JP7446509B1 - 電気化学式ガスセンサ、電気化学式ガス測定方法 - Google Patents

電気化学式ガスセンサ、電気化学式ガス測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】長期間にわたって、安定かつ高応答の出力特性を得る。【解決手段】電気化学式ガスセンサ10は、電解液が収容されるケーシング11と、電解液が介在するように配置される陽極30及び陰極35を備える。陽極30には、鉄または鉄の合金を含有させるようにし、電解液には、塩化物及び硫酸塩の少なくともいずれかを含めるようにした。【選択図】図1

Description

本発明は、電気化学式ガスセンサ等に関する。
ガルバニ電池式ガスセンサ等の電気化学式ガスセンサは、例えば、ケーシング内に貯留される電解液を介して陽極及び陰極を配置しておき、測定対象となるガスが陰極で還元される際に電極間に流れる電流を、陽極及び陰極の各々に接続されるリード部材を介して検出する。この種の電気化学式ガスセンサは、簡素な構成であり、かつ、常温作動が可能という利点を有することから、例えば、酸欠状態のチェックするための酸素センサ等で使用されている。
陽極材料は、長年、鉛(Pb)を使用してきている。一方、鉛(Pb)のような有害物質の使用を回避するため、鉛(Pb)以外の陽極を用いた電気化学式センサ、例えば、スズまたはスズの合金を陽極に用いた電気化学式ガスセンサも提案されている(特許文献1参照)。
特許第6985533号
この種の電気化学式ガスセンサは、陰極で対象ガスが還元されると同時に、陽極の金属が電解液に溶け出すので、経時的に、電解液中の陽極の金属塩または金属水酸化物の濃度が上昇する。本発明者らの未公知の研究によると、例えば陽極にスズ(Sn)を採用する際、電解液中のスズイオン(スズ塩またはスズ水酸化物)濃度が上昇すると、電気化学式ガスセンサにおけるガス濃度の指示値(出力値)が低下したり、ガス濃度の変化に対する電気化学式ガスセンサの出力応答速度が低下したりする現象が発生することが明らかとなった。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、鉛(Pb)やスズ(Sn)を陽極表面の主成分として用いることなく、長期間にわたって、安定かつ高応答の出力特性が得られる電気化学式ガスセンサ等を提供することにある。
上記目的を達成する本発明は、電解液が収容されるケーシング、および、前記電解液が介在するように配置される陽極及び陰極を備える電気化学式ガスセンサであって、前記陽極は、鉄または鉄の合金を含有しており、前記電解液は、塩化物及び硫酸塩の少なくともいずれかを含有することを特徴とする電気化学式ガスセンサである。
上記電気化学式ガスセンサに関連して、前記電解液は、少なくとも炭酸塩及び炭酸水素塩のいずれかを含有することを特徴としてもよい。
上記電気化学式ガスセンサに関連して、前記電解液は、塩化カリウム及び硫酸カリウムの少なくともいずれかを含有することを特徴としてもよい。
上記電気化学式ガスセンサに関連して、前記電解液が、炭酸水素カリウムを含有することを特徴としてもよい。
上記電気化学式ガスセンサに関連して、前記電解液に含有させる前記塩化物及び前記硫酸塩の少なくともいずれかは、0℃で析出しない濃度に設定されることを特徴としてもよい。
上記目的を達成する本発明は、ケーシングに電解液を収容し、前記電解液が介在するように陽極及び陰極を配置し、前記陽極に鉄または鉄の合金を含有させると共に、前記電解液に塩化物及び硫酸塩の少なくともいずれかを含有させ、対象ガスを前記陰極で還元することで、前記陽極及び前記陰極の間に流れる電流によって前記対象ガスを検知し、前記陽極の表面に形成される前記鉄を含む被膜を、前記電解液中の前記塩化物及び前記硫酸塩の少なくともいずれかで除去することを特徴とする電気化学式ガス測定方法である。
本発明の電気化学式ガスセンサ等によれば、汎用材料である鉄又は鉄合金を陽極に採用しつつも、長期間にわたって、安定かつ高応答の出力特性を得ることができる。
本発明の実施形態にかかる電気化学式ガスセンサの一構成例を示す断面図である。 実施例1~実施例4、および、比較例1、2の電気化学式ガスセンサを用いた第1検証結果となる、酸素指示値の経日変化を示すグラフである。 実施例5、6の電気化学式ガスセンサを用いた第2検証結果となる、二酸化炭素による酸素指示値の時間変化を示すグラフである。 実施例7の電気化学式ガスセンサを用いた第3検証結果となる、雰囲気酸素濃度変化に対応する酸素指示値出力を示す図表及びグラフである。 実施例7の電気化学式ガスセンサを用いた第4検証結果となる、雰囲気酸素濃度変化に対応する応答特性を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1に、本発明の実施形態の電気化学式ガスセンサ10となるガルバニ電池式ガスセンサの全体構成を示す。
電気化学式ガスセンサ10は、例えば酸素を検知対象ガスとするものであって、全体が略円柱型の容器となるケーシング11と、ケーシング11内に保持される電解液と、ケーシング11に形成されるガス取込口22に配置される陰極35と、ケーシング11内に配置される陽極30と、電流・電圧変換回路基板90を有する。なお、説明の便宜上、ケーシング11の中心軸方向におけるガス導入孔12B側を「前面側」、それと反対側を「後面側」と定義する。
(ケーシング)
ケーシング11は、略有底の円筒形状となる本体12と、本体12の前面側に装着される前面キャップ13を備える。本体12、前面キャップ13、例えばABS樹脂などの樹脂材料で構成される。
本体12は、円筒形状の周壁12C、周壁12Cの後面側を覆う後面12G、及び、周壁12Cの前面側を覆う前面12Aを一体的に有する。これらにより、本体12内に電解液が収容される電解液収容空間Sが形成される。後面12Gには、電解液充填孔12Fが形成される。電解液充填孔12Fは、電解液収容空間Sに電解液を充填した後、ボルト栓110によって封止される。また、周壁12Cには、調圧孔12Eが形成されており、この調圧孔12Eが、撥水性を有する圧気膜(圧力調整膜)57で塞がれる。なお、前面キャップ13は、本体12の前面12Aにねじ120によって固定される。前面12Aの中央には、ガス導入孔12Bが形成される。この圧気膜57は、例えば軟質塩化ビニル樹脂により構成されており、その周縁部が例えば超音波溶着により、周壁12Cに固定される。
ガス導入孔12Bにおける前面側には、リング状の段差が形成されており、この段差を利用して、ガス導入孔12Bを覆う姿勢で陰極35が配置される。また、陰極35の全面側には、撥水性を有するガス透過性隔膜55が配置される。ガス透過性隔膜55により、ガス導入孔12Bが液密に封止されることで電解液の漏出が抑止され、同時に、気体のみ陰極35に到達できる。具体的にガス透過性隔膜55は、前面12Aにおける更に前面側において、ガス導入孔12Bよりも広範囲を覆っており、前面キャップ13と本体12の前面12Aの間に挟持される。この際、リング状のシール部材16によって、ガス透過性隔膜55を、ガス導入孔12Bの周縁に押し付ける。ガス透過性隔膜55は、測定対象となる酸素を選択的に透過させ、かつその透過量を電池反応に見合うように制限する役割となり、例えばFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂により構成されている。ガス透過性隔膜55の厚みは、例えば13~25μmである。
前面キャップ13は、中央部に蓋側ガス導入用貫通孔13Bが形成されており、ケーシング11のガス導入孔12Bと連通されることで、ガス取込口22を構成する。ここでは、この前面キャップ13が、ねじ120によって本体12に固定される場合を例示しているが、それ以外にも、カシメによる係合等によって固定されてもよい。前面キャップ13は、リング状のシール部材16を介して、ガス透過性隔膜55及び陰極35を、本体12の前面12Aに押し付けられる。結果、電解液収容空間Sの前面側の液密性を確保する。
本体12の後面12Gの外側には、凹状の封止空間12Hが形成される。この封止空間12Hは、組み立て工程において樹脂(接着剤を含む)が充填されて封止される。この封止構造により、電解液収容空間Sにおける後面側が液密環境となる。
(陰極)
陰極35は、前面側が測定対象となるガスと接し、裏面側が電解液と接する円板形状の金属部材となる。陰極35は、少なくとも電極表面が、酸素の還元によって電流が生じ得る構造であれば特に限定されない。例えば、電極表面には、金、銀、白金、チタンなどの金属が好適に採用される。
本実施形態において、陰極35は、ステンレス鋼よりなる金属基材の表面に金が付着(メッキ)されたものを用いる。陰極35は、外方(前面側)に向かって凸形状とすることで、内圧変動による変形量を抑制している。陰極35には、陰極用配線となる陰極リード部材42の一端が接続される。陰極リード部材42は、電解液収容空間Sを通過して、本体12の後面12Gに達する。更に陰極リード部材42は、後面12Gを貫通して封止空間12Hを通過するように配置され、その終端に端子90Bが設けられる。陰極リード部材42における端子90Bの近傍は、封止空間12H内に配置される電流・電圧変換回路基板90の陰極側入力端子(図示省略)に接続される。結果、陰極リード部材42の終端近傍は、封止空間12Hに充填される樹脂に埋め込まれるが、終端の端子90Bが外部に露出される。陰極リード部材42は、電解液に触れても反応しない材料、例えば、少なくとも表面が金、銀、白金等の貴金属となる金属素線が採用される。本実施形態では、ステンレス鋼の線材の表面に金(Au)をメッキしたものを採用する。
(陽極)
電解液収容空間S内に配置される陽極30は、柱状の金属部材となる。陽極30は、少なくとも電解液と接触する表面が、鉄(Fe)又は鉄の合金によって構成される。特に本実施形態では、99.9%の純度となる純鉄を用いている。なお、鉄合金を採用する場合は、例えば、Fe-C-Cu-Ni系合金などが例示される。
本体12の後面12Gには、陽極支持部28が形成される。陽極支持部28は、例えば、後面12Gを貫通して封止空間12Hと連通する貫通孔となる。この貫通孔に、柱状の陽極30が嵌り合うことで、陽極30の一部(後面側)が、封止空間12Hに突出する。この封止空間12Hが樹脂で充填されることで、陽極30が陽極支持部28に固定される。
封止空間12Hに突出する陽極30の一部(後面側)には、陽極用配線となる陽極リード部材48が設けられる。陽極30が陽極支持部28に保持される姿勢において、陽極リード部材48の一端と陽極30が互いに溶接されることで、両者が電気的に接続される。陽極リード部材48は、封止空間12Hを通過するように配置され、その終端に端子90Aが設けられる。陽極リード部材48の端子90Aの近傍は、封止空間12H内に配置される電流・電圧変換回路基板90の陽極側入力端子(図示省略)に接続される。結果、陽極リード部材48の終端近傍は、封止空間12Hに充填される樹脂に埋め込まれるが、終端の端子90Aは外部に露出される。陽極リード部材48は、例えばステンレス鋼よりなる金属素線が採用される。なお、陽極リード部材48が、電解液に触れる配線構造の場合、例えば、少なくとも表面が金、銀、白金等の貴金属となる金属素線が採用される。
(電流・電圧変換回路基板)
電流・電圧変換回路基板90は、陰極35と陽極30の間に流れる電流を電圧に変換する変換回路を備える。変換回路は、例えば、陰極35と陽極30の間に、抵抗および温度補償用サーミスタ等が直列配置される構造となる。電圧出力は、電流・電圧変換回路基板90に形成される一対の端子90A、端子90Bから出力される。なお、電圧出力が検知できる態様であれば、端子90Aと端子90Bのいずれかは、陰極リード部材42・陽極リード部材48そのものであっても良い。
電流・電圧変換回路基板90は、封止空間12H内における陰極リード部材42と陽極リード部材48の間に配置される。従って、封止空間12Hに樹脂が充填されると、陽極リード部材48・陰極リード部材42の一部、及び、電流・電圧変換回路基板90が樹脂内に埋設される。
なお、ここでは特に図示しないが、ケーシング11及び電流・電圧変換回路基板90を、金属製の外装体に収容させることができる。この外装体を、互いに電気的に絶縁される第一の外装体と第二の外装体に分割しておき、第一の外装体に一方の端子90Aを接続し、第二の外装体に他方の端子90Bを接続すれば、外装体自体を電極端子にできる。
(電解液)
電解液は、塩化物及び硫酸塩の少なくともいずれか(以下、これらを「被膜抑制物質」と称する)を含む水溶液を用いる。塩化物としては、例えば、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カルシウム、塩化セシウム、塩化ストロンチウム、塩化鉄、塩化バリウム、塩化マグネシウムなどを採用できる。硫酸塩としては、硫酸カリウム(KSO)、硫酸ナトリウムなどを採用できる。なお、本実施形態では、被膜抑制物質として、塩化カリウム(KCl)又は硫酸カリウム(KSO)を採用している。
水溶液に含有される被膜抑制物質の濃度は、0℃において、被膜抑制物質が析出しない濃度に設定されることが好ましい。換言すると、電解液は、0℃における溶解度に到達しない量の被膜抑制物質を含有させることが好ましい。なお、塩化カリウム(KCl)の0℃における溶解度は、3.728mol/Lとなることから、これ以下の濃度に設定すればよい。なお、詳細は後述するが、電解液に凍結防止剤を含有させないことが好ましいことから、そもそも0℃未満になると、電解液が凍結して測定不能になる。結果、電気化学式ガスセンサ10の使用推奨温度帯域の下限値は0℃以上に設定されることになり、その安全側をとって、含有濃度の上限を画定する基準温度を0℃に設定している。
被膜抑制物質は、水溶液中において、塩化物イオン(Cl)、硫酸イオン(SO 2-)を生じさせ、これらの反応性の高さによって、陽極30の表面に被膜が形成されるのを抑制する役割を担う。この「抑制」とは、陽極30の表面に形成された被膜を破壊する概念も含む。なお、陽極30の表面に形成され得る被膜は、例えば、鉄の酸化物(黒錆)や水酸化物等による不働態被膜(不働態薄膜)であり、不溶性且つ絶縁性を有することが多い。結果、この被膜を放置すると、陽極30におけるアノードとしての機能低下を招く。従って、本電気化学式ガスセンサ10では、被膜抑制物質による被膜抑制効果を長期間に亘って安定して発揮させるために、被膜抑制物質の濃度は0.1mol/L以上に設定されることが好ましい。
電解液は、炭酸塩及び炭酸水素塩の少なくともいずれかを更に含むことが好ましい。炭酸塩としては、例えば炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどを採用できる。炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素カリウム(KHCO)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)などを採用できる。電解液に、炭酸塩または炭酸水素塩を含有させておくことで、仮に、電解液に対して、雰囲気中の二酸化炭素が溶け込んだとしても、センサ出力の変動を緩和させることができる。
また電解液は、凍結防止剤(例えばエチレングリコール)を含有しないことが好ましい。本発発明者らの検証により、凍結防止剤を含有させると、被膜抑制物質による被膜抑制効果が低減することが明らかとなっている。凍結防止剤を含有させない結果として、電気化学式ガスセンサ10の使用推奨温度帯域の下限値は0℃以上に設定されることが好ましい。なお、電気化学式ガスセンサ10の使用推奨温度帯域の上限値は、例えば40℃以下に設定されることが好ましい。
<推定作用>
本実施形態の電気化学式ガスセンサ10において、ガス取込口22及びガス透過性隔膜55を通過した酸素は陰極35で還元され、電解液を介して陽極30との間で次のような電気化学反応を起こす。
・陰極反応:O+2HO+4e→4OH
・陽極反応:2Fe→2Fe2++4e
この電気化学反応によって、陽極30と陰極35の間には、酸素濃度に応じた電流が発生する。この電流(電子)は、陽極30から陽極リード部材48を経て電解液収容空間Sの外部に導かれ、電流・電圧変換回路基板90における抵抗および温度補償用サーミスタを経由して、陰極リード部材42及び陰極35に流れる。電流・電圧変換回路基板90では、電流が電圧信号に変換されて端子90Aと端子90B間に、センサ出力となる電圧信号が出力される。この電圧信号を、周知の方法で酸素濃度に変換することで、酸素濃度指示値(%)となる。
この際、陽極30の表面に、黒錆(Fe)や水酸化鉄等の不溶性且つ絶縁性の被膜が形成されてしまうと、この被膜によって上記陽極反応が阻害されて、電圧信号の劣化が生じる恐れがある。そこで本実施形態では、電解液に、被膜抑制物質を含有させることで、この被膜形成を抑制(破壊)しており、長期間(例えば1年以上)に亘って、電圧信号の劣化を低減する。
<実施例1>
陰極35が金メッキ、陽極30が純鉄となり、電解液が濃度3mol/Lの塩化カリウム(KCl)を含有する水溶液となる本実施形態の電気化学式ガスセンサ10を用意した。
<実施例2>
陰極35が金メッキ、陽極30が純鉄となり、電解液が、濃度0.5mol/Lの硫酸カリウム(KSO)を含有する水溶液となる本実施形態の電気化学式ガスセンサ10を用意した。
<実施例3>
陰極35が金メッキ、陽極30が純鉄となり、電解液が、濃度3mol/Lの塩化カリウム(KCl)及び濃度0.5mol/Lの炭酸水素カリウム(KHCO)を含有する水溶液となる本実施形態の電気化学式ガスセンサ10を用意した。
<実施例4>
陰極35が金メッキ、陽極30が炭素、銅及びニッケルを含有する鉄合金(SMF5030)となり、電解液が、濃度3mol/Lの塩化カリウム(KCl)及び濃度0.5mol/Lの炭酸水素カリウム(KHCO)を含有する水溶液となる本実施形態の電気化学式ガスセンサ10を用意した。
<比較例1>
陰極35が金メッキ、陽極30が純鉄となり、電解液が、濃度5mol/Lのヨウ化カリウム(KI)を含有する水溶液となる電気化学式ガスセンサ10を用意した。なお、電解液を除き、実施例1と同一構造の電気化学式ガスセンサ10を採用した。
<比較例2>
陰極35が金メッキ、陽極30が純鉄となり、電解液が、濃度1mol/Lの硝酸カリウム(KNO)を含有する水溶液となる電気化学式ガスセンサ10を用意した。なお、電解液を除き、実施例1と同一構造の電気化学式ガスセンサ10を採用した。
(第1検証)
実施例1~4及び比較例1、2の電気化学式ガスセンサについて、空気雰囲気における酸素濃度(酸素指示値)が、経過日数によってどのように変化するかを測定した。この結果を図2に示す。実施例1~4の電気化学式ガスセンサ10は、日数を経ても、酸素指示値が安定した。一方、比較例1の電気化学式ガスセンサは、約5日経過~約30日経過までの間は、酸素指示値が初期値よりも数%増えてしまい、更に、約30日経過以降は酸素指示値が初期値よりも低下し始め、約60日経過すると5%程度低下した。比較例2の電気化学式ガスセンサは、検証開始直後から酸素指示値が低下し始め、約30日経過すると約3%程度低下した。
<実施例5>
陰極35が金メッキ、陽極30が純鉄となり、電解液が、濃度1mol/Lの塩化カリウム(KCl)を含有する水溶液となる本実施形態の電気化学式ガスセンサ10を用意した。
<実施例6>
陰極35が金メッキ、陽極30が純鉄となり、電解液が、濃度1mol/Lの塩化カリウム(KCl)及び濃度0.5mol/Lの炭酸水素カリウム(KHCO)を含有する水溶液となる本実施形態の電気化学式ガスセンサ10を用意した。
(第2検証)
実施例5、6の電気化学式ガスセンサについて、空気雰囲気(酸素指示値約21%)中に配置してから、電気化学式ガスセンサのガス取込口22に、純粋二酸化炭素(CO)を連続的に供給して、その酸素指示値の時間変化を測定した。この結果を図3に示す。実施例5の電気化学式ガスセンサ10は、約5時間経過すると酸素指示値が約0%から上昇し始めた。更に約10時間経過すると酸素指示値が4%に達し、その後、緩やかに下降して約30時間経過したところで約0%に戻った。一方、実施例6の電気化学式ガスセンサは、測定開始から60時間経過するまで、酸素指示値が約0%近傍で安定した。つまり、実施例6のように、電解液にあらかじめ炭酸イオンを生じさせる炭酸塩又は炭酸水素塩を含有させておくと、測定中において、雰囲気中の二酸化炭素が電解液に溶け込んだとしても、酸素指示値の出力変動を抑制できることがわかる。
<実施例7及び第3検証>
陰極35が金メッキ、陽極30が純鉄となり、電解液が、濃度3mol/Lの塩化カリウム(KCl)及び濃度0.2mol/Lの炭酸水素カリウム(KHCO)を含有する水溶液となる本実施形態の電気化学式ガスセンサ10を5個(管理番号A~E)用意した。これらの電気化学式ガスセンサ10について、酸素濃度が20.9%、16.7%、12.4%、8.3%、4.1%、0.0%となる各雰囲気環境に配置して、酸素指示値の出力を測定した。その結果を図4に示す。全ての電気化学式ガスセンサ10は、雰囲気酸素濃度に対応する酸素指示値が略正確に出力された。更に、5個の電気化学式ガスセンサ10の出力値の相互のばらつきも極めて小さくなった。
<第4検証>
実施例7の5個(管理番号A~E)の電気化学式ガスセンサ10を利用し、空気雰囲気中(酸素指示値約21%)に配置して測定開始から3分経過後に、窒素雰囲気(窒素100%、酸素0%)に切り替え、測定開始から6分経過後に、再び、空気雰囲気中(酸素指示値約21%)に切り替えた際の、酸素指示値の出力変化を測定した。その結果を図5に示す。5個(管理番号A~E)の全ての電気化学式ガスセンサ10について、空気雰囲気から窒素雰囲気に切り替えた時の応答速度が極めて速く、また、窒素雰囲気から空気雰囲気に切り替えた時の応答速度も速くなった。また、5個(管理番号A~E)の全ての電気化学式ガスセンサ10同士の応答波形のばらつきも極めて小さくなった。
以上の検証の通り、本実施形態の電気化学式ガスセンサ10によれば、酸素指示値の精度及び応答特性について良好な状態を維持できることがわかる。
なお、本実施形態で示す電気化学式ガスセンサの構造は一例であり、本発明は他の構造であってもよい。さらにまた、本発明の電気化学式ガスセンサは、2つの電極を具えた構成(2極式)のものに限定されず、3つまたは4つの電極を具えた構成(3極式、4極式)のものであってもよい。
なお、本実施形態では、陽極支持部28として、本体12に貫通孔を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、陽極支持部28として、本体12の内部に凹部を形成しておき、この凹部に陽極30を嵌め合わせても良い。更に、陽極支持部28として、接着剤等の樹脂を利用して、本体12に陽極30を固定しても良い。更に、本変形例では、成型された本体12に対して、事後的に、陽極30を固定する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本体12を製造する際に、陽極30をインサート成型することで、このインサート成型構造によって、本体12に陽極30を保持させても良い。
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
10 電気化学式ガスセンサ
11 ケーシング
12 本体
12A 前面
12B ガス導入孔
12C 周壁
12G 後面
13 前面キャップ
13B 蓋側ガス導入用貫通孔
16 シール部材
22 ガス取込口
28 陽極支持部
30 陽極
35 陰極
42 陰極リード部材
48 陽極リード部材
55 ガス透過性隔膜
57 圧気膜
90 電流・電圧変換回路基板
90A 端子
90B 端子
S 電解液収容空間

Claims (5)

  1. 電解液が収容されるケーシング、および、前記電解液が介在するように配置される陽極及び陰極を備える電気化学式ガスセンサであって、
    前記陽極は、鉄または鉄の合金を含有しており、
    前記電解液は、塩化物及び硫酸塩の少なくともいずれかを含有し、
    前記電解液は、少なくとも炭酸塩及び炭酸水素塩のいずれかを含有することを特徴とする
    電気化学式ガスセンサ。
  2. 前記電解液は、塩化カリウム及び硫酸カリウムの少なくともいずれかを含有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学式ガスセンサ。
  3. 前記電解液が、炭酸水素カリウムを含有することを特徴とする請求項に記載の電気化学式ガスセンサ。
  4. 前記電解液に含有させる前記塩化物及び前記硫酸塩の少なくともいずれかは、0℃で析出しない濃度に設定されることを特徴とする、
    請求項1に記載の電気化学式ガスセンサ。
  5. ケーシングに電解液を収容し、
    前記電解液が介在するように陽極及び陰極を配置し、
    前記陽極に鉄または鉄の合金を含有させると共に、前記電解液に塩化物及び硫酸塩の少なくともいずれかを含有させるとともに前記電解液に、炭酸塩及び炭酸水素塩の少なくともいずれかを含有させ、
    対象ガスを前記陰極で還元することで、前記陽極及び前記陰極の間に流れる電流によって前記対象ガスを検知し、
    前記陽極の表面に形成される前記鉄を含む被膜を、前記電解液中の前記塩化物及び前記硫酸塩の少なくともいずれかで除去することを特徴とする
    電気化学式ガス測定方法。
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