JP7436791B2 - Zn系めっき鋼板のレーザ切断加工方法及び切断加工品 - Google Patents

Zn系めっき鋼板のレーザ切断加工方法及び切断加工品 Download PDF

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本発明は、Zn系めっき鋼板のレーザ切断加工方法及び切断加工品に関する。
自動車部品や家電部品では、耐食性や耐久性を保持するため、Zn(亜鉛)系めっき鋼板が使用される。また、複雑な形状の部品を製造する際は、レーザ切断による切断加工方法が多用される。レーザ切断加工は、被切断材料の表面に高密度のレーザ光を照射し、溶融した被切断材料をアシストガスで吹き飛ばして切断する方法である。
Zn系めっき鋼板は、その表面が耐食性の高いZn系めっき金属で覆われている。しかし、レーザ切断された切断面は、素地鋼板が露出した状態にあるので、赤錆が発生して腐食が進行する恐れがある。
そのため、レーザ切断を行った直後に、補修塗装を早期に行う必要がある。従来は、その補修作業に時間と手間がかかるため、切断加工の作業性が低下し、コストを増加させる要因となっていた。このように、Zn系めっき鋼板をレーザ切断加工する場合、切断面の耐食性や防錆性を確保するという課題がある。そこで、切断後の切断面における耐食性を維持できるレーザ切断技術が求められている。
亜鉛系めっき鋼板のレーザ切断方法に関して、以下の従来技術が報告されている。例えば、特許文献1は、窒素に2~20体積%の酸素を含む混合ガスをアシストガスに使用したレーザ切断方法が記載されている。これは、鉄と酸素の酸化反応熱を利用することにより、高圧の窒素ガスの下でレーザ切断する従来方法よりも低い圧力で切断を行い、アシストガスの使用量を低減させる切断を可能とするものである。
特許文献2は、レーザ光の照射によって溶融及び又は蒸発された上面のめっき層含有金属を、アシストガス又は補助ガスによって、めっき鋼板の切断面側へ流動して、切断面にめっき層含有金属を被覆するレーザ切断加工方法(請求項1)が記載されており、レーザ切断加工後に、切断面の防錆処理を改めて行う必要がないことを記載している。レーザ切断条件に関しては、アシストガス圧を0.5~1.2MPaの範囲で調節すること(請求項3)、レーザ切断加工速度を1000~5000mm/minの範囲で調節すること(請求項4)、アシストガスとして、窒素ガス又は窒素ガス96%以上、酸素ガス4%以下の混合ガスを用いること(請求項6)などが記載されている。
特許文献3は、Zn系めっき鋼板のレーザ切断方法において、アシストガスに酸素を用いることにより、切断端面に酸化皮膜が形成され、その皮膜によって防錆能力の低下を抑制することが記載されている(段落0007)。
特開2001-353588号公報 特許第6238185号公報 特開2014-237141号公報
特許文献1には、窒素に2~20体積%の酸素を含む混合ガスを用いたレーザ切断が記載されている。しかし、Znめっき鋼板の切断面における耐食性低下に関する課題について記載されていない。また、特許文献1の実施例は、1.8m/min以下の切断速度で行ったレーザ切断が開示されるだけである。
特許文献2には、切断面にめっき金属を流入させて端面防錆を向上させるレーザ切断方法が記載され、酸素を含むアシストガスによって切断面に酸化層が形成されること(段落0125~0126)を記載している。しかし、切断面に形成された酸化層の組成や当該組成と耐食性との関係について記載されていない。
特許文献3のレーザ切断方法は、酸素100%のアシストガスを使用しているため、切断面に形成される酸化皮膜は、比較的厚くて脆いので、剥離や割れが生じて、切断面を十分に被覆することができない。
そこで、本発明は、Zn系めっき鋼板のレーザ切断加工方法において、切断面の耐食性を確保できるレーザ切断加工方法を提供することを目的とする。また、本発明は、良好な耐食性を有するレーザ切断面を備えたZn系めっき鋼板の切断加工品を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するため、Zn系めっき鋼板をレーザ切断する方法において、特定の切断条件に基づいてレーザ切断を行うことにより、耐食性の良好な酸化皮膜がレーザ切断面に形成されることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
(1)本発明は、Zn系めっき鋼板の表面にレーザ光を照射するとともに、前記レーザ光の照射部にアシストガスを噴射してレーザ切断するレーザ切断加工方法であって、前記アシストガスとして5~20体積%の酸素を含む混合ガスを噴射し、平均厚さ1.5μm以下のFeを含む酸化皮膜を有するレーザ切断面を形成する、レーザ切断加工方法である。
(2)本発明は、前記レーザ切断は、2.0~8.0m/minの切断速度で行う、(1)に記載のレーザ切断加工方法である。
(3)本発明は、前記酸化皮膜は、さらに、FeOを含む、(1)または(2)に記載のレーザ切断加工方法である。
(4)本発明は、前記Zn系めっき鋼板は、Zn-Al-Mg系めっき鋼板である、(1)~(3)のいずれかに記載のレーザ切断加工方法である。
(5)本発明は、レーザ切断面を備えたZn系めっき鋼板の切断加工品であって、前記レーザ切断面は、平均厚さ1.5μm以下のFeを含む酸化皮膜を有する、切断加工品である。
(6)本発明は、前記酸化皮膜は、さらに、FeOを含む、(5)に記載の切断加工品である。
(7)本発明は、前記酸化皮膜は、Feを含む外層と、FeOを含む内層とを有する、(6)に記載の切断加工品である。
(8)本発明は、前記Zn系めっき鋼板は、Zn-Al-Mg系めっき鋼板である、(5)~(7)のいずれかに記載の切断加工品である。
本発明によれば、レーザ切断面に厚さ1.5μm以下のFeを含む酸化皮膜が形成されるので、切断後の初期段階においてレーザ切断面の耐食性や防錆性を維持することができる。そのため、従来のようにレーザ切断後に早期の補修塗装を行う必要がなく、切後の作業を軽減し、製造コストの低減に効果的である。
切断面の酸化皮膜に関する第1パターンの構造を説明するための図である。 切断面の酸化皮膜に関する第2パターンの構造を説明するための図である。 切断面の酸化皮膜の厚さを説明するための図である。 切断面の酸化皮膜の厚さを説明するための図である。 実施例の屋外暴露試験に関する試験を説明するための図であり、(a)は、当該試験の概要を示す図であり、(b)は、当該試験装置の要部を示す図である。
以下、本発明に係る実施形態について説明する。本発明は、以下の説明に限定されない。
本実施形態は、Zn系めっき鋼板の表面にレーザ光を照射するとともに、前記レーザ光の照射部にアシストガスを噴射してレーザ切断するレーザ切断加工方法である。Zn系めっき鋼板の表面へレーザ光を照射しつつレーザ光を移動させて、Zn系めっき鋼板の基板を溶融させることにより切断し、任意形状に仕上げることができる。
なお、本明細書では、「耐食性」と「防錆性」を同じ意味で使用し、切断面の耐食性を「端面耐食性」ということもある。また、「レーザ切断面」は、レーザ切断された切断面を意味し、単に「切断面」ということもある。
[アシストガス]
本実施形態に係るレーザ切断加工方法は、レーザ光を照射する切断ノズルの周囲からZn系めっき鋼板の表面にアシストガスが噴射される。当該アシストガスとして5~20体積%の酸素を含む混合ガスを噴射することが好ましい。レーザ光の照射部においては酸素含有雰囲気でレーザ切断が進行する。そのため、Zn系めっき鋼板の切断部では、切断によって素地鋼板が露出する一方で、素地鋼板のFeと当該雰囲気の酸素とが化学反応して、切断部の表面に耐食性を有するFeを含む酸化皮膜が形成される。Zn系めっき鋼板の切断面は、当該酸化皮膜による耐食性が付与されるため、端面耐食性の低下を抑制する効果が得られる。
当該混合ガスにおける酸素の混合割合が5体積%未満である場合、Feを含む酸化皮膜が切断面全体に形成されないため、端面耐食性の低下を十分に抑制することができない。そのため、本実施形態のアシストガスには、所定割合の酸素を含む混合ガスを使用することが好ましい。当該酸素の混合割合は、5体積%以上であることが好ましく、8体積%以上でもよい。
他方、アシストガスにおける酸素の混合割合が20体積%を超えると、レーザ切断面に形成される酸化皮膜の厚さが過大となって、当該酸化皮膜にクラックや剥離が生じる傾向にある。そのため、酸化皮膜による被覆状態が劣化し、素地鋼板の露出部分が生じるので、端面耐食性の低下を招く。よって、当該酸素の混合割合は、20体積%以下であることが好ましく、15体積%以下でもよい。
アシストガスは、窒素や不活性ガスに所定量の酸素を配合した混合ガスを使用することができる。酸素として空気を混合してもよい。不活性ガスとしてArを使用してもよい。アシストガスの流量及び圧力は、Zn系めっき鋼板の板厚やレーザ光の移動速度などの切断条件によって適宜設定することができる。さらに、アシストガスには、レーザ光照射により溶融した残留物を吹き飛ばして切断を円滑に進める効果や、切断部で酸化反応による熱が発生し、溶断しやすくする効果もある。例えば、アシストガスを噴射する圧力は、0.5~3.0MPaを使用することができる。
[切断速度]
本実施形態に係るレーザ切断加工方法は、2.0~8.0m/minの切断速度で行うことが好ましい。切断速度の程度に応じて切断面の酸化皮膜の形成状態が異なる。レーザ光を移動させながら切断するので、切断面では切断後に直ちに冷却される。切断速度が遅い条件は、その分、冷却速度が遅い状態に対応し、切断速度が速い条件は、その分、冷却速度が速い状態に対応すると考えられる。
切断速度が遅い場合、冷却速度が遅く、切断時の酸素と素地鋼板との酸化反応時間が長くなり、FeOの酸化皮膜が厚く成長しやすくなる。また、冷却時間も長くなるため、素地鋼板との間にFeOを含む内層が形成されるとともに、当該内層の表面側にはFeを含む外層が形成される傾向にある。当該Feを含む外層は、良好な耐食性を有しており、素地鋼板の表面に密着して被覆するので、レーザ切断面の初期段階に必要な耐食性を付与する。
切断速度が速い場合、冷却速度が速く、酸素と素地鋼板との酸化反応時間が短くなり、FeOの酸化皮膜も成長しにくい。また、冷却時間も短くなるため、当該切断面の酸化皮膜は、FeO相の内部にFeが析出し、FeOとFeが混合した組織となる傾向にある。当該Feが良好な耐食性を有するので、この混合した酸化皮膜によりレーザ切断面の初期段階に必要な耐食性を付与する。
切断速度が8.0m/minを超えると、冷却速度が速くなり酸化皮膜の表面側において、耐食性に富むFeの分布割合が低減する。また、急冷により酸化皮膜にクラックや剥離が生じやすくなるため、当該酸化皮膜で十分な端面耐食性を確保できない。そのため、本実施形態に係る切断速度は、8.0m/min以下が好ましく、7.0m/min以下がより好ましい。他方、切断速度が過度に遅いと、レーザ切断面の酸化皮膜が厚く成長し、全体がほぼFeOで占められて、Feを含む外層が形成され難い。また、切断時間が長くなり、作業効率や経済性の点で不利である。そのため、本実施形態に係る切断速度は、2.0m/min以上が好ましく、4.0m/min以上がより好ましい。
[酸化皮膜]
本実施形態に係るレーザ切断加工方法は、レーザ切断面の表面に、耐食性を有するFe(マグネタイト)を含む酸化皮膜を形成する。また、当該酸化皮膜は、さらにFeO(ウスタイト)を含んでいてもよい。その場合、FeとFeOとを含む酸化皮膜の構造として、次の2つのパターンがある。
第1のパターン(以下、「第1パターン」という。)は、図1に示すように、素地鋼板2の上に形成された酸化皮膜3がFeとFeOとの混合組織を有する構造である。レーザ切断面1は、切断後に素地鋼板2の上にFeO皮膜が形成され、その後、冷却過程(急冷時)において当該FeO中にFeが析出することによって、FeとFeOとが混合した組織が形成されたと考えられる。
第2のパターン(以下、「第2パターン」という。)は、図2に示すように、素地鋼板2の上に形成された酸化皮膜3が、Feを含む外層4と、FeOを含む内層5とを有する構造である。レーザ切断面1は、切断後に素地鋼板2の上にFeO皮膜が形成され、冷却過程(徐冷時)において変態点以下の温度領域に達し、当該FeO皮膜内の外気に接する側にFe相が形成されたと考えられる。
本実施形態に係るレーザ切断加工方法は、鋼素地との密着性の観点から平均厚さが1.5μm以下のFeを含む酸化皮膜を形成することが好ましい。そのため、Feを含む酸化皮膜の平均厚さは、端面耐食性を付与する観点から、0.5mμm以上であることが好ましく、0.7μm以上がより好ましい。他方で、Feを含む酸化皮膜は、その平均厚さが過大であると、酸化皮膜にクラックや剥離が生じるため、切断面を当該酸化皮膜で十分に被覆することができず、端面耐食性が低下する。そのため、当該酸化皮膜の平均厚さは、1.5μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。
本実施形態に係る酸化皮膜の平均厚さは、SEM(走査型電子顕微鏡)の拡大写真とEBSD(電子線後方散乱回析)の分析結果を用いて測定された数値によって特定される。具体的には、図3に示すように、長さ100mmのZn系めっき鋼板6について幅方向のほぼ中央付近から長手方向へ向かってレーザ切断が行われた。レーザ切断加工装置の切断用ヘッド11の先端には、レーザ光照射及びアシストガス噴射を行う切断用ノズル12が取り付けられており、切断用ノズル12の中央からレーザ光13が照射された。レーザ光の周囲からアシストガスが噴射された。図4に示すように、切断後の試験材7について切断面1のうち測定対象として、長手方向の中央点から±6mmの範囲にある長さ12mmの中央部分を測定領域14に選定した。当該測定領域14において、分析用のサンプルを切出し、板厚方向で中央となる位置をSEMで観察し、酸化皮膜の厚さを5箇所測定した。得られた測定値のうち最大値と最小値により平均値を算出し、本平均値をもって本実施形態に係る酸化皮膜の平均厚さを特定した。また、同一箇所についてEBSD(電子線後方散乱回析)の分析を行った。
本実施形態に係る酸化皮膜は、Feを含む外層と、FeOを含む内層とを有する第パターンの構造であることが好ましい。
本実施形態に係るレーザ切断加工方法は、照射するレーザ光の種類は、限定されるものでなく、COレーザ、YAGレーザ、ファイバーレーザなどを使用することができる。
切断する際のレーザ光の条件として、Zn系めっき鋼板の表面におけるレーザスポット径、レーザ出力、アシストガスの圧力及び流量などは、切断対象のZn系めっき鋼板の板厚によって適宜設定できる。
Zn系めっき鋼板は、素地鋼板上のZn系めっき層が、Zn-Fe、Zn-Al、Zn-Al-Mg、Zn-Al-Mg-Siなどの組成を有するものを用いることができる。例えば、質量%でZn-6%Al-3%MgのZn系めっき層を有する鋼板を使用することができる。
Zn系めっき鋼板は、限定されない。その板厚が0.5~6.0mmであるものを使用することできる。
[切断加工品]
本実施形態に係る切断加工品は、レーザ切断面を備えたZn系めっき鋼板を切断加工したものである。レーザ切断面は、平均厚さ1.5μm以下のFeを含む酸化皮膜を有することが好ましい。平均厚さ1.5μm以下のFeを含む酸化皮膜を有するため、レーザ切断面は、素地鋼板が露出しておらず、一定期間の防錆性を確保することができる。そのため、レーザ切断後に早期の補修塗装を行う必要がないので、切断後の作業負担の軽減や製造コストの低減に効果的である。
切断加工品の酸化皮膜については、上記のレーザ切断加工方法において酸化皮膜を説明した内容と同様である。
本実施形態に係る切断加工品は、酸化皮膜においてFeとFeOを含むことが好ましい。また、酸化皮膜は、Feを含む外層と、FeOを含む内層とを有する第パターンの構造であることが好ましい。また、Zn系めっき鋼板は、Zn-Al-Mg系めっき鋼板であることが好ましい。
以下、本発明に係る実施例について説明する。本発明は、以下の説明に限定されない。
Zn系めっき鋼板として、両面合計の3点平均最小付着量が140g/mで、Zn-6%Al-3%Mg(質量%)のめっき層を有するめっき鋼板を用いた。切断前のめっき鋼板の寸法は、幅40mm×長さ100mmであり、板厚が1.6mmと3.2mmの2種類を用いた。図3に示すように、Zn系めっき鋼板6について幅方向のほぼ中央付近から長手方向へ向かってレーザ切断を行った。図4に示すように、各種の切断条件によって幅20mm×長さ100mmの寸法に切断されて試験材7が得られた。当該試験材7は、後記する評価試験に供した。
レーザ切断機は、ビームスポット径がφ0.2mmであり、最大出力が10kWであるファイバーレーザ装置(IPG社製)を使用した。切断用ヘッドの先端に内径φ2mmの切断用ノズルを取り付けて、レーザ光を照射するとともに、レーザ光と同軸方向にアシストガスを噴射した。レーザの焦点位置を被切断用鋼板の表面に設定した。切断ノズル先端から鋼板までの距離(スタンドオフ)を0.5mmとした。
切断速度として、次の3つを用いた。括弧内の数値は、そのときのレーザ出力を示す。5m/min(出力1.25kW)、7.5m/min(出力2.0kW)、10m/min(出力2.5kW)
アシストガスは、窒素ガスと酸素ガスとの混合ガス(N+O)、酸素ガス(O)、窒素ガス(N)、アルゴンガス(Ar)、の4種を使用した。当該混合ガスの酸素混合比(体積%)としては、5%、10%、20%、40%、60%、80%を選定した。
[切断面の表面分析]
切断後の試験材を用いて切断面の上に形成された皮膜を分析した。分析位置は先述した測定領域14に該当する。走査型電子顕微鏡(SEM)と付属したエネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDX)を用い、切断面の皮膜観察と表面分析を行い、鉄(Fe)の酸化皮膜の形成を確認し、酸化皮膜の平均厚さを測定した。酸化皮膜の形成が確認された試験材については、続けてEBSD分析(結晶方位解析)を行い、酸化皮膜の構造解析を行った。
[耐食性の評価試験]
切断後の試験材について、切断面の耐食性を評価した。耐食性の評価は、JIS Z2381に準拠して屋外暴露試験を行い、所定の赤錆が発生するまでの期間を調査した。切断面の耐食性は、固定治具による水溜りの影響など外乱的な影響を受けない50mmの長さで評価するため、試験材の長手方向の中央点から±25mmの範囲を評価面とした。図5の(a)に示すように、地面との間に角度35°で傾斜する面を持つ試験用架台15を屋外に設置し、その傾斜面の上に試験材7を載置した。試験材7の切断面1が試験用架台15の傾斜面に沿って平行となるように載置した。具体的には、図5の(b)に示すように、板材を組み合わせた試験用架台15において傾斜面を持つ板材の上に試験材7を載置した。切断面の耐食性の評価面は一定とし、その後、5日経過する毎に、切断面1の評価面を写真撮影した。評価面に赤錆が発生した場合は、その赤錆の面積を画像処理装置により計測し、評価面全体に占める赤錆面積の割合を算出した。赤錆の面積割合が10%未満である場合を良好(〇)と判定し、赤錆の面積割合が10%以上である場合を不適(×)と判定した。不適と判定した試験材は、それ以降の測定を継続しなかった。
(実施例1)
板厚1.6mmのZn系めっき鋼板を用いて、切断速度を7.5m/min、アシストガス圧を1.0MPaで、アシストガスの酸素混合比を変更し、レーザ切断を行った。得られた試験材について、上述した手順により切断面の表面分析及び耐食性の評価試験を行った。それらの結果を表1に示す。屋外暴露試験の「〇」、「×」は、上記で説明した判定基準に基づく結果を示し、「-」は、測定しなかったことを示す。
Figure 0007436791000001
[表面分析の結果]
試験材No.1~No.7は、アシストガスに酸素を用いたものである。表面分析した結果によると、いずれも切断面の表面において鉄(Fe)及び酸素(O)の各元素が検出され、鉄の酸化皮膜が形成されたことを確認できた。試験材No.8、No.9は、アシストガスに窒素、アルゴンを使用したものであり、表面分析によると、切断面の表面に酸素(O)が検出されず、鉄の酸化皮膜が形成されなかった。
SEM拡大写真及びEBSD分析結果によると、表1に示すように、試験材No.1~No.3の酸化皮膜は、その平均厚さが1.5μm以下であり、試験材No.4~No.7の酸化皮膜は、その平均厚さが1.5μmを超えていた。アシストガスの酸素混合比が多いほど、レーザ切断面の上に形成される酸化皮膜は、その平均厚さが大きくなる傾向にあった。
また、試験材No.1~No.7の酸化皮膜は、いずれもその表層側にFeを含む外層があり、その下側にFeOを含む内層であり、第2パターンの皮膜構造を有していた。
[耐食性評価試験の結果]
本発明の範囲に含まれる試験材No.1~No.3は、アシストガスとして酸素混合比が5~20体積%の混合ガスを用いてレーザ切断を行ったので、耐食性に富むFeを含む平均厚さ1.5μm以下の酸化皮膜がレーザ切断面の上に密着して形成された。そのため、屋外暴露試験の開始から10日まで切断面の防錆性が維持されており、切断後の初期段階における耐食性が良好であることを確認できた。
それに対し、試験材No.4~No.6の混合ガスによる比較例は、アシストガスとして酸素混合比が20体積%を超える混合ガスを用いてレーザ切断を行ったので、切断面の上に形成された酸化皮膜が成長しすぎて、その平均厚さが1.5μmを超えた。試験材No.7の酸素ガスによる比較例は、同様に酸化皮膜の平均厚さが1.5μmを超えた。そのため、酸化皮膜と素地鋼板との間に隙間が生じて密着性が低下し、また、酸化皮膜の一部にクラックや剥離が発生した。その結果、屋外暴露試験の開始から5日まで切断面の防錆性を維持できず、切断後の初期段階における耐食性が不十分であった。
試験材No.8、試験材No.9は、酸素を含まないアシストガスを用いてレーザ切断を行った例である。いずれの切断面も、素地鋼板が露出した状態であるから、屋外暴露試験の開始から5日まで切断面の防錆性を維持できなかった。
(実施例2)
次に、切断速度による影響を調べた。アシストガスとして酸素混合比が20体積%である窒素ガスを使用するとともに、切断速度を種々に選定したことを除いて、実施例1と同様の手順により、レーザ切断を行い、得られた試験材について切断面の表面分析及び耐食性の評価試験を行った。それらの結果を表2に示す。
Figure 0007436791000002
[表面分析の結果]
表2に示すように、切断速度が2.5m/min、5.0m/min、7.5m/minで行われた試験材No.11~No.13の酸化皮膜は、その平均厚さが1.5μm以下であった。他方、試験材No.14の酸化皮膜は、その平均厚さが1.5μmを超えており、切断速度が10.0m/min以上に大きくなると、平均厚さの大きい酸化皮膜が形成された。
また、切断速度が2.5m/min、7.5m/minで切断された試験材No.11と試験材No.13については、その表面に形成された酸化皮膜は、その表層側にFeを含む外層があり、外層の下側にFeOを含む内層であり、第2パターンの皮膜構造を有していた。切断速度が5.0m/min、10.0m/minで切断された試験材No.12については、その表面に形成された酸化皮膜は、FeとFeOとが混合した組織であり、第1パターンの皮膜構造を有していた。また、試験材No.14よりも試験材No.12のほうが、FeO層中のFeの割合が多い傾向にあった。
[耐食性評価試験の結果]
表2に示すように、本発明の範囲に含まれる試験材No.11~No.13は、アシストガスとして酸素混合比が20体積%の混合ガスを用いるとともに、2~8m/minの範囲の切断速度でレーザ切断を行ったので、耐食性に富むFeを含む平均厚さ1.5μm以下の酸化皮膜がレーザ切断面の上に密着して形成された。そのため、屋外暴露試験の開始から10日~25日まで切断面の防錆性が維持されており、切断後の初期段階における耐食性が良好であることを確認できた。
切断速度が2.5m/minである試験材No.11は、屋外暴露試験の開始から15日までの防錆性を維持できた。切断速度が7.5m/minである試験材No.13は、実施例1の試験体No.3と同様にアシストガスの酸素混合比が20体積%で切断したものであり、その屋外暴露試験の結果は、表2に示すように10日であった。試験材No.11は、試験材No.13に比べて、切断後の初期段階における耐食性が向上した。これは、試験材No.11の切断速度が遅く、冷却速度が緩やかになったため、最外層であるFeが厚く形成されたことにより、耐食性が向上したものと推測される。
切断速度が5.0m/minである試験材No.12は、屋外暴露試験の開始から25日までの防錆性を維持できた。切断面の酸化皮膜は、FeとFeOとの混合組織の形成により耐食性が向上したものと推測される。
それに対し、試験材No.14の比較例は、屋外暴露試験の開始から5日までしか切断面の防錆性を維持できず、切断後の初期段階における耐食性が不十分であった。これは、切断速度が8m/minを超えた条件で切断したものであり、切断面の上に形成された酸化皮膜の平均厚さが1.5μmを超えたので、密着した酸化皮膜が形成されなかったことによると考えられる。
(実施例3)
板厚が3.2mmのZn系めっき鋼板を用いて、表3に示す切断条件によりレーザ切断を行い、得られた試験材について、切断面の表面分析と耐食性の評価試験を行った。
試験材No.21は、本発明例に相当する。ガス圧1.5MPa、切断速度5m/min、レーザ出力3.0kWの条件でレーザ切断を行った。試験材No.22は、従来技術の特許文献1の実施例に記載された切断条件を適用した比較例に相当する。ガス圧1.2MPa、切断速度1.8m/min、レーザ出力1.5kWの条件でレーザ切断を行った。アシストガスは、両方の試験材のいずれも、5体積%Oを含む混合ガス(N+5%O)を使用した。その他の切断条件は、実施例1と同様とした。切断面の表面分析結果と耐食性の評価試験結果を表3に示す。
Figure 0007436791000003
試験材No.21の酸化皮膜は、素地鋼板の上にFe相とFeOとが混合した組織を含む第1パターンの皮膜構造を有していた。耐食性評価試験結果によると、赤錆の発生状況は、25日まで良好であった。これは、酸化皮膜の平均厚さが1.5μm以下と薄く、耐食性及び密着性の良い酸化皮膜が形成されたためと推測される。この結果より、アシストガス組成が同じであっても、切断条件の違いにより、切断面の酸化皮膜の形成に差が生じて、切断面の耐食性に差が生じることを確認できた。
試験材No.22の酸化皮膜は、素地鋼板の上にFeOを含む内層が形成され、その上にFeを含む外層が形成された第2パターンの皮膜構造を有していた。耐食性評価試験結果によると、赤錆の発生状況は、15日で不良であった。試験材No.22は、試験材No.21よりも、切断速度が遅くて入熱量の高い条件で切断したので、高温での酸化時間が長く、切断後の冷却速度が緩やかな条件にあった。酸化皮膜の平均厚さが大きくなり、素地鋼板との密着性が低下し、クラックや剥離が発生したため、耐食性が低下したと推測される。
上記の試験結果によれば、本発明によるレーザ切断面は、特許文献1の実施例で得られたレーザ切断面よりも耐食性に優れることを確認できた。
1 レーザ切断面
2 素地鋼板
3 酸化皮膜
4 外層
5 内層
6 Zn系めっき鋼板
7 試験材
11 切断用ヘッド
12 切断用ノズル
13 レーザ光
14 測定領域
15 試験用架台


Claims (9)

  1. Zn系めっき鋼板の表面にレーザ光を照射するとともに、前記レーザ光の照射部にアシストガスを噴射してレーザ切断するレーザ切断加工方法であって、
    前記アシストガスとして5~20体積%の酸素を含む混合ガスを噴射し、平均厚さ1.5μm以下のFeを含む酸化皮膜を有するレーザ切断面を形成する、レーザ切断加工方法。
  2. 前記レーザ切断は、2.0~8.0m/minの切断速度で行う、請求項1に記載の
    レーザ切断加工方法。
  3. 前記酸化皮膜は、さらに、FeOを含む、請求項1または2に記載のレーザ切断加工方法
  4. 前記Zn系めっき鋼板は、Zn-Al-Mg系めっき鋼板である、請求項1~3のいずれかに記載のレーザ切断加工方法。
  5. レーザ切断面を備えたZn系めっき鋼板の切断加工品であって、
    前記レーザ切断面は、平均厚さ1.5μm以下のFeを含む酸化皮膜を有する、切断加工品。
  6. 前記酸化皮膜は、前記平均厚さが0.7μm以上である、請求項5に記載の切断加工品。
  7. 前記酸化皮膜は、さらに、FeOを含む、請求項5または6に記載の切断加工品。
  8. 前記酸化皮膜は、Feを含む外層と、FeOを含む内層とを有する、請求項に記載の切断加工品。
  9. 前記Zn系めっき鋼板は、Zn-Al-Mg系めっき鋼板である、請求項5~のいずれかに記載の切断加工品。
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