JP7451967B2 - 活性エネルギー線急速硬化型組成物、造形方法、及び造形装置 - Google Patents

活性エネルギー線急速硬化型組成物、造形方法、及び造形装置 Download PDF

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Description

本発明は、活性エネルギー線急速硬化型組成物、造形方法、及び造形装置に関する。
三次元立体物を造形する技術として、付加製造(AM:Additive Manufacturing)と呼ばれる技術が知られている。この技術は、積層方向に薄く切った断面形状を計算し、その形状に従って各層を形成して積層することにより立体物を造形する技術である。近年、付加製造技術の中でも、インクジェットヘッドを用いて活性エネルギー線硬化型組成物を必要箇所に配置し、配置された活性エネルギー線硬化型組成物を光照射装置等で硬化させることにより三次元の立体物を造形するマテリアルジェッティング方式が注目されている。
マテリアルジェッティング方式は主に試作目的で利用されており、硬化物には、延伸性、耐衝撃性、耐熱性等の各種特性が要求される。これら特性の中でも、機械的特性を向上させる方法として、フィラー等の固体成分を活性エネルギー線硬化型組成物に添加する方法が知られている。
特許文献1には、重合性化合物及びコアとシェル層とからなる多層構造重合体粒子を含有する光学的立体造形用光硬化性樹脂組成物が開示されており、本開示によれば、高い靭性(例えば、折り曲げ耐性、耐衝撃性等)、及び、高い剛性(ヤング率、曲げ弾性率等)を有する硬化物が得られる。
しかしながら、エポキシ系モノマー等のカチオン重合性化合物を含む従来の活性エネルギー線硬化型組成物には硬化速度が不十分である課題がある。また、活性エネルギー線硬化型組成物を用いて形成される硬化物の引張強度及び耐衝撃性が不十分である課題がある。
請求項1に係る発明は、固体成分及びラジカル重合性化合物を含有する活性エネルギー線急速硬化型組成物であって、前記固体成分の体積平均粒径は、50nm以上1000nm以下であり、前記ラジカル重合性化合物は、アクリル系モノマーであるラジカル重合性モノマー及びウレタン基を有するラジカル重合性オリゴマーを含有し、前記ラジカル重合性化合物の、コンピュータソフトウェア(HSPiP)により求めたHSP値は、21.8(J/cm0.5以上であり、光強度が0.1mW/cm であるUV光を照射し、貯蔵弾性率G’が103Paとなる硬化物を形成するまでにおける積算光量が10mJ/cm 以下である活性エネルギー線急速硬化型組成物である。
本発明の活性エネルギー線急速硬化型組成物は、硬化速度が大きく、且つ形成される硬化物の引張強度及び耐衝撃性が高い優れた効果を奏する。
図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置を示す概略図である。 図2は、硬化物の作製方法を示す図である。
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
<<活性エネルギー線急速硬化型組成物>>
本発明の活性エネルギー線急速硬化型組成物は、固体成分及びラジカル重合性化合物を含み、必要に応じて、重合開始剤、界面活性剤、重合禁止剤、色材、及びその他成分等を含んでもよい。
また、「活性エネルギー線急速硬化型組成物」は、活性エネルギー線を照射されることで急速に硬化して硬化物を形成する組成物である。ここで、「急速に硬化」とは、光強度が0.1mW/cmであるUV光を組成物に照射した際に、貯蔵弾性率G’が10Paとなる硬化物を形成するまでにおける積算光量が10mJ/cm以下であることをいう。
なお、本願において「硬化する」とは、ポリマーが形成されることを表すが、固化する場合に限られず、増粘する場合や、固化と増粘がともに生じる場合なども含まれる。また、「硬化物」とは、ポリマーを表すが、固体に限られず、増粘物や、固体と増粘物の混在物なども含まれる。
<ラジカル重合性化合物>
「ラジカル重合性化合物」とは、ラジカル重合によりポリマーを形成することができる化合物を表し、典型的には1つ以上のラジカル重合性官能基を有するモノマー単位としての化合物である。ラジカル重合性化合物としては、例えば、ラジカル重合性単官能モノマー及びラジカル重合性多官能モノマー等のラジカル重合性モノマー、並びにラジカル重合性オリゴマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合性単官能モノマー、ラジカル重合性多官能モノマー、及びラジカル重合性オリゴマーはいずれも、活性エネルギー線によってラジカル重合して得られる硬化物のモノマー単位である。すなわち、本発明において「ラジカル重合性モノマー」とは、1つ以上のラジカル重合性官能基を有するモノマー分子を表し、「ラジカル重合性オリゴマー」とは、1つ以上のラジカル重合性官能基を有するオリゴマー分子を表す。「オリゴマー」とは、少数のモノマーに由来する構造単位を有する分子を表し、当該構造単位の数は、当該モノマーの構造やオリゴマーの用途などにより異なり得るが、典型的には2以上20以下であることが好ましい。
本発明の活性エネルギー線急速硬化型組成物は、重合性化合物としてラジカル重合性化合物を用いた場合、エポキシ系モノマー等のカチオン重合性化合物を用いた場合と比べて、高粘度化が抑制され、重合速度を向上させることができる。これにより好適にインクジェット方式に用いることもできる。
また、ラジカル重合性化合物としてラジカル重合性モノマーを用いることで、活性エネルギー線急速硬化型組成物の高粘度化がより抑制され、重合速度をより向上させることができる。
また、ラジカル重合性化合物としてラジカル重合性単官能モノマーを用いることで、活性エネルギー線急速硬化型組成物の高粘度化が更に抑制され、重合速度を更に向上させることができる。
また、ラジカル重合性化合物としてラジカル重合性オリゴマーを用いることで、硬化物の硬化収縮を低減することができ、また、硬化物の延伸性及び靭性も向上させることができる。
ラジカル重合性単官能モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合性多官能モノマーとしては、例えば、2官能モノマー、3官能以上のモノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2官能のラジカル重合性多官能モノマーとしては、例えば、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化オペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
3官能以上のラジカル重合性多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、1官能以上6官能以下のモノマーであることが好ましく、2官能以上3官能以下のモノマーであることがより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、ラジカル重合性オリゴマーとしては、ウレタン基を有するものを用いることで、ポリマー中における側鎖間で相互作用が生じ、硬化物の強靭性が向上する。また、ウレタン基を有するラジカル重合性オリゴマーとしては、ウレタンアクリレートオリゴマーであることがより好ましい。
ラジカル重合性オリゴマーとしては、市販品を用いることができ、例えば、UV-6630B(UV硬化型ウレタンアクリレートオリゴマー、分子量:3000、重合性官能基数:2、日本合成化学株式会社製)、CN983NS(脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、重合性官能基数:2、サートマー社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合性化合物としては、上記の通り、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、カルボン酸ビニルエステル系モノマーなどが挙げられるが、アクリル系モノマーを用いることが好ましい。アクリル系モノマーは、活性エネルギー線急速硬化型組成物の高粘度化を抑制させることができ、重合速度を向上させることができる。これにより好適にインクジェット方式に用いることもできる。
ラジカル重合性化合物の含有量は、活性エネルギー線急速硬化型組成物の質量に対して、50.0質量%以上であることが好ましく、60.0質量%以上であることがより好ましく、70.0質量%以上であることが更に好ましく、80.0質量%以上であることが特に好ましい。また、99.0質量%以下であることが好ましく、95.0質量%以下であることがより好ましい。
ラジカル重合性モノマーの含有量は、活性エネルギー線急速硬化型組成物の質量に対して、40.0質量%以上であることが好ましく、50.0質量%以上であることがより好ましい。また、80.0質量%以下であることが好ましく、70.0質量%以下であることがより好ましい。
ラジカル重合性単官能モノマーの含有量は、活性エネルギー線急速硬化型組成物の質量に対して、30.0質量%以上であることが好ましく、40.0質量%以上であることがより好ましい。また、99.0質量%以下であることが好ましく、95.0質量%以下であることがより好ましい。
ラジカル重合性多官能モノマーの含有量は、活性エネルギー線急速硬化型組成物の質量に対して、10.0質量%以上であることが好ましい。また、40.0質量%以下であることが好ましく、30.0質量%以下であることがより好ましい。
ラジカル重合性オリゴマーの含有量は、活性エネルギー線急速硬化型組成物の質量に対して、1.0質量%以上であることが好ましく、10.0質量%以上であることがより好ましい。また、40.0質量%以下であることが好ましく、30.0質量%以下であることがより好ましい。
-ラジカル重合性化合物のHSP値-
ラジカル重合性化合物のHSP値は、18.0(J/cm0.5以上であり、21.0(J/cm0.5以上であることが好ましい。HSP値が18.0(J/cm0.5以上であることで、硬化物中において固体成分と樹脂の界面における接着性が向上し、硬化物の引張強度及び耐衝撃性が向上する。
ここで、HSP値(ハンセン溶解度パラメータ)は、チャールズハンセン(Charles M.Hansen)によって発見されたパラメータである。HSP値は、実験的及び理論的に誘導された下記3つのパラメータ(δD、δP、及びδH)を有し、「(HSP値)=(δD)+(δP)+(δH)」と表される。なお、本願において、HSP値の単位は、(J/cm0.5を用いた。
・δD:ロンドン分散力に由来するエネルギー。
・δP:双極子相互作用に由来するエネルギー。
・δH:水素結合力に由来するエネルギー。
HSP値は、(δD,δP,δH)のように表されるベクトル量であり、3つのパラメータを座標軸とする3次元空間(ハンセン空間)上にプロットして表される。一般的に使用される物質のHSP値は、データベース等の公知の情報源があるため、例えば、データベースを参照することによって、所望の物質のHSP値を入手することができる。データベースにHSP値が登録されていない物質は、例えばHansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)等のコンピュータソフトウェアを用いることによって、物質の化学構造に基づいて求めることができる。また、ハンセン溶解球法からHSP値を求めることもできる。2種以上の物質を含む混合物のHSP値は、各物質のHSP値に、混合物全体に対する各物質の体積比を乗じた値のベクトル和に基づいて算出される。例えば、ラジカル重合性化合物としてラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを含有する場合、まず、ラジカル重合性化合物に対する各ラジカル重合性モノマーの体積比及び各ラジカル重合性オリゴマーの体積比を算出し、次に、各物質のHSP値に各物質の体積比を乗じた値のベクトル和に基づいてラジカル重合性化合物のHSP値を算出する。
<固体成分>
「固体成分」とは、活性エネルギー線急速硬化型組成物中において固体状態を維持可能な成分を表す。また、固体成分は、活性エネルギー線急速硬化型組成物中において粒子の形態であることが好ましい。更に、固体成分は、活性エネルギー線急速硬化型組成物中において分散されている状態であることが好ましい。
固体成分は、軟質の固体材料を含有することが好ましく、必要に応じて他の固体材料を含有してもよい。活性エネルギー線急速硬化型組成物中に固体成分が添加されることで、硬化物の耐熱性、延伸性、耐衝撃性等を向上させることができる。ここで、「軟質」とは、外部からの応力により、形状が変化するものを表す。軟質であるか否かは、当業者であれば当該技術分野において知られた判断基準に基づいて判断することができ、かかる判断基準としては例えば鉛筆硬度、弾性率などが挙げられる。好ましい一態様において、軟質の固体材料の弾性率は4GPa以下であり、より好ましくは3GPa以下であり、さらに好ましくは2GPa以下である。なお、弾性率は、例えば、JIS K 7161及、JIS K 7171、ISO 14577などに従って求めることができる。軟質の固体材料としては、例えば、エラストマーが挙げられる。「エラストマー」とは、室温でエントロピー弾性を示す高分子物質を表し、典型的には熱硬化性エラストマーと熱可塑性エラストマーとに大別される。
熱硬化性エラストマーとしては、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム、(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Si,Q)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、フッ素ゴム(FKM)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、及びシリコーンゴムから選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましく、アクリルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、及びブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1つを用いることがより好ましい。アクリルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、及びブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1つを用いることで、硬化物の耐熱性及び延伸性をより向上させることができる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、PVC系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
なお、軟質の固体材料以外の固体材料としては、無機化合物であっても有機化合物であってもよく、例えば、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、MOS、アラミド繊維、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウイスカー、各種樹脂などが挙げられる。
固体成分の形態としては、粒子であることが好ましい。固体成分の体積平均粒径としては、50nm以上であり、50nm以上1000nm以下であることが好ましく、50nm以上500nm以下であることがより好ましい。体積平均粒径が、50nm以上であれば、固体成分の特性を造形物に反映することが可能となる。また、1000nm以下であれば、インクジェット方式による吐出安定性が向上する。さらに、活性エネルギー線急速硬化型組成物中における固体成分の分散安定性を考慮すると、500nm以下であることが好ましい。
ここで、体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(マイクロトラック MODEL UPA9340、日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
固体成分の含有量は、活性エネルギー線急速硬化型組成物の質量に対して、0.5質量%以上40.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上20.0質量%以下であることがより好ましい。
-コアシェル型粒子-
固体成分の形態としては、粒子であることが好ましいが、コア部及び当該コア部の外部に位置するシェル部を有するコアシェル型粒子であることがより好ましく、上記軟質の固体材料を含有するコア部及び当該コア部の外部に位置するシェル部を有するコアシェル型粒子(以降、「コアシェル型エラストマー粒子」とも称する)であることが更に好ましい。コア部は、シェル部により完全に被覆されていることが好ましいが、シェル部により部分的に被覆されていてコア部の一部が外部に露出している形態であってもよい。固体成分の表面にシェル部を設け、シェル部を構成する材料としてラジカル重合性化合物等の液体成分と親和性の高いものを選択することで、活性エネルギー線急速硬化型組成物における固体成分の分散安定性が向上し、インクジェット方式による吐出性や保存安定性が向上する。また、硬化物中において、固体成分と樹脂の界面における接着性が向上する。
なお、「液体成分」とは、活性エネルギー線急速硬化型組成物中において固体状態を維持可能な固体成分以外の成分の混合物を表す。典型的には、ラジカル重合性化合物等の単体で液体状態として存在する成分が挙げられるが、これら成分に溶解可能な成分も含まれる。溶解可能な成分としては、例えば、後述する重合開始剤、界面活性剤、重合禁止剤、及び色材等のその他成分が挙げられる。
固体成分の形態がコアシェル型粒子であることについては、例えば、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて確認する。TEMで観察した場合において、コアシェル型粒子は、観察範囲内において、粒子表面が粒子内部とは異なるコントラストの成分により覆われている状態と定義される。
具体的には、まず、コアシェル型粒子を含む組成物に活性エネルギー線を照射して硬化物を作製する。硬化物の作製方法は下記実施例に記載の方法に倣う。この際、基板上の温度を上げないように調整する。次に、四酸化ルテニウム、四酸化オスミウム、又は他の染色剤のガスによって試料を1分間から24時間ガス暴露することにより、シェル部とコア部とを識別染色する。暴露時間は観察時のコントラストにより適宜調整する。ナイフで断面出ししてウルトラミクロトーム(Leica社製 ULTRACUT UCT、ダイヤナイフ使用)で超薄切片(200nm厚さ)を作製する。その後、TEM(H7000;日立ハイテク社製)により加速電圧100kVで観察する。なお、シェル部とコア部の組成により、未染色で識別可能な場合もあり、その場合は未染色で評価する。また選択エッチング等の別の手段で組成コントラストを付与することも可能であり、そのような前処理後にTEM観察し、コアシェル構造を確認することも好ましい。
コアシェル型粒子のコア部を構成する材料としては、上述した軟質の固体材料が挙げられる。すなわち、コア部はエラストマーを含有することが好ましく、熱硬化性エラストマー又は熱可塑性エラストマーを含有することがより好ましい。また、コア部が熱硬化性エラストマーを含有する場合、熱硬化性エラストマーアクリルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、及びシリコーンゴムから選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、アクリルゴム、スチレン・ブタジエンゴム、及びブタジエンゴムから選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。
コアシェル型粒子のシェル部を構成する材料としては、ラジカル重合性化合物と親和性の高いものである限り特に制限されないが、例えば、メチルメタクリレート及びスチレンから選ばれる少なくとも1つに由来する構造単位を有する樹脂を含有することが好ましく、メチルメタクリレート及びスチレンに由来する構造単位を有する樹脂(共重合体)を含有することがより好ましい。
<重合開始剤>
重合開始剤としては、光(特に波長220nm~400nmの紫外線)の照射によりラジカルを生成する任意の物質を用いることができる。1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線急速硬化型組成物の質量に対して0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2、2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-クロロベンゾフェノン、p,p-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、メチルベンゾイルフォーメート、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシドなどが挙げられる。
<界面活性剤>
界面活性剤としては、例えば、分子量200以上5000以下の化合物であることが好ましく、具体的には、PEG型非イオン界面活性剤[ノニルフェノールのエチレンオキサイド(以下EOと略記)1~40モル付加物、ステアリン酸EO1~40モル付加物等]、多価アルコール型非イオン界面活性剤(ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素含有界面活性剤(パーフルオロアルキルEO1~50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)、変性シリコーンオイル[ポリエーテル変性シリコーンオイル、(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等]などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<重合禁止剤>
重合禁止剤としては、例えば、フェノール化合物[ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン等]、硫黄化合物[ジラウリルチオジプロピオネート等]、リン化合物[トリフェニルフォスファイト等]、アミン化合物[フェノチアジン等]などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<色材>
色材としては、活性エネルギー線急速硬化型組成物中に溶解又は安定に分散し熱安定性に優れた染料又は顔料が適している。これらの中でも、溶解性染料(Solvent Dye)が好ましい。なお、色の調整等を行うために2種類以上の色材を適宜混合してもよい。
<有機溶媒>
活性エネルギー線急速硬化型組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、重合性化合物とは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まない(例えば有機溶媒の特性等が組成物に影響する程度には含まない)ことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
<活性エネルギー線急速硬化型組成物の調製>
活性エネルギー線急速硬化型組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、ラジカル重合性化合物、色材、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて分散液を調製し、当該分散液にさらに、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させ、次に固体成分を混合させることにより調製することができる。
<活性エネルギー線急速硬化型組成物の物性>
-急速硬化性-
上述した通り、本発明の活性エネルギー線急速硬化型組成物は、光強度が0.1mW/cmであるUV光を組成物に照射した際に、貯蔵弾性率G’が10Paとなる硬化物を形成するまでにおける積算光量が10mJ/cm以下である物性を有する。活性エネルギー線急速硬化型組成物の積算光量が10mJ/cm以下であることで、活性エネルギー線を照射されることで急速に硬化して硬化物を形成することができる。なお、一般に、エポキシ系モノマー等のカチオン重合性化合物を主に含む従来の活性エネルギー線硬化型組成物における積算光量は、10mJ/cm以下とはならない。ここで、積算光量(mJ/cm)は、UV光の光強度(mW/cm)と貯蔵弾性率G’が10Paとなる硬化物を形成するまでの時間である硬化時間(s)とを乗ずることで算出される。貯蔵弾性率G’は、例えば、フォトレオメーター(MCR 302、Anton Paar社製)等を用いて測定することができる。また、UV光は、例えば、光源装置(EXECURE-H-1VC-II、HOYA CANDEO OPTRONICS CORPORATION社製)を用いて照射することができる。なお、UV光の波長のピークは、活性エネルギー線急速硬化型組成物に含まれる重合開始剤の種類によって適宜変更することができ、例えば、波長385nmにピークを有するUV光を用いることができる。なお、適切な波長のピークを有するUV光であるか否かは、当業者であれば当該技術分野において知られた判断基準に基づいて判断することができる。
-インクジェット吐出性-
インクジェット方式で好適に使用可能な組成物は、ノズルからの吐出性などに鑑みると、粘度が低いことが好ましい。したがって、一態様において、本発明の活性エネルギー線急速硬化型組成物の粘度は、25℃環境下において、1000mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以下がより好ましく、150mPa・s以下が更に好ましい。また、吐出性、造形精度の観点から、25℃環境下において、9mPa・s以上であることが好ましい。なお、造形中は、インクジェットヘッドやインク流路の温度を調節することにより、活性エネルギー線急速硬化型組成物の粘度を調整することが可能である。
なお、上記粘度は常法により計測することができ、例えばJIS Z 8803に記載の方法などを用いることができる。他には、例えば、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34´×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
また、インクジェット用途に用いることができる組成物は、吐出安定性、造形精度などに鑑みると、表面張力が25℃環境下において20~40mN/mの範囲にあることが好ましい。したがって、一態様において、本発明の活性エネルギー線急速硬化型組成物は25℃環境下において20~40mN/mの表面張力を有している。
なお、表面張力は常法により測定することができ、かかる測定方法としては、例えばプレート法、リング法、ペンダントドロップ法などが挙げられる。
<立体造形物>
本発明の活性エネルギー線急速硬化型組成物は、固体成分を含むことにより、硬化物を積層することで造形される立体造形物(マテリアルジェッティング造形物)の機械的物性を良好にすることができる。
立体造形物の好ましい機械的物性としては、強度については引張最大応力が10MPa以上であることが好ましく、35MPa以上であることがより好ましい。
延伸性については引張破断伸度が3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。
耐熱性については、荷重たわみ温度(HDT)が50℃以上であることが好ましい。
また、耐衝撃性はIzod衝撃強度が20J/m以上であることが好ましく、35J/m以上であることがより好ましい。
<活性エネルギー線>
活性エネルギー線急速硬化型組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、光が好ましく、特に波長220nm~400nmの紫外線が好ましい。紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
<<収容容器>>
収容容器は、活性エネルギー線急速硬化型組成物が収容された状態の容器を意味する。活性エネルギー線急速硬化型組成物が収容された容器は、カートリッジやボトルとして使用することができ、これにより、搬送や交換等の作業において、活性エネルギー線急速硬化型組成物に直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。また、活性エネルギー線急速硬化型組成物へのごみ等の異物の混入を防止することができる。また、容器それ自体の形状や大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、または容器が遮光性シート等で覆われていることが望ましい。
<<造形装置、造形方法>>
以下、本発明の活性エネルギー線急速硬化型組成物をモデル部形成材料として使用した場合の立体造形物の造形方法、及び造形装置について説明する。ただし、本発明の活性エネルギー線急速硬化型組成物の用途は、これらの実施形態に何ら限定されるものではない。
<造形装置>
図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置を示す概略図である。造形装置30は、ヘッドユニット31,32、紫外線照射機33、ローラー34、キャリッジ35、及びステージ37を有する。ヘッドユニット31は、モデル部形成材料1を吐出する。ヘッドユニット32は、サポート部形成材料2を吐出する。紫外線照射機33は、吐出されたモデル部形成材料1、及びサポート部形成材料2に紫外線を照射して硬化する。ローラー34は、モデル部形成材料1、及びサポート部形成材料2の液膜を平滑化する。キャリッジ35は、ヘッドユニット31,32等の各手段を、図1におけるX方向に往復移動させる。ステージ37は、基板36を、図1に示すZ方向、及び図1の奥行方向であるY方向に移動させる。尚、Y方向への移動は、ステージ37ではなくキャリッジ35において行なってもよい。
モデル部形成材料が色ごとに複数ある場合、造形装置30には、各色のモデル部形成材料を吐出するための複数のヘッドユニット31が設けられていてもよい。
ヘッドユニット31,32におけるノズルとしては、公知のインクジェットプリンターにおけるノズルを好適に使用することができる。
ローラー34に使用できる金属としては、SUS300系、400系、600系、六価クロム、窒化珪素、及びタングステンカーバーイドなどが例示される。また、これらのいずれかをフッ素やシリコーンなどで被膜コーティングした金属を、ローラー34に使用してもよい。これらの金属のなかでも、強度、加工性の面からSUS600系が好ましい。
ローラー34を使用する場合、造形装置30は、ローラー34と造形物の面とのギャップを一定に保つため、積層回数に合わせて、ステージ37を下げながら積層する。ローラー34は紫外線照射機33に隣接している構成が好ましい。
また、休止時のインクの乾燥を防ぐため、造形装置30には、ヘッドユニット31,32におけるノズルを塞ぐキャップなどの手段を設置してもよい。また、長時間連続使用時のノズルの詰まりを防ぐため、造形装置30には、ヘッドをメンテナンスするためのメンテナンス機構を設置してもよい。
<造形方法>
以下、造形装置で行われる工程について説明する。
造形装置30のエンジンは、キャリッジ35、又はステージ37を移動させながら、入力された二次元データのうち最も底面側の断面を示す二次元データに基づいて、ヘッドユニット31からモデル部形成材料1の液滴を吐出させ、ヘッドユニット32からサポート部形成材料2の液滴を吐出させる。これにより、最も底面側の断面を示す二次元データにおけるモデル部を示す画素に対応する位置にモデル部形成材料1の液滴が配され、サポート部を示す画素に対応する位置にサポート部形成材料2の液滴が配され、隣り合う位置の液滴同士が接した液膜が形成される。なお、造形する造形物が1個の場合は、ステージ37の真中に断面形状の液膜が形成される。造形する造形物が複数個の場合、造形装置30は、ステージ37に複数個の断面形状の液膜を形成してもよいし、先に造形された造形物に液膜を積み重ねてもよい。
ヘッドユニット31及び32にはヒータを設置することが好ましい。さらに、ヘッドユニット31にモデル部形成材料を供給する経路及びヘッドユニット32にサポート部形成材料を供給する経路にプレヒータを設置することが好ましい。
平滑化工程において、ローラー34は、ステージ37上に吐出されたモデル部形成材料、及びサポート部形成材料のうち余剰な部分を掻き取ることで、モデル部形成材料、及びサポート部形成材料からなる液膜、又は層の有する凸凹を平滑化する。平滑化工程はZ軸方向へ積層毎に1回行われてもよいし、2乃至50回の積層毎に1回行われてもよい。平滑化工程において、ローラー34は停止していてもよいし、ステージ37の進行方向に対して正もしくは負の相対速度で回転していてもよい。またローラー34の回転速度は定速でも一定加速度、一定減速度でもよい。ローラー34の回転数は、ステージ37との相対速度の絶対値として、50mm/s以上400mm/s以下が好ましい。相対速度が小さすぎる場合、平滑化が不十分で平滑性が損なわれる。また相対速度が大きすぎる場
合、装置が大型化を要し、振動などによって、吐出された液滴の位置ずれなどが発生しやすく、結果として平滑性が低下することがある。平滑化工程において、ローラー34の回転方向はヘッドユニット31,32の進行方向と逆向きであることが好ましい。
硬化工程において、造形装置30のエンジンは、キャリッジ35により紫外線照射機33を移動させて、液膜形成工程で形成された液膜に、モデル部形成材料、及びサポート部形成材料に含まれる光重合開始剤の波長に応じた紫外線を照射する。これにより、造形装置30は、液膜を硬化して、層を形成する。
最も底面側の層の形成後、造形装置30のエンジンは、ステージを一層分、下降させる。
造形装置30のエンジンは、キャリッジ35、又はステージ37を移動させながら、底面側から二つ目の断面を示す二次元画像データに基づいて、モデル部形成材料1の液滴を吐出させ、サポート部形成材料2の液滴を吐出させる。吐出方法は、最も底面側の液膜を形成するときと同様である。これにより、最も底面側の層上に、底面側から二つ目の二次元データが示す断面形状の液膜が形成される。更に、造形装置30のエンジンは、キャリッジ35により紫外線照射機33を移動させて、液膜に紫外線を照射することにより、液膜を硬化して、最も底面側の層上に、底面側から二つ目の層を形成する。
造形装置30のエンジンは、入力された二次元データについて、底面側に近いものから順に利用して、上記と同様に、液膜の形成と、硬化と、を繰り返し、層を積層させる。繰り返しの回数は、入力された二次元画像データの数、あるいは三次元モデルの高さ、形状などに応じて異なる。すべての二次元画像データを用いた造形が完了すると、サポート部に支持された状態のモデル部の造形物が得られる。
造形装置30により造形された造形物は、モデル部及びサポート部を有する。サポート部は、造形後に造形物から除去される。除去方法としては、物理的除去、及び化学的除去がある。物理的除去では、機械的な力を加えて除去する。一方、化学的除去では、溶媒に浸漬し、サポート部を崩壊させて除去する。サポート部の除去方法としては、特に制限はないが、物理的除去では造形物が破損する可能性があるため、化学的除去がより好ましい。さらに、コストを考慮すると水に浸漬して除去する方法がより好ましい。水に浸漬して除去する方法が採用される場合、サポート部形成材料の硬化物は、水崩壊性を有するものが選択される。
上述のとおり、本発明の活性エネルギー線急速硬化型組成物は、インクジェット用途、とくにインクジェットによる立体造形物の製造に好適に用い得ることができる。したがって本発明には、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を用いて造形された立体造形物も包含される。かかる立体造形物の製造方法は、インクジェットを用いる限り特に限定されないが、例えば上記<造形方法>の欄にて詳述した方法などが挙げられる。
以下、本発明の例を説明するが、本発明はこれら例に何ら限定されるものではない。
<活性エネルギー線急速硬化型組成物の調製>
(例1)
アクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ株式会社製)32.0質量部、ヒドロキシエチルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社製)15.0質量部、PEG200#ジアクリレート(商品名:4EG-A、共栄社化学株式会社製)19.0質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(商品名:UV-6630B、日本合成化学株式会社製)18.0質量部を均一に混合した。次に、光重合開始剤としてジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(商品名:Omunirad TPO、BASF社製)3.0質量部を加え、均一に混合した。次に、固体成分としてコアシェル型エラストマー粒子(カネエースM-521、カネカ株式会社製)を15.0質量部加え、均一に混合した。次に、フィルター(商品名:CCP-FX-C1B、ADVANTEC社製、平均孔径:3μm)を通過させて、例1の活性エネルギー線急速硬化型組成物を得た。
また、ラジカル重合性化合物のHSP値は、まず、各ラジカル重合性化合物のHSP値をコンピュータソフトウェア(HSPiP)により求め、次に、各ラジカル重合性化合物のHSP値に、ラジカル重合性化合物全体に対する各ラジカル重合性化合物の体積比を乗じた値のベクトル和を算出し、これに基づいて求めたところ22.9(J/cm0.5であった。
(例2~8)
下記表1の配合処方に従って、例1と同様の作製手順で、例2~8の活性エネルギー線急速硬化型組成物を作製した。表1における配合処方の単位は「質量部」である。
また、例1と同様にラジカル重合性化合物のHSP値を求めた。
なお、表1における材料の詳細は以下の通りである。
ラジカル重合性モノマー(ラジカル重合性単官能モノマー)
・IBXA:イソボニルアクリレート、大阪有機化学工業株式会社製
・ACMO:アクリロイルモルフォリン、KJケミカルズ株式会社製
・HEA:ライトエステルHOA(N)、共栄社化学株式会社製
・HEAA:ヒドロキシエチルアクリルアミド、KJケミカルズ株式会社製
・SR531:環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、サトーマー社製
ラジカル重合性モノマー(ラジカル重合性二官能モノマー)
・APG-200:トリプロピレングリコールジアクリレート、中村化学工業株式会社製
・4EG-A:ライトアクリレート(PEG200#ジアクリレート)、共栄社化学株式会社製
ラジカル重合性オリゴマー
・UV-6630B:UV硬化型ウレタンアクリレートオリゴマー、分子量3000、官能基数2、日本合成化学株式会社製
固体成分
・カネエースM-521:コアシェル型エラストマー粒子、ブタジエン系ゴム、体積平均粒径250nm、カネカ工業株式会社製
重合開始剤
・Omnirad TPO:BASF社製
次に、得られた活性エネルギー線急速硬化型組成物について、引張強度、破断伸度、耐衝撃性、及び硬化速度の評価を行った。結果を下記表1に示す。
<引張強度の評価>
まず、図2に示すようにガラス基板上にOHPシートを載せて、シリコン型(形状:引張6号形、JIS K 6251、厚さ1mm)をOHPシートに密着させた。次に、活性エネルギー線急速硬化型組成物をシリコン型に充填し、OHPシートを被せ、その上にガラス板を置いた。次に、紫外線照射機(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE SP5-250DB)を用いて、ガラス板越しに照射強度200mW/cmの紫外線を5分間照射した。次に、さきほど紫外線を照射した面とは反対の面から、ガラス板越しに照射強度200mW/cmの紫外線を5分間照射した。次に、OHPシートを剥がし、シリコン型から硬化物を取り出し、温度23℃相対湿度50%の環境下に24時間静置して硬化物を得た。
次に、試験片(得られた硬化物)に対し、精密万能試験機(オートグラフAG-X、島津製作所)を用いて引張試験を行い、最大点での応力を求めた。なお、試験は、引張速度5mm/min、引張冶具間距離50mmの条件で行った。
<破断伸度の評価>
まず、上記<引張強度の評価>と同様にして硬化物を得た。
次に、試験片(得られた硬化物)に対し、精密万能試験機(オートグラフAG-X、島津製作所)を用いて引張試験を行い、破断時における試験片の伸び率を求めた。なお、試験は、引張速度5mm/min、引張冶具間距離50mmの条件で行った。
<耐衝撃性(Izod衝撃性)の評価>
まず、図2に示すようにガラス基板上にOHPシートを載せて、シリコン型(ASTM D256、厚さ3mm)をOHPシートに密着させた。次に、活性エネルギー線急速硬化型組成物をシリコン型に充填し、OHPシートを被せ、その上にガラス板を置いた。次に、紫外線照射機(ウシオ電機株式会社製、SPOT CURE SP5-250DB)を用いて、ガラス板越しに照射強度200mW/cmの紫外線を5分間照射した。次に、さきほど紫外線を照射した面とは反対の面から、ガラス板越しに照射強度照射強度200mW/cmの紫外線を5分間照射した。次に、OHPシートを剥がし、シリコン型から試験片を取り出し、温度23℃相対湿度50%の環境下に24時間静置して硬化物を得た。
次に、試験片(得られた硬化物)に対し、デジタル衝撃試験機(衝撃試験機IT、東洋精機製作所)を用いて破壊に要するエネルギー(J/m)を求めた。なお、試験は、ハンマー0.5J、アイゾット試験モードの条件で行った。
<硬化速度の評価>
得られた活性エネルギー線急速硬化型組成物に対し、光強度が0.1mW/cmであるUV光を照射し、貯蔵弾性率G’が10Paとなる硬化物を形成するまでにおける積算光量を求め、下記の評価基準で硬化速度を評価した。貯蔵弾性率G’は、フォトレオメーター(MCR 302、Anton Paar社製)を用いて測定した。また、UV光は、光源装置(EXECURE-H-1VC-II、HOYA CANDEO OPTRONICS CORPORATION社製)を用いて照射した。なお、UV光の波長のピークは385nmであった。
〔評価基準〕
A:積算光量が10mJ/cm以下
B:積算光量が10mJ/cmより大きい
1 モデル部形成材料
2 サポート部形成材料
10 モデル部
20 サポート部
30 造形装置
31 ヘッドユニット(吐出手段の一例)
32 ヘッドユニット(吐出手段の一例)
33 紫外線照射機(硬化手段の一例)
34 ローラー
35 キャリッジ
36 基板
37 ステージ
特許第5334389号公報

Claims (8)

  1. 固体成分及びラジカル重合性化合物を含有する活性エネルギー線急速硬化型組成物であって、
    前記固体成分の体積平均粒径は、50nm以上1000nm以下であり、
    前記ラジカル重合性化合物は、アクリル系モノマーであるラジカル重合性モノマー及びウレタン基を有するラジカル重合性オリゴマーを含有し、
    前記ラジカル重合性化合物の、コンピュータソフトウェア(HSPiP)により求めたHSP値は、21.8(J/cm0.5以上であり、
    光強度が0.1mW/cm であるUV光を照射し、貯蔵弾性率G’が103Paとなる硬化物を形成するまでにおける積算光量が10mJ/cm 以下である活性エネルギー線急速硬化型組成物。
  2. 前記ラジカル重合性モノマーの含有量は、前記活性エネルギー線急速硬化型組成物の質量に対して50.0質量%以上95.0質量%以下である請求項1に記載の活性エネルギー線急速硬化型組成物。
  3. 前記ラジカル重合性オリゴマーの含有量は、前記活性エネルギー線急速硬化型組成物の質量に対して1.0質量%以上40.0質量%以下である請求項1又は2に記載の活性エネルギー線急速硬化型組成物。
  4. 前記固体成分の含有量は、前記活性エネルギー線急速硬化型組成物の質量に対して0.5質量%以上40.0質量%以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線急速硬化型組成物。
  5. 前記固体成分は、コア部及びシェル部を有するコアシェル型粒子であり、
    前記コア部は、軟質の固体材料を含有する請求項1から4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線急速硬化型組成物。
  6. 更に、重合開始剤を含有し、
    前記重合開始剤の含有量は、前記活性エネルギー線急速硬化型組成物の質量に対して0.1質量%以上10.0質量%以下である請求項1からのいずれか一項に記載の活性エネルギー線急速硬化型組成物。
  7. 請求項1からのいずれか一項に記載の活性エネルギー線急速硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する吐出工程と、吐出された前記活性エネルギー線急速硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化工程と、を有し、前記吐出工程及び前記硬化工程を順次繰り返すことにより立体造形物を造形する造形方法。
  8. 請求項1からのいずれか一項に記載の活性エネルギー線急速硬化型組成物をインクジェット方式で吐出する吐出手段と、吐出された前記活性エネルギー線急速硬化型組成物に活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化手段と、を有し、前記吐出手段による吐出及び前記硬化手段による硬化を順次繰り返すことにより立体造形物を造形する造形装置。
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