JP7451149B2 - 機能層を有する基材フィルムから機能層を除去する方法、および基材フィルムの回収方法 - Google Patents

機能層を有する基材フィルムから機能層を除去する方法、および基材フィルムの回収方法 Download PDF

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Description

本発明は、機能層を有する基材フィルムから機能層を除去する方法、および基材フィルムの回収方法に関する。
合成樹脂などの基材フィルムの表面に様々な機能を有する機能層がコートされたフィルムは、例えば電子部品用、光学部品用、ラベル用、離型用などの分野で活用されている。上記フィルムにおいて使用済みのフィルム、規格外となったフィルム、流通過程で傷付いたフィルムなどは通常、廃棄される(以下、このようなフィルムを廃棄予定フィルムと呼ぶ場合がある。)が、資源の有効利用のため、機能層を除去(剥離)して基材フィルムをリサイクルすることが好ましい。
このような技術として、例えば特許文献1が挙げられる。特許文献1では、合成樹脂よりなる基材から該基材上に設けられた異質の層を105℃以上のアルカリ水溶液中で除去した後、0.1質量%ないし10質量%以下の過酸化物を含有する水溶液により処理することによって上記異質の層を除去している。具体的には、まず処理する基材を選別し、当該合成樹脂製の基材全体を予め適当な大きさのチップに裁断し、破砕してから、所定のアルカリ処理を行なうという所謂バッチ方式を採用している。
また特許文献2には、シンジオタクチックポリスチレンからなる原反シートを同時二軸延伸してセラミックシート製造用剥離フィルムを製造する方法、および使用済みの剥離フィルムの上にあるグリーンシート残渣物を除去して上記剥離フィルムをリサイクルする方法が開示されている。この方法では、所謂ロールツーロール方式により、グリーンシート残渣物を除去している。
特許第3270037号公報 特開2011-104986号公報
しかしながら、上記特許文献1の方法では、基材を予めチップ状に粉砕する必要があり、異質層の除去に長時間を要するという問題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機能層を有する基材フィルムから機能層を、短時間で効率良く除去する方法を提供することにある。
更に本発明の他の目的は、使用済みの上記フィルム、規格外となった上記フィルム、流通過程で傷付いた上記フィルムなどの廃棄予定フィルムから機能層をより効率良く除去して、不純物の少ない高品質の基材フィルムを回収する方法を提供することにある。
本発明の構成は以下のとおりである。
1.基材フィルムの少なくとも一方の面に有する機能層を除去する方法であって、
ロール状に巻き取られた前記基材フィルムを長尺状の状態でアルカリ性処理液に接触させる工程を含むことを特徴とする機能層の除去方法。
2.前記工程は、90~140℃の温度に加熱された20~60質量%のアルカリ性処理液に1~120秒間接触させる工程を含む上記1に記載の除去方法。
3.機能層が除去されたフィルムをロール状に巻き取る工程を更に含む上記1または2に記載の除去方法。
4.基材フィルムの少なくとも一方の面に有する機能層を除去して基材フィルムを回収する方法であって、
上記1~3のいずれかに記載の除去方法で機能層を除去する工程を含む基材フィルムの回収方法。
本発明の除去方法によれば、機能層を有する基材フィルムから機能層を、短時間で効率良く除去することができる。
また本発明の回収方法によれば、使用済みのフィルムなどのように本来ならば廃棄される予定の上記基材フィルムから機能層を効率良く除去して、不純物の少ない高品質の基材フィルムを回収することができる。
図1は、本発明の一実施形態に用いられるロールツーロール装置の概略図である。
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した。その結果、ロール状に巻き取られた前記基材フィルムを長尺状の状態でアルカリ性処理液に接触させることにより所期の目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明の方法について詳述する。以下では、基材フィルムと、機能層を有する基材フィルムとを区別するため、後者のフィルムを特に「機能層被覆基材フィルム」と呼ぶ場合がある。
(1)機能層を有する基材フィルムから機能層を除去する方法
上述したとおり、本発明の除去方法は、基材フィルムの少なくとも一方の面に有する機能層を除去する方法であって、ロール状に巻き取られた前記基材フィルムを長尺状の状態でアルカリ性処理液に接触させる工程を含む点に特徴がある。本発明では、ロール状に巻き取られた前記基材フィルムを長尺状の状態でアルカリ性処処理液に接触させる点で、チップ状に粉砕された基材フィルムをアルカリ性処理液で処理する前記特許文献1の方法と相違している。
(1-1)基材フィルム
本発明に用いられる基材フィルムを構成する樹脂としては、例えば合成樹脂が挙げられる。合成樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであっても良い。上記合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)などのポリエステル樹脂;ポリカプロアミド(6-ナイロン)、ポリヘキサメチレンアジパミド(6,6-ナイロン)などのポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、環状オレフィン等のポリオレフィン樹脂;アクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリフェニレンオキサイド樹脂;フェノール樹脂;セルロース系樹脂などが挙げられる。好ましくはポリエステル樹脂であり、より好ましくはPETである。
上記基材フィルムの厚みは、取扱い性などを考慮すると、5μm以上、500μm以下であることが好ましい。より好ましい下限は7μmである。また、より好ましい上限は400μm、さらに好ましくは350μm、特に好ましくは300μmである。
(1-2)機能層
上記基材フィルムの少なくとも一方の面は機能層を有している。ここで機能層とは、基材フィルムに種々の機能を付与し得る層であり、例えば、易接着層、離型層、帯電防止層、粘着層、ハードコート層などが挙げられる。これらの機能層は、基材フィルムの少なくとも片面に有していれば良く、両面に有していても良い。また、上記機能層は、単独で有していても良いし、二種以上が積層されていても良い。また、上記機能層は、単一の機能だけでなく複数の機能を有するものであってもよい。
上記易接着層を構成する樹脂は易接着層に一般に使用される樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
上記離型層を構成する樹脂は離型層に一般に使用される樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系樹脂、メラミン樹脂や尿素樹脂などのアミノ樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。また、上記離型層は、シリコーンオイル、ワックスなどの離型剤を含有してもよい。
上記帯電防止層を構成する樹脂は、帯電防止層に一般に使用される樹脂であれば特に限定されない。上記帯電防止層は、さらに帯電防止剤を含有することが好ましい。上記帯電防止剤としては、例えば、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、両性の界面活性剤;ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンサルフォネート)などの導電性高分子;SnO2(Sbドープ)、In23(S
nドープ)、ZnO(Alドープ)などの金属酸化物フィラー;カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)などのカーボン系物質などが挙げられる。これらの帯電防止剤は単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
上記粘着層は、粘着層に一般に使用される粘着剤を含む。上記粘着剤の種類は特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。また、上記粘着層は、タッキファイヤー(粘着付与樹脂)などを更に含有してもよい。
上記ハードコート層を構成する樹脂はハードコート層に一般に使用される樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
上記機能層の厚み(複数の機能層を有する場合は、これらの合計厚み)は、0.001μm以上、50μm以下であることが好ましい。所定の機能を有効に発揮させるためには、より好ましくは0.005μm以上、さらに好ましくは0.01μm以上である。一方、50μmを超えると、機能層の除去に時間がかかる虞がある。より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
後記するアルカリ性処理液との親和性を高める目的で、上記機能層の表面は表面処理層を施しても良い。表面処理層の形成に用いられる表面改質処理は公知の方法を採用することができ、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理などが挙げられる。
(1-3)アルカリ性処理液との接触
本発明では、上記機能層を有し、ロール状に巻き取られた上記基材フィルムを長尺状の状態でアルカリ性処理液に接触させる点に特徴がある。なお本発明は、アルカリ性処理液に接触させる点に特徴があるのであって、本発明の課題達成の観点からすれば、アルカリ性処理液の条件(例えば温度、濃度、接触時間)を厳密に制御することを意図していない。後述するように本発明の方法を採用すれば、例えば実施例8のように好ましいアルカリ性処理液の範囲外であっても、全体の処理時間を延長することなく、不純物の少ない高品質の基材フィルムを効率良く回収できるからである。
まず、本発明で用いられるアルカリ性処理について詳述する。
本発明に用いられるアルカリ性処理液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ供給源を含む。上記アルカリ供給源は、単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。これらは、機能層を溶解、膨潤させて、基材フィルムと機能層との界面での結合を弱める作用を有し、基材フィルムから機能層を剥離(除去)する作用を有する。上記アルカリ性処理液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などの水溶液が好ましく、水酸化カリウム水溶液がより好ましい。
上記アルカリ性処理液は、機能層の剥離効率を高めるため、アルカリ性処理助剤を更に含んでいても良い。アルカリ性処理助剤としては、例えば沸点上昇剤などのようにアルカリ性処理液の加熱温度を上昇し得るものが好ましく用いられ、例えば、界面活性剤、水溶性無機化合物、水溶性有機化合物、水溶性溶媒などが挙げられる。具体的には、例えば、ノニオン系界面活性剤、水溶性高分子、無機塩類、有機塩類、アルコール、グリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなど)、水溶性有機溶媒[ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコールのエーテル類(各種セロソルブ)]、多糖類などが挙げられる。これらのうち好ましくは、グリコール類である。これらは単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。
ここで「アルカリ性処理液に接触させる」とは、例えば所定濃度のアルカリ性処理液と接触(例えば浸漬、塗布、噴霧など)させて、加熱する工程を含む。上記の条件は、基材フィルムや機能層の種類、厚みなどに応じて適宜適切に選択し得るが、好ましい実施態様である小型で簡便な設備を用いて、全体の処理時間を延ばすことなしに不純物の少ない高品質の基材フィルムを得るためには、例えば、90~140℃の温度に加熱された20~60質量%のアルカリ性処理液に1~120秒間接触(浸漬)することが好ましい。例えば、アルカリ性処理液がアルカリ供給源およびアルカリ性処理助剤の両方を含む場合、これらを含むアルカリ性処理液の濃度を20~60質量%に調整した処理液を90~140℃に加熱し、上記の処理液に、機能層が被覆された基材フィルムを1~120秒間接触させることが好ましい。
上記の好ましいアルカリ性処理条件(特に濃度および時間)は、前述した特許文献1に記載の条件と相違している。すなわち上記特許文献1では基材を予め粉砕してからアルカリ性処理を行うバッチ方式を採用しているため、例えば水酸化ナトリウム水溶液の濃度を0.1~20質量%と低濃度に制御して、加熱による基材フィルムの加水分解や溶解などを抑制している。更に上記特許文献1では、アルカリ性処理による剥離効果を有効に発揮させるため、実施例では、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液で30~60分間、長時間洗浄している。これに対し、本発明では、短時間の剥離処理を目指して、ロール状に巻き取った状態で直接、アルカリ性処理液に接触させているため、アルカリ性処理液の濃度は20~60質量%、アルカリ性処理液との接触時間は1~120秒間と、特許文献1に比べて高濃度、短時間のアルカリ性処理が可能である。このように両者は、好ましいアルカリ性処理条件の観点からも、上記文献1と一層相違するものである。
上記好ましい条件において、アルカリ性処理液の加熱温度が90℃未満では、不純物の少ない高品質の基材フィルムを得るために機能層の剥離に時間を要し、好ましい実施態様である小型で簡便な設備では機能層を充分除去できない虞がある。また、本発明では上述したとおり、高濃度のアルカリ性処理液を好ましく使用しているため、アルカリ性処理液の温度が低いと、アルカリ成分が析出して上記処理液自体が固化してしまう虞がある。一方、加熱温度が140℃を超えると、アルカリ性処理液との接触により基材フィルムが変質する虞がある。より好ましくは100℃以上、135℃以下である。
アルカリ性処理液の濃度(アルカリ性処理液がアルカリ供給源およびアルカリ性処理助剤を含む場合は、これらの合計濃度)が20質量%未満では、不純物の少ない高品質の基材フィルムを得るために機能層の剥離に時間を要し、好ましい実施態様である小型で簡便な設備では機能層を充分除去できない虞がある。一方、アルカリ性処理液の濃度が60質量%を超えると、アルカリ性処理液との接触により基材フィルムが変質する虞がある。アルカリ性処理液の濃度は、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは35質量%以上である。また、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは47質量%以下、最も好ましくは45質量%以下である。
アルカリ性処理液との接触時間が1秒未満では、機能層を充分除去できない虞がある。一方、接触時間が120秒を超えると、好ましく用いられる小型で簡便なロールツーロール方式の設備(詳細は後述する。)に供し得ない虞がある。具体的には、アルカリ処理槽内での機能層被覆基材フィルムの架け渡しが複雑になって、より大型のアルカリ処理槽が必要になったり、多くのアルカリ処理槽が必要になって全体の設備が大型化したりする虞がある。接触時間は、より好ましくは3秒以上、さらに好ましくは5秒以上である。また、より好ましくは90秒以下、さらに好ましくは60秒以下、特に好ましくは40秒以下である。
上記アルカリ性処理の処理回数は、好ましくは1~5回であり、より好ましくは1~3回である。なお、ここでいう1回のアルカリ性処理は機能層を有する基材フィルムをアルカリ性処理液に浸漬してから引き上げるまでを1回とする。複数回のアルカリ性処理を行う場合は、同一のアルカリ処理槽を用いても、個別のアルカリ処理槽を用いてもよいが、個別のアルカリ処理槽を用いる方が、設備の対応柔軟性、アルカリ性処理液の管理の面で好ましい。
本発明では、上述したアルカリ性処理液との接触工程において、ロール状に巻き取った機能層被覆基材フィルムを、長尺状の状態で接触させることが重要である。
ここで「長尺状」の長さは、例えば使用する装置などの種類などによっても相違するが、おおむね、100~20000mを意味する。
また「長尺状の状態で」とは、ロール状に巻き取られた長尺状の機能層被覆基材フィルムを巻き出し、そのままの長尺状の状態でアルカリ性処理液と接触させる態様と、アルカリ性処理液と接触可能な状態に調整(処理)した状態でアルカリ性処理液と接触させる態様の両方を含む趣旨である。前者の「そのままの長尺状の状態」とは、ロール状に巻き取った長尺状のフィルムと全く同じ幅および長さのままで接触させる態様を意味する。後者の「調整した状態」とは、例えば、ロール状に巻き取った長尺状の機能層被覆基材フィルムを、予め、アルカリ性処理液と接触可能な幅にスリットしたり、接触可能な長さに切断したりするなどしてロール状に巻き直す態様;スリットした長尺状のフィルムを別々にアルカリ性処理液に導く際、上記フィルムの長さが長すぎる場合に、アルカリ性処理液と接触させる前に接触可能な長さに切断する態様などが含まれる。
また「長尺状の状態でアルカリ性処理液に接触させる」とは、上述した状態のフィルムを破砕するなどせずに直接、接触させることを意味する。
本発明の方法によれば、前述した特許文献1のように、基材フィルムを予め粉砕するバッチ方式でなく、ロール状に巻き取られた機能層被覆基材フィルムを、長尺状の状態で直接、アルカリ性処理液と接触させているため、短時間で効率良く機能層を剥離することができる。好ましくは、ロール状の機能層被覆基材フィルムをアルカリ性処理液と接触させると共に、上記接触後、機能層が剥離されたロール状の基材フィルムを、次の工程(水洗、乾燥)にそのまま導入して、ロール状で巻き取ること、すなわちロールツーロール方式を行うことが推奨される。ロールツーロール方式は、複数のガイドロールを介して、ロール状に巻き取ったフィルムを連続的に搬送し、所定の処理を行ったフィルムを、再びロール状態に巻き取る巻出巻取式の搬送方法である。ロールツーロール方式によれば、一連の機能層剥離工程を、連続して短時間で行うことができ、非常に効率的である。
(1-4)その他
上記アルカリ性処理の後、水洗、および乾燥することが好ましい。
水洗は、上記処理後の基材フィルムに微量に残留した機能層を除去したり、上記処理後の基材フィルムに残留するアルカリ性処理液を除去するために行われる。その際、例えば約40~90℃の温水で水洗すると、上記効果が一層有効に発揮される。
乾燥時間は、好ましくは50~150秒である。乾燥時間が50秒未満では、乾燥が不十分となり、ブロッキングを起こしてしまう虞がある。より好ましくは60秒以上である。一方、乾燥時間が150秒を超えると、基材フィルムが変形する虞がある。より好ましくは140秒以下である。
次に、図1を参照しながら、本発明の機能層除去方法を、より詳しく説明する。図1には、所謂ロールツーロール方式に好ましく用いられる装置の一例を図示しているが、本発明の作用が有効に発揮される限り、これに限定されない。例えば図1に示すロールの数などは適宜変更し得る。
まず、ロール状に巻き取られた長尺状の機能層被覆基材フィルムを用意し、複数のロールを介して、アルカリ性処理液を含むアルカリ処理槽に導入する。アルカリ性処理液による処理方法の詳細は前述したとおりである。アルカリ処理槽への導入態様は特に限定されず、アルカリ性処理液との接触時間を調整するため、例えば、複数のガイドロールに機能層被覆基材フィルムを渡してW型形状などとして、アルカリ性処理液と接触させても良い。また、複数のアルカリ処理槽を用いてアルカリ性処理液との接触時間を調整しても良い。例えば複数のガイドロールを使用してアルカリ処理槽に導入された機能層被覆基材フィルムをW型形状にしたり、複数のアルカリ処理槽を用いると、搬送速度を変えずにアルカリ処理液との接触時間を長くできるため全体の処理時間を長くすることなく処理できる。
次に、アルカリ処理槽によって処理されたフィルムを、水洗槽に導入し、アルカリ性処理により除去されずに残留した機能層などを水洗除去する。図1には水洗槽による浸漬を示しているが、上記目的を達成する限り、これに限定されず、例えば、シャワーなどを施しても良い。また、水洗除去の効果を高める目的で、複数の水洗槽を設けても良い。
なお図1には、アルカリ処理槽の後、直ちに水洗槽に導入する態様を示しているが、これに限定されず、例えば、アルカリ処理槽と水洗槽との間に、除去されずに残留した機能層を除去する目的で、ブラシ、超音波、水流などの物理的手段を備えた補助槽を設けても良い。
水洗の後、乾燥炉に導入し、機能層が除去された基材フィルムをロール状に巻き取る。図1には、ロール状に巻き取ったフィルムを所定の槽で処理した後、ロール状に巻き取るロールツーロール方式の態様を示しているが、これに限定されず、アルカリ処理槽への搬送のみロール状フィルムを用い、乾燥炉を経たフィルムを、ロール状に巻かずに、例えば裁断するなどの方法を採用することも可能である。
(1-5)本発明の除去方法による有用性
本発明による機能層除去方法の有用性は、機能層の除去能で表すことができる。
具体的には、機能層の除去能は、機能層中に含まれる元素(例えばSiなど)を、例えば蛍光X線分析で算出することにより評価することができる。元素除去率の算出方法は実施例の欄で詳述する。なお実施例では、機能層中のSiの除去率に基づいて機能層の除去能を評価したが、これに限定されず、機能層に主に含まれる元素の除去率を算出すれば良い。
本発明によれば、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは100%の除去率で機能層を除去することができる。なお除去率が100%を超えることは、機能層だけでなく基材フィルム層も分解してしまうことを意味するため、好ましくない。本発明のように略100%に近い除去率で機能層を除去できれば、リサイクル後の基材フィルムの性能はバージンの基材フィルム(機能層が被覆される前の基材フィルム)と実質的に変わらないため、不純物の少ない高品質の基材フィルムが得られる。特に本発明の方法によれば、特許文献1の方法では除去が困難な、離型層として用いられるシリコーン系樹脂も、99%の除去率で除去することができた点で非常に有用である(後記する実施例2を参照)。
(2)機能層を有する基材フィルムから機能層を除去して、基材フィルムを回収する方法
本発明に係る基材フィルムの回収方法は、上述した除去方法で機能層を除去する工程を含む。本発明によれば、使用済みなどの機能層被覆基材フィルムに対して上記の除去方法を適用することにより、機能層を効率よく除去できるため、不純物の少ない高品質の基材フィルムを回収することができる。
本発明による基材フィルム回収方法の有用性は、原反(基材フィルム)の厚み保持率で評価することができる。ここで原反の厚み保持率は、上記除去方法の前後の基材フィルムの断面を、SEM写真で観察して、厚みの変化を測定することにより評価する。上記厚み保持率が高いほど、原反の回収率が高いことを意味する。本発明によれば、好ましくは90%、より好ましくは95%以上、特に好ましくは100%の保持率で、原反の厚みを保持することができる。
本発明の方法によって回収された基材フィルムの不純物含有量は非常に少なく、例えば、5%以下である。よって、本発明の方法によれば、高品質の基材フィルムを効率よくリサイクルできる点で極めて有用である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。以下では特に断りのない限り、「%」は質量%を、「部」は質量部を意味する。
表1に示す種々の機能層被覆基材フィルム、および図1のロールツーロール方式の装置を用い、アルカリ性処理条件を表1のように種々変化させることによって機能層を剥離して、機能層の除去率および原反(基材フィルム)の厚み保持率を測定した。
なお、図1のロールツーロール方式の装置でアルカリ処理槽は処理槽中の下部に2本のガイドロール(図示)とアルカリ処理槽中の上部に1本のガイドロール(図示せず)を有している。
実施例1~5、実施例7、参考例1~3では図1に示したように下部の2本のガイドロールにフィルムを渡して処理した。実施例6では、下部の2本のガイドロールは用いず、上部のガイドロールのみにフィルムを渡して処理した。実施例8では下部の2本のガイドロールと上部のガイドロールにフィルムを渡してW型形状に架けて処理した。
処理時間はフィルムの搬送速度で調節した。
また、表1の実施例2では、アルカリ性処理の前に機能層(離型層)表面にコロナ処理(放電量50w・m2/min)を行って離型層の表面を改質した。
ここで、表1に記載の機能層被覆基材フィルムの作製方法は以下のとおりである。
(1)実施例1、3、4、5、6、8、および参考例1~3の易接着層被覆基材フィルムの作製
ここでは、易接着層を構成する樹脂として、水分散型高分子量共重合ポリエステル樹脂である東洋紡株式会社製バイロナールMD-16を用いた。
具体的には、水:イソフタル酸(IPA)=6:4(質量比)の水溶液85gに対して、上記バイロナールMD-16を5.5g、ブロックドイソシアネート含有ポリウレタン樹脂を8g、ジブチルスズラウレート系触媒を0.2g、粒子径50nmのコロイダルシリカ20%分散液を0.3g、フッ素系界面活性レベリング剤を1g混合し、易接着層用コート液を得た。次に、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、ウエットコート量が6g/m2となるように上記コート液をコートし、170℃のオーブンにて乾燥させて易接着層を有するポリエステルフィルムを得た。
(2)実施例2の離型層被覆基材フィルムの作製
ここでは、離型層を構成する樹脂として、熱硬化型ジメチルシリコーン樹脂である信越化学工業株式会社製のKS-847Tを用いた。
具体的には、メチルエチルケトン:トルエン=6:4(質量比)の混合溶液94gに、上記KS-847Tを5g溶解させ、白金系触媒1gを添加し、離型層用コート液を得た。次に、厚さ30μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にウエットコート量が6g/m2となるように上記コート液をコートし、160℃のオーブンにて乾燥させて離型層を有するポリエステルフィルムを得た。
(3)実施例7の易接着層被覆基材フィルムの作製
ここでは、易接着層を構成する樹脂として、下記組成のアクリルグラフトポリエステル系樹脂を用いた。
テレフタル酸/イソフタル酸/フマール酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=48/48/4/50/50(モル%)のポリエステル樹脂75部と、メタクリル酸17.5部と、アクリル酸エチル7.5部との反応物のトリエチルアミンの中和物の水系分散体
具体的には、特開2008-87349号公報の実施例1の記載に従って上記水分散体を作製し、これの5質量%水分散体を易接着層用コート液とした。次に、厚さ75μmの6-ナイロンフィルムの片面に、ウエットコート量が6g/m2となるように上記コート液をコートし、120℃のオーブンにて乾燥させて、易接着層を有するナイロンフィルムを得た。
また、機能層の除去率は、波長分散型蛍光X線分析計(株式会社リガク製のSupermini200)を用いて、機能層に含まれるSi元素の量を測定し、下式に基づいて算出した。下式は、基材フィルムに元々含まれるSi量(式中、「C」で規定)を考慮して算出したものであり、式中、(A-C)はアルカリ性処理前の機能層含有基材フィルム中に含まれるSi量を意味し、(B-C)はアルカリ性処理後、基材フィルムに残存する機能層由来のSi量を意味する。
機能層の除去率(%)
={(A-C)-(B-C)/(A-C)}×100
A:アルカリ性処理方法を施す前における、機能層被覆基材フィルム中のSi強度
B:アルカリ性処理方法を施した後における、機能層被覆基材フィルム中のSi強度
C:機能層を被覆する前の基材フィルム中のSi強度
これらの結果を表1に併記する。
Figure 0007451149000001
Figure 0007451149000002
表1より、以下のように考察することができる。
まず、実施例1~7は、「ロール状に巻き取られた基材フィルムを長尺状の状態でアルカリ性処理液に接触させる」という本発明の方法を採用することによって機能層を剥離した例であり、いずれもアルカリ性処理液との接触時間が僅か5~90秒程度の短時間で、92%以上と非常に高い除去率で機能層を効率よく除去することができた。また、原反(基材フィルム)の厚み保持率も非常に高いため、本発明の剥離方法を用いれば、不純物の少ない基材フィルムを高品質で回収することができる。
実施例8は、アルカリ性処理の濃度、温度は参考例3と同様であるが、アルカリ処理槽中で3本のガイドロールにフィルムを渡してW型形状に架け、アルカリ処理液との接触時間を長くできるようにした例である。実施例8は、アルカリ処理槽内を通過するフィルムの経路をW型形状にすることによって、ロール1本を巻き出してから機能層を剥離して巻き取るまでに要した全体の処理時間が参考例3と実質的に同じであった。実施例8はアルカリ処理液との接触時間を240秒に伸ばすことによって、95%という高い機能層除去率を達成できた。なお、アルカリ処理槽内に複数のロールを設けてフィルムが複数回折り返すような経路にしたり、アルカリ処理槽を複数台設ける等、アルカリ処理液とフィルムとの接触距離を確保すればフィルムの搬送速度を速くして全体の処理時間を短縮することもできる。
これに対し、参考例1~3は、いずれも本発明における好ましいアルカリ処理液の条件を外れる例である。詳細には、アルカリ性処理液の濃度が低い参考例1;アルカリ性処理液の温度が低い参考例2;アルカリ性処理液の濃度が低く、且つ、アルカリ性処理液の温度が低い参考例3では、いずれも機能層の除去率が低下した。
これら参考例1~3の場合、機能層の除去率を上げるためにはさらにアルカリ性処理の時間を長くする必要がある。そのためには前述したように、装置は大型や複雑になる虞はあるが、例えば図1の装置のアルカリ処理槽のガイドロールを増やしてフィルムを架け渡す、アルカリ処理層をさらに追加するなどの方法により、アルカリ性処理の時間のみ増やし、全体の処理時間を実質的な増加させることなく、除去率を向上させることができる。
よって、本発明の方法によれば、アルカリ性処理液の条件に応じて全体の処理時間を延ばすことなく、不純物の少ない高品質の基材フィルムを回収できる点で極めて有用である。また、さらにアルカリ性処理の条件を特定範囲とすることで、小型で簡便な装置を用いても不純物の少ない高品質の基材フィルムを回収できる点で極めて有用である。

Claims (5)

  1. 基材フィルムの少なくとも一方の面に有する機能層を除去する方法であって、
    前記機能層は易接着層、離型層、帯電防止層、およびハードコート層よりなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
    ロール状に巻き取られた前記基材フィルムを長尺状の状態で95~140℃の温度に加熱された20~60質量%のアルカリ性処理液に接触させる工程を含むことを特徴とする機能層の除去方法。
  2. 前記工程は、95~140℃の温度に加熱された20~60質量%のアルカリ性処理液に1~120秒間接触させる工程を含む請求項1に記載の除去方法。
  3. 機能層が除去されたフィルムをロール状に巻き取る工程を更に含む請求項1または2に記載の除去方法。
  4. 前記機能層は、ポリエステル樹脂、シリコーン系樹脂、およびアクリル系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~3のいずれかに記載の除去方法。
  5. 基材フィルムの少なくとも一方の面に有する機能層を除去して基材フィルムを回収する方法であって、
    請求項1~4のいずれかに記載の除去方法で機能層を除去する工程を含む基材フィルムの回収方法。
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