JP7436297B2 - ガス発生器 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等に装備される乗員保護装置としてのエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器に関し、特に、サイドエアバッグ装置等に好適に組み込まれる外形が長尺円柱状のいわゆるシリンダ型ガス発生器に関する。
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張および展開させることにより、エアバッグがクッションとなって乗員の体を受け止めるものである。
ガス発生器は、このエアバッグ装置に組み込まれ、車両等衝突時にコントロールユニットからの通電によって点火器を着火し、点火器において生じる火炎によりガス発生剤を燃焼させて多量のガスを瞬時に発生させ、これによりエアバッグを膨張および展開させる機器である。
ガス発生器には、車両等に対する設置位置や出力等の仕様に基づき、種々の構成のものが存在している。その一つに、シリンダ型ガス発生器と称されるものがある。シリンダ型ガス発生器は、その外形が長尺円柱状であり、サイドエアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、シートクッションエアバッグ装置等に好適に組み込まれる。
通常、シリンダ型ガス発生器においては、ハウジングの軸方向の一端部に点火器が組付けられるとともに当該一端部側にガス発生剤が収容された燃焼室が設けられ、ハウジングの軸方向の他端部側にフィルタが収容されたフィルタ室が設けられ、当該フィルタ室を規定する部分のハウジングの周壁部にガス噴出口が設けられる。
このように構成されたシリンダ型ガス発生器においては、燃焼室にて発生したガスがハウジングの軸方向に沿ってフィルタ室に流入することでフィルタの内部を通過し、フィルタを通過した後のガスがガス噴出口を介して外部に噴出される。
一般に、ガス発生器においては、ガス発生剤が外部から気密に封止されていることが重要である。これは、ガス発生剤が吸湿してしまった場合に、所望のガス出力特性が得られなくなってしまうおそれがあるためである。
シリンダ型ガス発生器において、ガス発生剤が吸湿してしまうことを防止する方法としては、点火器の作動によって発生する熱または圧力によって溶融または破裂する比較的脆弱な部材からなる密閉容器にガス発生剤を収容し、これをハウジングの内部に配置する方法がある。当該方法が採用されたシリンダ型ガス発生器は、たとえば特開2018-69924号公報(特許文献1)において開示されている。
上記特許文献1に開示のシリンダ型ガス発生器においては、ハウジングの内部に配置された密閉容器と、点火器が組付けられたハウジングの上記一端部との間に、密閉容器をハウジングの他端部側に向けて付勢するコイルバネが設けられている。当該コイルバネは、ハウジングの上記一端部に組付けられた点火器から密閉容器に収容されたガス発生剤までの距離を適切に保ちつつ、密閉容器をハウジングの内部において固定するためのものである。
また、上記特許文献1に開示のガス発生器においては、点火薬が収容された部分である点火器の点火部を覆うように、ハウジングの上記一端部側に略筒状の金属製の燃焼制御カバーが設けられている。当該燃焼制御カバーは、作動時において点火器にて発生する熱粒子を効率的にガス発生剤に導くためのものであり、より詳細には、点火部にて発生する熱粒子の進行方向に指向性を与えるものである。
このような構成のシリンダ型ガス発生器とすることにより、作動時において良好なガス出力特性を得ることが可能になる。
特開2018-69924号公報
しかしながら、上記構成のシリンダ型ガス発生器とした場合には、ハウジングの上述した一端部側の部分に多数の部品を設けることが必要になるため、部品点数が多くなるばかりでなく組立作業が煩雑化することになり、結果として製造コストが増大してしまう問題が発生する。また、部品点数を削減することができれば、それに伴ってガス発生器全体としての軽量化を図ることもできる。
したがって、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、良好なガス出力特性を維持しつつ、軽量化と製造コストの削減とが可能になるガス発生器を提供することを目的とする。
本発明に基づくガス発生器は、ハウジングと、ガス発生剤と、点火器と、密閉容器と、コイルバネとを備えている。上記ハウジングは、軸方向の一端部および他端部が閉塞された周壁部を有する長尺筒状の部材からなる。上記ガス発生剤は、上記ハウジングの内部に配置されている。上記点火器は、上記ガス発生剤を燃焼させるための点火薬が収容された点火部を有しており、上記ハウジングの内部に向けて上記点火部が突出して位置するように上記ハウジングの上記一端部に組付けられている。上記密閉容器は、上記ハウジングの内部に配置されており、上記ガス発生剤が収容されたガス発生剤収容室を規定するとともに、上記点火器が作動することによって発生する熱または圧力によって溶融または破裂する部材からなる。上記コイルバネは、上記ハウジングの上記一端部と上記密閉容器との間に介装されており、上記密閉容器を上記ハウジングの上記他端部側に向けて付勢することで上記密閉容器を上記ハウジングの内部において固定するための部材である。上記点火部は、上記点火器の作動時において上記点火薬が着火されることによって開裂するカップ体を含んでいる。上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記カップ体が開裂する際の当該カップ体の開き具合が上記コイルバネによって規制されることとなるように、上記コイルバネが、上記点火部との間に他の部材が介在することなく上記点火部を取り囲むように、上記点火部と略同軸上に配置されている。
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記点火部の外形が略円柱状であってもよく、その場合には、上記コイルバネの外形が、略円筒状であってもよい。
上記本発明に基づくガス発生器は、上記ガス発生剤収容室の内径をR1とし、上記点火部の外径をR2とし、上記点火部のうちの上記点火薬が収容された部分から上記ガス発生剤収容室までの上記ハウジングの軸方向に沿った距離をL1とし、上記点火部のうちの上記点火薬が収容された部分から上記密閉容器までの上記ハウジングの軸方向に沿った距離をL2とし、上記点火部と上記コイルバネのうちの上記点火部を取り囲む部分である囲繞部との間のクリアランスをCとした場合に、0<C≦(R1-R2)×(L2/L1)/2の条件を満たしていることが好ましい。
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記クリアランスが、1.0[mm]以下であることが好ましい。
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記コイルバネのうちの上記点火部を取り囲む部分である囲繞部が、上記点火部に接触していてもよい。
本発明によれば、良好なガス出力特性を維持しつつ、軽量化と製造コストの削減とが可能になるガス発生器を提供することができる。
実施の形態1に係るシリンダ型ガス発生器の概略図である。 図1に示すシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。 図1に示すシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。 実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器における好ましいクリアランスの範囲を説明するための図である。 実施の形態1に係るシリンダ型ガス発生器の変形例の一例を示す点火器近傍の拡大断面図である。 実施の形態2に係るシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。 実施の形態3に係るシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。 比較例1に係るシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。 検証試験の試験条件および試験結果を示す表である。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、サイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るシリンダ型ガス発生器の概略図である。図2および図3は、それぞれ図1に示すシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図および仕切り部材近傍の拡大断面図である。まず、これら図1ないし図3を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aの構成について説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aは、長尺円柱状の外形を有しており、軸方向に位置する一端部および他端部が閉塞された長尺円筒状のハウジングを有している。ハウジングは、ハウジング本体10と、ホルダ20と、閉塞部材30とを含んでいる。
ハウジング本体10、ホルダ20および閉塞部材30にて構成されたハウジングの内部には、内部構成部品としての点火器40、仕切り部材50、密閉容器60、ガス発生剤70、オートイグニッション剤71、区画部材72、バネ状部材73、コイルバネ80およびフィルタ90等が収容されている。また、ハウジングの内部には、上述した内部構成部品のうちのガス発生剤70が主として配置された燃焼室S1と、フィルタ90が配置されたフィルタ室S2とが位置している。
ハウジング本体10は、ハウジングの周壁部を構成しており、軸方向の両端に開口が形成された長尺円筒状の部材からなる。ホルダ20は、ハウジング本体10の軸方向と同方向に沿って延びる貫通部21を有する筒状の部材からなり、その外周面に後述するかしめ固定のための環状溝部22を有している。閉塞部材30は、所定の厚みを有する円盤状の部材からなり、その周面に後述するかしめ固定のための環状溝部31を有している。これらかしめ固定のための環状溝部22,31は、いずれもホルダ20の外周面および閉塞部材30の周面に周方向に沿って延びるように形成されている。
ハウジング本体10は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されていてもよいし、SPCEに代表される圧延鋼板をプレス加工することで円筒状に成形したプレス成形品にて構成されていてもよい。また、ハウジング本体10は、STKMに代表される電縫管にて構成されていてもよい。
特に、ハウジング本体10を圧延鋼板のプレス成形品や電縫管にて構成した場合には、ステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材を用いた場合に比べて安価にかつ容易にハウジング本体10を形成することができるとともに、大幅な軽量化が可能になる。
一方、ホルダ20および閉塞部材30は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
ホルダ20は、ハウジング本体10の軸方向の一方の開口端を閉塞するようにハウジング本体10に固定されている。具体的には、ハウジング本体10の上記一方の開口端にホルダ20が内挿された状態で、当該ホルダ20の外周面に設けられた環状溝部22に対応する部分のハウジング本体10が径方向内側に向けて縮径させられて当該環状溝部22に係合することにより、ホルダ20がハウジング本体10に対してかしめ固定されている。これにより、ハウジングの軸方向の一端部がホルダ20によって構成されることになる。
閉塞部材30は、ハウジング本体10の軸方向の他方の開口端を閉塞するようにハウジング本体10に固定されている。具体的には、ハウジング本体10の上記他方の開口端に閉塞部材30が内挿された状態で、当該閉塞部材30の周面に設けられた環状溝部31に対応する部分のハウジング本体10が径方向内側に向けて縮径させられて当該環状溝部31に係合することにより、閉塞部材30がハウジング本体10に対してかしめ固定されている。これにより、ハウジングの軸方向の他端部が閉塞部材30によって構成されることになる。
これらかしめ固定は、ハウジング本体10を径方向内側に向けて略均等に縮径させる八方かしめと呼ばれるかしめ固定である。この八方かしめを行なうことにより、ハウジング本体10には、かしめ部12,13が設けられることになる。これにより、かしめ部12,13は、それぞれ環状溝部22,31に直接接触することになり、これらの間に隙間が生じることが防止されている。
なお、ハウジング本体10に対するホルダ20および閉塞部材30の組付構造は、上述した組付構造に限定されるものではなく、他の組付構造を採用することとしてもよい。また、ハウジング本体10と閉塞部材30とを別体とはせずに、有底筒状の形状を有する一つの部材にてこれらを構成することとしてもよい。
図1および図2に示すように、点火器40は、ホルダ20によって支持されることでハウジングの軸方向の上述した一端部に組付けられている。点火器40は、ガス発生剤70を燃焼させるためのものであり、ハウジングの内部の空間に面するように設置されている。
点火器40は、点火部41と、一対の端子ピン42とを含んでいる。点火部41は、点火薬41aと、塞栓41bと、カップ体41cとを含んでおり、点火薬41aは、塞栓41bとカップ体41cとによって規定される空間に配置されることで点火部41に収容されている。また、点火部41の内部には、一対の端子ピン42に接続するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられており、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に接するように点火部41内に点火薬41aが充填されている。また、点火部41内には、必要に応じて伝火薬が装填されていてもよい。
ここで、抵抗体としては、一般にニクロム線やプラチナおよびタングステンを含む合金製の抵抗線等が用いられ、点火薬としては、一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が用いられる。また、伝火薬としては、B/KNO、B/NaNO、Sr(NO等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5-アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。なお、点火部41に設けられたカップ体41cは金属カップを含んでいる。
衝突を検知した際には、端子ピン42を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬41aが燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の熱粒子は、点火薬41aを収納しているカップ体41cを開裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
なお、点火器40は、ホルダ20に設けられたかしめ部23によってホルダ20に固定されている。より詳細には、ホルダ20は、点火器40をかしめ固定するためのかしめ部23をハウジングの内部の空間に面する方の軸方向端部に有しており、点火器40が貫通部21に内挿されてホルダ20の貫通部21を規定する部分の壁部に当て留めされた状態で上述したかしめ部23がかしめられることにより、点火器40がホルダ20に挟持されて固定される。
これにより、点火器40は、その点火部41がハウジングの内部に向けて突出して位置するようにホルダ20に組付けられることになる。そのため、点火器40の作動時においては、点火薬41aが着火されることによってカップ体41cに開裂が生じ、当該開裂に伴ってカップ体41cが開くことになる。
ホルダ20の外部に露出する方の軸方向端部には、上述した貫通部21に連続する窪み部24が設けられている。窪み部24は、点火器40とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れる雌型コネクタ部を形成しており、当該窪み部24内には、点火器40の端子ピン42の先端寄りの部分が露出して位置している。当該雌型コネクタ部としての窪み部24には、雄型コネクタが挿し込まれ、これによりハーネスの芯線と端子ピン42との電気的導通が実現される。
図1および図3に示すように、ハウジングの内部の空間の所定位置には、仕切り部材50が配置されている。仕切り部材50は、ハウジングの内部の空間を軸方向において燃焼室S1とフィルタ室S2とに仕切るための部材である。
仕切り部材50は、有底円筒状の形状を有しており、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。仕切り部材50は、ハウジング本体10の軸方向に直交するように配置された平板状の隔壁部51と、当該隔壁部51の周縁から立設された筒板状の環状壁部52とを有している。仕切り部材50は、その隔壁部51の外側の主面がフィルタ90に当接するように配置されており、環状壁部52の外周面は、ハウジング本体10の内周面に当接している。
隔壁部51のフィルタ90に当接する主面には、スコア51aが設けられている。スコア51aは、ガス発生剤70の燃焼による燃焼室S1の内圧上昇に伴って当該隔壁部51が破断して開口部が形成されるようにするためのものであり、たとえば放射状に互いに交差するように設けられた複数の溝にて構成される。スコア51aは、フィルタ90のうちの中空部91に対向する部分に設けられている。
図1ないし図3に示すように、ハウジングの内部の空間のうち、ホルダ20と仕切り部材50とによって挟まれた空間(すなわち燃焼室S1)には、密閉容器60と、コイルバネ80とが配置されている。また、密閉容器60の内部の空間であるガス発生剤収容室S1Aには、ガス発生剤70と、オートイグニッション剤71と、区画部材72と、バネ状部材73とが収容されている。
密閉容器60は、内部に収容されたガス発生剤70を封止するためのものであり、点火器40が作動することによって発生する熱または圧力によって溶融または破裂する脆弱な部材にて構成されている。密閉容器60は、両端が閉塞された略円筒状の形状を有しており、ハウジングと略同軸上に配置されている。
より詳細には、密閉容器60は、容器体61と蓋体62とを含んでおり、これら容器体61と蓋体62とが接合されることにより、密閉容器60の内部には、上述したガス発生剤収容室S1Aが形成されている。
容器体61は、平板状の頂壁部61aと、当該頂壁部61aの周縁から延びる筒状の側壁部61bとを有している。一方、蓋体62は、容器体61の開口端61b1に挿入されることで容器体61の内部に位置する平板状の底部62aと、当該底部62aの周縁から延び、容器体61の開口端61b1の内周面、端面および外周面を覆うようにその一部が曲成された巻き込み部62bとを有している。
ここで、上述した容器体61と蓋体62との接合は、容器体61の開口端61b1と、これを覆うように設けられた蓋体62の巻き込み部62bとの間で行なわれている。より具体的には、容器体61の開口端61b1を覆うように設けられた巻き込み部62bに第1かしめ部62b1および第2かしめ部62b2が設けられることにより、これら容器体61と蓋体62との接合が実現されている。これら第1かしめ部62b1および第2かしめ部62b2は、いずれも容器体61の所定部位を径方向内側に縮径させることによって形成される。
上述したように、容器体61および蓋体62は、いずれも点火器40が作動することによって発生する熱または圧力によって溶融または破裂する脆弱な部材にて構成されている。より詳細には、蓋体62は、点火器40が作動することで点火薬41aまたはこれに加えて伝火薬が燃焼し、点火薬41aまたはこれに加えて伝火薬が燃焼することで発生する熱または圧力によって溶融または破裂する脆弱な部材にて構成されており、容器体61は、点火器40が作動することでガス発生剤70が燃焼し、ガス発生剤70が燃焼することで発生する熱または圧力によって溶融または破裂する脆弱な部材にて構成されている。
具体的には、容器体61および蓋体62は、たとえば銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属製のプレス成形品にて構成されていることが好ましく、これらが上述したように接合されることにより、内部に収容されたガス発生剤70が外部から気密に封止されることになる。
密閉容器60は、容器体61の頂壁部61aが仕切り部材50側に位置するとともに、蓋体62の底部62aがホルダ20側に位置するようにハウジング本体10に挿入されている。これにより、蓋体62の底部62aは、点火器40の点火部41に面している。
より詳細には、密閉容器60の頂壁部61aが位置する側の端部は、仕切り部材50の内部に挿入されることで当該仕切り部材50に嵌合しており、密閉容器60の底部62aが位置する側の端部は、ハウジング本体10に遊嵌されている。これにより、密閉容器60は、ハウジング本体10に対して位置決めされて固定されることになり、ハウジング本体10の内周面から所定の距離だけ離れて配置されることになる。
そのため、ハウジングの周壁部を構成するハウジング本体10と、密閉容器60の側壁部61bとの間には、所定の大きさの空間である断熱層S1Bが形成されることになり、当該断熱層S1Bは、燃焼室S1の軸方向に沿って略円筒状に延在することになる。
このように、ガス発生剤70が収容された密閉容器60とハウジング本体10との間に円筒状の形状を有する断熱層S1Bを設けることにより、当該シリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれたエアバッグ装置が装備された車両等において火災等が発生した場合にも、ガス発生剤70が外部から加熱されて昇温してしまうことが効果的に抑制できることになる。
すなわち、ガス発生剤70が収容された密閉容器60の径方向外側の部分に断熱層S1Bが設けられることにより、当該断熱層S1Bが熱抵抗となってハウジング本体10の熱がガス発生剤70に伝熱され難くなり、後述するオートイグニッション剤71が自動発火することで開始されるオートイグニッション動作が発現する際のガス発生剤70の温度を相対的に低く抑えることができる。したがって、オートイグニッション動作時のハウジングの内圧の上昇を大幅に抑制することが可能になる。
ここで、断熱層S1Bは、ハウジング本体10の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有していることが好ましく、本実施の形態においては、空気層にて構成されている。しかしながら、断熱層S1Bは、必ずしも空気層である必要はなく、他の気体が充填された気体層によって構成されていてもよいし、真空層にて構成されていてもよい。さらには、この他にも、各種の断熱部材を当該空間に配置することで断熱層S1Bを構成してもよい。
密閉容器60の内部に形成されたガス発生剤収容室S1Aのうち、仕切り部材50側の端部には、オートイグニッション剤71および区画部材72が配置されており、ホルダ20側の端部には、バネ状部材73が配置されている。一方、密閉容器60の内部に形成されたガス発生剤収容室S1Aのうち、仕切り部材50側の端部とホルダ20側の端部とを除く部分には、ガス発生剤70が配置されている。
ガス発生剤70は、点火器40が作動することによって生じた熱粒子によって着火されて燃焼することでガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤70としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、ガス発生剤70は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体として構成される。
燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。
酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅、塩基性炭酸銅等の塩基性金属塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。
添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては、窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
ガス発生剤70の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、シリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤70の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤70の形状の他にもガス発生剤70の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
オートイグニッション剤71は、点火器40の作動に依らずに自動発火する薬剤であり、本実施の形態においては、偏平略円柱状に成形されたペレットからなる。当該オートイグニッション剤71は、ガス発生剤70よりも低い温度で自然発火するものであり、シリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれたエアバッグ装置が装備された車両等において万が一火災等が発生した場合に、シリンダ型ガス発生器1Aが外部から加熱されることによって異常動作が誘発されないようにするためのものである。
区画部材72は、ガス発生剤収容室S1Aをハウジングの軸方向において区画するための部材である。区画部材72は、ハウジング本体10の周壁部の軸方向において仕切り部材50に面する部分に位置決め用凹部72aを有しているとともに、外縁にスカート形状の固定用筒部72bを有している。また、区画部材72の位置決め用凹部72aの底部には、区画部材72によって区画される一対の空間(すなわち、ガス発生剤70が収容された空間およびオートイグニッション剤71が収容された空間)を相互に連通させるための単一または複数の貫通孔72cが設けられている。
ここで、区画部材72は、金属製のプレス成形品にて構成されていることが好ましく、たとえばガス発生剤70の燃焼によっても破断または溶融することのない真鍮製の部材にて構成されている好ましい。ただし、区画部材72が真鍮製である必要性は必ずしもなく、ステンレス鋼や鉄鋼、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金等にて区画部材72を形成することとしてもよい。
なお、区画部材72には、必ずしも貫通孔72cが設けられている必要はなく、当該区画部材72にスコアを設けることにより、ガス発生剤70の燃焼に伴って区画部材72に貫通孔が形成されるように構成してもよい。また、区画部材72に貫通孔やスコアを設けることなく、区画部材72自体をガス発生剤70の燃焼によって破断または溶融する脆弱な部材にて構成してもよい。
区画部材72は、密閉容器60の容器体61の側壁部61bに内挿されており、区画部材72の固定用筒部72bは、当該側壁部61bの内周面に当接している。すなわち、区画部材72は、容器体61の側壁部61bに圧入されており、これによって区画部材72が密閉容器60に固定されている。
区画部材72に設けられた位置決め用凹部72aには、ペレット状に成形されたオートイグニッション剤71の一部が収容されている。これにより、オートイグニッション剤71は、区画部材72の位置決め用凹部72aの底部と、容器体61の頂壁部61aとによって挟み込まれている。したがって、オートイグニッション剤71は、区画部材72および容器体61の双方に当接することになる。
このように構成することにより、オートイグニッション剤71は、ハウジング本体10との間で、金属製の部材である区画部材72、金属製の部材である密閉容器60の頂壁部61a寄りの端部および金属製の部材である仕切り部材50を介して実質的に最短経路で熱的に接触することになる。
そのため、車両等において火災等が発生した場合において、オートイグニッション剤71が自動発火することで開始されるオートイグニッション動作の発現のタイミングが早められることになり、結果として、当該オートイグニッション動作が発現する際のガス発生剤70の温度を相対的に低く抑えることができる。したがって、オートイグニッション動作時のハウジングの内圧の上昇を大幅に抑制することが可能になる。
バネ状部材73は、成形体からなるガス発生剤70が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、金属線材を曲げ加工することによって形成されたバネ部73aおよび押圧部73bを有している。バネ部73aは、その一端が密閉容器60の底部62aに当接するように配置されており、その他端に押圧部73bが形成されている。押圧部73bは、たとえば金属線材が所定の間隔をもって略平行に配置されることで構成されており、ガス発生剤70に当接している。
これにより、ガス発生剤70は、バネ状部材73によって仕切り部材50側に向けて弾性付勢されることになり、密閉容器60の内部において移動してしまうことが防止されている。なお、上述した如くのバネ状部材73に代えて、たとえばセラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等)、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴム等からなる部材からなるクッション材を利用することとしてもよい。
燃焼室S1のうち、密閉容器60よりもホルダ20側に位置する空間には、上述したバネ状部材73とは別部品であるコイルバネ80が配置されている。コイルバネ80は、金属線材を螺旋状に巻き回すことによって形成されており、上述したバネ状部材73とは異なり、当該バネ状部材73が有する如くの押圧部73bは有していない。本実施の形態においては、金属線材が軸方向のいずれの位置においても同一の内径を有するように巻き回されることにより、コイルバネ80は、全体として略円筒状の外形を有している。
コイルバネ80は、ハウジングの内部に収容される各種の構成部品の寸法ばらつきを吸収しつつ、密閉容器60をハウジングの内部において固定するための部材である。また、コイルバネ80は、ハウジングの一端部に組付けられた点火器40から密閉容器60に収容されたガス発生剤70までの距離を適切に保つためのものでもある。
そのため、コイルバネ80は、ハウジングの軸方向の上述した一端部と密閉容器60との間に介装されており、その一端がホルダ20または/および点火器40に当接するように配置されているとともに、その他端が密閉容器60のホルダ20側の端部に当接するように配置されている。これにより、密閉容器60は、コイルバネ80によってハウジングの軸方向の他端側である仕切り部材50側に向けて弾性付勢されることになり、上述した仕切り部材50とコイルバネ80とによって挟持されることでハウジングに対して固定されることになる。
ここで、コイルバネ80は、点火器40の略円柱状の外形を有する点火部41を取り囲むように配置されている。より詳細には、コイルバネ80は、点火部41との間に他の部材が介在することなく点火部41を取り囲むように、点火部41と略同軸上に配置されている。これにより、コイルバネ80は、点火部41を取り囲む部分である巻き線形状の囲繞部81と、当該囲繞部81よりも密閉容器60側に位置する同じく巻き線形状の延出部82とを含んでいる(図4参照)。
このように構成することにより、点火器40の作動時において点火部41のカップ体41cが開裂する際に、当該カップ体41cの開き具合がコイルバネ80によって規制されることになるが、その詳細については後述することとする。
図1に示すように、ハウジングの内部の空間のうち、閉塞部材30と仕切り部材50とによって挟まれた空間(すなわちフィルタ室S2)には、フィルタ90が配置されている。フィルタ90は、ハウジング本体10の軸方向と同方向に延びる中空部91を有する円筒状の部材からなり、その軸方向の一方の端面が閉塞部材30に当接しており、その軸方向の他方の端面が仕切り部材50に当接している。
フィルタ90は、ガス発生剤70が燃焼することによって発生したガスがこのフィルタ90中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれるスラグ(残渣)等を除去する除去手段としても機能する。上述したように円筒状の部材からなるフィルタ90を利用することにより、作動時においてフィルタ室S2を流動するガスに対する流動抵抗が低く抑えられることになり、効率的なガスの流動が実現可能となる。
フィルタ90としては、好適にはステンレス鋼や鉄鋼等からなる金属線材または金属網材の集合体にて構成されたものが利用できる。具体的には、メリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体、またはこれらをプレスにより押し固めたもの等が利用できる。
また、フィルタ90として、孔あき金属板を巻き回したもの等を利用することもできる。この場合、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用できる。
フィルタ室S2を規定する部分のハウジング本体10には、ガス噴出口11が周方向および軸方向に沿って複数個設けられている。これら複数個のガス噴出口11は、フィルタ90を通過した後のガスをハウジングの外部に導出するためのものである。
次に、図1を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aの作動時における動作について説明する。
図1を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器40が作動する。
点火器40が作動すると、点火薬41aまたはこれに加えて伝火薬が燃焼することによって点火部41内の圧力が上昇し、これによって点火部41のカップ体41cが開裂し、点火薬41aが燃焼することで発生した熱粒子が点火部41の外部へと流出する。
点火部41から流出した熱粒子には、上述したコイルバネ80によって指向性が与えられ、これにより密閉容器60の底部62aへと至る。これにより、点火器40が作動することによって発生した熱または圧力によって密閉容器60の底部62aが溶融または破裂し、上述した熱粒子が、ガス発生剤70へと達する。
ガス発生剤70に達した熱粒子は、ガス発生剤70を燃焼させ、これにより多量のガスが発生する。これに伴い、ガス発生剤収容室S1Aの圧力および温度が上昇し、密閉容器60の側壁部61bが破裂または溶融するとともにオートイグニッション剤71が燃焼し、さらには密閉容器60の頂壁部61aが破裂または溶融する。
ガス発生剤70が燃焼することにより、燃焼室S1全体の圧力がさらに上昇し、燃焼室S1の内圧が所定の圧力にまで達することにより、仕切り部材50のうちのスコア51aが設けられた部分に破断が生じる。これにより、フィルタ90の中空部91に対向する部分において仕切り部材50に連通孔が形成されることになり、燃焼室S1とフィルタ室S2とが当該連通孔を介して連通した状態となる。
これに伴い、燃焼室S1において発生したガスが、仕切り部材50に形成された連通孔を介してフィルタ室S2へと流入する。フィルタ室S2に流れ込んだガスは、フィルタ90の中空部91を軸方向に沿って流動した後に径方向に向けて向きを変え、フィルタ90の内部を通流する。その際に、フィルタ90によって熱が奪われてガスが冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ90によって除去される。
そして、フィルタ90を通流した後のガスは、ガス噴出口11を介してハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、シリンダ型ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、エアバッグを膨張および展開する。
ここで、図2に示すように、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aにあっては、上述したように、ハウジングの軸方向の一端部(すなわちホルダ20)と密閉容器60との間に介装されたコイルバネ80が、点火器40の点火部41との間に他の部材が介在することなく当該点火部41を取り囲むように、点火部41と略同軸上に配置されている。
このように構成することにより、第一に、点火部41がコイルバネ80のうちの囲繞部81(図4参照)によって取り囲まれていることにより、点火部41のカップ体41cが開裂する際に、当該カップ体41cの側壁部分に開裂が生じたり、当該側壁部分が外側に向けて変形したりすることが抑制できることになる。したがって、カップ体41cのうちのガス発生剤70側に位置する部分である先端部において主として開口が形成されるようにすることができる。
また、第二に、点火部41のカップ体41cが開裂してカップ体41cの先端部において開口が形成される際に、カップ体41cの開いた部分がコイルバネ80のうちの延出部82(図4参照)に接触することになり、それ以上外側に向けて変形することが抑制できることになる。したがって、コイルバネ80の延出部82およびカップ体41cの開いた部分が、熱粒子の進行方向を定める一種のガイドとしても機能することになる。
そのため、点火部41にて発生する熱粒子の進行方向がハウジング本体10の軸方向に絞られることになり、当該熱粒子を効率的にガス発生剤70へと導くことができる。そのため、コイルバネ80が、上述した密閉容器60をハウジングの内部において固定するという機能を発揮するばかりでなく、作動時において点火器40にて発生する熱粒子を効率的にガス発生剤70に導くための機能をも発揮することになり、従来必要であった燃焼制御カバーのような部材の設置が不要になる。
このように、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Aとすることにより、従来に比して部品点数を削減することが可能になり、これに伴って組立作業が簡略化するばかりでなく、ガス発生器全体としての軽量化が図られることになる。したがって、良好なガス出力特性を維持しつつ、軽量化と製造コストの削減との両立が実現できることになる。
なお、点火部41にて発生した熱粒子をガス発生剤70へと効率的に導くためには、当該熱粒子に適度に指向性を与えることが必要になるが、この熱粒子に与えられる指向性の程度は、特に、点火部41とコイルバネ80のうちの点火部41を取り囲む部分である囲繞部81との間のクリアランスによって決まる。以下、このクリアランスの好ましい範囲について図4を参照して説明する。図4は、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器における好ましいクリアランスの範囲を説明するための図である。
カップ体41cの側壁部分に開裂や変形が生じないようにする観点からは、点火部41と囲繞部81との間にクリアランスがないことが好ましい。しかしながら、点火部41に金属線材からなるコイルバネ80を圧入することは必ずしも容易ではなく、組立作業の容易化の観点からは、上記クリアランスを僅かに設けることが望ましい。
このクリアランスは、後述する検証試験の結果から、少なくとも1.0[mm]以下であることが好ましいことが確認されているが、その上限は、延出部82およびカップ体41cの開いた部分が一種のガイドとしても機能することを考慮に含めれば、以下のように決定することができる。
すなわち、図4を参照して、ガス発生剤収容室S1Aの内径をR1とし、点火部41の外径をR2とし、点火部41のうちの点火薬41aが収容された部分からガス発生剤収容室S1Aまでのハウジング本体10の軸方向に沿った距離をL1とし、点火部41のうちの点火薬41aが収容された部分から密閉容器60までのハウジング本体10の軸方向に沿った距離をL2とした場合に、点火部41と囲繞部81との間のクリアランスCは、0<C≦(R1-R2)×(L2/L1)/2の条件を満たしていることが好ましい。
上記条件を満たしていることにより、点火部41から見て、延出部82およびカップ体41cの開いた部分によって熱粒子がガイドされる範囲内に、ガス発生剤収容室S1Aが位置することになるため、非常に効率的に熱粒子をガス発生剤収容室S1Aへと導くことができる。したがって、上述した効果を確実に得るために、当該条件を満たしていることが好ましいことになる。
図5は、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器の変形例の一例を示す点火器近傍の拡大断面図である。図5に示すように、シリンダ型ガス発生器1A’は、上述したシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、上述したコイルバネ80とは異なるコイルバネ80’が用いられている。
すなわち、コイルバネ80’は、上述したコイルバネ80よりも金属線材の線径が太く、また、内径が大きく、さらには巻き数が多く構成されたものである。このように構成した場合にも、上述した効果を得ることができる。
このように、上述した点火部41と囲繞部81との間のクリアランスの大きさを決定するコイルバネの内径に限られず、コイルバネを構成する金属線材の線径や巻き数といった設計的要素は、必要に応じて種々変更することが可能である。たとえば、金属線材の線径は、組立作業の容易化や軽量化の観点からは、より細くすることが好ましく、密閉容器をより強固に固定する観点や上述した熱粒子の指向性を高める観点からはより太いことが好ましい。また、金属線材の巻き数は、軽量化の観点からは、より粗いことが好ましく、上述した熱粒子の指向性を高める観点からはより細かいことが好ましい。さらには、コイルバネを構成する金属線材の材質も種々変更が可能である。
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係るシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。次に、この図6を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Bについて説明する。
図6に示すように、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Bは、上述した実施の形態1に係るシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、コイルバネ80の内径が相違しており、これによりコイルバネ80のうちの点火部41を取り囲む部分である囲繞部81(図4参照)が、点火部41に接触している。すなわち、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Bにおいては、点火部41と囲繞部81との間にクリアランスがない。
このように構成した場合には、組立作業の際にコイルバネ80を点火部41に圧入することが必要になり、クリアランスを設ける場合に比べて作業性は若干劣ることになるものの、より確実にカップ体41cの側壁部分に開裂や変形が生じないようにすることができる。したがって、本実施の形態の如くの構成を採用した場合にも、上述した実施の形態1の場合と同様に、良好なガス出力特性を維持しつつ、軽量化と製造コストの削減との両立が実現できることになる。
(実施の形態3)
図7は、実施の形態3に係るシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。次に、この図7を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Cについて説明する。
図7に示すように、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Cは、上述した実施の形態1に係るシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、コイルバネ80の形状が相違している。具体的には、コイルバネ80は、軸方向の中央部に縮径部(すなわち、相対的に内径が小さい部分)を有しており、軸方向の両端部に拡径部(すなわち、相対的に内径が大きい部分)を有している。
ここで、上述したコイルバネ80の縮径部および拡径部のうち、縮径部と、ホルダ20側に位置する拡径部とは、点火器40の点火部41を取り囲むように位置しており、これら部分が上述した囲繞部81(図4参照)に相当している。そして、コイルバネ80のうち、点火器40の点火部41を取り囲む部分の縮径部が、点火部41に接触するように当該点火部41に圧入されている。すなわち、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1Cにおいては、点火部41と囲繞部81のうちの縮径部との間にクリアランスがない。
このように構成した場合には、組立作業の際にコイルバネ80を点火部41に圧入することが必要になり、クリアランスを設ける場合に比べて作業性は若干劣ることになるものの、より確実にカップ体41cの側壁部分に開裂や変形が生じないようにすることができる。したがって、本実施の形態の如くの構成を採用した場合にも、上述した実施の形態1の場合と同様に、良好なガス出力特性を維持しつつ、軽量化と製造コストの削減との両立が実現できることになる。
なお、本実施の形態のようにコイルバネ80の軸方向の両端部に拡径部を設けることにより、組付け時においてコイルバネ80の挿入方向が制限されることがなくなるとともに、より容易に点火部41に対してコイルバネ80を圧入することが可能になる。
(検証試験)
以下において、本発明の効果を確認するために行なった検証試験について説明する。検証試験においては、上述した実施の形態1に基づいた検証例1~5に係るシリンダ型ガス発生器を実際に試作するとともに、これとは別に、上述した実施の形態1に基づかない比較例1,2に係るシリンダ型ガス発生器を試作し、これら検証例1~5および比較例1,2に係るシリンダ型ガス発生器を実際に作動させることでガス出力特性の測定を行なった。
図8は、比較例1に係るシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。また、図9は、検証試験の試験条件および試験結果を示す表である。
図9に示すように、検証例1~5に係るシリンダ型ガス発生器は、いずれも後述する比較例1に係るシリンダ型ガス発生器1Xが有する燃焼制御カバー43(図8参照)を備えておらず、コイルバネ80によって点火部41のカップ体41c(図2等参照)の開き具合が規制されるように構成したものである。ここで、検証例1~5においては、使用するコイルバネ80の内径や線径、巻き数が異なるように構成されている反面、その自由長は同じに構成されている。
一方、図8に示すように、比較例1に係るシリンダ型ガス発生器1Xにおいては、略筒状の金属製の燃焼制御カバー43が、点火器40の点火部41に外挿されている。燃焼制御カバー43は、作動時において点火器40にて発生する熱粒子を効率的にガス発生剤70に導くためのものである。当該燃焼制御カバー43は、点火器40と共にホルダ20に設けられたかしめ部23によってホルダ20にかしめ固定されている。
このように構成された比較例1に係るシリンダ型ガス発生器1Xにおいては、上述した実施の形態1において説明したコイルバネ80に代えて、燃焼制御カバー43が点火部41において発生する熱粒子に指向性を与えることになる。そのため、当該比較例1に係るシリンダ型ガス発生器1Xにおいては、密閉容器60をハウジングの内部において固定するためのみにコイルバネ80”が設けられており、当該コイルバネ80”は、点火部41のカップ体41c(図2等参照)の開き具合を規制するものではない。
また、図示は省略しているものの、比較例2に係るシリンダ型ガス発生器は、上述した比較例1に係るシリンダ型ガス発生器1Xから燃焼制御カバー43を取り除いたものである。ここで、当該比較例2に係るシリンダ型ガス発生器1Xにおいては、点火部41に面するようにコイルバネ80”が位置することになるが、コイルバネ80”は、点火部41から大きく離れて配置されているため、後述する試験結果からも明らかなように、当該コイルバネ80”が、点火部41のカップ体41c(図2等参照)の開き具合を規制することはない。
ここで、これら検証例1~5および比較例1,2に係るシリンダ型ガス発生器においては、上述したコイルスプリングや燃焼制御カバーの構成においてのみ互いに相違が生じるように構成し、その他の構成はすべて同じとなるように構成した。ガス発生剤収容室S1Aの内径R1は、いずれも16.1[mm]であり、点火部41の外径R1は、いずれも8.2[mm]であり、点火部41のうちの点火薬41aが収容された部分からガス発生剤収容室S1Aまでのハウジング本体10の軸方向に沿った距離L1は、いずれも11.1[mm]であり、点火部41のうちの点火薬41aが収容された部分から密閉容器60までのハウジング本体10の軸方向に沿った距離L2は、いずれも2.9[mm]である。
検証試験においては、これら検証例1~5および比較例1,2に係るシリンダ型ガス発生器をそれぞれ5サンプルずつ準備し、その各々を密閉されたタンク内に設置してこれを作動させ、その際のタンク内の圧力の経時的な変化を測定した。なお、図9中における出力指標は、ガス出力特性を評価する際に用いられるものであり、点火器の作動からタンク内の圧力に変化が生じるまでの時間を示している。
図9に示すように、点火部と囲繞部との間のクリアランスCが1.0[mm]以下である検証例1~4に係るシリンダ型ガス発生器では、燃焼制御カバーが設けられた比較例1に係るシリンダ型ガス発生器と同等のガス出力特性が得られることが確認された。特に、検証例1~3に係るシリンダ型ガス発生器においては、比較例1に係るシリンダ型ガス発生器よりも上記出力指標が改善しており、作動からより早期にガス出力が得られることが確認された。
一方、点火部と囲繞部との間のクリアランスCが1.9[mm]である検証例5に係るシリンダ型ガス発生器では、燃焼制御カバーが設けられていない比較例2に係るシリンダ型ガス発生器と同等程度のガス出力特性しか得られず、やはり点火部と囲繞部との間のクリアランスCが重要なファクターであることが実験的にも確認された。
なお、図9においては、上述した検証例1~5および比較例1,2に係るシリンダ型ガス発生器について、それぞれ製造コストの面とガス出力特性の面とにおける評価を「良」または「可」として表わし、これら双方の評価に基づいて総合評価を「優」または「良」あるいは「可」として表わしている。
(その他の形態等)
上述した本発明の実施の形態およびその変形例においては、点火器の点火部において発生する熱粒子に指向性を与えるコイルバネとして、金属線材が軸方向のいずれの位置においても同一の内径を有するように巻き回された、全体として略円筒状の外形を有するものを用いた場合、あるいは、部分的に内径が異なるように構成されたコイルバネを用いた場合を例示して説明を行なったが、必ずしもこのような外形のコイルバネを用いる必要はなく、全体として先細りや先太りに構成されたコイルバネを用いてもよい。いずれの場合であっても、当該コイルバネが点火部のカップ体の開き具合を規制するように構成されていれば、相応の効果を得ることができる。
また、上述した本発明の実施の形態およびその変形例においては、点火器を固定するためにホルダに設けられたかしめ部に、コイルバネの一端が当接するように構成された場合を例示して説明を行なったが、コイルバネの当該一端は、当該かしめ部よりも外側に位置するホルダの表面に当接してもよい。また、上述したように、コイルバネの一端は、必ずしもホルダに当接している必要はなく、これに当接することなく点火部に圧入されることによってのみ固定されていてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態およびその変形例においては、ハウジングの内部であってかつ密閉容器の径方向外側に断熱層が形成されるように構成してなるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、当該断熱層は必ずしも必須の構成ではない。すなわち、本発明は、上述した如くの断熱層が設けられていないシリンダ型ガス発生器にも当然に適用することができ、その場合には、密閉容器がハウジング本体に圧入されることでハウジング本体の内周面に密閉容器の側壁部が当接することになる。
また、上述した本発明の実施の形態およびその変形例においては、ガス発生剤のみならず、オートイグニッション剤、区画部材およびコイルバネを密閉容器に収容してなるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもこのように構成する必要はなく、少なくともガス発生剤が密閉容器に収容されていればよい。
また、上述した本発明の実施の形態およびその変形例においては、本発明をサイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限られるものではなく、カーテンエアバッグ装置やニーエアバッグ装置、シートクッションエアバッグ装置等に組み込まれるシリンダ型ガス発生器や、シリンダ型ガス発生器と同様に長尺状の外形を有するいわゆるT字型ガス発生器にもその適用が可能である。
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
1A,1A’,1B,1X シリンダ型ガス発生器、10 ハウジング本体、11 ガス噴出口、12,13 かしめ部、20 ホルダ、21 貫通部、22 環状溝部、23 かしめ部、24 窪み部、30 閉塞部材、31 環状溝部、40 点火器、41 点火部、41a 点火薬、41b 塞栓、41c カップ体、42 端子ピン、43 燃焼制御カバー、50 仕切り部材、51 隔壁部、51a スコア、52 環状壁部、60 密閉容器、61 容器体、61a 頂壁部、61b 側壁部、61b1 開口端、62 蓋体、62a 底部、62b 巻き込み部、62b1 第1かしめ部、62b2 第2かしめ部、70 ガス発生剤、71 オートイグニッション剤、72 区画部材、72a 位置決め用凹部、72b 固定用筒部、72c 貫通孔、73 バネ状部材、73a バネ部、73b 押圧部、80,80’,80” コイルバネ、81 囲繞部、82 延出部、90 フィルタ、91 中空部、S1 燃焼室、S1A ガス発生剤収容室、S1B 断熱層、S2 フィルタ室。

Claims (5)

  1. 軸方向の一端部および他端部が閉塞された周壁部を有する長尺筒状のハウジングと、
    前記ハウジングの内部に配置されたガス発生剤と、
    前記ガス発生剤を燃焼させるための点火薬が収容された点火部を有し、前記ハウジングの内部に向けて前記点火部が突出して位置するように前記ハウジングの前記一端部に組付けられた点火器と、
    前記ハウジングの内部に配置され、前記ガス発生剤が収容されたガス発生剤収容室を規定するとともに、前記点火器が作動することによって発生する熱または圧力によって溶融または破裂する密閉容器と、
    前記ハウジングの前記一端部と前記密閉容器との間に介装され、前記密閉容器を前記ハウジングの前記他端部側に向けて付勢することで前記密閉容器を前記ハウジングの内部において固定するためのコイルバネとを備え、
    前記点火部は、前記点火器の作動時において前記点火薬が着火されることによって開裂するカップ体を含み、
    前記カップ体が開裂する際の当該カップ体の開き具合が前記コイルバネによって規制されることとなるように、前記コイルバネが、前記点火部との間に他の部材が介在することなく前記点火部を取り囲むように、前記点火部と略同軸上に配置されている、ガス発生器。
  2. 前記点火部の外形が略円柱状であり、
    前記コイルバネの外形が、略円筒状である、請求項1に記載のガス発生器。
  3. 前記ガス発生剤収容室の内径をR1とし、前記点火部の外径をR2とし、前記点火部のうちの前記点火薬が収容された部分から前記ガス発生剤収容室までの前記ハウジングの軸方向に沿った距離をL1とし、前記点火部のうちの前記点火薬が収容された部分から前記密閉容器までの前記ハウジングの軸方向に沿った距離をL2とし、前記点火部と前記コイルバネのうちの前記点火部を取り囲む部分である囲繞部との間のクリアランスをCとした場合に、0<C≦(R1-R2)×(L2/L1)/2の条件を満たしている、請求項2に記載のガス発生器。
  4. 前記クリアランスが、1.0[mm]以下である、請求項3に記載のガス発生器。
  5. 前記コイルバネのうちの前記点火部を取り囲む部分である囲繞部が、前記点火部に接触している、請求項1または2に記載のガス発生器。
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