JP7434208B2 - 窒化珪素基板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、厚さ方向に優れた熱伝導性を有する窒化珪素基板およびその製造方法に関する。
近年、窒化珪素(Si)基板をパワー半導体等の半導体回路基板に適用することが試みられている。半導体回路基板としては、アルミナ(Al)基板、窒化アルミニウム(AlN)基板が使用されている。アルミナ基板は熱伝導率が30W/m・K程度であるが、低コスト化が可能である。また、窒化アルミニウム基板は熱伝導率が160W/m・K以上となる高熱伝導化が可能である。一方、窒化珪素基板としては、熱伝導率が50W/m・K以上の基板が開発されている。
窒化珪素基板は、窒化アルミニウム基板と比較して熱伝導率は低いが、3点曲げ強度が500MPa以上と優れている。窒化アルミニウム基板の3点曲げ強度は通常300~400MPa程度であり、熱伝導率が高くなるほどに強度が下がる傾向にある。高強度の利点を生かすことにより窒化珪素基板は薄型化が可能である。基板の薄型化により熱抵抗を下げることが可能になるので放熱性が向上する。
このような特性を生かして窒化珪素基板は、金属板などの回路部を設けて回路基板として広く使用されている。また、国際公開番号WO2011/010597号パンフレット(特許文献1)に示したような圧接構造用の回路基板として使用する方法もある。
国際公開番号WO2011/010597号パンフレット
しかしながら、窒化珪素基板は、上述のように窒化アルミニウム等と比較して熱伝導率が低いために、半導体回路基板に使用した場合に半導体チップで発生する熱をヒートシンクに効率的に逃がすことができず、半導体回路基板に投入できる電力も制限されていた。したがって、窒化珪素基板は特に厚さ方向においてより高い熱伝導性を有することが求められている。
本発明は、厚さ方向において熱伝導性に優れた窒化珪素基板を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく、本発明は、基板面にX線を照射した際に、β-SiのX線回折ピークを有し、窒化珪素基板において厚さ方向に配向したβ-Si粒子の長軸(c軸)の割合を示す配向度faが0.08410.2202の範囲に含まれ、4mm×35mmの試験片に対して2支点間の距離を30mmとして2支点の中間点から曲げたときの前記試験片10個の3点曲げ強度の平均値が、806~872MPaの範囲であり、厚さ方向の熱伝導率が89.6~93.0W/m・Kの範囲であることを特徴とする、窒化珪素基板に関する。
fa=(P-P0)/(1-P0) ‥(1)。
式(1)において、Pは、式(2)で表され、前記β型窒化珪素基板における(10°≦2θ≦80°)の範囲でc軸に関連するすべてのX線回析線強度比(具体的に(101)面、(111)面、(201)面、(121)面、(301)面、(221)面、(131)面、(002)面、(401)面、(102)面、(112)面、(231)面、(202)面、(141)面、(212)面、(302)面、(501)面)のX線回析強度が対象)、P0は、式(3)で表され、β型窒化珪素粉末における(10°≦2θ≦80°)の範囲でc軸に関連するすべてのX線回析線強度比(具体的に(101)面、(111)面、(201)面、(121)面、(301)面、(221)面、(131)面、(002)面、(401)面、(102)面、(112)面、(231)面、(202)面、(141)面、(212)面、(302)面、(501)面)のX線回析強度が対象)を意味している。
P=(I(101)+I(111)+I(201)+I(121)+I(301)+I(221)+I(131)+I(002)+I(401)+I(102)+I(112)+I(231)+I(202)+I(141)+I(212)+I(302)+I(501))/(I(100)+I(110)+I(200)+I(101)+I(120)+I(111)+I(300)+I(201)+I(220)+I(121)+I(130)+I(301)+I(400)+I(221)+I(131)+I(230)+I(002)+I(140)+I(401)+I(102)+I(112)+I(231)+I(202)+I(500)+I(141)+I(330)+I(212)+I(240)+I(302)+I(501))‥(2)。
P0=(I0(101)+I0(111)+I0(201)+I0(121)+I0(301)+I0(221)+I0(131)+I0(002)+I0(401)+I0(102)+I0(112)+I0(231)+I0(202)+I0(141)+I0(212)+I0(302)+I0(501))/(I0(100)+I0(110)+I0(200)+I0(101)+I0(120)+I0(111)+I0(300)+I0(201)+I0(220)+I0(121)+I0(130)+I0(301)+I0(400)+I0(221)+I0(131)+I0(230)+I0(002)+I0(140)+I0(401)+I0(102)+I0(112)+I0(231)+I0(202)+I0(500)+I0(141)+I0(330)+I0(212)+I0(240)+I0(302)+I0(501))‥(3)。
また、本発明は、珪素粉末、焼結助剤および分散媒を混合してスラリーを作製する工程と、前記スラリーからシート体を成形する工程と、前記シート体を窒素含有雰囲気中で熱処理して、前記シート体中の珪素を窒化させ、窒化珪素を形成する工程と、前記窒化珪素を含む前記シート体を焼結して、窒化珪素基板を製造する工程と、を含み、少なくとも前記窒化珪素を形成する工程において、焼結助剤の揮発を制御し前記焼結助剤の移動の方向である厚み方向に窒化ケイ素粒子を配向させることを特徴とする、窒化珪素基板の製造方法に関する。
本発明によれば、窒化工程を経て珪素から窒化珪素、さらには焼結工程を経て窒化珪素基板を得る際に、少なくとも窒化珪素を得る際に焼結助剤の揮発を促すようにしている。したがって、焼結助剤の揮発による拡散移動により、生成した窒化珪素β粒子は厚さ方向に配向するようになる。
結果として、基板面にX線を照射した際に、β-SiのX線回折ピークを有し、窒化珪素基板において厚さ方向に配向したβ-Si粒子の長軸(c軸)の割合を示す配向度faが0.08410.2202の範囲に含まれ、かつ、4mm×35mmの試験片に対して2支点間の距離を30mmとして2支点の中間点から曲げたときの前記試験片10個の3点曲げ強度の平均値が、806~872MPaの範囲である窒化珪素基板が得られる。この基板は、厚さ方向の熱伝導率が89.6~93.0W/m・Kの範囲であるので、従来の窒化珪素基板に比較して高い熱伝導率を有する。また、これによって実用に足る強度の窒化珪素基板を得ることができる。
したがって、半導体回路基板に使用した場合にも半導体チップで発生する熱をヒートシンクに効率的に逃がすことができ、半導体回路基板に投入できる電力を向上させることができるようになる。すなわち、窒化珪素基板の優れた強度と相俟ってパワー半導体を初めとする種々の半導体回路基板に対して適用することができる。
本発明の窒化珪素基板およびその製造方法において、焼結助剤は、希土類酸化物およびマグネシウム化合物の少なくとも一方であることが好ましい。これによって、上述した焼結助剤から生成した液相の厚さ方向の移動が促進されるので、上述した作用効果をより顕著に奏することができる。
さらに、本発明の窒化珪素基板においては、主面の大きさが400~40000mmであり、密度が3.15~3.40g/cmであり、絶縁耐圧が20kV/mm以上であることが好ましい。この場合、実用に足る絶縁耐力の窒化珪素基板を得ることができる。
以上説明したように、本発明によれば、厚さ方向において熱伝導性に優れた窒化珪素基板を提供することができる。
β-Siの結晶系を示す概略図である。 本発明の実施形態における窒化珪素基板の概略断面図である。
図1は、β-Siの結晶系を示す概略図であり、図2は、本発明の実施形態における窒化珪素基板の概略断面図である。
本発明の窒化珪素基板は、窒化珪素の含有量が85質量%以上であることが好ましく、より好ましくは87質量%以上である。これによって、以下に説明するように、窒化珪素の結晶系(結晶構造)に起因して、窒化珪素基板の厚さ方向の熱伝導率が向上するようになる。窒化珪素の含有量が85質量%未満であると、上記窒化珪素の割合が少なくなるために窒化珪素基板の厚さ方向の熱伝導率の向上が不十分となる。
また、窒化珪素の含有量が95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは93質量%以下である。窒化珪素の含有量が95質量%を超えると、窒化珪素基板に含有される焼結助剤の含有量が減少するために、液相の量が減少し、分離剤層中に向かう垂直方向の液相の移動が減少するので、生成した窒化珪素が窒化珪素基板の厚さ方向に配向するのが困難になり、窒化珪素基板の厚さ方向の熱伝導率を向上させることができない。
本発明の窒化珪素基板において、焼結助剤の含有量は5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは7質量%以上である。焼結助剤を5質量%以上の割合で含むことにより、以下に説明するように、窒化珪素基板を焼結して製造する際の液相の割合が最適化され、窒化珪素粒子が厚さ方向に垂直に配向するとともに、窒化珪素の割合が最適化され、窒化珪素基板の厚さ方向における熱伝導率が向上する。
一方、本発明の窒化珪素基板において、焼結助剤の含有量は15質量%以下であることが必要である。焼結助剤を15質量%を超えて含有すると、窒化珪素の割合が減少するので、窒化珪素に由来する窒化珪素基板の厚さ方向における熱伝導率が減少する。
なお、本発明の窒化珪素基板は、上述のような窒化珪素や焼結助剤に加えて、不可避的不純物を含む。この不可避的不純物とは、例えば窒化珪素基板の製造過程で使用する分散媒としての有機溶媒やバインダー、可塑剤等の添加剤等である。
本発明の窒化珪素基板は、基板面にX線を照射した際に、β-SiのX線回折ピークを有し、窒化珪素基板において厚さ方向に配向したβ-Si粒子の長軸(c軸)の割合を示す配向度faが0~0.3範囲であることが好ましい。
図1に示すように、β-Siの結晶系(結晶構造)は、(200)面および(120)面含む複数の面を側面に有し、(002)面を端面に有する六角柱状である。したがって、基板面にX線を照射した際に、窒化珪素基板において厚さ方向に配向したβ-Si粒子の割合を示す配向度faが0~0.3の範囲であるということは、窒化珪素基板の厚さ方向において、β-Si粒子が優先的に配向し、図2に示すような形態で、窒化珪素基板10内に柱状のβ―Si粒子11の大部分が厚さ方向に配向していることを意味する。なお、参照数字12は焼結助剤等に起因した粒界相を示す。
本来的に、窒化珪素粒子の熱伝導率は、六角柱の長さ方向においてその他の方向よりも高くなる。すなわち、本発明では、例えば図2に示すように、六角柱状の窒化珪素(β-Si)が窒化珪素基板の厚さ方向に沿って配向する割合が高くなる。したがって、本発明では、厚さ方向において高熱伝導率を呈することができる。
なお、窒化珪素基板において厚さ方向に配向したβ-Si粒子の割合を示す配向度faが0未満、すなわち負の範囲では、面方向への配向が強くなり、上述した作用効果を十分に奏することができず、窒化珪素基板の厚さ方向において高い熱伝導率を得ることができない。また、配向度faの上限は現状では0.3であるが熱伝導率の観点からは高いほど好ましい。但し、この比があまり高くなりすぎると、厚さ方向における破壊強度等の機械的強度が低下するようになる。
本発明の窒化珪素基板においては、厚さ方向の熱伝導率が80W/m・K以上であり、好ましくは85W/m・K以上である。これによって、本発明の窒化珪素基板を半導体回路基板に使用した場合にも、半導体チップで発生する熱をヒートシンクに効率的に逃がすことができ、半導体回路基板に投入できる電力を向上させることができるようになる。すなわち、窒化珪素基板の優れた強度と相俟ってパワー半導体を初めとする種々の半導体回路基板に対して適用することができる。
なお、上記熱伝導率は、本発明の窒化珪素基板が上述した窒化珪素および焼結助剤の含有量、並びにX線回折の要件を満足することにより得ることができる。
また、本発明の窒化珪素基板においては、3点法による抗折強度が500MPa以上であり、厚さが0.1~1.2mmであることが好ましい。これによって、実用に足る強度の窒化珪素基板を得ることができる。また、後述の表1に示すように、本発明の窒化珪素基板においては、3点法による抗折強度として650MPa以上、好ましくは700MPa以上を有し得る。
さらに、本発明の窒化珪素基板においては、主面の大きさが400~40000mmであり、密度が3.15~3.40g/cmであり、絶縁耐圧が20kV/mm以上であることが好ましい。この場合、実用に足る絶縁耐力の窒化珪素基板を得ることができる。
次に本発明の窒化珪素基板の製造方法について説明する。
最初に、原料として、珪素粉末、焼結助剤粉末を用意する。珪素粉末は、例えばメジアン径D50が50μm以下であり、不純物酸素含有量が0.6質量%以下であることが好ましい。なお、焼結助剤の量は、珪素粉末100質量部に対して15質量部であることが好ましい。
焼結助剤は、例えばメジアン径D50が10μm以下の金属化合物粉末であることが好ましい。金属化合物粉末としては、希土類元素、マグネシウム、チタン、ハフニウムなどの酸化物が挙げられるが、より好ましくは希土類元素酸化物、マグネシウム化合物(マグネシア等)である。これらの焼結助剤は流動性に優れるため、以下に説明するような流体挙動を呈し、窒化珪素(粒子)を厚さ方向に配向しやすくする。
次いで、珪素粉末および焼結助剤に分散媒を添加して、例えばボールミルでメディア分散し、粉砕混合してスラリーを作製する。分散媒としては、トルエン、エタノール、ブタノール等の有機溶媒を用いることができる。
次いで、上記スラリーに対して、必要に応じてバインダー、可塑剤などを添加し、さらに真空脱泡してスラリーの粘度調整を行う。バインダーとしては、ブチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート等の有機バインダーを用いることができる。
次いで、粘度調整したスラリーをドクターブレード法、ロール法等のシート成形法によりシート状に成形し、例えば厚さ0.2~1.5mmのシート体を形成する。なお、当該シート体は、例えばスラリーをフィルム上に塗布して形成した後、乾燥後にフィルムを除去して得られる。
次いで、必要に応じて当該シート体の主面上にセラミック粉末および分散媒からなるスラリーを塗布し分離剤層を形成する。なお、分散媒としては、上記同様に、トルエン、エタノール、ブタノール等の有機溶媒を用いることができる。また、塗布方法としては、スプレー法、バーコート法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
次いで、必要に応じてシート体の脱脂を、例えば非酸化性雰囲気中、600℃以下の温度で数時間行う。その後、上記シート体を窒素含有雰囲気中、1200~1500℃の温度で2~8時間保持することにより、シート体を構成する珪素の窒化を行い、窒化珪素を形成する。なお、窒素含有雰囲気中の窒素分圧は例えば0.05~0.5MPaとする。
次いで、同じく窒素含有雰囲気中、1800~1950℃の温度で6~24時間保持することにより、窒化珪素の焼結を行う。
なお、本発明では窒化焼結工程において重石板を使用するが、(1)珪素の窒化の際に、重石板を用いずに上面をフリーの状態にしておき、焼結の際にのみ重石板を用いる方法や(2)重石板として多孔質板を用い、珪素の窒化および窒化珪素の焼結と連続して成形体に荷重をかける方法、(3)あるいは重石板として緻密板を用い、成形体と緻密板との間に分離剤層を設ける方法などがある。
分離剤層はセラミック粉末から構成するが、窒化および焼結において熱的に安定であって、焼結完了後に、緻密板を分離できるものであれば特に限定されるものではないが、窒化硼素が好ましい。
また、セラミック粉末として窒化硼素を用いる場合、その純度は95%以上であることが好ましく、その平均粒径は5~20μmであることが好ましい。また、分離剤層の厚さは10~60μm、あるいは20~60μmであることが好ましい。
分離剤層が主面上に形成されたシート体を、当該分離剤層を介して複数積層させることもできる。この場合、上述した窒化および焼結の工程を経ることにより、複数の窒化珪素基板を同時に製造することができる。
結果として、基板面にX線を照射した際に、β-SiのX線回折ピークを有し、窒化珪素基板において厚さ方向に配向したβ-Si粒子の長軸(c軸)の割合を示す配向度faが0~0.3範囲である窒化珪素基板が得られるようになる。
(実施例)
参考例1)
金属Si粉末および焼結助剤(希土類酸化物およびマグネシウム化合物)、分散剤(ポリオキシアルキレン型分散剤)、ならびに、分散媒(エタノール、ブタノール)を、ボールミルを用いて35時間にわたり混合した。金属Si粉末および焼結助剤が焼結後の窒化珪素含有量と焼結助剤含有量の質量比で0.89:0.11となるよう調節された。その後、当該混合物に、分散媒(エタノール、メチルエチルケトン)、有機バインダー(アクリル樹脂)および可塑剤を追加して再混合することによりスラリーを作製した。続いて、作製したスラリーをボールミルより取り出し、脱泡機に移した後、真空脱泡によりスラリーの粘度を調整し、シート状に成形して100×100×t0.38mmのシート成形体が作製された。シート成形法としてドクターブレード法が採用された。
その後、窒化硼素からなるセラミックスラリーをシート成形体に塗布することにより厚さ10μmの分離剤層を当該シート成形体の表面に形成した後、シート成形体に対して非酸化性雰囲気において550℃で脱脂処理を施した。
次に、窒化硼素からなる分離剤層が主面に形成されたシート成形体に対して、窒素分圧0.2MPaの窒素含有雰囲気において1400℃で2時間にわたり窒化処理を施した。さらに、窒素分圧0.7MPaの窒素含有雰囲気において1820℃で9時間にわたり焼結し、参考例1の窒化珪素基板を作製した。
参考例2)
金属Si粉末および焼結助剤が焼結後の窒化珪素含有量と焼結助剤含有量の質量比で0.895:0.105となるよう調節され、シート成形体の表面に厚さ20μmの分離剤層が形成され、その状態で当該シート成形体に対して脱脂処理が施されたほかは、参考例1と同様の作製条件にしたがって参考例2の窒化珪素基板を作製した。
(実施例3)
金属Si粉末および焼結助剤が焼結後の窒化珪素含有量と焼結助剤含有量の質量比で0.878:0.122となるよう調節され、シート成形体の表面に厚さ25μmの分離剤層が形成され、その状態で当該シート成形体に対して脱脂処理が施されたほかは、参考例1と同様の作製条件にしたがって実施例3の窒化珪素基板を作製した。
(実施例4)
金属Si粉末および焼結助剤が焼結後の窒化珪素含有量と焼結助剤含有量の質量比で0.885:0.115となるよう調節され、シート成形体の表面に厚さ35μmの分離剤層が形成され、その状態で当該シート成形体に対して脱脂処理が施されたほかは、参考例1と同様の作製条件にしたがって実施例4の窒化珪素基板を作製した。
(実施例5)
金属Si粉末および焼結助剤が焼結後の窒化珪素含有量と焼結助剤含有量の質量比で0.883:0.117となるよう調節され、シート成形体の表面に厚さ35μmの分離剤層が形成され、その状態で当該シート成形体に対して脱脂処理が施されたほかは、参考例1と同様の作製条件にしたがって実施例5の窒化珪素基板を作製した。
(実施例6)
金属Si粉末および焼結助剤が焼結後の窒化珪素含有量と焼結助剤含有量の質量比で0.885:0.115となるよう調節され、シート成形体の表面に厚さ50μmの分離剤層が形成され、その状態で当該シート成形体に対して脱脂処理が施されたほかは、参考例1と同様の作製条件にしたがって実施例6の窒化珪素基板を作製した。
参考例7)
シート成形体の表面に分離剤層がない状態でシート成形体に対して脱脂処理が施され、シート成形体が重石板のない状態で焼結されたほかは、参考例1と同様の作製条件にしたがって参考例7の窒化珪素基板を作製した。
参考例8)
シート成形体の表面に分離剤層に代えて気孔率40%の多孔質板が形成され、その状態でシート成形体に対して脱脂処理が施されたほかは、参考例1と同様の作製条件にしたがって参考例8の窒化珪素基板を作製した。
参考例9)
シート成形体の表面に分離剤層に代えて気孔率15%の半緻密質板が形成され、その状態でシート成形体に対して脱脂処理が施されたほかは、参考例1と同様の作製条件にしたがって参考の窒化珪素基板を作製した。
参考例10)
金属Si粉末および焼結助剤が焼結後の窒化珪素含有量と焼結助剤含有量の質量比で0.921:0.079となるよう調節され、240×180×t0.29mmのシート成形体が作製され、シート成形体の表面に厚さ20μmの分離剤層が形成され、その状態で当該シート成形体に対して脱脂処理が施され、窒素分圧0.7MPaの窒素含有雰囲気において1840℃で12時間にわたり焼結されたほかは、参考例1と同様の作製条件にしたがって参考例10の窒化珪素基板を作製した。
参考例11)
金属Si粉末および焼結助剤が焼結後の窒化珪素含有量と焼結助剤含有量の質量比で0.92:0.08となるよう調節され、窒素分圧0.7MPaの窒素含有雰囲気において1830℃で12時間にわたり焼結されたほかは、参考例10と同様の作製条件にしたがって参考例11の窒化珪素基板を作製した。
参考例12)
金属Si粉末および焼結助剤が焼結後の窒化珪素含有量と焼結助剤含有量の質量比で0.926:0.074となるよう調節され、240×180×t0.38mmのシート成形体が作製され、シート成形体の表面に厚さ10μmの分離剤層が形成され、その状態で当該シート成形体に対して脱脂処理が施されたほかは、参考例11と同様の作製条件にしたがって参考例12の窒化珪素基板を作製した。
参考例13)
金属Si粉末および焼結助剤が焼結後の窒化珪素含有量と焼結助剤含有量の質量比で0.927:0.073となるよう調節され、シート成形体の表面に厚さ20μmの分離剤層が形成され、その状態で当該シート成形体に対して脱脂処理が施されたほかは、参考例12と同様の作製条件にしたがって参考例13の窒化珪素基板を作製した。
(比較例)
(比較例1)
金属Si粉末窒化珪素粉末および焼結助剤が焼結後の窒化珪素含有量と焼結助剤含有量の質量比で0.909:0.091となるよう調節され、100×100×t0.38mmのシート成形体が作製され、シート成形体の表面に厚さ35μmの分離剤層が形成され、その状態で当該シート成形体に対して脱脂処理が施され、窒素分圧0.7MPaの窒素含有雰囲気において1820℃で9時間にわたり焼結し窒化珪素基板を作製した。されたほかは、参考例1と同様の作製条件にしたがって比較例1の窒化珪素基板を作製した。

(比較例2)
金属Si粉末窒化珪素粉末および焼結助剤が焼結後の窒化珪素含有量と焼結助剤含有量の質量比で0.904:0.096となるよう調節されたほかは、比較例1と同様の作製条件にしたがって比較例2の窒化珪素基板を作製した。
(評価方法)
各実施例および各比較例の窒化珪素基板の特性を次のように評価した。
(X線回折ピーク強度による配向度)
X線回折は、40kV、15mAで励起したCu-Kα線を用いて、θ-2θ法による走査を、0.01°のステップ幅で測定を行った。
(元素分析)
Si、N、Mgおよび希土類元素の定量分析は、Rigaku社製ZSX PrimusIIを用いて蛍光X線分析法により行なった。一方、Oの分析は、HORIBA社製EMGAー920を用いて不活性ガス融解―非分散型赤外線吸収(NDIR)法により行なった。SiおよびNの量および量比よりSiNの含有量を計算し、MgおよびOの量および量比、並びに希土類元素およびOの量および量比より焼結助剤の量を計算した。
(熱伝導率)
熱拡散率の測定は、フラッシュ法により、NETZSCH社製LFA 467 HyperFlash装置を用いて行なった。本装置にて、パルス幅20μsecのキセノンフラッシュ光を照射することにより、IR検出器でAC温度応答を測定し、その温度応答の振幅と位置に対する減衰率から熱拡散率を算出した。10mm×10mmのサイズの試験片の表面に黒化処理が施されたうえで測定が実施された。
(密度測定)
密度測定にはアルキメデス法により行なった。
(3点法による抗折強度)
3点曲げ強度は、4mm×35mmの試験片に対して、JIS R1601:2008にしたがって、室温(25℃)にて、2支点間の間隔が30mmで、2支点の中間点から曲げたときの3点曲げ強度として測定し、10個の試験片の3点曲げ強度の平均値とした。
表1には、各実施例および各比較例の窒化ケイ素基板の作製条件の一部および当該評価結果がまとめて示されている。
Figure 0007434208000001

シート体の片主面上に分離剤層を形成した実施例1~5、10~13および多孔質板を形成した実施例6~9においては、いずれも窒化珪素基板において厚さ方向に配向したβ-Si粒子の割合を示す配向度faが0~0.3の範囲であって、厚さ方向の熱伝導率が80W/m・K以上であることが判明した。
10 窒化珪素基板
11 窒化珪素粒子
12 粒界相

Claims (4)

  1. 基板面にX線を照射した際に、β-SiのX線回折ピークを有し、
    窒化珪素基板において厚さ方向に配向したβ-Si粒子の長軸(c軸)の割合を示す配向度faが0.08410.2202の範囲に含まれ、4mm×35mmの試験片に対して2支点間の距離を30mmとして2支点の中間点から曲げたときの、前記試験片10個の3点曲げ強度の平均値が、806~872MPaの範囲であり、かつ、厚さ方向の熱伝導率が89.6~93.0W/m・Kの範囲である窒化珪素基板。
  2. 請求項1に記載の窒化珪素基板において、
    焼結助剤として希土類酸化物およびマグネシウム化合物を含む
    窒化珪素基板。
  3. 請求項1または2に記載の窒化珪素基板において、
    主面の大きさが400~40000mmであり、密度が3.15~3.40g/cmであり、絶縁耐圧が20kV/mm以上である
    窒化珪素基板。
  4. 珪素粉末、焼結助剤および分散媒を混合してスラリーを作製する工程と、
    前記スラリーからシート成形体を作製する成形工程と、
    前記シート成形体を窒素含有雰囲気において熱処理して、前記シート成形体を構成する珪素を窒化させる窒化処理工程と、
    前記窒化処理工程を経た前記シート形成体を焼結して、窒化珪素基板を作製する焼成工程と、を含み、
    少なくとも前記窒化処理工程において、重石板として緻密板を用い、成形体と緻密板との間に厚さが25μm~50μmの分離剤層を設けることで、前記成形体の厚み方向への焼結助剤の揮散を促し、当該厚み方向に窒化珪素粒子を配向させる
    前記成形体の厚み方向に配向したβ-Si 粒子の長軸(c軸)の割合を示す配向度faが0.0841~0.2202の範囲に含まれ、厚さ方向の熱伝導率が89.6~93.0W/m・Kの範囲であり、4mm×35mmの試験片に対して2支点間の距離を30mmとして2支点の中間点から曲げたときの前記試験片10個の3点曲げ強度の平均値が、806~872MPaの範囲である、
    窒化珪素基板の製造方法。
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