JP7258652B2 - 多孔質構造体、多孔質構造体の製造方法、及び、3d造形用データ - Google Patents
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Description
可撓性のある樹脂又はゴムから構成された多孔質構造体であって、
前記多孔質構造体は、その全体にわたって、骨格部を備えており、
前記骨格部は、
複数の骨部と、
それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の結合部と、
から構成されており、
前記骨格部は、第1セル孔を内部に区画する第1セル区画部を複数有しており、
前記複数の第1セル区画部は、それぞれ、それぞれ環状に構成された複数の第1環状部を有しており、
前記第1環状部は、当該第1環状部に隣接する一対の前記第1セル区画部によって共有されている。
本発明の多孔質構造体により、3Dプリンタによって、クッション性のある多孔質構造体を容易に製造することができる。
互いに隣接する一対の前記第1セル区画部によって共有される前記第1環状部の骨格線は、当該一対の第1セル区画部のうち前記共有される前記第1環状部に隣接する部分の骨格線のそれぞれと、連続していると、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
互いに連結された一対の前記第1環状部どうしの連結部分は、当該一対の第1環状部によって共有される、1つの前記骨部と当該骨部の両側の一対の前記結合部とから構成されていると、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
互いに連結された一対の前記第1環状部どうしの連結部分の骨格線は、当該一対の第1環状部のうち前記連結部分に隣接する部分の骨格線のそれぞれと、連続していると、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
前記第1セル区画部の前記複数の第1環状部は、それぞれ、それぞれの内周側縁部によって、平坦な第1仮想面を区画しており、
前記第1セル孔は、前記第1セル区画部の前記複数の第1環状部と、前記複数の第1環状部がそれぞれ区画する複数の前記第1仮想面とによって、区画されており、
前記第1セル区画部の前記複数の第1環状部は、それぞれの内周側縁部によって区画する前記第1仮想面どうしが交差しないように互いに連結されていると、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
前記第1セル区画部の前記複数の第1環状部は、
それぞれの内周側縁部によって平坦な第1小仮想面を区画する、1つ又は複数の第1小環状部と、
それぞれの内周側縁部によって平坦かつ前記第1小仮想面よりも面積の大きな第1大仮想面を区画する、1つ又は複数の第1大環状部と、
を含んでいると、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
各前記第1環状部は、それぞれ、複数の前記骨部と複数の前記結合部とから構成されており、
1つの前記第1セル区画部の前記第1大環状部の少なくとも1つの前記骨部は、前記第1セル区画部に隣接する他の1つの前記第1セル区画部の前記第1小環状部によって共有されていると、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
前記複数の第1セル区画部の骨格線は、それぞれ多面体をなしているとともに、空間充填するように互いに連なっていると、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
前記複数の第1セル区画部の骨格線がなす多面体は、
1種類の多面体のみを含んでいてもよいし、あるいは、
複数種類の多面体を含んでいてもよい。
前記複数の第1セル区画部の骨格線は、それぞれ、ケルビン14面体、正3角柱、正6角柱、立方体、直方体、又は、菱形12面体をなしていてもよい。
この場合も、多孔質構造体のクッション材としての特性が良好になる。
前記複数の第1セル区画部の骨格線は、それぞれ、ケルビン14面体をなすと、好適である。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
前記骨格部は、第2セル孔を内部に区画する第2セル区画部を複数有しており、
前記複数の第2セル区画部の骨格線は、それぞれ、ケルビン14面体以外の多面体をなしていてもよい。
この場合も、多孔質構造体のクッション材としての特性が良好になる。
前記多孔質構造体は、クッション材に用いられるものであるとよい。
前記多孔質構造体は、3Dプリンタによって造形されたものであるとよい。
3Dプリンタを用いて、上述の多孔質構造体を製造するものである。
これにより、3Dプリンタによって、クッション性のある多孔質構造体を容易に製造することができる。
3Dプリンタの造形部が造形を行う際に前記3Dプリンタの制御部に読み込まれる3D造形用データであって、
前記制御部が、前記造形部に、上述の多孔質構造体を、造形させるように構成されている。
これにより、3Dプリンタによって、クッション性のある多孔質構造体を容易に製造することができる。
各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
また、図1~図10、図12~図20では、多孔質構造体の向きを理解しやすくするために、それぞれの例の多孔質構造体に固定されたXYZ直交座標系の向きを表示している。
図1~図4では、本実施形態に係る多孔質構造体1のうち、直方体に切断された一部分を、それぞれ別々の角度から観ている。図1は、多孔質構造体1の当該部分における、ある1つの面を平面視しており、すなわち、多孔質構造体1の当該部分を、図2~図4のC矢印の方向(-X方向)から観ている。図2は、多孔質構造体1の当該部分における、図1での右側の面を平面視しており、すなわち、多孔質構造体1の当該部分を、図1、図3、図4のA矢印の方向(-Y方向)から観ている。図3は、多孔質構造体1の当該部分における、図1と同じ面を斜め上から観ており、すなわち、多孔質構造体1の当該部分を、図1、図2、図4のD矢印の方向から観ている。図4は、多孔質構造体1の当該部分における、図1及び図3とは逆側の面を斜め上から観ており、すなわち、多孔質構造体1の当該部分を、図2、図3のB矢印の方向から観ている。
なお、以下では、説明の便宜のため、図12~図14にそれぞれ示す第1~第3変形例、図15~図18に示す第4変形例、図19に示す第5変形例、図20に示す第6変形例についても、併せて説明する。
多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されている。より具体的に、多孔質構造体1は、多孔質構造体1の骨格をなす骨格部2と、骨格部2によって区画された多数のセル孔Cと、を備えている。骨格部2は、多孔質構造体1の全体にわたって存在しており、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されている。本例において、多孔質構造体1のうち、骨格部2以外の部分は、空隙である。
ここで、「可撓性のある樹脂」とは、外力が加わると変形することができる樹脂を指しており、例えば、エラストマー系の樹脂が好適であり、ポリウレタンがより好適であり、軟質ポリウレタンがさらに好適である。ゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴムが挙げられる。多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂又はゴムから構成されているので、外力の付加・解除に応じた圧縮・復元変形が可能であり、クッション性を有することができる。
なお、3Dプリンタによる製造のし易さの観点からは、多孔質構造体1は、可撓性のある樹脂から構成されている場合のほうが、ゴムから構成されている場合よりも、好適である。
図1~図10の例のように、多孔質構造体1の各単位部Uの外縁(外輪郭)が立方体をなす場合、X-Y-Zそれぞれの方向に等しい機械特性を得ることが可能になる。
なお、単位部Uの外縁(外輪郭)は、立方体以外の直方体、あるいは、その他の形状をなしていてもよい。また、多孔質構造体1を構成する各単位部Uの構成及び/又は寸法は、完全に同一でなくてもよく、個々に少しずつ異なっていてもよい。多孔質構造体1の各単位部Uの外縁(外輪郭)が立方体以外の直方体をなす場合、多孔質構造体1の機能として、意図的な異方性を得ることが可能になる。例えば、多孔質構造体1を車両用のシートパッドに適用する場合、各単位部Uの外縁(外輪郭)を立方体以外の直方体とすることで、例えばZ方向(人が座る方向)には柔らかくして乗り心地を向上させること可能になる。
図6、図7、図9、図16~図18、図20等には、多孔質構造体1の一部分に、骨格部2の骨格線Oを示している。骨格部2の骨格線Oは、各骨部2Bの骨格線Oと、各結合部2Jの骨格線Oと、からなる。骨部2Bの骨格線Oは、骨部2Bの中心軸線であり、後述の骨一定部2B1の中心軸線と骨変化部2B2の中心軸線とからなる。結合部2Jの骨格線Oは、当該結合部2Jに結合された各骨部2Bの中心軸線をそれぞれ当該結合部2J内へ滑らかに延長させて互いに連結させてなる、延長線部分である。骨部2Bの中心軸線は、骨部2Bの延在方向の各点における、骨部2Bの延在方向に垂直な断面において骨部2Bのなす形状の重心点どうしを、結んでなる線である。
骨部2Bの延在方向は、骨部2Bの骨格線O(骨格線Oのうち、骨部2Bに対応する部分。以下同じ。)の延在方向である。
多孔質構造体1は、その全体にわたって骨格部2を備えているので、通気性を確保しつつ、外力の付加・解除に応じた圧縮・復元変形が可能であるので、クッション材としての特性が良好になる。また、多孔質構造体1の構造がシンプルになり、3Dプリンタによる造形がしやすくなる。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち、一部又は全部の骨部2Bが、湾曲しながら延在してもよい。この場合、一部又は全部の骨部2Bが湾曲していることで、荷重の入力時において、骨部2Bひいては多孔質構造体1の急激な形状変化を防ぎ、局所的な座屈を抑制することができる。
また、図1~図10、図12~図14、図20の各図面においては、骨格部2の各面が平坦であり、互いに隣接する一対の面どうしが突き合うエッジ部分(辺部分)がそれぞれ角張っている。ただし、本明細書で説明する各例において、骨格部2の各面のうち一部又は全部は、例えば図16~図19の各例のように、非平坦(例えば湾曲状)であってもよい。図16~図19の各例では、骨格部2の各面が、湾曲状である。また、本明細書で説明する各例において、骨格部2の各エッジ部分は、滑らかに湾曲していてもよい。
図11は、図1~図10、図13、図14、図20の各例の骨部2Bを、単独で示している。図11(a)は骨部2Bに外力が加わっていない自然状態を示しており、図11(b)は骨部2Bに外力が加わった状態を示している。図11には、骨部2Bの中心軸線(骨格線O)を示している。
図11(a)に示すように、図1~図10、図13、図14、図20の各例において、各骨部2Bは、それぞれ、断面積を一定に保ちつつ延在する、骨一定部2B1と、骨一定部2B1の延在方向の両側において、断面積を徐々に変化させつつ、骨一定部2B1から結合部2Jまで延在する、一対の骨変化部2B2と、から構成されている。骨変化部2B2は、断面積を徐々に変化させつつ延在する。当該各例において、各骨変化部2B2は、断面積を徐々に増大させつつ、骨一定部2B1から結合部2Jまで延在している。なお、これらの例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていても、同様の効果が得られる。また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bは、それぞれ、骨一定部2B1の一方側の端部のみに骨変化部2B2を有し、骨一定部2B1の他方側の端部が直接結合部2Jに結合されていてもよく、その場合も、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
ここで、骨一定部2B1及び骨変化部2B2の断面積は、それぞれ、骨一定部2B1及び骨変化部2B2の骨格線Oに垂直な断面の断面積を指す。また、本明細書において、「徐々に変化(増大又は減少)」とは、途中で一定となることなく常に滑らかに変化(増大又は減少)することを指す。
図1~図10、図13、図14、図20の各例では、多孔質構造体1を構成する各骨部2Bが、骨一定部2B1と骨変化部2B2とからなり、骨変化部2B2が、骨一定部2B1から結合部2Jに向かうにつれて断面積が徐々に増大するので、骨部2Bが、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界の近傍部分で、骨一定部2B1に向かって細くなるようにくびれた形状をなしている。そのため、外力が加わる際に、骨部2Bが、そのくびれた部分や骨一定部2B1の中間部分で座屈変形しやすくなり、ひいては、多孔質構造体1が圧縮変形しやすくなる。これにより、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームと同等の挙動及び特性が得られる。また、これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより柔らかくなる。例えば、多孔質構造体1を着座用のクッション材(シートパッド等)として用いる場合、着座する際の、特に着座し始めのタイミングで、着座者に、より柔らかい感触を与えるようになる。このような柔らかい感触は、一般的に、広く好まれるものであり、また、高級車のシートパッドの着座者(例えば運転手付きで後部座席に人を乗せる場合、後部座席に座る着座者)に好まれるものである。
0.15≦A0/A1≦2.0
を満たしていると、好適である。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感を、クッション材の特性として、また特に着座用のクッション材の特性として、柔らかすぎず、硬すぎず、ほどよい硬さにすることができる。例えば、多孔質構造体1を着座用のクッション材(シートパッド等)として用いる場合、着座する際の、特に着座し始めのタイミングで、着座者に、ほどよい硬さの感触を与えるようになる。比A0/A1が小さいほど、多孔質構造体1の表面のタッチ感が、より柔らかくなる。比A0/A1が0.15未満である場合は、多孔質構造体1の表面のタッチ感が柔らかくなりすぎて、クッション材の特性として好ましくなくなるおそれがあり、また、3Dプリンタによる製造がしにくくなるため、製造性の面で好ましくない。よって、比A0/A1は0.15以上であると好適である。比A0/A1が2.0超である場合は、多孔質構造体1の表面のタッチ感が硬くなりすぎて、クッション材の特性として好ましくなくなるおそれがある。よって、比A0/A1は2.0以下であると好適である。
なお、比A0/A1は、0.5以上であると、より好適である。
より具体的に、図1~図10、図13、図14、図20の各例では、骨部2Bが骨一定部2B1とその両側に連続する一対の骨変化部2B2とを有しており、各骨変化部2B2が、それぞれ、断面積を徐々に増大させつつ、骨一定部2B1から結合部2Jまで延在しており、比A0/A1が1.0未満である。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感を、クッション材の特性として、また特に着座用のクッション材の特性として、比較的柔らかくすることができる。このような柔らかい感触は、一般的に、広く好まれるものであり、また、高級車のシートパッドの着座者(例えば運転手付きで後部座席に人を乗せる場合、後部座席に座る着座者)に好まれるものである。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていてもよいし、あるいは、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、いずれの場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
そして、骨変化部2B2が、断面積を徐々に減少させつつ、骨一定部2B1から結合部2Jまで延在している場合、比A0/A1は、1.0超となる。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていてもよいし、あるいは、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、いずれの場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
この場合、比A0/A1は、1.0となる。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていてもよいし、あるいは、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、いずれの場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
なお、結合部2Jの断面積は、結合部2Jの骨格線Oに垂直な断面の断面積を指す。
なお、これらの例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bにおいて、骨部2Bが骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有する場合、骨一定部2B1の断面積は、骨変化部2B2及び結合部2Jのそれぞれのどの部分(ただし、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界部分を除く)の断面積よりも大きくてもよい。
なお、骨一定部2B1、骨変化部2B2、結合部2Jの幅は、それぞれ、骨一定部2B1、骨変化部2B2、結合部2Jの骨格線Oに垂直な断面に沿って測ったときの、当該断面における最大幅を指す。結合部2Jの骨格線Oは、骨格線Oのうち、結合部2Jに対応する部分である。図11(a)には、参考のため、骨一定部2B1の幅W0と、骨変化部2B2の幅W1とを、示している。
なお、これらの例に限らず、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bにおいて、骨部2Bが骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有する場合、骨一定部2B1の幅は、骨変化部2B2及び結合部2Jのそれぞれのどの部分(ただし、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界部分を除く)の幅よりも大きくてもよい。この場合、比A0/A1は1.0超となる。
一方、多孔質構造体1の外縁(外輪郭)形状の精度を向上させる観点や、セル孔C間の隙間(間隔)を小さくする観点や、クッション材(特にシートパッド、さらに特には車両用シートパッド)としての特性を良好にする観点からは、骨一定部2B1の幅W0(図11、図15)は、2.0mm以下であると好適である。
なお、図12、図15~図19の各例のように、骨部2Bが骨一定部2B1のみからなる場合、骨一定部2B1の幅W0とは、骨部2Bの幅W0(図15)と同じである。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bがこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
これによっても、外力が加わる際に、骨部2Bが、骨一定部2B1と骨変化部2B2との境界近傍におけるくびれた部分で、座屈変形しやすくなり、ひいては、多孔質構造体1が圧縮変形しやすくなる。これにより、多孔質構造体1の表面のタッチ感がより柔らかくなる。
ここで、骨変化部2B2の延在方向は、骨変化部2B2の中心軸線(骨格線O)の延在方向である。また、骨変化部2B2の傾斜面2B23の幅W2は、骨変化部2B2の骨格線Oに垂直な断面に沿って測ったときの、傾斜面2B23の幅を指す。
なお、これらの図の例では、骨変化部2B2が有する複数の傾斜面2B23の全てがこの構成を満たしているが、骨変化部2B2が有する複数の傾斜面2B23のうち一部の傾斜面2B23のみがこの構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。また、これらの図の例では、骨変化部2B2が有する複数の傾斜面2B23が互いに合同であるが、骨変化部2B2が有する複数の傾斜面2B23が互いに合同でなくてもよく、互いに形状及び/又は寸法が異なっていてもよい。また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
また、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部又は全部の骨部2Bにおいて、骨部2Bが骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有する場合、骨変化部2B2の各傾斜面2B23は、骨一定部2B1から結合部2Jに向かうにつれて、幅W2が徐々に減少していてもよい。この場合、比A0/A1は1.0超となる。
これにより、多孔質構造体1の構造がシンプルになり、3Dプリンタによる造形がしやすくなる。また、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームでの機械特性を再現しやすい。また、このように骨部2Bを柱状に構成することにより、仮に骨部2Bを薄い膜状の部分に置き換えた場合に比べて、多孔質構造体1の耐久性を向上できる。
なお、骨部2Bの断面形状、骨一定部2B1の断面形状、骨変化部2B2の断面形状は、それぞれ、骨部2B、骨一定部2B1、骨変化部2B2の中心軸線(骨格線O)に垂直な断面における形状である。
なお、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち一部の骨部2Bのみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
また、本明細書で説明する各例においては、骨格部2を構成する各骨部2Bのうち全部又は一部の骨部2Bにおいて、骨部2B(骨部2Bが骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有する場合、骨一定部2B1及び/又は骨変化部2B2)は、それぞれの断面形状が、正三角形以外の多角形(正三角形以外の三角形、四角形等)でもよいし、あるいは、真円形以外の円形(楕円形等)でもよく、その場合でも、同様の効果が得られる。また、骨部2Bが骨一定部2B1及び骨変化部2B2を有する場合、骨一定部2B1と骨変化部2B2は、それぞれの断面形状が、互いに同じでもよいし、互いに異なるものでもよい。
ここで、「多孔質構造体1の体積VS」とは、多孔質構造体1の外縁(外輪郭)によって囲まれた内部空間の全体(骨格部2の占める体積と、後述の膜3が設けられる場合は膜3の占める体積と、空隙の占める体積との合計)の体積を指している。
多孔質構造体1を構成する材料を同じとして考えたとき、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が高いほど、多孔質構造体1は硬くなる。また、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積の割合VBが低いほど、多孔質構造体1は柔らかくなる。
多孔質構造体1に外力が付加されたときに多孔質構造体1に生じる反力、ひいては、多孔質構造体1の硬さを、クッション材として、特には着座用のクッション材として、良好なものにする観点からは、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合が、4~8%であると、より好適である。
なお、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合を調整する方法としては、任意の方法を用いてよいが、例えば、多孔質構造体1の各単位部Uの寸法を変えずに、骨格部2を構成する一部又は全部の骨部2Bの太さ(断面積)、及び/又は、骨格部2を構成する一部又は全部の結合部Jの大きさ(断面積)を、調整する方法が挙げられる。
その一例として、図13に示す第2変形例では、点線で示すように、骨格部2を構成する各骨部2Bの太さ(断面積)、及び、骨格部2を構成する各結合部Jの大きさ(断面積)を、実線で示す多孔質構造体1(図8の例)よりも増大させることにより、多孔質構造体1の体積VSのうち、骨格部2の占める体積VBの割合を増大させている。
多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、多孔質構造体1の25%硬度は、60~500Nが好適であり、100~450Nがより好適である。ここで、多孔質構造体1の25%硬度(N)は、インストロン型圧縮試験機を用いて、23℃、相対湿度50%の環境にて、多孔質構造体を25%圧縮するのに要する荷重(N)を測定して得られる測定値であるものとする。
各図の例において、各第1セル区画部21は、それぞれ、複数(具体的には、14つ)の第1環状部211を有している。各第1環状部211は、それぞれ、環状に構成されている。第1セル区画部21の複数の第1環状部211は、それぞれ、それぞれの環状の内周側縁部2111によって、平坦な第1仮想面V1を区画している。第1仮想面V1は、その外縁が第1環状部211の内周側縁部2111によって区画された、仮想閉平面である。第1セル区画部21を構成する複数の第1環状部211は、それぞれの内周側縁部2111によって区画する第1仮想面V1どうしが交差しないように互いに連結されている。
第1セル孔C1は、第1セル区画部21を構成する複数の第1環状部211と、これら複数の第1環状部211がそれぞれ区画する複数の第1仮想面V1とによって、区画されている。概略的に言えば、第1環状部211は、第1セル孔C1のなす立体形状の辺を区画する部分であり、第1仮想面V1は、第1セル孔C1のなす立体形状の構成面を区画する部分である。
このような構成により、外力の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形の挙動が、クッション材として、特には着座用のクッション材(シートパッド等)として、より良好になる。すなわち、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
これにより、仮に、第1環状部211が、当該第1環状部211に隣接する一対の第1セル区画部21(すなわち、当該第1環状部211を間に挟んだ一対の第1セル区画部21)によって共有されておらず、すなわち、当該一対の第1セル区画部21が互いから独立して構成されており、それぞれの第1環状部211が互いに隣接又は互いから離間して形成されている場合や、それぞれの第1環状部211の間にリブ等が介在している場合に比べて、第1セル孔C1どうしの間の隙間(間隔)(ひいては、第1セル孔C1どうしの間の骨格部2の肉部分)を小さくすることができるので、多孔質構造体1のクッション材(特にはシートパッド、さらに特には車両用シートパッド)としての特性を向上できる。よって、3Dプリンタによって、クッション性のある多孔質構造体1を容易に製造することができる。
なお、骨格部2を構成する各第1環状部211がこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各第1環状部211のうち一部の第1環状部211のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例において、互いに隣接する一対の第1セル区画部21の骨格線Oどうしは、当該一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211において、一致していると、好適である。
これにより、仮に、第1仮想面V1が、当該第1仮想面V1に隣接する一対の第1セル孔C1(すなわち、当該第1仮想面V1を間に挟んだ一対の第1セル孔C1)によって共有されておらず、すなわち、当該一対の第1セル孔C1の第1仮想面V1が互いから離間した位置にある場合に比べて、第1セル孔C1どうしの間の隙間(間隔)を小さくすることができるので、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
なお、骨格部2を構成する各第1仮想面V1がこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2を構成する各第1仮想面V1のうち一部の第1仮想面V1のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに隣接する一対の第1セル区画部21の骨格線Oどうしは、当該一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211において、一致していると、好適である。
また、同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに隣接する一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211を構成する骨部2Bの断面積(例えば、骨一定部2B1の断面積)が、当該一対の第1セル区画部21のうち前記共有される第1環状部211に隣接する部分を構成する骨部2Bの断面積(例えば、骨一定部2B1の断面積)のそれぞれと、同じであると、好適である。
なお、骨格部2において互いに隣接する一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211の全てがこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2において互いに隣接する一対の第1セル区画部21によって共有される第1環状部211のうち一部の第1環状部211のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
これにより、多孔質構造体のクッション材としての特性がより良好になる。
同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに連結された一対の第1環状部211の骨格線Oどうしは、当該一対の第1環状部211どうしの連結部分において、一致していると、好適である。
また、同様の観点から、本明細書で説明する各例においては、各図の例のように、互いに隣互いに連結された一対の第1環状部211どうしの連結部分を構成する骨部2Bの断面積(例えば、骨一定部2B1の断面積)が、当該一対の第1環状部211のうち前記連結部分に隣接する部分を構成する骨部2Bの断面積(例えば、骨一定部2B1の断面積)のそれぞれと、同じであると、好適である。
なお、骨格部2において互いに連結された一対の第1環状部211どうしの連結部分の全てがこの構成を満たしていると好適であるが、骨格部2において互いに連結された一対の第1環状部211どうしの連結部分のうち一部の連結部分のみが、この構成を満たしていてもよく、その場合でも、程度の差はあり得るものの、同様の効果が得られる。
図1、図7、図9、図16~図18、図20等には、骨格部2のうち、第1セル区画部21を構成する部分の骨格線Oの一部を示している。これらの図面から判るように、各図の例において、第1大環状部211Lは、その骨格線Oが正6角形をなしており、それに伴い、第1大仮想面V1Lも、略正6角形をなしている。また、各図の例において、第1小環状部211Sは、その骨格線Oが正4角形(正方形)をなしており、それに伴い、第1小仮想面V1Sも、略正4角形をなしている。このように、各図の例において、第1小仮想面V1Sと第1大仮想面V1Lとは、面積だけでなく、形状も異なる。
各第1大環状部211Lは、それぞれ、複数(各図の例では、6つ)の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの延在方向の端部2Beどうしを結合する複数(各図の例では、6つ)の結合部2Jと、から構成されている。各第1小環状部211Sは、それぞれ、複数(各図の例では、4つ)の骨部2Bと、これらの複数の骨部2Bの端部2Beどうしを結合する複数(各図の例では、4つ)の結合部2Jと、から構成されている。
そして、各図の例において、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oは、それぞれ、ケルビン14面体(切頂8面体)をなしている。ケルビン14面体(切頂8面体)は、6つの正4角形の構成面と8つの正6角形の構成面とから構成される、多面体である。これに伴い、各第1セル区画部21によって区画される第1セル孔C1も、略ケルビン14面体をなしている。図1~図14、図20の各例では、各骨部2Bが、骨一定部2B1だけでなく、その両側に骨変化部2B2を有していることから、第1セル孔C1の形状は、数学的な(完全な)ケルビン14面体をなしているわけではない。骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oは、空間充填するように互いに連なっている。すなわち、複数の第1セル区画部21の骨格線Oどうしの間には、隙間がない。
また、各図の例において、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oは、空間充填するように互いに連なっているので、多孔質構造体1を構成する第1セル孔C1間の隙間(間隔)をより小さくすることが可能になる。よって、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。
例えば、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oのなす多面体(ひいては、第1セル孔C1のなす略多面体)は、空間充填できる(隙間無く配置できる)ようなものであると好適である。これにより、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oを、空間充填するように互いに連ならせることができるので、多孔質構造体のクッション材としての特性を向上できる。この場合、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oがなす多面体(ひいては、第1セル孔C1のなす略多面体)は、各図の例のように1種類の多面体のみを含んでいてもよいし、あるいは、複数種類の多面体を含んでいてもよい。ここで、多面体に関し、「種類」とは、形状(構成面の数や形状)を指しており、具体的には、形状(構成面の数や形状)が異なる2つの多面体については2種類の多面体として扱うが、形状は同じであり寸法のみが異なる2つの多面体については同じ種類の多面体として扱うことを意味する。骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oのなす多面体が、空間充填できるとともに1種類の多面体のみを含む場合の当該多面体の例としては、ケルビン14面体の他に、正3角柱、正6角柱、立方体、直方体、菱形12面体等が挙げられる。なお、各図の例のように、第1セル区画部21の骨格線Oの形状をケルビン14面体(切頂8面体)とした場合は、他の形状に比べて、化学反応によって発泡させる工程を経て製造された一般的なポリウレタンフォームと同等のクッション材の特性を、最も再現し易い。また、第1セル区画部21の骨格線Oの形状をケルビン14面体(切頂8面体)とした場合は、X-Y-Zそれぞれの方向に等しい機械特性を得ることができる。骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oのなす多面体が、空間充填できるとともに複数種類の多面体を含む場合の当該多面体の例としては、正4面体と正8面体との組み合わせ、正4面体と切頂4面体との組み合わせ、正8面体と切頂6面体との組み合わせ等が挙げられる。なお、これらは、2種類の多面体の組み合わせの例であるが、3種類以上の多面体の組み合わせも可能である。
また、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oのなす多面体(ひいては、第1セル孔C1のなす略多面体)は、例えば、任意の正多面体(全ての面が合同な正多角形で、全ての頂点において接する面の数が等しい凸多面体)、半正多面体(全ての面が正多角形で、全ての頂点形状が合同(頂点に集まる正多角形の種類と順序が同じ)な凸多面体のうち、正多面体以外)、角柱、角錐等が可能である。
また、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21のうちの一部又は全部の第1セル区画部21の骨格線Oは、多面体以外の立体形状(例えば、球、楕円体、円柱等)をなしていてもよい。ひいては、骨格部2を構成する複数の第1セル孔C1のうちの一部又は全部の第1セル孔C1は、略多面体以外の略立体形状(例えば、略球、略楕円体、略円柱等)をなしていてもよい。
ただし、第1セル区画部21を構成する複数の第1環状部211は、それぞれ、大きさ及び/又は形状(種類)が互いに同じでもよい。第1セル区画部21を構成する各第1環状部211の大きさ及び形状が同じである場合も、X-Y-Zそれぞれの方向に等しい機械特性を得ることができる。
なお、多孔質構造体1を構成する各第1環状部211(ひいては第1仮想面V1)のうち、少なくとも1つの第1環状部211の骨格線O(ひいては第1仮想面V1)が、本例のような正6角形、正4角形以外の任意の多角形状、あるいは、多角形状以外の平面形状(例えば、円(真円、楕円等))をなしてもよい。第1環状部211の骨格線O(ひいては第1仮想面V1)の形状が円(真円、楕円等)である場合は、第1環状部211の骨格線O(ひいては第1仮想面V1)の形状がシンプルになるので、製造性や特性の調整のし易さを向上できるとともに、より均質な機械特性が得られる。例えば、第1環状部211の骨格線O(ひいては第1仮想面V1)の形状が、荷重が掛かる方向に対して略垂直な方向に長い楕円(横長の楕円)である場合は、荷重が掛かる方向に略平行な方向に長い楕円(縦長の楕円)である場合に比べて、当該第1仮想面V1を区画する第1環状部211が、ひいては、多孔質構造体1が、荷重の入力に対して変形し易くなる(柔らかくなる)。
図1、図2、図5~図10(特に図6)に示すように、各第2セル区画部22は、それぞれ、複数(これらの図の例では、2つ)の第2環状部222を有している。各第2環状部222は、それぞれ、環状に構成されている。第2セル区画部22の複数の第2環状部222は、それぞれ、それぞれの環状の内周側縁部2221によって、平坦な第2仮想面V2を区画している。第2仮想面V2は、その外縁が第2環状部222の内周側縁部2221によって区画された、仮想閉平面である。第2セル区画部22を構成する各第2環状部222は、それぞれの内周側縁部2221によって区画する第2仮想面V2どうしが交差(本例では、直交)するように互いに連結されている。
第2セル孔C2は、第2セル区画部22を構成する各第2環状部のそれぞれの内周側縁部2221と、これらの内周側縁部2221どうしを連結する仮想面とによって、区画されている。
このような構成により、外力の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形の挙動が、クッション材として、特には着座用のクッション材(シートパッド等)として、より良好になる。すなわち、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。
そして、図1~図10、図12~図14の各例において、骨格部2を構成する複数の第2セル区画部22の骨格線Oは、それぞれ、正8面体をなしている。正8面体は、8つの正3角形の構成面から構成される、多面体である。ただし、これらの例において、第2セル区画部22の骨格線Oは、当該骨格線Oのなす多面体(正8面体)の各辺のうち一部の辺のみを構成している。これに伴い、各第2セル区画部22によって区画される第2セル孔C2も、略正8面体をなしている。図1~図10、図12~図14の各例では、各骨部2Bが、骨一定部2B1だけでなく、その両側に骨変化部2B2を有していることから、第1セル孔C1の形状は、数学的な(完全な)正8体をなしているわけではない。
図1~図10、図12~図14の各例においては、図4や図10に示すように、第2セル孔C2は、その一部分が、当該第2セル孔C2に隣接する(すなわち、当該第2セル孔C2を間に挟んだ)一対の第1セル孔C1の内部に入っており、すなわち、これら一対の第1セル孔C1と第2セル孔C2とが、一部分で重複している。これにより、仮に第1セル孔C1と第2セル孔C2とが、互いに重複していない場合に比べて、多孔質構造体1を構成するセル孔Cの総数を増やすことができ、ひいては、多孔質構造体1のクッション材としての特性を向上できる。ただし、第1セル孔C1と第2セル孔C2とは、互いに重複しないように配置されていてもよい。
また、これらの図の例において、第2セル区画部22を構成する各第2仮想面V2の形状及び面積は、互いに同じである。
ただし、第2セル孔C2の直径は第1セル孔C1の直径以上であってもよい。
例えば、骨格部2を構成する複数の第2セル区画部22の骨格線Oのなす多面体は、それぞれ、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oのなす多面体とは異なる種類のものであると、好適である。例えば、各図の例のように、骨格部2を構成する複数の第1セル区画部21の骨格線Oがそれぞれケルビン14面体をなす場合、骨格部2を構成する複数の第2セル区画部22の骨格線Oは、それぞれ、ケルビン14面体以外の多面体(図1~図10、図12~図14の各例では、正8面体)をなしていると、好適である。
骨格部2を構成する複数の第2セル区画部22の骨格線Oのなす多面体(ひいては、第2セル孔C2のなす略多面体)は、例えば、任意の正多面体(全ての面が合同な正多角形で、全ての頂点において接する面の数が等しい凸多面体)、半正多面体(全ての面が正多角形で、全ての頂点形状が合同(頂点に集まる正多角形の種類と順序が同じ)な凸多面体のうち、正多面体以外)、角柱、角錐等が可能である。
また、骨格部2を構成する複数の第2セル区画部22のうちの一部又は全部の第2セル区画部22の骨格線Oは、多面体以外の立体形状(例えば、球、楕円体、円柱等)をなしていてもよい。ひいては、骨格部2を構成する複数の第2セル孔C2のうちの一部又は全部の第2セル孔C2は、略多面体以外の略立体形状(例えば、略球、略楕円体、略円柱等)をなしていてもよい。
図1~図10、図12~図14の各例において、各第2仮想面V2は、膜によって覆われておらず、開放されており、すなわち、開口を構成している。このため、第2仮想面V2を通じて、セル孔Cどうし(特に、第1セル孔C1及び第2セル孔C2どうし)が連通され、セル孔C間の通気が、可能にされている。これにより、多孔質構造体1の通気性を向上できるとともに、外力の付加・解除に応じた多孔質構造体1の圧縮・復元変形がし易くなる。
ただし、これらの例に限らず、多孔質構造体1の各セル孔Cは、それぞれ、任意の数の単位部Uから構成されてもよいし、また、各単位部Uは、それぞれ、任意の数のセル孔Cを構成してもよい。
なお、図15~図18の例は、多孔質構造体1が、第2セル区画部22を有さずに第1セル区画部21のみを有しており、多孔質構造体1の各骨部2Bが骨変化部2B2を有さずに骨一定部2B1のみを有しており、各骨部2Bの延在方向に対し垂直な断面の形状が円形をなす点で、図1~図10の例とは異なる。また、図20の例は、多孔質構造体1が、第2セル区画部22を有さずに第1セル区画部21のみを有している点で、図1~図10の例とは異なる。
なお、従来のクッション性を有する多孔質構造体は、上述のように、化学反応によって発泡させる工程を経て製造されていたため、直径が5mm以上のセル孔Cを形成することはできなかった。しかし、多孔質構造体が直径5mm以上のセル孔Cを有する場合でも、クッション材としての特性として従来と同等のものが得られる。そして、多孔質構造体が直径5mm以上のセル孔Cを有するようにすることにより、3Dプリンタによる製造がし易くなるのである。
また、多孔質構造体1が直径5mm以上のセル孔Cを有することにより、多孔質構造体1の通気性や変形し易さを向上しやすくなる。
セル孔Cの直径が大きくなるほど、3Dプリンタを用いた多孔質構造体1の製造が実現し易くなり、また、通気性や変形し易さを向上しやすくなる。このような観点から、多孔質構造体1は、少なくとも1つ(好適には複数)のセル孔Cの直径が、より好適には8mm以上、さらに好適には10mm以上であるとよい。
一方、多孔質構造体1のセル孔Cが大きすぎると、多孔質構造体1の外縁(外輪郭)形状をきれいに(滑らかに)形成するのが難しくなり、例えば多孔質構造体1をシートパッドに適用する場合等に、形状精度が低下し外観が悪化するおそれがある。また、クッション材としての特性も、十分に良好でなくなるおそれがある。よって、外観やクッション材としての特性を向上させる観点から、多孔質構造体1の各セル孔Cの直径は、好適には30mm未満、より好適には25mm以下、さらに好適には20mm以下であるとよい。
なお、多孔質構造体1は、上記の数値範囲を満たすセル孔Cを多く有するほど、上記の各効果が得られやすくなる。この観点からは、多孔質構造体1を構成する複数のセル孔Cのうち、少なくとも各第1セル孔C1の直径が、上記の少なくともいずれか1つの数値範囲を満たすと、好適である。また、多孔質構造体1を構成する各セル孔Cの直径が、上記の少なくともいずれか1つの数値範囲を満たすと、より好適である。
なお、セル孔Cの直径は、各図の例のようにセル孔Cが厳密な球形状とは異なる形状をなす場合、セル孔Cの外接球の直径を指す。
多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、車内のエアコンの効き及び耐ムレ性を高めたり、乗り心地を高める観点からは、多孔質構造体1の通気性は、100~700cc/cm2/secが好適であり、150~650cc/cm2/secがより好適であり、200~600cc/cm2/secがさらに好適である。ここで、多孔質構造体1の通気性(cc/cm2/sec)は、JIS K 6400-7に準拠して測定されるものとする。また、多孔質構造体1が車両用シートパッドに利用される場合、多孔質構造体1の共振倍率は、3倍以上8倍未満が好適であり、3倍以上5倍以下がより好適である。
なお、従来の多孔質構造体は、上述のように、化学反応によって発泡させる工程を経て製造されていたため、各セルどうしを連通する連通孔における膜を、所期したとおりの位置及び個数で形成することは難しかった。図14、図19の各例のように、多孔質構造体1を3Dプリンタで製造する場合は、3Dプリンタに読み込まれる3D造形用データに、予め膜3の情報も含めることで、確実に、所期したとおりの位置及び個数で膜3を形成することが可能である。
同様の観点から、多孔質構造体1を構成する各第1小仮想面V1Sのうちの少なくとも1つが、膜3で覆われていてもよい。かつ/又は、多孔質構造体1を構成する各第1大仮想面V1Lのうちの少なくとも1つが、膜3で覆われていてもよい。また、膜3は、第2セル区画部22を構成する複数の第2環状部222どうしを連結して第2セル孔C2の一部を覆うように設けられていてもよい。
一例として、図21に、図1の例の多孔質構造体1を備えた車両用シートパッド300を示す。図21の例における車両用シートパッド300は、着座者が着座するためのクッションパッド310と、着座者の背中を支持するためのバックパッド320と、を備えている。クッションパッド310とバックパッド320とは、それぞれ、上述した任意の例の多孔質構造体1から構成されることができる。
図21では、車両用シートパッド300に着座した着座者から観たときの「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の各方向を、表記している。
クッションパッド310は、着座者の臀部及び大腿部が載るように構成されたメインパッド部311と、メインパッド部311の左右両側に位置する一対のサイドパッド部322と、を有している。
図21の例では、クッションパッド310とバックパッド320とが、それぞれ、別々の(別部材としての)多孔質構造体1から構成されている。クッションパッド310は、その全体が一体に構成されている。また、バックパッド320は、その全体が一体に構成されている。
クッションパッド310及びバックパッド320を構成する多孔質構造体1は、それぞれ、3Dプリンタによって造形されたものである。
ただし、クッションパッド310とバックパッド320とは、互いに一体に構成されてもよい。
また、図21の例において、バックパッド320は、着座者の頭部を支持するためのヘッドレスト340とは別体に構成されているが、バックパッド320は、ヘッドレスト340と一体に構成されてもよい。
また、多孔質構造体1は、車両用シートパッド300(クッションパッド310又はバックパッド320)のうちの一部のみを構成していてもよい。その場合、車両用シートパッド300(クッションパッド310又はバックパッド320)のうち残りの部分は、金型成形等において化学反応により発泡させる工程を経て製造されるとよい。
図22では、図21に示すクッションパッド310又はバックパッド320を構成する本発明の一実施形態に係る多孔質構造体1を、3Dプリンタにより製造する様子を一例として示している。ただし、以下に説明する多孔質構造体の製造方法は、任意の用途に用いられる多孔質構造体1を製造するために好適に使用できる。
まず、事前に、コンピュータを用いて、多孔質構造体1の3次元形状を表す3次元形状データ(例えば、3次元CADデータ)を作成する。
つぎに、コンピュータを用いて、上記3次元形状データを、3D造形用データ500に変換する。3D造形用データ500は、3Dプリンタ400の造形部420が造形を行う際に3Dプリンタ400の制御部410に読み込まれるものであり、制御部410が、造形部420に、多孔質構造体1を、造形させるように構成されている。3D造形用データ500は、例えば、多孔質構造体1の各層の2次元形状を表すスライスデータを含む。
つぎに、3Dプリンタ400によって多孔質構造体1の造形を行う。3Dプリンタ400は、例えば、光造形方式、粉末焼結積層方式、熱溶融積層方式(FDM方式)、インクジェット方式等、任意の造形方式を用いて造形を行ってよい。図22では、熱溶融積層方式(FDM方式)によって造形を行う様子を示している。
3Dプリンタ400は、例えば、CPU等によって構成された制御部410と、制御部410による制御に従って造形を行う造形部420と、造形される造形物(すなわち、多孔質構造体1)を載せるための支持台430と、支持台430及び造形物が収容される収容体440と、を備える。造形部420は、本例のように熱溶融積層方式(FDM方式)を用いる場合、最終的に造形物(すなわち、多孔質構造体1)を構成するメイン材MMを吐出するように構成されたメイン材ノズル421と、造形中にメイン材MMを支持するサポート材SMを吐出するように構成されたサポート材ノズル422と、を有している。メイン材MMとしては、可撓性のある樹脂又はゴムを用いるのがよいが、特に、可撓性のある樹脂を用いるのが好適である。
このように構成された3Dプリンタ400は、まず、制御部410が、3D造形用データ500を読み込み、読み込んだ3D造形用データ500に含まれる3次元形状に基づいて、造形部420にメイン材MM、サポート材SMを吐出させるよう制御しながら、各層を順次造形していく。このとき、多孔質構造体1のうち、空隙以外の部分(すなわち、骨格部2や膜3)を、メイン材MMによって造形し、多孔質構造体1の空隙部分を、サポート材SMによって形成する。
3Dプリンタ400による造形が完了した後は、造形物からサポート材SMを除去する。それにより、最終的に、造形物として、多孔質構造体1(ひいては、クッションパッド310又はバックパッド320)が得られる。
この場合、3Dプリンタ400は、例えば、CPU等によって構成された制御部410と、制御部410による制御に従って造形を行う造形部420と、造形される造形物(すなわち、多孔質構造体1)を載せるための支持台430と、液体樹脂LR、支持台430及び造形物が収容される収容体440と、を備える。造形部420は、本例のように光造形方式を用いる場合、紫外線レーザ光LLを照射するように構成されたレーザ照射器423を有する。収容体440には、液体樹脂LRが充填されている。液体樹脂LRは、レーザ照射器423から照射される紫外線レーザ光LLが当たると、硬化し、可撓性のある樹脂となる。
このように構成された3Dプリンタ400は、まず、制御部410が、3D造形用データ500を読み込み、読み込んだ3D造形用データ500に含まれる3次元形状に基づいて、造形部420に紫外線レーザ光LLを照射するよう制御しながら、各層を順次造形していく。
3Dプリンタ400による造形が完了した後は、造形物を収容体440から取り出す。それにより、最終的に、造形物として、多孔質構造体1(ひいては、クッションパッド310又はバックパッド320)が得られる。
また、多孔質構造体1をゴムで構成する場合、3Dプリンタ400による造形が完了した後に、造形物としての多孔質構造体1を加硫してもよい。
Claims (14)
- 可撓性のある樹脂又はゴムから構成された多孔質構造体であって、
前記多孔質構造体は、その全体にわたって、骨格部を備えており、
前記骨格部は、
複数の骨部と、
それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の結合部と、
から構成されており、
前記骨格部は、第1セル孔を内部に区画する第1セル区画部を複数有しており、
前記複数の第1セル区画部は、それぞれ、それぞれ環状に構成された複数の第1環状部を有しており、
前記第1環状部は、当該第1環状部に隣接する一対の前記第1セル区画部によって共有されており、
前記第1セル区画部の前記複数の第1環状部は、
それぞれの内周側縁部によって平坦な第1小仮想面を区画する、1つ又は複数の第1小環状部と、
それぞれの内周側縁部によって平坦かつ前記第1小仮想面よりも面積の大きな第1大仮想面を区画する、1つ又は複数の第1大環状部と、
を含んでいる、多孔質構造体。 - 可撓性のある樹脂又はゴムから構成された多孔質構造体であって、
前記多孔質構造体は、その全体にわたって、骨格部を備えており、
前記骨格部は、
複数の骨部と、
それぞれ前記複数の骨部の端部どうしを結合する、複数の結合部と、
から構成されており、
前記骨格部は、第1セル孔を内部に区画する第1セル区画部を複数有しており、
前記複数の第1セル区画部は、それぞれ、それぞれ環状に構成された複数の第1環状部を有しており、
前記第1環状部は、当該第1環状部に隣接する一対の前記第1セル区画部によって共有されており、
前記複数の第1セル区画部の骨格線は、それぞれ、ケルビン14面体をなす、多孔質構造体。 - 互いに隣接する一対の前記第1セル区画部によって共有される前記第1環状部の骨格線は、当該一対の第1セル区画部のうち前記共有される前記第1環状部に隣接する部分の骨格線のそれぞれと、連続している、請求項1又は2に記載の多孔質構造体。
- 互いに連結された一対の前記第1環状部どうしの連結部分は、当該一対の第1環状部によって共有される、1つの前記骨部と当該骨部の両側の一対の前記結合部とから構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
- 互いに連結された一対の前記第1環状部どうしの連結部分の骨格線は、当該一対の第1環状部のうち前記連結部分に隣接する部分の骨格線のそれぞれと、連続している、請求項4に記載の多孔質構造体。
- 前記第1セル区画部の前記複数の第1環状部は、それぞれ、それぞれの内周側縁部によって、平坦な第1仮想面を区画しており、
前記第1セル孔は、前記第1セル区画部の前記複数の第1環状部と、前記複数の第1環状部がそれぞれ区画する複数の前記第1仮想面とによって、区画されており、
前記第1セル区画部の前記複数の第1環状部は、それぞれの内周側縁部によって区画する前記第1仮想面どうしが交差しないように互いに連結されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の多孔質構造体。 - 各前記第1環状部は、それぞれ、複数の前記骨部と複数の前記結合部とから構成されており、
1つの前記第1セル区画部の前記第1大環状部の少なくとも1つの前記骨部は、前記第1セル区画部に隣接する他の1つの前記第1セル区画部の前記第1小環状部によって共有されている、請求項1に記載の多孔質構造体。 - 前記複数の第1セル区画部の骨格線は、それぞれ多面体をなしているとともに、空間充填するように互いに連なっている、請求項1に記載の多孔質構造体。
- 前記複数の第1セル区画部の骨格線がなす多面体は、
1種類の多面体のみを含むか、又は、
複数種類の多面体を含む、請求項8に記載の多孔質構造体。 - 前記複数の第1セル区画部の骨格線は、それぞれ、ケルビン14面体、正3角柱、正6角柱、立方体、直方体、又は、菱形12面体をなす、請求項1に記載の多孔質構造体。
- 前記骨格部は、第2セル孔を内部に区画する第2セル区画部を複数有しており、
前記複数の第2セル区画部の骨格線は、それぞれ、ケルビン14面体以外の多面体をなしている、請求項2に記載の多孔質構造体。 - 前記多孔質構造体は、クッション材に用いられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
- 前記多孔質構造体は、3Dプリンタによって造形されたものである、請求項1~12のいずれか一項に記載の多孔質構造体。
- 3Dプリンタを用いて、請求項1~12のいずれか一項に記載の多孔質構造体を製造する、多孔質構造体の製造方法。
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