JP7444342B2 - フェノール樹脂、エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、硬化物、繊維強化複合材料、及び、繊維強化樹脂成形品 - Google Patents

フェノール樹脂、エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、硬化物、繊維強化複合材料、及び、繊維強化樹脂成形品 Download PDF

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Description

本発明は、特定構造を有するフェノール樹脂、前記フェノール樹脂を用いて得られるエポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物より得られる硬化物、繊維強化複合材料、及び、繊維強化樹脂成形品に関する。
エポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を含み、前記エポキシ基で架橋ネットワークを形成することで硬化させることができる硬化性樹脂である。
上記エポキシ樹脂を必須成分とする硬化性樹脂組成物は、その硬化物において優れた機械的強度、耐熱性、耐水性、及び、絶縁性等を有することから、その用途は幅広く、繊維強化複合材料のマトリックス、放熱部材、塗料、半導体、プリント配線基板等、広く用いられている。
中でも、強化繊維で強化した繊維強化樹脂成形品は、軽量でありながら、機械的強度に優れる特徴が注目され、自動車や航空機、船舶等の筐体或いは各種部材をはじめ、様々な構造体用途での利用が拡大しており、特に、炭素繊維複合材料(CFRP)は、航空機や自動車分野への適用が拡大していることに伴い、そのマトリックス樹脂としてのエポキシ樹脂の使用量は増加の一途をたどっている。
現在、炭素繊維複合材料の用途で主に使用されているエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル体等が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。これらのエポキシ樹脂は、弾性率、強度、耐熱性、耐湿熱特性等、炭素繊維複合材料の用途の要求特性を一定レベルで満たしている。
しかしながら、現在、市場からは、高弾性率化、高強度化、更に、吸水後であっても弾性率や強度が低下しないエポキシ樹脂へのニーズがあり、上記エポキシ樹脂の物性では、市場の要求を十分に満たすまでに至っていない。
特に、上記エポキシ樹脂を用いた硬化物の物性として、高弾性率化を試みると、一般的にその硬化物は、強度及び伸び(歪み)の低下を招来してしまい、高弾性率化と共に、その他の物性を満足することが困難な状況である。
特開2003-201388号公報
従って、本発明が解決しようとする課題は、低粘度でハンドリング性に優れたエポキシ樹脂を得るために特定構造を有するフェノール樹脂や、低吸水性、及び、高曲げ特性(曲げ強度や曲げ弾性率、曲げ歪みなど)を有する硬化物を得ることができる前記エポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物、前記硬化性樹脂組成物より得られる硬化物、繊維強化複合材料、及び、繊維強化樹脂成形品を提供することにある。
そこで、本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有するフェノール樹脂を用いて得られ、低粘度でハンドリング性に優れたエポキシ樹脂を含む硬化性樹脂組成物を用いることにより得られる硬化物が、低吸水性、及び、高曲げ特性を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、カテコール化合物、フェノール化合物、及び、オルソキシリレン骨格含有化合物との反応物であり、前記カテコール化合物由来のカテコール骨格、前記フェノール化合物由来のフェノール骨格、及び、前記オルソキシリレン骨格含有化合物由来のオルソキシリレン骨格を有することを特徴とするフェノール樹脂に関する。
本発明のフェノール樹脂は、下記一般式(1)により表されることが好ましい。
Figure 0007444342000001
Figure 0007444342000002
Figure 0007444342000003
(式(1)中、Xは、式(2)のカテコール化合物、または、式(3)のフェノール化合物で表され、Rは、水素原子、炭素原子数1~4の炭化水素基、または、炭素原子数1~4のアルコキシ基で表され、Rは、水素原子、または、メチル基で表され、mは、0~3の整数で表され、nは、0~4の整数で表され、pは、0~50の整数で表される。
本発明のフェノール樹脂は、水酸基当量が、90~140g/当量であることが好ましい。
本発明は、前記フェノール樹脂のフェノール性水酸基と、エピハロヒドリンとの反応によるグリシジルエーテル基を有する反応物であることを特徴とするエポキシ樹脂に関する。
本発明のエポキシ樹脂は、下記一般式(4)により表されることが好ましい。
Figure 0007444342000004
Figure 0007444342000005
Figure 0007444342000006
Figure 0007444342000007
(式(4)中、Yは、式(5)、または、式(6)で表され、Zは、式(7)で表され、Rは、水素原子、炭素原子数1~4の炭化水素基、または、炭素原子数1~4のアルコキシ基で表され、Rは、水素原子、または、メチル基で表され、Rは、水素原子、または、メチル基で表され、mは、0~3の整数で表され、nは、0~4の整数で表され、pは、0~50の整数で表される。)
本発明のエポキシ樹脂は、エポキシ当量が、150~300g/当量であることが好ましい。
本発明は、前記エポキシ樹脂を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。
本発明は、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られることを特徴とする硬化物に関する。
本発明は、前記硬化性樹脂組成物と、強化繊維を含有することを特徴とする繊維強化複合材料に関する。
本発明は、前記硬化物と、強化繊維を含有することを特徴とする繊維強化樹脂成形品に関する。
本発明によれば、特定構造を有するフェノール樹脂を用いて得られるエポキシ樹脂を使用し得られる硬化物は、低吸水性、及び、高曲げ特性(曲げ強度や曲げ弾性率、曲げ歪みなど)を発現することができ、有用である。
[フェノール樹脂]
本発明は、カテコール化合物、フェノール化合物、及び、オルソキシリレン骨格含有化合物との反応物であり、前記カテコール化合物由来のカテコール骨格、前記フェノール化合物由来のフェノール骨格、及び、前記オルソキシリレン骨格含有化合物由来のオルソキシリレン骨格を有することを特徴とするフェノール樹脂に関する。
前記フェノール樹脂は、前記カテコール化合物由来のカテコール骨格を包含することで、多官能となり、架橋密度が上昇し、得られる硬化物は耐熱性、及び、高弾性率であり、前記フェノール化合物由来のフェノール骨格が包含することで、カテコール骨格と比較して、架橋密度が適度に低下し、高伸びとなり、その結果として、高強度となり、低吸水性を示し、好ましい。
また、前記フェノール樹脂は、前記オルソキシリレン骨格含有化合物由来のオルソキシリレン骨格を包含することで、屈曲した構造となり、分子間の空隙が狭くなることで、得られるフェノール樹脂を用いたエポキシ樹脂の使用により得られる硬化物は、高弾性率化、及び、高強度(高伸び)を発現できる。また、分子間相互作用が適度に弱まることになり、低溶融粘度で、ハンドリング性に優れたフェノール樹脂となり、好ましい。
なお、前記「フェノール樹脂」とは、フェノール性水酸基を少なくとも含有する化合物を含む樹脂を指す。
前記「カテコール骨格」とは、「芳香環の1位と2位とに水酸基を2個有する骨格」から、前記水酸基を構成する水素原子を1つずつ除いた骨格を指す。
前記「フェノール骨格」とは、「芳香環に置換基として水酸基を1個有する骨格」から、前記水酸基を構成する水素原子を1つ除いた骨格を指す。
また、前記「オルソキシリレン骨格」とは、前記フェノール樹脂に含まれるフェノール性水酸基を少なくとも含有する化合物同士を連結する、芳香環に置換基として2個のメチレン基をオルソ位の位置関係に有する骨格を指す。
[カテコール化合物]
前記フェノール樹脂は、カテコール化合物、フェノール化合物、及び、オルソキシリレン骨格含有化合物との反応物であることを特徴とする。前記カテコール化合物とは、1位と2位とに水酸基を有するジヒドロキシベンゼンであり、前記カテコール化合物の芳香環上に置換基を有さない水素原子のみの場合や、前記水素原子の代わりに、置換基として、炭素原子数1~4の炭化水素基、または、炭素原子数1~4のアルコキシ基を有し、前記置換基がメチル基やtert-ブチル基などのアルキル基などであってもよい。前記カテコール化合物を使用することにより、前記フェノール樹脂はカテコール骨格を包含(導入)することになり、官能基間距離が短く、分子間の空隙が狭くなるため、得られる硬化物が高弾性率を示すと推定され、かつ、多官能となるため、得られる硬化物が耐熱性を示すため、有用である。
前記置換基として、メチル基などのアルキル基を有する場合、その位置及び置換基の数としては特に制限されるものではないが、機械強度や低吸水性(疎水性)に優れた硬化物が得られることから、カテコールの場合には、4位に1つのメチル基やtert-ブチル基を有しても良いが、置換基を有していない水素原子の場合(カテコール)が、曲げ特性の観点から、最も好ましい。
前記カテコール化合物は、単独で用いてもよく、メチル基等のアルキル基の位置が異なる複数の化合物を併用してもよい。
[フェノール化合物]
前記フェノール樹脂は、カテコール化合物、フェノール化合物、及び、オルソキシリレン骨格含有化合物との反応物であることを特徴とする。前記フェノール化合物とは、水酸基を1個有するヒドロキシベンゼンであり、前記フェノール化合物の芳香環上に置換基を有さない水素原子のみの場合や、前記水素原子の代わりに、置換基として、炭素原子数1~4の炭化水素基、または、炭素原子数1~4のアルコキシ基を有し、前記置換基がメチル基やtert-ブチル基などのアルキル基などであってもよい。前記フェノール化合物を使用することにより、前記フェノール樹脂はフェノール骨格を包含(導入)することになり、得られる硬化物が低吸水性を示すため、有用である。
前記置換基として、メチル基などのアルキル基を有する場合、その位置及び置換基の数としては特に制限されるものではないが、低吸水性(疎水性)に優れた硬化物が得られることから、フェノール化合物の場合には、1つのメチル基やtert-ブチル基、エチル基を有しても良いが、置換基を有していない水素原子の場合(フェノール)が、曲げ特性の観点から、最も好ましい。
前記フェノール化合物は、単独で用いてもよく、メチル基等のアルキル基の位置が異なる複数の化合物を併用してもよい。
[オルソキシリレン骨格含有化合物]
前記フェノール樹脂は、カテコール化合物、フェノール化合物、及び、オルソキシリレン骨格含有化合物との反応物であることを特徴とする。前記フェノール樹脂中に、前記オルソキシリレン骨格含有化合物に由来するオルソキシリレン骨格を包含(導入)することにより、分子間相互作用が適度に弱まることになり、低溶融粘度で、ハンドリング性に優れたフェノール樹脂となり、好ましい。また、前記オルソキシリレン骨格を用いることで、前記カテコール化合物や前記フェノール化合物の距離が近接化し得ると考えられ、得られるフェノール樹脂の複数の官能基間の距離が近くなることで、機械強度(高弾性率化、高強度(高伸び))に優れた硬化物を得ることができ、好ましい。
また、前記フェノール樹脂を合成する際に、前記オルソキシリレン骨格含有化合物を使用することで、パラキシリレン骨格含有化合物などを使用する場合と比較して、硬化物の製造時(硬化時)のネットワーク形成(重合)において、分子構造が屈曲して自由体積が小さくなり、その結果、弾性率が高くなると推定される。つまりは、屈曲構造となることで、分子同士の空隙が小さくなり、しっかり密に詰まることで硬くなり、高弾性率化と相反する高強度化も発現でき、高弾性率化と高強度化の両立を図ることができ、有用である。
更に、前記フェノール樹脂は、前記カテコール骨格と前記フェノール骨格を包含(導入) することによる分子内の空隙を狭くする効果と、前記オルソキシリレン骨格を包含(導入) することによる分子内の空隙の狭くする効果を組み合わせることにより、高曲げ特性を発揮することができると推定される。特に、前記カテコール化合物と前記フェノール化合物を併用し得られるフェノール樹脂は、前記カテコール化合物と前記フェノール化合物それぞれ単独で使用する場合と比較して、空隙が小さく高弾性率となる分子構造、及び、架橋密度が低く、高伸びとなる分子構造を併せ持つため、結果的に高強度となり、有用である。
前記オルソキシリレン骨格含有化合物としては、オルソキシリレンジハライド、オルソキシリレンジアルコキシド、オルソキシリレングリコール及びこれらの芳香環上に炭素原子数1~4の炭化水素基が一つないし複数置換した化合物等が挙げられる。具体的には、例えば、オルソキシリレンジクロライド、オルソキシリレンジブロミド、オルソキシリレンジメトキシド、オルソキシリレンジエトキシド、オルソキシリレングリコールなどが挙げられる。中でも、入手性の観点から、オルソキシリレンジクロライドなどが好ましい。
前記オルソキシリレン骨格含有化合物は、単独で用いてもよく、複数の化合物を併用してもよい。
本発明のフェノール樹脂は、下記一般式(1)により表されることが好ましい。
Figure 0007444342000008
Figure 0007444342000009
Figure 0007444342000010
(式(1)中、Xは、式(2)のカテコール化合物、または、式(3)のフェノール化合物で表され、Rは、水素原子、炭素原子数1~4の炭化水素基、または、炭素原子数1~4のアルコキシ基で表され、Rは、水素原子、または、メチル基で表され、mは、0~3の整数で表され、nは、0~4の整数で表され、pは、0~50の整数で表される。
上記一般式(1)で表される前記フェノール樹脂は、例えば、下記一般式(2)で表されるカテコール化合物、下記一般式(3)で表されるフェノール化合物、及び、下記一般式(8)で表されるオルソキシリレン骨格含有化合物(以下、ハロゲン化(塩素化)したオルソキシリレン骨格含有化合物を例示)とを反応させることにより、下記一般式(1)で表されるフェノール樹脂を得ることができる。
Figure 0007444342000011
Figure 0007444342000012
Figure 0007444342000013
Figure 0007444342000014
上記一般式(2)又は(3)中、置換基であるRは、それぞれ独立で、水素原子、炭素原子数1~4の炭化水素基、または、炭素原子数1~4のアルコキシ基であってもよく、原料として使用する際の反応性や硬化物の曲げ特性の観点から、好ましくは、前記炭素原子数1~4の炭化水素基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t-ブチル基等のアルキル基が挙げられる。また、前記炭素原子数1~4のアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。中でも、前記Rが、水素原子であることで、溶融粘度が低く、ハンドリング性に優れ、曲げ特性や低吸水性のバランスに優れることとなり、好ましい態様となる。
上記一般式(2)又は(3)中、mは、0~3の整数を表し、原料として使用する際の反応性や硬化物の曲げ特性の観点から、好ましくは、0~2の整数である。
上記一般式(8)中、Rは、それぞれ独立で、水素原子、メチル基であることが好ましく、硬化物の曲げ特性や低吸水性の観点から、より好ましくは、水素原子である。前記Rが、水素原子等であることにより、硬化物の曲げ特性がよくなるため好ましく、中でも、前記Rが水素原子であることで、曲げ特性が向上することとなり、好ましい態様となる。
上記一般式(8)中、nは、0~4の整数を表し、原料として使用する際の反応性や硬化物の曲げ特性の観点から、好ましくは、0~1の整数である。
上記一般式(1)中、pは、0~50の整数を表し、硬化物の曲げ特性向上の観点から、好ましくは、0~20の整数である。なお、pが0の場合、つまり、フェノール樹脂は、カテコール骨格とフェノール骨格の両方を1つずつ有する化合物を含む。
なお、上記一般式(1)中のR、R、m、及び、nの詳細については、上記一般式(2)又は(3)、及び(8)中と同様である。
前記オルソキシリレン骨格含有化合物と、前記カテコール化合物及び前記フェノール化合物との反応比率は、溶融粘度と硬化物における曲げ特性と耐熱性、低吸水性とのバランスに優れるエポキシ樹脂が得られることから、前記オルソキシリレン骨格含有化合物1モルに対して、前記カテコール化合物及び前記フェノール化合物の合計が2~50モルの範囲であることが好ましく、4~20モルがより好ましい。
前記カテコール化合物及び前記フェノール化合物と、前記オルソキシリレン骨格含有化合物との反応は、効率的に反応が進むことから、酸触媒の存在下で行うことが好ましいが、前記オルソキシリレン骨格含有化合物としてオルソキシリレンジクロライドなどを使用する場合は、酸触媒なしでも反応が十分進行するため、このような場合は無触媒でも構わない。前記酸触媒は、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三フッ化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。このとき、酸触媒の使用量は、反応原料の総質量に対して、0.01~5質量%の範囲であることが好ましい。
前記カテコール化合物及び前記フェノール化合物と、前記オルソキシリレン骨格含有化合物(ここでは、塩素化オルソキシリレン骨格含有化合物を使用した場合)との反応は、通常、50~180℃の温度条件下で行うが、この時、発生する塩化水素ガスは、速やかに系外に放出し、アルカリ水などにより中和、無害化することが望ましい。反応時間は、実質的に塩化水素ガスの発生が無くなり、原料である前記オルソキシリレン骨格含有化合物が消失し、前記オルソキシリレン骨格含有化合物由来の塩素分が検出されなくなるまでであり、反応温度にもよるが、一般的に1~50時間程度である。また、該反応は必要に応じて有機溶剤中で行っても良い。ここで用いる有機溶剤は、前記温度条件下で使用可能な有機溶剤であれば特に限定されるものではなく、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1-メトキシ-2-プロパノール、ジグライム、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これら有機溶剤を用いる場合には反応原料の総質量に対して、5~500質量%の範囲で用いることが好ましい。
前記カテコール化合物及び前記フェノール化合物と、前記オルソキシリレン骨格含有化合物との反応終了後は、未反応の反応原料や溶媒等を留去することにより、前記フェノール樹脂が得られる。
なお、前記カテコール化合物及び前記フェノール化合物と、前記オルソキシリレン骨格含有化合物との反応終了後、前記フェノール化合物の一部が未反応のまま残留した場合、残留した前記カテコール化合物及び残留した前記フェノール化合物が硬化物の製造時などにおいて、揮発することで、ボイドの発生原因となる等する恐れがあるため、前記カテコール化合物及び前記フェノール化合物の残留量が多くなることは好ましくない。そのため、GPC測定により算出される残留した(未反応の)前記カテコール化合物及び前記フェノール化合物の含有割合の合計としては、GPC面積%において、1面積%以下であることが好ましく、0.8面積%以下であることがより好ましく、0.4面積%以下が更に好ましい。なお、ここでのGPC面積%とは、残留した(未反応の)前記カテコール化合物、または、残留した(未反応の)前記フェノール化合物のGPCピーク面積値を全成分のGPCピーク面積値の合計で除したそれぞれの値を指す。
前記フェノール樹脂の水酸基当量は、90~140g/当量であることが好ましく、92~138g/当量であることがより好ましく、94~136g/当量であることが更に好ましい。前記水酸基当量が前記範囲内であると、得られる硬化物の耐熱性、耐湿性(吸水率や吸水後の曲げ特性)や機械強度のバランスが優れることから好ましい。ここでの前記フェノール樹脂の水酸基当量は、下記実施例における「フェノール樹脂の水酸基当量」の測定方法に基づいたものである。
前記フェノール樹脂の溶融粘度(150℃)は、4.0dPa・s以下であることが好ましく、3.0dPa・s以下であることがより好ましく、0.1~2.0dPa・sであることが更に好ましい。前記フェノール樹脂の溶融粘度が、前記範囲内であると、低粘度で流動性、ハンドリング性に優れるため、前記フェノール樹脂を原料に合成したエポキシ樹脂が低粘度となり、硬化物作製時のハンドリング性などにも優れることから好ましい。ここでの溶融粘度(150℃)は、ASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定されるものである。
前記フェノール樹脂の軟化点としては、50~100℃であることが好ましく、50~80℃であることがより好ましい。前記フェノール樹脂の軟化点が前記範囲内であると、ハンドリング性や貯蔵安定性に優れることから好ましい。ここでの軟化点は、JIS K7234(環球法)に基づき測定されるものである。
<エポキシ樹脂>
本発明のエポキシ樹脂は、前記フェノール樹脂のフェノール性水酸基と、エピハロヒドリンとの反応によるグリシジルエーテル基を有する反応物であり、下記一般式(4)により表されるエポキシ樹脂であることが好ましい。ここで、前記「フェノール性水酸基」とは、カテコール骨格、及び、フェノール骨格に含まれる水酸基を指す。
Figure 0007444342000015
Figure 0007444342000016
Figure 0007444342000017
Figure 0007444342000018
(上記一般式(4)中、Yは、上記一般式(5)、または、上記一般式(6)で表され、Zは、上記一般式(7)で表され、Rは、水素原子、炭素原子数1~4の炭化水素基、または、炭素原子数1~4のアルコキシ基で表され、Rは、水素原子、メチル基で表され、Rは、水素原子、または、メチル基で表され、mは、0~3の整数で表され、nは、0~4の整数で表され、pは、0~50の整数で表される。)
上記一般式(4)~(6)中のR、R、m、n、及び、pの詳細については、上記一般式(1)~(3)と同様である。
上記一般式(5)及び(6)中のZは、上記一般式(7)で表され、上記一般式(7)中のRは、それぞれ独立で、水素原子、または、メチル基で表されることが好ましく、より好ましくは、水素原子である。前記水素原子等であることで、硬化剤との硬化反応がスムーズとなり、有用である。
前記エポキシ樹脂は、前記フェノール樹脂中のフェノール性水酸基と、エピハロヒドリンとを反応させることにより、グリシジルエーテル基が導入されたエポキシ樹脂であり、前記エポキシ樹脂を用いた硬化物は、耐熱性、低吸水性、及び、高曲げ特性(曲げ強度や曲げ弾性率、曲げ歪みなど)に優れ、好ましい。
なお、前記「エポキシ樹脂」とは、前記グリシジルエーテル基を少なくとも含有する化合物を含む樹脂を指す。
前記フェノール樹脂と前記エピハロヒドリンとを反応させ、目的のエポキシ樹脂を得ることができるが、その反応は、例えば、前記フェノール樹脂中のフェノール性水酸基1当量に対し、エピハロヒドリンが2~10モルの範囲となる割合で用い、フェノール性水酸基1当量に対し、0.9~2.0モルの塩基性触媒を一括又は分割添加しながら、20~120℃の温度で0.5~12時間反応させる方法などが挙げられる。
なお、工業生産を行う際、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリンの全てが新しいものであるが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリンと、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリンとを併用することが好ましい。この時、使用するエピハロヒドリンは特に限定されないが、例えば、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β-メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。なかでも工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。
前記塩基性触媒は、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。中でも、触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、具体的には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が好ましい。
反応終了後は、反応混合物を水洗した後、加熱減圧下での蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや有機溶剤を留去する。また、加水分解性ハロゲンの一層少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再び有機溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合の使用量はエポキシ樹脂100質量部に対して0.1~3.0質量部となる割合であることが好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過や水洗等により除去し、加熱減圧下で有機溶剤を留去することにより、目的とする本発明のエポキシ樹脂を得ることができる。
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、150~300g/当量であることが好ましく、160~280g/当量であることがより好ましく、180~250g/当量であることが更に好ましい。前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が前記範囲内であると、硬化物の架橋密度が適度なものとなり、得られる硬化物の耐熱性や低吸水性、曲げ特性のバランスに優れることから好ましい。ここでのエポキシ当量の測定は、JIS K7236に基づいて測定されるものである。
前記エポキシ樹脂の溶融粘度(150℃)は、2.0dPa・s以下であることが好ましく、1.5dPa・s以下であることがより好ましく、1.0dPa・s以下であることが更に好ましい。前記エポキシ樹脂の溶融粘度が前記範囲内であると、低粘度で流動性、ハンドリング性に優れるため、得られる硬化物の成形性にも優れることから好ましい。ここでの溶融粘度(150℃)は、ASTM D4287に準拠し、ICI粘度計にて測定されるものである。
<硬化性樹脂組成物>
本発明は、前記エポキシ樹脂を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。前記硬化性樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂を含有することにより、低粘度でハンドリング性に優れ、得られる硬化物は、耐熱性、低吸水性、及び、高曲げ特性(曲げ強度や曲げ弾性率など)となり、有用である。
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂以外にも、本発明の効果を損なわない範囲において、他の樹脂(その他のエポキシ樹脂を含む)、硬化剤、添加剤、溶剤等をさらに含んでいてもよい。
[その他エポキシ樹脂]
前記その他のエポキシ樹脂としては、種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、2,7-ジグリシジルオキシナフタレン、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトール/β-ナフトール共縮合型ノボラックのポリグリシジルエーテル、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、1,1-ビス(2,7-ジグリシジルオキシ-1-ナフチル)アルカン等のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;リン原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。前記リン原子含有エポキシ樹脂は、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(以下、「HCA」と略記する。)のエポキシ化物、HCAとキノン類とを反応させて得られるフェノール樹脂のエポキシ化物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をHCAで変性したエポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を及びHCAとキノン類とを反応させて得られるフェノール樹脂で変成して得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
[他の樹脂]
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂や、前記その他のエポキシ樹脂に加えて、他の樹脂を含んでいてもよい。なお、本明細書において、「他の樹脂」とは、エポキシ樹脂以外の樹脂を意味する。
前記他の樹脂の具体例としては、特に制限されないが、活性エステル、マレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、トリアジン含有クレゾールノボラック樹脂、シアン酸エステル樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ジアリルビスフェノールやトリアリルイソシアヌレート等のアリル基含有樹脂、ポリリン酸エステル、リン酸エステル-カーボネート共重合体等が挙げられる。これらの他の樹脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[硬化剤]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂と共に、硬化剤を含有することができる。前記硬化剤を含むことにより、耐熱性や低吸水性、曲げ特性に優れた硬化物を得ることができる。
ここで用いる硬化剤としては、アミン化合物、アミド化合物、酸無水物、フェノール樹脂等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。なお、前記硬化剤としてのフェノール樹脂は、上記一般式(1)で表されるフェノール樹脂も使用可能である。
前記アミン化合物としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ-ル、BF-アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。
前記アミド系化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、脂肪族二塩基酸やダイマー酸、脂肪酸のカルボン酸化合物とエチレンジアミン等のアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
前記酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
前記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核がビフェニル骨格と連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核がビフェニル骨格と連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物等が挙げられる。
これらの硬化剤はそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
本発明の硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分と硬化剤との配合割合は、硬化性に優れ、耐熱性や低吸水性、靭性に優れる硬化物が得られることから、エポキシ樹脂成分中のエポキシ基の合計(エポキシ当量)1当量に対して、硬化剤中の活性基が0.7~1.5当量になる量が好ましい。
前記添加剤としては、例えば、硬化促進剤、難燃剤、無機充填剤、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤、溶剤等の各種添加剤が挙げられ、必要に応じて、前記硬化性樹脂組成物に含有することができる。
[硬化促進剤]
前記硬化促進剤は、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。中でも、硬化性、耐熱性や低吸水性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、イミダゾール化合物では2-エチル-4-メチルイミダゾール、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)が好ましい。
[難燃剤]
前記難燃剤は、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤等が挙げられる。これら難燃剤を用いる場合は、硬化性樹脂組成物中0.1~20質量%の範囲であることが好ましい。
[無機充填剤]
前記無機充填剤は、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を半導体封止材料用途に用いる場合などに配合される。前記無機充填剤は、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。中でも、無機充填剤をより多く配合することが可能となることから、前記溶融シリカが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ、硬化性樹脂組成物の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いることが好ましい。更に、球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は硬化性樹脂組成物100質量部中、0.5~95質量部の範囲で配合することが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、無溶剤で調製しても構わないし、溶剤を含んでいてもよい。前記溶剤は、硬化性樹脂組成物の粘度を調整する機能等を有する。前記溶剤の具体例としては、特に制限されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等のエステル系溶剤;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この他、本発明の硬化性樹脂組成物を導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
<硬化物>
本発明は、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られることを特徴とする硬化物に関する。前記硬化物は、前記エポキシ樹脂を含有する前記硬化性樹脂組成物により得られるため、耐熱性、低吸水性、及び、高曲げ特性(曲げ強度や曲げ弾性率、曲げ歪みなど)を発現することができ、好ましい。
前記硬化性樹脂組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。エポキシ樹脂成分、硬化剤、更に必要により硬化促進剤などが配合され、これを用いて、従来公知の方法と同様の方法にて、容易に硬化物を得ることができる。得られた硬化物は、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させてなる硬化物を得る方法としては、例えば、加熱硬化する際の加熱温度は、特に制限されないが、100~300℃であり、加熱時間としては、1~24時間であることが好ましい。
<硬化性樹脂組成物の用途>
前記硬化性樹脂組成物が用いられる用途としては、プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等の回路基板用絶縁材料、樹脂注型材料、接着剤、半導体封止材料、半導体装置、プリプレグ、導電ペースト、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、繊維強化複合材料、前記複合材料を硬化させてなる成形品(繊維強化樹脂成形品)等が挙げられる。これら各種用途のうち、プリント配線板材料、回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。さらに、上記の中でも、硬化物が優れた耐熱性、低吸水性、及び、高弾性率等を有するといった特性を生かし、本発明の硬化性樹脂組成物は、半導体封止材料、半導体装置、プリプレグ、フレキシルブル配線基板、回路基板、及び、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、多層プリント配線板、繊維強化複合材料、前記複合材料を硬化させてなる成形品に用いることが好ましい。以下に、硬化性樹脂組成物から、前記繊維強化複合材料などを製造する方法について説明する。
1.半導体封止材料
上記硬化性樹脂組成物から半導体封止材料を得る方法としては、上記硬化性樹脂組成物、及び硬化促進剤、及び無機充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常、溶融シリカが用いられるが、パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材として用いる場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などの高充填化、又は溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などを用いるとよい。その充填率は硬化性樹脂組成物100質量部当たり、無機充填剤を30~95質量部の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。
2.半導体装置
上記硬化性樹脂組成物から半導体装置を得る方法としては、上記半導体封止材料を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50~200℃ で2~10時間の間、加熱する方法が挙げられる。
3.プリプレグ
上記硬化性樹脂組成物からプリプレグを得る方法としては、下記有機溶剤を配合してワニス化した硬化性樹脂組成物を、補強基材(紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布など)に含浸したのち、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50~170℃で加熱することによって、得る方法が挙げられる。この時用いる樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20~60質量%となるように調製することが好ましい。
ここで用いる有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、下記のようにプリプレグからプリント回路基板をさらに製造する場合には、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤を用いることが好ましく、また、不揮発分が40~80質量%となる割合で用いることが好ましい。
4.回路基板
上記硬化性樹脂組成物からプリント回路基板を得る方法としては、上記プリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1~10MPaの加圧下に170~300℃で10分~3時間、加熱圧着させる方法が挙げられる
5.フレキシルブル配線基板
上記硬化性樹脂組成物からフレキシルブル配線基板を製造する方法としては、以下に示す3つの工程からなる方法で製造されるものが挙げられる。第1の工程は、活性エステル、エポキシ樹脂、及び有機溶剤を配合した硬化性樹脂組成物を、リバースロールコータ、コンマコータ等の塗布機を用いて、電気絶縁性フィルムに塗布する工程であり、第2の工程は、加熱機を用いて60~170℃で1~15分間の間、硬化性樹脂組成物が塗布された電気絶縁性フィルム加熱し、電気絶縁性フィルムから溶剤を揮発させて、硬化性樹脂組成物をB-ステージ化する工程であり、第3の工程は、硬化性樹脂組成物がB-ステージ化された電気絶縁性フィルムに、加熱ロール等を用いて、接着剤に金属箔を熱圧着(圧着圧力は2~200N/cm、圧着温度は40~200℃が好ましい)する工程である。なお、上記3つの工程を経ることで、十分な接着性能が得られれば、ここで終えても構わないが、完全接着性能が必要な場合は、さらに100~200℃で1~24時間の条件で後硬化させることが好ましい。最終的に硬化させた後の硬化性樹脂組成物膜の厚みは、5~100μmの範囲が好ましい。
6.ビルドアップ基板
上記硬化性樹脂組成物からビルドアップ基板を製造する方法としては、以下に示す3つの工程からなる方法で製造されるものが挙げられる。第1の工程は、ゴム、フィラーなどを適宜配合した上記硬化性樹脂組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる工程であり、第2の工程は、その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する工程であり、第3の工程は、このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成する工程である。なお、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行うことが好ましい。第一の工程は、上述の溶液塗布によるもの以外にも、あらかじめ所望の厚みに塗工して乾燥したビルドアップフィルムのラミネートによる方法でも行うことができる。また、本発明のビルドアップ基板は、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170~250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を製造することも可能である。
7.ビルドアップフィルム
上記硬化性樹脂組成物からビルドアップフィルムを製造する方法としては、上記硬化性樹脂組成物を、支持フィルム上に塗布し、硬化性樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとすることにより製造する方法が挙げられる。
硬化性樹脂組成物からビルドアップフィルムを製造する場合、該フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70~140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール、あるいは、スルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は、通常0.1~0.5mm、深さは通常0.1~1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の上記硬化性樹脂組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて硬化性樹脂組成物からなる組成物層(X)を形成させることにより製造することができる。
形成される組成物層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とすることが好ましい。回路基板が有する導体層の厚さは通常5~70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。
なお、本発明における組成物層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
上記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
8.多層プリント配線板
なお、上記のようして得られたフィルムを用いて多層プリント配線板を製造することもできる。そのような多層プリント配線板の製造方法は、例えば、組成物層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、組成物層(X)を回路基板に直接、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70~140℃、圧着圧力を好ましくは1~11kgf/cm(9.8×10~107.9×10N/m)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
9.繊維強化複合材料
本発明は、前記硬化性樹脂組成物と、強化繊維を含有することを特徴とする繊維強化複合材料に関する。前記硬化性樹脂組成物から繊維強化複合材料を製造する方法としては、硬化性樹脂組成物を構成する各成分を均一に混合してワニスを調整し、次いでこれを強化繊維からなる強化基材に含浸した後、重合反応させることにより製造することができる。特に本発明のエポキシ樹脂は、低溶融粘度であるため、ハンドリング性に優れるため、前記繊維強化複合材料の製造に適しており、好ましい。
かかる重合反応を行う際の硬化温度は、具体的には、50~250℃の温度範囲であることが好ましく、特に、50~100℃で硬化させ、タックフリー状の硬化物にした後、更に、120~200℃の温度条件で処理することが好ましい。
ここで、強化繊維は、有撚糸、解撚糸、又は無撚糸などいずれでも良いが、解撚糸や無撚糸が、繊維強化プラスチック製部材の成形性と機械強度を両立することから、好ましい。さらに、強化繊維の形態は、繊維方向が一方向に引き揃えたものや、織物が使用できる。織物では、平織り、朱子織りなどから、使用する部位や用途に応じて自由に選択することができる。具体的には、機械強度や耐久性に優れることから、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが挙げられ、これらの2種以上を併用することもできる。これらの中でもとりわけ成形品の強度が良好なものとなる点から炭素繊維が好ましく、かかる、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などの各種のものが使用できる。中でも、容易に高強度の炭素繊維が得られるポリアクリロニトリル系のものが好ましい。ここで、ワニスを強化繊維からなる強化基材に含浸して繊維強化複合材料とする際の強化繊維の使用量は、該繊維強化複合材料中の強化繊維の体積含有率が40~85%の範囲となる量であることが好ましい。
10.繊維強化樹脂成形品本発明は、前記硬化物と、強化繊維を含有することを特徴とする繊維強化樹脂成形品に関する。前記硬化性樹脂組成物から繊維強化樹脂成形品を製造する方法としては、型に繊維骨材を敷き、上記ワニスを多重積層してゆくハンドレイアップ法やスプレーアップ法、オス型・メス型のいずれかを使用し、強化繊維からなる基材にワニスを含浸させながら積み重ねて成形、圧力を成形物に作用させることのできるフレキシブルな型をかぶせ、気密シールしたものを真空(減圧)成型する真空バッグ法、あらかじめ強化繊維を含有するワニスをシート状にしたものを金型で圧縮成型するSMCプレス法、繊維を敷き詰めた合わせ型に上記ワニスを注入するRTM法などにより、強化繊維に上記ワニスを含浸させたプリプレグを製造し、これを大型のオートクレーブで焼き固める方法などが挙げられる。特に本発明のエポキシ樹脂は、低溶融粘度であるため、ハンドリング性に優れるため、前記繊維強化樹脂成形品の製造に適しており、好ましい。なお、上記で得られた繊維強化樹脂成形品は、強化繊維と硬化性樹脂組成物の硬化物とを有する成形品であり、具体的には、繊維強化樹脂成形品中の強化繊維の量は、40~70質量%の範囲であることが好ましく、強度の点から50~70質量%の範囲であることが特に好ましい。
11.その他
上記で半導体封止材料や繊維強化複合材料等を製造する方法について説明したが、硬化性樹脂組成物からその他の硬化物を製造することもできる。その他の硬化物の製造方法としては、一般的な硬化性樹脂組成物の硬化方法に準拠することにより製造することができる。例えば加熱温度条件は、組み合わせる硬化剤の種類や用途等によって、適宜選択すればよい。
以下に、本発明を実施例、及び、比較例により具体的に説明するが、これらに限定解釈されるものではない。また、以下において、特に断わりのない限り、質量基準である。なお、以下に得られたフェノール樹脂やエポキシ樹脂、前記エポキシ樹脂を用いて得られる硬化物については、以下の条件等にて測定・評価を行った。
<フェノール樹脂の水酸基当量>
以下に示す手順、及び、計算式により、フェノール樹脂の水酸基当量(g/当量)を測定した。
500mL三角フラスコに、以下に得られたフェノール樹脂を試料とし、これを2.5g、トリフェニルホスフィン7.5g、ピリジン7.5g、無水酢酸2.5gを精秤し、120℃にて2.5時間処理した後、5mLの蒸留水を加え反応を停止した。その後、テトラヒドロフラン150mL、プリピレングリコールモノメチルエーテル200mLに溶解することで、試料溶液を調製した。
前記試料溶液とは別に、10mL蒸留水、2.5gの無水酢酸を精秤し、ピリジン10gを入れ、10分間攪拌し、20分静置した後、テトラヒドロフラン150mL、プリピレングリコールモノメチルエーテル200mLと混合することで、ブランク溶液を調製した。
得られた試料溶液、及び、ブランク溶液について、電位差自動滴定装置AT-510(京都電子工業社製)を使用し、0.5mol/Lエタノール性水酸化カリウム溶液(滴定液)を用いて、滴定を行った後、以下の計算式を用いて、水酸基当量を算出した。
[ブランクの計算式]
BL=(ブランク溶液の滴定量)×(2.5gの無水酢酸の理論滴定量)/(ブランク溶液の理論滴定量)
=Y×[(2.5/102.09)×2×(1000/5)]/[(W/102.09)
×2×(1000/5)]
BL:ブランク値(mL)
Y:ブランク溶液の滴定量(mL)
W:ブランク測定の無水酢酸の量(g)
[試料の水酸基当量を計算するための式]
水酸基当量(g/当量)=S×1000/[{(BL×FA3/FA5)-EP1}×
FA4]
S:サンプル量(g)
FA3:試料測定時の無水酢酸の量(g)
FA4:滴定液(エタノール性KOH溶液)の濃度(mol/L)
FA5:試料測定時の無水酢酸の量(g)
EP1:試料の滴定量(mL)
<フェノール樹脂の軟化点>
JIS K 7234(環球法)に準拠して、軟化点(℃)を測定した。
<溶融粘度測定(150℃)>
ASTM D4287に準拠して、ICI粘度計にて、150℃における溶融粘度(d
Pa・s)測定した。
<粘度測定(25℃)>
E型粘度計(東機産業株式会社製 TV-22)を用いて、25℃における粘度(mPa・s)測定した。
<エポキシ樹脂のエポキシ当量>
JIS K 7236に準拠して、以下に得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量(g/当量)を測定した。
<GPCの測定>
以下の測定装置、測定条件を用いて、以下に示す合成方法で得られたフェノール樹脂、及び、前記フェノール樹脂を用いて得られたエポキシ樹脂のGPC測定を行った。
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC-Work
Station」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶剤 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC―WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料:フェノール樹脂、及び、エポキシ樹脂の固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
なお、前記フェノール樹脂中の残留した(未反応の)カテコール化合物、及び、(未反応の)フェノール化合物の含有割合(面積%)については、硬化時の揮発分を低減する等の観点から、残留カテコール化合物(残存カテコール)、及び、残留フェノール化合物(残存フェノール)の含有割合の合計として、1面積%以下であることが好ましく、0.8面積%以下であることがより好ましく、0.4面積%以下が更に好ましい。
<FD-MSスペクトル測定>
FD-MSスペクトルは、以下の測定装置、測定条件を用いて測定した。
測定装置:日本電子製JMS-T100GC AccuTOF
測定条件
測定範囲:m/z=4.00~2000.00
変化率:51.2mA/min
最終電流値:45mA
カソード電圧:-10kV
記録間隔:0.07sec
前記FD-MSスペクトルの結果より、目的生成物(フェノール樹脂、及び、エポキシ樹脂)由来のピークが確認でき、目的生成物が得られたことを確認した。なお、前記FD-MSスペクトル測定の結果については、実施例1(図15参照)、及び、実施例8(図16参照)についてのみ図示した。
13C-NMR測定>
13C-NMR:日本電子製「JNM-ECA500」
磁場強度:500MHz
積算回数:2000回
溶媒:DMSO-d6(フェノール樹脂)、クロロホルム-d1(エポキシ樹脂)
試料濃度:30質量%
前記13C-NMRチャートの結果より、目的生成物(フェノール樹脂、及び、エポキシ樹脂)由来のピークが確認でき、各反応における目的生成物が得られたことを確認した。なお、前記13C-NMR測定の結果(13C-NMRチャート)については、実施例1(図17参照)、及び、実施例8(図18参照)についてのみ図示した。
[実施例1]
〔フェノール樹脂(a-1)の合成〕
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにカテコール484.4g(4.40mol)、フェノール414.0g(4.40mol)、オルソキシリレンジクロライド154.2g(0.88mol)を仕込み、溶解しながら100℃まで昇温し、その温度で3時間保持して反応させた。次いで、150℃に昇温し3時間保持して反応させた。この際、反応で生成した塩化水素は系外へ排出させ、水酸化ナトリウム水溶液のトラップに吸収させた。反応後、減圧下で未反応カテコールおよびフェノールを留去することで、フェノール樹脂(a-1)236.4gを得た。水酸基当量は96g/当量であり、軟化点は63℃、150℃における溶融粘度は0.4dPa・sであった。また、残存カテコールは、GPC(図1参照)の面積百分率で0.2面積%であり、フェノールは検出されなかった。
[実施例2]
〔フェノール樹脂(a-2)の合成〕
実施例1において、カテコール387.6g(3.52mol)、フェノール496.8g(5.28mol)に変更した以外は同様の操作を行い、フェノール樹脂(a-2)を239.4g得た。水酸基当量は104g/当量であり、軟化点は62℃、150℃における溶融粘度は0.4dPa・sであった。GPC(図2参照)上では、残存カテコールおよびフェノールは検出されなかった。
[実施例3]
〔フェノール樹脂(a-3)の合成〕
実施例1において、カテコール290.7g(2.64mol)、フェノール579.7g(6.16mol)に変更した以外は同様の操作を行い、フェノール樹脂(a-3)を245.4g得た。水酸基当量は107g/当量であり、軟化点は61℃、150℃における溶融粘度は0.3dPa・sであった。また、残存カテコールは、GPC(図3参照)の面積百分率で0.3面積%であり、フェノールは検出されなかった。
[実施例4]
〔フェノール樹脂(a-4)の合成〕
実施例1において、カテコール193.8g(1.76mol)、フェノール662.5g(7.04mol)に変更した以外は同様の操作を行い、フェノール樹脂(a-4)を241.9g得た。水酸基当量は120g/当量であり、軟化点は57℃、150℃における溶融粘度は0.3dPa・sであった。また、残存カテコールは、GPC(図4参照)の面積百分率で0.5面積%であり、フェノールは検出されなかった。
[実施例5]
〔フェノール樹脂(a-5)の合成〕
実施例1において、カテコール96.9g(0.88mol)、フェノール745.3g(7.92mol)に変更した以外は同様の操作を行い、フェノール樹脂(a-5)を229.1g得た。水酸基当量は134g/当量であり、軟化点は53℃、150℃における溶融粘度は0.2dPa・sであった。GPC(図5参照)上では、残存カテコールおよびフェノールは検出されなかった。
[実施例6]
〔フェノール樹脂(a-6)の合成〕
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにカテコール264.2g(2.40mol)、フェノール338.8g(3.60mol)、オルソキシリレンジクロライド210.1g(1.20mol)を仕込み、溶解しながら100℃まで昇温し、その温度で3時間保持して反応させた。次いで、150℃に昇温し3時間保持して反応させた。この際、反応で生成した塩化水素は系外へ排出させ、水酸化ナトリウム水溶液のトラップに吸収させた。反応後、減圧下で未反応カテコールおよびフェノールを留去することで、フェノール樹脂(a-6)317.5gを得た。水酸基当量は110g/当量であり、軟化点は69℃、150℃における溶融粘度は0.7dPa・sであった。また、残存カテコールは、GPC(図6参照)の面積百分率で0.4面積%であり、フェノールは検出されなかった。
[実施例7]
〔フェノール樹脂(a-7)の合成〕
実施例5において、カテコール198.2g(1.80mol)、フェノール395.2g(4.20mol)に変更した以外は同様の操作を行い、フェノール樹脂(a-7)を292.9g得た。水酸基当量は116g/当量であり、軟化点は67℃、150℃における溶融粘度は0.5dPa・sであった。また、残存カテコールは、GPC(図7参照)の面積百分率で0.3面積%であり、フェノールは検出されなかった。
[比較例1]
〔フェノール樹脂(b-1)の合成〕
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにカテコール968.9g(8.80mol)、オルソキシリレンジクロライド154.2g(0.88mol)、メタノール96.9gを仕込み、溶解しながら120℃まで昇温し、その温度で3時間保持して反応させた。次いで、150℃に昇温し3時間保持して反応させた。この際、反応で生成した塩化水素は系外へ排出させ、水酸化ナトリウム水溶液のトラップに吸収させた。反応後、減圧下で未反応カテコールを留去することで、フェノール樹脂(b-1)228.2gを得た。水酸基当量は85g/当量であり、軟化点は70℃、150℃における溶融粘度は0.7dPa・sであった。また、残存カテコールは、GPC(図19参照)の面積百分率で0.5面積%であった。
[比較例2]
〔フェノール樹脂(b-2)の合成〕
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにフェノール846.9g(9.00mol)、オルソキシリレンジクロライド157.7g(0.90mol)を仕込み、溶解しながら100℃まで昇温し、その温度で3時間保持して反応させた。さらに150 ℃まで昇温して1時間保持し反応させた。この際、反応で生成した塩化水素ガスは系外へ排出させ、水酸化ナトリウム水溶液に吸収させた。反応後、減圧下で未反応フェノールを留去することで、フェノール樹脂(b-2)252.1gを得た。水酸基当量は152g/当量であり、軟化点は47℃、150℃における溶融粘度は0.2dPa・sであった。また、GPC(図20参照)上では残存フェノールは検出されなかった。
[実施例8]
〔エポキシ樹脂(A-1)の合成〕
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにフェノール樹脂(a-1)192.0g(水酸基として2.0mol)、エピクロルヒドリン1110.0g(12.0mol)を仕込み、攪拌溶解しながら50℃に昇温した。次いで、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムを1.70g仕込み、50℃の温度のまま24時間反応させた。さらに、49%水酸化ナトリウム水溶液179.6g(水酸基に対して1.10当量)を3時間かけて滴下し、さらに50℃で1時間反応させた。反応終了後、n-ブタノール222.0g、水260.4gを添加し、攪拌を停止して、下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開し150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン516.8gとn-ブタノール86.1gを加え溶解した。さらにこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液17.8gを添加して80℃2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水152.0gで水洗を繰り返した。次いで、共沸によって系内を脱水し、精密ろ過を経た後に、溶媒を減圧下にて留去し目的のエポキシ樹脂(A-1)288.8gを得た。得られたエポキシ樹脂(A-1)のエポキシ当量は193g/当量であり、150℃における溶融粘度は0.4dPa・sであった。また、GPCチャートを図8に示した。
[実施例9]
〔エポキシ樹脂(A-2)の合成〕 温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにフェノール樹脂(a-2)208.0g(水酸基として2.0mol)、エピクロルヒドリン1110.0g(12.0mol)を仕込み、攪拌溶解しながら50℃に昇温した。次いで、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムを1.70g仕込み、50℃の温度のまま24時間反応させた。さらに、49%水酸化ナトリウム水溶液179.6g(水酸基に対して1.10当量)を3時間かけて滴下し、さらに50℃で1時間反応させた。反応終了後、n-ブタノール222.0g、水260.4gを添加し、攪拌を停止して、下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開し150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン544.0gとn-ブタノール90.7gを加え溶解した。さらにこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液18.7gを添加して80℃2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水160.0gで水洗を繰り返した。次いで、共沸によって系内を脱水し、精密ろ過を経た後に、溶媒を減圧下にて留去し目的のエポキシ樹脂(A-2)304.0gを得た。得られたエポキシ樹脂(A-2)のエポキシ当量は195g/当量であり、150℃における溶融粘度は0.4dPa・sであった。 また、GPCチャートを図9に示した。
[実施例10]
〔エポキシ樹脂(A-3)の合成〕
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにフェノール樹脂(a-3)214.0g(水酸基として2.0mol)、エピクロルヒドリン1110.0g(12.0mol)を仕込み、攪拌溶解しながら50℃に昇温した。次いで、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムを1.70g仕込み、50℃の温度のまま24時間反応させた。さらに、49%水酸化ナトリウム水溶液179.6g(水酸基に対して1.10当量)を3時間かけて滴下し、さらに50℃で1時間反応させた。反応終了後、n-ブタノール222.0g、水260.4gを添加し、攪拌を停止して、下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開し150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン554.2gとn-ブタノール92.4gを加え溶解した。さらにこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液18.2gを添加して80℃2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水163.0gで水洗を繰り返した。次いで、共沸によって系内を脱水し、精密ろ過を経た後に、溶媒を減圧下にて留去し目的のエポキシ樹脂(A-3)308.1gを得た。得られたエポキシ樹脂(A-3)のエポキシ当量は212g/当量であり、150℃における溶融粘度は0.4dPa・sであった。また、GPCチャートを図10に示した。
[実施例11]
〔エポキシ樹脂(A-4)の合成〕
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにフェノール樹脂(a-4)240.0g(水酸基として2.0mol)、エピクロルヒドリン1110.0g(12.0mol)を仕込み、攪拌溶解しながら50℃に昇温した。次いで、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムを1.70g仕込み、50℃の温度のまま24時間反応させた。さらに、49%水酸化ナトリウム水溶液179.6g(水酸基に対して1.10当量)を3時間かけて滴下し、さらに50℃で1時間反応させた。反応終了後、n-ブタノール222.0g、水260.4gを添加し、攪拌を停止して、下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開し150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン598.4gとn-ブタノール99.7gを加え溶解した。さらにこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液15.3gを添加して80℃2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水176.0gで水洗を繰り返した。次いで、共沸によって系内を脱水し、精密ろ過を経た後に、溶媒を減圧下にて留去し目的のエポキシ樹脂(A-4)295.6gを得た。得られたエポキシ樹脂(A-4)のエポキシ当量は225g/当量であり、150℃における溶融粘度は0.3dPa・sであった。また、GPCチャートを図11に示した。
[実施例12]
〔エポキシ樹脂(A-5)の合成〕
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにフェノール樹脂(a-5)214.4g(水酸基として1.6mol)、エピクロルヒドリン888.8g(9.60mol)を仕込み、攪拌溶解しながら50℃に昇温した。次いで、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムを1.36g仕込み、50℃の温度のまま24時間反応させた。さらに、49%水酸化ナトリウム水溶液143.7g(水酸基に対して1.10当量)を3時間かけて滴下し、さらに50℃で1時間反応させた。反応終了後、n-ブタノール177.8g、水208.4gを添加し、攪拌を停止して、下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開し150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン516.8gとn-ブタノール86.1gを加え溶解した。さらにこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液15.1gを添加して80℃2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水152.0gで水洗を繰り返した。次いで、共沸によって系内を脱水し、精密ろ過を経た後に、溶媒を減圧下にて留去し目的のエポキシ樹脂(A-5)287.8gを得た。得られたエポキシ樹脂(A-5)のエポキシ当量は232g/当量であり、150℃における溶融粘度は0.2dPa・sであった。また、GPCチャートを図12に示した。
[実施例13]
〔エポキシ樹脂(A-6)の合成〕
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにフェノール樹脂(a-6)220.0g(水酸基として2.0mol)、エピクロルヒドリン1110.0g(12.0mol)を仕込み、攪拌溶解しながら50℃に昇温した。次いで、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムを1.70g仕込み、50℃の温度のまま24時間反応させた。さらに、49%水酸化ナトリウム水溶液179.6g(水酸基に対して1.10当量)を3時間かけて滴下し、さらに50℃で1時間反応させた。反応終了後、n-ブタノール222.0g、水260.4gを添加し、攪拌を停止して、下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開し150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン564.4gとn-ブタノール94.1gを加え溶解した。さらにこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液20.6gを添加して80℃2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水166.0gで水洗を繰り返した。次いで、共沸によって系内を脱水し、精密ろ過を経た後に、溶媒を減圧下にて留去し目的のエポキシ樹脂(A-6)295.6gを得た。得られたエポキシ樹脂(A-6)のエポキシ当量は203g/当量であり、150℃における溶融粘度は0.7dPa・sであった。また、GPCチャートを図13に示した。
[実施例14]
〔エポキシ樹脂(A-7)の合成〕
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにフェノール樹脂(a-7)232.0g(水酸基として2.0mol)、エピクロルヒドリン1110.0g(12.0mol)を仕込み、攪拌溶解しながら50℃に昇温した。次いで、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムを1.70g仕込み、50℃の温度のまま24時間反応させた。さらに、49%水酸化ナトリウム水溶液179.6g(水酸基に対して1.10当量)を3時間かけて滴下し、さらに50℃で1時間反応させた。反応終了後、n-ブタノール222.0g、水260.4gを添加し、攪拌を停止して、下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開し150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン584.8gとn-ブタノール94.1gを加え溶解した。さらにこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液20.6gを添加して80℃2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水172.0gで水洗を繰り返した。次いで、共沸によって系内を脱水し、精密ろ過を経た後に、溶媒を減圧下にて留去し目的のエポキシ樹脂(A-7)295.6gを得た。得られたエポキシ樹脂(A-7)のエポキシ当量は222g/当量であり、150℃における溶融粘度は0.7dPa・sであった。また、GPCチャートを図14に示した。
[比較例3]
〔エポキシ樹脂(B-1)の合成〕
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにフェノール樹脂(b-1)170.0g(水酸基として2.0mol)、エピクロルヒドリン740.0g(8.0mol)を仕込み、攪拌溶解しながら50℃に昇温した。次いで、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムを1.70g仕込み、50℃の温度のまま24時間反応させた。さらに、49%水酸化ナトリウム水溶液179.6g(水酸基に対して1.10当量)を3時間かけて滴下し、さらに50℃で1時間反応させた。反応終了後、n-ブタノール148.0g、水260.4gを添加し、攪拌を停止して、下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開し150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン489.6gとn-ブタノール81.6gを加え溶解した。さらにこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液21.1gを添加して80℃2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水144.0gで水洗を繰り返した。次いで、共沸によって系内を脱水し、精密ろ過を経た後に、溶媒を減圧下にて留去し目的のエポキシ樹脂(B-1)272.0gを得た。得られたエポキシ樹脂(B-1)のエポキシ当量は164g/当量であり、150℃における溶融粘度は0.4dPa・sであった。また、GPCチャートを図21に示した。
[比較例4]
〔エポキシ樹脂(B-2)の合成〕
温度計、冷却管、攪拌機を取り付けた2Lフラスコにフェノール樹脂(b-2)243.2g(水酸基として1.60mol)、エピクロルヒドリン740.0g(8.00mol)、n-ブタノール148.0gを仕込み、攪拌溶解しながら50℃に昇温した。次いで、50℃の温度で49%水酸化ナトリウム水溶液143.7g(水酸基に対して1.10当量)を3時間かけて滴下し、さらに1時間反応させた。反応終了後、n-ブタノール148.0g、水208.4gを添加し、攪拌を停止して、下層に溜まった水層を除去し、攪拌を再開し150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン565.8gとn-ブタノール94.3gを加え溶解した。さらにこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液11.2gを添加して80℃2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水166.4gで水洗を繰り返した。次いで、共沸によって系内を脱水し、精密ろ過を経た後に、溶媒を減圧下にて留去し目的のエポキシ樹脂(B-2)314.5gを得た。得られたエポキシ樹脂(B-2)のエポキシ当量は217g/当量であり、25℃における粘度は304,000mPa・sであった。また、GPCチャートを図22に示した。
[比較例5]
〔エポキシ樹脂(B-3)の合成〕
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、DIC社製、EPICLON 850S(エポキシ当量:188g/当量、25℃での粘度:13,000mPa・s)をエポキシ樹脂(B-3)とした。
[比較例6]
〔エポキシ樹脂(B-4)の合成〕
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、住友化学社製、スミエポキシ ELM-434(エポキシ当量:121g/当量、25℃での粘度:388,000mPa・s)をエポキシ樹脂(B-4)とした。
[実施例15~21、比較例7~10]
実施例8~14、比較例3~6のエポキシ樹脂、および、硬化剤として4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)をエポキシ当量/活性水素当量=1/1となるように配合し、100~120℃で溶融混合してエポキシ樹脂組成物を得た。さらに、エポキシ樹脂組成物を、4mmのスペーサーを挟んだガラス板の間に流し込み、150℃で1時間、次いで180℃で3時間硬化反応を行い、硬化物を作成した。
<曲げ強度、曲げ弾性率、曲げ歪の測定>
得られた硬化物を、JIS K7171に従って、4mm厚の硬化物の初期値、及び、70℃の水に2週間浸漬した吸水後の曲げ強度、曲げ弾性率、及び、曲げ歪みをそれぞれ測定した。
前記曲げ弾性率としては、好ましくは3000MPa以上であり、より好ましくは、3200MPa以上であり、更に好ましくは、3400MPa以上である。
前記曲げ強度としては、好ましくは、130MPa以上であり、より好ましくは、140MPa以上であり、更に好ましくは、150MPa以上である。
前記曲げ歪みとしては、好ましくは、4.0%以上であり、より好ましくは、4.5%以上であり、更に好ましくは、5%以上である。
上記曲げ特性に関して、初期値、及び、吸水後の値が、前記範囲内にあれば、優れた高曲げ特性を発現できており、有用である。
<吸水率の測定>
得られた硬化物を、70℃の水に2週間浸漬し、その後に水から引き揚げて、吸水率を測定した。吸水率は、下記の式のとおり算出した。
吸水率=100×[(吸水後の硬化物の重量)-(初期の硬化物の重量)]/[(初期の硬化物の重量)]
前記吸水率としては、好ましくは3%以下であり、より好ましくは、2.5%以下であり、更に好ましくは、2%以下である。
Figure 0007444342000019
Figure 0007444342000020
Figure 0007444342000021
Figure 0007444342000022
上記表1~表4より、所望のフェノール樹脂(a-1)~(a-7)(実施例1~7)は低溶融粘度であり、ハンドンリング性に優れ、前記フェノール樹脂を使用して得られたエポキシ樹脂(A-1)~(A-7)(実施例8~14)も低溶融粘度であり、ハンドンリング性に優れ、前記エポキシ樹脂を使用したことで、低吸水性、及び、高曲げ特性を有する硬化物を得ることができた(実施例15~21)。
一方、比較例においては、実施例と比較して、曲げ特性全てにおいて、所望の範囲を満足するものはなく、特に吸水後の曲げ強度に関しては、全ての比較例において、実施例よりも劣る結果であった。
実施例1で得られたフェノール樹脂(a-1)のGPCチャートである。 実施例2で得られたフェノール樹脂(a-2)のGPCチャートである。 実施例3で得られたフェノール樹脂(a-3)のGPCチャートである。 実施例4で得られたフェノール樹脂(a-4)のGPCチャートである。 実施例5で得られたフェノール樹脂(a-5)のGPCチャートである。 実施例6で得られたフェノール樹脂(a-6)のGPCチャートである。 実施例7で得られたフェノール樹脂(a-7)のGPCチャートである。 実施例8で得られたエポキシ樹脂(A-1)のGPCチャートである。 実施例9で得られたエポキシ樹脂(A-2)のGPCチャートである。 実施例10で得られたエポキシ樹脂(A-3)のGPCチャートである。 実施例11で得られたエポキシ樹脂(A-4)のGPCチャートである。 実施例12で得られたエポキシ樹脂(A-5)のGPCチャートである。 実施例13で得られたエポキシ樹脂(A-6)のGPCチャートである。 実施例14で得られたエポキシ樹脂(A-7)のGPCチャートである。 実施例1で得られたフェノール樹脂(a-1)のFD-MSスペクトルチ ャートである。 実施例8で得られたエポキシ樹脂(A-1)のFD-MSスペクトルチャ ートである。 実施例1で得られたフェノール樹脂(a-1)の13C-NMRチャート である。 実施例8で得られたエポキシ樹脂(A-1)の13C-NMRチャートで ある。 比較例1で得られたフェノール樹脂(b-1)のGPCチャートである。 比較例2で得られたフェノール樹脂(b-2)のGPCチャートである。 比較例3で得られたエポキシ樹脂(B-1)のGPCチャートである。 比較例4で得られたエポキシ樹脂脂(B-2)のGPCチャートである。

Claims (9)

  1. カテコール化合物、フェノール化合物、及び、オルソキシリレン骨格含有化合物との反応物であり、
    前記カテコール化合物由来のカテコール骨格、前記フェノール化合物由来のフェノール骨格、及び、前記オルソキシリレン骨格含有化合物由来のオルソキシリレン骨格を有するフェノール樹脂であって、
    下記一般式(1)により表されることを特徴とするフェノール樹脂。
    Figure 0007444342000023
    Figure 0007444342000024
    Figure 0007444342000025
    (式(1)中、Xは、式(2)のカテコール化合物、または、式(3)のフェノール化合物で表され、Rは、水素原子、炭素原子数1~4の炭化水素基、または、炭素原子数1~4のアルコキシ基で表され、Rは、水素原子、または、メチル基で表され、mは、0~3の整数で表され、nは、0~4の整数で表され、pは、0~50の整数で表される。
    但し、Xが式(2)のカテコール化合物のみである場合、及び、式(3)のフェノール化合物のみである場合を除く。
  2. 水酸基当量が、90~140g/当量であることを特徴とする請求項1に記載のフェノール樹脂。
  3. 請求項1に記載のフェノール樹脂のフェノール性水酸基と、エピハロヒドリンとの反応によるグリシジルエーテル基を有する反応物であることを特徴とするエポキシ樹脂。
  4. 下記一般式(4)により表されることを特徴とする請求項に記載のエポキシ樹脂。
    Figure 0007444342000026
    Figure 0007444342000027
    Figure 0007444342000028
    Figure 0007444342000029
    (式(4)中、Yは、式(5)、または、式(6)で表され、Zは、式(7)で表され、Rは、水素原子、炭素原子数1~4の炭化水素基、または、炭素原子数1~4のアルコキシ基で表され、Rは、水素原子、メチル基で表され、Rは、水素原子、または、メチル基で表され、mは、0~3の整数で表され、nは、0~4の整数で表され、pは、0~50の整数で表される。但し、Yが式(5)のみである場合、及び、式(6)のみである場合を除く。
  5. エポキシ当量が、150~300g/当量であることを特徴とする請求項3に記載のエポキシ樹脂。
  6. 請求項のいずれかに記載のエポキシ樹脂を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
  7. 請求項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られることを特徴とする硬化物。
  8. 請求項に記載の硬化性樹脂組成物と、強化繊維を含有することを特徴とする繊維強化複合材料。
  9. 請求項に記載の硬化物と、強化繊維を含有することを特徴とする繊維強化樹脂成形品。
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