JP2017178715A - セラミック焼結板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 変形が少ない平坦なセラミック焼結板を効率良く製造する方法を提供する。【解決手段】 (a) 有機バインダーを含有する厚さ0.25〜1 mmで8〜50枚のグリーンシートを非反応性粉末層を介して堆積することにより、グリーンシート堆積体を形成し、(b) 前記グリーンシート堆積体に第一の荷重W1がかかる状態で室温〜180℃に1分〜6時間保持して、グリーンシートに対して変形矯正を行い、次いで(c) 前記グリーンシート堆積体に第二の荷重W2がかかる状態で400〜800℃の温度に0.5〜10時間保持して、グリーンシートの脱脂を行い、第一の荷重W1を第二の荷重W2より大きく設定し、もって変形が少ないセラミック焼結板を製造する方法。【選択図】図1

Description

本発明は、反り及びうねりが少ないだけでなく局所的な変形も少ないセラミック焼結板を効率良く製造する方法に関する。
パワー半導体モジュール等に使用される回路基板は、高い熱伝導率、絶縁性、機械的強度等を有するセラミック基板と、それにろう付け又は直接接合法(DBC)により接合された金属製の回路板及び放熱板とで構成されている。半導体モジュールの場合、回路板に半導体チップが接合される。動作中の半導体チップの放熱を効率良く行うため、セラミック基板には高い熱伝導率が要求される。勿論、セラミック基板には高い絶縁性(電気抵抗率)も要求される。
このようなセラミック基板は窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ等のセラミックスからなるが、中でも窒化珪素は優れた熱伝導率、絶縁性、機械的強度等を有するので、広く使用されている。セラミック基板を有する回路基板は、比較的大面積のセラミック焼結板を形成し、両面にろう付け等により銅板を接合し、エッチングにより一方の面に回路を形成した後、個々の大きさに分割することにより製造される。またセラミック焼結板は、ドクターブレード法又は押出し法等により連続的に形成した帯状グリーンシートを乾燥し、帯状グリーンシートの打ち抜き等により所定の形状及びサイズのグリーンシートを形成し、それを複数枚堆積した後で、脱脂及び焼結を行うことにより製造される。
セラミック焼結板に大きな変形があると、回路板又は放熱板と接合したときに、接合界面にボイドが生じ、熱伝導性が低下する。そのため、セラミック焼結板の変形を抑制することは非常に重要である。
高い熱伝導率、絶縁性及び機械的強度を有するとともに、変形が小さく窒化珪素焼結体基板を効率良く製造する方法として、特許第5729519号(特許文献1)は、80〜98.3質量%のSi3N4、0.7〜10質量%(酸化物換算)のMg、及び1〜10質量%(酸化物換算)の少なくとも1種の希土類元素を含有し、縦横がそれぞれ100 mm以上で、厚さ0.7 mm以下の窒化珪素焼結体基板を製造する方法であって、窒化珪素粉末と、Mg及び少なくとも1種の希土類元素を含有する焼結助剤粉末とを混合する工程と、得られた混合粉末のスラリーからグリーンシートを成形する工程と、複数枚のグリーンシートを窒化硼素粉末層を介して堆積した状態で窒素雰囲気中で焼結する工程とを有し、(a) グリーンシートに10〜600 Paの荷重がかかるように、前記グリーンシートの堆積体の上に重し板を配置した状態で前記焼結工程を行い、(b) 前記焼結工程における温度プロファイルが、1600〜2000℃の範囲内の温度に保持する第一の温度保持域の後に、1400〜1700℃の範囲内で、前記第一の温度保持域より低い温度に0.5〜10時間保持する第二の温度保持域を有する方法を開示している。この方法により得られた窒化珪素焼結体基板は、反りが2.5μm/mm以内であり、かつ表面うねりが2.0μm以上の領域の面積率が15%以下である。このように特許文献1の方法では反り及びうねりが低減した窒化珪素焼結体基板を得ることができるが、局所的な変形が生じることがある。これは、スラリーから成形した帯状のグリーンシートから打ち抜きにより所定のサイズのグリーンシートとし、窒化硼素粉末を塗布した後、所定の枚数に積層する際に、局所的な負荷により局所的な変形が生じるために、窒化珪素焼結体基板にも局所的な変形が残るためであると考えられる。
特開2007-204326号(特許文献2)は、平板状セラミックス成形体を、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム又はスポンジゴムからなる通気性を備えた緩衝シートを介して、セラミックス成形体より大きく、通気性と剛性を備えた段ボールの平板で挟み込み、荷重を付与しながら室温〜100℃の温度範囲で乾燥する平板状セラミックス成形体の乾燥方法を開示している。しかし、特許文献2は乾燥後の工程を何も記載していない。乾燥したグリーンシートの脱脂は通常400℃以上に加熱して行うが、このような脱脂温度ではポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム又はスポンジゴムからなる緩衝シートは軟化溶融してしまう。従って、特許文献2の方法で乾燥したセラミックス成形体は、緩衝シート及び段ボール平板から剥離した後堆積し、加熱することにより脱脂しなければならない。このように、特許文献2の方法では多数のセラミック焼結板を一度に効率良く製造することができない。
特許第5729519号公報 特開2007-204326号公報
従って本発明の目的は、反り及びうねりが低減しただけでなく、局所的な変形も少ない平坦なセラミック焼結板を効率良く製造する方法を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者等は、(a) セラミック焼結板に局所的な変形が生じるのは、帯状グリーンシートの打ち抜き工程及びグリーンシートの堆積工程でグリーンシートに局所的にかかる負荷により、グリーンシートが局所的に変形するためであり、 (b) グリーンシートの局所的な変形は荷重下での焼結だけでは十分に除去できず、(c) 局所的な変形を低減するためには、脱脂前に所定の時間、脱脂工程より大きな荷重でグリーンシート堆積体を加圧するのが有効であることを発見し、本発明を完成した。
すなわち、セラミック焼結板を製造する本発明の方法は、
有機バインダーを含有する厚さ0.25〜1 mmで8〜50枚のグリーンシートを、非反応性粉末層を介して堆積することにより、グリーンシート堆積体を形成し、
前記グリーンシート堆積体に第一の荷重W1がかかる状態で、前記グリーンシート堆積体を室温〜180℃に1分〜6時間保持して、前記グリーンシートに対して変形矯正を行い、次いで
前記グリーンシート堆積体に第二の荷重W2がかかる状態で、前記グリーンシート堆積体を400〜800℃の温度に0.5〜10時間保持して、前記グリーンシートの脱脂を行い、
前記第一の荷重W1を前記第二の荷重W2より大きく設定することを特徴とする。
前記第一の荷重W1は100〜1000 Paの範囲内であるのが好ましく、前記第二の荷重W2は50〜100 Paの範囲内であるのが好ましい。
変形矯正工程における温度T(℃)、前記第一の荷重W1(Pa)、及び時間t(hr)は下記式(1) の関係:
450≦T(℃)+273+W1(Pa)+10×t(hr)≦1500・・・(1)
を満たすのが好ましい。
前記グリーンシート堆積体の上に第一の重し及び第二の重しを載置することにより前記グリーンシートに第一の荷重W1をかけて、前記グリーンシートの変形矯正を行い、前記グリーンシート堆積体から前記第二の重しを取り除いた後、前記第一の重しだけを残すことにより前記グリーンシート堆積体に第二の荷重W2をかけて前記グリーンシートの脱脂を行うのが好ましい。
前記第一の重しは多孔質体であるのが好ましく、焼結用の載置板と同じ材質でも良い。
前記グリーンシートは、セラミック粉末及び有機バインダーを含有するスラリーからドクターブレード法により形成するのが好ましい。
前記セラミック粉末は窒化珪素粉末及び焼結助剤粉末であるのが好ましい。
前記非反応性粉末層は窒化硼素粉末を有するのが好ましい。
載置板上に前記グリーンシート堆積体を載置し、かつ前記グリーンシート堆積体の上に前記第一の重し及び前記第二の重しを載置した状態で前記グリーンシートの変形矯正を行い、次いで前記載置板上に前記グリーンシート堆積体を載置したまま、前記グリーンシート堆積体の上に前記第一の重しを載置した状態で前記グリーンシートの脱脂を行うのが好ましい。
前記グリーンシート堆積体を載置した前記載置板を、縦枠部材を介して多段の載置板組立体とし、前記載置板組立体を焼結用容器に入れて、前記グリーンシートの焼結を行うのが好ましい。
本発明の方法では、グリーンシート堆積体を乾燥後脱脂する前に、荷重をかけて加圧状態に所定時間保持する変形矯正工程を行い、かつ変形矯正工程における荷重を脱脂工程(及び焼結工程)における荷重より大きくするので、帯状グリーンシートから個々のグリーンシートに打ち抜く際や堆積工程での非反応性粉末層を塗布乾燥した際の局所的な変形や内部応力を十分に除去することができ、もってセラミック焼結板の局所的な変形を著しく抑制することができる。
セラミック焼結板の一例として窒化珪素焼結体基板を製造する方法を示すフローチャートである。 複数枚のグリーンシートの堆積体を示す断面図である。 変形矯正のために、載置板上の堆積体の上面に第一及び第二の重しを載せた様子を示す断面図である。 脱脂のために第一の重しを載せた堆積体を配置した多段フレームを示す断面図である。 焼結のために第一の重しを載せた堆積体を配置した多段フレームの上に詰め粉を配置した状態で、二重構造の焼結用容器内に配置した様子を示す断面図である。 窒化珪素焼結体基板の製造方法における焼結工程の温度プロファイルの一例を示すグラフである。 変形矯正前のグリーンシートの局所的な変形量を測定する方法を示す概略図である。 変形矯正後のグリーンシートの局所的な変形量を測定する方法を示す概略図である。 第一の荷重と変形量との関係を示すグラフである。 定盤に載置された窒化珪素焼結体基板の表面にレーザ光を照射して、反りを計測する様子を示す断面図である。 定盤に載置された窒化珪素焼結体基板の表面に3本の走査線に沿ってレーザ光を照射する様子を示す平面図である。 窒化珪素焼結体基板の反りを求める方法を示す平面図である。
本発明の実施形態を添付図面を参照して以下詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で適宜変更することができる。各実施形態の説明は、特に断りがなければ他の実施形態にも当てはまる。
本発明の方法を適用できるセラミック焼結板は、変形が問題となる用途に使用するものであれば限定されないが、特にパワー半導体モジュール等の回路基板を構成するセラミック基板を形成するのに用いるセラミック焼結板が好ましい。パワー半導体モジュール等の回路基板に用いるセラミック焼結板は、高い熱伝導率、絶縁性、機械的強度等を有する必要がある。回路基板を構成するセラミック基板に好適なセラミック焼結板としては、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ等が挙げられる。以下窒化珪素を例にとって、本発明の方法を詳細に説明するが、勿論その他のセラミックからなる薄板に対しても同様に本発明の方法を実施することができる。
[1] 原料粉末
本発明の窒化珪素焼結体基板を製造するための原料粉末は、80〜98.3質量%の窒化珪素(Si3N4)を主成分とし、焼結助剤として、0.7〜10質量%(酸化物換算)のMg、及び1〜10質量%(酸化物換算)の少なくとも1種の希土類元素を含有する。窒化珪素焼結体の密度、曲げ強度及び熱伝導率の観点から、窒化珪素粉末のα化率は20〜100%であるのが好ましい。
Si3N4が80質量%未満であると、得られる窒化珪素焼結体基板の曲げ強度及び熱伝導率が低すぎる。一方、Si3N4が98.3質量%を超えると、焼結助剤が不足し、緻密な窒化珪素焼結体基板を得られない。また、Mgが酸化物換算で0.7質量%未満であると、低温で生成する液相が不十分である。一方、Mgが酸化物換算で10質量%を超えると、Mgの揮発量が多くなり、窒化珪素焼結体基板に空孔が生じやすくなる。さらに、希土類元素が酸化物換算で1質量%未満であると、窒化珪素粒子間の結合が弱くなり、クラックが粒界を容易に伸展することから曲げ強度が低くなる。一方、希土類元素が酸化物換算で10質量%を超えると、粒界相の割合が多くなり、熱伝導率が低下する。
Mg含有量(酸化物換算)は好ましくは0.7〜7質量%であり、より好ましくは1〜5質量%であり、最も好ましくは2〜5質量%である。また、希土類元素の含有量(酸化物換算)は、好ましくは2〜10質量%であり、より好ましくは2〜5質量%である。従って、Si3N4の含有量は好ましくは83〜97.3質量%であり、より好ましくは90〜97質量%である。希土類元素としては、Y、La、Ce、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を使用することができるが、中でも、Yは窒化珪素焼結体基板の高密度化に有効であり好ましい。Mg及び希土類元素はそれぞれ酸化物粉末の形態で使用するのが好ましい。従って、好ましい焼結助剤は、MgO粉末とY2O3粉末との組合せである。
[2] 窒化珪素焼結体基板の製造方法
図1は、窒化珪素焼結体基板を製造する方法の一例を示すフローチャートである。説明の簡略化のために、窒化珪素原料粉末をSi3N4粉末とし、Mg原料粉末をMgO粉末とし、希土類元素原料粉末をY2O3粉末とするが、勿論限定的ではない。
(1) 原料粉末の混合工程S1
上記焼結組成が得られるように配合したSi3N4粉末、MgO粉末及びY2O3粉末に、可塑剤(ジ-n-ブチルフタレート等のフタル酸系可塑剤、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル等の二塩基酸系可塑剤等)、有機バインダー(エチルセルロース、ポリビニルブチラール、アクリル系バインダー等)及び有機溶剤(エチルアルコール、トルエン等)をボールミル等で混合し、スラリーを作製する。スラリーの固形分濃度は30〜70質量%が好ましい。
(2) 成形工程S2
スラリーを脱泡及び増粘した後、例えばドクターブレード法によりグリーンシートを形成する。グリーンシートの厚さは、形成すべき窒化珪素焼結体基板の厚さ及び焼結収縮率を考慮して適宜設定する。グリーンシートを乾燥するが、有機溶剤の残留濃度は1質量%未満であれば良い。ドクターブレード法で形成したグリーンシートは通常長尺な帯状であるので、所定の形状及びサイズに打ち抜くか切断する。1枚のグリーンシートから複数枚の窒化珪素焼結体基板を形成する場合、焼結後に切断する。各グリーンシート1の厚さは作製する窒化珪素基板の厚さに応じて、0.25〜1 mmとすることができる。各グリーンシート1の厚さは好ましくは0.25〜0.9 mmであり、より好ましくは0.25〜0.8 mmである。
(3) 堆積工程S3
窒化珪素焼結体基板を効率的に製造するために、複数枚のグリーンシートを堆積するのが好ましい。図2に示すように、複数枚のグリーンシート1を、非反応性粉末層2として厚さ約1〜20μmの窒化硼素(BN)粉末層を介して堆積し、堆積体10とする。堆積するグリーンシートの枚数が少ないと一度に焼結炉に投入する量が少なくなり、生産効率が悪くなる。一方で、堆積するグリーンシートの枚数が多いと、脱脂時にバインダーの分解が起こりにくくなる。そのため、堆積するグリーンシートの枚数は一般に8〜50枚で良いが、好ましくは10〜30枚である。BN粉末層2は焼結後の窒化珪素焼結体基板の分離を容易にするためのものであり、各グリーンシート1の一面にBN粉末のスラリーを、例えばスプレー、ブラシ塗布又はスクリーン印刷することにより形成することができる。BN粉末は95%以上の純度及び1〜20μmの平均粒径を有するのが好ましい。
(4) 変形矯正工程S4
複数枚のグリーンシート1を堆積した後で、脱脂工程を行い、次いで焼結工程を行うが、グリーンシート1の堆積工程で局所的な応力がかかるので、グリーンシート1に局所的な変形が生じることがある。変形を抑制した窒化珪素焼結体基板を得るために、載置板21上に載置したグリーンシート堆積体10に第一の荷重W1をかけた状態で、室温〜180℃に1分〜6時間保持し、変形矯正を行う。第一の荷重W1は、図3に示すように、第一の重し11と第二の重し12との組合せにより得るのが好ましい。「変形矯正」は、グリーンシート1の変形量を低減させるだけでなく、セラミック焼結板の変形の原因となるグリーンシート1の内部応力を緩和・除去することも含む。
グリーンシート堆積体10にかかる第一の荷重W1は100〜1000 Paの範囲内であるのが好ましい。第一の荷重W1が100 Pa未満であると、グリーンシート1に対して十分な変形矯正を行うことができず、焼結された窒化珪素焼結体基板に反りが生じやすい。一方、第一の荷重W1を1000 Pa超としても、さらなる変形矯正効果が得られない。第一の荷重W1はより好ましくは150〜700 Paであり、最も好ましくは200〜400 Paである。
グリーンシート堆積体10に第一の荷重W1をかけたとき、グリーンシート堆積体10の最上層にあるグリーンシート1aと最下層にあるグリーンシート1bとで荷重が異なる。例えば、32 gのグリーンシート(20 cm×20 cm×0.42 mm)10枚からなるグリーンシート堆積体10に800 gの重しを載せると、最上層のグリーンシート1aにかかる第一の荷重W1は約200 Paであり、最下層のグリーンシート1bにかかる荷重は約270 Paである。また、25 gのグリーンシート(20 cm×20 cm×0.33 mm)13枚からなるグリーンシート堆積体10に800 gの重しを載せると、最上層のグリーンシートにかかる第一の荷重W1は約200 Paであり、最下層のグリーンシート1bにかかる荷重は約275Paである。従って、最上層のグリーンシート1aにかかる荷重及び最下層のグリーンシート1bにかかる荷重のいずれも所望の範囲内に入るように、堆積体10中のグリーンシート1の重量及び枚数に応じて第一の荷重W1を決める。
第一の荷重W1はグリーンシートの変形矯正効果を得るために十分に大きくする必要があるが、第二の荷重W2が第一の荷重W1と同様に大きいままだと、堆積したグリーンシート間からバインダーの分解ガスが抜けにくくなり、変形や割れの原因となる。従って、本発明の方法では、第一の荷重W1がその後の脱脂工程でかける第二の荷重W2より大きい設定とする。
第二の荷重W2は好ましくは50〜100 Paであり、より好ましくは60〜90 Paである。第二の荷重W2が50 Pa未満であると脱脂工程S5でのグリーンシート1の変形を抑制できず、また100 Pa超であると堆積したグリーンシート1間からバインダーの分解ガスが抜けにくくなり、変形や割れの原因となる。第一の荷重W1/第二の荷重W2の比は1.4以上が好ましく、2.5以上がより好ましい。なお、第一の荷重W1/第二の荷重W2の比の上限は20が好ましく、10がより好ましい。
図3に示すように、グリーンシート堆積体10の上に第一の重し11及び第二の重し12を載置することにより、グリーンシート堆積体10に100〜1000 Paの範囲内の第一の荷重W1をかける場合、変形矯正工程S4の後に第二の重し12を取り除いて第一の重し11だけ残し、脱脂工程S5を行うことができる。この場合、第一の重し11の重量を脱脂に適する第二の荷重W2が得られるように設定し、第二の重し12の重量を(第一の荷重W1−第二の荷重W2)の荷重が得られるように設定すれば良い。第一の重し11は脱脂工程S5(及びその後の焼結工程S6)でも使用し得るので、多孔質体であるのが好ましい。また変形矯正工程S4の後に取り除く第二の重し12は、ハンドリング性を考慮して、ステンレススチール等からなるブロック状の重しであるのが好ましい。図3に示す例では第一の荷重W1を第一の重し11+第二の重し12により得ているが、勿論これに限定されず、変形矯正工程S4及び脱脂工程S5に異なる重しを用いても良い。
変形矯正工程S4の後に第二の重し12を取り除く必要があるので、図3に示すようにグリーンシート堆積体10を載置した載置板21を多段に重ねずに変形矯正を行うのが好ましい。
変形矯正温度については、室温未満ではグリーンシート1が硬すぎ、荷重をかけても変形矯正の効果が十分に得られず、180℃より高いとグリーンシート1中の有機バインダーや可塑剤の有機成分の分解が始まるので好ましくない。ここで、室温とは15〜35℃程度の範囲の温度を示す。変形矯正については、1分未満では応力緩和を十分に行うことができず、6時間超としても変形矯正工程が長くなるだけで、変形矯正効果のさらなる向上は認められない。なお、変形矯正時間の下限は5分程度が好ましい。
鋭意研究の結果、変形矯正工程S4における温度(℃)、グリーンシート堆積体10にかかる第一の荷重W1(Pa)、及び時間(hr)が下記式(1) の関係を満たすとき、変形矯正後の変形量が小さいことが分った。
450≦温度T(℃)+273+W1(Pa)+10×時間(hr)≦1500・・・(1)
温度T(℃)+273+W1(Pa)+10×時間t(hr)は480〜1200がより好ましく、500〜1000が最も好ましい。加熱により温度を高くすると短時間で変形矯正できるが、室温でも時間を長くすることで変形矯正が可能であり、この場合は加熱するための装置を用いる必要がない。
(5) 脱脂工程S5
グリーンシート1は有機バインダー及び可塑剤を含有するので、焼結工程S6の前に、堆積体10を400〜800℃に0.5〜10時間保持して脱脂する。400℃未満の脱脂温度では有機バインダー及び可塑剤の分解が不十分となり、カーボンの残留が多くなる。一方、800℃を超える脱脂温度では、窒化珪素が酸化するおそれがある。また、脱脂時間が0.5時間未満では有機バインダー及び可塑剤の分解が不十分となり、カーボンの残留が多くなり、10時間超では長すぎて生産性が低下する。
脱脂後のグリーンシート1は脆いので、堆積体10の状態で脱脂する。脱脂工程S5でグリーンシート堆積体10にかける第二の荷重W2は、上記の通り、好ましくは50〜100 Paであり、より好ましくは60〜90 Paである。第二の荷重W2下で脱脂を行うことにより、グリーンシート1の変形が抑制される。
例えば、堆積体10の上に第一及び第二の重し11,12を載置した状態で変形矯正工程S4を行った場合、図4に示すように第二の重し12だけを取り除き、第一の重し11だけでグリーンシート堆積体10に第二の荷重W2がかかる状態で脱脂を行うことができる。勿論、第一の荷重W1が第二の荷重W2より大きいという条件を満たす限り、脱脂工程S5にて変形矯正工程S4で使用したのと異なる重しを使用しても良い。また、必要に応じてグリーンシート堆積体10を載置した載置板21を多段に重ねて脱脂工程に投入しても良い。
(6) 焼結工程S6
(a) 焼結用容器
図5は、複数のグリーンシート堆積体10を同時に焼結するための焼結用容器の一例を示す。焼結用容器20は、各堆積体10を収容する載置板21を多段に積み上げた載置板組立体30と、載置板組立体30を収容する内側容器40と、内側容器40を収容する外側容器50とからなる。上下方向に隣接する載置板21の間隔は、縦枠部材22で保持する。焼結用容器20を所望の数だけ焼結炉(図示せず)に配置する。
内側容器40及び外側容器50の二重構造の焼結用容器20とすることにより、グリーンシート1中のSi3N4の分解とMgOの揮発を抑制することができ、より緻密で反りが少ない窒化珪素焼結体基板を得ることができる。内側容器40及び外側容器50はいずれもBN製であるのが好ましい。内側容器40は下板40a、側板40b及び上板40cからなり、外側容器50は下板50a、側板50b及び上板50cからなる。
載置板21の上面に反りやうねりがあると、載置板21と接触する最下層のグリーンシート1bには、載置板21の上面と接触する部分と接触しない部分とが生じる。そうすると、焼結時にグリーンシート1bの非接触部は収縮しやすく、接触部は収縮しずらいので、グリーンシート1b中に不均一な収縮が生じ、変形が生じる。また、最下層のグリーンシート1bの変形は上層のグリーンシート1にも波及し、結果的に全ての窒化珪素焼結体基板に変形が生じる。このため、載置板21の上面はできるだけ平坦である必要があり、具体的には、反りは2.0μm/mm以内で、うねりは2.0μm以内であるのが好ましい。載置板21の変形は、窒化珪素焼結体基板の変形と同じ方法で測定できる。反り及びうねりは、窒化珪素焼結体基板の面全体にわたって評価する。
窒化珪素焼結体基板の反りは、三次元レーザ計測器(株式会社キーエンス製のLT-8100)を用いて、特許文献1に記載の測定方法と同様にして測定する。すなわち、図9(a) 及び図9(b) に示すように、定盤70に載置された窒化珪素焼結体基板60の表面に対して、三次元レーザ計測器80により3本の走査線L1、L2、L3に沿ってレーザ光81を走査する。図9(b) に示すように、走査線L1及びL3は窒化珪素焼結体基板60の各側端から10 mmだけ内側の線に沿っており、走査線L2は窒化珪素焼結体基板60の中心線に沿っている。図9(c) に示すように、各走査線L1〜L3について、窒化珪素焼結体基板60の表面の走査方向両端A及びBを結ぶ直線Cを水平にし、直線Cから最も上方に離隔した点Eの高さGと、最も下方に離隔した点Fの高さHとを求める。点Eと点Fとの垂直方向距離(G+H)を各走査線L1〜L3の長さIで割り、走査線L1〜L3ごとに得られた(G+H)/Iの値を平均し、反りとする。なお、図9(a) 及び図9(c) では、説明のために、窒化珪素焼結体基板60の反りを誇張してある。
窒化珪素焼結体基板のうねり及び焼結後のΔHは、光学式の自由表面測定装置(GFM社製のMikro-CAD)を用いて測定する。
図5に示すように、内側容器40内に詰め粉24を配置するのが好ましい。詰め粉24は、例えば、0.1〜50質量%のマグネシア(MgO)粉末、25〜99質量%の窒化珪素(Si3N4)粉末、及び0.1〜70質量%の窒化硼素(BN)粉末からなる混合粉末である。詰め粉24中の窒化珪素粉末及びマグネシア粉末は、1400℃以上の高温で揮発し、焼結雰囲気中のMg及びSiの分圧を調整し、グリーンシート1から窒化珪素及びマグネシアが揮発するのを抑制する。BN粉末は、詰め粉24中の窒化珪素粉末及びマグネシアの粉末の凝着を防止する。詰め粉24の使用により、緻密で反りが少ない窒化珪素焼結体基板を得ることができる。詰め粉24のハンドリングを容易にするとともに、グリーンシート1に接触するのを防止するために、詰め粉24を最上段の載置板21aの上に配置するのが好ましい。
(b) 荷重
焼結工程S6では、脱脂工程S5で残した第一の重し11をそのまま使用しても良いが、勿論、第一の重し11を焼結専用の重しに取り替えても良い。焼結専用の重しは第一の重し11と同じ重量である必要がない。いずれにしても、焼結工程S6においてグリーンシート堆積体10にかける荷重は10〜600 Paの範囲内とするのが好ましい。荷重が10 Pa未満の場合、焼結された窒化珪素焼結体基板に反りが生じやすい。一方、荷重が600 Paを超えると、グリーンシート1が荷重により拘束されて焼結時の円滑な収縮が阻害されるため、緻密な窒化珪素焼結体基板が得られにくい。グリーンシート堆積体10にかける荷重はより好ましくは10〜200Paであり、更に好ましくは50〜100 Paであり、最も好ましくは60〜90 Paである。
(c) 温度プロファイル
グリーンシート1の焼結は、図6に示す温度プロファイルPに従って行うのが好ましい。温度プロファイルPは、徐熱域P0を有する昇温域と、第一の温度保持域P1及び第二の温度保持域P2を有する温度保持域と、冷却域とからなる。図6において、縦軸に示す温度は焼結炉の加熱温度である。
(d) 徐熱域
徐熱域P0は、グリーンシート1に含まれる焼結助剤が窒化珪素粒子の表面の酸化層と反応して液相を生成する温度域である。徐熱域P0では、α型窒化珪素の粒成長が抑えられ、液相化した焼結助剤中で窒化珪素粒子が再配列して緻密化する。その結果、第一及び第二の温度保持域P1、P2を経て、空孔径及び気孔率が小さく、曲げ強度及び熱伝導率の高い窒化珪素焼結体基板が得られる。徐熱域P0の温度T0を、第一の温度保持域P1の温度T1より低い1400〜1600℃の範囲内とし、徐熱域P0における加熱速度を300℃/時間以下とし、加熱時間t0を0.5〜30時間とするのが好ましい。加熱速度は0℃/時間を含んでも良く、すなわち徐熱域P0が一定温度に保持する温度保持域でも良い。徐熱域P0における加熱速度は1〜150℃/時間がより好ましく、1〜100℃/時間が最も好ましい。加熱時間t0は1〜25時間がより好ましく、5〜20時間が最も好ましい。
(e) 第一の温度保持域
第一の温度保持域P1は、徐熱域P0で生成した液相により、窒化珪素粒子の再配列、β型窒化珪素結晶の生成、及び窒化珪素結晶の粒成長を増進させ、もって焼結体をさらに緻密化させる温度域である。β型窒化珪素粒子の大きさ及びアスペクト比(長軸と短軸の比)、焼結助剤の揮発による空孔の形成等窒を考慮して、第一の温度保持域P1の温度T1を1600〜2000℃の範囲内とし、保持時間t1を約1〜30時間とするのが好ましい。第一の温度保持域P1の温度T1が1600℃未満であると、窒化珪素焼結体を緻密化しにくい。一方、温度T1が2000℃を超えると、焼結助剤の揮発及び窒化珪素の分解が激しくなり、やはり緻密な窒化珪素焼結体が得られにくくなる。なお、1600〜2000℃の温度範囲内であれば、第一の温度保持域P1内で加熱温度T1が変化(例えば徐々に昇温)しても良い。
第一の温度保持域P1の温度T1は1750〜1950℃の範囲内がより好ましく、1800〜1900℃の範囲内が最も好ましい。さらに、第一の温度保持域P1の温度T1は徐熱域P0の温度T0の上限より50℃以上高いのが好ましく、100〜300℃以上高いのがより好ましい。保持時間t1は2〜20時間がより好ましく、3〜10時間が最も好ましい。
(f) 第二の温度保持域
第一の温度保持域P1の後にある第二の温度保持域P2は、焼結体を第一の温度保持域P1の温度T1よりやや低い温度T2に保持することにより、第一の温度保持域P1を経た液相をそのまま又は固液共存の状態で維持する温度域である。第二の温度保持域P2の温度T2は1400〜1700℃の範囲内で、かつ第一の温度保持域P1の温度T1より低いのが好ましい。また、第二の温度保持域P2の保持時間t2は0.5〜10時間とする。第一の温度保持域P1の後に第二の温度保持域P2を設けることにより、窒化珪素焼結基板の反りを3.25μm/mm以内にすることができ、より好ましくは2.5μm/mm以内にすることができる。
第二の温度保持域P2の温度T2が1400℃未満であると、粒界相が結晶化しやすく、得られる窒化珪素焼結体基板の曲げ強度が低い。一方、温度T2が1700℃を超えると、液相の流動性が高すぎ、上記効果が得られない。温度T2は1500〜1650℃がより好ましく、1550〜1650℃が最も好ましい。第二の温度保持域P2の保持時間t2は1〜5時間が好ましい。第二の温度保持域P2の保持時間t2が0.5時間未満であると、粒界相の均一化が不十分である。焼結助剤の揮発を抑制して、窒化珪素焼結体基板の機械的特性及び熱伝導率の低下を防止するためには、第二の温度保持域P2の保持時間t2を10時間以下とする。
(g) 冷却域
第二の温度保持域P2の後にある冷却域P3は、第二の温度保持域P2で維持された液相を冷却して固化し、得られる粒界相の位置を固定する温度域である。液相の固化を迅速に行って粒界相分布の均一性を維持するために、冷却域P3の冷却速度は100℃/時間以上が好ましく、300℃/時間以上がより好ましく、500℃/時間以上が最も好ましい。実用的には、冷却速度は500〜600℃/時間が好ましい。このような冷却速度での冷却により、固化する焼結助剤の結晶化を抑制し、ガラス相を主体とした粒界相を構成できるので、窒化珪素焼結体基板の曲げ強度を高めることができる。冷却域P3の冷却速度を1200℃まで維持すれば、それより低い温度での冷却速度は特に限定されない。
[3] 窒化珪素焼結体基板
窒化珪素焼結体基板を切断することにより個々の基板を作製するので、窒化珪素焼結体基板は大きければ大きい程効率が良いが、その分変形の問題も大きくなる。製造効率と変形とのバランスの観点から、窒化珪素焼結体基板のサイズを縦横それぞれ100 mm以上とする。半導体等の回路素子用の放熱基板として用いる窒化珪素焼結体基板は薄い程良いが、薄くなるほど製造は困難になる。放熱基板としての性能と製造の困難性を考慮に入れて、窒化珪素焼結体基板の厚さは好ましくは0.7 mm以下であり、より好ましくは0.5 mm以下であり、最も好ましくは0.4 mm以下である。
変形が抑制された窒化珪素焼結体基板をろう材を介して銅板と接合する。ろう材としては、Ag-In-Cu系ろう材、共晶組成であるAgとCuを主体とし、Ti、Zr、Hf等の活性金属を添加したAg-Cu系ろう材等が挙げられる。
窒化珪素焼結体基板の変形が著しく抑制されているのは、変形矯正工程S4後及び脱脂工程S5後のグリーンシート1の変形の程度(変形量)が抑制されているためである。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
実施例1〜9、及び比較例1〜3
(1) 成形工程
95.0質量%のSi3N4粉末、3.0質量%のMgO粉末、及び2.0質量%のY2O3粉末を混合し(混合工程)、得られた原料粉末100質量部に、有機バインダーとして20質量部のポリビニルブチラール(軟化点:120℃)を添加したスラリー(固形分濃度:60質量%)を用いて、ドクターブレード法により帯状のグリーンシートを形成した。
(2) 堆積工程
帯状のグリーンシートを乾燥した後、パンチングによりグリーンシート1(乾燥時のサイズ:200 mm×200 mm×0.42 mm)を形成し、載置板21の上で13枚のグリーンシート1をBN粉末を介して重ねて堆積体10を形成した。
(3) 変形矯正前の局所的な変形量の測定
図7(a) に概略的に示すように、変形矯正前のグリーンシート1の局所的な変形量は比較的大きい。載置板21上のグリーンシート堆積体10の最大高さ(最も変形した部分の高さ)H1(mm)と最低高さ(変形がない部分の高さ)H0(mm)との差ΔH1(mm)を三次元レーザ計測器(株式会社キーエンス製のLT-8100)で測定し、変形矯正前のグリーンシート1の局所的な変形量とした。結果を表2に示す。グリーンシート1の局所的な変形は、例えば、図7(a) に示すようにグリーンシート1の対向する二辺の近傍に現れる場合(2本の帯状の変形領域)と、二辺間の中央に現れる場合(1本の帯状の変形領域)とがある。なお、図7(a) では変形量を誇張して示している。
(4) 変形矯正工程
各グリーンシート堆積体10に対して、表1に示す第一の荷重W1(Pa)、温度及び時間で変形矯正を行った。第一の荷重W1は、各グリーンシート堆積体10の上に配置した第一及び第二の重し11,12の合計重量に相当する。
(5) 変形矯正後の局所的な変形量の測定
図7(b) に概略的に示すように、変形矯正したグリーンシート1の局所的な変形量は、変形矯正前の局所的な変形量より著しく低減した。図7(b) でも、変形量を誇張して示している。変形矯正後のグリーンシート1の局所的な変形量も、載置板21上のグリーンシート堆積体10の最大高さ(最も変形した部分の高さ)H2(mm)と最低高さ(変形がない部分の高さ)H0(mm)との差ΔH2(mm)を三次元レーザ計測器(LT-8100)で測定することにより求めた。結果を表2に示す。
実施例4及び6〜8、並びに比較例3のグリーンシート1について、室温(24℃)で変形矯正したときの第一の荷重W1と変形量との関係を、変形矯正前の変形量とともに図8に示す。図8において、第一の荷重W1=0における変形量は変形矯正前の変形量である。図8から明らかなように、第一の荷重W1で変形矯正を行うと、グリーンシート1の変形量は著しく低減した。なお、比較例3では第一の荷重W1が3920 Paと過大であったため、変形矯正後の変形量は0であったが、脱脂後の変形量は4 mmと著しく大きかった。
(6) 脱脂工程
変形矯正したグリーンシート堆積体10から、第二の重し12を取り除き、第一の重し11による第二の荷重W2だけをかけて脱脂工程を行った。脱脂工程における温度、時間、及びグリーンシート堆積体10への第二の荷重W2を表1に示す。ただし、比較例1では第一の荷重W1<第二の荷重W2であるので、変形矯正工程で使用した第一の荷重をかけるための重しを、脱脂工程で使用する第二の荷重をかけるための重しに交換した。
(7) 脱脂工程後の局所的な変形量の測定
上記と同様にして載置板21上のグリーンシート堆積体10の最大高さH3(mm)と最低高さH0(mm)との差ΔH3(mm)を三次元レーザ計測器(LT-8100)で測定し、脱脂工程後のグリーンシート1の変形量とした。結果を表2に示す。
Figure 2017178715
注:(1) 第一の荷重。
(2) 第二の荷重。
(3) 単位は「分」。
Figure 2017178715
表1及び表2から明らかなように、実施例1〜11において、窒化珪素を用いたグリーンシート堆積体10を脱脂する前に、荷重をかけながら変形矯正することにより、グリーンシート1の変形量を著しく低減することができた。これに対して、変形矯正工程での荷重を小さくし、脱脂工程での荷重を大きくした比較例1では、変形矯正後の変形量及び脱脂後の変形量ともに大きかった。また、変形矯正工程での荷重より脱脂工程での荷重を大きくした比較例2では、変形矯正後の変形量は小さかったが、脱脂後の変形量が大きかった。さらに、変形矯正工程での荷重を著しく大きくした比較例3では、変形矯正後の変形量は小さかったが、脱脂後の変形量が著しく増大した。これは、変形矯正後のグリーンシートに大きな内部応力が残留したためであると考えられる。
脱脂したグリーンシート堆積体10を図5に示す焼結用容器20に入れた。焼結用容器20内では、グリーンシート堆積体10を載せた複数の載置板21を多段に重ねて載置板組立体30とし、最上段の載置板21aの上面に、15質量%のマグネシア粉末、55質量%の窒化珪素粉末、及び30質量%の窒化硼素粉末からなる詰め粉24を配置した。各載置板21は0.5μm/mmの反り及び0.3μmのうねりを有していた。
上記焼結用容器20を焼結炉に入れ、50℃/時間の昇温速度で10時間の徐熱域P0、1850℃の温度T1で5時間の第一の温度保持域P1、1600℃の温度T2で1.5時間の第二の温度保持域P2、及び600℃/時間の冷却速度の冷却域P3を有する温度プロファイルにより、各堆積体10中のグリーンシート1を焼結し、厚さ0.32 mmの窒化珪素焼結体基板を製造した。得られた窒化珪素焼結体基板の変形量ΔH(mm)は、実施例1〜11では25μm以内で合格であったが、比較例1〜3ではいずれも25μm超で不合格であった。これから、変形の少ない脱脂後のグリーンシートでなければ、変形の小さい窒化珪素焼結体基板が得られないことが分かる。
1・・・グリーンシート
2・・・非反応性粉末層(BN粉末層)
10・・・グリーンシート堆積体
11・・・第一の重し
12・・・第二の重し
20・・・焼結用容器
21・・・載置板
21a・・・最上段の載置板
22・・・縦枠部材
24・・・詰め粉
30・・・載置板組立体
40・・・内側容器
40a・・・下板
40b・・・側板
40c・・・上板
50・・・外側容器
50a・・・下板
50b・・・側板
50c・・・上板
W1・・・第一の荷重
W2・・・第二の荷重
S1・・・混合工程
S2・・・成形工程
S3・・・堆積工程
S4・・・変形矯正工程
S5・・・脱脂工程
S6・・・焼結工程
P・・・温度プロファイル
P0・・・徐熱域
P1・・・第一の温度保持域
P2・・・第二の温度保持域
P3・・・冷却域
T0・・・徐熱域P0の温度
T1・・・第一の温度保持域P1の温度
T2・・・第二の温度保持域P2の温度

Claims (10)

  1. セラミック焼結板を製造する方法において、
    有機バインダーを含有する厚さ0.25〜1 mmで8〜50枚のグリーンシートを非反応性粉末層を介して堆積することにより、グリーンシート堆積体を形成し、
    前記グリーンシート堆積体に第一の荷重W1がかかる状態で、前記グリーンシート堆積体を室温〜180℃に1分〜6時間保持して、前記グリーンシートに対して変形矯正を行い、次いで
    前記グリーンシート堆積体に第二の荷重W2がかかる状態で、前記グリーンシート堆積体を400〜800℃の温度に0.5〜10時間保持して、前記グリーンシートの脱脂を行い、
    前記第一の荷重W1を前記第二の荷重W2より大きく設定することを特徴とするセラミック焼結板の製造方法。
  2. 請求項1に記載のセラミック焼結板の製造方法において、前記第一の荷重W1が100〜1000 Paの範囲内であり、前記第二の荷重W2が50〜100 Paの範囲内であることを特徴とするセラミック焼結板の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載のセラミック焼結板の製造方法において、変形矯正工程における温度T(℃)+273、前記第一の荷重W1(Pa)、及び時間t(hr)が下記式(1) の関係:
    450≦T(℃)+273+W1(Pa)+10×t(hr)≦1500・・・(1)
    を満たすことを特徴とするセラミック焼結板の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のセラミック焼結板の製造方法において、
    前記グリーンシート堆積体の上に第一の重し及び第二の重しを載置することにより前記グリーンシートに第一の荷重W1をかけて、前記グリーンシートの変形矯正を行い、
    前記グリーンシート堆積体から前記第二の重しを取り除いた後、前記第一の重しだけを残すことにより前記グリーンシート堆積体に第二の荷重W2をかけて前記グリーンシートの脱脂を行うことを特徴とするセラミック焼結板の製造方法。
  5. 請求項4に記載のセラミック焼結板の製造方法において、前記第一の重しが多孔質体であることを特徴とするセラミック焼結板の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のセラミック焼結板の製造方法において、前記グリーンシートを、セラミック粉末及び有機バインダーを含有するスラリーからドクターブレード法により形成することを特徴とするセラミック焼結板の製造方法。
  7. 請求項6に記載のセラミック焼結板の製造方法において、前記セラミック粉末は窒化珪素粉末及び焼結助剤粉末からなることを特徴とするセラミック焼結板の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のセラミック焼結板の製造方法において、前記非反応性粉末層が窒化硼素粉末を有することを特徴とするセラミック焼結板の製造方法。
  9. 請求項3〜8のいずれかに記載のセラミック焼結板の製造方法において、
    載置板上に前記グリーンシート堆積体を載置し、かつ前記グリーンシート堆積体の上に前記第一の重し及び前記第二の重しを載置した状態で前記グリーンシートの変形矯正を行い、
    前記載置板上に前記グリーンシート堆積体を載置したまま、前記グリーンシート堆積体の上に前記第一の重しを載置した状態で前記グリーンシートの脱脂を行うことを特徴とするセラミック焼結板の製造方法。
  10. 請求項9に記載のセラミック焼結板の製造方法において、
    前記グリーンシート堆積体を載置した前記載置板を、縦枠部材を介して多段の載置板組立体とし、
    前記載置板組立体を焼結用容器に入れて、前記グリーンシートの焼結を行うことを特徴とするセラミック焼結板の製造方法。
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