JP3916526B2 - シリコン基板のエッチング方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池に使用可能なシリコン基板のエッチング方法に関するものであり、更に詳しくは混酸水溶液によってエッチング処理を施すシリコン基板のエッチング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
太陽電池は光を吸収し、吸収光のエネルギーの大部分を電気エネルギーに変換する半導体装置である。この種の電池は、多くの場合シリコン結晶で構成されている。ところが、太陽電池の表面に入射する光が全て太陽電池に備えられたシリコン基板(半導体材料)に吸収されるわけではなく、入射光の一部はシリコン基板の表面で反射されている。
このため、太陽電池の前側表面の反射による入射光の損失を軽減することが、太陽電池の設計において非常に重要となっており、入射光が有効にシリコン基板中に捕捉され吸収されて、電荷キャリアに変換されることが理想的なのである。
そこで、従来より、入射光の捕捉率を高めるために様々な提案がなされてきており、シリコン基板の表面の反射率を低減することについても、例えば、特開平1−111887号公報には、未処理のシリコン基板の表面をマスクパターンで覆い、このシリコン基板を濃フッ化水素酸、濃硝酸、濃酢酸の混酸水溶液中に浸漬した後、マスクパターンの開口部に位置するシリコン基板をエッチング処理して、シリコン基板の表層部に円筒状の凹部を形成する方法が記載されている。また、同様の混酸水溶液によってシリコン基板の表層部に球面状の凹部を形成し、入射光の損失を軽減する技術もある。
そして、特開平10−303443号公報には、太陽電池に用いるシリコン基板のエッチング方法において、混酸水溶液及びアルカリ水溶液を用いてエッチング処理する方法が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した方法には以下の問題がある。
特開平1−111887号公報に記載の方法では、反射光の損失を従来より低減できるシリコン基板を製造できるものの、必ずしも満足できる程度の低減ではなく、更に光閉じ込め効果の高い形状を備えたシリコン基板が望まれていた。
また、特開平10−303443号公報に記載の方法も、確かに反射率の低減が図れるものの、酸とアルカリを連続で用いる必要があるため、エッチング液の保存やエッチング処理の操作上で制約が生じる問題があった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、シリコン基板の表面の反射率を低減すると共に、高変換効率を備えた太陽電池を製造可能なシリコン基板のエッチング方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う本発明に係るシリコン基板のエッチング方法は、フッ酸36重量%以上42重量%未満及び硝酸6重量%以上10重量%以下を含む混酸水溶液Aに未処理のシリコン基板を浸漬しエッチング処理する第1工程と、第1工程でエッチング処理したシリコン基板を、フッ酸42重量%以上46重量%以下及び硝酸2重量%以上6重量%未満を含む混酸水溶液Bに浸漬して更にエッチング処理する第2工程とを有する。これにより、第1工程のエッチング処理によって未処理のシリコン基板の表層部に凹凸部を形成でき、第2工程のエッチング処理によってこの凹凸部に更に微小突起を形成できる。
ここで、本発明に係るシリコン基板のエッチング方法において、混酸水溶液Aには酢酸が1重量%以上10重量%以下添加されていることが好ましい。これにより、未処理のシリコン基板の表層部のエッチングレート(エッチング速度)をコントロールできる。
本発明に係るシリコン基板のエッチング方法において、混酸水溶液Bには酢酸が1重量%以上5重量%以下添加されていることが好ましい。これにより、第1工程でエッチング処理されたシリコン基板の凹凸部のエッチングレートをコントロールできる。
【0005】
本発明に係るシリコン基板のエッチング方法において、混酸水溶液Aにはノニオン系界面活性剤が0.1重量%以上1.5重量%以下添加されていることが好ましい。これにより、未処理のシリコン基板の表層部のエッチングレートをコントロールできると共に、シリコン基板の表層部に形成する凹凸部を、シリコン基板の全体に渡って略均一に形成できる。
本発明に係るシリコン基板のエッチング方法において、混酸水溶液Bにはノニオン系界面活性剤が0.1重量%以上1.5重量%以下添加されていることが好ましい。これにより、第1工程でエッチング処理されたシリコン基板の凹凸部のエッチングレートをコントロールできると共に、シリコン基板の凹凸部に形成する微小突起を、シリコン基板の全体に渡って略均一に形成できる。
本発明に係るシリコン基板のエッチング方法において、使用したノニオン系界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのいずれか一方又は双方であることが好ましい。これにより、シリコン基板の表層部に形成する凹凸部、また凹凸部に形成する微小突起を、シリコン基板の全体に渡ってそれぞれ均一に形成できる。
【0006】
本発明に係るシリコン基板のエッチング方法において、第1工程の前に、未処理のシリコン基板を脱脂処理することが好ましい。これにより、例えば未処理のシリコン基板の表面に付着した油脂等を予め除去できるので、第1工程でのエッチング処理をシリコン基板の表層部の全体に渡って略均一にできる。また、未処理のシリコン基板の表面の付着物等が、このシリコン基板と共に混酸水溶液A内に浸入することを予め防止できる。
本発明に係るシリコン基板のエッチング方法において、第1工程のエッチング処理を行ったシリコン基板を水洗処理した後、第2工程のエッチング処理を行うことが好ましい。これにより、第1工程で使用した混酸水溶液Aが、混酸水溶液B内に浸入することを予め防止できるので、混酸水溶液B中のフッ酸量及び硝酸量の変化を防止できる。
即ち、本発明者らは前記した課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の組成を有する2種類の混酸水溶液を用いて未処理のシリコン基板をエッチング処理することにより、反射率が従来より格段に低減できる表面形状を備えたシリコン基板を製造できることを見出し本発明に到達した。
【0007】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここに、図1は本発明の一実施の形態に係るシリコン基板のエッチング方法の説明図、図2は比較例1のシリコン基板のエッチング方法の説明図、図3は比較例2のシリコン基板のエッチング方法の説明図、図4は実施例に係るシリコン基板の反射率の説明図である。
【0008】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るシリコン基板のエッチング方法は、第1工程のエッチング処理によって未処理のシリコン基板の表層部に凹凸部を形成し、更に第2工程のエッチング処理によってこの凹凸部に更に微小突起を形成して、シリコン基板の反射率を従来よりも低減する方法である。なお、製造したシリコン基板は、太陽電池用シリコン基板として使用できる。以下、詳しく説明する。
【0009】
まず、第1工程の前に行う予備処理工程について説明する。
未処理のシリコン基板は、単結晶だけでなく、通常均一な凹凸部を形成し難い多結晶で構成されるシリコン基板を使用することもできる。なお、このシリコン基板は、例えば溶融シリコンを冷却固化させて作製したシリコンブロックをワイヤーソーで数百μmの薄板に切断して製造することができる。ここで、切断後のシリコン基板の表層部に形成される厚さ10μm程度のダメージ層は、予めエッチング処理して除去することが好ましい。
次に、このシリコン基板を複数枚基板ホルダー10に挿入(装入)した後、この状態で脱脂槽に浸漬させ、シリコン基板の脱脂処理を行う。
この脱脂処理は、シリコン基板上に付着した油脂等を除くものであり、通常、有機溶剤を用いて行われる。ここで、好ましく用いられる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、エタノール、メタノール等のアルコール系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒が挙げられる。中でもアセトンが特に好ましい。
なお、シリコン基板の表面に有機物が付着していない場合は、この脱脂処理を省略することも可能である。
【0010】
脱脂処理後に、シリコン基板の表面に付着した有機溶媒を乾燥して除去し、続いて第1工程のエッチング処理を行う。このエッチング処理は、エッチング処理を行っていない、即ち未処理のシリコン基板の表層部に、連続的な凹凸部を形成する処理である。
エッチング処理に使用する混酸水溶液Aは、フッ酸(フッ化水素酸)の含有量が36重量%以上42重量%未満であり、硝酸の含有量が6重量%以上10%以下の水溶液である。なお、混酸水溶液Aのフッ酸及び硝酸の各含有量が上記範囲を外れた場合、脱脂処理後のシリコン基板の表層部に、所望の凹凸部を形成することが困難となる。このため、混酸水溶液Aのフッ酸の含有量を38重量%以上40重量%以下とすることがより好ましく、また硝酸の含有量を7重量%以上9重量%以下とすることがより好ましい。
なお、混酸水溶液Aを作製するためのフッ酸及び硝酸は、入手可能な濃度の中でできるだけ高い濃度を有するフッ酸及び硝酸を使用し、前記した含有量に調整することが好ましい。
【0011】
この混酸水溶液Aには、必要に応じて酢酸1重量%以上10重量%以下及びノニオン系界面活性剤0.1重量%以上1.5重量%以下のいずれか一方又は双方を添加できる。このように、混酸水溶液Aに酢酸を添加することで、シリコン基板のエッチングレート(エッチング速度)をコントロールでき、また混酸水溶液Aにノニオン系界面活性剤を添加することで、シリコン基板のエッチングレートをコントロールできると共に、シリコン基板の全体に渡ってエッチング処理を均一に施すことができる。
なお、混酸水溶液A中の酢酸量が上記範囲を外れた場合、シリコン基板のエッチングレートをコントロールできなくなる。このため、混酸水溶液Aの酢酸量を2重量%以上9重量%以下とすることがより好ましく、更には3重量%以上8重量%以下とすることが好ましい。
また、混酸水溶液A中のノニオン系界面活性剤量が上記範囲を外れた場合は、シリコン基板のエッチングレートをコントロールできなくなると共に、エッチング処理を均一に施すこともできなくなる。このため、混酸水溶液Aのノニオン系界面活性剤量を0.2重量%以上1.2重量%以下とすることがより好ましく、更には0.3重量%以上1.0重量%以下とすることが好ましい。
ここで、ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのいずれか一方又は双方を使用できる。
【0012】
この混酸水溶液A中に、脱脂処理後のシリコン基板を浸漬してエッチング処理を行う。なお、混酸水溶液Aの温度としては、通常10〜50℃であり、好ましくは15〜30℃である。また、処理時間は通常5〜60秒であり、好ましくは10〜30秒である。
この処理によるシリコン基板のエッチング量は、平均厚さとして通常5〜60μm、好ましくは8〜20μmであり、更に好ましくは10〜15μmである。
【0013】
次に、第1工程でエッチング処理が終了したシリコン基板を水洗処理する。これは、第1工程のエッチング処理後、シリコン基板の表面に残存する混酸水溶液Aにより、シリコン基板の表層部に不均一なエッチングが進行することを避けるためである。なお、水洗処理は、第1工程のエッチング処理後速やかに行うことが肝要であり、好ましくは、第1工程のエッチング処理後10秒以内、更に好ましくは5秒以内に行う。
【0014】
水洗処理は、比抵抗が好ましくは1MΩ以上、更に好ましくは10MΩ以上、特に好ましくは16MΩ以上の水を使用し、これにシリコン基板を浸漬することで行うことができ、またシャワー、スプレー等により前述の水をシリコン基板の表面へかけることにより行うこともできる。水洗処理は複数回行っても良い。例えば水洗槽1及び水洗槽2を用いてシリコン基板を2回浸漬することによって、シリコン基板に付着した混酸水溶液Aの大部分を水洗槽1で除去し、水洗槽2で水洗槽1で除去できなかった混酸水溶液Aを略除去できる。従って、シリコン基板のエッチングの進行を防止でき、しかもシリコン基板と共に混酸水溶液Aが後工程へ運ばれることを抑制、更には防止できる。
また、水洗処理を複数回行う場合、例えばシリコン基板を水洗槽に1回浸漬した後スプレーする等、水洗方法を種々組み合わせて行っても良い。
【0015】
続いて、水洗処理が終了したシリコン基板を第2工程でエッチング処理する。このエッチング処理は、第1工程のエッチング処理で形成されたシリコン基板の凹凸部に、更に不定形の微小突起を形成する処理であり、この形状により光反射率を低減することが可能になる。
エッチング処理に使用する混酸水溶液Bは、フッ酸の含有量が42重量%以上46重量%以下であり、硝酸の含有量が2重量%以上6%重量未満の水溶液である。なお、混酸水溶液Bのフッ酸及び硝酸の各含有量が上記範囲を外れた場合、第1工程でエッチング処理したシリコン基板の凹凸部に、微小突起を形成することが困難となる。このため、混酸水溶液Bのフッ酸の含有量を43重量%以上45重量%以下とすることがより好ましく、また硝酸の含有量を4重量%以上5重量%以下とすることがより好ましい。
なお、混酸水溶液Bを作製するためのフッ酸及び硝酸も、混酸水溶液Aの場合と同様、入手可能な濃度の中でできるだけ高い濃度を有するフッ酸及び硝酸を使用し、前記した含有量に調整することが好ましい。
【0016】
この混酸水溶液Bには、混酸水溶液Aと同様、必要に応じて酢酸1重量%以上5重量%以下及びノニオン系界面活性剤0.1重量%以上1.5重量%以下のいずれか一方又は双方を添加できる。
なお、混酸水溶液B中の酢酸量が上記範囲を外れた場合、シリコン基板のエッチングレートをコントロールできなくなる。このため、混酸水溶液Bの酢酸量を2重量%以上4重量%以下とすることがより好ましい。
また、混酸水溶液B中のノニオン系界面活性剤量が上記範囲を外れた場合は、シリコン基板のエッチングレートをコントロールできなくなると共に、エッチング処理を均一に施すこともできなくなる。このため、混酸水溶液Bのノニオン系界面活性剤量を0.2重量%以上1.2重量%以下とすることがより好ましく、更には0.3重量%以上1.0重量%以下とすることが好ましい。
ここで、ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのいずれか一方又は双方を使用できる。
【0017】
この混酸水溶液B中に、凹凸部が形成されたシリコン基板を浸漬してエッチング処理を行う。なお、混酸水溶液Bの温度としては、通常10〜50℃であり、好ましくは15〜30℃である。また、処理時間は通常5〜60秒であり、好ましくは10〜30秒である。
この処理によるシリコン基板のエッチング量は、平均厚さが通常1〜10μm、好ましくは2〜6μmであり、更に好ましくは3〜5μmである。
【0018】
次に、第2工程でエッチング処理が終了したシリコン基板を水洗処理する。これは、第2工程のエッチング処理後、シリコン基板の表面に残存する混酸水溶液Bにより、シリコン基板の凹凸部に不均一なエッチングが進行することを避けるためである。なお、水洗処理は、第2工程のエッチング処理後速やかに行うことが肝要であり、好ましくは、第2工程のエッチング処理後10秒以内、更に好ましくは5秒以内に行う。
【0019】
水洗処理は、第1工程で使用した水と同様の成分の水を用い、これにシリコン基板を浸漬することにより行うことができ、またシャワー、スプレー等により前述の水をシリコン基板の表面へかけることにより行うこともできる。水洗処理は複数回行っても良い。例えば水洗槽3及び水洗槽4を用いてシリコン基板を2回浸漬することにより、シリコン基板に付着した混酸水溶液Bの大部分を水洗槽3で除去し、水洗槽4で水洗槽3で除去できなかった混酸水溶液Bを略除去できる。従って、シリコン基板のエッチングの進行を防止でき、しかもシリコン基板と共に混酸水溶液Bが後工程へ運ばれることを抑制、更には防止できる。
また、水洗処理を複数回行う場合、例えばシリコン基板を水洗槽に1回浸漬した後スプレーする等、水洗方法を種々組み合わせて行っても良い。
【0020】
シリコン基板の水洗処理が終了した後は、このシリコン基板を乾燥させ、太陽電池を製造するための工程へ送り、太陽電池用シリコン基板として使用する。
なお、シリコン基板の乾燥を行う前に、シリコン基板に付着した水分の水切りを良好にするため、好ましくは50〜100℃、更に好ましくは60〜80℃の温水を用いてシリコン基板を洗浄しても良く、また、有機溶媒で洗浄しても良い。ここで、有機溶媒としては、前述の脱脂処理に用いるものと同様のものを用いることができるが、アセトン又はメタノールを使用することが好ましい。
以上のように、未処理のシリコン基板を、組成の異なる2種の混酸水溶液を用いて、2段でエッチングすることで、従来より光反射率を低減したシリコン基板を製造できる。
【0021】
【実施例】
本発明に係るシリコン基板のエッチング方法を適用し、試験を行った結果について、図1を参照しながら説明する。
まず、約12.5cm×約12.5cmのキャスト多結晶シリコン基板(以下、単にシリコン基板とも言う)を、基板ホルダー10に挿入した。このキャスト多結晶シリコン基板とは、鋳型で成形したシリコン基板のことである。
次に、基板ホルダー10に挿入したシリコン基板を、アセトンを貯留した脱脂槽に浸漬し、シリコン基板の表面に残留している有機物を除去した。なお、シリコン基板を脱脂槽に5分間浸漬した後、脱脂槽からシリコン基板を引き上げて乾燥させ、シリコン基板の表面の有機溶媒を除去した。
【0022】
第1工程のエッチング処理として、フッ酸39重量%、硝酸8重量%、酢酸9重量%、ノニオン系界面活性剤1重量%を含み、25℃に保持された混酸水溶液A中にシリコン基板を浸漬させ、この混酸水溶液A中で15秒間保持して、シリコン基板を平均厚さ15μmエッチングし、表層部に凹凸部を形成させた。そして、このエッチング処理後、混酸水溶液A中から引き上げたシリコン基板を、速やかに水洗槽1に浸漬させ、その後水洗槽2に更に浸漬させた。これにより、シリコン基板の表面の残留物(混酸水溶液A)を略完全に除去できた。
次に、第2工程のエッチング処理として、フッ酸45重量%、硝酸4重量%、酢酸4重量%、ノニオン系界面活性剤1重量%を含み、25℃に保持された混酸水溶液B中に、水洗が終了したシリコン基板を浸漬させ、この混酸水溶液B中で10秒間保持して、シリコン基板を平均厚さ5μmエッチングし、表層部の凹凸部に不定形の微小突起を形成させた。そして、このエッチング処理後、混酸水溶液B中から引き上げたシリコン基板を、速やかに水洗槽3に浸漬させ、その後水洗槽4に更に浸漬させた。これにより、シリコン基板の表面の残留物(混酸水溶液B)を略完全に除去できた。
そして、水洗処理にてシリコン基板の表面の残留物を完全に除去した後、水洗槽4よりシリコン基板を引き上げ、水切れを良くするため、温水を貯留した温水槽に浸漬させた。温水槽に浸漬させたシリコン基板を再び引き上げ、速やかに有機溶媒を貯留した有機溶媒槽に更に浸漬させた後これを引き上げ、乾燥機に投入してシリコン基板を乾燥させた。これにより、乾燥時にシリコン基板の表面に発生する可能性のある水シミの発生を抑制することができる。
【0023】
次に、比較例1として、混酸水溶液Aのみの処理を施したシリコン基板のエッチング方法について、図2を参照しながら説明する。
まず、実施例で用いたものと同様のキャスト多結晶シリコン基板を、基板ホルダー10に挿入した。
次に、基板ホルダー10に挿入したシリコン基板を、アセトンを貯留した脱脂槽に浸漬し、シリコン基板の表面に残留している有機物を除去した。なお、シリコン基板を脱脂槽に5分間浸漬した後、脱脂槽からシリコン基板を引き上げて乾燥させ、シリコン基板の表面の有機溶媒を除去した。
【0024】
次に、エッチング処理として、フッ酸39重量%、硝酸8重量%、酢酸9重量%、ノニオン系界面活性剤1重量%を含み、25℃に保持された混酸水溶液A中にシリコン基板を浸漬させ、この混酸水溶液A中で15秒間保持して、シリコン基板を平均厚さ15μmエッチングし、表層部に凹凸部を連続的に形成させた。そして、エッチング処理後、混酸水溶液A中から引き上げたシリコン基板を、速やかに水洗槽1に浸漬させ、その後水洗槽2に更に浸漬させることで、シリコン基板の表面の残留物(混酸水溶液A)を略完全に除去できた。
そして、水洗処理にてシリコン基板の表面の残留物を完全に除去した後、水洗槽2よりシリコン基板を引き上げ、水切れを良くするため、温水を貯留した温水槽に浸漬させた。温水槽に浸漬させたシリコン基板を再び引き上げ、速やかに有機溶媒を貯留した有機溶媒槽に更に浸漬させた後これを引き上げ、乾燥機に投入してシリコン基板を乾燥させた。これにより、乾燥時にシリコン基板の表面に発生する可能性のある水シミの発生を抑制することができる。
【0025】
続いて、比較例2として、アルカリの処理を施したシリコン基板のエッチング方法について、図3を参照しながら説明する。
まず、実施例で用いたものと同様のキャスト多結晶シリコン基板を、基板ホルダー10に挿入した。
次に、基板ホルダー10に挿入したシリコン基板を、アセトンを貯留した脱脂槽に浸漬し、シリコン基板の表面に残留している有機物を除去した。なお、シリコン基板を脱脂槽に5分間浸漬した後、脱脂槽からシリコン基板を引き上げて乾燥させ、シリコン基板の表面の有機溶媒を除去した。
【0026】
次に、アルカリエッチング処理として、80℃に加温された5重量%水酸化ナトリウム水溶液中にシリコン基板を浸漬させ、この水酸化ナトリウム水溶液中で10分間保持した。これにより、シリコン基板の表層部を15μmエッチングし、表層部にテクスチャー形状を形成させた。そして、アルカリエッチング処理後、水酸化ナトリウム水溶液中から引上げたシリコン基板を、速やかに水洗槽1に浸漬させ、シリコン基板の表面の残留物(水酸化ナトリウム水溶液)を除去した。そして、25℃の3重量%塩酸水溶液(単に、塩酸とも言う)にシリコン基板を浸漬させ、この塩酸中で1分間保持し、シリコン基板の表面のアルカリ分を中和した。塩酸中から引上げたシリコン基板を速やかに水洗槽2に浸漬させ、その後水洗槽3に浸漬することで、シリコン基板の表面の残留物(塩酸)を略完全に除去できた。
この水洗処理にてシリコン基板の表面の残留物を完全に除去した後、水洗槽3よりシリコン基板を引き上げ、水切れを良くするため、温水を貯留した温水槽に浸漬させた。温水槽に浸漬させたシリコン基板を再び引き上げ、速やかに有機溶媒を貯留した有機溶媒槽に更に浸漬させた後これを引き上げ、乾燥機に投入してシリコン基板を乾燥させた。これにより、乾燥時にシリコン基板の表面に発生する可能性のある水シミの発生を抑制することができる。
【0027】
ここで、前記した実施例、比較例1、及び比較例2でそれぞれ製造したシリコン基板の反射率と波長との関係を図4に示す。なお、地上に届く太陽光スペクトルは、約300〜2500nmの波長の光であるが、この中でシリコン基板を使用した太陽電池に有効なスペクトルは、約300〜1200nmの波長の光である。
図4から明らかなように、実施例のエッチング方法によって得られたシリコン基板は、太陽光スペクトルの中でも、可視光の領域(波長が380〜800nm程度)において、比較例1(混酸水溶液Aのみの処理品)及び比較例2(アルカリ処理品)に比べ、反射率が低減している。
即ち、本実施例を使用して製造したシリコン基板を用いることにより、従来の方法で製造したシリコン基板と比較して、光閉じ込め効果の高い高効率の太陽電池を製造できることが分かる。
【0028】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明のシリコン基板のエッチング方法を構成する場合にも本発明は適用される。
【0029】
【発明の効果】
請求項1〜8記載のシリコン基板のエッチング方法においては、第1工程のエッチング処理によって未処理のシリコン基板の表層部に凹凸部を形成でき、第2工程のエッチング処理によってこの凹凸部に更に微小突起を形成できる。これにより、反射率を低減したシリコン基板を、量産性が高く、しかも安定した方法で製造できる。従って、このシリコン基板を、例えば太陽電池用シリコン基板として使用することで、従来よりも高効率な太陽電池を提供できるので、経済的である。
特に、請求項2及び3記載のシリコン基板のエッチング方法においては、混酸水溶液に酢酸を添加するので、シリコン基板のエッチングレートをコントロールできる。これにより、シリコン基板のエッチング処理を効率的に、しかも安定に行うことができるので、安定な品質を備えたシリコン基板を製造できる。
【0030】
請求項4及び5記載のシリコン基板のエッチング方法においては、混酸水溶液にノニオン系界面活性剤を添加するので、シリコン基板のエッチングレートをコントロールできると共に、シリコン基板の表層部に形成する凹凸部、更に凹凸部に形成する微小突起を、シリコン基板の全体に渡って略均一に形成できる。このように、シリコン基板のエッチング処理を効率的に行うことができるので、作業性が良好であると共に、シリコン基板の全体に渡って略均一に行うことができるので、シリコン基板の反射率を更に低減できる。従って、このシリコン基板を太陽電池用シリコン基板として使用することで、効率が良い太陽電池を製造できる。請求項6記載のシリコン基板のエッチング方法においては、ノニオン系界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのいずれか一方又は双方を使用するので、シリコン基板の表層部に形成する凹凸部、また凹凸部に形成する微小突起を、シリコン基板の全体に渡ってそれぞれ均一に形成し、製造したシリコン基板の反射率を更に低減できる。従って、このシリコン基板を太陽電池用シリコン基板として使用することで、更に効率が良い太陽電池を製造できる。
【0031】
請求項7記載のシリコン基板のエッチング方法においては、例えば未処理のシリコン基板の表面に付着した油脂等を予め除去できるので、第1工程でのエッチング処理をシリコン基板の表層部の全体に渡って略均一にできる。従って、シリコン基板の表層部に形成する凹凸部を、シリコン基板の全体に渡ってそれぞれ均一に形成できるので、製造したシリコン基板の品質を更に向上できる。
また、未処理のシリコン基板表面の付着物等が、このシリコン基板と共に混酸水溶液A内に浸入することを予め防止できるので、付着物による混酸水溶液Aの汚染を抑制でき、混酸水溶液Aのランニングコストを低減でき経済的である。
請求項8記載のシリコン基板のエッチング方法においては、第1工程で使用した混酸水溶液Aが、混酸水溶液B内に浸入することを予め防止できるので、混酸水溶液B中のフッ酸量及び硝酸量の変化を防止できる。これにより、混酸水溶液Aによる混酸水溶液Bの汚染を抑制できるので、混酸水溶液Bを長期間使用でき経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係るシリコン基板のエッチング方法の説明図である。
【図2】比較例1のシリコン基板のエッチング方法の説明図である。
【図3】比較例2のシリコン基板のエッチング方法の説明図である。
【図4】実施例に係るシリコン基板の反射率の説明図である。
【符号の説明】
10:基板ホルダー

Claims (8)

  1. フッ酸36重量%以上42重量%未満及び硝酸6重量%以上10重量%以下を含む混酸水溶液Aに未処理のシリコン基板を浸漬しエッチング処理する第1工程と、
    前記第1工程でエッチング処理したシリコン基板を、フッ酸42重量%以上46重量%以下及び硝酸2重量%以上6重量%未満を含む混酸水溶液Bに浸漬して更にエッチング処理する第2工程とを有することを特徴とするシリコン基板のエッチング方法。
  2. 請求項1記載のシリコン基板のエッチング方法において、前記混酸水溶液Aには酢酸が1重量%以上10重量%以下添加されていることを特徴とするシリコン基板のエッチング方法。
  3. 請求項1及び2のいずれか1項に記載のシリコン基板のエッチング方法において、前記混酸水溶液Bには酢酸が1重量%以上5重量%以下添加されていることを特徴とするシリコン基板のエッチング方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコン基板のエッチング方法において、前記混酸水溶液Aにはノニオン系界面活性剤が0.1重量%以上1.5重量%以下添加されていることを特徴とするシリコン基板のエッチング方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコン基板のエッチング方法において、前記混酸水溶液Bにはノニオン系界面活性剤が0.1重量%以上1.5重量%以下添加されていることを特徴とするシリコン基板のエッチング方法。
  6. 請求項4及び5のいずれか1項に記載のシリコン基板のエッチング方法において、使用したノニオン系界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのいずれか一方又は双方であることを特徴とするシリコン基板のエッチング方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリコン基板のエッチング方法において、前記第1工程の前に、前記未処理のシリコン基板を脱脂処理することを特徴とするシリコン基板のエッチング方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリコン基板のエッチング方法において、前記第1工程のエッチング処理を行ったシリコン基板を水洗処理した後、前記第2工程のエッチング処理を行うことを特徴とするシリコン基板のエッチング方法。
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