(ダンパーの一実施形態)
以下、図1~18を参照して、本発明に係るダンパーの一実施形態について説明する。
図1に示されるダンパー10は、互いに近接離反する一対の部材に取付けられ、該一対の部材が近接又は離反するときに制動力を付与するものであって、例えば、自動車のインストルメントパネルに設けられた収容部の開口部に、開閉可能に取付けられたグローブボックスやリッド等の、制動用として用いることができる。なお、以下の実施形態においては、一方の部材を、インストルメントパネルの収容部等の固定体とし、他方の部材を、固定体の開口部に開閉可能に取付けられた、グローブボックスやリッド等の開閉体として説明するが、一対の部材は互いに近接離反可能なものであれば、特に限定はされない。
図1及び図2に示すように、この実施形態のダンパー10は、筒状をなし一端に開口部23を設けたシリンダー20と、その開口部23に取付けられたキャップ30と、シリンダー20内に移動可能に挿入されたロッド40と、このロッド40に装着されるピストン50とから主として構成されている。
なお、以下の説明においては、「一端」又は「一端部」とは、ダンパーの制動方向側の一端又は一端部を意味し、「他端」又は「他端部」とは、ダンパーの制動方向とは反対側(ダンパーの戻り方向側)の他端又は他端部を意味する。また、ダンパーの制動方向とは、この実施形態の場合、シリンダー20の端部壁25(図3及び図4参照)からピストン50が離反して、シリンダー20の開口部23からの、ロッド40の引出し量が増大する方向を意味する(図3及び図4の矢印F1参照)。更に、ダンパーの制動方向とは反対の戻り方向(以下、単に「戻り方向」ともいう)とは、この実施形態の場合、ピストン50がシリンダー20の端部壁25(図3及び図4参照)に近接して、シリンダー20内への、ロッド40の押し込み量が増大する方向を意味する(図3及び図4の矢印F2参照)。
図1に示すように、前記シリンダー20は、所定長さで延びる略円筒状の壁部21を有しており、その軸方向の一端側が開口して、開口部23が設けられている。この開口部23の周縁であって、径方向に対向する位置には、一対の係止孔23a,23aが形成されている。また、図3及び図4に示すように、壁部21の他端側は、端部壁25によって閉塞されている。この端部壁25の外側には、支持孔27aを有する支持片27が連設されている。支持孔27aには、図示しないインストルメントパネル等の、一方の部材の回動軸が回動可能に挿入されて、一方の部材にシリンダー20の外周が回動可能に連結されるようなっている。シリンダー20としては、壁部21の他端側を開口させて、オリフィスを設けたキャップを装着してもよく、更に、支持片を、壁部21の外周の軸方向所定箇所に設けてもよい。また、シリンダー20は、その外径が12mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましい。
図1に示すように、開口部23に取付けられるキャップ30は、半割の円筒状をなした一対の半割体31,31を有しており、これらが図示しない係止手段によって互いに係止されて一体化されている。各半割体31は、その一端(基端)の外周にフランジ部33が設けられていると共に、軸方向途中の外周に係止突部35が突設されている。そして、キャップ30は、その他端側(先端側)からシリンダー20の開口部23内に挿入されて、各フランジ部33をシリンダー20の他端面に係止させると共に、各係止突部35をシリンダー20の対応する係止孔23aに係止させることで、シリンダー20の一端側に取付けられるようなっている(図2~4参照)。なお、このキャップ30は、シリンダー20の開口部23からロッド40が最大限に引き出されたときに、各半割体31の他端(突出方向先端)に、ピストン50を当接させることで、シリンダー20からロッド40が外れることを防止する。
以上説明したシリンダーやキャップは、全ての部分が周知の合成樹脂材料で一体形成されている。また、シリンダーやキャップの形状や構造等は、特に限定されない。
次に、ロッド40について説明する。
図1、図3、及び図4に示すように、このロッド40は、シリンダー20の開口部23を通して、シリンダー20内に移動可能に挿入されるものである。また、このロッド40は、円柱状をなした軸部41を有しており、その一端側(基端側)には、連結孔42aを有する連結片42が連設されている。連結孔42aには、図示しないグローブボックス等の、他方の部材の連結軸が挿入されて、他方の部材にロッド40が回動可能に連結されるようになっている。
また、図6及び図7に示すように、軸部41の他端側(先端側)には、テーパ部41aを介して縮径した第1縮径部43が設けられている。この第1縮径部43の最他端(最先端)に、略円板状をなした第1係合部44が設けられている。また、縮径部43の、第1係合部44よりもロッド一端側の外周から、略環状突起状をなした第2係合部45が突設されている。なお、図13Aに示すように、ロッド40にピストン50を装着した状態で、ロッド40のテーパ部41aは、ピストン50の一端部52よりも、ロッド40の一端側に位置している。
前記第1係合部44は、ロッド40がダンパーの制動方向に移動する際に、図14及び図15に示すように、ピストン50を構成する筒状体51の一方の端部(他端部53)に係合する部分となっている。この第1係合部44が、本発明における「筒状体の端部に係合可能とされた係合部」をなしている。一方、前記第2係合部45は、ロッド40がダンパーの戻り方向に移動する際に、ピストン50の後述する被係合部54に係合して(図4参照)、軸方向に縮んだピストン50を延びた状態に弾性復帰させる(図17及び図18参照)。
また、第1縮径部43の、第1係合部44と第2係合部45との間は、第1縮径部43の第2係合部45よりも一端側部分の外周に対して、更に縮径した第2縮径部43aをなしている。この第2縮径部43aの外周であって、径方向に対向する箇所には、一対のリブ46,46が、ロッド40の軸方向に沿って延設されている。各リブ46の一端は、第2係合部45に連結されており、他端は第1係合部44に連設されている。図5Aに示すように、一対のリブ46,46は、ピストン50の後述する一対の溝55,55に嵌合して、ピストン50の他端側を回転規制する。
更に図1及び図4に示すように、ロッド40は、ピストン50の後述するピストン伸縮規制部70内に、軸方向に所定距離移動可能に挿入される、係合突部48が設けられている。
図6及び図7を併せて参照すると、軸部41を構成する第1縮径部43の、軸方向中央よりも、ややテーパ部41a寄りの位置の外周であって、径方向に対向する箇所から、一対の係合突部48,48が突設されている。これらの一対の係合突部48,48は、図1に示すように、前記一対のリブ46,46に対して直交する位置に設けられている。また、各係合突部48は、ロッド40の軸方向に長く延びる略長方形状をなすと共に、4つの角部が丸みを帯びた形状をなしている。なお、各係合突部48の長手方向の一端を「一端48a」とし、長手方向の他端を「他端48b」とする(図4参照)。
また、図5Bに示すように、一対の係合突部48,48は、ピストン50の一対のピストン伸縮規制部70,70内にそれぞれ挿入されている。そして、図13A,13B、及び、図14A,14Bの矢印F1に示すように、ロッド40がダンパーの制動方向に移動すると、係合突部48の一端48aが、ピストン伸縮規制部70の一端部71に近接するように移動する。その後、ピストン50が軸方向に所定長さ圧縮されたときに、図15Bに示すように、係合突部48の一端48aが、ピストン50のピストン伸縮規制部70の一端部71に係合するようになっている。一方、図16A~18Bの矢印F2に示すように、ロッド40がダンパーの戻り方向に移動すると、係合突部48の他端48bが、ピストン伸縮規制部70の他端部72に近接するように移動するようになっている。
また、図5Bに示すように、各係合突部48の、ロッド外周から最も突出した頂部48cは、シリンダー20の壁部21の内周に適合する曲面状をなし、且つ、同壁部21の内周には当接せずに、シリンダー内周との間で隙間が形成されるようになっている。そのため、ロッド40がダンパーの制動方向又は戻り方向に移動する際に、シリンダー内周に対する係合突部48の干渉を抑制して、ロッド40をスムーズに移動可能となっている。なお、図5Bに示すように、一対の係合突部48,48は、ピストン50の一対のピストン伸縮規制部70,70に挿入することで、ピストン50の一端側を回転規制する。
なお、ロッドは、全ての部分が周知の合成樹脂材料で一体形成されている。また、ロッドの形状や構造等は、特に限定されない。例えば、係合突部を、円柱状や、角柱状、楕円形の柱状としてもよく、ピストンのピストン伸縮規制部内にて移動可能であればよい。また、係合突部48は、一個でもよく、ロッド外周に複数設けてもよい。
次に、ピストン50について説明する。
図1に示すように、このピストン50は、弾性樹脂材料からなりロッド40を囲むように装着されるものとなっている。図8~12に示すように、このピストン50は、ロッド40の軸方向に沿って所定長さで延びる筒状体51と、この筒状体51の外周に設けられ、シリンダー20の内周に常時圧接されるシール部60と、筒状体51の内周面の少なくとも一部を板厚方向に切り欠いて形成されたピストン伸縮規制部70とを有している。
この実施形態におけるピストン伸縮規制部70は、筒状体51を径方向に貫通する孔からなる。すなわち、このピストン伸縮規制部70は、筒状体51の内周面から板厚方向に、筒状体51の板厚の全部を切り欠いて形成された孔となっている。なお、筒状体51の板厚方向とは、図5Bに示すように、筒状体51の軸心Cから、筒状体51の径方向外方に向く方向(矢印T参照)を意味する。
なお、ピストン50は、例えば、ラバーや、エラストマー、スポンジ等の弾性樹脂材料から形成されており、ピストン50が軸方向に圧縮された場合には拡径し、軸方向に引張られた場合には縮径するようになっている。また、上記ピストン50は、ロッド40がダンパーの制動方向に移動する際に、追随してダンパーの制動方向に移動し、一方、ロッド40がダンパーの戻り方向に移動する際にも、追随してダンパーの戻り方向に移動する。
図8に示すように、前記筒状体51は、略円筒状をなすように所定長さで延びており、その外周が、平坦部56やシール部60等を除いて、概ね円周形状となっている。この筒状体51の、ダンパーの制動方向側の一端部52(基端部)側に、シール部60が設けられている。また、筒状体51の、ダンパーの戻り方向側の他端部53(先端部)の外周は、筒状体51の他端に向かって次第に縮径するテーパ状をなしている。この他端部53には、ロッド40がダンパーの制動方向に移動する際に、図14及び図15に示すように、ロッド40の第1係合部44が係合し、ピストン50の他端側から軸方向圧縮力が付与されるようになっている。
更に図12に示すように、筒状体51の他端部53側の内周には、筒状体51の内径方向に向けて出っ張った、被係合部54が設けられている。この被係合部54には、ロッド40がダンパーの戻り方向に移動する際に、ロッド40の第2係合部45が係合して(図4参照)、軸方向に縮んだピストン50を延びた状態に弾性復帰させる(図17及び図18参照)。
また、図11に示すように、筒状体51に設けた被係合部54の内周であって、筒状体51の径方向に対向する位置には、一対の溝55,55が軸方向に沿って形成されている。各溝55は、筒状体51の他端部53の端面から、被係合部54の軸方向全長に至る範囲で形成されている(図12参照)。そして、図5Aに示すように、これらの一対の溝55,55には、ロッド40に設けた一対のリブ46,46が嵌合して、ロッド40に対してピストン50の他端側を回転規制するようになっている。
更に、図8や図11に示すように、筒状体51の外周であって、径方向に対向する箇所からは、他端部53から一端部52側に向けて、一対の平坦部56,56が形成されている。これらの一対の平坦部56,56は、図11に示すように、被係合部54に形成した一対の溝55,55と、筒状体51の周方向に対して整合する位置に配置されている。また、図5Bに示すように、一対の平坦部56,56は、ピストン50を軸方向から見たときに、筒状体51の外周の、円周形状の一部を一平面でカットした形状をなしており、筒状体51の周方向の2箇所に互いに平行となるように形成されている。
図5Bに示すように、上記の平坦部56,56は、ロッド40及びピストン50の静止時や、ダンパーの制動時、ダンパーの制動解除時(戻り時)のいずれにおいても、シリンダー20の内周に密着せず、シリンダー20の壁部21の内周との間で隙間が形成されるようになっている。その結果、シリンダー内周とピストン外周との間に隙間を形成して、ダンパーの制動時又は戻り時に、空気の逃げ道を形成して、ピストン50を伸縮変形させやすくすると共に、ピストン50によるダンパー制動力の調整を図るようになっている。
図8~10に示すように、筒状体51の一端部52側に設けられた、シール部60は、ロッド40の軸方向において互いに反対方向に突出するように湾曲した山部61と谷部63とが、シリンダー20の内周に沿って交互に配置されるように周回して形成されている。より具体的には、このシール部60は、ダンパーの制動方向(図9及び図10の矢印F1参照)に向けて突出するように湾曲した山部61と、ダンパーの制動方向とは反対方向(戻り方向を意味する、図9及び図10の矢印F2参照)に向けて突出するように湾曲した谷部63とが、シリンダー20の内周に沿って交互に配置されるように周回して形成された波形状をなしている。
より具体的には、この実施形態のシール部60は、筒状体51の周方向に沿って形成され、シリンダー20の内周に圧接される一対の環状凸部65,65と、これらの一対の環状凸部65,65の間に設けられ、シリンダー20の内周との間に隙間を形成する、一対の切欠き部66,66とからなる。
各環状凸部65は、ピストン50の軸方向一端側に突出するように湾曲し、且つ、一定間隔を空けて並列して配置された一対の湾曲突部67,68と、ピストン50の軸方向に沿って延び、一対の湾曲突部67,68の周方向両端部どうしを連結する一対の連結突部69とからなる、環状をなした凸状となっている。一対の湾曲突部67,68のうち、一方の湾曲突部67が、ピストン50の一端に近接した位置、すなわち、ダンパーの制動方向側に配置されており、他方の湾曲突部68が、一方の湾曲突部67よりもピストン50の他端寄りの位置、すなわち、ダンパーの戻り方向側に配置されている。また、各環状凸部65は、シリンダー20の壁部21の内径よりも大きく形成されており、シリンダー20の壁部21の内周に圧接されるようになっている。
更に、一対の切欠き部66,66は、一対の環状凸部65,65の周方向両端部の間であって、前記一対の平坦部56,56と整合する位置に配置されている(図9及び図10参照)。また、各切欠き部66は、環状凸部65のピストン外周面から最も突出した頂部よりも、やや凹んだ平坦面状をなしており、シリンダー20の内周には圧接せず隙間が形成されるようになっている(図5B及び図13B参照)。この切欠き部66は、前記平坦部56と共に、ダンパーの制動時又は戻り時に、空気の逃げ道を形成する。
そして、このシール部60は、各湾曲突部67の、ピストン50の軸方向の一端側に最も突出する部分及びその周縁部分が、前記山部61をなすと共に、各切欠き部66の、ピストン50の軸方向の他端側に最も凹んだ部分及びその周縁部分が、前記谷部63をなしている。したがって、上述したように、この実施形態のシール部60は、山部61と谷部63とが、シリンダー20の内周に沿って交互に配置されるように周回して形成された波形状をなしている(図10参照)。
また、この実施形態におけるシール部60は、山部61、谷部63、山部61、谷部63が、周方向に交互に配置されており、ピストン50の径方向に対向する位置に一対の山部61,61が配置されると共に、一対の山部61,61に対して直交する位置に、一対の谷部63,63が配置されるようになっている。
そして、シール部60のうち、一対の環状凸部65,65がシリンダー20の内周に常時圧接される部分となっている。図13~18に示すように、ピストン50の外周のうち、シリンダー20の内周に圧接される部分S(以下、「シリンダー圧接部分S」ともいう)に、点描のハッチングを付して表現するものとする。なお、シール部60のうち、一対の切欠き部66,66はシリンダー内周には圧接しない。
また、図9や図12に示すように、筒状体51の各環状凸部65に対して、ピストン50の他端側に隣接した位置であって、径方向に対向する位置には、ピストン50の軸方向に沿って延びる略長孔状をなした、一対のピストン伸縮規制部70,70がそれぞれ形成されている。図9に示すように、各ピストン伸縮規制部70の一端部71及び他端部72は、4つの隅部が丸みを帯びた形状をなしている。
更に図11及び図12に示すように、一対のピストン伸縮規制部70,70は、前述した一対の溝55,55に直交した位置に配置されている。また、図9に示すように、各ピストン伸縮規制部70は、各環状凸部65を構成する一対の湾曲突部67,68のうち、ダンパーの戻り方向に位置する湾曲突部68の、湾曲する部分の凹部68aに近接する位置に、一端部71を向けて配置されている(図9参照)。
また、筒状体51の内周面の少なくとも一部を板厚方向に切り欠いて形成されたピストン伸縮規制部70は、この実施形態の場合、筒状体51を径方向に貫通する孔となっているが、例えば、図19に示すように、筒状体51の内周に設けられた凹部としてもよい。すなわち、ピストン50Aに形成されたピストン伸縮規制部70Aは、筒状体51の径方向の内周面から板厚方向(図5Bの矢印T参照)に、筒状体51の板厚の一部を所定深さで切り欠いて形成された、底面73を有する凹溝状となっている。また、この凹溝状をなしたピストン伸縮規制部70Aは、筒状体51の軸方向に沿って所定長さで延びている。
上記のピストン50は、次のようにしてロッド40に装着される。すなわち、ピストン50の一対のピストン伸縮規制部70,70に、ロッド40の一対の係合突部48,48を位置合わせした後、ピストン50の一端部52側の開口から、ロッド40を第1係合部44から挿入していき、ピストン50を撓み変形させつつロッド40を押し込んでいく。そして、ピストン50の他端部53側の開口から、ロッド40の第1係合部44を挿出させると、ピストン50の一対の溝55,55に、ロッド40の一対のリブ46,46が嵌合すると共に(図5A参照)、ピストン50の一対のピストン伸縮規制部70,70内に、ロッド40の一対の係合突部48,48が入り込んで(図5B参照)、図4に示すように、ロッド40の他端側外周に、ピストン50が回転規制された状態で装着されるようなっている。
また、上記のようにロッド40にピストン50が装着され、ロッド40及びピストン50がダンパーの制動方向及び戻り方向のいずれの方向にも移動せず静止した状態では、図4に示すように、ロッド40の係合突部48が、ピストン50のピストン伸縮規制部70の軸方向中間であって、ピストン伸縮規制部70の他端部72寄りの位置に配置されている。具体的には、係合突部48の一端48aが、ピストン伸縮規制部70の一端部71から離反すると共に、係合突部48の他端48bも、ピストン伸縮規制部70の他端部72から離反しており、且つ、係合突部48の一端48aとピストン伸縮規制部70の一端部71との隙間が、係合突部48の他端48bとピストン伸縮規制部70の他端部72との隙間よりも大きくなるように、ピストン伸縮規制部70内に係合突部48が、ピストン50の軸方向に所定距離移動可能に挿入配置されている。
なお、上記のように、ロッド40にピストン50が装着された状態では、ピストン他端側の一対の溝55,55に一対のリブ46,46が嵌合すると共に(図5A参照)、ピストン一端側の一対のピストン伸縮規制部70,70内に一対の係合突部48,48が入り込むため(図5B参照)、ピストン50は、その他端側及び一端側においてロッド40に対して回り止めされることになる。その結果、ピストン50の他端及び一端の間の中間部分の捩れや変形を抑制することができるので、ピストン外周をシリンダー20の内周に対して安定して圧接させることが可能となっている。
また、図4や図13に示すように、ロッド40にピストン50が装着され、ダンパーに制動力が付与されていない状態、すなわち、ロッド40が静止して、その第1係合部44がシリンダー20の端部壁25から離反する方向に移動していない状態では、点描のハッチングで示すように、シール部60の一対の環状凸部65,65が、シリンダー20の内周に圧接されている。
そして、このダンパー10においては、ダンパーの制動時には、ロッド40の係合部(第1係合部44)が、ピストン50を構成する筒状体51の一方の端部(他端部56)に係合して、同筒状体51を軸方向一端側に向けて押圧し、シール部60との間でピストン50に軸方向圧縮力が作用し、該ピストン50が軸方向に所定長さ圧縮されると、図15Bに示すように、係合突部48がピストン伸縮規制部70の一端部71に係合して、ピストン50の軸方向の圧縮が規制されるように構成されている。
以上説明したピストンの形状や構造等は、特に限定されない。例えば、この実施形態のシール部60は波形状をなしているが、例えば、ピストンの外周に沿って連続して延びる、環状をなしたシール部であってもよい。また、ピストン伸縮規制部としては、例えば、楕円形状としたり、係合突部よりも大きな丸穴状や角孔状としたりしてもよく、ピストン伸縮規制部内にて係合突部が軸方向に所定距離移動可能であればよい。更に、ピストン伸縮規制部は、一個でもよく、ピストンの周方向に複数設けてもよい。
(作用効果)
次に、上記構成からなるダンパー10の作用効果について説明する。
図13A及び図13Bに示す、ダンパー10に制動力が付与されていない状態から、例えば、グローブボックス等が開口部から開くなどして、矢印F1方向に荷重が作用し、ロッド40の第1係合部44がシリンダー20の端部壁25から離反する方向に移動、すなわち、シリンダー20に対してロッド40が制動方向に移動すると、図14A及び図14Bに示すように、ロッド40の第1係合部44がピストン50の他端部53に係合するので、同第1係合部44によってピストン50が一端部52側に向けて押圧される。また、係合突部48は、その一端48aが、ピストン伸縮規制部70の一端部71に近接する方向となるように、ピストン伸縮規制部70内を軸方向に移動する(図14B参照)。
このとき、ピストン50のシール部60を構成する一対の環状凸部65,65が、シリンダー20の内周に常時圧接されることで、シリンダー20内でのピストン50の移動が抑制された状態となっているが、この状態で、ピストン50の他端部53が一端部52側に向けて押圧されるので、ピストン50の軸方向に圧縮力(軸方向圧縮力)が作用して、ピストン50が他端部53側から圧縮されて拡径する(なお、ピストン50の内径側は縮径する)。その結果、図14Bに示すように、シリンダー20の内周に常時圧接している、シール部60の一対の環状凸部65,65に加えて、ピストン50の外周が、その他端部53に隣接した一端側の部分(図14の、図中左側のシリンダー圧接部分Sを参照)から、シリンダー20の内周に圧接することになるので、ダンパーの制動力が増大する。また、係合突部48は、その一端48aが、ピストン伸縮規制部70の一端部71に近接する方向に軸方向移動する。
図14の状態よりも、更に大きな開き荷重がかかって、ピストン50がより早くシリンダー20の端部壁25から離反する方向に移動しようとすると、ピストン50の他端部53に対する、第1係合部44からの押圧力が大きくなって、ピストン50に対する軸方向圧縮力が増大する。その結果、ピストン50の圧縮量が増えて、図15A及び図15Bに示すように、ピストン50の外周のシリンダー圧接部分Sの面積が、図14に示す場合と比べて増大するので、ダンパーの制動力が増えて、グローブボックス等の開き速度の増大を抑制して、グローブボックスが勢いよく開いてしまうのを防ぐ。
また、図15Bに示すように、ピストン50が軸方向に圧縮されて所定長さになると、ピストン伸縮規制部70内を軸方向一端側に移動した係合突部48の一端48aが、ピストン伸縮規制部70の一端部71に係合する。その結果、ロッド40の係合突部48によって、ピストン50の一端部52が、矢印F1に示すダンパー制動方向側に引っ張られるので、ピストン50の軸方向のそれ以上の圧縮を規制することができる。すなわち、軸方向圧縮力によって押し潰されようとするピストン50の一端部52側が、ダンパー制動方向に引っ張られることになるので、ピストン50がそれ以上軸方向に押し潰されることを規制することができる(ピストン伸縮規制部70がなく、ピストン50がダンパー制動方向に引っ張られることのない構成の場合は、ピストン50に軸方向圧縮力が過大に作用して、押し潰される量が多くなるため、ダンパー制動力が過剰になりやすい)。その結果、ダンパー10の制動力の増大が抑制されて、一定の制動力とすることができるので、ダンパー10の制動力を調整しやすくすることができる。
また、ダンパー10の制動力を調整する際には、例えば、ロッド40の係合突部48を軸方向に移動可能とする、ピストン50のピストン伸縮規制部70の軸方向長さや、ピストン50に対するピストン伸縮規制部70の形成位置等を適宜調整することで行うことができる。例えば、図4に示すように、ピストン伸縮規制部70の一端部71と、係合突部48の一端48aとの隙間CLが、ピストン50の圧縮代となるが、この隙間CLを短くした場合には、ダンパー制動時に係合突部48がピストン伸縮規制部70の一端部71に係合しやすくなるため、ピストン50の圧縮量を低く抑えることができる。一方、上記隙間CLを長くした場合には、ダンパー制動時に係合突部48がピストン伸縮規制部70の一端部71に係合しにくくなるため、ピストン50の圧縮量を増大させることができる。
一方、このダンパー10においては、ダンパーが制動された状態から、ダンパーの制動力が解除される状態に切り替わるとき、すなわち、図15A,15Bに示すような、ピストン50に軸方向圧縮力が作用して、ピストン50が拡径してシリンダー20内周に対する摩擦力が増大した状態から、ロッド40がダンパーの戻り方向に移動する際に、次のような動作がなされることで、ピストン50を所定位置に戻しやすい構造となっている。
すなわち、図15A及び15Bに示す状態から、図16A及び図16Bの矢印F2に示すように、ロッド40がダンパーの戻り方向に移動すると、ロッド40の第2係合部45がピストン50の被係合部54に係合して(図4参照)、ピストン50に対して軸方向引張力を作用させる。それによって、図17A及び図17Bに示すように、ピストン50の他端部53側を、シール部60により移動規制された一端部52側に対して引き延ばされて、最終的に図18A及び図18Bに示すように、ピストン50を速やかに元の形状に縮径させることができる。その結果、ピストン50の、シリンダー20の内周に対する摩擦力を低減させて、ピストン50を戻しやすくすることができる。なお、係合突部48は、その他端48bが、ピストン伸縮規制部70の他端部72に近接する方向に軸方向移動する。また、シリンダー20の内部空間R内の空気は、ピストン50の平坦部56や切欠き部66等を通じて、内部空間Rから逃がされるようになっている。
更に、この実施形態においては、上記のように、ピストン50に軸方向圧縮力が作用する際に、ピストン50のシール部60に軸方向圧縮力が作用して、シール部60が潰れるような力が作用する。この際、シール部60は、上述したように、山部61と谷部63とが、シリンダー20の内周に沿って交互に配置されるように周回して形成された波形状となっているので、山部61及び谷部63によってシール部60が潰れる位置を軸方向にずらして、シール部60を潰れやすくすることができ、ダンパー10の制動力を安定させることが可能となっている。
(ダンパーの他の実施形態)
図20には、本発明に係るダンパーの、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この実施形態のダンパー10Aは、ピストン50Aの構造が前記実施形態と異なっている。図20A、図20B、及び図20Cに示すように、この実施形態におけるピストン50Bにおいては、その一端部52寄りの位置に、ピストン伸縮規制部70が配置されており、このピストン伸縮規制部70よりも、ピストン50Bの他端部53寄りの位置に、シール部60が配置されている。すなわち、シール部60は、ピストン伸縮規制部70に対して、ダンパーの制動方向とは反対側(戻り方向側)に設けられている。
また、ピストン伸縮規制部70の、ダンパーの制動方向とは反対側の端部(他端部72)は、シール部60がダンパーの制動方向とは反対側に向かって突出するように湾曲する部分の凹部側(湾曲突部67の凹部67a側)に配置されている。すなわち、図20Aに示すように、ピストン伸縮規制部70は、シール部60の環状凸部65を構成する一対の湾曲突部67,68のうち、ダンパーの制動方向に位置する湾曲突部67の、湾曲する部分の凹部67aに近接する位置に、他端部72を向けて配置されている。
そして、この実施形態においては、シール部60は、ピストン伸縮規制部70に対して、ダンパーの制動方向とは反対側(戻り方向側)に設けられているので、ピストン50Bに軸方向圧縮力が作用する部分(他端部53)と、ピストン伸縮規制部70との距離を確保することができる。その結果、ピストン50Bに軸方向圧縮力が作用する際に、ピストン伸縮規制部70が形成された部分の変形がもたらす、シリンダー内周に対するシール部60のシール性の影響を抑制して、ダンパーの制動力を安定して得ることができる。
また、この実施形態においては、ピストン伸縮規制部70の、ダンパーの制動方向とは反対側の端部(他端部72)は、シール部60がダンパーの制動方向とは反対側に向かって突出するように湾曲する部分の凹部側(湾曲突部67の凹部67a側)に配置されている(図20A参照)。そのため、シール部60がピストン外周を軸方向に湾曲して周回する形状をなしていても、ピストン50Bの、シリンダー20の内周に対する圧接領域を無駄なく確保することができる。
なお、以上説明した各実施形態においては、ピストンがシリンダーの端部壁から離反する方向に移動したときに、ダンパーによる制動力が付与され、ピストンがシリンダーの端部壁に近接する方向に移動したときに、ダンパーによる制動力が解除されるように構成されているが、これとは逆に、ピストンがシリンダーの端部壁(シリンダー端部に装着されるキャップも含む意味である)に近接する方向に移動したときに、ダンパーによる制動力を付与して、離反する方向に移動したときに制動力を解除するように構成してもよい。この場合には、シール部の内、シリンダーの端部壁に近接した方の湾曲部分が、山部をなし、シリンダーの端部壁から離反した方の湾曲部分が、谷部をなすことになる。
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。