JP7444783B2 - 装填体の製造方法、座席シート用のクッション材の製造方法、及び、装填体 - Google Patents

装填体の製造方法、座席シート用のクッション材の製造方法、及び、装填体 Download PDF

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Description

本発明は、装填体の製造方法、座席シート用のクッション材の製造方法、及び、装填体に関する。
本願は、2018年12月3日に、日本に出願された特願2018-226825号に基づく優先権を主張するものであり、その内容の全文をここに援用する。
従来より、クッション性のある多孔質構造体(例えば、ウレタンフォーム)は、例えば金型成形等において、化学反応により発泡させる工程を経て、製造されている(例えば、特許文献1)。
日本国特開2016-44292号公報
しかしながら、上述したように化学反応により発泡させる工程を経て多孔質構造体を製造する場合は、全体として、あるいは部分ごとに、該多孔質構造体の様々な特性を要求どおりに調整することが容易にはできない。そのため、座席シート用のクッション材の装填体として多孔質構造体を用いた場合に、装填体の特性を要求どおりに調整することが容易ではない。
本発明は、特性を容易に調整できる装填体を容易に得ることができる、装填体の製造方法、様々な要求特性に容易に対応できる座席シート用のクッション材を得ることができる、座席シート用のクッション材の製造方法、及び、特性を容易に調整できる装填体を、提供することを目的とする。
本発明の装填体の製造方法は、
シート本体と、前記シート本体に形成された穴部に装填されている装填体と、を備える、座席シート用のクッション材における、前記装填体の製造方法であって、
前記装填体は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成された、多孔質構造体であり、
前記装填体を、3Dプリンタを用いて造形する、造形ステップを含む。
本発明の座席シート用のクッション材の製造方法は、
シート本体と、前記シート本体に形成された穴部に装填されている装填体と、を備える、座席シート用のクッション材の製造方法であって、
前記装填体は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成された、多孔質構造体であり、
3Dプリンタを用いて前記装填体を造形する、造形ステップと、
前記造形ステップで得られた前記装填体を、前記シート本体に形成された穴部に装填する、装填ステップと、を含む。
本発明の装填体においては、
シート本体と、前記シート本体に形成された穴部に装填されており、少なくとも一部が前記シート本体と接着されている装填体と、を備える、座席シート用のクッション材における、前記装填体であって、
前記装填体は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成された、多孔質構造体であり、
前記装填体は、3Dプリンタを用いて造形されたものであると、好適である。
本発明によれば、特性を容易に調整できる装填体を容易に得ることができる、装填体の製造方法、様々な要求特性に容易に対応できる座席シート用のクッション材を得ることができる、座席シート用のクッション材の製造方法、及び、特性を容易に調整できる装填体を、提供することができる。
本発明の一実施形態に係る多孔質構造体の外観斜視図である。 図1の多孔質構造体の一部を、図3~図5のC矢印の方向から観たときの様子を示す、断面図である。 図1の多孔質構造体の一部を、図2、図4、図5のA矢印の方向から観たときの様子を示す、断面図である。 図1の多孔質構造体の骨格部を、図2、図3、図5のD矢印の方向から観たときの様子を示す、斜視図である。 図1の多孔質構造体の骨格部を、図3、図4のB矢印の方向から観たときの様子を示す、斜視図である。 図1の多孔質構造体の骨格部の単位部を、図2、図3、図5のD矢印の方向から観たときの様子を示す、斜視図である。 図6の多孔質構造体の骨格部の単位部の一部を拡大して観たときの様子を示す、斜視図である。 図6の多孔質構造体の骨格部の単位部を、図6のE矢印の方向から観たときの様子を示す、斜視図である。 図8と同じ図面であり、一部の符号や破線・鎖線のみが図8と異なる図面である。 図6の多孔質構造体の骨格部の単位部を、図6のF矢印の方向から観たときの様子を示す、斜視図である。 図10と同じ図面であり、一部の符号や破線・鎖線のみが図10と異なる図面である。 図12(a)は、外力が加わっていない状態における図2の多孔質構造体の骨部を示す斜視図であり、図12(b)は、外力が加わっている状態における図12(a)の骨部を示す斜視図である。 図9に対応する図面であり、本発明の第1変形例に係る多孔質構造体の骨格部を説明するための図面である。 図9に対応する図面であり、本発明の第2変形例に係る多孔質構造体の骨格部を説明するための図面である。 図9に対応する図面であり、本発明の第3変形例に係る多孔質構造体の骨格部を説明するための図面である。 本発明の一実施形態に係る多孔質構造体を備えた、座席シート用のクッション材を示す斜視図である。 図16の座席シート用のクッション材における、メインパッド部及びサイドパッド部を詳細に示す斜視図である 図17のメインパッド部における、シート本体を示す斜視図である。 図18のシート本体を示す上面図である。 図18のシート本体のA-A断面図である。 図18のシート本体のB-B断面図である。 図17のメインパッド部における装填体を示す斜視図である。 図22の多孔質構造体のC-C断面図である。 図22の多孔質構造体のD-D断面図である。 図22のメインパッド部における多孔質構造体の表皮部の変形例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る、座席シート用のクッション材の多孔質構造体の製造方法を説明するための図面である。 本発明の任意の実施形態に係る多孔質構造体を備えることができる座席シート用のクッション材の第1変形例を説明するための図面である。 図27の座席シート用のクッション材を説明するための図面である。 本発明の任意の実施形態に係る多孔質構造体を備えることができる座席シート用のクッション材の第2変形例を説明するための図面である。
以下、本発明に係る装填体の製造方法、座席シート用のクッション材の製造方法、及び、装填体の実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
また、図1~図11、図13~図15では、多孔質構造体の向きを理解しやすくするために、多孔質構造体に固定されたXYZ直交座標系の向きを表示している。
まず、図1~図12を参照しながら、本発明の一実施形態に係る多孔質構造体について説明する。
図1は、本実施形態に係る多孔質構造体1の外観斜視図である。図2~図5では、図1に示す多孔質構造体1のうち、直方体に切断された一部分を、それぞれ別々の角度から観ている。図2は、多孔質構造体1の当該部分における、ある1つの面を平面視しており、すなわち、多孔質構造体1の当該部分を、図3~図5のC矢印の方向(-X方向)から観ている。図3は、多孔質構造体1の当該部分における、図2での右側の面を平面視しており、すなわち、多孔質構造体1の当該部分を、図2、図4、図5のA矢印の方向(-Y方向)から観ている。図4は、多孔質構造体1の当該部分における、図2と同じ面を斜め上から観ており、すなわち、多孔質構造体1の当該部分を、図2、図3、図5のD矢印の方向から観ている。図5は、多孔質構造体1の当該部分における、図2及び図4とは逆側の面を斜め上から観ており、すなわち、多孔質構造体1の当該部分を、図3、図4のB矢印の方向から観ている。
本実施形態の多孔質構造体1は、3Dプリンタによって造形されたものである。3Dプリンタを用いて多孔質構造体を製造することにより、従来のように化学反応により発泡させる工程を経る場合に比べ、製造が簡単になり、かつ、所期したとおりの構成が得られる。また、今後の3Dプリンタの技術進歩により、将来的に、3Dプリンタによる製造を、より短時間かつ低コストで、実現できるようになることが期待できる。
図1に示す例では、多孔質構造体1の立体形状は、直方体である。しかし、多孔質構造体1の立体形状は、直方体に限られず、球体等の任意の形状であってよい。
多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されている。また、多孔質構造体1は、多孔質構造体1の骨格をなす骨格部2と、骨格部2によって区画された多数のセル孔Cと、骨格部2の外側の少なくとも一部に、複数のセル孔の少なくとも一部を塞ぐように、骨格部2と一体に形成され、外側の少なくとも一部が面とされた表皮部6と、を備えている。
骨格部2は、多孔質構造体1のほぼ全体にわたって存在しており、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されている。本例において、多孔質構造体1のうち、骨格部2及び表皮部6以外の部分は、空隙である。
ここで、「可撓性のある樹脂」とは、外力が加わると変形することができる樹脂を指しており、例えば、エラストマー系の樹脂が好適であり、ポリウレタンがより好適であり、軟質ポリウレタンがさらに好適である。ゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴムが挙げられる。多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されているので、外力の付加・解除に応じた圧縮・復元変形が可能であり、クッション性を有することができる。
なお、3Dプリンタによる製造のし易さの観点からは、多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂から構成されている場合のほうが、ゴムから構成されている場合よりも、好適である。
なお、多孔質構造体1を3Dプリンタを用いて製造する場合は、多孔質構造体1を構成する材料として、光硬化性ポリウレタン(特に紫外線硬化性ポリウレタン)を原料とする樹脂を使用することができる。光硬化性ポリウレタン(特に紫外線硬化性ポリウレタン)としては、ウレタンアクリレートもしくはウレタンメタクリレートを原料とする樹脂を使用することができる。このような樹脂としては、例えばUS4337130に記載されたものが挙げられる。
本実施形態の多孔質構造体1の骨格部2は、それぞれ立方体をなす複数の単位部Uどうしが、X、Y、Zの各方向に一体に連なった構成を有している。多孔質構造体1の骨格部2のうち、図2~図5に示す部分は、Z方向に3個、Y方向に3個、X方向に2個が配列された、計18個の単位部Uからなる。本例では、多孔質構造体1を構成する各単位部Uの構成、寸法、向きが、それぞれ同じである。便宜のため、図2~図5では、1つの単位部Uのみを、他の単位部Uよりも濃いグレー色で着色しているとともに、図1及び図2ではさらに、濃いグレー色で着色した単位部Uの外縁を、点線で示している。
本例のように、多孔質構造体1の各単位部Uの外縁(外輪郭)が立方体をなす場合、X-Y-Zそれぞれの方向に等しい機械特性を得ることが可能になる。
なお、単位部Uの外縁(外輪郭)は、立方体以外の直方体、あるいは、その他の形状をなしていてもよい。また、多孔質構造体1を構成する各単位部Uの構成及び/又は寸法は、完全に同一でなくてもよく、個々に少しずつ異なっていてもよい。多孔質構造体1の各単位部Uの外縁(外輪郭)が立方体以外の直方体をなす場合、多孔質構造体1の機能として、意図的な異方性を得ることが可能になる。例えば、多孔質構造体1を車両用シートパッドに適用する場合、各単位部Uの外縁(外輪郭)を立方体以外の直方体とすることで、例えばZ方向(人が座る方向)には柔らかくして乗り心地を向上させること可能になる。
図6~図11は、1つ単位部Uを単独で示している。図6は、単位部Uを、図3とほぼ同じ方向から観ており、すなわち、単位部Uを、図1~図3、図5のD矢印の方向から観ている。図7は、図6の一部を拡大して観ている。図8及び図9は、同じ図面であり、単位部Uにおける、図6と同じ側の部分を下側から観ており、すなわち、単位部Uを、図4、図6のE矢印の方向から観ている。図8及び図9は、図面の見易さのために、それぞれ異なる破線、鎖線を付けている点のみで異なる。図10及び図11は、同じ図面であり、単位部Uにおける、図6とは逆側の部分を上側から観ており、すなわち、単位部Uを、図5、図6のF矢印の方向から観ている。図10及び図11は、図面の見易さのために、それぞれ異なる破線、鎖線を付けている点のみで異なる。参考のため、図2~図5におけるA矢印、B矢印、C矢印を、図6、図8~図11にも示している。
図1~図11に示すように、多孔質構造体1の骨格部2は、複数の骨部2Bと、複数の結合部2Jと、から構成されており、骨格部2の全体が一体に構成されている。本例において、各骨部2Bは、それぞれ柱状に構成されており、また、本例では、それぞれ直線状に延在している。各結合部2Jは、それぞれ、互いに異なる方向に延在する複数(図の例では、2つ~6つ)の骨部2Bの延在方向の端部2Beどうしが互いに隣接する箇所で、これらの端部2Beどうしを結合している。
図7、図8、図10には、多孔質構造体1の一部分に、骨格部2の骨格線Oを示している。骨格部2の骨格線Oは、各骨部2Bの骨格線Oと、各結合部2Jの骨格線Oと、からなる。骨部2Bの骨格線Oは、骨部2Bの中心軸線であり、後述の骨一定部2B1の中心軸線と骨変化部2B2の中心軸線とからなる。結合部2Jの骨格線Oは、当該結合部2Jに結合された各骨部2Bの中心軸線をそれぞれ当該結合部2J内へ滑らかに延長させて互いに連結させてなる、延長線部分である。骨部2Bの中心軸線は、骨部2Bの延在方向の各点における、骨部2Bの延在方向に垂直な断面において骨部2Bのなす形状の重心点どうしを、結んでなる線である。
骨部2Bの延在方向は、骨部2Bの骨格線O(骨格線Oのうち、骨部2Bに対応する部分。以下同じ。)の延在方向である。
多孔質構造体1は、そのほぼ全体にわたって骨格部2を備えているので、通気性を確保しつつ、外力の付加・解除に応じた圧縮・復元変形が可能であるので、クッション材としての特性が良好になる。また、多孔質構造体1の構造がシンプルになり、3Dプリンタによる造形がしやすくなる。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち、一部又は全部の骨部2Bが、湾曲しながら延在してもよい。この場合、一部又は全部の骨部2Bが湾曲していることで、荷重の入力時において、骨部2Bひいては多孔質構造体1の急激な形状変化を防ぎ、局所的な座屈を抑制することができる。
また、各図面においては、骨格部2の各エッジ部分(互いに隣接する一対の面どうしが突き合う、辺部分)が角張っているが、骨格部2の各エッジ部分は、滑らかに湾曲していてもよい。
本例では、骨格部2を構成する各骨部2Bが、それぞれほぼ同じ形状及び長さを有している。ただし、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bの形状及び/又は長さは、それぞれ同じでなくてもよく、例えば、一部の骨部2Bの形状及び/又は長さが他の骨部2Bとは異なっていてもよい。この場合、骨格部2のうちの特定の部分の骨部2Bの形状及び/又は長さを他の部分とは異ならせることで、意図的に異なる機械特性を得ることができる。例えば、後述する図16の例のように、多孔質構造体1を車両用シートパッドに適用する場合、メインパッド部311の座面側(表面側)の部分は乗り心地向上のため柔らかくし、サイドパッド部312を構成する部分12はホールド感を得るため硬くする、といったことができる。
図12は、本例の骨部2Bを、単独で示している。図12(a)は骨部2Bに外力が加わっていない自然状態を示しており、図12(b)は骨部2Bに外力が加わった状態を示している。図12には、骨部2Bの中心軸線(骨格線O)を示している。
図12(a)に示すように、各骨部2Bは、それぞれ、断面積を一定に保ちつつ延在する、骨一定部2B1と、骨一定部2B1の延在方向の両側において、断面積を徐々に変化させつつ、骨一定部2B1から結合部2Jまで延在する、一対の骨変化部2B2と、から構成されている。本例において、各骨変化部2B2は、断面積を徐々に増大させつつ、骨一定部2B1から結合部2Jまで延在している。なお、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていても、同様の効果が得られる。また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bは、それぞれ、骨一定部2B1の一方側の端部のみに骨変化部2B2を有し、骨一定部2B1の他方側の端部が直接結合部2Jに結合されていてもよく、その場合も、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
ここで、骨一定部2B1及び骨変化部2B2の断面積は、それぞれ、骨一定部2B1及び骨変化部2B2の骨格線Oに垂直な断面の断面積を指す。
本例では、多孔質構造体1を構成する各骨部2Bが、骨一定部2B1と骨変化部2B2とからなり、骨変化部2B2が、骨一定部2B1から結合部2Jに向かうにつれて断面積が徐々に増大するので、骨部2Bが、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界の近傍部分で、骨一定部2B1に向かって細くなるようにくびれた形状をなしている。そのため、外力が加わる際に、骨部2Bが、そのくびれた部分や骨一定部2B1の中間部分で座屈変形しやすくなり、ひいては、多孔質構造体1が圧縮変形しやすくなる。これにより、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームと同等の挙動及び特性が得られる。また、これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより柔らかくなる。例えば、多孔質構造体1を座席シート用のクッション材(車両用シートパッド等)として用いる場合、着座する際の、特に着座し始めのタイミングで、着座者に、より柔らかい感触を与えるようになる。このような柔らかい感触は、一般的に、広く好まれるものであり、また、高級車のシートパッドの着座者(例えば運転手付きで後部座席に人を乗せる場合、後部座席に座る着座者)に好まれるものである。
本例のように、骨部2Bが、その少なくとも一部分において骨一定部2B1を有している場合、骨部2Bのいずれか一方側(好ましくは両側)の端2B21の断面積A1(図12(a))に対する、骨一定部2B1の断面積A0(図12(a))の比A0/A1は、
0.15≦A0/A1≦2.0
を満たしていると、好適である。また、比A0/A1は、
0.5≦A0/A1≦2.0
を満たしていると、さらに好適である。
これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感を、座席シート用のクッション材の特性として、柔らかすぎず、硬すぎず、ほどよい硬さにすることができる。例えば、多孔質構造体1を座席シート用のクッション材(シートパッド等)として用いる場合、着座する際の、特に着座し始めのタイミングで、着座者に、ほどよい硬さの感触を与えるようになる。比A0/A1が小さいほど、多孔質構造体1の表面のタッチ感が、より柔らかくなる。比A0/A1が0.15未満である場合は、多孔質構造体1の表面のタッチ感が柔らかくなりすぎて、クッション材の特性として好ましくなくなるおそれがある。比A0/A1が2.0超である場合は、多孔質構造体1の表面のタッチ感が硬くなりすぎて、クッション材の特性として好ましくなくなるおそれがある。
より具体的に、本例では、骨部2Bが骨一定部2B1とその両側に連続する一対の骨変化部2B2とを有しており、各骨変化部2B2が、それぞれ、断面積を徐々に増大させつつ、骨一定部2B1から結合部2Jまで延在しており、比A0/A1が1.0未満である。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感を、クッション材の特性として、また特に座席シート用のクッション材の特性として、比較的柔らかくすることができる。このような柔らかい感触は、一般的に、広く好まれるものであり、また、高級車のシートパッドの着座者(例えば運転手付きで後部座席に人を乗せる場合、後部座席に座る着座者)に好まれるものである。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていてもよいし、あるいは、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、いずれの場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
なお、本例に代えて、骨変化部2B2は、断面積を徐々に減少させつつ、骨一定部2B1から結合部2Jまで延在していてもよい。この場合、骨一定部2B1は、骨変化部2B2よりも、断面積が大きく(太く)なる。これにより、外力が加わる際に、骨一定部2B1が変形しにくくなり、代わりに、比較的座屈しやすい箇所が骨変化部2B2(特に、結合部2J側の部分)となり、ひいては、多孔質構造体1が圧縮変形しにくくなる。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより硬くなり、また、高硬度の機械特性が得られる。例えば、多孔質構造体1を座席シート用のクッション材として用いる場合、着座する際の、特に着座し始めのタイミングで、着座者に、より硬い感触を与えるようになる。このような挙動は、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームでは得ることは容易ではない。このような構成により、硬めの感触を好むユーザに対応できる。このような硬い感触は、例えば、素早い加減速や斜線変更を行うようなスポーツ車のシートパッドにおける、着座者に好まれるものである。
そして、骨変化部2B2が、断面積を徐々に減少させつつ、骨一定部2B1から結合部2Jまで延在している場合、比A0/A1は、1.0超となる。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていてもよいし、あるいは、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、いずれの場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
あるいは、図13に一部点線で示す第1変形例のように、骨部2Bは、骨変化部2B2を有さずに、骨一定部2B1のみからなるものでもよい。この場合、骨部2の断面積は、その全長にわたって一定になる。そして、外力が加わる際における多孔質構造体1の表面のタッチ感は、中程度の硬さになる。このような構成により、中程度の硬さの感触を好むユーザに対応できる。また、高級車やスポーツ車など、あらゆる車種のシートパッドに好適に適用できる。
この場合、比A0/A1は、1.0となる。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていてもよいし、あるいは、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、いずれの場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
図1~図12の例に戻り、本例において、骨格部2を構成する各骨部2Bは、骨一定部2B1が、骨変化部2B2及び結合部2Jよりも、断面積が小さい。より具体的には、骨一定部2B1の断面積は、骨変化部2B2及び結合部2Jのそれぞれのどの部分(ただし、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界部分を除く)の断面積よりも、小さい。すなわち、骨一定部2B1は、骨格部2の中で最も断面積が小さい(細い)部分である。これにより、上述したことと同様に、外力が加わる際に、骨一定部2B1が変形しやすくなり、ひいては、多孔質構造体1が圧縮変形しやすくなる。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより柔らかくなる。
なお、結合部2Jの断面積は、結合部2Jの骨格線Oに垂直な断面の断面積を指す。
なお、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
同様に、本例において、骨格部2を構成する各骨部2Bは、骨一定部2B1が、骨変化部2B2及び結合部2Jよりも、幅が小さい。より具体的には、骨一定部2B1の幅は、骨変化部2B2及び結合部2Jのそれぞれのどの部分(ただし、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界部分を除く)の幅よりも、小さい。すなわち、骨一定部2B1は、骨格部2の中で最も幅が小さい(細い)部分である。これによっても、外力が加わる際に骨一定部2B1が変形しやすくなり、それにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより柔らかくなる。
なお、骨一定部2B1、骨変化部2B2、結合部2Jの幅は、それぞれ、骨一定部2B1、骨変化部2B2、結合部2Jの骨格線Oに垂直な断面に沿って測ったときの、当該断面における最大幅を指す。結合部2Jの骨格線Oは、骨格線Oのうち、結合部2Jに対応する部分である。図12(a)には、参考のため、骨一定部2B1の幅W0と、骨変化部2B2の幅W1とを、示している。
なお、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
上述した各例において、多孔質構造体1の構造の簡単化、ひいては、3Dプリンタの製造のし易さの観点からは、骨一定部2B1の幅W0(図12)は、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適である。幅W0が0.05mm以上の場合、高性能な3Dプリンタの解像度で造形可能であり、0.10mm以上の場合、高性能な3Dプリンタだけでなく汎用の3Dプリンタの解像度でも造形可能である。
一方、多孔質構造体1の外縁(外輪郭)形状の精度を向上させる観点や、セル孔C間の隙間(間隔)を小さくする観点や、クッション材としての特性を良好にする観点からは、骨一定部2B1の幅W0(図12)は、0.05mm以上2.0mm以下であると好適である。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
図12に示すように、本例において、骨格部2を構成する各骨部2Bは、骨変化部2B2が、その側面に、1又は複数(本例では、3つ)の傾斜面2B23を有しており、この傾斜面2B23は、骨変化部2B2の延在方向に対して傾斜(90°未満で傾斜)しているとともに、骨一定部2B1から結合部2Jに向かうにつれて、幅W2が徐々に増大している。
これによっても、外力が加わる際に、骨部2Bが、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界近傍におけるくびれた部分で、座屈変形しやすくなり、ひいては、多孔質構造体1が圧縮変形しやすくなる。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより柔らかくなる。
ここで、骨変化部2B2の延在方向は、骨変化部2B2の中心軸線(骨格線O)の延在方向である。また、骨変化部2B2の傾斜面2B23の幅W2は、骨変化部2B2の骨格線Oに垂直な断面に沿って測ったときの、傾斜面2B23の幅を指す。
なお、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
本明細書で説明する各例においては、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち全部又は一部(好適には、全部)の骨部2Bにおいて、骨部2B(骨部2Bが骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有する場合、骨一定部2B1及び/又は骨変化部2B2)の断面形状は、多角形(好適には正多角形)又は円形であると、好適である。各図の本例において、骨格部2を構成する各骨部2Bにおいて、骨一定部2B1と骨変化部2B2は、それぞれの断面形状が、正三角形である。
これにより、多孔質構造体1の構造がシンプルになり、3Dプリンタによる造形がしやすくなる。また、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームでの機械特性を再現しやすい。また、このように骨部2Bを柱状に構成することにより、仮に骨部2Bを薄い膜状の部分に置き換えた場合に比べて、多孔質構造体1の耐久性を向上できる。
なお、骨一定部2B1、骨変化部2B2の断面形状は、それぞれ、骨一定部2B1、骨変化部2B2の中心軸線(骨格線O)に垂直な断面における形状である。
なお、本例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち全部又は一部の骨部2Bにおいて、骨一定部2B1と骨変化部2B2は、それぞれの断面形状が、正三角形以外の多角形(正三角形以外の三角形、四角形等)でもよいし、あるいは、円形(真円形、楕円形等)でもよく、その場合でも、本例と同様の効果が得られる。また、骨一定部2B1と骨変化部2B2は、それぞれの断面形状が互いに異なるものでもよい。
本明細書で説明する各例において、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合(VB×100/VS [%])が、3~10%であると、好適である。この構成により、多孔質構造体1に外力が付加されたときに多孔質構造体1に生じる反力、ひいては、多孔質構造体1の硬さを、座席シート用のクッション材として、さらに特には車両用のシートパッドとして、良好なものにすることができる。
ここで、「多孔質構造体1の体積VS」とは、多孔質構造体1の外縁(外輪郭)によって囲まれた内部空間の全体(骨格部2の占める体積と、後述の膜3が設けられる場合は膜3の占める体積と、空隙の占める体積との合計)の体積を指している。
多孔質構造体1を構成する材料を同じとして考えたとき、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が高いほど、多孔質構造体1は硬くなる。また、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が低いほど、多孔質構造体1は柔らかくなる。
多孔質構造体1に外力が付加されたときに多孔質構造体1に生じる反力、ひいては、多孔質構造体1の硬さを、座席シート用のクッション材として、良好なものにする観点からは、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が、4~8%であると、より好適である。
なお、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合を調整する方法としては、任意の方法を用いてよいが、例えば、多孔質構造体1の各単位部Uの寸法を変えずに、骨格部2を構成する一部又は全部の骨部2Bの太さ(断面積)、及び/又は、骨格部2を構成する一部又は全部の結合部Jの大きさ(断面積)を、調整する方法が挙げられる。
その一例として、図14に示す第2変形例では、点線で示すように、骨格部2を構成する各骨部2Bの太さ(断面積)、及び、骨格部2を構成する各結合部Jの大きさ(断面積)を、実線で示す多孔質構造体1(図9の例)よりも増大させることにより、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合を増大させている。
多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、多孔質構造体1の25%硬度は、60~500Nが好適であり、100~450Nがより好適である。ここで、多孔質構造体1の25%硬度(N)は、インストロン型圧縮試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の環境にて、多孔質構造体を25%圧縮するのに要する荷重(N)を測定して得られる測定値であるものとする。
図2~図5に示すように、本実施形態において、多孔質構造体1は、第1セル孔C1と、第1セル孔C1よりも直径の小さな第2セル孔C2との、2種類のセル孔Cを有している。本例において、各セル孔C(第1セル孔C1及び第2セル孔C2)は、それぞれ、略多面体の形状をなしている。より具体的には、本例において、第1セル孔C1は、略ケルビン14面体(切頂8面体)の形状をなしている。ケルビン14面体(切頂8面体)は、6つの正4角形の構成面と8つの正6角形の構成面とから構成される、多面体である。本例において、第2セル孔C2は、略8面体の形状をなしている。ただし、図の例では、各骨部2Bが、骨一定部2B1だけでなく、その両側に骨変化部2B2を有していることから、第1セル孔C1、第2セル孔C2の形状は、それぞれ、数学的な(完全な)ケルビン14面体、8面体をなしているわけではない。多孔質構造体1を構成するセル孔Cは、概略的に言えば、多孔質構造体1の外縁(外輪郭)により囲まれた内部空間を空間充填するように(セル孔C間の隙間(間隔)を小さくするように)、規則性をもって配列されている。第2セル孔C2は、第1セル孔C1どうしの間のわずかな隙間(間隔)を埋めるように、配置されている。ただし、本例においては、特に図5及び図10から判るように、第2セル孔C2は、その一部分が、第1セル孔C1の内部に入っており、すなわち、第1セル孔C1と第2セル孔C2とが、一部分で重複している。
本例のように、多孔質構造体1の一部又は全部(本例では、全部)のセル孔Cの形状を略多面体とすることにより、多孔質構造体1を構成するセル孔C間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になり、より多くのセル孔Cを多孔質構造体1の内部に形成することができる。また、これにより、外力の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形の挙動が、座席シート用のクッション材として、より良好になる。
セル孔Cのなす多面体形状としては、本例に限らず、任意のものが可能である。例えば、第1セル孔C1の形状を略4面体、略8面体又は略12面体とした場合も、セル孔C間の隙間(間隔)を小さくする観点から好適である。また、多孔質構造体1の一部又は全部のセル孔Cの形状が、略多面体以外の立体形状(例えば、球、楕円体、円柱等)でもよい。また、多孔質構造体1は、1種類のセル孔Cのみ(例えば、第1セル孔C1のみ)を有していてもよいし、あるいは、3種類以上のセル孔Cを有していてもよい。なお、本例のように、第1セル孔C1の形状を略ケルビン14面体(切頂8面体)とした場合は、他の形状に比べて、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームと同等のクッション材の特性を、最も再現し易い。
本例において、1つの第1セル孔C1は、X、Y、Zの各方向にそれぞれ2個ずつ配列された、計8個の単位部Uから、構成されている。また、1個の単位部Uは、複数の第1セル孔C1のそれぞれの一部分を構成している。一方、第2セル孔C2は、1つの単位部Uにつき2個ずつ配置されている。
ただし、本例に限らず、多孔質構造体1の各セル孔Cは、それぞれ、任意の数の単位部Uから構成されてもよいし、また、各単位部Uは、それぞれ、任意の数のセル孔Cを構成してもよい。
図2~図5に示すように、本例において、骨格部2は、第1セル孔C1を内部に区画する第1セル区画部21を複数(第1セル孔C1の数だけ)有している。
図2、図3、図6、図8~図11に示すように、各第1セル区画部21は、それぞれ、複数(本例では、14つ)の第1環状部211を有している。各第1環状部211は、それぞれ、環状に構成されており、それぞれの環状の内周側縁部2111によって、平坦な第1仮想面V1を区画している。第1仮想面V1は、第1環状部211の内周側縁部2111によって区画された、仮想平面(すなわち、仮想閉平面)である。第1セル区画部21を構成する複数の第1環状部211は、それぞれの内周側縁部2111によって区画する第1仮想面V1どうしが交差しないように互いに連結されている。
第1セル孔C1は、第1セル区画部21を構成する複数の第1環状部211と、これら複数の第1環状部211がそれぞれ区画する複数の第1仮想面V1とによって、区画されている。概略的に言えば、第1環状部211は、第1セル孔C1のなす立体形状の辺を区画する部分であり、第1仮想面V1は、第1セル孔C1のなす立体形状の構成面を区画する部分である。
各第1環状部211は、それぞれ、複数の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数の結合部2Jと、から構成されている。
互いに連結された一対の第1環状部211どうしの連結部分は、これら一対の第1環状部211に共有される、1つの骨部2Bと、その両側の一対の結合部2Jと、から構成されている。
各図の例において、第1環状部211は、当該第1環状部211に隣接する一対の第1セル区画部21(すなわち、当該第1環状部211を間に挟んだ一対の第1セル区画部21)によって共有されている。言い換えれば、第1環状部211は、当該第1環状部211に隣接する一対の第1セル区画部21のそれぞれの一部を構成している。
これにより、仮に、第1環状部211が、当該第1環状部211に隣接する一対の第1セル区画部21(すなわち、当該第1環状部211を間に挟んだ一対の第1セル区画部21)によって共有されておらず、すなわち、当該一対の第1セル区画部21が互いから独立して構成されており、それぞれの第1環状部211が互いに隣接又は互いから離間して形成されている場合や、それぞれの第1環状部211の間にリブ等が介在している場合に比べて、第1セル孔C1どうしの間の隙間(間隔)(ひいては、第1セル孔C1どうしの間の骨格部2の肉部分)を小さくすることができるので、多孔質構造体1のクッション材(特にはシートパッド、さらに特には車両用シートパッド)としての特性を向上できる。よって、3Dプリンタによって、クッション性のある多孔質構造体1を容易に製造することができる。
なお、骨格部2を構成する各第1環状部211がこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各第1環状部211のうち一部の第1環状部211のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例において、互いに隣接する一対の第1セル区画部21の骨格線Oどうしは、当該一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211において、一致していると、好適である。
各図の例において、第1仮想面V1は、第1仮想面V1の一方側の面(第1仮想面V1の表面)によって、ある1つの第1セル孔C1の一部を区画しているとともに、当該第1仮想面V1の他方側の面(第1仮想面V1の裏面)によって、別の第1セル孔C1の一部を区画している。
言い換えれば、第1仮想面V1は、その表裏両側の面によって別々の第1セル孔C1の一部を区画している。さらに言い換えれば、第1仮想面V1は、当該第1仮想面V1に隣接する一対の第1セル孔C1(すなわち、当該第1仮想面V1を間に挟んだ一対の第1セル孔C1)によって共有されている。
これにより、仮に、第1仮想面V1が、当該第1仮想面V1に隣接する一対の第1セル孔C1(すなわち、当該第1仮想面V1を間に挟んだ一対の第1セル孔C1)によって共有されておらず、すなわち、当該一対の第1セル孔C1の第1仮想面V1が互いから離間した位置にある場合に比べて、第1セル孔C1どうしの間の隙間(間隔)を小さくすることができるので、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
なお、骨格部2を構成する各第1仮想面V1がこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各第1仮想面V1のうち一部の第1仮想面V1のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに隣接する一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211の骨格線Oは、当該一対の第1セル区画部21のうち前記共有される第1環状部211に隣接する部分の骨格線Oのそれぞれと、連続している(図1、図7等参照)と、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに隣接する一対の第1セル区画部21の骨格線Oどうしは、当該一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211において、一致していると、好適である。
また、同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに隣接する一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211を構成する骨部2Bの断面積(例えば、骨一定部2B1の断面積)が、当該一対の第1セル区画部21のうち前記共有される第1環状部211に隣接する部分を構成する骨部2Bの断面積(例えば、骨一定部2B1の断面積)のそれぞれと、同じであると、好適である。
なお、骨格部2において互いに隣接する一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211の全てがこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2において互いに隣接する一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211のうち一部の第1環状部211のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
本例において、各第1仮想面V1は、膜によって覆われておらず、開放されており、すなわち、開口を構成している。このため、第1仮想面V1を通じて、セル孔Cどうしが連通され、セル孔C間の通気が、可能にされている。これにより、多孔質構造体1の通気性を向上できるとともに、外力の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形がし易くなる。
図2、図3、図6~図11に示すように、本例において、第1セル区画部21を構成する複数(本例では、14つ)の第1環状部211は、それぞれ、1つ又は複数(本例では、6つ)の第1小環状部211Sと、1つ又は複数(本例では、8つ)の第1大環状部211Lと、を含んでいる。各第1小環状部211Sは、それぞれ、その環状の内周側縁部2111によって、平坦な第1小仮想面V1Sを区画している。各第1大環状部211Lは、それぞれ、その環状の内周側縁部2111によって、平坦かつ第1小仮想面V1Sよりも面積の大きな第1大仮想面V1Lを区画している。第1小仮想面V1S、第1大仮想面V1Lは、それぞれ、仮想平面(すなわち、仮想閉平面)である。
図8及び図10には、単位部Uのうち、第1セル区画部21を構成する部分の骨格線Oを示している。図8及び図10から判るように、本例において、第1大環状部211Lは、その骨格線Oが正6角形をなしており、それに伴い、第1大仮想面V1Lも、略正6角形をなしている。また、本例において、第1小環状部211Sは、その骨格線Oが正4角形をなしており、それに伴い、第1小仮想面V1Sも、略正4角形をなしている。このように、本例において、第1小仮想面V1Sと第1大仮想面V1Lとは、面積だけでなく、形状も異なる。
各第1大環状部211Lは、それぞれ、複数(本例では、6つ)の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数(本例では、6つ)の結合部2Jと、から構成されている。各第1小環状部211Sは、それぞれ、複数(本例では、4つ)の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数(本例では、4つ)の結合部2Jと、から構成されている。
第1セル区画部21を構成する複数の第1環状部211が、大きさの異なる第1小環状部211Sと第1大環状部211Lとを含むことにより、多孔質構造体1を構成する第1セル孔C1間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になる。また、本例のように、第1小環状部211Sと第1大環状部211Lとの形状が異なる場合、多孔質構造体1を構成する第1セル孔C1間の隙間(間隔)をさらに小さくすることが可能になる。
ただし、第1セル区画部21を構成する複数の第1環状部211は、それぞれ、大きさ及び/又は形状が互いに同じでもよい。第1セル区画部21を構成する各第1環状部211の大きさ及び形状が同じである場合、X-Y-Zそれぞれの方向に等しい機械特性を得ることができる。
本例のように、第1セル区画部21を構成する各第1仮想面V1のうち、一部又は全部(本例では全部)の第1仮想面V1が、略多角形状をなすことにより、多孔質構造体1を構成するセル孔Cどうしの間隔をより小さくすることが可能になる。また、外力の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形の挙動が、座席シート用のクッション材として、より良好になる。また、第1仮想面V1の形状がシンプルになるので、製造性や特性の調整のし易さを向上できる。なお、多孔質構造体1を構成する各第1仮想面V1のうち、少なくとも1つの第1仮想面V1が、この構成を満たしている場合は、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
なお、多孔質構造体1を構成する各第1仮想面V1のうち、少なくとも1つの第1仮想面V1が、本例のような略正6角形、略正4角形以外の任意の略多角形状、あるいは、略多角形状以外の平面形状(例えば、円(真円、楕円等))をなしてもよい。第1仮想面V1の形状が円(真円、楕円等)である場合は、第1仮想面V1の形状がシンプルになるので、製造性や特性の調整のし易さを向上できるとともに、より均質な機械特性が得られる。例えば、第1仮想面V1の形状が、荷重が掛かる方向に対して略垂直な方向に長い楕円(横長の楕円)である場合は、荷重が掛かる方向に略平行な方向に長い楕円(縦長の楕円)である場合に比べて、当該第1仮想面V1を区画する第1環状部211が、ひいては、多孔質構造体1が、荷重の入力に対して変形し易くなる(柔らかくなる)。
図2~図5に示すように、本例において、骨格部2は、第2セル孔C2を内部に区画する第2セル区画部22を複数(第2セル孔C2の数だけ)有している。
図2、図3、図6~図11(特に図7)に示すように、各第2セル区画部22は、それぞれ、複数(本例では、2つ)の第2環状部222を有している。各第2環状部222は、それぞれ、環状に構成されており、それぞれの環状の内周側縁部2221によって、平坦な第2仮想面V2を区画している。第2仮想面V2は、第2環状部222の内周側縁部2221によって区画された、仮想平面(すなわち、仮想閉平面)である。第2セル区画部22を構成する各第2環状部222は、それぞれの内周側縁部2221によって区画する第2仮想面V2どうしが交差(本例では、直交)するように互いに連結されている。
第2セル孔C2は、第2セル区画部22を構成する各第2環状部のそれぞれの内周側縁部2221と、これらの内周側縁部2221どうしを滑らかに連結する仮想面とによって、区画されている。
図7には、単位部Uのうち、第2セル区画部22を構成する部分の骨格線Oを示している。図7から判るように、本例において、第2セル区画部22を構成する各第2環状部222は、それぞれ、その骨格線Oが正4角形をなしており、それに伴い、第2仮想面V2も、略正4角形をなしている。
各第2環状部222は、それぞれ、複数(本例では、4つ)の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数(本例では、4つ)の結合部2Jと、から構成されている。
本例において、第2セル区画部22を構成する各第2環状部222どうしの連結部分は、各第2環状部222に共有される、2つの結合部Jで構成されている。
また、本例において、第2セル区画部22を構成する各第2仮想面V2の形状及び面積は、互いに同じである。
なお、第2セル区画部22を構成する各第2仮想面V2の形状は、本例に限らず、略正4角形以外の任意の略多角形状、あるいは、略多角形状以外の平面形状(例えば、円(真円、楕円等))をなしてよい。第2仮想面V2の形状が略多角形状あるいは円(真円、楕円等)である場合は、第2仮想面V2の形状がシンプルになるので、製造性や特性の調整のし易さを向上できる。例えば、第2仮想面V2の形状が、荷重が掛かる方向に対して略垂直な方向に長い楕円(横長の楕円)である場合は、荷重が掛かる方向に略平行な方向に長い楕円(縦長の楕円)である場合に比べて、当該第2仮想面V2を区画する第2環状部222が、ひいては、多孔質構造体1が、荷重の入力に対して変形し易くなる(柔らかくなる)。
図7、図10に示すように、本例において、第2セル区画部22を構成する2つの第2環状部222のうちの1つは、第1環状部211(より具体的には、第1小環状部211S)をも構成している。
本例において、各第2仮想面V2は、膜によって覆われておらず、開放されており、すなわち、開口を構成している。このため、第2仮想面V2を通じて、セル孔Cどうし(特に、第1セル孔C1及び第2セル孔C2どうし)が連通され、セル孔C間の通気が、可能にされている。これにより、多孔質構造体1の通気性を向上できるとともに、外力の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形がし易くなる。
図1から図3に示したように、本実施形態の多孔質構造体1の表皮部6は、骨格部2と一体に形成されている。表皮部6は、骨格部2の外側の少なくとも一部に、複数のセル孔Cの少なくとも一部を塞ぐように形成されている。本実施形態では、表皮部6は、骨格部2のうち、最も外側に位置する部分の一部または全部と一体に形成され、かつ、セル孔Cの一部又は全部を塞ぐように連続した面を有している。表皮部6は、外側の少なくとも一部が面とされている。ここで、「面」とは、例えば、概略的に滑らかに連続する面を指しており、凹凸の無い滑らかな面でもよいし、あるいは、凹凸のある面であってもよい。ただし、面が凹凸を有する場合、面は、3Dプリンタを用いて造形するのに実現可能な表面粗さ、例えば、凹凸の凸部や凹部の各方向の寸法(高さ、深さ、幅、直径等)が0.1mm以上となる表面粗さを、有するものとし、また、凹凸の凸部の高さ(すなわち凹部の深さ)が2mm以下であるものとする。
上述したように、多孔質構造体1の立体形状が直方体である場合、多孔質構造体1は、頂面110、底面120及び側面130を備え、表皮部6の面は、頂面110、底面120及び側面130の少なくとも1つに含まれている。
具体的には、表皮部6は、頂面側表皮部61、底面側表皮部62及び側面側表皮部63を含むことができる。
頂面側表皮部61の面は、多孔質構造体1の頂面11を構成している。底面側表皮部62の面は、多孔質構造体1の底面102を構成している。側面側表皮部63は、多孔質構造体1の側面13を構成している。
このように、表皮部6は、骨格部2の外側の少なくとも一部に、複数のセル孔Cの少なくとも一部を塞ぐように形成されているため、多孔質構造体1を他の部材に接着させる際に、表皮部6が構成する面に、他の部材を接着させることができる。このため、多孔質構造体1は、骨格部2の外側で他の部材を接着させる場合に比べて広い面積で他の部材と接着されるため接着性を向上することができる。
表皮部6の面は、多孔質構造体1が備える頂面110から側面130にわたって連続して形成されている。また、表皮部6の面は、多孔質構造体1が備える底面から側面にわたって、連続して形成されている。
具体的には、図1に示すように、頂面側表皮部61と側面側表皮部63とは、それぞれの面が連続するように、連続している。同様に、底面側表皮部62と側面側表皮部63とは、それぞれの面が連続するように、連続している。また、面が互いに直交する2つの側面側表皮部63は、それぞれの面が連続するように、連続している。
このように、頂面110から側面130にわたって連続して形成され、底面から側面にわたって、連続して形成されているため、頂面、側面及び底面のいずれかの端部においても面が途切れることがなく、該端部においても他の部材との接着性を向上することができる。
図1~図3に示したように、表皮部6は、面が形成されている平滑部6Aと、平滑部6Aによって区画され、表皮部6を貫通している貫通孔6Bと、からなっている。具体的には、表皮部6における、頂面側表皮部61、底面側表皮部62及び側面側表皮部63は、それぞれ平滑部6A及び貫通孔6Bからなっている。
表皮部6の表面積に対する面の総面積の割合は8%以上であることが好ましい。表皮部6の表面積とは、面の総面積と、貫通孔6Bの開口の総面積と、の総和である。
表皮部6の表面積に対する面の総面積の割合が8%以上であると、多孔質構造体1が面に塗布された接着剤を介して接着される際の接着力を向上することができる。また、多孔質構造体1が押圧された場合に、平滑部6Aによって受けられる押圧力が大きくなる。そのため、骨格部2における直接、衝撃を受ける部分が少なくなり、骨格部2が破損する可能性が低くなる。これに伴い、多孔質構造体1の耐久性が高くなる。ただし、表皮部6の表面積に対する面の総面積の割合が8%未満であってもよい。この場合、多孔質構造体1における表皮部6の外側と内側との間での通気性を高くできる。
また、例えば、頂面側表皮部61、底面側表皮部62及び側面側表皮部63のうち着座者に対向する部分における表皮部6の表面積に対する平滑部6Aの表面積の割合は、着座者に対向しない部分より低くして通気性を高くすることによって、着座者が快適に着座することができる。さらに、多孔質構造体1が外力を受けやすい環境で用いられる場合、表皮部6における外力を受けやすいと見込まれる領域の表面積に対する平滑部6Aの表面積の割合を、他の部分より高くすることによって耐久性を高めることができる。
本実施形態では、貫通孔6Bは、表皮部6の面に対向する方向から観た表面視において、外表面への開口形状が円形又は長円形(本実施形態では、円形)とされている。ただし、貫通孔6Bは、表面視において円形又は長円形に限られず、矩形であってもよいし、他の形状であってもよい。表皮部6は、複数の貫通孔6Bを含み、複数の貫通孔6Bは、表面視において、表皮部6の面が格子状に連続するように配列されている格子状に配列されている。
本実施形態において、多孔質構造体1は、直径が5mm以上のセル孔Cを少なくとも1つ有する。これにより、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造が実現し易くなる。多孔質構造体1の各セル孔Cの直径が5mm未満であると、多孔質構造体1の構造が複雑になりすぎる結果、多孔質構造体1の3次元形状を表す3次元形状データ(CADデータ等)、あるいは、その3次元形状データに基づき生成される3D造形用データを、コンピュータ上で生成するのが難しくなるおそれがある。
なお、従来のクッション性を有する多孔質構造体は、上述のように、化学反応によって発泡させる工程を経て製造されていたため、直径が5mm以上のセル孔Cを形成することは容易ではなかった。しかし、本発明の発明者は、多孔質構造体が直径5mm以上のセル孔Cを有する場合でも、クッション材としての特性として従来と同等のものが得られることを、新たに見い出した。そして、多孔質構造体が直径5mm以上のセル孔Cを有するようにすることにより、3Dプリンタによる製造がし易くなるのである。
また、多孔質構造体1が直径5mm以上のセル孔Cを有することにより、多孔質構造体1の通気性や変形し易さを向上しやすくなる。
セル孔Cの直径が大きくなるほど、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造が実現し易くなり、また、通気性や変形し易さを向上しやすくなる。このような観点から、多孔質構造体1は、少なくとも1つのセル孔Cの直径が、より好適には8mm以上、さらに好適には10mm以上であるとよい。
一方、多孔質構造体1のセル孔Cが大きすぎると、多孔質構造体1の外縁(外輪郭)形状をきれいに(滑らかに)形成するのが難しくなり、形状精度が低下し外観が悪化するおそれがある。また、クッション材としての特性も、十分に良好でなくなるおそれがある。よって、外観やクッション材としての特性を向上させる観点から、多孔質構造体1の各セル孔Cの直径は、好適には30mm未満、より好適には25mm以下、さらに好適には20mm以下であるとよい。
なお、多孔質構造体1は、上記の直径の数値範囲を満たすセル孔Cを多く有するほど、上記の各効果が得られやすくなる。この観点からは、多孔質構造体1を構成する複数のセル孔Cのうち、少なくとも各第1セル孔C1の直径が、上記の少なくともいずれか1つの数値範囲を満たすと、好適である。また、多孔質構造体1を構成する各セル孔C(各第1セル孔C1及び各第2セル孔C2)の直径が、上記の少なくともいずれか1つの数値範囲を満たすと、より好適である。同様に、多孔質構造体1を構成するセル孔C(各第1セル孔C1及び各第2セル孔C2)の直径の平均値が、上記の少なくともいずれか1つの数値範囲を満たすと、より好適である。
なお、セル孔Cの直径は、本例のようにセル孔Cが厳密な球形状とは異なる形状をなす場合、セル孔Cの外接球の直径を指す。
多孔質構造体1のセル孔Cが小さすぎると、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造がしにくくなる。3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造を容易にする観点から、多孔質構造体1を構成する各セル孔Cのうち、最小の直径を有するセル孔C(本例では、第2セル孔C2)の直径が、0.05mm以上であると好適であり、0.10mm以上であるとより好適である。最小の直径を有するセル孔C(本例では、第2セル孔C2)の直径が、0.05mm以上の場合、高性能な3Dプリンタの解像度で造形可能であり、0.10mm以上の場合、高性能な3Dプリンタだけでなく汎用の3Dプリンタの解像度でも造形可能である。
図15に示す第3変形例のように、多孔質構造体1は、多孔質構造体1を構成する各第1仮想面V1のうちの少なくとも1つが、膜3で覆われていてもよい。膜3は、骨格部2と同じ材料からなり、骨格部2と一体に構成される。膜3によって、第1仮想面V1を間に挟んだ2つの第1セル孔C1どうしが非連通状態になり、ひいては、多孔質構造体1の全体としての通気性が低下する。多孔質構造体1を構成する各第1仮想面V1のうち、膜3で覆われたものの数を調整することにより、多孔質構造体1の全体としての通気性を調整でき、要求に応じて様々な通気性レベルを実現可能である。例えば、多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、多孔質構造体1の通気性を調整することにより、車内のエアコンの効きを高めたり、耐ムレ性を高めたり、乗り心地を高めることができる。多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、車内のエアコンの効き及び耐ムレ性を高めるとともに、乗り心地を高める観点からは、多孔質構造体1を構成する各第1仮想面V1の全てが膜3で覆われているのは好ましくなく、言い換えれば、多孔質構造体1を構成する各第1仮想面V1のうち少なくとも1つが膜3で覆われておらず開放されていることが好ましい。
多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、車内のエアコンの効き及び耐ムレ性を高めたり、乗り心地を高める観点からは、多孔質構造体1の通気性は、100~700cc/cm2/secが好適であり、150~650cc/cm2/secがより好適であり、200~600cc/cm2/secがさらに好適である。ここで、多孔質構造体1の通気性(cc/cm2/sec)は、JIS K 6400-7に準拠して測定されるものとする。また、多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、多孔質構造体1の共振倍率は、3倍以上8倍未満が好適であり、3倍以上5倍以下がより好適である。多孔質構造体1の密度は、例えば20~100kg/m3が好適である。
なお、従来の多孔質構造体は、上述のように、化学反応によって発泡させる工程を経て製造されていたため、各セルどうしを連通する連通孔における膜を、所期したとおりの位置及び個数で形成することは難しかった。本例のように、多孔質構造体1を3Dプリンタで製造する場合は、3Dプリンタに読み込まれる3D造形用データに、予め膜3の情報も含めることで、確実に、所期したとおりの位置及び個数で膜3を形成することが可能である。
同様の観点から、多孔質構造体1を構成する各第1小仮想面V1Sのうちの少なくとも1つが、膜3で覆われていてもよい。かつ/又は、多孔質構造体1を構成する各第1大仮想面V1Lのうちの少なくとも1つが、膜3で覆われていてもよい。
続いて、図16を参照して座席シート用のクッション材300について説明する。図16は、本実施形態に係る座席シート用のクッション材300を概略的に示す斜視図である。図16の座席シート用のクッション材300は、任意の種類の座席シート用のクッション材を構成してよいが、例えば、乗り物用シート用のクッション材を構成すると好適であり、車両用のシートパッドを構成するとより好適である。
座席シート用のクッション材300は、着座者が着座するためのシートクッション用クッション材301Cと、着座者の背中を支持するためのシートバック用クッション材301Bと、ヘッドレスト用クッション材301Dと、を備える。図16の例において、ヘッドレスト用クッション材301Dは、シートバック用クッション材301Bとは別体に構成されているが、シートバック用クッション材301Bと一体に構成されてもよい。
本明細書では、図16に表記するとおり、座席シート用のクッション材300に着座した着座者から観たときの「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の各方向を、それぞれ単に「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」などという。
シートクッション用クッション材301Cは、多孔質構造体1から構成されたクッションパッド310を備えている。クッションパッド310は、着座者の臀部及び大腿部が載るように構成されたメインパッド部311と、メインパッド部311の左右両側に位置し、メインパッド部311よりも上側へ盛り上がり、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部312と、を有している。
シートバック用クッション材301Bは、多孔質構造体1から構成されたバックパッド320を備えている。バックパッド320は、着座者の背中を後側から支持するように構成されたメインパッド部321と、メインパッド部321の左右両側に位置し、メインパッド部321よりも前側へ盛り上がり、着座者を左右両側から支持するように構成された、一対のサイドパッド部322と、を有している。
ここで、メインパッド部311の一例について詳細に説明する。図17に示すように、メインパッド部311は、シート本体7と、シート本体7に形成された、後述する穴部74に装填されている装填体8とを備える。
まず、図17~図21を参照しながら、シート本体7の一例について詳細に説明する。
図17は、メインパッド部311及びサイドパッド部312を詳細に示す斜視図である。図18は、図17のメインパッド部における、シート本体を示す斜視図である。図19は、図18のシート本体7を示す上面図である。図20は、図18のシート本体7のA-A断面図である。図21は、図18のシート本体7のB-B断面図である。
図18に示すように、シート本体7は、尻下部71と、腿下周縁部72と、溝部73と、穴部74と、バックパッド連結部75とを備える。尻下部71、腿下周縁部72及びバックパッド連結部75は、シート本体7用の多孔質構造体1Bによって構成されている。
尻下部71は、上方向に面する、略平坦な平坦面を有する。尻下部71は、図19に示すような、着座者が着座する面を着座者側から観た上面視において、後方、左方及び右方に位置する3つの直線と、前方に位置する緩やかな1つの前方に凸の円弧状の曲線とを周縁とする形状とされている。
腿下周縁部72は、尻下部71の周縁を構成する前側の曲線より前側に配置されている。腿下周縁部72は、該腿下周縁部72の内側に上下方向に沿って延出する略矩形状の穴部74を区画する。穴部74は、図19に示すように、シート本体7を上下方向に貫通してもよいし、上方又は下方に底面を有する凹状の形状であってもよい。
腿下周縁部72は、左方及び右方に互いに対向して位置する2つの直線と、後方及び前方に位置する緩やかな円弧状の曲線とを周縁とする形状である。腿下周縁部72において後方に位置する緩やかな円弧状の曲線は、尻下部71の周縁を構成する曲線に対して一定の間隔を開けて、沿うように位置している。
腿下周縁部72は、図19~図20に示すように、上側腿下周縁部(第1腿下周縁部)721と、下側腿下周縁部(第2腿下周縁部)722と、前側腿下周縁部(第3腿下周縁部)723とを含む。上側腿下周縁部721、下側腿下周縁部722、及び前側腿下周縁部723は、一体に構成されている。上側腿下周縁部721、下側腿下周縁部722、及び前側腿下周縁部723は、サイドパッド部312とも一体に構成されている。
上側腿下周縁部721及び下側腿下周縁部722は、腿下周縁部72の左右側及び後側に位置する。下側腿下周縁部722は、上側腿下周縁部721より下側に位置し、上側腿下周縁部721より内側に向かって突出している。具体的には、図20に示すように、下側腿下周縁部722の左側722Lは上側腿下周縁部721の左側721Lより右方向に突出し、下側腿下周縁部722の右側722Rは上側腿下周縁部721の右側721Rより左方向に突出している。また、図21に示すように、下側腿下周縁部722の後側722Bは上側腿下周縁部721の後側721Bより前方向に突出している。これにより、下側腿下周縁部722には、上方向に向かう、上側腿下周縁部721の内側側面に連続している段差面である本体段差面BSが構成されている。
図19に示したように、前側腿下周縁部723は、腿下周縁部72全体における前側に位置している。図20に示したように、前側腿下周縁部723の上方の端部723Tは左右方向における中心近傍で最も下方に位置し、左右方向の端部に向かうにつれて上方に位置するようになる。
図18及び図19に示したように、溝部73は、腿下周縁部72の周縁を構成する後方の曲線と尻下部71の周縁を構成する曲線とによって区画される溝である。溝部73は、クッション材300を覆うカバーの縫いしろを収容することができる。
バックパッド連結部75は、尻下部71と連結して構成されており、バックパッド320と連結することができるように構成されている。
続いて、図22~図24を参照しながら、メインパッド部311が備える装填体8を構成する多孔質構造体1Sの一例について詳細に説明する。図22は、図17のメインパッド部における装填体を示す斜視図である。図23は、図22の多孔質構造体のC-C断面図である。図24は、図22の多孔質構造体のD-D断面図である。図23及び図24に示す多孔質構造体1Sは左右方向において一点破線に示される部分にて省略されている。
装填体8は、多孔質構造体1Sによって構成される。装填体8を構成する多孔質構造体1S(以下、単に「多孔質構造体1S」という)は、シート本体7用の多孔質構造体1Bとは異なる特性の多孔質構造体とされる。装填体8を構成する多孔質構造体1Sは、例えば、上述した多孔質構造体1と同様に、骨格部2と表皮部6とを備え、表皮部6は、平滑部6A及び貫通孔6Bを有する。
図22は、多孔質構造体1Sの外観斜視図である。図23は、図22の多孔質構造体1SのC-C断面図である。図24は、図22の多孔質構造体1SのD-D断面図である。
多孔質構造体1Sは、3Dプリンタによって造形されたものである。多孔質構造体1Sは、既に説明した多孔質構造体1と同様に、骨格部2と、骨格部2の最も外側に骨格部2と一体に形成された表皮部6とを備える。骨格部2及び表皮部6は、多孔質構造体1の骨格部2及び表皮部6と同様であり、表皮部6は、頂面側表皮部61と、底面側表皮部62と、側面側表皮部63とを有している。多孔質構造体1Sの形状は、既に説明した多孔質構造体1の例で示した形状とは異なっている。
図22に示すように、多孔質構造体1Sは、第1部分1S1と、第1部分1S1と一体に形成されている第2部分1S2とからなっている。第2部分1S2は、座席シート用のクッション材300に着座者が着座した際の着座方向(図1に示す下方向)に直交する方向に第1部分1S1より突出しているように構成されている。具体的には、図23に示すように、第2部分1S2は、左右方向に第1部分1S1より突出しているように構成されている。また、図24に示すように、第2部分1S2は、前後方向に第1部分1S1より突出しているように構成されている。
このような多孔質構造体1Sにおいて、表皮部6のうちの骨格部2の側面側の外側に形成されている側面側表皮部63は、第1部分1S1における骨格部2の側面側の外側に形成されている第1側面側表皮部631と、第2部分1S2における骨格部2の側面側の外側に形成されている第2側面側表皮部632とを含む。また、第2部分1S2が第1部分1S1より突出することによって、第2部分1S2には、下方向に面する、第1部分1S1に連続する段差面であるパッド段差面PSが構成される。多孔質構造体1Sは、第2部分1S2におけるパッド段差面PSが、シート本体7の本体段差面BSに沿うように構成されている。
また、図22に示したように、第2部分1S2の前方に突出している部分の下端は、左右方向における中心近傍で最も低く、左右方向の端部に向かうにつれて高くなるように湾曲している。第2部分1S2の前方に突出している部分の下側の端部は、既に図20を参照して説明した、前側腿下周縁部723の上端における湾曲した形状に沿うように湾曲している。これにより、メインパッド部311の前方において、端部よりも中央近傍に広く多孔質構造体1Sが配置されている。このため、着座者に対向する部分に少なくともクッション性を有する多孔質構造体1Sが配置され、着座者は快適に着座することができる。
また、側面側表皮部63における第2部分1S2の前方に突出している部分の面は、曲面を構成している。これにより、着座者が、多孔質構造体1Sが配置された座席シート用のクッション材300に着座したときに、第2部分1S2の前方の曲面が着座者の膝裏および後下腿部に沿うことになり、着座者に多孔質構造体1Sの角があたるのを回避することができる。
図22及び図23に示した第1部分1S1の左右方向の長さL1は、図20に示した下側腿下周縁部722の左右側によって区画された、穴部74の下側の部分の左右方向の長さL2と略同じである。ただし、第1部分1S1を圧入して下側腿下周縁部722密接させるために、長さL1は、長さL2よりやや長くてもよい。図22及び図24に示した第1部分1S1の前後方向の長さL3は、図21に示した、下側腿下周縁部722の後側と前側腿下周縁部723とによって区画された、穴部74の下側の部分の前後方向の長さL4と略同じである。ただし、第1部分1S1を穴部74に圧入して下側腿下周縁部722密接させるために、長さL3は、長さL4よりやや長くてもよい。
図22及び図23に示した第2部分1S2の左右方向の長さL5は、図20に示した上側腿下周縁部721の左右側によって区画された、穴部74の上側の左右方向の長さL6と略同じである。ただし、第2部分1S2を穴部74に圧入して上側腿下周縁部721密接させるために、長さL5は、長さL6よりやや長くてもよい。図22及び図24に示した第2部分1S2の前後方向の長さL7は、図21に示した上側腿下周縁部721の後側と前側腿下周縁部723との間の前後方向の長さL8と略同じか、やや長くてもよい。
図23及び図24に示した第2部分1S2の上下方向の長さL9は、図20に示した上側腿下周縁部721の上下方向の長さL10と略同じある。
このような構造により、座席シート用のクッション材300を構成する多孔質構造体1Sが穴部74に装填されると第2部分1S2における第1部分1S1より突出している部分が本体段差面BSによって係止されている。これにより、多孔質構造体1Sは、シート本体7の穴部74において上下方向に位置決めされている。したがって、多孔質構造体1Sを安定して座席シート用のクッション材300に配置することができる。
多孔質構造体1Sは、シート本体7の穴部74に装填されている。多孔質構造体1Sは、座席シート用のクッション材300における、着座者に対向する部分に配置されている。座席シート用のクッション材300の体積に対する多孔質構造体1Sの体積の割合は10~70%であってもよい。このような割合とすることによって、座席シート用のクッション材300の通気性を保ちながら、堅牢性を維持することができる。
多孔質構造体1Sは、穴部74への装填において、第1部分1S1を下側にして、穴部74の上方から下方に挿入されている。これにより、第2部分1S2における第1部分1S1より突出している部分が本体段差面BSによって係止され、多孔質構造体1Sは、シート本体7の穴部74において上下方向に位置決めすることができる。したがって、多孔質構造体1Sは安定して配置されるため、容易に座席シート用のクッション材300を得ることができる。
また、第1側面側表皮部631は、接着剤を介して下側腿下周縁部722の内側側面に接した状態で固定されており、これにより、第1部分1S1は、下側腿下周縁部722に固定されている。また、第2側面側表皮部632が、接着剤を介して上側腿下周縁部721の内側側面に接した状態で固定されており、これにより、第2部分1S2は、上側腿下周縁部721固定されている。さらに、パッド段差面PSが、接着剤を介して腿下周縁部72の本体段差面BSに接した状態で固定されており、これにより、第1部分1S1は、パッド段差面PSに固定されている。
これにより、多孔質構造体1Sによって構成される装填体8は、第1側面側表皮部631、第2側面側表皮部632、及びパッド段差面PSそれぞれの面で、シート本体7に高い接着力で接着することができ、堅牢性の高い座席シート用のクッション材300を製造できる。
なお、上述においては、第1部分1S1を下側にして、穴部74の上方から下方に多孔質構造体1Sが挿入されるように、多孔質構造体1S及びシート本体7が構成される例を説明したが、これに限られない。例えば、多孔質構造体1Sが下方から上方にシート本体7に挿入されるように多孔質構造体1S及びシート本体7を構成してもよい。
なお、図25に示すように、多孔質構造体1Sの第2側面側表皮部632は、貫通孔6Bを有さなくてもよい。これにより、第2側面側表皮部632は、貫通孔6Bを有する場合に比べて広い領域で接着剤を介してシート本体7の穴部74の内側壁面に強固に固定されて、堅牢な座席シート用のクッション材300が形成されている。図示されていないが、同様にして、多孔質構造体1Sの第1側面側表皮部631も、貫通孔6Bを有さなくてもよい。この場合、同様にして、第2側面側表皮部632を、広い領域で接着剤を介してシート本体7の穴部74の内側壁面に強固に固定することができる。また、上述したように、上方又は下方に底面を有する凹状の形状である場合、装填体8が穴部74に装填された際に該底面に当接する底面側表皮部62又は頂面側表皮部61は、貫通孔6Bを有さなくてもよい。
つぎに、図26を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る、多孔質構造体1Sの製造方法を説明する。図26では、図22~図24に示す本発明の一実施形態に係る多孔質構造体1Sを、3Dプリンタにより製造する様子を一例として示している。
まず、事前に、コンピュータを用いて、装填体8を構成する多孔質構造体1Sの3次元形状を表す3次元形状データ(例えば、3次元CADデータ)を作成する。
つぎに、コンピュータを用いて、上記3次元形状データを、3D造形用データ500に変換する。3D造形用データ500は、3Dプリンタ400の造形部420が造形を行う際に3Dプリンタ400の制御部410に読み込まれるものであり、制御部410が、造形部420に、装填体8を構成する多孔質構造体1Sを、造形させるように構成されている。3D造形用データ500は、例えば、装填体8を構成する多孔質構造体1Sの各層の2次元形状を表すスライスデータを含む。
つぎに、3Dプリンタ400によって装填体8を構成する多孔質構造体1Sの造形を行う。3Dプリンタ400は、例えば、光造形方式、粉末焼結積層方式、熱溶融積層方式(FDM方式)、インクジェット方式等、任意の造形方式を用いて造形を行ってよい。図26では、光造形方式によって造形を行う様子を示している。
3Dプリンタ400は、例えば、CPU等によって構成された制御部410と、制御部410による制御に従って造形を行う造形部420と、造形される造形物(すなわち、装填体8)を載せるための支持台430と、液体樹脂LR、支持台430及び造形物が収容される収容体440と、を備える。造形部420は、本例のように光造形方式を用いる場合、紫外線レーザ光LLを照射するように構成されたレーザ照射器421を有する。収容体440には、液体樹脂LRが充填されている。液体樹脂LRは、レーザ照射器421から照射される紫外線レーザ光LLが当たると、硬化し、可撓性のある樹脂となる。
このように構成された3Dプリンタ400は、まず、制御部410が、3D造形用データ500を読み込み、読み込んだ3D造形用データ500に含まれる3次元形状に基づいて、造形部420に紫外線レーザ光LLを照射するよう制御しながら、各層を順次造形していく。
3Dプリンタ400による造形が完了した後は、造形物を収容体440から取り出す。それにより、最終的に、造形物として、装填体8としての多孔質構造体1Sが得られる。
なお、多孔質構造体1Sを樹脂で構成する場合、3Dプリンタ400による造形が完了した後に、造形物としての多孔質構造体1Sを、オーブンの中で加熱してもよい。その場合、多孔質構造体1Sを構成する各層どうしの結合を強化し、それにより多孔質構造体1Sの異方性を低減できるので、多孔質構造体1Sのクッション材としての特性をさらに向上できる。
また、多孔質構造体1Sをゴムで構成する場合、3Dプリンタ400による造形が完了した後に、造形物としての多孔質構造体1Sを加硫してもよい。
このように、3Dプリンタを用いて装填体8が造形されると、多孔質構造体1Sは、穴部74に装填される。多孔質構造体1Sを装填する前に、腿下周縁部72の内側側壁又は側面側表皮部63に接着剤が塗布される。そして、多孔質構造体1を、第1部分1S1を下側にして、穴部74の上方から下方に挿入する。これにより、第2部分1S2における第1部分1S1より突出している部分が本体段差面BSによって係止され、座席シート用のクッション材300を構成する多孔質構造体1は、シート本体7の穴部74において上下方向に位置決めされる。
また、第1側面側表皮部631が、接着剤を介して下側腿下周縁部722の内側側面に接した状態で接着剤が硬化することによって、第1部分1S1は、下側腿下周縁部722に固定される。また、第2側面側表皮部632が、接着剤を介して上側腿下周縁部721の内側側面に接した状態で接着剤が硬化することによって、第2部分1S2は、上側腿下周縁部721固定される。さらに、パッド段差面PSが、接着剤を介して腿下周縁部72の本体段差面BSに接した状態で接着剤が硬化することによって、第1部分1S1は、パッド段差面PSに固定される。このようにして、図17に示したような多孔質構造体1Sによって構成される装填体8がシート本体7に装填されたメインパッド部311が形成される。
3Dプリンタを用いて装填体8を造形することによって、装填体8としての多孔質構造体1Sの構成を3D造形用のデータを変更するだけで容易に変更できる。これによって装填体8の特性を容易に調整できる。例えば、3D造形用のデータを変更するだけで、容易に、骨格部2を構成する各部の寸法、並びにセル孔の形状及び大きさを変更したり、表皮部6における貫通孔6Bの大きさ、形状、数、及び位置を変更したりすることができる。したがって、このように構造を容易に変更することに伴い特性を変更した多孔質構造体1Sを造形することができ、特性を容易に調整でき装填体8を簡単かつ所期した通りに実現できる。
また、このような装填体8を用いることによって、様々な要求特性に容易に対応できる座席シート用のクッション材300を容易に得ることができる。
〔座席シート用のクッション材の第1変形例~第2変形例〕
本明細書で説明する各例において、多孔質構造体1は、座席シート用のクッション材300のクッションパッド310、バックパッド320、又は、ヘッドレスト340のいずれか一つのみを構成してもよい。
また、図27に示す変形例のように、多孔質構造体1は、座席シート用のクッション材300のクッションパッド310の一部のみ、バックパッド320の一部のみ、かつ/又は、ヘッドレスト340の一部のみを、構成してもよい。これにより、多孔質構造体1の大きさを小さくすることができ、ひいては、比較的小型の3Dプリンタによっても製造することが可能になる。その場合、座席シート用のクッション材300のクッションパッド310、バックパッド320、ヘッドレスト340のうち、多孔質構造体1によって構成された部分以外の部分については、例えば金型成形又はスラブ成形等において化学反応により発泡させる工程を経て製造されることにより、上述したような従来の一般的な構成で構成するとよい。例えば、図27の例のように、座席シート用のクッション材300のクッションパッド310、バックパッド320、かつ/又は、ヘッドレスト340は、それぞれ、互いに別体に構成された複数のクッション部3011を備え、当該複数のクッション部3011のうち一部(1つ又は複数)のクッション部3011のみが、多孔質構造体1から構成され、他のクッション部3011が、上述したような従来の一般的な構成で構成されてもよい。より具体的には、例えば、図27の例のように、座席シート用のクッション材300のクッションパッド310、バックパッド320、かつ/又は、ヘッドレスト340は、それぞれ、多孔質構造体1からなる1つ又は複数(図27の例では、2つ)の装填体8と、当該1つ又は複数の装填体8とは別体に構成され、当該1つ又は複数の装填体8が装填される穴部74を有し、上述したような従来の一般的な構成で構成される、シート本体7と、を備えてもよい。シート本体7の材質は特に限定されないが、例えば既存のシート用ウレタンフォームを使用することができる。既存のシート用ウレタンフォームの密度は、例えば30~80kg/m3である。既存のシート用ウレタンフォームのセル径は例えば、0.1~1.0mmである。既存のシート用ウレタンフォームの通気性は例えば5~150cc/cm3/secである。
あるいは、座席シート用のクッション材300のクッションパッド310、バックパッド320、かつ/又は、ヘッドレスト340は、互いに別体に構成された複数のクッション部3011からなり、当該複数のクッション部3011のそれぞれが、多孔質構造体1から構成されてもよい。これによっても、多孔質構造体1の大きさを小さくすることができ、ひいては、比較的小型の3Dプリンタによっても製造することが可能になる。
本明細書で説明する各例において、上述のように(また、図27の例のように)、座席シート用のクッション材300のクッションパッド310、バックパッド320、かつ/又は、ヘッドレスト340が、それぞれ、互いに別体に構成された複数のクッション部3011を備え、当該複数のクッション部3011のうち一部(1つ又は複数)又は全部のクッション部3011が、多孔質構造体1から構成される場合、互いに隣接する一対のクッション部3011どうしは、図28の例のように、互いに接着剤3012によって接着されていてもよい。この場合、接着剤3012は、各クッション部3011の着座者側の表面FSに露出するように配置されていないのが好適であり、言い換えれば、各クッション部3011の着座者側の表面FSから、裏面BSS側に、離れて配置されていると好適である。これにより、着座者がクッション部3011に対して荷重を掛けたときに、着座者が硬化した接着剤3012に当たるのを抑制でき、ひいては、着座者が硬化した接着剤3012に当たることにより感じ得る違和感を抑制できる。
この場合、上記互いに隣接する一対のクッション部3011のそれぞれの表面のうち、互いに対向する一対の対向面3011aどうしの距離(ひいては、接着剤3012の厚さ)L20(図28)は、2~10mmが好適である。
また、この場合、上記互いに隣接する一対のクッション部3011の着座者側の表面FSから接着剤3012までの距離L21(図28)は、2~20mmが好適である。着座者側の表面FSから接着剤3012までの距離L21(図28)は、着座者側の表面FSに対して垂直に測るものとする。
また、この場合、上記互いに隣接する一対のクッション部3011のうち一方が、多孔質構造体1から構成されており、上記互いに隣接する一対のクッション部3011のうち他方が、多孔質構造体1から構成されているか又は上述したような従来の一般的な構成で構成されていると、好適である。
あるいは、本明細書で説明する各例において、上述のように(また、図27の例のように)、座席シート用のクッション材300のクッションパッド310、バックパッド320、かつ/又は、ヘッドレスト340が、それぞれ、互いに別体に構成された複数のクッション部3011を備え、当該複数のクッション部3011のうち一部(1つ又は複数)又は全部のクッション部3011が、多孔質構造体1から構成される場合、互いに隣接する一対のクッション部3011どうしは、図29の例のように、互いに接着剤3012によって接着されていなくてもよい。これにより、着座者がクッション部3011に対して荷重を掛けたときに、着座者が硬化した接着剤3012に当たることにより感じ得る違和感を防止できる。
この場合、上記互いに隣接する一対のクッション部3011どうしは、互いから離間して配置されていると好適である。より具体的に、上記互いに隣接する一対のクッション部3011のそれぞれの表面のうち、互いに対向する一対の対向面3011aどうしの距離L23(図29)は、5~20mmが好適である。これにより、着座者がクッション部3011に対して荷重を掛けたときに、着座者が違和感を感じるのを抑制できる。
また、この場合、クッション部3011の厚さ方向の断面において、上記互いに隣接する一対のクッション部3011のそれぞれの表面は、着座者側の表面FSと対向面3011aとの間の角部3011bが、角張りのない湾曲形状をなしている(すなわち、アール付けされている)と、好適である。これにより、着座者がクッション部3011に対して荷重を掛けたときに、着座者が違和感を感じるのを抑制できる。
また、この場合、上記互いに隣接する一対のクッション部3011のうち一方が、多孔質構造体1から構成されており、上記互いに隣接する一対のクッション部3011のうち他方が、多孔質構造体1から構成されているか又は上述したような従来の一般的な構成で構成されていると、好適である。
本明細書で説明する各例において、多孔質構造体1の表皮部6は、半透明又は透明であると好適であり、半透明であるとより好適である。これにより、多孔質構造体1の骨格部2を、表皮部6を介して、多孔質構造体1の外部から視認することができる。これにより、例えば、多孔質構造体1を視認した者は、多孔質構造体1が3Dプリンタで造形されたものであることを簡単に把握できる等、多孔質構造体1の外観を向上できる。
この場合、多孔質構造体1の外観を向上させる観点から、多孔質構造体1の骨格部2は、不透明であると好適であるが、半透明又は透明であってもよい。一方、多孔質構造体1の製造容易性の観点から、多孔質構造体1は、その全体が同じ材料で構成されていると好適であり、ひいては、その全体(表皮部6及び骨格部2)が、半透明又は透明であると好適であり、半透明であるとより好適である。
また、この場合、表皮部6の厚さは、0.5~2.0mmであると、好適である。これにより、上述のとおり表皮部6を介して骨格部2を外部から視認可能にし、ひいては、多孔質構造体1が3Dプリンタで造形されたものであることを簡単に把握できるようにしつつも、多孔質構造体1が、荷重や引っ掻き等の実用負荷に対してより効果的に耐えることができ、ひいては、耐久性を向上できる。
ただし、多孔質構造体1の表皮部6は、不透明であってもよい。
なお、上述した任意の複数の異なる例の表皮部6の構成どうしを組み合わせてもよい。また、上述した任意の複数の異なる例の骨格部2の構成どうしを組み合わせてもよい。以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に何ら限定されるものではない。
本発明の装填体の製造方法、座席シート用のクッション材の製造方法、及び、装填体は、座席シートに用いられるのがより好適であり、車両用の座席シートに用いられるのがさらに好適である。
1:多孔質構造体、110:頂面、 120:底面、 130:側面、 1B:シート本体を構成する多孔質構造体、 1S:装填体を構成する多孔質構造体、 1S1:第1部分、 1S2:第2部分、
2:骨格部、 2B:骨部、 2Be:骨部の端部、 2B1:骨一定部、 2B2:骨変化部、 2B21:骨変化部の結合部側の端、 2B22:骨変化部の骨一定部側の端、 2B23:骨変化部の傾斜面、 2J:結合部、 3:膜、 11:多孔質構造体の第1部分、 12:多孔質構造体の第2部分、 13:多孔質構造体の第3部分、 21:第1セル区画部、 22:第2セル区画部、 211:第1環状部、 211L:第1大環状部、 211S:第1小環状部、 2111:第1環状部の内周側縁部、 222:第2環状部、 2221:第2環状部の内周側縁部、
300:座席シート用のクッション材、 301B:シートバック用クッション材、 301C:シートクッション用クッション材、
3011:クッション部、 3011a:対向面、 3011b:角部、 3012:接着剤、
310:クッションパッド、 311:メインパッド部、 312:サイドパッド部、 320:バックパッド、 321:メインパッド部、 322:サイドパッド部、 340:ヘッドレスト、 400:3Dプリンタ、 410:制御部、 420:造形部、 421:レーザ照射器、 430:支持台、 440:収容体、 LL:紫外線レーザ光、 LR:液体樹脂、 500:3D造形用データ、
6:表皮部、 61:頂面側表皮部、 62:側面側表皮部、 63:底面側表皮部、 6A:平滑部、 6B:貫通孔、
7:シート本体、 71:尻下部、 72:腿下周縁部、 73:溝部、 74:穴部、 721上側腿下周縁部721:下側腿下周縁部、
8:装填体、
C:セル孔、 C1:第1セル孔、 C2:第2セル孔、 O:骨格線、 U:多孔質構造体の単位部、 V1:第1仮想面、 V1L:第1大仮想面、 V1S:第1小仮想面、 V2:第2仮想面、BS:本体段差面、 PS:パッド段差面、
FS:着座者側の表面、 BSS:裏面

Claims (8)

  1. シート本体と、前記シート本体に形成された穴部に装填されている装填体と、を備える、座席シート用のクッション材における、前記装填体の製造方法であって、
    前記装填体は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成された、多孔質構造体であり、
    前記装填体を、3Dプリンタを用いて造形する、造形ステップを含み、
    前記多孔質構造体は、複数の第1セル孔を区画する骨格部を備えており、
    前記骨格部は、
    複数の骨部と、
    それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の結合部と、
    から構成されており、
    前記骨格部は、前記第1セル孔を内部に区画する第1セル区画部を有しており、
    前記第1セル区画部は、それぞれ環状に構成された複数の第1環状部を有しており、
    前記複数の第1環状部は、それぞれの内周側縁部によって区画する第1仮想面どうしが交差しないように互いに連結されており、
    前記第1セル孔は、前記複数の第1環状部と、前記複数の第1環状部がそれぞれ区画する複数の前記第1仮想面とによって、区画されており、
    前記第1環状部は、複数の前記骨部と複数の前記結合部とから構成されている、装填体の製造方法。
  2. 前記多孔質構造体は
    前記骨格部と、
    前記骨格部の外側の少なくとも一部に、前記複数の第1セル孔の少なくとも一部を塞ぐように、前記骨格部と一体に形成され、外側の少なくとも一部が面とされた、表皮部と、を備える、請求項1に記載の装填体の製造方法。
  3. 前記表皮部の前記面の少なくとも一部は、曲面を構成している、請求項2に記載の装填体の製造方法。
  4. 前記装填体は、第1部分と、前記第1部分と一体に形成されている第2部分とからなり、
    前記第2部分は、前記座席シート用のクッション材に着座者が着座した際の着座方向に交差する方向に、前記第1部分より突出している、請求項2又は3に記載の装填体の製造方法。
  5. 前記装填体は、前記座席シート用のクッション材における、着座者に対向する部分に配置される、請求項1~4のいずれか一項に記載の装填体の製造方法。
  6. 前記座席シート用のクッション材の体積に対する前記装填体の体積の割合は、10~70%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の装填体の製造方法。
  7. シート本体と、前記シート本体に形成された穴部に装填されている装填体と、を備える、座席シート用のクッション材の製造方法であって、
    前記装填体は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成された、多孔質構造体であり、
    3Dプリンタを用いて前記装填体を造形する、造形ステップと、
    前記造形ステップで得られた前記装填体を、前記シート本体に形成された穴部に装填する、装填ステップと、
    を含み、
    前記多孔質構造体は、複数の第1セル孔を区画する骨格部を備えており、
    前記骨格部は、
    複数の骨部と、
    それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の結合部と、
    から構成されており、
    前記骨格部は、前記第1セル孔を内部に区画する第1セル区画部を有しており、
    前記第1セル区画部は、それぞれ環状に構成された複数の第1環状部を有しており、
    前記複数の第1環状部は、それぞれの内周側縁部によって区画する第1仮想面どうしが交差しないように互いに連結されており、
    前記第1セル孔は、前記複数の第1環状部と、前記複数の第1環状部がそれぞれ区画する複数の前記第1仮想面とによって、区画されており、
    前記第1環状部は、複数の前記骨部と複数の前記結合部とから構成されている、
    座席シート用のクッション材の製造方法。
  8. シート本体と、前記シート本体に形成された穴部に装填されており、少なくとも一部が前記シート本体と接着されている装填体と、を備える、座席シート用のクッション材における、前記装填体であって、
    前記装填体は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成された、多孔質構造体であり、
    前記装填体は、3Dプリンタを用いて造形されたものであり、
    前記多孔質構造体は、複数の第1セル孔を区画する骨格部を備えており、
    前記骨格部は、
    複数の骨部と、
    それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の結合部と、
    から構成されており、
    前記骨格部は、前記第1セル孔を内部に区画する第1セル区画部を有しており、
    前記第1セル区画部は、それぞれ環状に構成された複数の第1環状部を有しており、
    前記複数の第1環状部は、それぞれの内周側縁部によって区画する第1仮想面どうしが交差しないように互いに連結されており、
    前記第1セル孔は、前記複数の第1環状部と、前記複数の第1環状部がそれぞれ区画する複数の前記第1仮想面とによって、区画されており、
    前記第1環状部は、複数の前記骨部と複数の前記結合部とから構成されている、
    装填体。
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