JP7440691B1 - 電気化学式ガスセンサ、電気化学式ガス測定方法 - Google Patents

電気化学式ガスセンサ、電気化学式ガス測定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】長期間にわたって、安定かつ高応答の出力特性を得る。【解決手段】電気化学式ガスセンサ10は、電解液が収容されるケーシング11と、電解液が介在するように配置される陽極30及び陰極35を備える。陽極30には、スズまたはスズの合金を含有させるようにし、電解液には、スズ酸塩を含めるようにした。【選択図】図1

Description

本発明は、電気化学式ガスセンサ等に関する。
ガルバニ電池式ガスセンサ等の電気化学式ガスセンサは、例えば、ケーシング内に貯留される電解液を介して陽極及び陰極を配置しておき、測定対象となるガスが陰極で還元される際に電極間に流れる電流を、陽極及び陰極の各々に接続されるリード部材を介して検出する。この種の電気化学式ガスセンサは、簡素な構成であり、かつ、常温作動が可能という利点を有することから、例えば、酸欠状態のチェックするための酸素センサ等で使用されている。
陽極材料は、長年、鉛(Pb)を使用してきている。一方、鉛(Pb)のような有害物質の使用を回避するため、鉛(Pb)以外の陽極を用いた電気化学式センサ、例えば、スズまたはスズの合金を陽極に用いた電気化学式ガスセンサが提案されている(特許文献1参照)。
特許第6985533号
本発明者らの未公知の研究によると、陽極にスズ(Sn)を採用する際、電解液中のスズイオン(スズ塩またはスズ水酸化物)の濃度上昇に伴い、ガス濃度の変化に対する電気化学式ガスセンサの出力応答速度が低下する現象が発生することが明らかとなった。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、陽極表面の主成分にスズ(Sn)を用いる際に、長期間にわたって、高応答の出力特性が得られる電気化学式ガスセンサ等を提供することにある。
上記目的を達成する本発明は、電解液が収容されるケーシング、および、前記電解液が介在するように配置される陽極及び陰極を備える電気化学式ガスセンサであって、前記陽極は、スズまたはスズの合金を含有しており、前記電解液は、スズ酸塩を含有することを特徴とする電気化学式ガスセンサである。
上記電気化学式ガスセンサに関連して、前記電解液は、スズ酸カリウムを含有することを特徴としてもよい。
上記目的を達成する本発明は、ケーシングに電解液を収容し、前記電解液が介在するように陽極及び陰極を配置し、前記陽極にスズまたはスズの合金を含有させると共に、前記電解液にスズ酸塩を含有させ、対象ガスを前記陰極で還元することで、前記陽極及び前記陰極の間に流れる電流によって前記対象ガスを検知することを特徴とする電気化学式ガス測定方法である。
上記目的を達成する本発明は、電解液が収容されるケーシング、および、前記電解液が介在するように配置される陽極及び陰極を備える電気化学式ガスセンサであって、前記陽極は、スズまたはスズの合金を含有しており、前記電解液は、前記電解液に溶出する前記スズを酸化させる酸化剤を含有することを特徴とする、電気化学式ガスセンサである。
上記目的を達成する本発明は、ケーシングに電解液を収容し、前記電解液が介在するように陽極及び陰極を配置し、前記陽極にスズまたはスズの合金を含有させると共に、前記電解液に溶出する前記スズを酸化させる酸化剤を含有させ、対象ガスを前記陰極で還元することで、前記陽極及び前記陰極の間に流れる電流によって前記対象ガスを検知することを特徴とする、電気化学式ガス測定方法である。
本発明の電気化学式ガスセンサ等によれば、スズを陽極に採用しつつも、長期間にわたって、高応答の出力特性を得ることができる。
本発明の実施形態にかかる電気化学式ガスセンサの一構成例を示す断面図である。 (A)は、90%応答時間(秒)の定義を説明するグラフであり、(B)は実施例1および比較例1の電気化学式ガスセンサを用いた第1検証結果となる、雰囲気酸素濃度変化に対応する応答特性を示すグラフである。 実施例1および比較例1の電気化学式ガスセンサを用いた第2検証結果となる、雰囲気酸素濃度変化に対応する酸素指示値出力を示す図表及びグラフである。 (A)は実施例2および比較例2の電気化学式ガスセンサを用いた第3検証結果となる、雰囲気酸素濃度変化に対応する応答特性を示すグラフであり、(B)は実施例2および比較例2の電気化学式ガスセンサを用いた第4検証結果となる、雰囲気酸素濃度変化に対応する酸素指示値出力を示す図表及びグラフである。
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1に、本発明の実施形態の電気化学式ガスセンサ10となるガルバニ電池式ガスセンサの全体構成を示す。
電気化学式ガスセンサ10は、例えば酸素を検知対象ガスとするものであって、全体が略円柱型の容器となるケーシング11と、ケーシング11内に保持される電解液と、ケーシング11に形成されるガス取込口22に配置される陰極35と、ケーシング11内に配置される陽極30と、電流・電圧変換回路基板90を有する。なお、説明の便宜上、ケーシング11の中心軸方向におけるガス導入孔12B側を「前面側」、それと反対側を「後面側」と定義する。
(ケーシング)
ケーシング11は、略有底の円筒形状となる本体12と、本体12の前面側に装着される前面キャップ13を備える。本体12、前面キャップ13、例えばABS樹脂などの樹脂材料で構成される。
本体12は、円筒形状の周壁12C、周壁12Cの後面側を覆う後面12G、及び、周壁12Cの前面側を覆う前面12Aを一体的に有する。これらにより、本体12内に電解液が収容される電解液収容空間Sが形成される。後面12Gには、電解液充填孔12Fが形成される。電解液充填孔12Fは、電解液収容空間Sに電解液を充填した後、ボルト栓110によって封止される。また、周壁12Cには、調圧孔12Eが形成されており、この調圧孔12Eが、撥水性を有する圧気膜(圧力調整膜)57で塞がれる。なお、前面キャップ13は、本体12の前面12Aにねじ120によって固定される。前面12Aの中央には、ガス導入孔12Bが形成される。この圧気膜57は、例えば軟質塩化ビニル樹脂により構成されており、その周縁部が例えば超音波溶着により、周壁12Cに固定される。
ガス導入孔12Bにおける前面側には、リング状の段差が形成されており、この段差を利用して、ガス導入孔12Bを覆う姿勢で陰極35が配置される。また、陰極35の全面側には、撥水性を有するガス透過性隔膜55が配置される。ガス透過性隔膜55により、ガス導入孔12Bが液密に封止されることで電解液の漏出が抑止され、同時に、気体のみ陰極35に到達できる。具体的にガス透過性隔膜55は、前面12Aにおける更に前面側において、ガス導入孔12Bよりも広範囲を覆っており、前面キャップ13と本体12の前面12Aの間に挟持される。この際、リング状のシール部材16によって、ガス透過性隔膜55を、ガス導入孔12Bの周縁に押し付ける。ガス透過性隔膜55は、測定対象となる酸素を選択的に透過させ、かつその透過量を電池反応に見合うように制限する役割となり、例えばFEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂により構成されている。ガス透過性隔膜55の厚みは、例えば13~25μmである。
前面キャップ13は、中央部に蓋側ガス導入用貫通孔13Bが形成されており、ケーシング11のガス導入孔12Bと連通されることで、ガス取込口22を構成する。ここでは、この前面キャップ13が、ねじ120によって本体12に固定される場合を例示しているが、それ以外にも、カシメによる係合等によって固定されてもよい。前面キャップ13は、リング状のシール部材16を介して、ガス透過性隔膜55及び陰極35を、本体12の前面12Aに押し付けられる。結果、電解液収容空間Sの前面側の液密性を確保する。
本体12の後面12Gの外側には、凹状の封止空間12Hが形成される。この封止空間12Hは、組み立て工程において樹脂(接着剤を含む)が充填されて封止される。この封止構造により、電解液収容空間Sにおける後面側が液密環境となる。
(陰極)
陰極35は、前面側が測定対象となるガスと接し、裏面側が電解液と接する円板形状の金属部材となる。陰極35は、少なくとも電極表面が、酸素の還元によって電流が生じ得る構造であれば特に限定されない。例えば、電極表面には、金、銀、白金、チタンなどの金属が好適に採用される。
本実施形態において、陰極35は、ステンレス鋼よりなる金属基材の表面に金が付着(メッキ)されたものを用いる。陰極35は、外方(前面側)に向かって凸形状とすることで、内圧変動による変形量を抑制している。陰極35には、陰極用配線となる陰極リード部材42の一端が接続される。陰極リード部材42は、電解液収容空間Sを通過して、本体12の後面12Gに達する。更に陰極リード部材42は、後面12Gを貫通して封止空間12Hを通過するように配置され、その終端に端子90Bが設けられる。陰極リード部材42における端子90Bの近傍は、封止空間12H内に配置される電流・電圧変換回路基板90の陰極側入力端子(図示省略)に接続される。結果、陰極リード部材42の終端近傍は、封止空間12Hに充填される樹脂に埋め込まれるが、終端の端子90Bが外部に露出される。陰極リード部材42は、電解液に触れても反応しない材料、例えば、少なくとも表面が金、銀、白金等の貴金属となる金属素線が採用される。本実施形態では、ステンレス鋼の線材の表面に金(Au)をメッキしたものを採用する。
(陽極)
電解液収容空間S内に配置される陽極30は、柱状の金属部材となる。陽極30は、少なくとも電解液と接触する表面が、スズ(Sn)又はスズの合金によって構成される。特に本実施形態では純スズを用いている。なお、スズ合金を採用する場合は、例えば、一般的な鉛フリーはんだ材料(例:Sn-Ag-Cu、Sn-Ag、Sn-Ag-Bi-Cu-Ni、Sn-Ag-Bi-In、Sn-Ag-Cu-Bi-In、Sn-Ag-Cu-Bi-Ni、Sn-Ag-Cu-Ni、Sn-Ag-Cu-Sb、Sn-Ag-Ni-Co、Sn-Bi、Sn-Bi-Ag、Sn-Cu、Sn-Cu-Ni、Sn-Cu-Ni-P-Ge、 Sn-Sb、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Cu合金、Sn-Ag合金、)などを採用できる。
本体12の後面12Gには、陽極支持部28が形成される。陽極支持部28は、例えば、後面12Gを貫通して封止空間12Hと連通する貫通孔となる。この貫通孔に、柱状の陽極30が嵌り合うことで、陽極30の一部(後面側)が、封止空間12Hに突出する。この封止空間12Hが樹脂で充填されることで、陽極30が陽極支持部28に固定される。
封止空間12Hに突出する陽極30の一部(後面側)には、陽極用配線となる陽極リード部材48が設けられる。陽極30が陽極支持部28に保持される姿勢において、陽極リード部材48の一端と陽極30が互いに溶接されることで、両者が電気的に接続される。陽極リード部材48は、封止空間12Hを通過するように配置され、その終端に端子90Aが設けられる。陽極リード部材48の端子90Aの近傍は、封止空間12H内に配置される電流・電圧変換回路基板90の陽極側入力端子(図示省略)に接続される。結果、陽極リード部材48の終端近傍は、封止空間12Hに充填される樹脂に埋め込まれるが、終端の端子90Aは外部に露出される。陽極リード部材48は、例えばステンレス鋼よりなる金属素線が採用される。なお、陽極リード部材48が、電解液に触れる配線構造の場合、例えば、少なくとも表面が金、銀、白金等の貴金属となる金属素線が採用される。
(電流・電圧変換回路基板)
電流・電圧変換回路基板90は、陰極35と陽極30の間に流れる電流を電圧に変換する変換回路を備える。変換回路は、例えば、陰極35と陽極30の間に、抵抗および温度補償用サーミスタ等が直列配置される構造となる。電圧出力は、電流・電圧変換回路基板90に形成される一対の端子90A、端子90Bから出力される。なお、電圧出力が検知できる態様であれば、端子90Aと端子90Bのいずれかは、陰極リード部材42・陽極リード部材48そのものであっても良い。
電流・電圧変換回路基板90は、封止空間12H内における陰極リード部材42と陽極リード部材48の間に配置される。従って、封止空間12Hに樹脂が充填されると、陽極リード部材48・陰極リード部材42の一部、及び、電流・電圧変換回路基板90が樹脂内に埋設される。
なお、ここでは特に図示しないが、ケーシング11及び電流・電圧変換回路基板90を、金属製の外装体に収容させることができる。この外装体を、互いに電気的に絶縁される第一の外装体と第二の外装体に分割しておき、第一の外装体に一方の端子90Aを接続し、第二の外装体に他方の端子90Bを接続すれば、外装体自体を電極端子にできる。
(電解液)
電解液は、主成分となるアルカリ金属を含有する水溶液である。電解液は、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)や水酸化カリウム(KOH)等を含有しており、強アルカリ水溶液となる。本実施形態では、水酸化カリウム(KOH)を含有する。
電解液は、溶液として、水、及び、調湿効果及び/又は凍結抑止効果を有する液体物質(以下、調整液)を含有することが好ましい。本実実施形態では、調整液として、エチレングリコール(C)を含有させている。
本実施形態における電解液の主成分となる水酸化カリウムの濃度は、溶液(水及び調整液)に対するモル濃度として、1mol/L以上であることが好ましい。主成分の濃度は、溶液に対して、10mol/L以下であることが好ましい。
更に本実施形態の電解液は、スズ酸塩を含有する。スズ酸塩は、4価のスズを含む塩となる。なお、この「スズ酸塩」は、陽極30に含まれるスズから生成される物質ではなく、予め、電解液にスズ酸塩を含有させておくことを意味している。また、この「スズ酸塩」は、後述する電気化学反応によって電解液に溶出するスズを酸化させる酸化剤として機能すると推定される。スズ酸塩には、スズ酸カリウム(KSnO)、スズ酸ナトリウム(NaSnO)等が挙げられる。電解液に溶解させる物質としては、スズ酸カリウム三水和物(KSnO・3HO)、スズ酸ナトリウム三水和物(NaSnO・3HO)等になる。なお、本実施形態では、スズ酸カリウム三水和物を電解液に溶解させる。水溶液に含有されるスズ酸塩の濃度は特に問わない。例えば、溶液(水及び調整液)に対するモル濃度として、0.01mol/L以上が好ましく、望ましくは0.05mol/L以上とする。同様に、例えば1.0mol/L以下が好ましく、0.6mol/L以下とする。なお、本実施形態では0.2mol/Lとしている。
更に電解液は、界面活性剤を含有することが好ましい。本実施形態では、ポリオキシエチレン(19)オクチルフェニルエーテルを含有させている。
<作用>
本実施形態の電気化学式ガスセンサ10において、ガス取込口22及びガス透過性隔膜55を通過した酸素は陰極35で還元され、電解液を介して陽極30との間で次のような電気化学反応を起こす。
(電気化学反応)
・陰極反応:O+2HO+4e→4OH
・陽極反応:2Sn→2Sn2++4e
この電気化学反応によって、陽極30と陰極35の間には、酸素濃度に応じた電流が発生する。この電流(電子)は、陽極30から陽極リード部材48を経て電解液収容空間Sの外部に導かれ、電流・電圧変換回路基板90における抵抗および温度補償用サーミスタを経由して、陰極リード部材42及び陰極35に流れる。電流・電圧変換回路基板90では、電流が電圧信号に変換されて端子90Aと端子90B間に、センサ出力となる電圧信号が出力される。この電圧信号を、周知の方法で酸素濃度に変換することで、酸素濃度指示値(%)となる。
この際、陽極30からは、2価のスズイオン(Sn2+)が溶け出す。本発明らによる未公知の実証実験では、従来の電気化学式ガスセンサの場合、電解液中において2価のスズイオン(Sn2+)の溶出量が増えるにつれて、上記電気化学反応の応答速度性能が劣化する。ところが、本実施形態の電気化学式ガスセンサ10のように、電解液中にスズ酸塩を予め含有させておくと、4価のスズイオン(Sn4+)の存在によって、上記電気化学反応の応答速度性能の劣化が抑制される。
次に、電解液にスズ酸塩(4価のスズイオン)を予め含有させることによる推定作用について説明する。なお、以下の説明は、当発明者による推定であることから、事実と異なる可能性があることに留意されたい。
(スズ酸塩の作用に関する第一推定)
陽極30から溶け出した2価のスズイオン(Sn2+)或いは亜スズ酸イオン([Sn(OH) )自体が、上記電気化学反応の応答速度の劣化を誘引している可能性がある。そこで本実施形態では、電解液中に、酸化剤として機能しうるスズ酸塩を予め含有させておくようにする。4価のスズを有するスズ酸塩が、酸化剤(イオン価を変化させる物質)として機能し、陽極30から電解液中に溶け出した2価のスズイオン(Sn2+)或いは亜スズ酸イオン([Sn(OH) )のイオン価を、4価側に変位(酸化)させる。このイオン価の変位は、4価である必要はなく、2価超~4価以下の範囲内であればよい。結果、2価のスズイオンの濃度が減少し、上記電気化学反応の応答速度の劣化が抑制される。なお、本実施形態では、酸化剤としてスズ酸塩を採用する場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、スズイオン(Sn2+)或いは亜スズ酸イオン([Sn(OH) )のイオン価を、4価側に変位(酸化)させる機能があれば、他の酸化剤を採用できる。例えば、酸化剤としては硫酸塩などが代表的であり、具体的には硫酸銅(CuSO)などを用いてもよい。
(スズ酸塩の作用に関する第二推定)
陽極30から溶け出した2価のスズイオン(Sn2+)は、アルカリとなる電解液中において、2価のスズを含む亜スズ酸イオン([Sn(OH) )になる。この亜スズ酸イオンは、以下の通り、自分自身で酸化還元反応を生じさせようとする。
2・[Sn(OH) = Sn+[Sn(OH)2-
仮に、酸化還元反応が電解液中で積極的に生じると、電解液中にスズが析出すると同時に、4価のスズを含むスズ酸イオン([Sn(OH)2-)が生成される。この酸化還元反応自体、または、酸化還元反応によって析出するスズが、上記電気化学反応の応答速度の劣化を誘引する可能性がある。そこで本実施形態では、電解液中に、4価のスズを含むスズ酸塩を予め含有させておく。これにより、電解液中には、スズ酸イオン([Sn(OH)2-)が予め存在している状態となり、この緩衝作用によって、上記酸化還元反応自体が抑制される。結果、上記電気化学反応の応答速度の劣化が抑制される。
<実施例1>
陰極35が金メッキ、陽極30がスズとなり、電解液を以下の組成とした本実施形態の電気化学式ガスセンサ10を用意した。
(電解液組成)
スズ酸カリウム:0.2(mol/L)※1
水酸化カリウム:5.0(mol/L)※1
エチレングリコール:30(vol%)※2
界面活性剤:0.06(vol%)※3
※1:スズ酸カリウム及び水酸化カリウムのモル濃度は、溶媒(水+エチレングリコール)に対する濃度を意味する。
※2:エチレングリコールの体積比率は、溶媒(水+エチレングリコール)の全体積に占める体積比率を意味する。
※3:界面活性剤の添加率(vol%)は、水+エチレングリコール+スズ酸カリウム+水酸化カリウムの総体積を基準とした添加比率
<比較例1>
陰極35が金メッキ、陽極30がスズとなり、電解液を以下の組成とした比較例1の電気化学式ガスセンサを用意した。
(電解液組成)
スズ酸カリウム:0(mol/L)※1
水酸化カリウム:5.0(mol/L)※1
エチレングリコール:30(vol%)※2
界面活性剤:0.06(%)※3
※1:スズ酸カリウム及び水酸化カリウムのモル濃度は、溶媒(水+エチレングリコール)に対する濃度を意味する。
※2:エチレングリコールの体積比率は、溶媒(水+エチレングリコール)の全体積に占める体積比率を意味する。
※3:界面活性剤の添加率(vol%)は、水+エチレングリコール+スズ酸カリウム+水酸化カリウムの総体積を基準とした添加比率
(第1検証)
図2(A)に示すように、空気雰囲気中(酸素指示値約21%)の定常的な出力電圧A(mV)と、窒素雰囲気(窒素100%、酸素0%)の定常的な出力電圧B(mV)の差分値(A-B)(mV)を100%と定義し、空気雰囲気から窒素雰囲気に切り替えたタイミングから、その出力電圧(mV)が差分値の10%まで低下するまでの時間T90を「90%応答時間(秒)」と定義する。実施例1と比較例1の電気化学式ガスセンサを利用し、この90%応答時間(秒)が、経過日数でどのように変化するかを測定した結果を図2(B)に示す。実施例1の電気化学式ガスセンサ10は、経過日数が120日に到達するまで、90%応答時間(秒)が12秒~15秒程度で常に安定していることがわかる。一方、比較例1となる電気化学式ガスセンサは、初期の90%応答時間(秒)は12秒程度となるが、約10日経過すると15秒を超えるようになり、約25日経過すると20秒を超える。その後、120日に到達するまでの間、90%応答時間(秒)が20秒前後で推移する。
(第2検証)
実施例1及び比較例1の電気化学式ガスセンサについて、空気雰囲気における酸素濃度(酸素指示値)が、経過日数によってどのように変化するかを測定した。この結果を図3に示す。実施例1と比較例1の双方について、同程度に、酸素指示値が安定している。つまり、酸素指示値について、スズ酸カリウムは悪影響を生じさせないことがわかる。
<実施例2>
陰極35が金メッキ、陽極30がスズとなり、電解液を以下の組成とした本実施形態の電気化学式ガスセンサ10を用意した。
(電解液組成)
硫酸銅:0.2(mol/L)※1
水酸化カリウム:5.0(mol/L)※1
エチレングリコール:30(vol%)※2
界面活性剤:0.06(vol%)※3
※1:硫酸銅及び水酸化カリウムのモル濃度は、溶媒(水+エチレングリコール)に対する濃度を意味する。
※2:エチレングリコールの体積比率は、溶媒(水+エチレングリコール)の全体積に占める体積比率を意味する。
※3:界面活性剤の添加率(vol%)は、水+エチレングリコール+スズ酸カリウム+水酸化カリウムの総体積を基準とした添加比率
<比較例2>
陰極35が金メッキ、陽極30がスズとなり、電解液を以下の組成とした比較例2の電気化学式ガスセンサを用意した。
(電解液組成)
硫酸銅:0(mol/L)※1
水酸化カリウム:5.0(mol/L)※1
エチレングリコール:30(vol%)※2
界面活性剤:0.06(%)※3
※1:硫酸銅及び水酸化カリウムのモル濃度は、溶媒(水+エチレングリコール)に対する濃度を意味する。
※2:エチレングリコールの体積比率は、溶媒(水+エチレングリコール)の全体積に占める体積比率を意味する。
※3:界面活性剤の添加率(vol%)は、水+エチレングリコール+スズ酸カリウム+水酸化カリウムの総体積を基準とした添加比率
(第3検証)
実施例2と比較例2の電気化学式ガスセンサを利用し、90%応答時間(秒)が、経過日数でどのように変化するかを測定した結果を図4(A)に示す。実施例2の電気化学式ガスセンサ10は、経過日数が30日に到達しても、90%応答時間(秒)が12秒~15秒程度で常に安定していることがわかる。一方、比較例2となる電気化学式ガスセンサは、初期の90%応答時間(秒)は12秒程度となるが、約14日経過すると15秒を超えるようになり、約20日経過すると20秒を超える。
(第4検証)
実施例2及び比較例2の電気化学式ガスセンサについて、空気雰囲気における酸素濃度(酸素指示値)が、経過日数によってどのように変化するかを測定した。この結果を図4(B)に示す。実施例2と比較例2の双方について、同程度に、酸素指示値が安定している。つまり、酸素指示値について、硫酸銅は悪影響を生じさせないことがわかる。
以上の検証の通り、本実施形態の電気化学式ガスセンサ10によれば、経時的な応答速度の劣化がほとんど生じないことがわかる。
なお、本実施形態で示す電気化学式ガスセンサの構造は一例であり、本発明は他の構造であってもよい。さらにまた、本発明の電気化学式ガスセンサは、2つの電極を具えた構成(2極式)のものに限定されず、3つまたは4つの電極を具えた構成(3極式、4極式)のものであってもよい。
なお、本実施形態では、陽極支持部28として、本体12に貫通孔を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、陽極支持部28として、本体12の内部に凹部を形成しておき、この凹部に陽極30を嵌め合わせても良い。更に、陽極支持部28として、接着剤等の樹脂を利用して、本体12に陽極30を固定しても良い。更に、本変形例では、成型された本体12に対して、事後的に、陽極30を固定する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本体12を製造する際に、陽極30をインサート成型することで、このインサート成型構造によって、本体12に陽極30を保持させても良い。
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
10 電気化学式ガスセンサ
11 ケーシング
12 本体
12A 前面
12B ガス導入孔
12C 周壁
12G 後面
13 前面キャップ
13B 蓋側ガス導入用貫通孔
16 シール部材
22 ガス取込口
28 陽極支持部
30 陽極
35 陰極
42 陰極リード部材
48 陽極リード部材
55 ガス透過性隔膜
57 圧気膜
90 電流・電圧変換回路基板
90A 端子
90B 端子
S 電解液収容空間

Claims (5)

  1. 電解液が収容されるケーシング、および、前記電解液が介在するように配置される陽極及び陰極を備える電気化学式ガスセンサであって、
    前記陽極は、スズまたはスズの合金を含有しており、
    前記電解液は、スズ酸塩を含有することを特徴とする、
    電気化学式ガスセンサ。
  2. 前記電解液は、スズ酸カリウムを含有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学式ガスセンサ。
  3. ケーシングに電解液を収容し、
    前記電解液が介在するように陽極及び陰極を配置し、
    前記陽極にスズまたはスズの合金を含有させると共に、前記電解液にスズ酸塩を含有させ、
    対象ガスを前記陰極で還元することで、前記陽極及び前記陰極の間に流れる電流によって前記対象ガスを検知することを特徴とする、
    電気化学式ガス測定方法。
  4. 電解液が収容されるケーシング、および、前記電解液が介在するように配置される陽極及び陰極を備える電気化学式ガスセンサであって、
    前記陽極は、スズまたはスズの合金を含有しており、
    前記電解液は、前記電解液に溶出する前記スズを酸化させる酸化剤を含有することを特徴とする、
    電気化学式ガスセンサ。
  5. ケーシングに電解液を収容し、
    前記電解液が介在するように陽極及び陰極を配置し、
    前記陽極にスズまたはスズの合金を含有させると共に、前記電解液に溶出する前記スズを酸化させる酸化剤を含有させ、
    対象ガスを前記陰極で還元することで、前記陽極及び前記陰極の間に流れる電流によって前記対象ガスを検知することを特徴とする、
    電気化学式ガス測定方法。
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