性の測定結果を表3に示す。
Figure 0007456535000003
(5)工程通過性の評価
実施例及び比較例の二軸延伸フィルムの製造を開始し、得られるフィルム厚みが目標とする厚み(表2)±2%に到達した時点から、フィルムが延伸破断するまでの時間(連続して製膜可能な時間)を計測した。なお、厚みが目標とする厚み±2%に到達した時点は、上記(3)の厚み測定方法に従って測定し、確認した。得られた時間に基づき、次の評価基準に従い工程通過性を評価した。結果は後述の表4に示す。
A++:48時間を超えても延伸破断なく製膜できた。
A+:32時間を超え48時間未満で延伸破断なく製膜できた。
A:24時間を超え32時間未満で延伸破断なく製膜できた。
B:16時間を超え24時間未満で延伸破断なく製膜できた。
C:8時間を超え16時間未満で延伸破断が発生した。
D:8時間未満で延伸破断が発生した。
E:製膜ができなかった。
(6)耐電圧性の評価
実施例及び比較例の二軸延伸フィルムを用いてコンデンサを作製し、当該コンデンサの耐電圧性を評価した。
(6-1)コンデンサの作製
株式会社ULVAC社製真空蒸着機を用いて、上記(4-1)で得た測定用サンプルに、Tマージン蒸着パターンを蒸着抵抗20Ω/□にてアルミニウム蒸着を施すことにより、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面に金属膜を含む金属化フィルムを得た。
50mm幅にスリットした後に、2枚の金属化フィルムを相合わせて、株式会社皆藤製作所製、自動巻取機3KAW-N2型を用い、巻き取り張力210gにて、840ターン巻回を行った。素子巻きした素子は、プレスしながら120℃にて15時間熱処理を施した後、素子端面に亜鉛金属を溶射し、扁平型コンデンサを得た。扁平型コンデンサの端面にリード線をはんだ付けし、その後エポキシ樹脂で封止した。尚、得られたコンデンサの静電容量は50μFであった。
(6-2)初期耐電圧性の評価
コンデンサの試験前の初期静電容量(C)を、日置電機株式会社製LCRハイテスター3522-50を用いて測定した。次に、コンデンサに450V/μmの直流電圧を10秒印加した。電圧印加後のコンデンサの静電容量(C)を同様に測定し、電圧印加前後の容量変化率を、以下の式により算出した。
Figure 0007456535000004
前記の容量変化率ΔCを、100個の素子について測定し、以下の基準で評価した。A+乃至Cのそれぞれのコンデンサの個数を算出し、A+およびAのコンデンサの割合(初期耐圧収率)を求めた。初期耐圧収率が95%以上を合格とした。
A+:ΔCが、-0.2%未満。
A: ΔCが、-0.5%以下、-1%未満。
B: ΔCが、-1%以下、-2%未満。
C: ΔCが、-2%以下。
(6-3)長期耐電圧性の評価
コンデンサの試験前の初期静電容量(C)を、日置電機株式会社製LCRハイテスター3522-50にて測定した。次に、115℃の高温槽中にて、コンデンサに320V/μmの直流電圧を1000時間負荷し続けた。1000時間経過後のコンデンサの静電容量(C1000)を同様に測定し、電圧負荷前後の容量変化率(ΔC1000)を、以下の式により算出した。
Figure 0007456535000005
前記の容量変化率ΔC1000を、100個の素子について測定し、以下の基準で評価した。A+乃至Cのそれぞれのコンデンサの個数を算出し、A+およびAのコンデンサの割合(長期耐圧収率)を求めた。長期耐圧収率が90%以上を合格とした。
A+:ΔC1000が、0.5%未満。
A: ΔC1000が、-0.5%以下、-5%未満。
B: ΔC1000が、-5%以下、-10%未満。
C: ΔC1000が、-10%以下。
(7)評価結果
工程通過性及び耐電圧性の評価結果を表4に示す。
Figure 0007456535000006

Claims (11)

  1. 第1の面及び第2の面を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、
    前記第1の面の略楕円状の斑点の平均最大長さが3.0mm以下であり
    記斑点外の平均突出山部高さRpkと前記斑点内の平均突出山部高さRpkとの差が0.040μm以下であり、且つ
    前記第1の面の11.5mm×8.6mmの領域当たりの略楕円状の斑点の平均個数が0.6個以下である、
    二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  2. 前記斑点外の平均突出谷部深さRvkと前記斑点内の平均突出谷部深さRvkとの差が0.020μm以下である、請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  3. 遅相軸角度の変化幅が0.3°以上2.8°以下の範囲である、請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  4. 前記第1の面の11.5mm×8.6mmの領域当たりの略楕円状の斑点の平均個数が0.3個以下である、請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  5. 前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、重量平均分子量Mwが25万以上45万以下であり、数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比(Mw/Mn)が5.0以上12.0以下であり、230℃及び荷重2.16kgにおけるメルトフローレートが7.0g/10分以下であり、且つヘプタン不溶分が96.0%以上99.5%以下である、請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  6. 厚みが1.7μm以上6.5μm以下である、請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  7. 単層フィルムである、請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  8. コンデンサ用である、請求項1~7のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
  9. 請求項1~7のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムの片面又は両面に配置された金属層とを含む、金属層一体型ポリプロピレンフィルム。
  10. 請求項9に記載の金属層一体型ポリプロピレンフィルムを含む、コンデンサ。
  11. 表面の任意の位置において、幅手方向に長さ0.1mmの仮想線を任意の位置に設けた際に、該仮想線と1本以上15本以下の溝が交差し、かつ該溝の幅が1μm以上10μm以下のマイクロクラック表面を有するキャスティングドラムを用いてキャストシートを得ること、及び前記キャストシートを二軸延伸処理することを含む、請求項1~7のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造する方法。
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